ゼンガー「アクシズに配属された、ゼンガー・ゾンボルトです」

2009年09月23日 23:30

ゼンガー「アクシズに配属された、ゼンガー・ゾンボルトです」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/22(火) 20:44:06.78 ID:kCCdma/20
 
封印戦争(第二次スーパーロボット大戦α)が終わって約半月が経った。
ゼンガーは武人としての死に場所を求めて、一人旅を続ける毎日を過ごしていた。

しかし彼もまた戦乱を生き抜いた一人の戦士である。
自らが持つ武と斬艦刀で、新世界に貢献したいという想いは高まる一方であった。




ゼンガー「……という訳だ。友よ、何か良い仕事は無いだろうか」

レーツェル「ふ……ようやくニートを脱却するのか。半年間、長かったな」

ゼンガー「ダイゼンガーの運用費から俺の食費まで、お前に頼りきりで済まなかった」

レーツェル「何、気にするな。友が再び立ち上がる日の事を考えれば安いものだ……」


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レーツェル「……それで、仕事の話だったな。一応無いことも無い、とは言っておこう」

ゼンガー「平和主義を掲げた今の地球連邦は、最早我々の力を必要としていない筈だが」

レーツェル「しかし、欲しい所は欲しがっている……そういうものさ」

ゼンガー「地球連邦以外に、軍の増強を図っている所があるのか?」

レーツェル「ああ。地球上には無いがな」

ゼンガー「宇宙、察するにコロニーというところか」

レーツェル「いや……アクシズだ」

ゼンガー「アクシズ……ミネバ・ラオ・ザビの摂政、ハマーン・カーンが率いるアクシズか」

レーツェル「ああ。アクシズは戦後連邦に軍縮を迫られた為、現在は大幅に弱体化している。
       外敵の脅威に備え、再度戦力増強を狙うのは当然と言えるだろう。しかし……」

ゼンガー「何だ?」

レーツェル「ゼンガーの軍籍は今も地球連邦軍として登録されている。
       従って連邦軍に復帰した際には少佐として振舞うことが可能だが……」

ゼンガー「むう。新兵としてアクシズに入隊した場合は……」

レーツェル「ああ。己の信念を貫くお前にとっては、非常に動きにくい環境となるだろう」

ゼンガー「……生憎と、俺の戦う場所や階級が変わろうと、俺の信念は変わらん。
      戦って新世界の礎となれるのならば、連邦とアクシズの差など無にも等しい」

レーツェル「フ……それでこそ我が友ゼンガー。いいだろう、近日中に手配しておく」

ゼンガー「すまんな」


―― 1日目 アクシズ ――


ゼンガー「アクシズに配属された、ゼンガー・ゾンボルトです」

大尉「まずは地球よりの長旅ご苦労、と言っておこう」

ゼンガー「ありがとうございます」

大尉「さて……貴官の階級は伍長となるが、異論は無いな?」

ゼンガー「ハッ」

大尉「では早速だが、ゼンガー伍長には特別任務に就いてもらう」

ゼンガー「入隊1日目の自分に特別任務……ですか」

大尉「伍長も知っての通り、我がアクシズは先の大戦で戦力を消耗した上、
    地球連邦によって軍縮を余儀なくされた。猫の手も借りたい状況なのだよ」

ゼンガー「…………」


―― コンビニ ――


ゼンガー「…………」

ゼンガー「……確かに新世界の礎となる、とは言ったが……」

ゼンガー「まさか欠員が出たコンビニの店員をさせられるとはな」

ゼンガー「しかし、アクシズ内にコンビニが展開していることには更に驚かされた」

ゼンガー「修行を怠らなかったお陰で、荷物運びだけは楽なものだが……」

ゼンガー「……くっ、俺の武はこんなところで発揮されるべきものではない筈だ……」


―― 3時間後 ――


ゼンガー「くっ、予想以上に客の入りが良い……
      レジ打ちによって、徐々にだが俺の精神が削り取られている……」

ゼンガー「む……いかん、商品棚の弁当が売り切れている! 補給を急がねば!」

ピロリロリローン

ゼンガー「何……新たな客だと? このタイミングで敵増援か!」

イリア「…………」

ゼンガー「菓子パンが1点、ヨーグルトが1点、栄養剤が1点、合計で840円になります……」

イリア「840……」

ゼンガー「…………」

イリア「……っておぉ!? お、お前は……」

ゼンガー「?」

イリア(あ、αナンバーズのゼンガー・ゾンボルト少佐! 何故彼がアクシズに!?
    封印戦争の後、行方をくらましたと聞いていたが……)

ゼンガー「……何か?」

イリア「い、いや、何でもない。貴官がどことなく知人に似ていたのでな」

ゼンガー「……むう」

イリア(……まあ、他人の空似だろう。αナンバーズのエースパイロットが
    アクシズで働く理由があるとも思えん……)

ゼンガー「…………?」

イリア「……うむ、念の為、念の為というやつだ。訊いておくべきだろうな」

ゼンガー「?」

イリア「貴官、名前と階級は?」

ゼンガー「ハッ! ゼンガー・ゾンボルト伍長であります!」








イリア(……本物じゃないか……どうしよう……)



イリア「そ、そうか……つまらんことを訊くが、何故ゼンガー少佐はこんな所に?」

ゼンガー「自分は伍長です」

イリア「あ……ああ、そうだった。少佐は伍長だったな」

ゼンガー(少佐は伍長……とは、どういう意味だ)

イリア(いかん、自分でも何を言ってるのか分からん……)

ゼンガー「……貴方は、自分が元少佐ということを知っておられるのか」

イリア「い……いや違う。その、知人に似ていたと言っただろう。
    なんとなく……シャア少佐に似ていたのでな」

イリア(なんて無理のある言い訳だ……)

ゼンガー「……シャア・アズナブルは、大佐です」

イリア「ぐっ……そ、そうだな。私の記憶違いだ、忘れてくれ」

イリア(ダメだ、このままでは墓穴を掘る一方……
    とりあえずこの場は退散して、ハマーン様に報告しておこう。要注意人物だからな……)


―― 2日目 コンビニ ――


ゼンガー「……今日はまったく客が来ん」

ゼンガー「……素振りでもして、暇を潰すか……」

ビーッ! ビーッ!

ゼンガー「なに……第1種戦闘配置だと?」


―― 格納庫 ダイゼンガーコクピット内 ――


ゼンガー「さて……戦闘員として登録されている以上、俺も出撃準備をしておかねばな。
      やはり戦場に出てこそ、俺の本懐が遂げられる」

ゼンガー「……ところで、俺を指揮する上官は誰なのだ?」

ピピピッ ピピピッ

ゼンガー「む、通信か……」

イリア『ゼンガー少佐、聞こえるか』

ゼンガー「自分は伍長です。貴方は昨日の……」

イリア『イリア・パゾム少尉だ。貴官は私の指揮下に入ってもらうことになる』

ゼンガー「了解しました」

イリア『私の機体はAMX-015 ゲーマルクだ。コードを登録しておけ』

ゼンガー「ハッ。こちらのコードは……」

イリア『それは既に……』

ゼンガー「既に?」

イリア『……いや、教えてくれ』
イリア(ハマーン様とラー・カイラムに乗艦していた時の記録を見れば、コードは分かるが……
    ゼンガー少佐の真意が読めない以上、あまり情報を漏らすのは得策では無いな)

ゼンガー「こちらはDGG-XAM1 ダイゼンガー。正式名称はダイナミック……」

イリア『それは結構だ(長いからな)』



ゼンガー「斬艦刀! 電光石火!」 ズドォォ

ゼンガー「斬艦刀! 電光石火!」 ドゴォォ

ゼンガー「斬艦刀! 電光石火!」 ズゴォッ



ゼンガー「……最弱武器で全滅とは、なんと手ごたえの無い相手か。いや、それは言うまい。
      俺は己が楽しむ為ではなく、新しい世界の礎と成るべく戦っているのだからな」

イリア『やってくれる。ネオ・ジオン残党のMS部隊などでは相手にならないようだな』

ゼンガー「自分の剣は未だ師に遠く及びません。ダイゼンガー(フル改造)あってこその戦果です」

イリア『謙遜も程々にしないと嫌味に聞こえるぞ』

ゼンガー(謙遜などでは無いのだが。やはり、強化しすぎたか……)


―― 3日目 コンビニ ――


ゼンガー「……客が来ない」

ゼンガー「……精神統一でもするか……」

ゼンガー「…………」

ピロリロリローン

ゼンガー「む、客か。いらっしゃいませ……」

???「…………」

ゼンガー(……ん? この女子、見覚えが……)
 
???「…………」

ゼンガー(1人でジャンプを5冊、サンデーを3冊、りぼんを10冊買うだと? この女子、できるな)

???「……何だ?」

ゼンガー「ぬ……いや、すまん。どこかで見た顔だと思ってな」

???「私とお前は初対面だ」

ゼンガー「むう、そうか……」



ゼンガー「……! 思い出したぞ。エルピー・プル……ではないのか?」

???「……そうだけど、違う」

ゼンガー「何?」

???「……お前は誰だ?」

ゼンガー「ゼンガー・ゾンボルト。階級は伍長だ」

プルクローン「私はプルのクローン。皆はプルクローンと呼ぶ」

ゼンガー「クローンか……プルツーは言うに及ばず、他にも大勢いると聞く」

プルクローン「現時点で、プルトゥエルブまでいる」

ゼンガー(プル達を除いても、少なくとも10人……フ、大所帯だな)

プルクローン「それよりこれ、会計」

ゼンガー「……雑誌ばかりだな。ニュータイプは買わなくていいのか?」

プルクローン「いらない。ニュータイプじゃないから」

ゼンガー(……理屈がよく分からん。宇宙で育つと独特の感性を持つというのは本当らしい)

ゼンガー「しかし、なぜ同じ雑誌をいくつも買うのだ? 数もそれぞれ異なっているようだが」

プルクローン「他のクローンの分もある。それに皆が皆、同じものを読むわけじゃないから」

ゼンガー「…………」

プルクローン「……なに? 早く、会計」

ゼンガー「いや、それぞれ1冊買って、回し読みすればいいのではないか……と思っただけだ」

プルクローン「……マ・ワ・シ・ヨ・ミ……?」








プルクローン「……本当だ……気付かなかった……!」

ゼンガー「で、会計の方だが1万と2千」

プルクローン「待て! 早まるな!」



プルクローン「……今まで、どれだけ損してきたのかな……」

ゼンガー「週刊の雑誌が多かったからな、相当な額になっているだろう」

プルクローン「くっ……だいたい地球産は物価が高いんだよ! 重力に縛られた人間達め……」

ゼンガー(地球に八つ当たりしないでもらいたい)

ピロリロリローン

ゼンガー「む、客だ。いらっしゃ……」







ハマーン「…………」



ハマーン「フ……久しいな、ゼンガー・ゾンボルト少佐」

ゼンガー「ハマーン・カーン……!」

ハマーン「そう構えるな、少佐」

ゼンガー「俺は伍長だ……ハマーン、アクシズ艦隊司令がこのような所にまで何用だ」

ハマーン「何用? 大衆が売買を行う場所に、司令官が来てはならんという規則はあるまい」

ゼンガー「ぬう……上辺を取り繕うのがアクシズのやり方ではなかろう」

ハマーン「ハ、歓迎されていないようだ……なに、イリアが血相を変えて報告してきたのでな。
      αナンバーズのエースがアクシズに潜伏していると」

ゼンガー「……む、イリア少尉は俺のことを知っていたのか」

ハマーン「アクシズとαナンバーズが休戦した後、人造神ガンエデンを破壊するまで
      イリアもラー・カイラムに乗艦していた。貴様は知らんだろうが」

ゼンガー「……しかし『潜伏』とは、まるで間諜扱いだな。二心は無いぞ」

ハマーン「口では何とでも言えよう……重力に縛られている筈の地球人が、何故アクシズに来た?」

ゼンガー「職を失ったからだ」








ハマーン「…………聞き間違いか?」

ゼンガー「間違いではない。俺は半年間、ニートであった」

ハマーン「ほ、ほう……」

ゼンガー「リリーナ・ピースクラフトの提唱する平和主義を掲げた地球連邦にとって、
      軍人としての俺は最早必要の無い存在になった、ということだ」

ハマーン「だろうな。次の時代を作るのは腐りきった老人ではない」

ゼンガー「しかし俺の武はどのような形であれ、次代に活かされるべきだと考えている」

ハマーン「フ……確かに宇宙に蔓延る残党共の処理は、地球ではできん仕事だ。
      己が信念を貫くゼンガー少佐なら、時も場所も選ばず戦うことができよう」

ゼンガー「然り」

ハマーン「かつてマシュマーの監視役だったイリアの腕を見込んで、
      貴様の監視役に置いてみたが……それも杞憂に終わりそうだよ」

ゼンガー「マシュマー?」

ハマーン「マシュマー・セロという騎士がいた。バルマー戦役で死んだが……」

ゼンガー「騎士か。武士とは幾分通じるものがある……話をしたかったところだ」

ハマーン「キャラ・スーンやゴットン・ゴーではなく、貴様となら馬も合ったかもしれんな」

ゼンガー「……それで、何か買うのか」

ハマーン「何?」

ゼンガー「“大衆が売買を行う場所”だと自分で言ったではないか」

ハマーン「ああ、買うさ、買ってやるとも。貴様の品定めなどついでの用事に過ぎん」

ゼンガー「商品の品定めが本懐か」

ハマーン「物分りのいい老人は嫌いではない」

ゼンガー「老人と言うが、俺はまだ29だ。お前の方が年上ではないのか」

ハマーン「恥を知れ、俗物。私は今年で22になる」

ゼンガー「な、何ッ!? 馬鹿な……」

ハマーン「どういう意味だ、貴様……」



ゼンガー「少し気になったのだが、今更お前がここで買うものがあるのか」
 
ハマーン「雑誌、菓子、飲料水……いくらでもあるだろう?」

ゼンガー「部下に買わせるか、発注すれば良い話だ」

ハマーン「その部下に生活を管理されているのでな。夜食も満足に食えん」

ゼンガー「お前が管理させているのではないのか?」

ハマーン「ミネバ様直々のお達しだ……摂政である私が無下にしては、部下に示しがつかん」

ゼンガー「苦労しているようだな、お前も」

ハマーン「職無しほどでは無いがな……支払いはカードで頼む」

ゼンガー「カードか。司令官ともなると、如何程の金額が収められているのだろうな」

ハマーン「人は集まらんが、金だけは増えてくれる。多すぎて自分でも把握していないよ」








ゼンガー「……が2点、ハーゲンダッツが3点、雑誌(りぼん)が1点、合計1890円になります」

ハマーン「……笑いたければ笑え。いまだにこんなもの(りぼん)を読んでいるなどと……」

ゼンガー「それは本日発刊だったようだが、待ち遠しかったのか」

ハマーン「それもあるが、早々に買わんと売り切れるのさ」

ゼンガー「……先程プルのクローンが買っていったが、あの子はまだ精神的にも幼いだろう。
      しかしアクシズの女性が、誰もあのような少女という訳でもあるまい」

ハマーン「お前が言うように、女性すべてが大人になれるものか。
      その前に女共はこれを買い尽くすよ」

ゼンガー「大人気だな……」

ハマーン「ああ。対してファッション誌は全く売れん」

ゼンガー「この職場は大丈夫なのか……む、袋に入れなくていいのか」

ハマーン「少佐……袋という殻に閉じこもっているから、地球人は何もできん」

ゼンガー「……その潔さを、何故もっと上手く使えなかったのだ」

ハマーン「地球産の雑誌を宇宙に住んだ人間が買うっていうのはな、
      人間がまだ地球の重力に引かれて飛べないって証拠だろ?」

ゼンガー(だろ? と言われても……)


―― 7日目 通信室 ――


レーツェル『あれから1週間経ったが……どうだ友よ、上手くやっているか?』

ゼンガー「元αナンバーズという肩書きだけで、周囲にはかなり警戒されているようだ」

レーツェル『やはりな。望みとあらば、助けになりそうな人員や物資を送るが』

ゼンガー「不要だ。これしきのこと、俺と斬艦刀1本で斬り抜けて見せよう」

レーツェル『斬り抜けてもらっては困る。アクシズに反旗を翻してどうするのだ』

ゼンガー「……それは、いざという時の話だな。俺を狙う者がいないとも限らん」

レーツェル『……確かにな。封印戦争時は一時的に協力していたが、あれから半年が経った。
       ガンエデンやクストースの存在が消えた今、連邦とアクシズの関係は微妙なところだ』

レーツェル『それで、アクシズで戦った感想は?』

ゼンガー「まるで封印戦争の再来だ。ネオ・ジオンだけではなく、バームやゼーラといった
      外敵の残党まで仕掛けてくる。だが、アクシズのMSでは歯が立たんようだ」

レーツェル『アクシズは今も封印戦争を続けているのか……』

ゼンガー「プルのクローンやサイコミュ搭載型の兵器といった精強な戦力もあるが、
      流石に一騎当千の実力とはいかん」

レーツェル『やはりお前とダイゼンガー(フル改造)がアクシズの命運を握っているようだな』

ゼンガー「過大評価だ、レーツェル。俺の戦果など微々たるものでしかない
      ……それにハマーンは、俺のような無頼者が戦果を上げることを良しとせぬだろう」

レーツェル『最悪、ハマーンがお前を切り捨てることもあり得ると?』

ゼンガー「うむ。それに恐らく、個人的にも良い感情は持たれていない」

レーツェル『何? 何をしでかしたのだ』

ゼンガー「……つい、俺より年上ではないのか、と」

レーツェル『それは……やってしまったな』

ゼンガー「やはりか……」

レーツェル『もう駄目かもしれんな』


―― 格納庫 ――


メカニック「駄目ですね、このパーツもオシャカですよ」

ゼンガー「そうか……やはり鎧獣士などの強者と戦うと、パーツの劣化が激しいようだな」

メカニック「少佐……いえ、伍長のダイゼンガーは典型的なスーパーロボットですからね。
       敵と衝突を繰り返せばこうもなります。でも、困りましたね」

ゼンガー「うむ。右腕のパーツが無くては、唯一の武器である斬艦刀も振れん。
      だが、予備がアクシズにある筈もない……」

ゼンガー(補給物資を送ってもらうというのも手だが……それでは俺の信念に反する。
      レーツェルにも『俺と斬艦刀1本で斬り抜けて見せよう』と言ったところだ……)







プル「ねぇジュドー! あれってダイゼンガーじゃない?」

ジュドー「え、ダイゼンガー?何言ってんだプル、あの機体はゼンガーさんと一緒に行方不明に……」

ゼンガー「む? お前は、ジュドー……ジュドー・アーシタか」

ジュドー「あ、あっれぇ? ホントにゼンガーさんがいる!」

プル「ほらぁ! 嘘じゃないもん!」

ジュドー「ハハッ、ホントにゼンガーさんがいる! 久しぶりじゃない!」

ゼンガー「うむ。封印戦争以来だな」

ジュドー「……でもゼンガーさん、なんでアクシズなんかにいるのさ?
      行方不明になって、みんな心配してたんだよ?」







ゼンガー「……職が無くてな」

ジュドー「え」

プル「?」

ゼンガー「戦後、連邦に必要とされなくなった俺が流れ着いた先が、アクシズだったのだ」

プル「アハハッ! じゃあゼンガーさん、半年もニートだったんだ!」

ゼンガー「…………」

ジュドー「こ、こらプル! ごめんゼンガーさん、プルにも悪気は無いんだ」

ゼンガー「いや……」

ジュドー「でもさ……子供の俺が言うのも何だけど、ニートってどうなのさ」

ゼンガー「む……」

ジュドー「戦う以外の道なら、いくらでも職はあったんじゃないの?
     シーブックさんとセシリーさんみたいに、軍人辞めて働いてる人もいるし」

ゼンガー「…………」

ゼンガー「……俺の話より、ジュドーは何故アクシズに来たのだ?」

ジュドー「ああ、俺? 最近地球とアクシズって、あんまり関係良くないでしょ?」

ゼンガー「確かに、良好とは言い難いな。険悪とも言えんが」

ジュドー「だから俺が橋渡しになろうかなってさ。ほら、俺ってハマーンに少しだけ顔が利くじゃん」

ゼンガー「ほう。その若さで立派なものだ」

ジュドー「って言っても、仕事の大半は地球・アクシズ間の輸送業務とかだけどね!
     地球がアクシズの、アクシズが地球の資源を必要とするなら、
     お互い戦争したくないでしょ?」

プル「プルもお手伝いしてるよ!」

ゼンガー「確かに、あのハマーンが仲介も無しに地球から物(雑誌とか)を取り寄せるとも思えん」

ジュドー「宇宙って娯楽が少ないのよね。
      地球産の物も色眼鏡を外せばいいものいっぱいあるのにさ!」

ゼンガー「……しかし、たった2人で親善大使を務めているとは立派なものだ」

ジュドー「まさか! ブライト艦長の後押しもあるし、ビーチャ達にも手伝ってもらってるって。
     それに、地球にもアクシズにも俺の顔が売れるから、一石二鳥ってヤツさ」

ゼンガー「む……ということは、ジュドーはある程度、ここと地球との流通を任されているのか?」

ジュドー「まあね。それがどうかした?」

ゼンガー「……このダイゼンガーを見てくれ。これをどう思う?」

ジュドー「凄く……ボロボロです……」

プル「腕が無いと、あのおっきい刀も持てないんじゃないの?」

ゼンガー「うむ。しかしアクシズにはダイゼンガーの予備パーツなど置いていない。
      かと言って、アクシズに籍を置く俺が連邦に補給を申請するのは不義理というものだ」

ジュドー「はっはぁ~ん。そういうことかぁ」

プル「え? なになに、どうしたのジュドー?」

ジュドー「俺なら地球からダイゼンガーのパーツを持ってくることもできるってことさ」

ゼンガー「うむ。だが……」

ジュドー「ゼンガーさんは、自分の力でこの危機を乗り越えたいんでしょ?
      それで、俺の力を借りることに躊躇してるわけだ」

ジュドー「いいかいゼンガーさん。ゼンガーさんとは確かに同じ大戦を生き抜いた仲間だけど、
     ゼンガーさんが俺に仕事を頼むって言うのなら、それはもう仲間とは別物なんだ」

ジュドー「俺は会社、ゼンガーさんは客っていう1つの商売なの。
      そこにはお金の繋がりしか無いんだ。例えば輸送業者だってお金払っちゃえば、
      その業者の人に頼ってるって気はしないでしょ?」

ジュドー「だから、俺に仕事を依頼したって、それはゼンガーさんの信念を曲げることにはならない。
     むしろ、不十分な整備で出撃して撃墜される方が、皆に迷惑がかかっちゃうワケ」

ジュドー「それでも、俺にタダでやってくれって言うのなら、それはどうかと思うよ。
     でもゼンガーさんは、ちゃんとお金を払ってくれるでしょ? 世の中お金なんだよ」






ゼンガー「…………」

ジュドー「分かった?」

ゼンガー「……う、うむ、金がすべてという訳か」

ジュドー「そういうこと! じゃあ、早速取引に入ろうじゃないの」



ゼンガー「これと……あと、これだな」
 
ジュドー「……結構多いんだね、注文するパーツ」

ゼンガー「間接のような駆動部だけではなく、装甲も取り替えなくてはいかんからな」

ジュドー「一線で戦う人は大変そ……俺って、なーんて恵まれてるんでしょ!」

ゼンガー「では、よろしく頼む」

ジュドー「はいはーい。じゃ、後で請求書送るから、指定の口座に振り込んどいてね!」

ゼンガー「承知」





プル「うわぁ、ゼロがいっぱぁ~い! ゼンガーさん、お金持ちだね!」

ジュドー「ゼンガーさん生真面目だから、言いくるめやすいんだよね! フヒヒ、いいお客さん!」

プル「ジュドー、ご機嫌だね!」

ジュドー「よぉしプル、今日は久々にセックスするか!」

プル「ホント!? やったぁ!」


―― 14日目 ――


イリア「少佐、格納庫にダイゼンガーのパーツが届いているぞ」

ゼンガー「ハッ、ありがとうございます。ジュドーが上手くやってくれたようです」

ゼンガー(……ジュドーに訊いた限りだと、このパーツは結局連邦で作られたものらしい。
      つまり、俺はジュドーを通して間接的に連邦から買ったことになる……)

ゼンガー(いや、俺は信念を曲げていない。世の中は金だとジュドーも言っていたではないか。
      金を払って連邦から物資を買うことは、連邦に頼っているとは言えない筈だ、うむ)

イリア「少佐が戦えないこの1週間でアクシズ軍は大きく消耗した。
    やはり少佐は、アクシズにとって必要な存在なのかもしれん」

ゼンガー「今後も粉骨砕身の覚悟で働く所存です」

イリア「そうしてもらえると助かる……それで、これが搬入リストと請求書だ」

ゼンガー「請求書……これか」








ゼンガー「…………」

イリア「……少佐、顔が青いが大丈夫か」

ゼンガー「…………」

イリア「リストに漏れでもあったか? 見せてみろ」

ゼンガー「…………」










イリア「……なに、2000万か……少佐は金持ちだな」

ゼンガー「…………」



ゼンガー「……少尉、金を」

イリア「無理だ」

ゼンガー「まだ全部言っていません」

イリア(言葉にせずとも分かる、これがニュータイプか……)

イリア「……私は2000万も貸せるほど持っていないぞ。
    そもそも、αナンバーズでエースを張っていた少佐の方が稼いでいるだろう」

ゼンガー「流れていた半年間に補給や修理で使い込み……自分の残高は53万です」

イリア「53万!? MSならいざ知らず、他機体と互換性の無いスーパーロボットのパーツだぞ!
    もしかして少佐は天然なのか? それとも精神不安定な強化人間だったのか?」

ゼンガー「ぬう……」

イリア「『神を断つ剣』は自己管理もできないと見える。幻滅したぞ」

ゼンガー「今後は『紙を断つ剣』に改名します……」

イリア「請求書を斬ろうとするな! ……とにかく私は貸したくても貸せん。
    尤も、軍備縮小されたアクシズに2000万も出せる者がいるとも思えんがな」

ゼンガー「……2000万も出せる者はいない……か」

ゼンガー「しかしアクシズの運用には億、あるいは兆単位の金が動いている筈だ。
      ならば、古くからアクシズに籍を置く人間が、十分に金を貯えている可能性はある」

ゼンガー「しかし、俺はアクシズに旧知の人間などいない……」

ゼンガー「……む、そういえば……」







「人は集まらんが、金だけは増えてくれる。多すぎて自分でも把握していないよ」


ゼンガー「……これしかない」


―― 15日目 ――


ゼンガー「ハマーン様」

ハマーン「ん……ゼンガー少佐か」

ゼンガー「伍長です。そろそろ少佐はお止めください」

ハマーン「その気色の悪い敬語を止めたら、私も止めてやろう」

ゼンガー「これは……先日、少尉に注意されたのでな」

ハマーン「αナンバーズではお前の方が偉かったろうに……用件は何だ」

ゼンガー「……ここでは兵に聞かれる恐れがある。重要な話だ」

ハマーン「何……?」

ゼンガー「…………」

ハマーン「……いいだろう、私の部屋を使おう。部屋の外にはイリアを待機させるが、構わんな?」

ゼンガー「承知」


―― ハマーンの部屋 ――


ハマーン「少し散らかっているが、入れ」

ゼンガー「……少しというレベルでは無いぞ……」

ハマーン「そうでもなかろう。以前プルクローンの部屋を見たが、このようなものだったよ」

ゼンガー「仮にも司令官が子供と張り合うな。足の踏み場も無いではないか」

ハマーン「だが私はプルと違い、1週間に1度、世話の者が床のゴミ共を掃除してくれるのさ」

ゼンガー「それにしても、せめて脱いだ服くらい片付けるのだな。一応、女ではないのか」

ハマーン「フ……そのようなこと、部下に四六時中言われている。貴様まで言ってくれるな」

ハマーン「……それで、重要な話とは何だ」

ゼンガー「うむ……分不相応とは分かってはいるが、お前に頼みたいことがあるのだ」

ハマーン「頼み? αナンバーズの斬り込み隊長からの頼みか、光栄だな」

ゼンガー「否。αナンバーズや、俺の任務とは一切関係無い。
      これは1人の人間、ゼンガー・ゾンボルトという個人からの頼みだ」

ハマーン「ほう……部屋を片付けろ、という以外の頼みなら、考えてやっても構わんが」

ゼンガー「ならば、単刀直入に言う」









ゼンガー「金を出せ」

ゼンガー「無礼をした。金を貸してくれ、と言うべきだったか」

ハマーン「……フ、フフ……お、驚いたよ。きょ、恐喝かと思うじゃないか……」

ゼンガー「すまん」

ハマーン「……ふぅ……で、金を貸せだと?」

ゼンガー「然り。2000万ほど頼みたい」

ハマーン「2000万とは、随分な額だな……どうしてこうなったのか、まずは経緯を話せ」

ゼンガー「もっともな意見だ。実は、かくかくしかじかでな……」

ハマーン「……ほう、パーツを注文したが金が足りん、と」

ゼンガー「うむ、まったく足りぬ」

ハマーン「誇らしげに言うものではない」

ゼンガー「53万しか無いのでな、開き直ったのだ」

ハマーン「フン……実に滑稽だ。これが本当に少女ごとガンエデンを一刀両断した
      『神を断つ剣』の発言なのか、疑わしいところだ」

ゼンガー「……その話は止めてもらおう。今は金の話だ」








ハマーン「……結論から言うと、金は出してやれん」

ゼンガー「な、何ッ!?」

ゼンガー「お前のカードには把握できぬ程の金があると言っていたではないか……!」

ハマーン「ああ。しかしこのカードに収められている金は、アクシズの所有する資金の一部なのだ。
    私には、必要に応じてアクシズの総合バンクから金を引き出す権利が与えられているのでな」

ゼンガー「ぬう……それではお前が言っていた『把握できん』というのは……」

ハマーン「ああ、アクシズ全体の資産という意味さ。私個人の所有額の話ではない。
      個人の額だと、全盛期の少佐を下回っているかもしれんな」

ゼンガー「なんということだ……!」

ハマーン「つまり、私がこのカードから2000万を引き出し貴様に渡す、ということは、
      貴様が個人で所有する機体にアクシズが投資する、ということと等価なのだよ」

ゼンガー「……確かに、軍属ではない機体に貴重な資金を使うのは軍法に反するが……」

ハマーン「そうだ。そして2000万もの使途不明金が浮かび上がれば、疑われる人物は2人だ」

ゼンガー「大量のパーツを個人で注文した俺など、真っ先に疑われるだろう」

ハマーン「そして、アクシズのバンクから無制限に金を引き出せる私もだな。
      分かっただろう? 貴様がこの金を使うことは、貴様の首を絞めることにもなるのさ」

ゼンガー「……そうとは限らん」

ハマーン「何?」

ゼンガー「イリア少尉は、俺が今のアクシズに必要だと言っていた。
      アクシズは、ダイゼンガーの力を求めているのではないのか」

ハマーン「ほう、これは面白い。貴様でも傲慢に物を話せるのか」

ゼンガー「俺とて望んではいないが、苦肉の策を採らせてもらう。
      俺個人ならばいざ知らず、ダイゼンガー(フル改造)の力無しに、
      奴等の攻撃を防ぎきれるのか」

ハマーン「私はまだ、自分を弱者だと認めていないよ……少佐」

ゼンガー「では、俺の言うことは誤っているか、ハマーン」

ハマーン「……一理あるが、私はお前達のように戦争ばかりやっている訳にもいかん」

ゼンガー「何?」

ハマーン「アクシズの資産は、他国に比べれば決して多くないのだ。対外交渉の面でも……」

ゼンガー「宇宙とは、地球やコロニーへの体面を保つだけで生き残れる世界ではあるまい」

ハマーン「一年戦争後よりアクシズにいれば、その程度のこと百も承知だ……!」

ゼンガー「つまらぬ虚栄心など吐き出すのだ、ハマーン。たった2000万でアクシズが救われる」

ハマーン「吐き出すものなど……無い!」

ゼンガー「……ならば、致し方あるまい」

チャキッ

ハマーン「……どういうつもりだ。その刀で私を斬るのか……俗物め」

ゼンガー「お前次第だ。地球の日本という国には、示現流なる剣術の流派がある」

ハマーン「フ、生憎と知らんな。知ろうとも思わんが」

ゼンガー「示現流は一の太刀に全てを懸ける。その速さ、雲耀の如し」

ハマーン「つまり……私がドアの外にいるイリアに大声で助けを求めれば、
      その声が出る前に、貴様は私の首を飛ばせると?」

ゼンガー「そうだ。お前が助けを呼ぶべき時は、俺が刀に手をかけた瞬間だった。
      抜刀した以上、お前は金を出す以外に助かる道は無い」

ハマーン「結局恐喝とはな……恥を知れ」

ゼンガー「黙れッ!!」

ハマーン「…………!」 ビクッ!

ゼンガー「そして聞けッ!!」

ゼンガー「我は、ゼンガー・ゾンボルト! 『悪を断つ剣』なりッ!!」

ハマーン(く……なんというプレッシャーだ……!)

ゼンガー「金という目先の利益に囚われ真の勝利を目指せぬ女狐の野望は、
      今ここで我が一太刀によって潰えるのだッッ!!」

ハマーン(…………!)







ガチャ

イリア「失礼します、ハマーン様。部屋からゼンガー少佐の大声が聞こえたので……
    ……この状況は……」

ゼンガー「…………」

ハマーン(……いかん……腰が、抜けた……)

イリア「刀を構えたゼンガー少佐に、脅えたご様子のハマーン様……」

ゼンガー「いや、違う」

イリア「ゼンガー少佐……貴様、最初からハマーン様を暗殺しようと……」

ゼンガー「誤解だ」

イリア「何が誤解なものか! この荒らされた部屋……どう見ても争った形跡ではないか!」

ゼンガー「それは本当に誤解だ」

ハマーン「ま、待てイリア。お前は勘違いをしている」

イリア「な……何を仰っているのですか、ハマーン様!」

ハマーン「少佐は、私の我侭に付き合ってくれていたのだ。
      自慢の剣の腕を見せてくれと頼んだのだよ。なあ、少佐?」

ゼンガー(何ッ!? ハマーン、俺を庇うのか……どういうつもりだ!)

ハマーン(ええい、合わせろ俗物! 援護攻撃の要領だ!)

ゼンガー(俺は援護攻撃の技能が無い!)

ハマーン(何だと……!)

ハマーン「……少佐、私直々の頼みとあっては断れまい?」

ゼンガー「そ、その通りです……ハマーン様直々の頼みとあっては断れませんでした」

ハマーン(復唱しただけではないか……)

イリア「は、はぁ……」

ハマーン「それに部屋が散らかっているのは、いつものことだ。お前も知っている筈だがな?」

イリア「……そ、そういえば棚や箪笥が開けっ放し……確かに、争った形跡にしては不自然だ。
    いや、しかし盗人がハマーン様の部屋を荒らしたと考えれば……」

ハマーン「少佐がこの部屋に入ったのはイリアも見ていただろう?
      こんな目立つ男が白昼堂々正面から盗みに入るなど、ありえん話だ」

ハマーン「ただ少佐の腕前が凄すぎてな、私も腰を抜かしてしまった」

イリア「こ、腰を!? それでは医務室に……」

ゼンガー「イリア少尉。これは自分の責任です、自分にハマーン様を介抱させてください」

イリア「何……!?」

ハマーン「少佐、いい心がけだな。武士道だけでなく、騎士道精神まで持ち合わせていたか」

ゼンガー(援護攻撃Lv1を覚えたような気がするぞ……)

イリア「……やや腑に落ちん所もあるが……では、ハマーン様を任せたぞ」

ハマーン「私を見くびるな。それより早く持ち場に戻れ、少尉」

イリア「……了解しました……」



イリア(……やはり釈然としない……)



ゼンガー「……何故俺を助けた、ハマーン」

ハマーン「ふ、ふふ……貴様はさっき私のことを女狐だと評したが、言い得て妙だな。
      確かに私は狐のように狡猾で打算的な女だったらしい」

ゼンガー「む……?」

ハマーン「貴様が言うように、アクシズは貴様とダイゼンガーの力を必要としているだろう。
      しかし、私は先程言ったように、戦争だけを見て生きているわけではない」

ゼンガー「それでは平行線ではないか」

ハマーン「そうだ、それは私の意思だからだ」

ゼンガー「簡潔に言ってもらいたい」

ハマーン「私が批判的でも、軍の将校達はそう考えている。そういうことだ」

ゼンガー「彼らの意思こそがアクシズの意思だというのか」

ハマーン「そう思いたいな。10年以上かけて貯め込んだ資金を未知のモノにつぎ込むなど、
      正気の沙汰ではあるまい。ハマーン・カーンが狂ったと思われるかもしれん」

ゼンガー「俺と斬艦刀がその大金に値する戦果を上げれば、誰も文句は言うまい」

ハマーン「そうでなくては困るのだよ、ゼンガー・ゾンボルト。慈善事業ではないのだからな」

ゼンガー「……その発言は、お前が要求を呑んだと見て良いのか」

ハマーン「勘違いするな、金は貸すだけだ。私が2000万相当の働きをしたと見なすまで、
      貴様の軍籍はアクシズに置いてもらう。勝手に辞めてくれるなよ、少佐」

ゼンガー「……しかし、お前が俺に求めるものはそれだけではあるまい。
      お前は俺に、大きな恩を売ったのだからな」

ハマーン「ほう……聡明だな、先程までの貴様とは別人のようだ」

ゼンガー「借りは返すのが礼儀。2000万の分は働いて返そう。
      だが、お前が俺の罪を問わない分に関しては……」

ハマーン「フ……それも、良い案を考えた。なに、難しいことではないよ」

ゼンガー「…………?」









ハマーン「貴様は今日から、私の忠実な下僕だ」

ゼンガー「……何……だと……」

ハマーン「何、難しい仕事ではないよ」

ゼンガー「しかし、下僕とは……」

ハマーン「例えば、私の護衛だ。幸い、用心棒としては申し分無い」

ゼンガー「むう……承知。用心棒ならば経験がある」

ハマーン「では、人は斬れるか」

ゼンガー「承知」

ハマーン「掃除はどうだ」

ゼンガー「承知」

ハマーン「紅茶を淹れろ」

ゼンガー「承知……友に淹れ方を教わればだが」

ハマーン「では、靴を舐めろ」

ゼンガー「む……」

ハマーン「椅子になれ」

ゼンガー「ぐ……」

ハマーン「添い寝をしろ」

ゼンガー「ぬぅぅ……!」

ハマーン「ハッ、所詮貴様はその程度の器だということだよ」

ゼンガー「黙れッ!」

ハマーン「…………!」 ビクッ!

ハマーン「……き、貴様が来たばかりの頃、二心は無いと言っていたな。
      だが結局、貴様は私を殺そうとした。武人の誇りとやらは、随分と軽いようだな」

ゼンガー「それは、俺が未熟なだけだ……」

ハマーン「しかも借りを返すと言っておきながら、貴様は靴も舐められんのだろう。
      貴様は心の底では、私に謝罪しようという気持ちなど一片も無いのさ」

ゼンガー「否。俺は本当に……」

ハマーン「本当にすまないという気持ちで胸がいっぱいなら……どこであれ土下座ができる……!
      例えそれが、零度以下……酸素無き……アステロイドベルトの上でもな……!」

ゼンガー「……承知」

ハマーン「……いや、待て。冗談というやつだよ」

ゼンガー「だが俺の謝罪したいという本心は嘘偽りの無いものだ。
      故にここでやれんと言えば、また俺は自分を偽ることになるだろう」

ハマーン「融通を利かせろと言ってるんだよ、愚か者め」

ゼンガー「ただ実直に進む……一意専心無くして、武人の道とは言えん。
      ただ、今の俺にその言葉が相応しいとは思えんが……」

ハマーン「フ……武人の魂というものが本当にあるのなら、
      貴様はそれを重力の井戸に落としたまま、忘れてきてしまったのだろうな」

ゼンガー「……すまんが、発言の意味が理解できん」

ハマーン「ハッ……貴様も宇宙に住めば、分かるようになるさ」

ハマーン「それでは、下僕に最初の仕事をさせるとしようか」

ゼンガー「ぬう……靴を舐めろと言うのなら……!」

ハマーン「いや、もっと簡単な仕事だよ。10秒程で終わる」










ハマーン「……私を、立たせろ」

ゼンガー「…………」

ハマーン「…………」

ゼンガー「……?」

ハマーン「は、早くしろ! さっきから、抜けた腰が戻らんのだ……」


―― 20日目 ――


ゼンガー「我が一刀は、雷の煌き!」 スパァン



ゼンガー「ふ、パーツを新調してからダイゼンガーの調子が良い……
      ダイレクト・モーション・リンクの効果が十二分に発揮されている」

ゼンガー「やはり流れていた半年の間に、相当痛んでいたようだな。
      一度パーツを交換するだけで、こうまで違うものか……」

イリア『今日も獅子奮迅の働きを見せてくれるな、ゼンガー少佐。
    暗黒怪獣のようなデカブツでさえ一撃とは』

ゼンガー「的の大きい相手だからこそです。MS相手ではこうはいきません」

プルクローン『こちらプルファイブ。獣士の掃討、完了しました』

イリア『ご苦労。こちらも終わったところだ。ゼンガー少佐が全部やってくれた』

プルクローン『流石です、少佐』

ゼンガー(面識の無い者にまで“少佐”だと……)


―― 格納庫 ――


ジュドー「聞いたよゼンガーさん! アクシズでも相変わらずの大活躍なんだって?」

ゼンガー「お前が運んでくれたパーツのお陰だ、礼を言う」

ジュドー「いやいや、お礼を言いたいのはこっち! あんな大口契約、滅多に無いんだから!」

ゼンガー「そうか……なら良いが。プルは一緒ではないのか?」

ジュドー「いや、それがさ……さっき風呂上がりに裸で走り回っちゃって。
     今イリアさんに怒られてるところだと思うよ」

ゼンガー「そういえば、αナンバーズでもルーやエルに怒られていたな」

ジュドー「色々と、成長しないんだよね」

ゼンガー「だが、確実に大人になっていくものだ(精神的な意味で)」

ジュドー「そうだね、もう大人かもしれない(性的な意味で)」

ジュドー「でさ……話は変わるんだけど」

ゼンガー「む?」

ジュドー「ハマーンがゼンガーさんにべったりだって噂を聞いたんだけど、ホントのこと?」

ゼンガー「…………」

ジュドー「おっ? 沈黙は肯定って言葉もあるんだけど?」

ゼンガー「……色々言いたいことはあるが……とりあえず、それは逆ではないのか」

ジュドー「逆ぅ? え、ゼンガーさんがハマーンにべったりってこと? うっそだぁ~!」

ゼンガー「その言い方には語弊があるが、客観的に見ればそうなるかもしれん」

ジュドー「ああ……なんかワケありかぁ。だよね、つまんないの」

ゼンガー(本当の事を話したら、食いついてきそうな気はするがな)


―― 通信室 ――


レーツェル『久しいな、友よ。どうだ調子は』

ゼンガー「悪くは無い」

レーツェル『そうか。宇宙は慣れないだろうが、食事は摂れているのか』

ゼンガー「ああ。最近、司令と同じ食事が摂れる。バランスも問題ない」

レーツェル『……体感時間も異なるだろう、睡眠は大丈夫なのか』

ゼンガー「ああ。最近、軍施設で一番良い部屋が与えられたのでな」

レーツェル『……伍長では給料も安いだろう、金は足りているのか。』

ゼンガー「ああ。最近、アクシズの資金が無制限に使えるようになった」

レーツェル『……10階級特進でもしたのか?』

ゼンガー「いや、伍長だが」


―― 33日目 ハマーンの部屋 ――


ゼンガー「雑誌を買ってきたぞ」

ハマーン「早く寄越せ、鈍間め。あと、紅茶を淹れろ」

ゼンガー「承知。ところで、そろそろ軍議が始まるぞ」

ハマーン「夢色パティシエールの続きが気になって、軍議どころではない」

ゼンガー「……遅れたら言い訳はどうする。俺が考えるのか」

ハマーン「任せる」

ゼンガー(任せるな)

ハマーン「…………」

ゼンガー「紅茶、置いておく」
 
ハマーン「ん」

ゼンガー「飲む時は布団から起き上がってからな」

ハマーン「ん」

ゼンガー(駄目だ、既に聞いておらん……)





ゼンガー「……それほど面白いのか? 夢色……チェイサーというものは」

ハマーン「夢色パティシエールだ。パティシエになることを夢見る少女が
      スイーツ(笑)を作るという話だが、もうすぐアニメ化する(マジで)程の人気があるぞ」

ゼンガー「……そうか」

ハマーン「なんだ、読みたいのか。一緒に読んでも構わんぞ」

ゼンガー「いや、遠慮する……」

ハマーン「ふん、つまらん男だな」

ハマーン「……少佐は、連邦に戻るのか」

ゼンガー「……唐突だな。何故、そのようなことを訊く」

ハマーン「私の周りの男は皆そうなのさ。期待させておいて、最後には置いていく」

ゼンガー「……連邦に戻るかは分からん。だが、地球圏の平和が
      再び脅かされるのならば、ここで燻っているわけにもいくまい」

ハマーン「そうか。少佐は正直者だな」

ゼンガー「元来、武人とは1人で生きる者だ」

ハマーン「……人は生きる限り1人だよ。人類そのものもそうだ」

ゼンガー「……少なくとも、2000万相当の働きをするまでは厄介になるつもりだ」

ハマーン「そうか。貴様が機体を傷つけて帰ってくるたびに、借金は増えているがな」

ゼンガー「……何……だと……」

ハマーン「気付いていなかったのか?」

ゼンガー「では、俺は……」

ハマーン「ハハハ、『神を断つ剣』は私の下僕だと言ったろ?」

ゼンガー「……参った。やはりお前は女狐だな、ハマーン」

ハマーン「最高の褒め言葉だ。良かったよ、強い男に会えて」



                    ~ 終わり ~




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