ルルーシュ「ここが学園都市か……」

2010年03月03日 21:28

ルルーシュ「ここが学園都市か……」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/27(土) 23:36:09.70 ID:1zQ2a26A0

「職員室はどこだ? 校内案内も見当たらない。始業時間も近いし、まずいな」
「よお、どうかしたか外人さん」

ルルーシュが辺りをキョロキョロ見回していると、
それを見かねた少年が歩み寄ってきた。
黒髪をツンツンに尖らせた人の良さそうな少年だ。

「今日からこの学校に転入するのですが、職員室の場所が分からなくて……」
「それなら案内するぜ。ついてきなよ」

少年が気さくに笑って歩き出した。ルルーシュは慌てて後を追う。

「俺は1年の上条当麻。あんた名前は?」
「1年に転入するルルーシュ・ランペルージです。よろしくお願いします。上条さん」
「同学年なのに敬語なんていいよ。着いたぜ。ここが職員室。失礼しまーす」


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「あら? 上条ちゃん何か御用ですかー? 単位についてなら聞けませんよー?」
「違うって小萌先生。転校生が職員室の場所が分からないって言うから連れてきたんだ」
「そうだったんですかー。ルルーシュ・ランペルージ君ですねー?」

小萌先生と呼ばれた人物は恐ろしく幼かった。
ランドセルを背負っていても違和感が無いほど驚異的な童顔だ。
この少女が教師とは、俄には信じがたい。
ルルーシュは思わず疑問を口にしてしまう。

「……上条、なぜ職員室に幼じ―」

上条が慌ててルルーシュの口を塞ぐ。

「それ以上言わない方がいいぞルルーシュ。先生は大人の女性だ。もう三十路―」

上条がしまったと気づいた時にはもう遅かった。

「上条ちゃーん、お情けでもらった単位の分、補習が増えますよー? 勉強熱心で先生嬉しいです―」
「冗談ですすみませんすみませんすみません……」
「明日から楽しみにしておいてくださーい。腕によりをかけて準備してきますよー」
「ふ、不幸だ……」

「それではルルちゃんも私の受け持ちですから教室に行きましょうかー」
「ル、ルルちゃん……」

その幼い外見から、あだ名に抗議することが憚られる。
子供の言葉を大人気なく否定するような罪悪感がそこにはあった。
ルルーシュには「ルルちゃん」というあだ名が定着しないことを祈ることしか出来なかった。

ルルーシュは小萌先生から紹介があるまで廊下で待つことになった。
転校生が来るという情報に教室内の生徒たちがざわついている。
ルルーシュはどうもこういう雰囲気が苦手だった。
人前に立っても特に緊張はしないのだが、何故か人の注目が集まる場面に出くわすと、
自分は目立ってはいけないような感覚に囚われてしまうのだ。

「おめでとう子猫ちゃんたちー、残念でした野郎どもー、今日からこのクラスに加わるルルーシュ・ランペルージ君ですー」

ルルーシュが意を決して教室に入る。
無遠慮な好奇の眼差しにたじろいでしまいそうになるが、ファーストインプレッションは大切だ。
嫌味にならないように自然な微笑を浮かべ、ハキハキとした発声を心がける。

「今日からこの学校に転入することになったルルーシュ・ランペルージです。よろしくお願いしま―」
「なんでや! なんで男なんや! しかもイケメン外人ってボクのキャラと被るやないか!」

奇抜な青い髪と派手なピアスが特徴的な男子生徒がルルーシュ渾身の自己紹介を遮る。
クラスメイト達には慣れた光景らしい。呆れる者、苦笑する者、憤慨する者様々だ。

「全然被ってねえよこのエセ関西弁! 転校生が困ってんだろ!」

上条の鋭いツッコミにルルーシュは何故か安心してしまう。
今のところ完全にアウェイである教室で、さっき知り合ったばかりとはいえ見知った人間がいるとなぜか心強かった。

「そんなことゆうたら、カミやんだって困るやろ。男が相手じゃカミやん自慢のフラグメイカーも使えんやないか」
「困らねえよ!」
「まさか男まで! 確かにあれだけ整った顔しとるし女装させれば……カミやん、恐ろしい子!」
「やめろ……真剣に友達を辞めたくなる」

自分の与り知らぬところで嫌な話が進行していることに困惑するルルーシュだったが、
転校初日に声を荒げて注意するわけにもいかない。
ルルーシュは小萌先生が治めてくれることを期待してちらりと横を見る。
頬を膨らませてぷるぷるしていた。可愛い。
反射的にときめいてしまったルルーシュだったが、すぐにその考えを打ち消す。
非常にまずい。今にも泣きそうだ。

「冗談やないかー。なあ、ツッチー。あら?」
「そういえば土御門は来てないんだな。サボリか?」
「まあ、いつものことやし、気にしても仕方ないんやないか?」

もはや話は完全に逸れ、どうでもいい世間話に移行していた。
ルルーシュが誰かどうにかしてくれないかと人任せで静観していると、
憤慨する者にカテゴライズされていた女生徒が周りに殺気をまき散らしながら立ち上がった。
どうやら我慢の限界のようだ。

「いい加減にしなさいよそこのバカ二人!」
「悪い悪い。そんなに怒るなよ吹寄」

上条が反省しているようには聞こえない返事をする。

「あれ!」
「ん?」

吹寄と呼ばれた女生徒が小萌先生を指差す。

「上条ちゃんは……なんでいっつもいっつも……お話を聞いてくれないんですかー?」

小萌先生も我慢の限界、涙腺が決壊寸前だ。
上条の顔が青ざめる。

「すみませんすみませんすみません」
「やーい、カミやんが小萌先生泣かしたー!」
「てめえもだろうが!」

上条の右ストレートが綺麗に決まったところでやっと教室が平静を取り戻した。
ルルーシュが自己紹介を済ませると、上条の前の席に座るよう指示される。

「転校生。か」

黒髪ロングの女生徒がポツリとつぶやく。

「姫神、どうかしたか?」
「キャラが。私の転校生キャラが……」
「それはなんというか、元気出せ」
「うん」

ルルーシュにとって初めての能力開発の授業は予想以上に難解な代物だった。
四苦八苦して、何も消化することが出来ないうちに、昼休みになってしまった。
ルルーシュは上条に誘われ、上条の友人青髪ピアス(上条がそう呼んでいるらしい)と3人で昼食を取ることになった。

「ルルーシュはやっぱり一人で学園都市に来たのか」
「ああ、両親は本国にいる。最先端科学や超能力が大好きで、強引に留学の手続きをさせられて、全く困ったものだよ」
「それにしても日本語上手いんやな。あっちにいるうちからずっと勉強しとったん?」
「幼い頃は日本にいたんだ。だから日常会話なら大丈夫。難解な文章なんかは少し自信が無いけど」
「へー、まあこの高校はレベル低いし大丈夫だと思うぜ」
「そうなのか? 午前中の授業を聞くと分からない事だらけだ」
「なあなあ、そんな勉強の話なんてどうでもええやん。そんなことよりルルーシュ君は姉か妹おらへんの?」
「やっぱりそこは聞くんだな……」

上条は少し呆れ気味だ。

「当たり前やないかー。クラスメイトの姉に妹、それも外国人、たまらん属性や」

ルルーシュが身を乗り出して異常な食いつきを見せる青髪ピアスに困惑していると、
上条がその顔面を鷲掴みにして押し戻す。

「ごめんな、ルルーシュ。こいつ、ちょっと頭が不自由なんだ」
「はは、残念ながら姉も妹もいないんだ。俺は一人っ子……っ!」

ルルーシュが突然の頭痛に襲われ、顔をしかめる。
ルルーシュは学園都市に越して来てからというもの、日常の些細な事に違和感を感じ、
併せて起こる頭痛に悩まされていた。原因は分かっていない。

「大丈夫か?」
「ああ、ちょっと頭痛が。でも大丈夫。最近たまにあるんだ」
「環境の変化で疲れてるんやないか? 気を付けるんやで?」
「ああ、ありがとう」
「大丈夫? 保健室行く?」

吹寄と昼食を取っていた姫神が心配そうに声を掛けてきた。

「……姫神、突然どうした?」
「新しい。キャラづけ」
「没個性的な方向に走ってないか?」
「迷走しとるなー」

「没個性的」という単語に姫神の表情が凍りつく。

「大丈夫だよ。ありがとう」
「うん」

ショックを受けた姫神がふらふらと自分の席に戻っていく。
吹寄の殺意に満ちた視線が突き刺さる。
今のは上条と青髪ピアスが悪いのでは、と困惑するルルーシュだったが、
どうやら弁解の余地は無いようだ。
吹寄の怒声が教室に響き渡った。



第七学区、窓の無いビル。
巨大ビーカーに浮かぶ、男にも女にも子供にも老人にも見える人間、学園都市統括理事長アレイスター・クロウリーは、
多角スパイ土御門元春の面会に応じていた。

「どういうつもりだ、アレイスター。あんな物騒なものまで用意して」

土御門の剣幕をまったく意に介さず、穏やかな口調でアレイスターが答える。

「餌といったところかな。同志を呼び寄せるためのね」
「同志?」
「遠い昔に袂を分かち、異世界へと渡った同志との再会……いささか楽しみでもある」
「まさかお前にまだ、何かを楽しみに思うような感情があるなんてな」
「ふふ」
「それで、俺の仕事は餌の監視ってわけか」
「監視の為の環境は整えておいたよ」

土御門がアレイスターの白々しい態度に舌打ちをする。
アレイスターは直通情報網を形成するべく、学園都市中に5000万機の滞空回線(アンダーライン)を散布している。
もちろん一般の生徒はその存在を知らないが、「グループ」がその情報を掴んでいることをアレイスターも把握しているはずだ。

「次から次へと胸糞の悪い仕事ばかりだ」

アレイスターはその言葉を了承とみなした。案内人、結標淡希が姿を現す。

「結標、頼む」
「ええ」

結標の手が土御門の肩に置かれ、次の瞬間には窓の無いビルの外へ着地していた。

「で、どうするの?」
「どうするもこうするもないぜよ。“あれ”も今のところは安定してるみたいだが、暴走すると厄介だにゃー」

土御門の言葉に結標は怪訝な表情を浮かべる。
そもそも今回の仕事は「グループ」ではなく、土御門個人に依頼されたもので、結標には詳細な情報が回ってこなかった。
せいぜい、「俺はこんな仕事をしているから「グループ」への依頼はお前らで勝手に片付けておけ」程度のものだ。
野放しにされた対象を監視するだけの簡単な仕事のはずだが、土御門は妙に嫌がっている。

「監視対象って学生でしょ? 一体どんな能力なのよ」
「『絶対遵守』。全く面倒な仕事を押し付けられたにゃー」



「なんだ、ルルーシュも同じ寮なんだな」
「そうみたいだな。というか部屋もお隣か」
「おー、上条当麻―、久しぶりだなー」

二人が廊下の向こうに目を向けると、清掃ロボがふらつきながら近づいてきた。
不安定な清掃ロボの上でメイド服の少女が器用に正座している。

「おう、舞夏、今日はどうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないぞー。せっかく兄貴に会いに来たのに、急用なんて言って出て行っちゃうしなー」
「へー、あいつ何してんだ? 学校にも来なかったし」
「分からないぞー。暇だからお前んとこのシスターと遊んでたら、腹が減ったってうるさいから飯作ってやったぞー。これ領収書なー」
「おう、悪いな……って何だよ、これ! いつもの食費より断然高いぞ!」
「私がいつも利用してる高級スーパーだからなー。安かろう悪かろうな食材ばかり食べてると体に悪いぞー」
「不幸だ……」

上条ががっくりと肩を落とす。上条と話していたメイド服の少女の視線がルルーシュへ向いた。

「なぁなぁ、上条当麻―、さっきから気になってたんだけど、そっちのイケメンは誰だー?」
「あぁ、今日からうちの学校に転校してきたルルーシュだ」

上条はルルーシュの方へ向き直り、メイド服の少女を紹介する。

「ルルーシュ、こいつは土御門舞夏。今日は来てなかったけど土御門元春っていうクラスメイトの義妹だ」
「よろしくお願いします。舞夏さん」
「よろしくなー。おー、噂をすれば兄貴が帰ってきたぞー」

金髪にサングラス、Yシャツのボタンを豪快に開けた、見るからにガラの悪そうな男が歩いてくる。

「ん? カミやんに舞夏、それに……」
「転校生のルルーシュだよ。今日からこの寮のお隣さんだ」
「あー、お前が……」

土御門は一瞬険しい表情を見せる。

「なんだ、もう知っているのか?」

上条が不思議そうに聞くと、土御門は軽薄に答えた。

「噂で小耳に挟んだだけだけどにゃー。お隣さん同士仲良くしようぜい」
「ああ、よろしく」

突然、土御門が乱暴にルルーシュと肩を組み、顔を寄せる。

「それから、『義妹に手を出したら殺す』、から注意するんだにゃー」
「は、はぁ……」
「転校生にいきなり何言ってるんだよ」
「冗談だぜい。それじゃ、また明日にゃー」
「あー、兄貴、待つんだぞー」

ルルーシュは今の言葉の真意が掴めず、部屋へ戻る土御門兄妹の背中を見つめていた。

「まったく、とんだシスコンだな。ん? ルルーシュ、どうかしたか?」
「いや、真に迫るというか、とても冗談には聞こえなかったと思って」
「そうか? 義妹が絡むといつもあんな感じだから気にすんなよな」
「妹思いなんだな」
「ただのシスコンだろ。じゃあ、また明日な。何か困ったことがあったら言ってくれ」
「ありがとう。また明日」

―義妹に手を出したら殺す。
本当に冗談だったのか? 何か別の意味を持っている、ルルーシュはそんな気がしてならなかった。

「さて、これくらいで一通り片付いたな。明日も早いし、今日はもう寝るか」

引越しをして以来コツコツと進めてきた荷物の整理がやっと一段落し、
ほっと一息を着いたルルーシュは明日に備えて早めに休むことにした。
ベッドに潜り込み、電気を消すと、今日一日の出来事が思い返される。
とりとめのない記憶が浮かんでは消えていく中、昼休みの頭痛の件だけは心に引っかかったままだ。
そもそも何故頭痛が起こったのか。違和感を感じたのは一人っ子という言葉だ。
しかし、ルルーシュには生まれてからずっと父と母との三人家族で過ごしてきた記憶が確かにあり、疑う余地は無い。


―お兄様

「……っ!」

突然、車椅子に座った栗色の髪の少女が、ルルーシュの脳裏をかすめる
どこかで見覚えがある気がするが、はっきりしない。
強烈な違和感にルルーシュは吐き気すら覚えていた。
環境の変化によるストレス、と原因をこじつけ、精神の安定を図る。
深呼吸を繰り返して、どうにか落ち着きを取り戻した頃には既に数時間経っていた。

「明日も早い。早く寝よう」

望んでもいないのに次々と浮かんでくる考えを強引に頭の中から追い出し、ルルーシュは眠りについた。

豪奢な装飾がふんだんに盛り込まれたステージカー。
警備の為に前後を固める人型のロボット。
拘束服を着せられ、磔にされた囚人。
畏怖の目を向ける聴衆。

―なんだ、これは。俺は一体何をしている。

ルルーシュの目の前には黒いマントを羽織ったマスクの男が立っている。
マスクの男が剣を引き抜き、ルルーシュの持つコイルガンを弾き飛ばすと、
ルルーシュの胸を躊躇無く貫いた。
ルルーシュが満足そうに小さく笑い、マスクの男にもたれかかる。

「ル、ルルーシュ」
「これは、お前にとっても罰だ……お前は正義の味方として仮面を被り続ける……
?????として生きることはもう無い……人並みの幸せも……全て世界に捧げてもらう……永遠に……」
「そのギアス、確かに受け取った」

剣が引き抜かれ、支えを失ったルルーシュは目の前の傾斜を滑り落ちる。
傾斜の先では先ほど頭に浮かんだ栗色の髪の少女が呆然とルルーシュを見つめていた。

「……お兄様?」

血みどろのルルーシュを信じられないといった声音で呼びかける少女。
少女がそっとルルーシュの手に触れた。
何かを悟ったのか、その目に涙を浮かべる。

「そんな……お兄様は……今まで……」

ルルーシュの意識が遠のく。少女の言葉がよく聞こえない。
満ち足りた表情を浮かべ、目を閉じようとしている。

「お…いさ…、……して…ま…」
「ああ、俺は……世界を壊し……世界を……創る……」

そこでルルーシュは意識を手放した。

「何だ……今の夢は……最低だ」

飛び起きたルルーシュは汗で顔に張り付いた前髪を乱暴にかきあげると、深く息を吐いた。
胸を貫く剣の感触が妙にリアルで、つい本当に刺されていないか確認してしまう。

「昨夜頭に浮かんだ少女と、マスクの男……何だって言うんだ一体」

ふと時計を見ると7時30分を回っている。
すぐに支度をしなければ始業時間に間に合わない。
ルルーシュは慌ててベットを飛び出ると気持ち悪い汗を流そうと風呂場へ向かった。



「とうま! お昼ごはんはどうなるの?!」
「冷蔵庫にあるもの勝手に食ってくれ!」

ルルーシュが支度を終えて部屋を出ると隣室の玄関の前で、
上条と銀髪碧眼のシスターのような格好をした少女がなにやら言い争っている。

「ていうか離せよ! 上条さんは入院続きで出席が危ないんだから遅刻なんかしてる場合じゃないんですよ!」

上条がシスターを本気で引き剥がしにかかるが、腰にがっちりとしがみついているため、振りほどけそうにない。

「そんなこと言ったって、冷蔵庫には何も入ってないかも!」
「昨日舞夏が作ってくれた料理の残りは? 結構な量残ってたろ?!」
「昨日の深夜にお腹が空いて食べちゃったんだよ。あの程度の量、私にかかれば一晩でぺろりなんだよ!」
「胸を張るな!」

お邪魔そうだが、知らないふりをして行ってしまうのも悪い気もする。
ルルーシュは短い葛藤の末、とりあえず声だけは掛けて、先に行こうと決めた。

「おはよう。上条」
「おーす、ルルーシュ。ちょっと待っててくれ。今すぐ行く」

ルルーシュには本当に今すぐシスターをどうにか出来るようには見えなかったが、
迷っている自分を助けてくれた上条に待っててくれと頼まれたら、待つしか無い。
上条はげんなりしながらポケットの財布を取り出し、千円札をシスターに押し付けた。

「ほら、これで何か買って食え!」
「やったー! とうまは太っ腹なんだよ!」
「言っとくけどお釣りは返せよ」
「分かったんだよ。お釣りが出ないようにするんだよ」

上条が一際大きな溜息をつく。

「……不幸だ」

「さっきの女の子って?」
「ああ、インデックスのことか? 居候なんだ。うるさくしたらごめんな」
「それは構わないけど……女の子と同棲なんて凄いな」
「言っておくけどルルーシュの想像しているような関係じゃないぞ?上条さんのストライクゾーンは年上の優しいお姉さんだ」

小学校高学年くらいにしか見えない子供、しかも親戚とも思えない外国人が相手では、そこはかとなく犯罪の匂いがしてくる所だが、
先ほどの言い争いを見るとインデックスと上条は対等どころか上条が振り回される関係のようだし、
今の上条の言葉も嘘をついているようには見えない。
ルルーシュは学園都市に来て初めての友人がロリコンの犯罪者では無いことに安堵する。

「でもなんだかいいな。帰ってきて誰かが迎えてくれるっていうのは」
「おいおい、もうホームシックかよ。それにそんなにいいもんじゃないぞ?
人一倍食べるけど家事すら手伝わないし、上条家の家計簿は火の車だ」
「大変だな。……っ!」

再び、ルルーシュを突然の頭痛が襲う。
上条の話に何故か共感してしまったが、誰かを匿った経験などルルーシュには無いはずだった。
ましてや家事を手伝いもせず食っちゃ寝してるような奴ならば、問答無用で追い出す自信がルルーシュにはある。

「また頭痛か?」
「ああ、大丈夫。大したことない」
「本当かよ。良い病院を紹介するぜ?」

上条が心配そうにルルーシュの顔を覗きこむ。
病院へ行くのは億劫だったがこれ以上心配させるのも悪いと思い、ルルーシュはその申し出を受けることにした。

「それじゃあ、お願いしようかな」
「おう、放課後にでも案内するぜ」



「ふむ、一通り検査してみたが特に問題は無いね。少々痩せすぎのようだが、それ以外は健康そのものだ」

第七学区の病院に案内されたルルーシュはカエル顔の医者から様々な検査を受けさせられ、健康のお墨付きをもらっていた。

「頭痛の原因はなんだったんですか?」
「今のところそれらしい原因が見つからないね。少し調べてみる時間をもらえないかな?」
「ええ、お願いします。ありがとうございました」

カエル顔の医者が申し訳なさそうに診察を終わらせる。
身体検査(システムスキャン)を初めとする様々な検査を受け終わる頃には完全下校時刻がとっくに過ぎていた。
当然、病院の診療時間も終了している。
放課後にアポ無しでやってきたのに、遅くまで懇切丁寧に対応してくれたカエル顔の医者に深く感謝しつつ、ルルーシュは席を立った。
その時、カエル顔の医者に呼び止められる。

「ルルーシュ君、君は学園都市にやって来たばかりだったね?」
「ええ、そうですが?」
「つまり、能力開発を受けた経験も無いね?」
「はい、入学時の身体検査、それに学校で二日分の授業を受けただけです」
「ふむ、ありがとう。少し気になっただけだ。それじゃあ、気をつけて帰りなさい」
「ありがとうございました」

診療時間を過ぎた病院の廊下は薄暗く、人気も無い。
診察室を出たルルーシュがふと横を見ると、女子中学生の可愛らしい制服にゴツゴツした軍用ゴーグルという
アンバランスな出で立ちの少女が立っていた。
どうやら診察が終わるのを待っていたようだ。
ルルーシュが軽く会釈をすると、少女は黙って先ほどまでルルーシュが診察を受けていた診察室へ入っていく。
案内してくれた上条に何かお礼を買っていこうか、あのシスターもいるし、何か甘い物がいいかな、
などと考えながらルルーシュは病院を後にした。



「申し訳無い。すっかり待たせてしまったね」

カエル顔の医者が軍用ゴーグルの少女、ミサカ10032号に頭を下げる。

「いえいえ、これくらいいつもお世話になっているのだからいいのですよ、
とミサカは内心を隠しつつ模範的な返答をしてみせます」
「それは隠せてないと思うんだがね? まあ、お詫びはまた今度するとして、定期検診を始めようか」

ミサカ10032号が何かを聞きたそうな目でカエル顔の医者を見つめる。

「どうかしたのかい?」
「先ほどこの診察室から出て行ったのはどなたですか、とミサカは思い切って質問をします」
「ああ、彼は上条君のクラスメイトだよ。最近学園都市に越してきたそうだ。
それにしても君が上条君以外の男の子に興味を持つなんて珍しいね」
「その発言はセクシャルハラスメントに該当しますよ、とミサカは呆れながら警告します」
「ごめんごめん、そんなつもりは無いんだがね。彼がどうかしたのかい?」
「いえ、少し気になっただけです、とミサカは含みを持たせつつこの話題を終了させます」
「ふむ」

ミサカ10032号の発言に訝しげな表情を浮かべるカエル顔の医者だったが、
これ以上追求してもミサカ10032号は答えないだろうと考え、検診を始めることにした。

ミサカ10032号の定期検診は数十分で終わった。全くの異常無し。
樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の中枢の部品が納められたキャリーケース、残骸(レムナント)争奪戦の際の
無理が祟って培養器の中での静養を余儀なくされていたミサカ10032号だが、もう心配は無さそうだ。
ミサカ10032号が自分の病室に戻り、一人になった診察室でカエル顔の医者はミサカ10032号も気にしていた少年、
ルルーシュ・ランペルージのカルテを見つめていた。

「能力開発を受けていないはずの彼に、何故能力が備わっている?」

天然の異能者がいないわけではない。
自然界で何らかの要因が重なった結果、能力を発現させるものが少ないながら存在する。
学園都市で言えば、幻想殺し(イマジンブレイカー)の上条当麻、吸血殺し(ディープブラッド)の姫神秋沙、
学園都市第7位のレベル5、削板軍覇などが挙げられる。
だが、彼らとルルーシュ・ランペルージには大きな隔たりがある。
前者は脳を調べても能力発現の手順が踏まれておらず、そのメカニズムが分かっていないのに対して、
ルルーシュ・ランペルージの脳には確かに能力開発の痕跡があり、能力発現の手順がしっかりと踏まれているのだ。
レベル5級の精神掌握系能力者、カエル顔の医者はそう結論づけていた。

「しかし、この脳は綺麗すぎる……」

正しい手順を踏んで能力が発現するよう開発されているルルーシュの脳だが、一般的な能力者とも一線を画していた。
一般的な能力者は様々な能力開発カリキュラムを受け、徐々に自分に適した系統の能力を発現させて行く。
能力者は必ず「様々な」カリキュラムを受けた痕跡が脳に残るはずなのだが、ルルーシュの脳にはその痕跡が見られない。
まるで、あらかじめどんな能力に目覚めるか分かっていたかのようにピンポイントで開発されている。

「君なのかい? アレイスター」

カエル顔の医者のつぶやきは誰にも聞かれることなく、学園都市の夜に消えていった。



「ごはん、ごはん、ごっはっん~♪」

ご機嫌に歌を唄うインデックスの後をルルーシュと上条が追う。
上条へお礼を買っていこうと考えていたルルーシュだったが、
学園都市では完全下校時刻を過ぎるとほとんどの店が閉まってしまうことを失念していた。
結局、営業している店舗と言ったらコンビニくらいしか見つけることが出来ず、後日改めてお礼をすることにしたのだ。
今日はルルーシュが学園都市に来てから初めての土曜日だ。
学生で賑わう学園都市最大の繁華街、第十五学区を上条に案内してもらいつつ、どこかで食事をしようという予定である。

「おいおい、インデックス、節度は持ってくれよ? 越してきたばっかりのお隣さんをいきなり破産させたら笑えねえよ……」
「大げさな……上条もインデックスも好きに食べて大丈夫だよ」

ルルーシュの言葉にインデックスは突然静かになり、祈りを捧げだした。

「とうま、ルルーシュから後光が差しているんだよ」

上条がため息をつき、ルルーシュが苦笑いをしていると、前方から女子中学生が近づいてきた。
ルルーシュは昨日診察室ですれ違った女子中学生を思い出した。
軍用ゴーグルこそつけていないが、非常によく似ている。

「あら、あんたこんなところで何してんのよ」
「おーす、ビリビリ」

上条の「ビリビリ」という言葉に少女の顔が歪み、前髪の先をびりっと電気が流れる。

「ビリビリ言ううなあああああああああああああ」

一際大きな電気が走る。上条が慌てて目の前の少女の頭を右手でおさえつけた。
そこには初めから何もなかったかのように電気が霧散する。

「ばかやろう!俺はともかく周りが感電したらどうすんだよ!」
「それはあんたがっ……わ、私が悪かったわよ。ごめん……」

上条に頭を撫でられる形になった少女の顔が真っ赤に染まる。
上条がもう落ち着いたと判断して手を離すと、少女は一瞬名残惜しそうな表情を浮かべるが、すぐに顔を引き締めた。

「むぅ~、とうまがまた女の子といちゃいちゃしてるんだよ!」

上下の歯をガチガチさせて今にも上条に齧りつきそうなインデックスを、ルルーシュが、ほらほらもう少しでおいしいご飯だから、となだめすかす。

「で、何をしてるわけ?」
「ああ、友達と遊びにきただけだよ」

少女がインデックスをなだめるルルーシュの様子をちらりと見る。

「いつものちびっこに今日は新しい外国人、あんたって意外と国際派?」
「まあ、たまたま俺のクラスに転入してきて、たまたま寮が同じだったってだけだけどな」
「ふーん、転校生ね。学園都市内? それとも……」

「学園都市の外から、ですよ」

インデックスをなだめていたルルーシュが少女の方へ向き直る。

「ルルーシュ・ランペルージです、よろしくお願いします」
「御坂美琴です。ってそっち年上なんだからそんなに畏まらなくてもいいですよ、ははは」
「おお、御坂の丁寧語なんて初めて聞いた」
「うっさいわね」

「お前こそ一人で何やってるんだ?」
「黒子と遊びに来たんだけど、風紀委員(ジャッジメント)の招集で置き去りよ。
なんでも侵入者が現れたって話らしいわ」
「またかよ。面倒なことにならなきゃいいけど」

ルルーシュが心配そうに尋ねる。

「よくあるのか?」
「以前はほとんど無かったんですけど、今年に入ってから増えたみたいなんですよね。
一体何をやってるやら」

心当たりがある上条は冷や汗がダラダラだ。

「それはね、魔じゅ―」

魔術師と言いかけたインデックスの口を上条が慌てて塞ぐ。

「まじゅ?」

ルルーシュと御坂が揃って聞き返した。上条が話題の転換を試みる。

「いや、なんでもない! それにしてもお前敬語が似合わねえよな。
ルルーシュ、ため口を許してやってくれ。こいつはお嬢様学校に通ってるのに一向にお嬢様らしくなれないんだ」
「なんですって!」

再び御坂の周囲に電撃が走る。

「あー、今のは俺が悪かった! でも街中でその電撃はやばい!」

上条が慌てて右手で頭を撫でると、先ほどのように電気が消失する。

「ふにゃー」

強力な電撃で今にも上条を焼き殺しそうな勢いだった御坂が、借りてきた猫のように大人しくなる。

「上条、それって……」

ルルーシュが訝しげに尋ねると、上条が御坂の頭に触れながら答えた。

「あー、俺は正真正銘のレベル0なんだけど、この右手だけは幻想殺しって言って、相手の超能力をかき消せちまうんだ。
効果は右手だけだけど、こうすればこのビリビリ中学生の電撃も防げちまうってわ……
いってええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

背後から忍び寄ったインデックスが上条の頭に齧りついた。

「とうま! そうやって何度も女の子の頭を撫でていちゃいちゃするのを見せつけられたら、
いくら慈愛の心を育む敬虔なシスターであるところの私であっても我慢の限界なんだよ!」
「やめろ! いてえ! 洒落になら……」

グロテスクな音が辺りに響き渡る。
倒れゆく上条が消え入りそうな声で呟いた。

「ふ…こう…だ……」


93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/28(日) 11:12:45.65 ID:M/SO5fHM0
用事があるのでここで中断します。
できたら夜に書こうと思う。


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