僕らが空ばかり眺めている理由

2009年11月20日 12:04

女の子というのは,空から降ると相場が決まっていて,ぼくらの村では,男の子が年頃になると,空から女の子が降ってきた.女の子は,ひとりひとりの男の子に降ってきて,その2人は,そのまま結ばれ永遠を誓った.女の子は否応なく降ってくるわけで,ぼくらに選ぶ余地はない

だけれども,そんなことを知らない幼い僕が,母に「どうしておとうさんのところに降ったの?」と訊くと,母は笑って誤摩化した.いつだって,女の子は,ぼくらの知らないことを知っている.そもそもぼくらは,空にいるころの女の子が何をしていたのか知らないのだ

降ってくる女の子を受け止められない男の子は,一生独身でいないといけないわけで,ある時期からぼくらが空ばかり見上げて過ごすのは,そんな理由による

また

あるとき南から嵐がやってきた。竜巻が2、3本ぶどう畑をぐるりと一周して、丸太小屋とワイン樽と牛と馬と熟れだしたぶどうを全部一緒くたに空へと放り投げていった。それでも僕らは空を見上げていた。あるいは今日の彼女たちの夕食は豪華になるかもしれない。ワインの味には自信があった。


上背もある。声も低く太くなった。太陽や星や月の動き、虫の声や土の匂いを敏感に察知できるようになった。ある時ふと思った。女の子は恋に落ちたとき、空から落ちてくるんじゃないか。ラジオからは往年の歌が流れ、恋は盲目だと誰かが歌う。そうか。女の子は盲目になって雲の隙間へ足を踏み外すのだ。


僕はそれ以来ますます空を見上げるようになった。雲には数えきれないほど種類があることを知った。渡り鳥の長と声を交わせるようにもなった。大人が煙草を吸うと、僕は空の上の女の子が咳き込みやしないかと酷く不安にもなった。洗濯物や畑仕事も積極的に引き受けた。外に出たかった。空を見たかった。


あるとき父が聖都まで行くと言った。聖都までは山と大河を2つずつ越えなければならなかった。
僕は拒否した。旅の途中に女の子が降ってくるかもしれない。彼女は目が見えないんだ。
父は言った。「空はひとつだ。繋がっている。」


その夜旅の準備をしていると母がやってきた。僕は馬小屋で一番体躯のいい馬に革袋をくくりつけていた。母は言った。「空はひとつよ。」僕はわかってる、と言った。「でも、」と母は言った。「大地もひとつなのよ。ちゃんと繋がっているの。」空は満天の星空で、昼間みたいに明るかった。


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