いーちゃん「え? 草薙さんが逮捕された?」

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いーちゃん「え? 草薙さんが逮捕された?」

1 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 11:12:01.26 ID:Eo6FOpNR0

「ところで、きみは酒を飲むのかい? ……うん? 俺は飲むのかって? ああ、飲むさ。俺はレーサーだからね。おいおい、それは関係ないなんてつまらない事を言うんじゃないぜ。
関係はあるさ、大ありさ。……いいかい、俺は元スマップのメンバーだったんだぜ。そりゃあ酒ぐらい飲むだろう。普通は飲むさ。きみだってもしスマップに加入したら飲むことになるよ。
言いきるよ――ああ、言いきるさ。おいおい、確定された事を議論するってのは、酷くつまらないな。きみはレーサーになれるかもしれないね。どうだい、俺と世界を取ってみないか?」

 ぼくは答えない。

「ふむ、まあいいさ。そういうのは人それぞれだしね。俺だってそういう事を押しつけるように言うのはあまり好ましくないしな。――ああ、酒の話だったっけか?
ところできみは公園で酒を飲んだ事があるかい? 俺はあるね、それも何回もだ。何故なら俺はレーサーだからだ。レーサーであるから俺は酒を飲むんだ。
ふむ。分からないと、いった顔だな。どうだい今からサーキットを一周するなんてのは?」

 ぼくは答えない。

「ふん、いい案だと思うんだがな。まあ、いいさ。それじゃあ続きだ。一つだけ言わせて貰うと、だ。――俺はスマップを抜けて後悔した事なんてないんだ。
ああ、あの時は今よりずっと子供だったし、よく考えもせずにスマップを抜けたんだ。ああ、そう。つまりは脱退だ。きみもスマップは知ってるよな?
あん? 知らないって? 一応国民的アイドルなんだぜ。いや、まあいいさ――もしも俺が今もスマップにいたら、きっときみも知っていただろうね。
自信満々? いやいや、それは違う。俺はレーサーだ。今はスマップとはいささかも関係性がない。それはきみもレーサーになれば分かるはずさ――じゃあ、質問だ。きみはレーサーになれるか?」

 ぼくは答えない。

「レーサー。――レーサー。よし、では質問を変えよう。きみは、きみがレーサーになれると思うか? 良く考えてみてくれ。なあに、別に難しい話をしているわけじゃない。
単純な質問さ、至極単純明快な質問だ。『公園』『酒を飲んで』『酩酊して』『全裸になり』『通報される』――さて、これだけ情報があればどうなるか分かるね?
これはレーサーじゃなくても答えられるはずさ。無論俺はレーサーだから答えられる」

 ぼくは答えない。

「そうだ。正解は『警官に取り押さえられる』だ。――どうだい、簡単だろ? そりゃそうさ、子供にだって理解し到達できる答えさ。そうなれば国民的アイドルはどうなると思う?ああ、言い忘れていた。
たとえば車の運転中、警官に呼び止められて逃げる奴はレーサーじゃない。そんな奴はレーサーであってたまるものか。さて、――それでは答えてもらおう。きみは本当は草薙くんが嫌いなんじゃないか?」

 ぼくは。
 ぼくは――



2 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 11:14:12.66 ID:jtUwUM3wO

戯言かよ


3 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 11:14:46.95 ID:RU7BLH3MO

戯言だ


4 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 11:15:36.27 ID:3oZr9rdnO

戯言だけどね


5 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 11:15:36.33 ID:/BmTIDbV0

戯言だと思って開いたのに戯言だったことに驚いた


8 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 11:16:57.06 ID:CTWoNXhwO

こんなのは戯言だよ


9 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 11:17:26.90 ID:0XTYlKjP0

なんて戯言


10 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 11:17:51.69 ID:EW8uNbgBO

早すぎるよいーちゃん何やってんの


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14 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 11:31:32.62 ID:Eo6FOpNR0

「うん? 草薙剛? ……聞いたことないな」

巫女子ちゃんは大きくリアクションし、ぼくに突っ込みを入れた。

「嘘っ!? いっくんてばスマップ知らないの? すっごい有名なアイドルグループのメンバーなんだよ」

「ふうん。……有名ってもな。ほら、ぼくテレビとか見ないしさ」ぼくはいったん間を置き。
「んで、その草薙さんがどうしたの?」と、巫女子ちゃんに聞いた。

「そこの公園で全裸になって酩酊してるんだよっ!」

「はい?」聞き間違いでしょうか?
「あのさ、巫女子ちゃん。悪いんだけどもう一回言ってくれるかな」

「そこの公園で全裸になって酩酊してるんだよっ!」先程の発言と寸分も変わらない。

「あのさ……その人ってアイドルなんだよね?」

「うん。国民的アイドルだよ」と、満面の笑み。

 すげえな……さすがアイドルといったところか。いや、国民的アイドルですか。
 アイドルだから警察に捕まらねえのかな。などと約体の無い事を考えていると。

「じゃあ、行こうか!」

「どこに?」

「公園に」

「どうして?」

「見たいから」

「誰を?」

「スマップを」

「……」

 淀みの無い流れ。嫌だっつっても聞かねえんだろうな。
 しかしなんとなく興味がわいたので、とりあえず公園に向かうぼくであった。


 ~~~~


「……」

 公園についたぼくは眼前に繰り広げられている光景を見て唖然としていた。
 全裸の男性が公園で暴れています。周りにも結構人がいるが、誰も通報しようとはしていない。

「……さすが国民的アイドルだな」

「すごいねっ! めったに見れるもんじゃないよねっ!」と、ひっきりなしにはしゃぐ巫女子ちゃん。

「……うん。これはめったに見れないな」スマップじゃなくても。

 スマップの人は全裸で一升瓶を片手に走り回っている。
 それはきっとアイドルをやるための儀式か何かなのだろう。
 ……アイドルってたいへんなんだな。かわいそうに。
 ぼくは携帯電話をズボンのポケットから取り出し、とある番号に電話した。
 呼び出し音が鳴る。そして待つまでもなく電話はつながる。

「もしもし、佐々ですが。どうかしましたか?」

「どうも、お久しぶりです佐々さん」

「ああ、こちらこそお久しぶりです。それで用件はなんでしょうか?」うん、警察の鑑のような人だ。

「あのですね、ぼくの大学の公園に変質者がいるんですけど」

「どういう変質者ですか?」

「ぼくの見立てでは、全裸で酩酊して走り回っていますね」

「それで変質者は危険な感じですか?」

「いえ、そんなに危険な感じでもないです。数一さんがいれば問題無いでしょう」

「分かりました、すぐに向かいます」

「はい。ではよろしくお願いします」

 よし、完了。



24 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 12:03:53.41 ID:lHautZ5y0

捜査一課に頼むなwww


25 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 12:08:59.19 ID:4/L4dHK00

いーちゃん、お前のせいかwwww


26 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 12:11:17.67 ID:Eo6FOpNR0

 ぼくは携帯電話を再びポケットに戻し、公園を走り回っているスマップの人を眺めていた。
 うーん。やっぱりぼくには分からないけどアイドルってストレスとか溜まるんだろうなぁ。
 
「大変そうだな」ぼくは呟いた。

「『大変そうだな』ふん。くだらん。スマップはその程度では揺るがんさ。
いや、その程度で揺らぐわけがない。
あいつらはジャニーズだ。どこまで行こうがジャニーズでありアイドルなのさ」

「……あ、あなたは」ぼくは後ろを振り返る。そこには狐の面をかぶった人が楽しそうに佇んでいた。

「よう、俺の敵」

「……あんた何してんすか?」

「『あんた何してんすか』ふん。スマップがいると聞いてな。面白そうなので来てみただけだ」



27 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 12:15:18.41 ID:ke2mbYwqO

きつねさんwww


28 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 12:22:00.42 ID:Eo6FOpNR0

「……暇なんですね」

 狐さんは奇声を上げながら走り回っている変質者を指差し。

「ああ。俺の見立てでは奴はスマップでもあり変質者でもある。ふん。面白い」

「もしかして……スマップ好きなんですか?」

「ああ。青い稲妻からのファンだ」

「……そうですか」悪い事しちゃったかな。まあ、いいけど。
「でも、あのひとそろそろ逮捕されますよ」ぼくは言った。

「『逮捕されますよ』ふん。くだらん。先程も言ったが、奴が逮捕されようが逮捕されまいが変わらないさ。
奴らはそれでもスマップだ。ふん。そういえば一人だけいたな。スマップの輪から解脱した奴が……」



29 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 12:24:55.76 ID:2+biUTbaO

あれだろ?玖渚と草なぎが似てるから立てたんだろ?


30 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 12:30:33.65 ID:/ss1tak7O

哀川さんマダー?


32 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 12:32:15.63 ID:Eo6FOpNR0

 狐さんはぶつぶつと何かを呟き始めた。

「あれは惜しい事をしたもんだ。レーサーなどとくだらん事を言いださなければ、奴もアイドルに慣れていただろうに……」

 そうして、狐さんはぼくを見つめ。

「おい、俺の敵。おまえはスマップをどれだけ知っている?」と聞いた。

「はあ、全然知らないです」ぼくは答える。

「知りたいか? スマップの事を」

「いえ、全然、全く、これっぽっちも知りたくありません」

「そうか」何故だか狐さんは寂しそうに見えた。

 しかし全然知りたくないのは変わらない訳でありまして……。

「ふん。昔な、とあるアイドルグループにいた奴がいたんだが――」語りだしたよ。

「奴はまさにアイドルだった。ジャニーズの、スマップのアイドルだ。それは恐るべきことだ、やつは骨の髄までアイドルだった」

 だった、ね。よく分からないけど狐さんは何かに思いを馳せているような……。
 とりあえずてきとうに頷いておく。

「はあ。そうですか。アイドルですか」

「ああ。奴はアイドルだった。しかしレーサーでもあった。単純にそれだけだ」……レーサー?

「ええと、意味分かんねえです」

「ああ、正直俺も意味を考えていない」

「……そうですか」

「ああ。しかしその程度の事は問題では無い。ほれ、奴をよく見てみろ」

 狐さんは変質者を指差した。

「ぼくにはただの変態にしか見えないんですけど……」

「ああ、俺もそう思う。あれはどう見ても変質者だ」きっぱりと言い切る狐さん。

「……ですよね。あ、そろそろ逮捕されますよ」

 ぼくは雑踏の中、沙咲さんと数一さんを見つけた。
 二人はいつも通り、びしっとしたスーツを着込み、走りまわっている変質者を見つめていた。
 表情までは見えない。まあ、見えたとしても変わらずに仕事をこなすんだろうけど。

「ふん。記念的な瞬間だな。俺ともあろう者が緊張してきたぞ」

 うわ……声が震えてる。そんなに緊張することなのか?
 いや、聞かないけど。聞ける雰囲気じゃないけど。
 しかしこの公園、人いすぎじゃないか? すごく騒がしいよな。
 隣の人とか凄くうるさいし。

「ははははははは! いやいやいやいや、とても光栄だよ様刻くん。まったく僕とした事が危うくこんな人の多い所に近づくなんて思いもよらなかった。
だがしかしまさかまさかスマップの草薙くんがこんな場末の大学で全裸なんて思ってもいなかったよ。これほどの幸運はきみに出会えた事と同じくらい幸運だよ!」

 ふうん。やっぱり大人気なんだな。あの変質者。逆隣の人も大変そうに見えるし。

「ふうん。スマップのメンバーともあろう人間が本当にあさましい姿ね。それでも阿良々木君のあさましい過ぎた存在には勝てないけどね」

「……ガハラさん。君にはぼくがどう見えているのかが、時々どうしようもなく気になるんだが」



42 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 13:09:22.56 ID:NZjgYrhHO

阿修羅木さんwww


43 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 13:11:46.96 ID:diyYtdDR0

くろね子さんktkr


44 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 13:17:26.51 ID:jt7iy/ejO

この事件には怪異がからんでるんですね


45 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 13:22:06.10 ID:Eo6FOpNR0

 などなど、よそ見をしているぼくに狐さんが声をかけた。

「ふん。そろそろ逮捕の瞬間だな」

 気が付くと、沙咲さんと数一さんがじりじりと変質者に向い歩きだしていた。
 公園の全員が息を殺し、ただ見守っている。
 巫女子ちゃんも。狐さんも。隣のカップルも。逆隣のカップルも。なんか針金みたいに細い人も。
 麦藁帽子の人も。濡衣さんも。燕尾服を着た人も。安全ピンのようなジャケットを着た子供も。
 皆が皆息を殺し見守っている。
 ……なんか見ちゃいけない人が混じってたような気がする。まあ、いいや。

「■■■! ■■■■■■!!」変質者は叫びをあげた。

 しかし、捜査一課を舐めるな! ぼくじゃねえけど。
 沙咲さんが距離を詰め、背後から回り込んだ数一さんが抑え込む感じだろうか。

「■■■■■■■■■■■■!!」

 変質者は何を叫ぶ。ぼくには聞き取れないが何かの不満を言っているようだ。



46 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 13:24:46.16 ID:jt7iy/ejO

なんで零崎もいるんだよwww


47 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 13:25:32.82 ID:diyYtdDR0

なんかいろいろいるなww


48 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 13:36:52.47 ID:Eo6FOpNR0

「■■■■■■■■■■■■!!」

 数一さんに抑え込まれながらも叫ぶ変質者。
 微妙に解読すると。
 公園で全裸の何が悪い! と、言っていた気がする。……悪いに決まってるだろ。

「『公園で全裸の何が悪い』ふん。面白い。実にアイドルらしい言い草だ」

「あの……本当にそう思ってるんですか?」

「いや、思わん」……そうですか。そうですよね。

 抑え込まれながらも必死の抵抗をする変態。
 しかし応援の警官がブルーシートを持って現れた。
 変態は見る見るうちにシートに包まれる。
 瞬間、公園は拍手に包まれた。ぼくも何故だか心を打たれ、拍手をしていた。
 警官に、刑事に、変質者――いや、国民的アイドルグループスマップのメンバー、草薙さんに。
 心からの拍手。
 そうして変質者はパトカーに投げ込まれた。

 これにて事件終了と相成りました。


 騒動が収束し、公園からは人が消えた。
 狐さんも巫女子ちゃんも満足げに帰って行った。

「それじゃ、ぼくも帰るかな」良い物を見た気がする。

 それは感動の光景。
 悲しい喜劇であった。ぼくは頬を伝う雫に気付いた。
 これは、涙だろうか。

「……どうして、ぼくは泣いているんだろう?」

 アイドルの末路に関わってしまったから? いや、違う。
 ぼくは悲しかったんだ。
 理由なんてない。考えられない。ぶっちゃけ考えてない。
 そんな事どうだっていい。

 とにかく、

 ――今日は飯がうまそうだ。



50 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 13:46:06.41 ID:pKsK2xYmO

メシウマww


55 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 13:55:44.54 ID:E0c+I4T2O

なんで戯言でやったんだよwwwwww


56 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 13:58:51.37 ID:Eo6FOpNR0

 ~~~~

 そうして大学からの帰り道。ぼくは道の端を歩いていると。

「よう、少年」と、公道でF1カーに乗った人に話しかけられた。

 周りを見ても人はぼくしかいない。つーことはぼくに話かけているんだろう。

「あの、ぼくのことですか」ぼくはF1ぽいのを見ながら問う。

「他にはいないだろ? レーサーなら察しろよ」と、ヘルメットの奥から目を細めた。

 レーサー? 何言ってんだこの人? 頭おかしいんじゃねえの?
 と、思ったが言えなかった。
 この人から発される言いようもない気のようなものがぼくの口を止めていたような気がしなくもない。

「……あ、あなたは何者ですか?」ぼくは問うた。

「俺か? 少年、俺の名前を聞いたのか?」もったいつけるように引き延ばす。

 そして、運転席から座ったままの姿勢で跳躍し、ぼくの隣に降り立った。

「俺の名は森――

 ヘルメットを取り、顔を外気に晒した。アイドルっぽい顔だった。

――ただのレーサーさ」



57 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 14:01:09.20 ID:NdtHRiYdO

戯言www


58 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 14:13:31.96 ID:/ss1tak7O(

公道で乗るなよw


59 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 14:14:04.22 ID:1qtunVM7O

なんなんだこれw


60 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 14:17:58.34 ID:Eo6FOpNR0

「はあ、森さん、ですか」

「ああ、そうだよ。森さんだよ」と、ご機嫌そうな感じでぼくにヘルメットを放り投げ。
「ちょっと付き合えよ。飯くらいなら奢るぜ」と、爽やかに言った。

 断ろうとしたが、気が付くとぼくはF1カーの運転席に座らされていた。
 いったいどうやって? ぼくは普通に立っていた筈なのに。
 なんという早業! ……意味わかんねぇ。

「はあ、わかりました」ぼくは頷く事しか出来なかった。

 ぼくはいいようのない恐怖に包まれる。
 同じ人間だとはとてもとても思えなかった。

 ――これがレーサーか。

 ぼくは意味もなく適当にに頷き、納得した振りをした。



61 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 14:26:10.70 ID:K7rjOovEO

>>45に、さり気なく濡衣が居るw


62 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 14:28:02.50 ID:Eo6FOpNR0

 ~~~~

 気が付くとぼくは喫茶店の椅子に座らされていた。
 F1カーの早さは圧倒的で、追い越した乗用車を衝撃波で吹き飛ばし、
 京都の道はちょっとした惨状になったところまでは覚えているけど。
 ぼくは戦闘機並のGの中気絶してしまったのだろう。はさまっちまったぜ、みたいな。

「さて、何か頼んでいいぜ」と、前髪をかきあげ爽やかに言った。

「はあ、あのですね。森さんはぼくとは初対面ですよね?」

「ああ、そうだぜ」

 そうだよな。いくらぼくだって、公道でF1に乗る人を忘れるはずもないしな。
 ぼくはコーヒーをF1並の速さで飲んでいた森さんに問うた。

「いったいぼくに何の用があるんです」



64 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 14:37:10.26 ID:K7rjOovEO

森が哀川さんのポジションなのか?


66 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 14:41:42.74 ID:3L8r58YdO

森…最初は莵釣木的ポジションかと思ってた


67 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 14:42:44.81 ID:Eo6FOpNR0

「ほう、もうそれを聞くか――早いな。凄まじく速いな。まるでF1のような速さだ」

 どんな速さだよ……。しかし聞けないし突っ込めない。ぼくもさっき言った気がするし。
 そして、F1の速さでコーヒーを飲み干し、ぼくをにやにやと見つめ。

「きみには礼を言わなくてはならないんだよ」と、言った。

「……はあ、お礼ですか。ぼくはあなたにお礼をされるような事をした覚えはありませんが」

「ああ、きみには何も分からないだろうな。きみはレーサーではないのだから」

「はあ」すげえ疲れてきた。

「あの変質者――いや、アイドルを通報したのはきみだね?」

 と、にやにや笑いを浮かべながら言う。
 しかし目はまったく笑っていない。背筋が凍るような瞳でぼくを見つめている。


「はあ、そうですけど」

「くくく、ならば俺はきみに礼を言わねばならんな」

「一体なんですか? それにあなたは誰なんです?」

「ふふん。本当に速いな。音速を軽く超えている」超えてません。
「では後者の質問から答えよう。俺はレーサーさ。そして、アイドルだった存在だな」

「アイ……ドルだと?」ぼくは驚愕した。なんとなく驚愕した。意味はないけど。

「ああ、正確にはアイドルの残りカスともいえるがな」

 森さんは自嘲気味に微笑み、音の速さで店員さんにコーヒーのお代わりを注文した。
 ちなみに音の速さは音速である。



72 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 15:05:47.92 ID:jt7iy/ejO

スマッパ


失礼、噛みました


73 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 15:18:14.89 ID:Eo6FOpNR0

 たしか狐さんが何か言ってたな。レーサーがどうこうでスマップの輪から解脱したとか。
 つまりそれが森さんなのか……。

「もしかして森さんはスマップだったんですか?」

「ああ、そうだ。そして――」

「レーサーなんですよね……」そろそろ読めてきた。

「…………きみが通報してくれたおかげで世界は救われたんだよ」

 決めゼリフを奪われて不機嫌そうな森さんはよくわかんねえ事を言った。
 世界を救った? いったいどういうことなのだろうか?
 ぼくが通報した所為で?

「いや、意味分かんねえです」

「ああ、それでいいんだ」満足げに笑った。




>>72
違う、わざとだ……


74 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 15:20:49.24 ID:UbbzS6H0O

くそ、何でこんな面白いもん今やってんだ

携帯の充電がやばいじゃないか


77 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 15:43:08.37 ID:Eo6FOpNR0

それでいいんだ、って言われましても……」

 何とも要領の得ない会話だった。たぶん何も考えていないのが問題なんだろう。
 レーサーはもっともらしく頷き。

「知恵の身を食べた罪で人間は生まれたのだよ」

「格好いいけど……もっともらしくてきとうな事を言わないでください」

「ふむ。やはり速いな。だがきみがそれを知っていいのは今日の夕方だな」

「夕方に、ですか。一体なにがあるんですか?」

「ジャニーズの発表があるんだ。そこであの変態、いや、剛君の処遇が決まる……」

 それを言いきると、森さんは会計を済ませ、店の玄関に移動していた。
 目で追えない速さ、まさしくそれはレーサーであった。つまりはレーサーである。

「安心したまえ。……きみの今日の飯はうまいはずだよ」

 森さんはそう言い残し、寂しそうに笑った。



79 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 15:56:18.13 ID:i1cEdWC6O

何故戯言なのか小一時間問い詰めたい

あれか、草薙をくなぎさとでも読んだのか


85 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 16:12:18.38 ID:Eo6FOpNR0

「はあ、それならいいんですけど」飯がうまいなら何も問題無いわけでありまして。

「ああ、それじゃあな」

 そうして森さんはオイルの臭いを残し走り去った。
 F1カーの圧倒的なパワーと速度で、ショーウィンドウのガラスが残らず割れた。
 すげえな。あんなのに乗ってたんだな、ぼくは。
 さて、夕方までどうしようか。
 正直なところ、ニュースが出るまで書く事が無いんですよね。

「とりあえず待つか……」

 ぼくは呟き、窓ガラスが全て残らず割れた喫茶店でコーヒーを啜った。
 そういえば草薙さんって逮捕時に「シンゴー、シンゴー」って言ってたよな。
 ……どういうことなのだろう。何かの暗号かもしれない。
 今回の事件の鍵はその言葉なのだろうか。
 しかし、酒を飲んで奇声を発しながら走り回るのはやっぱり誰かの意思とかじゃあねえよな。
 いや、薬物の可能性もあるよな。

「うむ。わからん」ぼくは頭を振る。

 などなど思考をしていいると、誰かが店に入る気配がした。
 いや、それは気配なんて生易しいものじゃない、これは……殺意だ。
 ぼくはこれからひき逃げされることが確定しているような状態に陥っていた。
 ぼくは店の入り口をおそるそる見ると。四人の男達がじっとぼくを見つめていた。
 テレビからは草薙さんの家宅捜索が行われるとの伝え。
 それを聞いた男達は苦い顔をし。

「家宅捜索か。あいつの家のテレビアナログなんだよな……」と、呟いた。

 そして、中心にいた男はにやにやと笑い。

「ねえ、にいちゃん。君さ、森君といたでしょ」と、がらがらの声でぼくに聞いてきた。

「はあ、いましたけど」

「何処に行ったか分からないかなあ?」

「いや、さすがに分からないです。それではぼくはかえりますんで」

 ニュースは終わり、面白いとは思ったが、メシウマな情報はなかった。
 ジャニーズで発表があるっていってたじゃん。

 ぼくは男達の横を通りすぎ、店から出る。なんかヤバそうなので関わらない方がいいよね。



92 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2009/04/23(木) 17:25:46.32 ID:Eo6FOpNR0

 そして、何事もなく家に帰ったぼく。
 だが、今日の出来事が、後にあんな事になるのだなんて……。
 その時のぼくにはしるよしもなかったのだ。

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                _,,-','", ;: ' ; :, ': ,:    :'     d⌒) ./| _ノ  __ノ



おまけ


154 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/04/24(金) 04:18:11.03 ID:wqTuWzk0

「他人の家を自覚的に意識的に家宅捜索出来る警察ってのは、なかなかどうして怖いものがあるよな」

そうだろうか。

ぼくには、無自覚で無意識で他人の部屋を家探しする人間の方が、趣味で興味で他人の家を土足で上がる人間の方が、ずっと怖いように思えるけど。

「へえ。はは、何言ってんだ?当然じゃないか」

軽く笑われてしまった。ぼくの頭が弱いかどうかは、しかし幸いなことにこの場合あまり関係ない。
多分これは、考え方の違いではなくて、感じ方そのものの違いだろう。他人の家を家探ししなくても良い人間と、家宅捜索しなければならない人間との、絶対的で絶大な差異。
結局、そういう事だろうと思う。

たとえば酒を飲み過ぎた彼。

たとえば呂律が回らなくなっていた彼。

たとえば全裸で発見された彼。

たとえば夜中に大声で叫んでいた彼。

あの家に住んでいた彼はあまりにも有名人過ぎた。

公園にいた時も、そしてTVに映っている時も、どちらの場合もどうしようもないくらい有名でどうにもならないくらい有名で、どうする気にもなれないほどに有名で、そして韓国でも有名だった彼。

そして。

「つまりだな。これは有名人ってのはどういった存在であり、そして何が許されないのかって問題なんだよ。無名だったらそっちの方が良いんだ。普通の人間並みに無名だったなら。
そもそもアイドルでなかったなら、そもそもここまでファンがいなければ、そもそもTVに映らないほど無名だったなら、こんなに大きな事件にはならなかった。平穏で平和で平静で。
些細な事が大事件で、大事件は些細なことで、最高の一生を終える事が出来たんだろうよ」

それはきっと、その通りなのだろう。



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