2011年11月25日 19:44
まどか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇
371 : ◆ySV3bQLdI. [sage saga]:2011/08/07(日) 23:57:53.66 ID:ASp9P10ho
――いったい何なの、あれは……。
ほむらが心中で呟く。口にこそ出さなかったが、彼女も黄金の狼の姿に圧倒されていた。
鋼牙には何かあると思っていたが、予想は裏切られた。いや、大きく上を行っていた。
鋼牙とすれ違った後、ほむらは一も二もなくまどかの手を引いて走っていた。
鋼牙の去った方向、即ち自分たちが来た道を。
この機に乗じて、まどかの契約をうやむやにする。
それもあるが、彼の行動が気になったのが一番の理由。
隣のまどかを見ると、彼女は息を切らしながらも、素直に目を輝かせていた。
黄金の鎧もさることながら、さやかの命が救われたことが嬉しいのだろう。
そうだ、鋼牙は疾風のように現れて救ってしまった。自分が救えないと見捨てた彼女を。
そんなほむらが鋼牙に抱いた感情は、期待と苛立ちが入り混じった妙な気持ちだった。
もう誰にも頼らないと決めた。独りでも、彼女を助けると誓った。
その為に様々なものを犠牲にしてきた。今日も、二人の知り合いを切り捨てたばかりだ。
なのに彼は唐突に現れて、すべてを救おうとしている。
いくら彼がホラーとの戦いを専門とする戦士だとしても、自分が苦渋の末に選んだものを、彼は丸ごと手に入れられるのだ。
それが何となく不満で。
しかし、助けてほしい、身を委ねてしまいたい自分がいるのもまた事実で。
そもそも、そんなふうに考えてしまう自分も嫌だった。
この気持ちは何だろう。
嫉妬。或いは羨望。どれでもあり、どれでもない。
ほむらの葛藤など無関係に、黄金騎士は剣を抜き放つ。
鎧が金なら、柄も鞘も金。鍔もなく、細身で見るからに地味だった剣が、豪華な長剣に変化している。
三日月形に反り返った鍔。柄の中心には赤く三角形の紋章。
剣身は厚く幅広になり、波打つような紋様が施されている。
美術館に飾られていても不思議でないほど見事な芸術だった。
しかし勇ましく剣を構えるガロに、ほむらは言い知れぬ胸騒ぎを覚える。
誰もが魅せられ、畏怖する黄金の光は、何人たりとも近付くことを許さず、触れた途端に焼き尽くされそうな――。
頼もしく思うと同時に、強過ぎる光で己の姿まで掻き消されるのではないかという、漠然とした不安。
負けじと思えば思うほど、心の抵抗は頑なになってしまう。
光が強ければ強いほど、影が濃くなっていくように。
――影……そう、彼が光だとすれば、私はきっと影。だから闇に打ち勝てない。
彼に助力を願えば、何かが変わるかもしれない。でも、彼に期待して、またさっきみたいになったら……。
助けられることばかり考えて後で後悔するくらいなら……。
それならいっそ一人の方がまし。少なくとも、これ以上弱くなりはしないのだから――
答えの出ない問いと感情を持て余しながら、ほむらはガロを目で追う。
身勝手な解釈と知りつつも、眩い黄金の輝きは、持たざる者の苦悩を遥か高みから見下ろしているように思えてならなかった。
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371 : ◆ySV3bQLdI. [sage saga]:2011/08/07(日) 23:57:53.66 ID:ASp9P10ho
――いったい何なの、あれは……。
ほむらが心中で呟く。口にこそ出さなかったが、彼女も黄金の狼の姿に圧倒されていた。
鋼牙には何かあると思っていたが、予想は裏切られた。いや、大きく上を行っていた。
鋼牙とすれ違った後、ほむらは一も二もなくまどかの手を引いて走っていた。
鋼牙の去った方向、即ち自分たちが来た道を。
この機に乗じて、まどかの契約をうやむやにする。
それもあるが、彼の行動が気になったのが一番の理由。
隣のまどかを見ると、彼女は息を切らしながらも、素直に目を輝かせていた。
黄金の鎧もさることながら、さやかの命が救われたことが嬉しいのだろう。
そうだ、鋼牙は疾風のように現れて救ってしまった。自分が救えないと見捨てた彼女を。
そんなほむらが鋼牙に抱いた感情は、期待と苛立ちが入り混じった妙な気持ちだった。
もう誰にも頼らないと決めた。独りでも、彼女を助けると誓った。
その為に様々なものを犠牲にしてきた。今日も、二人の知り合いを切り捨てたばかりだ。
なのに彼は唐突に現れて、すべてを救おうとしている。
いくら彼がホラーとの戦いを専門とする戦士だとしても、自分が苦渋の末に選んだものを、彼は丸ごと手に入れられるのだ。
それが何となく不満で。
しかし、助けてほしい、身を委ねてしまいたい自分がいるのもまた事実で。
そもそも、そんなふうに考えてしまう自分も嫌だった。
この気持ちは何だろう。
嫉妬。或いは羨望。どれでもあり、どれでもない。
ほむらの葛藤など無関係に、黄金騎士は剣を抜き放つ。
鎧が金なら、柄も鞘も金。鍔もなく、細身で見るからに地味だった剣が、豪華な長剣に変化している。
三日月形に反り返った鍔。柄の中心には赤く三角形の紋章。
剣身は厚く幅広になり、波打つような紋様が施されている。
美術館に飾られていても不思議でないほど見事な芸術だった。
しかし勇ましく剣を構えるガロに、ほむらは言い知れぬ胸騒ぎを覚える。
誰もが魅せられ、畏怖する黄金の光は、何人たりとも近付くことを許さず、触れた途端に焼き尽くされそうな――。
頼もしく思うと同時に、強過ぎる光で己の姿まで掻き消されるのではないかという、漠然とした不安。
負けじと思えば思うほど、心の抵抗は頑なになってしまう。
光が強ければ強いほど、影が濃くなっていくように。
――影……そう、彼が光だとすれば、私はきっと影。だから闇に打ち勝てない。
彼に助力を願えば、何かが変わるかもしれない。でも、彼に期待して、またさっきみたいになったら……。
助けられることばかり考えて後で後悔するくらいなら……。
それならいっそ一人の方がまし。少なくとも、これ以上弱くなりはしないのだから――
答えの出ない問いと感情を持て余しながら、ほむらはガロを目で追う。
身勝手な解釈と知りつつも、眩い黄金の輝きは、持たざる者の苦悩を遥か高みから見下ろしているように思えてならなかった。

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