仮面ライダーW & 仮面ライダーOOO & 魔法少女まどか☆マギカ Fの契約/少女と魔法と仮面ライダー 第四話

2011年05月10日 19:27

まどか「仮面ライダー?」翔太郎「魔法少女?」映司「魔女?」

392 :◆WDUU7xtdEo [saga]:2011/03/15(火) 22:53:59.04 ID:H0NKPMMuo

***

「言い過ぎたかな……」

はぁ、と亜樹子が溜息をつく。マンションの階下から、マミの部屋を見上げる。
さっきまで真っ暗だった部屋が、今は明かりが燈っている。

「ま……あんくらいの年頃ってのはビミョーなお年頃だからな。
 ましてや、あんな……魔女だったか? そんなもんと戦ってたら尚更だ」

近くのベンチに腰掛けていた翔太郎が顔の上にソフト帽を乗せて、亜樹子に話しかける。

「翔太郎、落ち込んでいるのかい?」

沈んだ翔太郎の声に、フィリップが反応する。それに対して、翔太郎はしっしっ、と追い払うように手を振って反応を返す。

「やれやれ、君という奴は本当に――」
「私は、鹿目まどかを守れといったはずよ?」

そんな3人のやり取りを遮るように、ほむらの声が割って入る。

「なぜ、鹿目まどかと巴マミを合わせるの?」
「固い事は言いッこなしだ。マミちゃんは、まどかちゃんや君の学校の先輩だろ?
 友達みてえなもんじゃねえか」
「ふざけないで」

ほむらは、冷たい口調で斬捨てた。まるで、マミがまどかを殺すとでも言いたげに。
そのただならない様子に、翔太郎達も違和感を覚える。
確かに、あの魔女というのは危険だ。あんな結界とやらの中に巻き込まれて生き残れるのはライダーになった自分達や彼女達くらいのものだろう。

しかし、それだけではない。

ほむらの言葉は、そういった危険を指し示すものではない。
彼女の言葉は全て、鹿目まどかという一人の少女に向けられてしか放たれていない。

「君は、なぜそこまで彼女にこだわるんだい? あの鹿目まどかという少女に」
「…………」

答えは返ってこなかった。代わりに、意味がない、そうとしか言えないような瞳でほむらがフィリップを見つめ返す。

「答える気、ないのかい?」
「ないわ」

即答だった。

「じゃあ、これだけは答えてくれ」
「……何?」

翔太郎が、そこで初めて顔の上に乗せていた帽子を外してほむらを見た。
真っ直ぐに射抜くような瞳がほむらに向けられる。

「君は、俺達を信用できるか?」
「…………」

ほむらと翔太郎の視線が互いに交錯する。日は完全に落ち、電灯がその場にいる四人を照らし出す。

数分――いや、本当は数十秒だったのかもしれない。

交錯した視線がほむらの方から外され、彼女は何かを振り切るように髪をかきあげた。

「…………時と場合によるわ」
「じゃあ、今は信じてくれ。今の俺達の判断を」

静かに、しかし力強く、翔太郎が答える。
夜の中にあって、一際強い存在感をその時の翔太郎を放っていた。

それに、ほむらも気づく。

「俺は、依頼をやりきる。そして依頼人を絶対に傷つけねえ。それは、
 依頼されたまどかちゃんだけでなく君もだ、ほむらちゃん」

ソフト帽を被りなおし、ベンチから立ち上がる。

「俺達はあの子を魔女から守る。そして、みんなを守りきる。君の依頼は
 絶対に果たしてみせる。」
「翔太郎くん……」

ゆっくりと歩を進め、翔太郎はほむらの前に立る。

「だから……な?」

そして、スっと手を差し伸べた。

「……どういうつもり?」
「信頼の握手だ。君の依頼を守る、その約束のためのな」

ニヤリと、ハードボイルドを気取って格好つけて笑んでみせる。
いや、本人からすればこれがハードボイルドだったのだが、周りからはそうとしか
みえなかった。

「…………」

無表情に、ほむらは差し伸べられた手を見る。しかし、目の中にある色は
かすかな迷いと戸惑い。

「どうだい?」
「…………」

幾ばくかの逡巡、しかし、

「えいっ!」

亜樹子がほむらのてを取り、翔太郎と無理矢理握手をさせていた。

「な、何を……」
「迷うくらいだったらさ、信じてよ。こう見えても私達、ほむらちゃんより
 長生きしてるんだから」

亜樹子が、二人の手を握ったまま笑ってみせた。

「亜樹子……」
「まあ、翔太郎くんがかっこつけてても意味ないし、見ててやきもきするだけだから
 手っ取り早くやってみただけなんだけどねー」

次の瞬間、翔太郎がずっこけた。盛大に。

「おまっ……亜樹子!! てめっ、人が久しぶりに感心したってのに!!」
「ハーフボイルドの翔太郎くんがカッコつけても限度があるからねー。
 ねー? フィリップくん?」
「まあ、確かに翔太郎のキザな台詞というのは、いつもの事だしね」

四面楚歌とはこの事だった。

「お前等……! フィリップ! 亜樹子! そこに直れ! 俺が直々に
 てめえらに社会の厳しさというものを――!!」

握手した手を離し、翔太郎が亜希子達へ向かった。
既にスタンバイしていた亜樹子のハリセンが宙を舞う。

「ちょやぁ!!」
「だぁれが、見え透いたハリセンの軌道に乗せられ――――っ痛ぁっっ!!」

しかし、次の瞬間、隠されていた左手に握られたスリッパが翔太郎の頭を強かに張り倒した。

パコーンと、小気味言い音がマンション階下の公園に響き渡る。

「ッ痛ああ! ッ痛ぁぁ! おま、亜樹子!! なんでスリッパ!?」
「能ある鷹は爪を隠ーっす!! いつからアタシがハリセンだけしか持ってきてないと
 思ってましたかー?」

クケケケと、明らかに女性がやって良い笑い方から外れた笑い声をあげて亜樹子が翔太郎を高らかに嘲笑った。

「なるほど、二刀流とは……実に興味深い」
「てめぇ! フィリップ! 感心してるんじゃ――」
「隙ありぃ!!」

パコーン、スパコーン、と今度は二度、小気味良い音が鳴り響く。
ハリセンとスリッパの二刀流が翔太郎を張り倒した。

「亜樹子おおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「きゃー、翔太郎くんが怒ったー」

そして、始まる3人の追いかけっこ。それをほむらは呆気に取られて眺めていた。

だが、不意に我に返る。先ほど握られた手をマジマジと見ていた。
暖かく、大きな手。その温もりがまだ手に残っていた。

「…………信じる」

誰にも聞こえないように呟く。無表情な仮面がその時、一瞬だけはずれた。
年頃の少女の、穏やかな瞳がそこにあった。


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――無理よ! 独りであんなのに――!!


――それでも私……魔法少女だから


――さよなら……ほむらちゃん



――鹿目さぁぁぁぁぁんッッッッ!!



そして、夜は開ける。

「――――」

ゆっくりと世界は広がり、ほむらの視界には見慣れた天井が映し出される。

「…………また、夢」

一番古く、一番見たくない、一番悲しい、一番最初に見た夢。
起き上がり、ほむらは洗面所へと行く。

「…………イレギュラー」

鏡に映し出された自分を見て呟く。しかし、ほむらの目に映ってるのは
自分自身だけではない。

左翔太郎、照井亜樹子、フィリップ、火野映司、そしてアンク。

かつて一度もありえなかったイレギュラー達が、まるで狙い済ましたかのように
この見滝原に一堂に会した。

「っ…………」

しかし、それがほむらには怖い。

ほむらは、鹿目まどかを救うためだけに、何度も時間を繰り返した。
しかし、その度にイレギュラーがほむらの運命を狂わせ、鹿目まどかは破滅した。

ある時には、美樹さやかが鹿目まどかを殺した。

ある時には、巴マミが鹿目まどかを殺した。

ある時には、鹿目まどかが自分を守って命を落とした。

ある時には、佐倉杏子が裏切った。

ある時には、美樹さやかだけでなく巴マミも魔女になった。

ある時には、皆は皆、魔女になった。

ある時には、皆が皆、狂った。

ある時には、出会う前にまどかが死んだ。

ある時には、ワルプルギスを迎える前にまどかが死んだ。

ある時には、事故でまどかが死んだ。

ある時には、契約をする前に魔女に食われた。

ある時には、同士討ち。

ある時には、ある時には、ある時には、ある時には……――――エンドレス。

繰り返したループが何度目かを数えなくなって、既に久しい。
それほどに、この永遠の春をほむらはループしていた。

壊れてしまいそうになったことも何度もあった。死にたくなる事も何度もあった。
だけど、そのたびに、初めて契約した時の事を思い出す。

夢を見て思い出す。

そして、今回。魔法少女以外のイレギュラーがほむらの前に現れた。
自分達よりはるかに大人な存在の出現。仮面ライダーという存在の出現。

OOO【オーズ】、W【ダブル】、二人の戦士。

ほむらは、オーズをその目では見ていなかったが、しかしダブルは見た。


――凄まじかった。


一度見ただけで、ほむらには分かった。それは何度も時間を繰り返してきた事に
よる経験の賜物。
あの戦士の秘めるポテンシャルを、ほむらはその時理解せざるを得なかった。


その精神力、その体力、その技術力、全てが自分達魔法少女を凌駕していた。


「……そう、インキュベーターはそれすらも見抜いて魔法少女を」


呟く。結局どんな力を手に入れても、魔法少女はただの少女でしかない。
ヒーローなんかじゃない、ただの女の子。

いつまでも、少女が戦いの辛さに耐えられる訳がない。
その痛みと孤独は次第に己を苛み、その精神の未熟さがいずれ己の破滅をもたらす。

そして、遂には自分達自身であるソウルジェムは濁りきり、そして、遂には、

「魔女になる……」

手のひらに載せたソウルジェムを見つめる。このループに入ってから殆ど魔法を
使ってないお陰で、ソウルジェムの濁りはないに等しい。

「どうするの……暁美ほむら?」

自分に問う。これまでに現れた事のないイレギュラーをどうするのか。
依頼という形で、自分がまどかの側を離れなければならないときの保険に彼等を
利用したが、どうするのか。

「賭けるの? それとも、賭けないの……?」

ありえないイレギュラーに、ほむらは迷う。未知の展開を恐れる。破滅を恐れる。
だが、自分達以外の存在の介入はこれまでに一度もなかった。

だとすれば、

「迷う暇なんて……ない」

やるしかない。やってみるしかない。
まどかを救うために、やれる事は何でもやってきた。だから、今回も同じ。

昨日、左翔太郎に握られた手を見つめ、あの暖かさを思い出す。

不思議と自分の中から恐怖が引いていくのをほむらは感じた。
今までにないイレギュラーへの恐れは確かにあるはずなのに、それ以上に良く分からない安心感をあの手のぬくもりの中に感じた。

「馬鹿みたいね……」

そんな事を考えた自分を軽く自嘲し、ほむらは鏡の中の自分をもう一度見つめた。

「やりましょう、暁美ほむら……」

自分に向かって答える。強い意志を目に湛えて、宣言する。
そして、ほむらは素早く学校へ行く用意をした。今までどおりのルーチンワークを淡々とこなし、全てを終える。

支度を整え、また始まる今日へ意志を確かにする。彼女を守りきるという想いを胸に秘め、そして、ほむらはドアを開け放った。

「やあ、暁美ほむら」
「…………え?」

一瞬の忘我。玄関の外、ほむらの眼の前にフィリップがいた。

****

「マミさーん!」
「あら、おはよう。鹿目さん、美樹さん」

後輩の元気な挨拶にマミが笑顔を向けた。そこには裏表などなく、ただただ嬉しいという感情だけがそこにはあった。

一昨日、自分を心配して来てくれた二人にマミは全権の信頼を寄せていた。

ほむらや亜樹子からあんな事を言われてたのに、それでも自分の事を信用して家まで来てくれた彼女達が、マミにとってはかけがえのない存在になっていた。

「おお、やっぱりマミさんは美人だ……うらやましいっぜ!」
「もう。美樹さんてば、年上をからかわないの」

クスクスと笑いながら、3人で登校する。これまでずっと独りだった学校が一気に華やいだようだった。

「あら。美樹さん、鹿目さん」
「仁美ちゃん!」

道向かいからやってくる人影にまどかが反応する。ウェーブがかった髪のおとしやかな少女がこちらに微笑みかけていた。

「こちらのお方は?」
「マミさんだよ、仁美ちゃん。私達の先輩で、とっても優しいの」
「あら、まあ」

仁美が遠い目になった。

「鹿目さんってば、美樹さんだけでなく、年上のお姉様まで………。
 禁断の三角関係……まさか、この目で見るなんて思いもしませんでしたわ」
「仁美ちゃん!? なに言ってるの!?」

突然のセリフに驚くまどか。それに、はてなマークを浮かべて完全に勘違いをしている仁美。
そんな二人の様子を見て苦笑いをするさやか。

今まで夢見て、手に入らなかった普通の中学生としての風景が、今、マミの目の前に広がっていた。

「……マ、マミさん!?」
「え……」

不意にかけられたまどかの驚いた声。そこで初めてマミは、自分が泣いてる事に気づいた。

「大丈夫ですか、マミさん?」
「え、あ……うん、大丈夫。ちょっと、昨日見た映画の事思い出して……」

ハンカチで目元を拭い、マミは精一杯の笑顔をまどかに返した。

「ほほぉ……マミさんってば結構感動屋さんなのかぁ」
「感受性が豊かなのですねぇ。ああ、その感受性……なんて素敵な女性同士の」
「仁美、それ以上変なこと言ったら駄目だからね?」

他愛のない会話、それが今自分の側にある。
ただ、それだけでマミは元気付けられた。

「もう、だから年上をからかわないの。あと、早くしないと学校に遅れちゃうわよ?
 こうしてるのも良いけど、遅刻は嫌でしょ?」

そして、先輩らしくマミは振舞う。

「おお、そう言えば! すっかり忘れてたぜぇ!」
「こうしてはいられません! さあ、皆さん参りましょう!」

「マミさん、いきましょ?」
「ええ……うん!」

差し出されるまどかの手。マミはそれを取った。
そして、3人の後輩に囲まれてマミは学校へと歩き始める。


今、マミは幸せだった。


『…………』

そして、それをキュゥべえは静かに眺める。
何も言わず、マミを――いや、鹿目まどかを、観察していた。

***

「それで……何の用?」

見滝原の生徒が学校へ向かう通学路の公園、通学路から少し外れたベンチにほむらとフィリップはいた。

「端的に聞こう。いったい君は何を、何処まで知っているんだい?」
「…………」

その意味の真意を図りかねて、ほむらは黙り込む。

「どういう意味かしら?」
「魔女、使い魔、魔法少女。巴マミから聞いた話は確かに興味深かった。
 しかし、何かが足りない」

ベンチから立ち上がりくるくると回りながらフィリップの話は続く。

「魔女。古いヨーロッパにおける俗信。悪霊と交わり魔力を得るという女性を指す。
 しかしながらそれは迷信であり、多くの人々が魔女の疑いをかけられたという
 魔女裁判の歴史もある」

そこで、一度、フィリップがほむらを見た。

「だがしかし、君達の言う魔女は、そこから大きく逸脱する」
「…………」

答えないほむらを無視してフィリップの話はまた再開する。

「魔女を倒すために契約するというキュゥべえの存在。そして、願いを叶える事で
 生み出されるソウルジェムという存在。だが……」
「だが?」

「そのように魔法少女が生まれるとして――魔女はいったい何から生まれた?」

世界が一瞬凍りつく。ほむらの体が大きく震えた。

「やはり、君は何か知っているのか?」
「…………」

「僕も地球の本棚で検索を行ったが、君達の言うところの『魔女』と『魔法少女』は
 該当項目が多く、絞りきるのが実に難しい。
 故に、君から情報を引き出せれば何かしらの目処がつくと思ったのだが」

そういって、フィリップはポケットからあるものを取り出す。
それは黒い宝石、グリーフシードだった。

「ッ!? なんで、あなたがグリーフシードを……!?」
「巴マミ、彼女が回収をしなかったものを僕が預かった。検索のために使えると
 思ったが、生憎、グリーフシード単体では魔女を絞りきるのには足りなかった」

実に残念、そういった顔でフィリップはグリーフシードを自分の裾ポケットにまた直してしまう。

「聞かせてくれ、暁美ほむら。巴マミが持つソウルジェムと、グリーフシード。
 全体の形状こそ違えど、なぜ共通点が多く見られる?」
「…………!!」

それに、今度こそほむらは大きな動揺を示した。
たった一晩かそこらで、かつてのループでほむら以外の誰も到達できなかった真実に、眼前の彼は近づいてしまったのだ。

ほむらの中で、全ての真相を吐露してしまいたくなる感情が湧きあがった。

誰も信じようとしなかった事実を、今、目の前にいる彼は辿り着こうとしている。
このループにおける賭けに、今度こそ勝てるかもしれない。

そんな感情に押され、口を開きそうになったその時だった。

『やあ、暁美ほむら』
「――ッ!?」

そのおぞましい声に、ほむらの敵意が臨界点に達する。
絶対零度の瞳が、その場所に入る生命体を視認する。

「キュゥべえ……!」
『おやおや、ボクは相当に嫌われているみたいだね。そこまでの敵意を向けられる真似、
 ボクはした覚えがないんだけどな』

キュゥべえ自体は何とも感じていないようだったが、その態度にほむらの怒りの色は更に増す。

『おっと、僕を傷つけるのはやめてほしいな。近くにマミやまどか達もいるんだし
 互いに争うのも良い事だとは思えないだろう?』
「くっ……!」

明らかに不穏な空気の流れるほむらとキュゥべえ。
しかし、そんな一人と一匹の会話に、フィリップは構いもせずに割り込んだ。

「いきなりで話が見えないんだが、話をして良いかな?」

「っ!?」
『…………』

フィリップには、キュゥべえが見えていた。

『まさか、君も、ボクが見えるのかい……?』
「ん? ああ。見えるがそれがどうかしたのかい?」
『これは驚いた……まさか、連続で僕が見える人間に出会えるとは』

魔法少女の素質のあるものにしかみえない筈のキュゥべえが見えることに、ほむらもその驚きを隠せず表情に出していた。

「まあ、良い。キュゥべえ、君に聞きたい」
『え、なんだい?』

キュゥべえは首をかしげて、フィリップに答えた。

「っ……」

それを、ほむらは止めようとして、止めた。できなかった。

コイツの話には真実はないと言いたかった。嘘はつかないが、真実を答える気のないモノだと大声で言いたかった。

しかし、言えない。できない。

自分がループしているという事実を、契約した張本人であるこの生き物に知られるのはリスクが大きすぎた。

「グリーフシードとはなんだ? なぜ、ソウルジェムと似ている?」
『君たちの世界でいうところの天敵の関係、それが魔女と魔法少女さ。魔女を倒すのは
 魔法少女の役目。だから、その性質が似ていてもおかしくはない』
「…………」

惑う事無く出されたその答えに、フィリップが黙り込む。
何かを考えている様子だった。

『いきなり質問されたから答えてみたけど、これでよかったかい?』
「……ああ、ありがとう。結構だ」

しかし、そこで何かしらの合点がいったのか、素直にフィリップは答えた。

『そうか。それなら良かったよ』

そういって、キュゥべえも尻尾を振った。

「……それで、何の用かしら」

その空気をほむらが切り裂く。敵意と害意を持ってほむらがキュゥべえを睨みつける。まるで、家族の仇のように。

『用は一つだよ、暁美ほむら。僕としても、理由が分からず君に追い回されるのは
 あまりよろしくないからね。誤解を解きにきたのさ』

ほむらの瞳が、これ以上なく敵意を発した。
さすがに、その様子にフィリップも感じることがあったのか眉を寄せてそのただならぬ様子に身を構えた。

「鹿目まどかを契約させようとするお前の何処に誤解があるというの……」
『別に、彼女達に無理矢理魔法少女になれって言ってるわけじゃないんだけどなぁ。
 素質があるからなってほしいな、ってお願いしてるだけだよ?』
「ッ……!!」

ギリ、と歯を噛み締める音がした。全身から上る怒りが目に見えるようだった。

「言っておくわ、キュゥべえ……私は鹿目まどかをお前の思い通りにはさせない。
 魔法少女なんかには、絶対させない」
『誤解を解きたかったんだけど、そうまで言われたら無理みたいだね。
 仕方ないけど、ここは退散するしかないようだ』

「ええ、消えなさい。今すぐ、さもないと……」
「分かったよ、暁美ほむら。でも、ボクはそんな君に興味があるんだけどね……」

そして、キュゥべえはくるりと振り返り背を向けて歩き出すと、そのままフィリップとほむらの前から姿を消した。

公園の中に沈黙が流れる。既に、この近くを歩いている生徒の姿も声も何もなかった。

遠くで学校のチャイムが鳴る。

「……行くわ。これ以上、遅刻できないから」

そうして、ほむらもカバンを持つと歩き出した。

「待ちたまえ」
「……」

後ろから声をかけられ、首だけ、ほむらはそちらへ向けた。

「鹿目まどかを守れ、という依頼だが、それはつまり、あのキュゥべえと契約を
 させないようにしろということで良いのかな?」
「…………」

沈黙を保ったまま、ほむらは髪をかきあげた。

「ええ、そうよ」
「なるほど、大体分かった。それなら納得できる」

初めて、フィリップがほむらに微笑んだ。

「……聞かないの?」
「必要がない。先程のやりとりである程度の予測が立った」
「どういうこと?」

顎に手をやりながら、フィリップが魔的な笑みを浮かべる。
何かを企むような、しかしそれでいて無邪気な笑み。

「あのキュゥべえという生き物は、ボクの信頼を置くに値しない。
 僕の知りたかった真実を誤魔化すようでは、尚更だ」
「……!?」

気づいていた。眼の前の彼は、キュゥべえの言葉を。

「あなた、一体……」
「もっとも、虎穴に入らんずば虎児を得ずという。キュゥべえとの
 接触には細心の注意を払うべきだろう」

既にこちらに体を向けていたほむらの事を構う事無くフィリップは持論を展開する。

「そして、彼の真意を探るために鹿目まどかと巴マミを一緒に行動させる。
 君の言葉からすれば、君以外の魔法少女は彼の言葉に疑問を
 抱いてないようだからね」
「…………」

「君にとっては不満だろうが、現在の最善手はこれだ。
 僕としては君に全てを話してもらうのが最善だが、君が話さないのならば
 仕方ないし、君もあの生き物がいる場所では話せないんだろう?」
「っ!!」

フィリップの魔性を秘めた瞳がほむらを射抜く。あらゆる知識を総動員し組み立てた彼の推測にほむらは何も言えなくなる。

「ふむ。大方の予測は正しいようだ。じゃあ、そういう事で。ホテルで
 寝ている翔太郎達を起こしに行かねば」
「あ……ま、待って!」

先程とは逆に、背を向け歩き出したフィリップにほむらが声をかけた。
振り返り、フィリップとほむらが正対する。

「……これから数週間後、『ワルプルギスの夜』がこの街に来る」
「『ワルプルギスの夜』? それはなんだい?」

「魔女……巴マミや、私だけでは絶対に勝てない魔女よ。
 あまりにも強大で、あまりにも巨大な、弩級の魔女……それがやって来る」
「巨大……コアのようなものか」

なんとか言えるのはコレだけだった。
現在の時間軸で知りえる情報の中でも、キュゥべえに自分の存在を知られることなく伝えられる情報の中でも最も危険の少ない情報。

「そう……だから」
「一緒に倒してくれ、と言うんだろう?」
「……え?」

先に言われた言葉に、ほむらの目が点になった。

「ん? 違ったかい?」
「いえ……そう、だけど」

これまで余り人間味を感じなかった彼の顔に、初めて人らしいものが見えた。
それに戸惑い、ほむらも自分が何を言えば良いか忘れてしまった。

「そうか。なら、それで結構だ。あとは、翔太郎達と話をするさ」
「い……良いの?」

「特に断る理由がない。現在、君は僕達の依頼人であるし、巴マミも依頼人から
 様子を見るように言われている。
 経費の問題はあるが、それはアキちゃんがやってくれるし、何も問題はない」

一息でそれだけ言ってしまうと、今度こそフィリップは歩き出した。
もはや、これ以上はなす必要はないと。

「では、そういう事で」
「…………」

恐らく、彼にはそういった心遣いなんてものはないのだろう。ただ、当然と判断し導き出された結果に基づいて行動しただけなのだろう。

しかし、それでも、

「――――」

ほむらは、誰にも聞こえないように小さく呟いた。
背を向けて去るフィリップに向かって、その言葉を投げかけた。

もしかすると、今度こそありえるかもしれない正しい未来に向けて。
そのカギとなるかもしれない彼に向かって。

ただ一言、

「――――ありがとう」

と。


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