2009年09月12日 10:20
アニヲタの集い-3rd style-
116.やまとID:UwhnxOz48Q
【これまでの仮面ライダーディケイドSSは】
カミナ「俺を誰だと思ってやがる!!」
シモン「凄いのはアニキだよ」
士「一人立ちしろよ」
ユウスケ「新しい……ライダー?」
士「俺が使っても構わないだろ」
カミナ「アイツは大丈夫だよ」
士「アイツらは全ての問題を自分で解決するさ」
カシャシャシャシャシャシャ
冬。かれこれ半年以上SOS団でやっかい事に巻き込まれて来たので、だいたいの事には動じないようになった感じがする今日この頃。
確かに結構慣れてきたんだが、それでも次の事件までもうちょっと間を開けてもバチは当たらないんじゃないかと思うんだがね?
?「今日から俺が、SOS団の顧問だ」
そんな事を言って、校内では天上天下唯我独尊で有名な涼宮ハルヒの指定席であるSOS団団長席に堂々と腰をかける新任教師を見ると、俺はそう思わずにはいられなかった。
やれやれ。
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116.やまとID:UwhnxOz48Q
【これまでの仮面ライダーディケイドSSは】
カミナ「俺を誰だと思ってやがる!!」
シモン「凄いのはアニキだよ」
士「一人立ちしろよ」
ユウスケ「新しい……ライダー?」
士「俺が使っても構わないだろ」
カミナ「アイツは大丈夫だよ」
士「アイツらは全ての問題を自分で解決するさ」
カシャシャシャシャシャシャ
冬。かれこれ半年以上SOS団でやっかい事に巻き込まれて来たので、だいたいの事には動じないようになった感じがする今日この頃。
確かに結構慣れてきたんだが、それでも次の事件までもうちょっと間を開けてもバチは当たらないんじゃないかと思うんだがね?
?「今日から俺が、SOS団の顧問だ」
そんな事を言って、校内では天上天下唯我独尊で有名な涼宮ハルヒの指定席であるSOS団団長席に堂々と腰をかける新任教師を見ると、俺はそう思わずにはいられなかった。
やれやれ。

【世界の破壊者、ディケイド……関係ない世界を巡り、その瞳は何を見る】
レンズ越しに~(以下略)
変三話「SOS団 S.O.S!!」
朝。冬の寒さに震えながら一限目の数学の前の僅かな時間を、後ろの席に座っている年中高気圧状態の我らが団長様と、自分の意見は突き通すうえこちらの意見は総スルーというSOS団活動内容会議になっているのかいないのか分からん会話をしていると、見慣れない教師が入ってきた。
俺を含めた多数の生徒が困惑の表情浮かべて見つめる中、その教師は教壇まで歩いていき、俺たちに向かい合うとこう言った。
?「○○先生はインフルエンザで休みになった。
そういう訳で、今日からしばらくの間お前らに数学を教える事になった新任教師の、門矢……士だ」
言いながら、門矢士なる新任教師は黒板にやたら大きく自分の名前を書いた。
自己顕示欲が強いのかね。
士「喜べ、俺が教えてやるんだ……
○○先生が復帰した時には全員テストで百点取れるようになってるぞ」
どっかの誰かさんみたいに、やたら自信たっぷりな教師だ。
士「それじゃ、授業を始めるぞ。教科書を開け」
新任教師なんだから、自己紹介でもやって時間を潰してくれればいいものを。
落胆をため息で体外に逃がして、俺は教科書を開き……十数分後には夢の世界へ旅立った。
ハルヒ「ムカつく教師ね」
数学の授業の後、ハルヒはそんな事を言い出した。
そりゃそうだろうね。
普段人に好き勝手命令しているお前が、あのやたら偉そうな教師を気に入るわきゃないだろうよ。
同族嫌悪かどうかは分からんが、人の振り見て我が振り直せって諺に習ってみたらどうだ?
ハルヒ「アタシをあんなのと一緒にしないでよ、失礼ね」
正直違いが分からんが、俺は適当に相づちを打っておいた。
ハルヒ「でも、他の教師と違って授業は分かりやすくやってたわね。性格には問題あるけど」
ほほぅ、性格に難ありのくせに実力はある訳か。
ますます似てるな。
この時はそんな風に、大して気にせず日常の変わった一ページくらいに思っていたのだが、放課後になって俺は思い知らされた。
いよいよ“アレ”がやって来たのだと。
放課後。
ハルヒと一緒にSOS団の制圧下に置かれた文芸部室に向かった俺は、ハルヒが無遠慮に扉を開けるのを避けるため、さっさと扉の前に向かいノックした。
さて、今日は朝比奈さんのラブリーヴォイスか、それとも長門の無言の了承かと返答を待っていたのだが、俺の耳に届いたのは聞きなれない男の声だった。
?「おう、入れ」
いつもの1.4倍くらいの早さで室内に入った俺が見たのは、困り顔の朝比奈さんと、珍しく本を読んでいない長門と、
?「よう、来たな」
そう言いながらハルヒの指定席であるSOS団の団長席に腰を下ろした新任教師、門矢士だった。
ハルヒ「ちょっとアンタ!! 何やってんのよ!!」
教師相手でも遠慮なく声を荒げたハルヒが、俺を通り越して門矢の方へ向かう。
士「椅子に座ってる」
教師を教師と思わぬ態度のハルヒを目の当たりにしても全く動じない門矢は、団長席に座ったままそう答えた。
やはり、ハルヒ並に変わった人物らしい。
ハルヒ「そんなの見りゃ分かるわよ!! なんでアンタがアタシの団長席に座ってるの?」
怒りを隠そうともしないハルヒの威圧を全く無視し、門矢はハルヒの鼻先に指を突き付けた。
ハルヒ「……なによ?」
士「喜べ。今日から俺が、SOS団の顧問だ」
俺を含め、長門以外の全員が呆気に取られた。
というのが冒頭までのあらすじである。
ハルヒ「はぁ!? アンタ何いってんの?」
士「だから、俺がお前らSOS団の顧問になってやるって言ったんだ。同じ事を二度言わせるな」
門矢は厳かに立ち上がり、驚愕中の俺たちを更に驚愕させる事を言った。
士「それはそうと……涼宮。
お前、ここに入学した時、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者に会いたいって言ったらしいな」
ハルヒ「それが何?」
士「喜べ、俺がその異世界人だ」
ハルヒ「…………」
室内の空気が、硬直した気がした。
いや、少なくとも俺と朝比奈さん(長門は驚いちゃいないだろう)の空気は硬直していた。
ハルヒは何言ってんだコイツと言いたげな顔で門矢を睨んでいたが(入学時にあんなこと言ったお前も同類だろうに)、俺たちは門矢が異世界人だという事を疑いはしなかった。
世界を意のまま……というと語弊があるが、ともかく世界を望み通りに改変できるハルヒが、入学時に会いに来いと言った中で唯一未登場の存在。
そいつがいよいよやって来たのだ。
ハルヒ「……アンタ馬鹿なの?」
唯一、全く信じていない(それが当然だが)ハルヒは怒り眼を本物の馬鹿を見る目に変えていた。
お前も似たようなことを言ったんだから、そいつが馬鹿ならお前も馬鹿という事になるぞ。
いや、門矢の方はまだ冗談とも取れる分お前の方がひどいな。
冗談……そうだ、まだ門矢が異世界人だと確定したわけじゃない。新任教師の他愛ない冗談という可能性もあるじゃないか。
士「ま、信じる信じないはお前の勝手だが……とにかく俺はお前らの顧問だから、
これからはやる事なす事全て俺を通せ。以上」
言いたいことを言って門矢はさっさと部室を後にした。
丁度部室の扉で門矢と入れ代わりに古泉が入って来ると、古泉は俺にアイコンタクトを取ってきた。
くそ、分かりたくないが分かってしまう。
ハルヒ「…………あ。ちょっと、待ちなさいよ!!」
珍しく呆然としていたハルヒは、我に返るやいなや門矢を追って走って行った。
ハルヒが思いっきり扉を閉めた後、ハルヒの足音を最後に室内はしばらく無音になった。
古泉「ちょうどいいですね。話があります」
「なんだ」
古泉「分かっているでしょう?」
古泉は得意の0円スマイルを崩さず続けた。
古泉「門矢士について、です」
分かってはいたが、やっぱり冗談では無かったらしい。
古泉「涼宮さんがいつ戻って来るかわかりません。手短に分かった事だけ言いましょう」
そう前置きして、古泉は機関で調査した内容を語り出した。
古泉「まず彼……門矢士なる人物の経歴ですが、一切不明でした」
これについて、俺は特別驚きはしなかった。何せ異世界人(自称)だ。今までは別世界で過ごして来たんだろうよ。
古泉「えぇ、多分そうでしょう。ただ、おかしい事があります」
おかしいのは全部だろ。
古泉「門矢士という人間が、この世界で生きてきたという記録は一切ありません。
しかし、おかしな事に彼はちゃんと教師になっています。
取った記録のない教員免許を持ち、あたかも前から決まっていたようにこの学校の新任教師に。
まるで“彼はそういう設定だ”と言わんばかりに」
「どういう事だ?」
イマイチよく分からない俺に笑みを返し、古泉はさらに続けた。
古泉「つまり、異世界の住人である彼がこの世界にやって来た瞬間
『彼は教員免許を持った新任教師で、これから北高に勤める』
というプロフィールが出来上がった、という訳です。その過去に関わらず……ね。
もっとも、これが涼宮さんの力によるものなのかは分かりませんが」
「…………」
まぁ、デタラメなのは今に始まった事じゃない。
夏休みを10000回以上繰り返したり、目からビームやレーザーを出すより常識的な気がする。
……俺も相当毒されてきたな。
「しかし……異世界人、ねぇ……」
古泉「異世界人と言っても、どうやら彼は我々と同じような世界からやって来たらしいですね」
頭の中に異世界、いわゆるファンタジーゲームみたいな剣と魔法の世界をイメージしていた俺は肩透かしをくらった気分だった。
古泉「貴方も聞いた事はあるでしょう。パラレルワールド、並行世界。
我々の世界とは似て非なる世界です」
「まぁ何となく分かるが……」
だったら、あの門矢士とかいう奴は何しに来たんだ?
他の世界から来たというプロフィールを除けば、普通の人間じゃないか。
未来人みたいに過去に影響された理由を調べに来たわけじゃないだろう。
自分から異世界人を名乗る辺り、古泉たちみたいにハルヒに静かに生きて欲しいって訳でもない。
朝倉……情報思念体の急進派みたいに、ハルヒの力を研究したいのか?
にしちゃあ異世界人の証拠も見せず消極的だ。
「長門、お前の親玉はアイツについて何か知ってるのか?」
長門「知っている」
長門は静かに話し出した。
長門「彼の目的は涼宮ハルヒであって涼宮ハルヒではない」
「何だそりゃ?」
長門「彼の目的は複数の並行世界を巡る事。
この世界の重大要素である涼宮ハルヒに関わろうとしているが、
私たちのようにその力の内容について関心を持っている訳ではない。
彼にとって、涼宮ハルヒの力の本質は重要ではない」
何か分かったような分からんような中途半端な気分だ。
「ちなみに、その並行世界ってどれくらいあるんだ?」
長門「人間の扱う数値では表現しきる事は困難」
ようはそれだけ沢山あるらしい。
「俺たちの世界と似た世界から来たってだけで、別に特別な能力は無いんだろ?」
この問いに対して、長門は首を横に振った。
長門「彼は他の人間とは異なる能力を有する。
正確には、この世界には存在しえないデバイスを用いて能力を使用する」
「何だ、そのデバイスって?」
長門「ディケイドライバー」
なんじゃそりゃ。
長門「仮面ライダーディケイドに変身するための装置」
…………。
俺と古泉はしばらく固まっていた。
朝比奈さんは何が何だか分からないらしく、愛らしい困惑顔で頭の上に疑問符を量産していた。
「いや、待て長門。いくらなんでもあり得ないだろ」
長門「事実」
分かっている。長門が嘘をつくとは思っていない。だが、それでも信じるには無理がある内容だ。
仮面ライダーだと?
「仮面ライダーって特撮だろ?」
長門「必ずしもそうではない。並行世界にはありとあらゆる世界が存在する。
仮面ライダーの世界もその中に含まれている」
…………。
長門「仮面ライダーに分類される者が存在する世界は、判明している限りで845873種。
亜種を含めば986325種。
また、同じ仮面ライダーの世界でも、詳細が違う物で1000000通り以上に分岐する」
それはまたとんでもない数字だな。
長門「仮面ライダーだけでなく、ウルトラマン、ガンダムなどの世界も存在する。
他にも、現存するドラマ、映画、ゲーム、アニメ、ありとあらゆる架空の世界、
またはそれに類似する世界も存在する」
「いや、でもそういうのは作り物だろ? 異世界だからって本当にあるのか?」
長門「ある」
とんでもない話をあっさり肯定された。
長門「どんな世界でも、認識されれば存在する可能性は生まれる。
可能性があれば異世界は存在する」
「…………」
例によってどういう理屈かはさっぱり分からんが、長門が言うんだ。
そういう事なんだろう。
この手の話が好きな古泉は、長門に質問しようとしていたが、廊下からズカズカという足音が聞こえてきたため口を閉じた。
ハルヒ「全く、なんなのよあの教師!!」
「どうだったんだ?」
ハルヒ「アイツ頭おかしいわよ! 自分の事『仮面ライダーだ』とか言ってんのよ? 精神異常者よ」
あの教師、あっさり言っちまったのか。まぁ信じないだろうから構わんが(俺も言った事あるしな)。
それはそうと、お前は自分の発言を棚に上げて酷い言い様だな。
ハルヒ「そんな事より、明日、市内散策するわよ」
どうやら、さっそく顧問に無断で活動する気らしい。
というより、顧問を無視したいから当て付けに活動するって感じか。
ハルヒ「とにかく明日、9時に駅前に集合よ!!」
この日の活動はそれで終了した。
帰りの道中。
先頭を歩くハルヒを中心とした女子グループからやや距離を置いた俺は、古泉と話していた。
「SOS団はハルヒが勝手に作った非公認団体だよな?」
古泉「えぇ、その通りです」
「では何故その非公認団体に顧問がつく。おかしいだろ」
古泉「全くその通りです。ですが、そういう事になっているのだから仕方ありません。
先ほどの話と同じです。彼は“SOS団の顧問”という設定なんですよ。
過去……SOS団の発足や現在の立場などは関係ないんです」
「…………」
やっぱりデタラメだ。
翌日の土曜日。
やはりいつもの様に集合場所に着いたのは俺が最後だった。
ハルヒ「さ、とりあえずいつもの喫茶店で予定決めましょ」
いつも思うんだが、予定は予め決めるんじゃダメなのか?
どうにも俺に金を払わせるために集まっているような気がしてならないんだが。
ハルヒ「その日の天候や気分で行くところは変わるのよ?
せっかくの休日、楽しい物にするのは現場で決めるのが一番なの!」
へいへい。
いいさ。もう慣れたからな。
いつもの喫茶店に向かった俺たちは、市内不思議散策の前に不思議を発見してしまった。
世界不思議発見!
ハルヒ「ねぇキョン。確かここよね? 喫茶店」
「あぁ、俺の記憶が正しければそのはずだ」
だが、俺たちの目の前には見慣れた喫茶店の代わりに『光写真館』という古めかしい見た目の建物が建っていた。
建て替えた、というには無理がある老舗だ。
ハルヒ「どうなってんの? 建て替えた訳じゃないわよね?」
ハルヒも困惑しているが、そこは行動力溢れるSOS団団長である。
「話を聞いてみましょ」と言ってさっさと怪しさ極まる写真館の中に入って行った。
もちろん俺たちも後に続く。
?「あ、いらっしゃい」
ハルヒ「ここって喫茶店じゃ無かった?」
?「ん? いや、見た通り写真館だけど……。でも、ここ美味しいコーヒーもあるよ」
店番らしい人の良さそうな青年は、そう言って奥を指した。
ハルヒ「……じゃあここにする?
不思議な所だし、もしかしたら何か超常現象が発生してるかも知れないわ」
マジでそんな感じだから止めろ。
?「じゃあこっちね。夏海ちゃーん、お客さんだよー」
?「はーい」
奥から響く女性の声を聞きながら通された先には、カメラや机が置いてあった。
そして、その机には“先客”が腰かけていた。
士「なんだお前ら。わざわざ顧問に会いに来たのか?」
オゥ、ジーザス。
店の主らしき爺さんに勧められるまま記念写真を撮ったあと(なぜが門矢も撮っていた)
予想以上に美味いコーヒーを飲みながら俺たちは門矢の話を聞いていた。
どうやら門矢はこの写真館に居候しているらしい。
士「で、お前らに聞きたい事があるんだが……この世界に仮面ライダーはいるか?」
ハルヒのみ「ハァ?」という顔をしたのは言うまでもない。
ハルヒ「アンタまだ言ってんの? 特撮と現実の区別もつかずによく教師になれたわね」
?「え……この世界にもライダーいないの?」
意外そうな声を出したのは、店番をしていた青年だった。
ハルヒ「……アンタも特撮と現実の区別ついてないの?」
?「特撮……なんだ、ここでも」
呆れ口調のハルヒの言葉に、店番青年が肩を落とした。
?「じゃあ、君たちもクウガ知ってるの?」
「クウガ?」
懐かしいな。確か平成ライダー(だっけ?)の最初のやつだ。
クウガ、アギト、龍騎ぐらいまで見てた気がする。
555の途中で仮面ライダーとサヨナラしたんだっけな……。
?「俺、そのクウガなんだよ」
青年は自慢げに自分を指差すが、そんな事大真面目に言われても困る。
士「ユウスケ、この世界でもライダーは架空の存在だ。言ったって変な目で見られるだけだぞ」
?「うぅ……寂しいなぁ……」
どうやら店番青年の名前は“ユウスケ”らしい。
確か、昔のクウガも“雄介”だっけ?
士「ま、いないならいないでやる事を探すまでだ」
古泉「やる事、とはどういう事なんですか?」
士「それが分かれば苦労はない。
毎回俺は色んな世界を巡って“俺がやるべき事”を探して実行している」
古泉「なるほど」
なるほど、とか言ってるがお前今の説明で分かったのか?
そんな俺の視線に気付いたのか、古泉は肩を竦めてみせた。
やっぱり分かってないじゃねぇか。
ハルヒ「ちょっと古泉くん。変人の話を何真面目に聞いてるのよ」
至極もっともな意見だが、休日返上して不思議現象を探している俺たちはどうなる。
ハルヒのこの言葉に腹を立てたのか、門矢が(偉そうに)椅子から立ち上がった。
士「フン、教え子に舐められるのもシャクだしな。証拠を見せてやる」
そういうと、どこからか変な物を取り出した。
ギリギリ手からはみ出す程度の大きさの白い機械だ。
門矢がそれを腹に当てると、明らかに質量保存の法則を無視したとしか思えないベルトが現れ、勝手に門矢の腰に巻き付いた。
それだけで、俺たちから見たら驚き物だったのだが(服を挟んじまったりしないのかね?)、門矢はさらにさっきの白い機械の両サイドを引っ張り、真ん中の部分を90度回転させた後、いつの間にか左腰にぶら下げていた白い四角い箱(弁当箱にも見える)を開き、一枚のカードを取り出した。
仮面ライダー、カード……龍騎か?
士「変身」
門矢がカードを90度回転した白い機械に入れた。
《カメン ライドゥ……》
機械から音声が流れる。
そして、門矢が90度回転したそれを元に戻すと
《ディケェイ!!》
まさしくあっという間だった。
一瞬で門矢の姿は灰色の仮面ライダー(?)に変わり、ベルトから現れた複数のカードが頭に刺さると、身体の一部が赤く変化した。
士「どうだ? これで俺が仮面ライダーだと分かったろ」
…………。
全員無言だった。
ハルヒさえ、一言も発せなかった。
士「……どうしたお前ら」
赤い仮面ライダー(?)を目の前にして、奇跡的に一番最初に口をきけるようになった俺は、辛うじてこう言った。
「マジかよ……」
「あぁ、マジだよ」
門矢が変身を解く。ヒーローが変身した直後に変身解除という光景は違和感ありありだったが、今はそんな事は些細過ぎる問題だ。
一応長門から正体を聞いていた俺たち(朝比奈さんは仮面ライダーとは何なのか分かっていらっしゃらなかったが)でさえ、この衝撃だ。いかなハルヒでもさすがに動揺していた。
ハルヒ「……本物?」
士「だからそう言っただろ」
ハルヒ「キョン、捕獲するわよ」
えぇ――――?
ハルヒさん何をおっしゃっているのですか?
ハルヒ「だから捕獲するのよ!! 仮面ライダーよ!? 本物の!!」
どうやらコイツの中では珍しい昆虫もグレイも仮面ライダーも同じらしい。
あの後、何とかハルヒを宥めた俺たちは写真館を後にして解散した。
ハルヒは「遂に面白い物を見つけた」
と歓喜していたが、わざわざ正体を隠して刺激しないようにしている宇宙人未来人超能力者にとっては困る事らしく、連中が困るような事態というのはすなわち俺が困る事態でもある
(今日の経費がコーヒー5杯分で済んだ事には感謝しているが)。
そんな訳で俺たちはいったん解散した後、ハルヒ抜きで再集合した。
古泉「どうやら、今回の彼……仮面ライダーディケイドでしたか、
彼の出現に涼宮さんは無関係のようです」
どうしてそう言い切れる。
古泉「貴方は彼をどちらだと思いますか? 異世界人か、仮面ライダーか」
「そりゃあ、どっちかと言えば仮面ライダーだな。何となくだが」
古泉「そう。彼は異世界人と言うより、仮面ライダーの役割の方が強いんです」
ややこしい。どっちか片方にすりゃいいのに。
古泉「つまり、涼宮さんが望んでいる存在ではありません。
彼が涼宮さんが望むはずのないSOS団の顧問……
彼女の団長という立場より上の存在である事も説明がつきます」
映画の時のような状況でもない限り仮面ライダーは現れないでしょう、と古泉は付け加えた。
古泉「問題は、彼が涼宮さんの思考を考慮しない事です。
もちろん、彼は涼宮さんの特異性を知らないでしょうから、悪気は無いのでしょうが……
彼の行動はまさしく“我々の世界を破壊する行為”と言っていいでしょう」
「なぜだ?」
古泉「以前お話したでしょう。
『涼宮さんに不可思議な現象が当たり前だと思われると、物理法則がネジ曲がる』と。
つまりそういう事です」
古泉はいつもの笑みを消し、真顔で言った。
古泉「涼宮さんが『仮面ライダーは実在する』
と思えば、本当に仮面ライダーがこの世界に現れるかも知れません。そして――」
そこまで聞いて、俺も気付いた。
しかし、いくらハルヒでも……
古泉「確かに、さすがに涼宮さんも望みはしないでしょう。
しかし“いるかも知れない”と思ってしまったら……確率は0ではありません」
「おいおい、冗談じゃねぇぞ……」
怪人が現れるかも知れないなんて。
長門の話では、まだこの世界には仮面ライダーも怪人もいないらしい(ディケイドを除く)。
古泉「ひとまず、対策を考えなければいけませんね」
そりゃそうなんだが、俺たちに出来る事があるのか?
古泉「わかりません。ですが、放っておく訳にもいかないでしょう。全く……困ったものです」
とりあえず、この日はそれで解散だった。
一応、古泉の方から門矢に事情を説明して、これ以上ハルヒに余計な事は言わないように頼むと言っていた(完全に手遅れな気がするが)。
帰りに、朝比奈さんに未来では仮面ライダーみたいに一瞬で姿を変える方法はあるのかと聞いてみたが
朝比奈「えっと……ちょっと似たような物くらいならあるんですけど、詳しくは禁則事項です……」
と困り笑顔で答えられてしまった。
まぁ、いいさ。未来にあったって現代にないんだったら関係ないしな。
古泉から緊急の連絡が来たのはその日の夜だった。
息を切らせて駆けつけたのは、公園(一番最初に長門に呼ばれた場所だ)だった。
当然の如く、俺以外の面子はすでに揃っている。
たまには俺の後から誰か来る所を見てみたい。
古泉「すいません。
正直、呼ぶ必要は無かったのですが、やはり直接見て貰った方が分かりやすいので」
「……で、まさか怪人が現れたとか言う気じゃないだろうな」
長門「そう」
答えたのは長門だった。
「……いるのか?」
長門「そこに」
長門の白い人差し指の示す先に目を向けると、そこにはマジで怪人がいた。
鋭い目付きに、堅いウロコ……甲羅? よくわからん固そうな肌をした明らかに人外な人型生物。指……というか肘から手首までが丸々鎌になっているあたり、進化の過程なんかすっ飛ばして完成品持って来ましたという空気満点である。
ようするに、如何にも仮面ライダーの敵っぽいって事だ。
しかし、おかしな事にこの怪人、全く動く気配がない。
ただ暗闇の中、木々の間で立ってるだけだ。
知らない人間から見たら、怪人の着ぐるみが置いてあるように見えるかも知れない。
まぁそんな事考える前にビビって逃げるだろうな。
少なくとも俺は。
士「さて、アイツを倒せばいいんだな?」
不意に声が聞こえてきたと思ったら、いつの間にか件の仮面ライダーが後ろに立っていた。
士「話はこの変な奴から聞いた。まぁ、原因が俺なら自分で処理するさ」
古泉が変な奴なのは異論ないが、せめてオブラートに包んでやれよ。
一応そいつもキャラ作って大変らしいしさ。
士「変身!!」
《カメン ライドゥ……ディケェイ!!》
見るのは二回目だが、やっぱ凄いな生変身。
門矢が変身すると、さっきまで無気力の極み状態だった怪人が意気揚々と襲いかかっていった。
俺たちは数メートル後ろで見学。
「どういう事だ? なんであの怪人、仮面ライダーを見てから暴れだす」
古泉「涼宮さんの理性の現れでしょう。仮面ライダーが存在するのであれば怪人も存在するはずだ。
だが、人が襲われるのは好ましくない。そういう彼女の内面が現れているのです」
なるほどね。
目の前で割りと接戦を繰り広げていた門矢が、怪人を蹴りとばして距離を開けたあと、別のカードを取り出した。
士「夜と言えば……コイツだ」
《カメン ライドゥ……キバァ!!》
瞬間、門矢の仮面ライダー……ディケイドだったか……が、全く違う仮面ライダーに変わった。
どっかで見たような気がしないでもない。
古泉「仮面ライダーキバですね。平成ライダー9作目のライダーです。モチーフはバンパイア。
キバとはキング・オブ・バンパイアの略だそうです」
「わざわざ調べてきたのか」
古泉「えぇ、情報は多い方がいいでしょう?」
そりゃまぁな。
古泉「本人の話では、あのディケイドというライダーは、平成ライダー全てに変身出来るようですよ」
「そりゃまたデタラメだな。チート過ぎやしないか?」
しばらく敵を殴った後、門矢はまたカードを取り出した。
立て続けに違う仮面ライダーに変身かと思ったが、どうやら違うらしい。
《ファイナル アタック ライドゥ……キキキキバァ!!》
「――――ッ!?」
その時、俺は奇妙な感覚を覚えた。
強迫観念のような焦りが俺の背筋を駆け巡り、嫌な汗が流れる。
それが何なのか、何を意味するのか分からないまま、気付いた時には俺はこう叫んでいた。
「ウェィク、アップッ!!!!」
パーパパパーパーパー♪
長門以外の二人、朝比奈さんと古泉が驚いていた。
朝比奈「キョ、キョンくん……どうしたんですかぁ?」
どうしたんでしょうね? 自分でもさっぱりです。
士「はァ!!」
門矢が必殺技(俗に言うライダーキック)を放ち、怪人は大爆発した。
なぜ生き物が爆発するかは聞くな。俺にも分からん。
「大丈夫かよ、夜中にこんな大爆発起こして」
長門「問題ない。この公園一帯はすでに隔離済み」
そりゃまた……ありがとうよ、長門。
士「さて、終わったな」
門矢が変身を解いて戻ってくる。
古泉「では、今後の事ですが……」
その後、明日以降のハルヒに対する対応について打ち合わせして俺は帰路についた。
結論から言おう。
ディケイドはやはりチートだった。
翌日の日曜日。
仮面ライダーについて詳しく知りたいという余計な好奇心が旺盛なハルヒは、再び写真館に訪れた。
そこで門矢は
《カメン ライドゥ……ゼロォウ!!》
《ファイナル アタック ライドゥ……ゼゼゼゼロォウ!!》
士「涼宮、仮面ライダーの事や喫茶店が写真館に変わった事は、全て夢だ」
これだけで(厳密にはもう少し色々と言ったが)ハルヒは昨日の出来事を夢だと信じ、昨日の市内散策はいつも通りイタズラに俺の金と時間を浪費して終了、帰りに門矢を見つけて写真館に案内され、コーヒーを飲んで帰ったと思い込んじまった。
いい加減デタラメが過ぎる。記憶を改竄しちまうとは一体どういうライダーだ。
聞いたことねぇぞ。
まぁ助かったがな。
正直記憶を書き換えるってのはどうかと思うが(夢だって思い込ませただけだが)、この場合は仕方ないだろう。
許せ、ハルヒ。
ハルヒ「……あれ? アタシ達、今日何でここに集まってのかしら?」
士「何でって……尊敬すべき教師、門矢士様の指示を仰ぎに来たんだろ」
ハルヒ「馬鹿じゃないの」
またバッサリ切り捨てたな。
その後、俺たちは門矢をスケープゴートにして事なきを得た。
ここが喫茶店のあった場所だという事がバレないよう、ハルヒに「裏口に珍しい物がある」と言って誘導し、裏口から帰った。その際に門矢がハルヒの暴力を受けたが、これは自業自得だ。
確かに珍しいけどさ、いくらなんでも爺さんの女装姿なんぞ用意するなよ仮面ライダー。
しかし、そう簡単に終わらないのが超時空トンデモガール涼宮ハルヒなのであった。
ハルヒ「アタシね……変な夢を見たのよ」
「……………………ほぅ?」
ハルヒ「門矢がアタシ達の前で……その……仮面ライダーに変身したり、
喫茶店が門矢の写真館に変わってたり」
「そりゃまたユニークな夢だな」
ハルヒ「夢……。そうよね、夢よね……」
この時点、月曜の朝から嫌な予感はしていた。
そして、その日の夜。
俺は再びあそこに連れて行かれちまったのである。
?「……ョ……ョン……」
何だ?
?「起…………よ……」
五月蝿いな、今何時だと思ってる。
ハルヒ「起きろ―――――ッ!!!!」
「うぉわっ!!?」
気付くと俺は、またしても灰色世界の学校にいた。
ハルヒ「ようやく起きたわね」
またか……と思ったら、俺以外にも朝比奈さん、長門、古泉、門矢までこの世界に来ていた。
皆して仰向けに倒れた俺を囲い、見下ろしている。
変な儀式の生け贄にでもされたのか俺は?
ハルヒ「さぁ!! さっさと行くわよ!!」
どこに。
ハルヒ「校舎の中によ!!」
そう言ってハルヒが指差した方向を見ると
「……げっ…」
なんとまぁ、校庭を埋め尽くすほどの怪人の群れ、群れ、群れ。
見たことのあるやつないやつ多種多様。
気持ち悪いことこの上ない光景だ。
士「一応、お前らは俺の教え子だからな、さっさと校舎に逃げろ。変身」
《カメン ライドゥ……ディケェイ!!》
門矢が変身して怪人の群れに飛び込んでいく。
俺たちはハルヒ先導の下、校舎に向かった。
「いくら門矢でも、一人であの人数はキツイんじゃないか?」
古泉「そうですね。詳しい能力は分かりませんが、楽ではないでしょう」
校舎に入り振り返ると、門矢が別のライダーに変身した。
《カメン ライドゥ……グラァン!!》
士「数が相手なら、コイツだ」
《アタック ライドゥ……フルドリライズ》
全身からドリルを生やした奇怪なライダーが次々に怪人を倒していく。
《ファイナル アタック ライドゥ……ググググレンラガァン!!》
士「――――ハァッ!!」
右腕に馬鹿デカイドリルを付けて突進。
密集しているため一撃で大勢倒したが、いかんせん数が違い過ぎてあっという間に囲まれ、ボコボコにされた。
「まずくないか?」
古泉「まずいですね。しかし、ここは普通の閉鎖空間とは違うようで、僕の力も使えません。
涼宮さんがこの空間を作った理由が分からなければ……どうしようもありません」
古泉はいつもの微笑を顔に張り付けている。あぁ、言いたい事は分かるよ。
嫌だがな。
が、このままだと門矢も危険だ。
「……やれやれ」
俺は心配そうで歯痒そうな顔をしたハルヒに近づいて、言った。
「ハルヒ。これ、現実だと思うか?」
ハルヒ「え?」
「これはお前の夢だ。お前が家のベットの上で見てるくだらない夢だ。お前の夢なんだから好きにすればいい。そんな顔してないでやりたいようにやってやれよ」
ハルヒ「……夢……夢……」
ハルヒは何度かそう呟くと、いつもの眩しすぎる笑顔に戻ってこう言った。
ハルヒ「そうよね!! 夢よね、この前と同じ!! そうと決まったら行くわよ皆!!
アタシたちSOS団が世界を救うの!!」
ハルヒが校舎を飛び出し、走っていく。
古泉「お見事です」
「ふん」
ようするに、ハルヒは門矢が仮面ライダーだという「面白い事」を目前で取り上げられて、モヤモヤしていただけなのだ。
なまじリアルな夢(実際現実なんだが)だっただけに、夢で終わらせたく無かったんだろ。
あぁ、完全に忘れさせるべきだった。
ハルヒ「コラー!! 早く来なさーい!!」
朝比奈「あ、はーい」
長門「…………」
古泉「行きましょう」
「…………はぁ」
俺たちが校庭に近づくと、怪人がこっちにやって来た。
焚き付けたはいいが、俺たちでどうにかなるのか? これ。
ハルヒ「皆!! 変身よ!!」
はぁ?
おいおいハルヒ何を言って……と言おうとした瞬間、俺は腰に違和感を覚えた。
目を下に向けると、いつの間にかベルトが巻かれている。
士「……お前ら!?」
ハルヒ「アタシの夢で門矢に変身出来て、アタシ達に出来ないはずないわ!!」
そう宣言するハルヒの腰には龍騎のベルト。
朝比奈「ひぇえ~……何ですかコレぇ……」
朝比奈さんのベルトは最近の奴なのか、俺は見たことがない。
長門「……」
ベルトと携帯……ファイズか。
古泉「僕のはイクサですね、貴方と“お揃い”です」
なに? お揃い?
キバット「よう」
「うわっ!?」
何だこのプラスチックくさいコウモリは。
古泉「キバットバットⅢ世……仮面ライダーキバに変身させてくれるモンスターです。ちなみに、僕のイクサはキバのライバルライダーです」
キバってこの間のやつだったよな。
「マジか……」
ハルヒ「いっくわよー!!」
「待――――」
ハルヒ「へーんしーん!!」
シャカ!!
キュワーン
キャキン
朝比奈「えっ……えっ……? へ、へんし~ん!」
ピロッ
キュウゥゥン
キャラララララ
キャン
ピリリッ……ピリリッ……ピリリッ……
ピピ……
《standing by》
長門「……変身」
《complete》
ビィューン
ガッ!!
《レ・デ・ィ》
古泉「変☆身」
《フ・ィ・ス・ト・オ・ン》
キュワワワワ……カキン
キバット「キバって、行くぜぇー!!」
「なっ!!」
キバット「ギャブ!!」
キバットが俺の腕に噛みつきやがった。俺の身体に変な模様が入る。
……もう観念するしかないな……。
「はぁ……へんしん……」
キュワヮワヮン
シャキーン!!
士「……マジか」
こうして俺たちは仮面ライダーに変身した。
なんてこった。
古泉「少しは嬉しいんではないですか?」
お前らは機械で装着するタイプだからいいだろうが、俺だけ身体が変化するタイプだぞ。
結構怖いわ。
キバット「大丈夫だって。俺を信じな」
「信じられるか」
古泉「……お二人、声似てますね」
キバット&俺「「マジで?」」
《ファイナルベント》
ハルヒ「とりゃー♪」
どがががががん!!
流石ハルヒ。何やらせても出来るとは思ってたが、仮面ライダーまでこなすとは。
ポーズはメチャクチャだが。
朝比奈「ひぇえぇ……どうすればいいんですかぁ……(T□T)」
朝比奈さんは怪人に追いかけ回されていた。
せっかく変身した訳だし、助けねば。
古泉「朝比奈さん、ベルトの赤いボタンを押して、手に持ってる黒い物をベルトにかざして下さい」
朝比奈「へ? ボタン……?」
ポチ
パラララパララーララ
パラララパララーララ
ピロッ
《sword from》
モモタロス「!! 来た!!」
ブァン
(BGM『Double-Action』)
プワァーン
ガシャン
M朝比奈「…………俺、参上!!」
「…………」
《Full Charge》
ポイッ
M朝比奈「行くぜ、俺の必殺技……ハルヒバージョン!!」
ズバズバズバズバ!!
ドドーン!!
「…………」
朝比奈さん、カムバック。
(BGM『The people with no name』)
長門「……」
カシャ
《complete》
ガシャ、ウィーン
ピピ
《start up》
ブゥンブゥンブゥン
長門が目にも止まらぬ速さで敵をなぎ払っていく。
使いこなしてるな、長門。心なしか楽しそうだが。
長門「……」
ブンッ
ちゃんと手ぇ振ってるし。
古泉「僕らも負けていられませんね」
《イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》
古泉「ふーんもっふ!!」
ドカーン!!
「ノリノリだな」
古泉「男子なら、一度は夢見ませんか?」
……確かに否定は出来ん。
「それはそうと、そのベルトの声なんか腹立つな」
古泉「慣れれば気になりませんよ」
そうかい。
「あー、キバットとやら。俺は使い方が分からん。任せる」
キバット「しゃーねぇな。行くぜ、ウェィク、アップ!!」
パーパパパーパーパー♪
「そりゃ!!」
ドドーン!!
俺のキックで、また大量に敵が吹き飛んだ。
ヤバい。ちょっと面白い。
士「めちゃくちゃだな……っと」
《ファイナル アタック ライドゥ……ディディディディケェイ!!》
士「ハァッ!!」
門矢の必殺技で、怪人は全滅となった。
と思ったが、やはりラスボスがいるらしく今度は突然神人が現れやがった。
いや待て。
「おい、これは仮面ライダーじゃなくてウルトラマンのレベルだろ」
古泉「ですね」
士「関係ないな」
門矢が一歩前に出た。踏まれても知らんぞ。
士「何たって、俺はここまでデタラメなSOS団の顧問……通りすがりの仮面ライダーだからな」
理由になってるのか?
ハルヒ「さぁキョン!! あんなのとっととヤっちゃいなさい!!」
「俺かよ!?」
古泉「ここはやはり、貴方でしょう」
黙れ。
朝比奈「頑張って~」
あ、朝比奈さん戻ってる。
頑張りま~す。
長門「……」
応援してくれてるのだろうか? さすがの俺でもファイズの仮面越しでは長門の表情は読めん。
「やれやれ……」
士「ぼやくな。仮面ライダーのいない世界で仮面ライダーになれたんだ。最高の課外授業だろ」
アンタがやった事じゃないだろ。数学関係ねぇし。
士「行くぞ」
《ファイナル アタック ライドゥ……》
「へいへい」
《ディディディディケェイ!!》
キバット「ウェィク、アップ!!」
俺たちは神人に必殺技を見舞った――――
………………………………あ!!
( □)
結局、最後は前回と同じく気付いた時には家で寝ていた。
前回とは違う意味で寝れなかったが、何だかんだ言って悪い気分じゃなかったな。
ハルヒ「昨日は何かスッキリする夢を見たわよ。こんなにさっぱりした朝はそうそう無いわね」
朝会った時、ハルヒはそう言っていた。
そりゃ良かったな。
その後、門矢は教室に来なかった。
岡部が言うには、門矢もインフルエンザにかかったという事だったが……実際はそうじゃないだろう。
何せ、俺は登校中に門矢に会っているのだ。
俺の制服の内ポケットには、その時渡された写真が入っている。
最初に写真館に行った時撮ったSOS団集合写真。
それと合成したのか昨日の俺たちの仮面ライダー姿(神人を倒した後に撮った記念写真だ)が重なっている。
士(見せていい時になったら、涼宮にも見せてやるんだな)
門矢は別れ際にそう言っていた。
今頃は次の世界に向かった事だろう。
ふと、窓から校庭を見る。当然戦闘の跡は全くない。
「やれやれ」
今度来る時は、もう少しこっちの事情も考えてくれよ?
通りすがりの仮面ライダーさんよ。
そういえばクウガはどうしたのかね?
ユウスケ「そんな事があったのか……」
士「あぁ」
ユウスケ(……ハブられた…)
士「次こそ、仮面ライダーの世界に行きたいもんだな」
おじいちゃん「そうかい? あたしゃこういう世界もいいと思うけど」
夏海「……私、今回ほとんど何もしてませんね」
ユウスケ「俺もだよ、夏海ちゃん……」
…………。
おじいちゃん「暗いなぁ……おわっ!?」
暗い夏海とユウスケを避けようとして柱に接触。
次のスクリーンが下りてくる。
ブワァーン
ユウスケ「なんだこれ?」
夏海「棺桶……ですかね? エジプトとかにあるみたいな」
士「いや……」
じっと見つめる。
士「この……マークは……」
ガキュン
【次回 仮面ライダーディケイドSS】
「4号の記事のスクラップ」
「クウガだ……」
「2000の技を持つ男……」
「はぁい」(^^)b
『未確認生命体第28号が現れた』
「変身!!」
「……[クウガ] ザド?」
「宝物……ね」
「アイツらの邪魔をさせる訳には行かないからな」
【全てを壊し、世界を繋げ】
「交錯」
このSSは、漫画家と小説家を目指す男「やまと」と、『アニヲタの集い』の提供でお送りしました。
「SOS団 S.O.S!!(番外編)」
古泉の士に対する会話を聞いた海東。
海東「なるほどね」
目の前に女のコが立ちはだかる。
海東「……なんだいキミ……は?」
気付くと周りは異空間。
海東「何だこれ……」
長門「私に戦闘の意思はない」
海東「……キミの仕業か」
長門「だが、貴方が涼宮ハルヒに危害を加えるなら、我々はそれを許容する事は出来ない」
海東「生憎だけど、僕はお宝を諦めるつもりはないよ。変身!」
シ~ン……
海東「……? 変身!」
シ~ン……
長門「無駄。ディエンドライバーは無力化した。涼宮ハルヒは諦めて」
海東「……嫌だね」
長門「……そう」
海東「う――ッ!?」
――――
――
海東「ここは……どこだ?」
普通の日本の風景だが、さっきとは違う世界。
海東「…………そんな馬鹿な……」
「交錯」に続く
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適当ネタ予告
モモウラキンリュウ「魔法使い~!?」
モモタロス達が別の世界に乱入!?
Mなのは「俺、参上!!」
フェイト「な……なのは?」
Uフェイト「この娘たち釣りたかったなぁ……」
謎の敵〈ガジェットドール〉相手に、電王が大立ち回り!!
キンタロス「関西弁仲間やな」
はやて「そやね~」
リュウタロス「わぁー、ちっちゃーい♪」
リィン「はわわわ……!!」
今世紀最大のカオスストーリーを見逃すな!!
Mなのは「変身!!」
『SS版 仮面ライダー電王&リリカルなのは 超・ストライカーズ』
来場者には『なのは&電王イラスト』をプレゼント!
良太郎「変身……」
侑斗「……変身!」
レンズ越しに~(以下略)
変三話「SOS団 S.O.S!!」
朝。冬の寒さに震えながら一限目の数学の前の僅かな時間を、後ろの席に座っている年中高気圧状態の我らが団長様と、自分の意見は突き通すうえこちらの意見は総スルーというSOS団活動内容会議になっているのかいないのか分からん会話をしていると、見慣れない教師が入ってきた。
俺を含めた多数の生徒が困惑の表情浮かべて見つめる中、その教師は教壇まで歩いていき、俺たちに向かい合うとこう言った。
?「○○先生はインフルエンザで休みになった。
そういう訳で、今日からしばらくの間お前らに数学を教える事になった新任教師の、門矢……士だ」
言いながら、門矢士なる新任教師は黒板にやたら大きく自分の名前を書いた。
自己顕示欲が強いのかね。
士「喜べ、俺が教えてやるんだ……
○○先生が復帰した時には全員テストで百点取れるようになってるぞ」
どっかの誰かさんみたいに、やたら自信たっぷりな教師だ。
士「それじゃ、授業を始めるぞ。教科書を開け」
新任教師なんだから、自己紹介でもやって時間を潰してくれればいいものを。
落胆をため息で体外に逃がして、俺は教科書を開き……十数分後には夢の世界へ旅立った。
ハルヒ「ムカつく教師ね」
数学の授業の後、ハルヒはそんな事を言い出した。
そりゃそうだろうね。
普段人に好き勝手命令しているお前が、あのやたら偉そうな教師を気に入るわきゃないだろうよ。
同族嫌悪かどうかは分からんが、人の振り見て我が振り直せって諺に習ってみたらどうだ?
ハルヒ「アタシをあんなのと一緒にしないでよ、失礼ね」
正直違いが分からんが、俺は適当に相づちを打っておいた。
ハルヒ「でも、他の教師と違って授業は分かりやすくやってたわね。性格には問題あるけど」
ほほぅ、性格に難ありのくせに実力はある訳か。
ますます似てるな。
この時はそんな風に、大して気にせず日常の変わった一ページくらいに思っていたのだが、放課後になって俺は思い知らされた。
いよいよ“アレ”がやって来たのだと。
放課後。
ハルヒと一緒にSOS団の制圧下に置かれた文芸部室に向かった俺は、ハルヒが無遠慮に扉を開けるのを避けるため、さっさと扉の前に向かいノックした。
さて、今日は朝比奈さんのラブリーヴォイスか、それとも長門の無言の了承かと返答を待っていたのだが、俺の耳に届いたのは聞きなれない男の声だった。
?「おう、入れ」
いつもの1.4倍くらいの早さで室内に入った俺が見たのは、困り顔の朝比奈さんと、珍しく本を読んでいない長門と、
?「よう、来たな」
そう言いながらハルヒの指定席であるSOS団の団長席に腰を下ろした新任教師、門矢士だった。
ハルヒ「ちょっとアンタ!! 何やってんのよ!!」
教師相手でも遠慮なく声を荒げたハルヒが、俺を通り越して門矢の方へ向かう。
士「椅子に座ってる」
教師を教師と思わぬ態度のハルヒを目の当たりにしても全く動じない門矢は、団長席に座ったままそう答えた。
やはり、ハルヒ並に変わった人物らしい。
ハルヒ「そんなの見りゃ分かるわよ!! なんでアンタがアタシの団長席に座ってるの?」
怒りを隠そうともしないハルヒの威圧を全く無視し、門矢はハルヒの鼻先に指を突き付けた。
ハルヒ「……なによ?」
士「喜べ。今日から俺が、SOS団の顧問だ」
俺を含め、長門以外の全員が呆気に取られた。
というのが冒頭までのあらすじである。
ハルヒ「はぁ!? アンタ何いってんの?」
士「だから、俺がお前らSOS団の顧問になってやるって言ったんだ。同じ事を二度言わせるな」
門矢は厳かに立ち上がり、驚愕中の俺たちを更に驚愕させる事を言った。
士「それはそうと……涼宮。
お前、ここに入学した時、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者に会いたいって言ったらしいな」
ハルヒ「それが何?」
士「喜べ、俺がその異世界人だ」
ハルヒ「…………」
室内の空気が、硬直した気がした。
いや、少なくとも俺と朝比奈さん(長門は驚いちゃいないだろう)の空気は硬直していた。
ハルヒは何言ってんだコイツと言いたげな顔で門矢を睨んでいたが(入学時にあんなこと言ったお前も同類だろうに)、俺たちは門矢が異世界人だという事を疑いはしなかった。
世界を意のまま……というと語弊があるが、ともかく世界を望み通りに改変できるハルヒが、入学時に会いに来いと言った中で唯一未登場の存在。
そいつがいよいよやって来たのだ。
ハルヒ「……アンタ馬鹿なの?」
唯一、全く信じていない(それが当然だが)ハルヒは怒り眼を本物の馬鹿を見る目に変えていた。
お前も似たようなことを言ったんだから、そいつが馬鹿ならお前も馬鹿という事になるぞ。
いや、門矢の方はまだ冗談とも取れる分お前の方がひどいな。
冗談……そうだ、まだ門矢が異世界人だと確定したわけじゃない。新任教師の他愛ない冗談という可能性もあるじゃないか。
士「ま、信じる信じないはお前の勝手だが……とにかく俺はお前らの顧問だから、
これからはやる事なす事全て俺を通せ。以上」
言いたいことを言って門矢はさっさと部室を後にした。
丁度部室の扉で門矢と入れ代わりに古泉が入って来ると、古泉は俺にアイコンタクトを取ってきた。
くそ、分かりたくないが分かってしまう。
ハルヒ「…………あ。ちょっと、待ちなさいよ!!」
珍しく呆然としていたハルヒは、我に返るやいなや門矢を追って走って行った。
ハルヒが思いっきり扉を閉めた後、ハルヒの足音を最後に室内はしばらく無音になった。
古泉「ちょうどいいですね。話があります」
「なんだ」
古泉「分かっているでしょう?」
古泉は得意の0円スマイルを崩さず続けた。
古泉「門矢士について、です」
分かってはいたが、やっぱり冗談では無かったらしい。
古泉「涼宮さんがいつ戻って来るかわかりません。手短に分かった事だけ言いましょう」
そう前置きして、古泉は機関で調査した内容を語り出した。
古泉「まず彼……門矢士なる人物の経歴ですが、一切不明でした」
これについて、俺は特別驚きはしなかった。何せ異世界人(自称)だ。今までは別世界で過ごして来たんだろうよ。
古泉「えぇ、多分そうでしょう。ただ、おかしい事があります」
おかしいのは全部だろ。
古泉「門矢士という人間が、この世界で生きてきたという記録は一切ありません。
しかし、おかしな事に彼はちゃんと教師になっています。
取った記録のない教員免許を持ち、あたかも前から決まっていたようにこの学校の新任教師に。
まるで“彼はそういう設定だ”と言わんばかりに」
「どういう事だ?」
イマイチよく分からない俺に笑みを返し、古泉はさらに続けた。
古泉「つまり、異世界の住人である彼がこの世界にやって来た瞬間
『彼は教員免許を持った新任教師で、これから北高に勤める』
というプロフィールが出来上がった、という訳です。その過去に関わらず……ね。
もっとも、これが涼宮さんの力によるものなのかは分かりませんが」
「…………」
まぁ、デタラメなのは今に始まった事じゃない。
夏休みを10000回以上繰り返したり、目からビームやレーザーを出すより常識的な気がする。
……俺も相当毒されてきたな。
「しかし……異世界人、ねぇ……」
古泉「異世界人と言っても、どうやら彼は我々と同じような世界からやって来たらしいですね」
頭の中に異世界、いわゆるファンタジーゲームみたいな剣と魔法の世界をイメージしていた俺は肩透かしをくらった気分だった。
古泉「貴方も聞いた事はあるでしょう。パラレルワールド、並行世界。
我々の世界とは似て非なる世界です」
「まぁ何となく分かるが……」
だったら、あの門矢士とかいう奴は何しに来たんだ?
他の世界から来たというプロフィールを除けば、普通の人間じゃないか。
未来人みたいに過去に影響された理由を調べに来たわけじゃないだろう。
自分から異世界人を名乗る辺り、古泉たちみたいにハルヒに静かに生きて欲しいって訳でもない。
朝倉……情報思念体の急進派みたいに、ハルヒの力を研究したいのか?
にしちゃあ異世界人の証拠も見せず消極的だ。
「長門、お前の親玉はアイツについて何か知ってるのか?」
長門「知っている」
長門は静かに話し出した。
長門「彼の目的は涼宮ハルヒであって涼宮ハルヒではない」
「何だそりゃ?」
長門「彼の目的は複数の並行世界を巡る事。
この世界の重大要素である涼宮ハルヒに関わろうとしているが、
私たちのようにその力の内容について関心を持っている訳ではない。
彼にとって、涼宮ハルヒの力の本質は重要ではない」
何か分かったような分からんような中途半端な気分だ。
「ちなみに、その並行世界ってどれくらいあるんだ?」
長門「人間の扱う数値では表現しきる事は困難」
ようはそれだけ沢山あるらしい。
「俺たちの世界と似た世界から来たってだけで、別に特別な能力は無いんだろ?」
この問いに対して、長門は首を横に振った。
長門「彼は他の人間とは異なる能力を有する。
正確には、この世界には存在しえないデバイスを用いて能力を使用する」
「何だ、そのデバイスって?」
長門「ディケイドライバー」
なんじゃそりゃ。
長門「仮面ライダーディケイドに変身するための装置」
…………。
俺と古泉はしばらく固まっていた。
朝比奈さんは何が何だか分からないらしく、愛らしい困惑顔で頭の上に疑問符を量産していた。
「いや、待て長門。いくらなんでもあり得ないだろ」
長門「事実」
分かっている。長門が嘘をつくとは思っていない。だが、それでも信じるには無理がある内容だ。
仮面ライダーだと?
「仮面ライダーって特撮だろ?」
長門「必ずしもそうではない。並行世界にはありとあらゆる世界が存在する。
仮面ライダーの世界もその中に含まれている」
…………。
長門「仮面ライダーに分類される者が存在する世界は、判明している限りで845873種。
亜種を含めば986325種。
また、同じ仮面ライダーの世界でも、詳細が違う物で1000000通り以上に分岐する」
それはまたとんでもない数字だな。
長門「仮面ライダーだけでなく、ウルトラマン、ガンダムなどの世界も存在する。
他にも、現存するドラマ、映画、ゲーム、アニメ、ありとあらゆる架空の世界、
またはそれに類似する世界も存在する」
「いや、でもそういうのは作り物だろ? 異世界だからって本当にあるのか?」
長門「ある」
とんでもない話をあっさり肯定された。
長門「どんな世界でも、認識されれば存在する可能性は生まれる。
可能性があれば異世界は存在する」
「…………」
例によってどういう理屈かはさっぱり分からんが、長門が言うんだ。
そういう事なんだろう。
この手の話が好きな古泉は、長門に質問しようとしていたが、廊下からズカズカという足音が聞こえてきたため口を閉じた。
ハルヒ「全く、なんなのよあの教師!!」
「どうだったんだ?」
ハルヒ「アイツ頭おかしいわよ! 自分の事『仮面ライダーだ』とか言ってんのよ? 精神異常者よ」
あの教師、あっさり言っちまったのか。まぁ信じないだろうから構わんが(俺も言った事あるしな)。
それはそうと、お前は自分の発言を棚に上げて酷い言い様だな。
ハルヒ「そんな事より、明日、市内散策するわよ」
どうやら、さっそく顧問に無断で活動する気らしい。
というより、顧問を無視したいから当て付けに活動するって感じか。
ハルヒ「とにかく明日、9時に駅前に集合よ!!」
この日の活動はそれで終了した。
帰りの道中。
先頭を歩くハルヒを中心とした女子グループからやや距離を置いた俺は、古泉と話していた。
「SOS団はハルヒが勝手に作った非公認団体だよな?」
古泉「えぇ、その通りです」
「では何故その非公認団体に顧問がつく。おかしいだろ」
古泉「全くその通りです。ですが、そういう事になっているのだから仕方ありません。
先ほどの話と同じです。彼は“SOS団の顧問”という設定なんですよ。
過去……SOS団の発足や現在の立場などは関係ないんです」
「…………」
やっぱりデタラメだ。
翌日の土曜日。
やはりいつもの様に集合場所に着いたのは俺が最後だった。
ハルヒ「さ、とりあえずいつもの喫茶店で予定決めましょ」
いつも思うんだが、予定は予め決めるんじゃダメなのか?
どうにも俺に金を払わせるために集まっているような気がしてならないんだが。
ハルヒ「その日の天候や気分で行くところは変わるのよ?
せっかくの休日、楽しい物にするのは現場で決めるのが一番なの!」
へいへい。
いいさ。もう慣れたからな。
いつもの喫茶店に向かった俺たちは、市内不思議散策の前に不思議を発見してしまった。
世界不思議発見!
ハルヒ「ねぇキョン。確かここよね? 喫茶店」
「あぁ、俺の記憶が正しければそのはずだ」
だが、俺たちの目の前には見慣れた喫茶店の代わりに『光写真館』という古めかしい見た目の建物が建っていた。
建て替えた、というには無理がある老舗だ。
ハルヒ「どうなってんの? 建て替えた訳じゃないわよね?」
ハルヒも困惑しているが、そこは行動力溢れるSOS団団長である。
「話を聞いてみましょ」と言ってさっさと怪しさ極まる写真館の中に入って行った。
もちろん俺たちも後に続く。
?「あ、いらっしゃい」
ハルヒ「ここって喫茶店じゃ無かった?」
?「ん? いや、見た通り写真館だけど……。でも、ここ美味しいコーヒーもあるよ」
店番らしい人の良さそうな青年は、そう言って奥を指した。
ハルヒ「……じゃあここにする?
不思議な所だし、もしかしたら何か超常現象が発生してるかも知れないわ」
マジでそんな感じだから止めろ。
?「じゃあこっちね。夏海ちゃーん、お客さんだよー」
?「はーい」
奥から響く女性の声を聞きながら通された先には、カメラや机が置いてあった。
そして、その机には“先客”が腰かけていた。
士「なんだお前ら。わざわざ顧問に会いに来たのか?」
オゥ、ジーザス。
店の主らしき爺さんに勧められるまま記念写真を撮ったあと(なぜが門矢も撮っていた)
予想以上に美味いコーヒーを飲みながら俺たちは門矢の話を聞いていた。
どうやら門矢はこの写真館に居候しているらしい。
士「で、お前らに聞きたい事があるんだが……この世界に仮面ライダーはいるか?」
ハルヒのみ「ハァ?」という顔をしたのは言うまでもない。
ハルヒ「アンタまだ言ってんの? 特撮と現実の区別もつかずによく教師になれたわね」
?「え……この世界にもライダーいないの?」
意外そうな声を出したのは、店番をしていた青年だった。
ハルヒ「……アンタも特撮と現実の区別ついてないの?」
?「特撮……なんだ、ここでも」
呆れ口調のハルヒの言葉に、店番青年が肩を落とした。
?「じゃあ、君たちもクウガ知ってるの?」
「クウガ?」
懐かしいな。確か平成ライダー(だっけ?)の最初のやつだ。
クウガ、アギト、龍騎ぐらいまで見てた気がする。
555の途中で仮面ライダーとサヨナラしたんだっけな……。
?「俺、そのクウガなんだよ」
青年は自慢げに自分を指差すが、そんな事大真面目に言われても困る。
士「ユウスケ、この世界でもライダーは架空の存在だ。言ったって変な目で見られるだけだぞ」
?「うぅ……寂しいなぁ……」
どうやら店番青年の名前は“ユウスケ”らしい。
確か、昔のクウガも“雄介”だっけ?
士「ま、いないならいないでやる事を探すまでだ」
古泉「やる事、とはどういう事なんですか?」
士「それが分かれば苦労はない。
毎回俺は色んな世界を巡って“俺がやるべき事”を探して実行している」
古泉「なるほど」
なるほど、とか言ってるがお前今の説明で分かったのか?
そんな俺の視線に気付いたのか、古泉は肩を竦めてみせた。
やっぱり分かってないじゃねぇか。
ハルヒ「ちょっと古泉くん。変人の話を何真面目に聞いてるのよ」
至極もっともな意見だが、休日返上して不思議現象を探している俺たちはどうなる。
ハルヒのこの言葉に腹を立てたのか、門矢が(偉そうに)椅子から立ち上がった。
士「フン、教え子に舐められるのもシャクだしな。証拠を見せてやる」
そういうと、どこからか変な物を取り出した。
ギリギリ手からはみ出す程度の大きさの白い機械だ。
門矢がそれを腹に当てると、明らかに質量保存の法則を無視したとしか思えないベルトが現れ、勝手に門矢の腰に巻き付いた。
それだけで、俺たちから見たら驚き物だったのだが(服を挟んじまったりしないのかね?)、門矢はさらにさっきの白い機械の両サイドを引っ張り、真ん中の部分を90度回転させた後、いつの間にか左腰にぶら下げていた白い四角い箱(弁当箱にも見える)を開き、一枚のカードを取り出した。
仮面ライダー、カード……龍騎か?
士「変身」
門矢がカードを90度回転した白い機械に入れた。
《カメン ライドゥ……》
機械から音声が流れる。
そして、門矢が90度回転したそれを元に戻すと
《ディケェイ!!》
まさしくあっという間だった。
一瞬で門矢の姿は灰色の仮面ライダー(?)に変わり、ベルトから現れた複数のカードが頭に刺さると、身体の一部が赤く変化した。
士「どうだ? これで俺が仮面ライダーだと分かったろ」
…………。
全員無言だった。
ハルヒさえ、一言も発せなかった。
士「……どうしたお前ら」
赤い仮面ライダー(?)を目の前にして、奇跡的に一番最初に口をきけるようになった俺は、辛うじてこう言った。
「マジかよ……」
「あぁ、マジだよ」
門矢が変身を解く。ヒーローが変身した直後に変身解除という光景は違和感ありありだったが、今はそんな事は些細過ぎる問題だ。
一応長門から正体を聞いていた俺たち(朝比奈さんは仮面ライダーとは何なのか分かっていらっしゃらなかったが)でさえ、この衝撃だ。いかなハルヒでもさすがに動揺していた。
ハルヒ「……本物?」
士「だからそう言っただろ」
ハルヒ「キョン、捕獲するわよ」
えぇ――――?
ハルヒさん何をおっしゃっているのですか?
ハルヒ「だから捕獲するのよ!! 仮面ライダーよ!? 本物の!!」
どうやらコイツの中では珍しい昆虫もグレイも仮面ライダーも同じらしい。
あの後、何とかハルヒを宥めた俺たちは写真館を後にして解散した。
ハルヒは「遂に面白い物を見つけた」
と歓喜していたが、わざわざ正体を隠して刺激しないようにしている宇宙人未来人超能力者にとっては困る事らしく、連中が困るような事態というのはすなわち俺が困る事態でもある
(今日の経費がコーヒー5杯分で済んだ事には感謝しているが)。
そんな訳で俺たちはいったん解散した後、ハルヒ抜きで再集合した。
古泉「どうやら、今回の彼……仮面ライダーディケイドでしたか、
彼の出現に涼宮さんは無関係のようです」
どうしてそう言い切れる。
古泉「貴方は彼をどちらだと思いますか? 異世界人か、仮面ライダーか」
「そりゃあ、どっちかと言えば仮面ライダーだな。何となくだが」
古泉「そう。彼は異世界人と言うより、仮面ライダーの役割の方が強いんです」
ややこしい。どっちか片方にすりゃいいのに。
古泉「つまり、涼宮さんが望んでいる存在ではありません。
彼が涼宮さんが望むはずのないSOS団の顧問……
彼女の団長という立場より上の存在である事も説明がつきます」
映画の時のような状況でもない限り仮面ライダーは現れないでしょう、と古泉は付け加えた。
古泉「問題は、彼が涼宮さんの思考を考慮しない事です。
もちろん、彼は涼宮さんの特異性を知らないでしょうから、悪気は無いのでしょうが……
彼の行動はまさしく“我々の世界を破壊する行為”と言っていいでしょう」
「なぜだ?」
古泉「以前お話したでしょう。
『涼宮さんに不可思議な現象が当たり前だと思われると、物理法則がネジ曲がる』と。
つまりそういう事です」
古泉はいつもの笑みを消し、真顔で言った。
古泉「涼宮さんが『仮面ライダーは実在する』
と思えば、本当に仮面ライダーがこの世界に現れるかも知れません。そして――」
そこまで聞いて、俺も気付いた。
しかし、いくらハルヒでも……
古泉「確かに、さすがに涼宮さんも望みはしないでしょう。
しかし“いるかも知れない”と思ってしまったら……確率は0ではありません」
「おいおい、冗談じゃねぇぞ……」
怪人が現れるかも知れないなんて。
長門の話では、まだこの世界には仮面ライダーも怪人もいないらしい(ディケイドを除く)。
古泉「ひとまず、対策を考えなければいけませんね」
そりゃそうなんだが、俺たちに出来る事があるのか?
古泉「わかりません。ですが、放っておく訳にもいかないでしょう。全く……困ったものです」
とりあえず、この日はそれで解散だった。
一応、古泉の方から門矢に事情を説明して、これ以上ハルヒに余計な事は言わないように頼むと言っていた(完全に手遅れな気がするが)。
帰りに、朝比奈さんに未来では仮面ライダーみたいに一瞬で姿を変える方法はあるのかと聞いてみたが
朝比奈「えっと……ちょっと似たような物くらいならあるんですけど、詳しくは禁則事項です……」
と困り笑顔で答えられてしまった。
まぁ、いいさ。未来にあったって現代にないんだったら関係ないしな。
古泉から緊急の連絡が来たのはその日の夜だった。
息を切らせて駆けつけたのは、公園(一番最初に長門に呼ばれた場所だ)だった。
当然の如く、俺以外の面子はすでに揃っている。
たまには俺の後から誰か来る所を見てみたい。
古泉「すいません。
正直、呼ぶ必要は無かったのですが、やはり直接見て貰った方が分かりやすいので」
「……で、まさか怪人が現れたとか言う気じゃないだろうな」
長門「そう」
答えたのは長門だった。
「……いるのか?」
長門「そこに」
長門の白い人差し指の示す先に目を向けると、そこにはマジで怪人がいた。
鋭い目付きに、堅いウロコ……甲羅? よくわからん固そうな肌をした明らかに人外な人型生物。指……というか肘から手首までが丸々鎌になっているあたり、進化の過程なんかすっ飛ばして完成品持って来ましたという空気満点である。
ようするに、如何にも仮面ライダーの敵っぽいって事だ。
しかし、おかしな事にこの怪人、全く動く気配がない。
ただ暗闇の中、木々の間で立ってるだけだ。
知らない人間から見たら、怪人の着ぐるみが置いてあるように見えるかも知れない。
まぁそんな事考える前にビビって逃げるだろうな。
少なくとも俺は。
士「さて、アイツを倒せばいいんだな?」
不意に声が聞こえてきたと思ったら、いつの間にか件の仮面ライダーが後ろに立っていた。
士「話はこの変な奴から聞いた。まぁ、原因が俺なら自分で処理するさ」
古泉が変な奴なのは異論ないが、せめてオブラートに包んでやれよ。
一応そいつもキャラ作って大変らしいしさ。
士「変身!!」
《カメン ライドゥ……ディケェイ!!》
見るのは二回目だが、やっぱ凄いな生変身。
門矢が変身すると、さっきまで無気力の極み状態だった怪人が意気揚々と襲いかかっていった。
俺たちは数メートル後ろで見学。
「どういう事だ? なんであの怪人、仮面ライダーを見てから暴れだす」
古泉「涼宮さんの理性の現れでしょう。仮面ライダーが存在するのであれば怪人も存在するはずだ。
だが、人が襲われるのは好ましくない。そういう彼女の内面が現れているのです」
なるほどね。
目の前で割りと接戦を繰り広げていた門矢が、怪人を蹴りとばして距離を開けたあと、別のカードを取り出した。
士「夜と言えば……コイツだ」
《カメン ライドゥ……キバァ!!》
瞬間、門矢の仮面ライダー……ディケイドだったか……が、全く違う仮面ライダーに変わった。
どっかで見たような気がしないでもない。
古泉「仮面ライダーキバですね。平成ライダー9作目のライダーです。モチーフはバンパイア。
キバとはキング・オブ・バンパイアの略だそうです」
「わざわざ調べてきたのか」
古泉「えぇ、情報は多い方がいいでしょう?」
そりゃまぁな。
古泉「本人の話では、あのディケイドというライダーは、平成ライダー全てに変身出来るようですよ」
「そりゃまたデタラメだな。チート過ぎやしないか?」
しばらく敵を殴った後、門矢はまたカードを取り出した。
立て続けに違う仮面ライダーに変身かと思ったが、どうやら違うらしい。
《ファイナル アタック ライドゥ……キキキキバァ!!》
「――――ッ!?」
その時、俺は奇妙な感覚を覚えた。
強迫観念のような焦りが俺の背筋を駆け巡り、嫌な汗が流れる。
それが何なのか、何を意味するのか分からないまま、気付いた時には俺はこう叫んでいた。
「ウェィク、アップッ!!!!」
パーパパパーパーパー♪
長門以外の二人、朝比奈さんと古泉が驚いていた。
朝比奈「キョ、キョンくん……どうしたんですかぁ?」
どうしたんでしょうね? 自分でもさっぱりです。
士「はァ!!」
門矢が必殺技(俗に言うライダーキック)を放ち、怪人は大爆発した。
なぜ生き物が爆発するかは聞くな。俺にも分からん。
「大丈夫かよ、夜中にこんな大爆発起こして」
長門「問題ない。この公園一帯はすでに隔離済み」
そりゃまた……ありがとうよ、長門。
士「さて、終わったな」
門矢が変身を解いて戻ってくる。
古泉「では、今後の事ですが……」
その後、明日以降のハルヒに対する対応について打ち合わせして俺は帰路についた。
結論から言おう。
ディケイドはやはりチートだった。
翌日の日曜日。
仮面ライダーについて詳しく知りたいという余計な好奇心が旺盛なハルヒは、再び写真館に訪れた。
そこで門矢は
《カメン ライドゥ……ゼロォウ!!》
《ファイナル アタック ライドゥ……ゼゼゼゼロォウ!!》
士「涼宮、仮面ライダーの事や喫茶店が写真館に変わった事は、全て夢だ」
これだけで(厳密にはもう少し色々と言ったが)ハルヒは昨日の出来事を夢だと信じ、昨日の市内散策はいつも通りイタズラに俺の金と時間を浪費して終了、帰りに門矢を見つけて写真館に案内され、コーヒーを飲んで帰ったと思い込んじまった。
いい加減デタラメが過ぎる。記憶を改竄しちまうとは一体どういうライダーだ。
聞いたことねぇぞ。
まぁ助かったがな。
正直記憶を書き換えるってのはどうかと思うが(夢だって思い込ませただけだが)、この場合は仕方ないだろう。
許せ、ハルヒ。
ハルヒ「……あれ? アタシ達、今日何でここに集まってのかしら?」
士「何でって……尊敬すべき教師、門矢士様の指示を仰ぎに来たんだろ」
ハルヒ「馬鹿じゃないの」
またバッサリ切り捨てたな。
その後、俺たちは門矢をスケープゴートにして事なきを得た。
ここが喫茶店のあった場所だという事がバレないよう、ハルヒに「裏口に珍しい物がある」と言って誘導し、裏口から帰った。その際に門矢がハルヒの暴力を受けたが、これは自業自得だ。
確かに珍しいけどさ、いくらなんでも爺さんの女装姿なんぞ用意するなよ仮面ライダー。
しかし、そう簡単に終わらないのが超時空トンデモガール涼宮ハルヒなのであった。
ハルヒ「アタシね……変な夢を見たのよ」
「……………………ほぅ?」
ハルヒ「門矢がアタシ達の前で……その……仮面ライダーに変身したり、
喫茶店が門矢の写真館に変わってたり」
「そりゃまたユニークな夢だな」
ハルヒ「夢……。そうよね、夢よね……」
この時点、月曜の朝から嫌な予感はしていた。
そして、その日の夜。
俺は再びあそこに連れて行かれちまったのである。
?「……ョ……ョン……」
何だ?
?「起…………よ……」
五月蝿いな、今何時だと思ってる。
ハルヒ「起きろ―――――ッ!!!!」
「うぉわっ!!?」
気付くと俺は、またしても灰色世界の学校にいた。
ハルヒ「ようやく起きたわね」
またか……と思ったら、俺以外にも朝比奈さん、長門、古泉、門矢までこの世界に来ていた。
皆して仰向けに倒れた俺を囲い、見下ろしている。
変な儀式の生け贄にでもされたのか俺は?
ハルヒ「さぁ!! さっさと行くわよ!!」
どこに。
ハルヒ「校舎の中によ!!」
そう言ってハルヒが指差した方向を見ると
「……げっ…」
なんとまぁ、校庭を埋め尽くすほどの怪人の群れ、群れ、群れ。
見たことのあるやつないやつ多種多様。
気持ち悪いことこの上ない光景だ。
士「一応、お前らは俺の教え子だからな、さっさと校舎に逃げろ。変身」
《カメン ライドゥ……ディケェイ!!》
門矢が変身して怪人の群れに飛び込んでいく。
俺たちはハルヒ先導の下、校舎に向かった。
「いくら門矢でも、一人であの人数はキツイんじゃないか?」
古泉「そうですね。詳しい能力は分かりませんが、楽ではないでしょう」
校舎に入り振り返ると、門矢が別のライダーに変身した。
《カメン ライドゥ……グラァン!!》
士「数が相手なら、コイツだ」
《アタック ライドゥ……フルドリライズ》
全身からドリルを生やした奇怪なライダーが次々に怪人を倒していく。
《ファイナル アタック ライドゥ……ググググレンラガァン!!》
士「――――ハァッ!!」
右腕に馬鹿デカイドリルを付けて突進。
密集しているため一撃で大勢倒したが、いかんせん数が違い過ぎてあっという間に囲まれ、ボコボコにされた。
「まずくないか?」
古泉「まずいですね。しかし、ここは普通の閉鎖空間とは違うようで、僕の力も使えません。
涼宮さんがこの空間を作った理由が分からなければ……どうしようもありません」
古泉はいつもの微笑を顔に張り付けている。あぁ、言いたい事は分かるよ。
嫌だがな。
が、このままだと門矢も危険だ。
「……やれやれ」
俺は心配そうで歯痒そうな顔をしたハルヒに近づいて、言った。
「ハルヒ。これ、現実だと思うか?」
ハルヒ「え?」
「これはお前の夢だ。お前が家のベットの上で見てるくだらない夢だ。お前の夢なんだから好きにすればいい。そんな顔してないでやりたいようにやってやれよ」
ハルヒ「……夢……夢……」
ハルヒは何度かそう呟くと、いつもの眩しすぎる笑顔に戻ってこう言った。
ハルヒ「そうよね!! 夢よね、この前と同じ!! そうと決まったら行くわよ皆!!
アタシたちSOS団が世界を救うの!!」
ハルヒが校舎を飛び出し、走っていく。
古泉「お見事です」
「ふん」
ようするに、ハルヒは門矢が仮面ライダーだという「面白い事」を目前で取り上げられて、モヤモヤしていただけなのだ。
なまじリアルな夢(実際現実なんだが)だっただけに、夢で終わらせたく無かったんだろ。
あぁ、完全に忘れさせるべきだった。
ハルヒ「コラー!! 早く来なさーい!!」
朝比奈「あ、はーい」
長門「…………」
古泉「行きましょう」
「…………はぁ」
俺たちが校庭に近づくと、怪人がこっちにやって来た。
焚き付けたはいいが、俺たちでどうにかなるのか? これ。
ハルヒ「皆!! 変身よ!!」
はぁ?
おいおいハルヒ何を言って……と言おうとした瞬間、俺は腰に違和感を覚えた。
目を下に向けると、いつの間にかベルトが巻かれている。
士「……お前ら!?」
ハルヒ「アタシの夢で門矢に変身出来て、アタシ達に出来ないはずないわ!!」
そう宣言するハルヒの腰には龍騎のベルト。
朝比奈「ひぇえ~……何ですかコレぇ……」
朝比奈さんのベルトは最近の奴なのか、俺は見たことがない。
長門「……」
ベルトと携帯……ファイズか。
古泉「僕のはイクサですね、貴方と“お揃い”です」
なに? お揃い?
キバット「よう」
「うわっ!?」
何だこのプラスチックくさいコウモリは。
古泉「キバットバットⅢ世……仮面ライダーキバに変身させてくれるモンスターです。ちなみに、僕のイクサはキバのライバルライダーです」
キバってこの間のやつだったよな。
「マジか……」
ハルヒ「いっくわよー!!」
「待――――」
ハルヒ「へーんしーん!!」
シャカ!!
キュワーン
キャキン
朝比奈「えっ……えっ……? へ、へんし~ん!」
ピロッ
キュウゥゥン
キャラララララ
キャン
ピリリッ……ピリリッ……ピリリッ……
ピピ……
《standing by》
長門「……変身」
《complete》
ビィューン
ガッ!!
《レ・デ・ィ》
古泉「変☆身」
《フ・ィ・ス・ト・オ・ン》
キュワワワワ……カキン
キバット「キバって、行くぜぇー!!」
「なっ!!」
キバット「ギャブ!!」
キバットが俺の腕に噛みつきやがった。俺の身体に変な模様が入る。
……もう観念するしかないな……。
「はぁ……へんしん……」
キュワヮワヮン
シャキーン!!
士「……マジか」
こうして俺たちは仮面ライダーに変身した。
なんてこった。
古泉「少しは嬉しいんではないですか?」
お前らは機械で装着するタイプだからいいだろうが、俺だけ身体が変化するタイプだぞ。
結構怖いわ。
キバット「大丈夫だって。俺を信じな」
「信じられるか」
古泉「……お二人、声似てますね」
キバット&俺「「マジで?」」
《ファイナルベント》
ハルヒ「とりゃー♪」
どがががががん!!
流石ハルヒ。何やらせても出来るとは思ってたが、仮面ライダーまでこなすとは。
ポーズはメチャクチャだが。
朝比奈「ひぇえぇ……どうすればいいんですかぁ……(T□T)」
朝比奈さんは怪人に追いかけ回されていた。
せっかく変身した訳だし、助けねば。
古泉「朝比奈さん、ベルトの赤いボタンを押して、手に持ってる黒い物をベルトにかざして下さい」
朝比奈「へ? ボタン……?」
ポチ
パラララパララーララ
パラララパララーララ
ピロッ
《sword from》
モモタロス「!! 来た!!」
ブァン
(BGM『Double-Action』)
プワァーン
ガシャン
M朝比奈「…………俺、参上!!」
「…………」
《Full Charge》
ポイッ
M朝比奈「行くぜ、俺の必殺技……ハルヒバージョン!!」
ズバズバズバズバ!!
ドドーン!!
「…………」
朝比奈さん、カムバック。
(BGM『The people with no name』)
長門「……」
カシャ
《complete》
ガシャ、ウィーン
ピピ
《start up》
ブゥンブゥンブゥン
長門が目にも止まらぬ速さで敵をなぎ払っていく。
使いこなしてるな、長門。心なしか楽しそうだが。
長門「……」
ブンッ
ちゃんと手ぇ振ってるし。
古泉「僕らも負けていられませんね」
《イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》
古泉「ふーんもっふ!!」
ドカーン!!
「ノリノリだな」
古泉「男子なら、一度は夢見ませんか?」
……確かに否定は出来ん。
「それはそうと、そのベルトの声なんか腹立つな」
古泉「慣れれば気になりませんよ」
そうかい。
「あー、キバットとやら。俺は使い方が分からん。任せる」
キバット「しゃーねぇな。行くぜ、ウェィク、アップ!!」
パーパパパーパーパー♪
「そりゃ!!」
ドドーン!!
俺のキックで、また大量に敵が吹き飛んだ。
ヤバい。ちょっと面白い。
士「めちゃくちゃだな……っと」
《ファイナル アタック ライドゥ……ディディディディケェイ!!》
士「ハァッ!!」
門矢の必殺技で、怪人は全滅となった。
と思ったが、やはりラスボスがいるらしく今度は突然神人が現れやがった。
いや待て。
「おい、これは仮面ライダーじゃなくてウルトラマンのレベルだろ」
古泉「ですね」
士「関係ないな」
門矢が一歩前に出た。踏まれても知らんぞ。
士「何たって、俺はここまでデタラメなSOS団の顧問……通りすがりの仮面ライダーだからな」
理由になってるのか?
ハルヒ「さぁキョン!! あんなのとっととヤっちゃいなさい!!」
「俺かよ!?」
古泉「ここはやはり、貴方でしょう」
黙れ。
朝比奈「頑張って~」
あ、朝比奈さん戻ってる。
頑張りま~す。
長門「……」
応援してくれてるのだろうか? さすがの俺でもファイズの仮面越しでは長門の表情は読めん。
「やれやれ……」
士「ぼやくな。仮面ライダーのいない世界で仮面ライダーになれたんだ。最高の課外授業だろ」
アンタがやった事じゃないだろ。数学関係ねぇし。
士「行くぞ」
《ファイナル アタック ライドゥ……》
「へいへい」
《ディディディディケェイ!!》
キバット「ウェィク、アップ!!」
俺たちは神人に必殺技を見舞った――――
………………………………あ!!
( □)
結局、最後は前回と同じく気付いた時には家で寝ていた。
前回とは違う意味で寝れなかったが、何だかんだ言って悪い気分じゃなかったな。
ハルヒ「昨日は何かスッキリする夢を見たわよ。こんなにさっぱりした朝はそうそう無いわね」
朝会った時、ハルヒはそう言っていた。
そりゃ良かったな。
その後、門矢は教室に来なかった。
岡部が言うには、門矢もインフルエンザにかかったという事だったが……実際はそうじゃないだろう。
何せ、俺は登校中に門矢に会っているのだ。
俺の制服の内ポケットには、その時渡された写真が入っている。
最初に写真館に行った時撮ったSOS団集合写真。
それと合成したのか昨日の俺たちの仮面ライダー姿(神人を倒した後に撮った記念写真だ)が重なっている。
士(見せていい時になったら、涼宮にも見せてやるんだな)
門矢は別れ際にそう言っていた。
今頃は次の世界に向かった事だろう。
ふと、窓から校庭を見る。当然戦闘の跡は全くない。
「やれやれ」
今度来る時は、もう少しこっちの事情も考えてくれよ?
通りすがりの仮面ライダーさんよ。
そういえばクウガはどうしたのかね?
ユウスケ「そんな事があったのか……」
士「あぁ」
ユウスケ(……ハブられた…)
士「次こそ、仮面ライダーの世界に行きたいもんだな」
おじいちゃん「そうかい? あたしゃこういう世界もいいと思うけど」
夏海「……私、今回ほとんど何もしてませんね」
ユウスケ「俺もだよ、夏海ちゃん……」
…………。
おじいちゃん「暗いなぁ……おわっ!?」
暗い夏海とユウスケを避けようとして柱に接触。
次のスクリーンが下りてくる。
ブワァーン
ユウスケ「なんだこれ?」
夏海「棺桶……ですかね? エジプトとかにあるみたいな」
士「いや……」
じっと見つめる。
士「この……マークは……」
ガキュン
【次回 仮面ライダーディケイドSS】
「4号の記事のスクラップ」
「クウガだ……」
「2000の技を持つ男……」
「はぁい」(^^)b
『未確認生命体第28号が現れた』
「変身!!」
「……[クウガ] ザド?」
「宝物……ね」
「アイツらの邪魔をさせる訳には行かないからな」
【全てを壊し、世界を繋げ】
「交錯」
このSSは、漫画家と小説家を目指す男「やまと」と、『アニヲタの集い』の提供でお送りしました。
「SOS団 S.O.S!!(番外編)」
古泉の士に対する会話を聞いた海東。
海東「なるほどね」
目の前に女のコが立ちはだかる。
海東「……なんだいキミ……は?」
気付くと周りは異空間。
海東「何だこれ……」
長門「私に戦闘の意思はない」
海東「……キミの仕業か」
長門「だが、貴方が涼宮ハルヒに危害を加えるなら、我々はそれを許容する事は出来ない」
海東「生憎だけど、僕はお宝を諦めるつもりはないよ。変身!」
シ~ン……
海東「……? 変身!」
シ~ン……
長門「無駄。ディエンドライバーは無力化した。涼宮ハルヒは諦めて」
海東「……嫌だね」
長門「……そう」
海東「う――ッ!?」
――――
――
海東「ここは……どこだ?」
普通の日本の風景だが、さっきとは違う世界。
海東「…………そんな馬鹿な……」
「交錯」に続く

適当ネタ予告
モモウラキンリュウ「魔法使い~!?」
モモタロス達が別の世界に乱入!?
Mなのは「俺、参上!!」
フェイト「な……なのは?」
Uフェイト「この娘たち釣りたかったなぁ……」
謎の敵〈ガジェットドール〉相手に、電王が大立ち回り!!
キンタロス「関西弁仲間やな」
はやて「そやね~」
リュウタロス「わぁー、ちっちゃーい♪」
リィン「はわわわ……!!」
今世紀最大のカオスストーリーを見逃すな!!
Mなのは「変身!!」
『SS版 仮面ライダー電王&リリカルなのは 超・ストライカーズ』
来場者には『なのは&電王イラスト』をプレゼント!
良太郎「変身……」
侑斗「……変身!」
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