2011年01月25日 21:16
いーちゃん「へえ、雛見沢ですか」
1. 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/01(水) 17:52:12.04 ID:X3t9et.o
・本作は、戯言シリーズ、ひぐらしのなく頃に、のクロスオーバーSSです。
・なお、両作品ともにネタバレを含みますので、未見の方はお気を付け下さい。
2. 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/01(水) 17:54:22.55 ID:X3t9et.o
「いーは、それを怖いと感じますか」
「……もしも、それが本当の事だったとしたら――間違い無く地獄だね」
ぼくは答える。
「でも、いーとボクは違う。そう感じる意味が違う」彼女は迷う事も無く、こう断言した。
これは、ぼくと彼女が交わした、一つの会話の欠片。
「ボクはね、死ぬ事は怖く無いのですよ。だけど、いーの事が怖い」少しだけ躊躇いながら。
「――ねえ、いー。いーはどうして生きているのですか?」
彼女はさらりとぼくに言った。そう言うのが当たり前のように。
ぼくにそう聞くのが、まるで運命だというように。まるで例外だというように。
その小さな瞳で、ぼくの表情を見つめた。
まるで、見透かすように。
まるで、探るように。
まるで、弾劾するように。
まるで、断罪するように。
そして、言葉を模索し、躊躇いながら。
「いーは……どうして、生きていられるのですか?」
ぼくの答えを聞かずに、彼女は続けた。
「たとえば、沙都子は……」彼女は眠っている沙都子ちゃんへ目をやり。
「沙都子は本当に、本当にいい子です。だけど、とても、とても可哀そうな子です」
「……多分そうなんだろうね。きみがそう言えるのなら」ぼくは言った。
彼女がその事実を認めているのは、とても悲しい事だ。
だけど、ぼくが言える事はこれだけだった。
何かを言えたとしても、それは誰に為にもならない。
ぼくの為にも、沙都子ちゃんの為にも。
「優しい兄が消えても。たとえ意地悪な叔父に苛められようとも。沙都子は、必死で生きています。ボクも――」
数瞬の間。
彼女はくす、と笑った。だけど目だけは、とても悲しそうにぼくを見つめる。
それは、とてもちぐはぐで、あやふやな表情。
意味や、理由を抱え込み、なおかつそれを無視する徹底した諦めの表情。
「――ボクもそういうふうに生きたかった。たとえ、後悔しか残らなくても。苦しみしか残らなくても……ボクは、そう生きたかった」
どうしようもない告白に。
どうにもならない途絶の、認めないための過去系の言葉に。
ぼくは何も言わない。このぼくに、何かが言えるはずはない。
「いー。お願いがあります」
彼女は顔を上げ、ぼくの目を真っ直ぐに見つめて。
精一杯作った笑みの表情で。
ぼくに願った。
ぼくは、後に続くその言葉を知っている。
いつか誰かに、違う言葉で聞いた事があるから。
だけど、理解できない。
だから、理解できない。
けれど……故に理解できる。
それは、終わらない終わり。終われない終わり。繰り返す終わり――。
彼女はいくらか間を置いて。
「キミにお願いがあります――」
それは、欠陥製品の戯言でも、人間失格の傑作でもなく。
ただただ純粋で、どうしようもないほど腐敗して、狂って、歪んだ、悲しい、永久という牢獄に捕らわれた永劫の願いだった。
「――ボクを……殺してください」
と。壊れた願いを、ぼくは、彼女に乞われた。
だから――ぼくは――。
これは彼女達の物語。
進み、止まり、戻る。
そしてまた進まされ、止められ、戻る。永久の螺旋階段での遊戯。
たとえ、百回以上試してみても、終わらない、終われない、児戯としても不可解に過ぎる遊び。
これはすでに、戯言遣いの物語では無かった。戯言にすらならない。
永遠に続く欠片。
永劫に続けさせられる、惰性のみで生かされている結果。
いや、生かされているというのは違う。
ただ、続いているというだけだ。
人としての役割など何一つ果たさない諦めの、行き止まりの、一方通行の物語。
だが、それ故に戯言である矛盾。
彼女にとっての全ては、欠片を構成する材質。歯車の一つ。
それは、誰であっても同じ枠組みであり。
誰に対しても、たとえ自分に対しても、一切の思惟も、遠慮も無く、等しく同一であり、
それらの世界は傷だらけの、いや、傷を付け過ぎた欠片だった。
それ故に、傷痕。それも、致命的な疵。
純粋であるが故に、名前を捨てた彼女も。
互いが愛したが故に、互いの血を呪う双子も。
救いを望むが故に、救いに望めない少女も。
死んで、死ななくて、延々と終わらない彼女は、永遠に終わらない。
だから傷を消す為に、未だ治らずに生々しい傷口の上から絶えずに傷を付け続けた。
だけど、ぼくには分からない。その行為にどれほどの覚悟や意志があったとしても。
ぼくには、解らない。
だから、
ぼくは――きみに――
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1. 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/01(水) 17:52:12.04 ID:X3t9et.o
・本作は、戯言シリーズ、ひぐらしのなく頃に、のクロスオーバーSSです。
・なお、両作品ともにネタバレを含みますので、未見の方はお気を付け下さい。
2. 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします 2009/04/01(水) 17:54:22.55 ID:X3t9et.o
「いーは、それを怖いと感じますか」
「……もしも、それが本当の事だったとしたら――間違い無く地獄だね」
ぼくは答える。
「でも、いーとボクは違う。そう感じる意味が違う」彼女は迷う事も無く、こう断言した。
これは、ぼくと彼女が交わした、一つの会話の欠片。
「ボクはね、死ぬ事は怖く無いのですよ。だけど、いーの事が怖い」少しだけ躊躇いながら。
「――ねえ、いー。いーはどうして生きているのですか?」
彼女はさらりとぼくに言った。そう言うのが当たり前のように。
ぼくにそう聞くのが、まるで運命だというように。まるで例外だというように。
その小さな瞳で、ぼくの表情を見つめた。
まるで、見透かすように。
まるで、探るように。
まるで、弾劾するように。
まるで、断罪するように。
そして、言葉を模索し、躊躇いながら。
「いーは……どうして、生きていられるのですか?」
ぼくの答えを聞かずに、彼女は続けた。
「たとえば、沙都子は……」彼女は眠っている沙都子ちゃんへ目をやり。
「沙都子は本当に、本当にいい子です。だけど、とても、とても可哀そうな子です」
「……多分そうなんだろうね。きみがそう言えるのなら」ぼくは言った。
彼女がその事実を認めているのは、とても悲しい事だ。
だけど、ぼくが言える事はこれだけだった。
何かを言えたとしても、それは誰に為にもならない。
ぼくの為にも、沙都子ちゃんの為にも。
「優しい兄が消えても。たとえ意地悪な叔父に苛められようとも。沙都子は、必死で生きています。ボクも――」
数瞬の間。
彼女はくす、と笑った。だけど目だけは、とても悲しそうにぼくを見つめる。
それは、とてもちぐはぐで、あやふやな表情。
意味や、理由を抱え込み、なおかつそれを無視する徹底した諦めの表情。
「――ボクもそういうふうに生きたかった。たとえ、後悔しか残らなくても。苦しみしか残らなくても……ボクは、そう生きたかった」
どうしようもない告白に。
どうにもならない途絶の、認めないための過去系の言葉に。
ぼくは何も言わない。このぼくに、何かが言えるはずはない。
「いー。お願いがあります」
彼女は顔を上げ、ぼくの目を真っ直ぐに見つめて。
精一杯作った笑みの表情で。
ぼくに願った。
ぼくは、後に続くその言葉を知っている。
いつか誰かに、違う言葉で聞いた事があるから。
だけど、理解できない。
だから、理解できない。
けれど……故に理解できる。
それは、終わらない終わり。終われない終わり。繰り返す終わり――。
彼女はいくらか間を置いて。
「キミにお願いがあります――」
それは、欠陥製品の戯言でも、人間失格の傑作でもなく。
ただただ純粋で、どうしようもないほど腐敗して、狂って、歪んだ、悲しい、永久という牢獄に捕らわれた永劫の願いだった。
「――ボクを……殺してください」
と。壊れた願いを、ぼくは、彼女に乞われた。
だから――ぼくは――。
これは彼女達の物語。
進み、止まり、戻る。
そしてまた進まされ、止められ、戻る。永久の螺旋階段での遊戯。
たとえ、百回以上試してみても、終わらない、終われない、児戯としても不可解に過ぎる遊び。
これはすでに、戯言遣いの物語では無かった。戯言にすらならない。
永遠に続く欠片。
永劫に続けさせられる、惰性のみで生かされている結果。
いや、生かされているというのは違う。
ただ、続いているというだけだ。
人としての役割など何一つ果たさない諦めの、行き止まりの、一方通行の物語。
だが、それ故に戯言である矛盾。
彼女にとっての全ては、欠片を構成する材質。歯車の一つ。
それは、誰であっても同じ枠組みであり。
誰に対しても、たとえ自分に対しても、一切の思惟も、遠慮も無く、等しく同一であり、
それらの世界は傷だらけの、いや、傷を付け過ぎた欠片だった。
それ故に、傷痕。それも、致命的な疵。
純粋であるが故に、名前を捨てた彼女も。
互いが愛したが故に、互いの血を呪う双子も。
救いを望むが故に、救いに望めない少女も。
死んで、死ななくて、延々と終わらない彼女は、永遠に終わらない。
だから傷を消す為に、未だ治らずに生々しい傷口の上から絶えずに傷を付け続けた。
だけど、ぼくには分からない。その行為にどれほどの覚悟や意志があったとしても。
ぼくには、解らない。
だから、
ぼくは――きみに――

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