キョン「学園都市?」 その2

2009年12月17日 06:06

キョン「学園都市?」

みくる「み、みくるビーム!」

 みくるの素っ頓狂な声が響く。
 だが、もちろんそんなものは出るわけでもなく、『情熱女王』は無情にも上条当麻を焼き殺そうとして、

情熱女王「がぁっ!?」

 できなかった。

 彼女、ではなく、彼は突然、腕を押さえて苦しみだす。
 思わず腕を振ってしまったため、炎は見当違いの方向に飛んでいった。

みくる「え、えっ?」

 驚いたのはむしろみくるの方だ。

 ビームなんて言ってみたものの、実際はそんなもの出るはずもない。

 いや、出せることには出せるようになってしまったらしいが、それは友人であり、仲間であるとある宇宙人の手によって封印されているのだ。

 と、そこへその疑問の答えが名乗りを上げる。


黒子「風紀委員ですの!」



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情熱女王「ジャ、風紀委員ですってぇ?」

 いつからいたのかわからないほど、突然現れたのは中学生、下手したら小学生くらいの女の子。

 みくるとは段違いに発育の乏しい肉体。だが彼女にはみくるには出せないエロオーラが滲み出ていた。

黒子「暴行罪の現行犯で逮捕しますわ!」

 『情熱女王』の注意はその風紀委員の少女に向く。

情熱女王「さすがに暴れすぎたかしらねぇ……」

 そこでみくるはとある動作を見た。
 僅かな予備動作、常人ならば歩き出す程度の筋肉の動き。

 だが、観察者として送り込まれる人材であるみくるは知っている。
 それは高速で襲いかかる動作だと。

みくる「避けてっ!」

 みくるの言葉に風紀委員の少女が反応を示した。
 その瞬間、『情熱女王』は砲弾のように少女へと飛び出していく。

 それでも燃えるオカマの速度は凄まじい。
 ばがん、という凄まじい音を起ててコンクリートごと少女のいた場所が砕けるのがみくるの瞳に映った。

上条「白井ッ!」

みくる「きゃあああああああああああああああああ」

 上条、みくるは共に最悪の事態を予見した。
 特に上条は、彼女の能力を使うのに難しい計算が必要で、即座に対応できる能力ではないことを知っているからこそ、尚更危惧した。

黒子「あまり耳元で叫ばないでくださいですの。頭がキンキンしますわ」

みくる「え……?」

 だが、黒子はそこにはいなかった。
 いつの間にか、彼女はみくるのすぐそばにいる。

黒子「何を驚いているのですか。
   犯人の検挙も重要ですが、一番最初に行うべきは一般人の保護ですわよ」

 そう言って黒子はみくるの手を握ると、また消える。

みくる「えっ? えっ?」

 瞬く間に自分の位置が変わってしまったのを見て戸惑うみくる。

黒子「あら、『空間移動』は初めてですの?」

みくる「て、てれぽーとぉ? えっと、禁則事項による禁則事項ですかぁ?」

黒子「……何を言ってるんですの?」

上条「あー、白井ー、その人はちょっと特殊だから気にすんなー」

 そうして安全圏に移動した二人に傷だらけのくせに安心した風の上条は言う。

黒子「特殊、とはよくわかりませんが……はぁ……また貴方ですの」

 そんな上条を見て、黒子は溜息を吐く。

黒子「お姉様の次はこの方ですか。本当に節操がないのですね。ともかく――」

みくる「左から来ます!」

黒子「!?」

 そんな安全圏にいたはずの二人に、『情熱女王』は再び突貫してきた。
 だが、またしてもみくるの言葉で間一髪、黒子はみくるを連れて逃げ出すことに性交する。

情熱女王「なぁんで避けられるのよぉ?」

 次はすたっと上条の横に立つ黒子。
 この相手に安全圏はないと判断したようだ。

黒子「なんなんですの、あの能力は……発火能力者との通報でしたが」

 黒子は不思議そうに言う。初春のサポートがない今、相手の詳しい能力がわからないのだ。

上条「なんでもなんか熱くなって速いらしい」

黒子「……抽象的でよくわかりませんわ」

 はぁ、と息を吐いてボロボロの上条を見る。

黒子「でも、貴方がそこまでボロボロになるとは、相当な能力者のようですわね」

上条「買い被りすぎだっての」

みくる「あのー、私は大体わかってますけどぉ……」

 そこにみくるはおずおずと意見する。

情熱女王「いぃつまで話してるのかしらぁっ!」

 そこに『情熱女王』が戻ってきた。
 炎の渦を発生させ、三人まとめて巻き込む。

上条「くっ!」

 そこに上条が立ち上がって右手で打ち消す。

情熱女王「まだ動けるのぉ!?」

上条「白井っ――」

 そんな上条を見て『情熱女王』は驚き、上条に接近しようとする。
 上条にしては相性が悪い相手だ。だが、ここには黒子がいる。

 だからこそ、対処を頼もうとしたのだが、

黒子「……壁役、頼みましたわよ!」

上条「ちょま――」

 その黒子はみくるとテレポートして、さらに背後に行ってしまう。

 上条は再び、炎のパンチの連打を食らうことになった。

情熱女王「はっはっはぁっ!」

上条「んなろぉ!」

 上条はジャブを避けることを諦め、全て甘んじて受け入れる。
 重要なストレートなどの攻撃のみ、右手を使うことで立派な壁役を演じている。

黒子「で、あの、声は中○譲治みたいですけど……男、ですわよね?
   その男について教えていただきたいのですが……」

みくる「で、でも上条さんが……」

黒子「生憎、今はサポートがいませんの。あの殿方を助けるためにも情報が必要ですわ。
   見たところ、発火能力者のようですが、あの身のこなしはどういうことなのでしょうか」

みくる「ぱ、ぱいろきねしすと?」

黒子「……あの方の能力を説明していただければ、それでいいですわ」

みくる「え、えっとですね……あくまで私の予想ですけどぉ……あの人は多分、炎を操る能力ではないと思います」

黒子「……発火能力者ではない?」

みくる「それでですね……あの人、筋肉がすごいんですよ」

黒子「……筋肉?」

みくる「だからですね……あの人の能力は、肉体を、特に筋肉を強化する能力で、
    炎はその副産物なのだと思います」

黒子「……もしかして、筋肉をすっごく動かすから熱が発生して、あんな炎を発生できる、と?」

みくる「はい、もしかしたらそうかなぁ、って」

黒子「そんな無茶苦茶な……」

みくる「だって、何かダメージを受けたにも関わらず、あの人は動き続けてるじゃないですか」

黒子「そういえば……」

 確かに、黒子は上条を助けるために一度彼の腕に鉄矢を打ち込んでいたのだ。
 炎を操る能力では、この傷は大ダメージのはず。。

みくる「彼は炎で筋肉を活発化してるって言いましたけど、そんなことありえないでしょう?」

黒子「確かに……ということなら!」

 そこで黒子は戦場に舞い戻る。

黒子「上条さん、そいつの攻撃を防御してはいけませんわ! 攻撃に徹してください!」

上条「んな無茶な!」

 一瞬気を抜いた上条に拳が迫る。

黒子「防御ならお任せを」

情熱女王「ぐっ!」

 だが黒子はその拳に鉄芯を打ち込み、『情熱女王』は痛みで動きを止める。

上条(んなこと言っても、こんな大男を殴ったところで――ええい畜生!)

 やけくそ気味に、上条は巨大な腹筋に正拳突き。

情熱女王「がふっ」

 だが、その感触は驚くほど柔らかく、思い切り突き刺さった。

上条「え?」

 驚いたのは上条の方だ。
 なんだかんだ言っても上条は一般的な男子高校生。大男相手には分が悪い、はずだった。

情熱女王「く、くそ――痛ぅっ」

 燃える手で上条を押し潰そうとするが、また黒子が鉄芯を打ち込み、動きが止まる。

上条「ああ……――歯、食いしばれよ?」

 それを見て納得した上条は、思い切り『情熱女王』の顔面をぶん殴った。

 不自然なくらいに軽々吹き飛ぶ『情熱女王』の巨体。
 炎が消えていく。『情熱女王』の偽りの鎧が剥げていく。

黒子「犯人、逮捕ですわ」

 そして黒子が手錠をかける。

上条「ふぅ……ってえ?」

 上条に。

上条「え、なんで俺に!?」

黒子「通報は、能力者同士が暴れていた、ということでしたわ。
   貴方がたも一応、容疑者として捕まえなければなりません」

 上条は古泉が赤い球を撃っていたことを思い出す。

上条「ちょっと待ってくれ、俺は無能力者って知ってるだろ!?」

黒子「貴方の能力はよくわかりませんもの。
   初春のサポートがない以上、戦っていた全員を捕まえなければなりませんわ」

上条「んな……俺たちには行かなくちゃいけないところがあるんだって!」

黒子「警備員たちが来て、機器で少し調べればすぐに解放されますから安心してくださいな」

上条「そんな時間ないってのに……!」

みくる「ま、待ってくださぁい!」

黒子「なんですの?」

みくる「そ、その能力者は、わ、私ですぅ!」

上条「朝比奈さん!?」

みくる「ビ、ビーム撃とうとしたじゃないですかぁ!」

黒子「……確かにそうですわね」

上条「ちょっと待ってくれ、朝比奈さんは――」

みくる「私が犯人なら、上条さんを拘束する必要ないはずですぅ!」

 そこで上条は気がついた。みくるが身代わりになって上条だけでも行かせようとしていることに。
 しかし、そんなことすれば、もちろん罪になるのは当然である。

黒子「……ですわね。では、改めて犯人逮捕、ということで」

上条「ま、待っ――」

 と、そこで朝比奈さんの指が、上条の唇に当てられた。
 黙っていてくれ、というサイン。

みくる「さっきは何も役に立てませんでした。だから今くらいはかっこつけさせてください、ね?」

上条「……朝比奈さん……」

 みくるの決意に満ちた表情で、上条は何も言えなくなる。
 だが、そんなことで納得できる上条ではない。

上条「……なあ、白井。お前は犯人を二人同時に逮捕できるか?」

黒子「……? そんなことできるはずありませんわ」

上条「だよな。そして、お前は今、何も言ってない朝比奈さんを逮捕するんだよな」

みくる「何を――」

 そこでみくるはハッとする。

上条「じゃあ俺が逃げ出す機会はあった、ってことだ!」

 そう言い残して、上条は手錠をしたまま逃げ去っていく。

黒子「ちょ――」

 黒子はその上条を追いかけようとする。だが、その黒子の手を、みくるが掴んだ。

みくる「今、上条さんを追いかけたら、私も逃げちゃいますよ?」

 それを聞いて、黒子は二人の意図をやっと理解した。

黒子「仕方ありませんわね。今回に限り、見逃してあげることにしましょう」





キョン「長門、お前、言ってることわかってるのか?」

長門「わかっている」

キョン「やっぱり、お前にはギャグセンスないぞ。冗談はやめておけ」

長門「……冗談ではない」

キョン「そういう難しい冗談はやめろって」

長門「私は本気」

キョン「冗談はやめろって言ってるだろ長門!」

 俺はついに声を張り上げる。
 しかし、長門は眉一つ動かさない。

キョン「……俺は行くぞ」

長門「……行かないで」

キョン「そういうセリフは恋人でも作ってから言ってやれ」

 そう言って、俺は無理矢理にも長門の横を通り過ぎようとする。
 その瞬間、世界が回った。

 次に、背中を痛みが襲った。
 そこでやっと気がつく。俺は長門に蹴倒されたのだと。

キョン「何しやがる!」

長門「行かないで」

 がばっと起き上がる俺にそれだけを言う長門。

キョン「いいや、行くぞ俺は!」

長門「……っ!」

 そう言って起き上がろうとする俺の横っ面に長門の蹴りが襲いかかる。
 太股の感触を楽しむ暇もなく、俺は思いきり吹き飛んだ。

キョン「いってぇなあおい!」

長門「行かないで」

 起き上がるとそこには既に長門が立っている。
 だが、それでも俺は進もうとする。

長門「行かないで」

 今度は腹を蹴飛ばされた。

 面白いように吹き飛ぶ俺の身体。
 古泉の爆発なんかよりよっぽどこっちのが痛い。

キョン「げほっげほっ……冗談が過ぎるぞ長門……」

 起き上がるとやはり、そこには長門が。
 俺は構わず進もうとする。

長門「行かないで」

 だが、すぐに俺は長門にぶっ飛ばされる。
 それでも俺は諦めない。

長門「行かないで」

 殴り飛ばされる。
 諦めない。

長門「行かないで」

 吹き飛ばされる。
 諦めない。

長門「行かないで」

 蹴り飛ばされる。
 諦めない。

長門「お願い、行かないで」

 ――そうしてしばらく俺は長門に痛めつけられ続けた。
 長門は壊れたレコードのように、「行かないで」を繰り返す。

 だが、俺にはわかる。

 お前が悲痛な顔をしてるってことくらいわかるんだよ。

「何をしてるの、長門さん」

 そこに聞き覚えのある声が響いた。

キョン「お前は――」

「さっさと情報連結を解除してしまえばいいじゃない」

 声はするのに、どこにもいない。
 声だけが不自然に響いてるような状況だ。

長門「……彼は冗談を言っているだけ。ユニーク」

「冗談だとしても、進もうとするなら不安分子として片付けないと、でしょ?」

キョン「お前までふざけるなよ……」

長門「……だから私はわからせている」

「まあいいわ。私がそっちに行けばすぐに片付けるから」

キョン「ふざけるなよ……朝倉ぁ!」

長門「――っ!」

朝倉「やっほ。久しぶりね」

 そしてそいつは現れた。
 今や懐かしい青いの制服。

朝倉「そして、さようならかしら?」

キョン「……お前も、宇宙人だよな」

朝倉「そうね、正確には対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースだけど」

キョン「……じゃあ状況はわかってるんだよな?」

朝倉「そりゃあもう。長門さんしかこっちにいないから協力するために再び作られたんだし」

キョン「……じゃあ、なんでくだらない冗談を言ってやがる?」

朝倉「冗談に聞こえるのかしら、心外だわ」

 そう言って、朝倉は右手を俺に向けようとする。

長門「待って」

 すると長門が俺をまた蹴り飛ばしやがった。

朝倉「長門さん?」

長門「これで彼は冗談を止める。彼を抹消する必要はない」

朝倉「まだ、わかってないみたいよ?」

 だけど俺は立ち上がる。

キョン「そこを退けよ二人とも」

長門「……もう止めて」

キョン「退かないなら俺はお前らを殴ってでも行くぞ」

朝倉「女の子の顔を殴るのは酷いんじゃないの?」

キョン「もっと酷いことになろうとしてるやつがいるのに、止まれるかよ!」

長門「もう止めて」

キョン「お前ら宇宙人の勝手な尺度で考えやがってなあ、何が自律進化だ、何が実験だ!
    んなもん成功しても御坂妹さんも、俺たちも、
    何より取り返しのつかないことをしちまうハルヒも傷つくだけじゃねえか!」

長門「その冗談は、ユニークではない」

キョン「これが冗談に聞こえるってのか長門!」

長門「……」

朝倉「もういいわ」

 今度は、長門が蹴飛ばす暇もなかった。
 朝倉涼子は突然、手に何かを発生させた。

 見覚えのある、ナイフだ。

朝倉「さようならキョンくん」

 そして朝倉はそのまま俺に迫る。

 長門が動こうとするが、それより先に朝倉は突貫する。

 そして、俺の目の前が人で、見えなくなった。

 だが、俺は刺されていなかった。

上条「――大丈夫か、キョン」

 同い年なのに、大きな背中が目の前にあった。
 ボロボロなのに、それでも人を守る背中があった。

キョン「……上条さん」

 俺はその背中の名前を呼ぶ。

 その人は、朝倉の手を掴んで、ナイフを止めていた。

朝倉「えっ――ちょ、何これ!?」

 そこで朝倉は焦り出す。
 見れば、身体が色が薄くなるように消えていってるではないか。

 そうか、朝倉は長門の力の力で作り出した仮の身体。
 異能で作られたものなのだ。

上条「え、なんでこの人消えてんの!?」

 それを見て上条さんも焦ってる。

キョン「大丈夫だ、元の世界に戻るだけだ」

 まあ、大体合ってるだろうことを俺は言う。

朝倉「ちょ……私の出番これだけ――」

 そう言い残して朝倉は消えてしまった。

 その奥に残るは長門。

上条「あー、長門も触ったら消えたりしないよな?」

長門「私は彼、古泉一樹、朝比奈みくると同じく、涼宮ハルヒの力でこちらに来ている。消えたりはできない」

 俺の代わりに長門が答えてくれた。

上条「で、その長門さんはなんでそこに?」

長門「彼を涼宮ハルヒに引き合わせてはいけない」

上条「なるほどな、大体わかった」

 わざわざ教えてくれるとは長門は優しいな。

上条「先に行け、キョン! お前が行くとなんかヤバいらしいな!」

 その瞬間、長門の目が変わった。

 俺の時とは違う、もっと殺人的な光線を放ってくる。
 上条さんはそれに反応し、右手を突き出すとそれを打ち消した。

上条「安心しろ、俺が長門を食い止める!」

キョン「でもな――」

上条「レベル5とほとんど遊んでた上条さんですよ、そう簡単にやられるかっての」

キョン「くそっ……頼んだ!」

 上条さんは本気だ。俺はぐだぐだやってその想いを無駄にするわけにはいかない。
 ハルヒの元へと駆けだして行く。

 すたこらさっさと逃げていくように先に進むキョン。

上条「あー、あんなこと言ったけど、追おうとしないのですかね、と上条さんは聞いてみます」

長門「……貴方という朝倉涼子を倒すほどの邪魔が入った。私には彼を追うことはできない」

 長門は真っ直ぐに上条さんを見つめて言う。

上条「ああ、そういうことか。わかったよ」

 長門は理由が欲しかったのだ。

上条「長門さんよぉ」

 それで上条さんは納得した。

上条「――アンタの幻想は俺が守り抜いてやる」

 彼女も、結局はキョンたちと同じ意思だったのだと。





 涼宮ハルヒは困っていた。

 『妹達』の全てが見つからなくなってしまったのだ。

 彼女の能力では、言われた『制約』に引っかかり、探すことは不可能。

ハルヒ「絶対能力者になれば探せるんだけど……って本末転倒ね」

 冗談のように、独りごちる。

 そこで、今までの出来事を思い返してしまった。

 思い浮かぶ、彼の驚いた顔。

ハルヒ「――キョン……」

 そこで、ざりっという足音が聞こえた。

ハルヒ「……!」

 酷く覚束無い、怪我か障害を負ったような足音。
 もしかして、とハルヒは思った。

ハルヒ「……キョン?」



 そうして現れたのは。



一方「――誰だァそいつは?」

 白髪に赤い目をした悪魔のような男だった。





長門「――パーソナルネーム、上条当麻の情報結合解除を申請……失敗。情報開示を申請、失敗」

 何かを呟き、動かない長門。

長門「貴方の存在は異常。情報操作は通用しないと判断」

上条「何を言ってるんだ?」

 しかし、上条は訳が分からないという風な表情をする。

長門「――……」

 そこで長門はさらに何かを呟き、両腕を広げる。
 すると夜空のように広がる数々の光。

 それが上条に襲いかかった。

上条「いやいやいやいやちょっと待って多いって!」

 上条は必死に避け、無効化し、そして打ち抜かれ、それでも立ち上がり、避け、打ち抜かれ、無効化し、打ち抜かれ、打ち抜かれ、打ち抜かれた。

上条「はあはあ……」

長門「貴方の肉体は多量のダメージを負っている。なのに何故」

 それでも上条は倒れない。

上条「そりゃあ、守るって決めたからな……」

長門「彼はもう行った。彼を守るならもう戦う必要はないはず」

上条「キョンのことじゃねえよ」

 そこで一拍置いて、さらに上条は言う。

上条「――お前の意思のことだよ」

長門「……わからない。私は貴方との協力関係を破棄し、利害は一致しないはず」

上条「協力? 利害? そんなものはどうでもいいだろ」

長門「わからない」

上条「わからないのかよ、人を助けたいって気持ちがわからないのかよ!」

長門「……」

上条「お前は、アイツを、キョンをぼこぼこにしてまで諦めさせようとしたんだろ!
   キョンのやつを殺したくなかったんだろ! 助けたかったんだろ!」

長門「……!」

上条「お前の組織とかがどんななのかは知らないよ、だけどな、お前がそいつに逆らえないことくらいわかる。
   だからお前なりの答えが、アイツを諦めさせるってことだったんだろ?」

長門「……」

上条「だけどな、お前はキョンだけじゃねえ、
   御坂妹たちや人を殺めようとしてる涼宮ハルヒのことまで助けたかったんだろ。
   だけどお前は上から命令されて、そこだけは逆らえない。
   キョンに言っても聞かない、どっちか片方にしか取れない、そう考えてたんだろ」

 上条はそう言って、拳を握りしめる。

上条「だったらまずはその幻想をぶち殺す。お前なりの方法で、両者を助ける方法を俺が提供してやる。
   だから俺は倒れない」

長門「そう」

上条「さあ来いよ、お前のしなくちゃいけない攻撃、全部俺が受け止めてやる!」

 その言葉に応えるかのように、長門はさらに攻撃を展開する。

 ――と、そこで、キョンの向かった先、つまりは涼宮ハルヒの場所から大爆発が起こった。

 空気を振るわせて、音波は窓ガラスを砕き、地面を揺らす。

上条「なんだ……!?」

 そこで長門の顔が、僅かにだが、確かにショックに染まるのを上条は確認した。

 それは、やはり悲痛な表情。


長門「緊急事態。……命令が移行する」


上条「どういうことだ?」

長門「涼宮ハルヒと、それに準ずる強大な力が激突しようとしている。
   このままでは、涼宮ハルヒも危険」

上条「ハルヒが危険……ってどういうことだ!?」

長門「詳細は不明。まずは、急行する必要がでてきた」

 そう言って、長門はキョンの後を追おうとする。

上条「お、おい待てよ!」

 一度だけ長門は足を止めた。

長門「……謝罪する」

 次の瞬間、上条は自分が思いきり吹き飛ばされたことしか、認識できなかった。
 そこで意識が暗転する。





一方「qwdrftgy殺b!」

ハルヒ「な、何よこれ!」

 ハルヒは目の前の光景を疑った。

 人間だと思っていたものが、突然背中から黒い何かを羽のように生やし、理解不能の力で攻撃してきたのだ。

 その黒い何かを振り回す人間だと思っていたもの。

ハルヒ「止まりなさいよ!」

 ハルヒの一言でそれは確かに止まる。
 しかし、

ハルヒ「あぐっ――」

 訳の分からない何かにハルヒの身体は吹き飛ばされた。

ハルヒ(何よこれどういうことなの……!?)

 『一方通行』は言っていた。
 助っ人に行ってくれと頼まれたと。

一方『長門とか言うやつが動けないらしくてなァ。それがあいつらの切り札らしいンで俺に代わりをしろだとよ』

 何を言ってるのかわからない。有希が何故絡んでくるのか理解できない。
 そう、ハルヒは思った。

 だからこそ、至極合理的な考えを提案し、持ちかけたのだ。

一方『……ふざけンじゃねェぞ』

 だが、『一方通行』はそれを拒否する。 交渉ケツ裂だ。

 だからこそ、ハルヒは一撃必殺を使った。

 能力さえ使えなくしてしまえば、目の前の男などただのモヤシなのだから。

 だから、事前情報から、彼の思考能力を奪うべく、こう言った。

 『全ての電波はここに来るな』と。

 その結果が、これである。

一方「wpsty吹k飛b」

 『一方通行』はさらに黒い何かを振り回す。

ハルヒ「くぅ……止めなさ――きゃあっ!」

 ハルヒの一言でそれは確かに止まる、がやはり攻撃が防げない。

 これが、『制限』の一つだった。

 ハルヒの能力は、考えたことならば、なんでもできた。
 しかし、逆を言えば、考えないことはできない、つまり、わからないことはできないのだ。

 だから誰かを捜そうにも、その誰か自体を動かすことができても、どこにいるのかわからなければどのように動かせばいいかわからないため、結局は見つけられない。

 眠くなれば当然思考力も落ちるし、能力が弱まったりする。
 だからこそ、常に自分の能力で自分の身体を強化して補っていた。

 それで十分だった。

 この意味不明な現象以外は。

ハルヒ「あうっ!」

 訳の分からない力に翻弄される。
 わかれば、完封なのだが、それがわからない。

 ハルヒは焦る。

 そうして、電波を元に戻してみるという、基本的なことを思いつけなかった。

ハルヒ「あ……」

 そして、気がつけば目の前に、まるで天使のように羽を背負った『一方通行』がいた。

 思考が停止する。何も考えられない。

 全ての能力の庇護が消える。

ハルヒ「きゃああああああああああああああああああああ」

 そこでハルヒはただの女子高生に戻ってしまった。

 だが、そこでハルヒは予想外のものを見た。

ハルヒ「有希……?」

 何やらわからない黒翼を、当然のように手で受け止めている長門。

ハルヒ「どういう――」

 ことか、までは言えなかった。

 長門が何かを呟いた瞬間、ハルヒは消えてしまう。
 黒子がいればわかったであろう、この現象は『空間移動』によく似たものだと。

 その瞬間、ハルヒの能力で遮断されていた電波が復帰した。

一方「どォいうことだァ?」

 復活した言語能力と思考能力で、目の前の小さな少女を見つめる『一方通行』。

長門「このままでは危険だった」

一方「お前は確か長門ってやつだなァ。資料で見たことは見た。
   つまりお前は『幻想創造』側に付くってことだな? 面倒なことしやがって」

長門「私は面倒を回避した」

一方「あァ?」

長門「あのまま戦っていれば、貴方も、貴方以外も危なかった。
   涼宮ハルヒも危なかった。彼女の可能性が爆発を起こしていた」

一方「何わけのわかンねェこと言ってやがる」

 そう言って『一方通行』は距離を取る。

一方「そもそもテメェは何者だ? 俺の能力を受けても死なないってのはどういうことだ」

長門「私は対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。貴方たちの言葉で言えば宇宙人」

一方「で、その宇宙人様は何をするつもりで?」

長門「本気の貴方と本気の彼女の接触が一番危険。追跡を阻止する」

一方「あァなるほど。ここは電波がよく入るンだな。
   テメェをぶち殺すのにはちょうどいい」





キョン「どういうことだ?」

 携帯に映る地図を見て、気付いた。
 ハルヒの居場所が行動予測範囲を超えた変なところにいやがる。

 そこは。

キョン「今までと逆方向じゃねえか!」

 急いで踵を返し、元の道へと戻っていく。

 だが、一抹の不安がある。
 長門の関門をまた超えなければいけないのだ。

 と、そうこう考えてる内に、その長門がいたはずの場所へ。

 そこで目にしたのは。

キョン「上条さん!?」

 コンクリートの上に倒れてる上条さんだった。

上条「……う、ぁ……キョン……か?」

 駆け寄ると上条さんは答えてくれた。
 しかも起き上がる。こんなボロボロなのになんて頑丈さだ。

上条「長門……逃がしちまった……」

キョン「そうか、それならラッキーだ」

上条「どういう……?」

キョン「よくわからんが、ハルヒが方向転換しやがった。居場所は今までと逆方向だ」

上条「……そういうことか、ラッキーだ」

 そう言って、上条さんは立ち上がる。

上条「長門は多分、来れないぞ」

キョン「?」

上条「つまり、俺たち二人で、涼宮ハルヒのところに行けるってことだ」





絹旗「超驚いてるようですね」

 右手の傷に顔を顰めながら、それでも笑う絹旗。可愛い。

絹旗「知ってます? 液体窒素って超冷たいんですよ。
   だから、貴方の喉を凍らせて超窒息させることも、
   ――爆発を超冷やして、真空にさせないことも可能なんです」

 対して、古泉は気が気ではない。
 絹旗に馬乗りになってもらっていて超羨ましいのだが、下手に動けば液体窒素を飲むことになるからだ。

絹旗「しかも、超同時に窒素を補給できます。
   窒素を操る私が、窒素を補給する手段を持ってないと思いましたか?」

古泉「ぐぅ――!」

 迂闊でした、と言えない古泉。
 それに対して絹旗はさらに液体窒素の缶を古泉の口の奥に突っ込んでいく。

絹旗「やっと、超焦った顔になりましたね。でも、超終わりです」

 そうして、絹旗は、液体窒素を握る手に力を入れ、


 ――その瞬間、絹旗の身体がオレンジ色の何かに吹き飛ばされた。


絹旗「なっ!?」

 絹旗の身体は勢いよく、宙を回転しながら吹き飛び、彼女は着地に失敗する。

 同時に、彼女は驚いた。痛みが、あったのだ。

 至近距離からショットガンをフルオートで受けたならともかく、遠距離攻撃でダメージが発生したことに彼女は驚いた。

古泉「げほっげほっ……」

 液体窒素の缶を喉の奥まで突き込まれていた古泉が、咽せながら起き上がる。

 だが、絹旗はそんなことはもうどうでもよかった。

 こんなことができるのは、彼女の友人で仲間だったレベル5の学園都市第四位か、
 かつて内部抗争で戦ったものの、遠く及ばなかったレベル5の学園都市第二位か、
 自分の能力についての演算パターンのモデルとなったレベル5の学園都市第一位か、

美琴「やっほー、古泉さん大丈夫ですかー?」

 最強の電気使いであり、『超電磁砲』の異名を持つレベル5の学園都市第三位くらいである。

古泉「御坂妹さん、ではないですね……もしかして御坂美琴さん?」

美琴「正解正解」

古泉「ナビゲートをしていたはずの貴方がなぜここに?」

美琴「ナビゲートなら別の子に頼みましたから安心してください。
   それで、その子に頼んだら、監視カメラをハッキングしてたらなんか貴方が危ないのが見えたって」

古泉「監視カメラをハッキングですか!?」

 機関がやろうとしたができなかったのは秘密である。

絹旗「……超やってくれましたね」

 そこへ絹旗が立ち上がる。

美琴「あー、戦うの? やめといた方がいいわよー」

絹旗「そういうわけにもいきません」

 確かに、『超電磁砲』の戦闘力は脅威だ。
 だがしかし、絹旗は、勝算がある、と考えていた。

 今の攻撃は、恐らく彼女の異名ともなっている『超電磁砲』だろう。

 それを、僅かにダメージを負ったとはいえ、装甲で防ぎきったのだ。

 それに、彼女がどんなに強いと言っても、身体能力は一般的な女子中学生のはず。

 接近戦に持ち込めば、勝てる、と絹旗は思っていた。

美琴「仕方ないわね――ッ!」

 美琴が溜息を吐いた瞬間、絹旗は砲弾のごとく美琴に突撃する。

 美琴の位置にライダーキック。あまりの威力にコンクリートが捲れ上がる。

 こんなものを食らっては、ただではすまない、はずだった。

美琴「いきなり危ないじゃない」

 だが、感触はなかった。

 いつの間にか離れた位置に美琴は移動している。

絹旗「っ!」

 そして追撃を行おうとした瞬間、再び『超電磁砲』が絹旗の装甲に突き刺さった。

 宙を舞ってバウンドしながら吹っ飛んでいく絹旗。

 それでも致命的なダメージではない。

絹旗(ダメージは、確かにありますが、この調子なら超まだまだ……!)

 そんなことを絹旗は考える。

美琴「ねー、雷がなんでゴロゴロ鳴るか知ってる?」

 そこに美琴はいきなり言いだした。

美琴「なんでもね、瞬間的に熱せられた空気が、ほとんど真空になって、
   そこに空気が急激に入ってくるから衝撃波が起こるらしいのよ。
   その衝撃波がね、雷鳴の正体」

 その言葉に絹旗の顔が、危機感に染まる。

美琴「アンタの能力って真空になると危ないらしいわね。

   ――じゃあ、アンタの周りに雷鳴がゴロゴロしたら、どうする?」

絹旗「……!」

美琴「さてと、降参するなら、両手を頭の後ろで組んで、跪いて四つん這いにでもなりなさい」

 美琴はそんなことを微笑みながら言う。

 絹旗に、選択の余地はなかった。

 結局、依頼が入ってる限りは後に引けない絹旗である。

 無謀にも、美琴に突っ込んでいき、物凄い高圧電流が発生したと思ったところで彼女の意識は闇に落ちた。

美琴「うわ……ボロボロですね、大丈夫ですか?」

 そうして美琴は古泉を介抱中である。古泉超羨ましい。

古泉「全然大丈夫ですよ。これでも鍛えてますから」

美琴「ならいいんですけど……」

 大丈夫じゃなければいいのに。

古泉「しかし、監視カメラをハッキングして発見、ってすごいですね……人間業じゃありませんよ」

美琴「私じゃそんな情報処理できないんですけどねー。初春さん本当にすごいや」

 そこで、持ってきた包帯を古泉に巻き終える美琴。

美琴「さてと、それじゃ私は行きますね」

古泉「……どこへです?」

美琴「そりゃまあ――決まっているでしょ?」





 そこへ着くと、目的の団長様はいやがった。

 団長様は何やら混乱してるようで、俺たちの存在に気がついてない。

 だから、俺は言ってやった。

キョン「……ハルヒ!」

 俺の言葉にびくりとハルヒが反応する。

 そして、ゆっくりとこちらを向くハルヒ。

ハルヒ「……キョン?」

キョン「……やっと、会えたな」

 ハルヒはばつが悪そうに、目を伏せる。

ハルヒ「……何しに、来たのよ」

キョン「お前を止めに来た」

ハルヒ「……何を止めに来たのよ」

キョン「お前がやろうとしてる馬鹿なことだ」

ハルヒ「……知ってるの?」

キョン「ああ、全部知ってる」

ハルヒ「……何で止めようとするのよ」

キョン「当然だろ、お前が後悔するからだ」

ハルヒ「……何でそんなことがアンタにわかるのよ!」

キョン「決まってる!」

 一呼吸置いて俺は言う。

キョン「お前のやり方は、間違ってるからだ……!」

ハルヒ「いいえ、私は正しいわ」

キョン「いいや、お前は間違ってる」

ハルヒ「あくまで、認めないのね?」

キョン「ああ、認めない」

ハルヒ「仕方ないわね……」

 そう言って、ハルヒはこちらの方に向き直る。

ハルヒ「ここは、超能力者の街、学園都市よ」

 そう言って、ハルヒはこちらに指を向ける。

ハルヒ「文句があるなら、私に勝ってからにしなさい!」

 そう言って、ハルヒは何かしらの能力を使った。

キョン「うおぉ!?」

 眼前に突然現れる、巨大で気持ち悪い虫。
 いつかの巨大カマドウマなんかをよりにもよって生み出しやがったらしい。

 ハルヒに、これの記憶なんかないはずなんだがな。

 というか、どうすりゃいいんだ。
 あの時は古泉がいてくれたからなんとかなったものの、今はこいつを倒す手段なんて……

上条「退け!」

 あった。上条さんは俺を庇うように前に出ると、カマドウマに軽く触れる。
 それだけで、カマドウマは光の粒になって消えてしまった。

 うむ、頼もしいな。

ハルヒ「へぇ……何なのアンタ?」

上条「ただの、友達だよ。こいつらのな」

ハルヒ「そのただの友達が何のつもり?」

上条「こいつらのために、お前を助けてやる」

ハルヒ「やれるもんならやってみなさい」

上条「ああ、やってやるよ。

   ――お前が最強で、何でも思い通りにできるってなら、まずはその幻想をぶち殺す!」





一方「とりあえず、寝とけ」

 『一方通行』はそう言って、自分に拳銃を向ける。

長門「……?」

 そして引き金に指をかける『一方通行』の意図が、長門にはわからない。

 これではまるで、拳銃自殺。

一方「ほらよ」

 そして銃声が鳴り響く。

長門「!?」

 にもかかわらず、痛みを感じたのは長門だった。

 銃弾が、長門の足を貫通していたのだ。

長門「銃弾の方向転換、肉体の損傷を確認――修復する」

 だが、そんなダメージ如きでどうこうなる対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースではない。
 そう呟くだけで、光の粒が銃創を覆うと、傷は跡も残らず、血痕ごと消えてしまった。

一方「おいおいそりゃすげェな。『肉体再生』のレベル4はあるンじゃねェの、か!」

 銃など通じない、そう判断した『一方通行』は足下の砕けたコンクリート片をを蹴り上げる。

 するとそれは物理法則を無視したような動きで、物凄い速度で長門へと肉薄。
 ベクトルを集約した即席の砲弾である。

長門「成分は一般的なコンクリートと判断。粉砕する」

 長門は軽くそれを平手で叩くように腕を振るう。
 それだけで粉々に砕け散るという、こちらも物理法則を無視したような現象が起きた。

 あまりの威力に、コンクリート片は粉塵になる。

一方「肉体強化系の能力かァ?」

 その粉塵の奥から、『一方通行』は現れた。

 人間の動きではない体制で、長門に迫ると彼は軽く腕を伸ばす。

 それだけであらゆるベクトルを操作する能力により、一撃必殺となるのだが、

長門「肉体的強度に問題なし」

 長門はそれを難なく受け止める。

一方「ハッハァ! なンですかァその能力はよォ!」

 普通ならば、受け止めた時点で骨は砕け、肉は飛び散るのだが、その様子はまったくない。
 それに驚くより先に、『一方通行』の方こそが、血湧き肉躍った。

長門「――!?」

 無理な体勢にも関わらず、受け止めた長門の腕を掴む『一方通行』。
 そのまま地面に足を着くと、華奢とは言え、それなりの重量がるだろう長門の身体を片手だけで持ち上げる。

一方「落ちてろォ!」

 そのまま、長門の身体を地面に叩き付ける。
 今度こそ確実に砕けるように、あらゆるベクトルを集約して、だ。

長門「肉体的強度の限界を超え――」

 長門の言葉はそこで途切れる。

 長門の身体は思い切り頭から叩き付けられて、衝撃で血肉が飛び散る。
 その威力はコンクリートの許容強度を超えていて、地面にはクレーターのような大穴が出来上がる。

 そこまでやって、『一方通行』は初めて、やったか、と思った。

長門「――るのを判断。修復を優先する」

 だが、長門はそれでも無傷。制服に汚れ一つない。
 頭から突っ込んだにも関わらず、長門はいつの間にか足からきちんと着地している。

一方「ンな!?」

 今度こそ『一方通行』は驚いた。

 先程の攻撃はあらゆるベクトルを操作し、瞬間的に可能な限り威力を上げたものだった。
 どんなに頑丈でも、例え核シェルターであろうと、傷一つないのは不自然すぎる。

 すると今度は長門が『一方通行』の掴まれたままの腕を振り回す。
 何気ない動作なのだが、それだけで軽々しく『一方通行』の身体は凄まじい勢いで吹き飛んで行く。

 ビルに激突。あまりの威力でビル全体が揺れ、ついには倒壊する。

一方「なンつー威力だオイ」

 それでも『一方通行』は無傷。
 ビルの残骸を吹き飛ばして飛び出してくる。

長門「追加攻撃」

一方「あァ?」

 飛び出してきた『一方通行』はそこで不思議なものを見た。
 それは両手を広げる長門。だが、問題はそこではない。

 彼女の周囲に、鉄のような素材、かつ竹槍のように尖った細長い何かがいくつも出現していたのだ。

 そして、それはまるで意思を持ったかのように『一方通行』に発射される。

一方「効くかよ、ンなもン」

 だが、『一方通行』は何もしない。
 長門の姿を真似るように『一方通行』は両手を広げるだけで、甘んじて鋼鉄の槍を受け入れる。

 それは『一方通行』を貫こう、とした瞬間、長門の元へと戻っていった。
 『一方通行』の能力で反射されたのだ。

長門「っ!」

 自分の放った攻撃に、逆に串刺しになってしまう長門。

 血が飛び散る、が次の瞬間にその槍は光となって霧散する。

 その槍が消えた後にはやはり、服にすら傷はない。

一方「今のも、確かに当たったよなァ?」

 長門はさらに多量の槍を生み出す。
 そしてマシンガンのようにまた発射。しかしやはり反射される。

 今度は長門を貫かない。明らかに見切るのは不可能な量なのに、長門は難なくそれを避け続ける。

 人間の身体能力を超えているとか、そういう次元ではなかった。

一方「おいおい、冗談じゃねェぞ……『幻想創造』みたいな能力じゃねェか」

 そこでやっと『一方通行』は地に足を着ける。

長門「私の能力は情報を操作しているだけ。涼宮ハルヒの能力とは種別が違う」

一方「情報を操作だァ? なるほどなァ、電子、いや素粒子の配列でも変更してるってのか」

長門「この時代の技術レベルでは説明不可能」

一方「宇宙の技術ってやつですかァ? 何でもできそォだな」

長門「貴方の能力こそ万能のはず。
   先程までの情報を集計することで貴方の能力は物質のベクトルを自由に変換できるものだと予想される」

一方「おいおい、もうそンなことまでわかっちまうのかァ……宇宙人ってのは本当みてェだな。
   でもそれがどうしたァ?」

長門「分析の結果、貴方の能力に対する対処は四種類ほど検出した。いくら貴方の能力が万能でももう通用しない」

一方「面白ェ冗談言いやがる。やれるもンならやってみやがれ!」

 そう言って、『一方通行』は音速を超えるスピードで再び長門に迫る。

 そうして、あと一歩で、手が届く、そこで

長門「近距離における対処法を実践」

一方「ンな!?」

 『一方通行』は殴り飛ばされた。
 彼の華奢な身体が宙を舞う。

一方「こりゃァ……」

 なんとか着地、だが足が震える。
 脳裏に過ぎる自分を開発した研究者の顔。

長門「ダメージ効率は本来の0.45パーセント。攻撃は可能」

一方「クソッ……」

 『一方通行』を唯一殴ることのできる、無茶苦茶な理論。
 拳を反射の膜に当たった瞬間、引き戻すことで反射を利用して殴るという、人間業を超えた体術。

一方「だけどなァ……完璧に実践するのは無理みてェだな」

 だが、『一方通行』は長門の様子を見てほくそ笑む。
 長門の腕はほとんど逆の方向に曲がっていたのだ。

長門「攻撃の99.55パーセントの反射を確認――問題ない」

 それでも攻撃が有効だと判断した長門は積極的に肉弾戦を挑んでくる。
 再び肉薄する二人。

 『一方通行』は動かない。
 今度はもう片方の手で差し出された同じ拳を、同じように受け入れる。

一方「同じ手が通用すると思ったら大間違いだ」

長門「――!?」

 今度はダメージを受けたのは、長門だけだった。

 拳はあらぬ方向に曲がってしまい、その反動で身体が浮く。
 そこに『一方通行』はベクトルの集約した一撃必殺の攻撃を再び打ち込んだ。

 長門の身体が空を飛ぶ。

一方「残念でしたァ! 反射以外にも設定できるンだよ!」

 さらに『一方通行』はそこに追撃をかける。
 手にしたのはコンクリートの塊。

一方「宇宙に還れ」

 自転と、地球の遠心力と、あらゆる力を使った一撃が空中の長門のもとへと飛んでいく。

 そこで『一方通行』は長門の表情が、僅かな変化だが、焦りに染まるのが見えた。

長門「防御不可能……回避不可能……修復時間不足――!」

 夕焼けの空に赤い飛沫が蒸発する。

一方「汚ェ花火だ」

 さすがに粉々に蒸発してしまえば、修復は不可能だろう、と『一方通行』は判断する。

一方「がァ!?」

 そこで、夕日の光が、刺すような光線になったことを『一方通行』は把握した。

 見れば、空から重力加速に従って、地面に向かっている、長門の姿。

一方「あの状態からも復活できるってのかよ……! しかもこりゃ……!」

 『未元物質』の変化させた、物理法則外の攻撃を思い出させる。

長門「遠距離からの対処法」

一方「なんでもありだなァ、オイ!」

 『一方通行』は太陽光の当たらない、日陰に逃げ込む。
 幸い、夕方だったためか、日陰は大量にあった。

長門「次は、空気」

一方「ぐっ……!」

 長門が言うと、『一方通行』は急激に息苦しくなる。

一方(どんな法則か知らねェが、厄介だな……)

一方「だがなァ……単純なンだよォ!」

長門「……」

 『一方通行』は即座に反射の設定を切り替える。
 既に一度攻略しているものだ。その時の式を応用すれば別の法則だろうが、破るのは容易だった。

 そこで長門は着地し、自由な行動権利を得る。

一方「チマチマやってる場合じゃねェぞ?」

 だが、『一方通行』はそこにいた。長門の背後に回っていた。

 長門には前後左右などは大した意味を持たないのだが、それはこれまでの攻防で『一方通行』もわかってるはずだった。

 だからこそ、今度は攻撃を加えない。

一方「テメェをいくら砕こうが無駄なのはわかった。なら動けなくなってもらうまでだ」

 そう言って、『一方通行』は長門の両手と両足をガッチリとホールドする。

一方「ホラホラァ、次の対処法とやらをやらないと大変ですよォってなァ!」

 そこから力を加える。
 長門は自分の身体を形作っている骨が折れていくのを感じた。

長門「――ッ!」

一方「テメェの回復力が勝るか、痛みで精神がぶっ壊れるのが早いか、競争しようじゃねェか」

長門「――残、りの二つは、現段、階では、使用、不可、能」

 壮絶な痛みがあるのだろう、長門の言葉は途切れ途切れだ。

一方「そンなら俺の能力が使えなくなるか、お前の精神がぶっ壊れるかの耐久レース頑張りなァ」

 さらに、『一方通行』は長門の体内の血流を操作し、身体の内部を滅茶苦茶にする。

長門「し、かし、その内、一つ、は、もうすぐ、使用、可能」

一方「早くしないともっと痛い目を見るぞォ?」

 苦悶の表情の長門を見て、『一方通行』は喜悦の表情を浮かべる。

長門「おおよ、そ、後、七、秒」

一方「それじゃ、見せてもらおうじゃねェ――ンな!?」

 その瞬間、長門は『一方通行』の束縛から逃げ出すことに成功した。

 あまりの事態に、『一方通行』が能力の使用を中断したからだ。

一方「何しやがった!」

 彼の知る物理現象では到底ありえない、現象。

 彼の、足下からが、段々と透けていっていたのだ。

長門「貴方の情報連結の解除を申請した」

 長門は瞬時に、肉体を再生する。

 だが『一方通行』はそれどころではない。

一方「……」

 それでも、『一方通行』は焦らない。
 状況を見極めるべく、精神を集中する。

 だが、長門は純然たる事実のように宣言する


長門「――これで、終わり」






 いやいや、さすがにこれはない。

 上条さんは確かに、頼りになるが、それは右手だけに限定されるらしい。

 だから、これはない。絶体絶命だ。

 大量のカマドウマが空から降って来やがった。

キョン「っざけんなちくしょおおおおおおお」

上条「不幸だああああああああああ」

 現在絶賛逃亡中。後ろから大量のカマドウマが追いかけてきやがる。

 おいハルヒ、どうせならもっと気持ちの良いものにしてくれ。

ハルヒ「どこに行くのかしら?」

 すると、逃げまくってる先になぜかハルヒがいやがった。
 こちとら生命の危機に瀕した必死状態だってのに軽々追いつくとはどんな身体能力してやがる。

キョン「待てハルヒ、これは気持ち悪い!」

上条「そうだ気持ち悪い! 多いと気持ち悪い!」

 必死の訴え。この絵面は本当に嫌なんだよ。

ハルヒ「じゃあ、こんなのは?」

 そうしてハルヒがバックステップで下がる。
 一度のバックステップで下がれる距離じゃないが、もう気にするもんか。

 それよりもっと気にするものがある。

キョン「セミってもっと気持ち悪いわ!」

 セミだ。いや、訂正しよう。大量の巨大セミだ。

ハルヒ「うん、ちょっとごめん……」

 作り出したハルヒもちょっと気持ち悪くなってきてるらしく、顔を背けて謝りやがった。

 謝るくらいなら消してくれ。

上条「畜生、やるしかねえ!」

 そう言って、上条さんは立ち止まって右手を構える。
 高速で突っ込んできた巨大セミは上条さんが殴ると煙のように消えてしまう。

 さらにやってくるセミも次次と消していく上条さん。
 よし、上条さん頑張れ。

 そうして俺は後ずさる。上条さんの邪魔になっちゃいけないからな。

キョン「……ん?」

 だけど考えてみりゃ、後ろにもカマドウマがいるじゃねえか。
 ふと背中を振り返ると、カマドウマの大群が整列して止まってやがる。

 そのカマドウマの先頭と、目が合った。

キョン「うおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 カマドウマ軍は一斉に動き出す。大きくジャンプしやがった。

 身体か巨大な分、滞空時間も長く、スキマも大きい。

 とりあえず影を目印にして、って上条さんが潰されそうだ。

キョン「避けろおおおおおおおおおおお」

 思いっきり上条さんを押し倒す。間一髪、俺たちはカマドウマに踏みつぶされることだけは避けられた。

上条「あー、さんきゅーな」

キョン「……しかし、どうすんだこれ」

 だが、俺たちがいるのはカマドウマの大群のまっただ中。

 しかも空にはセミが飛んで待機してやがる。

ハルヒ「私の勝ち、みたいね」

 すたすたと気持ち悪い虫の森を歩いてくるハルヒ。

ハルヒ「降参してくれない? そうすればこの気持ち悪いの全部消せるから」

キョン「気持ち悪いならはじめから出すな」

ハルヒ「仕方ないじゃない。そこの上条さんとやらには普通に能力使っても通用しないみたいなんだもん」

 上条さんの能力をもう見抜いてたのか。そういえばこいつ、頭も良かったな。

ハルヒ「私の勝ち、でいいわよね?」

 畜生、さすがにハルヒに挑むのは無理があったか。

上条「認めねーよ……」

ハルヒ「ん?」

上条「こんな虫をいくら出されようが認めるか! 俺はアイツらのために認めるわけにはいかないんだよ!」

 さすが上条さん、何か策があるのか。頼もしい。

ハルヒ「何かこの状況からできるわけ?」

上条「わかんねーよ、でも俺は諦めないぞ!」

 前言撤回。ここはとりあえず話し合いに持ち込むべきだろう。
 ほら、ハルヒの目が変わりやがった。

ハルヒ「仕方ないわね……適度に痛めつけてあげるわ」

 ハルヒが号令を下すと、待機してた虫たちは一斉に動き出す。
 畜生、悔しいが、俺にはどうにもできない。

 上条さんはそれでも拳を握ったままこの虫の大群と戦うつもりらしい。

 どうしようもできねえな、畜生。

 その瞬間、雷鳴が轟いた。
 というか雷が落ちた、と俺は思った。

 衝撃で俺たちに襲いかかろうとしていた虫たちが吹き飛んで行く。

 落ちてきたのは雷じゃなかった。
 人だった。

美琴「何よこの趣味の悪い能力は」

 ああ、世界はまだ捨てたもんじゃないな。

上条「お前……どうしてここに!?」

 上条さんは驚きと心配と焦りが混じったような表情をしている。
 だけど、これは僥倖だ。

キョン「見ての通りハルヒの仕業だ。
    ――助けてくれ」

 他力本願万歳。

圧巻、の一言だった。

 空から落ちてくる系+バトルヒロインという二重の属性を持ってる御坂美琴は、
 ゲーセンのコインを指で弾いたりなんか電気を出したりしてDOKKAN!DOKKAN!やってらっしゃる。

 空を舞う砕けたセミやらカマドウマやら。しかもいつの間にかコオロギとかその他の虫まで入ってやがる。
 しかも春夏秋冬節操なしだ。

 まるでスペクタクル映画を眺めてるような気分だった。

 そうして、あっという間に俺たちを苦しめていた虫たちは一掃されてしまった。
 粉々になった虫の破片が光に包まれて消えていく。

 良かったのは、こいつらは血肉が通ってるわけじゃないらしく、まるでロボットが壊されていくような光景だったことか。
 巨大虫の体液でネチョネチョなんて嫌だったしな。

ハルヒ「へぇ……アンタ、何者よ?」

美琴「学園都市第三位、『超電磁砲』って言えばわかるかしら?」

 綺麗さっぱりに片付いたコンクリートジャングルでにらみ合うハルヒと御坂。

 俺も上条さんも何も言葉が出なかった。

 これが、レベル5の戦いってやつか。

ハルヒ「第三位、ねぇ。じゃあもうすぐ第四位になるわね」

美琴「何寝ぼけたこと言ってるのよ。この程度の能力で私に勝てると思ったら大間違いよ?」

ハルヒ「そりゃあ、この程度じゃないわよ」

 先に動いたのはハルヒだ。
 というかほとんど見えなかったが、ハルヒのやつは一瞬で御坂のいたところに跳び蹴りを食らわせていた。

 だが、御坂はもうそこにはいない。
 チャクラでも足の裏に溜めてるのかわからないが、ビルの壁面に立っていた。

 こっちの動きも見えない。
 俺、解説者失格だな。

美琴「行くわよ!」

 わざわざ御坂は宣言してから両手をあげる。

 すると砕けたコンクリートの中から発生する、黒い何か。
 もしかしてありゃ、砂鉄か?

 するとその砂鉄は触手のようにうねるとまるで意思を持ったかのようにハルヒに襲いかかる。

ハルヒ「散りなさい」

 だが、そいつらはハルヒに触れる前にハルヒが一言言うだけで、ぱぁんという弾ける音と共に霧散してしまった。

美琴「そんなら!」

 次に御坂の周囲に電気が広がる。
 すると彼女が足場にしていたビルにヒビが広がっていく。

キョン「おいおい冗談だろ……」

 ビルから、表面のコンクリートが剥がれてハルヒの元に砲弾のように飛んでいく。
 しかもさっきの砂鉄と同じく、意思を持ったようにハルヒに総攻撃だ。

 それでもハルヒは動かない。

ハルヒ「止まりなさい」

 一言。それだけで全ての破片は空中で動きを止める。

ハルヒ「お返しするわ」

 そして次の瞬間、そいつらは今度は意思を持ったように御坂に襲いかかる。

美琴「このっ!」

 だが、御坂も負けていない。そいつらを全部電撃で砕き落とした。

ハルヒ「じゃあ次は私の番ね」

 そう言って、ハルヒはゆっくりと御坂に向かって歩き出した。
 そのゆっくりさが、恐怖を煽る。

ハルヒ「燃えなさい」

 ハルヒの一言。その瞬間、御坂の周囲に炎の渦が発生した。

美琴「制服焼けたらどうすんのよ!」

 だが、御坂がバチリと一際強く放電すると、その炎はかき消される。

ハルヒ「じゃあ水あげるわよ――溺れなさい」

 そして次の瞬間、御坂の周囲が球体の形をした水の塊で包まれた。

 御坂は溺れるように手をかき回すが、水塊は表面が波打つだけで、大きな変化はない。
 ビルの壁面に立っていることができなくなったのか、水の塊ごと御坂はどしゃっと地面に落下した。

上条「美琴ォ!」

 それを見て上条さんが駆け寄ろうとする。

ハルヒ「アンタはこいつと遊んでなさい」

 だがそんな上条さんの眼前に降り注ぐ数匹の巨大カマドウマ。

上条「クソッ!」

 そいつらは一斉に上条さんに襲いかかろうとする。

その瞬間、そのカマドウマ共は吹き飛んだ。

 地面に残るオレンジ色の跡。『超電磁砲』だ。

美琴「はぁはぁ……これは私の戦いなんだから手出さないでよ」

 びしょ濡れになりながら息絶え絶えに、言う御坂。

ハルヒ「あの水の塊ごと吹っ飛ばしたんだ、中々やるわね」

 うんうん、とハルヒは感心する様に言う。

美琴「余裕ぶってるのも今の内よ。アンタの能力に弱点あるのくらい知ってるんだから」

ハルヒ「じゃあ、頑張ってみなさい、よ!」

 そう言ってハルヒは今度は肉弾戦で襲いかかった。
 拳を構えて御坂に迫る。

 そういや御坂は普通の女子中学生なんじゃないか、これってヤバいんじゃ……

美琴「精一杯頑張るわ」

 だが、俺の予想は嬉しくも、外れたらしい。

 御坂は超スピードのハルヒの猛攻ラッシュをすれすれのところで避け続けている。

 この子に生身で喧嘩挑んでも勝てないな、うん。

ハルヒ「オラオラオラオラオラァ!」

美琴「無駄無駄無駄無駄無駄よ!」

 ジャブラッシュ。やはり当たらない。

ハルヒ「なんで当たらないの、よ!」

 苛ついてきたらしいハルヒが渾身のストレートを放つが、やっぱり空振り。

ハルヒ「いや……ははーん、そういうことか」

美琴「?」

 そう言ってハルヒは一度距離を取る。

ハルヒ「アンタ、周りにレーダーか何かを出して私の攻撃を予測してるんでしょ?
    しかも、身体を動かす時も電気を操作して反射的に直接動かしてる。
    だから私の攻撃よりも二重に早く対応できるってわけね」

美琴「へぇ……よくわかったわね」

ハルヒ「そりゃこれだけ先に動かれてちゃ嫌でもわかるわよ」

 なんだかよくわからないが、やっぱり御坂はすごい。

美琴「種がわかった、ってことは対策もあるの?」

ハルヒ「そりゃ、もちろん!」

そう言ってハルヒは地面のコンクリート片を蹴る。
 軽く蹴っただけなのに、そいつは超高速で御坂のところまで飛んでいった。

美琴「これって……!」

 御坂はそれを間一髪で避ける。

ハルヒ「正解。『一方通行』ってやつのマネしてみたの」

 さらに、ハルヒはコンクリートの砲弾を撃ち出し続ける。

美琴「ああもう!」

 それを美琴は砂鉄を操作し、叩き落とし続ける。
 コンクリートの欠片が辺り一面に飛び散った。

ハルヒ「で、こうすれば私の動きはわからない」

 そこに、ハルヒが眼前まで迫っていた。

美琴「くっ――!」

 避けようとしているが、今までのような余裕さはなかった。

ハルヒ「それ!」

 そこにハルヒの蹴りが炸裂する。
 俺から見たってそれは避けられる代物ではないとわかった。

美琴「くぁっ!」

 だが、それでもハルヒの蹴りは空振りをする。
 御坂は何かに引っ張られるようにビルのところまで行くと背中から叩き付けられる。

ハルヒ「磁力を最大にして、緊急回避ってところかな? まだそんな手も残してたの」

美琴「コンクリート片で、レーダーにいらない情報ばっかで惑わせようって、作戦だったみたいだけど、
   やってくれるわね」

 息絶え絶えだが、御坂はハルヒを睨み付けながら言う。

美琴「でも、アンタの弱点はわかったわ」

ハルヒ「へぇ?」

 そこで御坂は笑みを浮かべた。

美琴「一つ、わからないもの、想像できないものはどうにもできない。
   まあ、これは前々からわかってた情報ね。これがレベル6じゃなくてレベル5の理由なんだから。

   二つ、オート設定ができない。
   攻撃とか来たら無条件で止まる設定にすればいいのに、それをしてないのが証拠。
   現に、今までもわざわざそのたびに指定していた気がするわ。自由度が高すぎて設定ができないわけね。
   
   そして三つ、複数の能力を同時に使用はできない。これはさっき確信したわ。
   だから遠距離攻撃か、近距離戦闘かの、どちらかしかやっていない。
   さっきだって能力で攻撃しながら肉弾戦すればよかったのに、
   わざわざコンクリート片を使ってたのが証拠よ」

 それだけ言うと、ハルヒの顔が驚きに染まった。

ハルヒ「……あーもう、アンタ色々面倒ね」

 段々とハルヒの顔が不機嫌になっていく。……何やら嫌な予感がするぞ。

ハルヒ「全部正解よ。私はあくまで人間だし、一つのことしか考えられないわ。だからオートにもできない

    ――だから何?」

美琴「……!」

ハルヒ「全部私が一言言えば終わるのに何得意気になってるのかしら」

美琴「そりゃ……私がここで能力を解説すれば、アンタのその一言が効かないやつらが解決してくれるからよ」

 ……何を言ってるんだ?

ハルヒ「なるほどね、私は調子乗ってる間にまんまとアンタの策に嵌められたってことなの」

美琴「そういうこと。間抜けね」

ハルヒ「なら、お望み通りにしてやるわよ!」

 もしかして!

ハルヒ「後はアンタの信じたやつらが頑張ることを祈ってなさい」

キョン「止めろハルヒ!」


ハルヒ「――死になさい」


 御坂が胸を抑えて蹲る。

ハルヒ「遊んでないで最初からこうしておけばよかったわ」

 御坂が苦しそうに顔を歪める。

ハルヒ「大丈夫、私がレベル6になったらみーんな、生き返らせてあげるから」

 そうして、御坂美琴は、倒れた。

キョン「嘘だろ……?」

上条「美琴オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

 上条さんが駆け寄ろうとする。

ハルヒ「何するつもり?」

 そこにハルヒが立ちはだかった。

上条「退けよ、俺の右手なら、まだ生き返らせてやれる!」

ハルヒ「そんなことしないでよ、面倒じゃない」

キョン「ハルヒ……お前本気で言ってるのか!」

ハルヒ「本気よ本気。だって後で生き返るんだからいいじゃない」

上条・キョン『そういう問題じゃないだろ!』

上条「後で生き返れば誰を殺してもいいと思ってるのか!」

キョン「お前なあ、今の御坂の顔を見ただろ! あんなに苦しがってたんだぞ!」

ハルヒ「何よ、後でその記憶もお望みならば消してあげるわよ。『妹達』とかのも、ね」

キョン「ハルヒお前!」

上条「ふざけんじゃねえぞ!」

ハルヒ「アンタたちが何を言っても変わらないわよ。あんな虫数匹にやられるあんた達じゃ、ね」

 その目は、いつものハルヒの目ではなかった。
 俺にはわかる、この目は、映画を撮っていた時のような、何かに夢中になって、他のことに気が回っていない、目。

 こいつは、自分の能力に魅せられて大事なものを見失ってやがる。

キョン「上条さん……」

上条「ああ、わかってる」

キョン「こいつには、キツく言ってやらないとダメみたいだな!」




一方「……なるほどなァ。素粒子レベル、いやもっと細かい何かで分解してやがンのか」

長門「……」

 やがて『一方通行』は口を開いた。

長門「……その通り。貴方を構成する情報の繋がりを絶った。もう、何もできない」

一方「あァ、確かに俺には何もできないかもなァ」

 そこでニヤリと『一方通行』は笑う。

一方「そして、お前にもできな、だろォ?」

長門「……?」

一方「他力本願な能力だなァ。テメェの能力を名付けるとしたら、そォだな、
   『情報改竄』(ヘルプハッキング)ってところか」

長門「……!」

 長門は今度こそわからない。
 もうすぐ消えてしまうというのに、有機生命体ならば死という概念の焦りが存在するはずだからだ。

 だが、長門の脳裏に浮かぶ、一抹の不安。

 果たして、それは当たっていた。

一方「テメェ自身に能力があるわけ、じゃねェな?
   テメェはあくまで端末、どこかに情報を送信して、代わりにやってもらってるような形なんだろ」

長門「……何故」

 今度こそ長門は驚いた。
 これだけの情報だけで、このレベルの生物がその答えをはじき出せるのが、長門には意外だった。

一方「そォだよなァ。だからあの時に即座にこれはできなかった。
   そりゃ簡単だ、お前はどこかに情報を送信するワンクッションが必要だからだ。
   考えてみりゃわかる。お前はどう見ても、超能力者じゃなかったからなァ」

長門「……」

一方「不思議そうな顔してやがるな。何故、それがわかるのか、ってな。
   なァ、知ってるか? 例えば電気使いは電波や磁力線などが感知できるらしい。
  『超電磁砲』となれば視認できるほどだそうだ」

長門「まさか――」

一方「わかったみてェだな。さてここで問題です――ベクトルを操る『一方通行』は何がわかるのでしょォか!」

 そこで、『一方通行』の分解が止まった。

長門「そんな、」

一方「正解はベクトルに関してならなんでもわかっちまうんだよォ!
   生体電気の流れも血流の流れも、気流の流れも、AIM拡散力場の動きも、
   テメェがやってた不思議な何かの動きもなァ!」

一方「テメェがAIM拡散力場を使ってないことくらいはわかる! その代わりに何かが流れてることもわかる!
   最初は『魔術』ってやつなンだろうと思ったがよ、どうもそれも違うみてェだしよォ……
   だから俺は、それを解析した」

 『一方通行』の消えていった身体が再構成されていく。

一方「幸運なことにテメェは攻撃以外の時も常にその何かを動かしてやがる。
   しかもそれは一定じゃねェ。攻撃の時に変化があったし、俺の身体が消える前も変化があった。
   それだけ情報があればこの俺が解析することなンざ朝飯前なんだよ」

 そんな馬鹿な、と長門は思う。
 確かに、情報統合思念体と通信するために、この時代の技術レベルで言えば、そう、電波のようなものを使っていたことは確かだ。
 だが、それにはやはりセキュリティをかけてるし、これだけの情報でそれを解析するなど、人間一人の演算能力のレベルではない。

 ミサカネットワークの補助のお陰で分散的な思考ができるようになってたのは長門の知るよしのないことであるが。

長門「――!」

 慌てて長門は何やら言葉であり言葉でないようなことを呟き始める。

一方「無駄無駄ァ! 情報連結解除の申請の却下の申請ってなァ!」

 だが、何も起こらない。

長門「――情報回線の不正アクセスを確認……!」

 完全に身体を修復し終えた『一方通行』は、長門に音速を超えて接近すると、横殴りに蹴り飛ばす。

一方「もう簡単に身体を回復できると思うなよォ?」

 さらに、『一方通行』は変化した通信の動きにベクトル操作で無理矢理介入する。

長門「――肉体修復の確認」

 だが、長門は肉体を修復し終えていた。

一方「あァ? ……セキュリティを切り替えやがったってところか」

 それを見て『一方通行』は壮絶に笑う。

長門「貴方の演算能力は脅威。対インターフェース用マニュアルを起用する」

一方「なるほどなァ、じゃあ、どっちが頭イイか知恵比べと行こォか!」

 そうして、『一方通行』は新たなセキュリティを解析しながら、再び長門に肉薄していく。

 長門はもう情報連結の解除のような時間のかかることは使えない。
 解析に対して防御を張りながら、それを迎撃する準備をする。

 かくして二人は、再び同じ土俵に並んだ。





 ハルヒのやつは、また虫を生み出しやがった。

 やはり一瞬で四方八方ふさがり。上条さんもこれ自体はどうしようもできないらしく、若干身を引いている。

 だが、俺には考えがあった。

キョン「上条さん、あの廃ビルまで走りますよ!」

上条「……? よし、なんか策があるんだな!」

 そう言って俺は上条さんを先頭に、虫をばったばったと打ち消していきながら進む。

ハルヒ「おおっと、威勢のいいこと言ってた割に、どこに逃げるの?」

 そこにハルヒが立ち塞がりやがる。
 俺の予想じゃ、この虫どもは呼び出すまでが能力だ。
 呼び出した後は多分、別の能力も使えるようになってるのだろう。
 あの時、物凄い速度で俺たちを追いかけて来やがったからな。

 だからこそ、策がある。御坂が見つけてくれた弱点がある。

キョン「上条さん連いてきてください!」

 俺は上条さんの前に躍り出ると、上条さんを背で隠す。

キョン「そんで俺の背中に右手当てておいてもらえます?」

 ついでに小声でこの大事なことも言っておく。

上条「お、おう……」

 上条さんは了承すると、俺の背中に右手をくっつける。

 さあ、反撃開始だ。

ハルヒ「何虫に囲まれて無視してんのよ、さっさと――止まりなさい!」

 ハルヒは能力を使う。

 そう、これを狙っていたのだ。

 死ねでも、止まれでもなんでもいい。

 俺が盾になってまず能力を使わせる、これが重要。

 そんで背中の隠れた上条さんが密かに右手でそれを即座に打ち消してくれる。

 そう、俺という盾をワンクッション置くことで、ハルヒに対しては最強の盾を手に入れることができるのだ。

キョン「どっせい!」

ハルヒ「え……?」

 ハルヒが能力を使用したにも関わらず、俺は止まらず走り続ける。

 そして、能力を使用している間に限り、一般的な女子高生に戻っていたハルヒの身体を廃ビルの中に押し倒す。
 これなら俺の筋力でもできることだ。

 ……我ながらここまで上手くいくとは思わなかったが。

ハルヒ「きゃあ!」

 作戦大成功。俺たち三人は廃ビルの中に入りきったのだ。
 虫どもは大きすぎる身体のせいで、ここまでは追いかけて来られない。

 学園都市の技術で作った建造物は物凄い耐久度らしく、虫たちが外で暴れても何の影響もない。

 計画通り!

ハルヒ「何すんのよ!」

 即座に身体能力強化に切り替えたハルヒは廃ビルのエントランスの奥に一旦逃げる。

 だが、それこそまさに思う壺だ。

キョン「さあどうするハルヒ?
    このビルの中っていう限られた空間じゃ虫なんか呼び出しても、上条さんが全て打ち消してくれるぞ」

 まさしくチェックメイトだ。

ハルヒ「勝ち誇ったこと言ってるけど、私にはまだまだ能力があるのよ?」

キョン「そんなもん上条さんが打ち消してくれる」

上条「いやそこまで頼りにされると困るんだが……」

 頼りにしてますよ、上条さん。

ハルヒ「――っ! やれるもんなら、やってみなさい!」

ハルヒ「炎!」

上条「っ!」

 上条さんは弾かれたように反応して、俺の前に躍り出る。
 ハルヒが一言言うと、ハルヒの元から火炎放射器のような炎が噴射されるが、上条さんはそれをいとも簡単に打ち消してくれる。

 頼りになるなあ。

ハルヒ「氷!」

 次にハルヒが生み出すのは、大量の氷柱のような氷の塊。
 あれは刺さったら痛そうだが、そんなことはお構いなしに俺たちにそれは襲いかかる。

上条「量が、多いな!」

 だが上条さんはすごい。それらをばしばしと打ち消してくれる。
 なんだこの動体視力は。素晴らしい。

ハルヒ「なら……水、溺れろ!」

 そのお次は大量の水がこの広間に流れ込んでくる。
 だがそちらの処理の方が上条さんには楽らしく、一瞬で打ち消してしまった。

 上条さんすごいな。

ハルヒ「空気、なくなれ!」

 うぐっと上条さんは首を押さえる。
 だが、なんとか口元に右手を持って行くと、すぐにぜーはーと息が復活する。

 どうやら、広範囲に渡るものより、ピンポイントの方が効果あることに気がついたらしい。

ハルヒ「……なるほど。じゃあ、アンタは今、私が敵だということを忘れて、キョンが敵だと認識しなさい!」

 なんだそのピンポイントな能力は!

 上条さんはくるりと振り返ると、拳を構えて俺に寄ろうとする。

キョン「か、上条さん……」

上条「なんだかよくわからねえが、お前の幻想をぶち殺さなきゃいけない気がする!」

 完全に正気を失ってる模様。
 ダメだ、こいつ早くなんとかしないと。

キョン「あ、頭になんかついてますよ」

上条「え?」

 そこで俺は機転を利かせた。
 俺がそう言うと上条さんは思わず頭を右手で触って確認する。

 その瞬間、何かが割れるような音がして、上条さんの目が正気に戻った。

上条「……せこいことやってくれるじゃねえか」

ハルヒ「うっ……」

 上条さんが鋭くハルヒを睨む。
 それに対してハルヒは後ずさる。

ハルヒ「なら、ぼこぼこにしてあげるわよ!」

 今度のハルヒの選択は自分の身体能力の強化だったらしい。
 物凄い速度で上条さんに迫る、というか迫っていた。

 動きは見えない。が、上条さんが確かに殴り飛ばされる。

ハルヒ「これなら打ち消せないみたいね」

 さらにハルヒは上条さんに追撃をかけようとする。
 これはまずい!

キョン「止めろハルヒ!」

 俺は身体を張って上条さんの盾になる。
 上条さんに動けなくなってもらっては、大変なのだ。

ハルヒ「退きなさい、キョン!」

 そこにハルヒの拳が迫る。

 俺は仮にも鍛えてない一般男子高校生だ。
 こりゃ、死ぬか?

 ……だが、いつまで経っても痛みは来ない。

 見ると、ハルヒの拳は、俺に当たる直前で止まっていた。

キョン「ハルヒ……お前……」

ハルヒ「くっ……!」

 そうしてハルヒは一歩が大きいバックステップで後退する。

キョン「お前、もしかして――」

ハルヒ「うるさい!」

 そう言って、ハルヒは炎を噴射する。
 狙いは俺。

 今度は上条さんは間に合わない。

上条「キョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」

 上条は目の前で焼ける友人を見た。

ハルヒ「あ……」

 ハルヒは息を乱しながら、その様子を目を見開きながら見つめている。
 その様子は、絶望したような様子で、先程までのハルヒとは大違いだった。

上条「いい加減にしやがれよお前!」

 だが激昂した上条にはその変化など気づかない。

上条「人の命をなんだと思ってやがる!」

ハルヒ「うるさい……」

上条「美琴を殺したり、御坂妹たちは後で生き返らせればいいとか……ふざけるのも大概にしろ!」

ハルヒ「うるさい……」

上条「挙句の果てにはその間違いを正しに来てくれた友達までも殺しやがって!
   そこまでして成功する実験が本当に正しいと思うのかよ!」

ハルヒ「うるさいって……言ってんでしょ!」

上条「うるさくなんかない!」

ハルヒ「うるさいのよ!」

上条「生き返らせればいいのかよ! そいつらがなんて思うかなんか関係ないのかよ!
   キョンはな、お前を止めるためにも、
   俺みたいな能力もないのにボロボロになってまでお前を追い続けてたんだぞ!
   そんなやつまでお前は邪魔だからって殺すのかよ!」

ハルヒ「そう……キョン……キョン死んじゃった……」

上条「お前は神様にでもなったつもりなのかよ!
   だけどな、その考えはお前を思ってくれてる人の気持ちまで踏みにじってるんだぞ!」

ハルヒ「うるさい……うるさい……うるさああああああああああああああい!!!!」

 ハルヒは大量の氷柱を空中に生み出す。

上条「それでも、お前が実験成功させれば問題ないと思ってるなら――」

 そしてそれは撃ち出される。標的は、もちろん、上条。

 だが、上条は臆せず走り出す。

 氷の塊を右手で砕き、砕き切れなかった分は身体に刺さる。

 それでも上条は止まらない。

ハルヒ「来るなっ! 来るなっ!」

 ハルヒが喋る度に、上条の足が止まるが、すぐに上条は再び走り出す。
 上条は止まらない。

ハルヒ「炎! 水! 電気! 氷! 銃! 剣! 風!」

 炎は右手で触れるだけで静まる。
 水は右手で触れるだけで蒸発。
 電気は右手に当たるだけで霧散。
 氷は右手で触れるだけで砕ける。
 銃は右手をかざすだけで届かない。
 剣は右手で触れるだけで折れる。
 風は右手で触れるだけで収まる。
 上条は止まらない。

ハルヒ「うわあああああああああああああああああああ」

 ハルヒはついに虫を生み出す。
 だが、所詮は一匹。右手で軽く叩くように触れるだけで光になって消える。
 上条さんは止まらない。

上条「まずはその幻想を――」

 そうして上条さんは右手の拳をきつく構えて、

上条「――ぶち殺す!」

 殴りつけた。

キョン「がっ――!」

 だが、殴られたのは、俺だった。
 上条さんの拳は俺の顎にクリーンヒット。俺は殴り倒される。

上条「え……?」
ハルヒ「え……?」

 二人して、意外そうな顔をして、ぽかんとしてる。

キョン「っ痛ぇな……」

 だから俺は顎をさすりながら起き上がった。

ハルヒ「キョン……アンタなんで……」

キョン「身体が勝手に動いちまったんだ、仕方ないだろ」

上条「いや、お前はさっき焼けて……」

 二人は、特にハルヒは驚いて俺を見つめてる。

キョン「そんなこと――」

 だからこそ、俺は自信たっぷりに言ってやる。

キョン「――コイツにできるわけなかったんだよ」

 俺はハルヒを庇うようにして、上条さんと相対する。

キョン「前々から違和感を感じてたんだよ。コイツの能力の使い方は明らかにおかしかった」

上条「どういうことだ?」

キョン「考えてみろ。御坂の時も、俺たちが虫に襲われてた時も、何故か回りくどかった。
    答えは簡単、こいつは自分で人を手に掛ける決心がつけられなかったんだよ」

ハルヒ「う、嘘よ! 私は本気だったわ!」

キョン「本気じゃないだろ? 今さっき確信したよ。お前は俺を殴ろうとした時に、手を止めやがった。
    殴ったら死ぬ、それがわかったから殴れなかったんだ。
    今さっきの炎だってそうだ。あれを受けて俺が生きてるはずないだろ?
    お前は俺が焼けて死ぬ姿を考えたくなかったんだ、考えられなかったんだよ」

ハルヒ「そ、そんなわけない! アンタがなんか変なトリック使ったんでしょ!」

キョン「残念ながらな、そんなもんが使えたらとっくに使ってるっての」

上条「ちょ、ちょっと待て! 美琴はこいつに殺されてるんだぞ!」

ハルヒ「そうよ、私は確かにあの子を心臓麻痺で殺したのよ!」

 上条さんとハルヒは俺の説明に食いつくように反論する。


美琴「――だーれが、死んだって言うのよ?」

 と、そこに御坂美琴の強気な声が響いた。

上条「み、御坂!?」

 上条さんは弾かれたように声の方を向く。
 そこには、制服が泥々になったものの、確かに自分の足で立ってる御坂がいた。

美琴「私は電気使いよ?
   自分で電気ショックで心臓マッサージができるんだから、心臓が止まった程度で死ぬわけないじゃない」

キョン「そういうことだ。お前は無意識に、生き残る可能性が高いものを選んでたんだろ」

ハルヒ「で、でも私は……」

キョン「しかも俺と同じく、死ぬまでを能力に入れてない。あくまで方法だけだ。
    お前は、なんだかんだで、まだ人を殺してないんだろ?」

ハルヒ「それは……」

キョン「お前は自分の能力で自分を見失っちゃいたが、一番大事なものを見失ってはいなかった、ってことだ。
    お前だって、この実験が間違ってることくらいわかってたんだろ」

ハルヒ「……」

キョン「でも、お前はこの実験をなんらかの理由でしなくちゃならなかった。そうなんだろ?
    だけどな、今ならまだ戻れる。

    ……こんなふざけた実験は、止めにしないか?」

ハルヒ「でも……でも……」

キョン「何がお前にこの実験をさせてるかは知らない。だけどな、そんなものからはな、
    ――俺が守ってやるから安心しろ」

ハルヒ「……キョン……っ!」

 ハルヒは目を見開いて俺を見つめると、すぐに顔を背けてしまった。

ハルヒ「バ、バカね……まったくの無能力者のアンタがこの超能力者の私を守ろうなんて、
    無理に決まってるじゃない。どうせすぐに死ぬわよ」

 なんだ、可愛くないやつめ。

キョン「そん時は、まあ俺を守ってくれ」

ハルヒ「何よそれ」

キョン「俺も出来る限り頑張るさ」

ハルヒ「頼りないわね」

 そこで、ハルヒが笑ったような気がした。

 今までの笑顔ではなく、純粋な笑顔で。


キョン「だからさ、俺はお前にお願いがあるんだ」





古泉「――というわけなんですよ」

絹旗「なるほど、超大変ですね……」

古泉「そういう貴方も中々苦労してるようじゃないですか」

絹旗「お互い裏の人間ってことで超苦労してるんですねー。うちの馬鹿も超浜面で超困ったものです」

古泉「んっふ……」

絹旗「超なんですか、超気持ち悪いです」

古泉「ああ、すみません。貴方がその『浜面』という人を語る顔がとても楽しそうだったもので」

絹旗「……!? ちょ、超そんなことありません」

古泉「その浜面という人に興味がわいてきましたよ」

絹旗「……浜面に手を出すのは超止めた方がいいですよ? 多分、誰かさんに超一筋ですから」

古泉「それは残念です」

絹旗「何が残念なのか超不安です……ってなんだか身体が超透けてますよ?」

古泉「おやおやこれは……彼が上手くやってくれたようですね。お別れの時間のようです」

絹旗「……そうですか。超さよならです」





黒子「やっぱり、貴方は犯人じゃないと潔白が証明されましたよ」

 そう言って黒子はみくるに話しかける。

黒子「恐らく逃げた殿方もきちんと受ければ身の潔白が証明されるのでしょうけど、
  『私の不手際』で、捕まえ損なってしまいましたからね」

 黒子は溜息を吐く。

黒子「やれやれ、あの殿方のせいで始末書ですわ」

 そこで黒子は気がついた。

 みくるからの返事がいつの間にかなくなっていることに。

黒子「あら、愚痴ばっかりになってしまって申し訳ありませんの。でもあの殿方には――」

 そこで黒子はみくるがいたはずの場所を見る。

 だけどそこには、

黒子「……朝比奈みくるさん?」

 既に誰もいなかった。





 ビルがまた一つ倒れる。

 長門と『一方通行』の戦いの余波である。

 お互いに、反射にも関わらず攻撃を続けて足止め、そして攻撃を操作しながらハッキングの超高等頭脳戦による戦闘だ。

一方「ン?」

 と、そこで長門の動きが止まった。
 思わず『一方通行』も足を止める。

長門「涼宮ハルヒの力の行使を確認。世界改変が行われる。
   ――もう戦う理由がなくなった」

一方「何だそりゃ。俺には関係ねェぞ」

長門「関係ある。涼宮ハルヒがいなくなるので、貴方も戦う理由がなくなる」

一方「『幻想創造』がいなくなるだとォ? オイオイ、そりゃどういうことだ」

 そこで長門の姿が薄く、消えていく。

一方「おい、決着は着いてねェぞ!」

 『一方通行』は手を伸ばす。そこに長門が答えた気がした。

 「私が貴方を倒しきれなかった、それは私の負け」、とだけ。





美琴「……消えちゃったわね」

上条「……消えちゃったな」

 さっきの行為を思い出して、赤くなったまま、座り込んでいる泥々の二人。

 キョンと、涼宮ハルヒは、まるで幻のように消えてしまっていた。

 先程までのやりとりを思い出す。

ハルヒ『――お願い?』

キョン『ああ、お願いだ。これは命令でもなんでもなく、俺のお願い』

ハルヒ『アンタが私にお願いなんて珍しいわね』

キョン『いや、お前が聞かなかっただけだろ』

ハルヒ『で、お願いって?』

キョン『お前は、この世界が楽しいか?』

ハルヒ『いきなり何よ。楽しいに決まってるじゃない。みんな超能力者、素晴らしい世界よ』

キョン『俺もな、この世界は楽しいと思う。
    ちょっと変なやつはいるが、良いやつもたくさんいるし、面白いやつもいる。

    だけどな、大事なこと忘れてないか?』

ハルヒ『何よ』

キョン『お前だって他に楽しい友達や大事な人がいただろ。俺にだっている。
    下世話で女好きだが面白い谷口から、国木田。鶴屋さんに妹に、数え切れないくらい大事なやつらがいる。

    そいつらを置いたまま、こっちの世界にいることなんて、俺には到底できない』

ハルヒ『それは……』

キョン『でもな、これはあくまで俺の意見だ。俺はあっちのやつらが恋しいが、
    こっちにもいいやつはたくさんいる。
    そこにいる上条さんや御坂のようにな。だから、お願いだ』

ハルヒ『……』

キョン『お前がこっちにいたいって言うなら、俺はそれをしないで欲しい。みんなで、帰りたいんだ』

ハルヒ『……無茶なお願いね』

キョン『百も承知だ。だけどな、お前に頼んで俺たちだけ戻ることは可能だろうけど、それじゃ俺は嫌なんだよ。
    ――俺はお前と一緒に帰りたいんだ』

ハルヒ『……! 勝手ね』

キョン『ああ、そんなことわかってる。それだからこそ、お願いだ』

ハルヒ『……本当にそう思ってるの?』

キョン『ああ、思ってる』

ハルヒ『じゃあ、証拠、見せてよ――』





 そうして、彼ら消えていった。

上条「不思議なもの見ちまったなあ」

美琴「そ、そうね……」

上条「ん? どうしたんだ、御坂」

美琴「……! な、なんで!」

上条「……?」

美琴「名前……」

上条「名前?」

美琴「さっきまで名前で呼んでたのに、なんで名字になってるのかな、って」

上条「あー、うん、あの時は思わず、な」

美琴「思わず、名前なんだ」

上条「ん? 本当にどうしたんだ?」

美琴「なんでもない♪」





 けたたましい目覚ましの騒ぎ声で俺は朝早く起こされた。
 時間は七時半。いつも通りである。

 そして、知ってる天井。

キョン「……あー、戻って来れたの、か?」

 起き上がって、廊下に。

妹「あれー、キョンくんもう起きたのー?」

 そこには見慣れた妹がいた。

妹「ってどうしたのキョンくーん」

 思わず俺は妹の頭を撫でてしまう。

キョン「あ、いやついな」

妹「変なキョンくーん……」

 ビバ、俺の日常。

古泉「おはようございます」

キョン「登校途中の爽やかな朝空の元、どんよりとした雨天のような気分になる顔がそこにあった」

古泉「ご挨拶ですね……」

キョン「なら顔を離せ」

古泉「おやおや、これはすみません」

 そう言って、顔を離す古泉。

古泉「結局、涼宮さんはあのことは夢だと処理したようです」

キョン「あれだけのことがあったってのにか。俺の努力も夢で終わらせられるのな」

古泉「貴方はさほど頑張ってはいないような気がしますがね」

キョン「うるせー」

古泉「ともかく、これで一件落着です」

キョン「やれやれ……そういえば、あいつはなんでレベル6になりたがってたんだ?」

古泉「それはですね……おっと、学校についたようなのでこの話はまた後で」

 そう言って古泉は行ってしまう。
 これはあれだな、アイツは教える気はないんだな。

 教室に着くと、俺の席の後ろでハルヒが上機嫌そうだが、どこか不機嫌そうな難しい顔をして、座っていた。

キョン「よお」

ハルヒ「……おはよ」

キョン「どうしたそんな複雑な顔をして」

ハルヒ「……面白い夢を見たのよ」

キョン「へぇ……超能力でも使えるようになったのか」

ハルヒ「なんでそれを!?」

キョン「適当に言ってみたまでだ」

ハルヒ「……色々と不本意な夢だったわ」

キョン「超能力が使えるのにか?」

ハルヒ「……アンタと変なツンツン頭に色々ぼろくそ言われたわ」

キョン「そりゃ、やりすぎたんだろ。で、お前はその超能力を使って何をしたかったんだ?」

ハルヒ「……!」

 古泉が教えてくれないなら、自分で調べてやろう。そんな感じでさり気なく聞いてみる。
 するとハルヒは顔を真っ赤にして、机に伏せてしまった。

ハルヒ「……本当に不本意だわ」

 放課後。俺は部室へと向かう。
 結局、ハルヒに聞いても、アイツのやりたかったことはわからなかった。

 ということで、朝比奈さんのお茶を飲みながら、部室に一足先に来ている長門に聞いてみることにした。

長門「有機生命体の感情概念は複雑。上手く言葉にできない」

 ……長門に聞いてもわからんのか。

みくる「それより私は気になることがあるんです」

 朝比奈さんは長門にもお茶を出して言う。

キョン「気になること、ですか」

みくる「はい。未来からの情報によるとですね、あの時、誰かが涼宮さんに接触した模様なんですよ。
    でも、その誰かが、わからないんです」

キョン「わからない?」

みくる「その人の存在は、時間軸をどう探しても、見つからなかったんです。まるで周波数の違うところで電波を探しているような感じで……」

キョン「長門も、わからないのか?」

長門「不明。何か巨大な情報が観測されたが、それも一瞬。当初は涼宮ハルヒの能力と判断されていた」

キョン「……なんだか不安になる案件だな」

古泉「まったくですね」

キョン「うおっ!?」

 気がつくと、古泉が俺の前に座ってやがった。
 コイツは気配でも消せるのか。

古泉「まだまだ解明すべき点が残っているようですね」

キョン「その辺はお前の機関が頑張ってくれ。俺は一般人だ」

 そう言って、俺はお茶を啜る。
 ともかく平和な日常が戻ってきた、これでいいじゃないか。

 そこで、その平和をぶち壊す音を聞いた。

 我らが団長、涼宮ハルヒのドアを思いっきり開ける音だ。

ハルヒ「みんなー! 異世界人を見つけたわよ!」

 やれやれ、また何か嫌な予感がする。





 とあるビルの中。

 薬液に浸かって逆さに浮いている、男性にも女性にも大人にも子供にも見える『人間』。
 学園都市統括理事長、アレイスター・クロウリーである。

アレイスター「余計なことをしてくれたようだな」

 アレイスターが喋ると、機器たちは反応して、音声をどこかに飛ばす。

「たまたま波長が合ったものでね。君のプランによかれと思って少しそそのかしてみたのだけども」

アレイスター「そんなものは必要ない。プラン通りに進めれば、それが一番だ」

「でも、彼女が完成すれば、君のプランなんて順を辿るまでもないだろう?」

アレイスター「その必要もない。私は今のままでも十分だ」

「余計なことだった、ってわけかな」

アレイスター「だからそう言ってるだろう」

「やれやれ、君は気がついてないんだね」

アレイスター「何がだ?」


「この世界は、本当の世界じゃない――作られた別の世界だってことに、ね」



652 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/11(金) 19:51:18.57 ID:FjZU3CTQ0
という終わりです。
時間軸とかはこの世界はパラレルワールドってことで、オチもパラレルワールドってことで

色々意味を何重にも含めて意味がわからないと思いますが、プロットなしではこれが限界でした
次からはちゃんとプロット作ってから書くようにします


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187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/10(木) 04:21:37.61 ID:BFlUgmdJO
陰茎「くっ…ぐはっ……所詮俺の『陰茎勃起』(バステッドマグナム)は…貴様の右手に打ち消される定めだったか……」

上条「ふぅ………欲に駆られたお前の幻想ッ……俺がぶち壊してやったぜ!」

陰茎「くそっ……だがな、俺が倒れても……奴が…」

上条「!?」

??「ふふ……そういうことだよ、上条当麻。君が彼を始末してくれたおかげでようやく僕の能力が有効化されたのさ」

上条「なん……だと……?」

賢者「ハハッ……そう、君はこれから僕の『賢者の思考』(ジーニアスモード)によって激しい後悔に苛まれることになるのさッッ」

上条「くそっ……俺は、なんて無駄な時間を…」

??「無駄なんかじゃないわ!幻想殺し!」

上条「!?お前は…」

保守「よくやったわね!あんたがこうして無駄な文章書いて時間を稼いでくれたおかげで、私がこうしてこの空間を『保守』(メンテナンス)できたんだもの!」

賢者「ふふふ……この期に及んで無駄な抵抗だねッ。面白そうだから遊んであげるよッ」

上条「よしっ!行くぜ保守ッ!まずは奴のイかれた幻想をぶち壊すッ」




ふぅ……こんな時間に何やってるんだろ……俺



221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/10(木) 13:29:59.39 ID:zIJs742WO
美琴「このスレ保守しちゃダメ…かな?」

黒子「」ゴンゴンゴン


248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/10(木) 14:26:53.69 ID:CFW4hkWKP
美琴「ほらほら、四つんばいにならないとその汚いのに電流流して無理矢理勃たせるわよ」ニヤニヤ

上条「……(くやしい!でも感じちゃう!!)」びくんびくん


253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/10(木) 14:38:55.03 ID:HQ9Gtmf2O
絹旗「危ないところでした、もう少しでSS読者にずりネタを超提供するところでしたね」

しえん


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コメント

  1. 名無し―ネームレス― | URL | -

    Re: キョン「学園都市?」 その2

    おもしろかった。トンクス

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