2011年07月31日 19:05
40 :◆tUNoJq4Lwk [saga]:2011/04/10(日) 20:38:17.43 ID:5SfnCg8To
魔法少女 まどか☆イチロー
第 三 話
こんなに苦しいのは自分だけか、と思うこともたくさんあります。
それを見せるか見せないかの話です。
みなさん、ぼくのことは、疲れていないと思っていませんか?
さやかがイチローと会った翌日。
彼女は行こうかどうか迷ったけれど、結局上条恭介の入院する病院に行くことにした。
「イチローさんの尊敬する人って、誰なんだろうね」
一人で行くのは少々心細かったため、まどかも一緒だ。
不安がないわけではない。というよりむしろ、不安しかない。
あの状況で半ば自暴自棄になった恭介をどうやって励ますというのだろうか。
イチローは一体誰に頼んだのか。
そうまでして自分を魔法少女にさせたくないのか。
「どうしたのさやかちゃん」まどかがさやかの顔を覗きこむ。
「いや、なんでもないよ」
どうも考えるのは苦手だ。
小学生のころから考えるよりも先に身体が動いてしまう性格だっただけに、頭の中でぐるぐると考えていると嫌になってくる。
恭介の病室に行く前に、一度巴マミの病室に寄って様子を見に行くと、マミは昨日よりは元気そうな顔をしていた。
けれども、最初に会ったときのような覇気はまだ感じられない。
さて、マミのことも気になるけれど、今のさやかにとっては、やはり恭介のことだ。
病室に行くと、昨日よりも若干落ち着いた恭介がいた。
「どうしたんだ? 今日は二人で」
落ち着いている、とうより気力が萎えていると表現したほうが正しいかもしれない。
「今日はさ、恭介を元気づけようと思って、ここに“ある人”が来る予定なんだ」
「元気づける? 別にそんなこと頼んでないよ」
「ああ、うん。そうなんだけどさ。もう決まっちゃったことだし」
「どういうこと?」
さやかと恭介がそんな会話をしていると、病院のスピーカーから聞き慣れない音楽が流れてきた。
やたらテンポの早い曲でドラムの音が激しく響く。
「ああ、この曲は」まどかが何かに気がついたようだ。
たしかにこの曲にはさやかにも覚えがある。
布袋寅泰の『スリル』だ!
