水銀燈「ギャンブルぅ?」新たな出会い編etc1 :マリオネット ◆f0b8iS9HyE [ポケ板orVIPからきますた]:2009/06/22(月) 09:46:47.50 ID:egN8JiQ0前回までのあらすじ
アカギに基本的なことを教えてもらい麻雀を大分覚えた翠星石
カイジの元に水銀燈、アカギの元に翠星石
三体目は誰の手に・・・?
前スレ
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1245480800/l50ヘタレですが頑張ります
2 :マリオネット ◆f0b8iS9HyE [ポケ板orVIPからきますた]:2009/06/22(月) 09:49:16.15 ID:egN8JiQ0【子供の面倒見に定評のある零】
もうじき四月も終わりである
水銀燈の食い意地には困ったものである
オマケに食い方がこれまた凄い
筆舌に尽くしがたいが強いて言うなら《半端無い》
そう、ダディとでもいうべきだろうか
それに最近は凄く機嫌が悪いようだ
カイジの帰りが遅いからというのが理由らしい
部活や委員会に興味がなく帰宅部だったカイジ
しかし零とアカギに誘われ図書委員になったのだ
断る理由も特にないカイジは誘われるがままに入ったのである
「(意外と楽しいんだな図書委員って、あの二人と駄弁ってるだけでいいんだし)」
普段の生活態度からは似つかわしくない程に目を輝かせてTVを凝視する水銀燈
これを刮目というのだろうか
「わかったぞ・・・犯人は・・・」
いやらしく舌を出している探偵犬が犯人を特定する
その時後ろに怪しい影
これを見て水銀燈がソファから立ち上がる
「後ろ!後ろよぉ“くんくん”!」
探偵犬の名前はくんくんというらしい
くんくんという探偵犬が主人公の人形劇にはまっているらしい
人形が人形劇を見るというのもいかがなものか
それを言えば人間が人間の出ているドラマを見るのも・・・いや、それとこれとは別である
しかしこんな無邪気な水銀燈は見てて和む
この水銀燈を盗撮して翠星石に売りつけてやろうか
脅し用として高く買い取ってくれそうだ
後ろから近づいてい来る影に気がついたくんくんを見て歓喜する水銀燈
「私の声が届いたのね、くんくん!」
このアホはほっておいてさっさと学校に行こう
カイジはそう思いためいきをつく
しかし何故こんな時間帯に放送時間が変わったのだろうか
朝から水銀燈が五月蝿くてかなわない
しかし水銀燈にTVを見るなというわけにもいかない
娯楽は人生(人形だけど)の一興とも言える
それを奪う権利など自分にはない
結局のところ楽しそうな水銀燈を愛でるしかないのだ
「行ってくる」
カイジはそういって靴を履いた
今までなら見送ってくれたのに今じゃスルー
華麗にスルー・・・!
それはくんくんがやっているからというだけではない
毎週木曜日にやっているわけだが木曜以外でも見送ってくれないのだ
カイジの帰りが遅いというのがそんなにもきにくわないのだろうか
それだけ好かれているのだろうか
カイジは少しさみしそうに家をでる
「しかしあの犬の名前今日始めて知ったぞ、舌なんか出してやらしい犬だよ」
わいわいとにぎわう教室に一人で入るというのも何だかきまずい気分である
これからはもう少し早く登校したほうがいいのだろうか
いや、そんな杞憂のために貴重な朝の怠惰タイムを無駄にできない
だが最近朝は水銀燈といるのはきまずいから早く家をでるのも悪くない
そんな今日の夕飯は何にしようか等と同レベルのくだらない事を考えていたら同級生の佐原が話し掛けてくる
「カイジさん、おはよう」
さん付けはやめろって何度言えば分かる
しかしお前学校に来るなら黒髪に染めてこいよ
お前みたいな輩がいると風紀が乱れる
カイジは冗談交じりに指摘してやる
しかし佐原は更に冗談を重ねる
気の抜けるような声でカイジの落ち度を口にする
「それをいったらカイジさんの長髪はいかがなものですかねぇ」
自称風紀委員の俺に口答えするかこのイソフラボンめ
金髪より絶対マシだと俺は思うが
休んでた時にノートを見せてもらったしあんまり文句を言うつもりはない
学校で殴り合いをした俺が風紀云々言うのもアレだしまあここは見逃してやろう
だが俺は後輩を守るために喧嘩したんだからきっと無罪である
寧ろ半殺しにしていたアカギの方が・・・
それはそうとこの現象はどうにかならないものだろうか
ワイワイにぎわう教室のドアを開けるとやはり何人かがこちらを見てくる
こっち見んなと言ってやりたい気分だ
カイジは視線を華麗にスルーして席につく
「本を読むにしちゃ中途半端な時間だな・・・寝よ・・・」
数分で眠れる道理がないがとりあえず机に顔を伏せる
数分で本を読むと中途半端なところで終わってしまいそうで怖い
いや別に怖くはないが中途半端というのもアレである
中途半端はもっとも忌嫌うべきものである
学校についた早々さっさと家に帰りたいという衝動に駆られるカイジ
この衝動に駆られている以上上の空になるのは必然的といえる
午前の授業はボォーっとしている内に終わった
運悪く当てられた時だけ我に返りタイムラグを発生させて答えるという嫌味な事をやってのける
ノートだけはちゃんと写しているので休み時間にそれを頭に入れるという偉業をこなす
そんな面倒なことをするぐらいならば授業をちゃんと聞いていればいいのに
丹精こめて作った弁当を持ってカイジは図書室に行く
図書室で食事というのもいかがなものだろうか
しかしこれは致し方なかった
「佐原は食いながら喋ってくるから鬱陶しいしな・・・一人で食うか」
図書室に行くとそこには既に零とアカギが居た
先客がいるとは予想外だったがこの二人なら別にいいだろう
図書室で弁当を食う習慣でもあるのだろうか
入ってきたカイジを見て零は軽く会釈する
アカギは相変わらず不気味である
二人で食事をとっている間にカイジは入っていく
「一緒していいか?」
零は勿論ですと、アカギは無言で返す
アカギの無=OKと解釈してカイジは弁当を広げる
どうやらこの二人も食べ始めたところらしい
弁当の残量がそれを物語っている
カイジはあたりをキョロキョロと見回す
「しかし俺達以外誰もいないな」
三日後には忘れてそうな情報を交換しあう三人
いや、アカギは適当に聞き流していただけのようだったが
もう少し打ち解けてくれてもいいような気がするが
元々の量が少ない零は逸早く食い終わる
配分をミスった白ご飯を処理しているカイジを横目に分厚いハードカバーの本を読みふけている零
長門かコイツは・・・と突っ込みたくなったが自重する
その時ヒラッと紙が零の読んでいた本の隙間から落ちる
貸出表にしては少し・・・いや、大分大きいような気がする
この時カイジは感じる
戦慄なるものを・・・!
ざわ・・・ざわ・・・
「(な、何だ?この筆舌に尽くしがたいデジャブ感は・・・!)」
零は怪訝そうに紙を拾う
紙には確かにこう書いてあった
《まいてほしいのー》
ざわ・・・ざわ・・・
何だ?この巻く一択の紙は
アカギとカイジは分かっていた
巻けばローゼンメイデンが零の元にやってくると
というかアカギにしろカイジにしろ巻いてないのに人形がきた
厚かましい人形がカイジの元に
性悪な人形がアカギの元に
それならば零の元に来るのは?
今のところいい性格はない
なら次は傲慢な人形か?それとも狂気に犯された・・・
零は紙を手に首をかしげる
「何ですかねコレ・・・」
本当に何でしょうかねとカイジは相槌を打つ
少し様子がおかしいカイジに零は少し気を取られる
隠しとおせそうにないと感じたカイジは弁当箱の大半を占めている白ご飯を口の中にさっさと放り込む
ポンポンと零の肩を叩いてためいきをつく
不可解な行動を取るカイジに対して零は少し混乱する
カイジは失恋した人を慰めるような声で零に言う
「災厄と狂気が同時に押し寄せてくるだろうけど早まるなよ」
突然理解しがたいことを言い出すカイジに零は呆気にとられる
どう反応していいかわからないようだ
アカギは相変わらずこの状況でも落ち着いている
コイツが挙動不審なところなんて永劫見れそうに無い
拳銃を額に突きつけられていても冷静に相手を煽りそうだ
カイジは突然真剣な声になる
「高級そうな鞄を発見したら戦争だと思え」
零はますます混乱する
カイジ先輩はこんなわけの分からない人だったか・・・?
何が何やらさっぱりである
アカギは食事をする手を止める
この時長く黙っていたアカギが口を開く
「戦争は自然に起きるんじゃない、きっかけがある」
それだけいうとまた食事に戻る
言っていることはカイジと大して変わらない様な気もする
アカギがわかりにくい奴だという事はわかっていたので別にコレは不思議に思わない
しかしカイジは何を言いたいのか
それがさっぱりわからない零
これはドッキリか何かだろうか
零は苦笑いをして誤魔化す
「い、悪戯かな、良く分からないなこの紙に書いてある意味が、ハハ」
この表情と声は反応に困った人間のなせるものである
カイジは、またためいきをつく
抑えようにもコレでは抑えれない
こんな非日常と背中合わせではためいきの一つや二つでてしまうものである
カイジはチラッとアカギを見る
「(まあ例外はいるがな・・・)」
カイジは零のもっていた紙を取り上げる
零は抵抗などは一切しなかった
それにしても・・・
それにしてもコレは・・・
「それにしても汚い字だな・・・」
カイジは汚い字のかいた紙を零に返す
どうせならそのまま処分してくれたら有難かったと心の中でつぶやく
そんな零の視線をどう受け取ったのかカイジは親指でゴミ箱を指す
ヒッチハイクではない
やはり捨てた方がいいというのは万国共通の考えらしい
勝手に捨てていいのだろうかと思いつつも零はゴミ箱に紙を捨てる
ぐしゃぐしゃにしないところが零らしい
「さて・・・蛇(じゃ)が出るか蛇(へび)が出るか・・・」
カイジはあたりを見回す
突込み検定1級の腕の持ち主の零は平坦な声で、尚且つさりげなく突っ込みを入れる
「どっちも蛇じゃないですか」
めざといアカギは逸早く例の物を発見する
レーダーでもついているんじゃないだろうか
例の物は学習用の机の裏側にあった
学習用の机と普通の机の違いは一つ
しきりがあることである
しきりがあることによって集中力が増す
ただし校長お手製の物なのでよく外れたりして静かな図書室に騒音が響き渡る
怪我人が未だにいないのが不思議なくらいである
しかし、しきりの後ろにあった鞄を良く発見できたものである
くまなく探したわけではない
ただ一直線にアカギは学習机に向かって行っただけである
元々知っていたかのように・・・!
無論そんな事はあるはずがない
これはアカギの異端の感性・・・!
零は不思議そうな顔で鞄を見つめる
「ヤフオクに出したら高く売れそうだ・・・」
この三人はヤフオクのことしか頭にないのではないだろうか
意外にも現金な零に苦笑いをするカイジ
カイジは掌を上向けて鞄を指す
「これはいわゆるパンドラの箱・・・何とかの猫ともいえる・・・さあ開示してみろ」
カイジが開示という言葉を使うと何だか受け狙いに聞こえて仕方ない
零はドッキリか何かかと思いながら鞄を開ける
そこにいたのは金髪の童顔の人形だ
なるほど、字が汚いわけだ・・・とカイジは納得をする
零はポカンと口を開ける
カイジはそんな零の顔を見て言ってやる
「アホの子みたいな顔してるぞ」
カイジは少し躊躇してから携帯電話を取り出す
ボタンを押すカイジを黙って見つめる二人
こっち見んなと思いながらカイジは電話を耳に当てる
何度かコールし連絡先の人が電話に出る
「もしもしぃ~どちらさまぁ?」
相変わらず猫撫で声だなとカイジは冷たい声でいう
それにしても妙にドキドキするのは何故だろうか
冷たい声で誰かわかったらしく水銀燈は不機嫌そうになる
「・・・どうしたのよ、この淫乱男」
あ・・・?
聞き間違いかな?
今淫乱男とか何とか・・・
「あら?耳までジャンクになったのかしら?このすけこまし」
いかん・・・
何か誤解されているようだ
最近冷たいのと何か関係でもあるのだろうか
水銀燈には常に優しく接してるつもりなのだが
「わからないな、何の事だかさっぱり」
この反応の仕方はまずかったと後悔するカイジ
まるでとぼけているようではないか
「まだしらをきるのねぇ」
しらも何も・・・
一体何故何をどう誤解しているのだろうか
すけこましでもなければ淫乱でもない
ありえぬ誤解をされているようだ
痴話喧嘩を後輩に聞かせるのもアレなので少し席を外してもらうことにした
「貴方の帰りが遅い理由はわかってるわ」
図書委員会のせいだが・・・話したっけ?
そういうと水銀燈はカイジに怒声をあびせる
「嘘おっしゃい!女の所に行ってるのはわかってるわよぉ!」
・・・?
あ・・・?
ん・・・?
・・・女?
何をおっしゃいますか貴女は
「くんくんでやってたわよ!帰りの遅い男の9割は女のところに言ってるってね」
駄目だコイツ・・・
早く何とかしないと・・・
胃を治すには胃薬
風邪を治すには風邪薬
虫刺されにはムヒ
じゃあ馬鹿を治すには何が必要なのだろうか
とりあえずPCやTVを取り上げるべきだろうか
「図星なんでしょぉ?謝るなら許してやっても・・・」
「アホか」
思わず声が裏返ってしまった
適当に話をあわせるという方法もあるがそんなのはお茶を濁すに過ぎない
一時凌ぎは一生後悔する
「あら?あくまでもしらをきるつもりぃ?くんくんを毎週見てる私を誤魔化せるとでも?」
女のところに行っていない1割の男と思っておいてくれ
とりあえずその9割とかなんとかっていうわけのわからん鉄板は否定しないでおこう
水銀燈がみじめになってしまう
鞄に入っているドールの事を聞こうとしてたのに・・・
気付けば痴話喧嘩じみた会話に・・・
その時不意に何かがとびついてくる
思わず椅子から落ちそうになったがカイジはもちこらえる
とびついてきたものはカイジの首にまとわりついている
「カイジ登りなのー」
まさしく幼児の声だ
もう何もかも予想していた
巻いたな・・・
おそらくはアカギがネジを巻くように催したんだろうな
しかし名前を知っているということはアカギが意図的に・・・
何がカイジ登りだよ・・・
しかしこのタイミングでこんな事をされると・・・
「あ、貴方今の・・・不倫相手は子供!?このロリコン!」
当惑、驚愕、憤慨の順番で喋る水銀燈
何とも言えない三拍子だ
誰がロリコンだ、誰が
「って・・・不倫って・・・お前とは付き合っても無いのに」
首にまとわりついているドールはカイジの顔の横に自分の顔を持ってくる
「電話の相手は水銀燈ぅ?」
カイジは頷いて電話を交代する
こんな誤解すぐに解いてやると決意する
そういえばコイツの名前なんていうんだろう
「水銀燈~~~」
ロリドールは水銀燈の名前を嬉しそうに呼ぶ
そうか、仲良しの姉妹なんだなきっと
きっとそうだ、そうに違いない
二人がどんな会話しているのか気になるが今はやるべき事がある
カイジは勉強机でウォーリーを探している二人の頭に同時にげんこつをかます
アカギなら難なくかわせただろうが空気を読んでよけなかったらしい
「何勝手なことしてんだお前等は・・・」
零は微笑しながら謝罪した
しかし人形が動き出したのに平気の平左だなお前
喋るドールに耐性があるのかお前は
「ホラ、一流の人が作った人形は髪が伸びたりするっていうでしょ?だからこういうのもあるかなって・・・」
そうか、お前実はアホなんだな
成績優秀だけどアホなんだな
馬鹿と天才はなんとやらってな
それにしてもどうして俺も混ぜくれないんだ?
「混ぜてくれないって何がですか?」
カイジはウォーリーをさがせを指差す
しかもその指先は的確にウォーリーを指していた・・・!
「ククク・・・もう発見しましたか」
たまたまだよ、たまたま
確率的には非常に薄いパーセンテージだが
そういいながらカイジは話が余計にこじれていないか心配していた
「アイツの名前は?」
「雛苺ですよ」
そんな《ごはんですよ》みたいな言い方するなよ
雛苺ねぇ、まあ水銀燈の方がいい名前だな
何かすかにムッとしてるんだよ零
零は突然真剣な顔になる
何それやめて怖い
「ローゼンメイ・・・」
ペラッ
「さあ次のページ行きましょう」
零飛ばされる
アカギ無法のスキップ・・・!
コイツあえて言葉を遮ったんじゃないか?
ありうる・・・この男なら
ん・・・
難しいなコレは・・・
カイジは直感する・・・
このあたりにいると・・・!
ウォーリーはこの建物の中にいると・・・!
アカギを出し抜ける・・・!
カイジは本を凝視する
カイジの直感は的中
零やアカギよりも先に発見する
「いたっ、ここだ」
カイジが指差そうとしたその刹那・・・!
アカギが先にウォーリーを指差す・・・!
出し抜かれる・・・!
紙一重で負ける・・・!
「(コイツ・・・あえて今気付いたフリをしていたに違いない・・・!)」
ざわ・・・ざわ・・・
アカギは発見していたのだ
おそらくはページをめくった瞬間に・・・!
あえて気付かないフリ
何故そんな事がわかるか
カイジが指差そうとするまでアカギは全く違う方向を見ていた・・・!
しかしカイジが指差そうとするのを見るや否やウォーリーを指差す
これはカイジに対する挑発・・・!
ざわ・・・ざわ・・・
「(17歩での仕返しか・・・?)」
奮闘中の彼等とは別に二体のドールは会話をしている
「貴女カイジをどうやってたぶらかしたのよぉ!」
「たぶ・・たぶ・・?」
いまいち話がかみあっていないようだ
それもそうである
目覚めたばかりで面識も大してないカイジと雛苺の関係などあってないものである
水銀燈のありえぬ誤解・・・!
どうやらこの誤解簡単にはとけそうにない
その時水銀燈はとんでもないことを宣言しだす
「もう怒ったわぁ、ジャンクにしてあげるわ、待ってなさぁい今すぐ行ってやるから~」
宣戦布告をしてから水銀燈はすぐに家を飛び出す
雛苺は笑顔でカイジ達のもとへ行く
「あのねあのね、水銀燈が遊びにくるって~」
ざわ・・・ざわ・・・
あ・・・?
「ジャンクとかなんとかいってたのー」
ざわ・・・ざわ・・・
さてと・・・
辞世の句でも用意するかな、今からでも遅くは・・・
パリーン
カイジはこの時悟る
遅かった・・・
用意する前にジャンクにされる運命にあるらしい
「雛苺~~~!」
窓から大胆不敵にも入ってきた水銀燈は雛苺に歩み寄る
おま・・・なにするだー!
弁償するのは俺なんだぞ・・・!
第一飛んできたとはいえこの距離をこの短時間で飛んでくるってお前・・・
心の中で色々言ってる内に水銀燈と雛苺の距離は着々と縮まっていく
ざわ・・・ざわ・・・
「落ち着け水銀燈、素数を数えて落ち着け!」
カイジは雛苺の前に立って水銀燈をなだめる
この行動で水銀燈は確信する
雛苺とカイジはできていると
カイジはロリコンだと
水銀燈は翼をカイジの骨格並に鋭利にしてカイジの喉元につきつける
「おっ、おっ、おっ、おちつけー!」
お前が落ち着けと言いたい
カイジは両手を上げて降参ですという意志を表明する
乳酸菌取って落ち着け、な?
そもそも争いは何も生み出さないんだ
戦争の後に残るのは絶望・・・憎悪・・・空虚・・・
カイジの言い訳を悪魔アカギが妨害する
「でも戦争で発展する事もありますよ、コンピューターとか典型的な例ですよ」
もうやだコイツ
あの時DQNに撲殺されてれば良かったんだ
恨むぜくんくん&アカギ&雛苺
貴様等のせいで俺の命日が決まってしまった
死ぬ直前に言うセリフで最もカッコイイ物はないかと必死に語彙を探る
人がゴミのようだ・・・いや何か違う
カイジ死すとも自由は死せず・・・いや、俺は自由のために戦ってたわけじゃないし
俺が死んでも代わりは・・・何の代わりだよ
水銀燈は悪戯っぽく笑う
「弁明があるなら言ってみなさぁい、一応聞いてあげる」
どうする・・・?
なんていえば一番刺激を与えずにこいつの誤解を解くことができる?
顔面を膝蹴りして気絶させるという方法もあるがそれはリスキーだ
「まずえっと・・・雛苺だっけ?コイツが目覚めたのはついさっきだ」
そういって零とアカギと雛苺を順番に見る
零と雛苺はうんうんと頷く
アカギ・・・!
頷け・・・アホ・・・馬鹿・・・カス・・・!
カイジは両手をひろげて一気に水銀燈の誤解を氷解させにかかった
「そもそも俺はロコン・・・じゃなくてロリコンじゃない・・・」
こういう受け攻めは押しが命・・・!
相手に発言権を与えずにどんどん言ってやればいい
そうすりゃ押さえれるはず・・・!
「第一お前がいるのにこんな餓鬼になびくわけないだろ」
「ヒナは餓鬼じゃないのー」
はいはい・・・今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょ
それはそうと決まったんじゃないか?
今までの経験からいうとこれは成功のはず
水銀燈はこういうセリフに弱いという事は自明の理ともいえる
しかし今回はそう簡単にいかなかった
裏目に出る・・・!
水銀燈はカイジに向けて羽を飛ばす
ピュッ
カイジの左眼の下を羽が通過し頬を切る
タラタラと頬を伝って顎を伝って床に血が落ちる
水銀燈の顔は鬼のような形相だった
「この期に及んでそんな事を言うのねぇ、このお馬鹿さぁん」
水銀燈はカイジに歩み寄る
カイジは床に落ちる血を見て戦慄を感じる
殺される・・・?
本当に死ぬのか・・・?
こんなところで・・・?
「浮気している男に限ってそういうことを言うって・・・」
くんくんが言ってたってか?
「惜しいわねぇ、くんくんに出てくるキャラが言ってたのよぉ」
アニメの見すぎだアホ
カイジはポケットからハンカチを取り出して血を拭う
「全く・・・傷が残るかもしれないぞコレ・・・」
カイジはふぅっとため息をつく
まだ死ぬ事は決定していない
上手く持ち直せば何とかなるはず
それにしても小さいなコイツ
水銀燈は思い切り羽を横振りする
カイジは反射的にしりもちをついてかわす
水銀燈はフフフと笑いしりもちをついているカイジを見下ろす
「心配しなくても傷が残ろうが残らまいが殺せば関係ないわぁ」
何々?コイツ俺を殺すの?
さてと・・・
どうするかな
臭い言葉も駄目だし、どういえばいいのか
半ば死ぬ覚悟で行くしかないのか
どうしようか考えいていると零が助け舟を出す
「カイジさんの言っている事は本当だ」
零がそういうと水銀燈は羽を零に向けて飛ばす
カイジが気づいた時には勝手に体が動いていた
零を庇って自分が羽を受ける
パサッ
カイジの長い髪が少し切れてしまう
傷こそなかったものの髪の一部を失う
この時空気が変わる
カイジは亡霊のような足取りで水銀燈に歩み寄る
突然の変貌に水銀燈はビクッとするがすぐに羽を構える
「な,何よぉ文句あるの?」
寧ろ文句しかないというのが本音だ
水銀燈が鋭利な羽でカイジを突き刺そうとする
先ほどの攻撃と重ね合わしてみると本気で殺そうとしているようだ
本心は殺したくないのだろう
しかし怒りというか憤りで感情がコントロールできなくなっているのだ
迫り来る鋭利な羽
「カ、カイジさん!」
零は大声でカイジに呼びかける
ガシッ
カイジは真顔で羽を素手で掴む
ダラダラと手から血が流れる
そのまま前進するカイジ
水銀燈は羽で体を覆って丸くなる
「ご、ごめんなさぁい!」
真顔で亡霊のような足取りのカイジに水銀燈は戦慄以上の物を感じ取っていた
「お前よくも髪を・・・」
カイジの息を殺しきった声に水銀燈はビクビクする
ポタポタと頬から手から血を流すカイジ
そんな事微塵にも気にせずに冷たい目で水銀燈の前に立ちはだかる
どうやら髪にはただならぬ愛着がわいていたらしい
カイジは血が出ていないほうの手で水銀燈の頭を撫でてやる
水銀燈は恐る恐る顔を上げる
カイジは爽快な笑顔を見せる
それだけで水銀燈はすくわれたような気がした
カイジはニコッと笑いながら思い切り手を振る
パチン
カイジは水銀燈の頬を思い切りビンタする
ピンピンピン
水銀燈が唖然としている間に連続でデコピンをかます
「ざけんな!ざけんな!ざけんな!もう少しで死ぬところだっただろうが!」
デコピンを終えると水銀燈は涙目になっていた
頬と額が物凄く赤くなっているのがわかった
涙目でカイジを見つめる水銀燈
カイジは水銀燈の両肩に手を置く
水銀燈はビクッとして体を震わせている
また殴られる・・・と覚悟して目を思い切りつぶる
今度は頭突き・・・?
「どうして俺を信じてくれない?」
意表をつかれる
カイジは優しい声で水銀燈に問いかけきたのだ
頭突きを予想していた水銀燈は呆気にとられる
ピン
隙をついてカイジはもう一発デコピンを入れる
「もう少し俺を信じてくれてもいいだろ、そんなに俺が信用ならないか?」
カイジの声は怒りというよりも悲哀にくれていた
自分を信じてくれなかった水銀燈に対する悲しみ
ふりたくなかった暴力をふるってしまったことに対する悲しみ
そんな悲しみが感じられた
そんな悲しみを感じ取った水銀燈は心が痛む
どうして自分はカイジを信用できなったのか
どうしてカイジを殺しかけてしまったのだろうか
どうしてカイジをこんなに悲しませてしまったのだろうか
自分の行動が全て嘘のように思える
自分は本当にこんな事をしてしまったのだろうか
先ほどの怒りと打って変わって自分に対する怒りがわいてくる
水銀燈は突然泣き崩れる
「うぅ・・・ごめんなさいごめんなさい・・・」
泣きじゃくる水銀燈の頭をカイジは撫でてやる
「そんなに泣くなよ、悪かったのはお前だけじゃないさ」
そういってカイジはアカギを見る
元凶とも言えなくもないお前が何故ウォーリーを読んでいる
バキッ
ウォーリーを取り上げてアカギを思い切り殴る
「…」
アカギは3点リーダで返す
反省しているつもりなのだろうか
カイジは肩をすくめてため息をつく
「やれやれ・・・」
カイジは傷を保健室で治療してもらい午後の授業は普通に参加していた
どうしてこんな怪我をしたのかという質問には黙秘権を行使した
カイジの命令により水銀燈は雛苺の鞄を持って家に帰ることになった
授業がすべて終わりいざ帰ろうと思った時に首根っこを教師につかまれる
「何帰ろうとしている」
そういえば呼び出しくらっていたんだっけな
そりゃあガラス割れてて血塗れになってりゃなぁ
図書室で三人は事情聴取をうけている
三人というのは言うまでもなくカイジ、アカギ、零の三人だ
「だからカラスが入ってきたって言ってるでしょ、一条先生」
もうこの言い訳は何度目だろうか
数える気にもなれない
「ところがどっこいありえません、現実です、これが現実」
この人はこればっかりだ
端から信じようとしていないのがわかる
最初から疑ってかかっているのだ
零は羽を拾い上げて一条に見せつける
「この羽が物語っていますよ、カラスが入ってきたと」
同じ問答を何度も何度も繰り返しているうちに一条が痺れを切らす
盛大にためいきをつく
ためいきは俺の専売特許だと心の中で突っ込むカイジ
「わかったわかった、わかったからカラスの代わりにガラス代をお前等が払え、以上」
そういって一条は図書室を後にする
カラスとガラスをかけたつもりなのだろうか
いや、たまたまだろう
不機嫌なまま帰路につく三人
カイジは別れ際零に言っておく
「明日雛苺を引き取りにきてくれ、俺は水銀燈だけで手がいっぱいだ」
ああ、ハイと零は頷く
雛苺と仲良くしたらまた水銀燈に怒られる
今度は殺されるだろう
不恰好になった髪を惜しみつつ帰宅する
か細い声でカイジは挨拶する
「・・・ただいま」
ガシッ
突然何かがとんでくる
「おかえりなのー」
ああ雛苺だな
顔が見えずとも分かるさ
靴を脱ぐから待ってくれといって雛苺を抱っこする
雛苺を抱っこしたまま部屋に入ると水銀燈が吹雪のような視線を浴びせてくる
戦慄を感じていた時既にカイジは雛苺をおろしていた
凄く不機嫌そうに水銀燈はなげやりに言う
「・・・おかえり」
いくらなんでも不機嫌すぎやしないか?
時計を見るともう5時だった
そろそろ食事の準備をするか
雛苺に何をたべたいか聞いてみる
「うにゅ~がいいのー」
・・・?
ハハハ、参ったな
何言ってるか全くわからないや
何か新しい食べ物だろうか
新発売《海原も認めるうにゅ~》
何で新発売の商品を数百年ぐらい眠っていた奴が知ってんだよ
こういうことは姉妹の水銀燈が良く知ってるだろう
うにゅ~とは何ですか?
「知らないわよ」
ハハハ、参ったな
デコピンを根に持ってるようだ
それとも本当に知らないのか
カイジはしばし長考する
うにゅ~・・・
まずはヒントだ、ヒントがなければ話にならない
うにゅ~とは牛乳か何かだろうか
「うにゅ~ってどんな食べ物だ?」
そういうと雛苺は顎に人指し指をあてて天井を見上げる
これで舌を出したらあのマスコットキャラっぽくなるな
雛苺は満面の笑みで答える
「フワッとしててうにゅ~なのー」
雛苺専用翻訳機でも売ってないかな
英語は結構得意だが雛苺語(略してひないち語)ばっかりは理解できそうにない
どうやらヒントらしいヒントは望めないらしい
わかったことといえばフワッ・・・
何故かアカギを思い浮かべる
いやいや、アカギは食えないだろう
逆に食われそうだし
「甘いものか?」
うんと元気いっぱい頷く雛苺
甘いって事はお菓子か?
うんとまたまた元気良く頷く
俺が聞いてるのは夕食に何を食べたいかと聞いているんだが・・・
「うにゅ~の正体は天才零に暴いてもらおう・・・だから夕食は何がいい?」
「えっとねえっとね、花丸ハンバーグがいいのー」
あ・・・?
聞いた事ないな
誰かのオリジナルか
「どんなのだ?」
コイツの説明なんて大して期待していない
とりあえず聞くだけ聞こう
ノーヒントより幾分か楽だろう
雛苺は分かりにくい説明を繰り広げる
何度も何度も聞き返してようやく理解する
花形の目玉焼きの乗ったハンバーグか
花形なんて作ったことがないな
まあそれはそれとして
一行で説明できるこれを何故説明にここまで時間をかけるのだ?
昨日ミンチ肉を買ってきたのは偶然だろうか
今日の事を予想していたみたいだ
「わかった、でも花丸なんてやったことないから失敗するかもしれないけどいいか?」
雛苺はブーブーとブーイングするがなだめてやる
こりゃ失敗できないなと思いカイジは気合を入れる
「水銀燈、できるまで雛苺と遊んでてくれ」
雛苺のお守りを水銀燈に頼もうとしたが水銀燈はプイッとそっぽをむく
これはこれで可愛いかもしれないが今はそれどころじゃない
「頼むよ」
またもスルー
また殴られたいのだろうか
何すねてんだよ
頼むってば
「五月蝿いわねぇ、何で私が貴方の言う事を聞かなきゃいけないのよ」
なるほどな
そっちがその気なら考えがあるさ
チラッと雛苺を見る
「手伝ってくれるか?雛苺」
手伝うのーといって雛苺はとびついてくる
雛苺は偉いなぁ、どこかの居候とは大違いだ
そういうと水銀燈は立ち上がって抗議をする
「私は居候じゃないわ!家族って行ってくれたじゃないのぉ!」
確かに言いましたね
前回の17歩で確かに言ったとも
水銀燈はもはや居候なんかじゃないと、かけがえのない家族だと
「そうだな、じゃあ家族として手伝ってくれよ」
まんまとひっかかる水銀燈
今はしぶしぶながらも雛苺と遊んでいる
「水銀燈登り~」
大して身長差がないからやめておいたほうがいい
案の定重い重いと嘆いている
首が折れないといいが
「ちょっと~重いわよ~」
水銀燈は笑いながら雛苺を降ろす
何だかんだいって楽しそうではないか
そんな二人を見てカイジは微笑む
明日には雛苺とさようならをしなければいけない
今の内に遊んでおくか、雛苺のためにも自分のためにも
「零に雛苺を渡すのが惜しいぐらいだな」
零なら大事にしてくれるだろうと思いながら調理をする
花丸というのは難しそうで意外と簡単にできた
やはり日頃頑張っているのが出たのだろうか
母親より上手いだけある
というか母親が下手すぎるのだ
何をやっても駄目で偉そうなだけの母親に父親
そんな両親に嫌気がさして自立しているのだ
孤立せよ・・・という感じだ
そういえばアカギは何で家族がいないのだろうか
あっ・・・
カイジは気付いてしまった
恐ろしいことに気付いてしまった
零には家族がいる・・・!
じゃあ雛苺はどうする?
普通の人間が動く人形を受け入れられるのか?
まさか隠して暮らすわけにもいかないだろう
「気味悪がって倒れないといいが・・・母さんは体が弱いらしいし」
それはそうと花丸ハンバーグというのはおいしいのだろうか
ハンバーグはハンバーグだけのままがいいと思うのだが
しかし雛苺が食べたいといっているのだから仕方ない
「水銀燈~雛苺~ちょっと手伝ってくれ」
運ぶのを手伝わせるべく二人を呼ぶ
雛苺は嬉しそうに、水銀燈はしぶしぶ手伝いに来る
しかし水銀燈は先程より何だか楽しそうである
なんだかんだいって仲がいいのではないだろうか
その事を考えるとカイジは胸が痛む
どうして・・・?
どうして仲のいい姉妹で戦わなきゃいけない・・・?
そんな事を考えるカイジ
ボォーっとしていたのだろう
雛苺が顔を覗きこむ
「うゆー?どうしたのー?」
「ん・・・?ああ何でもない」
そういってカイジは微笑む
それを聞いて雛苺は首をかしげる
「じゃあ何でカイジは泣いてるの~?」
ざわ・・・ざわ・・・
どうやら自分でも知らない内に泣いていたらしい
カイジは涙をぬぐって笑顔を見せる
「ハンバーグに入れる玉葱を切ってたら涙が出てきたんだよ、鼻からくるらしいな」
そういってカイジは早足お盆を運ぶ
馬鹿か俺は・・・!
こんな小さな子に心配かけてどうするんだよ
今回はたまたま玉葱をきっていたから言い訳できたがいつもいつもこんな好都合な事はない
「(それにしてもうにゅ~ってなんだろうな・・・甘くてフワッと・・・綿菓子か?)」
食事を終えると二人はまた遊びだした
しかし二人でババ抜きってあまり面白そうには見えないな
まあ水銀燈とやったときはまあまあ楽しめたけど
しかしあの時の罰ゲームは面白かったな
洗濯バサミをつけるたびに涙目になっていた水銀燈
そんな事を考えていたせいかまたボォーっとしてらしく水銀燈と目があう
「・・・?何よぉ」
「ん・・・何でもない」
カイジは立ち上がって食器を運ぶ
駄目だ俺・・・早く何とかしないと
それにしてもガラスの修理費どうしようか
悪いのは水銀燈なんだし俺が全額負担かなこりゃ・・・
「水銀燈、雛苺、もう風呂入っていいぞ」
「カイジも一緒に入るのー」
とんでもないことを言い出す雛苺
思わず飲んでいたコーヒーを吹き出してしまう
水銀燈がいなくてよかったよ、何となく
「俺はいいよ、二人で入って来いよ」
そう言ってカイジは噴出してしまったコーヒーを拭く
このまま仲良くしてればいいのに
アリスゲームなんか馬鹿馬鹿しい
水銀燈が壊されるのも水銀燈に姉妹を壊させるのもゴメンだ
「今のうちに零に確認を取るか・・・」
カイジは零に電話をかける
雛苺を引き取るのを無理だといわれたらどうしようか
自分が雛苺を引き取るのは別に嫌ではない
しかし・・・
巻いたのは零だ、零の元にいってしかるべきだ
『もしもし』
零が電話に出てくる
カイジは少し躊躇してから話始める
雛苺の事を
すると零は意外にも
『任せてくださいよカイジさん、家族も大歓迎ですよ』
大歓迎・・・?
それっておかしくないか?
喋る人形がいる、明日からその人形を居候させてほしい
そんな事を家族にいって家族が納得するだろうか
そもそも理解できるだろうか
『でも何かおかしいんですよ』
家族からしてみれば一番お前がおかしいんだけどな
あえて言わないでおこう
何がおかしいんだ?
『母さんも父さんも俺を見る目が変貌したんです』
それもそうだろう
おそらくは悪い方にだろう
そうなんだろ?
『あれ?何でわかったんですか?』
わからないほうがおかしいだろうな
アレか?何かかわいそうなものを見る目か?それとも申し訳なさそうな目か?
『カイジさんって凄いですね、根拠もなく当てるんですから』
むしろ根拠しかないがな
俺は理で生きてるんだよ
お前一日に何時間勉強してる?
そう聞くと零は少し恥ずかしそうに答える
『ん~・・・恥ずかしい話ですが休みの日はたったの5時間ぐらいしか勉強してません・・・良くても7時間ぐらいです』
なるほどね、納得したよ
そりゃそんな目で見られるよ
親はきっとこう思ってるのさ
勉強ばっかりさせてるからもろくなった精神が変な妄想をさせたと
だから親はさぞ自分達を責めてるだろうな
お前今日は早く寝ろとか言われなかったか?
『え?カイジさんそこまでわかるんですか?』
まあな、貴重な休みに5時間も7時間も勉強してたらそりゃなあ・・・
それで恥ずかしいってお前にとって何時間が普通なんだよ
俺は少し迷ったさ
零に雛苺を渡すかどうか
渡せば零の誤解も解けるであろう
しかし何だか危ない気がしてくる
それはそうと・・・
『零、お前にとって白くてフワッとしててうにゅ~といえばなんだ?』
自分で聞いておいて何をいってんだという感じである
しばらく沈黙が続く
すまん、さっきのは忘れてくれと言おうとしたその時
『苺大福じゃないですか?』
白くてフワッでうにゅ~=苺大福
良くわからんがそうかもしれない
雛苺って名前だから苺が好きなのかもしれない
しかし数百年前に苺大福ってあったのか?
昭和60年ごろに生まれたって聞いたんだがな・・・
まあそれをいったら花丸ハンバーグもアレだし
時系列の矛盾なんて上げていったらキリがないさ、もしかしたら雛苺が前に目覚めたのは数年前かもしれないし
「零、勉強もやりすぎると気が滅入るぞ、たまには遊べよ」
『え・・・でも結構遊んでますよ?』
アホか、5時間勉強してたら遊ぶ時間なんてあるか
というか遊ぶ気力なんてなくなるぞ
コイツと話してたらなんか疲れるな
「まあいい、じゃあな」
ドールが風呂に入る必要があるのかどうか知らないが二人は楽しそうに仲良く入浴していた
「水銀燈の胸うにゅ~みたいなのー」
そういって雛苺は水銀燈にだきついて胸を揉む
水銀燈は痛い痛いといいながら雛苺を離れさせる
「体洗ってあげるからこっちにきなさぁい」
そういって水銀燈は雛苺を椅子に座らせる
椅子が一つしかないので水銀燈は立って洗うしかないがそれは致し方ない
無邪気な雛苺と何だかんだで妹思いの水銀燈
二人の仲を引き裂くのは気が引ける
水銀燈はこの残酷な運命に二つの意味で胸が痛む(雛苺に揉まれた痛み+精神的な物
「(お父様のためにいつかこの子も倒さなくちゃならないのかしら・・・)」
「あ、熱い熱い熱い!」
水銀燈はじたばたと暴れだす
カイジは焦げ臭さに鼻を押さえながらためいきをつく
「腕短いからドライヤーをすると髪こげちゃうんだな、綺麗な髪なのに台無しだぞ」
水銀燈は涙目でドライヤーを投げ捨てる
雛苺が二の舞にならないようにカイジは雛苺を膝の上に乗せて髪をかわかす
何だか水銀燈が涙目ながらも何か他の感情のこもった目で見てるような気がするがおそらく気のせいだろう
雛苺の髪を乾かし終えると水銀燈が歩み寄ってくる
見放すような見下すような声でカイジに言う
「このロリコン駄目人間」
何だろうか、ここら辺が凄く痛い
胸のあたりが凄く痛いんだ
何といえばいいのか
この筆舌に尽くしがたい胸の痛み
先ほどから水銀燈がずっと自分に対して冷たい
話し掛けても「五月蝿いわね、このロリコン」と言ったふうに冷たくあしらわれるのだ
何を言うにしても絶対語尾にロリコンとつけるのだ
どうやら奴の中で俺はロリコン決定らしい
9時になると雛苺は大あくびをする
おやすみなさいといって鞄の中に入っていく
息苦しくはないのだろうか
少し早いが自分も寝ようと思っていたら先ほどまで自分をスルーしていた水銀燈が自分からやってくる
「・・・?」
「ど、どうした?」
カイジは少し困惑する
冷たかった水銀燈が自分から近づいてくるなんて何かおかしい
何だよその目は
何がいいたい、何がしたい
「貴方はとても寂しがりやね」
あ・・・?
何言ってんだお前は
「貴方は一人で寝るのが寂しい、そうでしょ?」
何?
何を言っているのかさっぱりわからないな
普通寝るのは一人だろう
「仕方がないから一緒に寝てあげるわぁ、感謝なさぁい」
やれやれ・・・
何を言っているんだこのヤクルトさんは
別に寂しくないんだがな
というかこの時期に二人で寝るのは暑いと思うぞ
冬ならまだしもな
そういうと水銀燈はわざとらしくためいきをつく
ためいきは俺の専売特許だってば
本当はお前が寂しいんじゃないのか?
「な、何を言ってるのかしらこのロリコンは」
お前こそ何を言ってるのかしら
まあ水銀燈が寂しがったりはしないとは思うがな
何たって誇り高きローゼンメイデンの第一ドールなんだから
しかしスルーをやめてくれたんだしココは逆らわない方が吉だろう
わざとらしくてもいいから感謝しておくか
「そうか一緒に寝てくれるというのか、優しいな水銀燈は」
「勘違いしないでほしいわぁ、貴方が寂しさで孤独死したら面倒だからよぉ」
そうかそうか、いやぁ優しいなぁ、うんうん、優しい優しい
まあそれはそれとして
「でも鞄で寝ないと負担がかかるとか何とか言ってなかったか?」
前に聞いた事がある
ドールは鞄で寝ないといけないと
理屈は良く分からんがとにかく鞄で寝ないといけないらしいな
「私を誰だと思ってるの?」
ヤクルト
「・・・」
そのどういい返していいかわからないって顔いいねぇ、そそるよ
二人で寝るならクーラーは低く設定しておこうか
この時期にクーラーの世話になるとはな
「いい?私の様な完璧なドールは一日やそこら鞄で寝なくても平気なの」
ほうほう、それは凄いな
そこまで完璧ならすでにアリスとやらになってるんじゃないのか?
と言いたいがとりあえず自重、この発言は自分の首をしめるだけだ
とりあえず半ば本音で半ば冗談ってのが望ましい
「水銀燈の様な完璧なドールが家にやってきて良かったよ」
消灯したのは9時20分ごろだったかな
現在11時
一向に眠れそうにない
水銀燈も全く寝ようとしていないというのが分かった
腕にずっとしがみついているので寝ようにも寝れない
股で腕を挟むのはやめてほしいな理性がもたない
「寝たか?」
チラッと水銀燈を見る
目をつぶってはいるものの眠ってはいなさそうだ
タヌキ寝入りだというのが何となく気配でわかった
「残念だな起きてたらそこらに散歩でも行こうと思っていたのに」
そうわざとらしくつぶやくと水銀燈は飛び起きる
「あら、何か急に目が醒めちゃったわぁ」
どちらかといえばこちらのほうがわざとらしいな
コイツは絶対クラスの劇でいつも木の役だ
これはこれで可愛らしいから良しとしよう
今度は俺がタヌキ寝入りをしてやる
「何だか歩きたいきぶんねぇ、どこかいいとこ知らなぁい?・・・あら?」
ゆさゆさと水銀燈はカイジを揺さぶる
しかしカイジはスルーする
カイジ無法のタヌキ寝入り返し・・・!
「起きなさぁい、このロリコン」
しかしカイジ動かない
あくまでもスルーする
一生治らないかもしれない傷をつけた奴にロリコン呼ばわりされたくない
コイツのせいで左眼の下には生々しい傷がついてしまった
それに掌も負傷してしまった
あの時かわさなければ首をはねられていたかもしれない
ここはあくまでもスルーする
「カイジ~起きてるんでしょぉ?」
ガバッ
カイジは布団の中にもぐりこむ
本格的にスルーをするようだ
水銀燈の中で何かがきれる
「ふぅん、そっちがその気なら・・・」
水銀燈も布団に潜りカイジにまとわりつく
しかしカイジ動かない
「まだ寝てないのはわかってるわぁ」
水銀燈はカイジのわき腹をくすぐる
まだ眠っていないならくすぐりは効くはず
そう踏んだのだ
しかしカイジ、腹に力を入れてこらえる
「痩せ我慢は~よくないわ」
水銀燈は作戦2に移る
ハムッ
「っ!」
水銀燈は突然カイジの耳を甘噛みする
さすがのカイジも反応してしまう
降参するカイジに水銀燈は微笑む
「ほぉらタヌキ寝入りは続かないの」
夜の散歩というのも悪くない
深夜徘徊で捕まらないように気をつけなければならないというのが難点だが
しかし一人じゃないというのが心の支えである
「なぁ水銀燈・・・」
カイジは文字通り肩の重みになっている水銀燈に話し掛ける
水銀燈は笑顔で反応する
うん、いい笑顔だ
まあそれはそれとして
「単刀直入に言おう、重い」
三文字、漢字にすると二文字で全てが伝わってしまう
それもむべなるかな
小さいとは言えそれでも1m近くはあるドールを肩に乗せるというのは結構疲れる
水銀燈も女だ、カイジは気を使って黙っていようとしたがさすがに業を煮やした
このままだと脱臼しかねない
「レディに重いだなんてなってないわねぇ」
すまない・・・とカイジは小さく謝る
やはり自重すべきだったと少し反省する
「で・・・結局降りてくれないのか」
これはこれでいいか・・・と開き直ることにする
人生開き直った者勝ちだ
何でも柔軟に対応する事が大事だ
こういうものだと妥協する事が大事なのだ
そんな考えだから平山先生に志が低いと言われるのだろう
しかし嫌なものは嫌だと逃げていたら芽は吹き出さない
まあそれはそれとしよう
それよりも今不可解なのは・・・
「何でお前がいるんだよ、アカギ」
アカギもドールをつれて夜の散歩をしていたようだ
カイジが水銀燈を肩に乗せているのに大してアカギは翠星石と手をつないでいる
どっちが親密なのだろうか
手か肩、どっちが親密なのだろうか
やはり手だろうか
肩に乗せているというのは何か上下関係を感じる
それにひきかえ手をつなぐというのは同等の立場
肩に乗せているのは手をつなぐというのは柄じゃないからだろう
「げっ、水銀燈が居やがるです、せっかくのいい気分が台無しですよ」
翠星石よ、あまり刺激しないでやってほしい
ヤクルトをヤケのみされては困る
しかし他人の餓鬼をしかれるのは昔の人間ぐらいでありヘタレな自分にはしかれないと思い困っているカイジ
そんなカイジの心境を察してかアカギは翠星石の右頬をつねってやる
「はひふふへふは!ひへふ!(何するですか!しげる!)」
しかし夜中に散歩とは暇なんだな
まあそれはお互い様だろうが
「翠星石が眠れないから散歩に付き合えって五月蝿くて・・・」
へぇ可愛いところあるじゃないか
翠星石は顔を赤くしてアカギのすねを蹴る
最近アカギは空気を読んでかわさないのだ
もっと他のところで空気を読んで欲しいな
それにしても仲がよろしいようで
「ククク・・・乱暴で言葉遣いが悪いですけどね」
乱暴で言葉遣いが悪いがいい子じゃないか
誰かさんは勘違いして人をロリコン呼ばわりした上に手と左頬を負傷させて挙句の果てに殺そうとまでしやがったしな
俺は水銀燈がベッドに来たせいで寝れなくてな
実を言うとどっちにしろ左眼の下がひりひりして眠れないのである
この時カイジは閃く
「そういえば翠星石、雛苺の好物って分かるか?」
翠星石なら知っているかもしれない
面倒見がよさそうだし、妹のことなんてろくにしらないアホとは違うだろうしな
なあ水銀燈?
パチッ
水銀燈は平手でカイジの顔面を真正面から叩く
これは痛い
頬を平手打ちよりも痛い
真正面から殴られる事により鼻を強打することになる
鼻血が出ていないというのが唯一の救いである
カイジは涙目になりながら少し引いている翠星石に再度訊ねてみる
翠星石は答えようとして少し止まる
「(いいこと思いついたですぅ~ククク・・・)」
少しアカギに似てきている翠星石
少し意地悪してやろうという顔だ
「雛苺は辛いものが好きですよ」
嘘だな
カイジは一蹴する(決して蹴るという意味ではない、辞書を引いてみよう
「な、何を根拠に嘘といえるですか!」
その嘘をついてやろうという気持ちを隠せないアホ面で確信したのさ
その顔を見て嘘だと見抜けない奴はよっぽど素直な奴だろうな
ヒュッ
「おっと」
カイジは翠星石のすね蹴りを上手くかわす
アカギが空気を読めるようになった分空気を読めなくなったのだろうか
いや、かわすのにKYも何もないはず
それにしてもすぐにすねを蹴る癖直したほうがいいぞ
というか重いぞ水銀燈
そろそろ本気で肩を凝りそうだ
パチッ
そういうともう一発顔面を真正面から叩かれる
「どぉの口が言うのかしらねぇ」
意地でも降りないのかこの傲慢人形め
しかし誘導と駆け引きはこちらが上のはず・・・!
カイジはわざとらしく言ってみる
「あ~あ、翠星石は自分で歩いて偉いなぁ、一番アリスに近しいだろうなぁ」
少し露骨すぎただろうか
いや、露骨でかまわない
肝心なのは水銀燈の性格を極限まで利用する事だ
「こんな泣き虫で性格の捻じ曲がった餓鬼がアリスに近しいですって!?」
思ったとおり水銀燈はムキになった
計画通り・・・
と思ったのだが・・・
何事も計画どおりいかないなんて事はざらだ
今回も例外ではなかった
そう上手く行かないのが人生、計画
水銀燈の辛辣な暴言に翠星石は近くにいたアカギのすねを思い切り蹴る
やつあたりもはなはだしい
「てめぇもういっぺん言ってみやがれですぅ!」
どうやら俺は余計な事をしてしまったようだ
今二人は取っ組み合いの喧嘩している
こんな時間帯にこんな目立つところで喧嘩すると・・・
「っ!そこで何をやっている!」
パトロールしている巡査がきちゃうのさ
カイジとアカギは喧嘩している二人をひっぺがしてお姫様抱っこをする
顔を赤くする二人だがそんなのに構ってられない
「逃げるぞお姫様」
近づく巡査から逃げるべくもうダッシュをする
それにしても重いなコイツ
しかしこれじゃ誘拐しているみたいで嫌だな
今水銀燈が叫べば捕まってしまうだろう、誘拐犯として
分かれ道に直面する
やはりまくには二手にわかれるのが一番だろう
「二手に分かれるぞ」
何故こんなことに
純粋に夜の散歩を満喫したかっただけなのに
気付けば辛酸悪夢
そして何故・・・
何故よりによってこっちを追ってくる・・・!
更に二手にわかれるべきか?
しかし水銀燈を一人にするわけにはいかない
水銀燈を飛ばせるという方法もある
しかし人前で飛ばせるわけにはいかない
結局のところ走って逃げるしかないのだ
お姫様抱っこしているから腕が使えず上手く走りづらいが致し方ない
「カイジ・・・」
水銀燈が水銀燈らしくない声を出す
もう少しで聞き逃すところだった
しかしそれどころではない
今は逃げることで精一杯だ、話なら後にしてほしい
「(はぁはぁ・・・重いなこのお姫様は・・・)」
「・・・」
カイジは逃げている最中に時間をかせげる物を発見する
「もう少しスマートにいきたかったが・・・」
ゲシッ
カイジは電柱の近くにあったゴミ箱を思い切り蹴る
ゴミ箱は転がりゴミを撒き散らす
巡査がそれに気をとられている間にさっさと逃げる
「(ここを右に曲がれば複雑な道の連続・・・まける・・・!)」
言うまでもないがここで言うまけるというのは負けるという意味ではない
心の中で巡査にゴメンと謝ってカイジは右折する
巡査が何やら騒いでいるが気にしてられない
何を言おうが負け犬の遠吠えだ、悔しかったら捕まえてみろ、いややっぱりそれは困るかな
「コラー!待ちなさい!」
大の字になって倒れたい気分だがそんなことはしてられない
もう一踏ん張りだ
後もう少し走ればまけるであろう
カイジは出せる限りの根性で何とか巡査を巻く
水銀燈をおろして近くにあった公園のベンチに倒れ込む
よく頑張ったと褒めて欲しいものである
カイジは息遣いが荒くなる
高鳴る心臓をおさえてゲホゲホとむせる
そのせいか涙目になっている
水銀燈は話し掛けるタイミングを考えている
「(今話し掛けても無駄ねぇ・・・今にも吐きそうだし)」
少し落ち着いてきたカイジは起き上がってきちんとベンチに座る
まだ少ししんどそうだ
もう少しそっとしてやることにする
薄暗い夜空
二人は肩を並べて空を見上げている
言葉などもはや不要だ
タオルを持って来て正解だった
顔の汗をタオルでふき取る
背中もパンツも汗でびしょびしょで不快な気分だ
元々気温自体は高かった
そんな中で重いもの(水銀燈)を持って走るのは容易なことではない
カイジの心拍数が徐々に戻ってきたという事を感じて話し掛ける
「・・・カイジ」
水銀燈らしくもない声を出す
先ほどの逃走中に出したか細い声は間違いじゃなかったようだ
このか細い声にカイジは真剣な顔つきになる
「・・・何だ?」
こんな水銀燈は見たことがなかった
こんな元気のない水銀燈なんて水銀燈じゃない
何か申し訳なさそうな顔だ
水銀燈はうつむいたまま黙る
「・・・?」
一体何が言いたいのだろうか
カイジはどう言葉をかけていいのかわからなかった
水銀燈は小さな声でカイジに謝る
「ゴメンなさぁい・・・私のせいで・・・」
それを聞くとカイジは一瞬呆けたような顔をする
うつむいたまま反省する水銀燈
カイジは少し呆けてから笑顔になる
グイッ
カイジは水銀燈の肩に腕を回してたぐいよせる
カイジは笑顔を見せて言う
「何だ何だ?そんな事気にしてたのか?お前らしくもないな」
どうして?
何故?
何でまた怒らないのだろうか
いつだってそうだ
昼間はデコピンやビンタを受けたが基本的にカイジは優しい
いつだって優しくて傲慢な自分を大事にしてくれる
どうして今もこうやって笑っているのだろう
「カイジ・・・」
どうして自分がこんなに変わったか分かった
それはカイジが優しいからだ
自然と甘えてしまう
甘えさせ上手なのだカイジは
「本当にごめんなさい・・・」
水銀燈はもう一度謝る
それを見てカイジはためいきをつく
ピンッ
二度も謝る水銀燈にデコピンを入れる
「・・・っ?」
「だから気にするなよ」
そういってカイジは立ち上がって肩を小さく回す
首を軽く回すだけでコキコキと程よい音程の音がなる
ふう・・・とカイジは小さく息をはく
それを見て本当に疲れていたんだなと思い水銀燈はまた軽い罪悪感に包まれる
それを世界でカイジは振り返って悪戯っぽく笑う
「本当にすまないと思うなら自分で歩いてくれよな」
そういってカイジは歩き出す
その後姿を見て水銀燈はムッとする
やはりカイジは甘えさせ上手だ
何故なら・・・
気づいた時にはカイジの背中に飛び乗っていたのだから
「さぁ私を安全に送り届けなさぁい」
一本道をを想像してほしい
一本道を二人で競争したとしよう
圧倒的な差をつけたとする
もう相手の存在など忘れてしまうぐらいだ
その道を引き返せばどうなるだろうか
必然的に出くわすであろう
それはカイジ達と巡査にも同じ事がいえた
交差する運命
「あ・・・」
遠回りしてでも避けるべきだった
迂闊・・・圧倒的迂闊・・・
カイジは呆けている巡査の横を通り抜ける
「ま、待ちなさい!」
バタッ
家についた途端カイジは倒れる
玄関で仰向けになってはぁはぁと息を荒げている
また不覚にも汗をかいてしまった
しばらく休んだ後もう一度風呂に入ろう
「はぁはぁ・・・何か飲むか?」
こんな時でも水銀燈を気遣うカイジ
しかし水銀燈もそこまでわがままじゃない
首を横に振る
「はぁ・・・はぁ・・・俺はちょっと休むから先に風呂入って来てくれよ」
そういってカイジは椅子に座って呆けた顔をする
水銀燈はカイジのために早く風呂を上がろうと決意して風呂場に向かう
「夜の散歩はもうやめとこう・・・」
チュンチュンと小鳥のさえずりが響き渡る
カイジは疲れていたため熟睡できたが水銀燈はあまり眠れずに目がうつろだ
自分も走っておくべきだったのだろうか
鞄で寝なかったのはやはり体に悪かった
今日はくんくんが無いからもう一眠りしようと思う
鞄に戻ってもいいのだがもう少しカイジと一緒に寝たい
ガシッとカイジの腕を股の間にはさみカイジの腕にしがみついて目を閉じる
「(小鳥が五月蝿いわぁ・・・)」
7時ごろになり自然と目が覚めるカイジ
体を起こそうとすると右腕が何者かに引っ張られていて起き上がれない
右を見てみると水銀燈がきっちりと腕にしがみついていた
「そんな服で寝て暑くないのか?」
そっちかよと突っ込みたくなる
腕を股にはさまれていて何か違和感を感じる
「(起こすのは可哀想だが致し方ないな、俺が遅刻する)」
起こそうかどうか考えていると・・・
ガチャリ
すっかり存在を忘れていた雛苺が鞄から出てくる
「うゆー・・・あっカイジ!おはようなのー」
ああ、おはよう
それとできればこれは見なかったことにして欲しいな
「あれ?水銀燈は鞄で寝なくても大丈夫なのー?」
よかったよかった
そういう思考なのかお前は
カイジは水銀燈を起こさないように慎重にはがそうとする
これが結構難しい
「完璧なドールは鞄で寝なくても平気なんだとよ」
結果的に水銀燈を起こしてしまった
悪かったな気持ちよく寝てたところを起こしちまって
謝るからそっぽをむかないでくれよ
「私は貴方が私を置いて学校に行こうとしたから怒ってるのよ」
水銀燈の文句を黙って聞いてやる
水銀燈は少し間を空けて文句を続ける
いや、文句というより願望という方が適切だろうか
「朝は一緒に起きて一緒に食事してそして私が見送って、それが日常でしょ?」
意外といい事を言うじゃないか
でも最近は見送ってくれないよな?
「そ、それは貴方が浮気を・・・まあ誤解だったんだけど」
誤解していたといってからカイジの顔を見る
水銀燈はカイジの左頬の傷を見てまた申し訳なさそうな顔をする
だから気にするなと言っておろう
「だって私は貴方を疑って・・・」
ピンッ
何度も何度もしつこいんだよ・・・と低い声で言ってデコピンをかます
水銀燈はまたムッとする
やっぱり優しい
カイジは誰よりも優しい
私のカイジは誰よりも優しい
「早く朝食を用意なさい,相変わらずノロマだこと」
これから学び舎に向かうカイジを水銀燈と雛苺は見送る
雛苺と仲良くしろよ
「まあ不本意だけどしてあげるわ、貴方のためじゃないわよ」
はいはい、水銀燈さんは立派なお姉さんですね
さぁ絶望の城(学校)に行くか
気は乗らないが不登校には戻りたくないし行くしかない
気が乗らないのには違う理由があった
カイジは少し懸案事項を抱えているのだ
「零・・・本当に雛苺を引き取れるんだろうな・・・」
世の中・・・いや、個人個人の人生の転機何てささいな事がきっかけなのである
良い方向に行くにしろ悪い方向に行くにしろ大方は些末な事がきっかけなのだ
問題はどっちに行くかだ
悪い方に行くか良い方に行くか
できれば良い方に行きたいものである
ところがどっこい人生というか運命というのは本当にひねくれたものである
まるで図ったかのように悪い方に行ってしまう
その度合いもこれまた酷い
そう・・・
言うなら辛酸悪夢、超絶不運
パラレルワールドを思い浮かべてみる
近道をした今の自分としなかった自分の運命
近道を行かなかった世界の自分が羨ましい事この上ない
タイムマシーンがあるなら近道をさせなかっただろう
近道をしたせいでこうなったのだ・・・
ドニッ
走っていたカイジは誰かにぶつかってしまう
体重差でカイジは吹っ飛ばなかったが相手はぶっとんでしまう
「きゃっ!」
ぶつかった相手は女だ
違う中学校の制服を着ている
ここは確か・・・
治安は良いが学力が全体的に低いところだったが気がする
曲がり角で誰かにぶつかるというのは運命を感じるが、そんなのは二次元の世界だ
実際は上手く行かないものである
しりもちをついて痛がっている女はこの上なく醜い
とんでもない醜態の持ち主だ
ここは何事も無かったかのように走り去りたいが良心がそれを止める
良心なんて邪魔な枷がなければカイジの運命は変わっていた、恐らくはいい方に
カイジは怪物のような女に手を差し伸べる
「すまない、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわよ、どこみ・・・・・・」
悪態をつこうとした女はカイジの顔を見て急に言葉をにごらす
・・・?
困惑するカイジ
ガシッ
その刹那カイジの腕を女が掴む
地獄に引きずり込まれそうでならない
「あ、貴方名前は?」
そっちから名乗れよ、と言いたいところだがこんな奴の名前知りたくない
何故ぶつかった相手に名前を聞かれなければならない
学校に文句でも言いに行くつもりだろうか
「・・・カイジ、伊藤開司」
偽名でも使ってやろうかと思ったがとりあえず正直に答えてやることにする
それよりも早く腕を離してくれない
「きゃっ、美心(みここ)ったら恥ずかしい///」
何故顔を赤らめる、気持ち悪いな
まるで茹蛸(ゆでだこ)だな
それにしても美心か・・・
変な名前・・・
「じゃ、じゃあ俺急いでるから」
カイジは逃げ出した
しかしまわりこまれてしまった
「あ、あの良かったらメアドを・・・」
「良くないから遠慮する」
カイジは逃げ出した
しかしまわ(ry
何だ何だ?
コイツはバスケでもやってるのか?
物凄いディフェンスだ
貴様にメアドを公開すると後悔しそうだから金輪際交換しない
「急いでるからゴメン、じゃあな」
昨日の巡査よりもやっかいだった
これだけの縁なら良かったのだが
この出来事が後のカイジの人生を狂わせる事になるとは思いもよらなかった
それにしても思い出すだけで気分が悪くなる
幾人の人間を見てきたがあそこまで醜い人間は見たことが無い
とりあえずあの女の事は忘れる事にする
そんなこんなで学校につく
ついた途端靴箱でからまれてしまう
この前のDQNどもに
「この前の餓鬼じゃねえか、顔貸せやコラ」
何だか前より威勢が良くなってないか?
アレほど痛い目にあったくせに
カイジは遅刻しないかどうか不安まじりにためいきをつく
「一難去ってまた一難って言うしな・・・」
ガラッ
「遅れてすみません、いやホントすみません、焼き土下座だけは勘弁です」
カイジは教室に入ってすぐに土下座をする
一条先生を怒らせると後々困る
罪人は購買部で強制労働させられるというのは有名な話だ
「それよりも男子生徒数人の悲鳴が聞こえてきたんだが何かしらないか?」
一条は遅刻の事など気にせずに先ほど聞こえてきた悲鳴について聞き出す
言うまでも無く犯人はこの大名行列が通り過ぎるのを待っているような体勢の男だ
カイジは立ち上がって首を軽く横に振る
そして満面の笑みを見せる
「何のことだかさっぱりです キリッ」
催眠念波を出しつづけている国語の先生
国語の授業というのはどうも眠くなる
しかし眠れば国語辞典の角で頭を殴られる
素数でも数えていれば目が覚めるはずだ
カイジは心の中で素数を数える
「(1・・・あれ?1は素数に含むんだっけ?含まないんだっけ?まあいいや、2・3・5・7・9・11・・・)」
ちなみに1は素数に含まない
先生の質問に誰も答えられないので答えられそうなカイジを当てる
突然話を振られたカイジは困惑する
「13?」
何だか空気が重くなったような気がする
疑問系で数字を言われても困る
カイジは顔を赤らめてうつむく
故にその後の授業なんて全く耳に入らずに昼休みになる
今日もまた図書室に向かう
おそらくあの二人がいるだろう
ガラッ
「よっアカギ・・・ついでに零」
アカギは無言で弁当を食べている
零はついでにという言葉を気にせずに会釈する
こいつ等はどうしてこんなに早いんだろう
距離的にはこちらのほうが若干近いのだが
「さてと・・・零、話がある、何だか分かるよな?」
「雛苺の事ですか?」
その通りだ
俺は雛苺のおかげでロリコン呼ばわりされてるんだぜ
いや、雛苺にされてるわけじゃないぞ
「ところでアカギ、昨日はどうなったんだ?」
どうなったと言いますと?という顔で見上げてくる
ちゃんと言葉にしてくれないかな
あのまま家に帰ったのか?
コクッと頷くアカギ
良いよな、俺なんか死にかけたからな
話にまるでついていけない零
まあ無理に入らなくていいぞ
「まあ話を戻すぞ」
弁当を貪りながらドールのことについて話す
水銀燈や翠星石のことではない
雛苺についてだ
「雛苺を本当に預かるのか?」
「勿論ですよ」
親は・・・?
大歓迎ですよ
本気にしてないんじゃないか?
そうかもしれません
実物見せたら卒倒するんじゃないか?
零は両掌を上に向けて肩をすくめる
「困ったものです」
お前が一番困ったものだよ
喋るドールの存在を受け入れれる俺達は結構野太いのではないだろうか
それはそうとアカギ
話に興味が無いからといって一人でウォーリーを探すな
お前だってドールを持ってるだろうが
しかも俺は契約してないのにお前は契約している
良く分からないが敗北感を感じるのは何故だ
雛苺を引き取らせるのは色々とまずい
しかし雛苺は零の元にいってしかるべきだ
困ったものだ、これは手詰まり
「最小公約数的な方法が望ましいんだ」
自分で言っておいて何だが良くわからないな
一番上手い方法は何だろうか
その時アカギ、若き天才が不意に盲点をつく
「先輩が引き取って零がたまに遊びにいけばいいでしょ」
そういってアカギはウォーリーを探しつづける
なるほど、その手があったか
無理に引き取らせる事はない
そうと決まれば今日は家に来い
「元々そのつもりでしたよ」
それもそうだな
ハハハ、こやつめ
解決策も見つかった事だし三人でウォーリーを探すか
「先輩、顔が近いです」
チャイムがなると同時にカイジは靴箱にダッシュする
靴を履き替えてアカギと零を待つ
しかし待てど待てど二人はこない
何をしているのだろうか
何人か帰っているという事は一応終わりの会はしたのだろう
まさか呼び出しか?
いや、あの二人・・・いやアカギは知らんが零はまずないだろう
あっ!
カイジは何かを思い出したかのように靴をもう一度履き替えてダッシュする
「図書委員忘れてた・・・」
ガラッ
「帰るぞ」
入ってすぐに二人の首根っこを掴む
「カ、カイジさん、図書委員・・・」
そんなものほっとけよ
放課後に本を読みに来る奴なんて中々いねぇよ
今日は休業だ休業
雛苺に会いたくないのか?
「う・・・うう」
さあわかったら行くぞ
って、またウォーリー探してたのかお前らは
「帰りにちょっと苺大福を買っていくぞ、お前の推理を当たってたみたいだしな」
零が苺大福だと言っていたので雛苺に確認をとってみた
すると雛苺はそれがうにゅーだと答えた
しかし何故あんなヒントでわかったんだよ?
「白くてフワッといえば綿菓子、それに加えてうにゅ~といえば苺大福、くんくんで勉強しました」
ようやく気がついたんだ
俺の周り・・・俺を含めて馬鹿ばっかりだという事に
苺大福の代金を零に負担させて家に向かう
先ほどから零はとても嬉しそうだ
いつもよりも声のトーンが高い
話の9割は雛苺についてだ
良く知らないくせによくそこまで話せるものだ
零は少し黙って欲しい、そしてアカギはもう少し喋れ
そうこうしている内に家(うち)につく
胡乱なギャグだがスルーしていただきたい
カイジは両手は広げて二人を家に招き入れる
「我が家は誰でもウェルカム、どうぞどうぞ」
一条のマネをしてみたんだがどうだ?
「さすがカイジさん、50点」
零よ、それはほめているのかそれは
「ククク・・・まるで白痴ですね・・・」
お前帰れ、今すぐ
そもそもお前は来る必要ないだろ
図書委員だってお前が残れば無問題だったろう
しかし後輩にそんなにガチャガチャとクツワムシのように騒ぐのはみっともない
やはり人情溢れる男だ、俺は
ボフッ
靴を脱いでいる途中に奴がとびついてくる
「おかえりなのー」
うぐっ貴様・・・顔にくっつくな
ほらほら、そっちにいるのが零、お前のミーディアム候補さ
そういって零を指差すと雛苺は零に飛びつく
「わーい、零登りなのー」
一瞬よろめいたが零は満更でもなさそうだ
これでカイジ登りは卒業だな
まあ上がれよ二人とも
カイジは二人を家の中にご案内する
零とアカギを見て水銀燈は不機嫌そうな顔をする
この二人が嫌いなのだろうか
零はこの前の事もあり水銀燈を見て一瞬ビクッとした
零は何か思い出したような顔をして苺大福を雛苺に渡す
「もしかして・・・」
雛苺は宝箱を開ける冒険家のような顔で袋を開ける
中にあったものを取り出して歓喜、喜悦
「うにゅ~なのー」
苺大福を一つ食べてから雛苺は零登りをする
「零大好きなのー!」
きっと苺大福をくれる人間は全員好きなのだろう
苺大福をあげるから来いと言われたら言ってしまうだろう
おそらくこういうタイプの人間(人形)が誘拐されるのであろうと思いながらカイジは水銀燈の機嫌を窺う
「何なのよこの二人は・・・」
俺と死闘を繰り広げた男とお前に対して戦慄を感じた男だよ
まあそう不機嫌そうな声を出すなよ
ちゃんとお前にもお土産を買ってきたからさ
しかし水銀燈はそっぽを向く
「どうせくだらないものでしょう、そんな物で機嫌取ろうなんてお馬鹿さ・・・」
お土産に対して興味を抱かなかった水銀燈
しかしお土産を見て御託が止まる
口をパクパクさせる
こうして見るとまさにアホの子である
水銀燈はカイジが手渡す前にお土産を奪い取る
お土産の人形・・・
舌を出しているやらしい犬の人形・・・探偵くんくんを抱きしめる
やっぱり喜んでくれたな
喜んでくれないようだったら雛苺にあげるところだったが
雛苺は水銀燈が抱きしめているくんくんの人形を見て零からカイジへと飛び移る
「カイジカイジー、雛の分は?雛の分は?」
二度も言うな、大事な事だから・・・ってやつか?
カイジカイジーって芸名みたいだな
カイジは雛苺をだっこして床に降ろす
「お前にはうにゅ~があるだろうが」
そういって雛苺をなだめるが雛苺はギャーギャーと騒ぐ
ああ五月蝿いなお前は
今度もっといい奴を買ってあげるから落ち着け
それを聞くと今度は水銀燈がギャーギャー騒ぐ
「良いのなら私に買いなさい」
それも十分いい奴だけどな
お前に対するプレゼントが安物なわけないだろう?
零が買ってきた苺大福だって高級な物だぞ
少ない小遣いで買った高級な苺大福だぞ
それを聞いて零はボソッとつぶやく
「少ないは余計ですよ・・・」
零は雛苺と遊ぶのが天才的に上手かった
保育士にでもなればいい
水銀燈よりも上手いんじゃないか?
ゲシッ
水銀燈はカイジのスネを蹴る
「私は子供の相手なんて元々向いてないのよぉ」
その割には楽しそうにしてたけどな
その時アカギが立ち上がる
「じゃあ俺はこの辺で」
早くないか?
飯食っていけよ
食事に誘ってみたがアカギは首を横に振る
「翠星石に怒られますんで」
すっかり尻にしかれてるな
いい夫婦だぜ
「先輩ほどじゃありませんよ」
そうかも知れないことを言ってアカギはカイジ宅を後にする
零はどうする?食べていくか?
「え?何をですか?」
聞いてなかったのかよ
まあそれほど夢中だったのだろう
晩御飯食べていくか?って聞いてるんだよ
俺がそう言うと零が答える前に雛苺が喋る
「零、食べていってほしいの」
そういって零の体を揺さぶる
いいんですか?と零は少し遠慮している
ああ勿論だとも
しかし水銀燈は異を唱える
「駄目よ、認めないわ」
認めないってお前にそんな事言う権利はあるのか?
何が不服なんだ?
「こんな男と食事なんて冗談じゃないわ」
零がお前に何をしたんだよ
カイジの反論よりも先に雛苺が反論する
「零は今日ここで食べていくの、文句があるなら水銀燈がどこかにいけばいいのー」
おお、正論だ
しかし水銀燈には道理が通じない
それどころか雛苺に飛びついている
やめろ、零の首が折れる
「貴女、人に世話をしてもらっておいて・・・」
お前人じゃねえだろ
と言いたいところだが自重しておこう
ジャンクにされるのはごめんだ
雛苺はまとわりつく水銀燈の顔面を蹴る
「水銀燈!いい加減にしてほしいの!」
雛苺に顔面を蹴られた水銀燈は零から落ちてしりもちをつく
うつむいたまま糸の切れたマリオネットのように動かなかった
カイジは直感する
これは何かの予兆・・・!
所謂嵐の前の静けさだ
水銀燈は体をワナワナと震わせる
気づいた時にはカイジは水銀燈を羽交い絞めにしていた
「離しなさい!この!」
水銀燈はじたばたと暴れる
駄目だ、今離したら雛苺及び零が死んでしまう
水銀燈は全力でじたばたと暴れてカイジから逃げ出そうとしている
「おっ、おっ、おっ、おっ、落ち着けー!」
アンタが落ち着けと零は心の中でつぶやく
零は雛苺を降ろして代わりに謝る
「わ、悪かったよ水銀燈」
しかし零が謝ったところで水銀燈の怒りが収まるわけではない
水銀燈は羽交い絞めしているカイジの腹をかかとで思い切り蹴る
「がっ・・・」
カイジは水銀燈を離してうずくまってむせている
そんなカイジを余所目に雛苺に飛びつく
バキッ
懐に飛び込んできた水銀燈を雛苺が殴る
異様なタイミングで突きを決めた雛苺
もしかすると雛苺の方が強いのではないだろうか
水銀燈が冷静さを失っていたというのもある
しかしそれだけではない
雛苺自身が強いというのもあった
にらみ合う二人を零がなだめようとする
「ふ、二人とも、落ち着いて」
紆余曲折あったが零が帰るということで可決した
呆気ない幕開けのように見えるが被害は凄かった
二人が取っ組み合いをしたせいで部屋がメチャクチャだ
互いに目をあわそうとせずに対立している
喧嘩した後だから致し方ないだろう
カイジは自然と仲直りするのを待つことにして零と一緒に部屋を片付ける
この二人といたら破滅するのではないかと先を案じて不安になるカイジ
当分は零に雛苺を預けた方が良いのではないだろうか
しかし隠れて世話をするというのは容易な事ではない
人形のくせに食事はするしトイレにいくし、風呂にも入る
人間の居候のようなものだ
隠れて世話など容易ではない
零は申し訳なさそうに言う
「カイジさん、すみません」
あ?
何でお前が謝るんだよ
「だって俺のせいで二人が喧嘩しちゃって」
何言ってんだよ、お前は悪くないさ
悪いのは今くんくんの人形を抱きしめてベッドの上で拗ねている奴だよ
この会話が聞こえていたのか水銀燈はベッドの上にあった枕をカイジに投げつける
「拗ねてなんか無いわ、このお馬鹿さぁん」
そうか
でもそれは傍から見たら拗ねているも同然だぞ
こりゃ困ったな
この二人が自然に仲直りするのを待ってたら気まずいままだ
しかし水銀燈が自分から頭を下げるとは考えづらい
やはり雛苺から謝らせるべきだろうか
しかしそう上手く行くだろうか
どうすればいいか考えているカイジに助け舟を出す零
「カイジさん、俺が雛苺をなだめてみます」
零は仲裁を買って出る
それは有難い
確かに零なら上手く行くかもしれない
カイジが手懐けれるのは水銀燈だけだ
雛苺なら零の方が専門家だ
何しろ好物を当てたのだから
零は二階の部屋でふてくされていてる雛苺の下に向かう
その間に水銀燈をなだめることにする
「なあ水銀燈、いい加減にすね・・・」
「すねてなんか無いわよ」
そうかい
まあそれはそれとしよう
喧嘩なんかしてたら気まずいぞ?同じ屋根の下なんだから
「今回はお前も悪いと思うぞ、素直に謝ったらどうだ?」
カイジがそういうと水銀燈は黙り込んでワナワナと体を震わせる
何か嫌な予感が脳裏を過ぎる
やってしまったのだろうか
所謂墓穴を掘ってしまったのではないだろうか
「私は悪くなんかない!」
カイジは思わずビクッとする
心の底から自分は悪くないと思っているのが伝わってくる
駄目だコイツ、早くなんとかしないと
このままでは刺々しすぎて誰も近寄ってこなくなってしまう
そんな社会不適合者になる前に何とかしないと
しかし下手に動けばジャンクになってしまう
五体不満足にならずに水銀燈の腐った性根を直すにはどうすればいいのか
カイジは思考をめぐらせる
「(まず根本的な考えが間違っているな・・・)」
確かに今回は水銀燈が悪い
しかし水銀燈の気持ちがわからないわけじゃない
今まで水銀燈は雛苺の世話をしてやっていた
傍から見れば仲の良い姉妹だった
本当に可愛がっていたというのが手にとるように分かる
そんな妹からあんな事を言われたのだ
頭にくるというのもわからないでもない
カイジには水銀燈を心から怒る事ができなかった
「そりゃ雛苺も悪いけ・・・」
二人とも悪い、と言う事を言おうとした時水銀燈はカイジの胸倉を掴む
冷たい目でカイジを睨みつける
「《雛苺も》ってどういうこと?私も悪いってふうにとれるわ」
そういってんだよ
そりゃまあお前の気持ちもわかる
わかった上で言ってんだよ
じゃあ言い方を変えるよ
「雛苺を許してやってくれよ」
これならいいだろう?
雛苺が悪い、だから悪い雛苺を許せ
これなら文句なかろう
お前は悪くない、そうだ、お前は全く悪くない
そうなんだろ?
水銀燈は歯切れ悪く言う
「・・・そうよぉ・・・私は悪くないわぁ」
それでいいのか本当に?
まあお前が良いというなら別に良いさ
寛容な精神で許してやってくれ
水銀燈は何か思いつめた顔でくんくんを抱きしめる
カイジには水銀燈が何を考えているかわかっていた
しかしあえて気付いていないふりをして片付けを再開する
そんなカイジを思いつめた顔で見つめる水銀燈
「(やっぱりな・・・水銀燈は不器用なだけなんだな)」
水銀燈は不器用なだけなのだ
すまないと思っている、謝りたい
しかしそれができない
そんなことぐらいはわかっていた
「(これはこれで水銀燈らしくていいさ)」
コンコン
零は雛苺が引き篭もっている部屋にノックをする
しかし応答がない
再度ノックをする
しかし反応は無し
どうやら本格的に拗ねているようだと零は確信する
入るよ、といってドアノブに手をかける
どうやらドアにカギはかかっていないようだ
この部屋は何の部屋なのだろうか
第二の部屋・・・といったところだろうか
一人暮らしだったカイジが何故こんな家を購入したのだろうかと思いながらあたりを見渡す
パッと見たところ雛苺の姿はない
しかしどこにいるからは明々白々だ
「不自然に盛り上がっているベッド・・・間違いないな」
布団をめくるとそこには案の定雛苺がいた
ベッドにはいつくばって頬を膨らませて零を睨む
しかし水銀燈の睨み方と違って敵意を感じない
「なぁ雛苺、水銀燈と仲直りしたらどうだ?」
零がそういうと雛苺は起き上がる
両手の拳を軽く握り締めて反論する
「ヒナは悪くないもん!」
確かにそうかもしれないけども
殴りあったのは事実だろう
二人が頭を下げて仲直りすれば全て解決
しかし謝れ謝れと馬鹿の一つ覚えみたいに言うのは逆効果だ
二人の気持ちをくむというのがただしい仲裁
少なくとも零はそう考えている
零はベッドに腰をおろす
「(カイジさんは上手くやってるかな?)」
まずはどこから話そうかとしばし考える零
そんな零を余所に雛苺はふてくされている
零は雛苺の頭を撫でてやる
取りあえず心を許してもらう事が大事だと踏んだのだ
「確かに今回は水銀燈が悪いかもしれないけど・・・水銀燈にも事情があったんじゃないかな」
そういう零の顔を雛苺は見上げる
雛苺は首をかしげる
「事情?」
どうやら話を聞く気になってくれたようだ
下手に動くと仲裁が失敗に終わってしまう
ヘマを踏まないように零は気をつけて喋る
「きっと水銀燈は雛苺やカイジさんと家族仲良く食事をしたかったんだよ」
この推理は間違っていないと零は自信があった
家族水入らずとは良く言ったものである
そう言うと雛苺は零に飛びつく
次の一言に零は心を打たれる
「零も家族なのー」
「零もカイジも水銀燈も翠星石も、えっと・・・あの人も家族なの、皆家族なの」
あの人というのはおそらくアカギの事だろう
零は雛苺に心を打たれてしまう
零がいて・・・カイジがいて・・・水銀燈がいて・・・翠星石がいて・・・アカギがいて・・・雛苺がいて・・・
それで家族・・・アカギは名前を忘れられているがそれでも家族・・・
雛苺を抱っこして零は微笑む
「じゃあ仲直りしにいこうか?大事な家族と」
そういうと雛苺も笑顔を見せる
「うん!」
元気いっぱいに頷く
やはり零には素質があるようだ
子供の面倒を見る素質が
子供の立場に立って親身になって考えれる
そんな才能があるようだ
雛苺の素直さに救われる零
しかし少し気がかりなことがある
水銀燈・・・!
カイジが水銀燈をなだめていないとこの仲直りが成立しなくなる可能性がでる
そうなってはアウツ・・・!
「(後はカイジさん・・・頼みますよ・・・)」
文句を言わずに部屋を片付けるカイジに水銀燈はゆっくりと近づく
あまりに気配がないのでカイジは肩を触られるまで気付かなかった
「・・・ん?」
カイジがゆっくりと振り向くと水銀燈はカイジの肩に飛び乗る
あまりの事にカイジは一瞬前のめりになる
いきなり何だよ?
「私を二階に連れて行きなさぁい」
・・・え?
お前を二階に?
何でまた・・・・・っ!
まさか・・・
「私は全く、全く悪くないけど雛苺と仲良くしてあげるわ、感謝なさぁい」
全くというのを強調する水銀燈
どうやら仲直りをする決意をしたようだ
全く悪くないと口では言っているが反省しているというのが伝わってくる
本人は隠しているつもりだがカイジには伝わる
カイジは水銀燈をお姫様抱っこして二階に連れて行く
仲直りという重大な問題に直面しているのにカイジは違う事に気が行ってしまう
「(・・・やっぱり重いな)」
「じゃあ雛苺、仲直りしにいくか」
零は雛苺を抱っこして立ち上がる
ドアノブにてをかけようとした瞬間
ガチャ
外側からドアが開く
ナイスタイミングとしかいいようがない
これのせいで少し気まずくなってしまう
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
四つの沈黙
四者の表情は同じ、圧倒的に同じ
この重くなった空気を雛苺が破る
「水銀燈・・・」
「水銀燈、ごめんなさいなの」
雛苺は零から飛び降りて頭を下げる
それを見て水銀燈はカイジから降りて華麗に着地する
「今回は特別に許してあげるわ、感謝なさぁい」
そういってそっぽを向く
これだけ見れば全く反省していないように見える
しかし三人には水銀燈の誠意が伝わってきた
これが水銀燈なりの謝罪、和睦、氷解
仲直りというヤツだ
学校だったら怒られるような謝罪の仕方だがこの家では通る
この三人は官僚的な屑教師とは違う
水銀燈は赤らめている顔を隠すようにカイジに飛びつく
「(ああ良かった良かった・・・それにしても重いな)」
四人は1階に降りる
零は帰ろうと靴をはいたその時水銀燈が呼び止める
予想外の事に少し困惑する零
予想外の事というのはカイジと雛苺も同様
圧倒的に同様
水銀燈は思いもよらぬ事を言い出す
「特別に夕食を食べさせてあげるわ、感謝なさい」
水銀燈は零に心を開く
それを聞いて雛苺は零と顔を見合わせて笑う
認められたのだ
零を家族として認めたのだ水銀燈は
「有難う、じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
零はそういって微笑する
雛苺は身長に似つかわしくない跳躍力で零に飛びつく
零が夕食を食べていく事が決まると水銀燈は居丈高に命令する
「さぁカイジ、早く用意しなさぁい、零、貴方はさっさと部屋を片付けなさい」
子供の面倒見に定評のある零編 完 後書きみたいなもの
後半になるにつれて書き方が雑になると言うことで定評のあるこの作品
雛苺が目覚めるという事を書きたかっただけなのに美心が出てきてしまった
とにもかくにも三体のドールが目覚め友情が芽生える
話をまとめるとこうなる
?雛苺目覚める
?美心とフラグが立ってしまう
?雛苺はカイジの下に居候
?零に心を許す水銀燈
?皆家族仲良し
?そして伝説へ
次回予告みたいなもの
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「{ l7l7 //
{ !_ノ! (ニ=== /,へノ!
`- '´ 丶'^ ‐'
/⌒ 、
, '"⌒Y:::::::::::::::ヽ
ノ:::::::::::/ヘ:::::::::::::::::゙ 、
/:::::::_,,ノ、 >、_;;;:::::::i
/,.::|r、==、 ,==,,i;;::::l やさし――
l:|Fl|く_ ・ ,. 、・ _ノ |lュl:l
l::ヒl///ij~i_ _j~u///ソ:! カイジくん・・・・・・・・!
|::::::|{r,ェェェェェェェヽ|::::::|
|:::::::llヒェェェェェェェェェェリ::::::|
ノ:::::::ヽ ̄ ̄三 ̄ ̄,.':::::::l
/:::ハ::::r'`¨i'''‐-‐''i¨´ヘ:::::」
└r'"~ ヽ ヽ、_,,シ _ノ `゙ヽ、
r'"\ ヽ、_ ノ /`''、
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.l /|.l:::::::|llllヽ、||::|::llll::l:::ヽ/''´。 ,、lllllll:::u::|, ヽ,::l u ,、-'´
l / |.| |ヽ====、::::ll:::::u::::::`''-''´llllllulll/::|, l `ヽ、 /l | ………
| ./ .|| ヽ'ー-゚‐'/::::lll ::::::::: lllllll lllll::llll/lll:::::| | ;: ,l/ || おまえだけは
|/. | ヽllllll/:::u:::ll iju lll llllll/:llll::llll::::| | :: | /`丶ー ………!
|| | ヽ/:::::u::::::: llu/ :::::::: _ll::| | : |./
. /::::::::::::::::_,,`) u ,、-、'´ヽ):| .|;; : ||
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ヽヽ、,、`''´ u,,,,,,;;;; ll::llll:::/;;;.::N | .: | llllll
ヽ、 '''''''''''' ll::llll::/;;;; l.| :.| lllllllll
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. ≦ ヽ やっぱり《13》より《カイジさん》ですよね
. イイ/lイ/|/|/イ/Vv,ィ, i 俺は他人に流されたりしませんから安心してくださいよ
/´ 〃 |
/ ̄`'‐、 , ‐''"´ ̄ | |
. !==。=、 _ =。=== .|.r‐、.!
l.` ‐-/ ゙ ー--‐ ' .|.!‐、}|
l / __ , |lヽ,/|
i ゙ー____, |!ン .ト、
. ヽ __ /ヽ | ヽ
_, ‐''7ヽ  ̄ / ヽ.| .|`'‐、._
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// / | lヽ./ /l | |
'/ / _,| ト、 ,イ│ │
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__....ヽ `´ ∠
∠ \ ククク・・・
/ /|/1 ヾ
lイ /|/ .|/|/レ ヾ 馬鹿だなお前・・・・・・
|/レ|芒。〉 芒。テ| n .| くぐっちゃえばいいのさ 生死の境目とやらを・・・・・・
l / 、 .|.|リ |
l `---- .||´ハ
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_.. -‐ '' " /ヽ_/ | |
/ | ノ .|
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∠ ´ ,.>
. /  ̄`>
/ ,、 `\ か、勘違いするなよ
. ! / \ \. トゝ 死が怖いんじゃない
│ , ,.イ /、._, uヽ |ゝ、 N 無意味な死はゴメンだと言っているんだ
. | /レ' レ\,/ /V '´ l\! デメリットから逃げるための死なんて結局それもデメリットだ
|. r;=、 .ノ=a=== ,, ,/a===! 特に一番のデメリット要素は・・・
| |.ト、| | u` ー--‐ " u\ーァ"!
| l ヒ |:|. u r __ \l
| `ー 1|、 ヾニ二二二二フ 7′
ノ | \ ___ /
. / ,ヘ、 ト、 \ u  ̄ ̄ /l
/ ./\.ヽ. ヽヽ、 \ , ' ,'
,' , ./ \ヽ、ヽ \./`iイ /
. /l/l/ |\\ヽ ヽ. Wレ'
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. く ! ,ィ!7´ ー ` ヾ-' ´ ヾトt、`¨ {
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/ '´,イ'' ! i/ ' i: i l l :! i ハ \` 馬鹿も休み休みいえなのー
ム=ィ{i'´ ,イ ll i l|: l | l |l |! l l-‐ ハ
. /¨/- '´_.| |l ,!┼! l l ハ‐-!、 ,イ !リ,イ ニ!
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ト-レ'´-_、 〉}| i'f::ハ:i` ` f:ハ::!}レ/≦ュ-/
てヾr'´-ュ7イリ_ ヒ:Vリ ヒVリ lrくァ/´/
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Nミ || ||| ||| _,、彡 彡 }
N、/ \|||,, - '" ヽ ,彡 彡ノ
|ミ/ ー--‐ ヽ彡 彡7 フフ……
|/‐- 、 ー‐ , -ー‐ 〉彡 ノ 名言だろう……?
`ー、 |-==。=、 _=。==- |r、彡7
-、 ヽ | `ニニ',| ~`ニニ ||ヨ=ノ どうだカイジ?
'i ) 'i,.r‐' ,斗ャ、 `ー、 i!ノ=/ 実らぬ愛に必死・・・
__'、'_∧/_,x '`x'─' '/| /ト--
__`寸・托7, / イ / ,|' |─ 醜女が失敗するパターン
〈 / / / |/ /;| 'i, その典型──!
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