2011年09月28日 19:45
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/06/22(水) 16:27:37.80 ID:290dlkr60
第二十五話
ホワイトベース 食堂
シノ「…………」
小難しい顔をしてクッキーをつまんでいるのはドラグナー1型のパイロット、天草シノだ。
アリア「やっぱり、気になっちゃうの、シノちゃん?」
シノ「あ、あぁ、アリア……」
要領を得ない回答をするシノに、珍しく七条アリアも卑猥な発言は控える。
普段なら唇を噛むだけでアレの日を疑うが、やはり環境は性格に深く影響を与えるのだと萩村スズは肯いた。
スズ「たしかに、追跡は逃れたといっても、反乱軍の実質的な首魁ですからね。連邦軍もこのまま見過ごすことはないはずですね」
話題はやはりギガノス帝国の〝蒼き鷹〟ハルヒ・スズミヤ・プラートとその仲間達である。
シノ「逃走ルートから計算するとサイド6に向かっているらしい」
スズ「私たちの行き先とは逆方向ですね」
ホワイトベースは月から発進し、サイド4テキサスを通ってからジオン公国の攻撃拠点ソロモンへ向かう。
ギガノス殲滅の作戦名・星光と同時且つ極秘に発動されたチェンバロ作戦の概要は以下の通りだ。
1.対ギガノス艦隊から分離した突撃部隊がキシリア・ザビが指揮する月面基地グラナダを攻撃。
2.レビルの影武者がグラナダ接収宣言と同時に名称をF.S<ファースト・ステップ>と変更する式を行い、注意をひきつける。
3.これら主力の三分の二を使った陽動の間にティアンム指令率いる第二艦隊を密かにサイド1に集結。
4.レビル将軍は自ら第一艦隊でサイド2に駐留してソロモンに対して陽動作戦を展開する。
5.作戦名・星光の終了後、第三、第四艦隊はテキサスゾーンを抜け、サイド4からソロモンへ出発、更なる陽動をかける。
6.徹底的な陽動作戦に隠れた第二艦隊はサイド1からソーラ・システムによる攻撃を行い、ソロモン防衛網を突破する。
ハルヒたちが逃げたとされるサイド6はサイド1と近接している為、追撃の手はそう長くは及ばないだろう。
下手をすればジオンに第二艦隊の存在を気取られてしまう。
おそらく、サイド6から先、ハルヒたちの居所は全く分からなくなってしまうだろう。
スズ「まさかとは思いますけど、追いかけるつもりじゃないですよね?」
シノ「そんなことはしないさ。見てくれ」
顎を上げたシノの襟には青地に白い一本線に加え、金色のひし形がついている。
シノ「私は少尉になったんだ。これで退役するには二ヶ月の申請期間が必要になった」
アリア「向こうからは早いのに、こっちからは遅いのね」
この昇進はドルチェノフ打倒を評価されての事だが、ハルヒと懇意していると見られたシノを足止めする為であることは明白であった。
スズ「勝手に飛び出せば命令違反で軍法会議ですからね」
シノ「あぁ、だから少尉であることを利用することにした」
アリア「利用?」
シノ「うむ、民間協力者とそう変わらない准尉から正式な士官になったことで、月ぎめの給料が貰える様になった。私はこれで人を雇おうと思う」
スズ「なるほど、それでその人たちに涼宮さんたちを追いかけてもらうんですね」
シノ「その通りだ」
スズ「でも、誰を雇うんですか?」
こなた「そーれはわたしたちだーにゃー」
スズ「こなたさん!? ってことは、J9を?」
シノ「そうだ」
かがみ「あたしたちも動向は気になるからね。格安で引き受けたわ」
シノ「それでも、給料二年分の前借りだが」
スズ「二年って……会長、二年間、軍にいるつもりですか?」
シノ「えっ?」
スズ「いや、だって、そういうことじゃないですか……」
シノ「しまった……そういえばそうだったな……」
かがみ「まあ、ウチとしてはお金を払ってもらえれば、軍の給料じゃなくてもいいんですけど」
シノ「それなら、終戦したらアリアの会社で働かせてもらおうか」
アリア「でも……それだったら最初からウチに言ってくれればよかったのに」
シノ「…………」
七條家は大金持ちだった。
シノ「生徒会長には……自腹を切らねばならん時があるんだ」
