上条「DIOォォォォォォォォッ!!!」 その17

2010年02月14日 21:53

上条「DIOォォォォォォォォッ!!!」

236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/07(日) 23:08:21.37 ID:c/UQEsP70

一方通行「・・・もう一度・・・言ってみやがれェ・・・ッ!」

張りつめた空気がホテルの一室を満たしていた。向かい合う面子の中に、上条当麻と佐天涙子の姿だけはない

ポルナレフ「ああ、何度でも言ってやるよ・・・!テメーらは信用できねぇってな!」

ジョセフ「やめんかポルナレフ!」

男が再びその言葉を口にし、今にも白髪の少年の胸倉を掴みにかかろうとするのを、ジョセフが止めている

花京院「・・・流石にそこまで言うつもりはない。だが、もしあの少年がDIOに操られているのだとしたら、
    何か弱みを握られて脅されているのだとしたら・・・」

背後から仲間に襲い掛けられる事程恐ろしいものはない。
事実あの時はそれが切っ掛けで、互いを殺し合うまでに発展していた

アヴドゥル「一つだけ言っておきたい。冷酷な発想だが・・・」

占い師の男が通る様な声を出す。その先は彼らだけではなく、全員へと

アヴドゥル「我々の目的はDIOを倒す事だ。
      もし奴との戦いで負傷や何かあったとしても、私は助けないでいるつもりでいる」

『何か』の中に、裏切り者の排除が含まれている事は明白であった

美琴「・・・仲間を殺そうとした奴は殺されても文句は言えないって事よね・・・ッ!」

上条当麻は裏切ってなどいない。そう信じている。だから、彼に害を為す者は全て始末する。
そう彼女の表情が物語っていた

黒子「お姉さま・・・!」

椅子から立ち上がる美琴を止める。この空気に火を投げ入れれば爆発してしまう事は目に見えている

突き刺す様なピリピリとした空気。そこにノックの音が響いた

佐天「ジョセフさん・・・上条さんが目を覚ましました」

そう言いながら、少女が部屋へと足を入れる。その後に、両手を手錠で繋がれた上条が居た

安堵と疑惑の眼差しが少年へと集まる

ジョセフ「・・・少し辛いとは思うが、我慢しておくれ」

上条「・・・いえ・・・本当に・・・すみませんでした・・・」

自分が何をしたのかは覚えている。そしてその後に起きた出来事も

承太郎「・・・何故、あんな事をしたのか説明出来るか?」

既に腕の手当てを終えた男が、問う。責めている訳ではなく、その理由を明らかにする必要がある為に

ゆっくりと、上条が首を横に振る

上条「分からない・・・身体が勝手に・・・何で俺はあんなことを・・・」

ポルナレフ「ケッ!大方DIOの野郎にビビったんだろうがチキン野郎が!」

その言葉の主に対して、射殺さんとばかりに視線が集まる。しかし、もはやそうとしか説明が出来ない

何より、その方が互いにとって都合が良い解釈でもあった

ジョセフ「・・・そうか。そう気負うな」
しかし、と老人は続ける

もとよりこのつもりだった。彼らの気持ちは分かるが、もう既に彼らを巻き込み過ぎてしまっていた

ジョセフ「DIOとの戦いは、ワシらだけで行こう」

そして、これほどまでにバラバラになった状態では危険の方が大きい。
上条達はここで置いて行くのがベストだと判断する

打ち止め「そ、そんなのおーぼーだよ!私たちも一緒に―」

花京院「・・・もし、DIOに彼が・・・
    いや、君たちの誰かが人質にされたとして、君はその人を見殺しに出来るのか?」

返す言葉が見つからない。その言葉が彼らに重く圧し掛かっていた

承太郎「・・・決まりだな」

ジョセフ「夜が明けてからでは、DIOが姿をくらませる可能性がある。夜明け前に出る」

誰も異を唱える者はいなかった。
そしてそのまま、それぞれが支度を、あるいは心の準備をする為に部屋へと戻って行った

ジョセフ「君たちももう部屋へ戻りなさい。今まで御苦労だった、明日には帰れるように手配をしておこう」

そして目を伏せ、申し訳なさそうに上条へと声をかける

ジョセフ「上条君、君には本当に悪いが・・・ここから少し離れた場所に部屋を借りている。今夜だけは―」

上条「・・・はい。俺を、そこに連れて行って下さい」

ジョセフ「・・・ありがとう。すまんな」

そう言い残し、老人も部屋へと入って行った


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上条「・・・」

手錠をかけたまま、ベッドの上に座り考えに耽る。まだ、例の部屋に連れて行かないつもりらしい

どうして、あんな事をしてしまったのか。どうして、また仲間に手をかけてしまったのか

―・・・また?

無意識の内に考えていた自分の心に問いかける。その答えを自分は知っている気がした

コンコン

部屋に静かなノックの音が響く

美琴「・・・当麻?」

ノブに手がかかる音が聞こえるが、ドアは開かない

上条「・・・美琴か?どうぞ」

その言葉を聞いて、ドアが開けられる

ノックをするまでに、心の準備が必要だった

このドアを開いた先に、もし彼がいなかったらと思うと怖かった

また、あの時の様に自責の念に圧し潰されて、自分の事をまた忘れてしまっていたらと思うと、身体が動かなかった

上条「・・・美琴か?どうぞ」

返って来た言葉が、とても嬉しかった。彼は逃げずにここに居てくれた、それだけで充分だった

ドアを開くと、目の前に彼が居た。顔色こそ優れてはいないものの、間違いなく彼だった

美琴「・・・」

何も言えなかった。その姿を見る事だけで安心出来た。その声を聞く事だけで嬉しかった

二人とも何も言う事が出来ずに、見つめ合ったままの格好で沈黙を貫く

上条「・・・美琴?」

何かを言わなければいけないと思っていた。しかし、少しの間の沈黙を破ったのは彼だった

美琴「・・・そこ、座っても・・・いいかな?」

ベッドを指さす。彼が座っている場所の隣の場所を

彼の傍に居たかったから。彼の隣に、自分の居場所が欲しかったから

肩が触れ合う程の距離で、二人は座っていた

上条「・・・どうしたんだ?」

突然の訪問に驚きはするものの、ひどく落ちついていた

美琴「・・・終わったんだね」

上条「・・・あぁ、そうだな・・・」

今夜には全て決着が着く。誰もが望むハッピーエンド。彼らが全て終わらせてくれる

でも、どうしてだろうか

頬を伝わる

美琴「・・・当麻・・・?」

上条「何でも無い・・・何でも無い・・・」

膝の上に置かれた、繋がれたままの手の甲に、頬から雫が落ちる

どうして、涙が零れているのだろうか

美琴「・・・当麻はさ、帰ったらやりたい事とかあるの?」

ずっと終わらせたいと思っていたのに、それを考えた事は無かった

美琴「あたしは、あるよ」

上条「・・・何を、やりたいんだ?」

目を濡らしたまま、彼女に問いかける。聞きたかった。何をしたいのか

自分に協力出来る事なら、何でもしたかった

それは感謝で、贖罪で、願いで、心からの望み

美琴「・・・責・・・取るって・・・言った・・・」

下を向いて、小さく何かを呟く。この距離でもその言葉は拾い取れなかった

上条「・・・え?」

美琴「・・・一緒に、行きたい場所があるの・・・!」

そして、顔を上げてハッキリと伝える

本当はそんな場所なんてなかった。ただこのまま傍に居たい。今も、そしてこれからも

上条「・・・そっか。俺にも手伝える事があって、良かった」

違う。彼『にも』出来る事なんかじゃない。彼に『しか』出来ない事

美琴「・・・馬鹿・・・」

上条「馬鹿って何だよ」

笑顔のままの彼に、そう呟く

それでも、自分にしては上出来

美琴「アタシ、もう部屋に戻るね!」

本当ならばジョセフから、今夜上条当麻に接する事は禁じられていた

見つかっては面倒である

美琴「約束だからね!絶対だから!」

一度だけ振り返って、元気よく退室をした

上条「・・・あぁ、絶対に約束するよ」

見えなくなったその背中に、そう呟いた

それから少しして、白井黒子が彼の元を訪れた

少し目が赤くなっている少年を、腕に包帯を巻いた少女が見ていた

上条「どうしたんだ?」

黒子「・・・上条さんに、これをお返しに来ましたの」

そう言って手に持った服を渡す。あの時、船の上で貸りたままの上着を

それはただの理由。彼の元へと訪れる為の

上条「あぁ、忘れてた・・・ありがとうな、白井。それと、今までありがとうな」

突然の事に面食らいはしたものの、そう言う事にキッチリとしていそうな彼女らしいと思った

ただ、その視線が腕に行くと、そんな浮付いた考えは無くなってしまっていた

上条「・・・白井。本当にごめんな、俺のせいで怪我ばっかりさせ―」

その言葉を遮る様に、彼女の彼が、彼の顔の前に現れる

髪に隠れてよく見えなかったが、額には薄らと銃痕が残っていた

黒子「本っ当に、その通りですわね!」

そのままの体勢で、彼女が声を出す

黒子「上条さんのせいで、いっぱい傷は出来てしまいましたし、服も一着破られてしまいましたの!
   それにまだ前のお礼を全部貰っていませんわ!」

上条「・・・ああ、本当に―」

黒子「で!す!の!で!!」

もうこれ以上は、彼を謝らせるつもりなどない。
少なくとも、自分は彼を責めてなどいないし、謝罪が欲しい訳でもない

黒子「きちんとこのオトシマエは着けて貰いますの!」

きょとんとした顔をした彼の目を見る。表向きこそは強がってはいるものの、心臓がドックンドックンと暴れている

上条「・・・え?あ、あぁ、上条さんに出来る事なら何でもしますよ?」

前の事と言い、今回と言い。どうやら彼は、『何でも』を酷く簡単に考えている節がある

黒子「ま、まずはお買い物に付き合って頂きますの!」

上条「・・・?服の弁償と荷物持ちってことか?あ、でもあまり高いものだと・・・いや、何でも無い」

本当にまるで分かってない発言を返す、用意してきた理由を使う時

黒子「そ、そうですわね。でも残念な事に私は制服着用でないといけませんので・・・!」

上条「あー、そっか・・・お嬢様学校の制服って高い―」

額に若干の汗を浮かべながら答える、彼の口を、手で止める

そしてそれから、腕を彼に見せる。包帯に巻かれていないその腕にも、薄らと銃痕が見えた

黒子「・・・また、買って下さいまし」

上条「へ?あぁ、ひょっとして腕輪の事か?」

壊れてしまった理由は聞いている。
もしかすると、あの腕輪が彼女を守ってくれたのかもしれないと考えると、悪い気もしなかった

黒子「そっ、その・・・出来れば今度はあの・・・ゆ・・・ゆび・・・」

顔を真っ赤に染めて、下を向きながら小さく呟く。聞いて欲しいけれども、聞こえては欲しくない。
そんな葛藤と共に

上条「そっか、また白井が気に入る腕輪があれば良いけどな」

まるで聞こえていなかった彼が、快諾をする。その返しに、ちょっとだけ乙女心が傷ついてしまう

黒子「そ、それだけではありませんわ!
   絶対にとまでは言いませんけれども、休みの日は私にお付き合い頂きますの!」

上条「へ・・・?あまりお金がかからなければ良いけど、なんでまた上条さんなんかと?」

黒子「お、お忘れですの?私はあの時のせいで男性恐怖症が出来てしまったって言いましたわ!」

本当に便利な勘違いだと思う。あの時の痴漢に思わず感謝をしてしまう

上条「あー・・・そっか・・・でもそれなら学校の・・・って、そっかそっちは男子居ないんだっけか」

取ってつけたような説明ではあるものの、思わず納得してしまう。
そして、その原因が自分にもあると考えると責任はある

上条「俺で良ければいくらでも付き合うけど・・・上条さんと違って、白井さんは可愛いんだから、モテるだろ?」

むしろ通院費を出せと言われるよりも遥かに良い。
悪友共に見つかったら、何を言われるか分かった物ではないけれども

黒子「・・・!んまっ、私をキズモノにしておいて、どの口がおっしゃいますの?」

嬉しそうな表情で彼を叱り飛ばす。顔が赤い所を見ると、多分怒っているのだろう。変わった子だと思う

黒子「それに、モテないだの抜かしてやがりますけれども、
   それは上条さんのファッションセンスが悪いのですわ!」

この鈍感勘違い男はどこまでなのだろうか。鈍感のレベルは5で間違いないだろう。
ただし、その鈍感も今回ばかりは利用させてもらう

黒子「ですので!この黒子が選んで差し上げますわ!」

上条「は、はあ。でも上条さんはファッションなど気にする程経済的余裕がですね・・・」

黒子「ゆ・・・腕輪と交換ですの!服は私があなたにプレゼントして差し上げますわ!」

上条「プレゼント交換かー。何だか恋人みたいだな」

茹でダコの様に赤くなっていく彼女と、照れた様に笑う彼

黒子「こ・・・っ、と、とにかく!もう約束しましたの!絶対ですわ!」

上条「えっ、あっ」

一方的に約束を交わし、その返事を待たずして、逃げる様に部屋を出て行ってしまった

彼自身、それを断るつもりも無く、承諾するのも聞かずして

一方通行「ンだよ、もっと落ち込ンでンのかと思ったら、間抜けた面ァしやがって」

ノックもせずに、つまらなそうな顔で、白髪の少年とそれに付き添う少女が入室をしてきた

上条「あぁ、良い仲間を持って上条さんは幸せですよ」

一方通行「ケッ、バカかてめェは。帰りの飛行機の中にうぜェ空気持ち込まれたかねェンだよ」

打ち止め「本当に素直じゃないんだからーとミサカはミサカは彼のツンデレ具合ににやにやしてみたり」

両手を後ろで組んだままの少女が、言葉通りににやにやと笑っている

一方通行「ちっ、違ェっての!」

そんな漫才の様なやりとり。口は悪いのは変わらないけれども、自分の為に来てくれた二人の気持ちが嬉しかった

上条「二人とも本当にありがとう。俺を助けてくれて、本当に感謝してるんだ」

その言葉で、目の前の漫才が止まる。そして、少女が一方通行の目を見る

一方通行「うッし、良ィぞ。やッてやれ」

何かの許可が出る。満面の笑みを浮かべた少女が、上条の目の前まで駆け寄って来て

スパァン

気持ち良い程の音が部屋に響いた

上条「え?えぇ・・・?」

少女が新聞紙か何かで作られたハリセンで、彼の頭を力の限り引っ叩いていた

打ち止め「えへへへーとミサカはミサカはもう一度やってみたいと思ってみる」

一方通行「あァ、許可する。やれ」

スパァンスパァンと音が響く。痛くは無いが、複雑な光景

上条「ちょ、あの」
スパァン

上条「なにを」
スパァン

上条「やめ」
スパァン

上条「は」
スパァン

もはや何も言わせるつもりはないらしい

段々少女も慣れて来たのか、恍惚の表情を浮かべつつ、精密機械の様な動作で彼の頭を打ち続ける

上条「すみませんでしたぁぁぁっ!」

良く分からないけれどもベッドの上で土下座してしまう。手錠が多少邪魔ではあるものの、問題は無い

―・・・あれ?ハリセンが飛んでこない・・・?

おそるおそる顔を上げる。その先に見えた物は

スパァン!

白髪の少年が、彼の顔をハリセンで打ちつける

一方通行「っと、いきなり顔上げンなよ」

打ち止め「わー痛そー可哀想だよーとミサカはミサカは同情してみる」

先程まで、それそれは楽しそうに叩き続けていた少女とは思えない発言

一方通行「勘違いすンなっつーこった」

鼻の頭をさする少年に向かい言い放つ

上条「・・・え、えぇと・・・?」

再びハリセンが飛ぶのではないかと、冷や冷やしながら反応を返す

一方通行「俺はジジイに雇われて来たンだ。てめェらだのDIOだのなンざ関係ねェんだよ」

上条「雇われたって、報酬とか何か出るのかよ?ひょっとして俺にも何か―」

スパァン!

一方通行「アホかてめェ、俺達はそもそも関係ねェが、てめェはあるンだろうが」

打ち止め「そうだよ!それに遊園地―」

白髪の少年の手が、少女の口を塞ぐ。しかしそれを見越したかのように回避する少女

上条「・・・遊園地?」

打ち止め「二人っきりでデートしたいから、分けられないよ!
     とミサカはミサカは二人のただならない関係を暴露してみる」

一方通行「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!何も聞こえねェッ!
     何も聞いてねェよなッ!!聞いてたら殺すぞッ」

打ち止め「え、聞こえてないの?だから遊園地でデ―」

一方通行「アアアアアアアアッ!!」

奇妙な叫びと共に少女を抱えて、二人が退室をしていった

ジョセフにばれてしまうのではないか等とはもう考えていないだろう

上条「・・・何だったんだ」

首を傾げながら、開きっぱなしのドアを見つめる

そこに、一人の女性の姿が見えた

姫神「・・・何かしら。今のは・・・?」

両手に何かを持っている彼女が、上条の部屋へと視線を移す

姫神「上条くん。ちょっと。いい?」

姫神「はい。上条くん何も食べてなかったでしょ?」

お盆の上に、簡単な料理と飲み物が置かれている

上条「ああ、ありがとう姫神。でも、悪いけど食欲が―」

姫神「えい」

ぽいと彼の口に、ミニトマトを投げ入れる

上条「ッ!!ゴホッ!ちょ・・・!いきな・・・ゴホッ・・・り何をしやがりますか!?」

蒸せてしまうものの、何とか喉を通ってくれた。噛んですらいない為に味もまるで分からなかったが

姫神「はい。あーんして」

そう言って次なる弾を構える。ある意味美琴の飛ばすコインよりも恐ろしい

上条「食べるから!自分で食べるからやめ―」

姫神「てい」

次なる弾が、彼の口の中へと突撃をしていた

姫神「はい。次は・・・。多分レタスですよ。あーん」

上条「・・・あーん・・・」
―どうしてこうなった・・・

抵抗するだけ無駄だとは悟り、食べるとは言った

しかし、両手に手錠がある状態では食べるのも困難である

結局彼女の計算通りに事が全て運んでしまっていた

上条「やったら健康的なメニューだな・・・」

野菜の次に野菜。そういえば最初も野菜だった、そして皿の上にあるものも野菜中心の料理ばかり

姫神「良いお嫁さんに。なれるかな?」

ポッと顔を赤らめながら、冗談を飛ばす

上条「子供の健康と好き嫌いという点からは、そう思います・・・」

姫神「もう子供だなんて。上条くんったら・・・」

本当に、どうしてこうなってしまったのだろうか

姫神「はい。多分トマトジュース」

最後に真っ赤な液体を彼の口につけて、飲ませてあげる

上条「ん・・・これ本当にトマト?」

確かにトマトっぽいけれども、何かが違う濁ったような味。嫌いな味ではないのだけれども

姫神「・・・。多分。異国の味だから変に思うだけ」

言われてみれば、確かにそうかもしれないと考えつつ、お盆の上を整理する少女の指先のガーゼに目が行った

上条「どうしたんだ、それ。怪我か?」

姫神「・・・えっと。その。料理の時に間違えて切っただけ。本当にそれだけだから」

おっとりとしている彼女に、変化が現れた。恐らく何かを隠している

上条「姫神・・・まさかその傷、吸血鬼を倒す時に・・・?」

そうであるのならば、この反応にも納得が行く

姫神「・・・上条君に伝言。帰ってきたらしばらくは補修だって」

話を切る様に、それを伝える。恐らく小萌先生からだろう

姫神「・・・今夜。私もジョセフさん達と一緒に。行ってくるから」

上条「え?」

お盆を持ちあげ、静かに立ち上がる

姫神「私も一緒に。補修だから。頑張ろうね」

そう言い残し、長い髪をなびかせて彼女が部屋から出て行った

ジョセフ「・・・やれやれ、このモテ具合はワシの若い頃そっくりだな君は」

最後にジョセフが部屋へと入ってくる。その後ろには二人の財団の男が居た

ジョセフ「本当に良い仲間を持った」

上条「・・・えぇ。俺には勿体ないくらいですよ」

小さく笑顔を作り、老人の言葉に頷く

ジョセフ「彼らが別の部屋まで連れて行ってくれる。明日には迎えに行くよ。皆でな」

上条「・・・はい・・・!」

二人の男に連れられて、ホテル前に停められた車の後部座席へと乗り込む。良く知る少女が、先に座っていた

上条「・・・佐天?俺一人じゃなかったのか・・・?」

佐天「・・・私も一緒に行く事は、ジョセフさんにはもう伝えてありますから」

もし何かあった場合。例えば、彼が逃げ出そうとしたり、今度は自分を傷つけようとした場合

肉の芽は見えない物の、ひょっとすると、DIOに洗脳されているのかもしれない。そう考えての判断であった

案内された場所は、二階建ての小さな家

二階の一室に上条を入れ、鍵を閉めた。中からも開ける事は出来ない特別な造り

男「それと、この鍵も一応渡してはおきますが・・・危険ですから、開けないで下さいね」

―何が、危険なの?

彼らに対してではない。あの時の、自分に対して

佐天「・・・分かり・・・ました」

男「・・・では、我々はここで失礼します」

そう言い残し、彼らは去って行った

一階の部屋にモニターが置いてある。そしてそこには、ベッドに腰かけた上条当麻の姿が見えていた

監視カメラが取り付けられたその部屋は、望むのであれば部屋の隅々まで見る事が出来る

佐天涙子は、そのモニターの電源を落とした

そして、鍵を開き彼の居る部屋へと足を踏み入れた

上条「え・・・?何で・・・?」

ゆっくりと鍵を開き、そしてゆっくりと少女が入室をしてきた

鍵がなければ、内側からすら開けられないと聞いていた扉が開いていた

佐天「・・・少し、お話しても良いですか?」

覚悟を決めた顔付きで、一歩、また一歩と近寄って来る

そして、彼の前に椅子を置いてそこに向かい合うように座る

上条「それはいいけど、俺の近くにいると危険かもしれないぞ?」

苦笑を浮かべながら答える

どうせ自分が暴れようとしても、この手錠がある限り、目の前の少女にも勝てないのは明らかである

佐天「私、信じていますから」

上条「佐天・・・?」

驚きと戸惑いを、彼は顔から覗かせていた

佐天「・・・ごめんなさい、上条さん・・・!」

上条「え・・・?」

そしていきなり頭を下げられてしまう。何が起きているのか理解が出来ない

佐天「・・・あの時・・・!」

まだ止められる。まだ、言わなければ誤魔化せる。震えて消え行く様な声で、それでもハッキリと

佐天「私・・・っ!上条さんの心が・・・っ」

違う。今しかない。遅すぎるけれども、それでも今を逃したら、もう機会はない

佐天「壊れてしまえば良いって・・・!思ってました・・・!」

自身の胸を突き刺すような叫び

佐天「ごめんなさい・・・!本当に・・・ごめんなさい・・・!」

手錠に繋がれたままの彼の手が、少女の頭へと伸びる

佐天「・・・っ!」

目を閉じて、身体を硬くして、それに反応をする。しかし、逃げるつもりも防ぐつもりもない

殴られても仕方がない。彼にしてみれば、自分を見殺しにしようとした相手。殴られるだけなら、まだマシなくらい

上条「・・・俺馬鹿だから、良く分からないけど、何か理由があったんだろ?」

頭の上に手を置く。はっと上げる少女の顔は涙を浮かべていた

上条「あの時、俺を助けてくれたのは佐天だろ?俺も、佐天を信じてるぞ」

佐天「わ、私は・・・!私は・・・!ただ、皆を守りたかった・・・!
   誰にも死んで欲しくなんて・・・なかった・・・!」

彼の胸元で泣き付く。そして、嗚咽混じりの声で、少しずつ、少しずつ話していった

少女が守りたかった物は、あの普通の日常

友達と普通に笑いあって、普通に遊びに行って、そして、いつかは分からないけれども、普通に恋をしたかった

どんなに努力しても、無能力者で、何をやっても上手くいかない。それが佐天涙子だった

ずっと怖かった。この旅の間も、ずっと怖かった

もしかすると、誰かが殺されてしまうのかもしれないと考えると怖かった。誰一人欠けて欲しくはなかった

だから、決意をした。だから、止める機会を窺っていた。だから、看病と言う名目で彼を見張っていた

自分達が倒すまでもなく、ジョセフ達が終わらせてくれると盲信していた

そして、その時は突然訪れた

誰一人死ぬ事無く、この旅を終える。その理想に完全に合う、夢の様な状況

知る者は自分だけで良い。一生その十字架を背負ってでも。
記憶を失った彼への贖罪はいつまでもしていくつもりだった

だから、あの時自分は『危険』だと白井黒子に言った。そう、彼が壊れなければ危険だと思っていた

彼の心を壊す為に、自分の心を砕いて、誰も近付けない様に仕組んで、白井黒子が生きている事も伝えなかった。
全て上手くいっていた

そんな少女の努力は、やはり実らなかった

実らなくて、本当に良かったと思った

彼に縋り付いたまま、全てを告白した。何故か暖かくて、何故か身体から力が沸いて来る気がした

上条「・・・そうか、佐天・・・ありがとうな」

佐天「・・・なん・・・で・・・ありがとう・・・なんです・・・か・・・?」

顔を上げて彼の目を見る。今の話に、少なくとも感謝される所は一つとしてなかった

罵声を浴びせられる事はあっても、殴られる事はあっても、殺される事はあっても

感謝される事なんて、無かった

上条「皆を守ろうとしてくれたんだろ?だから、ありがとう」

少女の目を見つめ返して、微笑んだ

佐天「・・・上条さん・・・ううん、当麻は、ずるい・・・」

そう言って、身体を離して彼の前へと自分の足で立つ

覚悟は決めた。彼を助けたい。だから

―これが私の最期の戦い。見ててね、当麻

佐天「・・・さて!それじゃあ、最後の治療を始めましょうか!」

涙はもう流さない。今必要なのは、それではないのだから

上条「え?治療って・・・俺はどこも・・・」

佐天「・・・当麻は、どうして今ここにいると思う?始まりは、何だったと思う?」

ドクンと身体の内側から、何かが撥ねた

上条「それは・・・」

全ては、肉の芽に操られた目の前の少女を救った事から始まった

もう誰も傷ついて欲しくないから、DIOを倒すと決めたから、今ここに自分はいる

上条「・・・佐天達が、DIOの手先に襲われていたのを見つけたんだよ。だから俺は―」

胸が痛む。目の前の少女には本当の事を言えない

守りたいと言った少女が、その手で友達を殺そうとしていたなどとは言えなかった

佐天「嘘。私、忘れてなんかない」

上条「え・・・?まさか・・・」

ドクン

佐天「私が初春を襲った。それを上条さんが助けてくれた。全部覚えてる!全部忘れてなんか無い!」

ドクン

佐天「本当は、上条さんも覚えているんでしょ!?」

上条「・・・あ・・・あぁ・・・!」

ドクン

佐天「私を襲ったのはっ!私にあれを植え付けたのはっ!」

上条「・・・ろ・・・!逃げろ・・・!」

ドクン

最初に聞いた声。気を失う前に、聞いた声をハッキリと覚えている。忘れた事なんてない。
そしてこれからも忘れたくない声

佐天「上条さんっ!あなたの声でした・・・っ!!」

上条「逃げろォォォッ!!佐天ッ!」

その声と同時に、手錠に繋がれたままの少年の両手が、少女の首を絞めていた

―思い出した。あの時、どうして俺はあそこにいたのか。始まりは、何だったのか

佐天に肉の芽を植え付けた後、自分は力の制御が出来ずに暴走をしていた

人を薙ぎ払い、物を破壊し、そして逃げた。そして、気絶をした

壊された数々の物の中心に、気を失った自分が居た。そして、そのまま連行された

そして目を覚ました。嫌な夢だと思っていた

禁書が、小萌先生が迎えに来てくれた。そして佐天と出会った

そこが始まりだと思っていた。彼女が始まりだと思っていた

違った

既に、始まっていた

それがどこからなのかは分からない。それでも

始まりは

自分だった

上条「さ・・・て・・・!」

佐天「あ・・・っ!か・・・は・・・っ!」

自分の持っている以上の力を込めて、少女の首を締めあげる。軽いその身体は簡単に宙に浮いてしまう

少女が足をばたつかせて抵抗を試みるものの、少し揺らぐ程度でその手は外れない

上条「なんで・・・!俺の身体・・・どうして・・・!?」

頭ははっきりと動くのに、身体は脳からの命令を無視する。望まない行動を取ってしまう

目の前の少女の抵抗が次第に弱まって行き、そしてとうとうぐったりとしてしまった

自分の身体に懇願をしても、その力が緩む事は無く、依然としてその首を絞め続けている

上条「やめろ・・・!やめてくれ・・・!さてん・・・!しっかりしてくれよ・・・!さてん・・・ッ!」

佐天「・・・う・・・ハァ・・・ッ・・・まぁ・・・!
   わた・・・は・・・・・・い・・・うぶ・・・だ・・・カハ・・・から・・・!」

力無く震える小さな手が、彼の手に触れる。首を絞める力を緩める為ではなく、彼の為に

佐天「・・・ご・・・め・・・ん・・・ね・・・」

上条「佐天・・・!?さてん・・・っ!さて・・・さてぇぇぇぇぇぇぇぇんッ!!」

目から熱い物が流れ出して来る。目の前の少女を救いたいのに、その手には更なる力が込められている

少女の手が、彼の手を撫でる様にして

力無く垂れ下がった

―なんだろう、これ・・・

目の前の彼に首を絞められ、宙に浮かされた少女はぼんやりと考えていた

何故こんな事を彼がしているのか、ということではない

何故こうなってしまってのだろうか、ということでもない

―どうして私、死ぬのが怖くないのかな・・・?

少女は不思議な気持ちで満たされていた

それは死への恐怖でもなく、絶望でもなく、暖かくて、それでも胸を刺す様な気持ち

上条「佐天・・・!?さてん・・・っ!さて・・・さてぇぇぇぇぇぇぇぇんッ!!」

―当麻・・・?泣いてるの・・・?

もう力は出ないはずの身体に、沸々と熱いものが流れてくる

―守るんだ・・・!私も、当麻を・・・っ!

佐天「当麻を泣かせるなァァァァァッ!!」

残った力を全て振り絞って、足を思いっきり振り上げる

その爪先は、あの時と同じように

正確に、彼の股間を蹴り上げていた

上条「が・・・ッ!ああアァァぁァアアああアァぁァッッ!?」

身体を伝わるとてつもない衝撃に、手を離し、膝をついてしまう

佐天「ゲホッ!ハァ・・・ッ!当麻・・・ごめんなさい・・・っ!」

あの刀に操られていた男の時もそうだった

恐らく男と言う物は、そこを狙われると条件反射に身体が動いてしまうらしい

上条「さて・・・っ!逃げろ・・・、そのまま逃げろ・・・!」

うずくまりながら全身から嫌な汗を出しつつも、彼はそう叫ぶ。このままではまた自分が彼女を手にかけてしまう

上条「分からないんだ・・・!身体が勝手に動いて・・・佐天を俺は殺そ―」

佐天「私が治すから・・・!だから、当麻も手伝って・・・!一緒に戦って・・・!」

殺す為の戦いではない。傷付ける為の戦いでもない。そんな力、自分にはない。
そして今はそんなもの欲しくもない

治す為の戦い

大切なものを、守る為の、救う為の戦い

それが佐天涙子の選んだ

戦い

上条「治すって・・・原因も分からないのに・・・!どうやってだよ・・・!?良いから逃げてくれ・・・!」

佐天「ジョセフさんが言ってた、私自身もそうされた。だからずっと、頭に見えるのかと私は思ってた・・・っ!」

残る力を酷使して、自らの身体を抑えつける彼に、口早に説明をする

佐天「肉の芽が侵食するのは脳だけじゃなかった!当麻の身体・・・全身が蝕まれてるの・・・っ!」

最初に植え付けられて、どれ程の時間が経ったのかは分からない。何故、脳を侵食していないのかも分からない

それでも、それは彼の身体をゆっくりと時間をかけて侵食を続けて

彼の首から下を支配していた

ジョセフは言っていた

この肉の芽を除去する為には、太陽を浴びせるか、精密な摘出をした後に消滅させるか

この二つは、日が暮れた今となっては自分には出来ない

だから、最後の一つ

それは一方通行でも出来ない、超電磁砲でも出来ない事

自分にしか出来ない事

波紋を流しこむか

上条「佐天!?」

佐天「少しだけ、そのままでいて下さい!」

うずくまる上条に駆け寄り、彼のシャツのボタンを引きちぎる。あの時自分が治した傷跡が薄らと残っている

そして、露わになった彼の胸に手を当て、全力でありったけの波紋を流しこむ

上条「あ・・・!ああぁぁぁぁっ!」

彼の身体がビクンと跳ねる。そして、頑丈な手錠を力任せに引き千切ると同時に、力無くその場に倒れ込む

佐天「やった・・・!?当麻、大丈夫当麻!?」

彼の身体を抱え起こして、成功と無事を確認する

上条「さ・・・てん・・・」

ゆっくりと首を向けて、少女の顔を見つめる

佐天「良かった・・・!当麻・・・私、でき―」

上条「逃げろ・・・佐天・・・!」

佐天「え・・・?うグ・・・ッ!?」

彼の振り上げた腕が、少女の軽い身体を吹き飛ばしていた

ゴゥンと嫌な音を立てて、ベッドの淵へと少女は突き飛ばされた

佐天「・・・う・・・あ・・・」

―どうして・・・?私の力なんて、何の役にも立たないの・・・?

ゆっくりと彼が立ち上がった。涙を流しながら、途中で何度も何度も動きを止め、自分の身体に抵抗を示しながらも

ゆっくりと、少女の前へとやってきた。手を、ゆっくりと振りかざす

―ジョセフさんなら・・・ジョセフさんに連絡を・・・早く、来て貰わないと・・・

そこまで考えて、それが出来ないと理解してしまった

あの老人たちは今、恐らくDIOと対峙している頃合いだろう

『我々の目的はDIOを倒す事だ。もし奴との戦いで負傷や何かあったとしても、私は助けないでいるつもりでいる』

その言葉を思い出す。目の前の彼と、自分なんかの命を救う為に来る訳がない

足に力を込めて、何とか立ち上がる。その眼は虚ろで、もうどうしたら良いのかなんて分からない。
それでも、立ち上がった

佐天「私が・・・助けないと・・・わた―」

彼の腕が勢い良く振り下ろされた

ぶぅんと空を切る音と共に、少女の服が破り捨てられる

佐天「・・・え・・・?」

自分を引き裂くと思った彼の腕は、その寸前の空間へと振り下ろされ、そのお陰で身体には傷一つ付かずに済んでいた

上条「やらせるか・・・!佐天を・・・!大事な仲間を・・・俺は・・・!」

息を荒げて小さく呟く。それは彼が自身の中に居る物へと呼び掛けている様であった

ゆっくりと再び腕が構えられる。そして勢い良く拳を少女の胸へと伸ばし

その直前で、減速して少女を突き飛ばすだけに終わった

佐天「とう・・・ま・・・?」

ベッドの上に突き飛ばされた少女が、口から血を流す彼の姿を見る。口の中を切ってしまったのかもしれない

上条「逃げろ・・・ハァ・・・ッ!俺がまだ・・・!こいつに負けないうちに・・・早く・・・ッ!」

一歩、また一歩と彼の身体が近づいてくる

恐ろしいとは思わなかった。絶望も何も感じなかった

その彼の姿が、とても強く見えた

その彼の姿が、とても格好良かった

彼を、助けたかった

上条「佐天・・・何で逃げてくれないんだよ・・・!お願いだから・・・逃げてくれよ・・・!
   俺に佐天を殺させないでくれよ・・・っ!」

ベッドの上に倒れる少女に、馬乗りになるような格好で、腕を振り上げたまま彼は泣いていた

―当麻の身体の肉の芽は、身体の内側にあるもの・・・

振り下ろしたその拳は、やはり少女の顔の横を抜けて、ベッドを突き破る

―私の力でも、直接流しこめば・・・でも、どうやって・・・?

彼の身体を引き裂いて、どこにあるか分からない肉の芽を探り当てる事など不可能であった

もし出来たとしても、そんな事をすれば彼自身の生命の危機に繋がる

佐天「あ・・・分かった・・・」

たった一つだけ、方法があった。どうしてこんな簡単な事に気が付かなかったのだろうか

佐天「・・・当麻、私も信じているからね」

ポーチの中から、小瓶を一つ取り出す。そしてその中身を全て口に含む

抱き締める様に彼の首に両手を伸ばし、顔を近づける。そして

彼女は彼に、口づけをした

上条「・・・っ!?」

彼女の唇が自分の唇に触れる。そしてそこから、何かの液体が少しずつ流れ込んで来る

暖かくて、身体の中が清められて行くような不思議な感覚

自分の中に居る何かが、腕を彼女の背中へと回し、その白い柔肌を切り裂こうとしていた

―させるか・・・っ!もう、お前なんかに・・・!

ありったけの力を全て使って、彼女の身体を強く抱きしめる。離れる事のない様に、傷付ける事のない様に

互いに露わになった胸が触れあう。柔らかくて、とても安心出来て、力が沸き上がって来る

少女の口から零れ出した液体が、喉を伝わり、互いの胸の間を通り抜けて行く。そこに痺れるような感覚が走った

身体の中で何かが暴れている。彼女を突き飛ばせと、この行為を止めろと、そして殺せと身体に命令をしている

―佐天は俺を信じると言ってくれた・・・!だから、俺は・・・!俺も佐天を信じなきゃいけないんだよ・・・ッ!!

まだ彼女の身体は震えていた。だから、もっと強く、もっと優しく、彼女を抱き締めた

だから、彼女の唇をもっと強く求めた

今まで感じた事の無い程に強い、命が体中を駆け巡り、身体の中から全てが浄化されていった

口の中に含んだ液体が、全て無くなった後も、二人はずっと口づけを続けていた

上条の身体が、ゆっくりと倒れて彼女に押し倒される。そこで、二人の顔が離れた

上条「・・・ありがとう・・・佐天・・・本当に・・・」

佐天「うん・・・ううん・・・ありがとう・・・私を信じてくれて・・・」

ぽたぽたと、彼の顔に雫が落ちてくる。長い髪を涙で張り付かせた少女が、泣いていた

上条「嬉しいなら、泣くなよ・・・泣き虫・・・」

佐天「当麻だって・・・私は涙子だから、良いんだもん・・・」

二人とも、互いを抱きしめたまま泣いていた

佐天「当麻、腕貸して?」

彼女に言われるがままに、腕を差し出す。身体に相当無理を掛けてしまったのだろう。内出血を起こしていた

佐天「これくらいなら、すぐ治るよ」

触れるだけで、痛みが引いてくる。大した怪我ではない物の、水の補助も無しに、彼女は治療をしていた

それから体中に触れて癒して行く。彼も身体の内側から沸き上がる感覚に身を委ねている

佐天「あ、そうだった!」

突然顔を青くした彼女が身体を起こす。彼女のはだけた胸元の二つの球体が大きく揺れる

上条「ぶっ!ど、どうしたんでせうか佐天さん・・・!?」

―発育良すぎるだろ・・・っ!あ、やば・・・

佐天「ご、ごめんね当麻っ!さっきの痛かったでしょ・・・!?今そこも治療するから・・・!」

先程の反応がどうやら相当痛そうに見えたらしい。事実として死ぬほど痛かったとは言え

馬乗りの体勢のまま、彼女の手が彼のズボンへと伸ばされた

上条「や、やめろぉぉぉぉぉっ!さてぇぇぇぇぇぇぇんっ!!お願いだからやめてぇぇぇぇぇぇっ!!」

慌てて起き上がる。この場面でそれをやらかしたら、もうお婿に行けない。それだけは死守する。
否、しなくてはならない

佐天「え?きゃっ!」

馬乗りの状態だった彼女の身体の上に、今までとは反対に覆いかぶさるような格好になってしまう

佐天「え・・・!?あの・・・っ!その、当麻・・・!?ま、まだ心の準備が・・・っ!」

暴走が勘違いを呼ぶ。胸をはだけさせた男が、同じく服を破られた少女の上に跨っている

この格好を第三者が見たら、間違いなく自分が彼女を押し倒したと言うだろう

―・・・ヤバいヤバいヤバいヤバい・・・!どうしてこうなった・・・!

佐天「・・・ど、どどど、どうぞ・・・っ!」

覚悟を決めたかの様に、佐天が両手をぎゅっと握り、頬を染めて目を硬く閉じていた。
何か恐怖でもあるのだろうか、かたかたと震えている

上条「・・・ふ、ふこ―」

「いくじなし・・・」

上条「え―」

勢い良く起き上がった彼女が、彼に抱き付いて、もう一度口づけをした

能力も戦いも関係のない、一人の男と女としての、キスを

佐天「・・・ぷはっ。当麻、今何て言おうとしたの?」

意地悪な顔をした少女が、彼の目を見据える

上条「・・・本当に良い仲間を持って、上条さんは本当に幸せですよ」

彼女が頭を、彼の肩に預けて呟く

佐天「・・・私にも・・・まだチャンスはありますか・・・?」

上条「え、今何て・・・佐天・・・?」

疲れと緊張と安堵に包まれた少女は、彼を抱き締めたまま、抱き締められたまま

上条「・・・おやすみ・・・」

意識を失った



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