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唯「第一次!」なのは「スーパー!」夕映「ロボット」シャロ「大戦です!」 第十話 衝突! それは、忘れることの出来ない想いなの

2011年06月26日 19:03

唯「まじーん、ごー!」

618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/02/26(土) 18:57:55.32 ID:B80XsZte0

 第十話

 北米大陸 ゴラオン

アリサ「アリサ・バニングス、コア・ファイター、哨戒任務に出ます!」

 ゴラオンの開け放しになっている格納庫から、戦闘機コア・ファイターが飛び出した。
 それを見送るなのはとすずかは不安の残る表情で見送った。

なのは「アリサちゃん、最近はよく出るね」

すずか「うん、早く操縦をマスターしたいのもあると思うけど……」

ハロ「ハロハロ」

なのは「もしかしたら、あの放送が関係あるのかな……」

すずか「そうかもしれないけど……アリサちゃん、何も話してくれなかったから……」

 四日前、ちょうどゴラオンが北米大陸に到着した頃に、ある放送がジオン側から流れた。

 ジオン公国のガルマ・ザビとバイストン・ウェルのアの国の国王ドレイク・ルフトが会談し、互いに軍事同盟を結ぶことで同意したと。

 その時の映像はゴラオンにも届いた。
 映像には、ガルマとドレイクが手を握り合っている姿が映っていた。
 その脇を固めていたのが、ショット・ウェポン、トッド・ギネス、イセリナ・エッシェンバッハ、そして、赤い彗星フレイムヘイズのシャナである。
 アリサはその映像を食い入るように見ていた。

なのは「もしかしたら、アリサちゃんにしかわからない何かが、あの放送にあったのかもしれないね……」

すずか「アリサちゃん、思い込んじゃうところがあるから……」

チャム「そこまでわかってるなら、追いかければいいじゃない!」

なのは「あ、チャムちゃん」

すずか「どうしたの?」

チャム「ダンバインの整備を手伝おうとしたら、タマキに邪魔だって追い出されちゃったの!」

なのは「にゃはは、チャムちゃんらしいね~」

ハロ「ハロハロ、チャムハロ」

チャム「私のことより、どうしてアリサを追っかけてってあげないの!?」

なのは「う~ん、なんでだろ……?」

すずか「なんだか、アリサちゃんが聞いてほしくなさそうだから……かなぁ?」

チャム「なぁにそれ? そんなことわかるの?」

なのは「まあ、二年も一緒にだからね」

すずか「たぶん、アリサちゃんは、話したくないというより、話すのが怖いのかも……」

なのは「うん、そうだね。私もそう思う」

チャム「ふぅーん……なんだかよくわかんない!」

すずか「ふふふ」

なのは「にゃはは」

ハロ「ハロハロ、ニャハハ、ハロハロ」


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アリサ「…………」

 コア・ファイターの操縦席でアリサは考え事をしている。
 というより、考え事をしたいときに、アリサはコア・ファイターで出撃していた。

 なのはとすずかが思っているとおり、アリサは迷っていた。
 二人は親友だ。それは間違いなくそう言える。
 だけど、言うべきことか、黙っているべきことなのか、アリサには判断がつかないことだ。

アリサ「まだしばらくは……黙っていたほうがいいのかもしれない」

 アリサは今年十一歳になるが、ジオンの赤い彗星シャナとは姉妹であったのだ。
 そして、彼女の父親はあのジオン・ダイクンなのである。
 ジオン亡き後、姉妹はジンバ・ラル夫妻に守られて地球に移り住んできた。
 ジンバ・ラルは用意していた莫大な資産で地球の名家バニングス家の名前を買った。
 父との記憶はないが、姉との記憶はある。一番強い記憶はアリサが四歳の時、シャナがジオン入国を決めた時のものだ。

シャナ『私の父はジオンのザビ家に殺された。私は父殺しの仇ザビ家を討つべきだと思う』

 まだ幼かったアリサにその言葉の意味はわからなかったが、姉のいない家にアリサが留まる価値はなかった。
 そして出会った親友たち、なのはとすずか。ジオンの娘であるアリサにとって、二人は眩しすぎた。
 そして、姉のシャナが地球を離れた理由がわかるようになると、それはアリサにとって嫌悪すべきものとなった。

アリサ「父が、子どもの不幸を喜ぶものか」

 何よりアリサはジオンの娘となることで、なのはとすずかを失いたくなかった。
 だから、二人が戦うことを選んだとき、民間人としてホワイトベースを降りることもできたのに、乗員として残ったのだ。
 誤算はあった。いつでも人間の周りを飛び回っているそれが舞い降りたのは、大気圏突入時だ。

アリサ「……ツッ!」

 操縦桿を握りしめながら、アリサは頭痛を堪えた。
 あのとき現れた赤い彗星フレイムヘイズのシャナを見たときから、姉のことを思い出すたびに、額からこめかみのあたりを電気のような痛みが走るのだ。
 それはあのジオン・ドレイクの同盟会見の映像を見たとき、ピークに達した。

アリサ「違う……何かが違うのよ」

 アリサはこの頭痛を違和感だと思っていた。
 何かが、違うのである。それは姉のことを思い出すて、常に感じることである。
 姉の名はシャナ。それはジオン入国の際に偽名として名乗ったものだ。
 だが、彼女のファミリーネームは誰も知らない。バニングス家の名は捨てているはず。
 しかし、誰もが彼女のことを『赤い彗星フレイムヘイズのシャナ』としか呼ばないのだ。
 それはルウム戦役でついたあだ名なのだから、それまでに名乗っていたファミリーネームがあるはずだった。

 それに、アリサの知っている姉の名前はあと二つある。
 覚えてはいるが、それが違和感の正体であることにアリサはまだ気づいてない。
 キャスバル・レム・ダイクンとエドワゥ・バニングス――前者はジオン・ダイクンの子としての名前、後者はバニングス家としての名前である。

 キャスバルとエドワゥ――この名は、主に男子につけられる名前なのだ。

アリサ「シャナ――姉さんに会えば何かわかるはず……」

 あの映像にシャナが映ったということは、北米大陸にまだ駐留している可能性が高い。
 ゴラオンに乗り続けていれば、会うことはできるだろう。

 そのとき、レーダーが質量を捉えた。四つ、ドレイク軍のドラムロだ。

アリサ「すぐに戻らないと……!」

 敵もこちらに気づいたようだった。
 急いで機首を返す。戻りきれるだろうか?


 ゴラオン 格納庫

ゴラオン兵士「聖戦士様! 哨戒のアリサ様が敵機に捕捉されました! 救援をお願いします!」

珠姫「はいっ!」

紀梨乃「タマちゃん、私もボチューンで出るよ!」

チャム「私もいくぅーっ」

 珠姫とチャムがダンバインに、紀梨乃がボチューンに乗り込む。

珠姫「ダンバイン、行きます!」

紀梨乃「ボチューン、いっくよぉーっ!」

 オーラ力の光りをブースターから噴きながらオーラバトラーが発進していく。

なのは「アリサちゃん、大丈夫かな……」

すずか「コア・ファイターの速さならそう簡単に追いつかれないと思うけど……」

ハロ「ハロハロ、アリサハロハロ」


 北米大陸 ジオン軍攻撃空母 ガウ

ガルマ「ゴラオンの偵察機を発見したか!」

ジオン兵「はっ! ただいまドレイク軍のウィル・ウィプスが追撃体制に入りました!」

シャナ「手柄を横取りされるのを見ている手はないわね」

ガルマ「うむ! ガウの発進準備をさせろ!」

ジオン兵「はっ!」

 部屋からジオン兵が出て行く。

シャナ「私は一足先に出て、モビルスーツと白服のやつを捜すわ」

ガルマ「行ってくれるのか?」

シャナ「今の私はお前の部下よ」

ガルマ「そうだが、元々はドズル兄さんの直属だ。私がガウでやろう」

シャナ「私にも、プライドというものはあるのよ」

 刀を抱えて睨みつける〝親友〟に、ガルマは目にかかる前髪を弄って笑った。

ガルマ「やられっぱなしにはいられないということか、フフフ」

シャナ「発見したら、通信くらいはいれてあげるわよ」

ガルマ「頼んだぞ、シャナ」

シャナ「勝利の栄光を君に」

 ウィル・ウィプスの艦隊に混じってジオンのガウが発進した頃、アリサはドラムロから逃げ回っていた。

アリサ「しつっこいわね!」
 
 ドレイク軍のドラムロは九体にまで増えていた。雁行型の編隊を組んで、オーラショットを撃ち続けている。

アリサ「こんのぉっ!」

 ぎゅぅんっ! 操縦桿を力いっぱいに倒して降下する。
 頭上を抜けていくオーラショットの威圧にぶわっと汗が吹き出る。

 だが、レーダーが新たな敵の到来を報せていた。
 どうやら、考え事をしている最中に深く敵陣に入り込んでしまっていたらしい。
 通信が繋がっていただけでも幸運だ。

 ビランビーやバストールまでいる新たな部隊はアリサを取り囲むように展開している。

アリサ「さ、さすがのアリサちゃんも大ピンチ……?」

 とはいえ、コア・ファイターとオーラバトラーの大きさはほぼ同じである。
 直線移動の速さでは勝っているし、武装の30ミリバルカンもなめし皮であるオーラバトラーの装甲にも立ち向かえる。

アリサ「な、なのはやすずかにばっかりいい格好させてらんないわよね!」

 ぐおぉんっ! 機体を持ち上げて正面のビランビーに向けてバルカン砲を撃つ。

アリサ「どきなさいったらーっ!」

ドレイク兵「う、うおぉぉっ!? こ、コンバーターがぁ!」

 ガガガガガガッ! バルカンにやられるドレイク兵。

アリサ「へへーんだ!」

 ビランビーを墜落してできた編隊の穴からアリサのコア・ファイターが抜け出る。
 だが――

トッド「好きにやらせるかよ!」

アリサ「キャアァァァッ!」

 トッド・ギネスがレプラカーンとともにコア・ファイターの上に乗っかっていた。

 逆手に持った剣がコクピットに切っ先を向けるのを見上げて、アリサは真っ青になった。

アリサ「ちょ、ちょっと……冗談でしょ……?」

トッド「冗談で戦争ができるかよ!」

 剣がコクピット目がけて振り下ろされる!

アリサ「死んだっ!?」

 ぎゅっと目を瞑ったアリサ。だが、いくら待っても手配済みの死は訪れなかった。

トッド「ちっ!」

 舌打ちの後、ぐんと機体が軽くなった。何があったかわからないが、レプラカーンが離れていく。

珠姫「トッドさん!」

トッド「現れやがったなぁ、ダンバイン!」

 オーラショットから煙を吐きながらダンバインが急速に接近してきた。
 剣が刺さる直前に撃って助けてくれたのだ。

 ダンバインとレプラカーンは機体の姿勢を整えると、すぐに剣をぶつけあった。
 
トッド「ノコノコと出てきやがって! やっぱりオマエも地上で戦うってのかよ、タマキ!」

珠姫「そんな風に憎しみを人に圧しつけて!」

 ガキィンッ! ダンバインの横払いの一撃を縦に構えた刃の柄で絡みとる。
 ガッ! バキッ! 剣を受け流したレプラカーンが左拳を固めて下顎を殴りつけた!

珠姫「うぐっ!」

 呻く珠姫にトッドが吠える。

トッド「アメリカは俺のホームだ! てめぇらジャップに踏み荒らされてたまるかよ!」

珠姫「バイストン・ウェルやジオンの人達が破壊しているのはどうするの!?」

 バシュッ! ワイヤークローがレプラカーンの首にくくりつき、一挙に距離を縮め、
 ガシュィッ! ダンバインの鋭い太刀筋がレプラカーンの右肩の鎧を掠め取る!

トッド「奴らはアメリカをこれ以上荒らさないと約束してくれたよ! ガルマもお坊ちゃんだがいい奴だぜ!」

珠姫「そうやって打算ばかり受け取って! オーラマシンがバイストン・ウェルから浮上した理由を考えないの!?」

トッド「おふくろに心配かけただけ、無駄だったってことさ!」

珠姫「また打算! あなたはーっ!」

チャム「タマキぃ!」

 ガッ! ガガガッ! バキッ! ドドシュゥッ!
 剣戟の火花が舞い、機体をぶつけあい、オーラショットを撃ち合っていく。

トッド「所詮、オマエとはこうなる運命だったのさ! ジャップ!」

珠姫「あなたが戦いをやめないから!」

チャム「なんだか恐いよぉ、タマキぃ!?」

 チャムが恐怖するのも無理からぬこと。
 珠姫の形相は凄まじい剣幕で、普段の彼女からは想像も出来ないぐらいに声を枯らしているのだ。
 
 ダンバインを通してオーラ力が目に見えるくらいに溢れている。

トッド「なめるなよ! 俺だってオーラ力は上がっているんだぜ!」

 呼応するようにレプラカーンからもオーラの光りが溢れて機体を包み込んでいく。

 二人はまた激しく打ち合う。その度にオーラが弾けて消える。

 一方、ゴラオンはウィル・ウィプス艦隊と遭遇して、これと交戦していた。

 互いにオーラマシンを出し合い、高度での戦闘を繰り広げながら、地上ではジオン陸上部隊と戦車部隊が戦っている。

なのは「シュートッ!」

ジオン兵「ぐおおぉっ!?」

 なのははゴラオンから出た戦車と歩兵部隊に混じって魔法で敵を牽制させている。

すずか「当たって!」

 ドウッ! すずかが乗るガンダムもゴラオンの直俺に回りつつ、大型車両などを破壊していく。
 ゴラオンは浮上の機会を逃して、大地に鎮座している。

エレ「エイブ艦長、このままでは地上の被害が大きくなってしまいます。どうにかなりませんか」

エイブ「しかし、敵が取り付いている今、上昇しては迎撃にあたっている乗務員に影響が出ます」

エレ「それなら……あの山陰に入ってはどうでしょう。オーラバリアも上からの攻撃に集中させることができます」

エイブ「わかりました。ゴラオンを発進させろ!」

 ゴラオンが動きはじめたとき、後方のガウから先行してきたシャナがガンダムを捉えた。

シャナ「見つけたわ、連邦の白いヤツ!」

 シャナは炎を身に纏い、ガンダムに突撃していった。

すずか「炎が迫ってくる!?」

なのは「あれは、シャナちゃん!?」

シャナ「たぁーっ!」

レイジングハート「protection」

 シャナの刀がなのはに当たる直前、レイジングハートが防御魔法を発動させる。
 贄殿遮那がそれをすぐに粉砕させるが、刀の行き先はわずかにブレてバリアジャケットを切るだけに終わった。

なのは「シャナちゃん、やめて!」

シャナ「うるさい! 気安く私の名前を呼ぶな!!」

なのは「くっ……ディバイーン・シューター!」

 なのはの背中から光りの球が三つ放たれる。湾曲して空を飛ぶ光球がシャナに向かっていく。

シャナ「遅い!」

 シュパァッ! 刀の二振りでディバイン・シューターは三つともかき消えていった。

シャナ「連邦の新兵器の力はそんなものか!?」

なのは「きゃあっ!」

すずか「なのはちゃん!」

 ガンダムの頭部をシャナのほうへ上げてバルカン砲を撃つ。
 少女程度の大きさのものなどまともにレーダーで映すことなどできやしないが、ばらまくように撃ちまくった。
 リュウが乗るコア・ファイターは上空でオーラマシンと戦っている。その支援が受けられない。

シャナ「モビルスーツの性能差が、戦力の決定的な違いではないことを教えてやるわっ!」

すずか「こ、こっちに来る!?」

シャナ「落ちろぉーっ!」

アリサ「させるもんですかぁーっ!」

 ガンダムとシャナの間にコア・ファイターが割って入ってきた。
 帰還してきたアリサがそのまま突撃してきたのだ。

シャナ「ちっ……あれは!?」

 忌々しげにコア・ファイターを見やったシャナの目が大きく見開かれる。

シャナ「アルテイシアが……くぅっ!」

 コア・ファイターのコクピットに座っているアリサを発見した途端、シャナは頭が痛くなった。

なのは「シャナちゃんの動きが……それなら!」

 それを確認したなのはがディバイン・シューターを撃つ。

シャナ「くぅぅっ!」

 頭を抱えるシャナは、それでもシューターを回避して空へ距離をとった。
 ゴラオンが移動していくのを見て、ガウへ通信を入れた。

ガルマ「シャナか?」

シャナ「ゴラオンを発見したわ。私たちに背を向けて山間へ逃げていくわ」

ガルマ「そうか!」

 ガルマの弾む声にシャナは内心でほくそえんだ。
 実際はゴラオンは回頭せずに後進している。

シャナ「私がモビルスーツとオーラバトラーをひきつける」

ガルマ「わかった。我々がゴラオンを沈める」

シャナ「逃さないでよ。十字勲章ものの相手よ」

ガルマ「へまはしないさ。イセリアの前だ」

 シャナはそれ以上は聞かずに交信を切った。

シャナ「利用させてもらうわ」

なのは「シャナちゃん!」

 ひゅおんっ! シャナを追いかけて上昇してきたなのはの光球を鮮やかに回避する。

シャナ「ちょろちょろと!」

 白服のヤツとは相性が悪い。こっちの攻撃は逸らされるし奔放な軌道の球がイヤだ。

シャナ「馴れ馴れしいのよ!」

 シュパァッ! 水平に構えた鞘から抜き放つ。

なのは「きゃっ!?」

 相手がひるんだ隙に脇を通り抜けて、加速。進む先にいる敵オーラバトラーに刃を向けた。

ゴラオン兵「な、なんだ!?」

シャナ「沈めぇっ!」

 ズバッ! シャナの一閃の前に、ゴラオン量産型オーラバトラー、ボチューンの首が飛ぶ。

アリサ「やめなさいよっ!」

 コア・ファイターのアリサがバルカンと共にシャナを追ってきた。

シャナ「またっ……アルテイシア……ッ!」

 その声をマイク越しに拾ったアリサは思わず叫んだ。

アリサ「やっぱり……アンタは……いや、あなたは私の――」

シャナ「言うなっ! ここは戦場だ!!」

すずか「アリサちゃぁん!」

 ギュオッ! コア・ファイターが落とされると思ったすずかがビーム・ライフルをシャナに向けて撃った。
 それをシャナは大きく円を描く動きで避ける。

なのは「シュートッ!」

 ディバイン・シューターが飛び掛かる。
 シャナは戦場の端で列を成しているガウとドップを見つけた。

シャナ「頃合いね」

 光球を叩き落すと、最大速度を出して戦線から離脱していった。

アリサ「ちょっと、待ちなさいよ!」

すずか「アリサちゃん、ダメだよ! もう燃料もないでしょう!?」

アリサ「うぅっ……」

 たしかに、コア・ファイターの計器はいずれも臨界に達しかかっていた。
 仕方なく、速度を緩めてガンダムの近くに着陸していく。
 シャナの姿はもう見えない。また、ふたりは離れ離れになっていく。

 ガルマ・ザビが率いるジオン飛行部隊は、ゴラオンが隠れている山間に近づいていた。

ガルマ「ビーム砲を開け、全機、攻撃スタンバイ」

 彼の予想では、ゴラオンは尻を向けているはずだ。
 800メートル級の巨大戦艦でも、後ろを取ればまともな反撃はできまい。

エイブ「エレ様、敵艦隊が接近してきます」

エレ「副砲、その他使える砲門は射撃体勢を整えよ」

 だが、ゴラオンはガウの針路に対して正面を向いていた。
 主砲のオーラノバ砲は使えないとはいえ、その威力は70メートル級のガウでは相手になるまい。

 それを、ガルマは接触する瞬間まで、まるで考えていなかった。
 ゴラオンが背を向けていると情報を流したのは、他ならぬ彼の親友だったからだ。

シャナ「ガルマ、聞こえている?」

ガルマ「シャナか。これからゴラオンを落とす。君も見に来るといい」

シャナ「残念だけど、それはできないわ」

ガルマ「そうか」

シャナ「アンタに、ゴラオンは落とせないから」

ガルマ「なんだと!?」

ジオン兵「が、ガルマ様!」

 驚愕するガルマをオペレーターの裏返った声が遮った。

ジオン兵「ゴラオンの艦首が、こちらを向いています!!」

ガルマ「なにっ!?」



エレ「全砲門、撃て!」

 ガルマがシャナから戦場に目を移したとき、ゴラオンの砲口が火を噴いた。

ガルマ「うわーっ!!」

 チュドォッ! ズドドドドドドオン!!

ガルマ「じょ、上昇だ! 上昇しろ!」

ジオン兵「む、無理です!」

ガルマ「シャナ! これはどういうことだ!?」

 ガルマの怒号に、モニターの中のシャナは愉快そうに笑っていた。

シャナ「ふふふ……ガルマ、聞こえていたら、自分の生まれの不幸を呪うがいい」

ガルマ「なにっ、不幸だと!?」

シャナ「そう、これは不幸なことなのだよ」

ガルマ「謀ったな、シャナ!」

イセリナ「ガルマ様!」

 白磁の美貌からさらに血の気を落とすガルマの背中に、イセリナがしがみついてきた。

ガルマ「い、イセリナ!?」

イセリナ「ガルマさま!」

シャナ「フフフ……イセリナ様には悪いことをしてしまったな。まあ、君の家族もいずれ君たちの許へ向かう。式はそこで挙げてくれたまえ」

 ガルマは何か背筋がぞっとする思いがした。

ガルマ「シャナ! お前は何者だ!? お前はシャナではない!」

 そう言われたシャナは虚を突かれたように目を見開いたが、すぐに余裕の表情を浮かべた。

シャナ「……君はいい友人だったが、君の父上がいけないのだよ。フフフフ……ハハハハハハハハハ」

ガルマ「シャナ! ち、違う、貴様は……っ!?」

 ブリッジのすぐ下に、オーラキャノンが直撃した。
 衝撃で映像が途切れた。だが、まだ音声は繋がっているようで、高笑いが聞こえている。

イセリナ「ガルマ様!」

ガルマ「イセリナ、君は逃げてくれ」

イセリナ「ガルマ様は!?」

ガルマ「私とて、ザビ家の男だ。無駄死にはしない」

イセリナ「イヤ! 私もガルマ様と共に!」

シャナ「いよいよ、君たちはめでたいな。ハハハハハハハハ」

ガルマ「黙れ! うわっ!」

 大きな爆発がブリッジを巻き込んだ。辺りが炎に包まれる。もはや撃墜は免れぬだろう。
 ガルマは傍らのイセリナを強く抱きしめた。
 オーラキャノンが目の前に迫ってきているのをみて、彼は叫んだ。

ガルマ「ジオン公国に、栄光あれーっ!」

 その言葉を最後に、ジオン飛行部隊は全滅した。

シャナ「フフン、お坊ちゃんらしいよ」

 ただ、遺言としては最もふさわしいものだと思った。本国に伝えてやるぐらいはしてやろう。
 シャナはドレイク・ルフトに回線を開いた。

ドレイク「何用か?」

シャナ「我らが司令官ガルマ・ザビ大佐が撃墜されました。兵をお引きください」

ドレイク「……よかろう」

 ドレイク・ルフトは何か言いたげだったが、問うても仕方のないことだと思ったらしく、口を閉じた。

 撤退命令が出たにも関わらず、トッドはレプラカーンを後退させなかった。
 それが、余計に珠姫の癪に障った。

珠姫「まだ戦うというのなら!」

トッド「どうするってんだよ! 甘ちゃんのジャップが!!」

珠姫「そこから引き摺り下ろしてみせる!!」

 ズオオオォォォォォォッ――……珠姫の強力に膨れ上がったオーラ力がダンバインの剣に収束していく。

トッド「な、なんだッ!? ダンバインの剣が巨大に!?」

 幻覚ではなかった。ダンバインの剣は確かにその長さを増し、全長の三倍ほどになっていた。

チャム「タマキぃ!? タマキが恐いよぉ!」

紀梨乃「どうしちゃったの、タマちゃん!?」

珠姫<気合>「はあぁぁぁぁっ!!」

トッド「ちきしょうっ! そんな虚仮おどしにやられるかよぉ!」

 防御の型に剣を構えるレプラカーン。
 ダンバインは長大になったオーラソードを両手に握り、鳩尾に柄頭を置いた。
 そして、切っ先は真っ直ぐ、正面に向けられる。

トッド「なんだ……っ!」

 こめかみから流れる汗が目尻に入り、まばたきをした一瞬、ダンバインの姿は消失していた。

トッド「どこに――ッ!?」

珠姫「突きィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」

 晴天を切り裂かんばかりの雄叫びと共に現れたダンバインのオーラソードがレプラカーンの首に突き刺さった!

 ザシュゥッ! 既に半ばまで貫いているオーラソードの音が遅れてトッドの耳に聞こえてきた。

トッド「ば、バカなっ……!?」

珠姫「ぜぇ、ぜぇ……」

 オーラソードが、砂のようにきらめきを散らして小さくなっていく。
 同時に、レプラカーンは墜落を始め、珠姫の瞳が濁りを湛えていった。

チャム「た、タマキ! ダンバインのコントロールがぁ!? 落ちちゃうぅ~!」

紀梨乃「タマちゃん!」

 ふらふらとレプラカーンに続こうとしたダンバインを、紀梨乃のボチューンが支える。

紀梨乃「タマちゃん、大丈夫!?」

珠姫「は、はい……ありがとう、ございます……」

 だが、チャムが異変に気づいた。

チャム「ねぇ、あそこを見て……」

 珠姫がチャムの指さしたほうを見ると、散らばっていたきらめきが滝のような流れを作っていた。

チャム「オーラの光りが集まってるよ……?」

 オーラの光りは、珠姫が放ったものだけではなく、戦場に広がっていた全てのオーラ力を束ねて大地に降り注いでいる。

紀梨乃「な、何が起きてんのさ?」

 上昇したゴラオンから見ていたエレは、慄いていた。

エレ「悪意のオーラが……あそこに集まっていきます」

 そして、一番早く気づいたのは、高町なのはだった。

なのは「魔力反応……もしかして!」

レイジングハート「Yes.That,s a juelseed №Ⅹ」

 回答は、発現と同時だった。

 バキバキバキバキバキッ!!

すずか「きゃあぁっ!」

アリサ「な、何よ、アレは!?」

 ジャックとマメの木みたいだった。
 ツインタワービルと同じくらいの巨大な樹が、戦場の荒野に突如出現したのだ。

なのは「ジュエルシード……地球にも!?」

 オーラ力で覚醒したジュエルシードの膨大な魔力で暴走した枝葉が、近くのオーラマシンを巻き込んでいく。

珠姫「うあぁっ!」

紀梨乃「にゃあぁぁっ!」

なのは「み、みんなが……ここからじゃ間に合わない……!」

 どうにかしなければ……しかし、ジュエルシードが見えない。

なのは「私にできること……」

 ジュエルシードの暴走を止めるに、魔法による直撃鹵獲で封印するしかない。

 だが、そのジュエルシードに近づけないのでは……

なのは「どうすれば……どうすればいいの……?」

 凶悪な大樹は枝と根で、あたり一面を埋め尽くしていく。
 すずかやアリサ、ゴラオンにまで近づいていく。

なのは「私に……教えて! レイジングハート!」

レイジングハート「Alllight my muster」

なのは「!」

 なのはの呼びかけに、杖が応えた。

レイジングハート「shooting mode」

なのは「レイジングハート……?」

 赤光を放つ杖の形状が変化していく。
 円形の先端が、槍の穂先に、 
 薄桃色の魔力翼が広がる。
 左手の前に、トリガーが出現し、なのはは小さな手で強く握りしめた。

レイジングハート「Divine buster.Stand by」

なのは「レイジングハート……いいの?」

レイジングハート「I believe in my muster」

なのは「……うんっ!」

レイジングハート「Let's shoot it, Divine buster」

なのは「いくよ、レイジングハート!」

レイジングハート「Alllight my muster」

 大きな魔法陣がなのはの足元に描かれる。
 魔力光のリングが形成され、レイジングハートの先端に薄桃色の粒子が収束していく。

なのは「ディバイン――」

レイジングハート「Divine buster」

なのは「バスタァーッ!!」

 細いの先行放出が大樹の幹を捉えた。

 次の瞬間、先行した一条をレールにした大威力の魔力砲がなのはの小さな体を媒体にした帯状魔法陣から発射される!

エイブ「エレ様!?」

エレ「安心なさい、エイブ艦長。あの方の、善き力が……悪しきオーラ力を和らげてくれます」

 ゴラオンのハイパーオーラキャノンにも匹敵する質量の砲撃が、巨樹を包み込んでいく。

レイジングハート「seeling mode」

なのは「リリカル・マジカル――ジュエルシード・シリアルⅩ!」

レイジングハート「seeling」

なのは「封印!」

 なのはの一声で一瞬、巨樹が大きく膨らみ、爆散した!
 ジュエルシードの力を失った樹は、跡形もなく消え去っていく。

なのは「ふぅ……」

レイジングハート「Mission complete.Thank you my muster」

なのは「……いろんな人に、迷惑かけちゃったね……」

レイジングハート「Sorry. This fault is mine」

なのは「レイジングハートのせいじゃないよ……私も……私、ジュエルシードのこと……忘れちゃってたんだ」

 バリアジャケットを解いて、なのははガンダムとコア・ファイターを見上げた。

なのは「すずかちゃんとアリサちゃんに、魔法のひみつを打ち明けることができて……それで誰かの役に立てるってわかって、嬉しくって、忘れちゃってたんだよ……」

 コクピットから降りてくる小さな影。とっても大切で、守りたいもの。

なのは「でも……私にこの力をくれたレイジングハートのことを忘れちゃってたんだ……ごめんね、一番大事にしなくちゃいけないことなのに……」

レイジングハート「It,s so」

なのは「……」

レイジングハート「But.There is something that it is necessary to evaluate it from it」

なのは「レイジングハート……?」

レイジングハート「――Friendship」

なのは「……ありがとう、レイジングハート」


 第十話 衝突! それは、忘れることの出来ない想いなの 完



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