まどか「腹パン少女ひとみ☆ヒドカ・・・?」 前編

2011年05月07日 18:57

まどか「腹パン少女ひとみ☆ヒドカ・・・?」
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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/03/16(水) 22:46:21.54 ID:tE3xPLqNo


初めまして。VIPに立ててもすぐ落ちちゃうのでこちらでやらせてもらいます。
魔法少女まどか☆マギカのSSです。
本編では地味な志筑仁美(緑の子)が主人公のお話です。

注:腹パンネタとバキネタ多し。

独りぼっちは寂しいので色々突っ込みとか書き込んでくれると嬉しいです。


初めまして、志筑仁美(しづきひとみ)と申します。
緑色の髪に、おっとりとした性格。そしてお嬢様☆キャラな私です。
よろしくお願いします。志筑仁美です。

突然ですが、今朝も私はいつも通り親友である鹿目まどかさんと登校途中です。
いつもの待ち合わせ場所でまどかさんを待っているのです。

「あ、仁美ちゃん」

「まどかさん♪」

いつもの時間通り、まどかさんは待ち合わせ場所に到着。
あとは同じく親友である美樹さやかさんと合流し、学校に行くだけです。
ですがですが。
その前に儀式があります。大事な朝のセレモニーです。礼拝です。

「まどかさん・・・今日もよろしくお願いしますね」

「う・・・やっぱりやるの?」

「ええ。毎朝やらないと、私もう生きていけませんの・・・」

「わ、わかったよ・・・どうぞ・・・」

彼女は目をぎゅっと閉じます。
私は少し距離を取り、そして構えます。

「いきますわ」

ザッ、と踏み込み、私は・・・“拳”を突き出していました。
強烈な右ストレート。
狙うは・・・まどかさんのお腹!

ボスッ!

なんて重いパンチなのでしょう。
私の拳はまどかさんのお腹にめり込み、内臓を圧迫。
拳を包む柔らかい感触。
ああ、素敵ッッ!
そうです。これが儀式です。まどかさんのお腹にパンチをするという神聖な儀式。

「が、はっ!?」

一方でまどかさんは地獄の苦痛を体験中。
ごめんなさい。私パンチングマシンで100とか普通に出しますの。
最近はピアノの習い事を辞めて、神心会というところで空手を習い始めましたし。
日々鍛錬、毎日素振り100回です。噴破ッ。

「げほっ、げほっ・・・い、痛いよう・・・」

私はまどかさんの背中、それからお腹を優しく撫でます。

「ありがとうございました、まどかさん。それじゃ行きましょうか♪」

お腹を押さえていて両手の塞がっている彼女の鞄を持ち、私はルンルン気分で歩き始めました。
今朝も淑女なわ・た・し。

「う、うう・・・ねえ、仁美ちゃん・・・」

「なんですか?」

「やっぱり・・・こんなの絶対おかしいよ・・・」

「ええ。わかってますわ」

「なら、なんで・・・」

「まどかさんのお腹が・・・私の拳を呼んでいるのです」

まどかさんのお腹が私の拳を呼んでいる。
殴って!と。
私の拳と、まどかさんのお腹が触れ合う。
それはまさに恋人同士のキス。

「・・・。」

まどかさんは私をまるでアニメキャラの女装をしているオタク男性を見るような目で見ました。

「今はまだ理解できなくて当たり前です」

「わけがわからないよ・・・」

「いいえ。きっと理解できます。理解できたら、それはとっても嬉しいなって思いますの」



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ところで私は何故こうも腹パンの魅力にハマってしまったのでしょう。
それには訳があります。有害なアニメ漫画を見たわけではありません。
キッカケは些細な事故でした。

そう・・・私があの快楽を知ってしまったのは今から1週間ちょっと前のこと。
その日はとても天気のいい日で、いつものように学校へ行って、いつものように教室に入って・・・。
いつも通りの日常でした。

英語の授業が終わり、私は立ち上がりました。
さて、次の授業は何でしたっけ・・・?

「仁美ちゃーん!」

と、ここで桃色の髪の毛の、明るくて可愛らしい、まどかさんが走りながら私のところに。
しかしもう少しで到着するというところで、彼女は躓いて転びそうに・・・。

「わわわっ」

「あ、危ないっ! ですわっ」

私は咄嗟に彼女を受け止めようとしました。
けれどもちょっと鈍い私は突然の事態に対応できず、なんと手を“グー”にして彼女に差し出していました。
それが全ての悲劇の始まりでした。

私が“グー”にして差し出した手は、なんとまどかさんのお腹に突き刺さってしまいました。
ドスッ、という音。
何ともいえない柔らかい感触。

「かはっ!?」

私は全身の血が引いていくのがわかりました。
事故とはいえ、大事なお友達のお腹にパンチをしてしまったのですから。

「ご、ごめんなさい!まどかさん、しっかり!」

クラスメイトの視線。
お腹を押さえて床に倒れるまどかさん。

「ちょ・・・まどか、大丈夫?」

青い髪のこれまた私の大事なお友達である、さやかさんがまどかさんの背中をさすっています。

「・・・何事かしら」

更に最近このクラスに転校してきた、暁美ほむらさんまで。
私は頭の中が真っ白になっていくのがわかりました。

他人に暴力を振るったのなんて生まれて初めてでした。
私も暴力を嫌って生きてきました。なのに・・・。

「う、うう・・・もう大丈夫・・・ごめんね、私ドジで・・・」

そう言いながら、お腹を押さえつつ立ち上がるまどかさん。
涙を流しています。ああ。

「そ、そんな・・・悪いのは私の方ですわ・・・本当にごめんなさい」

「んー・・・まぁ、まどかが大丈夫って言ってるんだし・・・はいギャラリーの人は解散してー!」

さやかさんがそう言うと、クラスメイトはそれぞれ散っていきました。
席に座ったまどかさんに改めて謝罪をすると、私も自分の席に戻りました。

そして私は自分の手を見ました。
さっきのあの感触が蘇ります。
まどかさんのお腹に手がめり込んだ感触。
とても柔らかくて温かくて・・・ああ、快感・・・♪

っていやいや、私は何を考えているのでしょう。
暴力は駄目です。駄目。

でも、ああ・・・まどかさんのお腹・・・素敵ですわ・・・♪

柔らかい・・・柔らかい・・・。

それはまるで魔法のよう・・・

魔法も奇跡も、あるんだよ?

奇跡という名の、まどかさんのお腹・・・。

魔性の魅力ッ!

そうです。私はこの事件がキッカケで“目覚めて”しまいました。
まどかさんのお腹にパンチをするという、禁じられた遊び。
禁じられた快楽。禁じられた果実。禁じられた花園。

ああっ、まどかさんのお腹は私の理想郷ッ! 
まどかさんのお腹よ永遠なれッッ!!

頭に浮かぶのはまどかさんのお腹のことばかり。
寝ても覚めてもまどかさんのお腹のことばかり。
そう。この感覚は恋・・・恋に似ています。
会いたいッ。そう思い焦がれて・・・。
柔らかい感触。
できればもう一度あの感触を味わいたい。
私はまどかさんのお腹に恋をしてしまいました。

・・・・・・ですが、お腹パンチの信仰と歴史は常に苦難の道。

いつものようにまどかさんに腹パンした後、さやかさんと合流し
教室に入り授業を受けていたのですが・・・。
授業と授業の間の休み時間、ほむらさんは私に手紙を渡してきました。

手紙の内容は・・・お昼休み、校舎裏に来て、と。
まさかの告白イベント?仁美×ほむら? いいえ違います。
校舎裏に行った私を待っていたのは殺意と敵意を瞳に宿したほむらさんでした。

「貴女、ここ最近毎日鹿目まどかに暴力を振るっているわね」

「・・・何の話でしょう?」

「とぼけないで。私はいつも見てたわ。もう我慢の限界」

「いやー、見られてましたか」

「今すぐもう鹿目まどかに暴力は振るわないと誓って」

「・・・何故ですの?」

私がそう質問すると、ほむらさんは少し狼狽。
どうやら何て答えるか迷っているようです。

「ぼ、暴力は良くないからに決まってるわ」

「本当にそれだけ?」

「・・・。」

「言えないんですか?なら誓えませんね」

「くっ・・・鹿目まどかが心配だから」

「何故心配ですの?」

「か、彼女はわたっ、私のだだ大事な・・・」

「大事な?」

「・・・と、とにかく誓って。拒否すれば力ずくで誓わせることになる」

ニヤッ・・・と唇の端が持ち上がるのがわかりました。
まさかのほむらさん私に宣戦布告・・・!?
うへへへ。
ほむらさんのお腹の感触って・・・どんな感じなんでしょうかね?おっとヨダレが。

彼女は運動神経抜群。
けれども・・・所詮はただの女の子でしょう。
腹パンで鍛え抜かれた拳を持つ私に勝つつもりなのでしょうか。面白い。
そのクールに澄ました顔を苦痛に歪めさせて差し上げましょう。

「先に言っておきます。後悔しないでくださいね」

「どういうことかしら」

「腹パンをやめることなど誓えません。そして私はほむらさんには負けないからです」

ダッ。
先手必勝。
右足を出し、ほむらさんのお腹目掛けて拳を突き出します。
腹パンで鍛えられた拳。ヒットすればダウンは確実。
さぁ私に命乞いをしてください。君が泣くまで腹パンするのをやめないッ!

「甘いわ」

・・・あれ?おかしいですね。
私の拳は“空気”を殴っていました。
何故なら目の前から一瞬でほむらさんが消えたから。

消えた?
違う。ほむらさんは私の背後に回りこんでいた。一瞬で。
ぶわっ、と汗が全身から吹き出るのがわかりました。

「貴女ではどうやっても私には勝てない。大人しく諦めて」

「・・・嫌ですわ。腹パンは私の人生・・・まどかさんのお腹は私の人生ッ!」

ビュッ。
再び空振る私の拳。
そしていつの間にか背後に回っているほむらさん。

「仕方ないわね。でも丁度よかった。私のまどかに酷い事をする貴女は許せない」

ドスッ。

次の瞬間、私のお腹にほむらさんの拳がめり込んでいました。
・・・一瞬でした。
わからない。早い動きだとか、そういう次元じゃない。
文字通りワープ、もしくは一瞬時を止めてるとしか・・・ガハッ。

思えば、私が腹パンされたのはこれが初めてでしょうか。

痛い。重い。
引き摺るような痛みで内臓が悲鳴を上げています。呼吸ができない。
まさに痛みのフルコース。
苦痛のサラダ。苦悩のスープ。苦悶のステーキ。デザートに死のタルトはいかがですか?
まどかさんは毎朝こんな苦痛を味わっていたのですね・・・。

「わかった?これに懲りたらもう私のまどかに手を出さないこと。私のまどかにね」

ばたん、とその場に倒れる私。
ほむらさんはそのまま、つかつかと靴音を鳴らし背を向け歩き去ろうとしていました。
このままでいいのでしょうか。
私の人生を奪われて、まどかさんのお腹を奪われて・・・いいのでしょうか。
嫌です。こんなの絶対に嫌ですわ・・・。

ジワ・・・。

その時でした。私の体に異変が起きたのは。
あれ・・・?
なんでしょう、これ・・・。
まるで・・・体が解けてるみたいで・・・水に・・・流れ・・・。
痛みが消えていく。
不思議な感覚。

思い出しました。空手の愚地先生が言っていました。

“エンドルフィン”。

脳内モルヒネ。
これが分泌されると、痛みや疲れを感じなくなる。
身体能力も格段に向上する。

・・・力が湧いてきました。
血がマグマのように燃え、痛みや疲れ、全ての感覚が吹き飛びます。
世界がギラギラと輝いて見えます。
空を飛んでいるような浮翌遊感。高翌揚感。

「・・・よく起き上がれたものね。褒めてあげるわ」

私は立ち上がり、そして構えます。
まだ勝負は終わっていませんよ?

「愚かね」

・・・ほむらさんが消えました。
そして消えたと思った次の瞬間、彼女の拳が私のお腹に突き刺さっていました。

私は唇の端を上げ、ニヤリと笑いました。
計画通り。

「っ!?」

ほむらさんは驚いていました。
それもそのはず。私は彼女の腕をがっしり掴んでいたのですから。

そう。通常なら、痛みで膝を折り、その場でもがき苦しむはず。
しかし今の私は痛みを感じない状態。

「そ、そんな・・・」

ほむらさんが、焦っている。
やはり、そうでしたか。
こうして腕を掴まれていると、彼女は高速移動ができないのでしょう。

「チェックメイト・・・ですわ」

ボスッ!

「ぐっ・・・あ、あぁッ・・・」

私は容赦なく、ほむらさんのお腹に拳をめり込ませます。
まどかさんと同じく、柔らかい・・・素敵な感覚でした。
ああ・・・。ほむらさんのお腹もなかなか・・・。

「い、痛いよぉ・・・けほっ・・・ごほっ・・・」

「これが・・・腹パニストの力ですわ」

「うぅ・・・まどか・・・私のまどか・・・」

追い討ちはしない。それが腹パニストの掟。
私はくるりと踵を返し、歩き出しました。
ほむらさん。貴女のお腹・・・なかなか素敵でしたわよ。
あとついでにその苦しげな表情もグッときます。

「君、凄いね。あの暁美ほむらを素手で倒しちゃうなんて」

突然の背後からの声。
その声はどこか可愛らしい声で・・・。
私はその声のした方に振り返りました。聞いた事のない声ですが、一体どなた?

「・・・え」

私は絶句しました。
背後に居たのは・・・そう、白いリス?きつね?よくわからない生き物だったのです。
その生き物はまるで当たり前のように喋り始めました。

「僕の名前はキュゥべえ。君は?」

「え?ええと・・・志筑、仁美・・・ですわ」

「しかし驚いたなぁ。まさか普通の人が魔法少女を倒しちゃうなんて」

「魔法・・・少女・・・?」

ああ・・・。
そうです。これは幻覚です。きっとエンドルフィンを分泌し過ぎたのでしょう。
早く戻ってまどかさんに腹パンしないと・・・。

「ま、待って!君には素質がある。だから僕と契約して魔法少女になってよ!」

その生き物は私の前までトテトテと走ってくると、そう言うのでした。
契約?魔法少女?
生憎私は無宗教で・・・

「君、何か願い事がないかい?何でも叶えちゃうよ?」

「ね、願い事ですか?」

「うん!君が望めば今すぐにでも例えば・・・そうだね、地上最強の生物なんてどう?」

「地上最強の・・・生物」

「そうさ。腕力で全てを支配できる。ただし麻酔銃には負けるけどね」

う・・・。
確かにこの生き物が言っていることは魅力的に聞こえてしまいます。
腕力で世界を支配・・・痺れます。
力がつけば、腹パンもより強力に・・・。
男性にも負けない腹パン力・・・。

「ごめんなさい」

でも駄目です。
腹パンとは修行の積み重ねによって磨き、鍛え上げるモノ。
そんな他人の力によって得た腹パン力など無意味。
夏休みの宿題に完成品の貯金箱を買って提出するようなものです。
私はつらい修行の日々を思い出しました。
何度も挫けそうになりました。何度も涙を流しました。
特に束ねた竹に腹パンをする貫き手の修行がつらく
指なんていっそ無くなってしまえばいいなんて何度も思いました。

しかし、次の日には、こう思ってるんです。
“ああ。腹パンを極めたい”。

積み重ねた修行の分だけ強くなる。
まどかさんの苦悶の表情の数だけ強くなる。
それが“腹パニスト”・・・。

「志筑仁美・・・そいつの言う事に耳を貸しては駄目」

フラフラしつつも、立ち上がるほむらさん。
むむ・・・なんという回復力。
やはり彼女はタダ者ではないようですね。

「おっと・・・まぁいいさ。仁美。君は必ず僕と契約する事になるよ、いつかね」

そう言うとその生き物はトテテ、と走り去って行くのでした。
一体何だったのでしょう。今日は不思議なことだらけです。

「保健室・・・行きます?」

「触らないで。あぁ・・・まどか・・・痛い・・・助けて・・・まどかまどかまどかまどか・・・」

戦いとは虚しいもの・・・。
勝利しても悲しいもの・・・。
腹パンは呪われている。
そして同時に腹パニストも呪われている・・・。
しかし呪われていると知っていながら、この腹パンを極めるというゲームからは誰も降りようとはしない。
もちろん私も。他の腹パニスト達も・・・。

私は一筋の涙を流し、そして夕陽に向かって去っていくのでした。
拳に残っている、柔らかいほむらさんのお腹の感触を噛み締めながら。

そして話は1週間後に移ります。

夜の街。
ここはビルの屋上でしょうか。風がびゅうびゅうと吹いています。
綺麗な夜景です。
そんな夜景を見下ろしながら、一人の少女が呟きました。

「へえ、いい街じゃないか」

少女の隣には白い生き物もいました。

「まさか君が来るとはね」

少女はポッキーを齧ります。

「で、その唯一魔法少女に勝てた普通の人間・・・っていうのは誰なんだい?」

「名前は志筑仁美。年は君と同じくらいかな」

「へえ、面白い。ならあたしが生意気なそいつを教育してあげようかねぇ?」

少女は立ち上がりました。。
自信に満ちた顔付き。髪は長く、そして色は真紅でした。

街に不穏が舞い降りた、その日。
学校が終わり、私はさやかさんに連れられ、まどかさんと一緒に誰もいない路地裏に来ていました。

「ねえ、仁美。あんたさ・・・まどかに酷いことしてるんだって?」

「酷い事・・・ですか?」

「そうだよ。昨日まどかに泣きながら相談されてさ。あんた・・・一体どうしたのよ」

私はまどかさんをちらりと見ました。
するとまどかさんはサッとさやかさんの背後に隠れてしまうのでした。

「そうですわね・・・強いて言うなら・・・“呪い”ですわ」

「の、呪い・・・?」

「まどかさん、こちらへ」

私はまどかさんに手招きをします。
彼女は少し怯えながらも私の前まで近付いてきてくれました。

ドスッ。

そんないじらしいまどかさんのお腹に、躊躇無く腹パン。

「あぐっ・・・」

「ちょっ・・・仁美!?あんた何てことを・・・!」

「これが“呪い”ですわ。そして私はこの呪いを愛してしまっています」

まどかさんは咳き込み始めました。
さやかさんは必死に背中をさすってあげています。

「げほっ!かはっ・・・こんなの絶対おかしいよ・・・」

「よくわからないけど・・・お願いだからもうやめて。私たち友達でしょう?仁美・・・!」

「すみません。それは無理です。でも、一つだけ提案があります」

「な、何よ・・・?」

私はさやかさんのお腹を見ながら言いました。

「まどかさんの代わりに・・・さやかさんのお腹に、その・・・」

「は、はぁ!?」

「そうすればまどかさんには手を出しませんわ」

「・・・仁美、あんたサイテーね」

私は溜め息をつきました。
そう、これも腹パニストに課せられた呪いの一つ。
腹パニストは常に孤独を強いられる・・・。

「いいよ・・・。わかった。その代わり、本当にまどかにはもう手を出さないこと、いいね」

「はい♪」

友情とは儚いもの・・・。
ああ。主よお許しください。
私はついに二人目の親友であるさやかさんにまで手を出してしまいました。

ボスッ。

「んぐッ・・・はぁ、はぁッ・・・!」

私は容赦なくさやかさんのお腹に拳を突き立てます。
まどかさんとはまた違った感触。
彼女はお腹のお肉がまどかさんと比べ少しだけ少ないようで、ちょっぴり硬い感触。

「さやかちゃん!さやかちゃん!うう・・・こんなの間違ってるよ」

まどかさんは涙を流していました。
そう。この悲しみと涙が私を強くする・・・。
もう少し何とも言えないこの切ない余韻に浸っていたいところですが、そろそろ習い事の時間です。
ええと、今日は生け花でしたっけ・・・。
お花の代わりに剣山に豚さんの内臓をブチ撒けて、デス☆メタル生け花とか斬新じゃないでしょうか。
ワクワクします。

「ちょっと待ちな。あんた、あれだけ酷い事しておいてそのまま帰ろうってのかい?」

しかし、どうやら習い事には行けなさそう。
何故なら一人の赤い髪の毛の少女が道の真ん中で仁王立ちになり、私の行く手を塞いでいたからです。

「・・・すみません。急いでいるので通してくださいませんか」

「嫌だ・・・って言ったらどうする?」

その少女はへへっ、と八重歯を覗かせながら得意気に笑いました。

「あの。失礼ですが貴女のお名前は?」

「佐倉杏子。よく覚えときな。まぁ嫌でも覚えることになるだろうけどさ。で、あんたは?」

「・・・私は志筑仁美と申します。貴女こそよく覚えておいてくださいね」

「志筑仁美・・・へえ、あんただったんだ。魔法少女を倒した一般人とかいうの」

ま、また魔法少女・・・?
一体何なのでしょう。
世の中狂っています。
それに私は別にその魔法少女とかいうのを倒した覚えなどないのですが・・・。

「仁美・・・あんた魔法少女と戦ったことあんの・・・!?」

仕舞いにはさやかさんまで魔法少女がどうのこうの言う始末。
もう、わけがわからないよ・・・。
しかし。
私はある事に気付きました。
拳が・・・熱い・・・ッ!

この杏子という子、さっきからちらりちらりとおへそが見えています。
おへそを見せるということは・・・腹パンしてくださいと言っているようなもの・・・!
それにその得意気な顔を苦痛に歪む顔に変えてやりたい。そんな気もします。
やはり私は・・・戦いの運命からは逃れられないようですね。

「いきますわ」

腹パンファイトは先手必勝。
ザッ、と踏み出すと、私はその子のおへそに向かって拳を突き出します。
しかし。

「・・・・・・ッッ!?」

ガキッ、と私の拳は―――なんと槍のような武器で止められていたのです。
・・・槍?そんな物、一体どこから?
それにこの子・・・いつの間にか赤い服を身に纏っていて・・・。

「なんだ。大したことないじゃん」

ガッ。

次の瞬間、腹部に強烈な痛み。
腹パンではありませんでした。
彼女は・・・“腹キック”をしたのです。
“腹キック”・・・その歴史は古代インドにまで遡り・・・。
あまりにも残虐、あまりにも無慈悲なため、腹パン道の中では禁じ手とされる秘技ッ!

「な・・・!あの子も魔法少女!?」

「仁美ちゃん!お願いもうやめて!魔法少女になんか敵いっこないよ!」

くっ・・・!
この痛み。全治三ヶ月といったところでしょうか。
それにしても、あのコスプレ少女・・・その魔法少女とかいうのなんですか?
確かに可愛らしい服だとは思いますが・・・
個人的にはさっきのおへその見える服の方が好みで・・・。

「痛いだろ?あんたはもっと人の痛みを知りな」

「ぐっ・・・かはっ」

結局、私はその場に倒れてしまいました。
腹キック・・・なんて恐ろしい技・・・ッッ
そういえばこの赤いコスプレ衣装、スカートなんですね。
この位置からだと中の赤と白の縞々模様が見え・・・とここで私の意識はレッドではなくブラック・アウト。

「ひ・・・仁美?」

「こいつなら大丈夫さ。少し気を失ってるだけ。それより大丈夫か?」

「え、あ・・・はい・・・ありがとう、ございます・・・」

「ん。膝から血が出てんぞ」

赤い髪の少女はポケットから絆創膏を取り出し、それを青い髪の少女の膝に貼ってあげるのでした。
ア○パン○ンの絆創膏でした。

(ポッ・・・)

青い髪の少女は、自分の顔が熱くなっているのに気付きました。
胸がドキドキと高鳴ります。
この女の子・・・強いし、カッコいいし・・・それに優しい・・・。

「これでよし。んじゃあたしは帰るよ。腹減ったし」

「あ・・・ま、待ってください!私、美樹さやかっていいます!あの、良かったらお礼に私が料理を・・・!」



そしてここからは恋する乙女、美樹さやか視点に。
恋とは唐突なもの。
出会いとは唐突なもの・・・。
白馬の王子様を夢見るわたし。
ああ。いつか素敵な王子様が囚われの姫である私を救いに来ますように・・・。

そんな私の元に、ついに王子様が。
それは赤くて長い髪の王子様。
私・・・いえ、お姫様を悪の腹パン魔から救ってくれた、赤髪の王子様・・・。

もちろん姫はその赤髪の王子に恋をしてしまいました。
王子は強くてカッコよくて優しくて・・・。そして可愛らしい顔立ちでした。
姫は救ってくれたお礼に、王子に手料理を振舞ってあげることにしました。
王子はハンバーグが好物だそうです。
姫は愛情を込め、ハンバーグをこねました。

王子はそのハンバーグを食べて、ニッコリ笑顔。
僕は将来、こんな美味しい物を毎日作ってくれる人と結婚したいな。
まぁっ・・・王子様・・・。でしたら私がお嫁さんに・・・。
王子と姫はキスをしました。
そして長く永遠に二人は幸せに暮らしましたとさ・・・。

「なぁ、急に押し掛けて迷惑じゃないのか?」

「いえ・・・そんなこと・・・ないです・・・王子様・・・」

「へ?王子?」

さて。王子様は腹ペコです。
さやかちゃんが頑張って美味しいものを作ってあげないと!
私はコネるよハンバ~グ♪
愛を込めてコネるよハンバーグ♪
美味しいって言ってくれるかな?言ってくれるよね♪
そしてハンバーグから始まる恋・・・きゃっ♪

静かなビーチで沈む夕陽を見ながら愛を誓う二人・・・♪
さやか。好きだ。あたしと結婚してくれ。
杏子さん・・・嬉しいですっ・・・でも私達は・・・
性別なんて関係ない。それに君が望むのならあたしは男になってもいい。
それくらい・・・深く深くさやかを愛しているんだ。
きょ、杏子さん・・・・・・。
さやか。ずっとあたしと一緒にいてくれ。あたしにご飯を毎日作ってくれ。
杏子さんっ・・・私も好きです・・・杏子さんのこと愛してますっ!
さやか・・・二度と離さないよ・・・さやか!
あぁ・・・杏子さん!

「あ、あの・・・杏子さん、できました」

「おおっ、美味そうっ!」

「あの、ご飯もおかわりあるんで・・・」

よほどお腹が空いていたのか、ガツガツと凄い勢いで食べ始める王子様。

「あ、あの・・・美味しいですか?」

私の問いに、王子様は「おう、美味いぜ」とニッコリ笑顔。
その笑顔に釣られて、私まで笑顔に。
喋り方とか、食べ方とか仕草とか男の子っぽいのに、顔と体は女の子。
なんだか・・・そこがとても魅力的・・・♪

・・・ああ。でも落ち着いて、さやか。よく考えて。
どんなに男の子みたいでも、相手は正真正銘女の子なのよ。
女の子同士じゃ結婚できないし、赤ちゃんも・・・。

「さやか、良かったらまた作ってくれねえか?」

ニッコリ笑顔の杏子。
ズキューン。
そうだよね!愛があれば性別なんてどうでもいいよね!
さやか。自分に正直になりなさい。自分の恋を貫き通すのです。恋を信じるのです。

「あ、あの・・・杏子さんは赤ちゃんとか・・・」

「え?赤ちゃん?」

「はい・・・赤ちゃんについて・・・どう思ってます?」

「んー・・・赤ちゃんってコウノトリが運んでくるんだろ?それくらい知ってるぜ」

「い、いやそうじゃなくて・・・」

「ん。違うのか?あたしのパパがそう言ってたぞ」

おっと、鼻血が。
赤ちゃんがどうやって産まれるのか、じゃなくて
杏子さんは赤ちゃんとか欲しかったりします?って聞いてるつもりなのに。
なんて純情で純粋な王子様なのだろう。
やだもう。この子を守りたいっ!
あ、でもやっぱり守られたいっ!
いやでもやっぱり守りたいっ!
いやでも・・・嗚呼。誰か助けて。さやかちゃんは恋に狂っています。
私って、ほんとバカ・・・。

「あ、それと・・・あたしのことは呼び捨てでいいよ」

「え・・・いいんですか?」

「敬語もナシだ。そういう堅苦しいのはあたしも好きじゃないし」

「え、ええと・・・うん、わかった・・・」

「よし。それじゃもう帰るよ。ご馳走様」

「え・・・もう少しだけ・・・」

「ごめん。帰ってお○ゃる丸見てえんだ」

「あ、なら家で・・・紅茶とケーキもあるし・・・」

「け、ケーキ・・・ごくり・・・し、仕方ねえな。そこまで言うなら・・・」



そして数時間後。
辺りが真っ暗になった頃、私・・・志筑仁美は目覚めました。
随分長い間気を失っていたようです。
さすがにまどかさん、さやかさん、そしてあの赤い髪の少女はいませんでした。

赤い髪の少女・・・佐倉杏子・・・。
ええ。確かに貴女のお名前・・・一生忘れることはないでしょう・・・。

私は泣きました。
初めての敗北。腹パンファイトでの敗北。

私は・・・本物に出会った。
腕も細く、胸も小さい少女。
その少女に打たれ―――蹴られ―――叩きつけられた。“理合”に敗れたのだ。

「まぁ、気を落とさないで。杏子はベテランで魔法少女の中でも強い方だから」

・・・そしてまた現れた、不思議な生き物。
私はその場に座り込み、この生き物の顔を睨みました。

「・・・魔法少女って、何なんですの?」

「いい質問だね。簡単に言えば、正義の味方さ」

「正義の味方・・・?」

「そう。人間に悪の種を植えつける魔女を倒すのが魔法少女の役目なんだ」

「それは・・・本当の話ですの?」

「全部事実だよ。ちなみに君がこの前戦った暁美ほむらも魔法少女さ」

「・・・。」

「君も魔法少女になるかい?君なら杏子なんて簡単に踏み潰せるくらい強い魔法少女になれるよ」

キュゥべえさんの言うことが魅力的に聞こえてしまいます。
悔しい。杏子さんに腹パンしたい。泣かせたい・・・。
負のエネルギーが沸々と湧いてきます。

「キュゥべえさん・・・私、あなたと契・・・」

そう言い掛けた瞬間。

『駄目よ』

声が、しました。
見上げると・・・そこには・・・えっ、私・・・ッッ!?
そう。そこには“私”がいたのです。

「あ、貴女は・・・」

『私は貴女。貴女が目指す貴女―――貴女がなりたい貴女―――志筑仁美そのもの』

「まさか・・・私の完成系・・・!?腹パンを極めた私ですの・・・ッ!?」

『貴女は・・・最強になりたいの?それとも腹パン道を極めたいの?』

「え、あ・・・それはもちろん・・・腹パンを極めたいに決まってますわ!」

『なら・・・貴女は今試されています。最強になるか、腹パンを極めるか』

「ああ・・・。そうですわね。ねえ、キュゥべえさん・・・」

「なんだい?契約するって決めたのかい?」

「そのお返事ですが・・・」

ドゴッ!

私はそのキュゥべえさんのお腹を思いッきり殴り飛ばしていました。
餅を殴っているような、どこか不快な感覚でした。

「これが返事ですわ」

私は立ち上がり、歩き始めました。
そうです。
誘惑に負けそうになるとは不覚。修行のやり直しです。
背後から「わけがわからないよ・・・」というキュゥべえさんの声がしました。

次の日。
私は修行のため、包帯を巻いて拳を封印していました。
まぁどの道、さやかさんには杏子さんというボディーガードがいて手が出せませんが。

「あれ?仁美ちゃん、その腕どうしたの?」

ああ。あんなことがあった次の日なのに私の事を気に掛けて下さるまどかさん。
彼女は本当に天使。思わず目頭が熱くなります。

「ええ。これは・・・封印ですの」

「封印?」

「腕が・・・疼きますの・・・ぐっ、ああっ、し・・・鎮まって・・・!」

くっ・・・!
私の腕がまるで意思を持ち始めたかのように暴れます。
無防備なまどかさんのお腹。腹パンシタイ・・・腹パンシタイ・・・そう腕が訴えています。

「仁美ちゃん、大丈夫・・・!?」

「え、ええ。この苦痛・・・いえ“Pain”は、まどかさんにはわかりませんわ」

「仁美ちゃん・・・」

私は深い溜め息をつき、俯きます。
すぐ近くでは、さやかさんと杏子さんが楽しそうにお喋りをしています。

「さ、さやか・・・その・・・あたし、住むとこに困っててさ・・・さやかの家に住んでいいか?」

「えっ・・・い、いいよ?私も杏子と一緒に住めるのなら・・・嬉しいし・・・」

やれやれ。
昨日会ったばかりなのに仲良くなるのが早いですね。
運命の出会いってやつですか。羨ましくなんかありません。

「鹿目まどか。私も住むところに困っているのだけれど」

「あ、そうそう・・・そのことでほむらちゃんにお話が・・・」

「何かしら」

「その・・・うちの屋根裏に勝手に住むのはやめてくれないかな、って・・・」

「わかったわ」

・・・もう。
杏子さんもほむらさんも、なぜ私に相談してくれないのでしょうかね。
部屋ならいくらでも余ってますのに。
私って・・・人望がないのでしょうか。ちょっとガッカリです。

そして話は飛んで、あっという間に放課後。
さやかさんと杏子さんは、手を繋いで一緒に先に帰ってしまいました。
なので、今は私とまどかさん、二人きりの帰り道。
あ。でもほむらさんがコソコソ後をつけていますね。
まどかさんは気付いていないようですが。

「仁美ちゃん、今日はその・・・お腹にパンチしないんだね」

「はい。修行中の身なので」

「ずっと修行中で居て欲しいなぁ・・・また元の優しい仁美ちゃんに戻って欲しいよ」

「それは・・・きっと無理ですわ」

「ええ・・・やだよ・・・諦めちゃだめだよ・・・」

「まどかさんも、大人になればわかると思います」

その後、私たちは途中でファミレスに寄りました。
私は飲めもしないブラックコーヒーを注文し、一方でまどかさんはイチゴパフェを注文。
少し離れた席に居るほむらさんも私に対抗してブラックコーヒーを注文したようです。しかも2杯。

「2人でファミレスというのも久しぶりですわね」

「そうだね。いつも私とさやかちゃんと仁美ちゃんの3人で来てたからね」

「そういえば、まどかさんは・・・魔法少女とやらのこと、どう思います?」

「う、うーん、私もよくわからないけど・・・他の人のためになるのなら、それは素敵なことかなって」

「他の人のため、ですか・・・」

と、ここでブラックコーヒーとイチゴパフェが運ばれてきました。
私はコーヒーを一口だけ口に含むと、余りの苦さに思わず吹き出し、テーブルを汚すのでした。
見れば同じくほむらさんも口からコーヒーを垂れ流し、テーブルを汚していました。

「あ、仁美ちゃん一口食べる?美味しいよ」

「え・・・あ、いただきますわ」

私は“あーん”をして、まどかさんにパフェを一口だけ食べさせてもらいました。
甘酸っぱいイチゴ、そしてとろけるような甘さの生クリーム・・・。
やはり私にはこっちの方が合っているようです。
追加でお子様ランチを注文します。

「んっ・・・美味しい・・・」

「えへへ。仁美ちゃんもイチゴパフェ注文すればよかったのに」

「私のまどか・・・」

「そうですわね・・・もうコーヒーは懲りましたわ」

ここでお子様ランチが到着。
チキンライスに刺さっている旗は日の丸でした。
私は店員さんが持ってきたバスケットの中のおまけのオモチャをどれにするか選びながら、話を続けます。

「なら、まどかさんは魔法少女になるおつもりで?」

「ううん。ほむらちゃんが駄目だって言うから・・・まだちょっと考え中、かな」

「そうですか・・・」

結局私は小さなクマのぬいぐるみを選びました。名前はシコルスキーという名前にしましょう。

「でも不思議ですわね。非現実的かつ非日常的ですわ。まるで私たちだけ別の世界に来たみたい」

「・・・そうだね。誰も知らないんだもんね。私ちょっと怖いよ」

「私のまどかは私が護る」

「お前が長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくお前を見返すのだ・・・ニーチェの言葉ですわ」

「あ、小説とかで見た事あるかも・・・」

「魔法少女・・・あまり深く関わらない方が身の為・・・そんな気がしますわ」

「そ、そうかな・・・」

「といっても、深淵は既にこちらに興味津々かもしれませんけどね」

そう言って、私はお子様ランチのハンバーグを口に放り込みました。
しかし、こう見るとお子様ランチってジュースにプリン、そしてオモチャまでついてくるなんて
やっぱりお得ですわね・・・。


少しして、注文した物をコーヒー以外食べ終えた私たちはファミレスを出るのでした。
シコルスキーは鞄の中にいます。
魔法少女、それに魔女・・・なんだか世界がいつもと違って見えます。

そして私は・・・異変に気付くのでした。

「あ、あれ・・・この感じ・・・」

何かに、引っ張られるようなこの感覚。
胸の中のモヤモヤ。違和感。誰かが私を呼んでいる・・・。

「ひ、仁美ちゃん・・・?」

「こっち・・・ですわ・・・」

何かに呼ばれるまま、フラフラと歩いていく私。
商店街を抜け、路地裏を抜け・・・。
辿り着いたのは、とある寂れた廃墟。

「誰かが、ここに私を・・・」

私は誘われるまま、廃墟の中へ。
まどかさんも慌てて私の後をついて来ます。
建設途中で放置されたのでしょうか。
剥き出しのコンクリートの柱がそこら中にあります。
そのコンクリートの塊の中を進みつつ・・・ついに、私を呼んでいる人物に出会うのでした。

「あら。あなた達、ここで何をしてるのかしら」

私を呼んでいた人物。
それは大きな胸に金髪をくるくる巻いた女の子でした。

「ッ・・・!」

私はこの人を見た瞬間、全身に電撃が走るのがわかりました。
この人・・・タダ者じゃありません。
というより・・・この人、まさか私と同じ腹パニスト・・・ッ!?

「あらあら。一目見て気付いたわ。貴女私に惚れてる」

ビクッ、としました。
貴女・・・とはまどかさんではなく、間違いなく私のこと。
そう。一流の腹パニスト同士は惹かれ合うのだ・・・。

「でも・・・その腕の包帯を見るに、拳は封印中ってとこかしら」

「・・・はい。そんなところですわ」

「私の名前は巴マミ。よろしくね」

「私は・・・志筑仁美と申しますわ」

この人・・・相当な腹パニストのようです。
対峙しているだけで全身から汗が噴き出ます。
私は包帯を外し、構えました。本能が危険を察知し構えさせたのです。

「ね、ねえ・・・喧嘩はよくないよ・・・昨日みたいにまた・・・」

「・・・まどかさんには昨日の杏子さんとの戦いがただの喧嘩に見えたんですか?」

「え・・・?」

「あれは正真正銘、殺し合いでしたわ。私が消力(シャオリー)を会得していなければ、腹キックで今頃・・・」

「そんな・・・」

そんなやり取りを見て、マミさんは軽く溜め息をつくとまどかさんの方を見ました。

「貴女のお名前は?」

「え・・・あ、鹿目まどか・・・です」

「そう。いい名前ね。ちょっといいかしら」

ツカツカ、と靴音を鳴らしてまどかに近づくマミさん。
彼女はまどかさんを頭を優しく撫でると、次の瞬間――――

ドスッ。

「あがッ・・・!?」

なんと、まどかさんに腹パンをしていました。
頭を撫でて油断させたところで、腹パン。
やはりこの人・・・猛者です。手馴れています。
パンチを繰り出すタイミング、キレ、シャープネス・・・全てが完璧。
理想の腹パンです。

「げほっ・・・かはっ・・・痛い・・・痛いよぉ・・・」

お腹を押さえながら地面を転がるまどかさん。
しかし私は見抜いていました。
あの腹パンは――――ッッ

「ごめんなさい。鹿目さん、貴女いいお腹ね。でも痛くないはずなのだけれど」

「えっ・・・でも・・・あれ?い、痛く・・・ない・・・?」

そう。あれは“無痛腹パン”。
無痛腹パンは相手にダメージを残さず、かつ苦痛を最小限に抑えた最も慈悲深い腹パン。高級技です。
改めて全身に戦慄が走ります。

「ところであなた達・・・今すぐここから出て行ってくれないかしら」

「・・・何故ですの?」

「そうね。ここに魔女がいるって言えばどれだけ危険な状況かすぐわかってくれるかしら」

「ま、魔女って・・・まさか、マミさんも・・・」

「・・・魔法少女、ですの?」

「そうよ」

刹那、バリンと鏡の割れる音。
辺りを見回すと、それまでコンクリートの塊だった廃墟は“お菓子の空間”になっていました。
壁には生クリームが垂れ、床はケーキのスポンジ。
そこら中に人の大きさほどの巨大な棒付きキャンディーが突き刺さっています。
毒々しい狂気の世界。

「・・・ごめんなさい。巻き込むつもりはなかったのだけれど」

そう言うと、マミさんは文字通り“変身”しました。
光に包まれたかと思えば、次の瞬間には美しい戦装束に身を包み、手には白いマスケット銃。
非現実、非日常の連続。まるで夢のよう。頭がクラクラします。
しかしこれは夢ではなく現実・・・なんですよね。

「ここは・・・まぁ早い話、魔女の巣ね」

「魔女の巣・・・ですか?」

「そう。残念だけれど、一度入ったら出られないわ。かといってここにあなた達を置いていくのも危険」

「ということは・・・」

「ええ。私について来て」

見れば見るほど狂気の世界。
常人・・・いや狂人ですら理解できないであろう世界。
そこら中に巨大なお菓子が転がり、甘い匂いの充満した絵本の中のような世界。
瓶の中で踊り狂うカラフルなキャンディー。
真っ赤な生クリームが溶け、血のように滴る。
砂糖で出来たサンタが子供の手足を切り刻む。
巨大なチョコチップクッキーのチョコは、よく見れば人の頭。
頭がおかしくなりそう。

「こっちよ」

私にとって、異能の力を持つ魔法少女は厄介な存在でした。
しかし今はその魔法少女のマミさんがとても頼もしく見えます。
足が震えます。怖いのでしょうか。
この夢の世界が怖いのでしょうか。
まどかさんも震えていました。

「えへへ・・・私、ほむらちゃんと一度だけこういうとこ入ったことあるから初めてじゃないんだけど・・・でもやっぱり怖いよ」

「大丈夫ですわ。いざとなったら私がこの拳で戦いますから」

・・・なんて言いつつも、はっきり言って自信がありません。
というのも魔女にお腹があるのか不明だからです。
お腹が無ければ勝ち目は無いと言っていいでしょう。

・・・怖い。
でももし仮にマミさんが倒れたら、後は戦えるのは私のみ。
私はまどかさんを守れるのでしょうか。
まどかさんのお腹を・・・守れるのでしょうか。
いえ、守る。守りたい。守ってみせるッ!
珍しく正義感に燃える私です。ふんすっ。

「さて。来たわよ」

マミさんはマスケット銃を構えます。
前方から、何かの大群がやってくるのが見えました。
・・・その大群はよく見ると、羽の生えた“何か”の大群。
ただ、1体1体がドス黒い殺意を私たちに向けていることはわかります。

パンッ!

マミさんはその大群に向かってマスケット銃を撃ち始めます。
地面に大量に突き刺さった銃を抜き取り、撃っては捨て、撃っては捨て・・・。
至近距離の敵はそのまま銃で殴りつけ、地面に叩きつけています。
マミさんは笑っていました。
思わず見惚れてしまう、踊るような美しい戦い。

「私ね。実は一人が嫌なの。寂しいなぁって。でも今はあなた達がいるから安心して戦える」

「マミさん・・・」

「さぁ行きましょう。魔女はこの先よ」

私たちは走りました。
魔女という名のこの世界の出口へ向かって。
やがて見えてくる、一際広い空間。
空間の中央には可愛らしい小さなぬいぐるみのようなものが優雅にお茶を楽しんでいました。
これが魔女なのでしょうか。

「マミさん・・・私も戦いますわ」

「ありがとう。でも大丈夫よ。その一言だけで十分。もう何も怖くない」

マミさんは私にウインクしてみせました。
大丈夫だから大人しく見ててね、というサイン。
私はまどかさんをしっかり抱き寄せ、マミさんの戦いの舞踏を見守ることにします。

ダンッ。ズドンッ。

火を噴くマスケット銃。
銃弾は魔女をかすめ、ティーポットを割り、ケーキを粉々に砕きます。
被弾しつつも未だ優雅にお茶を飲む魔女。
しかし、そのお茶を1杯飲み干すと魔女はついに動き出すのでした。

小さなぬいぐるみのような魔女。
しかしそのぬいぐるみの口から出たのは真っ黒な煙の塊。
煙の塊はやがて毒々しい水玉模様を纏い始め、その先端には真っ白な仮面のような顔が形成されるのでした。

まるで子供の落書きのような稚拙な顔。
しかし口にはギザギザの噛み切るのに特化した見るからに恐ろしい歯が並び、見る者に恐怖を与えます。
マミさんはその塊に向かってマスケット銃を乱射しますが、まるで効いていない様子。
手に汗が滲みます。
私もまどかさんも、マミさんの勝利をじっと祈るばかり。

撃っては魔女の攻撃を避け、撃っては避け・・・それを繰り返すうちに、マミさんは明らかに消耗。
このままでは・・・。
いかし私には何もできません。恐怖で体が言う事を聞かないのです。

はぁはぁと肩で息をするマミさん。
焦れた黒い塊の怪物はチャンスとばかりに急接近。
そしてその大口を開け、マミさんに向かって――――

マミさんの頭が――――



――――いいえ。
彼女はギリギリのところで怪物の攻撃をかわし、跳躍。



「ティロ・フィナーレ!」



メリッ、ゴシャッ!という何かが割れる音。
私は何が起こったのか、一瞬理解ができませんでした。
しかし。

マミさんはなんとその怪物の額に――――拳をめり込ませていたのです。


私は衝撃を受けました。
こ、これは“剛・体・術”~~~~ッ!?


腹パン・スクールの頃――――
体重60キロの師匠(センセイ)が見せた奇跡(ミラクル)・・・・・・。

昔・・・私たち腹パニスト候補生達が冗談で用意したボーリング玉。
師匠(センセイ)はそのボーリング玉を、“剛体術”を使い粉砕してのけた。


『仮に動作に必要なこの関節を―――完全に固定化できたなら 人は鉄球になれる』


そう。あの怪物は額に拳ではなく――――鉄球の直撃を受けたのです。
ピシリピシリとヒビが入り、やがてボロボロと崩れ落ちていく怪物の白い仮面。
仮面が全て崩れ去ると、黒い煙の塊は霧散。
同時に、この狂気に満ちた世界も終焉を迎えるのでした。
私たちは、元の世界・・・あのコンクリートの廃墟へ生還することに成功したのです。

「ふう。一件落着ね」

白い無骨なコンクリートの廃墟も、今は夕陽でオレンジ色に染まっていました。
現実への帰還を実感です。

「あの、マミさん・・・ありがとうございました。マミさんがいなければ私もまどかさんも今頃・・・」

「いいのよ。むしろあなた達を巻き込んでしまって申し訳ないくらい」

私は今回、貴重な体験をしました。
世の中には表と裏がある。
そして私は自分の身すら守れない弱者だということ。
腹パンは所詮人間相手にしか通用しないこと。
そして・・・世の中には信じられないくらい強い人がいるということ。
私はその人に憧れを抱いてしまったこと。

「あの・・・どうすればマミさんみたいに強くなれますの・・・?」

「あはは。やっぱり魔法少女になることかしらね」

「やっぱり・・・そうですか・・・」

私は俯き、そして考えました。
私は強くなりたいわけじゃない。ただ腹パン道を極めたいだけ。
でも、自分すら守れない人間が腹パン道を極めて一体何になるのでしょう。
井の中の蛙だったことに気付いた私は、考えが少しずつ変わってきていました。

「仁美ちゃん・・・もしかして、魔法少女になっちゃうの・・・?」

心配そうな瞳で私のことを見るまどかさん。
私は思いました。
さっき、あの狂気の世界で震えるまどかさんを抱き締めていた時。
あのとき私は確かに思いました。まどかさんのお腹を守りたい、と。
何よりも他人を優先する優しいまどかさん。最高のお腹を持つまどかさん。
そんな彼女のお腹を守りたい・・・確かにそう思いました。
不思議な感情です。

「守りたい人がいる、それだけで十分魔法少女になる価値があると私は思うわ」

「・・・。」

「でも焦る必要はないから、よく考えて決めてね」

「・・・そうしますわ」

マミさんはニコリと微笑むと、階段を降りて私たちの前から姿を消してしまうのでした。
残された私は、相変わらず俯いたまま考え事をしていて。

「・・・そうですわね。魔法少女になるのも悪くないかもしれません」

「えっ・・・」

「守りたいお腹もありますし、マミさんもカッコよくて素敵だなぁって思いましたし・・・」

私がそう言った瞬間。
背後から、トテトテ・・・という足音が聞こえるのがわかりました。
どこかで聞いたことのある足音。この足音は間違いなく・・・。

「やっぱり仁美は魔法少女になるって信じてたよ」

「・・・はいですわ」

「あれっ・・・きゅ、キュゥべえ・・・?」

そう。背後にいたのはあの白い謎の生き物、キュゥべえさん。

「魔法少女になれば、守りたい人を魔女から守れるからね。うん。いい選択だと思うよ」

私はキュゥべえさんの前まで歩きます。
殴り飛ばしてしまったこともあるけれど・・・この生き物が私に力を・・・。

「キュゥべえさん。お願いしますわ。私、力を手に入れてまどかさんを守――――」


「その必要はないわ」


私がそう言い掛けた瞬間、コンクリートの柱の影から一人の少女が現れました。
その少女は長く美しい黒髪で――――

「ほ、ほむらちゃん・・・?」

「志筑仁美。命は投げ捨てるものではないわ」

ほむらさんはツカツカと靴音を鳴らしながらこちらへ近づいてきます。
そしてキュゥべえさんを掴むと、窓から放り投げました。
わけがわからないよ・・・というキュゥべえさんの声が虚空に響き渡ります。

「鹿目まどかは私が守る。だから貴女は大人しく美樹さやかにでも腹パンしてなさい」

「それは無理ですわ。さやかさんには杏子さんという番犬が」

「それよりほむらちゃん、なんでパンツを頭に被ってるの?しかもそれ私のだよね?」

「これはヘルメットよ。志筑仁美。貴女は何もわかってない」

じっと私のことを睨むほむらさん。
その瞳には明らかに燃えるような殺意が宿っています。
なぜほむらさんはこんなにも私に敵意を持っているのでしょう。
やはり、あの腹パンが原因なのでしょうか。

「魔法少女になるということは不幸を背負うということ。貴女が悲しめば鹿目まどかも悲しむ。認めたくないけれど」

「でも私は力が欲しいんですの」

「力なんて必要ない。それでも魔法少女になるというのなら私は貴女を殺す」

「ほむらちゃん、私のパンツ返して」

「・・・あらあら。でもほむらさん、私に負けたじゃありませんか」

「あれは油断していただけ。今度は容赦しない」

ほむらさんは懐から拳銃を取り出し、私に銃口を向けます。
・・・拳銃ですか。
どうやら彼女は本当に私を殺すつもりなようです。

「やめて・・・お願い・・・こんなの絶対おかしいよ・・・」

「止めないで、鹿目まどか。これも貴女のため」

「やめてくれないなら・・・いいよ。私、仁美ちゃんと一緒にほむらちゃんと戦う」

「ほむっ!?」

「まどか・・・さん?」

・・・どうやら私は心強い味方を手に入れたようです。
ほむらさんも予想外の展開に、すっかり戦意を喪失してしまった様子。

「そうね。争いは良くないわ。鹿目まどか。こちらへ来て。何もしないから」

そう言いながら、ロープを取り出しハンカチに謎の液体を染み込ませるほむらさん。

「仁美ちゃんは絶対に人殺しなんかしない。でもほむらちゃんは本当に仁美ちゃんを殺そうとしてる」

「鹿目まどか。飴あげるから私と一緒に来て」

「人殺しなんて絶対間違ってるよ・・・。だから私は仁美ちゃんの味方になる」

「くっ・・・」

悔しそうに唇を噛むほむらさん。
何故彼女はそんなにまどかさんにこだわるのでしょう。
そして何故まどかさんには手を出そうとしないのでしょうか。

「志筑仁美。貴女は運がいい。鹿目まどかに感謝することね」

「あ、待って、ほむらちゃ――――」

彼女はまどかさんを無視して、廃墟の奥の闇へと走り去ってしまうのでした。
ほっと胸を撫で下ろす私。
そして同時に思いました。
やはり・・・私は魔法少女になるしかないようです。

「ほむらちゃん・・・私のパンツ返してよー・・・こんなのおかしいよ」

もしまどかさんが味方してくれなければ、今頃私の頭には風穴が開いてたことでしょう。
BOOM HEADSHOT。
暁美ほむら-志筑仁美(死亡)
なんてキルログが画面右上に表示されたことでしょう。

「まどかさん・・・お礼を言いますわ」

「ううん。私だって、大切なお友達同士の殺し合いなんて見たくなかったし・・・」

「友達・・・!?私と鹿目まどかは恋人じゃ」

「それで、まどかさん・・・私やっぱり、魔法少女になりますわ」

「・・・そっか」

きっとほむらさんは今後も私の命を狙うはず。
まどかさんを悲しませないためにも私には魔法少女になるという選択肢しか残されていないようでした。
私が魔法少女になり力を得て強くなれば、ほむらさんとの争いを回避できるはず。
屈服させるには高くつく相手・・・そう思わせるだけで十分なのです。

「まどかさん」

「え・・・?」

ドスッ。

「かはっ・・・!?」

帰りの腹パンです。
ラ・ヨダソウ・スティアーナ。

「さぁ、暗くなる前に帰りましょうか。両親が心配してしまいますわ」

「そ、そうだね・・・げほっ、けほ・・・」


その日の夜。
帰宅して入浴した後、軽く10万キロカロリーはある食事を済ませ私は自室にいました。
とりあえず宿題でも終わらせましょうか、とノートを開きます。
そしてほむらさんが書いたと思われる“私のまどかに近付くな。この変態レズ女”の落書きを消しゴムで消しました。

「ええと・・・“女は30で最も輝く”を英語に・・・」

とここで、コンコン・・・と窓が叩かれてるのに気付きます。
猫?カラス?
――――いいえ。彼しかいません。
私は手に持っていた愛用のシャープペンシル、ビスケット・オリバ君を置き、カーテンを開けるのでした。

「やあ、君に会いに来たよ」

「・・・お待ちしてましたわ」

窓を叩いていたのは、やはりあの白い生き物。
私は窓を開け、彼――――キュゥべえさんを中に入れるのでした。

「ふう。ここなら邪魔されることなく契約できるね」

「・・・ですわね」

「それじゃ、本当に魔法少女になるんだね?」

「・・・はい。キュゥべえさんと契約して魔法少女になりますわ」

私の言葉を聞いて、いつもは無表情なキュゥべえさんが、ニコリと笑いました。
もう後戻りはできません。
これから待っているのは戦いの日々。日常から非日常へ。
私は拳をぎゅっと握りました。

「魔法少女になる代わりに何でも一つ願い事を叶えてあげるけど、何かあるかい?」

「ああ。それならほむらさんを巨乳にしてあげてください」

「そんな願い事でいいのかい?まぁ君は力自体が望みみたいだからね」

「ですわ」

「わかったよ。それじゃ目を閉じて・・・」

この日、この夜。
私はついに魔法少女になるのでした。
全ては自分を守るため。そしてまどかさんのお腹を守るために・・・。



朝になり、ぼーっとした頭で私は朝食を食べていました。
イチゴミルク。ホットケーキ。プリン。
甘い物の三重奏。スウィート☆ブレックファーストです。
私は果たして本当に魔法少女になったのでしょうか。
はっきり言って、まだ実感はありません。
しかし私の指には指輪があり、昨晩の出来事が夢ではないことを教えてくれます。

「ひとみ☆ヒドカ、月に代わってお仕置きよー」

私はキュゥべえさんとの会話を思い出していました。
魔法少女に課された、魔女と戦う運命。
願いを叶えるための代償。

想うな・・・人生を失った事・・・平穏な未来を失ったこと・・・

失ったのではない・・・

得た・・・

何を・・・?

何を得た・・・?

魔法少女・・・

魔法少女という・・・個性(オリジナル)!!

「仁美。食事中は静かになさい」

「お母さま。私は失ったものではなく、手にしたものを考えるように努めますわ」

「あらそう」

「魔法少女という現実に身を置くことでしか手に出来ないものがあるハズ」

「仁美。お薬ここに置いておくから食後に飲むのよ」

スウィート☆ブレックファーストを食べ終えた私は薬を飲みました。
I DON'T LIKE THE DRUGS, BUT THE DRUGS LIKE ME.
キュゥべえさんは言っていました。
魔法少女は魔女を倒し、グリーフシードというものを手に入れなければならない。
そしてソウルジェムに溜まった穢れをグリーフシードに吸わせ、魔翌力を回復させなければならない。
早速今日から魔女狩りです。

「それじゃ行ってきますわ、お母さま」

外は快晴。とてもいいお天気です。
こんな日は少し小走りで待ち合わせ場所に行きたくなってしまいます。

「あ、仁美ちゃんおはよー」

待ち合わせ場所には既にまどかさんがいました。

「おはよう」

ついでに巨乳になったほむらさんも。

「志筑仁美。私は貴女のことを誤解していた」

「はい?」

「貴女は魔法少女になるべきだった。ありがとう。たゆんたゆん」

ほむらさんは顔を赤くしながら、その素敵なお胸を両手でたゆんたゆんと触っていました。
どうやら彼女は巨乳に憧れていたようですね。良かった良かった。

「ほむらちゃん、またパンツ被ってる・・・」

「これは青と白の縞々模様のヘルメットよ」

「しかもそれ、私のじゃなくて私のお母さんのパンツだよ」

「ほむっ!?」

「あ、さやかちゃんと杏子ちゃん、おはよー!」

「おう、おはようまどかー」

ここでさやかさんと杏子さんも登場。
いつもは3人なのに、今日は5人で登校ですか。賑やかでいいですね。

「そういえばあの白いのから聞いたぞ。仁美だっけ?あんた魔法少女になったんだって?」

「はいですわ」

「聞いてくれよ。実はさやかも昨日魔法少女になったんだぜ。願い事はなんだと思う?」

にやにやと笑い出す杏子さん。
一方で急に顔を真っ赤に湯気を出し始めるさやかさん。

「ちょ、言わないでー!」

「いつかはバレるんだからいいじゃねえか」

「う・・・わ、わかったわよ・・・ええと・・・私、今日から名前が『佐倉さやか』に変わりました・・・」

「あらあらまぁまぁ。それは素敵ですわねえ」

「鹿目ほむら・・・ほむっ」

「さやかー、新婚旅行はどこにするんだ?軽井沢か?ハワイか?それともイルクーツク?」

いつもの日常。当たり前の日々。
ああ。私はこの束の間の日々の安らぎを噛み締めています。

学校でもそう。いつもの教室。いつものクラスメイト。
何も異変はありません。

「ううっ、うっ・・・まさか生徒に先を越されるなんて・・・」

「先生、泣いてないでそろそろ授業をお願いしますわ」

「暁美まどか・・・ほむっ」

今日は理科の実験でべっこう飴を作りました。
数学では円周率は3ではなく3.14であると学び、社会ではストーカーと下着泥棒について学びました。
楽しい学校生活です。

しかし・・・。
普通の人と違い、私たち魔法少女は楽しいことばかりではありません。

「魔女の気配がしますわ」

「杏子・・・怖いよ・・・」

「安心しな。あたしが絶対守る」

学校が終わり、私たちは魔女を探していました。
そう。楽しいことばかりではないのです。

「仁美ちゃん・・・」

最初は危険だからと断ったのですが、どうしてもと言うので今回はまどかさんも一緒です。
私はまどかさんの手を離さないようしっかり握りました。

やがて。
空間が“歪み”ました。
歪みは大きくなり、私たちの世界を飲み込みます。
歪みに飲み込まれた私たちは、魔女の狂気の世界に立っていました。

私は自分の緑色のソウルジェムを指輪から取り出し、そして変☆身です。
緑色の可愛らしい戦装束。
そして武器は・・・この熱い拳。

同時にさやかさん、杏子さんも変☆身します。
赤い服に槍を持った杏子さん。
青い服、それに白いマントをなびかせ剣を携えたさやかさん。

「さやか・・・可愛い・・・」

「杏子も・・・」

「な、なぁ・・・我慢できねえ・・・ちょっとそこの物陰に・・・」

「あぁん、もう・・・杏子は強引なんだから・・・」

さやかさんと杏子さんがログアウトしました。
現在残っている戦闘員は私、リアルでモンクタイプの志筑仁美ただ一人のみ。
ですが私にはまどかさんがいます。
もう何も怖くない。

「仁美ちゃん・・・気をつけて」

私はまどかさんと繋いでいた手を離しました。
力が湧いてきます。
まどかさんがいるだけで、無敵になった気分。
私は魔女を睨みつけました。

真っ赤な十字架の姿をした魔女。
恐ろしい魔翌力。真っ赤な憎悪が渦を巻いています。
先ほどから響いている魔女の賛美歌は私を呪い殺さんとする呪詛か、はたまた死に急ぐ私への哀れみの聖歌か。

「さやか・・・力抜いて・・・まずは小指からな」

「んんっ・・・杏子ぉ・・・!」

私は魔女へ向かって跳躍。拳を突き出します。
しかし魔女も大人しくやられるつもりはないようです。
十字架の根元から何本も長い腕が私に死という希望を与えんと伸びてきます。

「さやか・・・痛くねえか・・・?」

「うん、大丈夫・・・ホントだ・・・その気になれば・・・痛みなんて完全に消しちゃえるんだぁ・・・」

腕が私の首や体に絡みつきます。
完全に極まった裸締めからは絶対に逃れられない。
しかし私はその腕を掴み――――ぶちゅ、と捻り潰すのでした。
“握撃”です。
魔法少女になり桁外れな握力を手に入れた私だからできる芸当です。

「私・・・初めての相手が杏子で良かった・・・」

「さやか・・・好きだ・・・愛してる・・・!」

握撃で腕を一つ潰され、怯む魔女。
私はニッと笑い、低い姿勢で跳躍しながら加速。

「仁美ちゃん・・・!」

そして十字架に向かって、思い切り拳を突き出します。
できる。今の私ならできます。
恐怖も何もない。負ける気もしない。
殺されたって死ぬもんか!
握力×体重×スピード=破壊力ッ!
拳に戦って散っていったマミさん、さやかさん、杏子さんの想いを込めて――――

――――魔女のお腹に、呪いと怨恨からの解放という救済を。


ドガァッ!!


私の拳は魔女のお腹にクリティカル・ヒット。FATALITY。
十字架は砕け散り、涙となって土へと還っていきます。
魔女は救われました。
もう他人を恨んだり、呪ったりする必要はないのですから。
狂気の世界もガラガラと音を立てながら崩れ、私たちの世界が現れ始めます。
私は魔女の残したグリーフシードを拾い、言います。

「一件落着・・・ですわ♪」

「仁美ちゃーん!」

涙を流しながら私を抱き締め、生還を喜んでくれるまどかさん。
さやかさんも杏子さんも、慌てて着衣を戻すと私の勝利を祝ってくれました。
いつの間にかいたほむらさんも、私の手からグリーフシードを奪い、褒めてくれました。

「仁美・・・だっけ?あんた初めてのわりにはなかなかやるじゃん」

「仁美ちゃん・・・すごくカッコよかったよ!」

「鹿目まどか。私のカッコいい胸を見て」

心は満たされ、とても清々しい気分でした。
この魔女を倒したことで救われた人も何人かいることでしょう。
私は今まで力も弱く、守られる方の立場でした。
それが今では腹パン道を学び、魔法少女になることでこうして守る方になれたのです。

「もう日が暮れちまったな。そろそろ帰るか、さやか」

「うん。じゃあね、まどかに仁美」

今日はとりあえず解散のようです。
手を繋ぎながらラブホテル街へと消えていくラブラブなお二人。

「あ、待って・・・佐倉さやか、佐倉杏子・・・」

何か用事があるのか、突然二人を呼び止めようとするほむらさん。
しかしどうやら二人の耳には届かなかったようです。

「行っちゃったね」

「・・・。泣いてないもん。それより志筑仁美、鹿目まどか。私の家に来て」

「ええー・・・怖いよ」

「ど、どどどどうしてなの鹿目まどか」

「だってそう言ってこの前行ったら、ほむらちゃん私のこと急に縄で縛るんだもん」

「とにかく来て。大事な話があるの」

数分後。
私とまどかさんは、ほむらさんと一緒に彼女の家へと移動していました。
複雑な路地裏を何度も通り、家と家の隙間を通り、暗く深い樹海の中を通り過ぎます。

「あ、あの・・・ほむらさんのお家ってどこにあるんですの?」

「亜空間ベクトル143-10-54の斜め上よ」

「は、はい・・・?」

とにかく先をずんずん歩いていくほむらさん。
私は必死に追い掛けるのですが、くねくねと入り組んだ地下道でついに彼女を見失ってしまうのでした。
暗い地下道。ここはどこなのでしょう。
ドアがたくさんあります。不気味です。
まどかさん、ほむらさん・・・貴女達は今どこで何をしていますか?この空の続く場所にいますか・・・?

「あれ?仁美ちゃんがいないよ?」

ああ。まどか。私のまどか。
貴女は何故そんなに魅力的なの。
可愛らしい笑顔。思わず抱き締めたくなる泣き顔。どれも素晴らしい。
私はまどかの手を引いて走った。
邪魔者はいない。私とまどかの二人だけの時間。

「ほ、ほむらちゃん?」

通路の突き当たりにあるドアを開ける。
大きなベッドと、冷蔵庫のある部屋だった。
私はその冷蔵庫から冷えたシャンパンを取り出し、開けた。
ポン、しゅわわわわ・・・。

「疲れたでしょう。少し休憩しましょ」

シャンパンをグラスに次ぎ、ベッドに座ったまどかに渡す。
彼女はそれを一口美味しそうに飲むと、言った。

「ほ、ほむらちゃん・・・あのね」

彼女は耳まで真っ赤しながら言った。
私もグラスを傾け、シャンパンの味を楽しんだ。

「その・・・変かと思うかもしれないけど・・・私、ほむらちゃんのことが・・・好きなの」

「私も好きよ。鹿目まどか」

「ち、違うの!その好きじゃなくて・・・その・・・」

私は小首を傾げた。
彼女は何が言いたいのだろう。
今度はグイッとシャンパンを一気に飲み干した。

「わ、私は・・・ほむらちゃんと、恋人になりたいなぁって・・・そういう好きなの・・・」

「鹿目まどか・・・」

「へ、変だよね?う、うぅ・・・ごめんなさい。やっぱり何も聞かなかったことに――――」

まどかがそう言い掛けたところで、私は彼女の唇に自分の唇を重ねた。
これが私の返事よ、鹿目まどか。

「ほ、ほむらちゃ・・・」

「鹿目まどか。私も貴女のことが好き。貴女が欲しい」

私は欲望の赴くまま、彼女を押し倒した。
そしてボタンを一つずつ外し、服を脱がしていく。
1枚脱がすたびに露わになる、まどかの白く美しい肌。

「ほむらちゃん・・・」

まどかの可愛らしい、少し子供っぽい下着に手を掛ける。
彼女は抵抗しなかった。
私はそのまま、するするとゆっくり脱がし始めた。

「は、恥ずかしいよ・・・」

「まどか・・・大丈夫よ・・・全部私に任せて・・・」

そして私はまどかの、

「あ、ほむらさん・・・前」

「え」

ドアにガツン、と頭をぶつけるほむらさん。
大方妄想でもしていたのでしょう。
それで、どうやらここがほむらさんの家のようです。
門のところに“暁美ほむら”の表札がありましたし。

「痛・・・どうぞ入って」

“土足厳禁”と書かれた張り紙を無視し、靴を脱がずに中に入ってびっくり。
白い床。白い天井。同じく白い壁にはよくわからない絵や文字の書かれた紙がびっしり。
紙・・・?いえ、これは・・・映像?
そして装飾の施されたギロチンの揺れる影。
これがほむらさんの家・・・?

「あ、これ無くしたと思ってた私の縦笛・・・なんでほむらちゃんの家に・・・」

「とりあえず座って」

私とまどかさんはソファーに座り、ほむらさんの話に耳を傾けます。
彼女は1枚の紙を見ながら言いました。

「もうすぐ、“ワルプルギスの夜”が来るわ」

「ワルプルギスの夜・・・ですか?」

「そう。とても強大な魔女よ」

「え、ええと・・・どこに・・・現れるのかな?」

するとほむらさんは、壁に貼られた地図を指差し、言いました。

「ワルプルギスの夜はここに出現する可能性が高いわ」

「どうしてわかるの・・・?」

「統計よ」

「そこって・・・北極ですか?」

「南極よ」

「二人とも落ち着いて・・・この地図、私の家の見取り図だよ」

つまり、ほむらさんはこう言いたいのでしょう。
もうすぐワルプルギスの夜という強大な魔女が出現する。
なので共同で倒そう、と。
一人では無理でも、私にほむらさん、それからさやかさんと杏子さんの6人いれば何とかなると。

「ねえ、今更なんだけど・・・ほむらちゃん、なんで私の体操着着てるの?」

「鹿目まどか。今回はとても辛い戦いになる。貴女はここに避難していて」

「ほむらちゃん巨乳だから胸の部分が伸びちゃってもう私着られないよ・・・」

「わがまま言わないで。本当に危険なの。付いて来ても邪魔になるだけ」

ほむらさんにそう言われ、瞳にじわりと涙を滲ませるまどかさん。
確かに、私もほむらさんと同意見です。
まどかさんを危険な目に遭わせるのはやはり好ましくありません。
しかし、きっと彼女はこう思っているのでしょう。
自分だけ安全な場所に避難して、私とほむらさんだけ戦わせるわけにはいかない・・・と。
私はやれやれ、と溜め息をつきながら言いました。

「ほむらさん。観客がいなければ役者も張り合いがありませんわ」

「志筑仁美。これは戦争よ。戦争に観客はいらない」

「なら尚更ですわ。その暗~い戦争中、まどかさんの声援があれば頑張れると思いません?」

「ひ、仁美ちゃん・・・!」

「駄目よ。絶対駄目。鹿目まどかは縛り付けてでもここに避難させる」

「・・・なら私は降りますわ。そんな危険で面倒なこと」

「くっ・・・」

「それに言い忘れてましたがさやかさんと杏子さんは明日から新婚旅行でイルクーツクに」

「・・・。」

はい、決まりですね。
私、ほむらさん・・・そしてまどかさんの6人で戦いましょう。
まどかさんは観客ではありません。
私たちと同じ、役者なのですから。


それに・・・・・・。
更に付け加えると、役者は3人ではありません。4人です。
ほむらさんは知らないようですが・・・この街にはもう一人、強い魔法少女がいるではありませんか。
そう――――マミさんです。

私は立ち上がり、そしてほむらさん、まどかさんと手を重ねました。
ワルプルギスの夜討伐の、共同戦線の開始です。


次の日・・・本日、学校はお休み。
私は自分の家の地下にあるトレーニングルームに居ました。
まどかさんが固唾を呑んで私のことを見守ります。
私はじっと動かず目を閉じ、そして想像していました。

「・・・来ますわ」

何もない空間に現れる、ぼんやりとした影。
その影は・・・人の大きさほどもある、巨大なカマキリでした。

そう。これは――――シャドウボクシング。
相手を想像し、想像した相手と戦う。
私はその持ち前の高い妄想力を生かし、想像で受けたダメージを実際に再現するという
かなり高レベルなシャドウボクシングを行っていました。

そして今回の相手はカマキリ。小さな狩人。
通常のサイズなら片足で踏み潰せる相手です。
しかし、もしそんなカマキリが体重100キロの人間サイズになったとしたら・・・?

「そこから先は私・・・鹿目まどかが話すね」

「まず、仁美ちゃんは何もない空間をじーっと見てた」

「一体何を見てるんだろうと思ったら、いきなり仁美ちゃんは見えない何かに突き飛ばされて壁に激突して。
 もうびっくり。一体何が起こったの!?って感じだったよ」

「うん。仁美ちゃん、血が出てた。とっても痛そうで・・・私は急いで手当てしようとしたんだけど
仁美ちゃんが、危ないから下がってて、って」

「それで・・・仁美ちゃんは急にしゃがんだり、腕で何かを受け止めたりし始めて」

「よく見たら、それは何か攻撃を避けてるみたいで・・・私にはもちろん何も見えないんだけど・・・」

「それで、今度は見えない何かにパンチし始めて。
 ここで私は、あぁ・・・仁美ちゃんは何かと戦ってるんだ・・・ってことに気付いて」

「でも相手は強敵みたいで・・・仁美ちゃんは突き飛ばされたり、叩きつけられてたりしてたよ。
 血もいっぱい出て・・・こんなの絶対おかしいよね。実体の無い想像の相手と戦ってるのにね。
 わけがわからないよね。でも私・・・思わず仁美ちゃんを応援してた」

「それに途中から、仁美ちゃんが何と戦ってるのか私にも見えちゃって。
 あの動き、息遣い、雰囲気――――カマキリかな、って何となく」

「仁美ちゃんの常人離れした高い妄想力が、私にも想像の相手を見せてくれたんだね」

「え?そんなのあり得ないって?ううん、あなたはよくわかってないよ」

「仁美ちゃん、私とさやかちゃんが手繋いで歩いてるだけで鼻血出してたからね。
 何妄想してるのかはわからないけど、とにかく仁美ちゃんの妄想力は凄くって」

「私、もうビックリしちゃって。仁美ちゃんなら・・・創れるんだ。
 体重100キロのカマキリとの試合が・・・創れちゃうんだ!」

「仁美ちゃんは言ってた。体重100キロのカマキリは200キロ以上の虎やライオンより遥かに強いって」

「何もない空中を攻撃して・・・何もない空中からくる攻撃を――――防御(ふせ)いでる」

「最初、仁美ちゃんはカマキリの頭を攻撃してるみたいで」

「でも途中で気付いたんだね。カマキリの頭には脳がほとんどなくて」

「だから人には必ず起こる脳震盪がない・・・頭への攻撃が効かないって」

「それで今度は仁美ちゃん、後ろからカマキリの首をがっちり絞めて」

「でもカマキリは視角がとっても広いから・・・それにとても器用みたいで。
 仁美ちゃんはすぐに大きな鎌で引き離されてたよ」

「仁美ちゃん、とっても劣勢みたいで、逃げ回ってた。攻撃を避けるので精一杯。
 でも途中で気付いたんだね。逃げ回ってても意味はない。魔女だって攻撃しないと倒せないから」

「うん。一番得意のお腹にパンチ、あれをカマキリにやってたよ」

「私も殆ど毎日仁美ちゃんにお腹パンチされてるけど・・・あれはとっても痛いよ」

「立ち上がれなくって・・・しかもお腹にパンチされた後は1日中なんだか体調が悪くなっちゃう」

「だから当然、カマキリにもお腹パンチは効いてたみたい」

「ただ何もない空中にパンチしてるだけなんだけど・・・私にはパンチの当たる音が聞こえてたよ」

「仁美ちゃん、笑ってた。余裕が出てきたみたい。もう鳥vs昆虫を見ているみたい」

「それで今度はカマキリの方が逃げ回って。やっぱりお腹にパンチは人も虫も苦手みたいだね」

「最後に思いっきり一撃を叩き込むと、仁美ちゃんはタオルを拾って汗と血を拭いて一息ついてた」

「そう。あのカマキリに勝ったんだね。凄い、凄いよ仁美ちゃん!」

「私、感動しちゃって。仁美ちゃんを抱き締めちゃった」


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