2011年08月31日 19:35
481 :◆LFImFQtWF6 [saga]:2011/05/13(金) 22:35:46.89 ID:6Y1fYpOw0
『普通の少女』
今日から俺は修学旅行だ。
修学旅行というより、ただの観光旅行とも言えるけど。
荷物は全て、昨日の内にフェイトと準備と確認を終え玄関に置かれていた。
まぁ、これで忘れ物とかはないんだが。
「あの……3日だけだから……ね?」
俺は体を束縛している縄……ではなく、小動物……でもないけど、
そんな目をしているフェイトに言う。
「うぅ……それは、解ってるけど離れたくない」
あぁ、可愛いなぁ畜生。
修学旅行キャンセルしたくなってくる。
涙目で行かせまいと抱きついたままのフェイトの頭を撫でる。
「大丈夫。前にフェイトも3日間仕事でいなかっただろ?」
「う、うん。でも。でも。修学旅行だと電話できないから。その……寂しいなって」
「えっとぉ……小萌先生に何とか頼んで電話するよ。駄目って言われたら隠れてする」
「え? 本当?」
「ああ、本当。絶対にするから。な? そろそろ絹旗が来るから」
「やっぱり、わ、私も行こうかな」
「フェイトは仕事があるだろ」
「ゆ、有給をとれば――」
あ~。
もう駄目。
もう我慢できません!!
一旦フェイトを引き剥がし、今度は俺が抱きつく。
「ふぇっ?! な、ど、どうな、したの?」
「フェイトが可愛いからだ。俺だって一緒にいたいけど、これは学校の行事だからさ。な? フェイトも仕事だし。そろそろ良いだろ?」
とりあえず、説得。
「う……わ、解った。怪我とかしないでね? 迷子にもならないようにね?」
「了解。俺がいないからって仕事で無茶しないように、ぼうっとしないように」
「わ、解ってるよ。仕事は仕事ここはここでちゃんと区切ってる」
だと良いけど。
まぁ出来てるだろうけどね。
「じゃぁ、行ってくる」
フェイトに軽く長いキスをして家を出る。
若干、泣いてた気がしたが、まぁ、気のせいのはず。
たかが、3日だけ修学旅行に行くから離れる。
それくらいで……。
そう思ったところで電話がかかってきた。
家を出てまだ2mくらいだ。
{当麻、行ってらっしゃい}
{ん。泣くなよ。フェイト。帰ってきたらデートしような}
{なぁぅ?! ……うん。楽しみにしてる}
そう言って電話を終える。
丁度絹旗と土御門、姫神なんで後者2名が一緒なのかは知らないが、合流した。
「は~い。ひっこぉきしゅっぱつで~す」
「危ないから席に着くじゃんよ小萌」
先生が注意されている飛行機内。
飛行機内だからととくにすることはないと思っていたのだが……
横に座っていた絹旗が俺の肘をつつく。
「どうかしたのか?」
「いや、そのですね? 超気のせいで済ませたいんですが……」
絹旗が指を指したのはCA。
キャビンアテンダントだ。
だからどうしたんだ?
そう思って見つめると、あからさまに見た人だった。
茶髪の長髪。
その人はこっちに来ると、微笑む。
「お久しぶりです」
「ディード。お前何してんの?」
「一応、手に職つけようとCAの資格を取ったんです。御坂妹と一緒に」
マジか。
あいつもか。
「超すごいんだか、馬鹿なんだか。御坂妹も超いるんですか?」
「はい。一応、隣のビジネスクラスでやってるかと」
へぇ……もう驚かない。
カラオケの時でもそうだけど。
「修学旅行。楽しんでくださいね」
「ん。ディードも自由時間とかあるんだろ?」
「はい。でも他のCAと一緒に行動する予定なので、お二方とは会わないと思います」
そっか。
少し残念だけど、まぁ仕方ない。
ディードが仕事に戻ると、
そこはやはり、クラスの男子達に睨まれた。
主に、土御門と青髪ピアス。
「超平和になったんですね。私はいまだに、超あの感覚が抜けません」
「あの感覚?」
「超暗部時代のことです」
あぁ……。
「私は今、ここにいて良いのか。超そう思うんですよ。時々」
そういう絹旗は少しだけ辛そうな表情だった。
「でもそれは仕方のないことだったんだろ?」
「仕方ない。それで人を傷つけてきたんです。私にとってそれは超正義。でも、世界からは超悪なんです」
「馬鹿言うな。お前がそうすることしか出来ない環境を作ったのは世界だろ? その世界にお前をとやかく言う資格はねぇよ」
俺がそう言うと、絹旗は何かを隠した笑みを浮かべていた。
「貴方が兄、いや、家族と言わず、暗部前に超傍にいてくれたのなら、私はきっと超普通の少女だったかも知れません」
「お前は普通の少女だよ。今も昔もこれからも。お前がお前である限りはな」
「まったく、人の気も知らずによくもぬけぬけと。まぁ、超嬉しい言葉です。状況が状況じゃなければ」
絹旗はそう言うと、俺の肩に頭を預けて目を瞑った。
何が言いたかったんだ?
絹旗は。
そんなことより、インデックスに会うことにならないと良いけど……。
頭を悩ませる俺たちを乗せた飛行機は、イギリスへと向かっていた。
