スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

魔法少女まどか☆マギカ AGITΩ ~最初で最後の約束~ 第4話「私はそう思わない」

2011年04月01日 19:24

まどか「仮面ライダーアギト?」翔一「魔法少女まどか☆マギカ?」

306 :◆vbVOcxusrc [saga]:2011/03/12(土) 05:16:51.62 ID:/LpcHdMw0 

 ショッピングモールの地下。
 薄暗い闇が支配するこのフロアに、今現在5人の人間と1匹の正体不明の生き物がいた。

まどか「わぁ……」

さやか「凄い……。みるみるうちに傷が塞がってる……」

 鹿目まどかと美樹さやかは目の前で起きている現象に驚きの声を上げる。
 今、2人の前では魔法少女・巴マミが治癒魔法でキュゥべえの回復を行っている真っ最中だ。
 さやかの言葉どおり、治癒魔法を受けているキュゥべえの身体は徐々に傷が消えていき、血色も良くなってきている。
 ――そんな光景を横目に、3人と1匹から少し離れた場所に立っているもう1人の魔法少女・暁美ほむらが口を開く。

ほむら「いずれ後悔するわよ、そいつを助けてしまったこと……」

マミ「…………」

さやか「転校生……!」

 その言葉に対して、マミは無視を決め込み、さやかは敵意の籠った眼差しをほむらに向けた。

翔一「あ、暁美さん、駄目だよ、そんな自分から敵を作るようなこと言っちゃ……」

ほむら「事実を正直に言ったまでよ」

翔一「あ、暁美さ~ん……」

 そして、5人の中で唯一の男子である沢野翔一がほむらを咎めようとするが、ほむらは全く聞き耳を持たなかった。
 そんな会話が繰り広げられているうちに、キュゥべえは完全に回復したようだった。

キュゥべえ「ありがとうマミ、助かったよ!」

 ぱっちりと目を見開き、起き上がったキュゥべえが開口一番――といっても、キュゥべえは会話の際も口を開かないため、この言葉は正しいのか微妙なところだが――マミへお礼を言う。

さやか「しゃ、喋ったあああああ!?」

まどか「さ、さやかちゃん、落ち着いて……」

 そんなキュゥべえが、いきなり人間の言葉を発したので、何も知らなかったさやかは、驚きのあまり2、3歩ほど後ろへ後ずさってしまう。
 対して、キュゥべえの助けを求める声を聞いてここまで来ていたまどかの方は、特に何の反応も示さなかった。


 ――そして、この男も内心驚いていた。

翔一(や、やっぱり喋れたんだ……)


マミ「お礼ならこの子たちに言って。私は魔女を追っていたところを偶然通りかかっただけだから」

 マミにそう言われたキュゥべえは、すぐさままどかとさやかの2人の方を見やる。

キュゥべえ「言われてみれば、そうだね。ありがとう、鹿目まどか、あと美樹さやか」

まどか「やっぱり、あなたなのね。私を呼んだのは?」

さやか「ちょ、ちょっと待って……! まどか、あんたコイツと知り合いなの!?」

まどか「ううん。初対面だよ。ただ、さっきこの子の『助けて』って声が突然頭の中に聞こえてきて……」

キュゥべえ「そう。僕がまどかに助けを求めていたんだ。でも、まさか本当に来てくれるなんて……。やっぱり、まどかは僕の見込んだとおりだ!」

さやか「あ、あのさ……。勝手に話進めちゃってるところ悪いんだけど……アンタ、誰? 何で私たちの名前を知ってるの?」

キュゥべえ「おっと、失礼。僕の名前はキュゥべえ」

まどか「キュゥ……べえ?」

さやか「見かけによらず、何か冴えない名前ね……」

キュゥべえ「まぁ、名前のことは今は置いておいて……。今日は君たちにお願いがあって来たんだ」

さやか「へっ?」

まどか「お願い?」


ほむら「――!?」

翔一「? どうしました、暁美さん?」


キュゥべえ「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ!」

 そう言いながら、キュゥべえはまどかたちに愛くるしい笑顔を浮かべた。



OP
ttp://www.youtube.com/watch?v=yEXxEny2BvY

←ブログ発展のため1クリックお願いします
ほむら「駄目……!」

翔一「あ、暁美さん!?」

 突然、ほむらがまどかたちの方へと歩み寄ろうとする。
 が、そんなほむらの行く手をマミが阻む。

ほむら「……どきなさい」

マミ「嫌よ」

ほむら「あなたは……!」

マミ「彼女たちはキュゥべえに選ばれたのよ? 魔法少女になるか、ならないかを決めるのは彼女たち自身。あなたや私じゃないわ」

ほむら「……!」

翔一「ま、まぁまぁ……。暁美さんも、巴さんも、押さえて押さえて……」

マミ「……ところで、沢野くん」

翔一「はい?」

マミ「よく考えたら、何故あなたがここにいるのかしら?」

翔一「え? あぁ、それは……」

まどか「あ、あの~……」

翔一「ん?」

マミ「あら?」

 不意に、今しがたキュゥべえと話をしていたはずのまどかに声をかけられ、マミは振り返る。
 マミが目を向けると、そこにはまどかだけでなく、さやかの姿もあった。

さやか「い、いや~、こんな時に言うのもタイミング悪いような気がするんですけどね……」

まどか「さ、さっきは助けてくれてありがとうございました!」

 まどかは、お礼を言うと、さやかと2人でマミに対して頭を下げた。

マミ「あぁ、いいのよ、気にしないで。私は魔法少女として最低限の勤めを果たしただけだから……」

まどか「魔法……少女?」

マミ「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私は巴マミ。あなたたちと同じ見滝原中学校の3年生よ」

まどか「か、鹿目まどか、2年生です……!」

さやか「同じく、2年の美樹さやかでっす! まどかとは同じクラスで親友やってま~す!」

マミ「鹿目さんに美樹さんね。よろしく」

さやか「ハイ、よろしくお願いいたします!」

まどか「…………」

翔一「ん?」

まどか「あ、あの……あなたは?」

翔一「あ。俺は沢野翔一。巴さんのクラスメイトで、ここには……まぁ、いろいろあっているんだ。よろしく」

まどか「沢野……」

さやか「翔一……?」

マミ「あら?」

翔一「ど、どうしたの、2人とも? 俺の名前に何か問題でもあった?」

 翔一の名を聞いた瞬間、突然黙りこむまどかとさやか。
 しかし、次の瞬間――


さやか「あぁー! うちのクラスの転校生が、転校初日早々いきなり告った3年生の先輩ってあなたのことかー!」


翔一「……はい?」

マミ「あぁ……」

ほむら「――――」

 ガンっ!

ほむら「…………」

 突然のさやかの爆弾発言に、翔一は目を点にし、マミは「またか」というような顔をする。
 ほむらにいたっては――表面上では冷静を装っていたが――後頭部を寄りかかっていた壁に強打してしまう有様だ。

翔一「あ~……。それ、完全に誤解だから」

 昼休みの出来事を思い出した翔一は、さやかたちの誤解を解くために説明をはじめた。

翔一「確かに俺は暁美さんから直々に呼び出されたけど、美樹さんたちが想像しているようなことは断じてなかったから……」

さやか「えっ? そうなんですか?」

まどか「な、な~んだ、そうだったんだ~……」

ほむら「……鹿目まどか、今のその発言はどういうことかしら?」

まどか「ち、違うの! ほむらちゃんって見かけによらず惚れっぽい子だったんだな~とか全然思ってなかったから……!」

ほむら「……思ってたのね?」

まどか「ご、ごめん……」

キュゥべえ「……何か、さっきから僕の存在を忘れられているような気がするけど、ちょっといいかな?」

 いつの間にかまどかの足元へとやって来ていたキュゥべえが、まどかたちを見上げながら、声をかける。
 その声に、その場にいた全員の視線がキュゥべえに集中した。

キュゥべえ「まどか、その子にそんな無用心に近づいちゃって大丈夫なのかい? 彼女は元々は僕を狙っていたとはいえ、君にも襲いかかろとしていたんだよ?」

まどか「あっ……!」

さやか「そういえば……!」

 キュゥべえの言葉に、先ほどの出来事を思い出したまどかは自然とほむらと距離を取り、そうしてできたまどかとほむらの間のスペースにさやかが割って入った。

ほむら「…………」

マミ「そういえば、聞いていなかったわね。何故あなたがキュゥべえを狙ったのか……!」

 そう言いながらほむらの側面に立ったマミの手には先ほど同様、マスケット銃が握られていた。

まどか「ひっ――!?」

 先ほどマミがほむらに銃を向けた光景を思い出したのか、それを見たまどかはビクリと一瞬身体を震わせ、さやかの影に隠れてしまう。

ほむら「――鹿目まどかをソイツと契約させるわけにはいかない」

 そう言いながら、キュゥべえに鋭い視線を向けるほむら。
 ちなみに、まどかがさやかの影に隠れてしまったため、今現在キュゥべえはマミの足元に移動している。

マミ「だから鹿目さんと接触する前にキュゥべえを襲った……と?」

ほむら「それ以外に理由がある?」

マミ「…………」

 再び一触即発の空気があたりに漂う。
 しかし――

翔一「……あの~、いきなり横から割り込んですいませんけど、俺からひとつ質問していいですか?」

マミ「? 沢野くん?」

ほむら「沢野翔一――」

 マミとほむらの間に、右手を上げながら翔一がひょっこりと割って入った。

マミ「沢野くん……あなた、状況というものを少し理解して……」

翔一「いや~、すいません巴さん。多分すぐに終わる質問なんで……」

 そう言いながら、翔一はその場にしゃがみ込んで、マミの足元にいるキュゥべえに話しかけた。

翔一「えっと、君は……キュゥべえ……だっけ? さっきから君や暁美さんたちが口にしている『契約』って何だい?」

キュゥべえ「!? 君は……」

翔一「? どうしたの?」

キュゥべえ「君は……僕の姿と声がわかるのかい?」

翔一「あぁ、わかるよ。そういえば、君って先日もうちの学校に来てたよね? 廊下で走っているところ見かけたよ」

キュゥべえ「――――!?」

 一見ほむら以上の無表情に見えるキュゥべえの顔に、一瞬だけ驚きのような表情が浮かんだ――ように見えた。

キュゥべえ(僕を視覚できて、声まで聞こえている――まさか……)

マミ「あぁ、キュゥべえ、驚かせちゃってごめんなさい。どうやら彼、一種の特異体質みたいでね……魔法少女やその候補者でもないのに、あなたの姿が見えていたのよ」

キュゥべえ「特異体質?」

マミ「えぇ。でも、まさか声まで聞こえるなんて私も思わなかったけど……」

キュゥべえ「…………」

キュゥべえ「……そうか、特異体質か。さすがにそれは僕も驚いたよ。僕の姿や声は、マミが言ったとおり、本来は魔法少女とその候補者である女の子にしかわからないからね」

さやか「そ、そうなの?」

キュゥべえ「うん。だから僕は常日頃魔法少女の候補者を探しているんだ」

ほむら「……よく言うわ」

さやか「ねぇ、今沢野さんも聞いてたけど、その『契約』っていのは何? あと、魔法少女のこととかも詳しく教えてほしいんだけど……」

キュゥべえ「そうだね。君たちには知る権利がある。1から説明するよ」

翔一「あ。だったら、一度場所を変えません? ここって本来なら立ち入り禁止の場所なんで、いつまでもいるのはマズいような……」

マミ「そうね……。それなら、これから私の家に行きましょうか?」

まどか「ま、マミさんの家……ですか?」

マミ「えぇ。こう見えても私1人暮らしだから、他の人に話を聞かれることもないし……。いかがかしら?」

さやか「おぉ! 是非行かせていただきますとも! まどかももちろん行くよね!?」

まどか「え? ……う、うん。さやかちゃんが行くなら……」

さやか「よし、決まり!」

翔一「えっと……。巴さん、俺も行っても……?」

マミ「構わないわよ。今日説明しきれなかった魔法少女のこともついでに教えてあげる」

翔一「わかりました。それじゃあ、お邪魔させていただきます」

マミ「…………」

ほむら「…………」

マミ「……他の子たちはみんな来るそうだけど、あなたはどうする?」

ほむら「私が用があるのはあなたじゃない」

マミ「飲み込みが悪いのね。今回はお咎め無しにしてあげるって言ってるの」

ほむら「…………」

マミ「あなたがキュゥべえを狙ったのにも何か他に訳がありそうだし、同じ魔法少女なんだから、少しぐらいはお互いのことを知ってもいいんじゃないかしら?」

ほむら「私は他人と馴れ合うつもりはないわ」

 そう言うと、ほむらはその場から立ち去ろうとする。
 が、その前に翔一が割って入った。

翔一「まぁまぁ、暁美さん。いいじゃない、ちょっとばかり家にお邪魔するくらい……。巴さんだって今回のことは許してくれたんだから……」

ほむら「どきなさい、沢野翔一。さもなければ、力づくでも押し通るわよ?」

翔一「あ~……。でも、ほら、こうして5人いると何か部活動みたいじゃない? ここにいるのってみんなキュゥべえが見える人たちだから、さしずめ『キュゥべえ愛好会』みたいな……」

ほむら「…………」

翔一「あ! そうか、暁美さんはキュゥべえのこと嫌いなんだっけ!? ゴメンゴメン……。『魔法少女部』とかの方がよかった? あ……それだと俺が入れないか……」

ほむら「…………」

翔一「あ、あ~……じゃあこうしよう。暁美さんは鹿目さんに『契約』っていうのをしてほしくないんでしょ? それなら、鹿目さんがその契約をしないように見張るという名目で一緒に行けば……」

まどか「ええっ!? な、何でそこで私の名前が出てくるんですか、沢野さん!?」

翔一「いや~、こうでも言わないと来てくれないかもしれないじゃない? 俺、出来ることならみんなに仲良くしてほしいし……」

ほむら「……わかったわ」

まどか「だからって、私を勝手に話の……って、え!?」

翔一「ほ、本当かい暁美さん!?」

ほむら「あくまでも鹿目まどかがアイツと契約することがないように監視することが目的よ。そこを勘違いしないでほしいわ」

さやか「……マミさん」

マミ「何、美樹さん?」

さやか「あの2人――沢野さんと転校生って、意外と仲良いんじゃないでしょうか?」

マミ「そ、そうかしら……?」

キュゥべえ「…………」



ほむら「……沢野翔一」

翔一「? 何だい、暁美さん?」

 マミに連れられ、一同が彼女の家へと案内されている道中、ほむらが不意に翔一に声をかけた。

ほむら「本来なら最初に言うべきだと思っていたけれど……私以外の者には可能な限りあなたがアギトであることは隠しておきなさい」

翔一「え? まぁ、今までも暁美さん以外の人には黙ってたけど……。巴さんにはそろそろ俺の方から明かしてもいいんじゃ……?」

ほむら「駄目」

翔一「えぇ~……?」

ほむら「……この世界にとっても、私たちにとっても、アギトは必要な力だから……」

翔一「? 今何か言った?」

ほむら「別に……」



 とある町外れのマンションの一室、そこが巴マミの家だった。

マミ「ここよ。さっきも言ったけど、一人暮らしだから遠慮しないで」

翔一「お邪魔します」

ほむら「…………」

さやか「おぉ、これはこれは……」

まどか「素敵なお部屋……」

マミ「お客さんなんてまず来ないし、おまけに今回は急なことだからろくなお持て成しも出来ないけど……紅茶でいいかしら?」

まどか「あ、はい……」

ほむら「…………」

さやか「……アンタも、そんな所いつまでもつっ立ってないで、こっちに来て座ったら?」

ほむら「私がここにいるのは、あくまでも鹿目まどかの監視。あなたたちと馴れ合うためじゃない」

さやか「あ~そうですか~」

翔一「まぁまぁ、美樹さん。元はといえば、俺が無理やり連れてきたようなものだし……」

まどか「ほ、ほむらちゃん、こっちに来なよ? さすがに私もそんな所から見られてばかりいるっていうのも恥ずかしいし」

ほむら「……近くならいくらでも見ていいと?」

まどか「い、いや、そういうわけじゃなくてね……」

翔一「……今の暁美さんなりの冗談かな?」

さやか「いや、素で言った可能性もなくはないっすよ?」

 その後、マミから出された紅茶とケーキ――一応、ほむらの分も用意されていたが、やはり彼女は手を付けなかった――を頂きながら、魔法少女という存在についての説明を受けることになったまどかとさやか。
 翔一もほんの数刻前に簡単な説明はされていたが、本格的な説明を聞くのは初めてなので、まどかたちと一緒にマミから語られるこの世界に隠されたもうひとつの素顔について耳を傾けることにした。

マミ「これがソウルジェム。キュゥべえに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石よ。魔法少女の証であると同時に、魔法を使うために必要な魔力の源でもあるの」

さやか「うわぁ……。綺麗ですね~」

まどか「あ、あの……。今もまた出てきましたけど、その『契約』というのは……」

キュゥべえ「それは僕から説明するよ」

 声のした方にまどかたちが目を向けると、いつの間にか床にいたはずのキュゥべえがテーブルの上に座っていた。
 ――ちなみにこの時、翔一がキュゥべえに対して「食事に使うテーブルに腰掛けるなんて行儀が悪いよ」と発言したが、見事にスルーされた。

キュゥべえ「僕は君たちの願い事を何でもひとつ叶えてあげられるんだ」

まどか「願い事?」

キュゥべえ「うん。何だって構わない。どんな願いだって叶えてあげられるよ」

さやか「何でも!? 億万長者とか不老不死とか満漢全席とかでも!?」

キュゥべえ「もちろん」

翔一「へぇ~……。凄いんだね」

ほむら「…………」

キュゥべえ「その代わり、その代償として出来上がるのがソウルジェムなんだ。これを持つ者は、魔女と戦う使命を課される」

まどか「魔女?」

さやか「それって魔法少女とは違うの?」

キュゥべえ「似ているようで、全然違うよ。魔法少女は『願いから生まれるもの』だけど、魔女は『呪いから生まれた存在』だからね」

さやか「の、呪い……?」

翔一「――ん? ちょっと待って。それって……具体的にはどう違うの?」

キュゥべえ「? どういう意味だい?」

翔一「いや……。あくまでこれは俺の個人的な考えの延長に過ぎないんだけど……。さっき君が言ったことが本当なら、魔法少女の契約で叶えられる願いっていうのは、基本的に何でもありなんだよね?」

キュゥべえ「そうだよ。それがどうかしたの?」

翔一「じゃあ、本当に例えばの話だけど――契約する女の子が、世界の滅亡とかを本気で願っちゃってるような子で、その願いで契約して魔法少女になってしまったらどうなるの?」

まどか「!?」

さやか「!?」

マミ「!?」

ほむら「……!」

翔一「もし、それで本当にその願いが叶っちゃうなら、俺からしてみたら『願い』も『呪い』も対して変わらない気がするな。下手をすれば、女の子の願いっていう欲ひとつで関係ない人たちが迷惑被るハメになっちゃうんだから……」

キュゥべえ「…………」

まどか「い、言われてみたら確かに……」

さやか「本当に何でもありなら、『嫌いな奴を殺してほしい』とか……そういう願い事もありってことなんだよね……?」

まどか「さ、さやかちゃん、何か私……今の沢野さんが言ったことを聞いたら、急に怖くなってきちゃったよ……」

さやか「あ、あたしも……」

翔一「あ……ゴメン。別に2人を怖がらせようと思って言ったわけじゃなくて……」

キュゥべえ「……いや、可能か不可能かのどちらかで言うなら、そう言った願いも一応は可能だと思うよ」

翔一「えっ!?」

キュゥべえ「ただし、あくまでも『一応』だよ。願いは叶うだろうけど、何らかの形でその内容に修正が加えられる可能性は十分ありえる」

翔一「というと?」

キュゥべえ「実際のところ、僕もそこまでスケールの大きな願いは今まで叶えたことがないから正直わからないんだよ。僕にだって契約する相手を選ぶ権利はあるしね」

翔一「あ、あぁ~……。そ、そうだよね。そりゃあ君だって、無関係な人を巻き込みたくはないもんね」

キュゥべえ「そういうこと。第一、そんな誰から見ても邪な願いを持った子と契約するなんて、僕からも願い下げだよ」

ほむら「どうだか……」

 そう呟くと、今までその場を全く動かなかったほむらがまどかたちの方へと歩み寄った。

まどか「ほ、ほむらちゃん?」

ほむら「今のコイツと沢野翔一のやりとりで大体わかったでしょ? コイツは、ほんの一時期のみの幸福と引き換えに、全てを奪い去る――言ってしまえば、ドラッグの密売人のようなものだって」

キュゥべえ「そういう言い方はないんじゃないかな、暁美ほむら? 君だって魔法少女である以上、魔女と戦う使命を負ってまで叶えたい願いがその時はあったんだろう?」

翔一「確かに、言われてみたら……。一体どんな願いを叶えて暁美さんは魔法少女になったんです?」

ほむら「…………」

翔一「……あれ?」

 ほむらは何も答えず、ただその場で黙りこくってしまった。

キュゥべえ「……まぁ、いいや。マミ、悪いけどここから先は君から説明してもらえるかい? 僕がこれ以上話すと説明もろくに出来そうにないしね」

マミ「えっ? ……あ。そ、そうね。じゃ、じゃあ、魔女について私が知っている限り説明するわね?」

さやか「は、はい。お願いします」

マミ「魔女というのは、簡単に言ってしまえば魔法少女とは対局に位置する存在よ。魔法少女が希望を振りまく存在だとすれば、魔女は絶望を撒き散らす存在ってところね」

まどか「絶望を撒き散らす……?」

マミ「よく、ニュースとかで原因不明の事故や自殺が報道される時があるでしょ? ああいう類の事件の裏には、高い確率で魔女が関わっているの」

さやか「嘘っ!?」

マミ「信じられないでしょうけど、事実よ。さっき、キュゥべえは魔女は『呪いから生まれた存在』だって言っていたでしょ?」

まどか「はい」

マミ「その『呪い』というのが、不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみといった負の感情なの。要は、魔女は存在そのものが負の感情の塊で、災いの種を世界にもたらしていると言っても過言ではないわ」

まどか「私たちの知らないところで、そんなことが起きていたなんて……」

ほむら「無理よ」

さやか「えっ?」

 さやかのその質問には、気づけば先ほどと同じ場所に戻っていたほむらが答えた。

ほむら「普段魔女は自身の巣である結界の最深部に隠れ潜んでいる。だから、いくら勘が良かろうと悪かろうと、人間がその姿を捉えることなんてまず不可能よ」

まどか「結界?」

さやか「……もしかして、ショッピングモールの地下であたしたちが迷い込んじゃった、あの気持ち悪い空間のこと?」

マミ「そう。結界の中は迷路みたいになっているし、あなたたちも見たと思うけど、魔女の手下である使い魔がうようよいる……。だから、あれに迷いこんでしまった人間は普通は生きて出ることは……」

まどか「じゃあ、私たちは運が良かったんですね……」

さやか「……なぁ、転校生」

ほむら「……何?」

さやか「そういえば、アンタにはまだお礼を言ってなかった……よね?」

まどか「!? そ、そうだった……!」

 さやかの言葉にはっとしたまどかも、体ごとほむらの方へ視界を向ける。

さやか「最終的にあの使い魔とかいう化け物たちをやっつけてくれたのはマミさんだけど、思えば最初にあたしたちを助けてくれたのはアンタだった……。だから、その……ありがと……」

まどか「ありがとう、ほむらちゃん」

 感謝の言葉と共にほむらに頭を下げるまどかとさやか。
 それに対してほむらは――

ほむら「――別に、あなたたちが気にすることじゃないわ」

 と、さらりとそう答えただけで、2人の方に一瞥すらしなかった。

まどか「……でも、考えてみたら、マミさんやほむらちゃんは、今までそんな恐ろしいなものと戦っていたってことですよね……?」

マミ「そうね、命がけよ。常に死と隣り合わせの世界だもの……」

翔一「……暁美さん」

ほむら「何?」

翔一「……暁美さんほどの子でも、やっぱり魔女と戦うことを今でも怖いと思う?」

ほむら「…………」

翔一「…………」

ほむら「……ない、と言い切ることは出来ない……」

まどか「ほむらちゃん……」

マミ「鹿目さん、美樹さん」

まどか「は、はい」

さやか「何でしょう?」

マミ「これだけは覚えておいて。キュゥべえと契約すれば、どのような願いでも叶えるチャンスがある。だけど、それによって与えられる見返りは想像するよりも遥かに大きなものよ……」

まどか「…………」

さやか「…………」

マミ「だから、契約する場合、叶えたい願いが本当に見返りに足るものなのかじっくりと考えた方がいいわ」

 私はそれを考える余裕もなかったから――と、呟くように最後に付け加えると、マミはソウルジェムを指輪の形に戻した。

ほむら「……代償を考えるなら、契約しない選択を選ぶ方が遥かに良いと私は言い切るけどね」

翔一「暁美さん……」

キュゥべえ「…………」

マミ「……さて、じゃあ今度は私たち魔法少女について説明しましょうか」

 一度紅茶に口をつけた後、気分を変えようと、マミが再び口を開いた。

マミ「さっきも言ったけど、魔法少女が魔法を使うために必要な魔力はソウルジェムを源としているわ。だけど、それにも当然限りはある」

翔一「使い続けていれば、いずれ無くなってしまうってことですね?」

マミ「そう。魔力が枯渇してくるとね、ソウルジェムにどんどん濁りが生ずるの」

まどか「濁り……ですか?」

マミ「えぇ。おまけに、この濁りを取り除く――つまりは魔力を回復させる方法がまたちょっと厄介でね。あるものが必要になってくるの」

さやか「あるもの?」

マミ「それがコレ」

 そう言いながら、マミはポケットから手のひらサイズの黒い『何か』を取り出した。

翔一(あれ? 確かあれって……)

さやか「何ですそれ? 見た感じ黒いソウルジェムにも見えますけど……」

マミ「確かに見た感じは似ているけど、実際は違うわ。これはグリーフシード。魔女の卵よ」

まどか「えっ!?」

さやか「ま、魔女の卵!?」

ほむら「…………」

 そう。マミが取り出したのは、昨日病院の外で発生した魔女の結界でマミとアギトが協力して魔女を倒した際に、マミが手に入れたグリーフシードだった。

マミ「あぁ、大丈夫。今のところはね」

翔一「『今はところは』……? それって、いずれは大変なことになるってことじゃ……!?」

キュゥべえ「だからこそ僕がいるのさ」

翔一「うわっ!? び、びっくりした~……。急に視界の中に飛び込んで来ないでよ」

キュゥべえ「ゴメンゴメン。でも、これはさすがに僕がやって説明しないといけないことだからね」

さやか「は? それってどういう……」

キュゥべえ「マミ」

マミ「えぇ、お願いね?」

 そう言うと、マミは持っていたグリーフシードをキュゥべえの長い尻尾の先端部にそっと置いた。
 グリーフシードを受け取ったことを確認したキュゥべえは、今度はそれを自身の頭の上へと移動させ、2、3度転がしてバランスをとると、最後に背中の方へとポンとそれを放り――

 ――突然開いた背中の模様部分から、グリーフシードを体内へ飲み込んでしまった。

 模様部が開いたのはほんの一瞬だったため、中がどのようになっていたかはその場にいた誰の目にもわからなかったが、飲み込むと同時に、キュゥべえの模様部分がカッと発光した。

キュゥべえ「きゅっぷぃ」

 やがて、背中の発光が収まると、キュゥべえは軽くげっぷをした。

まどか「…………」

さやか「…………」

翔一「…………」

キュゥべえ「これでもう安全だよ。……? 君たち、どうかしたのかい?」

さやか「た、食べちゃったの……?」

キュゥべえ「これもまた僕の役目のひとつだからね」

まどか「そ、そんなもの食べちゃって、お腹とかは本当に大丈夫?」

キュゥべえ「うん。全然問題ないよ」

マミ「ま、まぁ、最初見た時は誰だって驚くでしょうね。私もそうだったもの……」

ほむら「…………」

翔一「……と、とりあえず、そのグリーフシードというものが何なのかわかりましたけど、それが魔力の回復とどういう関係があるんです?」

マミ「今キュゥべえが食べちゃったものは、さすがに容量が限界に近かったから試せなかったけど、グリーフシードは周囲の負の感情を貯め込む特性があるみたいでね、そこを応用してソウルジェムの濁りをグリーフシードに吸い取らせるのよ」

さやか「なるほど、そうすることでソウルジェムが綺麗になって、魔力も元通りになるってことですね」

マミ「そういうこと。グリーフシードは倒した魔女がたまに持っていることがあるんだけど、魔法少女にとっては魔女退治の貴重な見返りでもあるわ。でも……」

まどか「でも?」

マミ「そのせいで、魔法少女同士でグリーフシードの奪い合いが起きちゃったり、自身の魔力を常に万全に維持しておきたいがあまり、他者――特に魔法とは一切無関係な人たちの犠牲を省みずに魔女退治を行う魔法少女も多いの……」

ほむら「仕方がないわ。魔法少女となってしまった以上、ソウルジェムの輝きを維持するのは死活問題だもの」

まどか「そんな……」

さやか「う~ん……。私たちの思い描いてるゲームや漫画とかの正義の味方像とかとはかなりかけ離れてますね……」

翔一「……現実はそんなに甘くないってことだよ」

マミ「……さて、これで私が知る限りのことは話したわ。鹿目さん、美樹さん、さっきも言ったけど、もし本当にキュゥべえと契約して魔法少女になるというのなら、叶えたい願いは契約する直前までよく考えるようにね?」

さやか「はい」

まどか「色々とありがとうございました」

マミ「さて、次は……」

 そう言いながら、マミは翔一の方へと目を向ける。

翔一「?」

マミ「沢野くん、何故あなたはあの時地下にいたのかしら?」

翔一「あぁ、暁美さんに協力してほしいと頼まれたんですよ」

ほむら「…………」

マミ「協力?」

ほむら「沢野翔一はソイツを視覚できる。だから、鹿目まどかの周囲にソイツが現れないか見張っていてもらっていた」

キュゥべえ「…………」

さやか「それってつまり……」

翔一「……うん、ゴメン。2人に気付かれないようにこっそり後をつけてた」

まどか「ええっ!? 酷いですよ!」

翔一「い、いや……。だからこうして謝ってるじゃない」

ほむら「…………」

翔一(う~ん……。アギトのことを隠すために言ったんだろけど、良いのかな、嘘ついちゃって?)

マミ「なるほどね……。確かに、それならあのタイミングで私たちの前に現れたことにも納得がいくわね」

さやか「……そういえば……。あの怪物はいったい何だったんだろう?」

マミ「怪物?」

まどか「あ、ハイ。私たち見たんです。キュゥべえに襲いかかろうとしていた金色の怪物を……」

マミ「金色の怪物? まさか……!?」

ほむら「えぇ。アギ……」

翔一(あ。そういうところは隠さないでちゃんと言うんだ……)

キュゥべえ「あれは『アギト』。僕達の『敵』だよ」

マミ「!?」

ほむら「――!」

 ほむらが言い終える前に、キュゥべえがアギトのことについて口を開いた。

さやか「アギト?」

キュゥべえ「そう。それがあの怪物の名前。神から力を与えられた者だ」

マミ「ちょ、ちょっと待って! アギトが現れたって……おまけにアギトがキュゥべえに襲いかかろうとしていたって、どういうこと!?」

キュゥべえ「そのままの意味だよマミ。僕は暁美ほむらに襲われていたと同時に、アギトにも襲われたんだ」

 幸い、まどかが来てくれたおかげでアギトからは攻撃されなかったけどね、と付け加えるキュゥべえ。

マミ「そんな……。でも、いったい何故……?」

キュゥべえ「それは彼女がよく知っているんじゃないかなぁ?」

 そう言いながら、キュゥべえはその赤い瞳でほむらをじっと見つめる。

ほむら「…………」

まどか「……そ、そういえば、ほむらちゃん、あの怪物のこと知ってるみたいだったよね?」

ほむら「えぇ。少なくとも、ここにいる中では私が一番アギトのことを知っているでしょうね」

マミ「……なら、説明してもらえるかしら?」

さやか「そ、そうよ。アンタとそのアギトって怪物、いったいどういう関係なの!?」

ほむら「別に……。ただ、今回は私と彼の利害が一致したってだけ……」

まどか「利害?」

ほむら「……彼は人間を愛しているから……」

さやか「はい?」

まどか「ちょ、ちょっと待ってよ。人間を愛しているなら、何故キュゥべえを襲うの?」

マミ「そうね……。魔女と戦う使命を負わされることになるとはいえ、どのような願いもひとつだけ叶えてくれるのだから、キュゥべえのことをひとえに『人間の敵』と言うのは間違っている気がするわ」

ほむら「…………」

翔一「あ、あの……。巴さん……?」

マミ「? ……あぁ、ごめんなさい。沢野くんはアギトのことは知らなかったわね?」

翔一「へっ? え、えぇ……」

さやか「……そういえば、沢野さんが地下に来た時にはあの怪物はいなくなってたのかな?」

まどか「う~ん……。ほむらちゃんの言っていることが本当なら、人間は基本的に襲わないんじゃないかな?」

キュゥべえ「何にせよ、アギトが僕を襲ったという事実に変わりはない。事と次第によっては、これから先アギトが魔法少女の敵になる可能性は十分に有り得るだろうね」

翔一「…………」

 その後、特に話すことも無くなり、日も暮れてきたため、一行は解散し、それぞれ帰路につくことになった。

まどか「マミさん、今日は色々とありがとうございました」

さやか「魔法少女の件ですけど、2人でじっくり考えてみます」

マミ「えぇ。……ところでキュゥべえ、本当に今日は私の家でいいの?」

キュゥべえ「本当はまどかかさやかの家に泊めてほしかったんだけど……」

ほむら「…………」

キュゥべえ「さすがに、彼女が許すわけ無いだろうしね」

まどか「あはは……」

 キュゥべえの発言に、まどかは思わず苦笑いを浮かべた。

翔一「じゃあ巴さん、ケーキと紅茶ごちそうさまでした」

マミ「えぇ。また明日学校で」

キュゥべえ「…………」

キュゥべえ『マミ』

マミ「? どうしたの、キュゥべえ?」

キュゥべえ『アギトのことで、君に伝えておかなければならないことがある』

マミ「――!?」



まどか「……さやかちゃんはどう思う? 魔法少女のこと……」

さやか「う~ん……。正直、なんかまだ実感わかないな~……」

翔一「そりゃあ、そうだろうね。つい数時間前までは普通の生活を送っていたんだから」

 俺だって驚いてるし、と付け加えながら翔一は2人の前を先導するような形で歩いて行く。
 そして、翔一の前には少し距離を開ける形でほむらが歩いていた。

さやか「どんな『願い事』でも叶えてくれると言われても、命がけってところでところで引っかかっちゃうし……」

まどか「うん……」

さやか「欲しいものも、やりたいことも、いっぱいあるんだけどね……」

翔一「……暁美さん」

ほむら「……何?」

 先を行くほむらを呼び止める翔一。

翔一「ちょっと気になったことがあったから聞いておきたいんだけど……。何で暁美さんはキュゥべえが鹿目さんたちに契約を持ちかけてくるってわかっていたんだい?」

ほむら「…………」

まどか「そういえば……」

さやか「言われてみたら……何でわかったのさ? やっぱり魔法か何かで?」

ほむら「……そうとも言えるし、そうとも言えないわ」

さやか「ふぅん……。予知能力ってやつ?」

ほむら「…………」

さやか「何だよ~。答えてくれてもいいだろ~?」

まどか「まぁまぁ、さやかちゃん……。ねぇ、ほむらちゃん、私からもひとつ聞いていいかな?」

ほむら「……答えられることなら……」

まどか「ありがとう。えっと……ほむらちゃんは、私たちがキュゥべえと契約することを良いことだと思ってないみたいだけど、それはどうして?」

ほむら「…………」

まどか「あ、いや、その……。こういう言い方は変かもしれないけど……ほむらちゃんは私やさやかちゃんのことを助けようとしているんじゃないかなと思って……」

ほむら「!?」

さやか「は? まどか、それってそういうこと?」

まどか「いや……さやかちゃんが言っていたように、ほむらちゃんが本当に予知能力を持っていて、私たちがキュゥべえと契約することを知っていたなら、その後のことも知っているんじゃないかなって……」

翔一「なるほど、それは一理あるね」

ほむら「…………」

さやか「……で、本当のところはどうななのさ、転校生?」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……変えられるかもしれない……」

まどか「えっ?」

ほむら「……鹿目まどか、学校で私があなたに言ったこと、まだちゃんと覚えてる?」

まどか「……『今の自分を変えようと思わないで』っていう話のこと?」

ほむら「えぇ……」

翔一「? 何の話?」

さやか「さぁ?」

ほむら「……今はまだあなたたちに本当のことを明かすことは出来ない。でも、いつか必ず明かす時が来る……。それまでは、その言葉だけを覚えておいて……!」

まどか「あっ!? ほむらちゃん!?」

 結局、ほむらは一度も翔一たちの方へ振り返ることもなく、その場から走り去ってしまった。

さやか「何なのさ、もう……。言いたいことがあるなら、さっさと言っちゃええばいいのに……」

翔一「多分、彼女にもワケがあるんだよ。色々と……」

まどか「……ほむらちゃん……」

翔一「ところで、鹿目さん」

まどか「は、はい!?」

翔一「さっき暁美さんとの話で出てきた、学校で暁美さんが鹿目さんに言ったことって何?」

まどか「あ、いや……。特に重要な話というわけではないんですけど……。ほむらちゃんに言われたんです」


 ――鹿目まどか、あなたは自分の人生を尊いと思う? 家族や友達を大切にしてる?

 ――今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね。

 ――さもなければ、全てを失うことになる。

 ――あなたは鹿目まどかのままでいい。今までも。そして、これからも――


まどか「……って」

翔一「なるほどね。確かに意味ありげな言葉だ」

さやか「というか、もうアイツが予知能力者だってことほぼ確定じゃん!」

まどか「い、いや、予知能力者かどうかはまだ決まったわけじゃないでしょ?」

翔一「そうか、だから俺のことも知ってたんだな……」

さやか「あぁ、キュゥべえの姿が見える特異体質のことですね」

翔一「う、うん……」

まどか「……そういえば、沢野さんも数日前に見滝原に転校してきたんですよね?」

翔一「あぁ。色々とワケありでね……」

さやか「あぁ、家庭の事情ってやつですか?」

翔一「まぁ、家の事情でもあるけど、厳密には俺個人の事情……かな?」

まどか「えっ?」

さやか「沢野さん個人の事情?」

翔一「あぁ。俺、実は記憶喪失なんだ」

さやか「ええっ!?」

まどか「き、記憶喪失ですか!?」

翔一「あぁ。一月ほど前になるけど、朝目が覚めたら自分のことも家族のことも全部忘れちゃってたんだ。別に事故にあったとかそういうわけでもないのに……」

まどか「…………」

翔一「もちろん、すぐに病院にも行ったけど、結局原因はわからなくてね。自然に記憶が回復するのを待つしかないって言われた」

さやか「…………」

翔一「……ただ、病院の先生から生活環境が変わったら脳が刺激されて記憶が戻るかもしれないって話を聞いたんだ。だから、こっちに住んでいる姉さんの家に居候する形で俺だけ引っ越してきた」

 姉さん、仕事が忙しいらしくてあまり家には帰ってこないんだけどね、と付け加えて、苦笑いを浮かべる翔一。

まどか「…………」

さやか「そ、その……。ごめんなさい……」

翔一「あぁ、気にすることないよ。ぶっちゃけ、俺自身記憶がないこと自体を不幸だとか不憫だと思ったことは一度もないしね」

まどか「どうしてですか?」

翔一「う~ん……。自分でもよくわからないけど、無理に昔のことを思い出して今の自分を失うのが怖いから……かな? それに……」

まどか「それに?」

翔一「過去を持たない人間が、未来を得ちゃいけないなんてルールはないはずだからね」



キュゥべえ「沢野翔一、彼がアギトだ」

マミ「えっ――!?」

キュゥべえ「僕の存在を視覚し、かつ僕の声も聞くことが出来る。おまけに、これまでアギトが現れた場所には高確率で彼の存在があった」

マミ「そ、それは……私も気づいてはいたけど……」

キュゥべえ「そしてなにより、沢野翔一とアギトは双方とも暁美ほむらとの繋がりがある」

マミ「――!」

キュゥべえ「暁美ほむらが沢野翔一に『協力』を求めたのは、おそらく彼がアギトであることを知っていたからだろう」

マミ「…………」

キュゥべえ「暁美ほむらが僕を狙ったのは、新しい魔法少女が生まれるのを阻止しようとしたからに間違いはない。おそらく彼女の目的は……」

マミ「……グリーフシード……」

キュゥべえ「そういうことになるだろうね。暁美ほむらも君が知っている佐倉杏子のように、利己主義な魔法少女だということさ」

マミ「…………」

キュゥべえ「しかし、彼女も考えたね。魔法少女と同等以上の力を持ちながらも、グリーフシードを必要としない者を仲間にするなんて……」

 魔女退治の際は得られるグリーフシードを全て自分のものにできる、魔法少女の現状的に考えれば、アギトは最も仲間にするに相応しい存在と言えるよね、などと付け加えながら、キュゥべえはその赤い瞳でマミを見つめる。

マミ「…………」

キュゥべえ「あれ? どうしたんだい、マミ? さっきから黙りこくってしまって?」

マミ「……やっぱり、沢野くんがアギトだったのね……!」

キュゥべえ「…………」

マミ「ありがとう、キュゥべえ。あなたのおかげで、やっとはっきりしたわ……」

キュゥべえ「そうかい? それならなによりだ。とにかく、明日以降は沢野翔一と暁美ほむらの動向には十分注意すべきだね」

マミ「……でも、キュゥべえ。ひとつだけ言わせてもらっていいかしら?」

キュゥべえ「何だい?」

マミ「あなたは沢野くんを――アギトを敵だと思っているようだけど、私はそう思わない」

キュゥべえ「どうしてだい?」

マミ「さっきあなたに処理してもらったグリーフシード……実はあれ、昨日アギトが私を助けてくれた結果手に入れることができたものなの」

キュゥべえ「……何だって?」

マミ「だから、私はひとえにアギトを――沢野くんを敵だと言い切ることは出来ない」

キュゥべえ「じゃあ、君は彼をこれから先どうするつもりなんだい? さすがに、野放しには出来ないだろう?」

マミ「えぇ。だから……」

キュゥべえ「だから?」

マミ「……彼を、暁美さん側ではなく私たち側につかせる……! 彼女にアギトの力を渡すわけにはいかない……!」


ED
http://www.youtube.com/watch?v=ZaABYGjmMR0



次回予告

「沢野くん、あなたにお願いしたいことがあるの」

「鹿目まどかを魔法少女にするために、僕たちに協力してほしいんだ!」

「『魔法少女体験コース』……ですか?」

「優しさが時に大きな悲劇を招くこともあるってことよ」


次回
第5話「魔法少女のことを知りたいの!」


目覚めろ、その魂!



←ブログ発展のため1クリックお願いします
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://kannki.blog39.fc2.com/tb.php/2190-18896dee
    この記事へのトラックバック



    アクセスランキング ブログパーツ レンタルCGI
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
    /* AA表示 */ .aa{ font-family:"MS Pゴシック","MS PGothic","Mona","mona-gothic-jisx0208.1990-0",sans-serif; font-size:16px; line-height:18px; }