キノ「信じられない・・・機械が二本足で歩いてる・・・」

2009年11月20日 12:18

キノ「信じられない・・・機械が二本足で歩いてる・・・」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/17(火) 22:32:27.55 ID:VY89Qf+U0

日差しは暖かく、風が少し冷たい春の始まりのような晴れの日でした。
なだらかな丘陵が延々と続く草原に、風で流された雲が影を落としています。
緑色の紙に白い線を一本引いた様なまっすぐな道が、地平線まで続いていました。

その道の路肩の、雪が降った時にタイヤにチェーンをつけるための広場に一台のモトラド(注:二輪車。空を飛ばないものだけを挿す)がセンタースタンドで停まっていました。
そのシートの上には運転手の若い人間が座っています。

運転手は、道から少し離れた草地を、その草地に大きな足跡をつけながら歩く巨大な人型の機械が歩いている所を眺めていました。
人形の機械の左手には、髪の長い女性が座っているように見えます。

キノ「信じられない・・・機械が二本足で歩いてる・・・」

エルメス「あれはアームスレイブだね。
      駆動音が静かだからパラジウムリアクター搭載型の第三世代かな?」

キノ「アーム・スレイブ?始めて見たよ。世界は広いね。」


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だだっぴろい草原に、場違いのような舗装路が長く続いていた。
視界を遮るものは時折生えている背の低い木意外には何も無い。
巧妙に偽装した狙撃兵でも伏せていれば見つけようが無いが、風が強いので狙撃は難しくなる。
狙撃兵が一発目を外せば位置を特定し、反撃に転じる事ができる。こちらにはASがあるのだ。
そもそも、なぜこんな草原をASで歩き続ける事になったかと言えば、トゥアハー・デ・ダナンの格納庫で、シミュレーションデータのテスト中、ラムダ・ドライバを発動した瞬間に見知らぬ草原に放り出されていたのだ。
ウィスパードとしてテストに同行した千鳥かなめも一緒に、だ。

かなめ「いい景色だけど飽きてきたわねー・・・」

宗介「アル、位置情報は出たか?」

アル「軍曹殿、さっきから同じ質問を繰り返しています。
   衛星、無線、あらゆる通信波をロスト。まったくの孤立無援です。」

宗介「千鳥、何か見えるか?」

アル「軍曹殿、カナメ・チドリの視覚より、私のセンサーの方が高性能です。
   合理的に判断するならその質問は私に向けるべきでは?
   あ、熱源センサーに反応あり。10時方向、距離200。
   それに、女性と喋るきっかけにするなら、もっと気の効いた話題に
   するべきです。例えば・・・」

宗介「うるさい!!」

かなめ「んー、道のそばにバイクが止まってるみたい、人もいるんじゃない?」

アル「念のため確認しますが、情報の報告はしましたからね?私が先に。」

宗介「・・・うるさいぞ」

左手に座った女の子が、こちらの姿に気づいて、ASに話しかけます。
遠いので何を言ったのかはわかりませんが、おそらく止まるように指示したのでしょう、ASは歩くのを止め、モトラドと運転手の方に向き直ります。

宗介「そこの民間人、ASの歩行区域は危険だ!すぐに退避を」

かなめ「くぉらソースケっ!危険にしてるのはアンタでしょーが!
    せっかく人がいたんだから話を聞くわよ!  
    さっさとASから降りなさい!まったく・・・」

宗介「むう・・・了解だ」

ASの掌から降りてきた女の子が普通の足取りで、ASの胴体から降りてきた男は隙のない足取りで、ゆっくりこちらに近づいてきます。
近づいて見ると男の方も若く、キノと同じ位の年に見えました。真一文字に結んだ口元と隙の無い視線がまるで軍人のようです。

キノ「正面から見ると改めて大きいね」

エルメス「そうだね、知らない機種だ。あ。人が降りてくるよ女の子と、男が一人、銃を持ってる」

キノ「うん。”話し合い”ができる相手だといいけど」

かなめ「こ、こんにちは~、ちょっとよろしいですか?」

宗介「こちらに攻撃の意思は無い」

キノ「今日は。ボクはキノ。これはエルメス。モトラドで旅をしています。」

エルメス「よろしくー」

宗介「(得物はリボルバーか、抜き打ちに適した位置に吊ってある。
    かなりできるな、隙がない。殺気は無いが・・・)」

かなめ「バイクがしゃべった!?ま、まあいいわあたしは千鳥かなめ。こっちが・・・」

宗介「相楽宗介だ。見たところ銃を所持しているようだが・・・」

キノ「ええ、旅では色々な人と出会う事があります。中には”説得”が必要な人も」

宗介「なるほど。危機管理か。いい心構えだ」

キノ「ええ、ありがとうございます」

かなめ「でね、キノさん、教えて欲しい事があるんだけど・・・」

キノ「はい、ボクにわかる事なら。
   そのあとで、あの大きな機械について話を聞かせてもらえませんか?」

かなめ「それくらい全然いいわよ、ね?ソースケ?
    で・・・その・・・ここって、どこなのかな?」

キノ「ここは*****の国と、*******の国をつなぐ街道ですよ
   地図がで見ると、いまいる場所がここです」

かなめ「」

宗介「」

かなめ「・・・・(ちょっとどーすんのよソースケ!
     異世界なんて聞いてないわよ!どーやって帰るのよ!)」

宗介「・・・(完全に想定外だ、まさか異世界とは・・・)」

かなめ「・・・でね?その、私達、日本って国から来たんだけど
    なんとかしてそこに帰りたいの」

キノ「ニホンの国、ですか。残念ですが聞いた事がありません、
   お二人は、どうやってここまで来たんですか?」

宗介「かくかくしかじかで、」

キノ「なるほど、まるまるうしうしという訳ですね。
   申し訳ありませんが、ボクはその装置に関する知識がありません、何か知っているかい?
   エルメス」

かなめ「・・・(なんだろこの物分りの良さ)」

エルメス「ラムダ・ドライバの暴走による時空転移かー」

宗介「ラムダ・ドライバを知っているのか?機密事項のはずだが・・・」

エルメス「元の場所に戻る方法はわからないよ、ソースケさん。
     でも最近、似た様な話を聞いたよね、キノ?」

キノ「うん、これから行く国が面した海に、とつぜん、巨大な潜水艦が現れた、っていう話でしょ?
   ボクも、その潜水艦を見に行くのが目的です」

かなめ「それってまさか・・・」

宗介「おそらく、可能性は高い。キノ、その潜水艦は、俺達が乗っていた艦かもしれない」

キノ「でも、ボクがこの話を聞いたのは何日も前ですよ?
   ソースケさん達がここに”来た”のは今日ですよね。
   その船も、ラムダ・ドライバの事故でこの世界に来たとしたら
   時間の計算が会わない事になります」

宗介「そうだな・・・」

かなめ「とりあえず、現物を見てみないとわからないわね」

宗介キノエルメスかなめ「・・・。」

かなめ「もう夕方ね、とりあえず、これからどうしようか?」

キノ「ボク達は、ここでキャンプして明日また次の国を目指します」

かなめ「私達も一緒にキャンプしていい?」

キノ「ええ、いいですよ、食料もなんとかなるでしょう」

宗介「キノ、このASについて聞きたいと言っていたな」

キノ「ええ、始めて見たので。とても興味があります」

宗介「この機体はアーバレスト、
   テスト機として1機だけ建造され微妙に使い勝手の悪い特殊装置と、
   小うるさいAIを搭載している」

アル「軍曹殿、軍曹殿の説明は偏っています。キノさん、始めまして
   私はアル、この機体のメインAIです」

キノ「よろしくアルさん、エルメスみたいに喋る機械が、他にもあるなんて」

かなめ「エルメス君もAIなの?」

エルメス「ううん、僕が喋れるのは僕自身の意思さ
      バッテリーがなくても喋れるだけ僕の方が高性能だねー」

かなめ「ふーん、要は気合ね」

アル「軍曹殿、交戦許可を。20秒で済みます」

エルメス「キノ、あのポンコツに”カノン”で穴があくか試してみようか
     頭部センサーがオススメだよ」

宗介キノ「うるさい」

軍人、旅人、恋人にしたくない贈呈品イーター、喋る機械2台の奇妙な技術交換会議が終わり、日が暮れがかる頃、宗介はエルメスを停めていた広場にASを移動させて、キノがテントを設営しました。夕食は、キノがしとめて来た兎2羽、キノが手慣れた手つきで解体しましたが、エルメスの熱心な薦めにより調理自体はかなめの担当になりました。キノは複雑な表情です。

キノ「・・・とてもおいしいかったです。自分で調理するよりずっと」

かなめ「ありがと、他にやる事、ある?」

キノ「この地域には、危険な獣もいないようですし、普通に寝ても大丈夫だと思います」

宗介「確かに、この状況で敵に襲われるとは考えにくいな」

エルメス「キノ、カナメちゃんもテントに入れてあげたら?」

キノ「そのつもりだよ、女性を外で寝かすなんて」

かなめ「キノさんありがと♪・・・残念だけど、宗介はASのコクピットで寝たら?」

宗介「なぜ残念なのだ?千鳥」

かなめ「・・・ふーん。まあいいか、じゃあキノさんよろしくね。明日どうするかは、明日決めましょう?」

エルメス「”明日は明日のグロフスフ”?」

キノ「・・・”風が吹く”?」

エルメス「そうそれ」

翌朝、キノはいつもどおり夜明けに目覚めました。すぐ横にはかなめがまだ寝ています。
寝相が悪いのか、毛布代わりのパーカーは丸まって足元に追いやられていました。
タンクトップとショートパンツからは、すらりと伸びた手足とキノと同年代の割りに、出るところの出たスタイルが目に付きます。

キノ「・・・なんだか、悪いことをした後みたいな気分だ」

キノは銃と整備の為の道具いくつかを持ってテントを出ました。

エルメス「おはようキノ」

キノ「おはようエルメス、珍しく起きてるんだね」

エルメス「ソウスキー君に起されたよ」

宗介はASの地面に座って、銃の分解整備をしているようでした

キノ「おはようございます、宗介さん」

宗介「うむ。その道具・・・キノも銃の整備を?」

キノ「ええ、習慣になっています。”整備をしていない道具は必ず裏切る”
   と教えてくれた人がいます、お隣で作業させてもらってもいいですか?」

宗介「問題ない。いざと言う時に使えない武器など信頼できない
   コルトM1851ネイビー、ずいぶん古いモデルだがよく整備されているようだ」

キノ「・・・ありがとうございます、ボクはこれを”カノン”と呼んでいます。
   宗介さんパースエイダーはG19型ですか?」

宗介「グロック19、一般的な市販品だが、信頼性、精度もまずまずだ
   LaserDevice社のレーザーグリップを後付けしてある、
   弾丸はウィンチェスター製のフルメタルジャケテッドフラットノーズ弾を略」

キノ「なるほど、貫通力を重視して略」

宗介「マンストッピングパワーには劣るが、ダブルタップを徹底すれば問題なく略」

爽やかな朝に、濃い銃器トークがしばらく続きました

銃の整備と、銃器トークが終わり、キノはいつも通り抜き打ちの練習をします。
それを眺めていた宗介も、銃口をキノに向けないために、キノから少し離れた所で練習を始めました。

エルメス「キノと同じくらい早い抜き撃ち、始めて見たよ」

キノ「ボクより早い人と会っていたら、ボクは今ここに居ないかもしれないよ」

エルメス「それもそうだねーそういえばキノ、同じ位の年の男の子って殆ど会った事ないんじゃない?
     あのニヤケ駄犬の飼い主はともかくとして」

キノ「陸君は可愛い犬じゃないか。飼い主はともかくとして」

エルメス「もし、ソウスキー君達が帰れなかったら、どうする?」

キノ「・・・考えとく」

宗介「む、どうした?」

キノ「いえ、今ボクは練習が終わったところです。宗介さんも?」

宗介「ああ、俺も今終わった。以前は毎日欠かさずやっていたが、
   最近は怠りがちだったからな」

キノ「パースエイダーを服の下に隠した状態からの訓練でしたね」

宗介「最近は、学校に居るうちに容赦なく敵の襲撃があるからな
   学校では堂々と銃器を見せられん、表向きは一般的な生徒を演じなければならん。
   必然的に、コンシールドキャリーからのクイックドロウが多くなり略」

キノ「なるほど、ボクは学校に通った事はありませんが、なぜかわかる気がします。
   それで、ボクのホルスターの抜き撃ちと殆ど変わらない早さとは略」

宗介「キノ、君のバックサイドホルスターからのウィークハンドでの抜き撃ちも見事だった略」

爽やかな朝に、濃い戦闘技術トークがしばらく続きました

かなめ「・・・(ふーん、ずいぶん仲良さそうねー?まーいーけど?
       テッサもだけど、宗介ってミリタリー知識のある子にモテるのよねー以外と・・・)」

宗介「千鳥、よく眠れたか?体力の回復は重要だ」

かなめ「おはようキノさん、エルメス君。アルも♪サガラ軍曹殿起きてたの?」

キノ「おはようございますカナメさん」

宗介「」

かなめ「ごめんねー、あたし寝相わるかった?」

キノ「いえ、大丈夫でしたよ」

エルメス「寝てるキノが人の寝相くらいで起きるわけないよ」

宗介「」

朝食は携帯食料とお茶でした

キノ「では、これからどうしましょうか。
   カナメさん達もボク達も次の国で潜水艦を見るところまでは目的が一緒ですが」

宗介「できれば、この世界の旅に慣れているキノに協力してもらえると、助かる」

かなめ「そうね、あたし達だけじゃ、道も国のルールもよくわからないし」

キノ「では、一緒に次の国に向かいましょう」

エルメス「ASとモトラドじゃ、ペースが合わないかもよ?」

宗介「簡単だ、アーバレストでそのバイクとキノを運べばいい」

キノ「ボクもそのAS手に乗って、ですか?ちょっと怖いですね」

エルメス「え?そんな不器用そうなマニピュレーターで大丈夫?
     途中で落とされたり、握りつぶされたりしない?」

アル「モトラドが余計な事を喋らなければ、問題ないと思われます」

かなめ「ASって揺れるのよねー、どっかの誰かに投げられた事あるし。
     んーエルメス君の荷台に私が乗って、荷物をソースケに持たせるってのはどう?
     キノさんさえ良ければ」

エルメス「たまにはタンデムもいいんじゃない?キノ」

キノ「それが無難そうですね、では宗介さん、荷物をお願いします」

宗介「・・・了解した」

日差しは暖かく、風が少し冷たい春の始まりのような晴れの日でした。
なだらかな丘陵が延々と続く草原に、風で流された雲が影を落としています。
緑色の紙に白い線を一本引いた様なまっすぐな道が、地平線まで続いていました。

その道を、一台のモトラド(注:二輪車。空を飛ばないものだけを挿す)と一台のAS(注:人形兵器。空を飛ばないものだけを挿す)が走っていました。

モトラドに乗っているのは二人の人間でした、運転手は、歳は10代の中頃に見える、黒い短髪の、大きな目と精悍な顔を持ち鍔のある帽子をかぶっていました。ゴーグルは首にかけています。

もう一人、荷台に、折りたたんだ防水シートをクッションがわりにして横向きに座っているのは10代の中頃、目鼻立ちの整った歳の割りにスタイルの良い女の子でした。
腰まで届く長い髪は、今はポニーテールにしていました。

ASの方は、旅の荷物を両手で胸の前に大事そうに持って走っていました。
ASの操縦席では袖にラインの入った白いシャツの学生服を着た10代中頃に見える男の子が生真面目そうな顔で操縦しています。

アル「軍曹殿、ただの直線道路です、私が操縦したほうが体力の消耗を抑えられるのでは?」

宗介「いい、俺が操縦する、問題があるか?」

アル「否定、疲れたらいつでもお申し付けください。
    この世界はインターネット環境が無くて退屈です。」

かなめ「これ気持ちいいのねー!」

エルメス「そーでしょー?乗り心地は足でどたばた走る機械には負けないよー」

キノ「あっ・・・カナメさんあんまり動かないで下さい・・・二人でなんてひさしぶりで」

エルメス「二人とも、主語入れないと誤解されるよ」

2時間に一度くらいの頻度で休憩をしながら、ひたすらまっすぐな道を走り続けます。
いつのまにか景色は草原はから、畑や牧場に変わっていました何度目かの休憩、キノとかなめは路肩に座ってお茶を飲んでいます
キノはいつものマグカップ。かなめはアーバレストに搭載されていたAS搭載型対熱マグカップです。宗介はキノに借りた地図情報をアルに入力しているようでした。

かなめ「キノさん、ありがとう、迷惑じゃない?」

キノ「ボクはあまり同世代の方話す事がありませんのでなんだか新鮮な感じがします。
   あと、とても面白い方だとも」

かなめ「ソースケは同世代の男でも、かなり特殊なパターンだから
    基準にしない方がいいと思うよ?」

キノ「そうなんですか?真面目で、かなめさんみたいな恋人もいるのに」

かなめ「べべべべ別に彼女とか、そそそーゆーのじゃなくて腐れ縁というか、
    一方的につきまとわれているとゆーかま、まあとにかく恋人じゃないから!うは、うはははは」

エルメス「そろそろ出発しない?今でれば、明るいうちに次の国には入れるよ」

キノ「そうだね、行きましょうか」

かなめ「う、うん、ソースケ!行くわよ!準備しなさい!」

宗介「了解だ」

エルメス「(カナメちゃん、恋人というよりお母さんみたいだねー)」

キノがエルメスのエンジンをかけ、宗介がASを起動させました。

最期の休憩から2時間ほど走ると、”次の国”が見えてきました。
10メートル程度の高さの、コンクリート製の頑丈な城壁で所々に大砲を発射する為の穴があいていました。

宗介「あの城門のサイズならASでくぐれない事もないが・・・」

キノ「やめておいた方がいいかもしれませんね、騒ぎになってしまうかも」

かなめ「そうね。ソースケ、ASは置いて行きなさい」

エルメス「あそこの森にでも置いとけば?」

宗介「了解だ。アル、ECSを不可視モードで待機。発見されそうになった場合の対処はまかせる」

アル「肯定です。お気をつけて、軍曹殿」



キノ「ボク達は旅人です、観光のために入国したいのですが」

衛兵「そちらの二人も?」

キノ「ええ、彼らも旅人で、道の途中で一緒になりました。
   荷物は野盗に盗まれてしまったそうです」

宗介「その通りだ」

かなめ「モトラドの旅人さんに助けてもらって、本当に助かりました」

衛兵「そうですか、ではこちらで入国手続きをお願いします」

衛兵「ナイフやパースエイダーはお持ちですか?
   この国は今は平和ですが、犯罪が無いわけではありません。
   自衛の為の持ち込みは、届出さえだしていただければ許可できます。
   大型の機関銃や、爆発物などは許可が出ないことがありますが」

エルメス「”今は”?昔は平和じゃなかったの?」

衛兵「はい、恥ずかしい話なのですが・・・以前この国は独裁政権の軍事国家だったのです。
   無血革命があって、今は民主的な国になりましたが」

キノ「なるほど・・・パースエイダーは、ライフルはありますが、爆発物はありません」

宗介「(やはりASは無理そうだな・・・)拳銃だけだ」

衛兵「では、キノさん、ソースケさん、カナメさん、エルメスさん、入国を許可します。
   一週間以上滞在する場合は、さらに申請が必要になります。
   もし申請なさるなら役所で手続きをお願いします」

入国したキノ一行から少し離れた所で、メガネをかけた男が無線で誰かと連絡をとっています

メガネ男「リーダー、”観光客”が入国した。男2、女1、3人とも若い。
      パースエイダーとモトラドを持ってる」

リーダー「了解。”観光客”の行き先がわかり次第連絡しろ。
      こちらは歓迎パーティーの準備をしておく」

メガネ男「了解、了解」

かなめ「あ、そこの人!すいませーん!」

メガネ男「・・・!?」

かなめ「すいません、私達、突然現れた潜水艦を見に来たんですけど
     その潜水艦ってどこで見られます?」

メガネ男「あ、ああ、潜水艦か。潜水艦は旧港の沖に停泊してるよ
     俺も一度見たけど、とんでもないサイズの船だったよ
     時々、クルーが上陸してるって話だけど、何者かわからないらしい」

かなめ「ありがと、おじさん!」



かなめ「そこの人に聞いて来たよ。潜水艦、旧港って所に停泊してるってさ。
    すごい大きさだって。さっそく潜水艦を見にいこうか?」

宗介「(これがコミュ力が高い、という事なんだろうな・・・)」

キノ「そうですね、まだ日はありますし。宿は夕方からでも探せるでしょう」

宗介「行動は早い方がいい。この国の地図はあるか?キノ」

キノ「ええ、さっきの衛兵にもらいました・・・旧港、ここですね。歩いていける距離です」

かなめ「もし、テッサの潜水艦ならASから無線で通信できないかな?」

宗介「うむ、だが衛星が無いので通常無線しか使えない、城門の外からでは距離的に難しいだろう。
    もしTDD-1に近づけない状態なら、ASでここまで潜入するしかないな」

かなめ「じゃ、とりあえず行きますか」

旧港に向かうキノ一行から少し離れた所で、メガネをかけた男がが無線で誰かと連絡をとっています

メガネ「”観光客”は旧港の方に向かっている、潜水艦が目当てだ」

リーダー「了解、どうやって確認した?」

メガネ「俺の人徳のなせる業さ」

リーダー「・・・旧港なら好都合だ。楽団と馬車を向かわせる」

旧港に向かう、人気の無い道を、宗介が荷物満載のエルメスを押し、キノとかなめがそれについて行きます。

エルメス「ソウスキー君、倒さないでよ?」

宗介「問題ない、俺はプロフェッショナルだ」

キノ「なんだかすみません」

かなめ「いーのよキノさん、この体力バカはコレくらいじゃ使い減りしないから。
    あ、あれ旧港の入り口じゃない?看板がある」



人気のない旧港に到着したキノ一行からかなり離れた所で、メガネをかけた男が双眼鏡でキノ達を見ながら無線で誰かと連絡をとっています。

メガネ「リーダー”観光客”が会場に到着した」

リーダー「こちらからも確認した。歓待パーティーを開催するあの程度なら馬車は必要ないだろう、
      引き続き、余計な客人が来ないか見張ってくれ」

メガネ「了解、了解」



かなめ「見えないわねー、潜水艦」

エルメス「もっと沖に停泊してるんじゃないの?もしくは潜ってるとか」

宗介「旧港か、軍港のようなつくりだな。かなり水深もありそうだ。
   ここならTDD-1でも潜行できる・・・?・・・千鳥、キノ、気をつけろ」

キノ「ええ、誰かが近づいてきます」

エルメス「5人。みんなパースエイダーを持ってる。警備の人かな?」

キノ「だといいけど」

近づいてきた5人は、それぞれ野外活動に向いた服装で、上に全員同じポケットがたくさんついたベストを着ています。
腕には”MP”と書かれた赤い腕章。
頭には赤いベレー帽ベストのポケットには、バナナ型の弾倉が2本ずつ入れてありました。
5人のうち4人は、合板でできたハンドガードとストックがついたライフルタイプのパースエイダーを持っています。
一人は、他の4人の物と似たデザインの散弾銃でした。散弾銃を持った男がキノ達に話しかけます。

散弾男「君達、この旧港は危険だよ。潜水艦を見物しに来たのかな」

キノ「はい、潜水艦が停泊していると聞きました今は見えないようですが。あなた達は?」


139 : ◆ekQsExvHfU :2009/11/18(水) 14:06:00.95 ID:5uWNmfrL0
散弾男「私達は、軍警察だ。
     この施設の警備をしている本来ここは軍港で、民間人は立ち入り禁止だ
     警備が薄いのを良い事に、時々潜水艦を覘きに来る民間人が多いがね。
     見つけたからには一応、私達と来て貰おう。見たところ旅人のようだが?」

キノ「はい」

散弾男「そうか、では入国記録が確認できるまで、詰め所で大人しくしていってもらう。
     入国記録が確認できれば、罪には問わない」

キノ「わかりました、カナメさん、宗介さん、いいですね?」

宗介「・・・了解だ」

かなめ「(ちょっとソースケ、なんかマズイ雰囲気じゃない?)」

宗介「(ああ、警備にしては重装備すぎる)」

キノ達が連れてこられたのは古いコンクリート製の大きくない2階建て建物で、ドアにはかすれた文字で”港湾事務所”とかかれていました。
エルメスは荷台の荷物もそのままで事務所の横に停めるよう指示されました。

中に入ると、1階の手前半分が事務所、階段と廊下を挟んで奥側が倉庫になっているようでした。

散弾男「悪いが倉庫で拘留させてもらう。武器類は預かる。出る時に返却する。これで全部か?」

キノ「はい」

散弾男「入国記録の確認ができるまで、しばらくかかかる。大人しくしていることだ」

ドアが閉められ、外から施錠する音が聞こえました。

かなめ「ちょっとソースケ!何あっさりつかまってんのよ!!」

宗介「面目ない、だがあの場面で武装した5人を相手にするのは得策ではな」

かなめ「言い訳はいいのよ!まったく・・・たまには私が捕まる前に解決してほしいわ!」

キノ「でも、散弾銃とライフル相手に抵抗していたら、
   その場で射殺されて終わってしまっていたかもしれません」

港湾事務所のドアが開いて、さっきの5人の男のうち、一番若い男と、散弾男がタバコに火をつけながら出てきました。

散弾男「うまくいったな」

若い男「そうっスね、あれくらい可愛い子ならきっと上も満足するんじゃないッスかね」

散弾男「まったくもって不愉快な作戦だ・・・」

エルメス「おじさん達、キノ達を捕まえて、どうするつもり?」

散弾男「・・・?喋れたのか。女二人は、”プレゼント”だ。男と装備品は処分する」

エルメス「”プレゼント”?」

散弾男「お喋りなモトラドだ。まあいい、俺達は政府軍だ。
    革命が起きる前まではな。当然上官がいて、ずっと上には将軍がいる。
    その将軍が援助を求めている国に、プレゼントをおくってご機嫌をとるのさ」

エルメス「なるほどねー。でも、なんでキノ達を?」

散弾男「俺達は腐っても政府軍だ、守るべき国民を攫って献上するなどできん」

エルメス「なるほど、国民の味方って訳だー。で、僕の今後の予定は?」

散弾男「装備品、だな。後で処理しておいてくれ。静かにな」

若い男「了解ッス」

かなめ「キノさん、こーゆー事って、よくある事なの?こっちの世界じゃ」

キノ「キノでいいですよ。まれに、旅人相手に良からぬ事を考える人はいます」

かなめ「うーん、でも、まるで私達があそこに着いたタイミングで
    警備にでてきたみたい」

キノ「そうですね。ボク達は、民間人立ち入り禁止、という理由で捕まりましたが、
   地図にも、港の入り口にも立ち入り禁止とは書いてありませんでした
   何かボクらを捕まえる他の理由があるのかもしれません」

宗介「そうだな、立ち入り禁止にするつもりなら、入り口に歩哨を立てれば
   事が済む。それに、古くなった港の警備にしては重武装すぎる。
   だが、彼らが装備や動きは明かに正規の兵だ」

かなめ「ほかの理由、ねー。あたしとキノが可愛いから?あはは」

宗介「一理あるな。俺達は旅人だ。この国でいなくなっても誰も気に止めない。
    軍警察の立場を利用し、若い女を監禁。
    陵辱の限りを尽くし、用済みになれば・・・」

すぱぁぁーーん!!と軽快な音と共に、宗介の頭部にハリセンが炸裂します。

キノ「早い・・・!」

かなめ「くぉらソースケ!状況を考えなさい状況を!!
    なんでアンタはこの状況でそういうデリカシーのない事を平気で・・・」

キノ「カナメさん、どこからそのハリセンを出したんですか?」

かなめ「ああ、これは・・・

鍵が開く音がして、ドアから散弾男と一緒にいた若い男が入ってきました。


162 : ◆ekQsExvHfU :2009/11/18(水) 18:15:54.36 ID:5uWNmfrL0
鍵が開く音がして、ドアから散弾男と一緒にいた若い男が入ってきました。

若い男「キノさんとカナメさん、入国確認ができたッス
    念のため、こちらの車で役所までお送りしますんで」

かなめ「宗介は?」

若い男「ソウスキーさんは、まだ入国確認ができてないッス。
    できしだい、役所までお送りするッス」

キノ「わかりました。モトラドがあるのですが、それはどうなりますか?」

若い男「えー、あー・・・それも一緒に送る手配をします」

かなめ「じ、じゃあソースケ、悪いけど先に行ってるね?」

キノ「宗介さんなら、後で自力でボクとかなめさんを”探して”くれますよね?」

宗介「・・・了解だ。まかせておけ」

若い男「では、ソウスキーさんにはしばらくお待ちいただくッス
    キノさん、カナメさん、こちらにどうぞ」

キノとかなめを連れた若い男が出て行き、代わりに大柄な男が宗介を一瞥し、ドアを閉めて施錠した。

それから10分程度経った時、ドアを押し開けるようにして入ってきたのは、先ほどドアをしめた大柄な男だ。ライフルは負い革で背中に下げている。
右手にはサプレッサーがついたスチェッキンAPSが握られていた。
激鉄は上がっていたが、トリガーに指はかかってない。

部屋を見回した男が目を見開く。そこに宗介の姿はなかった。

大男「・・・!?いない?」

大男がドアの裏に注意を向けた時には、既に銃を持った右手首を宗介に捕まれていた。
宗介は大男の手首を極め、銃を奪いながら膝の裏を蹴ってひざまずかせた。

宗介「目的はなんだ」

大男「知るかよぉ!!」

極めた手首を力任せに振りほどこうとした大男をの背中を蹴って転ばせ、奪ったスチェッキンで耳を撃った。
サプレッサーでかなり減音された銃声とコンクリートの床に薬莢が落ちる涼やかな音が響く。

宗介「目的はなんだ、返答しだいでは死なずに済む。言え!」

大男「わかった!わかったからもう撃つな!!
   クソぅ・・・お、女だ、旅の女を攫って、我々旧政府軍を援助している
   隣国の政府高官に届ける・・・俺みたいな下っ端にはそこまでしか・・・」

宗介「彼女達をどこへ運ぶつもりだった?」

大男「新港だ、そこから先は俺達には知らされてねぇ」

新港。キノの地図を見た時に、大体の位置は頭に入っていた。
この旧港から、車なら2時間といった所だろう。

宗介「俺達の銃はどこにある?それと仲間の数だ」

男「銃は事務所だ、モトラドも外に停めてある・・・俺以外には、事務所にいる二人だけだ」

大男「なあ、俺が知ってるのはそこまでなんだ・・・殺さないでくれよぉ・・・」

宗介「わかった。しばらく寝ていろ」

何度か殴って大男を昏倒させ、彼のライフルを奪った所で騒ぎを聞き付けたのかもう一人の男が部屋に入ってきた。
5人組のうちの一人だ。軍人らしい坊主頭には傷跡がある。

坊主男「おいデブ野郎、ずいぶん時間がかかってんじゃねーかビビってんのか?
     そーれーとーもーひょっとして始末する前にガキをいたぶって遊んでんのか?
     そーゆー楽しい事には呼べよ!この俺をよ!ヒヒヒ!
     ん・・・!?おいデブ野郎!どうしら゛ッ!?」

宗介「うるさい野郎だ」

またドアの裏から、坊主男をライフルの銃床で思い切り殴り倒して、大男の物よりはサイズの合いそうなベストを脱がせた。

昏倒した大男と坊主男を、彼らの靴紐で手足を拘束し、何時間かぶりにドアをくぐって廊下に出る。
既に外は暗くなりつつある坊主男が開けっぱなしにしたらしい、事務所へ続くドアから様子を伺うと、残りの一人がソファで仮眠を取っているのが見えた。
首を閉めて昏倒させ手足を縛る。外に出たところで、エルメスに声をかけられた。

エルメス「ソウスキー君、どうしたの?これから戦争?」

宗介「そんな所だ。千鳥とキノが危険だ、どこかの国に送られるらしい」

エルメス「僕もその話、聞いたよーキノがいなくなったら僕を運転する人がいなくなって困る。
      ソウスキー君、助けに行く?」

宗介「もちろんだ。エルメス、乗せてもらうぞ」

エルメス「ソウスキー君、モトラド運転できるの?」

宗介「問題ない。俺はプロフェッショナルだ!」

キックレバーを蹴飛ばし、一発で始動したエンジンの調子をたしかめるように何度か吹かす。

宗介「エルメス、行くぞ」

エルメス「りょーかーい。パワーレンジをクルーズからミリタリーにー!」

宗介「マックスだ!急ぐぞ!」

キノとかなめは、港湾事務所の倉庫から出てすぐに、ワンボックスタイプの乗用車の後部に乗せられました。
運転席と後部座席の間にはしっかりとした仕切りがあり、窓には黒いフィルムが張ってあるため外の様子は殆どわかりません。

かなめ「この状況、実はかなりピンチなのでわ?経験的に。
     まともに終わりそうな気がしないというか・・・」

キノ「ボクの記憶が正しければ、旧港から役所まではさほど時間がかからないはずです、
   そろそろ着くかもし、着かなければ・・・あまり良くない結果になりそうです」

かなめ「ソースケ・・・大丈夫かな」

旧港から勢い良く飛び出すモトラドを、メガネをかけた男が双眼鏡で見ていました。
心底あわてた様子で、無線で連絡をとります。

メガネ「リーダー!”観光客”の男がモトラドで出て行きました!
    我々のライフルとベストを持っています!」

リーダー「!そうか・・・残った3人はやられたかもしれん。
     情報も引きだされた可能性がある。お前は詰め所に行って3人の状態を確認して報告しろ」

メガネ「り、了解、了解!」

若い男「リーダー、詰め所で何かあったッスか?」

リーダー「始末するはずのソウスキーが、モトラドで詰め所から脱走したらしい。
     武装して、こちらを追って来る可能性が高い」

若い男「ルート変えるか、飛ばします?」

リーダー「いや、このままでいい。”プレゼント”の二人には最期までそうと気取られたくない。
      騒ぐ女を黙らせるなんて面倒だからな。」

若い男「了解っす」

助手席に居たリーダーと呼ばれた男は、ひとつため息をつくと、ライフルに見える散弾銃のボルトを引いて、初弾を装填しました。

エルメス「ソウスキー君、もっと丁寧に運転してほしいな
      このスピードで段差があったら間違いなく転ぶよ?」

宗介「次乗るする時はそうする!!」

エルメス「道わかるの?」

宗介「だいたいの道は頭に入ってる!!」

エルメス「ちなみに、キノとカナメちゃんが乗って行ったのは灰色のワンボックスタイプの乗用車で、
      窓には黒いフィルムが張ってあるよー」

宗介「先に言え!・・・だが助かる!」



メガネをかけた男は、仲間の安否を確認する為に港湾事務所にやってきました。
事務所には誰も居ないようです倉庫入ると、さるぐつわをかまされ、後ろ手に縛られた3人が並んで座っていました。

メガネ「おい、大丈夫か?何があった・・・」

???「動くんじゃねえ、自分の脳ミソを見ながら死にたきゃ話は別だがな!へっへっへ」

???「アンタってホント下品ね・・・でもメガネの人、このバカは本気よ?
    私達は余計な殺しをするかどうかは、あなたの返答次第よ」


メガネ「あんた達は・・・」



エルメス「あれ?ソウスキー君、車は追わないの?」

宗介「バイクで追いついても、こちらから手出しはできない返り討ちに会う可能性が高い。
   新港に先周りし、キノと千鳥が下ろされた所を狙う」

エルメス「なるほどねー」

しばらくして。新港に到着しました。

エルメス「先周りできたと思う?」

宗介「おそらくはな・・・」

エルメス「もうあまり燃料がないよ」

宗介「エルメス、目立たない所に停めておくから待っていてくれ」

エルメス「了解ー、キノのパースエイダーを持って行きなよー?」

宗介「了解だ」



かなめ「ん、止まったみたい」

キノ「ですね、どうも役所ではなさそうです」

若い男「お二人ともお疲れ様っしたー降りて下さいねー」

かなめ「ふぅ、なんだか疲れたわね」

キノ「ここは、役所ではありませんね?」

若い男「そうっすね、ここは新港っす。元は軍港だったのを今は半分くらい民間に解放してるっす。
     お二人をここに連れてきた事情は・・・」

リーダー「俺が説明しよう。申し訳ないが、二人にはこれから海を挟んだ隣の国に行ってもらう
      行った先で何をされるのかは、俺達は関知しない
      もし抵抗した場合は、まあわかるだろう?」

かなめ「やっぱり、怪しいと思ってたのよね・・・」

リーダー「そう思っても下手に抵抗しないあたりは賢明な判断だ。
     今回はたまたま君達を選んだが、別に他の旅人でも良いんだ
     君達を殺す事に抵抗はない、君達が死んだら、次を探す」

キノ「・・・」

かなめ「そんな・・・」

リーダー「俺は準備をしてくる。お前は二人を見張っていてくれ」

若い男「了解っす。と、言うわけで、しばらくしたら船が来るので
    大人しく待っていて欲しいっす」

キノ「・・・」

かなめ「わかったわ。でも一つ教えて」

若い男「一つならいいっすよ」

かなめ「旧港の時点で縛り上げて運べば良かったのに、なぜそうしなかったの?
    わざわざ凝った嘘までついたりして」

キノ「・・・」

若い男「そういう指示だったからッス。抵抗したらいつでも殺せるからッスかねー
    あと、縛った跡がつくと、売り物に傷がつくからじゃないッスか?」

キノ「・・・」

かなめ「そう、売り物ってどういう事?」

キノ「・・・(今だ)」

若い男「質問は一つって約束ッ・・・ギッ!ひゅぅっ・・・」

若い男が、かなめの質問に気を取られた隙を突いて、キノがブーツに隠したナイフを若い男の首に刺しました。
若い男は柄まで刺さったナイフを左手で押さえますが、手の隙間から噴水のように血が噴出しています。
右手でライフルを撃とうとして人差し指に力を入れますがキノにライフルを蹴られ、吐き出された5.45ミリ弾はアスファルトとワンボックスに穴を開けただけでした。

すっかり日の暮れた新港に、乾いたフルオート射撃の銃声が響きました。
それはワンボックスが止まった所から、少し離れた所に停泊した民間のコンテナ船に偽装した、彼らのアジトにも聞こえました。

リーダー「今日はトラブルが続くな・・・A小隊は俺について来い。
     発砲を許可する。武装した男の可能性もある。抵抗している奴を射殺しろ」

男達「了解」「了解、サー」「了解」「了解」「了解」「了解です」

旧港で警備をしていた5人と同じような装備の6人がリーダーの後をおって、ワンボックスが止まった所に向かいます。

若い男は、首にキノのナイフを生やして、そのナイフを左手で押さえた姿勢のまま、膝をついて事切れたていました。
ライフルとベストの弾倉は、今はキノが持っています。

キノ「そのナイフは差し上げます」

かなめ「うわぁ・・・血が・・・」

キノ「カナメさん、今の銃声で仲間が集まってくるかもしれません
   今のうちに逃げましょう」

かなめ「う、うん・・・ねえキノ、その人、殺さないとダメだった・・・の?」

キノ「はい。ボクは”自分の意思で”、旅を続けたいですから。
   それに、カナメさんも元の国に帰るんでしょう?
   他に選択肢はありませんでした、そう考えるしかありません」

かなめ「そう、だね・・・とりあえず逃げなきゃ」

キノ「もう仲間が集まってきた・・・動きが早いな」

かなめ「ごめんね、あたしが余計な事喋って」

キノ「いいえ、もしすぐあの場所を離れていたら
   身を隠すものが無い所で撃ち合う事になっていたかもしれません。
   少なくとも、ここには車があります」

かなめ「うん、何か手伝える事はある?」

キノ「では、予備の弾倉持っていてください」

かなめ「わかったわ!まかせといて!! ひぃっ!」

キノ「撃ってきた。カナメさん、姿勢を低く!」

かなめ「うん・・・!」



宗介達が新港に到着して、エルメスを隠したすぐ後に灰色のワンボックスが新港に入って行くのが見えました。

宗介「(待ち伏せの時間を稼げなかったか・・・!)」

灰色のワンボックスを見つけた時には、既に銃撃戦になっていました。
遠目にも、ワンボックスを盾にしてキノがライフルで応戦しているのが見えます。

宗介「(キノがしかける方が早かった・・・!クソッ間に合うか!?)」



キノ「敵が多い・・・また増援が来た・・・!カナメさん弾倉を」

かなめ「うん、次ので最後の一個だよ」

キノ「そろそろまずいですね・・・」

宗介「(間に合ったか!?二人ともまだ無事そうだ・・・!)」

宗介「千鳥!!キノ!!無事か!!?」

キノ「あれは・・・宗介さん」

かなめ「ソースケ・・・!グスッ・・・くぉらソースケェ!!来るのが遅いのよ!!!
    次はもっと早く来なさい!早く!!」

予期しない位置から、宗介のフルオート射撃を受け、元政府軍の男達に動揺が走ります。
そのうち何人かが弾丸を受けて倒れ、残った男達は宗介とキノ、両方からの射撃を避けられる位置に移動せざるを得なくなりました。
その間も宗介が気前良くフルオートで掃射していきます。
大男、坊主男、寝ていた男と三人分の弾倉を持ってきていましたのであと数分はこのペースで撃ち続ける事ができます。

宗介「走れ!」

キノ「カナメさん、先に行ってください!ボクは援護射撃をしながらついて行きます」

かなめ「うん・・・!」



リーダー「ソウスキーか・・・今日はトラブルが続く日だな・・・!
     クソッ、体制を整えて再度攻撃を加えろ相手は徒歩だ!遮蔽物からは離れられ―――」

リーダーが、隣にいる部下に指示を出す為に、横を向いたその時、リーダーの後頭部が消滅しました。港の水銀灯の白い光に照らされて、白とピンク色と赤のものが、放射状に飛び散るのがはっきりと見えました。
その飛び散ったものが地面に着地する時になって、何度もエコーを重ねた銃声が聞こえました。



???「あの野郎、眉間を狙ったのに横向きやがった!」

???「胴体を狙えばいいのに。わざわざ頭を狙わなくてもいいじゃない」

???「スナイパーの美学ってもんがあるんだよ!俺には」



兵士「リーダーがやられた!狙撃兵だ!!伏せろ!!」

兵士「クソッ!クソッ!!相手は女とガキだぞ!!
   逃げられるわけにはいかない!逃げられるわけにはいかないんだ!!
   おい無線を貸せ!!」

兵士「”楽団”より”夢の城”!楽団長が死んだ!既知の3人の他に未知の狙撃手がいる!
    楽団は動けない!繰り返す!楽団は動けない!”馬車”を出してくれ!!あるだけ全部だ!」

夢の城「了解、夢の城より馬車を手配する。楽団長の仇を取れ、5分以内はそちらにつく」

兵士「了解!感謝する!」

兵士「これで、皆殺しにしてやれるぞ・・・リーダーの仇を取れる・・・」

キノ達が銃撃戦をしている所から、少し離れた所に停泊した民間のコンテナ船に見えるアジト。
その船の後部にある大きな扉が開いて中から大きな車両が3台、ゆっくりと、船と港をつなぐ橋をしならせながら降りてきました。
その後から、完全武装の歩兵達が十数人ついて出てきます。
それは大きな6輪の装甲車で、鋭角的なデザインのボディの上には、銃手を守る盾のついた50口径の機銃とサーチライトがすえつけられていました。



???「姉さん、なんか装甲車が出てきたぜ、3台だ」

???「はい?そんなもんまで出てくるとはねぇ~」

???「あれは人間用のライフルじゃ無理だな、艦に戻ってM9で出なおす?」

???「その頃にはソースケ達はミートパテになってそうだわねー
    ソースケが居るんだから、アーバレストもあるんじゃない?」

???「そういえばそうだな、あのアホ、なんで生身でウロウロしてんだ?」

???「合流して直接聞きくわよ、クルツ」

クルツ「サー!了解であります!マオ曹長殿!」

マオ「バカ」



宗介「千鳥、キノ、無事そうでなによりだ」

キノ「なんとか合流できましたね、ありがとうございます、宗介さん」

かなめ「・・・うん。ありがと。助けに来てくれて」

宗介「いや・・・遅くなってすまない。キノ、これを」

キノ「”カノン”と”森の人”、取り返してくれたんですねありがとうございます。
   ついでに、エルメスは?」

宗介「港の入り口に隠してある。千鳥を乗せて、二人で逃げられるか?」

かなめ「ソースケはどうすんのよ」

宗介「俺一人ならなんとかなる」

かなめ「本ッッ当に学習能力が足りないわねー、前もクルツ君と3人で脱出したじゃない。
     頭を使うのよ、頭を!」

クルツ「そうだぜーソースケ、頭を使うんだ。
    お前には難しいかも知れないけどな!へっへっへ」

マオ「こんばんはー♪」

宗介「・・・!?・・・!!」

かなめ「クルツ君!?それにマオさんも!?」

キノ「お知り合いですか?」

かなめ「ええ、例の潜水艦のクルーよ」

キノ「なるほど・・・では、突然現れた潜水艦がカナメさん達が居た艦だったんですね」

かなめ「そうみたい」

マオ「細かい話は後にして。今、装甲車3台があなたを探して走り回ってるわ。
   ここにいればいずれ見つかってしまうでしょう」

クルツ「おいソースケ、アーバレストはどこにおいて来たんだよ、一緒に飛ばされてきたんだろ?」

宗介「城壁の外側に待機させている」

クルツ「どーすんだ?無線で呼べるか?」

マオ「ここから城壁の外だと、無線じゃ無理ね。よほど近づかないと」

宗介「マオとクルツはどうやってここまで?」

クルツ「普通に盗んだ車だけど、停めた場所が悪くてさっき装甲車にふんずけられてた」

マオ「このバカは・・・まったく」

キノ「誰かがアル君の所に行けばいいんですね?」

マオ「まあ、そうなんだけど・・・」

キノ「ボクが、エルメスで城壁の外に行って、
   アル君にここの場所を伝えてきます」

宗介「しかし・・・一人では危険だ」

キノ「この中で、一番モトラドに慣れているのはボクです。
   車上射撃なら宗介さんより上手く出来ると思います
   それに、ここに残るのも十分危険ですよ」

マオ「(信頼できるのかしら、彼女?)」

クルツ「(彼女!?男じゃねーのかよ!)」

かなめ「(大丈夫よ、すっごく頼りになるから)」

宗介「わかった。頼む。キノ」

かなめ「キノとアルが帰ってくるまで、私達が生き延びればいいって事ね!」

キノ「では、行ってきます。エルメスは入り口の近くの茂み、ですね?」

宗介「そうだ。気をつけろ」

キノ「わかりました」

単独行動になったキノは、装甲車と兵士の持つサーチライトをかいくぐりなんとか入り口にたどりつきましたが、一つしかない入り口に、3人の兵士が立ちふさがっていました。
キノはみつから無い様にギリギリまで近づき、ハーモニカ型のサイレンサーをつけた”森の人”を構えます。
ぱしゅん!という気の抜けた音がして、音がするたびに兵士は小さく痙攣しました。
3人の兵士は、キノが目の前を歩いても何も言いませんでした。

キノ「エルメス、起きてるかい?」

エルメス「キノ、ひさしぶりー。無事だったみたいだね」

キノ「エルメスと宗介さん達のおかげでね」

エルメス「感謝の気持ちは現物で表してほしい」

キノ「考えておくよ」

エルメス「これから逃げるの?」

キノ「港に、装甲車が3台いるんだ。これから一度城壁を出て、アル君にここの場所を教える
   その後、戻って宗介さん達を助けて逃げる」

エルメス「ふーん」

兵士「お前・・・そこで何をしてい――」

どがん

振り返り様に抜き撃ちで、不運な兵士が一人倒れました。

キノ「急ごう、今の銃声で兵士が来るかも」

キックペダルを蹴飛ばし、エンジンをかけた勢いで後輪を滑らせその場でターンしたキノは、スロットル全開で城門を目指します。

クルツ「やべぇな、兵士の数が多いぜ」

かなめ「見つかっちゃいそう?」

宗介「しばらくは大丈夫だろう」

マオ「ソースケ、武器は?」

宗介「グロックと、奴らから奪ったAK74がある。弾は十分にあるが・・・」

マオ「こっちはMk23とXM8、クルツがAW338と、ハイパワーだっけ?」

クルツ「人間相手なら十分なんだけどなー」

城門にたどり着いたキノとエルメスは、一次出国という形で城壁の外に出ました。
近くの森には、アーバレストが待機しているはずです。
森の近くで、大声で呼びかけます。

キノ「アル君!聞こえますか?」

エルメス「出番無し二足歩行!」

森の木を、べきべきとへし折りながら一機しかないASARX-7”アーバレスト”が姿を表します。
月明かりに照らされ、夜の森の現れたそれは危険な神を模した彫像のように見えた。

アル「キノさん、駄二輪君、どうしましたか?軍曹殿は一緒ではないのですか?」

キノ「それが・・・かくかくしかじかの」

アル「まるまるうしうし、という状況なのですね。了解です」

キノ「ボクもこれから、港に戻るよ」

エルメス「キノ、もう燃料がないよ。港までは持たない」

アル「ではキノさん、コクピットへ乗ってください」

キノ「ボクがですか?操縦はできませんよ?」

エルメス「僕はどうするのさー」

アル「当機体は、私が制御しているので、モトラドと違って自立行動が可能です、
   キノさんは座っていただければ大丈夫です。モトラドは、掴んで持って行きますよ」

キノ「そうですか、ではせっかくなので乗せてもらいます・・・エルメスもよろしく」

エルメス「落とさないでよ!傷つけないでよ!」

キノ「では、行きましょう」

アル「<<ラジャー、ラン、モード4、BMSA、コンプリート>>」

アル「<<パワーレンジをクルーズからマックスへ>>」

アル「行きますよ、キノさん!」


その頃、港では宗介達SRTメンバーとかなめが走っていました


宗介「千鳥・・・大丈夫か!? 」

かなめ「はぁ・・・はぁ・・・ダメに・・・決まってる・・・じゃあ・・・ないのよ・・・はぁ・・・あんた・・・見たいな・・・
    体力バカと・・・一緒にしないで・・・ハァ・・・ハァ」

マオ「カナメもだけど、そろそろ私達もヤバイわね・・・」

クルツ「ゼハァー・・・フヒィー・・・ヒュゥー・・・・げほっ・・・げほぐぇほっ・・・おぇっ」

マオ「なんでアンタが一番ヘバってんのよ!!」

その頃、港へ続く道ではキノ達旅人メンバーを乗せてアーバレストが最新鋭機ならではのケタ外れの瞬発力を発揮して港に向かっていました。

アル「あと3分で作戦エリアに到着です」

キノ「速い、揺れる・・・これはちょっと楽しいかも」

エルメス「ねえちょっと、腕を振って走るなんて聞いて無いよ!?」

宗介達が走って逃げ込んだのは、使っていない大量のコンテナを保管しておく集積場のような所でした。
縦に何段も積まれたコンテナが、まるでちょっとしたビル街のようです。
コンテナが邪魔をして装甲車は入ってこれませんが、兵士達は次々に宗介達を始末しようと近づいてきます。
長い射線が取れない為、相手の表情が見えるような距離での撃ち合いになっています。
かなめを中心に宗介とマオが、それぞれ左右を守る形でアサルトライフルで応戦、クルツは装甲車のサーチライトを割るためにコンテナの上にこっそり上っていました。

右側のマオが、XM8の5.56mm弾を撃ち尽くしたマオが、Mk23を撃ちながら叫びます。

マオ「ソースケ!弾がもう無いわ!そろそろヤバイわね」

宗介「俺もだ・・・!」

かなめ「ソースケ、弾、一本あるよ」

宗介「千鳥、このライフルと、その弾をマオに渡してくれ」

かなめ「ソースケは?」

宗介「拳銃がある。マオの方が危険だ」

かなめ「わかったわ」

マオ「恩にきるわソースケ・・・!」



アル「このあたりに置いておきますね」

エルメス「後でちゃんと取りに来てよ、キノ」

キノ「覚えていたらね」

エルメス「キノひどい」

アル「ではキノさん、軍曹殿とカナメさんを助けに行きますが」

キノ「ボクも、彼らを援護するために戦います、連れて行ってください」

アル「了解です。」



マオ「ギリギリね・・・!Shit!こんな事ならもっと弾を持ってくれば良かったわ・・・!」

宗介「あきらめるな。キノがアーバレストを呼んでくるはずだ」

クルツ「姉さん、もうこっちも弾が無いぜ!?装甲車のサーチライトは全部ヤったけどな」

こちらに弾がなくなって来たとふんだ敵兵達が、さらに距離を詰めてきます。

かなめ「キノ・・・アル君・・・」

アル「<<軍曹達を目視で発見・・・ECS不可視モードを解除チェーンガンを威力行使>>」

キノ「良かった、間に合った」

突如として姿を表したアーバレストが、12.7mm弾のをばら撒き宗介達に迫っていた歩兵を追い散らします。
聞き慣れたパラジウム・リアクターの駆動音、彫像の様なシャープなシルエット。

クルツ「やっと来やがったか」

マオ「間に合ったわねー」

アル「<<軍曹殿、お怪我はありませんか?ダメージリポートを>>」

宗介「問題ない」

アル「<<操縦をお願いします。軍曹殿>>」

宗介「ああ。キノはどうした?」

キノ「操縦席に乗せてきてもらいました。アル君、ありがとう」

かなめ「逃げなくて良かったの?キノ」

キノ「ここで逃げたら、潜水艦を見る事ができませんから」

マオ「キノさん、助かったわ。後でテッサに艦を見学できるよう頼んであげる」

クルツ「ソースケ、さっさと装甲車を片付けちまえよ、アーバレストに対戦車ダガーくらいあんだろ?」

アル「<<対戦車ダガー2本、単分子カッターが1振りです。ウェーバー軍曹>>」

宗介「十分だ。行ってくる」

かなめ「気をつけてね」

宗介「問題ない、俺はプロフェッショナルだ。アル、1分で片付けるぞ」

アル「<<ラジャー。対戦車ダガー、スタンバイ>>」

アーバレストは、兵士達からの射撃を無視して、装甲車の位置が見える所まで一動作で装甲車を撃破できる位置まで移動します。

兵士「あれはなんだ・・・鎧の巨人・・・?」

オレンジと白の水銀灯に照らされたAS、ARX-7”アーバレスト”は見る物に現実感に乏しい、白昼夢のような印象を受けます。

兵士「敵・・・敵だよな?ガンナー!50口径で狙――

一挙動で投げ放った対戦車ダガーは、装甲車の側面に柄まで刺さり1テンポ遅れて装甲車ごと爆散します。

兵士「203号車がやられた!?203号車が・・・!」

ガンナーが装甲車のルーフに据えられた50口径を、突然現れた鎧の巨人に照準を合わせようとしましたが、既にアーバレストの姿は見えません。

兵士「・・・いなくなった・・・?どこに消え――

2台目の装甲車に”着地”しつつ対戦車ダガーを屋根に突き刺したアーバレストは、衝撃を吸収した反動を使ってさらに跳躍します。

兵士「化け物だ・・・退避・・・!退避するんだ!!」

爆発をバックに、アスファルトを盛大に破壊しながら着地。
ラックから単分子カッターを抜き放ち、3台目の装甲車に向かって疾駆します。

兵士「神様・・・」

数秒で追いつき、巨人サイズのファイティングナイフを振るいます。
単分子カッターの駆動音と装甲が裂ける音が混ざって悲鳴の様に聞こえした。
乗員ごといびつな輪切りになった装甲車は、そのまま走って海に落ち、盛大な水しぶきをあげました。

キノ「これがASの戦闘・・・すごい・・・!」

マオ「ムカつく事実だけど、接近戦では敵わないわね」

クルツ「人には適正ってモンがあるのさ。少なくとも、姐御なら口論では誰にも負けないと思うぜ」

マオ「はいはい、アンタはバカさなら誰にも負けないわよ」

兵士「貴様ら動くな!!」

マオ、クルツ、キノが振りかえると、4人の兵士と、兵士に銃を突きつけられたかなめが申し訳なさそうな顔で立っていました。

かなめ「あ~・・・ごめん・・・」

兵士「武器を捨てろ、あの鎧の巨人はお前らの仲間だな?停めるように指示しろ」

マオ「あ~・・・(バカな話してるから)」

クルツ「・・・(ノったのは姐御もだろ!?俺だけの所為じゃねえよ)」

アーバレストゆっくりと歩いて戻ってきました。
手には単分子カッターを持ったままです。

兵士達「なっ・・・」

キノ「・・・」

かなめ「へ?」

かなめがまばたきした時、どがががん!と、ぱぱぱぱっという、二種類の銃声が同時にしました。
目を開けると、キノの両手にはそれぞれリヴォルバータイプ、オートマチックタイプが握られていて両方とも銃口から硝煙が揺らいでいます

かなめが恐る恐る振りかえると、4人の兵士は全員倒れていました。
胴体に大きな穴、頭に小さな穴が開いています。

かなめ「あ、ありがと、キノ」

キノ「どういたしまして」

クルツ「」

マオ「」

宗介「全員、無事か?」

マオ「兵士はだいたい撤収したみたいね」

クルツ「あんだけビビらせりゃもう向かって来ないだろ」

宗介「敵が体制を立て直して、再度仕掛けて来ないとも限らんいったんここを離れよう」

マオ「そうね、旧港に向かいましょう。TDD-1に連絡を取って、ヘリに迎えに来てもらいましょう
   もちろん、キノさんも一緒にね?」

キノ「ボクは民間人ですが、いいんですか?」

マオ「別にいいわよ、カナメだって普通に乗ってたんだし」

カナメ「最近普通に乗ってたから忘れてたけど、あれって軍艦なのよね・・・」

宗介「デ・ダナンはどうやってこの世界まで来たんだ?」

マオ「ラムダ・ドライバをどうのこうのって話は聞いたけど・・・戻ったらテッサが説明してくれるわよ」

港に停めてあったトラックを盗み、エルメスを忘れずに積み込んで旧港に向かいます。
宗介とアーバレストは、ECS不可視モードでトラックの後ろを走ってついて行きます。

アル「この世界に来てから、このパターン多いですね」

宗介「問題ない。行軍は基本中の基本だ。なぜなら俺はプロフェッショナルだからだ」

アル「軍曹殿、自分に言い聞かせてませんか?」

旧港に到着してすぐに、無線でTDD-1に連絡を取りヘリを要請します。

15分程でエバ・サントス少尉が操縦するペイヴ・メア輸送ヘリが到着しました。
軽く挨拶を交わし、沖に待機しているトゥアハー・デ・ダナンへ向かいます。

テッサ「サガラ軍曹、よく戻って来てくれました」

宗介「すまない、大佐殿、みんな、心配をかけた。
   こちらはキノ、バイクの方はエルメス。ここまでたどり着けたのは彼女達の協力のおかげだ。
   ――感謝している、キノ、エルメス」

キノ「どういたしまして。ボクはキノ、こっちはエルメス、モトラドで世界を旅しています」

テッサ「キノさん、エルメスさん、私の部下達をを助けていただいて、
    本当にありがとうございます、我が艦を代表して、お礼をさせていただきますね?」

エルメス「お礼は期待しているよー、特に食事、寝床、僕の消耗品とか」

カリーニン「そのあたりは任せてもらおう。手配しておく。マオ曹長、例の準備を」

マオ「了解しました、前回同様の規模ですとそれなりに予算がかかりますが?」

カリーニン「かまわん。受けた恩義には報いる必要がある。
       それに貴重なASパイロットを失うことに比べれば安いものだ。
       副長の説得は大佐殿にしていただく」

テッサ「はい?私がですか?いえ、キノさんとエルメスさんの為なら
     やぶさかではありませんけど・・・・」

マオ「がんばってね大佐殿♪ カナメも手伝ってもらえる?」

かなめ「例の準備って、あたしが前アレしたときのアレですね?わかりました」

クルツ「よぉ、お手柄だぜ宗介、・・・俺は最高に感動している
    まさか俺が本編でフェードアウトする前に、リアルで可愛いボクっ娘に出会えるとはな」

宗介「お前は何をいってるんだ」

マオ「じゃあ、キノさん、見学の準備をするから、2時間ほど待ってね?
   その間に、シャワーと着替えができるようにしておくわ。
   エルメス君は、ASの格納庫で洗車してもらいなさい」

キノ「わかりました」

エルメス「わかりましたー」

キノは、案内されたシャワー室で、大量に余っているというサイズの小さい新品の肌着と、オフィスクルー用のシャツをもらい、シャワーを浴びてさっぱりしてご満悦です。

エルメスは、ASの格納庫に運ばれ、熊みたいなゴツいおじさんに高圧スチームでピカピカにされ、ついでにオイル交換もしてガソリンも満タンでご満悦です。
そうこうしているうちに2時間経ち、マオに呼ばれました。

マオ「じゃあ、格納庫から見学しましょう、ふっふっふ」

キノ「?、わかりました」

キノがエルメスを押して格納庫に入ると、そこには昼間のように明るく、とても広い空間が広がっていました。天井や壁には、クレーンや大きなタンク、何に使うのかわからない機械類などさまざまな物が置いたりしまってあったりします。

そして、その格納庫には、200名ほどの人間がずらりと整列して立っていました。
良く見ると肌の色も服装もバラバラです。人の列の後ろには、AS、ソースケのアーバレストと、アーバレストとは違うデザインのASが5機、人間と同じ様に整列していました。

マオ「これが、この船のクルーほぼ全員よ」

キノ「すごい・・・」

マデューカス「気をつけ!!!」

エルメス「うわっ、びっくりした」

200人と6機が、一斉に姿勢を正します。

マデューカス「我々の仲間の危機に、その並々ならぬ勇敢さと行動力、
         また厚情を示されたキノ嬢とエルメス氏に、全員、最大限の謝意をもって――」

マデューカス「――敬礼!!」

ザッ!と音がして、全員が敬礼する様は控えめにいっても壮観でした。

テッサ「ちょっと大げさかもしれませんけど・・・
    ”民間人に助けてもらったら全力でお礼をする”
     というのが我が艦の通例になってしまいました・・・」

キノ「わざわざ、集まっていただいてありがとうございます。
   ボクも、宗介さん達がいなければ一人で戦う事になっていたかもしれません
   ボクからもお礼を言わせてください。ありがとうございます」

エルメス「まっじめー」

クルー「またサガラ軍曹かよ美味しい奴だな畜生!」

ヤン「キノちゃんかわいいー!!!結婚してくれー!」

スペック「大佐に言ってSRTに推薦しようぜ!!PRTでもいい!」

クルー「ボクッ娘・・・実在したのか・・・!」

マオ「はーいみなさーん!お待ちかねーパーティーの時間よー!!
   し・か・も!今回は異世界という事で、米海軍もアマルガムもいません!
   つまり海中に敵がいません!と、ゆーことでー飲酒が許可されましたー!!アテンショーン!
   勇気ある決断を下した我らが艦長、テスタロッサ大佐とその副官、
   マデューカス副長に最大限の謝意を持ってぇ~敬礼!」

200余名のクルーが、未だかつてない大佐と副長に対する
畏敬のまなざしを向け、一糸乱れぬ敬礼をしました。

マデューカス「特例中の特例だ。元の世界に戻ったら許可しないから覚悟しておけ」

テッサ「うふふ♪くれぐれものみ過ぎないで下さいね~」

立食パーティと言う名の飲み会は3時間ほど続きました。
キノは、クルー達に囲まれて質問攻めにされながらも食べて食べて食べまくりました。

今は、あいていた士官用の個室で休憩しています。

キノ「食べた・・・おいしかった・・・カナメさんの歌も素敵だったし・・・しばらく動けないかも・・・」

エルメス「胃袋が破裂しても知らないよ?これからどうするの?」

キノ「艦長さんに聞いたら、帰る方法がわかるまで何日でも滞在して良いってさ、
   その間は食費も宿もタダだ珍しい機械も見物できるし・・・潜水艦に乗ったのは始めてだ」

エルメス「3日ルールは?」

キノ「宗介さん達がどう帰るのか気になる。それを見てから出発するよ」

エルメス「キノは巨大な乗り物に乗る時は滞在が長くなる傾向があるねぇ」

キノ「そういえばそうだね」

宗介「テッサ」

テッサ「サガラさん、無事でなによりでしたね、カナメさんも」

カナメ「そうねー」

宗介「すまない、心配をかけた。それで・・・」

テッサ「トゥアハー・デ・ダナンがどうやってここに来たか、ですよね?」

宗介「ああ、俺達がここに来たのは昨日だ、
    だがこの艦はそれ以前にここに現れたという話を聞いたんだ」

テッサ「話せば長くなるんですが・・・********システムを******して
    ******の計算にとても時間が掛かる上に、****の都合上
    どうしても数週間程度の誤差がでてしまって」

かなめ「なるほどね~、*********を***したらどうなの?」

        中略(注:妥協。>>1の頭が追いつかない状態を挿す)

テッサ「つまり、元居た世界に帰るため、ラムダ・ドライバを意図的に暴走させる必要があって、
    それを安全に行うための計算にはこの船のAIの能力を使っても1週間はかかるって事です」

宗介「では、この世界に来たタイミングがずれたのは」

テッサ「誤差ですね、それに、あの時はみんなあわててたから・・・先の話も考えてなかったし」

次の日、キノが使っている部屋を宗介が一人で訪れました。

宗介「キノ、エルメス、元の世界に帰る方法がわかった。一週間後に帰れるそうだ。」

エルメス「よかったねぇー」

キノ「そうですか、・・・ボク達もついて行く事は出来ますか?」

エルメス「めずらしい」

宗介「もし、一緒に行くなら歓迎する。その銃の腕ならSRTとして活躍もできるだろう」

キノ「1週間、考えて見ます」

1週間後、ラムダ・ドライバを意図的に暴走させ元の時空に戻るという荒業をテッサとかなめ、レミング少尉、ヴィラン少尉が協力し、成功させました。

メリダ島沖、の海中50メートル、近くに他の艦船がいた場合を考えて、最初からECSを展開しています。

テッサが艦内放送で成功を告げると、格フロアで、騒音規制の為に小さな声で歓声があがりました。

何かを思いついたテッサが、未だかつてない悪役な笑顔で艦長室へ向かいます。

エルメス「ソウスキー君たちに、ついていかなくて良かったの?」

キノ「まだ、”この世界”を見終わってないからね」

エルメス「そうだねー」

キノ「行こうか、次の国に。綺麗なベッドに、美味しい食事が待ってるよ」

エルメス「”トラウマ抜きの為替銀行”?」

キノ「ん・・・なんだろう、”取らぬ狸の皮算用”、かな?自信ないな・・・」

エルメス「そうそれ」

キノ「・・・まあいいか、もう行くよ」

エルメス「うん」

日差しは暖かく、風が少し冷たい春の始まりのような晴れの日でした。
なだらかな丘陵が延々と続く草原を、夕日がオレンジ色に染めていました。
舗装されたまっすぐな道が、草原を絶ち割るように地平線まで続いていました。

その道の路肩の、雪が降った時にタイヤにチェーンをつけるための広場に1機のコダール(注:AS。アマルガムが作った物だけを挿す)が体育座りしていました。
運転手のどこか粗野な風貌の人間と、銀髪の美形の少年が体育座りしていました。

レナード「ねえミスタ・Fe、いやガウルン、ここは何処だと思う?」

ガウルン「クックック、ひーっひっひっひ、俺にわかると思ってるのかい?
     本気で?ウィスパードの天才様が考えたシステムの暴走事故で何が起きるかなんて
     俺が分かる訳無ぇよなぁーお坊ちゃぁ~ん?ひっひっひっひ」

レナード「妹から送られてきた実験データを鵜呑みにしたのが失敗だったか・・・」

どこまでも続く草原に、夕日が沈んで行きます。
オレンジ色と藍色のグラデーションの空に、まばらな雲がアクセントをくわえていました。
遠くから、バギーのようなエンジン音が近づいてきます。

体育座りの二人と一機は、どこか遠くの世界を見ているようでした

ここではない、どこかの世界を。

                      おしまい 



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92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 01:45:08.12 ID:QyKNmgVc0
ソースキー「くっ目にゴミが・・・・・」

ゴシュ


113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 09:32:58.95 ID:EwylHoB1O
キノ「信じられない…機械が二本足で歩いてる…」
オタ魂「ダメだ、キノ!月光の相手をしてる暇はない!早く其処から離れるんだ!」


124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/18(水) 11:22:06.88 ID:CDa43voe0
http://wildcats.pupui.jp/images/2009_1019_2.jpg
2009_1019_2.jpg


キノ「信じられない・・・機械が買い物カゴ持って二本足でスキップしてる・・・」


125 : ◆ekQsExvHfU :2009/11/18(水) 11:25:16.68 ID:5uWNmfrL0
>>124
wwww


ちょっと休憩。また書き貯めてから張ります


271 : ◆ekQsExvHfU :2009/11/19(木) 11:06:40.41 ID:M8LX7ANO0
ごめん仕事に言って来る・・・


きょうの ○んこ

※例の効果音

ご主人様とバギーで旅をしているわんこに会いました。名前は「陸」。

「陸」は今日もご主人のシズさんと、女の子のティーちゃんと一緒にバギーで旅をします
その訳は…3人で一緒に暮らしてしていける国を探しているから。

陸は、複雑な事情で今のご主人と旅をする事になり、同じく複雑な事情で旅をする事になった
ティーは「陸」にとって本当の家族も同然。

これからもずっとご主人様とティーとの旅が続けばいいと思っている「陸」なのでした。




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コメント

  1. 名無しのお兄ちゃん | URL | -

    Re: キノ「信じられない・・・機械が二本足で歩いてる・・・」

    キノxフルメタとは新しいな

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