仮面ライダーW & 仮面ライダーOOO & 魔法少女まどか☆マギカ Fの契約/少女と魔法と仮面ライダー 第五話

2011年09月14日 19:49

まどか「仮面ライダー?」翔太郎「魔法少女?」映司「魔女?」

605 : ◆WDUU7xtdEo [saga]:2011/03/24(木) 19:07:35.46 ID:zG5U7tWwo

「んだとっ!? ああ……分かった! そこを絶対動くんじゃねえぞ、良いな!!」

スタッグフォンを閉じると同時、翔太郎は喫茶店の椅子から飛び跳ねるように立ち上がった。

「釣りはいらねえ!」

カウンターに、今飲んだコーヒーの倍額近い1000円札を叩きつけ、ドアを蹴破らん限りの速さで開け放つ。
そして、外に停めていた愛用のバイクであるハードボイルダーに飛び乗った。

「くそっ……!」

携帯にかけてきたさやかの叫び声が、まだ耳に張り付いている。
こんな時に彼女達の側を離れてしまった自分の間の悪さに、翔太郎は悪態をついた。

「間に合ってくれよ……!!」

そして、マシンが唸りを上げた。

一瞬でトップスピードに達する愛車を走らせ、さやかのいる病院へと翔太郎は向かう。
見滝原の洗練された都市の道を駆け抜け、ただ目的地へと。


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***

魔女の空間の中に、さやかはいた。携帯を見れば、アンテナは圏外。
さっきまで通じていた携帯は、もう繋がらない。

『怖いかい、さやか?』
「そりゃ……当然だよ」

先程マミを呼びに行ったまどか、電話を最後にかけた翔太郎、彼等が来る事が分かっていても、やはり怖いものは怖い。

だが、怖いのはそれだけではない。
さやかの頭の中にあるのは大事な人、上條恭介の姿。

マミが言った事が本当なら、魔女が彼の生命力を奪ってしまう可能性がある。
もし、本当にそんな事が起きたらと思うと、足が震えて止まらなくなってしまう。

『でも、さやか。願い事さえ決めてくれれば、この場で君を魔法少女にしてあげられるよ?』
「…………」

耳元でキュゥべえが囁く。その選択は実際、さやかにとっては悩ましいものであった。
今ここで契約すれば、恭介を治し、彼を守ってあげられる。

できる事ならば、今すぐにでもなってしまっても良かった。

だが、

「うん……でも、まだ遠慮しとく」
『良いのかい?』

さやかは止めた。

「あたしにとって、それはきっと……大事な事だから。だから、中途半端に決めて
 しまうのはやりたくない」

マミの言う『自分のための願い』と『他人のための願い』についてよく考えろと言う言葉が、胸に重く圧し掛かっていた。

もし、あの時の言葉がなければ、きっと、今、この場で自分は魔法少女になってただろう。
しかし、理由はそれだけでもない。

「それに……あたし、マミさんや左さん、火野さんみたいに戦えるか、まだ分からないから」

マミ、左翔太郎、火野映司。
あの3人の戦いを見てきたからこそ分かる。今の自分には真似できないと。

まるでヒーロー。自分もそんな風になって、彼を、上條恭介を守りたい。
だが、マミの言葉が、そうなろうとする思いをあと一歩のところで押さえ込んでいた。

「だけどさ……いざとなったらお願いする」

それは自分への確認。もし間に合わなければ、自分がやるしかない。ヒーローになるしか。
手を強く握り締め脚の震えを無理矢理に止めた。

しかし、胸の中はさざめいたまま。

彼にとってのヒーローになりたいという思いと、それを止めようとする思いの間で揺れる。

そんなさやかの瞳を、キュゥべえはジっと覗き込む。感情を見せない血のような瞳にさやかの横顔が写りこんでいた。

まるで、何かを値踏みするように。

***

「亜樹子!」
「翔太郎くん!」
「翔太郎」

鳴海探偵事務所の面々が病院に集う。そして既に、そこには映司の姿も。

「呼ばれてきたけど、本当に?!」
「ああ……だけどよ……!」

この広大な敷地、何処に魔女の結界があるのかなんて翔太郎には皆目検討もつかなかった。
魔女の結界は魔法少女でなければ見破れないのだ。

「だぁっ……くそっ!!」

先日、マミと一緒に行動した時に分かってた事なのに、痛恨のミスだった。
頭を思い切り掻き毟ったが、それで状況が好転する訳でもない。

「翔太郎、落ち着くんだ」
「ああ。分かってる……分かってるがよ……」

先程のさやかの悲壮な声が、否応なしに翔太郎の焦りを生む。
しかし、その時だった。

「あ……まどかちゃん!?」

病院の裏手に走り去るまどかを見て、映司が叫んだ。しかし、向こうは
こちらに気づいてないらしく、そのまま裏手へと消えた。

「追いかけよう!」
「おう!」

そして、翔太郎達も駆け出す。しかし、追いつくのはすぐの事だった。

病院裏手、駐輪場。そこにまどかとマミの姿はあった。
マミの手に握られたソウルジェムが空高く掲げられ、魔女の空間が大きな口を開ける。

「まどかちゃ――!!」

再び声をかけようとした映司だったが、しかし、その声が届く前にマミとまどかの姿は魔女の結界の中へと消えた。

そして、追いかける暇もなく結界の入り口が消滅する。

「やられた……!!」

すぐさま入り口のあった場所へと手を伸ばす翔太郎だったが、ただ虚しく空を切るだけで、何の感触もない。

「フィリップ君! どうにかできないの!?」
「恐らく、この空間は魔法少女にしか開けられないものだ。僕らの力では無理がある」
「そんな!?」

フィリップの答えに叫びを上げる亜樹子。

「だが――」

フィリップの目が、魔的な色を湛える。
そして、亜樹子の向こうにあるその姿へと視線を定めた。

「君ならできるはずだ」

魔を秘めた笑みの向かう先に、翔太郎達も視線を向けた。
彼等の視線の先、そこにいたのは、


「――暁美ほむら」


黒髪の少女、暁美ほむらだった。


***


「まったく……無茶しすぎって言いたいところだけど」
「っ……」

その微かに叱咤の響きを含んだ言葉に、まどかの肩が竦んだ。言うまでもなく、自分やさやかがやった事は危険な行為だ。

何の力もない自分達の行いを咎めるのだろうと、まどかは構えたが、
しかし、

「――今回に限っては冴えた手だったわ、鹿目さん」

褒められた。

向けられるのは怒りの表情ではなくて、穏やかな笑顔。
自分にかけられた優しい言葉に、まどかの心は大きく満たされる。

何のとりえもない自分の行いが、こうして役に立った。
『マミさん』という頼れる人に認められた。

嬉しさがじんわりと胸に広がる。
それが、鹿目まどかという少女を奮い立たせる。

だが、その想いを抱いたのは、マミも同じだった。

誰かに頼られるという、今まで独りだった自分に対して向けられる好意が、今のマミを大きく奮い立たせる。

今、この場で彼女が頼れるのは自分だけ。

脳裏に亜樹子や翔太郎達といった『大人達』の顔が浮かぶが、しかし、『頼られる自分』が、大きくマミの心を占めていく。


今の自分は独りじゃない。
今の自分は彼女に頼られている。
今の自分は彼女と一緒。
今の自分なら何でも出来る。


危険な事をしているという感覚が明らかにマミの中から消えていた。
死と隣り合わせの戦いの場にあって、マミはそれを忘れていた。

これまでからは考えられないような思考の停滞に、マミは陥っていた。
だからこそ、

「これなら魔女を取り逃がす心配だって――」
「マミちゃん!!」
「――ッ!?」

その場に現れた闖入者に、マミは、身構えた。

「あっ……。左さん? それに、火野さん達まで……」
「良かった、まどかちゃん! 怪我、ないね?」
「うん、マミさんがいたから……」

そういって、まどかがマミへと視線を移すが、だが、

「亜樹子さん……それに、暁美さんまで……」

まどかは完全にマミの視界の外にあった。

マミの視界にあったのは、翔太郎達を引き連れた暁美ほむらの姿だけ。
自分の世界を壊す敵。数少ない友達であるキュゥべえを傷つけた敵。

そして、その敵と一緒にいる、亜希子達。

停滞していた思考は、その状態に対して一つの結論を誘導した。
巴マミにとって都合の良い、結論。

「マミちゃん! まどかちゃん達を危ない事に巻き込んじゃ駄目って――!」
「亜樹子さんは、暁美さんの味方なんですね?」
「……え?」

冷たく鋭い視線がほむらへと向けられる。

「暁美さん? あなた、私の邪魔をしに来たの? それとも、またキュゥべえを?」
「今回の魔女は私の獲物よ、巴マミ。
 彼等はあなた達を探しに来ただけ……だから、彼等と一緒に帰りなさい」

無感情な瞳が逆にマミを射抜く。

「それはできない相談ね。美樹さんとキュゥべえが奥にいるの」
「その二人の安全の保障はするわ」

流れる険悪な雰囲気。それを察して、映司が二人の間に割り込んだ。

「ちょ、ちょっと待った! 今は二人で言い争いしてる場合じゃないだろ!?」

なだめるように、二人に話しかける映司。それに、一瞬ほむらの注意が映司に移った。

「暁美さん」
「っ!?」

その瞬間、ほむらの瞳が驚愕に見開いた。

ゆっくりとマミの手がこちらへと向き、その瞳が明確な敵意を放つ。


「――手の込んだ芝居、するものじゃないわ」


――光の帯が、ほむら達を襲った。

「うおっ!?」
「なっ!?」

翔太郎と映司が、両腕と両足を縛られ、大の字に吊るし上げられる。

「きゃぁっ!!」
「くっっ!!」

ほむらと亜樹子が、全身を巻かれ、中空に巻き上げられる。

「……ほう」

そして、フィリップは両足を巻かれて地面に転がされた。

「マミちゃん!!」

亜樹子が叫び声をあげるが、だが、それをマミは冷たい目で見下ろす。

「怪我させるつもりはありません、亜樹子さん」
「ば……馬鹿! こんなことしてる場合じゃ……!」
「暁美さん、あなたもよ?」

冷笑、マミがほむらに笑いかける。

「別に怪我をさせるつもりはないけど、あんまり暴れたら……」
「がっ!!??」

苦しそうな声を上げて、翔太郎の身体が大きく跳ねた。
大の字に縛られた身体が、さっきよりもきつく締め上げられていく。

「お……お……」
「翔太郎くん!!??」

「……ああなるから」
「ッ!!」

ほむらの顔が苦々しく歪んだ。だが、それをマミは意に介しない。

「今度の魔女はこれまでと訳が違う! だから……っ!!」
「おとなしくしていれば、帰りに解放してあげる。それまで、そこにいなさい」

今のマミにとって、ほむらたちは敵。聞き入れるつもりなど一つもなかった。
だから、何を言おうとマミには通じなかった。

「それじゃ、行きましょう?」
「あ……」

差し伸べられた手を見て、まどかが一瞬迷った。
縛られたほむらや映司にまどかの視線がいく。

「まどか!」
「まどかちゃん!!」

映司とほむらの叫びに、肩を震わせる。しかし、

「大丈夫よ、鹿目さん。暁美さん達なら大丈夫だから」

マミの微笑みに、まどかは何も言えなくなる。

「……はい」

差し伸べられた手に、まどかは自分の手を重ねた。

「駄目! マミちゃん!!」

亜樹子が必死に呼びかけるが、だが、帰ってくるものは何もない。
冷たい拒絶の意志だけが、マミの目にはあった。

そして、亜樹子達を残し、二人は駆け出す。



「ぬぐぅぉ!!??」

「……やれやれ」

金色の光の帯に巻かれ、翔太郎、フィリップ、亜樹子、映司、ほむらは動けずにいた。

力を入れなければどうという事はなかったが、入れた瞬間拘束が強まるという悪循環。
彼女の力を侮ってはいなかったが、これ程までの効率良くやられるとは誰もが思っていなかった。

「だあああああああ! ダブルドライバーに手が伸びりゃ、なんて事はねえのに!!」
「これじゃ、俺もオーズドライバーを付けるのなんて無理だよ……!」

互いに、焦りが募る。
それは、この場に拘束されたフィリップ以外の全員が抱いている思い。

「こんな事……してる場合じゃないのに……!!」
「マミちゃん……!」

唇を噛み締めるほむら、そして、亜樹子。誰も彼もがこの結果の奥にいる少女達の事を考えていた。

「……仕方ない」

ボソリと、フィリップが呟いた。

「翔太郎、少々手荒だけど、やっても良いかな?」
「あ?」
「よし分かった、やろう」

スッ、とフィリップが息を吸い込んだ。
そして、

「――ファング!」

電子音の獣の鳴き声が叫ぶと同時、フィリップの足を拘束していた帯が真っ二つに引き裂かれた。

そして、フィリップの下に小型の恐竜型のロボットが現れる。彼を守るようにその恐竜は周囲を睨みつけた。

それはファングメモリ。『牙』の記憶を宿す、フィリップを守るためだけに作られたガイアメモリだった。

「ファング、やるんだ」

主の言葉を理解して、ファングメモリが唸りを上げた。
その小柄な外見からは到底想像できない跳躍力とスピードでマミの作った拘束具を破壊していく。

「っ痛ぁ!!」
「うわっ!!」
「んぎゃ!!」

拘束から解放された翔太郎、映司、亜樹子が、そのままの体勢で地面に落ちる。
そして、次にファングが地面に足を着けた時、全ては終わっていた。

「まあ、こんなものだね」
「フィリップ……お前なぁ……」

強かにぶつけた自分の尻をさすりながら、翔太郎がフィリップに苦言を呈するがフィリップはそれを無視してほむらの前に立った。

「さて、君は何処までこの状況を把握していたんだい、暁美ほむら?」
「っ…………!」

何も言えないほむら。フィリップの瞳が真っ直ぐ彼女を見つめる。

「フィリップ君?」

亜樹子がフィリップに声をかけるが、フィリップは、それを片手で制止する。

何も言わないほむら。だが、その瞳の戸惑いを見て、フィリップは笑みをその顔に浮かべた。

「なるほど……やはり君は興味深い」
「え、ちょ? フィリップくん? 何言ってんの?」

全く意味のわからない状況に亜樹子が困惑する。

「ふふっ……面白い事だよ、アキちゃん。H・G・ウェルズだ」
「はぁ?」
「っ!!」

大きく反応を見せたほむらと対照的に、フィリップの言葉に亜樹子は首を傾げる。
しかし、ソレも束の間、顔色を一変させて亜樹子が叫んだ。

「……って、こんな事してる場合じゃないよ!! マミちゃん達追いかけないと!!」

言い終わるや否や、亜樹子がマミ達が去った方へと駆け出した。

「俺達も追うぜ! フィリップ、映司!」
「ああ!」

亜樹子を追うように映司と翔太郎も。
そして、

「さて……追いかける訳だが、君は?」
「行くわ、もちろん」

フィリップと共にほむらも駆け出した。
しかし、ほむらの目はフィリップへと向けられている。

「あなたは……」
「なんだい?」

「何処まで気づいているの……?」
「ふふっ、それは想像に任せよう」

いつもと変わらない、ふてぶてしいまでの魔的な笑みをフィリップの顔が形作った。

***

まどかを連れ、マミは魔女の空間の奥深くへと入り込んでいく。

魔力を使っていない状態であれば、魔女の使い魔たちはこちらに気づく事は早々ない。
だからこそ、慎重にマミは進んでいく。

クリームケーキの壁面で形作られ、パネルの代わりに飴細工が嵌められた奇怪な病棟。
ペロペロキャンディの頭をしたナースの使い魔が車椅子を押して歩き回り、ラムネの包み紙にくるまれた頭をした患者の使い魔がフラフラと巡回していた。

「なんだか……お菓子ばっかりですね」
「そうね……」

クッキーでできた扉に隠れ、チョコレートのボディをした使い魔が何処かへ去るのを見送りながら、マミとまどかは更に奥へと歩く。

そして、使い魔のいない一角に二人は辿り着いた。

ジェリービーンズの詰められたホルマリンケースが立ち並ぶ通路。
カラフルな彩りの中に、薬の包みとプリンが入った瓶も所々見えた。

「あ、あの……」
「なに?」

使い魔の気配も何も見えなくなったところで、まどかが口を開いた。

「その、私なりに、願いっていうか、色々……その、考えてみたんです。
 考えが甘い、って怒られちゃうかもしれないけど……」
「ううん、良いのよ。聞かせてくれる?」
「あ、はい……」

シンと静まり返った通路をマミと手をつなぎながら、ポツポツと、まどかは語りだす。

「私、人に自慢できるようなもの、何もないんです。得意教科もないし、体育だって
 別に得意なわけじゃないし……」

「……」

「そんな自分、嫌だったんです。誰の役にも立てないまま過ごしていく自分が」

軽く、マミを握る手を強くした。

「でも、マミさんと出会えて、誰かを助けるために頑張るマミさんを見て、
 私、自分にもできるかもって思えて、すごく嬉しかったんです」

そうして、まどかはマミに微笑んだ。

何もとりえもない自分。空っぽで無意味な自分。
そんな自分を変えてくれるかもしれないマミという存在の出現にまどかは感謝していた。

映司や翔太郎達との出会いも、それはそれで、とても素敵なことだった。
しかし、彼等は、まどかの手の届く存在ではなかった。

ただ、マミだけが、彼女にとって手の届く存在。
魔法少女という、強くて、素敵で、かっこいい存在はまどかにとって眩しかった。

「だから、私、魔法少女になれるだけで、願いが叶っちゃうんです」

そう、誰かを守れるという思いだけが、まどかにとっての願いだった。

しかし、その純粋無垢な願いは、マミにとって胸を刺す言葉。

戦ってる間だけ、孤独を忘れられた。
誰かを助ける事で、アイデンティティを保っていた。
恐怖に、ただ独り泣いていた。

ずっと――ずっとずっと仲間がほしかった。

まどかは知らない、マミのそんな隠された姿を。
故に、まどかの純粋な言葉は、マミに胸に重く圧し掛かる。

そして、その重みに耐えかねて、マミは口を開いた。

「私……そんな憧れるようなものじゃない」
「え?」

まどかを握っていない方の手を、マミは痛いほど強く握り締めた。

「ホントは……戦うのが怖いの。あなた達の前では強がってるだけなの。
 無理矢理かっこつけてセンパイぶってるだけで……」

懺悔するように、次から次へと言葉が口から飛び出す。

「あの時だって、そう。亜樹子さんがきて、本当はとっても怖かった……。
 鹿目さん達を危険な目にあわせてるって……気づかされて、どうしようもなくて……」

震える肩を止められない。

「左さん達が来て、焦った。鹿目さん達が、私の側からいなくなるんじゃないかって。
 私……また一人ぼっちに……また、なっちゃうんじゃないかって……!!」

殆ど、嗚咽に近かった。声が震えてたが、そんなものも、もう止められなくて。

「だから、私なんて……私なんて本当は!!」
「そんな事ないです!!」
「え……?」

まどかが叫んだ。強く握られる手、それにマミが振り返る。
いつも自信のない目をしていたまどかの瞳が、強い輝きを持ってマミを見ていた。

「マミさんは……独りじゃないです」

静かに、しかしはっきりと言霊の乗った声。

「私なんかじゃ頼りないかもしれないけど、でも、マミさんの側にいる事ならできます」

柔らかな微笑がマミへと向けられる。
それはまるで、全てを許し、全てを包み込むような聖母の微笑。

「……っ」

年下の少女のものとは思えないような暖かさに、涙が溢れて零れる。
自分が欲しかったもの、それが全てそこにあった。

「……あはは……先輩らしくしないと駄目なのに……私、駄目だなぁ……」
「マミさん……」

次々と零れる涙を拭いきれないまま、マミはまどかの両手を包み込むように握る。

「ねえ……私と一緒にいてくれる? 一緒に、戦ってくれる……?」

頬を伝う涙。マミの顔は涙に濡れていたが、しかし、それでもまどかは綺麗だと思った。

本当の彼女の姿、自分と変わりない等身大の巴マミの姿を見て尚、まどかは彼女の事を素敵だと思った。

「はい、マミさんがよければ……」

この人のためになるのなら、それでも良い。そう思えるほどに。

「それじゃ――魔法少女コンビ、結成だね」

その笑顔のためなら、と。

廊下を歩きながら、マミとまどかは語り合う。魔法少女になるなら、どんな願いで契約をするか、とか。

「ケーキ!? 私、ケーキで魔法少女になっちゃうんですか!?」
「嫌なら自分で考えないと駄目よ?」

肩の荷が下りたかのように、話をしだすマミ。それが何故か嬉しい。
まどかの顔から自然と笑みが零れる。

「それじゃ、お祝いね。コレが終わったら私と鹿目さん達と……」

『――マミ!!』

しかし、そんな想いを抱けたのも結局は束の間。キュゥべえのテレパシーがまどかとマミの耳を打った。

『グリーフシードが動き始めた!! 孵化が始まる……急いで!!』

切迫した声に、まどかとマミは互いの顔を見合わせた。

「オッケー……分かったわ!!」

自信に満ち満ちた微笑。それがまどかに向けられる。

「今日という今日は、速攻で片付けるわよ!!」

そして、マミの身体が光に包まれた。


***


『タカ! トラ バッタ!!』

オーメダルが歌を歌い、オーズと化した映司が魔女の空間に顕現する。

「はっ! たぁっ!! せぇえああっ!!」

トラメダルのエネルギーが腕部に集まり、クローが出現。
突撃をかけてくる黒いゴム鞠のような使い魔達を次々に引き裂いていく。

「翔太郎。全部を相手にする暇はない。ここは突破力の高いファングで行こう」
「ああ、任せたぜフィリップ」

肩に乗せていたファングをメモリに変形させ、フィリップが構えた。

『ファングッッ!!』

『ジョーカーッッ!!』

鳴り響くガイアウィスパー。

「変身ッ!!」
「変身」

翔太郎のドライバーに差し込まれたメモリが、今度は逆にフィリップへと転送された。
そしてフィリップがメモリをインサートし、ドライバーが展開する。

『ファング! ジョーカーッ!!』

発生するエネルギーフィールド。白と黒のエネルギーがフィリップの肉体を包み込み彼を超人へと作り変える。

恐竜の牙を思わせる力強さと凶暴さを秘めた鋭角のフォルム。
白と黒のシンプルなコントラストから、荒々しい野獣の力が溢れ出す。

「――――おおおおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!!!」

そして、咆吼。
野獣のエナジーが衝撃波となって、周囲にいる使い魔を蹴散らす。

『亜樹子、俺の身体頼んだぞ』
「オッケー、翔太郎くん!」

既に翔太郎の身体を背負い、サムズアップをする亜樹子。
そして、ファングジョーカーとなったWは使い魔の群れへと飛び込む。

「グオオオオアアアアアアアッ!!」

獣のような咆吼をあげ、フィリップは襲い掛かる使い魔を叩きつけ、引き千切る。
まさしく、バーサーカー。

オーズ、ダブル。二匹の獣が、奥への道を塞ぐ使い魔を見る見るうちに蹴散らしていく。

「おぉぉぉぉらッッッ!!」

オーズが、バッタレッグを引き出し跳ぶ。
後を追って飛び掛る使い魔を足場にし、蹴り上げ、蹴り倒し、蹴り抜き、蹴り潰す。

トラクローで引き裂き、突き刺し、防ぎ、叩き落とす。

「ウオオオオオオオオオオッッッ!!」

『アームファングッッ!!』

ダブルが、両腕の鋭角を更に引き出し、大鉈の様に腕を振るい始めた。
ギロチンのように鋭い刃が、使い魔の身体をズタズタに引き裂き、切り刻む。

掴んだ使い魔をその握力で握りつぶし、別の使い魔へと叩きつける。
使い魔の群れの真ん中に空いた道を亜樹子とほむらが進む。

「マミちゃん……!」
「…………」

切羽詰った声が、亜樹子から漏れる。それを、ほむらは横目で見ていた。
ひどく冷たい、全てが終わった事を悟るような目。

「巴マミはああいう人間よ。最初から、こうなる事は予期できた」
「ちょっと……どういうこと、ソレ」

髪をかきあげ、ほむらが続ける。

「怒らせるつもりはないけど……でも、知っておいてほしいの。
 彼女は無謀が過ぎる、危険よ。あなた達が必死に助けようとしても、恐らく無意味だわ」

諦観を含んだ言葉。二人の間に沈黙が流れる。
前を行くオーズとダブルの戦闘の音だけが響いていたが、不意に、亜樹子の声がその沈黙を破った。

「でもさ、諦められる?」
「……?」

背中に翔太郎を背負いながら、亜樹子はほむらに笑みを返した。

「依頼人だから、それだけの理由じゃない。誰かの泣いてる姿を見て、辛そうな顔を見て
 それでハイ終わりなんてできないよ」
「…………」

「ましてさ、それが『大事な人』だったり『親友』だったら、それこそ放っておけないじゃん」
「っ……!」

戸惑いをほむらが見せた。
ひどく感情を見せない子だと思ったが、本当は感情を見せるのが下手なんだろうかと思ってしまう。

「ほむらちゃんにもあるのかな、そういうもの?」
「…………」

答えなかった。

「ま、言えないなら仕方ないよね」
「……」

歩みを止める事無く、亜樹子は言葉を続ける。

「今のマミちゃんは、きっと寂しい自分を見るのが怖いんだよ。あんな無茶をしたのも
 きっとそのせい。だったら、アタシ達がどうにかしたいじゃない」
「…………意味ないわ」
「あるかどうかは関係ないよ。やるといったらやる、やんなきゃ始まらない」

静かだが、重みのある響きだった。
亜樹子の真剣な眼差しは、はるか奥、マミ達がいるだろう結界の奥へと向けられていた。

「でも、とりあえずは……」
「……?」

「マミちゃんに会って、怒らないと」

***

最深部、あたり一面をケーキで覆ったその場所。マミは今まさに孵化しようとしている魔女と対面していた。

気分はこれまでになく高揚している。脳内は快楽物質で満たされている。
今、自分の事を見守っている後輩達の事を思えば、何も怖いものはない。

万能感がマミの全身を支配し、あらゆる困難が矮小に見えた。
全てを支配できるような精神状態がマミの背中を押す。

「マミさん!」
「マミさん、やっちゃえ!!」

二人の声が、さらにそれを加速させた。

「いくわよ!!」

マミは駆け出した。
全身から召喚したマスケットを両手で次々と撃ちながら、襲い掛かる使い魔を、一瞬で蹴散らし始めた。

(身体が軽い……)

蹴り上げては撃ち抜き、銃で殴り飛ばしては撃ち抜く。

(こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて……!)

空を跳び、地を駆け、使い魔は翻弄され、抵抗も出来ない内に消滅する。

(――もう、何も恐くない!!)

そして放たれる銃弾の暴風雨。光が、使い魔達を飲み込んだ。


「だって、私……独りぼっちじゃないもの」

大地に足を付け、呟く。
もはや何も存在しないその場所の中心に立って、まるで暗示をかけるように。


そして――


マミの視界の奥、グリーフシードが一際大きな鼓動を鳴らした。


「っ!」

ソウルジェムが反応する。
歪に捻れる空間、その一角だけが異様に膨れ上がり、その中から魔女が現れる。

小さな、ぬいぐるみのような魔女。
明らかに力を感じられず、一瞬で決められる――そう、マミは思い込んだ。


思い込み、警戒を欠いた。
それは、これまでの『巴マミ』なら決してする事のなかった行為。


少女は突撃する。


これまでとはまったく違う戦闘方法。自ら危険に飛び込み、近接戦を挑む。
マスケットで殴りつけ、叩き潰し、そして打ち上げた。

「折角のところ悪いけど、一気に決めさせてもらうわよ!!」

空に打ち上がった魔女をマスケットで何度も撃ち抜き、そして、拘束を発動させる。


何も抵抗がない。

ああ、自分は今なんて強いんだ。

これは弱い魔女なんだ、私は強いんだ。

あの子達が見てくれてる私は負けない。

私は、今、無敵なんだ。


マミは思い込んだ。これまで、何もしないなんていう魔女はいなかった筈なのに。
高揚した感情が全てを阻害した。思考が止まっていた。

だからマミは選んだ。全てを一撃で終わらせようと。

拘束した魔女が天高く掲げられる。
抵抗もしない魔女の姿に違和感を覚える事無くマミはマスケットに魔力を送り込んだ。

巨大化するマスケット、狙う先には魔女。

引絞る引き金――これで終わる。


「ティロ………フィナーレッッッ!!!」


そして、銃弾が、魔女に吸い込まれ。


貫き。


膨らみ。


膨らみ。







――巨大な魔女が、口から。


「ぁ―――」


気づけば、眼の前に、魔女の顔。


ピエロのような、白塗り。


笑顔、笑顔。


愉快なはずな笑顔。


広げた口。


巨大な牙が迫り。


黒が、ただ、目の前にあって。


鋭い牙が、視界の端で光って。



マミは、その瞬間、死を認識し――。





「――――マミちゃんッッッッッッ!!!!!!!!」




――声が耳を打った。

***


眼の前で起きたその光景に、ほむらは驚愕の表情を浮かべた。

そこにあるのは、マミを抱きとめ地面に伏した亜樹子の姿。


「アキちゃん!!」
『亜樹子!!』

翔太郎とフィリップの声がステレオでほむらの耳に届く。
そして、彼女の横を白と黒が疾風を纏って走り追い越す。

『ショルダーファングッッ!!』

タクティカルホーンを二度押し込み、ダブルは肩から巨大な牙を引き出した。


「ハァァァァァァァ―――ッッ!!!」


そのまま大きく振りかぶり、投擲。

ゴォッ、と風を引き裂き、牙が魔女の身体へと一瞬で肉薄する。

エネルギーを纏った牙はなんの抵抗もなく蛇のようなシルエットをした魔女の頭部と身体を両断した。

「アキちゃん!」
『亜樹子! お前、何やってんだ!!』


マミを抱えて倒れる亜樹子の側にダブルもまた膝をつき、彼女の安否を確認する。

その様子を、ほむらはただ見ているしか出来ない。


(巴マミを……身を挺して助けた?)


これまでのループを思い返して、ほむらは在り得ない選択に動揺する。


ほむらにとって、巴マミは精神的に脆い魔法少女でしかない。

これまでのループで何度ともなく発狂し、こちらに害を及ぼした。

だからこそ、ほむらにとってマミを助けるという選択肢は存在しない。

在ったとしても、それは間違いなくまどかのため。


――だが、眼の前の「照井亜樹子」は。


(そんな事実を知らない……)


そう、知らない。

照井亜樹子は、そんな事実を知らないまま、巴マミを助けたのだ。
それは、今のほむらでは到底思いもつかない行動。


先程の亜樹子の言葉がほむらの中で反芻される。


『放っておけないじゃん』


その言葉、とうの昔にほむらが切り捨てたもの。

繰り返したループの中で、擦り切れかけた人間性がそこに在った。


(私……私は……)

その姿に、呼吸が速くなる。

ほむらの擦り切れかけていた人間性の部分が、胸の奥底で疼いた。


どこかで壊れかけていた人間としての部分に、気づく。
その事実に、今更になって激しくほむらは動揺する。


早くなる呼吸、思考が停滞する。

考えがまとまらず、散漫になる。

ぼやける視界、何かが音を立てて崩れそうになる。

眼の前にある光景に、ほむらの視界がブれていく。


だが、まどかの姿だけが、変わらずそこに在って。



――それだけを支えにして、ほむらはそこに立っていた。


***


肩に走る激痛、それに亜樹子は耐えていた。
頭上から降り注ぐ翔太郎とフィリップの声が微かに遠い。

肩口から走る激痛に目を移せば、スッパリと切れた肩。溢れる赤い血。

今さっきマミを庇った時、あの怪物の牙で切ってしまったのだろう。


「あ、あ……あき……亜樹子、さ……」


震えた声が自分の腕の中から聞こえた。

「マミちゃん……」

まるで子犬のようにマミは怯えていた。
そして、その視線はただ一点、自分の肩へと向けられていた。

「―――あ、あぁぁ! わ、わた……わ、たし……あ、あああ!!」

目線は合わず、虚ろ。歯をカチカチと鳴らす。

顔を真っ青にして、マミは全身を発作を起こしたように震わせはじめた。


何が起こったか、亜樹子は一瞬で察した。


――パニックだ。


「ッ……!! マミちゃん、落ち着いて!! マミちゃん!!」


痛みを堪え、亜樹子はマミの肩を強く掴んで揺すった。

だが、マミはそれに明確な反応を示さなかった。

「あ……や、やぁっっ!! マ、ママ! パパ!! あぁぁ! あああああ!!」

頭を大きく横に振って、マミは自分を掴む腕を振りほどこうとする。
だが、それを踏んでのところで亜樹子は押さえ込む。

「マミちゃん! しっかりして!! 大丈夫だから!! 私は大丈夫だから!!」

大きな声で呼びかけるが、いやいやをする赤ん坊のようにマミは両の瞳から大粒の涙をこぼして抵抗する。

「アキちゃん、彼女は普通の少女ではない。だから、ここは僕が――」

「フィリップ君は手を出さないで!!」

その申し出を切り捨て、亜樹子はマミの顔を両手で挟みこんだ。
傷口から零れる血の生ぬるさに不快感を感じるがそんな事は言ってられない。

無理矢理に、こちらへ視線を合わさせる。

「マミちゃん!!」
「っ……!?」

ビクンと身体を震わせ、そこで初めてマミは亜樹子を見た。

黄金色の綺麗な瞳は溢れる涙と恐怖の色で濁り、虚ろ。
ぐしゃぐしゃになった顔は、幼さで塗りつぶされ、年頃の少女の面影はそこには存在しない。

それに、亜樹子の胸が痛んだ。自分の腕の傷以上に。

「大丈夫……大丈夫だから。私は、大丈夫だから」

「あ……パ、パ。ママ……わた、わたし……」

嗚咽をあげながらマミが亜樹子の顔を見る。
そんな彼女の震える手を自分の手で包み込み、亜樹子が笑いかける。

「ね? 大丈夫だから……ね?」

「ぁ――」

それが決め手だったのか、マミが糸の切れた人形のように亜樹子の方へ倒れこんだ。


亜樹子の腕の中で、マミは気を失っていた。


『亜樹子! お前、腕は!?』
「ん……結構痛いけど大丈夫だよ、翔太郎君」

自分を心配して覗き込むダブルとなった翔太郎達に亜樹子は答えた。

だが――。


「ッ!! アキちゃん!!」

「へ?」

次の瞬間、亜樹子の身体とマミを抱えてファングジョーカーは空を跳んでいた。

そして、亜樹子は見た。
今そこまで自分たちのいた場所に、あの魔女がその牙を突き立てていたのを。


「うそ!? 今、フィリップ君たちが倒したはずなのに……!!」

「どうやら、あの魔女はビーストドーパントと同等以上の再生力があるようだね」


再び地面に降り立ち、ファングジョーカーになったフィリップは悪趣味な姿の魔女に正対する。

「ダブル!!」

そして、その横に翔太郎の身体を抱えたオーズも。

「翔太郎の身体、持ってきたけど……亜樹子さん、お願いします!」
「う、うん!!」

『亜樹子、俺の身体を勝手に放って行ったの件だが……まあ良いわ。
 とりあえずは……フィリップ』
「ああ。分かってるさ、翔太郎」

オーズとダブルが互いに顔を見合わせ、頷く。

「行こう、オーズ」
「ああ、ダブル!!」

二人の戦士が、魔女へと疾駆する。


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