2014年03月31日 19:31
111 :>>1 ◆FnwJR8ZMh2 [sage]:2012/01/10(火) 01:23:21.60 ID:OymKfUeAO
――基地内――
跳ね上げられたRGMの胴体が、仮設住居に叩きつけられる
下半身を伴わないそれはスパークと共に燃え上がり爆発、辺りに破片と粒子を撒き散らす
業火に照らし上げられたそれは、それが何でもないことのように佇んでいた
マリーダ「っ……!」
オイルを払うかのようにクローアームを軽く振るう、新型のMS
その腹部から紅い粒子の光が迸る度、一本の線が破壊を伴い基地をなぞっていった
塵に変わる建造物
悲鳴さえ上げられず消えていく命
その火力は、まさに圧巻
流石に【デカブツ】と揶揄されたガンダムには及ばないものの、現行MSを圧倒し、警備の目を釘付けにするには十分過ぎる一撃であった
ダリル『反応がどんどん上がってきやがる……!』
ジョシュア『来るぜ、奴らが来る!』
吹き上がる幾多の水柱、淡い水色の中から姿を現したのは、鉄の色そのままの円柱状の物体
二十ほどの打ち上げられた物体は小さな爆発音と共に四つに分割
まさに脱皮するかの如く、AEUイナクトが宙へと舞い上がった
リディ「た……隊長……!」
グラハム「…………」
112 :>>1 ◆FnwJR8ZMh2 [sage]:2012/01/10(火) 01:30:43.99 ID:OymKfUeAO
国連軍の誰もが唖然としているうちに
基地の司令部が呆けて口を開けているうちに
総勢二十三機のMSが、基地のすぐ真横に現れ、部隊を展開し突撃を敢行していた
それはもはや、実体を伴う暴風
一度飲まれれば、命は無い
その場にいた誰もが、彼等に背を向け逃げ出した
軍人も、非戦闘員も、皆誇りも矜持もかなぐり捨てて逃げ出した
逃げる背中に撃ち込まれていく弾丸
それは、目に映るもの全てに手当たり次第撃ち込む、文字通りの虐殺
基地の至る所にミサイルが叩き込まれ、有象無象問わず焼き尽くしていく
一つ、また一つとMSが膝をつき、命が消えていく
【戦争】が、目の前で行われていた
リディ「隊長ッ!」
グラハム「黙れッッ!!」
その様子をグラハムは……いや、オーバーフラッグスは微動だにせず見つめていた
マリーダ「……ッ……」
タケイ「……」
グラハム「…………」
グラハム「オーバーフラッグス全隊員、傾注」
静かな声が無線に響く合間も、彼等は怒りを沸々とたぎらせていく
今にも爆発しそうな感情のたかぶりを抑えることなく、憤怒に表情を染め上げ操縦桿を握り締めた
グラハム「往くぞ」
グラハム「奴らが誰に喧嘩を打ったのか、思い出させてやれ……!」
『了解』
113 :>>1 ◆FnwJR8ZMh2 [sage]:2012/01/10(火) 01:35:33.36 ID:OymKfUeAO
重力を切り離し、一斉に舞い上がる八つの黒い翼
加速は、一瞬で事足りた
巻き起こる黒い陣風が、暴風へと真正面から突き当たる
巡航形態の四機が左右半々に分かれ、前面を構成
MS形態のフラッグが二列縦隊を組み、それに続いた
グラハム「ッ…………!!」
マリーダ「つぅっ……!」
最大加速、唯一リミッターを外された二機が突出する
翼を携えた一角獣と剣のマーク、敵機にその正体はすぐに知れ渡った
一斉に向けられる銃口にも、襲いかかる数百の弾丸にも怯まない二人
優位に立っていた敵軍の怯みが、波となって伝わっていく
グラハム「マリーダッ!」
マリーダ「了解!!」
隙を狙い、即座に二機は空中変形を開始する
最大戦速からの空中変形、【グラハムスペシャル】
空気抵抗を利用しての急速な上昇、一気に射線から離脱した
グラハム「おおおぉぉぉぉぉぉッッ!!」
一閃、袈裟に振られたビームサーベルが、イナクトを両断する
このままラインを押し上げ、体勢を立て直す時間を稼ぐ――危険はもとより承知の上だ
それさえこなせれば、数の上では若干優勢
しかしあの新型MSの前ではそれも過信は出来ない
万全を期し、最善を尽くす
戦友に背を預け、想いを共にする者と同じ場所を見据え、ただ前に突き進む
グラハムは、その眼差しに一片の恐怖も宿さず、敵陣の真っ只中に飛び込んだ
