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キョン「またサイレンが鳴る…」

2009年05月25日 22:00


キョン「またサイレンが鳴る…」  前編 携帯用

キョン「またサイレンが鳴る…」  後編 携帯用

涼宮ハルヒの憂鬱×SIREN(サイレン)

完結作品

同作者作品 ハルヒ「霧が深いわね」 携帯用

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阿部 「○中出身、阿部高和。ただの人間には興味はない」

2009年05月25日 21:51

のくす牧場

1 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします - 2008/09/18(木) 12:32:55.74 ID:g4Bgntws0

阿部 「この中にガチホモ、ノンケだが男に興味がある奴が居たら俺の所に来い。以上」

キョン「なぁしょっぱなのっ自己紹介のアレどのあたりまで本気だったんだ?」

阿部 「しょっぱなのアレとは?」

キョン「いや、だからガチホモがどうとか」

阿部 「お前ガチホモか?」

キョン「いや、違うけどさ」

阿部 「なら、ノンケだが男に興味があるのか?」

キョン「いや、それも違うけど」

阿部 「なら、話しかけるな」

キョン「・・・」


谷口 「もし、あいつのことが気になるなら悪いことは言わん。やめとけ。
     中学で阿部と3年間一緒だったからよく知ってるんだがな、
     あいつの変体ぶりは常軌を逸してる」

道下 「あの自己紹介?」

谷口 「そっ。中学時代にも訳わからん事をしていたな。有名なのは公園連続菊斬り事件」

キョン「なんだそりゃ?」

谷口 「あとは、トイレ汚物事件」


キョン 「体育の授業は男女の着替が別なのだが、
     阿部は女子が残ってるのにも構わずいきなり制服(なぜパンツまで脱ぐ!)を着替え始めた」
    
(どうやら、女子のことは最初からアウトオブ眼中らしい)

キョン 「呆れることにこの学校に存在するすべてのスポーツクラブに仮入部していたのだった」
    
(運動神経が良いのか、かなりのクラブから勧誘されていたがどこにも入部することはなかった。特に柔道部からすごかったな。寝技がすごいとかどうとか・・・)


数週間後


キョン(席替えだ!これで後ろの阿部から尻にちょっかい出されることも無い!
    ふぉ~えばぁ~阿部!)


キョン(・・・偶然だよな?)

阿部 「またキョンの後ろか。よろしくな」

キョン「そういや、良いクラブはあったのか?」

阿部 「全然ダメだな。良い男が居ない」

キョン「・・・」

阿部 「高校に入れば良い男がゴロゴロ居ると思ったが中々居ないんだな」


阿部 「キョン、ちょっと来てくれ」

キョン「?」

阿部 「良いクラブがないなら作ればいいんだ。
     生徒手帳に書いてあったんだが新しいクラブを作るには最低でも5人はいる。
     だから後3人良い男を知 ら な い か ?」

キョン「なぜ、3人なんだ?後4人じゃないのか?」

阿部 「君は決定してるんだ。俺のクラブには君は必要不可欠。反論は認めん」

キョン「・・・」

阿部 「部室のことはもう大丈夫だ。即OKしてくれたよ。今日の放課後に文芸部の部室に集合だ。
     逃げたら尻刑だからなっ!」


阿部 「よしっ。行くぞ」

キョン(俺は引っ張られながら文芸部まで連れて行かれた)

阿部 「よっ。さっきはどうも」

長門 「・・・」

キョン「え~っと・・・」

阿部 「彼女は長門さんだ」

キョン「その長門さん・・・この部屋を使っても良いのか?

長門 「・・・」コクリ

キョン「怪しい部室になっても良いのか?」

長門 「・・・それは困る」

キョン「なら帰ろう」

阿部 「お~っと、待ってくれよ。俺は別に怪しい部にするつもりはない。
     ただ、高校生活をエンジョイしたいだけだ」

キョン「・・・まぁ、いいがお前が怪しいことをした時点で俺はここには来ないからな」

阿部 「OK」

キョン「長門さん、これからお邪魔になるけどいいか?」

長門 「構わない」


阿部 「キョン!先に部室に行っていてくれ!」

キョン「はいはい」


キョン「うーっす」

長門 「・・・」

キョン「なんの本読んでるんだ?」

長門 「・・・ksmsテクニック」

キョン「おもしろいのか?」

長門 「ユニーク」


阿部 「よっ。新人だ。2年の朝比奈みくるさん」

キョン「メガ盛り!!」

みくる「ひぇー、ここはぁいったいどこなんですかぁ?」

阿部 「正直俺はあなたに興味は無い。だが、良い女が居れば男が来るだろ?」

みくる「なにをいってるんでしゅかぁ?」

阿部 「いうなれば君はこの部の男HOI☆HOIなのさ」

みくる「・・・私書道部に所属してるんですけど」

キョン「じゃあ、ダメだな」

阿部 「は?書道部?そんなところよりこっちのほうがいいぞ?
     退部届けだしといてやるからこっちに入れ」

みくる「・・・」

長門 「・・・」

みくる「わかりました・・・」

阿部 「そうこなくっちゃ」


キョン「うーっす。長門だけか?」

長門 「・・・」コクリッ

阿部 「俺は華麗にスルーかい?」

       コンコン

みくる「失礼しまぁしゅ」

阿部 「お、やっと来たな」

みくる「ひゃい?」

阿部 「よしっ!行くぞ」

みくる「どこに行くんでしゅかぁ?」

阿部 「コンピ妍だ」


部長 「何なんだね?」

阿部 「いやぁ、パソコンがほしくってね。ここのを1台く れ な い か?」

部長 「なんだと?寝言は寝てから言いたまえ」

阿部 「やれやれ・・・強硬手段にでるしかないのか。みくるちゃん、『撮れ』と言ったら押してくれ」

みくる「ひゃぁい」

阿部 「撮れっ」

        カシャッ

部長 「アッー」

阿部 「この写真をばら撒かれたくなかったらパソコンをよこすんだな」

部長 「・・・それをくれてやるよ」

阿部 「どうも」

みくる「ひゃ~」


キョン「すごいな。これ最新式のパソコンだぜ?」

阿部 「俺に不可能はないってことさ。今日は疲れたから解散だ。また明日な」バタンッ

みくる「私も先に帰りますね~」バタンッ

長門 「・・・これ」

キョン「ん?」

長門 「今日読んで」

キョン「わかった」

長門 「・・・じゃあ」バタンッ

キョン「俺も帰るか」


キョン「長門からの本・・・ksms?・・・あの時の本か?」

         ヒラリッ

キョン「栞が落ちた。・・・何か書いてあるぞ」


キョン「!」ダッ


キョン「スマン。待たせたか?」

長門 「全然」

キョン「話ってなんだ?」

長門 「ここではなんだから私の家に来て」

キョン「なぬ!?家の人に迷惑じゃないのか?」

長門 「家の人は私しかいない」

キョン「そうか・・・」


キョン「で、話とは?」

長門 「ナンチャラ私にはカンチャラ解らないがナンチャラ彼はカンチャラある事件がナンチャラきっかけでカンチャラある力をナンチャラ授かったカンチャラどういったナンチャラ経由かはカンチャラ私にもナンチャラ解らないがカンチャラ彼にはナンチャラ男をカンチャラ虜にするナンチャラ力があるカンチャラ」

キョン「なるほど」

長門 「私の仕事は・・・阿部高和を観察して、入手した情報を統合情報思念体に報告すること」

キョン「まぁ、覚えておくよ。今日はもう帰るな」


阿部 「キョン!聞いたか?6組に転校生が来たらしいんだ!この時期にだぜ?」

キョン「それで?」

阿部 「この時期に転校生。良い男ならいいんだがな。次の休み時間にでも見に行かないか?」

キョン「1人で行ってろ」

阿部 「ひゅ~っ。つれないな」


放課後部室


キョン「よっ」

長門 「・・・」

キョン「長門1人か?」

長門 「・・・」コクッ
キョン「なぁ、あいつには男を虜にする能力があるんだろ?なら、なぜ俺は普通なんだ?
    いや、普通のほうがいいんだが」

長門 「解らない。ただ、阿部高和はあなたのことを」

みくる「こんにちはぁ~」

キョン「こんにちは。朝比奈さん」

阿部 「みんなそろってるか?新しい部員を連れてきたぞ」
阿部 「自己紹介よろしく」

ガチホモ 「古泉 一樹です。よろしく。」

阿部 「なかなか良い男だろ?」

ガチホモ 「よく言われます。ところで、この部は何をする部なのでしょうか?」

阿部 「よくぞ、聞いてくれた!」


阿部 「世界の 男と セッ○ス する為の団だ!略すとSOS団だな」


小野 「ふむ。まあ、いいでしょう。入りましょう」

キョン(そんなアッサリ!!!まさか、これも阿部の力か?)

阿部 「次の日曜日は男探索するからな。駅前の公園のベンチに集合。
     遅れたら罰金or尻刑、以上。今日は解散」


ジリリリリリリリリリ


キョン「・・・うわっやべ!」

阿部 「遅い。尻刑!!」

キョン「罰金にしてくれ!!」

小野 「僕が代わりに罰を受けましょうか?」

阿部 「じゃあ、朝飯でも食べに行こうか」

小野 「んふっ。無視とは困ったものです」


阿部 「こんな物を用意してみた。くじ引きで班に分かれよう。
     二手になったほうが探索率は上がるからな」

阿部 「キョンとみくるちゃん、俺と長門と古泉か」

阿部 「キョン!デートじゃないんだぞ?良い男発見したら俺の携帯に掛けてこいよ」

キョン「どこかに散歩でもしますか?」

みくる「そうですね。話したい事もありますし」

キョン「では、少し歩きましょうか」


キョン「で、話とは?」

みくる「私はこの時代の人間ではありません。もっと未来から来ました」

キョン「どこ○もドアは開発されたんですか?あれは便利ですよね」

みくる「まだですね。それと近いものなら開発されてますよ」

キョン「なんですと!!」

みくる「電話で考えてください。電話×電話でお話できますよね?原理はそれと一緒です」

キョン「ドア×ドア同士なら移動できる。ですか?」

みくる「そうです。まだ試作段階なんですが距離が50km以内なら移動できるんです」

キョン「便利な世の中になってるんですね。あとグル○テーブルかけはどうなんですか?」

みくる「あれはできませんね。
    私が生まれる前に開発しようとした話は歴史の教科書に載っていたんですが・・・」

キョン「失敗して大惨事になったと」

みくる「はい・・・」


みくる「話がそれてしまいましたね」

キョン「すみません」

みくる「私が未来人だって事には驚かないんですね?」

キョン「いや、別に」

みくる「では、話します」

みくる「私の時代にはタイムトラベル。所謂、時間旅行が流行なんです」

みくる「そして最近、この時代の3年前より前には行けない。
    即ち、この時代が限界になっているんです」

みくる「だから、私はそれを調査する為にこの時代に来たのです。
    ある程度理由は解っているのですが」

キョン「阿部。ですね」

みくる「はい。彼が原因だとは解っているのですが」

キョン「まぁ、気長にやりましょうよ」

みくる「そうでしゅね」

キョン「そろそろ集合時間なんで行きましょうか」


阿部 「尻刑!!」

キョン「罰金で」

小野 「もう私は何も言いませんよ」


阿部 「くっ!次はキョンと長門、俺とみくるちゃんと古泉か」
阿部 「くれぐれも言っとくが」

キョン「デートじゃない」

阿部 「ひゅ~っ。わかってるじゃないか」

キョン「どこか行きたい所はあるか?」

長門 「カレーうどんが食べたい」

キョン「カレーうどん?」

長門 「そう」

キョン「そうか。じゃあ、あの店にでも行くか」

長門 「・・・」コクッ


店員1「らっしゃい」

長門 「ウルトラジャンボカレーうどん」

店員1「本気かい?」

長門 「・・・」コクッ

店員2「今まででこれを頼んで完食した奴は1人しかいないよ?」

店員1「それでもやるのかい?」

店員2「完食しないと罰金だよ?」

長門 「御託はいい」

店員2「なら、15分待ってて」

店員1「震えるぞ鍋!燃え尽きるほどホット!刻むぞカレーの香り!」

店員2「シーーーーーーーーザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!サラダどうぞ」

店員3「てめーのうまさは・・・たった一つだ。たった一つのシンプルな答えだ。てめーが俺は好きなんだ」

店員4「ドラドラドラドラドラドラドラドラドララァッ!!」

店長 「この僕には夢がある。世界一のカレー屋になるという夢がな!」

店長 「どうぞ。今から20分以内で食べきれば1万円。無理だった場合は罰金5000円」

店員4「スタートゥ!!」


長門 「ハフッハフッ」
長門 「ゴクゴク」
長門 「ハフハフ」


店員3「こいつぁ、すげぇや。もしかするともしかするかもしれないぜ?」

店員2「トイレ行って来るわ」

店長 「もしこれを食いきったらあの子以来だな」

店員1「たしか、食いすぎて公園でトイレをしに行った子だっけ?」

店員4「そうそう。あれはまさにすごい事件だったな」

店長 「たしか、あれは3年前だっけ?」

店員2「ただいま。あの子はたしか今高1のはずだよ」


長門 「ごちそうさま」

店長 「ものの10分で完食だと!?」

店員一同「おめでとうございます!!」

長門 「私の胃袋は・・・宇宙だ」

キョン(存在自体が宇宙だけどな)

店長 「ありがとうございました~!」

キョン「そろそろ、時間だし行くか」

長門 「今度は図書館に行きたい」

キョン「わかった。ほら、行くぞ」


阿部 「じゃぁ、今日はそろそろ解散。また明日!」


阿部 「キョン。今日俺は部活に行けない。みんなに伝えておいてくれ」

キョン「?わかった」
キョン(丁度いい。あいつに聞きたいこともあるしな)


キョン「ちわ~っ」

長門 「・・・」

ガチホモ 「こんにちは」

みくる「こんにちは~」

キョン「古泉・・・少しいいか?」

ガチホモ 「構いませんよ」


ガチホモ 「どこからお話すればいいですかね?」

キョン「ある程度はわかってる」

ガチホモ 「ならば話は早い。まずは僕たちの事です」


ガチホモ 「僕は超能力者です。と、言ってもある空間だけの話ですが
     僕達は彼の機嫌が悪くなったときに発生する
     ゲイ鎖空間と言われる場所に出てくるゲイ人と戦っているのです」

キョン「ふむ」

ガチホモ 「それもこの力が出てきたのが3年前。
     それから少しずつですが超能力者達が集まって来たのです
     不思議な事に機関の人間はほとんどが男性。
     女性の方が居ても世間では『腐女子』といわれる方ばかりです」

ガチホモ 「まさにミステリーワールド」

キョン「納得した。が、お前達はなんで超能力者になったんだ?」

ガチホモ 「彼の気紛れ。と、しか言いようがありませんね」

キョン「あいつの事はどこまでわかってるんだ?」

ガチホモ 「彼にも能力があるんですよ」

キョン「男を虜にする能力か?」

ガチホモ 「知っていたのですか?」

キョン「まあな」

ガチホモ 「少し・・・違いますね。彼はそんな生易しくはありません」

キョン「マジか!?」

ガチホモ 「彼には・・・願棒を実現する能力がある」

キョン「まぁ、どうにかなるさ」

ガチホモ 「んふっ。どうでしょうかね?」

キョン「次の授業が始まるからまた部室でな」

ガチホモ 「待っていますよ」


阿部 「キョン。すまないが先に部室に行っていてくれ」

キョン「はいよ」


キョン「ちわ~」

長門 「・・・」

みくる「こんにちは」

ガチホモ 「こんにちは」

キョン「阿部は遅れるらしい」

ガチホモ 「そうですか。なら、待っている間にボードゲームでも如何ですか?」

キョン「手加減しないぞ?」

ガチホモ 「望むところです。負けたらジュース。と、言うのでどうでしょうか?」


ガチホモ 「完敗です。いやぁ、お強いですね」

キョン「お前が弱いだけだ。俺コーラな。ペプシのツイストだぞ。それ以外のコーラ買ったら殴る」

ガチホモ 「仕方ありませんね。売ってなかった場合はどうすればいいでしょうか?」

キョン「探して来い」

ガチホモ 「んふっ。僕がMだと気づいていますね」ボソッ

キョン「何か言ったか?」

マゾホモ 「何も言っていませんよ」

  パタンッ

阿部 「待たせたな!」


阿部 「ひゅ~っ。みんな帰っちゃってるじゃないの」

ピリリリリ

キョン「誰だ?古泉からか」ピッ

ガチホモ 「もしもし、大変な事になりました」

キョン「なにがだ?」

ガチホモ 「急を要します。今すぐに学校の校門前までに来てください」


キョン「で、大変な事とは?」

ガチホモ 「落ち着いて聞いてください。阿部さんがこの世から消えました」

キョン「どういうことだ?」

ガチホモ 「長門さん。詳しいことを彼に」

長門 「阿部高和は1時間13分27秒前にこの世界から消えた」

ガチホモ 「阿部さんはゲイ鎖空間に行ってしまったのです」

長門 「これまでにゲイ鎖空間を発生させた痕跡は在ったが
     阿部高和がゲイ鎖空間に行ったのは今までに事例がない」

みくる「ひゃ~」

キョン「それで俺にどうしろと?」

ガチホモ 「僕と一緒にゲイ鎖空間に来ていただけませんか?」

キョン「断る」

マゾホモ 「んふっ。困ったものです」

長門 「あなたは行かなければならない」

キョン「なぜ?」

長門 「あなたが鍵。それにこのままにしておくとこの世界が消える」

キョン「はぁ・・・めんどくさいな」


ガチホモ 「では、行きましょう。僕の手を握ってください」

キョン「握る必要は?」

ガチホモ 「遠足に行くときは隣の人と手を繋ぐって言われてませんでしたか?」

キョン「仕方あるまい」グッ

ガチホモ 「ゲイ鎖空間の彼方へ!さぁ、行くぞ!」


~ゲイ鎖空間~


キョン「ここがゲイ鎖空間か・・・」

古泉 「気をつけてください。ゲイ人が出てきたら厄介ですから」

キョン「少しそこら辺を見てみるか」

古泉 「・・・厄介な事になりそうですよ」

キョン「どうした?古泉」

古泉 「ゲイ人です!逃げてください!」


キョン「あれが・・・ゲイ人・・・」

古泉 「ゲイ人は2対で1体。気をつけてください。奴らは凶悪な液体を飛ばしてきます」


ゲイ人1「ウホッウホッ」

ゲイ人2「イイッイイッ」


古泉 「気をつけてください!飛ばしてきますよ!!」

キョン「任せろ!」


ゲイ人1「ウホ」

ゲイ人2「イイ」

ドピュシャアアアアアアアアア

古泉 「大丈夫ですか!?」

キョン「なんとかな。それにしてもくさいな」

古泉 「でしょ?けど、僕のような人間はこの匂いで興奮するんですよ」

キョン「何か言ったか?」

古泉 「いえ、なにも」

キョン「あの赤い玉はなんだ?」

古泉 「森さんと新川さん!僕もお手伝いに行ってきます」

 プロロロロロ

キョン「ん?メール?」ピッ

長門 『届いた?』

キョン『届いてるぞ』

長門 『まずは、阿部高和を探して。そしてあの時を思い出して』

キョン『あの時?何を言っているんだ?』

  see you

キョン「携帯の電源が切れた・・・」


キョン「くそっ!あの時ってどの時だ!」
キョン「とりあえずは阿部を探しに行くか」


キョン「学校には居ないのかよ!どこに居るんだ。よく思い出せ俺!」
キョン「・・・ピキーン」
キョン「あそこだ!!」


キョン「阿部!!」

阿部 「おや、キョンじゃないか?どうしたんだい?」

キョン「お前がどうしたんだ!」

阿部 「いや、ちょっとベンチで休憩をね」

キョン「まぁいい。帰るぞ」

阿部 「帰る?何を言ってるんだ?」

キョン(こいつはここがゲイ鎖空間って解ってないのか)
キョン「ここは夢の中だ。つまり起きろってことだ」

阿部 「夢の中か・・・ならばキョン、俺に付いて来い」


キョン「このトイレに何かあるのか?」

阿部 「夢なら俺の好きにしてもいいと思うのは俺だけか?」

キョン「何を言っているんだ?」

阿部 「俺は同意を得ないホモセッ○スは嫌いでね。夢の中なら許可もいらないだろ?」

キョン(俺、すごく危険な状態じゃないか?)

阿部 「とりあえず脱げよ。いや、俺が脱がしてやるよ」


キョン「ちょっと待て」(考えるんだ俺)

阿部 「どうしたんだ?」

キョン「心の準備がまだ」

阿部 「ウブいな。少しだけ待っててやる。準備ができたらベンチに来い」


キョン(待てよ。何かが引っかかる)

キョン(・・・・・・・・・・・・)

キョン「はっ!わかった!!だけど、これは俺にはきつすぎる。古泉に頼もう」

キョン「阿部!少し待ってろ!必ず来るからな」

阿部 「ギンギンにして待ってるぜ」


~学校校門前~


キョン「古泉!どこだ!」

古泉 「どうしたんですか?」

キョン「少し話せば長くなるが」
キョン「カクカクシカジカカクカクシカジカカクカクシカジカ」

古泉 「んふっ。・・・あなたの頼みなら断れませんね。わかりました、承りましょう」

キョン「助かる。それじゃ公園のベンチに行ってこい」


阿部 「おや?誰か来たみたいだ」

古泉 「阿部さん。お相手いたしましょうか?」

阿部 「いいのかい?ほいほい付いてきちまって?」

古泉 「阿部さんみたいな人・・・好きですから」

阿部 「うれしいこと言ってくれるじゃないの」


~トイレ内部~


古泉 「で・・・出そうです」

阿部 「もうか?男前なのに早いな」

古泉 「いえ、そうじゃ・・・なく・・・て小・・・便が//」

阿部 「なんだって!」

古泉 「さっきから戦ってばかりで忘れていました」

阿部 「イイこと思いついた。古泉、俺のケツ穴で小便しな」

古泉 「いいんですか!?そんな興奮するようなことして!」

阿部 「構わないさ。たまには俺もアブノーマルなことだってしたいしな」

古泉 「あなたの心意気。しかと受け取りました」
古泉 「ふんもっふ!!」

阿部 「んんぅ!」

古泉 「温かい・・・//」

阿部 「よし!そのまま出してみな」

古泉 「ふんもっふ」

ジョロロロロロロロロロ

阿部 「いいぞ。腹の中に小便の温かさが伝わってくるぜ」

古泉 「気持ちいい//」


古泉 「ふぅ・・・すっきりしたところで阿部さんも気持ちよくなりませんか?」

阿部 「お前のケツ穴を使えってことか?」

古泉 「お察しの通りです。僕はこう開発しているので大丈夫ですよ」

阿部 「じゃあ、いくぜ」

    ドスッ

古泉 「あぁ//」

ドゥクシ

阿部 「こいつぁすげぇや。古泉の中気持ちいいぜ」

古泉 「僕も気持ちいいです・・・//」

阿部 「それじゃ動くぞ」

ドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシ
ドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシ
ドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシ

古泉 「も・・・うイクー!!」

ドピュル

古泉 「ハァ・・・ハァ」

阿部 「おいおい、もうイッちまったのかい?俺はまだイッてないんだが」

古泉 「すみません」

阿部 「まぁ、いい。フ○ラしてやるよ」

ペロペロペロリンチョペロペロペロリンチョペロペロペロリンチョペロペロペロリンチョ

古泉 「さすがは阿部さんです。気持ちよすぎて元気になってしまいましたよ」

阿部 「どうだい?けっこう自信があるんだ」

古泉 「では、お返しに僕も」

ペロペロペロフンモッフペロペロペロフンモッフペロペロペロフンモッフペロペロペロフンモッフ

阿部 「おぉ・・・中々うまいじゃないか」

古泉 「んふっ。ありがとうございます」

阿部 「よし。じゃあ、またケツ穴を向けな」

古泉 「準備は万端です。いつでもカモーン!」

ドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシ
ドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシ
ドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシ
ドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシ
ドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシ
ドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシドゥクシ

古泉 「また・・・イキそうです・・・」

阿部 「またか?やっぱりお前早いな」

古泉 「んふっ。」

阿部 「まぁいい。イキたかったらイキな」

古泉 「ふんもっふ~~~~!!」

ドピュピュ

※ヤマ場は越えた。想像したら胃が悪くなるぜ※

古泉 「気持ちよかったです・・・」

阿部 「俺のはまだビンビンなんだぜ?」

古泉 「すみません・・・//」

阿部 「ところで俺の金玉を見てくれ。こいつを見てくれ。どう思う?」

古泉 「すごく・・・大きいです//」

阿部 「このままじゃ収まりがつかないぜ。今日はトコトン喜ばしてやるからな」

古泉 「御願いします・・・//」


ナレーション
「そして古泉と阿部は一晩中トイレ内でホモ○ックスを楽しんだとさ」


第1話
SOS団と愉快なガチホモ
~完~



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キョン「またサイレンが鳴る…」  後編

2009年05月25日 21:48

キョン「またサイレンが鳴る…」  前編 携帯用

キョン「またサイレンが鳴る…」

途中までしか読めない方は「こちら」へ

375. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 01:27:16.28 ID:LYNQwlk0O


キョン 田堀 廃屋中の間 第2日 01時11分11秒


「なんだ!?あの音?」
「あいつらかしら…」

廃屋の中で眠っていた俺たちは、不意に聞こえてきた物音で目を覚ました。
化け物が侵入してきたらしい。
俺は火掻き棒を持って身構えた。
恐々と障子に穴を開けて、部屋の外を覗き込むと、拳銃を持った化け物が立って周りを伺っていた。
なんであんなもん持ってんだよ…

「ねえキョン、どうしよう…」
「こっちだハルヒ」

足音を聞かれないよう、俺は部屋づたいに移動する。
東へと移動し、廊下の端にある部屋の扉を開けようとしたが、鍵がかかって開かない。
なんとなく、タバコ屋で拾った鍵をさしてみると、カチンと錠前が外れた。
なぜタバコ屋なんかにここの鍵があったかはしらん。
たぶんタバコ屋の店主の一家の家だここは。
中に入ると、どうやら納戸のようだった。

「ねえキョン。こんなとこ入ってどうするのよ?」
「いや、もしかしたら裏口かと思ってだな…うわっ」

バキッと腐った床を踏み抜いて、尻餅をついてしまった。

「愚図」
「うるせえ」

ハルヒの悪口に悪態で返して、床の穴を見た。
そして、外に出る方法を思いついた。

「ちょっとキョン!?なにしてるのよ?」
「良いから手伝え」

俺は火掻き棒を使って、床板を引き剥がしていた。
ハルヒも意図に気づいて、納戸にあったマイナスドライバーで俺を手伝う。
しばらくして、ようやく人一人がくぐり抜けられそうな穴が出来上がった。

「よし。ハルヒ先に行け」
「うん」

ハルヒが身をよじって床下に入るのを見ながら、俺は拳銃を持った奴が納戸に近づくのを幻視で感じていた。
ハルヒの体が隠れ、俺が後に続く。
化け物の手が取っ手にかかり、ガラッと音を立てて扉を開いた。

…間一髪、俺は軒下へと逃れることができた。
俺とハルヒは廃屋の外へと走り、まだ真っ暗な中を刈割方面へと引き返した。


古泉一樹 病院 第一病棟診察室 第2日 02時14分31秒


「足音が…」
「朝比奈さんは隠れていてください」

慌てて衝立の向こうに隠れる朝比奈みくる。
僕はスパナを構えて、ドアの脇でそいつを待ち伏せした。
ドアノブがまわり、そいつが姿をあらわす。

見覚えのある顔。
谷口だ。

「驚かさないでください」

背後から声をかけると、彼は飛び上がった。

「うわっ!!なんだお前!古泉じゃねえか!お前こそ驚かすんじゃねえよ!」
「私もいますよ」
「あ、朝比奈さん…」

ひょっこりと姿を表した朝比奈みくるに、彼はだらしなく顔を緩めた。
失礼だが、彼がまだ生き残っているとは思わなかったので、この場で一番びっくりしたのは僕だったに違いない。
鼻の下を伸ばしてだらしない顔をしていた谷口は、急に真剣な顔つきになって

「そうだ!国木田は?国木田は来てないのか?」

と尋ねてきた。

「いえ、ここには来ていませんが…、はぐれたんですか?」
「ああ、俺を置いて先に行って…それっきりだ」

その時、朝比奈みくるが唐突に口を挟んだ。

「あのぅ…」
「どうされました?」

「お手洗いに行ってきます…」


朝比奈みくる 病院 第一病棟一階廊下 第2日 02時39分52秒


やっぱりこんな時にお手洗いなんて非常識だったのかな…
二人のびっくりした顔がまだ脳裏に焼き付いていた。
用を足して、診察室に戻る時、頭に何かの感触があった。
なんだろう、と触ってみるとベトベトしてこれはまるで…

はっと上を見上げると、屍人が四肢で天井に張り付いて、180度回転した顔でこっちを睨みつけ笑っていた。
私の頭にかかったのは唾液…。

「ひええええっ!」

ボタッ、と地面に着地する屍人に背を向け、私は診察室へと走った。

「朝比奈さん!!」

私の悲鳴を聞きつけ、古泉くんが駆けつける。
遅れて、谷口くんも。
古泉くんはスパナで素早く殴りつけ、蜘蛛屍人を倒した。
ふぅ、と息をついて、

「初めて見るタイプの屍人ですね。2階の窓から侵入したんでしょうか」

と冷静な分析をしている。
なんでそんなに落ち着いてるんだろう。すると谷口くんが

「古泉。こいつらは親玉を倒すと全滅するぞ。親玉をやっつけちまおう」

と提案した。
本当ですか、と驚いて、古泉くんは
「じゃあ僕がその親玉とやらを叩いてきます。あなたは診察室で朝比奈さんを守っていてください」
と言って二階へと上がっていった。


谷口 病院 第一病棟診察室 第2日 03時34分24秒


「遅いな、古泉のやつ」
「大丈夫かなぁ、古泉くん…」
「平気ですよ。たぶん」
「たぶん…」

不安がる朝比奈さん、なんて愛らしいんだ。
二人きりになれて俺は今猛烈に感動している!
この幸せが続くなら、村から脱出なんて出来なくてもいい。
俺と朝比奈さんが新世界のアダムとイブになるんだ。夢のある話じゃねえか。
俺が幸せな妄想に浸っているのを遮るかのように、異形の戦慄き声が地の底から響いた。
ひっ、と短い悲鳴をあげる朝比奈さん。

「古泉くん…」
泣きそうな顔をしている天使の顔を見て、俺はつい
「俺が様子見てきますよ」
と言ってしまった。
くそっ馬鹿だ俺。一緒にいられるチャンスだったのに。

「本当ですか?でも私一人になっちゃうし…」
「すぐ戻りますから。俺が出ていったら鍵をしめて、知り合い以外には開けないでください」

一度言ったことを曲げるのは男がすたるぜ。
まぁ朝比奈さんとは一緒にいたかったけどな。
そして俺は、病院地下へと向かった。


谷口 病院 地下実験室 第2日 03時44分39秒


地下へと続く暗い階段を抜け、壮絶な悲鳴のする扉を開けた。
部屋の中央には、古泉が立っていた。

その服を真っ赤に染めて。
両脇にある寝台の上には、屍人が二人、叫び声をあげつつ横たわっていた。

「おや、来ましたか」
配り歩ける程のスマイルで、古泉はこちらを振り返った。

「屍人の体はなかなか興味深い。ほら…」
古泉は脈動する肉塊を足元に投げて、踏み潰して見せた。

「こうやって心臓を潰しても死なないんですよ。自己再生してしまう」
床には、心臓に詰まっていた血が飛び散っている。

「いくらなんでもお前…」
「彼らはもはや人ではありません。どう使おうが僕の勝手です。モルモットみたいなもんですよ」

古泉の笑顔が、背筋にぞくりとした。
俺は見たくは無いのに、何故か部屋の中へと足を進める。
そして、屍人の顔を見た。
片方はイソギンチャクのような触手が張り付いた醜い屍人ーー。
そしてもう片方は。

「朝倉…」

クラスの人気者が、変わり果てた姿でそこに縛り付けられていた。胸にはぽっかりと赤い穴が開いている。

「みたいですね。どこかで命を落としたのでしょう」
平然と言ってのけるそいつの目の前で、俺は嘔吐した。
大丈夫ですか、と気遣ったセリフを吐く古泉に、

「狂ってる…」
と吐き捨て、俺は地下を後にした。


朝倉涼子 刈割 廃倉庫 初日 23時45分18秒


「ねえキョンくんもハルにゃんも大丈夫かなぁ…」
「きっと平気よ。大丈夫」

国木田が自殺したのを見て、彼女も不安になっているのだろう。
私には、不安というのがよくわからないが。
しかし、ずっと疑問に思っているのだが、何故私はこの少女をさっさと置いて行動しないのだろうか。
私の使命は長門有希のバックアップであり、涼宮ハルヒの観察だ。
この子なんてどうでもいいはずなのに。
なのに。

「さあ、行きましょう。早くキョンくんとか長門さんと合流しないとね」
「うん!」

幼い彼女の手をひいて、棚田を登り、鉄扉のほうへと歩いた。
化け物どもに大した力は無いし、私一人いればこの子を守るくらい簡単。
そう思っていた矢先。
今度は棚田を北に下っている最中にそいつは来た。
背丈は優に4mはありそうな、芋虫のような首を持った化け物。
そいつが、高台から私たちの前に飛び出してきた。

なにこいつ…
こんなやつ勝てやしない。

「逃げるわよ!」

彼女の手をひいて走ろうとした時、目の前に新たな化け物が立ちはだかった。
まずい。でかいやつに気を取られて気づかなかった。
目の前のやつに、包丁で切りつける。
しかし、一瞬の動揺が仇となったのか、相手の鎌がわき腹に突き刺さった。
相討ち。
相手は倒れたが、私は倒れる訳にはいかない。

「涼子ちゃん!」
「私はいいから、早く逃げて」
「でも…」
「逃げなさい!」

それでも愚図る彼女。
その時、背後から、物凄い衝撃が私を襲った。
ドラム缶を投げつけられ、肋骨が砕ける音がした。

「早く…走って…」

泣きながら走り出した彼女の背中を見ている私に、巨大な化け物が襲いかかる。
すぐに胴を掴まれ、私は宙に持ち上げられた。みきみきと音を立て、私の体が圧迫される。
目の前には怪物の忌々しい顔。
腹が立ったので、残った力で、そいつの目玉に包丁を突き立ててやった。脳まで届くように。

「ざまみろ」
崩れ落ちる怪物を見ながら、私は笑ってやった。

そしてあの子が走り去った方を見、果たして無事に逃げられるだろうかと、

私は不安になった。


キョン 蛇ノ首谷 選鉱所 第2日 07時03分41秒


息を切らして俺たちは走っていた。
触覚を生やした、犬のように四つん這いで走る奴らに終われて、俺たちは選鉱所の休憩所でじっと隠れていた。
くそっ、このままじゃ埒が開かない。

「逃げても逃げても追ってくるわね…」
「ああ…」

話しながら不思議に感じていた。
なぜ、あれだけの数の屍人がこっちの位置を知っているかのように俺たちを包囲している奴がいるのか。
まるで誰かが統率しているみたいに…

「そいつを潰せば…」

幻視を走らせる。
床を這い回るやつ、空を飛んでいるやつ。
そして、犬に囲まれてのうのうと突っ立ているやつ。
いた。こいつだ。
森の中のどこかにいる。

「いいか、ハルヒ。俺が戻るまでじっとしていてくれ」
「どこに行くの?」
「化け物退治だ」
「キョン、無茶よ!」
「心配すんな。絶対戻ってくるから」
そう言い残して、俺は選鉱所を出、谷沿いに南へと下った。

しかし、格好つけて出たのはいいものの、森の中と言うだけではどうしていいかわからん。
見た感じ、統率している頭脳の周りには、最低でも4体は犬がいそうだ。
考えながら、道路のあたりまでたどり着く。
パァン、と乾いた銃声がして、俺の右肩を掠めた。

「痛っ」
狙撃されたほうに目を見やると、空から、面妖な昆虫を思わせる羽を生やした怪物が…いた。
そして、そいつには見覚えがある。

「あの警官?」
もはや顔面下半分がかみきり虫のあごのようになって変化しているが、見間違えよう筈が無い。
殺されかけたのだから。
急降下して襲いかかろうとするそいつから遠ざかるように、俺は逃げ、選鉱所の南側の入り口から中に入り、息を殺した。
銃相手では勝ち目がない。
ましてや空を飛ぶなんて。

「卑怯だろ」
じゃり、と外の土を踏みしめる音がした。
あいつが地面に降りて歩いているのだろう。
とうとう俺も終わりだ。

守ってやる、なんて約束も守れなかったな。
警官が、選鉱所の入り口をくぐってきた。
こっちを見て、甲高い叫び声をあげている。
もはや人語も発せないらしいが、喜んでいるんだろう。
そして銃口を俺に向ける。
俺は目をつぶった。

ガン、と鈍い音がした。

鈍い音?
銃声じゃない。
ゆっくりと目を開けると、そこには小柄な少女が立っていた。

「大丈夫?」
短く告げるそいつは、そう

「長門…」
頼れる宇宙人だ。
警官は頭をへこませて床に転がっている。長門が手に持つネイルハンマーで思い切り殴りつけたらしい。
同情するね。自業自得だが。

「長門、助かった」
「そう」

いつも通りの返事だ。
「なぁ、今回のこれは一体なんなんだ?何が原因だ?」
俺はずっと思っていた問題を投げかける。
「この村での超自然的現象にたまたま居合わせた。それだけ」
それだけ?それじゃまるで。

「俺たちはただの被害者じゃないか…」

「涼宮ハルヒの才能も少し関係があるかもしれない」
「あいつのせいじゃない」
俺はそう言って、長門の顔を見た。何か、言いあぐねているらしい。

「どうした?」
「これ…」
長門が差し出した手には、竹内伝書という本があった。読めってことか。
俺はさっそく受け取って、項を繰る。

駄目だ
「旧字体が多くて読めん…」
長門は少し、呆れた顔をして、口を開いた。

「脱出する方法」
「あるのか!?」
俺は聞き返した。

「その本は、伝承とこの村の宗教についてくわしい」

長門のいつも通りの容量を得ない言葉を紡ぐと、こういうことらしい。
今回の羽生蛇の事件はほぼ伝承の通りだ。
限りなくオカルトなこの事件を解決するには、オカルトな方法でしかできない。
そして、その方法は二通りある。

「一つは、涼宮ハルヒの力を最大限発揮して、この世界を無理やり現実世界と繋げること」
「それでいいのか!?」
「ただし、かなりの力が必要。彼女が力を失うくらいに」

そんなにか…。
じゃあもう一つは?
「もう一つは」

長門は言いにくそうな顔をして、溜めてから、言った。
「彼女を神の供物にする」

は?何を言ってるんだこいつは。
「出きるわけないだろう!そんなこと!」
「この方法が一番生存率の期待値が高い。少なくとも涼宮ハルヒを除くSOS団は帰還できる。推奨」
思わず、俺は長門の肩を掴んだ。

「いいか、長門。あいつを犠牲にするなんて俺はまっぴらごめんだ」
「神は涼宮ハルヒの能力を取り込むのが目的と私は推測する」
「だからってできるか!」
「決断は早い方がいい。赤い水の影響を受けすぎると、常世には帰れない。黄泉戸喫」

長門は無表情で、淡々と話す。
本当に、こいつはそうしようと思っているのか。

「正気か?」
「私は正常」
「異常としか思えん。ハルヒを差し出すなんてな」
「私は」

長門は僅か毛先ほど俯いた
「私という個体はあなたの生存を優先に考えている」

俺のことを?そりゃまたなんでなんだ。
「………」
無言。

俺は押し黙った長門に、言い聞かせる。
「いいか。俺は誰かを見捨てて、自分だけ助かろうなんて、そんな風には思えん」
「………」
「だから、ハルヒを犠牲にして自分だけ助かったなんてなっても」
「………」
「俺は死ぬぞ」
「………」
俺がそう言った時、長門が少し寂しそうな顔をしたように見えた。

「理解した」
「わかったか。ならとりあえずここから脱出するぞ。頭脳を叩く」
「わかった」
「俺が犬どもをなんとかして引きつける。お前は吊り橋側から渡って、頭脳をやってくれ」
「………」

首肯。
そして長門は黙って俺にジッポを手渡した。

「長門、これはなんだ?」
「燃やす」
「何を?」
「車を」

よくわからんが、やれってことか。
長門と別れて、俺は森の南の入り口へと急いだ。
峠の麓には、トランクの開いた事故車があった。事故のショックかガソリンが漏れている。

「なるほどね…」
俺はジッポに火を灯し、ガソリン溜まりに向かって勢いよく投げつけた。
豪勢な花火だ。
さあ犬どもよ。こっちに来ればいい。

追ってきた犬から、俺は必死で逃げていた。
犬とはまともにやり合うのは無謀だ。
よく考えたらなんで俺は警官から銃を奪わなかったんだ?
走って橋の向こうへと逃げ、選鉱所の方へと向かう。

ヤバい、ヤバい、ヤバい!
焦ってひたすら足を交互に動かすうちに、足がもつれて転げた。
倒れて、後ろを振り返ると、犬が6体、俺の背後から寄って来ていた。
長門、何してる!
立ち上がって逃げる。
息が続かない。
俺は選鉱所脇の物置、ドラム缶の脇で追い詰められた。
もう駄目だ。

犬が周りを取り囲み、そのうちの一体が腕を振り上げ、俺に襲いかかった。
爪が俺の首筋に当たる、寸前。
犬達が苦しみながらその場にバタバタと倒れていった。
やったのか、長門。

長門と橋の西詰めで合流する。
「やったな」
「………」

ねぎらう俺に、無言の返事。
長門の手に、鉄パイプは無い。

「武器はどうした?」
「心臓に突き立てた。しばらく復活できない」
なかなかグロいことをするもんだ。頼もしいが。
「これからどうする?」
「私は、対抗策を探しに行く」
「どこに?」
「わからない。あなたは涼宮ハルヒと一緒にいて」
「俺たちも一緒に…」
「私が涼宮ハルヒと一緒にいるとまた彼女を犠牲にしようとするかもしれない。それは危険」
「…そうか」
背を向けスタスタと歩く長門を見送り、俺はハルヒのところへ歩いた。


朝比奈みくる 蛇ノ首谷 戻り橋 第2日 09時57分58秒


私は谷口くんに病院を連れ出されて、橋を東へ向かって歩いていた。
地下室から戻ってきた谷口くんの顔は、普段からは想像できないほど青く、私も驚いてしまった。
そんな彼に促されるままに、私は今ここにいる。

「古泉くん、置いてきて良かったんですかね…」
「古泉…、あいつは…」

病院を出てから、谷口くんはずっとこんな調子だ。
古泉くんの話題になると、彼は口を閉ざす。
谷口くんは何を見たんだろう?
すると、橋の西から、元気の良い声が響いた。

「みくる〜、無事だったんだねっ」
「鶴屋さん!」

私は嬉しくなって駆け寄ろうとした。
その瞬間、銃声が鳴って、私の肩を激痛が走り、私は橋の欄干から川へと落ちた。


谷口 蛇ノ首谷 戻り橋 09時59分59秒


それは一瞬だった。鶴屋さんに再会して、銃声が響いて、朝比奈さんが撃たれた。
理解するのに時間がかかった。
慌てて、俺も撃たれないように橋の脇の階段を下った。

「朝比奈さん!」
返事は無い。気を失っている。かなりの怪我だ。

「みくるっ、みくるっ!」
鶴屋さんも急いで駆け寄ってくる。

「鶴屋さん!朝比奈さんを頼みます!俺は狙撃手を!」
勝算も無いのに俺は階段を駆け上っていた。
相手は銃なのに、何考えてんだ、俺。
おそらく狙撃手は、森の中に潜んでいるはずだ。橋を渡るのは危ない。
そう判断して選鉱所の方から、吊り橋方面へと向かう。
転がる犬どもの脇を走り抜け、吊り橋前へと至った時、後ろから声をかけられた。


「おい、谷口!」


振り返ると、建物の中にキョンと涼宮がいた。

「生きてたのか?二人とも!」
「ああ、なんとかな。それより国木田はどうしたんだ?」
「はぐれたんだ。無事だといいが…」
「そうか…。ところでさっきの銃声は?」

俺は、朝比奈さんが撃たれたことを話した。

「本当か!」
「ああ、今から狙撃手を倒す」
「じゃあ、これを持っていけ」

キョンは、38口径短銃を投げてよこした。

「必要だろう。お前にやるよ」
「助かる。すぐにやつを倒してきてやるさ」

キョンと別れ、俺は吊り橋を渡り、森の中へと入った。
谷沿いに進むと銃声が響く。
どうやら見つかったらしい。
かまうか。死んだら死んだ時だ。
なるべく茂みに半身を隠しながら、俺は狙撃手に近寄った。
相手の放った銃弾が一発、俺の肩に当たる。

「痛ぇな糞!!」
狙撃手にバールを投げつけ、怯んだところを目の前に躍り出て、銃を構えた。
そして俺は気づいた。

「国…木田…」
国木田が、目から血を流し、虚ろな目で俺を睨みつけていた。
俺が怯んだ隙に、国木田は躊躇わず引き金をひいた。


国木田 蛭ノ塚 県道333号線 第2日 00時11分26秒


サイレンの音が鳴った。

爽やかなだ。耳に心地いい。
新たな目覚めはこんなにも良い気分なのか。
うふふ、笑いがこみ上げて仕方がない。

なぁんだ。
こんなことなら早く死んどけば良かったなぁ。

みんなにも、この幸せを教えてあげよう。

僕は銃を持って立ち上がった。


谷口 蛇ノ首谷 折臥ノ森 第2日 10時11分56秒


バァン!

腹の肉が破裂するような衝撃。
俺は地面に倒れ臥した。
格好つけて調子に乗って、最期はこのザマかよ。笑えねえ。
首だけ上を向けて、俺は国木田の目を見据えた。
心底喜びに満ちた顔つきで、俺に銃口を向けたそいつは、すでにかつての国木田の面影は無い。
そいつが指を動かし、チェシャ猫のように笑ったその時、俺は死を覚悟した。

カチン。

今度は国木田が動揺した。
すかさず、短銃を国木田の頭に向け、俺は引き金を引く。

やつの足がふらつき、倒れるのと同時に、俺も意識を失った。


キョン 蛇ノ首谷 吊り橋 第2日 10時29分56秒


あれから何発も銃声が聞こえた。
「谷口…」
「大丈夫かしら…」「様子を見に行こう」

そして俺たちが吊り橋を渡ろうとした時、唐突に呼び止められた。
「キョンくんっ!ハルにゃんっ!無事だったんだねっ!良かった…」
鶴屋さんが、涙を浮かべてそこに立っていた。

「鶴屋さん…」
「本当に心配したよ…だって、だって…」
鶴屋さんは左手で顔を隠して嗚咽を漏らしている。
こんな鶴屋さんは初めてみた。彼女も怖かったのだろう。
ハルヒも嬉しいような、困ったようなそんな顔だ。

「鶴屋さん…。すいません、今は谷口が…」
「ごめんよっ。だってハルにゃんにもしもの事があったらってずっと考えててさっ」
鶴屋さんは泣き顔をあげて、笑ってみせた。

「だから、キョンくんにはお礼を言わなきゃね…」
「お礼なんて」


「今までありがとう」
パン、と音がして、俺は左胸を撃たれた。
鶴屋さんの右手には拳銃が握られていた。
俺は谷底に落ちながら、ああ、俺ってよく落ちるな、なんて呑気に考えていた。


古泉一樹 眞魚川岸辺 第2日 11時12分08秒


病院で長門さんに会った後、探索は彼女に任せて僕は眞魚川を歩いていた。
そこで、朝比奈さんと、彼が倒れているのに気づいて驚いた。
駆け寄って確かめてみると、朝比奈さんは大したことは無い怪我だったが、彼のほうは、心臓を撃たれ、致命傷だ。
もう助かる見込みは無いだろう。

僕は、朝比奈さんをおぶって、彼を置いていくことに決めた。
心は痛むが、死体を気にする余裕は無い。

その時、信じられないことに、むっくりと彼が立ち上がった。

「…古泉か?」
「そんな馬鹿な。あなたが生きているはずは…」
「知らねーよ。この通りピンピンしてる。それよりお前のほうが血まみれじゃないか」
「いえ、まあ確かに…」

聞きたいことは山ほどあったが、僕らはひとまず病院へと向かうことにした。
僕は朝比奈さんを、彼は谷口を背負って。


古泉一樹 病院 第一病棟診察室 第2日 16時03分07秒


「………ぅ」
「目が覚めましたか」
僕は朝比奈みくるにそう声をかけ、彼との話を再開した。

「…では、鶴屋さんが涼宮さんを?」
「ああ、突然撃たれて…。今でも信じられん」

僕も信じられない。
鶴屋さんにそんな事をする動機がわからない。
確かに、この村に行こうと言ったのは鶴屋さんだが…

「これ」
長門さんがポケットの中から黙って新聞を差し出した。古いものだ。
「なるほど…」
「どうしたんだ?」
「およそ10年前、この村であった土砂災害で生き残った子供…。それが」
僕は一旦言葉を区切る。

「鶴屋さんです」

「それってどういうことだ?」
彼に僕は答える

「おそらく土砂災害とは、このような怪異が起こった時に現実世界で観測される現象なのでしょう」
「でもその生き残りだからって、なんで…」
「因果律」
「え?」
長門さんの的確な説明を、彼は今ひとつ理解してないようだ。

「つまり、その鶴屋さんが助かったのも、神のお導きなのですよ」
「わからん」
「彼女は、神が力を取り戻す為の生け贄を連れてくるための、鳩として現世に戻されたんです」
「鳩…?」

ここで、長門さんが口を開く。
「10年前まではこの村で秘祭があった。神代家の娘を生け贄に捧げる儀式」
ともすれば聞き逃してしまいそうな平坦な声で彼女は続ける。

「しかし、前回の土砂災害で神代家が全滅してしまった。だからその代理が必要だった」
「それがハルヒだっていうのか!?」
「そう」
「つまり、はなから鶴屋さんは我々をはめるつもりだったんですよ」
「くそっ!」
ダンッと彼は壁を殴りつけた。

「俺は今すぐハルヒを助けに行く!」
「私も行きます!」
朝比奈みくるが、珍しく強い口調で志願した。
「俺も行くぜ」
いつの間にか目を覚ました谷口も言う。
「私も」
長門さんも。

「では僕も行くしか無いですね」
「あなたは」
無機質な声が僕を呼び止めた。
「あなたは、うりえんを探して欲しい」
「うりえん?」
「そう」
うりえんとは何だ?

「唯一の対抗策。うりえんとは天使ウリエルが眞魚教に取り入れられて変化したものでー−」
「すいません。今は講釈を聞いている暇はありません。それはどこに?」
「さっき病室でこれを見つけた」
「双子の天使のレリーフ?」
「そう。うりえんのこと」
「では病院のどこかに?」
「だと思われる」
わかりました、探しておきます、と告げて、僕は彼らの出陣を見送った。


古泉一樹 病院 第二病棟一階貯蔵室 第2日 18時37分11秒


「忌々しい…」

長門さんの言うとおり、うりえんを探し回っているが、ことがなかなかはかどらない。
屍人が大量に徘徊し始めたからだ。
あいつら、一体何体いるんだ。

「化け物め…、化け物め…、化け物め…」
僕は今、1階貯蔵室に潜んで、中庭に出る機会を窺っていた。
どうやら地下の頭脳を、誰かが解放したらしい。蜘蛛も犬も、病院を我が物顔で闊歩していた。
超能力者の勘という奴か、中庭に何かがある気がする。

幻視で廊下の気配を探り、一気に僕は中庭へ通じるドアを開けた。

誰かが気づく気配はない。
やった。

案の定、中庭の銅像の下には、地下への隠し梯子があった。
それを降り、目の前の扉を開けると、朽ち果てたミイラが椅子に縛り付けられているのが見えた。
手には土偶のような何かが握られている。
それを手にとろうとしたとき、干からびたミイラの手が、すっと僕の目の前に上がった。

「受け取れという、ことですね?」
返事は無く、変わりに彼女の手がぼろぼろと崩れた。
そして、僕は宇理炎を手に入れた。


キョン 大字粗戸 眞魚川岸辺 第2日 20時31分33秒


長門と谷口とは二手に別れて、俺と朝比奈さんは、突如としてあらわれた巨大な出来合いの要塞を前に立っていた。

昨日まで、ただ民家があっただけの通りは、廃材を寄せ集めて作った、何がなんだかわからない建築物を作っていた。
屍人の巣、とでも言おうか。

「私、もう何があっても驚かないと思ってました…」
朝比奈さんは、いつでも朝比奈さんらしい。
「さぁ行きましょう。ハルヒが待っています」
「ええ、そうですね」
俺たちは、屍人の巣への侵入を開始した。


鶴屋 屍人の巣 水鏡 第2日 19時02分37秒


「ちょっと!どういうつもりなのよ!」
「うるさいなぁ。ちょっと生け贄になってもらうだけだよっ」
「嫌よ!離しなさい、このデコ女!」
「きーびしいねぇっ!アハハハハ!」

私はさっきから笑いが止まらない。
何年も何年も、何回も何回も、これを繰り返してきたんだ。
初めて、ここまで漕ぎ着けた。
あの有希っこと涼子ちんと古泉くんが、いっっつも邪魔するんだ。
涼子ちんが早めに死んでくれて良かった。
やっと役目を果たせるかと思うと、嬉しくて嬉しくて、笑みが絶えないってものだ。

「絶対に、キョンが助けてくれるんだから!」
「ふぅ、聞きあきたよっ。そのセリフは。たまにはもっと違う言葉を言ったらどうなのさっ!?」
「なにを…」
困惑の表情を浮かべる彼女に、私は言った。
「しばらく黙っててねっ」


谷口 屍人ノ巣 第二層付近 21時18分36秒


「なあ長門」
「………なに」

ここに入ってから何回も何回も呼びかけて、やっと返事をしやがったこいつ。
「本当に、俺たちは脱出できるのか?」

そう聞くと、長門は無表情でこっちを睨みつけた。
怖ぇなあ、コイツ。

「…本当に聞きたいの」
なんか含みのある言い方だな…。
いいから正直いえよ。
言ってから、俺は後悔した。
聞かなきゃいいことなんて、世の中にはたくさんある。

「あなたは、もう脱出できない」

…マジかよ。
「なんでだよ!」
「あなたは赤い水の影響を受けすぎた。いまやこの世界の理に従う存在」
「でも俺はこの通りピンピンして…」
「それは赤い水のおかげ。あなたは血を流しすぎた」
「そんなことって、あるかよ…」

俺はうなだれて、膝をついた。
世界が終わった気分だ。

「でも」

長門は言葉を続けた。
「あなたが救われる方法が、まだ残っている」


キョン 屍人ノ巣 水鏡 第3日 00時00分00秒


屍人ノ巣を進み、俺たちは開けた場所にでた。
ここが中心部だ。
三角形にたたえられた真っ赤な水。
その上に、ハルヒは静かに寝かされていた。
まるで穏やかに眠っているようだった。

「キョンくん、遅かったじゃないかっ!」
「鶴屋さん!」
こんな時までさんづけで呼んでしまう自分が情けない。
「そこで見ているがいいよっ。神が祝福される瞬間を」
そして彼女は、穏やかに言った。


「さあ、楽園の門が開かれる」


ハルヒの体が炎に包まれ、俺は言葉を失った。
そんなはずは無い。
守るって言ったのに…。
壁の板を蹴り破り、長門と谷口が飛び込んできた。
「遅かった」
「涼宮!」

炎の中から、神と呼ばれる存在が徐々にその姿を現す。
竜の落とし子のような体に遮光式土偶のような頭を持ったそれ。
それを見て長門は、堕辰子、と呟いた。

「お母さん!やっと会えたねっ!」
鶴屋さんは満面の笑みでその神を迎えていたが、みるみるうちに、その顔が曇っていった。
「お母さん…?」
堕辰子は、こちらに向き直り、凄い速さで突進してきた。
「逃げろ!みんな!」
叫んだ俺の体に、5体がバラバラになりそうな激痛が走り、俺は気を失った。


キョン妹 屍人ノ巣 第一層付近 第3日 00時14分26秒


またサイレンの音だ…。
嫌だな、この音
みんなとはぐれて、どれくらいの時間が経ったんだろう…
道に迷って、私はトボトボと歩いていた。
みんながいるかと思って、なんとなく目についた建物に入って見たけど、誰も見つからない。
怖いお化けはいっぱいいるし、早く帰りたいよ…。
潜り抜けられそうな穴を見つけては、くぐって先へと進む。
どこまでいけばいいんだろう。
そんなことを思いながら、重い足を進めていると、どこかで涼子ちゃんが呼んだ気がした。


キョン 屍人ノ巣 第四層付近 第3日 03時03分27秒


「……いてぇ」
目を覚ますと、俺は赤い水のプールに体半分浸かっていた。
この半身浴は体に悪そうだ。
見ると、横に長門もいる。

「…長門。長門。」
ペチペチと長門の頬を叩くと、すぐに目を覚ました。

「良かった。死んでるかと思った」
「………」
「大丈夫か?この水に浸かってても良いことはない。出よう」
水たまりから体を出して、長門に尋ねる。
「アホの谷口と朝比奈さんは?」
「私が逃がした。彼らは無事」
「そうか、そりゃ良かった」
本当に。

「時間が無い。彼女を探すべき」
「鶴屋さんか?」
「このままでは、取り戻しがつかなくなる」
「まだ、取りかえしがつくって言うのか?」
「あるいは」
「なら、急ごう」
俺たちは壁の板を剥がし、屍人ノ巣中枢を目指した。

道が二つに分かれていたので、俺達は二手に別れてすすんだ。
もう引き返す時間は無かったからだ。
俺は西の道へ、長門は東の道へ進んだ。
俺は林家を抜け、入り組んだ屍人の巣を進み、工場へとたどり着いた。
この先にいけば中枢に行けるのだが…。
様子を見ると、中には狙撃手が3体、犬が3体の厳重な警備だった。

「突破は無理か…」
そう思った時、轟音と共に、空気の抜けるような音がした。
犬の悲鳴が聞こえる。
LPガスのボンベが、勢いよく工場の中に投げ込まれたのだ。
俺は身の危険を感じ、とっさに工場から離れる。
途端、銃声がして、遅れて爆音が響いた。

長門だ。
長門がボンベを投げ込み、銃で撃って引火させやがったらしい。
まったく、むちゃくちゃしやがる…。
爆発が落ち着いた後、工場の中に入ると、長門が俺のことを待っていた。

「武器」
長門は、すっと俺に猟銃を手渡す。

「いいのか?」
「私には必要のないもの。あげる」
「ありがとな」

礼を言うと、長門は背を向けてどこかにいこうとした。
「待てよ、長門。どこにいくんだ?」
尋ねると
「そこから先はあなたの役目。私には私の役目がある」
そう告げて長門は去っていった。
俺は、かまわず屍人ノ巣中枢へと進んだ。


キョン妹 屍人ノ巣 第二層付近 第3日 05時41分03秒


「涼子ちゃん、涼子ちゃん…」
私は、涼子ちゃんがいそうなほうへ急いだ。
早く会いたい。早く…
どれくらい走っただろうか。ここがどこだかまったくわからない。

そして、駄菓子屋の中で、背を向けて佇んでいるセミロングの髪のお姉ちゃんを見つけた。
あれは…。

「涼子ちゃん!私だよ!」

嬉しくて、声の限り涼子ちゃんを呼んだ。
生きてたんだ、良かった…。
しかし、振り向いたのは涼子ちゃんであって涼子ちゃんじゃなかった。
綺麗だった顔には、今は真っ赤なナマコみたいなのがびっしり張り付いていた。もう目玉が無いその顔はヌメヌメと脈打って、こちらを向いている。

「どこ行ってたの?ダメじゃない。私から離れちゃ」
その右手に包丁が光っているのが見えて、私は悲鳴をあげた。

「いやぁぁぁ!!!」
涼子ちゃんが、こっちに駆け寄ってきていた。

私は怖くてその場にうずくまった。
足音が聞こえる。
もうすぐそこまで来ている。

「や、やぁ!」
ボコンと音がして、私の肩を誰かが抱いた。

「さぁ逃げよう!」
「みくるちゃん…?」

みくるちゃんの手には、金属バットが握られていた。
守ってくれたんだ。
涼子ちゃんは立ち上がろうとしている。

「早く、こっちに!」
みくるちゃんに手をひかれて私は走った。
後ろからは依然、涼子ちゃんが追って来ている。


「駄目…」
入り組んだ迷路を駆け回って、行き着いた先は行き止まりだった。

「みくるちゃん…どうしよう…」
「わ、私が守るから…大丈夫。安心して…」

彼女はガタガタと、体中が震えていた。
ギシ、ギシ、と板を踏みしめる足音が、どこからともなく響く。

「私の後ろに隠れて」
みくるちゃんの言うとおり、私はエアコンの室外機のそばに身を隠した。

ギシ、ギシ…
足音が止まる。
「行ったの…?」
安堵のため息が漏れる。

「み〜つけた!」

声がした瞬間、屋根の上から涼子ちゃんが飛び降り、みくるちゃんのお腹に包丁が刺さった。
「やぁぁっ!ぁぁあ!」
小鳥の断末魔のような声をあげて倒れるみくるちゃんを、涼子ちゃんは容赦なく滅多ざしにする。
そして、地面に赤い血溜まりができ、みくるちゃんが力なく転がると、彼女はこちらに向き直り、襲いかかってきた。

「うふふ、もう離さないから」
血まみれの彼女の包丁が、むちゃくちゃに振り回されて、私の顔に血が飛び散った。
もう駄目だ。と思ったとき涼子ちゃんの後ろから声がした。

「あなたの不始末は私の責任」
涼子ちゃんがその声を聞いて、瞬間に振り返る。
バキッと頭蓋骨がへこむ音がして、涼子ちゃんが崩れ落ちた。
地面には、みくるちゃんと涼子ちゃんの二人が、血溜まりの中に並んで寝転がっている。

「怖い思いをさせた」
「有希ちゃん…」
「今度は私が守る」
有希ちゃんに手をひかれて、私たちはまたあてもなくさまようことになった。


キョン 第二層付近 第3日 09時48分21秒


「ハルヒ…俺はどうしたら…」
俺は座り込んで、がっくりうなだれていた。
どこを探しても鶴屋はいない。
俺は、仇を討つことも出来ないのか…

「やっと会えましたね」

声がして、顔をあげた。古泉だ。
「探しましたよ」
「見つかったのか?対抗策」
「ええ、これを」
古泉は、薄汚い人形を投げてよこした

「これが…?」
「はい。あなたなら十二分に使いこなせると思います。それがあなたの役目です」
「役目…」
「本当は2つあったんですが、一つは谷口くんにあげてしまいました。使命があるらしいので」
「使命か…。俺には果たせそうにないがな」

自嘲気味に呟く俺に、古泉は言った。
「あなたの手助けをするために私がいるのです。あなたがダンテなら、私は喜んでベアトリーチェになりましょう」
そう言って笑う古泉に俺は言った。

「お前、男じゃねーか」


谷口 合石岳 羽生蛇鉱山 第3日 16時0058秒


長門に教わったとおり、井戸の底から日本軍の手榴弾をしこたま持った俺は、水門を目指していた。
そこを爆破して、水流で屍人ノ巣を一網打尽にしてやろうという寸法だ。
しかし…

「日が落ちそうだ。やべえな…」

俺は屍人どもを蹴散らし、急いで鉱山を抜けた。
こっちは銃があるしな。
やっとのことで水門の上まで辿り着き、手榴弾で水門を爆破した。
濁流が下流の巣を押し流す。
やれやれ、ギリギリだぜ。
俺が一息ついたときだった。

「たぁにぃぐちぃぃ!!」
聞き覚えのあるその声は、まさしく。
「国木田ァ!!」

もはや顔面に無数のフジツボが付着して見る影もない。
そいつが、俺の背後から鉈を俺に突き立てた。
もんどりうって倒れた俺に、さらに鉈で斬りつける国木田。
口からは楽しそうな笑い声が漏れている。
痛みをこらえて、俺は強がった。

「谷口様をなめんなよ」
俺は宇理炎をかざし、国木田に向けた。

「神風、見せてやるよ」
青い炎が、俺もろとも国木田を包む。

苦しむ国木田を見ながら、俺は安らかだった。
化け物役だけは、御免だ。


キョン 屍人ノ巣 第二層付近 第3日 18時08分59秒


「今度は二人で来たのかいっ?キョンくんもこりないねっ」
明るい声でそう言ったのは、鶴屋だ。

「二人がかりなら勝てるとでも思ったのかい?」
「こちらには切り札があるんですよ」
古泉が答える。

「ふ〜ん。なんだか知らないけっど」
突然、俺たちの目の前に、白い堕辰子が立ちはだかる。

「お母さんはまだ完全じゃないけど、君たちくらいなら一ひねりなのさっ。やっちゃえっ!」
堕辰子が唸りをあげて、俺も宇理炎を掲げる。
その刹那、濁流がすべてを巻き込みながら俺たちを押し流した。
壁も、床も、天井も、音を立てて崩れていく。
そして俺は見た。
天井に開いた穴から差し込む日光が、堕辰子の体を焼き焦がすのを。


キョン 屍人ノ巣 水鏡 第3日 21時57分55秒


濁流に流された俺たちは、堕辰子にとどめをさすべく、屍人ノ巣を探し回っていた。
「あいつはどこに…」
「こっちです。僕が案内します」
自信満々に言う古泉に、俺はついていった。

「なんで場所がわかるんだ?」
「わかるんですから仕方がありません。ここです」
「ここ?何もないじゃないか」
そう言った俺と、黙って手を繋ぐ古泉。
何の真似だ。気持ち悪い。

「しばらく目を閉じていただけませんか」
このセリフ、前にも聞いたことがある。
確か…

「神は涼宮さんの力を取り込みました。そして、その神が今や死にかけて、多大なストレスを感じています。」
ということは。
「そんな神が逃げ込む場所と言えば、そう…」


「閉鎖空間です」


キョン 閉鎖空間(いんふぇるの) 第3日 23時03分18秒


ハルヒの閉鎖空間とは違って、そこは真っ赤な空間だった。
足元には赤や白の花が咲き乱れている。
そしてその空間にぽつんと、鶴屋と堕辰子が座っていた。

「どうやってここにっ!?」
心底意外そうに叫ぶ鶴屋に古泉は満面の笑みで
「僕は超能力者ですから」
と答えた。

「お母さんが、お母さんさえ完全だったらこんなことには…」
「それは彼のせいです」
古泉は俺の方を見て言った。
「どうやら、涼宮さんは、彼を不死身にしてしまったようでしてね。それで力をだいぶ使ってしまったんですよ」

俺が不死身…?
そういえば廃屋でハルヒは…
「では疑問も解けたところで、団長の仇を討たせてもらいますよ」
「ああ、ハルヒの仇だ」

「やめて!!」

俺は強く念じて宇理炎を掲げた。


そして、天から降り注いだ青い炎は、堕辰子の体を、灼いた。


上空に亀裂が走り、蜘蛛の巣状に成長していく。
俺たちはその光景を見上げていた。

「お母さん!!」

鶴屋が堕辰子に駆け寄り、持っていた日本刀でその首を斬り落とした。
「いけない!」
古泉は叫ぶが、時すでに遅し。
みるみると幼い少女に変化していく彼女は、地割れに飲まれて次元の狭間に飲まれていった。
最後の瞬間、彼女は言った。

「次こそは、上手くやってみせるから」

そして、空間が裂け、ちょっとしたスペクタクルが、周りに広がった。


キョン 後日 大字粗戸 耶辺集落 00時13分33秒


目が覚めると、俺と古泉は羽生蛇村の廃屋群の中で寝そべっていた。
どうやら、ここに飛ばされたらしい。
目が覚めた時、ちょうど、長門と妹が俺たちを見つけて、歩いてきた。

「キョンくん!」
抱きつく妹をなでながら、長門に話しかけた。
「よお長門。久しぶり」
「………」
無言で頷く。
「どうだ、脱出できそうか?」
頷き。

「そりゃあ良かった」
「今、この時空は不安定で常世と繋がっている。早く出ないとまた閉じ込められる」
長門は淡々とそう告げた。
「それなんだがな…」
疑問の眼差し。
「俺はここに残る」
「!?」
全員が一斉にこっちを見た。
「俺は、ハルヒを置いてはいけない。だから俺はここに残りたい」

俺はまだ、不死身のままなんだ。
だとすれば、ハルヒの力はまだ残っているってことだ。
それは、ハルヒがまだ生きているって証拠じゃないのか?
なあ、長門、古泉。

そう問いかける俺に古泉は
「いえ、涼宮さんは…」
と何かを言いかけて、口をつぐんだ。
長門は
「あなたが残るなら私も」
と言って、俺の手を握った。
「涼宮ハルヒの観察が、私の仕事だから」
と言って。

「そうですか。わかりました。決意は堅いようですね」
そう言って古泉は、泣きじゃくる妹を連れて、歩いていく。
それが、俺が古泉と妹を見た最後だった。

そして俺は長門のほうを見、
「さあ、化け物退治といくか」
と、宇理炎を持って腰を上げた。


古泉一樹 後日 04時44分44秒


彼は、涼宮ハルヒはもういないという現実から目を背けた。
もうどこへ行こうと、涼宮ハルヒはこの世界から消失したというのに、わかっていながら認めなかった。

そして、それを知りながらも、彼に連れ添った彼女もまた同じだ。
鶴屋は、これからも永遠に、延々と涼宮ハルヒを生け贄に捧げ続けるだろう。
どう足掻いても絶望なのに、希望を持ち続ける彼らには、救いなど用意されてはいないのだ。

そしてまた、仲間を失った僕も、決して救われることは無いだろう。
無力感に苛まれた僕は、傍らの幼い少女を見やった。
そして、少女の唇が動いて、言葉を発した。



「いつか必ず、キョンくんを迎えに行くから」



Continue to NEXT LOOP...




985. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 18:44:43.61 ID:LYNQwlk0O

これで一応終わりです。
KYN無双は脳内で各自補完してくださいwww
最後はキョン妹がさらに同じことを繰り返そうとしてるっていう終わり方だけどちょっとわかりにくいかも
長々とお付き合いいただきありがとうございました!
読んでくれた方ありがとうございました!

ちなみに次回ゲーム×ハルヒでやるなら
『花と太陽と雨と』か『シルバー事件』か『真・女神転生3』でやるつもりです



おまけ


376. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 01:30:30.56 ID:JtQRSKAnO

アーカイブ02
誰かの鞄

誰かが教室に忘れていった鞄。中身はスカスカで何も入っていない


378. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 01:35:16.00 ID:nSNcnIkM0

アーカイブ03
国木田の手帳

『ラブロマンスは突然に』

(小説のようなものが書かれている)


386. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 01:43:12.72 ID:D5agvHN10

>>378

SIRENのこういう馬鹿みたいなネタ好きだ


390. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 01:46:33.06 ID:LesJCNNgO

アーカイブ04
壊れかけのRadio

何も聞こえない。これは最早、壊れているに違いない。


395. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 01:55:23.90 ID:PERbWP/n0

アーカイブ05
ホンダT360のキー
川付近に放置して有る廃車ことホンダT360のキー。
当時のHONDAのキーホルダー付



403. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 02:11:51.91 ID:MOwl4yww0

支援の代わりに勝手にアーカイブ作ろうぜw みたいな

アーカイブ
SOS団合宿の写真
日時/初日/2:00
条件/鶴屋さんのデジカメを調べる

たのしかったがっしゅく
つよがりなハルヒといっしょに


461. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 03:42:06.77 ID:aHS+QABB0

アーカイブ「朝倉涼子の学生証」
日時/初日
拾得者/朝倉涼子
条件/キョン妹を逃がす

朗らかな笑みを浮かべた少女の写真が貼ってある。



466. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 04:00:17.39 ID:JtQRSKAnO

アーカイブ「古泉一樹の携帯」
日時/二日目
拾得者/古泉一樹
条件/朝倉凉子を殺害後、昇降口を調べる

電波は圏外になっている
しかしこの携帯は衛星から電波を受信しているはずなのだが…



471. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 04:07:45.74 ID:pjw3Js/EO

アーカイブ「忘れ物」
日時/二日目
拾得者/古泉 一樹
条件/谷口との会話

忘れ物だ
彼はこれが有る限り歌い続ける



498. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 06:07:46.54 ID:FXKHTucrO

アーカイブ「ナイフ」を取得しました


アーカイブNo.11「ナイフ」
日時/二日目
取得者/朝倉 涼子
条件/条件1をクリア
ナイフだ。血がこびりついている。
良く見ると柄にイニシャルでR・Aと刻まれているようだ。


500. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 06:14:02.85 ID:1ABd5N5H0

アーカイブ「キョンの学生証」
日時/前日
拾得者/キョン
条件/崖を下りた後、近くの草むらを調べる

県立北高校の生徒であることを証明する学生証。
氏名欄が泥水で滲んで読めなくなってしまっている。


586. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 11:18:15.45 ID:FXKHTucrO

アーカイブNo.22「手製カバーのついた小説」
日時/二日目
取得者/キョン
条件/選鉱所の捜索
手製のカバーがついた文庫版の小説。中身は他愛もない恋愛小説のようだ。
しおりの代わりに何か挟まっている……



キョンと長門の写った写真。映画を撮った時のものみたいだ


おまけの蛇足


825. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 16:13:31.51 ID:LYNQwlk0O

キョン妹 屍人ノ巣 第二層付近 第3日 05時41分03秒

「涼子ちゃん、涼子ちゃん…」
私は、涼子ちゃんがいそうなほうへ急いだ。
早く会いたい。早く…
どれくらい走っただろうか。ここがどこだかまったくわからない。

そして、駄菓子屋の中で、背を向けて佇んでいるセミロングの髪のお姉ちゃんを見つけた。
あれは…。
「涼子ちゃん!私だよ!」
嬉しくて、声の限り涼子ちゃんを呼んだ。
生きてたんだ、良かった…。
しかし、振り向いたのは涼子ちゃんであって涼子ちゃんじゃなかった。
綺麗だった顔には、今は真っ赤なナマコみたいなのがびっしり張り付いていた。もう目玉が無いその顔はヌメヌメと脈打って、こちらを向いている。
「どこ行ってたの?ダメじゃない。私から離れちゃ」
その右手に包丁が光っているのが見えて、私は悲鳴をあげた。
「いやぁぁぁ!!!」
涼子ちゃんが、こっちに駆け寄ってきていた。

私は怖くてその場にうずくまった。
足音が聞こえる。
もうすぐそこまで来ている。
「や、やぁ!」
ボコンと音がして、私の肩を誰かが抱いた。
「さぁ逃げよう!」
「みくるちゃん…?」
みくるちゃんの手には、金属バットが握られていた。
守ってくれたんだ。
涼子ちゃんは立ち上がろうとしている。
「早く、こっちに!」
みくるちゃんに手をひかれて私は走った。
後ろからは依然、涼子ちゃんが追って来ている。

「駄目…」
入り組んだ迷路を駆け回って、行き着いた先は行き止まりだった。
「みくるちゃん…どうしよう…」
「わ、私が守るから…大丈夫。安心して…」
彼女はガタガタと、体中が震えていた。
ギシ、ギシ、と板を踏みしめる足音が、どこからともなく響く。
「私の後ろに隠れて」
みくるちゃんの言うとおり、私はエアコンの室外機のそばに身を隠した。

ギシ、ギシ…
足音が止まる。
「行ったの…?」
安堵のため息が漏れる。

「み〜つけた!」

声がした瞬間、屋根の上から涼子ちゃんが飛び降り、みくるちゃんのお腹に包丁が刺さった。
「やぁぁっ!ぁぁあ!」
小鳥の断末魔のような声をあげて倒れるみくるちゃんを、涼子ちゃんは容赦なく滅多ざしにする。
そして、地面に赤い血溜まりができ、みくるちゃんが力なく転がると、彼女はこちらに向き直り、襲いかかってきた。


852. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 16:39:17.31 ID:1DxV+Mu4O

朝倉さん絶好調


855. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 16:41:39.11 ID:hapo6mNPO

http://t.upup.be/?qg50ljpjq4
t_upup_be.jpg


857. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 16:43:42.62 ID:E9rpqTDsO

>>855

うわああああああああああ


860. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 16:45:27.10 ID:SffM2HcN0

>>855

モリゾー!モリゾーじゃないか!


892. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 17:16:26.35 ID:LYNQwlk0O

谷口 合石岳 羽生蛇鉱山 第3日 16時0058秒

長門に教わったとおり、井戸の底から日本軍の手榴弾をしこたま持った俺は、水門を目指していた。
そこを爆破して、水流で屍人ノ巣を一網打尽にしてやろうという寸法だ。
しかし…
「日が落ちそうだ。やべえな…」
俺は屍人どもを蹴散らし、急いで鉱山を抜けた。
こっちは銃があるしな。
やっとのことで水門の上まで辿り着き、手榴弾で水門を爆破した。
濁流が下流の巣を押し流す。
やれやれ、ギリギリだぜ。
俺が一息ついたときだった。

「たぁにぃぐちぃぃ!!」
聞き覚えのあるその声は、まさしく。
「国木田ァ!!」
もはや顔面に無数のフジツボが付着して見る影もない。
そいつが、俺の背後から鉈を俺に突き立てた。
もんどりうって倒れた俺に、さらに鉈で斬りつける国木田。
口からは楽しそうな笑い声が漏れている。
痛みをこらえて、俺は強がった。
「谷口様をなめんなよ」
俺は宇理炎をかざし、国木田に向けた。
「神風、見せてやるよ」
青い炎が、俺もろとも国木田を包む。
苦しむ国木田を見ながら、俺は安らかだった。
化け物役だけは、御免だ。


893. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 17:17:39.06 ID:hapo6mNPO

谷口先生……(´;ω;`)


899. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/24(日) 17:21:59.88 ID:DRa72EYIO

>>893

893もが涙した超大作!
キョン「またサイレンが鳴る…」


キョン「またサイレンが鳴る…」  前編

2009年05月25日 21:04

キョン「またサイレンが鳴る…」

途中までしか読めない方は「こちら」へ

1. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/23(土) 16:57:34.75 ID:kXzfSi4XO

「夏休みには合宿に行かなければならなのよ!」

そんなことをハルヒが言い出したのは、地獄の期末試験も終わり、夏休みも間近という7月中旬のある日のことだった。

「合宿って…、海とか山とかへみんなで遊びに行こうってことか?」

ハルヒはわかってないとばかりに、大げさに眉をひそめる。

「そういう浮ついた気分で行くんじゃないわ。もっとこう…、おっきい不思議がありそうなとこよ」
「大きい不思議ってなんだよ」

あきれて俺は聞き返す。
ハルヒは腕を組み、少しだけ考えて

「夏だから…幽霊とか?」
「ただの肝試しじゃないか」
「山奥でツチノコを探すなんてのも悪くないわね」

あのな、俺たちは藤岡弘、探検隊じゃないぞ?

「あんなのヤラセじゃない。私はもっと真剣にーー」

そのとき、

「それなら、いいところがあるよっ!」

たまたま部室に遊びに来ていた鶴屋さんが、元気良く話に割り込んできた。

鶴屋さんの口からは聞き慣れない地名が飛び出した。

「羽生蛇村…?」

俺とハルヒは口を揃えて言う。
妙な名前の村だ。

「そうっ!今はほとんど住む人もいない小さな村なんだけど…」

鶴屋さんの説明は、だいたい以下のような感じだった。
その村は、昔から奇妙な噂が絶えなかった。
ツチノコが生息しているだとか、空魚の伝説とか、UFOを見たとか、井戸の底に眠る日本軍の武器庫の噂だとかーー。
そして、極めつけは噂ではなく、過去に起こった大事件。


「村人大量失踪?」


「そうだよっ。10年くらい前に土砂災害があってね。その時、たくさんの家屋が下敷きになったんだけどーー」
「けど?」

ハルヒは興味深々といった様子で聞き返す。

「遺体がまったく見つからなかったのさっ。見つかったのは生存者が一人だけ」

ここで古泉がいつものニヤケ面で口を挟んだ。

「確か、子供が一人だけ助かったんでしたか」
「よく知ってるね〜、古泉くん!」

鶴屋さんは感心顔だ。

「その話は都市伝説では有名は部類ですからね」
「そうなのか?古泉?」

ええ、と古泉は話題に似つかわしくない優雅な返事をした。
むふふ、と鶴屋さんは得意気な顔をして、話を続ける。

「実は、そこらへんに鶴屋家の土地と別荘があるんだねっ!これがっ!」

聞けばもともと、鶴屋家は羽生蛇村と縁があるそうだ。

「なるほど、だいたい事情はわかりました。おい、どうするハルヒ―――」

ハルヒは、星を見上げる可憐な少女のように目をキラキラと輝かせていた。

「最高じゃない!こんな機会めったにないわ!よし決めた!合宿はそこに決めたわ!」

100万$の笑顔ではしゃぐハルヒは久しぶりだ。
こいつの喜ぶツボは常人とはだいぶズレているが、いつものことだ。

「いいんですか?鶴屋さん?」

「私が持ちかけた話だよ、キョンくん!それに羽生蛇村は廃村寸前だから雰囲気も満点だしねっ!」

どんな雰囲気ですか。
そして、鶴屋さんは俺にそっと耳打ちする。

「肝試しでみくるとペアになったら、楽しいことになるかもねっ?」

やれやれ、仕方がない。
気はすすまないが、我らが団長様の為に行くとするか。


前日


蝉ですら熱中症で命を縮めそうな8月初め、記念すべきでない初のSOS団合宿は行われた。
予定は3泊4日。

メンバーはいつものSOS団員に加えて、案内役の鶴屋さん、長門の付き添いの朝倉。
そして朝倉が来るなら俺も行きたいと、無理を言ってきた谷口と、そのツレ国木田。
さらに加えて、私もキョンくんと一緒に行きたい!とだだをこねた俺の妹。
以上、合計十名にも及ぶ大軍団。
谷口が来るのにはハルヒは若干の不満を言っていたがな。

しかしこっちとしても、野球の件とか映画の件を持ち出されると断りきれないってのが正直なところだ。

妹は連れて来たくは無かったのだが、妹の矢継ぎ早なおねだりをいちいち断るのも面倒になって、好きにしろ、と口を滑らせてこの様だ。

つくづく自分の流されやすさには嫌気がさすね。

朝倉は一回長門に消された後、思念体内部で何やらゴタゴタともめ事があって再生されたらしい。
だから付き添いとは名ばかりで、逆に朝倉が暴走しないように長門が監視しているのだ。
俺としては来てほしくは無かったのだが仕方がない。

こんな感じの先行き不安なメンバーで、俺たちは交通機関を乗り継ぎ、一路羽生蛇村へと向かった。

行きの車中、夏休みの旅行と言うこともあってはしゃいでいた俺たちは、存外に話が弾んだ。
このメンツだと少々気まずいかと思ったんだが、杞憂だったようだな。

中でも朝倉の気立ての良さにはかなり助かった。
あのハルヒでさえ皆と楽しそうに話をしている様子を見て、もしかしてハルヒも、2学期からはもっと多くの人と打ち解けられるようになるかも…、と期待を抱かせる。
そのまま普通の女の子になってくれると助かるのだが。

「今回の合宿で、ツチノコを捕まえて一儲けするわよ!」

前言撤回。ハルヒが普通の女の子になるなんて、ありえない。

和気あいあいとした雰囲気の中、目的地についたのは、夕方のことだった。
先に行って待っててくれた鶴屋さんが、涼しげなワンピースに麦藁帽子という出で立ちで、向日葵みたいな笑顔で迎えてくれる。

「みんなっ、よく来てくれたねっ!!」

旅の疲れが一気に癒されるほど、なんとも爽やかだった。

鶴屋さんの別荘は羽生蛇村の隣の村にあった。

言っちゃ悪いがかなり辺鄙なところで、なにもこんなところに別荘を建てる必要もないだろうに。
そんな場所なので土地代も安いのか、下手なショッピングセンターぐらいなら入りそうなぐらいの豪邸だった。
伝統的な日本家屋で、大きな土蔵まである。
鶴屋家には日本中にいくつも別荘があるとは鶴屋さんの談。
ブルジョワだ!ブルジョワがいるぞ!

「こんぐらいで驚いちゃいけないよっ。羽生蛇村はここよりもっと田舎なんだからねっ」

いや、みんなが驚いているのはそこじゃないと思いますよ。
金持ちはどこか感覚がずれているみたいだ。

早速、それぞれの部屋に分かれて、(すごい部屋数だ)俺は荷物を置き妹とくつろいでいると、ドタドタと乱暴な足音が響き、襖が開いた。

「キョン!下見に行くからついてらっしゃい!」

案の定、ハルヒだった。

ちょっと待てよハルヒ。
俺はいま夜の肝試しでうまく朝比奈さんとペアになる方法を考えてだな…。

「ぐずぐず言わないでさっさとついてきなさい!」

やれやれ、こうなったハルヒはたとえ軍隊が出動しても止まらないだろう。
俺は長門と朝倉に妹を預け(妹は朝倉にとても懐いている)、夕食の支度をしている朝比奈さんと鶴屋さんに出かける旨を告げると、二人で羽生蛇村に向かった。

鶴屋さんの言った通り、羽生蛇村は寒村としか言いようのない有り様だった。
家屋がいくつかあるくらいで、ほとんど村民の姿も見当たらない。
もちろんコンビニも何もなく、俺ならこんなところに住むのは願い下げだ。

「なんにも出ないわねぇ」

とハルヒは浮かない顔。
まだ日が登ってるうちは魑魅魍魎も出ないだろう、と言うと

「逢魔が刻じゃないの。何も出ないなんておかしいわ」

そんなの知るかよ。

「あ、あそこに何かあるわ」

ハルヒが指差すほうに、小さな古びた祭壇?のようなものがある開けた場所があり、土偶のような人形の首が祀ってあった。

「あれ、何かしら?」

ハルヒは一気に駆け寄って、その土偶を手にとっている。

「おいやめとけ」
「良いじゃない。減るもんじゃなし」

お構いなしに、ハルヒは土偶をためつすがめつしている。

「ふ〜ん、変な顔ね。宇宙人みたいな顔」

長門と朝倉が聞いたらどんな顔をするだろうか。

「おい、その辺にして戻ろうぜ。どうせ夜にまた来るんだろ」

しかしハルヒは人の話なんか聞いちゃいないようで、

「決めたわ。これをお土産に持ってかえって部室に置いとくの」

などと言い出した。
何考えてるんだお前は。良いから戻せ。

「村の人も別に構わないわよ。こんな汚い土偶の一つや二つ」

駄目だ、聞く耳を持たない。今のハルヒの意志はタングステンより硬いだろう。
仕方がない。俺が夜にでもこっそりと戻しておくとするか。

「たっだいま〜!」

ハルヒは玄関の扉を開け、元気よく叫んだ。
そりゃそうだ。結局俺がこの意外に重たい土偶を持つはめになったんだから。
自分で持って帰ると言っておいて、なぜ俺が持たにゃならんのだ。

「おかえりハルにゃんっ!」

ハルヒに負けないテンションで出迎えてくれた鶴屋さんは、俺の持つ土偶を見て目をまん丸くした。

「あっ!!あぁぁあぁ!!それはっ!」

しまった。やっぱり持ち出しちゃいけないものでしたか。

「だめだよっ!それはご神体だよっ!きっつい罰が当たるよっ!」

鶴屋さんはすごい剣幕だ。よっぽどいけないことをしたらしい。

「ご、ごめんなさい…。ほら、キョンも謝りなさい」

何でだよ、とはこのしゅんとしたいじらしいハルヒには言えなかった。

「すみません鶴屋さん…。もの珍しくてつい持って来ちゃいました…。」

後で戻しに行きますから、と付け加えると、

「反省してくれればいいよっ。後で私が村の人に謝って戻しておくからさっ。怒鳴ったりしてごめんね?二人とも」

ご神体はそこに置いといてと言い残して、鶴屋さんは奥に引っ込んでいった。
鶴屋さんがあんなに怒るなんて、これはよっぽど大事なものだったらしい。
俺は玄関先に丁重に土偶の頭を置いて中に上がると、思いがけずハルヒに呼び止められた。
やれやれ、また文句でも言われるのか、と思って振り向くと、ハルヒがもじもじと俺の靴を見ながら言った。

「ごめんね、キョン…」

おぉう!?ハルヒの口からこんな言葉が飛び出すとは。
目をぱちくりとさせて唖然としていると

「なによ、私だって謝ることくらいあるわよ」

一瞬で元に戻った。

「もうちょっと素直さが続かないもんかね、お前は」
「うるさいわね、人が下手に出たらつけあがって!」
「悪かった悪かった。さ、夕食が出来てるみたいだぞ」

まだ後ろでもごもご言っているハルヒを連れて、良い匂いのする広間へと向かった。


キョン 前日 22時38分23秒


夕食が終わり、片付けも一段落したところで、お待ちかねの肝試しをすることになった。
ハルヒに言わせれば、肝試しではなく不思議探索・夜の部らしいが、大して変わらんだろうと言うと怒られてしまった。
肝試しなんて言い方は幽霊に対して失礼なんだと。

「あんただって理不尽に怖がられたら腹がたつでしょうが」

まぁ一理あるな。
皆で懐中電灯を持って、羽生蛇村へと向かう。
行きがけに見たら、玄関先に置いたご神体はなくなっていた。
鶴屋さんが戻しておいてくれたのだろうか。仕事が早いな。

羽生蛇村につくと、早速ハルヒは全員を集めて言う。

「さぁ、みんなでペアを決めるくじ引きをするわよ!」

やっぱり肝試しじゃないか、と思ったが、朝比奈さんとの輝ける未来のために、俺は何も言わない。
谷口は膝をついてぶつぶつと呟きながら、必死に神様にお祈りしている。
俺も心の中で祈りを捧げ指で素早く十字をきってから、運命のくじを引いた。


くじ引きで決まったペアは以下の通りだった。
谷口と国木田、朝倉と妹、鶴屋さんと古泉、長門と朝比奈さん、
そして、俺とハルヒ。
なんでアンタとなのよ、と腕組みをして目を伏せて言うハルヒ。
そりゃこっちのセリフだ、と言うと尻を思い切り蹴り上げられた。
谷口は、この世には神も仏も居ないのか!と叫んだきり、口から魂を垂れ流して放心状態だ。
危うく幽霊の仲間入りだ。
気持ちはわからんでもないがな谷口。
普通の肝試しなら、一組ずつ出発するところだが

「肝試しじゃないんだからみんないっせいに探索するわよ!0時にここ集合!以上!」

だそうだ。
道に迷ったらその時はその時らしい。
実にハルヒらしい発想だが、別段誰も異を唱えようともしなかった。無駄だからだ。
そして俺たちは各々、思い思いの場所に散っていった。


キョン 上粗戸 眞魚岩 23時36分03秒


ハルヒと二人でぶらぶらと夜の羽生蛇村を探索する。
田舎の夜は街灯もなく、頼りは手元の懐中電灯だけだった。
聞こえてくるのは虫の鳴き声だけで、こんな夜は都会では決して味わえないだろう。
味わいたくも無いのはご愛嬌。
もちろん舗装なんてされていない道はぼこぼこで、俺達の歩くすぐ横は斜面になっている。

「足元気をつけろよ」

ハルヒのほうを見ると、ハルヒは夜空を見上げて歩いていた。
つられて俺も見上げると、プラネタリウムのような満天の星空が広がっていた。

「星が綺麗ね」

まったくその通りだった。

「ああ、そうだな」

俺は柄にもなく、星々の瞬きにしばし目を奪われた。

「向こうから地球は見えているのかしら?」

星を見るのに夢中なハルヒの手を、俺は無意識にそっと繋いでいた。

「ひゃっ!」

途端にハルヒはらしくない声をあげる。

「足元危ないぞ」

俺は気遣うようなことを言って、その場をごまかすことにした。

「それとも、手繋ぐの嫌か?」
「嫌じゃないわ」

暗くてハルヒの顔はよく見えなかった。
そうしてしばらく歩いていると、急に背後の暗闇の中から、聞き覚えのない男の声がした。


「待ちなさい」


びっくりして懐中電灯を向けてみると、そこには制服に身を包んだ警官が立っていた。
硬直する俺とハルヒ。

「お前たち…、どこの人間だ…」

おぼつかない足取りで近寄ってくるその警官は、まるで酒に酔っているみたいかのようだった。

「いや、俺たちはですね、旅行に来ててちょっと肝試しを…」

慌てて説明する俺を無視して、警官は肩についた無線機に向かって何事かを話している。

「ちょっとキョン、どうしよう…」

ハルヒは側に寄り添って不安そうな様子だった。
大丈夫だ、とハルヒを勇気づけながら、俺は警官が無線機に話す内容を聞いていた。
ぼそぼそとしたその声は、ほとんど聞き取ることができなかったが、最後の言葉だけは、はっきりと聞き取れた。


「…了解、射殺します」


そして警官はいきなり銃口を向け、俺達に発砲した。


バキッ
銃弾は俺の側にあった樹木の表面に食い込み停止した。
依然、警官はこちらに銃を向けている。
俺は一瞬何が起きたかわからず呆然としていたが、空気をつんざくハルヒの悲鳴でふと我に帰った。
警官が次弾を撃とうとしている。
俺はとっさにハルヒをかばって、足を踏み外した。
足を斜面にとられ、俺とハルヒが下へと滑り落ちる瞬間、俺の背中のすぐ近くを銃弾が通り過ぎた。

「きゃあああ!」

バキバキと小枝を折りながら、3mほど下の地面に俺たちは倒れこむ。

「ハルヒ!怪我は無いか!」
「もう、なんなの!私達が何をしたって言うのよ!」
「とりあえず今は逃げるぞ!走れるか?」

すかさず立ち上がり、ハルヒの手を引いて近くのプレハブ小屋を目指し走る。
後ろからは斜面を滑り降りる音が聞こえきた。
くそっ、追ってきた!
急いで小屋の中に逃げ込み鍵をしめると、俺とハルヒは机の下で息を潜めた。

「ライトを消せ」

小刻みに震えているハルヒに、俺は小声で伝えた。
ハルヒは慌ててライトを消し、泣きそうな声で言う。

「なんなのよ、いきなり撃つなんて普通じゃないわ。異常よ」
「ああ、そうだな。あいつはかなり頭がヤバそうだ…」
「もしかして、私がご神体を盗んだからかしら?」
「そんなことでいきなり発砲なんて、気が違っているとしか思えん。お前のせいじゃないから安心しろ」

そう言ってハルヒを落ち着かせていると、外で警官の声がする。

「無駄な…抵抗は…やめなさぁい」

警官は俺たちを探しているようだ。
恐る恐る窓から様子を窺うと、警官は俺たちが滑り落ちてきた辺りでキョロキョロしていた。
このままここに隠れていても、見つかるのは時間の問題だ。
何か手段は無いか、と思考を巡らせていると、机の上にあった車の鍵が目についた。

なるべく小声で、そっとハルヒに近寄り話しかける。

「ハルヒ、よく聞いてくれ。今俺は車の鍵を拾った。たぶん表にある軽トラの鍵らしい。乗って逃げるぞ」
「それって外に出るってこと?嫌よ!ここであいつがどっか行くのを待ちましょうよ!!」
「いいか、ハルヒ。ここにいても見つかるのは時間の問題だ。逃げるなら早いほうがいい」
「…わかったわよ、行けばいいんでしょ…!」
「いいか、外に出たら一気に走るんだ。そして軽トラのところまで行け。できるな?」

ハルヒはこくん、と頷く。
ハルヒを立ち上がらせて扉の鍵を開けると、俺たちは一気に軽トラへと走った。
車の鍵を差し込み、回してロックを外す。

「そこかぁ〜。待ちなさぁい!」

警官がライトをこちらに向け、ぎこちなく走って向かってくる。

「キョン!見つかったわ!」
「早く乗り込め!」

ドアを閉め、鍵を差して回し、エンジンをかける。
警官はガラス越しにこちらに拳銃を向けていた。

「ハルヒ伏せろ!」

銃声がして、フロントガラスにひびが入る。
ハルヒの悲鳴。
俺は一気にアクセルペダルを踏み込んだ。


キョン 前日 上粗戸 眞魚川護岸工事現場 23時56分01秒


どん、と鈍い嫌な音と、タイヤが柔らかい物を踏み潰す感触がした。
思わず俺は車を止める。

「キョン…、もしかして…轢いちゃった?」

ハルヒはすっかり憔悴しきっている。

「…ああ、そうらしい」

サイドミラーには動かなくなった警官が写っていた。

「どうしよう?警察?それとも救急車?」
「わからん…。とりあえずハルヒは古泉か鶴屋さんに電話してくれ。俺は様子を見てくる」

気をつけてね、と心配するハルヒを残して、俺は警官に近寄って脈を計った。
…どうやら死んでいるらしい。
どうしたもんか。正当防衛には違いないが…。

その時、地震と共にどこからともなくサイレンが鳴り響き、頭に激痛が走った。

ウウゥゥゥゥゥゥ…

思わず俺は頭を抱える。
すると、痛みで歪む視界の中にゆっくりと警官が立ち上がった。
馬鹿な、そんな筈は…!確かに死んでいたのに。
パン!と乾いた銃声。
ハルヒの声。
胸を撃ち抜かれたショックで崖の下に落ちながら、俺の意識は途絶えた。


キョン 初日 大字粗戸 眞魚川岸部 02時28分13秒


「キョンくんっ!キョンくんっ!起きるんだっ!」

聞き覚えのある声と、顔に雨粒が当たる感触で目をさますと、目の前には鶴屋さんがいた。

「大丈夫かいっ?なんともないかいっ?」
「鶴屋さん、ここは…?」
「私にもよくわからないよ…。キョンくんはどうしてこんなとこに倒れてるの?」
「俺は…さっき、警官に撃たれて…」

言いながらさっき撃たれた胸の当たりを触れるが、痛みがない。

「あれ?」

見てみると、傷は塞がって、跡形も無くなっていた。

「ところでハルにゃんは?ハルにゃんは一緒じゃないの?」
「そうだ、ハルヒは!?」

立ち上がって周りを見渡すと、俺は真っ赤な川の中に立っていた。

「うわ!これは…血!?」

驚いて叫ぶと、鶴屋さんは言った。

「あのサイレンの音が鳴ってから、急に水が赤くなったんだよ…」

良く見ると、体に当たる雨の色までが、真っ赤に染まっていた。


「赤い…水?」


「とりあえずここは危ない感じがするからさっ。安全なところまで逃げるよっ、キョンくんっ」
「危ないって、何がですか?」

俺がそう尋ねると、鶴屋さんからは驚くべき返事が返ってきた。

「村の人がおかしくなって、人を襲ってるんだ…」

ふと、さっきの警官を思い出す。

「実は俺もさっき警官に襲われて…」

鶴屋さんに今まで起こったことを簡単に話すと、

「それじゃ、一刻も早くハルにゃんを探しに行かないとっ」

と鶴屋さんは顔面蒼白になった。
そうだ、ハルヒの身が危ない。急がないと。
ふらふらと2、3歩歩いたところで、立ちくらみに似た感覚が俺を襲った。
そして見覚えの無い光景が頭の中にフラッシュバックする。

古いタバコ屋。

電話機の横には鍵。

自分の手には刃物が握られている。

なんだこれは?この自分が自分じゃないような感覚は…。

「どうしたんだいキョンくん?」
「いえ、何か変な物がみえて…」

そう言うと、鶴屋さんは目をまん丸くして、口を開いた。

「まさか、君も幻視が使えるの?」
「幻視…?」

思わず俺は聞き返した。

「幻視って言うのは、近くにいる人の視覚と聴覚を感じることができる能力なんだ」

鶴屋さんの説明によると、ここ羽生蛇村の近辺では、稀にそういう力を持った人が生まれるらしい。
じゃあ鶴屋さんもそうなんですか?と聞くと

「私はあのサイレンが鳴ってから使えるようになったんだよ」

とのことだった。
どうやら自分もその口らしい。

「とりあえず、今は安全なところまで逃げるよっ!ハルにゃんはそれから探そう」

俺と鶴屋さんは南へと進み、階段の真ん中で立ち止まった。

「今なら大丈夫みたいにょろ。行くよっ!」

そう言って鶴屋さんは通りの反対側の路地へと駆け出していった。
俺も後を追おうと立ち上がると、左手に見覚えのある薄汚れたタバコ屋が見えた。
そういえばさっき電話機の横に…
早くしろ、とジェスチャーをする鶴屋さんを待たせて、俺はタバコ屋のほうに走る。
やはり、鍵があった。
それを拾って振り返ると、目の前に包丁を持った人間が立っていた。

そいつは、見た目は中肉中背の、いかにも田舎の主婦という出で立ちだった。
しかし、明らかに普通と違ったのは、その顔面…目から血を流し、青みがかったその肌の色は、明らかに人とは思えない。

そして、その顔が醜く歪み、まるで玩具を見つけた子供のような笑みを作った。
そいつは、うふふ、と濁った笑い声を喉から出しながら、包丁を振り上げこちらに向かって走りだした。
やばい、どうしていいかわからない。

怖い。刺される。死にたくない。
その時、鶴屋さんがそいつに強烈なドロップキックくらわせた。
包丁が電話機の横に刺さる。

「早くっ!死にたくなかったら走るんだっ!」

鶴屋さんに手を引かれて、俺達は通りを道なりに走った。
その後ろを目から血を流した村人が二人、三人と追ってくる。
一人じゃなかったのか!

「あの上を登るよっ!」

バス停の屋根の上に鶴屋さんは素早くよじ登り、俺もそれに続いた。
そこから高台の地面に登り、林の中に隠れて、息を殺す。

「どうやらまいたみたいだね…。何をグズグズしてたんだいっ!殺されるとこだったよっ!」
「すいません…」
「まー、助かったからいーよっ。いこっ!」

そして俺と鶴屋さんは林の向こうへと進んだ。


朝比奈みくる 初日 大字波羅宿 耶辺集 落 02時18分34秒


「長門さぁん、一体何が起こってるんですかぁ?どうなっちゃってるんですかぁ?わけわかんなすぎですぅ…」
「少し黙って欲しい」
「ひっ…」

大きな時空震を伴う地震と、鳴り響くサイレンの音の後、気づいたら私は長門さんと、この場所にいた。
この意味不明な状況で長門さんと一緒に行動できるのは、はっきり言って幸運だろう。
彼女のことは苦手なんだけど。
説明されたところによると、この場所は時間的にも空間的にも元の世界と途絶した場所らしい。

「じゃあどうやって帰るんですかぁ?」
「不明。思念体にもアクセスできない。そしてこの世界は私に高負荷をかけている」
「ふぇぇ、そんなぁ!」

思念体にアクセス出来ないと言うことは、手の打ちようが無いってことじゃないですか。

「私はあなたと私の安全を確保する。黙ってついて来て欲しい」

わかりました、と頷いて、私は長門さんの指示に従った。
その瞬間、頭痛と目眩がして、頭に妙な光景がよぎる。
猟銃を持った自分が、私たちを狙っていた。

「危ない!」

悪い予感がして、長門さんを突き飛ばす。
直後、長門さんのいた場所に銃弾がめり込んだ。
それを見て、へなへなと全身の力が抜けた。
失神一歩手前の私を、ぐいと物陰に引っ張りこんで彼女は尋ねた。

「これは何?」

彼女はいつもの無表情のままで、頭に手をやって考え込むようなポーズをしている。
おそらく彼女にも同じような症状が現れているのだろう。

「えっと…、たぶん誰かの見てるものが、私たちの頭の中にテレパシーみたいに伝わってきてるんじゃないかなって…、なんとなく思うんですけど…」

自分でもなんて言っていいかわからない。
もともと私口下手だし…
しかし彼女は、理解した、と短く告げると、どんどん川沿いに進んでいった。
遅れて後ろをついていく。
やっぱり苦手だ、この人…。
でも銃撃なんて一体誰が…?
意味がわからなすぎて頭がぐるぐるする。
急に前を歩いてた長門さんが立ち止まった。

「下がって」
「え、一体どうしたんで…」

言いかけて、闇の中に、一人の農夫が佇んでいるのに気づいた。

「来る」

彼女がそう呟くのと、農夫が雄叫びを上げるのはほぼ同時だった。
目から血を流した農夫のその顔は、すでに人のものとは思えなかった。

「ひゃあああ!!」

私は自分でも情けないような大声を上げて後ずさる。
そして、腰を抜かして尻餅をつく間に、長門さんが素早くその農夫に飛びかかり、一撃で首の骨を折った。

「長門さん…?」

何が起こったかわからず、呆然とする私に彼女は短く告げる。

「終わった」
「まさか…、殺しちゃったんですかぁ…?」
「この人物は手に刃物を持っていた。敵性と判断。これを排除した」
「だからって殺すことは…」
「安全を確保するため。仕方がない」

そう言って彼女は首がねじ曲がった農夫から草刈り鎌を奪うと

「武器」

と言ってこちらにそれをよこした。
そして、ずんずんと進む長門さんに、私は必死でついていった。
歩く途中で、すでに廃屋となった民家に彼女は興味を示したようで、彼女はずんずんと障子の外れた縁側から中に上がり込んでいった。
本棚をなにやらごそごそと探る彼女を、私はついていく気がせず、廃屋の外で待つことにした。
私は、あんな不気味な廃屋に上がるのは嫌だ。
すると、今し方来た方の草むらから、ガサガサと音がした。

「長門さん…」

不安になって彼女に呼びかける。
返事はない。本に夢中なのだろうか。

「長門さん…!」
「なに」

ぶっきらぼうな返事。

「今、何かが…」

言うが早いか、目の前に人影が現れる。
ひっ、と短い悲鳴を上げて、ライトを向けると、さっきの農夫が薄ら笑いを浮かべて、そこに立っていた。

「ぐふっ…、ぶふふふ…」
「いやぁ!!」

夢中で手に持った鎌を振り回すが、相手が怯む様子は無く、笑みを崩さず構わず突っ込んできた。
青白い手が、私の腕と首を掴んで、強烈な握力で私を締め上げる。
声を出すこともできずにいると、しゅっ、と横を何かが動いた。

長門さんだ。
彼女は農夫に目にも止まらぬ跳び蹴りをかますと、農夫は手を放して体勢を崩した。
私はその場に倒れ込む。
その機を逃さず、彼女は農夫の頭をつかみ、近くにあった古井戸の中に農夫を投げ落とした。

「大丈夫?」

そう問いかける彼女の顔を見て、私はつくづく思った。
長門さんと一緒で良かった…。
そして私が長門さんの手を借りて立ち上がろうとしたとき、遠くの学校のスピーカーから放送が聞こえてきた。

「りょ…こちゃ…早…来て…」

途切れ途切れのその放送は、キョン君の妹の声だった。


朝倉涼子 羽生蛇村小学校折部分校 図書室 初日 02時18分34秒


「怖いよ、涼子ちゃん」
「大丈夫、お姉ちゃんが守ってあげるから」

怯える少女を抱きしめて宥めながら、私は考えた。
なぜ思念体とアクセスできないのか?
急に起こった時空間転移は涼宮さんの仕業なのだろうか。
わからない。判断材料が少なすぎる。
ともかく、今は化け物だらけのこの学校を脱出するのが先決だろう。
建物内に逃げ込んだのは、失敗だったと言わざるを得ない。
そしてなにより問題なのは、情報操作の許可を受けられない今の状態では、私はほとんどの能力を使えない。
せいぜい身体能力が少し優れている程度だ。
私一人ならともかく、この子が一緒なのは厳しい。
早くみんなと、特に長門さんと合流しなければ。

「いい?お姉ちゃんは今から外に出る方法を探ってくる。だからここでじっとしていて?」
「うん…」
「すぐに戻ってくるからね」

そう言い残し、私は図書室を後にした。
そして階段を目指しながら、ふと疑問に気づく。
何故私は、あんな足手まといを連れて行動しているのだろうか、と。

一階に降りると、気味の悪い化け物が2体、廊下に立っていた。
奥の一体は窓を板で打ちつけて塞ぐのに夢中で、手前の一体は包丁を持ってうろうろしていた。
私は素早く手前の奴に近づき、武器を奪って、足払いをかけ床にたたきつけた後、そいつの喉に包丁を突き立てる。

化け物は少し痙攣したあと、すぐに動かなくなった。
返り血を浴びないよう注意して包丁を引き抜いたが、意外なほどに出血は無かった。
騒ぎを聞きつけた奥の一体が金槌を片手に走り寄って来たが、問題なく首を一閃する。
化け物は折り重なるようにして、膝から崩れ落ちた。

「あら、案外大したことないのね?」

沈黙した化け物にそう呟きつつ、手を怪我しないように、包丁を持つ手にスカートの生地を少し破って巻きつけた。
この程度なら、全ての化け物を排除した上で、じっくり長門さんとこの時空間からの脱出方法を検討するのも悪くない。
一階を見て回るが、いつの間にか、窓や玄関には中と外から板が打ちつけられ、そこから外にでるのは無理そうだ。
脱出の手がかりを探して、私は職員室に入った。

職員室の掲示板に貼ってあった校内の地図を確認すると、通用口と体育館裏口の2つの出入り口が残っているようだ。
良かった。なんとか外に出れそうだ。
ふと、その下に画鋲で貼り付けてあった写真が目につく。
そこには、無邪気に笑う子供たちと、人の良さそうな笑みをたたえた恰幅のいい初老の男が写っていた。
どうやら校長先生と児童たちらしい。

ずいぶんと皆に愛されてるのね、と写真の校長先生に向かって思いながら、私は鍵入れを漁った。
しかしそこには、体育館の鍵しか残されていなかった。
誰かが持っているのだろうか?
仕方なく私は体育館へと向かうことにした。
扉の鍵を開け、ひっそりと暗い体育館に足を踏み入れる。
無造作に転がるバスケットボールが、雑然とした印象を与えた。
梯子で2階に上がり、裏口の内鍵を開ける。
良かった、ここから外に出れそうだ。
図書室に戻ろうと踵を返したその時、スピーカーから放送が聞こえてきた。

「涼子ちゃん早く来て!涼子ちゃん助けて!」

反射的に私は素早く一階に飛び降り、放送機器のある職員室へと走った。
なぜこんなに必死なのか、疑問に思う暇も無かった。
開け放しになった扉をくぐり抜けると、職員室の部屋の隅で泣きじゃくって怯える彼女と、化け物が一体、彼女を襲っていた。

その化け物の顔には見覚えがある。
…さっき見たあの写真。この学校の校長だ。
写真のそいつ本人が、変わり果てた姿でそこに立っていた。

「お嬢ちゃんの匂いがするよォォ!!!」

反吐の出そうな最低の言葉を叫びながら、金属バットを持って彼女に襲いかかっている。
私はそいつの横っ腹に、思い切り包丁を突き立てた。

「あんたそれでも教育者なの!?度し難いわ!」

校長の体を蹴り飛ばして、包丁を引き抜く。
そして彼女に急いで駆け寄り、慰めの言葉をかけた。

「もう大丈夫よ…」
「涼子ちゃん…」

泣きじゃくる彼女を抱きしめ、手をひいて職員室を出ると、さっき殺したはずの化け物が2体、立ち上がってこちらに向かって来ていた。
あいつらは不死身だっていうの?
そんな馬鹿な。

「逃げるわよ!走って!」

追いかける化け物を振り切って、私たちは体育館裏口から這々の体で逃げ出した。


古泉一樹 蛇ノ首谷 折臥ノ森 初日 03時31分17秒


「ここは…?」

そうだ、思い出した。
僕は鶴屋さんとはぐれて探し回っている内に、この森に迷い込んで、そして…

「あのサイレンで気を失ったのか…」

僕は目の前にあった懐中電灯を手にとり、一体何が起こったのか思案してみた。
まだまったく状況はわからないが、間違いなく涼宮さん絡みだろう。
やれやれ、困ったものです。
携帯も繋がらないし、どうしたものか…。
なんとなく、抜き差しならない状況なのは勘でわかる。

ひとまず、長門さんか朝倉さんと合流するのが良さそうだと思い、山を下ることにした。
すぐに舗装された道路に出、左手に斜面に突っ込んだ事故車が見えた。
中を見ると、運転手は頭から血を流して絶命していた。

「御愁傷様です」

手を合わせて、勝手に運転席のドアを開けてトランクを開けた。
厚かましいとは思いますが、こっちも非常時でしてね。
何か使える道具が入っているかもしれないですし。
ゴソゴソとトランクの中を漁っていると、誰かの足音が聞こえた気がした。

身を強ばらせて、恐る恐る顔をあげると、そこには血まみれになった運転手が立っていた。
息を吹き返したのだろうか?マズいことになった。

「すいません。たまたまトランクが開いていたものでして、つい…」

両の手のひらを相手に向けて、つとめてにこやかに話しかけるが、相手はぼうっと突っ立って答えない。

「大丈夫ですか?顔色が優れないようですが…。安静にしていたほうが…」
「ぐふっ、うふふふ…」

返事の変わりに返って来たのは、くぐもった笑い声だった。
なにかおかしい。頭を打ったショックだろうか?

「失礼ですが、正気を失っておられるようだ。今すぐお医者様を…」
「あぁぁああははははぁ!!」

気の狂ったような笑い声をあげた運転手に、僕は戦慄を覚えた。
と同時にそいつが突然襲いかかってくる。
いきなり首を絞められ態勢を崩し、馬乗りにされた。
その時、鼻先まで近づいたその運転手の目から、滂沱の血の涙が流れた。
その人ならざる様を見て恐怖を感じた僕は、慌てて奴の顔面を力いっぱい殴りつけ、なんとか立ち上がった。
そしてトランクにあった工具箱からラチェットスパナを取り出すと、そいつの頭蓋を一思いに砕いた。

…足元には、動かなくなったソレが横たわっていた。
しまった、やってしまった。
襲ってきたのは向こうからとは言え、人を一人惨殺してしまったというのは…マズい。
どう見ても人間というより化け物にしか見えないが、そういう一種の病気の可能性もある。
ならば、罪に問われる可能性も無いとは言えないかもしれない。
楽しい夏休み旅行の筈が、シャバでの最後の思い出だったというのは、笑えない冗談だ。

とりあえず今は車の中に死体を隠しておいて、後で長門有希に頼むなり涼宮ハルヒをうまく使うなりして事件自体を無かったことにしてしまおう。
最悪、機関の手でもみ消すという手もあるし。
そうと決まれば長居は無用だ。とっとと死体を隠して皆と合流しよう。
そう決めて、トランクの中から使えそうなものを手早くピックアップしていると、あり得ないことに死体がまた動き出した。
見ればなんと、砕いた頭が再生しつつあるではないか。
しかしそれを見て、自分の中に沸き起こったのは、恐怖ではなく安堵の感情だった。

「安心しました。あなたはゾンビ的な何かと言うことですね?」

そしてもう一度、スパナをそれに力の限り叩きつけてから、僕は道路沿いに歩くことに決めた。
良かった。殺人犯にならなくて済んで。


キョン 刈割 不入谷教会 初日 05時43分29秒


鶴屋さんと一緒に村の教会に逃げ込んでから、およそ一時間が経った。
化け物どもに追われたり、道に迷ったりで、ここまで来るのに時間がかかってしまったのだ。
何でも鶴屋さんが言うには、今いるこの世界は、俺たちがいた時代の羽生蛇村と過去の羽生蛇村がごっちゃになって、無茶苦茶に繋がっているらしい。
だから、絡まったイヤホンのように道がややこしいんだと。

しかし、この村の教会は、今まで見たことがない、妙ちくりんな教会だった。
眞魚教(まなきょう)と言うこの村独自の宗教だそうだ。
ぱっと見た感じはキリスト教っぽくありながら、テイストは和風で…、例えるなら本格和風スパゲティというような感じだ。
和風か洋風かがさっぱりわからん。

とにかく、しばらくここで誰かが来るのを待とうというのが、鶴屋さんの意見だった。
動こうにも手がかりが無いし、道に迷うほうが危険だと判断してのことだ。
まぁその意見には概ね賛成なのだが、俺はハルヒが心配で仕方がない。
この状況で一人なんだ、どれほどか辛いに違いない。
古泉も一人らしいが、あいつなら一人でなんとでもなるだろう。

そういうわけで、俺はこの教会の長椅子に座って、イライラと落ち着かないでいるのだった。

「ねぇキョンくんっ。落ち着きなよっ!ハルにゃんならきっと大丈夫さっ!」
「しかし…」
「こういう状況には彼女、かなり強いと思うよっ?」

こんな状況でも鶴屋さんは気丈に振る舞っている。

「でも…」

それでも俺は不安だった。
そんな俺を見て、鶴屋さんが突然声を荒げた。

「でももへちまもないっさ!君がそんな様子だと、私まで不安になるよっ!!」

鶴屋さんは目にうっすらと涙を溜めていた。
ああ、そうか。この人も無理をしているのか。

「そうですね…。すいません。今はあいつを信じて待ちましょう。それが最善です」
「わかればいいんだよっ」

鶴屋さんは目を伏せてしまった。

すると突然、外から悲鳴が聞こえてきた。
その声は間違いなくハルヒだった。

「キョンくん、この声は!!」
「危ないから鶴屋さんはここにいてください!すぐに戻ります!」

そう言って俺は、鶴屋さんを残して教会の外へと走った。
ハルヒの姿を探して。


キョン 刈割 切通 初日 06時08分24秒


真っ赤な水をたたえた棚田の向こうに、ハルヒの姿を見つけた。
化け物二体に襲われて追い詰められ、まさに万事休すという場面だった。

「来ないでよ!この化け物!」

必死で叫ぶハルヒに襲いかかろうとしたそいつの背後から、俺は拾った火掻き棒で思い切り殴りつけた。

「キョン!?」

ハルヒが驚いた顔でこちらを見る。
俺はそれに答えず、間髪いれずにもう一体にも打撃を加えた。
衝撃にたまらず倒れた化け物どもにハルヒは容赦なく蹴りをいれ、俺とハルヒでそいつらを壮絶に袋叩きにした。

「ハァ、ハァ…キョン?キョンなのよね?幽霊とかじゃないよね?」
「見ろ、足があるだろ?それとも幽霊の団員が欲しかったか?」
「馬鹿…、心配したのよ!死んだと思ったんだから…」

じわ、とハルヒの目に涙が滲む。
不謹慎な話だが、ハルヒが涙を浮かべてくれたのが少し、嬉しかった。

「俺もハルヒが無事で良かったよ。さぁ、この先に教会があるから一緒に行くぞ。だから涙を拭け」
「泣いてない。さっさと歩け馬鹿」

ハルヒはさっと袖で顔を隠した。

「あんたとはぐれてから大変だったのよ。化け物に襲われて逃げ回ってたんだから」
「追いかけ回したの間違いじゃないのか?」
「バカ!」

俺たちはいつものような雑談を交わしながら、棚田を歩いた。
そうしてないと、頭がおかしくなりそうだったからだ。
それほどこの状況は馬鹿げている。

「でも、キョンって確かに撃たれたわよね?なんともないの?怪我は?」
「うん?ああ、なぜか傷口が無いんだ。撃たれた筈なんだがな」
「それって…」
「どうした?」
「ううん、何でもないわ」

頭を振り、目を伏せるハルヒ。

「なんだ?いいから言えよ」

問い詰めると、ハルヒはいつになく、難しい表情をして考えてから、ようやく口を開いた。

「私たち、もしかしたらもう死んじゃってるんじゃないかって…」
「ここが地獄だっていうのか?」
「キョンが撃たれた後、私もあいつに撃たれて死んじゃったのかも…。そしてこの場所は地獄なのかもしれない…」
「そんな馬鹿なことがあってたまるか。そんな余計なこと考えてる暇があったら、新学期の団活のことでも考えてろ」
俺はそう言って少し笑って見せたが、ハルヒは笑わなかった。

教会に行く道へと続く階段の下までさしかかると、上から男の叫び声が聞こえた。
「助けてくれ!待ってくれ!」

茂みに隠れて声のする方を覗き込むと、村人が化け物相手に必死で命乞いをしているところだった。

「あの人ヤバいわよ!助けないと!」

焦るハルヒに俺は言う。

「待て!あいつが持ってるのは猟銃だぞ!勝ち目がない!」

でも、と困惑するハルヒ。
そして、大きな銃声が鳴り、男は赤黒い液体を撒き散らして、沈黙した。
ハルヒはひっ、と悲鳴が出そうになるのを、口に手を当てて抑えている。
猟銃を持った化け物は、こちらに向き直り、歩を進めて来た。

「こっちに来るぞ!隠れろ!」

俺はハルヒの手をひいて、立木をかき分け水門のそばに身を隠した。
そして、化け物が通り過ぎたのを確認して、教会の門へ続く階段を上った時、さっき撃たれたはずの男が立ち上がるのを見た。
そうか、死んだ人間は化け物に変わってしまうのか…。

「なにアレ…」
「教会には戻れないな。仕方ない、こっちに行くぞ」

絶句するハルヒの手を引っ張って、俺は停めてある給油車の脇を通って西へと向かった。


谷口 合石岳 蛇頭峠 初日 08時19分59秒


「おんなじとこをぐるぐるぐるぐる、これは涼宮たちのいたずらかなんかか!?」
「違うと思うよ?」

と冷静に答える国木田。その落ち着いてる態度がムカつくぜ。

「なぁ、ここ一体どこなんだろうな?何時間も歩き回ってどこにも辿り着かないなんて異常事態だぜ」
「そうだね。僕もいい加減うんざりしてきたよ」

俺は道端に座って、汗だくになった体を休ませていた。
横にいるのが朝倉なり朝比奈さんだったら良かったのにと思うと、余計に全身から行動しようという気が失せる。
涼宮と一緒よりはマシだが。

「俺はもう歩く気が失せた」
「そんな事いわないでよ」
「お前がどう言おうと俺はしばらく動きたくない」
「仕方がないなあ」

国木田は呆れてため息をついている。
「おいてくよ?いいの?」
国木田がこっちを振り返り振り返りしつつ、ゆっくりと歩いている。
どうせ演技なんだろ?わかってるよ。
「いいの?本気だよ?」
国木田はまだこっちの顔色を伺いながら後ずさりしている。
いいって国木田。そういうのは。
お前がそんな奴じゃないのは親友である俺がよく知ってるんだ。
そんなやり取りをしているうちに、いつの間にか国木田の姿が見えなくなった。

まあ国木田のことだ。どこかに隠れて俺が慌てるのを待ってやがるんだろう。
その手には乗らねえぞ。
きっとしばらく待っていたら、我慢できずにひょっこり引き返してくるさ。



………

……………

しかし国木田はいくら待っても帰って来なかった。

畜生、あいつ俺を置いていきやがった。


国木田 合石岳 蛇頭峠 初日 08時36分48秒


「いてててて…」

痛いお尻をさすりながら、僕は立ち上がって辺りを見回した。
脇には崩れた階段が一つ。目の前には錆び付いた鉄扉。
谷口を気にしながら歩いていたら、斜面を滑落したらしい。
こんなことじゃ僕ももう谷口をアホだのバカだの言えないな。
さて、落ちてきた斜面は登れそうにないし、どうしたものか。

「谷口!」

叫んでみても、彼には届いていなさそうだった。
仕方ない。幸い怪我もしてないし、どこかから登れるところを探さないと。
僕は目の前にあった鉄扉を開け、階段を下った。
ボロボロになったコンクリートの建物を抜けると、いくつかの坑道と、トロッコの軌道が見えた。
どうやらここは、採掘場か何からしい。

僕はとりあえず、二つの坑道に挟まれた、古びた小屋に入った。
誰か人がいるか、ここらへんの地図でもあればいいんだけど。
ギギィ、と軋むドアを開け、小屋の中へと入る。
駄目だ。変な機械がある以外には何もないし誰もいない。
出ようとした時、入り口のドアの横にスイッチがあるのに気づいた。
なんとなくこういうのって押したくなるよね。
魔が差した僕はそれを押した。
途端に辺り一帯に、大きなサイレンの音が鳴り響いた。


うわっ!


予想外の出来事にびっくりして僕は飛び上がった。
怒られたらどうしよう…
恐々と窓から様子を伺うと、2、3体の人影が見えた。
正直に謝って、道を聞こう。
そう思い僕は小屋の外に出た。

「すいませーん。ついサイレン鳴らしちゃって…」

大きく手を振り、叫ぶやいなや、銃弾が僕の頬をかすめた。
先頭の人が僕をめがけて撃ってきていた。
驚いて腰が抜けた。
先頭の奴は素早くボルトを引いて、また狙いを定める。
たまらず僕は斜抗の中に逃げ込んだ。
暗い中を走って走って、行き着いた先は、行き止まり。
無情にも、鉄格子の扉が行く手を阻んでいたのだ。

「嘘だろ!どうしろって言うんだよ!」

たまらず大声を出す。
瞬間、軽い目眩がして、斜抗を追ってくる誰かの視界が見えた。
万事休すか、と思った矢先、土砂を満載したトロッコが横にあるのに気づいた。
そして、追ってきたさっきの奴が僕の視界に入ったのにも。
ええい、ままよ。
僕はあらん限りの力で、そのトロッコを押した。
トロッコは、引き金に指をかけたそいつを弾き飛ばし、闇の向こうへと消えていった。

僕は、襲ってきたそいつが倒れているのに近づいた。
懐中電灯を当てて見ると、光は醜いそいつの顔を照らした。
目から血を流したそいつは、もはや人とは思え無い。

「なんだ、こいつ…」

化け物だとでも言うのだろうか?

しかし、驚くべきは、こいつと同じく僕を追ってトロッコにひかれた奴らが、ことごとく同じような化け物だったことだ。

「この村は何かおかしい…」

僕は倒れている奴から猟銃といくつかの弾を奪いとった。護身用だ。
そしてしばらく考える。谷口は大丈夫だろうか?
一刻も早く合流したいけど、どうやらここからじゃ谷口のところには戻れなさそうだし…
なら、村の外に出て助けを呼びに行ったほうがいいだろう。
隣村に行けば、おそらくみんな鶴屋さんの別荘に戻ってることだろうし。
そう結論づけて、僕は道を引き返し、さっきのコンクリートの建物の階段を登った。
それから、来た方とは逆に左にあったトンネルへと進んだ。
この先が、どこか村の外に続いているといいんだけど…。


谷口 合石岳 蛇頭峠 初日 08時51分21秒


近くからサイレンの音が聞こえた俺は、音のする方へ向かった。
国木田みたいな薄情なやつを待ってても埒があかんからな。
山道をうろうろする内によくわからんお地蔵さんみたいなやつが立ってる場所に出た。
そのそばに崩れた階段があり、2mくらいの段差ができている。
もしかして国木田はこの先に行って登れなくなったんじゃないだろうな?
馬鹿だなあいつ。

もう山道はうんざりだった俺は迷わず下に飛び降り、開いたままになっている扉をくぐった。
そして階段を降りて建物の外に出ると、何かの線路が見えたので、それに沿って右手に向かった。
まるでスタンドバイミーみたいだ、なんて思いながら。
そんなことを思ったからかなんか知らんが、線路上に横転したトロッコと、その下敷きになった死体を見つけた。

「おいおい、マジかよ…」

近づいて見てみると、死体の顔色は不自然に青く、目からは血が流れた後があった。
顔が青いのはなんかの病気かなんかか?

「気持ち悪…。病気をうつされたらたまらんな」

死体に向かってつぶやきながら、俺は左手にあった鉄扉を開け階段を降りると、左の段差を乗り越えた先の道へと進んだ。


朝比奈みくる 蛭ノ塚 水蛭子神社湧水 初日 11時36分33秒


「なんなんですかここ?頭おかしくなりそう…。喉も乾いたし…」

不気味に赤く染まった泉の端に座り込んで、私は嘆いた。
涼宮さんと一緒にいていろいろなことはあったけど、こんな恐ろしい事件は初めてだ。
長門さんと一緒じゃなかったらここまで来るのに何回も死んでいる。

「この水、なんとかして飲めないかなぁ…」

そう呟いて、泉の水を眺めた。そのままでは飲む気にならない程、毒々しい。
その時、後ろから長門さんの声がした。

「駄目。黄泉戸喫」

よもつへぐい?なんですかそれ?

「その水を摂取すると村人のようになる」

ということは、この水が原因で…

「手を出して」

急に彼女がそう言ったので、私はその通りに腕を差し出した。
すかさず私の手にかぶりつく彼女。

「ひ、ひぇっ」

なぜか痛い。

「空気中の赤い水の摂取を阻害するフィールドを展開した。これであなたが怪物化することはない」

口を離した彼女が淡々と告げる。

「ただし、傷口から入った赤い水は防げない。気をつけて」
「あ、ありがとうございます…」

彼女が噛みついた後は、まだ腕に残っていた。うっすら血が滲んでいる。

おそらく、長門さんは情報操作の許可を受けられないのだろう。
思念体にアクセスできないのだから。
ということは彼女も傷を負うと、危ないということだろうか。
そんな事を思っていると、急に彼女の視線が動いた。
身構えて、その視線の先を見ると、見慣れた顔がそこにあった。

「古泉くん…」

安堵の溜め息が思わず私の口から零れ落ちる。

「探しましたよ、二人とも」

そう言う古泉くんに近づき、無言で噛みつく長門さんは、まるで吸血鬼のようだった。

「おやおや、これは…」

珍しく少し動揺する彼に、長門さんは

「これで大丈夫」

と答えた。

「一体どうなってるんですか?この事態は」
「詳しくはわからない」

彼女は今自分が知り得てる情報を難しい言葉で彼に伝え、彼もある程度納得したようだったが、私には何を言っているかわからなかった。

「なるほど。ではまず涼宮さんを確保したほうがいいですね」
「そう。私は調べたいことがある。朝比奈みくるを頼む」
「わかりました。では別々に行動して涼宮さんを探しましょう。あなたは一人のほうが行動しやすいでしょうし」

古泉くんはこちらを見、私に言った。

「では行きましょう。朝比奈さん」


鶴屋 刈割 不入谷教会 初日 12時00分00秒


忌々しいサイレンの音が鳴る。またあの音が…

キョンくんもハルにゃんも戻ってこない。
心配で、不安で、堪らない。
二人に何かあったのだろうか…。
私は、ハルにゃんの無事を祈った。
おあつらえに、ここは教会なのだから。

今頃、二人はどうしているだろうか?
無事なんだろうか?
私はいてもたってもいられず、外に二人を探しにいくことにした。


キョン 田堀 廃屋中の間 17時03分03秒


俺たちは、廃屋となった一軒家の中で、息を潜めて隠れていた。
床は腐り、家具は散乱し、普段なら絶対に近寄りたくない陰気な家だが、仕方がなかった。
なんで廃墟ってこんなに朽ち果てるのが早いんだろうな。
無事に帰れたら長門か古泉あたりに聞いてみよう。

「ねえ、みんなは無事かしら?」

この場の雰囲気に似つかわしくない少女が、似つかわしくない怯えた表情で俺に問いかける。
俺たちは壁にもたれかかって、二人寄り添っていた。

「たぶん大丈夫じゃないか?朝比奈さんと谷口のアホは心配だが、他は大丈夫だろう」
ハルヒは、
「そう」
と一言だけ答えるとまた押し黙った。

長門を見習え、とは何度かこいつに言った覚えはあるが、いざそういう態度をとると俺が困る。
なんだか落ち着かない。

「ねえ、キョン」
ハルヒが細い声で言った。

「なんだ、ハルヒ?」
「これって私のせいよね?私が合宿に行こうなんて言い出したから…」
「言うなハルヒ」
「それとも私がご神体を持ち出したから罰が当たったのかしら?どっちにしろ私が」
「言うなって言ってるだろ!」
俺はつい強い口調でハルヒに言ってしまった。
ハルヒは泣いていた。

「すまん、ハルヒ。言い過ぎた」
返事はない。

「なんていうか、お前のせいなんかじゃないさ。だって合宿は俺たちみんなで決めたことだしな」
「でも」
「それにこの場所を提案したのは鶴屋さんだ。だからって鶴屋さんのせいだとは思わないだろ?同じことだ」

また沈黙。
ハルヒも今回ばかりは相当まいっているらしい。
そりゃそうだ。ハルヒ自身は不思議な事件に慣れてないんだからな。
さすがの俺もダイレクトに命の危機に瀕するのは慣れていないわけだし。
ハルヒを安心させようと、言葉を探していた俺の口をついて出たのは

「ハルヒ。お前は俺が守るから安心しろ。そんでこの村から逃げよう」
という赤面物の気障なセリフだった。
「うん…」
ハルヒは小さく頷く。
「だから安心しろ。泣くんじゃない。お前には似合わないしな」
「私も…」
「なんだ?」
「私もあんたを守る。私はどうなってもいい。あんただけは死なせないから。絶対に。化け物になんてさせない」

言いながら、ハルヒは強い眼差しで俺の顔をじっと見つめていた。
そして俺はハルヒの肩を抱き寄せ、そっとキスをした。
あの日のあの時のように。
しかし、今度は目が覚めなかった。
微かに、どこからか銃声が聞こえた。


国木田 大字波羅宿 耶辺集落 初日 16時53分37秒


トンネルを抜け、村の中を行くあてもなく歩いていた僕は、集落をとぼとぼ歩いていた。
誰にも会わない。もしかして僕と谷口だけがこの悪夢みたいな村にいるのだろうか。
ここは果たして現実か?夢なら覚めてくれ。
その時、坂の上の方で、女の子の悲鳴が聞こえた。
聞き覚えのある声だ。
僕は急いで斜面を駆け登った。

「近寄らないで!」

叫びながら、刃物を構える朝倉さんと、キョンの妹。
そして二人は、化け物三体に囲まれていた。
僕は狙いを定めて、一体の胸を撃ち抜いた。

「!?」

その場にいる全員が驚いてこちらを見ている。
僕は素早くもう一体に狙いを変えて撃った。
狙いは外れて、腕に当たる。
すかさずもう一発。
化け物は今度こそ崩れ落ちた。
残った一体を、朝倉さんが斬りつけて倒した。
流れるような彼女の動きに、僕は心底びっくりした。
まるでそういうことに慣れているみたいだ。

「ありがとう。助かったわ国木田くん」
「どういたしまして。でもびっくりしたよ。朝倉さんがあんなに強いなんて」
「必死だったのよ」

いつものように明るく笑う彼女の顔が、なんとなく不気味だった。

この異常な状況で普段と変わらない彼女と、年相応に怯えきったキョンの妹を連れて、僕たちは斜面の下へとまっすぐ進んだ。
民家の立ち並ぶ一帯を超え、橋を渡り、道路に沿って向こう側へ。
朝倉さんとこの状況の原因だとか今までの経緯だとか、いろいろと話をしたが、大した情報は無かった。
結局、誰も何もわかっちゃいないのかもしれない。僕たちは巻き込まれただけなんだ。
そうして、しばらく県道沿いに歩くと、信じられない光景が目の前に広がった。

「村の外が消えてる…」

道は途中で崩れ、山に囲まれたはずの村の周囲は、海になっていた。
海の水は、まるで血のように真っ赤に染まってたゆたっている。
村は今や絶海の孤島になっているんだ。
僕らは言葉を失った。
どう足掻いたって、村の外には出れないんだ。
ここで死を待つしかないんだ。
僕はがっくりと膝をついた。
そして、猟銃のグリップを指先で確かめる。

「何する気なの!?」

朝倉さんが叫ぶ。
何って?
どうせ死ぬなら早いほうが良いじゃないか。
君らも後を追うといい。弾ならまだ余裕があるんだから。
銃口を顎の下につけ、僕は引き金を引いた。
安らかな気持ちだ。
キョンの妹の目を手で隠す朝倉さんが、今際の際に見えた。


朝比奈みくる 病院 第二病棟一階廊下 初日 20時43分57秒


「お、お邪魔しまぁす…」
「そんなこと言っても仕方ないですよ」

私と古泉くんは、古びた病院を訪れていた。
何だってこんな気味悪い場所に入らなくちゃならないんだろう…。
でも古泉くんが行きたいと言ったからしょうがない。
私一人になるのは嫌だし…。
そんなことを思いながら、私たちは診察室に入って鍵を閉め、腰を下ろした。

「涼宮さんと彼はどこに行ったんでしょうか。心配です」
「そうですねぇ…。あの…」
「なんですか?」

古泉くんは爽やかに返事をした。いつもどおりに。
私は今からしようとする質問が言っても良いものかどうか、ちょっと考えてから、言葉を続ける。

「今回のこれも、涼宮さんのせいなんですか?」

古泉くんは少し黙って、答えた。
「違うと思います。無関係だとは思いませんが」
「え?」

私は驚いて聞き返した。
正直なところ、彼女のせいだと思っていたから。

「じゃあ一体なぜ?」
「それはわかりません。しかし長門さんは言っていました。この村の伝承にこれと似たような現象がある、と」
「伝承…」

彼は話を続ける。
「はい。赤い水で死者が永遠の命を得るとか、海送り、海還りだとか…。詳しくは省きますが」
「はぁ…」
オカルトな話だ。

「屍人、これは僕が勝手につけた怪物の名前なんですが、屍人化は赤い水が原因なのは長門さんがおっしゃってた通りです」
「そうですね」

私は長門さんの噛みついたところを見た。
いつの間にか傷口は塞がっている。

「つまり、この村では元々このような現象が何度か起こっていた。そして僕たちがたまたま巻き込まれた」
「でも都合よく巻き込まれるなんて…」
「まあ涼宮さんの力がトリガーくらいにはなってるかもしれませんね。でも彼女はこんな世界を望んだりはしません」
「確かに…」
「そして長門さんが言うには、このような現象が起きる時にはちょうど逆の方向にも力が働くはずだ、と」
「どういうことですか?」
「つまり、どこかに対抗策が必ずあるはず…」

古泉くんは、そう言って窓の外を眺めた。
対抗策…、一体そんなものがあるとは思えなかった。

「見つかればいいんですけど…」
古泉くんは独り言のように呟いた。


谷口 羽生蛇村小学校折部分校 体育館 初日 22時11分08秒


「学校か…」

散々さまよった挙げ句、俺は学校を見つけた。
学校なんて普段なら入りたくもないが、今は別だ。人が恋しい。
国木田と別れてからしばらく、誰とも会っていなかった。
どんだけ運が悪いんだ、俺。
体育館の裏口らしきドアを開けて中に入る。鍵がかかってなくて良かった。
そう思った矢先、体育館の中が異様な光景になってて驚いた。
糸と針金が張り巡らされて、まるで蜘蛛の巣だ。

その時、風を切る音がして、とっさに身をかわした。無意識だった。
ガンッと、ドアに衝撃が加わる音がする。
襲撃してきたのは、異常な風体をした人間だった。
首は逆向きにねじ曲がり、腕には昆虫のような節があって、頭頂部にはいくつもの複眼があった。
まるで…

「蜘蛛?」

蜘蛛のような人間のようなそれは、複眼でこっちを見ている。
慌てて今来たドアを開けて引き返そうとして、気づいた。
ドアノブが叩き壊されて、床に転がっている。
俺はたまらず、その怪物から走って逃げた。
ちくしょう、こんな合宿に無理言って参加しなけりゃよかった!

1階へと降りる梯子の下に、もう一体怪物が待ち構えていた。

「くらえ!谷口キック!」

飛び降りて、そいつの腹を踏み潰してやった。ざまぁみろ。
そのまま、体育館の外に出ようとしたが、出口にはさっきのやつが待ち構えていた。

「くそっ!」

悪態をつきながら、俺は体育館のステージ脇の物置に走った。
何か武器になるものがあれば。
がらくたをかき分け、放置されていたバールを見つけると、俺は追ってきた怪物に思いっきりバールの先端を叩きつけてやった。

「見たか!逆ギレのほうが強ぇんだよ!」

死体に何度も何度も蹴りを入れてストレス解消してから、悠々と体育館を出る。
そこでもまた、面食らった。
板がそこら中に打ちつけられて、校舎内がわけのわからない要塞と化していた

「なんだこりゃ…」

こんな場所、一刻も早く外に出ようと玄関に向かうが、板で打ちつけられていて、開かない。
しかたなく、隣の1-2年教室に入ると、蜘蛛の怪物が2体と、頭が蛸のようになった怪物に見つかった。

「はは、やべえかも…」

蜘蛛2体が走りよってくる。

「あああああ!!」

俺は雄叫びを上げながら、一体の頭をバールで容赦なく潰した。
直後、ゴキリと音がして、強烈な痛みがわき腹に走った。蜘蛛に殴られたらしい。
痛みで歪む視界の端に、蛸頭の化け物が逃げ去ろうとするのが見えた。
喧嘩では弱い奴からやっつける。それが俺の人生哲学だ。

「待てコラァ!このタコ野郎!」

俺は力を振り絞って、そいつを追いかけて、後頭部を渾身の勢いで殴りつけた。
倒れたそいつの頭に、何度も何度もバールを振り下ろす。

「どうだ見たか!」

振り返って蜘蛛のほうを見ると、そいつはのた打ちまわって苦しんで、すぐに動かなくなった。
どうやらこいつが親玉だったらしい。
よくわからんが親玉を倒すとこいつらも死ぬみたいだ。
偶然だが儲けたな。
痛むわき腹を抱えながら、俺は窓に打ちつけられた板をバールで引き剥がし、校舎の外に出た。



キョン「またサイレンが鳴る…」  後編 携帯用


おまけ


263. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/23(土) 23:15:42.91 ID:bW6cN3QfO

アーカイブ01
団長の腕章

オレンジ色の腕章だがそれでもくっきり分かる赤い血がこびりついている


265. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/23(土) 23:16:31.28 ID:63k8xebs0

>>263

何か足りないと思ったらアーカイブだったのか!


268. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/23(土) 23:20:01.19 ID:bW6cN3QfO

>>265

サイレンやってて何かつけたくなったwww



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キョン「また転校生だと?」

2009年05月24日 18:30


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キョン「また転校生だと?」

2009年05月24日 18:09


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ハルヒ「キョン、ちゃんと私を殺してよね」

2009年05月24日 00:34


ハルヒ「キョン、ちゃんと私を殺してよね」

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涼宮ハルヒの憂鬱×ステーシーズ 少女再殺全談×STACYステーシー

完結作品

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猫にこばアッー 

2009年05月24日 00:01

中学二年くらいの時、オナニーしてたら、急に飼い猫に噛まれたこと

突然、私のベットに現れた飼い猫(♂)は私のヤリイカのニオイを嗅ぐと、突然噛み付きました。

まさに猫まっしぐら。

私は、あまりの痛さに家が軋むような叫び声を上げるが、猫は意に返す事無く噛み付いたまま。私は引きはがそうとしますが、彼は鼻息を荒くし、虎のような唸り声を上げ、ますますその牙を食い込ませました。

その様子を見た私は「猫じゃないこいつは虎だったんだ」と確信し、同時にあまりの恐ろしさに力を失いました。

今まで家族皆に愛想を振り撒き、ふくみらい家のアイドルだった彼。

しかし、私のヤリイカは彼の狩猟本能を呼び覚まし、猫から虎へと変えてしまったのです。
その豹変振りは、小学校三年生から四年生に進級する際の数学の教科書と相通じるものがありました。(文末の最後に、~しましょう。から~しなさい。という、急な命令口調による変貌振り)

猫は必死に食らいついて離そうとしません。
私はどうする事も出来ず。段々とヤリイカの生命力が無くなる様子をただ見ているしかありません。

このままヤリイカは食べられてしまうのか?
そんな思いが頭の中を支配し始めました。

すると、今まで動かなかった私の手がまるで命を持ったように勝手に動いたのです。

奇跡だ。

そんな言葉が頭の中一杯に広がりました。
私の手は震えながらも、ゆっくりと猫の口を上下に当てると開こうとします。
力が入らないため、その力は赤子のパンチ並の力ですが。
私のヤリイカはその様子に興奮したのか、再びその体を硬化させました。

やってくれる。

私はそう呟きました。
猫はビックリしながらも、ヤリイカを離そうとしません。
一進一退の攻防が続きます。

私の頭の中はオカズが浮かんでは消え、浮かんでは消えます。ヤリイカに命を吹き込むために。
そんな事をいつまで続けたでしょうか。
猫は勝負を決するために、ついに最終兵器を投入しました。
その最終兵器はザラザラとした表面を、ヤリイカの裏側に押し付け一撫でしました。

思わず腰を引きました。
そのステルス兵器は、私の腰を引き、情けない声を上げるのに充分でした。

小次郎敗れたり

かの剣豪の言葉が、こちらを一瞥した猫の目から聞こえてくるようでした。

私は、彼の最終兵器の前に『もう、勘忍してぇ―』
と彼に懇願しましたが、動物である彼には言葉など理解するはずもなく、ヤリイカを責め続けました。

ヤリイカの身体に牙を突き立て、頭を裏から先端まで撫で回す。その匠の技は、プロ顔負けの技であるました。

彼の前に私のヤリイカは、まな板の上の鯉。いや野良猫の前のスルメでした。
猫は、餌である鼠を一気に食べるのではなく、なぶり殺しにしてから頂戴すると聞きます。
私は、その事を身を持って体感出来た貴重な存在と言えましょう。

限界だ。

その快楽にすっかり身を委ねてしまった私には、そんな言葉しか思い付来ませんでした。
色々な事が頭の中を走馬灯のように駆け巡りました。私は、このまま人として一線を越えてしまうのだろうか?堕落の道は修羅の道。昔の偉人の言葉が走馬灯とともに蘇りました。
すると、不思議な事が起こりました。
彼は、あれほど愛おしそうになぶり回してた、ヤリイカをゆっくりと解き放ったのです。

助かった。

私は心から安堵しました。
彼から直ぐさま背を向け、ヤリイカの状態をじっくりと確認しました。
ヤリイカは何処も傷つくこともなく、身を硬くし、しっかりとその存在を主張しておりました。

お前には堕落の道はまだ早い。

そう偉人が言ったような気がしました。
私は安堵とともに、心の奥底である感情が急に勢力を増していることに気づき始めました。

こんな事、世間様に知られたらご先祖様に顔見せできねぇ

我が家の地位は?

後ろ指を指されるような事は絶対したくねぇ

だったらいっその事・・・・

私はベットから飛び起きると、急いで台所へと向かいました。

連続Web小説 猫にこばアッー 続く


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ハルヒ「キョン、ちゃんと私を殺してよね」

2009年05月23日 22:39


ハルヒ「キョン、ちゃんと私を殺してよね」


このSSは、大槻ケンヂさんの小説「ステーシーズ」を元ネタに書いています。

そういうのがダメって言う人にはすいませんです。


1. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/05/22(金) 18:58:29.27 ID:tWBKlB+hO

「あんただけなんだから、こんなこと頼めるの」

学校へ向かう坂道の途中で、ハルヒはくるくると笑いながら言った。
ぼんやりと歩く俺の前で、まるで糸の切れた凧みたいにふわふわしている。

秋の風がかさかさに軽くなった木の葉を掃き散らしながら過ぎていく。

「心配しなくても、ちゃんと再殺してやるさ」

「イヒヒ、頼むわね」

その時丁度、俺はいつだったか本で読んだ「一生、死ぬまで離さない」という言葉の無責任さについて考えていたので、もう何度も何度も聞いた彼女の台詞に、ほぼ無意識で返事をしていた。



「死ぬまで」だけだなんて、悲しいじゃあないか。
なーんてね。無責任だな。



ふたりして律儀に内履きに履き替えて、耳に痛いほどしんとした校舎を歩く。
ぺたぺたという俺の足音と、舞うような軽快なハルヒのステップだけが響いては消える。

薄く空全体を覆う雲のせいでどんよりと暗いが、今はまだ午前中、普通なら3限目の現代文を受けているような時間だ。

最後に受けた授業では 何を読んでいたっけ。舞姫だったかな。昔の小説はあんまり好きじゃないんだよな、あれは特に暗いし。宮沢賢治のやまなしだっけか。あれは好きだったな。意味わからなかったけど。

やまなしを読んだのは一年の時だっけか。いや、中学の頃だったかしらん。現代文はいつも睡眠時間だったから記憶が曖昧だ。

現代文なんて勉強しても点数が伸びない派の俺ががっつり寝る体勢に入ると、勉強しなくても点数がとれる派のハルヒに脇腹辺りをシャーペンでつつかれて、よく邪魔されていたな。

今俺の目の前で、幸せそうに、すごく幸せそうに笑うハルヒは、
そう、サワガニの兄弟の言った「かぷかぷ笑った」という描写が一番しっくりくるんじゃないだろうか。

一人で納得しているとハルヒは俺に向き直り、

「何ぼーっとしてるのよ。まったくあんたは」

現代文の授業の時と似たような台詞を、ニアデスハピネスの微笑みで。



ハルヒはもうすぐ死んでしまって、
さらにもうしばらくして、醜い姿をさらし人肉を求めて動き回るステーシーになる。



学校が機能しなくなってから久しいので日にちの感覚が曖昧で確かかどうかはいまいちだが、あれはたしか一ヶ月、つまり大体30日くらい前の事だ。

放課後の部室、朝比奈さんが新しく買ったという葉っぱでミルクティーを入れ、
俺と古泉が2人でダウトという暴挙に出て、
長門がいつものように鈍器クラスの本のページをめくり、
ハルヒがパソコンをいじりながらあくびを殺して殺して殺しまくっていた、いつもとおなじように時間の流れる日だった。

俺がゲームが終わらないという危険性に気付きながらもダウトを続け、朝比奈さんがかわいらしーくくしゃみをしたとき、弛緩しきった部屋の中で急にガタンと音がした。

またハルヒが騒いでなにかやらかそうとしているのか、と面倒ながらも目向けるが、

なんだ容疑者候補だったハルヒも目を丸くして口を開けているじゃないか。


その視線の先には、凶器になりそうな厚みの本を抱えたままパイプ椅子から転げ落ちて、ピクリとも動かない長門があった。


状況がつかめない焦りと、長門に対する心配と、パンツが見えそうだという雑念でごちゃ混ぜになった俺が当惑していると、
長門はよろよろと立ち上がり、何事もなかったかのように、


いや違う。何物か遠くの物を睨むようにして、目を見開いていた。


4人の驚愕の視線を浴びながら、長門は微動だにせず、ぼうっと突っ立ったままだった。

何かの冗談だろうか。
あれだ、また朝倉かなんかそんな感じの敵っぽい奴がやって来たのだろうか。
だとしてもハルヒに勘づかれるようじゃ駄目だろう。

見ろ、怯えたような顔でお前を見ているじゃないか。


「おい長門、一体どうし」
「あははは」


「あはははははは」


「あはっひイヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
ヒ皮膚ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
ヒヒヒヒッイヒヒキ嬉嬉嬉嬉嬉嬉嬉々ィヒヒヒッヒヒ
ヒヒヒヒ嬉卑卑ひヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」



紐を引いたらがたがたぶるぶる震え続ける人形、あれってどういう名前なんだろう。

自分の舌を血だらけにしながらぐりんぐりん笑う長門を見て、俺はただただ呆けたように立つ他にすることがなかった。
いつもの冷静沈着で無口なお前はどこに行ったんだ、
お前は。



「有希!一体どうしちゃったのよ!」

泣き出してしまった朝比奈さんを母親のように抱き締めながら、ハルヒは泣きそうに長門に言う。

何もできないでいる俺は、古泉が長門に駆け寄るのをぼぅっと見ていた。

「長門さん、どうしたんです!しっかりしてください!」
ケタケタケタ笑う長門の肩に手を置いて、古泉は諭すように言う。

あぁ頼りになるな、俺なんかと違って古泉は。流石日々世界を守っているヒーローだな。

お前、自分の好きな女の子がケタケタ笑い震えながら、大声で意味のわからないことを叫んでいても冷静ではないにしてもちゃんとした対応ができるなんて。
流石だな。


「長門さん!」


懇願するような古泉の声が届いたのか、コマが回転を止めるように、ぜんまいが切れたブリキの玩具みたいに、少しずつ静かになった。



「…長門さん」

そういって安堵に微笑む古泉に、長門は微笑み返す。
整った白い歯を見せて、目をぐるんとむいて。

薄紅色の柔らかそうな唇をそっと開き、
もたれかかるように抱きついて、
古泉の首筋にかぶりついた。


「あっああぁぁぁぁあっ痛っあああぁイっ」


古泉に突き飛ばされパイプ椅子にからまって転んだ長門は、口の中で自分の血と古泉の血とをぶくぶく混ぜて吠えていた。


「イタイイタイイツキッイタイヨイタイノイツキイタイイイイタぁぁぁっ 」


だらしなく開いた口からは激しく暴れまわる舌が飛び出て、床に泡立った血を撒き散らす。


肩口を押さえて息を切らしている古泉の制服は赤黒く染まっていて、俺もハルヒも二人を交互に見てあわてふためいていた。

朝比奈さんは、ハルヒの足元にこてんと座り込んで、涙でぐちゃぐちゃの顔一杯に疑問符を浮かべていた。


「おい、長門」

ようやく出てきた声は多分ほとんど聞き取れないようなものだったろう。
それでも長門は俺を見てカタカタと笑った。

ひんむいた白目でちゃんと見えているのかどうかは疑問だが、長門はゆっくり立ち上がって俺たちの方に歩いて来る。


やばい。

何かは知らんがやばい。

何故とかどうしてとかそんな場合じゃない。


「ハルヒッ!朝比奈さんを連れて逃げろ!」

固まったまま動かない朝比奈さんとハルヒがばたばたとうるさく部室から出ていく。

長門は依然かわりなく、糸のもつれた操り人形みたいに足をガクガク動かしてゆっくりと俺と古泉に近付いてくる。


「古泉、なんなんだこれは」
「…僕が…聞きたいくらいです」

そーかい。
またハルヒの力のせいか?だとしたら何を思ってこんなことを望んだ?
畜生、畜生。


長門は笑う。

俺は今にも泣いてしまいそうだ。


なぁ長門、俺はどうすればいい?
何かあったときにいつも助けてくれていたお前を、今俺はどうしたらいい?


************************


ハルヒは遊園地のアトラクションへと急ぐ子供のように、部室への廊下を走る。

あちらこちらに砕けたガラスや風に乗ってきた枯れ葉や血の跡が見られる。

たった1ヶ月くらい放っておくだけでこんなになるとは。
かったるかったが、やっぱり毎日掃除するのって大切だったんだな。

こんな状態だったなら土足で来ても変わらなかったかもな。


「久しぶりね、ここにくるの」

そうだな、ハルヒ

「前までは毎日くらい来てたのにね。
少しくらい懐かしい気分になるかと思ったのに、
なんだかそんなこともないわね」

まだ俺らの中で当たり前の感覚なんだろう。そう言うと、ハルヒはまたかぷかぷと笑った。

「色々あったって言うのに。
イヒヒヒヒ、変わらないなんてね」


すまんハルヒ、俺はちょっと嘘をついている。

俺は、前と同じ気持ちではここに立てないんだ。


でも、きっとそれは、気付かないだけでお前も同じだろう、ハルヒ。


******************


がしゃん、ばりん、ぶつん。


狼狽しきりだった俺の目の前で、窓ガラスが割れて、
何かが転がり込んできて、長門は赤い線で上下二つに別れた。

があっ、
と血を吐いて長門の体が長門の足に背中から崩れ落ちる。

うどんの玉を落としてしまったみたいな音がして、床には赤黒い水溜まりが広がる。



血にまみれ真っ赤なチェーンソーを持った朝倉涼子が、
制服に血がついてシミにならないかを気にしていた。



「…朝倉?」

「ねぇキョンくん、背中とか髪とかに血、付いてない?大丈夫?」

シミひとつない青いスカートと長い髪を翻し、朝倉は言う。

チェーンソーはどるんどるんと図々しく鳴って、部屋を油臭くする。
血の臭いと混ざって、交通事故現場みたいな臭いになる。
朝比奈さんの入れてくれたミルクティーがひっくり返ったのだろうか、
いやに甘い臭いが肺を苛々させた。

脳の中がぐちゃぐちゃになって、言いたいことは言葉にならなかった。

俺は酸素が足りない金魚みたいに口をパクパクさせていた。
誰かが答えをくれないだろうか、と。


「思いきったことやるわね、長門さんとこの上司も」

「なんでお前がここにいるんだ、なんで長門はこうなった、
なんで長門を殺したんだ」

「そんなにがっつかないの、ちゃんと答えてあげるから」


朝倉はチェーンソーを構え、俺に笑いかけながら言った。


「殺しちゃいないわよ、元々死んでいたんだもの」


びちゃりと音が足元でなる。

赤い水溜まりのなかで泳ぐ蛙みたいに、長門の上半身は俺を睨んだ。
微笑んだ長門の口は、両端が裂けていた。

いくら食いしん坊だからって、それはないだろう長門よ。


「ちょっとでいいから、下半身の方よろしくね」

見ると、長門の腰から下は上半身とは別の方向に向かうように暴れまわっていた。
何度も蹴られそうになったが、下半身だけでは威力が弱いので
すぐに両足首を捕まえて長門の白くて細い足を黙らせることができた。


なぜかなんて聞いたって、朝倉は何も答えてはくれないだろう。
大好きな恋人にグラタンを作ってあげているときの笑顔で
長門を殺し続けている朝倉は、
きっと他の誰かの言葉なんて聞きやしないだろう。


「いつかあなたもやらなきゃいけないかも知れないんだからね」


これがグラタンの話ならばよかったのに。


朝倉があまりに手際よく長門をバラバラにしていくので、
気づいたときには俺の手には長門の足首しか残っていなかった。

それはまな板の上の魚みたいに弱々しく跳ねていた。
床ではさばきたての新鮮な肉が、ひくひくと蠢いていた。
白い指が何かを探すように床を引っ掻いていたが、
朝倉がそれを踏みにじる。
俺の手に残っていた内履きは、それきり動かなくなった。

最初は返り血を気にしていた朝倉も、
今では赤黒く染まっていない方が少なくなっている。



空回るチェーンソーを携えて赤い池の中に佇む朝倉を見て、
俺はエリザベート・バートリとかいう吸血鬼を思い出していた。
吸血鬼を探そうとか言ってたときに、古泉が持ってきた資料に載っていた。



全く、美しくなんか、ない。

血を白い頬に伝わらせて、
恍惚している少女に、俺の心は、
ときめいたりなんか、しない。



「なんなんだ、これは」

チェーンソーの音が止まる。朝倉が俺の目をまっすぐ見る。

「飽きたんですって」

やれやれ、とため息混じりに言った。

「地球外生命体、つまり宇宙人っていると思う?」

そりゃ、お前や長門がそれだろう。

「違う、違う。あくまで有機生命体の話よ」

いる可能性は全くのゼロじゃないらしいが、だからなんだって言うんだ。
朝倉は淡々と語る。

「情報統合思念体は、この地球に生息する知的生命体を発見していたの。

それこそ高度な文明を築くものもいたし、程度の低いものもいたわ。

涼宮さんの監視を始めた少し後に、そのうちの一つから涼宮さんのそれと
似たような規模の情報フローが確認されたらしいの。

それは、私たちには知らされていなかったけどね。」

ハルヒみたいなやつがもう一体いるのか。
じゃああっちにも俺らみたいに振り回されてるやつがいるかもしれないんだな。

いや、そんなことじゃなく、

「はじめのうちは規模、頻度共に涼宮さんの方が
上回っていたから比較的そっちは軽視してたんだけどね、

最近は涼宮さん、すっかり落ち着いちゃったじゃない?」


それは俺や朝比奈さんや、
古泉と機関の人達の努力の賜物だ。それがどうした。


朝倉が何を言いたいのか、
情報なんたらとかいうやつの思惑が何か、まだ掴めない。

「だから、飽きちゃったんだってさ。涼宮さんに」



「もうひとつの観察対象からはすでに一定のデータを集めていて、
進化のヒントの糸口みたいなものが見つかるかもしれないんですって」

朝倉はどうでもよさげに言う。


「で、涼宮さんはこの調子。

突拍子もないことをやらかしたり、世界を滅ぼしかけたりしたくせに、
成果は残念。
下手したらあっちの観察対象にも悪影響が出るかも、

ってことで観察は打ち切り。はやいとこ片付けちゃおうってなったの。
腹いせに人類ごと」



意味がわからない。言っていることはわかるが、理解できない。


「それで主流だった長門さんの上司が採用した方法が、これ」

足の先で長門だったものをこねくりまわす。


「15,16,17歳の少女が突然死、その後ゾンビになって人を襲うようになる。
そんな奇特な病気を作って、自分の管理下においている
インターフェースをきっかけにアウトブレイクさせる。
なかなか酷いやり方だと思わない?」


そう静かに話す少女の眼はキラキラと濁り輝いていた。


「それでね、ただゾンビにするだけってのも趣がないからって、
適当に色んな設定を追加したらしいのね」


少女たちは死ぬ前に気が狂ったように充足、幸福を感じること。


そして死ぬ前の少女たちは死に対して肯定的になること。


ゾンビになった少女は165個の塊に切り刻むまで動き続けること。


少女たちは何の前触れもなく発病するが、体液からも感染すること。


その他諸々素敵なオプションをつけて。


そのどれもが、混乱を巻き起こすのが目的の悪意に満ちた腹いせだという。


「…なんで、こんなことをしなきゃならないんだ!
見切りをつけるにしても、他にやりようがあるだろう!」

「知らないわよ。強いて言えば、暇潰しじゃない?」
こともなさげに朝倉は言う。

「理不尽な死なんて、普通に生きていても
誰にでも起こりうるものなんだから、
納得して諦めたら?」


「…はいはいそうですか、なんて素直に納得できるはずないだろう」

「納得しなくてもなんにも変わらないんだけどね」

朝倉は俺に笑いかける。

「、ちなみに、感染してゾンビになるのは女の子だけ。
その他の場合は」

すっ、と
古泉の方を指差す。

「ああなるから」



床に転がった古泉はすでに呼吸をやめていた。



廊下から甲高い悲鳴が飛び込む。

「キョンッ!」

しまった。
ハルヒを廊下に逃がしたが、それだって安心だっていう保証はないんだ。
廊下一杯に溢れる女子生徒のゾンビが思い浮かぶ。
畜生。



「ハルヒッ!」

乱暴に扉を開く。
ハルヒの腕をつかみ、部室に引っ張りこむ。


「ハルヒ、大丈夫か、何があった」

ハルヒは肩を小さく震えさせ、奥歯がカチカチと鳴っている。

その肩を抱き締める。



「……る……、………んが」



虫の羽音みたいな声が震えている。

「……みくる、ちゃんが…………」

ハルヒの手には、見慣れた安っぽい衣装があった。


「みくるちゃんが、消えたの、突然、急に、目の前で、突然」


その事実が示す先の絶望を知りながら、
俺はただただハルヒを抱き締めることしかできなかった。


「……ははっ」

耳元で、

「……あはははっ」

笑い声がした。

「あはははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははは」


俺はハルヒを強く抱き締めることしかできなかった


「あははははははははははははははははははははッ
死ぬのね、私、死ぬのね今からウキウキしてきちゃった!
どうしましょう!今から準備していかなきゃ!
何が必要かしらね?イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
どんな風がいいかしら?ロマンティック?バイオレンス?
今の時代いろんな前例があるってのが嬉しい反面、
画期的なものが出尽くした感があるわね!どうしましょう!」


ハルヒ。


「そうよ!そのときはキョンも手伝ってくれるわよね!
退屈な、誰とも知らないような人間に看取られたり
病院のベッドでおとなしく消えていくなんて嫌だもの!」


ハルヒ。


「大好きな人に抱き締められながら死ぬなんて、
ありきたりだけどやっぱり憧れるわよね!イヒヒヒヒヒ!
王道ってやつもたまにはいいわよね!ねぇキョン!
イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」


ハルヒ。

大好きだ。


*****************


ドアノブを回し、ゆっくりと部室の扉を開く。
美術との格闘の末に気を違えてしまった芸術家のアトリエみたいに、
床や壁は赤黒い前衛的な模様でいっぱいだった。


30日くらい前、朝倉はここで長門を165個の肉塊にした。


30日くらい前、古泉は長門に噛まれてここで息絶えた。


30日くらい前、朝比奈さんと一緒に俺たちの未来が潰えた。


あの後、気が付くと朝倉はチェーンソーを残して消えた。
俺に何かを期待してのことだろうか。

しばらくして、校舎のあちらこちらから悲鳴が上がり始めた頃、
森さんと新川さんがヘリに乗ってやってきた。


古泉の死体を載せ、俺とハルヒを乗せて学校から逃げ出した。

機関は閉鎖空間が発生していないにも関わらず突発的に
起きたこの状況に混乱しきっていて、なんとか対策をと思い俺を頼って来たという。
俺は、朝倉に聞いたすべてを隠した。


ハルヒがこうなった以上、
全てが無意味になったとなんとなく感じていた。


そわそわふわふわしているハルヒを不審に思われる前に、俺はハルヒの手をひいては歩き出した。



その日の夕方には、政府から的を得ない発表があった。

危険ですから、少女の死体に近づかないでください。
現在、政府の関係機関が調査を進めています。

どうか取り乱したり混乱を招くような行動はしないでください。

世界中で同じような現象が確認されているようです。

WHOはこの事態に対して云々。



俺はそのニュースを、逃げながら隠れながら携帯ラジオで聞いていた。



少女の突然死に混乱した街は、
少女の復活とゾンビ化によってさらに混乱し、
大衆は暴徒に変わった。


まずはじめに、少女たちを片っ端から殺す輩が現れて、
結果としてはゾンビの数を急速に増やすことになった。


突然死した少女を凌辱する輩が現れた。
少女と交わった男たち(あるいは女たち)は、
少女たちの孕む毒によって次々と死んでいった。



一週間ほどして、研究者たちがサジをなげ、
何もできなかった言い訳みたいに
少女たちのゾンビにステーシーと、
少女たちが死ぬ前に見せる狂ったような幸せそうな状態を
ニアデスハピネスと名付けることで自尊心を保とうとした。


その頃には、自衛隊が独断でステーシーの再殺の手段を発見し、実行し、
民衆もそれにならって自警団のようなものを組織しはじめていた。


「キョン、わたしあんな人たちに殺されたくない。
冷たい弾丸で粉々にされるなんて耐えられないわ」


俺は、ハルヒをそいつらに渡したくない一心で、あちらこちらに逃げ回った。

淡々とした口調で世界の混乱を伝えるニュースの裏側には、もっと狂気に満ちた現実があった。


音楽で混乱を沈めようと、憔悴した人々を鼓舞しようとしたロックスターがライブ中にファンの少女だったステーシーに喉を食いちぎられて死んだ。

生放送中にアイドルがニアデスハピネスになり、恐怖した観客たちに撲殺され、直後にステーシーになった。

小型のチェーンソーが連日飛ぶように売れた。


自衛隊や自警団からハルヒを連れて逃げてきて、
こうしてまた部室に戻ってきた。


ハルヒが言うのだ。

「わがままだとは思うけど、私も、
みんなが死んじゃった部室で死にたいの」


「それで、キョンがそばにいてくれて、
看取られながら幸せに死んで、蘇ってもキョンに殺してもらうの。
イヒヒヒヒヒ、とても幸せな最後だと思うの」


小泉が前に言っていたな。ハルヒが死んだら世界が滅ぶかも知れない、って。

それが本当だろうが嘘だろうが、どうせ世界が終わるんだ。
ハルヒが望むようにしてあげよう。


その日もハルヒは死ななかった。

聞くところによると、ニアデスハピネスが現れたら
なにもしなくても数日のうちに突然に死んでステーシーになるという。しかしハルヒはあの日から今日までずっとこの調子だ。
今思えば長門は死んですぐだった。


ずっと、ずっとこうならいいのに。


小泉が前に言っていたな。ハルヒが死んだら世界が滅ぶかも知れない、って。
それが本当だろうが嘘だろうが、どうせ世界が終わるんだ。
ハルヒが望むようにしてあげよう。


その日もハルヒは死ななかった。


聞くところによると、ニアデスハピネスが現れたら
なにもしなくても数日のうちに突然に死んで、
数分から数日の間にステーシーになるという。
ハルヒはあの日から今日までずっとこの調子だ。


ずっと、ずうっとこうならいいのに。


その日の夜は、部室で過ごした。
ハルヒは部屋の隅で毛布にくるまって、俺は椅子に座り机に突っ伏して。


長門と古泉の血の跡がすさまじいが、それ以上のものを
飽きるほど見てきた。この程度で眠れなくなるなんてことはない。

だのに、なのに、眠りに落ちる直前に涙が溢れだして、
呼吸が辛くなって、簡単には寝かせてもらえなかった。



泣きつかれて眠るなんて、
まるで餓鬼だ。


********************


「と、こんな夢を見たんだが」

昨日見た夢の話なんてどうでもいいことを、たっぷりと時間をかけて話した。

しゃべりすぎて喉が乾いた。

すっかりつめたくなったお茶は、今の喉にとっては好都合だった。

「ふえぇ、なんだか怖いですぅ」

朝比奈さんはお盆を抱え込んで、涙目になって怯えている。

「んふっ、何か悩みでもあるんじゃないんですか?
相談なら乗りますよ」

机を挟んだ向こう側で、古泉が気持ち悪く微笑みながら言う。

それよりも速く次の手をさせ。どのみちもうすぐ投了するしかないんだ。


「………」

長門は無反応。黙々と読書を続けている。
せめて、目線ぐらいくれたっていいだろうに。

「悩みの種ならピンポイントで思い当たるんだがな」

「おや、一体何なんです?」

お察しの通り、今ここにいない誰かさんに関することだ。

古泉は苦笑する。


「そういえば、やつはまだ来てないのか」

「私は何も聞いてませんけど…」

「同じく、です」

うむ、なんだかとてつもなく嫌な予感がするんだが…

その時、バタンとでかい音がした。


**********************


その時、バタンとでかい音がした。


寝ぼけた頭がくらくらする。

外はもう明るい。

一体何時だ、それより今の音はなんだ。


慌てて部屋を見渡すと、団長の特等席をひっくり返して
ハルヒが仰向けに倒れていた。


頸動脈を切られ血抜きしている最中の羊みたいに、
ハルヒはガタガタと痙攣する。


ああ、時が来たんだ。

もう、ずっと、ずっと前から覚悟してきたことだ。


ハルヒは今ここで死ぬ。


死んだ後、もう一度歩き出すハルヒを俺はチェーンソーでちゃんと最後まで殺す。


責任をもって、殺してやる。


ハルヒはぐりんと目をひんむいて、
絶頂にも似た表情で、舌を突き出して、
涎を撒き散らしながら。


その姿さえも、目をそらさず見てやる。
最期まで、ハルヒのことを見ていてやる。
それが俺の決めたことだった。


しかし、現に今こうやって悶えるハルヒを見るのは、
とてもじゃないが耐えられそうになかった。
吐きそうになった。
もう、すでに泣いていた。


あまりに激しく暴れまわるので、ハルヒの肘や拳には薄く血が滲んでいる。

痛いだろうに、
苦しいだろうに。


「ッッッあぁ」


突然体をつぴんと伸ばしきったかと思うと、
それきりハルヒは動かなくなった。


つー
と、ハルヒのスカート辺りに透明な水溜まりができた。

死んで筋肉が緩んだんだ。どこかの本で読んだことがある。

死んでからとはいえ、ハルヒのお漏らしを見るとはな。
こんな状況の中で、常識的で間抜けな事が
起ったせことが、なんとなくおかしかった。

涙でぐちゃぐちゃになった顔で、ほんのすこし笑った。


ハルヒが死んで、部屋の中はそれこそ死んだみたいに静かになった。

いや、キリストみたいにまた復活するんだから、
まだ死んではいないのか?体はまた動く訳だし。


いや、でも、
ハルヒと同じ思考をもって動いてる訳じゃないから、
もうすでにハルヒは死んでいるのかな。


ふっと、悪い考えがよぎる。
ハルヒと同じ思考をしていない、
ニアデスハピネスの、虚ろでふわふわしていて、
俺に、素直に好きだと言ってくれたハルヒは、もうすでに別のものだった?


…いや、違う。
ハルヒはハルヒだ。

いつもみたいにめんどくさいのも、
かぷかぷ変な声で笑って俺に寄り添ってきてくれるのも、
死んでしまって、ステーシーになって俺に襲いかかってきたとしても、ハルヒはハルヒだ。

死んでしまっても変わらない。



俺はハルヒが、



すん

ハルヒの鼻が微かに動く。

ゆっくりと、突き出した舌が蠢く。
唇を湿らすように、くるくると円を描いて。

まず口から動き出すのは、その歯で肉を裂き、顎で骨を噛み砕き、血をその舌で味わうためだという。

長門じゃあるまいし、そんなに食い意地はって、みっともない。

ハルヒの眼球がぐるぐるぐると壊れた人形みたいに回る。

夢を見ている間、人の眼球はくるくる回るという。
ならば今ハルヒは夢を見ているのだろうか。
どんな夢を見ているのだろうか。


震えが振動になり、全身が忙しく蠢きだす。

スカートが翻り、白い腿がのぞく。

銀色のキラキラがきらめき、
部屋の中にミルクティーに似た甘い香りが広がる。


これはステーシーの体から分泌される鱗粉の香り。

それは、真昼の光で瞬き、美しかった。


ハルヒの肌が、体が、
輝いて見えた。


ハルヒの首がごきゅんと鳴り、それからゆっくりと上半身を起こす。

生まれたばかりのキリンのように、着実に立ち上がる。

俺は、朝倉の残したチェーンソーに手を伸ばした。

にこりと微笑んで見えたが、きっと俺の願望が作り出した錯覚だ。
ハルヒは死んでいるのだから。


そうだとしても、なぜか嬉しくなった。


さぁ、こっちにおいで、ハルヒ。

ちゃんと、最後まで愛してやるから。






報告書(記入者:森園生)


我々が北高文芸部室(通称SOS団部室)に到着した時点で、
少年Dは自警団の発砲によりすでに殺害されていた。

自警団は我々の到着する前に窓から逃亡した模様。
数発の銃弾を受けたステーシーが残されていた。

我々はステーシー特別対処規定に基づき、自警団を捕縛、ステーシーの処分を行った。


使用した装備は別紙に記載。


処分したステーシーが涼宮ハルヒのものであり、
また少年Dがその鍵であった少年だと発覚したのは、
ステーシーの処分後である。

以上



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