2011年09月01日 20:16
582 :番外編orz ◆LFImFQtWF6 [saga]:2011/05/16(月) 18:33:49.11 ID:DUHFG03a0
『1日目』
「リイン曹長!!」
「はぃ?」
なんでしょうか。
「上条様から差し入れとのことです」
え?
当麻くん?
「今どこに?」
「これを渡したらさっさと居なくなってしまいました」
そう言って渡されたのは、小さい私専用のカップに入ったお茶。
「では」
「どうもです」
のどが渇いてた私はそれを一気に飲み、仕事に戻る。
……この文章は訂正はありませんね。
……これは。
「18番のプリント訂正あるので、来てくださーい」
「はい!!」
私がやっているのは、文章作成の確認で、
訂正があれば呼んで指摘する。
地味だけれど意外と面倒な仕事。
「あの、どこが……」
「えっと……あれ?」
「リイン曹長?」
「ちょ、ちょっひょまってくらはい……」
ら、らめら……頭がぐわんぐわんしゅる……。
し、仕事を終えたら、や、やしゅまないと……。
「リイン曹長? 大丈夫ですか?」
「へ、平気でしゅ……3行目ぇっ、あっ……3行目から5行目まで……ていせっいです」
「は、はぁ。了解しました。本当に大丈夫ですか?」
……んっ?!
「はぁっ……はぁっ……」
「リイン曹長?」
「ぐ、具合が悪いので、へ、部屋に戻ります……」
___________
______
__
部屋に戻ったけど……はやてちゃん居なくて良かった。
「んっ……はぁっはぁっ」
なんか変な感じ……。
体が熱いというか……。
それに……。
服を脱ぐと、下半身がびしょびしょに濡れ、下着はおろか、スカートまで洗ったように濡れていた。
「な、なんでこんにゃ……トイレには、行ってたはっぁんずなのに……」
しかも……。
「ひゃぅっ……下着がすれるだけで、変な刺激が……」
「なんや? リインおったん?」
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁ?!」
「な、なんなん?!」
「は、はやてちゃん。いつの間に?」
聞かれた?!
「ついさっき」
良かった……。
……?
「ちょっと、シャワー浴びてくるです」
「なら私も……」
「だ、駄目です!!」
「そ、そっか……」
私は急いでお風呂場へと逃げ込む。
……ごめんなさいはやてちゃん。
でも、今の私……なんか変なんです。
なんて言えば良いか。
少し……ふわふわな気分というか……。
なんで?
なんで……こんな。
シャワーが体に当たるだけで、変な刺激が全身を襲い、私は途中で気を失ってしまった。
『2日目』
「……あれ?」
私が目を覚ますと、医務室だった。
聞くと、私は入浴中に倒れてしまったらしい。
あの感覚。
あれはまるで……。
「リイン。もう平気なん?」
「はやてちゃん?」
「無理はあかんよ。入浴中に倒れるなんて」
……えっと。
「ごめんなさい」
「ええよ。リインが無事何やし」
はやてちゃんはそう言って微笑み、仕事へと向かった。
私も仕事……。
私は昨日中断してしまった仕事へと戻る。
「……」
昨日の変な感覚はまだ抜けていない。
まだ、下腹部がじんじんするし、熱っぽい。
でも、仕事を終らせなければいけない。
「あっ、リイン曹長。お体の方は?」
「平気です。仕事に戻りますね」
「はい。お願いします」
……。
33番までは訂正なし……。
あと22枚。
「リイン曹長。お茶です」
「ありがとうですぅ」
お茶を少し飲み、机に置く。
昨日で終えてるはずの仕事だから休んでられないからなぁ。
んっ……。
はぁっ……。
ま、また?!
熱い……。
仕事中なのに……。
体が熱くて我慢できずにお茶を飲み干す。
けど……飲んでも冷えるどころか、症状は悪化するだけ。
「……あぅ」
汗なのか、昨日みたいな良く解らないものなのか。
私の全身はびしょびしょに塗れ、まるでお風呂上りの状態になっていた。
残りの確認作業を早急に終えて、部屋を出る。
呼吸が荒く、焦点も中々定まらない。
視界がぼやけ、壁にぶつかる。
「はぁっはぁっ……せめて、部屋に戻らないと……」
「あれ? リイン。大丈夫?!」
「だ、だれ……でひゅか?」
声だけで識別できず、焦点が定まらない私は顔も見えない。
「フェイトだよ。リイン。大丈夫? いま――」
あっ……やぁっ―――
フェイトさんの手が私を包んだ瞬間、
私は声にならない叫びを上げて、気を失った。
____________
_________
___
「んっ……?」
「あっ、起きた? 大丈夫?」
えっと……。
あっ……。
「ご、ごめんなさい!!」
「え?」
私が謝ったことに、フェイトさんが驚く。
「私、その……体がなんかおかしくて……漏らしてしまったというか……その」
「ねぇ、リイン。あれは尋常じゃないよ。なにがあったの?」
「わからないんです。お茶を飲んだら、急に……あぁ!!」
そうだ。そうじゃないですか。
昨日もお茶を飲んだら変な気分になって……。
「リインのお茶に変な薬でも入ってたのかな?」
「はいです。可能性というか。それ以外ないです」
フェイトさんは、少し悩んだ末に私を見つめた。
「リインは体がおかしい時、どんな感覚だった?」
「え?」
「体が、疼くだとか、無性に……下半身が気になるだとか」
フェイトさんが気恥ずかしそうに言う。確かに、そんな感覚だった。
私が頷くと、フェイトさんは神妙な面持ちで、口を開いた。
「お茶に入れられてたのは、媚薬だね」
「媚薬?」
え?
媚薬?
え?
聞いたことはあるけど……。
「それって、あの、そのぉ……アレなことに使う……?」
私の言葉にフェイトさんが頷く。
その時に、当麻くんが来た。
「ん。リイン起きたのか」
「あっえ? なんで?」
「いやぁ、フェイトから聞いて驚いたよ。突然、「リインが気絶しちゃった……どうしよう?!」って電話が来てさ」
あぁ、そっか。
私、気絶したんですね。
「ごめんなさい、心配かけてしまって」
「いや、良いよ」
「あっ、当麻。私、仕事戻らないといけないから。お願いできる? はやても少ししたら戻れるらしいから」
「了解」
フェイトさんはそのまま退出して行った。
「リイン」
「はぃ?」
「悪かった」
「へ?」
「リインのお茶。あれは、媚薬茶なんだ」
媚薬茶?
媚薬?
え?
「な、なんでですかぁ?!」
「麦野。お前麦野に魔法かけて帰ったろ」
あっ。
そういえば……。
「めちゃくちゃぶち切れててさ。で、処罰が媚薬を飲ませて放置。ってことでさ」
「わ、私……その……」
「まさか、ここまで強力なやつだとは思わなかった。ごめん」
「い、いえ。私が元々、魔法をかけたままにしたのがいけないので、自業自得です」
……物凄く恥かしかったけど。
「本当は、1週間やらないといけないんだけど、止めとく」
え゙? 1週間?
「あははは、そんなにやられたら私壊れちゃいます」
さすがに、あのむず痒い感覚。
フェイトさんに教えられてなんなのか気づいちゃいましたし……。
「あの。当麻くん」
「ん?」
「私、当麻くんが好きです」
「へっ?!」
「って、媚薬の力で言わせるのが本音だったんですよねぇ?」
「ちげぇよ。そんなことしない。俺にはフェイトがいるから」
「……そう。ですよね」
「ああ」
「もう、戻って良いですよ? はやてちゃんがもうすぐだと思いますし」
思わず、頭が下に下がっていき、俯いてしまう。
「平気なら戻るけど……」
「……平気です」
俯いたまま、答える。
笑え、笑え、笑え。
こんなんじゃ平気じゃないって言ってるようなものなのです。
「――だから、家にもどっていいですよ?」
私は満面の笑みで答える。
しっかりと、当麻くんの顔を見て。
「そっか。飲み物は普通に飲んで良いからな。もう混ぜたりしないから」
「はいです。では、お幸せに」
「ありがと。じゃぁな」
私はその扉が閉まるまで、笑っていた。
閉まっても、暫くは笑顔のままだった。
「――リイン。帰ったよー。体調は……?」
はやてちゃんの手が、私の頬を撫でた。
暖かい……。
「はやてちゃん。私、私……」
「何も言わんでええよ。全てわかっとる。だから、泣いてええ。笑顔で見送れたんなら凄いことや。
今は私とリインしかおらんから、泣いても大丈夫やよ?」
私は、はやてちゃんに優しく包まれたまま、おお泣きした。
子供のように、泣きじゃくった。
――好きだった。今も、好き。
ただ、私のその想いは伝えられることなく、胸の奥へと隠されていった。
