ひぐらしのなくギアス その6

2010年01月02日 18:07

【ひぐらし】雛見沢にルルーシュを閉じ込めてみた【ギアス】

312 :雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek :2009/10/10(土) 19:55:38 ID:t7BYDP8S

【13】

 診療室を出た足でそのまま沙都子の病室へと向かう。人気のない廊下を早歩きで進んだ。
 時刻は午後の六時半過ぎ。
 陽はほとんど落ち、窓の向こうでは暗闇が世界の統治を厳かに始めている。
 想定していたよりも入江と長く話してしまったな……。
 いくらなんでももう皆は帰ってしまっているだろう……
 ――と思っていたのだが、予想に反して一人も欠けることなく全員が沙都子の病室に留まっていた。

「あ、ルルーシュくん! 今までどこに行ってたの?」

 レナがまず最初に俺の姿に気がつき、それに応じて皆が振り向く。
 視線が一斉に俺のほうへ集まってきて少し気まずい。

「あ、ああ。ちょっと入江先生に用があってな」
「入江先生に? 何の用かな、かな?」
「どうせ沙都子そっちのけで監督とメイド服談義でもしてたんじゃないの~? くっくっく!」

 魅音がお決まりのように囃し立てる。
 俺にそのような趣味はない!
 と言い返したかったが、墓穴を掘ることになりかねないので無視を決め込むことにした。
 ベッドで上半身を起こして、俺たちのやり取りを見てぎこちなく笑う沙都子に視線を移す。


←ブログ発展のため1クリックお願いします
「沙都子、大丈夫だったか?」
「ええ、ルルーシュさん……私は、大丈夫でしてよ。でも」

 いきなり沙都子が俺の手を鷲掴んだ。思わずぎょっとする。

「この手のひらの傷……どうされたんですの?」

 沙都子にそう聞かれて魅音のほうを一瞥する。
 魅音が微かに首を横に振るのが見えた。沙都子には内緒にしておけって事だろう。
 分かっている、沙都子に自分のせいで俺が傷ついたなんて余計な罪悪感を背負わせるわけにはいかないからな。
 さも不敵そうに笑って空惚けることにした。

「何のことだ? これは気まぐれで自炊して出来た怪我なんだが」
「そうそう、ルルって意外に不器用でさー! 今度またルルが自炊しなくちゃならなくなったら沙都子が手料理でも作ってやんなよ」
「さ、沙都子ちゃんの手料理……はぅ~っ! お~持ち帰りぃ♪」
「駄目なのですよ、沙都子の料理は僕が未来永劫独り占めなのです。にぱー☆」

 俺のついた嘘に魅音らが調子を合わせてくれる。ナイスフォローだ。
 と言いたい所だが、親指を立てながらウィンクするのは止めとけ。
 そんな一見楽しそうなやり取りの中、沙都子は真顔のまま首を横に振った。

「皆さん誤魔化さなくてよろしくてよ。私、全て知っているんですから。ルルーシュさんのその怪我は、私のために負った刀傷なのでございましょう?」

 全部ばれてるじゃないか。俺は舌打ちをしながら魅音を睨みつける。
 すると魅音はあららと言わんばかりに苦笑いをした。
 沙都子に教えたのはおそらく葛西だな。
 魅音め、余計なことを話さないよう葛西に言いつける所まで気が回らなかったのか。
 まったくもって詰めが甘いやつだ。

「そ、それはだな、沙都子」

 慌てて適当な話をでっち上げようかと考えを巡らせる俺。
 ……くそ、どういうわけか最近こんな役回りばかりな気がする。
 沙都子はそんな俺のことなど気にする様子もなく、ただ虚空を見つめて独り語るように言った。

「私……誰が何をしようとも叔父様のもとを離れるつもりは毛頭ありませんでしたのよ。……喩え叔父様に殴られ蹴られようとも、これは試練なんだって、この試練に屈したら絶対にーにーは帰ってこないと自分に言い聞かせてずっと耐え忍ぶ気でいましたの」

 突然の沙都子の告白に一同言葉を無くす。病室に刹那的な静寂が訪れた。
 誰も口を挟まないことを確かめると、しばらくして自嘲気味に沙都子は先を続けた。

「……つい先ほど葛西さんが来た時だってそうでしたのよ? ルルーシュさんたちが私のために根回ししたんだろうなって思ったぐらいで気持ちに揺らぎは一切ありませんでしたわ」
「何が、言いたいんだ?」

 その疑問が自然と口をついた。皆もただ口にさせなかっただけで同じ疑問を持っていたのだろう。
 皆、沙都子を食い入るように見つめている。
 だが沙都子はその疑問に答えることはなく、皆を見回してから再び語り出した。

「先日ルルーシュさんは、私が耐え忍んだところでにーにーは帰って来ないと言いましたわね。私はそれを聞いてなんて酷い人だろうと貴方のことが大嫌いになりました」
「沙都子……」

 零すようにその名を口にすると、少女は蜂蜜色の髪をなびかせてこちらに目を向けた。 

「……けれどルルーシュさん、実際は違ったんですわね。
貴方は事実を言い、私を助けようとしてくれていただけ。
なのに私はその手を振り払い、ろくに話を聞こうとしなかった。
ごめんなさい、本当に酷いのは私のほうだった。
 ……葛西さんが教えてくれましたの」

『なるほど、たしかに君の意志は高潔でとても崇高なものだ。だがしかし、果たしてその意志は友の想いを踏み躙ってまで守るべきものなのか』

 玄関先で沙都子によって門前払いされた際に、葛西はただそれだけを言ったのだそうだ。

「私はそれを聞いて、急に自分の信念が酷く安っぽいものに思えてきましたの。
 にーにーが帰ってくるまで耐え忍ぶ? なんてくだらない。
 本当ににーにーに帰ってきて欲しかったなら、悪い叔父様なんかさっさと追い出して、にーにーが帰って来やすいようにするべきなんですわ。
 だから私、葛西さんには外でお待ちいただいて――――」
 沙都子はそこで一旦言葉を切り、表情に満面の笑みを咲かせた。そして……
「それから、宿敵叔父様と北条家の利権と覇権を賭けた壮絶な死闘を繰り広げましたの」

 これまでのシリアスな空気をぶち壊すように、とんでもない事実をさらりと俺たちに打ち明けたのである。

「「……はぁ?! 死闘ぅぅ?!」」

 沙都子の予想を上回る発言に一同唖然とし、素っ頓狂な声を上げてしまうのだった。

「お前! 葛西さんに助けてもらったんじゃなかったのか?!」
「ええ、葛西さんにはある意味助けてもらいましたわ。あのまま葛西さんが止めに入ってくださらなかったら、どちらかが死ぬか倒れるまで終わらない文字通り"死闘"が続いていましたもの」

 ……不思議だ。鉄平と沙都子が取っ組み合いをする光景が音声付で脳裏に浮かんでくるのだが。
 というか、それでその怪我なのか……? 呆れてため息が出てくるぞ。

「……で、当の叔父は?」
「股間を蹴り上げてさし上げましたら、半分泣きべそをかいてましたわ」
「レディーにあるまじき行動と発言なのです」

 梨花が冷静に突っ込むと、耐え切れなくなった皆が呆れを通り越して一斉に吹き出した。

「くっくっく! おじさん、沙都子はやる子だと思っていたよ!」
「あはは、でも男の人の大事なところを蹴るのは感心しないかな、かな。沙都子ちゃんの叔父様、赤ちゃん作れなくなっちゃったかも……はぅ……」
「レナが何気に卑猥なことを言ってるのです」
「……? 赤ん坊はコウノトリが運んでくるんですのよ。蹴ると何で赤ちゃんが出来なくなっちゃうんですの?」
「みー。沙都子もそのうち分かりますです」
「一体なんなんですのよ~っ! ルルーシュさん、教えなさいませ!」
「え、俺なのか?!」

 沙都子の無知ゆえの大胆な質問をどうにか回避し、話題を他へと移行させることに成功すると、ようやく俺はいつもの日常を取り戻せたように感じることができたのだった。


←ブログ発展のため1クリックお願いします
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://kannki.blog39.fc2.com/tb.php/1756-ae35907a
    この記事へのトラックバック



    アクセスランキング ブログパーツ レンタルCGI
    /* AA表示 */ .aa{ font-family:"MS Pゴシック","MS PGothic","Mona","mona-gothic-jisx0208.1990-0",sans-serif; font-size:16px; line-height:18px; }