刹那「インフィニット・ストラトス?」 上

2011年06月17日 19:20

刹那「インフィニット・ストラトス?」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 15:45:45.46 ID:ow3SYJxH0

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 V〉 ヽ |_|   ゝ  ` `ミ _ 、_    / _  ´_  ´ //
  =\ \\\   丶、    `ン`  / / /  .∠/

~乙女座による前回のあらすじ~

・ELSとの対話を終えた少年は量子ワープで地球に帰還しようとするも、到着したのは一夏のいないIS世界であった。
 この状況……青天の霹靂、いや、千載一遇の機会と言うべきか。
・ELSとISを融合させることにより、世界初の男性操縦者として学園に迎えられる少年。女性だらけの学園へ、男子生徒として一人転入することとなる。
 つまりはワンマンアーミー……たった一人の男性なのだよ。どれほどやれるか、刮目させてもらおう、ガンダム。
・ISエクシア(仮称)でセシリアの歪みを断ち切った少年。
 その圧倒的な性能に、私は心奪われた!

・お姫様抱っこ関連で誤字があったようだ。
前スレ>>206
>支点を腰と背中に~
 正しくは背中と膝裏だ。これでは世界の鼻つまみ者だ……!

~乙女座によるこれからの方針~
・少年が異星人である以上、一夏は存在せず、結果的に箒と鈴音はヒロイン入りしないことになる。
 その上、ラウラの過去に無理が生じている。
 ISの作品だと言うのにメインヒロインに出番がないとは……このSS、存在自体が矛盾している!
・だが、IS学園が初対面の場であった人間……セシリア・シャル・ラウラに関してはそうはいかん。
 矛盾を孕んでも存在し続ける、それが生きることだ!
・セシリアを倒してしまった上、少年は一夏より優秀と来ている。メアリ・スーと言われても仕方がないな、これは。
 だが……メアリを越え、厨二を超越し、SSとなった! ご都合主義に耐性のない者は下がれ、ガンダムは私がやる!
・原作の展開をなぞる以上、ヒロイン達が少年に心を傾ける展開になり得る。
 NTRを嫌う諸君は撤退したまえ。信心深さが暴走すると、あらぬ悲劇を招く。
・少なくとも、ネオドイツのガンダムファイターとガンダムファイトするまでは進めたいものだな。
 男の誓いに、訂正はない。

※このSSに乙女座は出演しません

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 翌日。
 グラウンドに集合した1年1組は、五列隊形で並んでいた。
 ‘休め’の姿勢で待機している中、男子は刹那一人である。

≪……刹那、昨日の影響は?≫
(ミッションの遂行に支障はない)
≪そうか。……何か困ったことがあればすぐに伝えてくれ≫
(ああ)

 全員女子の中一人だけ男子と言う時点で疎外感は物凄そうなものだが、刹那自身、とんと気にした様子はない。
 これはこれと割り切っているのか、それともそう言う思考がないのか。

「ではこれより、ISの基本的な飛行操縦を実践してもらう」

 隊列の前に出た千冬が、ざっとメンバーを見渡す。

「セイエイ、オルコット。試しに飛んでみろ」
「わかりましたわ」
「了解した」

 それぞれ独特の返答と共に、セシリアの耳につけた青いイヤーカフスが、刹那の場合は体が淡く発光する。
 周囲一帯が光に包まれた瞬間には、もうISの装備を終えていた。
 刹那はIS装着の際に指を鳴らしてガンダムを呼んではどうかと考えていたらしいが、結局却下されたようだ。
 何よりである。

「よし。……飛べ!」

 無事成功したことを確認してから、千冬が声を張った。

「はいっ!」
「エクシア、飛翔する」

 両者同時に地面を蹴り、空高くへ舞い上がる。
 先んじたのは、セシリア。
 目標高度に達した時点で、刹那から二メートルほどの距離を開けていた。

『セイエイ、遅いぞ。スペック上の出力はエクシアの方が上のはずだ。
 ……お前は‘特別’なものを持っている。その程度ではないだろう』
「……すまない、俺のミスだ」

 通信機越しに聞こえる千冬の注意に対し、素直に謝罪する刹那。
 いかんせん、ISの操縦は感覚的だ。手馴れているセシリアに対し、刹那はやや不慣れな面が目立っている。
 もっとも、今回のセシリアはスターライトmkⅢを装備していないので、先の戦闘より機動力が向上していると言う点もあるだろうが。

≪MSとは操縦系統が根本からして違う。気負いすぎるな≫
(……すまない、ティエリア)
「自分の前方に角錐を展開するイメージ……教本にはそう書いてありますが、
 イメージは所詮イメージ。自分のやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ?」

 先を行っていたセシリアが、速度を落として刹那に並ぶ。
 その心遣いに、刹那は感謝せざるを得なかった。

「セシリア・オルコット……」
「差し出がましいようですけれども……どうやら、あまり慣れていないように見えましたので」
「ああ……否定はできない」
「その……よろしければ、放課後に指導して差し上げますわよ?」
「指導?」
「その時は、二人きりで……」
『セイエイ、オルコット。急降下と完全停止をやってみせろ』

 セシリアの言葉を遮って、千冬から通信が入る。
 表情を引き締めると、セシリアはブルー・ティアーズのスピードを上げた。

「では、お先に」

 そのままの勢いでいくらか進むと、九十度に近しい角度で地面に降下。
 ギリギリまで待ってからスピードを落とし、激突を避け、着地する。

≪……上手いものだな。操縦技術に関しては、あちらが上と見ていい≫
(ああ……例え希少価値があるとしても、パイロットとして実が伴わなければ意味がない。
 帰還の方法だけでなく、ISの操縦にも力を割く必要があるか)

 思考しながら、刹那はセシリアの後を追った。





 日が沈み、放課後。

「セイエイ君、クラス代表決定おめでと~!」

 寮のフロントを貸切り、刹那のクラス代表就任を祝うパーティーが催されていた。
 あくまで学生の身分である以上、質素さの目立つ部分はあるが、こう言った催しものは祝おうとする気持ちが大事なのである。

 しかし、クラス代表になどなってしまえば、色々と仕事を押し付けられるのは目に見えている。
 帰還を第一とする刹那からすれば、喜べない事態であった。

(……失敗したか)
≪そうとは言い切れないぞ≫
(ティエリア?)
≪IS操縦者としても優秀、クラス内でも人望が有る……
 そのような評価が下されれば、学園側もよりこちらを手放したくなくなるはずだ。
 この学園自体、時代に反して技術は格段に進歩している。
 IS自体も、宇宙空間での活動を想定したパワードスーツだ。
 となれば、学園も宇宙開発に関心を向けているだろう。
 学園内での地位が向上すれば、それだけ情報が手に入りやすくなる≫
(自分自身を質にする、と?)
≪そう考えてもらって構わない。
 それに、僕だけでも作業自体は行える。
 能率は落ちるが、クアンタのシステムと学園のネットワーク……二つの面から同時に情報収集を行った方が効率はいい≫

 ティエリアの論を聞いて、刹那は納得した。
 ならば、この地球の座標特定はティエリアに任せ、自身は学園内での地位獲得とIS操縦の技量を高めることになる。
 だとするならば、クラス代表と言う役職はおあつらえ向きであった。
 黙々と思考する刹那は、ふと閃いた光に目を細める。

「はいは~い、新聞部で~す」

 聞くまでもなく名乗った少女に、刹那は大体のあたりをつけた。
 おおかた、唯一の男子がクラス代表になったことを祭り上げようと言うのだろう。
 刹那からすれば、なかなかに都合のいいことであった。

「ああ、セシリアちゃんも一緒に、写真いいかな?」

 刹那の右隣に座っているセシリアへ、眼鏡の新聞部員――部長か何かだろう――が声をかける。
 提案に対し、セシリアは顔に喜色が浮かびそうになるのを堪えつつ問う。

「え……二人で、ですの?」
「注目の専用機持ちだからねえ。
 そうだ、握手とかしてるといいかもねえ」
「そっ、そうですか……
 あの、撮った写真は当然いただけますわよね?」
「そりゃもちろん。ささ、立って立って!」

 ジェスチャーで二人に指示する新聞部員に、刹那は従った。
 下手に抗う理由もない。校内新聞に掲載されれば名も上がろう言うものだ。

「じゃ、握手してもらえるかな~?」

 セシリアへ向け、右手を差し出す刹那。ELSに指示して、感触は人間と同じにしてある。
 おずおずとその手を握り返すと、セシリアは小さく呟いた。

「よろしくお願いしますわね、刹那さん」

 呼び方が変わったことには気づいたが、刹那はきっと見直してくれたのだろうと認識して、特別触れるようなことはしなかった。
 対話は、相手とわかりあう意思をもって初めて可能になる。
 態度が軟化したのは、きっとあの戦いをきっかけに対話を望むようになったからなのだろう、と刹那は推量した。

「あ~ん、もうちょい笑顔で寄って寄ってぇ。
 はぁい、緊張しないでぇ。
 それじゃ、撮るよぉ?」

 指示をこなし、最もよいであろう構図を作った二人を、カメラのレンズが捉え、

「はぁ~い」

 撮影した時には、何故かクラスメンバー殆どが写真に写っていた。

「何故全員入ってますの!」
「まあまあ」
「セシリアだけ抜け駆けはないでしょ~」

 怒気を露にするセシリアと、それをなだめる女子生徒。
 この状況、どう対応したものか、と刹那は再び頭を悩ませた。





 自室に戻った直後、ティエリアは刹那に相談をもちかけていた。

≪刹那≫
(どうした?)
≪ダブルオークアンタを回収しに行く≫
(ダブルオークアンタを?)

 何故、今クアンタを引っ張り出す必要があるのか。
 全長十八メートルの巨人を夜に持ち出しては、怪談になるか、見つかって厄介なことになるだけだ。
 そこでティエリアの出した回答は、刹那の予想に反したものだった。

≪ISを取り込んだことで、待機形態を利用することが可能になったはずだ≫

 確かに、ELSは融合した対象の外見・能力・技術をコピー、あるいは独自に発展させることが可能だ。
 自己進化・自己再生・自己増殖の三大理論を兼ね備えている、超科学生命体なのである。
 それがISを飲み込んだのだから、後は推して知るべし、だ。

≪それを用いて、刹那の体内にダブルオークアンタを収納する≫
(……可能なのか?)

 確かに、ISの待機形態は物凄く小さい。全行二メートルはあろうかと言うブルー・ティアーズが、
 イヤーカフスに、つまるところ三センチ程度の大きさに縮められてしまうほどである。
 だが、MSを体に収めるなど、刹那からすればやや躊躇われる行動であった。

≪そもそも、ELSに現代の物理は通用しないと考えていい。
 質量保存の法則を無視できる時点で、人間とはもはや次元が違う≫
(…………)

 こればかりは、刹那も押し黙った。
 そう、ELSはトンデモSFの住人のようなものである。

≪行くぞ、刹那。目的地までは僕が案内しよう≫
(……了解した)

 結局、刹那は首を縦に振るほかなかった。





 翌朝。

「もうすぐクラス対抗戦だね」
「そうだ、二組のクラス代表が変更になったって聞いてる?」
「ああ、何とかって転校生に代わったのよね」
「転校生?」

 会話中に出てきたその単語に、刹那は興味を駆られた。
 自身の境遇は転校生である。
 可能性はごく僅かではあるが、自らと同じようにこの惑星へ飛ばされてきた人間かもしれない。

「うん。中国から来た子だって」

 中国……刹那の時代観からすれば、人革連の連中である。
 元人革連の知り合いは、生憎アレルヤ・ハプティズムと同じ超兵であるソーマ・ピーリス程度だ。
 まあ、もし顔見知りでないにせよ、同じ状況の人間がいることがわかれば、それは大きな収穫ではある。

「うん。中国から来た子だって」
「ふん。私の存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」

 セシリア一人にそれほどの影響力があるかどうかはともかくとして。

「どんな子だろ。強いのかな……」
「今のところ、専用機を持ってるのって一組と四組だけだから余裕だよ~」
「その情報、古いよ!」

 聞き慣れない声が、会話に介入してくる。
 音源の方向を見やれば、教室の入口に見えるのは小さな人影。

 長い栗色の髪はリボンで束ねられ、ツインテールの形をとっている。
 ぱっちり開いた目と、低い身長からは、成長を終えていない幼さを感じさせた。

「2組もクラス代表が専用機持ちになったの。そう簡単には優勝できないから!」

 勝気な性格を反映した高い声が、教室に響く。
 彼女の態度に何かを感じ取ったのか、セシリアが口を開いた。

「貴方が、噂の転入生なのかしら?」
「そうよ! 中国代表候補生、凰 鈴音(ファン リンイン)!」

 代表候補生。この時点で、刹那と同じエトランゼである可能性は潰えた。
 まあ、それほど大きな期待を寄せていたわけではない。
 せんなきことだ、と刹那は思考を掃いて捨てた。

「今日は宣戦布告に来たってわけ!」

 大々的な敵対宣言に、教室内がざわつく。
 潔いと言えば、潔い手法であった。

「専用機があるからって、いつまでも舐めてると痛い目――――」

 意気揚々と喋り続ける鈴音の言葉は、しかし、ごんっ、と鈍い音と共に中断された。
 頭頂部をこちらに向けている様はどことなくシュールだが、
 とにかく上方から衝撃を受けたのだろうことを端的に表現している。

「いったぁい、何すんのっ……!」
「もうSHRの時間だぞ」
「ち、千冬さん……」

 颯爽と登場した千冬を目にして、鈴音は見るからに勢いを殺した。
 その表情から推察するに、ただ調子に乗っていたところに先生が来て気まずい思いをしているのではなく、
 千冬に対して何らかの苦手意識を抱いているらしい。

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、邪魔だ」

 しっしと鈴音をあしらうと、つかつかと教壇に向かっていく。

「すっ、すいません……」

 しおらしくなった鈴音はどもりながら頭を下げると、
 きっと刹那たちの方を見やって、

「あんまり油断してると、すぐ負けちゃうんだから!」

 最後にそう残して、鈴音はぱたぱたと廊下を走り去っていった。





 クラス対抗戦当日。
 刹那が所属する一組と相対するのは、鈴音のクラス、二組。

 カタパルトにて準備を終えた刹那は、真耶から敵機の説明を受けていた。

「あちらのISは甲龍(シェンロン)。セイエイ君のエクシアと同じ、近接格闘型です」

 ブルー・ティアーズとは違い、今度は近距離での戦闘がメインになる。
 いかにして相手の裏をかくかは同じだが、今回競われるのは反応速度が主。
 その一点においては、ディスアドバンテージを負っているのは刹那である。
 機械の反応速度は、決して駆動系の性能とイコールではない。
 パイロットの神経と、それを伝達するスピードが要になる。
 となれば、ISにおいてはどの要素でも後塵を拝している刹那の荷が重いのは当然であった。

 だからと言って、むざむざやられるわけにもいかない。
 クラス対抗戦での勝利には、なかなかの名誉が付随する。
 帰還を優先する以上は、いくら気の進まぬ戦いと言えど、全力で挑む他ない。

「私のときとは勝手が違いましてよ。
 油断は禁物ですわ」

 念を押すセシリアに、刹那は頷いて返す。
 この日まで、セシリアからIS操縦の訓練を受けてきたのだ。
 彼女の期待を、一回戦敗退と言う最悪の結果で裏切るわけにはいかない。

「それでは両者、規定の位置まで移動してください」

 アナウンスが流れ、刹那はエクシアを稼動させる。
 カタパルトの上に乗せられたエクシアが、空中へ打ち出された。

 もはや、慣れたものだ。
 セシリアとの特訓でゆうに百をこなした姿勢制御術を用い、刹那は中空で静止する。

「今辞退すれば、痛い思いをしなくてすむわよ?」

 高度を引き上げた鈴音が、刹那と向き合った。

「そうするつもりはない」
「一応言っておくけど、絶対防御も完璧じゃないのよ。
 シールドを突破する攻撃力があれば、殺さない程度にいたぶることが可能なの」
「それを望むと言うのか?」
「……いや、やりたいわけじゃないけどさ」

 ならばいい、と言いたげに刹那が口を閉ざすと、
 タイミングを見計らったかのように女性の声が入る。

「それでは両者、試合を開始してください」

 鈴音が、背負った青龍刀――――双天牙月を右手に携えた。
 機体の全長ほどはあろうかと言う巨大な刃物は、直撃すれば大惨事になりかねない。

 応えるように、刹那はGNソードを展開。
 長大な刀身ならば、エクシアも持ち合わせている。

 二人同時に、互いに向け直進。
 クラス対抗戦の火蓋が、切って落とされた。





 互いに進行方向を同じくした両者は、空中で激突。
 一度の邂逅は、火花と金属音を生み出しただけだった。

≪刹那!≫
(ああ……出力は敵機の方が上だ)

 エクシアの主眼は、高速接近戦闘、即ちヒットアンドアウェイを繰り返す戦法である。
 機動力の代わりに単純な腕力を犠牲にした結果、取っ組み合いにおいては、甲龍が上に来るのだろう。

 張り付かれれば、確実に敗北が訪れる。
 ここは、一撃離脱を繰り返すべきか。

「ふぅん、初撃を防ぐなんてやるじゃない。
 けど」

 そこで口を止めた鈴音は、空手だった左手を空に突き出す。
 一瞬の発光の後、そこには二本目の青龍刀が存在していた。

 内心刹那は舌打ちをこぼすと、自ら攻勢に出る。
 自由に泳がせていては、こちらの不利がより決定的なものになってしまう。

 体重をかけて押し付けられたGNソードを、鈴音は苦もなく、青龍刀の腹で防いでみせた。
 そのまま自らの膂力を頼りに刹那を押し返すと、もう一方の得物で刹那の横腹を狙う。

 それを見抜いていたのか、刹那もまたフリーであった左腕でGNブレイドを抜刀、
 不安定な姿勢ながらもつばぜり合いに持ち込み、即座にバックブースト。

 仕切りなおしとなったことを利用し、腰部のGNダガーを投擲する。
 自然、鈴音は両腕の双天牙月でダガーを弾いた。

 その隙に、刹那は鈴音の背後に回り込む。
 あの長物は、密着状態では活かせまい。

 作り出した好機、刹那はGNソードで一文字に斬撃を加える。
 鈴音のシールドが削れる音を耳にして、
 このまま押し切れれば、と刹那は次撃の準備に入り、

「こん、のっ!」

 鈴音の肘打ちをくらい、吹き飛ばされた。
 GNドライヴを頼りに逆転した天地を正し、意識をはっきりとさせる。

 不意打ちの肘鉄とGNソードでの奇襲攻撃ならば、火力で上回るのは刹那側だ。
 シールドエネルギーの削りあいでは、刹那が優勢であった。

 だが、この時点で、刹那はGNダガーと言う手札を切ったのである。
 鈴音が手の内を明かしているのに対し、この事実は無視できない劣勢と言えるだろう。

 だからこそ、このまま攻めきる必要がある。
 刹那が前方へ加速するのに同じく、鈴音は二本の青龍刀の柄を合わせた。

 その行動を訝しむ刹那だが、ともかく今は攻めの一手である。
 鈴音に向け、GNソードを突き出す。
 敵を調子付かせぬための速攻は、しかし、

 カウンターをもろに見舞われ、自らのシールドゲージを削る結果で終結した。 
 剣に添えていた左腕に、電流に似た感覚が走る。

 ――――何が起きた。
 一度距離を離し、刹那は鈴音を捕捉する。
 鈴音の武器である双頭の青龍刀は、柄同士を連結させることにより、一本の薙刀と化していた。

 GNソードよりもリーチで勝るその武装ならば、敵の攻撃に合わせ反撃、
 後の先を取ることも容易であろう。

 ――――武器の形態変化。
 新兵器を持ち出すならまだしも、MS同士の戦闘では、まず起こりえないことである。

 ISの特性とMSの特性には、やはり大きな隔たりがあるのだ。
 その差異を把握出来ていない刹那がしっぺ返しをくらうのも、当然の帰結である。

 そんな刹那の焦燥など知ったことではないと、
 演舞でもしているかのように、鈴音はくるくると薙刀を手で弄び、

「はあっ!」

 両の手で掴みなおすと、敵手の息の根を止めるべく、意趣返しとばかりに刺突を狙う。

 その鋭鋒を迎えるだけの胆力を、刹那は持ち合わせていない。
 高度を引き上げ、半円を描くように鈴音の背中側へ退避。
 安全地帯へと抜けようとするも、薙刀を前に押し出した体勢のまま、鈴音は振り返る。
 返す刀で、横薙ぎの一撃。

 しかし、イノベイターである刹那の反射神経は、鈴音の予測を超えた。
 頭を刈り取ろうかと言うその刃にGNソードをかち当て、一瞬の拮抗を作り、再びスラスターを吹かす。
 鈴音の頭上を取った刹那は、そのまま重力の支持を受けて、鈴音へ襲い掛かった。

 単純に力負けするのなら、何らかの力を自力に加えればよい。
 そして、高度、即ち重力は、空中戦において最も重要視される要素である。

 刹那の影を追う鈴音は、しかし太陽光に目を焼かれ、ほんの僅かであれど反応を遅らせた。
 これこそが、刹那の立てた策。
 視界を潰し、更に高度差で有を占めることで、一息に押し切ろうと言うのである。

 刹那の予測は見事的中し、鈴音は破れかぶれで薙刀を振るう。
 自然、GNソードとぶつかり合うが、やはり優位に立っているのは刹那。
 その勢いのまま刹那は鈴音を押し出し、

「落ちろ!」

 GNドライヴから得た推力で、踏みつけるかのごとく鈴音に蹴りを入れる。
 ISの重量、そしてGNドライヴの出力を余すところなく受けた鈴音はあえなく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 巻き起こる砂塵。鈴音の姿は確認できないが、しかし、競技終了のアナウンスは響かない。
 ならば、未だ健在なのだ。

 接近戦を前提とする機体には、敵弾幕を突破する機動力と、被弾をものともしない装甲が求められる。
 甲龍のコンセプトから推量するに、あの程度で破壊出来るほどやわではあるまい。
 何にせよ、油断は禁物である。

 その判断は、正解だった。
 閃光が溢れ、刹那の視界を埋め尽くす。

 ――――これは。
 今までの経験から、推測できる。
 これは、危険だ。
 警鐘を鳴らし続ける頭に喝を入れ、刹那は強引に体をひねる。

 目には見えないが。

 目には見えないが、確かに、何かが過ぎ去った。
 刹那が居た空間を引き裂き、進路上の全てを溶かそうとする光の渦が、天を貫いたのだ。
 下方向から放たれたであろう砲撃は、

「今のはジャブだからね」

 やはり、甲龍の――――

 あたりを着ける間もなく、刹那は熱に身を包まれた。
 第二射。
 あれほどの高火力ならば連発できるはずがないと言う刹那の当て推量を裏切り、
 時間を置いての攻撃で、鈴音は刹那の裏をかいたのである。

 鈴音と同じく地面に墜落した刹那は、片手を地に着けてどうにか立ち上がった。
 追撃の手を緩めるつもりはさらさらないのだろう、鈴音の様子を見る限り、どうやら第三射に移るようである。

 しかし、運動性においてはエクシアが勝っているのだ。
 鈴音の視線と自身の移動方向から着弾地点を見切り、不安定ながらも射撃をいなしていく。

(……あれは)
≪……衝撃砲だ。空間自体に圧力をかけて砲弾を撃ち出したのだろう≫

 ティエリアの声は、やや覇気に欠けていた。
 ISへ負担がかかれば、その分パーツの一つであるターミナルユニットにも被害が及ぶ。

≪構造上、砲身も砲弾も視認は不可能だ。
 加えて、射格の制限も無いと見ていい。……文字通り、死角が無い≫

 ティエリアが口を動かす最中にも、透明の砲撃は鳴り止まない。
 無秩序な軌道で、刹那は回避に専念する。
 パターンを作らないよう意識はしているが、ラッキーパンチをもらう可能性がある。
 逃げてばかりでは、どうにもならない。

 何と言う窮地。何と言う逆境。
 だとしても。いや、だからこそ。

≪……だが、逆転の芽はある≫

 ティエリアは諦めていない。勝つつもりなのだ。
 それは、

(……ああ。
 ソレスタルビーイングに失敗は許されない……
 ミッションプランに変更がない以上、目標を駆逐するだけだ)

 刹那も、同様である。
 彼らは、ガンダムマイスターなのだ。
 絶望的な状況にあり、勝算がなくてもなお、希望を持って進まなければならない。
 自らの望む、未来のために。

≪いけるな、刹那? タイミングは譲渡する。
 最も効果的と思われる場面で使用しろ≫
(ああ。同調を頼む)

 ティエリアと言葉を交わしながら、刹那は鈴音の行動を観察する。
 今は衝撃砲を用いて圧倒することで攻勢に出ているが、いくらなんでも無尽蔵に撃てるわけではあるまい。
 高火力・高性能であるほど、取り扱いは難しくなるものだ。
 いずれ、息切れする。
 それを、待つのだ。今は、ただ耐えねばならぬ雌伏の時。

 粒子で軌跡を描き出し、刹那は空を翔ける。
 エクシアは第三代のガンダム。
 事実上の永久機関であるGNドライヴにより、燃費やエネルギーの対効率は特筆すべきものがある。

 それに対し、鈴音の甲龍は専用機とは言えIS。
 限度と言うものは、少なからず存在する。

 刹那は逃げ、鈴音は撃ち。
 そして。
 続いていた砲撃が、止んだ。
 鈴音の表情が、みるみるうちに曇っていく。
 
「ティエリア!」
≪ああ! いけ、刹那!≫

 反撃の狼煙は上がった。
 今こそ、戦況を覆す時。


 赤い閃光が、アリーナを突き抜けた。


 刹那と鈴音を、巻き込んで。


 轟音、爆風、閃耀。
 IS同士の戦闘によるものではない余波が、立て続けに巻き起こる。

 鈴音の策かと思ったが、

「何……!?」

 ただ驚いているその様子を見るに、そうではないようだ。
 モニターで自機のステータスを確認するが、異常は検知されていない。GNドライヴの暴走でもないらしい。

『システム破損! 何かがアリーナの遮断シールドを、貫通してきたみたいです!』

 管制室から聞こえるのは、焦っている真耶の声。
 ならば、これはハプニングなのか。
 誰もが予想せず、そして誰かが定めたわけではない、完全なまでの緊急事態。

『試合中止! セイエイ、凰(ファン)、ただちに退避しろ!』

 千冬の言がきっかけとなってか、会場へ一気に動揺が生まれた。
 そこかしこから悲鳴が上がるものの、生徒を守るために張られたシェルターで、その波が途切れる。

(ティエリア、何が起こっているかわかるか?)
≪いや……僕がわかる範囲では何も。
 だが、先の粒子ビーム……かなりの高出力だ!≫
『聞こえた!? 試合は中止よ、すぐピットに戻って!』

 鈴音が通信が入ると同時、モニター右に赤枠の警告文がポップアップ。

 ――――ステージ中央に熱源
     所属不明のISと断定
     ロックされています

 それに重なるように、黄色い刺激色のウインドウ。

 ――――LOCKED

(所属不明のIS……?)
≪可能性はあるが……! 刹那、今は対応を優先しろ!
 その所属不明機にロックされている!≫
(了解……!)

 ISに関しては最大級の規模を誇る施設、IS学園。
 その学園が所属不明と判断するということは、もしかすれば、MSかもしれない。

 しかし、こちらを敵対性として認識する以上、可能性は低いだろう、と刹那は判断した。
 他のISよりもMS寄りの外見をしているエクシアへ、問答無用で仕掛けてくるあたりからも明らかである。

『聞こえてるの!? 早くピットへ!』

 その思考よりも、急かしてくる鈴音への返答が先か。

「お前はどうする」
『あたしが時間を稼ぐから、その間に逃げなさいよ!』
「……危険だ」
『って言ったって、ISに触ってからそう時間が経ってないんでしょ!?
 あたしの方が経験があるんだからしょうがないでしょ!』

 鈴音の言っていることは事実だ。
 確かに、IS操縦者として訓練を積んできた時間は、鈴音の方がはるかに長い。
 黙った刹那に、鈴音は続ける。

『別にあたしも最後までやりあうつもりはないわよ。
 こんな異常事態、すぐに学園の先生がやってきて収拾――――』

 鈴音が言い切るが速いか、刹那の感覚が明確な敵意を捉えた。 
 脳量子波による探知と、今まで戦士として過ごしてきたが故の勘が、刹那の体を突き動かす。

 GNドライヴを再稼動させ、装甲に覆われた鈴音の腕を引っつかむ。
 被弾面積を少なくするべく、セシリアへそうしたように支点を背中と膝裏へ移した。

「ビーム兵器……!」
≪高出力だな……しかし、純正・擬似共にGN粒子の反応は検出されていない。
 旧世代のMSと言う場合もあるが……≫
「……あ、ちょっ、ちょっとバカ、離しなさいよ!」

 呆気に取られた状態の鈴音が意識を覚醒させ、刹那をひっぺがすべく腕を伸ばす。
 顎を狙ったその一撃を紙一重でかわすと、刹那は要望通り鈴音を開放した。

「動けるか?」
「あ……う、うん」
「立ち止まるな。狙い撃ちにされるぞ」

 それを言い含め、刹那は鈴音のそばから離脱。
 鈴音も承知しているのか、刹那から距離を取り、ターゲットを分散させる。

 刹那らが二発目をやりすごすのに遅れて、敵機は姿を現した。

 巨大な腕と足に反して華奢な胴体と言う歪なフォルム、
 通常のISの二倍はあろうかと言うその体躯、
 無機質さを感じさせる、人の目のような穴。

 奇妙なその外見は、薄ら寒いイメージを抱かせる。
 外面だけならば、ファンタジー小説に出てくるようなゴーレムを彷彿とさせる見た目だ。

(MSではない……)
≪ああ、MSにしては小さすぎる。ISと見るのが妥当だろう≫

 その事実に少なからず落胆したが、今すべきは彼奴への対処。
 刹那はスピーカーを機動させ、音声を所属不明機に届かせる。

「こちらはIS学園所属、刹那・F・セイエイ。
 当方に交戦の意思はない。武器を収めろ」

 警告に、ゴーレムは応えなかった。

「繰り返す。当方に交戦の意思はない。武器を収めろ」

 再度の警告にも、ゴーレムは応えなかった。

 どう動いたものか、刹那が頭をひねると同時、真耶から通信が入る。

『セイエイ君、凰さん! 今すぐアリーナから脱出してください!
 先生達が、ISで制圧に行きます!』
≪そうはいかない。ビームの出力を考えれば、あのシェルターでは危険だ≫

 ティエリアから全く喜べない報告を受けて、刹那は選択した。
 ――――戦わなければならない。
 自身が戦うことで、生徒を守れるのならば、戦う。
 破壊するためではない、守るための戦いだ。

「……ここで逃げては、また不要な犠牲者が出る。
 敵機の狙いはこちらだ。ここで、奴の足を止める必要がある」
『そっ……それは、そうですけど……
 でもいけません! セイエイ君!』
『刹那さん!』
「時間を稼ぐだけだ、問題は無い」

 通信機の向こうには、セシリアもいるのだろう。
 彼女の声が聞こえたが、刹那の決意が揺らぐことはない。
 ……しかし。
 確か、管制室はアリーナに直通の通路があったはずだ。
 ならば。

「……セシリア、頼みがある」





「お前は撤退しろ。後は俺がやる」

 鈴音へ向け、通信回線を開く。
 戦うことは、刹那のような戦士にこそ相応しい。
 年端も行かぬ少女が、自らの命を危険に晒す必要などないのである。

『……誰に言ってんのよ』

 鈴音の声は、ブレなかった。
 はっきりした芯を保ったまま、彼女は刹那に向け言葉を紡ぐ。

『あたしも付き合う』
「支援は無用だ」
『……だったら、あんたの協力はしない! けど、あたしはここに残る!』

 鈴音の目には、恐怖はない。
 それは、争いを軽んじているのではない。
 今ここで自分が退けば、人が死ぬのだと言うことを、端的に理解しているのだ。
 だから、逃げない。
 己の身を犠牲にするつもりは毛頭ないが、他者を贄に、自らは背を向けるつもりは全くない。
 誰かのために、戦うのだ。
 それは、刹那と同じ。守るための戦い。

「……そうか。行くぞ」
『えっ……ええ、任せなさい!』

 鈴音は、もっと刹那が渋るものだと思っていたのだろう、一度小さく声を漏らしたが、すぐに戦闘態勢に入った。

 刹那の周囲には、戦う人間が多く居た。
 世界との戦争を繰り広げたソレスタルビーイングだけではない。
 国の民を救うため、努力を続けたマリナ・イスマイール。
 少女の優しさを取り戻すため、戦場に身を投じた沙慈・クロスロード。
 彼らもまた、刹那とは違った形で戦っていた。
 戦いは、悪意を生み出すばかりではない。自らの意思で、あるいは他者の幸福のために、戦うことも出来るのだ。
 だから、刹那は鈴音が戦うことを止めなかった。

 刹那は左へ、鈴音は右へ。それぞれ、弾かれたように飛び出す。
 回避行動を取りながら、刹那はアリーナの壁に視線を滑らせ、カメラが破壊されていることを確認しつつ、ティエリアとの会話を行っていた。

(クアンタムバーストを使う)
≪ダブルオークアンタを出すのか!?≫
(ああ。ISを形態移行させ、ダブルオークアンタの能力を引き出す)

 前述の通り、今のELSはISの能力を取り込んでいる。即ち、待機形態を利用してのサイズ縮小が可能なのだ。
 刹那のISがエクシアの形を保っているのだから、それを応用すれば、ダブルオークアンタをISにすることも出来るはず。

(いけるか?)

 ――――肯定。
 ELSから返ってきたのは、最高の言葉であった。

(ティエリア、頼む。もし対話を行えれば、あいつが仕掛けてきた意図もわかるはずだ)
≪……了解した。今は戦闘中だ、荒療治になるぞ≫
(覚悟の上だ)

 エクシアが、光に包まれる。淡い緑の粒子をまとい、刹那のISが、形を変えていく。
 右腕のGNソードと左腕のGNシールドは、クアンタ用のGNソードVとGNシールドへ。
 それぞれ二つずつのGNブレイドとGNビームサーベルは、一つとなりGNソードビットへ。
 各部装甲も形状を変え、新たな機体を形作っていく。

 発行が終わり、生れ落ちたのは――――対話のためのガンダム、ダブルオークアンタ。

(形態移行……!?)

 その様を横目にしつつ、鈴音は思わず息を飲んだ。
 まさか、今この状況で実行しようとは。

≪刹那、調子はどうだ?≫
(悪くない……いける)
≪ツインドライヴ、同調……不安定だが、許容範囲内か≫
(出来るのか?)
≪トランザムの準備をしておいたのが功を奏したな。
 いざとなったら、僕がサポートする。いけ、刹那!≫
「……ああ!」

 二基のGNドライヴが、共鳴を始める。
 ――――QUANTUM SYSTEM
 刹那の瞳が、金色に輝いた。
 能力を発揮する際、イノベイターの虹彩は黄金の色を放つのだ。

「クアンタムシステムを作動させる!」

 刹那の叫びに応え、GNシールドが背中へとスライド。
 内部に搭載されたソードビットが、クアンタを囲むように展開する。
 クアンタの装甲が、緑の色に染まる。超高濃度のGN粒子が、反応しているのだ。

 GN粒子を開放するため、腕部、脚部、胸部の装甲がパージ。
 GNコンデンサーを露出させ、粒子散布を開始。


「クアンタムバースト!」


 咆哮が、引き金となった。
 刹那の意識は溶け合い、脳量子波と合一化される。

(探せ……奴の意思を!)

 クアンタムバーストは、言語や種族の壁を越え、対話を成すための装置。
 これをもってすれば、皆わかりあうことができるのだ。

「お前は何者だ……!
 何を求めてここへ来た……!」

 だが。

「答えろぉぉぉぉ!」

 返答は、ない。

(何だ……無い!?)
≪意思が見当たらない……あの機体、無人機だとでも言うのか!?≫
(だが、先ほどの敵意は……!)
≪量子空間の範囲内に、奴は入っている! しかし意思が無いとなれば……!≫
(……遠隔操作、あるいは製造者の悪意!)

 自ら結論にたどり着いた刹那は、クアンタムバーストを終了させる。
 ソードビットをGNシールドに帰還させ、各部GNコンデンサーを収容。
 パージした装甲は無理にしろ、出来る限り元の状態を復元する。

「あんた、一体何を……?」
「戦いに集中しろ……来るぞ!」

 刹那が言い切るより早く、敵機はその巨大な足で地面を蹴り上げ、空中へと飛ぶ。
 巨体に似合わぬ俊敏さだが、しかし、代表候補生である鈴音と、クアンタに形態移行した刹那に追いつける道理は無い。
 歪な拳は空を切るも、散開した両者に向け、所属不明機はビームで攻撃。
 先の一撃とは違い、殺傷力を弱めての拡散形式。
 しかし、これも当たらない。エースパイロットである二人からすれば、この程度、造作も無いことである。

 攻撃後の隙を突き、刹那はGNソードVでの射撃を開始。
 クアンタムバーストで貯蔵GN粒子を使い切ったためか、本来のクアンタのそれに比べ、火力は随分と大人しくなっている。
 それを補うべく、装甲の薄くなる間接部を狙うが、敵機の推進力はISと比較して桁外れだ。
 最低限の動きで射撃をいなすと、所属不明機は二人の間に突っ込んでくる。

 ――――速い。
 なかなかの難敵だ。
 刹那たちの行く先を示しているかのように、暗雲も立ち込めてきていた。





≪アリーナがロックされた……!?≫
(ティエリア?)
≪第二アリーナ全体がロックされたようだ。これでは避難も救援もままならない……!≫

 再びティエリアから凶報を受けて、刹那は俄然表情を渋める。

『何、どうしたの?』
「……アリーナがロックされた。避難に必要な時間を改める必要がある」
『嘘でしょ!? どうしてそんなことがわかる――――』
「待て」

 鈴音の言葉に被せ、刹那は手で待ったをかける。
 反射的に鈴音は口を閉ざし、それに合わせ、巨人は掃射を再開した。

『……何、今の……こっちが喋り終わるのを待っててくれたってわけ?』

 敵弾をかわしつつ、呆然と呟く。
 そう、敵機は、こちらが会話を行っているときに限り、攻撃の手を緩めている。
 どのような意図があると言うのか。

(こちらの情報を探っている……?
 ならば、なぜ大々的に仕掛けて来た? 潜入捜査員を送り込んだ方が、効率と安全性は格段に上のはず……)
≪刹那、考えている時間はない≫
(ティエリア?)
≪避難が終わるのを待つより、奴を仕留めた方が早い≫

 確かに、ティエリアの言葉にも一理有った。
 相手は無人機だ、遠慮も何もなく、問答無用で叩き潰せる。

 GNバスターライフルで遮断シールドをブチ抜き、増援を呼び込む方法もあったが、救援に駆けつけた連中を巻き込みかねない。
 であるならば、殲滅戦に移行した方が安全かつ合理的だ。

「……奴を破壊する」
『えっ……殺すの?』
「あれに人は乗っていない」
『はあ? 人が乗らなきゃISは動かな――――』

 途中ではっとして、鈴音は記憶を振り返る。
 アリーナをロックし、
 学園の情報をもってしても所属不明扱い、
 会話をしていれば、何故か攻撃の手が止まり。

 奇妙な点が多すぎるのだ。
 説明がつかない以上は、そこにどのような結果が待ち受けているかはわからない。

『……ううん、でも無人機なんてありえない。
 ISは人が乗らないと絶対に動かない……そういうものだもの』
「だが、間違いではないはずだ」

 クアンタムバーストは、そこに生命がある限り作用する。
 それに反応しないのであれば、それ即ち無人であることに他ならない。

 頑なに自身の意見を譲らない刹那に、鈴音はため息を一つこぼして、

『……じゃあ、そんなことありえないけど。
 あれが無人機だと仮定して攻めましょうか』

 割り切ったのか、双天牙月を構えなおす。
 割り切れなければ死ぬ。そうわかっているのだ。ならば、グダグダ抜かしている暇はない。

「俺が敵の足を止める。その間に撃て」
『またアバウトな……でもいいわ、やってやろうじゃない』

 気合充分と言った様子の鈴音から視線を滑らせて、刹那は巨人を見やる。
 話は終わったか、とでも言いたげな様子で、所属不明機は腕をこちらに向けた。

 腕部にしかけられた銃口から、ビームが放たれる。
 死角へ回りながら、刹那はソードビットを展開。
 ゴーレムの間接部に張り付かせ、駆動系を狙う。

 遠方からの直線的なビームは回避できても、その巨体では、小回りの利くビットからは逃れられない。
 運動系に支障が出たのか、所属不明機は一時的な硬直を晒す。

 このチャンスを、鈴音は見逃さない。
 刹那の指示通り溜めておいた衝撃砲のエネルギーを、開放。
 目には見えなくとも、風の流れでその威力が知れる一撃を、敵手へ撃ち出した。

 巨体が、揺れる。
 激突した重圧に耐えられなくなったか、真正面から直撃した衝撃砲に、巨人はたじろぎ、仰向けに倒れこんだ。
 追い討ちとばかりに、刹那はソードビットを回収、伏した巨人に接近し、GNソードVで右腕を切断する。
 人口の血液が、切断面から噴出した。

 このまま行動不能まで追い込む。
 その意気で右腕へ移行した刹那は、しかし、突然横殴りに吹き飛ばされた。

「がぁっ……!?」
≪刹那!≫
(損傷は軽微……ミッションの続行は可能……!?)

 冷静に機体状況を分析し、刹那はISを起こそうとして、巨人の右腕に、握られていることに気づいた。
 万力にも近しいその豪腕で、所属不明機は刹那をISごと握りつぶさんとしている。

≪クアンタムバーストでGN粒子を使いすぎた……量子化は出来ないぞ!≫

 鈴音も、先の衝撃砲で消耗している。
 そう簡単には救援に来られないだろう。
 だが。

「今だ……狙い撃て、セシリア!」
『ええ……照準は完璧』

 通信機越しに響く、少女の声。
 専用機を駆る、狙撃手の声。

『狙い撃ちます!』

 ビットの援護を受け、スターライトmkⅢが閃光を放つ。
 一直線に進んだ弾丸は、巨人の胸部を寸分違わぬ狙いで射抜いた。

 遅れて、爆発。
 派手に火の粉があがり、刹那を拘束する力が緩む。

≪まだだ! 止めを刺せ、刹那!≫

 開放された刹那は、GNソードVの切っ先を所属不明機に向ける。
 それに続いて、刀身にソードビットが装着。
 ブルー・ティアーズのそれに劣らぬ巨大な銃――――GNバスターライフルを作り出す。

「この俺が、破壊する!」

 GNソードVの切っ先、ライフルの銃口から、太さ十メートルはあろうかと言うビームが出現した。
 その力は所属不明機を巻き込み、地面に穴を穿つ。

 一際大きく輝いた後には、どうにか原形をとどめている所属不明機と、クレーターが残されているのみだった。


 余談ではあるが、
 本来のGNバスターライフルはこれを大きく上回る破壊力を秘めているものの、
 クアンタムバーストでGN粒子を使い切っていたこと、ISで扱えるようサイズダウンがはかられていたことから、この程度の損害で済んだのである。
 単機でELSを壊滅せしめるMS、ダブルオークアンタ。その力は、未だ未知数であった。





 IS学園、地下施設。
 病院の診療台を思わせるベッドには、確かに、ヒトガタのものが眠っていた。
 それは、中身がからっぽの、ISと呼べるかどうかすらわからない代物だが。

 天井からは機械の溶接などに使うだろう機器が吊るされていて、どうやら、ISの解体作業に従事しているようだった。

「やはり、無人機ですね。登録されていないコアでした」

 分厚い壁を隔てた隣の部屋でキーボードを叩きながら、真耶は千冬に研究成果を告げた。

「そうか……」

 対する千冬は、吐息混じりに返答するばかりである。
 それを気にしているのかいないのか、真耶は報告を再開した。

「ISのコアは、世界に467しかありません。
 でもこのISには、そのどれでもないコアが使用されていました。
 ……一体」
「…………」

 二人は、不可解な疑問を抱えたまま黙り込んだ。
 答えに到達するには、まだまだ時間がかかりそうである。





「刹那・F・セイエイ……苦戦してしまったようだね。
 これでは期待外れだよ」
「…………」
「少しは僕を楽しませてくれなきゃ……それほどの事を、君はしたんだからね」





「今日はなんと、転校生を紹介します!」

 二度目になる真耶のセリフを聞きながら、刹那は眉をひそめた。
 昨日あんな事件が起きたと言うのに、すぐに転入生とは、切り替えの早い学校だと関心すべきか。
 あるいは……

(想定の内だったと言うのか……?)

 クラス対抗戦に乱入してきた、あの巨大なIS。
 アリーナを破壊し、更には学園のネットワークにまで進入、データを改ざんした形跡が残っている。
 あれがもし、学園が用意した差し金だとしたら。

 しかし、下手を打てば世界で唯一の男性操縦者と中国の代表候補生を失うかもしれなかったのだ。
 その確率は低いだろうが、まあ、頭の隅にとどめて置いてもいいかもしれない。

 例の所属不明機によりアリーナも半壊、クラス対抗戦も延期の運びとなったのだ。
 あまり気を張り詰めすぎては、疲れてしまうだろう。

 刹那が物思いにふけっていることなど知る由もなく、転校生の紹介はさくさくと進行していく。

 扉が開き、着任者を迎え入れる。
 転入生は、揺ぎ無い足取りで教室に足を踏み入れた。

「シャルル・デュノアです、フランスから来ました。
 皆さん、よろしくお願いします」

 束ねられた金髪、西洋人らしい碧眼、そして柔らかい物腰と声。
 まるで少女なのではと錯覚するような少年が、そこに立っていた。

 静まり返る教室。
 何拍かの間を置いて、女子生徒の一人が呆然と質問を投げかける。

「お……男?」
「はい! こちらに、僕と同じ境遇の方がいると聞いて、本国より転入を――――」

 途端、黄色い声の大合唱。

「えっ?」
「男子! 二人目の男子!」
「しかもうちのクラス!」
「美形! 守ってあげたくなる系の!」

 教室中を埋め尽くす大歓声に、刹那も意識を現実へ引き戻す。

(転入生……男性か?)
≪ああ、そのようだ……≫

 真面目に話を聞いていたらしいティエリアが、刹那に答える。
 何かが引っかかっているのか、いまいち歯切れの悪い答え方だったが。

 しかし、男性か。これにより、刹那の価値は相対的に減少したと言える。
 喪失したのはよくて半減、最悪七、八割程度か。

 この学園における刹那の存在意義は、世界で唯一の男性IS操縦者と言う一点であった。
 ところが、彼――――シャルルの出現により、刹那は世界に二人いるうちの片割れと言う扱いになってしまうのである。
 加えて、彼は異世界人だ。男性IS操縦者としてのサンプルは、シャルルの方が適任であろう。

(しかし……デュノア。ISメーカーのデュノアか?)

 参考書で目にした、その名前。
 第二世代でありながら第三世代ISにも引けを取らぬ能力を持ち、
 量産型ISの配備数では第三位を記録している名機、ラファール・ディヴァイヴを作り出した一流メーカーの一つである。

 そんな大手メーカーの子息が転入してきたと言うのは重大事だが、ティエリアの不審な態度を疑問に思ったらしい刹那は、再び問いかけた。

(ティエリア?)
≪……いや、何でもない≫

 何でもないと言うのなら、触れぬほうがいいだろう。
 いくらイノベイドとは言え彼も人間。悩みの一つや二つはあって当然である。
 そして、刹那もそれを無理に聞き出そうとは思わなかった。
 人と話すことで解決できる類のものならよいが、他人に知られたくない悩みと言う場合もあるのだ。

 刹那がこうしてティエリアと会話している間、常に鳴り響いていた高い声に、千冬が喝を入れた。

「騒ぐな、静かにしろ」

 怒気自体は強くないのだが、千冬と言う人間の言葉には不思議な圧力感がある。
 気圧されたのか、騒いでいた連中は皆一様に口を閉ざし、教室にはしんと静寂が訪れる。

「……今日は二組と合同でIS実習を行う。
 各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。
 ……それから、セイエイ」

 話の途中で名前を呼ばれて、刹那は千冬に目を向ける。

「デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子同士だ。
 ……解散!」

 千冬の声を皮切りに、女子がトレーニングウェアを取り出しに向かう。
 席から動かない連中も、結構な数がいるようだが。

 それを尻目に、シャルルは刹那の席に歩み寄り、

「君がセイエイ君? 始めまして、僕はシャルル・デュノア。よろしくね」
「ああ、よろしく頼む」

 挨拶を交わしながら刹那は立ち上がり、ドアへ歩きながらシャルルへと手招きをした。

「まずは教室から出る」

 女子が着替え始めるからな、と刹那が口にする前に、シャルルは後を追っている。
 なかなかどうして、物分りがいいらしい。





「俺たちは、アリーナの更衣室で着替える。
 実習の度に移動しなければならない、覚えておいたほうがいい」
「うん、わかったよ」

 廊下を歩きながら、刹那とシャルルは言葉を交わす。
 落ち着きがあり、素直な性格のシャルルは、刹那の記憶の中、誰かのことを思い出させた。

(似ている……アレルヤ・ハプティズムと)

 尖ったところがなく、温和で人当たりのいい彼と、シャルルはどこか同じ空気を感じさせる。
 付け加えて言えば、アレルヤ・ハプティズムやマリナ・イスマイールのような柔らかい雰囲気をもった人間は、刹那にとって非常に好ましい部類に入る。
 刹那がそんな回想に浸っていると、

「あ、噂の転校生発見!」
「しかもセイエイ君も一緒!」
「な、何……?」
「聞いた!? こっちよ!」
「者ども出会え出会え~!」
「見てみて、二人仲よさそう!」
「セイエイ君の黒髪もいいけど、金髪もいいわね!」

 一人が声を上げると、それが連なって大所帯となる。
 仲間意識というか連帯感と言うか、そう言ったよくわからない協調性を、二人の前で壁を作っている女生徒たちは発揮していた。

「……後れを取るな。行くぞ」
「えっ?」

 人の波が生まれているのは、後方と正面。前門の虎、後門の狼と言うやつだが、道はそれだけではない。
 刹那が選択した道は、右方。鍛え上げられた健脚と、無尽蔵に等しい体力でもって、刹那は廊下を駆け抜ける。

「あ~逃げた~!」
「追いかけるのよ!」
「待って~! せめて、写真を一枚~!」

 聞き覚えのある声を背にしながら、刹那はただただ道を行く。





「何で、みんな騒いでるの?」

 両足を動かしながら、シャルルが刹那に問う。
 息切れ一つしていないのは、IS操縦者として鍛えている証だろうか。

「今のところ、ISを操縦できる男性は俺たちだけ……そこに珍しさを覚えているのだろう」
「あっ……ああうん、そうだね」

 不自然な間を作りつつも、シャルルは応答した。
 シャルル自身、IS学園転入初日なのだ。慣れていないからこうなっているのだろう。

「進路を変更したことで、タイムリミットが迫っている……
 このままアリーナまで走るぞ。いけるか?」

 シャルルは頷いて、速度を引き上げた。





「……振り切ったようだな」

 到着した更衣室で、二人は小休憩を取っていた。
 シャルルの体力が思った以上に長続きしたことで、刹那の予想を上回るタイムを出せたのだ。

「ごっ、ごめんね……いきなり迷惑かけちゃって」

 息を弾ませながら、シャルルは謝罪の意を述べた。
 刹那からすれば、この程度どうと言うことはないのだが。

 そもそも、刹那の体は完全に金属である。
 それ故、刹那の呼吸器官は、常人のそれとは比べものにならないほど強靭なのだ。
 その上、自己再生能力により、基本的に磨耗することがない。
 そんな事情もあって、刹那はこれと言って迷惑していなかった。

「気にするな。俺は気にしない」
「でも……」
「遅れたが、俺は刹那・F・セイエイ。よろしく頼む」

 でも、だって、でうじうじと始まりそうな罪悪感の吐露を断ち切るべく、刹那は強引に話題を切り替えた。
 昔のアレルヤにも、こう言うナーバスと言うか、過敏なところがあったものだ。
 戦士として成長し、自身の中に眠るもう一つの人格と折り合いをつけた今では、立派な男になったものだが。

「……うん。よろしくね、刹那。僕のことも、シャルルでいいよ」

 にっこりと笑いかけてくるシャルルに、刹那も小さな笑みで返す。

「了解した。……そろそろ刻限が近い。急いだ方がいい」

 言いながら、刹那は上着を脱ぎ、シャツのボタンを外していく。
 ソレスタルビーイングの制服と違い、IS学園の制服は脱ぎ着に時間がかかるのだ。
 まあ、すぐにパイロットスーツに着替えられるよう意匠されているソレスタルビーイングのそれと比べては、そうなるだろうが。

 ELSに指示し、人間だった頃と同じ外見を獲得している刹那の肌が、外気に晒される。

「う、うわぁっ!?」

 素っ頓狂な声を上げながら、シャルルは両手で顔を覆い、刹那から視線をそらして、後ろへ体を向ける。
 その調子から、まだ金属の部分が残っていたかと刹那が姿見で上半身を確認するも、見た限り、どこも中東人らしい浅黒い肌だ。

「どうした、シャルル。着替えないのか」
「うっ、うん。着替えるよ? 着替える、から、あっち向いてて、ね?」

 動揺の色を隠そうともしないシャルルの声音に、刹那は内心首を傾げた。
 まさか、この年頃になって同性の裸を見たことがないというわけではあるまい。
 しかし一般的にはそうであるが、神経質な人間の場合、多少の気恥ずかしさを覚えることもあるのかもしれなかった。

「……すまない、無神経だった。気になるのなら、外で待っている」
「いっ、いや、気にしないで! 悪いのは僕だから……!」

 シャルルの声を受けながら、刹那はアリーナのドアから出て行く。
 背後でドアが閉まる音を耳にしつつ、刹那は壁に背を預けてシャルルを待った。





「本日から実習を開始する」

 グラウンドに集められた一組・二組は、隊列を組んで千冬の指顧を仰いでいた。

「まずは戦闘を実演してもらおう。
 ……凰、オルコット」
「はい!」
「はいっ!」
「専用機持ちなら、すぐに始められるだろう。
 前に出ろ」
「……めんどいなぁ~……なぁんであたしが」
「……何と言うか、こう言うのは見世物のようで気が進みませんわね……」
「お前ら、少しはやる気を出せ」

 先生の目の前で堂々と怒られそうな発言をしたにも関わらず、千冬の言葉から、咎めようとする意図は感じられない。

「では、対戦相手だが……」
「うひゃああああああああああ! どいてっ、どいてくださあああああああああああい!」

 千冬の言葉を飲み込むような大音響で、空から降ってきたのは―――― 一組の副担任、山田真耶。
 半分涙ぐみながらも、今なお地表へ向け高速で落下している。

 着弾地点は、丁度刹那たち生徒ど真ん中。
 密集隊形だったことかアダとなってか、生徒達は既に皆全力で避難していた。

 これを目にした刹那は、反射的にISを装備。クアンタのままだったため、都合がよかったのもある。
 ソードビットを自身の頭上へ、円を描くように展開、GN粒子で薄い膜を張るよう出力を調整。
 計五基のソードビットは五芒星のように配置され、中心の空間にビームシールドを作り出す。

 そこへ、丁度良く真耶が落ちて来る。

 ビームで形成されたネットに着地したことで、勢いが殺された。
 ISには標準でシールドを作る機能があるのだから、多少ビームに触れたところでエネルギーを消費するだけなのだ。
 リスクは少ない行動だった。

「あれ?」

 襲い来るであろう衝撃に身構えていた真耶は、ぱちぱちとまばたきを繰り返すと、
 自身の状態を把握し、それから刹那に助けられたことを理解して、所在なさげに頭を下げた。

「ごっ……ごめんなさいセイエイ君、ありがとうございます」
「気にするな。俺は気にしない」
「……その言葉、気に入ってるの?」

 シャルルがかけた問いに頷きつつ、ISを装着した真耶が千冬のそばへ移動するのを見届けて、刹那はISを解除した。

「……ハプニングがあったが、山田先生は元代表候補だ。
 ……さて小娘共、さっさと始めるぞ」
「え……あ、あの、二対一で?」
「いや、さすがにそれは……」

 千冬は淡々と話を進めていくが、いくら生徒と先生と言えど、数の不利を覆すのは難しいものだ。
 そんなことなどとうに把握しているらしい二人は、千冬へ抗議するが、

「安心しろ。今のお前達ならすぐ負ける」
「……」
「……」

 自信に満ちた返答を受けて、教習に入る他なかった。





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