黒子「ジャッジメントですの!」花山薫「ん・・・?」 その1

2009年12月02日 03:47

黒子「ジャッジメントですの!」花山薫「ん・・・?」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/10(火) 11:24:36.08 ID:QzN+WQXUO
開いた理由を産業で


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/10(火) 11:35:01.77 ID:N8IFHg95O
生れついての凶器……!!
ただ純粋な力……その巨体……並ならぬ握力……
学園都市最弱の無能力者にして不死身の異能をもつ男花山薫ッッッ!


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/10(火) 11:38:30.44 ID:FZIEStQ60
>>12
さてそのSS書こうか


188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/11(水) 22:42:00.86 ID:hZvAVfVJO

「……」

男は飢えていた。
彼の風体から言えばそれは血なまぐさく聞こえるが、その実は違う。
ただ娯楽に飢えていたのだ。

花山薫。
齢十五にして学園都市に所属する無能力者(レベル0)である。
本来、彼のような異質な存在がこの場所にいるはずはない。
そう、本人さえ望まぬ結果なのだ。

報せは急であった。
組の存続と自身の身柄を天秤にかけなければならなかった。
それだけで動く花山ではなかったが、

“母親の面倒を最新の医療すら越えた技術でみる”

というもう一つの条件と、その実証に首を縦にふらざるを得なかったのだ。


ただ彼という異質を迎え入れるには、学園都市と呼ばれる場所は“健全”すぎた。



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嗜好品すら満足に足りない。
日々を充実させる何かもない。
あるのはただ能力開発という名の女々しい自己鍛錬。


そんな日々が彼を満たすはずもなく、ただ自由を奪っていた。


だがそんな彼にとってその日は行幸だった。
たまたま覗いた区画に存在したアルコールを販売する店。
彼はそこに迷いなく足を向けた。

恐らくはアンチスキルの面々、つまりは教師に対しての販売を主にするのではなく相手を選ばぬ非合法に近いそれが幸いした。
彼から現金の束を渡されると、店員は何も言わず彼の頼んだワイルドターキーを手渡した。


彼の手にある琥珀色の液体の入った瓶。
久しぶりの嗜好品に彼の心も僅かながらに躍っていた。
しかし……


「お待ちなさい!」

そんな声が彼の背後で響いた。

「ジャッジメントですの!」

鋭く響く少女の声。
この場にて相応しくないその容姿。
だがそこにある腕章が彼女が何者であるかをはっきり示していた。

「ひっ、じゃ、ジャッジメント?!」

店員の慌てた様子から察するに、決して場違いな存在ではないのだろう。

「未成年に対するお酒、タバコなどの販売は一切禁止にされていますわ。本来他学区の私が出張る場面ではありませんが……」

ぎらり、と鈍く光る鋭利な凶器。

「アンチスキル到着までの時間、大人しくしていただきます」

そう一方的に告げるのだった。

白井黒子にとってその日は厄日だった。

憧れのお姉様と一緒に行くはずだった洋服の買い物はドタキャン。
学区内で起こったひったくりはスキルアウトと呼ばれる無能力者たちのはずが手こずりこんな場所へ。
更には違法な販売店の取引現場を目撃、と本来薔薇色……いや百合色な休日は一転して仕事色に染められたのだ。

(全く……これで他学区の活動による報告書まで書かされた日にはストレスで美容に悪影響が出てしまいますか)

溜め息を心の中でつきつつ、威嚇の姿勢は解かない。

(早く終わらせてお姉様にドタキャンの責任をあれやこれやと……)

黒い、とも桃色とも言える空気を出していた彼女はふと気付く。
目の前にいた二人の内、巨漢の男が進んでくる。スキルアウトの一員だろうか。
どちらにせよ関係はない。
レベル4にしてジャッジメントたる彼女が取る行動は一つだ。

「止まりなさい! これは警告ですの!」

「……」

目の前の少女の覇気は本物だ。少なくとも修羅場をくぐったことがない訳ではないだろう。

「仕方ありませんわね。止めさせていただきます!」

だが、しかし……。


カカカッ!


「……?」

気がつけば床に縫い付けられていた。彼女の姿が消えたまでは分かった。
しかし次の瞬間には懐への侵入を許し、あまつさえ床に転がされ、何本もの鉄矢がダーツのように自身の服を縫い付けていた。

「警告はしましたの」

これで終わりとばかりに溜め息をついていた。

「……?」

黒子は訝しんでいた。
目の前の相手のあまりの余裕な態度に。

「……」

花山は感じていた。
確かに、この相手はかなりの使い手なのだろう。
しかし、結局は……修羅場“しか”くぐっていない。

「……え?」

目の前の事態に黒子は思わず声をもらす。
何本も、しかも体の力を出せぬように縫い付けたはずの鉄矢が動いている。

いや、違う……花山の体が起き上がっているのだ。

「な、なんだよ、こいつ」

その場に居合わせた店員が思わず漏らすのも無理はない。
ただ、目の前の男がその力だけで無理矢理に立ったのだから。

(能力者!? それにしたってやり方が原始的すぎますわ。見たところ何か身体強化型か何かのようですが)

さすがの事態に対象を“敵”として認識を改め、気を張る。
そんな相手に花山は、

「……。俺が何かしたかい」

ただ、そう尋ねた。

「は?」

相手の行動に虚を突かれた形になったが、

「そ、それは貴方も違法に取引を行った側としての責任が!」

「これかい?」

花山は無防備に、視線だけでなく体を動かす。
その先にあるのは倒された拍子にほとんどが割れてしまったワイルドターキー。
その中でかろうじて原型を留めた一本を拾い上げる。

(何を……企んでますの)

相手の出方が伺えぬ以上、動きにくい。
能力者である疑いが出た以上、相手の術中に嵌る可能性もあるからだ。

緊迫感が張り詰める中、花山だけが自由だった。

「違法な取引、か」

拾い上げ、揺らしていた酒瓶を不意に片手に止める。
そして小さな破砕音の後、

「何も、ないぜ」

酒瓶を指のみで空け、中身を一気に飲み干し、その場に放ったのだ。

「なっ……」

店員の驚きはピークに達していたが、黒子からすれば相手のやり方を特定するいいきっかけでしかなかった。

(やはり強化の類……ならば改めて撃ち込んで!)

そう決めた瞬間、彼女の目の前が真っ暗に染まる。
自分の顔が彼の手の中にあると気づいたのはすぐ後。
まずい、と空間移動(テレポート)の能力を発動しかけた時、違和感に気付く。

「……大概にしときな」

それは攻撃ではなく気遣い。頭を優しく撫でられただけ。
その事実に憤怒する前に、彼の姿は店から出ていこうとする。

「お、お待ちなさい!」

そんな言葉で止まるはずがない。しかし分かっていてもそう言うしかない。

「……っ、」

逃がしたくない。
その一心で再びガーターに備えた矢に手を伸ばすが、

ガタッ

「あっ」

そう、逃げようとする対象は一人ではないのだ。
特にその根元を逃す訳にはいかない。
少なくとも、アンチスキルの到着までは。

「くっ……」

自分の能力を使えば恐らく二人を抑えるのは不可能ではないだろう。
だが、“恐らく”ではダメなのだ。

「あなたには、容赦しませんわよ」

怯える店員を脅し、店の外を見る。

「……本当、厄日ですわ」

呟きは誰にも聞こえぬものだった。



男はところどころ千切れたスーツのまま、当て所もなく歩いていた。
カランカランと自然と落ちていく鉄矢の音が落ちていく度に思い出す。

「……」

目で追える範囲は追えた。それは、いい。
だが明らかに消えた瞬間があった。

「……あれが」

超能力、というやつなのだろうか。
ならば、と思う。

「意外とこっち側に近い、か」

男は飢えていた。だからこの日は行幸だった。
もしかすると、自分を満たす何かがここにはあるかもしれない。
そう、微かに感じられたのだから。



「初春、ありましたの?」

帰るなり不躾にそう問うてくる同僚。

「すみません、まだです」

それに正直に答えただけだというのに、

「ふざけてますの? たかだかそれだけのデータですのよ!」

「あぅ、そう怒らなくてもいいじゃないですか。第一、念写能力で人相は分かりますけど実際に相対したのは……」

「な、ん、で、す、の?」

「な、なんでも……あ、それより」

「あぁん!?」

「ひぅ!」

「全く」

彼女がジャッジメントの詰め所に戻って第一に行ったのは自分の相対した相手の情報収集だった。

(しかし二人でカテゴリーを絞ってこうも見つけられませんの?)

思い出してもあれが何か特殊なタイプに思えない。
単純なモノであるはずだが、そういったカテゴリーの能力者は見当たらない。

(やはり一度カテゴリーに囚われず、一つ一つあたっていくしかないですわね)

せっかくの休日を徹夜で過ごす覚悟を決める。
あの感覚。ただ者ではないだろう。絶対放っておけない。

「初春、監視カメラのモニターチェックの方は任せますわよ」

「あの、それなんですが」

「……? 何ですの」

「さっき見つかりました、みたいな」

「「……」」

「何ですぐ報告しませんの!!?」

「しようとしたら言わせなかったのはそっちじゃないですかぁ?!」

「場所は!」

するどく問い掛ければ返る答えは既にジャッジメントのそれ。

「区画は第七、三九線・木の葉通りの監視カメラです!」

「ケンカ通り、ですの……やはりスキルアウトの関係者の線も」

「でも、能力者なんですよね?」

「でないと説明がつかない可能性が高いだけですのよ。まぁいいですわ」

ピリッ、と初春は針にも似た空気を肌に感じる。

「直接、“お話”してきますから」

長い付き合いだからこそ分かる、白井黒子の久々の本気だった。



ケンカ通り。そんな物騒な由来は不明なまま。
しかし厳然としてその事実がなくならない訳はそこを中心として活動する人間は知っている。
簡単なことだ。ただトラブルが多い。それだけのこと。
大通りから外れ、少し進めば裏路地。
スキルアウトと呼ばれる集団を始め、血の気の多い世代である能力者たちの小競り合い。
そして人知れず何かの陰謀が蠢く、そんな場所なのだ。



「……」

そして彼は“そちら側”に極めて近かった。


ただ、そこを、歩く。
それだけの事が彼には日常のようにはまっていた。



「よぅ、見ない顔だね、あんた」

軽い調子の声がかけられる。

「随分ボロボロだけど、ケンカでもしたかい?」

「……」

馴れ馴れしく話しかけるソイツは、体格はそれなりに良かったが花山と並ぶと少々見劣りする。
だがそこには臆した様子はなく、寧ろ獲物を狙う息遣いがあった。

「でもさ、ボロは着てても実は錦。なんつってさ。それ、見た感じはいい服じゃん」

花山の着るそれは学園内ではかなり古いタイプの素材ではあるが、実際に高級なそれだ。
そういった服装から相手の品格を値踏みした正当な評価だ。
そして花山をがたいからパワータイプだと感じ取ったのも彼が長年そういった行動をとってきたことによる技だった。
その上で声をかけた……つまり今回の標的が決まったということ。

「だからさぁ、そんなあんただから見込んで頼みがあるんよね。お金をさー、少し貸してくんねぇかな」

「……」

「必ず返すよ。な? な? いいだろ?」

「……」

「おいおい、無視かよ。んじゃあ」

周りを彷徨いていただけの動きから一変。
次の瞬間、背後から側頭部に向けて隠しもっていたスタンガンを振り下ろす。

バチリ、と火花が散った。

本来の数倍の光量と音量がそれが学園内にて改造されたものだと物語る。


「はは、あんたが悪いんだぜ? 人を無視しちゃいけません、なんて小学生でも知ってるルールを破ったんだからよ」


けたけたと無邪気に笑う少年。いつも通りだ。
学園都市であり、異能の力がばっこするとはいっても大抵はただの学生だ。
明らかに格上や、危ない人間は避けてきた。
力の強そうなだけであるとか、強能力者以上には手は出さないようにしていた。
先手必勝。気絶させれば大体の相手には勝てる。
そういう意味では彼は天性のセンスがあったのだろう。
レベル1以下の、それも不意打ちを食らってくれる相手を選べるというその点に関して言えば、だ。


だが彼のセンサーに引っかからないものはあった。
“改造スタンガンを食らって倒れない相手”などという規格外は。


「なぁ」

ぽん、と肩に手を置かれる。誰かと思い振り返っても誰もいやしない。
そう、それはあり得てはならない場所……正面から聞こえてくるのだ。

「人をいきなり殴るなんてダメだ。それくらいわかるよな、小学生でも」

「は……ぁ、え?」

呆然とする少年の手にある凶器に手を伸ばす。

「なぁ、わかるよな?」

バチリ、と微かな音がする。
自然と離していたスタンガンに目を向ければそこには紙か何かで出来ていたのではないかと思えるそれがある。
くしゃり、と。音にするならそんな感じだ。

「ぁ、は、はい」

「なら、いい」

そう言って返されたそれに触れて分かる。
その堅さ、間違いなく金属を含むそれだ。


へにゃり、とへたり込む彼が見たのは大きすぎる侠の背中。


その様子を影で見ている人物は何人も居た。
仕掛ける人間ばかりが能ではない。ハイエナのようにおこぼれに預かるのもまた、賢いやり方だからだ。
そんな人間達は悟る。あれは関わるべきではない、と。
そうした判断を下すや一人、二人と路地裏から気配は消えていった。



「静かになったな」

誰に話すでもなく呟いた言葉。

「ええ、そうですわね」

それに返る答えがあった。

「あんたか」

「ええ。ジャッジメントですの」


月夜の下。
侠と異能が再会する。


「我々は本来は学園内の風紀を守るのがお役目ですの」

「……」

「ですから先程の違法について色々とお話を、と思ったのですけれど」

チラリと花山の服に残る焦げ目を見やる。散った火花で焦げ付くのだ。
一体どれほどの電流だったのか想像もしたくない。

「見てましたわ、それ。本来ならば我々が動くところですが……動く前に終わらされてしまいましたもの。怒らないでくださいな」

「……」

花山からすれば何のことはなかったのだろう。
軽く肩を竦める以外に反応はない。

「何か用かい」

「そう、ですわね。本来ならば罪を償っていただき、貴方が今後真っ当に更生したくなるほどきつくお仕置きするつもりでしたわ」

「……でした、ね」

「ええ。どうやら貴方は根本的な部分で風紀を乱すタイプには思えなくなりまして。悩んでますの」

ピリピリとした雰囲気が少しずつ溶けていく。

「……」

「今後、そういった事に関わらないでくださるなら、今回は不問にしようかと思いますの」

黒子は自分でも何を言っているのだろうと思う。
先程まであれほどに内に沸いていた何かが先の一件を見ただけで霧散していく。
何故かはわからないその心境に、彼女の表情は拗ねたような言いようのないものになる。

「とにかく! ですわ。もうしない、と誓っていただけますの!」

もやもやとした胸の内を吐き出すように誓約を要求する。
こんな日はさっさと帰ってお姉様の寝顔でも楽しもう。
そう決めた彼女に、

「俺は何も悪いとは思ってないんでね」

「は?」

「やめる理由がない。だから誓えない、ってことだ」

あっさりと拒否の言葉を発した。

あまりの堂々した態度と、その風体にまさかと思い至る黒子。

「あの、まさかアンチスキルの……?」

だから書庫のデータに引っかからなかったのか。
しかしそれでは昼間の一件に説明がつかない。
実際彼もアンチスキルという単語にピンときた様子はない。
ではただの成人、なのだろうか。外部から? まさか、有り得ない。
あらゆる可能性を潰していけば思い至る。
そう……それはただ純粋に悪いと本気で思っていないのだ。

「あ、ああ、貴方は……!」

わなわなと体の芯を何かが駆け巡る。
先程までの穏やか、とは言い難かったがそれに近かった心境は吹き飛ぶ。

「つまりまぁ……嫌だ、ってことだ」

大げさに肩を竦め、小馬鹿にしたようにため息をこれみよがしにつく。

「オーケー、オーライ、わかりましたわ。ええ、とても」

ふふふ、と気味の悪い声で笑い、

「地べたに這いつくばらせて嫌ってほど誓わせてさしあげますわ!!」

ここに第二ラウンドの火蓋が切って落とされた。

仕掛けたのは黒子。
遠慮がいらないことは先程までの経過でわかっている。
彼には一度は通じた戦法でまずは動きを封じにいく。
ガーターに装填された鉄矢に触れながら懐へと“飛ぶ”。
次に脚を払い、転倒を狙う。
あとは先程の倍、一度に全てのダーツを使い切るつもりで縫い止める。
完璧な一連の動きは、

「痛っ」

脚を払った瞬間に感じた強烈な痛みに止められる。

(なんですの?! 私、間違ってコンクリートか何かを……)

無論、そんな訳はないと見上げた先にある存在感が告げる。

「っ!」

動揺するなと言い聞かせ、近場に“飛ぶ”。

「きゃわっ?!」

バサバサと自身の上に被さる生ゴミに苛立ちながらも自身を叱咤し立ち上がる。

(このくらいの痛みと動揺であっさりコントロールが甘くなるなんて)

空間移動能力の泣きどころである制御の難しさを噛み締める。
その視線の先には今しがたまで自分がいた場所へ拳を打ち下ろしていた花山の姿がある。

「……冗談キツいですわ」

コンクリートに罅の波紋を残す相手に寒気を覚える。

(自身の肉体への干渉……ですわよね?)

そう当たりをつけていたがやはり間違っていたのではと感じ始めた。

能力者のほとんどが直接的に肉体への干渉をせず、物理法則などを媒介にしている。
逆に言えばそういった身体を強化するというような能力者は少ないのだ。
肉体再生や肉体変化。このあたりを始め、あまり多岐には渡らない。
故に彼女は花山が能力者であるならばその類である限り少ないデータ量から早く割り出せると踏んでいたのだ。

(見た目に騙されたのか、それとも)

後者の僅かに思い至った可能性を打ち消し即座に思考を組み立て直す。

(発条包帯等による身体強化。こちらの線が濃厚ですわね)

ただそれだけではないと自身の第六感が告げるが今は無視。

(明らかに私の限界値を越えた質量ですわね)

一度目と違い、接触の瞬間に能力を発動していたから分かる事実。

(……どうしましょうかしら)

少しずつ焦りが募る。



またか、と喧嘩師は思う。
捉えたと思うと既にそこにはいない。
視界から消えられるのだ。
圧倒的な情報不足。だがまだ負ける気はしない。
実際、分かったこともある。
一度目は完全な油断からあっさりと地べたに転かされた。
しかし来るとわかって構えれば相手は打撃による攻撃で自分を倒せない。

敵の攻撃手段は読めないが、それでもなんとなく予想はつく。
そんなとんでもないことが許されると仮定すれば、ではあるが。



「そちらから来ませんの?」

正直の声に振り返れば、

「こっち、ですわ!!」

更に背後から跳び蹴りが入る。
だが巌のごとき鋼の肉体にたかだか少女の体重を全て込めたところでダメージには至らない。

ぶぉん、と空気を裂きながらふるう拳は何も捉えられない。
先程からその繰り返しばかり。

(決定打がなければ、まずいですの)

回避には成功を続けているがこれ以上長引けば先に倒れるのは負担の大きいこちら。
やはり直接ダーツを撃ち込むしかないのか、と覚悟を決めるところまで彼女は悩む。

(しかし、それは……)

確かに彼は違法行為を犯しただろう。
それはこれから先、間違いなく続く。
それ自体は勿論許せないことではあるし、やめてほしいと思う。
だがそれだけ……飲酒や恐らく風体から考えるに喫煙を行うであろうというだけで相手にそこまですべきか。
さすがに何か行き過ぎたものを感じ、心に迷いが生じる。

(……ぁ)

それに身体は正直に答える。
空間移動に、失敗した。

迫る拳。
それがとんでもない凶器であると感じながらもどうすることも出来ない。

(……お姉様っ!)

心に描く走馬灯には様々な百合色の思い出と、仲間たちとの歩んだ道。

(ごめん、なさい)

ぎゃっと瞑った目。
失った光の後に感じたのは強烈な破砕音だった。








「……何故、ですの」

そして決着はついた。
壁にめり込むほどの破壊力は、黒子の数cmほど横に叩き込まれていた。

「情け、ですかしら」

「……礼だよ」

ゆっくりと壁から手を引き抜きながら花山は答える。

「面白いものを見せてもらったから、な」

「……。勝者の余裕ですかしら」

「勝者、ね。ゴロでもないのに勝敗なんてあるもんかね」

「ゴロ、ですの?」

「得物を使わず、命を獲るでもなく、誇りを賭した訳でもない」

ごきり、とひとつ気だるそうに首を鳴らし。

「なら、そりゃゴロでもなんでもないだろ。それにな」

きびすを返し、再び当て所もなく歩き始める。

「……女を殴るのは、趣味じゃない」

「なっ」

絶句する黒子をそのままに侠は消えていった。


やはり、と花山は思う。
ここはとんでもない場所だ。
あんな少女ですら、自分の知覚できないレベルの動きが出来る。
あれは相当に手加減を加えられていたが、もしあの鉄矢を本気で撃ち込まれていたら……。
勿論それが出来ない相手だったのかもしれない。
だが出来る可能性のある人間はいくらでも、いる。そう思える。

握った拳は堅く、熱い。
まだ見ぬ何かに期待して……。


悔しい、と黒子は思う。
あいつはとんでもない存在だ。
あんな怪物がこの都市内に跳梁しているなんて信じたくない。
いくら鉄矢を直接肉体に撃ち込まなかったとはいえ……。
あの相手には致命傷を負わせるなんて不可能ではないかと思わせられる。
油断がなかったわけではない。だが本気を出さなかった訳でもない。
そして何より彼が純粋な悪だと思い切れない。
そんな様々な感情が渦巻く胸中。
堅く握った拳は、そのやり場のない感情に熱く震えていた。



276 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/12(木) 05:28:24.08 ID:OLVWLMfCO
そんな感じで一旦お疲れ様。多分次は合法ロリ



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コメント

  1. 名無し―ネームレス― | URL | -

    Re: 黒子「ですの!」花山薫「ん・・・?」 その1

    花中島勝と間違えたw

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