2012年05月14日 20:12
まどか「マスクドライダーシステム?」
279 :トゥーフ ◆aYPblnZtes [saga]:2011/12/13(火) 01:26:46.21 ID:T6P8kAJ50
『Rider sting』
「うおおっ!」
光の針が直撃し、魔女の動きが止まる。
「今だっ!」
「ティロ・フィナーレっ!」
巨大な砲弾が、動けぬ魔女に直撃した。
この世の物とは思えないような呻き声を響かせながら、化物は消え去った。
続いて結界が解かれ、風景が日常の物へと戻っていく。
「や、やった……!」
「すげえ、マミさん、加賀美っ!」
地面に降り立った二人の元に、さやかとまどかが駆け寄った。
「いやあ、かっこいいねえ。 なんか、ヒーローって感じ!」
興奮醒めやらぬ様子で、さやかは飛び跳ねる。
まどかも遠慮がちながら、嬉しそうに笑う。
「もう、見世物じゃないのよ?
危ない事してる、って意識は忘れないでおいて欲しいわ」
マミは困ったように二人を諌めるが、二人の耳には届いておらず、
たださやかのふざけたような返事が戻ってきただけだった。
そんな三人を横目に見ながら、加賀美は物思いに耽る。
「もう一度、俺がザビーに……なった、のか?」
手首のブレスを見ると、しっかりと機械蜂――ザビーゼクター――は鎮座していた。
あまりにあっさりと呼び出すことの出来たその蜂を、加賀美は信頼できない。
「不調も無かった……クロックアップは短時間しかしてないけど、問題無くできた」
だからこその疑問。
「こいつの資格者は、俺……? 捨てた筈なのに、どうして?」
ゼクターをブレスから離し変身を解除すると、ザビーゼクターは飛び去った。
ふと、さやかの声が聞こえてくる。
「いいじゃないですか、教えて下さいよー」
「いや、だから、大したものじゃないのよ」
加賀美は気をとり直し、マミらに近づく。
その顔は、既に一介の警察官に戻っていた。
「そろそろ帰るぞ。
……何の話してたんだ?」
それは少女たちにとって、他愛もないからかい話だったが。
「な、何でもないですよ、ほら帰りましょ――」
「マミさんと矢車さんの話! 加賀美も気にならない?」
「そりゃあ……なあ」
「私と、矢車さんの出会いなんて……」
加賀美にとっては、割と本気で知りたい事柄である。
しかし。
その後加賀美は少女達を家まで送り届け、釈然としないまま帰宅するのであった。
/////
『因果』
……因と結果。また、その関係。
……前に行った善悪の行為が、それに対応した結果となって現れるとする考え。特に前世あるい過
去の悪業(あくごう)の報いとして現在の不幸があるとする考え。
/////
――俺は……兄貴の知らない闇を知ってしまって――
――俺も一緒に連れて行って欲しかったけど、さ――
――俺はこの暗闇から出られそうにないよ――
――さよならだ、兄貴――
日が完全に暮れ、人々が殆ど床に就く時間。
小奇麗な街にただ一つ存在する廃工場の屋上に、一人の男が居た。
「――あれから2ヶ月」
満月とは程遠い三日月を見つめながら、男は呟いた。
退廃的な服に身を包んだその男の雰囲気は暗く、そして切ない。
この男が今まで歩んできた人生を鑑みれば、無理もない。 むしろ必然とも言えるだろう。
男は、ぼそりと呟く。
「ここでも無かったよ、相棒」
男は立ち上がり、屋上から軽く飛び降りる。
生身の人間なら良くとも骨折、最悪即死の高さから、である。
まるで階段の二段目から飛んだかのようにふわりと着地すると、男は歩き出した。
とある場所を求めて。
廃工場の敷地から出てしばらく歩くと、丁度繁華街に出た。
こんな時間と言えど、明るい場所に出ればまだ明るく、むしろ活気づいて居るようにも見える。
こういう時間帯が最も繁盛する。 ここはそういった類の――悪く言えば下品な――エリアなのだろう。
「お兄さん! ちょっとイイコトして行かない?」
「今日いい子が入ったんだよお! お兄さんみたいな男前ならお持ち帰りできちゃうよ!」
この手の通りを一人で行けば必ず声がかかる。
男はそういった声を全て無視し、視線すら向けずに歩いて行く。
「ちょっとお兄さん! 話聞くだけでもいいからさあ!」
気付くと、気色悪い笑みを浮かべる禿げた中年の男が腕を掴んでいた。
この中年にとっては営業スマイルなのであろうそれを、男は興味無さ気にちらりと目を向ける。
「他のとこと違って、ここは本物だよお? なんたって――」
男はそんな声には耳を傾けず、やはり興味無さ気に視線を戻し、歩き出した。
中年は予想だにしない男の動きにすぐさま反応し、その行く手を阻もうと眼前に立つ。
と、その瞬間――
「うぉわあ!」
中年の肥えた体が前のめりに倒れた。
男はこれを身を流して避けるが、流石に少々驚いたのか、その目を中年に向ける。
中年は起き上がり、後方へと視線をやった。
「おい、危ないだろう!」
怒りを隠さずそういう中年の目線の先には、一人の少女。
「す、すみません! 急いでいたもので……」
少女が深々と下げていた頭を上げると、男の顔は驚きに染まった。
しかし少女も中年もそれには気付かない。
「ちっ、ガキか……おいお前――」
突然、中年の肩が男に捕まれ引っ張られる。
見事な速度で表情を営業スマイルに戻した中年の眼前で待っていたのは、猛スピードで迫る拳だった。
「がっ! ……」
中年はうめき声すらあげずに膝から崩れ落ちる。
男は倒れていく中年には目もくれず、少女に視線をあわせる。
「お前――」
「おいなんだあれ、喧嘩かぁ?」
どうやら少々手荒過ぎたらしい。
男が周囲を確認すると、ものの見事に野次馬が集まってきていた。
少女の方も何がなにやら理解出来ていない様子である。
男の決断は早かった。
「おい」
「は、はいっ?」
少女が自分の呼びかけに応じた事を確認すると、矢車は野次馬の数が少ない方面に視線をやった。
「早く行け」
ここは俺が引き受ける、とその目は告げていた。
「あ、ありがとうございます!」
少女は一言礼を言うと、再び駆けて行く。
が、急に振り返り、男にもう一度声を掛けた。
「あ、あの……お名前をっ!」
「矢車――矢車、想」
「ありがとうございます、矢車さん!」
少女は今度こそその場から走り去った。
男はそれを見届けると、周囲をゆっくりと見回す。
近寄るな――
それだけがこの男が言いたいことであると、それが誰の目にも明らかだった。
野次馬達が一歩後ずさる。
男はゆっくりと歩き始めた。
少女の行った道を追うように。
少女を追って暗い路地の中に入る。
「……く、くく、はは――ははははははははっ!」
静寂の中、男は急に大声を上げて笑い出した。
「『因果』――か」
矢車はぼそりと言うと、またゆっくりと歩き始める。
ジャキン、ジャキン、と。
鋭利で不器用な音が、夜空に吸い込まれていった。
/////
――――「……B班、C班、状況はどうだ」
『こちらB班、ワームの反応はありません』
『こちらC班、サーモグラフィーは正常に動作していますが……』
小型の無線機からくぐもった声が聞こえてくる。
「こちらもそのようです、隊長」
耐衝撃スーツに身を包み、特徴的なヘルメットを被った者達。
――秘密結社『ZECT』――
彼らは地球を襲う未曾有の危機に対抗するため、ZECT内部で編成された部隊『ゼクトルーパー』。
異様な見た目に扮した彼らの中に、たった一人だけ見慣れた服装をした男が居た。
その男は、手に持った無線機に語りかける。
「分かった、観測を続けろ」
この男の名を、矢車想という。 矢車は極普通のスーツにその身を包んでいた。
「……しかし隊長」
部下の一人が、サーモグラフィーに目を向けたまま声を上げた。
「ん、どうした影山」
「どうして我々『シャドウ』がこんな下っ端みたいな仕事をしてるんですかね?」
「不満たっぷり、だな」
くく、と笑いを漏らしながら、矢車はそのヘルメットにデコピンする。
しかしすぐに顔を引き締め、その視線を上へやった。
「ここにワームが出る『らしい』」
「らしい?」
「タレコミがあったんだとさ。 しかし奴らは市民には認知されていない」
「それって……」
「十中八九、罠だろうな」
話を聞いていた部下たちがにわかにざわつく。
矢車が見回すとすぐに静まったが、彼らの動揺は見て取れた。
「考えてもみろ、奴らが仕掛けた罠だ。
なら、罠の内容は勿論……わかるな?」
「戦闘になる、って事ですか」
「ほぼ、そうなる」
隊員達は、皆一様に息を飲んだ。
「し、しかし……こんな大きな交差点で、なんて」
「盲点だろう? だから突かれるんだ、そういう所を」
時計を覗く。
「話は終わりだ。 もうすぐ最も混雑する時間帯になる。
気を引き締めろ」
――ジャキン、と。
規律のとれた無機質な音が、フロアに響いたのだった。
/////
仮面ライダーキックホッパー……
私を、助けて――
逃したか――
こいつらは――
説明している暇はありません。 じっとしていて――
そうは、させん――
次回『決意の麻婆豆腐』
←ブログ発展のため1クリックお願いします
279 :トゥーフ ◆aYPblnZtes [saga]:2011/12/13(火) 01:26:46.21 ID:T6P8kAJ50
『Rider sting』
「うおおっ!」
光の針が直撃し、魔女の動きが止まる。
「今だっ!」
「ティロ・フィナーレっ!」
巨大な砲弾が、動けぬ魔女に直撃した。
この世の物とは思えないような呻き声を響かせながら、化物は消え去った。
続いて結界が解かれ、風景が日常の物へと戻っていく。
「や、やった……!」
「すげえ、マミさん、加賀美っ!」
地面に降り立った二人の元に、さやかとまどかが駆け寄った。
「いやあ、かっこいいねえ。 なんか、ヒーローって感じ!」
興奮醒めやらぬ様子で、さやかは飛び跳ねる。
まどかも遠慮がちながら、嬉しそうに笑う。
「もう、見世物じゃないのよ?
危ない事してる、って意識は忘れないでおいて欲しいわ」
マミは困ったように二人を諌めるが、二人の耳には届いておらず、
たださやかのふざけたような返事が戻ってきただけだった。
そんな三人を横目に見ながら、加賀美は物思いに耽る。
「もう一度、俺がザビーに……なった、のか?」
手首のブレスを見ると、しっかりと機械蜂――ザビーゼクター――は鎮座していた。
あまりにあっさりと呼び出すことの出来たその蜂を、加賀美は信頼できない。
「不調も無かった……クロックアップは短時間しかしてないけど、問題無くできた」
だからこその疑問。
「こいつの資格者は、俺……? 捨てた筈なのに、どうして?」
ゼクターをブレスから離し変身を解除すると、ザビーゼクターは飛び去った。
ふと、さやかの声が聞こえてくる。
「いいじゃないですか、教えて下さいよー」
「いや、だから、大したものじゃないのよ」
加賀美は気をとり直し、マミらに近づく。
その顔は、既に一介の警察官に戻っていた。
「そろそろ帰るぞ。
……何の話してたんだ?」
それは少女たちにとって、他愛もないからかい話だったが。
「な、何でもないですよ、ほら帰りましょ――」
「マミさんと矢車さんの話! 加賀美も気にならない?」
「そりゃあ……なあ」
「私と、矢車さんの出会いなんて……」
加賀美にとっては、割と本気で知りたい事柄である。
しかし。
その後加賀美は少女達を家まで送り届け、釈然としないまま帰宅するのであった。
/////
『因果』
……因と結果。また、その関係。
……前に行った善悪の行為が、それに対応した結果となって現れるとする考え。特に前世あるい過
去の悪業(あくごう)の報いとして現在の不幸があるとする考え。
/////
――俺は……兄貴の知らない闇を知ってしまって――
――俺も一緒に連れて行って欲しかったけど、さ――
――俺はこの暗闇から出られそうにないよ――
――さよならだ、兄貴――
日が完全に暮れ、人々が殆ど床に就く時間。
小奇麗な街にただ一つ存在する廃工場の屋上に、一人の男が居た。
「――あれから2ヶ月」
満月とは程遠い三日月を見つめながら、男は呟いた。
退廃的な服に身を包んだその男の雰囲気は暗く、そして切ない。
この男が今まで歩んできた人生を鑑みれば、無理もない。 むしろ必然とも言えるだろう。
男は、ぼそりと呟く。
「ここでも無かったよ、相棒」
男は立ち上がり、屋上から軽く飛び降りる。
生身の人間なら良くとも骨折、最悪即死の高さから、である。
まるで階段の二段目から飛んだかのようにふわりと着地すると、男は歩き出した。
とある場所を求めて。
廃工場の敷地から出てしばらく歩くと、丁度繁華街に出た。
こんな時間と言えど、明るい場所に出ればまだ明るく、むしろ活気づいて居るようにも見える。
こういう時間帯が最も繁盛する。 ここはそういった類の――悪く言えば下品な――エリアなのだろう。
「お兄さん! ちょっとイイコトして行かない?」
「今日いい子が入ったんだよお! お兄さんみたいな男前ならお持ち帰りできちゃうよ!」
この手の通りを一人で行けば必ず声がかかる。
男はそういった声を全て無視し、視線すら向けずに歩いて行く。
「ちょっとお兄さん! 話聞くだけでもいいからさあ!」
気付くと、気色悪い笑みを浮かべる禿げた中年の男が腕を掴んでいた。
この中年にとっては営業スマイルなのであろうそれを、男は興味無さ気にちらりと目を向ける。
「他のとこと違って、ここは本物だよお? なんたって――」
男はそんな声には耳を傾けず、やはり興味無さ気に視線を戻し、歩き出した。
中年は予想だにしない男の動きにすぐさま反応し、その行く手を阻もうと眼前に立つ。
と、その瞬間――
「うぉわあ!」
中年の肥えた体が前のめりに倒れた。
男はこれを身を流して避けるが、流石に少々驚いたのか、その目を中年に向ける。
中年は起き上がり、後方へと視線をやった。
「おい、危ないだろう!」
怒りを隠さずそういう中年の目線の先には、一人の少女。
「す、すみません! 急いでいたもので……」
少女が深々と下げていた頭を上げると、男の顔は驚きに染まった。
しかし少女も中年もそれには気付かない。
「ちっ、ガキか……おいお前――」
突然、中年の肩が男に捕まれ引っ張られる。
見事な速度で表情を営業スマイルに戻した中年の眼前で待っていたのは、猛スピードで迫る拳だった。
「がっ! ……」
中年はうめき声すらあげずに膝から崩れ落ちる。
男は倒れていく中年には目もくれず、少女に視線をあわせる。
「お前――」
「おいなんだあれ、喧嘩かぁ?」
どうやら少々手荒過ぎたらしい。
男が周囲を確認すると、ものの見事に野次馬が集まってきていた。
少女の方も何がなにやら理解出来ていない様子である。
男の決断は早かった。
「おい」
「は、はいっ?」
少女が自分の呼びかけに応じた事を確認すると、矢車は野次馬の数が少ない方面に視線をやった。
「早く行け」
ここは俺が引き受ける、とその目は告げていた。
「あ、ありがとうございます!」
少女は一言礼を言うと、再び駆けて行く。
が、急に振り返り、男にもう一度声を掛けた。
「あ、あの……お名前をっ!」
「矢車――矢車、想」
「ありがとうございます、矢車さん!」
少女は今度こそその場から走り去った。
男はそれを見届けると、周囲をゆっくりと見回す。
近寄るな――
それだけがこの男が言いたいことであると、それが誰の目にも明らかだった。
野次馬達が一歩後ずさる。
男はゆっくりと歩き始めた。
少女の行った道を追うように。
少女を追って暗い路地の中に入る。
「……く、くく、はは――ははははははははっ!」
静寂の中、男は急に大声を上げて笑い出した。
「『因果』――か」
矢車はぼそりと言うと、またゆっくりと歩き始める。
ジャキン、ジャキン、と。
鋭利で不器用な音が、夜空に吸い込まれていった。
/////
――――「……B班、C班、状況はどうだ」
『こちらB班、ワームの反応はありません』
『こちらC班、サーモグラフィーは正常に動作していますが……』
小型の無線機からくぐもった声が聞こえてくる。
「こちらもそのようです、隊長」
耐衝撃スーツに身を包み、特徴的なヘルメットを被った者達。
――秘密結社『ZECT』――
彼らは地球を襲う未曾有の危機に対抗するため、ZECT内部で編成された部隊『ゼクトルーパー』。
異様な見た目に扮した彼らの中に、たった一人だけ見慣れた服装をした男が居た。
その男は、手に持った無線機に語りかける。
「分かった、観測を続けろ」
この男の名を、矢車想という。 矢車は極普通のスーツにその身を包んでいた。
「……しかし隊長」
部下の一人が、サーモグラフィーに目を向けたまま声を上げた。
「ん、どうした影山」
「どうして我々『シャドウ』がこんな下っ端みたいな仕事をしてるんですかね?」
「不満たっぷり、だな」
くく、と笑いを漏らしながら、矢車はそのヘルメットにデコピンする。
しかしすぐに顔を引き締め、その視線を上へやった。
「ここにワームが出る『らしい』」
「らしい?」
「タレコミがあったんだとさ。 しかし奴らは市民には認知されていない」
「それって……」
「十中八九、罠だろうな」
話を聞いていた部下たちがにわかにざわつく。
矢車が見回すとすぐに静まったが、彼らの動揺は見て取れた。
「考えてもみろ、奴らが仕掛けた罠だ。
なら、罠の内容は勿論……わかるな?」
「戦闘になる、って事ですか」
「ほぼ、そうなる」
隊員達は、皆一様に息を飲んだ。
「し、しかし……こんな大きな交差点で、なんて」
「盲点だろう? だから突かれるんだ、そういう所を」
時計を覗く。
「話は終わりだ。 もうすぐ最も混雑する時間帯になる。
気を引き締めろ」
――ジャキン、と。
規律のとれた無機質な音が、フロアに響いたのだった。
/////
仮面ライダーキックホッパー……
私を、助けて――
逃したか――
こいつらは――
説明している暇はありません。 じっとしていて――
そうは、させん――
次回『決意の麻婆豆腐』

スポンサーサイト