ダンテ「学園都市か」 第一章

2010年03月09日 21:43

ダンテ「学園都市か」

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/27(土) 21:42:27.50 ID:B5ACLTPv0

第七区 とあるファミレス

禁書「とうまーとうまー! これがいい!!」

上条「お前これ4人用のピザだろ!なんか得体の知れないの乗っかってるし!」

禁書「えー」

上条「こっちのやっすいお子様ランチにしなさい!」
上条「(うう…帰国早々コンロとレンジが同時に壊れて水道も止まるなんて不幸すぎですよ…)」

「先ほど入ったニュースです。第七区の○×銀行に複数の強盗が押し入り…」

店内に置いてあるテレビからの結構重要なニュースも上条は「不幸」にも聞き逃す。

カランッ
いっらっしゃいませー

上条が自らを襲った不幸に頭を抱えてる中、一人の銀髪の大男が喫茶店に入ってきた。

上条「(うお…なんだあのメチャクチャかっけーおっさんは…
    でっけえギターだなってかすげえ派手なカッコしてる)」

店員に案内されたその男は通路を挟んで上条たちの真横のテーブルに来ると
ゴドンッ!と大きなギターケースを乱暴に床に置き、
ドサッ!っと椅子に腰を降ろした。

上条「(何入ってんだあのギターケース…そういえば服装もどことなく魔術ちっくな…ッ!!)」

上条の頭の中を不安がよぎる。
そう、上条たちは今までに何度も魔術師に狙われ、襲撃を受けてきた。

上条「(まさか…いや、きっとあの人はイギリスかどっかから来た普通のパンクな人だ…!)」
上条「(いや!!油断するな!いつもこういうパターンからとんでもない事になってるじゃねえか!)」

上条の不安を露とも知らずにインデックスは幸せそうにお子様ランチをほお張っている。
そんな上条に更なる追い討ちが。

銀髪男「あー このピザのLと…このストロベリーサンデー頼む」

上条「(日本語ペッラペラじゃねえか!!魔術師って100%このパターンですよね!!)」


銀髪男「さて…お前が幻想殺しの坊やかな?」

上条「うきゃぁぁぁあぁッ!!」

禁書「とうま?どうしt…ッ!!!」

銀髪男「よう、禁書目録のおチビちゃん」

禁書「ダッダッダダダダ…!!ダンテ!スススススパーダの息子!!」

ダンテ「…俺の事覚えてんのか?」

禁書「お、覚えてないけど見ればわかるんだよ!!」
禁書「かつて魔界を封じた伝説の悪魔スパーダの息子!!魔剣士ダンテ!!』
禁書「魔界の帝王ムンドゥスを封印した最強の半人半魔!!』

上条「な、なんか良くわからないけど物凄くヤバイお方ってのだけはわかりますよ!!」

ダンテ「グゥーッド。さすがだねえおチビちゃん。」

上条「う、うるせえ!!何しにきやがった!?何企んでやがる!?ローマ正教の魔術士か何かか?!」

ダンテ「…お前バカだろ。今説明してくれたじゃねえか」
ダンテ「用があるっちゃあるんだが、お前らをどうこうするつもりは無いから安心しな。」

上条「じゃあ何だ!?説明してくれ!!」

ダンテ「その前にピザだピザ。」

上条「へ?」


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とある喫茶店の一角、とある三人を中心にして重い空気が漂う。
とはいえ重い空気を垂れ流しているのはツンツン頭の少年と修道服を纏った少女で、
事態の原因になった銀髪の男は何事も無く
ンン~グゥーッド等何やら英語で幸せそうに呟きながらピザをほお張っている。

上条「…で、何で来たんだ?何の用だ?」

ダンテ「…さて…どっから話そうかね」

とその時
バン!!ッと店のドアを乱暴に開け、何やら武装した男達が勢い良く入ってきた。

強盗1「床にふせろ!!ふせるんだ!!」
強盗2「死にたくねえなら言うことを聞け!オラァ!」

上条は頭に残っていたかすかな記憶を思い起こす。

上条「(ッ!!そういえば第七区で銀行強盗があったとか…!!)」

咄嗟にインデックスと一緒に机の下に潜る。
強盗犯達はアンチスキルとジャッジメントに追われていたのだろう。
サイレンの音が店を囲む―――。

上条「(さて…どうしたものか)」

店内に居る強盗犯は三人。
それぞれが銃器で武装。
トラブルがあったのか、何か興奮気味に口論している。

上条「(能力頼りの連中ならどうにかなったかもだが…銃はなあ…)」

禁書「とうま。ダメなんだよ。ここはじゃっじめんとに任せるんだよ。」

強盗1「おい!テメエ!」

上条「(うお!やべ!!こっちに来る!!)」

禁書「!!」ビクッ

上条達は驚いたが強盗犯の矛先は彼らではなく、
その真横でストベリーサンデーを何事も無く食す銀髪の大男であった。

強盗1「床にふせやがれ!」

ダンテ「いくら俺でも床に寝そべりながら食う程お行儀悪くないぜ。」

強盗1「うるせえ!死にてえのか?!」チャキ

銀髪の男は目の前に大口径の拳銃を突きつけられても平然と食し続ける。

上条「(あの余裕…インデックス曰くこいつメチャクチャ強いんだっけ…なんとかしてくれるんじゃね?!)」

強盗3「その余裕…お前能力者か? おい、やれ。」

強盗1「チッ!!」ガチ

ドンッ!!と炸裂音が店内に響く。

上条「…ッ!?」

至近距離から額に銃弾をブチ込まれ、銀髪男の鼻から上が吹き飛ぶ。
周囲に肉片が飛び散り、辺りには硝煙と血が混ざった形容し難い匂いが立ち込める。

上条「うそ…だろ…?」

力なく銀髪男の体がドッとテーブルに突っ伏した。

上条「テンメェェェェエエエエェエエエエェェエエ!!!」

その無残にも変わり果てた男を目の当たりにして嘔吐感がこみあげたが、
それ以上の怒りが彼を包んだ。

強盗1「何だ!てめえも死にてえのか!?」

上条「うるせぇ!!なんで殺した!!?ああ!?」

強盗3「目障りだ。そいつもやr」

「おい」

上条&強盗三人「え?」


頭の上半分吹き飛ばされた死体がムクリと起き上がる。

ダンテ「ダイニングテーブルでは静かにしなさいってママに習わなかったか?坊や」


上条と強盗三人は驚愕の余り口をパクパクさせる。

その間にも銀髪の男の頭部はみるみる再生していき、
10秒も経たないうちに元通りになった。

ダンテ「お行儀の悪い坊や達はお仕置きTIMEだ。」

呟くと、先ほど自分の額に銃弾を放った男の腕をガッと掴む。
そしてふがしの様にクシャっと握りつぶした。

強盗1「ガァアアアアアア!!」

まるで関節が一つ増えた様に見える腕を押さえながらのた打ち回る強盗犯。
銀髪の男の手にはいつ奪ったのか、その強盗犯の拳銃が握られている。

ダンテ「このオモチャは没収だ。ママにもっと教育的なのを買ってもらうんだな」

と言うとこれまたいとも簡単にベキベキッと握りつぶす。

強盗3「テ、テメエ!やっぱり能力者だったか!!」
強盗3「どういう能力か知らねえが、灰なっても生き返れるかぁ!!?」

ダンテ「さあな。灰になったことは無ぇからわからねえ」

リーダー格の強盗犯の腕から炎が噴出し、
銀髪の男を覆いつくす。

上条「(くそッ発火能力者か!!さすがにヤバイんじゃね!?俺の右t)」

ダンテ「ン~ンこれまたホットだな」

強盗3「…は?」

上条「えっ?」

業火の中から声が続く。

ダンテ「だがこの程度じゃあ俺のハートに火はつかねえぜ」

その言葉と同時にゴバッ!!と破壊音。

次の瞬間には先ほどまでリーダー格の強盗犯が立っていた場所には銀髪の大男が、
そしてその前方3mの壁にリーダー格の強盗犯が泡を吹きながらめり込んでいた。

上条からすればまるでテレポートでもしたかの様に見えたが、
その銀髪の男は前に飛び出して殴っただけである。

ただ、『とてつもない速度』で。

ダンテ「で、次はお前か?坊や」

強盗2「…ひ、ひぃ」

―――

―――

路上を奇妙な組み合わせの三人が歩く。
一人は白い修道服を着た小柄な少女。
一人は学生服を着たツンツン頭の少年。

そして真っ赤なコートに巨大なギターケースを担いでいる銀髪の白人大男。

上条「さっきの、あんた何の力を使ったんだ?やっぱ魔術か?」

ダンテ「いや 殴っただけだ。」

上条「…もしかして聖人?」

ダンテ「半分悪魔だ」

上条「…ほあ?」

禁書「半人半魔、父親が悪魔で母親が人間なんだよ」

上条「悪魔って…あの天使と悪魔の悪魔?」

禁書「とうま、何言ってるかわからないんだよ」

上条「悪魔…」

禁書「悪魔とは魔界の住人なの」

禁書「もともとこの世界と魔界は繋がる筈がなかったんだけど、
   太古の昔にある大悪魔が穴をあけて繋げちゃったの」

禁書「それでこの世界は魔界に侵略されて、滅ぼされされかけたんだけど、」

禁書「その時立ち上がったのがダンテの父親、英雄スパーダ!!」

禁書「自分も悪魔なのに人間側に付き、そして戦争を勝利に導き穴を塞いで侵略を防いだんだよ!」

上条「んん…なんか半分くらいしか分からなかったけど…」
上条「つまりこの方は人類を救った大英雄の息子さんなんですね!?」

禁書「ちっちっち それだけじゃないんだよ」

禁書「このダンテも数々の世界の危機を防ぎ、何度も人類を救っているんだよ!!」
禁書「既に父親を越えたとも言われてるんだよ!!」

上条「な…なんか…とにかく色々規格外な方というのが分かりました…!!」

ダンテ「悪魔ってのがどんなのか分かったかい?」

上条「いいえそこは全く」

ダンテ「だろうな」

ダンテ「あーあれだ、こっちの人間と同じく悪魔が暮らしていて、
    こっちの動物と同じく魔物が生態系を作ってる世界だ。」

上条「なんとなくわかった気がする…まてよ…
   俺がこの右腕で触ったらもしかしてダンテさんとか悪魔って消える?」

禁書「消えないんだよ。『悪魔』というちゃんとした『生命体』だから。」
禁書「全ての穴が塞がって、完全に魔界と切り離されたら『ありえない存在』になって消えるけど。」

上条「ん?穴は塞がったんじゃ?」

禁書「塞がったのは侵食が起こる大きな穴だけで、小さな穴は世界中に無数に残ったまんまなんだよ。」

ダンテ「そういう穴を通ってこっちに来るお客さんを、ブチのめすのが俺の仕事だ」

上条「そうそう、来た理由まだ聞いてなかったけど、ここに来たのもそういう悪魔をぶっ飛ばす為なのか?」

ダンテ「イェア」

上条「んで俺達になんか用があるって言ってなかったか?」

ダンテ「今回のお客さんの目的が禁書目録のおチビちゃんだ」

上条「なっ!?」

ダンテ「思い当たる節はたくさんあるだろぅ??なあ、禁書目録のおチビちゃん。」ニヤニヤ

ダンテ「なんせフォルトゥナの魔導書もたんまりその頭に入ってるしなぁ」ニヤニヤ
ダンテ「原典は俺が片っ端から処分したから、もうそのプリティな頭の中にしか存在しないわけよ」

禁書「フォルトゥナの術式はどれも、世界中の魔術師を集めても、
   魔力が全然足りなくて発動しないようなのばかりだけど…」

上条「今回の敵は人間じゃなくて悪魔…か…なあ、その狙ってる連中って結構ヤバイ奴らなのか?」

ダンテ「ああ。魔帝ムンドゥスの部下どもだ」

上条「まてい…?」

禁書「ムムムムムムンドゥス!!!?」

上条「なんなんだその『むんどす』って?」

禁書「魔帝ムンドゥス!!魔界の神であり王!!かつて人間界を滅ぼそうとした張本人なんだよ!!」

上条「うぉっ!!待てよ!!なんでそんなやべえ奴がインデックスを狙ってんだ!?」

禁書「というかダンテ!あなたが10年前に魔帝ムンドゥスを封印したはずじゃ!?」

ダンテ「ああ。まだ封印されてるぜ」
ダンテ「だから、その封印を解く為に部下がおチビちゃんを狙ってるわけだ」

禁書「確かに…私の頭の中にはかつてスパーダが使用した封印の術式が…」

ダンテ「そいつを解析して封印を解くつもりなんだろう」
ダンテ「まあムンドゥスのことだ。復活したらすぐにまた人間界侵攻するだろうよ」

上条「やべえじゃねえか!!」

ダンテ「もう一回俺が封印してやるってのもいいが、確実じゃねえぜ」
ダンテ「俺だって死にかけのギリギリでやっとできたんだからな」

上条「…インデックスを守るのが一番ということか…」

上条「つまり、ダンテさんはその悪魔達からインデックスを守りに来たのか?」

ダンテ「んん、まあそんなところかな」

上条「おお!そいつは頼もしいぜ!!」

禁書「ちょっと…確認していい?」

ダンテ「ああ?」

禁書「その背中の箱に入ってるのは魔剣『リベリオン』だよね?」

ダンテ「まあな」

禁書「あの、それでね…今回、ムンドゥスということは…魔剣『スパーダ』も使う気なのかな?」

上条「…?」

ダンテ「…復活しちまった場合な」

禁書「そ、そっか…」

上条「なんだ魔剣『スパーダ』って?」

禁書「とうま。絶対に復活阻止しなくちゃダメなんだよ!もし『スパーダ』を使うことになったら…」

上条「?そんなやべえ代物なのか?」

ダンテ「まあな」

禁書「前回のダンテが封印した時の場所はマレット島っていう島なんだけど…」

上条「?」

禁書「その島は魔剣『スパーダ』の力の余波で最終的に崩壊して消滅しちゃったの」

上条「!!」

―――

―――

同時刻
イギリス、ロンドンのバッキンガム宮殿のとある一室

この重苦しい空気漂う一室にイギリスの心臓部たるトップの者達が集っていた。
イギリス女王エリザード、
騎士派のトップ騎士団長(ナイトリーダー)、
イギリス清教のトップ最大主教の代理の神裂火織とステイル=マグヌス、

そしてこの重苦しい空気の原因を土産に持ってきたゲスト、『トリッシュ』。

外からは工事の音が聞こえる。
クーデターで破壊された部分の修復作業がはじまっていた。



神裂「そ、その…つまり、魔帝軍を止めないと再びムンドゥスが復活するということですね?」

トリッシュ「そう」

エリザード女王「ムンドゥス復活は持っての他」
エリザード女王「なんとしてでも禁書目録を守らねばならぬな」

トリッシュ「そゆこと」
トリッシュ「あなたたちは禁書目録を確保したらあとはこっちに任せて」

騎士団長「大丈夫なのか?」

トリッシュ「私とダンテがいればどうにかなるわよ」
トリッシュ「それにフォルトゥナのネロも上手くいけば増援に加わるし」

神裂「ネロさん…も…」

神裂とステイルは、ダンテ、ネロ、そしてこのトリッシュに面識がある。
数年前、フォルトゥナの術式をインデックスに記録する時にこの三人が同席していたのである。



~~~~~~数年前~~~~~~~~



伝説の魔剣士スパーダの物語。

悪魔でありながら、魔界を裏切り人間の為に戦い、そして救った英雄。

しかしスパーダ本人はその名や武勇伝が後世に残ることを由としなかった。
その為もあってか、いつしか事実は物語となり、数ある伝説となりの一つとなり人々の記憶から薄れていった。

天草式、必要悪の教会という裏世界に属している神裂すらスパーダの神話の神話は知らなかった。

しかしある時、人づてに『閻魔刀』の話を聞く。
全ての空間と次元を切断し、人と魔を分かつ、史上最強の刀。
その刃は神すら切り捨てると言われている刀。

その話に興味を持ち、神裂は必要悪の教会の蔵書を漁った。
そしてフォルトゥナという小さな城塞都市の教典を見つけた。
その中にスパーダの伝説と『閻魔刀』の事が書いてあった。

神裂はうすうす予想はついていたものの、その記述を見て落胆する。

『閻魔刀』とはスパーダが所有していた魔剣の一つ。
そこまでは問題ない。

だがこの大戦争の事は見ても眉唾だ。

そんな大規模な動乱があったのなら、世界中の書物になにかしら残ってない方がおかしい。
となると『閻魔刀』の存在自体も怪しい。

もし本当に存在したとしても、実際に見つけるのは不可能。
完全に失われたか、どこか人知れず厳重に封印されているだろう。
本物の聖杯を探し出すくらい困難なことだ。

その考えに行き着き、神裂の『閻魔刀』探求は終了した。

しかしその後しばらくした時、思わぬ形で再び『閻魔刀』の探究心に火がつく。

ある時、神裂とステイルはインデックスの護衛としてフォルトゥナへ向かうことを命じられた。
フォルトゥナの魔導書をインデックスに記録する為だ。

『悪魔狩り』を生業とする魔剣教団の本拠地、フォルトゥナ。
かつて一時期スパーダが治めていたという城塞都市国家。

とある事件以前までははほとんど外界と接触を持たず、必要悪の教会ですらその実態をほとんど把握していなかった
魔術サイドの闇の最深部。

いや、魔術サイドというよりも、『悪魔サイド』という独立した勢力として表現したほうが正しいのかもしれない。

そのフォルトゥナの鉄壁ベールを剥す事件が、神裂達が行く一年前に起こった。

最大主教の話によると、魔剣教団の上層部が神を作り出す事を目論んだという。
それに使われたのがスパーダの血と魔剣『スパーダ』、そして『閻魔刀』。
それをスパーダの血族が防いだとの事だった。

この事件を機に、フォルトゥナはいくらかオープンになり、
外界の各魔術機関とも盛んに交流する様になった。

そしてこの事件は魔術サイド全体を震撼させた。
(とはいえこのフォルトゥナの動乱を知っている者は魔術サイドの中でも極一部なのだが)

神を作るというのもかなりの事だが、それ以上に驚かせたのはかのスパーダの神話が事実だったという事だった。


そして神裂は打ち震えた。

『閻魔刀』が実在した。
しかもつい最近フォルトゥナで使用された。

インデックス護衛という任務があるにもかかわらず、まるで観光にでも行くかのように神裂は嬉々としてイギリスを旅立った。


復興作業が続くフォルトゥナに降り立った神裂達がまず驚いたのは、
街の中心にそそり立つ巨大な黒い石版だ。

綺麗に斜め一閃で切断されており、
切り落とされた上半分が傍に横たわっている。
切断される前は高さ200mはあっただろうか。

案内のフォルトゥナの者曰く、あれは聖碑、地獄門、と呼ばれるもので、魔界への扉だったらしい。
先の事件でスパーダの血族の者が『閻魔刀』を用いて切断したとのことだ。
材質は未知の物質で、その硬度は鋼鉄を遥かに凌ぐため、撤去作業ができず事件当時からあのままだという。

神裂はその光景に息を呑んだ。

どうやって刀で切断したのか想像がつかない。
もしかして『閻魔刀』とはとてつもなく巨大な物なのかもしれない。
刀とは名前だけで、実際は全く違う武器かもしれない。

思いを巡らしてるうちに、とある聖堂へ案内された。
魔導書の記録は翌日に予定されていたが、どうやら同席する者が急かした為このまますぐに行われるとの事だった。

位の高そうな者に謝罪されたが、神裂は快諾した。
先に用件を済ませて、フォルトゥナ城等スパーダゆかりの場所を巡りたかったのである。
ステイルに 君はわかってるのかい?これは任務だぞ と注意され表情を引き締めたが、胸の高鳴りは収まらなかった。

聖堂はかつて歌劇場として使われていたらしい。
中央に台座があり、その周りを半円状に長椅子が何重にも置かれていた。

彫刻が施された何本もの柱、200人ほど収容できる広さ、そして天井は高く中央の部分にはステンドグラス。
そこから外の光が真っ直ぐに台座に降り注いでいる。
この建物自体が芸術品だ。

だが良く見ると、柱の上の方が欠けたりしている。
そしてかの事件でここも戦いの場になったらしい。

神裂は一目見てそれが剣によるものだとわかる。

台座の奥は妙にガランとしていた。
恐らく何かの彫像が置いてあったのだろうが、戦闘で傷がつき撤去でもされたのだろう。

神裂は屋内を見渡す。
すると、余りにも場違いな服装をしている二人を見つけた。
神裂も人の事を言えないのだが。

周りの物が質素な服を着、頭にフードをかけているので尚更その二人が目立つ。

一人は20代後半あたりの金髪の妖艶な女性。

女の神裂ですら照れてしまうほど美しい。
台座の近くにある手すりに座って足をプラプラさせている。
黒のチューブトップとタイトな皮のパンツがよりいっそうその官能的なオーラを引き立てている。


そしてもう一人は恐らく30代後半の、赤いコートの銀髪の男。

長いすにだらしなく寝そべっている。
良く見ればかなり端正な顔立ちだ。
腰には巨大な拳銃。
そして一際異彩を放つのは傍に立てかけられた銀色の不気味な大剣。


ステイルもその二人を見つけたのか、なにやら怪訝な表情をしている。

インデックスはそんな二人を気にすることも無く先ほど 小腹がすいていましたらどうぞ と差し出された料理を貪っていた。

そんなインデックスを見て、
あの金髪の女性とは正反対の清らかな美しさの、
その料理を持ってきたキリエと呼ばれる女性が苦笑いをしていた。

その時、神裂と長いすに寝そべっていた銀髪の赤いコートの男の目があった。

銀髪の男は神裂を見るや、むくりと起き上がった。
そして神裂の全身を舐めるように眺める。
その男の視線に気付き、近くの手すりに座っていた金髪の女性もこっちを見る。

神裂「(…?)」

銀髪の男は立ち上がると、傍に立てかけてあった銀色の大剣を背中にかけ、つかつかと向かってきた。
金髪の女も続く。

さっきから奇妙な感覚がある。
あの男と目があった時からだ。

妙に落ち着かない。
体の奥底がザワザワする。

ステイルも同じだったようだ。
ジッと近づいてくる奇妙な二人を睨む。

そしてその二人は神裂達の目の前に来る。

後ろで料理を貪っていたインデックスがその二人を見てピタっと動きを止める。
良く見ると手が小刻みに震えている。

「あなた達がイギリス清教の?」

金髪の女が口を開く。

神裂「は、はい」

「で、禁書目録はその子?」

金髪の女がインデックスを指差す。

ステイル「そうだが。あなた達は?フォルトゥナの方には見えないが」
ステイル本人は隠しているつもりだろうが、警戒心を抱いているのは見え見えだった。

「あ~、助っ人ってところかしらね」

助っ人。
良く意味がわからない。
神裂がそれを聞き返そうか迷っていると、銀髪の男が口を開いた。

「ほぉ…あと三年…いやあと五年すりゃかなりホットになるぜお嬢ちゃん」
神裂をジロジロ見ながら意味不明な事を喋る。

神裂「…は?」

「あっちが禁書目録ってことはお嬢ちゃんとそっちの坊やは護衛ってとこか?」

銀髪の男は神裂の七天七刀を見ながら言葉を続ける。

神裂の横でなにやらチリッと音がした。
坊やと呼ばれステイルがイラついたのがわかる。
まあ実際に少年なのだが。

神裂「…はい」

「禁書目録ねえ…女ってのは聞いてたがこんなに若いとはねえ」

銀髪の男はインデックスに目を移す。

「へえ…こっちも将来が楽しみだな。いい女になるぜ」

その言葉を聞いて耐えかねたステイルが口を開く。

ステイル「おい!あんたさっきから何なんだ?!」

横から金髪の女性が銀髪の男に言う。

「あなた少しだまってなさいよ」

銀髪の男は苦笑いしながら両手を挙げ、へいへい という仕草でそれに答えた。

その時、聖堂のドアが勢い良く開き、一人の若い男が飛び込んできた。
目の前の二人ほどでは無いものの、その男も奇抜な姿をしていた。

青いコートに銀髪。

神裂達はその男の右手を見て驚いた。

異形の右手。
赤い甲羅のようなもので覆われ、その甲羅と甲羅の隙間が青白くぼんやりと光っていた。

キリエ「ネロ!」

インデックスに食事を出してくれたキリエと呼ばれていた女性が、その若い男のであろう名を呼んだ。

ネロ「悪い遅れた!って明日の予定じゃなかったのか?」
近くにいたフォルトゥナの者が事情を説明する。

その説明を聞くやいなや、ダンテの方を睨む。

ネロ「またあんたかよ」

ダンテへ声を投げかける。

ダンテ「いいじゃねえか。さっさと終わらせて帰りてえんだよ。
    今のこの街は退屈すぎてどうにかなっちまいそうだぜ」

ネロ「あんたがそう感じるならこっちとしては嬉しいね」

つかつかとネロが神裂とダンテ達のところへ歩いてくる。
なぜか近づいて来るにつれ右手の輝きが増す。

ネロ「で、あんた達がイギリス清教のか?」

神裂「は、はい」

それぞれが自己紹介を済ませる。

ネロ「それにしても三人とも随分と若いな」

ダンテ「だろ、その赤毛の坊やなんて昔のお前にそっくりじゃねえか。生意気そうな目つきとかよ」

ステイルが再びムッとする。
ネロはそのダンテの言葉をフンっと鼻で笑って流す。

トリッシュ「じゃ、役者がそろったことだし、早速はじめましょ」

その声を聞き、フードを被ったフォルトゥナの者達が魔導書を持って来て台座の上に乗せる。
その数は10冊。

ネロ「じゃあ皆出てくれ」
ネロが周囲の者達に外に出るよう促す。

神裂は少し困惑する。
大抵、魔導書を記録する時は厳かにやるものだ。
周囲に結界を何重にも張り、同席するものはそれ相応の霊装を着たりする。

だがここには結界が張られている気配も全く無いし、
神裂も人の事は言えないがこの目の前の三人の服装もおかしい。
そして何よりもこの三人には全く緊張感が無い。
ダンテにいたってはあくびして背伸びをしている。

神裂「(…舐めてるんでしょうかこの人たちは…)」

トリッシュが台座に向かい、なにやら魔導書を二つに分けている。
そして三冊積みあがった方にポンと手を載せ、

トリッシュ「こっちは記録しなくていい方ね」
と言った。

神裂は疑問に思った。
記録しないならなぜここに持ってくる?
そしてそれに返答したダンテの言葉は信じられないものだった。

ダンテ「今ぶっ壊せばいいのか?」

トリッシュ「やりたいならどうぞ」

魔導書を『ぶっ壊す』? ありえない。

魔導書とはただの本ではない。
それそのものが魔法陣と化しており、干渉を一切受け付けない。
しかもあれは原典だ。
たとえ傷をつけられたとしてもすぐに自己修復し、強力な迎撃術式が作動する。

どれだけ手を尽くしても封印するのが精一杯だ。
壊すなんて困難極まりない。

インデックスとステイルもそのやりとりに驚愕している。
神裂「(…何を言っているんでしょうかこの方達は…)」

いよいよ心配になってくる。

だが唖然としている三人を尻目に、トリッシュは三冊の魔導書をダンテに向かって適当に放り投げた。

インデックス「ね、ねぇ!!ちょ、ちょっと!!!」

耐えかねたインデックスが声を上げる。

インデックス「こ、壊すってどういうこと?」

ダンテ「その言葉のまんまだ」
そう返しながら床に落ちている三冊の魔導書を拾い積み上げる。

インデックス「む、無理じゃないかな?!」

ダンテ「まあ見てろって」
そういうとダンテは背中の大剣に手をかけ、

イェァァァ!!!

掛け声と同時に、積みあがっている魔導書目がけて一気に振り下ろした。

ゾン!!!っと三冊の魔導書が両断された。

バラッと切断された魔導書が無残にも散らばる。
そしてすぐに眩く燃え始め、5秒もたたずにしおしおと小さくなり跡形も無く消えた。

ダンテ「あん?なんだ。やけにしょぼいな」

イギリス清教の三人はあまりの光景に口が塞がらなかった。
目の前の男は魔導書の原典をいとも簡単に破壊してしまったのである。

ダンテ「おいトリッシュ。反撃なんかしてこねえぞこれ」

トリッシュ「あんたが強くやりすぎたんでしょ」
トリッシュ「少しくらい加減しなさいよ。本よそれ」

インデックス「そ、そんな…」

インデックスにはわかる。
決して魔導書が弱かったのではない。
むしろあの三冊は魔導書の中でもトップクラスの力を持っていたはずだ。

目の前の男には特に魔術を使った形跡も無い。
つまり腕力のみで破壊した。
力ずくでねじ伏せたのだ。

ありえない。

ここで神裂は先ほどダンテとトリッシュの姿を見た時に感じた違和感を思い出した。

まさか―――人間じゃない?

ダンテ「…なあ…帰って良いか?」

トリッシュ「うるさいわねすこし我慢しなさいよガキじゃあるまいし」

ネロ「さっさとやっちまおうぜ」

ネロはそう言い、インデックスに台座のところへ来るよう手で合図した。

ステイル「…質問は後にしとこう…済ませてきてくれ」

インデックス「…わかったんだよ」

ふらふらとインデックスが台座へ向かう。
ステイルと神裂は魔導書の中身が目に入らないよう、後ろに下がる。

トリッシュ「じゃあ最初はこれね」
ポンっとインデックスの前に一冊目を置く。

インデックスは首をかしげながらトリッシュの顔を見る。

トリッシュ「?どうしたの?はじめていいわよ?」

インデックス「…結界は?それとここにいるとあなた達も危ないかもなんだよ」

トリッシュ「心配ないわ」

インデックス「…一つ聞いて良い?」

トリッシュ「なあに?」

インデックス「あなた達、人間じゃないよね。悪魔?」

その言葉を聞いてネロはばつが悪そうに頭を軽く掻いた。
ダンテはニヤリと軽く笑った。

トリッシュ「そうよ。だから大丈夫」

すんなりとトリッシュは答えた。

インデックスは軽く頷き、魔導書の記録作業をはじめた。
15m程後ろではそのやりとりを聞いていた二人が呆然としていた。

―――

神裂はベッドに寝転がっていた。
魔導書の記録作業で疲れたのか、となりのベッドにいるインデックスは既に寝息をたてていた。

二人は今フォルトゥナ側が用意してくれた部屋にいる。
かつての騎士の寮であったらしい。
彼女達が泊まっているのは位の高い騎士専用の部屋であり、壁に見事な彫刻が施されている。

天井を見上げながら、ふーっと神裂は息を吐く。

色々ありすぎた。
『閻魔刀』の力の跡。
魔導書の破壊。
そして本物の悪魔に会うとは。

神裂の想像していた悪魔像とはかけ離れていた。
もっと異形の姿だと思っていた。

だがあの三人の姿はどう見ても人間だった。
ネロは右手が明らかに異形だったが、それ以外の部分や仕草等をみれば一番人間らしい。

トリッシュ曰く、神裂の悪魔像は当たっており、おかしいのはこの三人の方だと言っていた。

神裂「(なんか…私も疲れた…)」

睡魔が襲う。
そのまま身を委ね、まどろみの中へ落ちていった。

翌日、神裂ら一行はフォルトゥナの街を散策していた。

案内ということでネロが同行してくれている。
トリッシュもいつの間にかやってきて一緒に行動している。
だがダンテの姿がなかった。

トリッシュ曰く、仕事が入ったから嬉々として夜のうちにフォルトゥナを離れたとのことだった。

神裂「仕事…ですか?」

トリッシュ「『悪魔狩り』よ」

悪魔が悪魔を狩る。
一瞬奇妙に思ったが、よくよく考えれば人間の世界でも賞金稼ぎという職業がある。
特に突っ込まなかった。

一人で納得していると、トリッシュがいきなり別の話題を出してきた。

トリッシュ「あなた、聖人でしょ?」

神裂「…!?そ、そうですけど…なんでわかったんですか?」

トリッシュ「匂いよ」

神裂は一瞬ドキッとする。
理由がどうあれ、女の子としては匂いがどうこうの言われるのはやっぱりちょっと居心地が悪い。

トリッシュ「ネロ。やっぱりこの子聖人みたいよ」

ネロは特に興味なさそうに へえ と返す。

トリッシュ「ほら、この子も刀使うみたいよ」
トリッシュが神裂の腰にある七天七刀を指差す。

『この子も』
そこに神裂はピンときた。
ネロも刀を使うのか。

どんな刀を使ってるのか。
悪魔の剣術はどんなものなのか。
悪魔の体で繰り出される技はどんなものなのか。

神裂の中に一気に一人の剣士としての興味が湧いた。

一度、手合わせしてみたい。

神裂「あの…」

ネロ「?」

神裂「一度、お手合わせを…」
恐る恐る頼んでみる。

ネロ「…あ~…」

ネロは困惑する。
神裂は非常に長い刀を持っている。
その何気ない身のこなしからも結構な使い手だというのがわかる。

だが年端も行かない女の子と刃を交わらせるのはやはり気が引ける。

ダンテなら相手が女だろうがなんだろうが速攻OKをだしているだろう。

トリッシュ「いいじゃないの?少しぐらい。楽しい旅行の思い出作ってあげなさいよ」

その旅行という言葉を聞いてステイルがムッとする。
任務だ!と叫びたそうにうずうずしていた。

ネロ「…しょうがねえな。わかったよ。少しだけな」

一行は場所をかつての騎士の修練場に移した。

ネロの左手には剣身が銀、柄が赤の大剣。

神裂は少し落胆した。
どんな名刀が出てくるのか期待していたのである。
あの剣はどう見ても刀ではない。

それを察してか、トリッシュが20m程離れた場所から口を挟む。

トリッシュ「それでやるの?!あっちは使わないの!?」

ネロ「バカいってんじゃねーよ!使える訳ねーだろ!」

神裂は少しムッとする。
どうやら刀を使っているのは本当らしい。
だが神裂程度ではそれを使うレベルではないということだ。

神裂「(舐められたものです)」

神裂「(上等というものです。使わせてみせます)」

彼女は一気にネロへ向かっていった。

だがあまりにもあっさりと試合は終わった。

手合わせを始めて幾羽も無く、彼女の膝が地に着いた。

鍛錬に鍛錬を積み重ねた彼女の神速の刃は、全て軽くいなされかわされた。

そして彼女の七天七刀が。

あの火を噴く大剣に弾かれ宙を舞った。

そしてネロは無防備となった彼女の喉に刃を突きつけた。

レベルが違っていた。

確かに神裂は自分が最強だとは思っていない。

しかし聖人だ。
そして修練を積み重ねてきたプライドもある。
一対一の勝負は誰にも負けない自信があった。

だが圧倒的な力の差を証明された。

スピード、パワーもさることながら、何よりも異常だったのは反射神経だ。
目に見えない死角の攻撃すらまるでダンスでもしてるかのように華麗にかわす。

今まで真っ向勝負でここまで圧倒的に敗北した経験は無かった。

これが人間と悪魔の壁かと実感した。

厳密に言えば人間と悪魔の壁と言うよりはネロが特別なのだが。
実際神裂レベルならそこらの下等悪魔は簡単にあしらえるし、
かなり上位の高等悪魔とも充分戦える。

だがそんなことを露とも知らず、
神裂は初めての完璧な敗北感を味わいその場にうな垂れた。

その様子を見かねてネロが口を開いた。

ネロ「…わぁったよ。見せてやるよ『閻魔刀』」

神裂「…は?」

一瞬自分の耳を疑った。

『閻魔刀』

そう聞こえた。

神裂「…え?や、『閻魔刀』…ですか!?」

ネロ「ああ」
突然ネロの右手が光だした。

神裂「ほほほほほ本当ですか!!?あああの『閻魔刀』ですか!!?」

ネロ「?俺の知ってる『閻魔刀』はこれだけだぜ」
ズゥッ!とネロの右手から黒い鞘の刀がいきなり生えてきた。

神裂「そそそそそそそ…それが…!!!」

遠くから見ていたインデックスも硬直する。
一見するとやや長めの普通の刀だ。
だが少女はその刀が桁違いの代物だいうことがわかった。

まず人間界ではありえない程の存在だ。

インデックス「あれ…本物の…魔剣『閻魔刀』…!!!」

驚いてるのか怖がっているのか嬉しがっているのかわからない顔で神裂がとにかくバタバタする。

ネロ「そこから動くなよ」

ズウッとネロの目が赤く輝き始めた。

神裂「…え?」

次の瞬間、キン!!!と甲高い音が辺りに響いた。
神裂の目の前の空間に斜めの一筋の光の線。
そしてその線を境に上の風景がズズッと斜めにずりおちた。

神裂「…へ?」

ネロが『閻魔刀』で神裂の前の空間を切断したのである。
その後しばらくしてスウッとずれた風景が元に戻る。

神裂「…い、今のって…!?」

ネロ「こんなところだ」
『閻魔刀』が出てきたと時とは逆に右手にスウッと沈んでいった。

神裂はなぜネロが刀を使わなかったのかが分かった。

『閻魔刀』は余りにも力が高すぎるのである。

それも当然。
『閻魔刀』とは魔剣の中でも頂点の三本のうちの一つなのだから。

とてもじゃないが試合で使える代物ではない。
あんなのが使われていたら一瞬で神裂の体が真っ二つになっていただろう。

ネロ「でもあんたも強いぜ」
ネロ「あんたと同じくらいの頃の俺には勝ってるよ」

神裂「そ、そうですか?」

ネロ「あんたはもっと強くなる。機会があったらいつかもう一戦やろうぜ」

神裂「…ッ!はい!!!」


一方ところかわってキリエ。

キリエ「・・・・まだ2時か・・・・」

太陽が真上を過ぎて僅かに西へ傾く頃、この日三度目のまどろみ。
実はこの女、一見しっかりしてる様に見えて休日は夕方まで寝てるクチだったのである──────


ネロとふらふらとしている神裂はギャラリーの三人と合流した。

ステイル「つ、つまり…あの地獄門を切り落としたのは…」

ネロは否定した。
一瞬喋って良いのかと聞くかのようにトリッシュの顔を見て、そして言った。

ネロ「あれはダンテがやった」

ダンテ。
先の事件を解決した者はスパーダの血族。

つまりダンテはスパーダの血を引いている。

イギリス清教の三人は皆その答えにたどり着いた。

―――その日の夜―――

前日は衝撃の連続だったが、
今日はそれ以上だった。

ベッドの上で昨日と同じように息を吐く。
インデックスもまだ起きている。

日中の興奮がまだ冷めぬのか、もぞもぞとしきりに体を動かしている。

あの後トリッシュは 一応記録としてちゃんと残しておいたほうがいいかもね と、
ダンテの武勇伝をおおまかにインデックスらに聞かせた。

伝説の魔剣士スパーダの実の息子であること、母親が人間であること、

そしてダンテ自身が最強の存在として伝説になりつつあるということ。

そしてあの銀色の大剣は魔剣『リベリオン』。
『閻魔刀』と並ぶ、最強の剣の一つ。

あのふざけた調子の男がそんな英雄とは到底思えないが、
現に目の前で簡単に魔導書を破壊したのである。

直にその力の片鱗を目撃している。
信じる信じない以前の話だ。


トリッシュは最後に付け加えた。
ダンテ自身は称えられるのをとにかく煙たがるから、この話は記録するだけにして。
ダンテが死んだら、その時は任せるわ。公開するもそのまましまっておくのも好きにして と。

三人はあの男が死ぬ状況など全く想像がつかなかったが。


その話が終わった時、インデックスが聞いた。

ネロ。あなたもじゃないの?と。

神裂とステイルはその質問の意味がいまいち理解できなかった。

だがネロはそれがわかったらしく、
らしいな とそっけなく答えた。

それにトリッシュが付け加えた。
次の伝説の候補ね ダンテと同じくその事をあんまり前に出したがらないけど と。

それの言葉を聞いて神裂とステイルも理解した。

ネロもまたスパーダの血を引いていると。

神裂「なんか…おとぎの世界へ紛れ込んだ気分です…」
そうベッドの上で呟き、少し滑稽に思う。

神裂は聖人だ。
表の世界からすれば彼女もファンタジーの登場人物だが、
だが今日会ったあの人物達は本物の生きる伝説・神話だ。

インデックス「…うん…」
隣のベッドから小さな返事。

神裂「さ、寝ましょう。明日は早いですからね」

インデックス「うん」

明日の朝、フォルトゥナを発つ。
ステイルによると最大主教から至急帰還し報告しろとの命が下ったそうだ。

報告は建前で本当は土産話を早く聞きたいんだろうとステイルは言っていた。

神裂「おやすみなさい。インデックス」

インデックス「おやすみ。かおり」


―――


~~~~~~~~~


時間戻って現在
イギリス、ロンドンのバッキンガム宮殿のとある一室


トリッシュ「防衛戦はあなたたちに任せるわ」

エリザード女王「拒む理由は見当たらないな。」

エリザード女王「それに、どうやって嗅ぎ付けたのかは知らぬが、
        ついさっき学園都市側からも支援要請が届きおった」

騎士団長「それで、敵の兵力は?」

トリッシュ「たくさん、というところかしら」

エリザード女王「ステイル、騎士団長。こちらが送れる兵力は?」

ステイル「必要悪の教会から即展開可能な戦闘要員は310名です。三日ほどお時間を下されば1200名程揃いますが…」

騎士団長「即展開可能な騎士は900名…ですが先日の件によって皆疲労がピークに達しています」

この部屋にいる、トリッシュを省く全員は先日のクーデター勃発時からほとんど一睡もしていない。

エリザード女王「むう…」

エリザード女王「迎撃はダンテに任す。我らは禁書目録の守備に徹する」

エリザード女王「神裂火織、ステイル=マグヌス」

エリザード女王「人選はそなたらに任す。強者のみを率いて少数精鋭で学園都市へゆけ」

ステイル&神裂「はっ」

エリザード女王「騎士団長。騎士は派遣せぬ。国防と治安維持を継続させろ」
エリザード女王「今の状況、ローマ正教がどう動くかわからぬからな」

騎士団長「はっ」

エリザード女王「それでトリッシュとやら、先の話の限りでは、
        フォルトゥナからの増援は確実ではないように聞こえたが?」
エリザード女王「そのネロとやらはフォルトゥナの誇る最大戦力なのであろう?」

トリッシュ「あ~その件なんだけどね」

トリッシュ「三週間前に魔帝の手下に襲撃されたの」

ステイル「な…!?」

神裂「…?!」

トリッシュ「恋人が拉致されたりとか、かなり不利な状況だったんだけどなんとか撃退したみたい」
トリッシュ「それに相手も結構な奴よ。『ボルヴェルク』。聞いたことぐらいあるでしょ?※」

神裂「…確か、太古の神の一人が転生した悪魔ですよね?」

騎士団長「そうだ。それでムンドゥス配下の魔界の騎士になったと聞いたことがある」

ステイル「伝説級の存在だな…」

トリッシュ「そうそいつ」



※デビルメイクライ2に登場するボス。ダンテの好敵手として登場。
※高難易度だと下手するとラスボスより厄介
※wiki見てみると、実はオーディーンが悪魔に転生したというとんでもない奴。



神裂「それで、ネロさんにケガとかは?」

トリッシュ「私は見てないけど、聞くところによるとほぼ無傷だって」

ステイル「なぜ魔帝軍は彼を狙ったんだ?」

トリッシュ「仇敵の血を絶つため」

神裂「…」

ステイル「…」

トリッシュ「その襲撃であの子ブチギレちゃってね、今はその『ボルヴェルク』を追っかけてるらしいの」

ステイル「つまり、その件が終わるまでは増援として学園都市には来れないということか?」

トリッシュ「そうね。その『ボルヴェルク』が学園都市に来る魔帝軍に加わってれば別だけど」

神裂「そういうことですか…」

―――

各々が自分のやるべき事を再確認し、それぞれが席を立ち部屋から出て行く。

神裂「私は天草式を率いていきます。」

ステイル「大丈夫なのかい?彼らは特に疲労が積もってると思うが?」

神裂「私の『部下』にそんな軟弱者はいません。それに…また私だけ勝手に行ったら皆に怒られそうですし…」

ステイル「ふふ。なら良いな。君との相乗効果でかなりの戦力にもなるしね。」

ステイル「僕はシェリーを連れて行こう。彼女、先日の自分の不甲斐無さですごく不機嫌だしね。」
ステイル「あの鬱憤を晴らしてあげないとその内暴れだしそうだ。」

その時、彼らに後ろから声がかかる。

トリッシュ「ちょっといいかしら?赤毛君」

ステイル「?(もしかして僕の事か?)」


トリッシュ「あなたに渡したい物があるの」


ステイルと神裂は小さな一室へ案内された。
バッキンガム宮殿内の、トリッシュの滞在の為に用意された部屋。

無造作に脱ぎ捨てた衣服やら過激な下着。

目のやり場に困っている二人の未成年を気にすることも無く、
トリッシュはどこからか身長ほどもある大きなバッグを運び出してきた。

トリッシュ「よっ」

ガチャンッ!!とテーブルに置かれたバッグが大きな音を立てる。
そのバッグについているいくつもの拘束具を乱暴に外していき、ガチャガチャと中を漁りはじめた。

神裂とステイルは一目見て分かった。
その拘束具一つ一つにとんでもない術式と恐ろしい程の魔力が込められていると。
このバッグの中身はきっととてつもない代物だと。

トリッシュ「あったあった」

トリッシュはお目当ての物を取り出し、ゴドンッとテーブルの上にそれを置く。

「こ、これは…?!」

不気味な光沢を放つ、赤と黒の恐らく金属製の巨大な『篭手』。
その一品を目の当たりにした二人の魔術師の体を形容し難い戦慄が走る。

トリッシュ「『イフリート』よ」

『イフリート』。

地獄の業火の番人にして魔界最高位に属する伝説級の大悪魔。
ステイルら炎使いの魔術師にとって神とも呼べる存在。

ステイル「こ、これを…ぼ、僕に…!?」

トリッシュ「あげるわけじゃないわよ。レンタル。事が終わったら請求するからね。」

ステイル「おお…おぉぉお!!おおおぉおおおお!!!」

神裂「これが『イフリート』…一体どんな術式を組めばここまでの霊装を作れるんでしょうかね…」

神裂が独り言の様に呟くと

イフリート『我を人間共の小細工と並べる気か?小娘』

神裂「」

トリッシュ「霊装じゃないわよ」

神裂「しゃ…しゃしゃしゃ…!!!しゃべべべべった!!?」

トリッシュ「本物よ。本物の悪魔の『イフリート』。」

トリッシュ「太古の昔にどっかの誰かがイフリートを篭手にしちゃって封印したのよ。」
トリッシュ「それで10年前にダンテが封印を解いて契約の儀を行って使役、今はアイツの使い魔よ。」

神裂「は…はあ 契約の儀…使い魔…?」

トリッシュ「そう、地獄の業火で『魂』ごと焼かれて、それを耐えたら合格。」
トリッシュ「まっ人間なら一瞬で蒸発ね」

ステイル「…僕も…焼かれなきゃダメなのかい?」

トリッシュ「その心配は無いわよ。この子はアイツの命を受けてるから」
トリッシュ「代理使役のね」

トリッシュ「『イフリート』を装備すれば聖人並の体になるし、魔術の力も爆発的にあがるわ」

ステイル「おおお!!早速使用の為の術式を組まねば!!」

トリッシュ「でも気をつけなさい。」

ステイル「…?」

トリッシュ「ちょっと気を緩めれば『喰われる』わよ」
トリッシュ「もともと人間には到底扱えない存在なんだし」

トリッシュ「というか、半々の確率で死ぬわよ」

ステイル「…」

トリッシュ「できれば使わないでね」
トリッシュ「もうどうにもならないって場合の時だけにして」

トリッシュ「それと聖人のサムライガール、あなたにはこれ」ッス

神裂「これは…?」

それはおぞましいほどの苦悶の顔が刻まれている紫色の水晶のような物。

トリッシュ「『パープルオーブ』よ。悪魔の力が結晶化した物。」

神裂「ぱーぷるおーぶ?」

トリッシュ「使いたい時に肌に当てれば自然に溶け込んでいくわ」
トリッシュ「あなたはもうある程度完成されてるし、あとは全体的な力の底上げって事で」
トリッシュ「それを使えば一時的にネロくらいの強さになれるかもね」

神裂「!!!」

トリッシュ「ただ、いわばドーピングだからそれなりに負担は大きいし、莫大な魔力の塊だからこれも油断すると
     『喰われる』わよ」

神裂「は、はい!!」

トリッシュ「大事に使うのよ。私ですらそんなに持ってない希少な物なんだから」

トリッシュ「あ~あとこれ」
トリッシュは黒い石のようなものをステイルに手渡してきた。

トリッシュ「学園都市に着いてからは私と別行動だから、なんかあればこれで連絡して」

ステイル「連絡?霊装か?」

トリッシュ「いいえ。魔界の念話する虫の一種を固めたものよ」
トリッシュ「握って私を呼べば繋がるから」

神裂「む…む…ッ!」

ステイル「…虫…」

神裂「ス、ステイル、あなたが持っててください!」

ステイル「…虫…ね」

―――

―――

学園都市 窓の無いビル

土御門「…さすがのお前でも今回はプランとやらにねじ込む余裕は無いだろう」

アレイスター「利用できる部分は全て使わせてもらうつもりだよ」

土御門「それ、俺からしてみれば、大勢の命を賭けたギャンブルに聞こえるぜよ」

アレイスター「あながち間違ってはいないな」

土御門「チッ …で、今回はこっちも全力でやるんだろう?」
土御門「悪魔相手じゃ通常兵器は全く役に立たない」

アレイスター「うむ」

土御門「ということは能力者が主戦力だな」

アレイスター「当然だ。レベル5を筆頭に、あらゆる戦力を使う。もちろん君らもだ。準備して指示を待て」

どこからとも無く現れたテレポーターの腕に掴まりながら呟く。

土御門「はあ…さすがの俺でもここ最近色々ありすぎて疲労度MAXだにゃー…」

アレイスター「ふむ、この件が終わったら君の休暇について検討してみよう」

土御門「一ヶ月くらい欲しいにゃー」

アレイスター「却下する 最大で2日だ」

サングラスをかけた金髪の少年はうな垂れたままテレポーターと共にどこかへ『飛んで』いった。


prrrr

「お呼びでしょうか?」

アレイスター「第一級警報( コードレッド)発令準備、そのまま待機だ。」

「!!?」

アレイスター「状態はデフコン2、市民のシェルター避難の準備もしておけ。」

アレイスター「命令があり次第即行動できる様にだ。」

「りょ、了解」ブツッ

アレイスター「(さて…)」

アレイスター「(ヒューズ=カザキリ…確かに力は強大だが…)」
アレイスター「(それだけだな。彼らからするとただの愚鈍な的だ)」

―――

アレイスター「(エイワスは…万が一にでも倒されたら1000年は現出できぬかもしれん)」
アレイスター「(魔帝の復活となれば大悪魔達が集う。エイワスも倒されるかも知れぬしな)」

―――

アレイスター「(となるとやはり能力者でゆくべきか…)」

アレイスター「(レベル5の直接動かせる戦闘要員は第一位、第四位、第七位の三人)」
アレイスター「(第三位はゲコ太で誘導して、幻想殺しに『偶然』遭遇させれば後は勝手に戦列に加わるだろう)」

アレイスター「(やはり第二位の損失が響くな…強引に出撃させるか?)」
アレイスター「(いやあの体たらくだ。まともな戦いにすらならん)」

―――

アレイスター「(とはいえ魔術サイドは頼りない。)」

アレイスター「(やはり何か手を打たねばな)」

アレイスター「(ふむ…第一位を…。)」

―――

アレイスター「(…埋め込んで…いやちがうな…そこに第二位の…いやむしろ…そしてミサカネットワークで…)」

―――

アレイスター「(これ…だな)」
アレイスター「(少々強引だがプランも短縮できる)」

アレイスター「(ふふ…この高ぶり…恐怖の裏返しか、それとも歓喜か…)」
アレイスター「(私もまだまだ人間だという事だな…ふふ…)」

アレイスター「(面白くなりそうだ)」

―――

―――

学園都市 第七区

「(はあーあたしとしたことが)」

「(まさかこんな重要な情報を見過ごしていたなんて…まだまだ甘いわね)」

「(でもちゃんと手に入れたし結果オーライね♪)」

少女の手にはとある店で先ほど購入したゲコ太の限定ストラップ。
彼女が察知できなかったのは当然だ。
なぜならつい10分前に発表、そして5分後に発売開始された品なのだから。

「あれ…?」

ふと目を向けると、50m程離れた場所に見慣れた人影が。
特徴的なツンツン頭、レベル0でありながらレベル5の彼女の攻撃をことごとく退ける少年。

「(あ、あいつ…な、なんでこんな所にいるの!?)」

特に必要性が無いのに無駄に慌てる。

「(…連れがいるみたいね…?)」

少年の右側にはまたあの修道服を来た少女。
そして左側には巨大なギターケースを担いだ銀髪の大男。

「(…い、いや!連れがいても関係ないんだからね!!)」

「(よ…よし!!)」

―――

―――

上条「そうか…正に人類の危機ってやつだなこれは…」
上条「(いままで色々あったけど、今回が一番ヤバイ気がする…)」

ダンテ「…ところで、後ろのお嬢ちゃんは知り合いか?」

上条「?」

上条「ビ、ビリビリ!!?」

禁書「短髪!!?」

御坂「ビリビリゆーなぁ! 御坂美琴って名前がちゃんとあるのよ!!」

ダンテ「へえ…」ジー

御坂「な、なんですか?(というか誰?)」

ダンテ「…学園都市ってのは随分と上玉ぞろいだな」
ダンテ「今はまだノンヘアーだろうが、このお嬢ちゃんも10年後には最高にホットな女になるぜ」

上条「…ちょ…な、何をおっしゃってるんですか!!?」

御坂「な、なぁぁぁああぁ!?(す、少しくらいはあるわよ…!!!)」パリパリッ

ダンテ「(電気…?)」

禁書「?」

御坂「ちょ、ちょっと!!何なのよこの人!?」

上条「あ…お、おー…」

上条「お、おじさん!インデックスの!」

禁書「ちgフガモガッ」

ダンテ「…」

ダンテ「ダンテだ。よろしく お嬢ちゃん」

御坂「そ、そうなの?(変人の親族は同じく変人ね…)」

上条「御坂はなにしてんだ?」

御坂「よよよ、用事は終わったし、これから帰るところよ!」

上条「どうしたお前?なんか顔が赤いぞ?体調でも悪いのか?」ズイ

御坂「ちちちちちかかぁあちかっっ!!!!」パリパリパリッ

禁書「…」ジトー

上条「ちょちょちょ!放電するな!」

ダンテ「ほぉう…へぇ…」
ダンテ「ちょっといいか? それ、思い浮かべただけで出るのか?」

御坂「?」パリッ

ダンテ「電気」

御坂「ん~まあイメージすればね。他にも演算とかやんなきゃいけないことあるけど」

ダンテ「へえ…(悪魔のやり方に似てるな)」

上条「御坂はレベル5の第三位なんだぜ!通称レールガン!」

ダンテ「…それすごいのか?」

上条「あ~っと、つまり学園都市第三位の実力者ってことだ!」

御坂「ま、まあね。そーなんだけど」

ダンテ「へえ…そいつはすげぇな…最高に痺れるじゃねえか」ニヤァ

禁書「とうま、猛獣の前にエサをちらつかすのはあぶないかも」

上条「ダ、ダンテさん?!なんですかその危険なオーラは!!?」

御坂「な、何!?や、やるっていうの?!(なんなのよこの威圧感はッッ!!)」
御坂「い、言っとくけどね!そいつの方が強いのよ!私の攻撃一切効かないし!」

ダンテ「…へえ…お前強いのか…?」ジロッ

上条「こっちに振らないで下さい御坂サン!!いやぁ!!?そそその目で見ないで下さいダンテさん!!」

ダンテ「―――」ピクッ

上条&御坂&禁書「?」

ダンテ「悪い。用事だ」

上条「へ?」

ダンテ「また後でな」

上条「ま、待て!なんかあったのか?!まさかもう―――」


ダンテ「心配ねえ。パーティの開演はまだだ」

ダンテ「ちょっとしたつまみ食いさ」


そう言うと銀髪の大男は、上条達が返答する間もなく足早に路地裏へ入り消えた。


上条「つまみ食い…?」

禁書「とうま、任せといても心配ないんだよ」

上条「…」

御坂「…ちょっといい?」

上条「なんだ?」

御坂「あの人って一体何者なの?」
御坂「まさかあんたまた厄介事に首突っ込んでるの?」

上条「…いやっパーティだよ」
上条「しょ、食事会があるんだ」
上条「ほら、背中にギター背負ってただろ?」
上条「パーティの時に弾くんだ。その準備だよッ」

御坂「…そう…」

怪しい。
そして別にも引っかかる点がある。

彼女のレーダーが反応したのだ。
あの男は三人の視界から外れた途端とんでもない速度で移動し、
一瞬にして彼女の索敵範囲外へ離脱していったのである。

明らかに普通ではない。

御坂「本当?」

上条「…ああ」

上条は誰かが危険に晒されるのを極端に嫌う。
例えその誰かが赤の他人だろうと。

絶対に問題の外部の人間を自ら招き入れることは無い。
危険に晒されるのは自分だけでいい。
戦うのは自分だけでいい。

それがこの少年の絶対譲れないけじめ。
とある日に御坂美琴はそれを嫌と言うほどに突きつけられた。
今ここでどれだけ粘っても上条は彼女を招き入れないだろう。

御坂「…そう…あっ そろそろ帰らなくちゃ」

上条「?そうか、じゃあまたな」

御坂「うん、またね」

禁書「ばいばい短髪」

二人から離れ彼女は思う。

あんたが入れてくれないってんのなら―――。

こっちから無理やり飛び込むまでよ―――。

―――

―――

ダンテは暗い路地にいた。

足元には切断された黒い左腕。

赤い毛が生え、指先には鋭い爪。

先ほどダンテが切り落とした、『ゴートリング』と呼ばれる高等悪魔の左腕である。
その悪魔自体は逃がしてしまった。

逃げられる事自体は特に珍しくない。
ダンテ自身が結構うっかり者なのでその隙を付けられることがあるし、
それに逃げる悪魔は別に追おうとは思わない。

だがこの時は少し違っていた。

戦闘中に突然別の感覚が彼の体を走ったのである。
その瞬間彼の体が反応し、無意識のうちに一瞬魔人化した。

ダンテ「…まさかな…」

その感覚には覚えがある。
スパーダの血の叫び。
魂の共鳴。

同じ血族の者の気配がどこからかする。

ダンテ「ネロか…?」

この感覚を引き起こす原因の者は三人知っている。
その内二人はもういない。
そして残るはネロ。

そうネロしかありえない。
ネロは今ボルヴェルクを追っている。
そのボルヴェルクも学園都市に来る魔帝軍に加わっていればネロが来てる可能性もある。
それしかない。

―――と、半年前のダンテならこう納得しただろう。

今は違う。

思い当たる人物がもう一人いる。


半年ほど前のある日、ネロが突然事務所に電話をしてきた。

『閻魔刀』が突然『出てこなくなった』と。

その時は無くしたのかと思いネロをぶっ飛ばしてやろうかと思ったが、
詳しく話を聞くとどうやら普通に無くした訳ではなかったらしい。

『閻魔刀』が無いのにもかかわらずその力自体は失っていない。
なんかおかしい。
存在を感じるのに引き出せない。とネロは困惑していた。

ダンテにはわかった。

ネロに教える。

それは『閻魔刀』が別の者に召還された。と。

たまにダンテも『リベリオン』を召還することがあるからわかる。
魔剣は主に呼ばれると、どれ程距離があろうと一瞬で手元にやってくる。

そして続けて説明する。

存在を感じるのはお前がその召還した者と魂が繋がっているからだ。
いま残っている力は『閻魔刀』のじゃなく、もともとのお前の力だ。と。

ネロは聞き返す。
『閻魔刀』を俺よりも強く呼んで召還できるやつなんているのかと。

ダンテは返す。

ああ、いる。
真の持ち主だ。バージル。
俺の兄貴だ。と。

ネロは再び困惑する。
死んだんじゃなかったのか?と。

ダンテは返す。
現にお前の話を聞くかぎりじゃあ復活したのは確実だろ。と

そう言いながらダンテ自身も己の言葉を反芻する。

復活。
今、バージルが生きている。

ニヤリと薄く笑う。

ネロは魂が繋がっているという点には特に疑問を持たなかったらしい。
それがスパーダの血族特有の物だと思っている。

ダンテは、
魂が繋がるなんて兄弟ですらおこらない。
もっと近しい関係じゃないとおこらない事 というのは伝えなかった。

ネロは どうすればいい?探して取り戻したほうが良いのか?と聞く。

ダンテは
ひとまず様子見だ と返す。

バージルを探し出し『閻魔刀』を奪いネロの手に戻すのは非常に難しい。

バージルははっきり言うとダンテより強い。

バージルを最終的に殺したのはダンテだ。
だがその時のバージルは自我を失っていたし、力も不完全で『閻魔刀』も無かった。
その状態であるにも関らずダンテを追い込んだ。
ダンテはギリギリ勝てたのである。

そんなバージルが復活し今『閻魔刀』を持っている。
困難極まりない。

ネロどころかダンテでさえ返り討ちに合う可能性がある。
それにバージルはそれほど危険人物ではない。

過去に一度人間界を危機に陥れたが、それは間接的な結果だった。
バージルは人間を根絶やしとか征服とかには全く興味が無い男だ。

そしてもう一つ。ダンテが気が進まない点がある。

家族と殺し合いするのはもうごめんだ。と。


ダンテ「…」

路地裏で一人考える。

ダンテ「バージル…」

どこからか気配を感じる。
向こうもダンテを感じている。

既に学園都市にいるのか、
それともどこか別の場所にいるのかはわからない。

だが確実にこちらを意識している。

ダンテ「お前もこのパーティに混ざりたいのか?」

ムンドゥスの復活。
多くの世界・次元を巻き込んだ大イベントだ。

ダンテ「…」

最悪の事態を考える。
それは魔帝の復活ではない。

ダンテ「三度も殺り合うのはカンベンだぜ。バージル」

ポツリと呟き、路地裏をあとにする。

―――

暗い路地裏を人間離れした速度で移動する人影があった。
グレーのスーツに黒い髪の壮年の男。
それだけなら特におかしい点は無い。
事実、先ほどまで普通に路上を歩き、人の流れに身を任せていた。


だが『変装』が解けはじめている今は違う。
大きく開かれた目からは赤い光が漏れている。

そして左腕が無かった。


一歩が20mを越える程の歩幅で、行き先も考えずにただひたすら走る。

先ほどの出来事を思い出す。
突如眼前に現れた赤いコートを羽織った悪魔。


魔界では高名な武人である、高等悪魔の彼ですら恐怖を覚えた。


『悪魔すら泣き出す( DEVIL MAY CRY)』と称される怪物。
スパーダの息子にしてムンドゥスを封印した、紛れも無く神クラスの悪魔。


無論、即座に逃亡した訳ではない。
全ての力を解き放ち、そして挑んだ。

が、次の瞬間には左腕が肩から切り落とされていた。

そのまま死を覚悟したが、突然ピタリと止まったためなんとか逃げることができた。

「(とにかく…今は逃げねば)」

あの強烈な一撃でほとんどの力を削ぎとられ、最早左腕さえ再生できない。
男は走り続ける。

「…」

何かを察知した男は急停止する。
路地の先には仁王立ちする小さな影が二つ。

匂いからして人間。

高等悪魔の彼にしてみれば道端の小石程度の小さな存在だが。
鋭い悪魔の勘が反応する。

男は油断せずにその二つの影を見据える。

―――

―――

上条達と離れた後、御坂美琴はあの銀髪の『ダンテ』という男を探した。
後輩の白井黒子もなにやら心当たりがあるらしく、協力を快諾した。

二人は各地へテレポートしてはレーダー捜査を繰り返した。
そしてテレポート12回目にして遂に高速で移動する反応を捉え、
先回りしたのである。


御坂「…あの人…じゃない?」

黒子「…お、お姉さまッ!!」

御坂「…ッ!!?」

よく見ると男の左腕が無い。
しかしそれ以上に二人を驚かせたのはその男の顔である。
赤く光る瞳。

御坂「どうみても普通じゃないわね…」

黒子「一体何者なんですの…?」

男「人間の娘か…?」

御坂「(雰囲気的に…平和的にいかなさそうね…見るからに敵意むき出しだし)」

御坂の体が緊張する。
すぐにでも電撃を放てるように神経を研ぎ澄ます。
それを察知し、黒子も太ももにある釘を意識する。

御坂は考える。

こんな人間離れした速度で移動する人物が二人同時に現れるか?
学園の能力者ならおかしくない。

だがあの『ダンテ』という男もこの目の前の男も、
どう見ても学園都市の能力開発を受けた世代ではない。

とすると外部の能力者か?
そんなのが二人同時に偶然にも現れるか?

怪しすぎる。

御坂「聞きたいんだけど」

男「…」

御坂「『ダンテ』って銀髪の人知ってる?」

その言葉を聴いた途端男の表情が大きく歪む。

男「貴様…」

御坂「(…なんかキレたっぽい…)」

御坂「黒子」

返事をする間も無く黒子は男を拘束するべく、
黒子は男の真後ろ上の死角へ飛ぶ。


男の後頭部へドロップキックを、渾身の一撃を放つべく。
しかし黒子がテレポート先で見た光景は、予想とは異なっていた。

男の真後ろ上の死角へ飛んだはず。

なのになぜ―――

なぜ男はこちらを見据えて右腕を振り上げている?


ドンッ!!っと巨大な破壊音。
少女の体が大きく後方へ吹き飛ばされた。


目を開けると粉塵が舞っている。
パラパラと周りから何かの欠片が落ちる音が聞こえる。

黒子「…ッ!!」

起き上がろうとすると激痛が体を駆け巡った。
しかし痛みの他にもう一つ。
彼女が慣れ親しんだ―――電撃による痺れ。

御坂「黒子ッ!!大丈夫!!?」

黒子「だ、大丈夫ですの…!」

御坂美琴が放った電撃によって彼女の体は弾かれ、男が振り上げた右腕の直撃をすんでの所で免れたのだ。

その痺れの原因を放った少女の声の方へ目をやると、間に立つあの男、そしてその周りの惨状も目に入った。

男の足元のアスファルトがまるで砲弾が炸裂したかのように
直径5m程、深さ1mほど抉れていた。
大穴は両脇のビルへも食い込んでおり、壁が大きく崩れて屋内が見えていた。


あれが直撃していたら―――
黒子の脳裏に僅かな一瞬で枝分かれした別の未来が浮かぶ。
小さな体は原型を留めていなかっただろう。

しかし粉塵が晴れ男の姿が露になった時、その妄想は跡形も無く吹き飛んだ。


粉塵の中から現れた、人型の『何か』。

体の表面はゴツゴツしており、筋肉らしきものが大きく浮き出ており、
首から胸元と肘から先が赤い毛で覆われている。

指先には鋭い爪。
山羊の頭に巨大な角。
目から溢れている赤い光。

体の回りを黒い霧のような物がまとわり付いており、
そこから透かして見える奥の風景は絶えず揺らいでいる。

さっきの男と結びつくのは左腕が無いという点のみだった。

異形の化物は数刻前にも見た。
だが目の前の『それ』は明らかに異質だ。

ズゥ!!!っと凄まじい威圧感と恐怖が黒子の体に圧し掛かる。
『それ』を見た黒子は何も考えられず、体も完全に硬直した。
『逃げる』という事すら考え付かなかった。

『ゴートリング』。
十字教では『バフォメット』と呼ばれる大悪魔の種族。
高等悪魔の中でもさらに上位の存在。

黒子の体を固く縛る。
生命としての本能よりもさらに深淵―――魂の恐怖が。

が、突如聞こえた叫びが彼女を深淵の闇から呼び戻す。

「あぁぁあああぁあぁあああぁあああ!!!」

僅かに意識が戻る。
テレポートをしようと思う程の余裕は無かった。
地面を思いっきり蹴り、無我夢中でその場を離れる。


と同時に
バキンッ!!と大気を切り裂く音が響く。


『アレ』はヤバイ
何なのかわからないけどとにかくヤバイ

殺らなきゃ 
殺られる

魂の叫びが御坂を突き動かし、防衛本能が爆発する。

「あぁぁあああぁあぁあああぁあああ!!!」

雄叫びを上げながら、
『化物』へ特大の電撃の槍をフルパワーで叩き込む。

「らぁぁあああああああ!!!」

とてつもない威力の電撃を立て続けに何発も叩き込んでいく。
辺りのアスファルトやコンクリートの壁がみるみる形を変えていく。

『化物』はその中を臆することなく猛烈な速度で正面から突進してくる。

真正面。外すことは無い。全弾当たり続ける。
当たるたびに僅かにひるみ、速度が落ちてる事からして効いているようだった。
だが『化物』は止まらなかった。

そして御坂の目の前まで接近してきた。

瞬間、御坂は電磁力を使って後方へ15m程飛ぶ。
とそれと同時に一瞬前まで彼女が居た場所に『化物』の拳が振り下ろされ、
ドンッ!!とアスファルトの地面を大きくめくり上げた。

「(近距離はヤバイ!!!!)」

飛び散った破片が彼女の電気シールドに遮られ、
バチンッバチンッと火花を散らす。

御坂は電撃を放ちながら、
そのまま後ろへ高速で下がり30m程距離をあける。


離れる御坂を追わずに、『化物』はその場で腕を畳み姿勢を低し
空手の中段突きのようにグッと構えた。

御坂にもわかる。
恐らく何らかの遠距離攻撃を放つつもりだ。

彼女の予想は当たっていたが、その攻撃の仕方は予想を遥かに超えていた。

『化物』は空へ拳を放つ。
爆発的な衝撃波を伴いながら、黒い『何か』が御坂へ突き進む。


『化物』と御坂の距離は30m。

目では確認できない程の速度で何かが接近してくる。
放たれた黒い『何か』を御坂はレーダーで感知し、
体を右に飛ばしてギリギリの所でかわす。

先ほどまで御坂の体があった空間を黒い棒のような物が貫いた。
衝撃波に耐えながら御坂はようやくその黒い棒を目で確認する。

それは『化物』から30m以上も延びている。

「(なッ!!?腕!!?)」


『化物』は腕を伸ばしたのである。

そしてその腕は更なる攻撃を加える為、
ギュンッっと鞭のようにしなりはじめた。


長さ30mもの腕が、
まるで怒り狂った大蛇が筒の中で暴れるかのように、狭い路地の中を左右上下に激しくうねる。

ガンッ!!ズンッ!!ドンッ!!っと両脇の壁・地面をえぐり、
巨大な溝を次々と刻んでいく。
一撃でも当たれば即死。

御坂はレーダーと電磁力による移動を駆使してギリギリの所をよけていく。
電撃で応戦する余裕は無い。

地形は縦に伸びる、幅が狭い路地。

『化物』は肉体を駆使して近距離で戦うタイプ。
ならば遠中距離戦を得意とする御坂は一定の距離を保ちつつ、
一つの面のみに弾幕を張れば一方的に攻撃を加えられる。

だがその地形による優勢はいまや崩壊し、逆に仇となっていた。

いつまでもよけてはいられない。
回避の限界点がもう目の前にまで迫っている。


だが彼女はレベル5。
この程度では追い詰められることは無い。

足元の地面が軋み盛り上がる。
それは彼女が仕込んだ、とある策の準備が整った合図。


「(もう良いわね)」

「(もうちょっと集めたいけど、そろそろこっちが限界だわ)」

御坂の次の手が発動した。

御坂の足元が大きく盛り上がり、そこから黒い砂のような物が一気に噴出す。
それは彼女が時間をかけ、広範囲の地中から集めた砂鉄。
どこからとも無くマンホールの蓋や、鉄製のガラクタも飛んでくる。

大量に集められた鉄がベキベキベキッと音を立てながら圧縮され、長さ5m太さ60cmはある二本の巨大な柱を形成した。

通常の剣サイズなら彼女は一瞬で精製できる。
だがその程度では、アスファルトをクッキーのように簡単に叩き割る『化物』に
傷をつける事は心もとない。

かといっていつかの時のようにレールがあるわけでもないし、ビルの重量を支える鉄骨を抜き取るわけにも行かない。

だから彼女は時間をかけ、広範囲の地中から大量の砂鉄を集めた。


御坂「(電撃で決定打を与えられないのなら!!)」
御坂「(物理的に叩き潰すまでよ!!)」


能力によって爆発的に加速された二本の鉄槌が、
学園都市のシェルターすらブチ抜く程の破壊力を持って、

うねる『化物』の腕と正面から激突した。

ゴッキィィィインッ!!と金属の衝突音。

衝撃で二本の鉄槌の先端が潰れるが、
『化物』の腕も大きく弾かれ、壁へめり込んだ。


すぐさまその黒い鞭は再び攻撃にうつるもことごとく二本の鉄槌が防ぐ。
激突により二本の鉄槌は潰れ破片が飛び散るも、
能力によって一瞬にして再生する。

そして鞭を避ける必要の無くなった御坂は再び『化物』の本体へ
連続して牽制の電撃を放つ。


御坂が10数回、鉄槌で鞭による攻撃を防いだところで、
『化物』は無駄と判断したのか、腕を縮め元の長さに戻した。

御坂も体制を立て直すため一旦電撃を辞め少し後ろに下がる。


数秒間の沈黙。
お互いが睨み合う。


御坂はその間にレーダー・シールド・鉄槌等の演算を最適化し、
再チェックしバグを排除して整える。

「(…いけるッ!!)」

御坂の心には幾分か余裕が生まれていた。

その御坂に呼応するかのように、
『化物』のまわりにまとわりつく黒い揺らぎが濃くなり、
禍々しい威圧感がよりいっそう強くなった。

「(さて…どう切り崩すか…)」


スカートのポケットの中にある小さな金属の円盤を意識する。
彼女の最大の切り札。
ただそれの使用には多くの演算と力が必要になる。
必然的にレーダー・シールド・鉄槌の稼働率が大幅に下がる諸刃の刃。

あの速さで動く相手にそんな大きな隙を見せるわけにはいかない。
となると、どうにかして相手にも大きな隙を作らせ、
それに重ねるしかない。


「(電撃で無理なら)」

コレ
「(鉄槌でぶっ飛ばす)」

攻撃を防げたし、弾けた。
ならば『化物』本体にも効果はあるはず。
そのまま倒せても良し、ひるんでる間に切り札もぶち込める。

ではどうやって鉄槌を叩き込む?
加速させ飛ばすか?

一本だけだと確実にかわされる。
当てるなら二本同時に放ち、回避先を押さえるしかない。

だがそれでもかわされる危険性がある。
そして外れた鉄槌をこちらに引き戻す前に距離を詰められてしまう。
それじゃあどのみち追い込まれる。

となると近距離戦。
外れても即座に鉄槌を引き戻せる。

危険性は格段に上がるが、
勝てる可能性も確実に上がる。

御坂は腹を括る。

「おッしゃあああああ!!」

その雄叫びが再開の合図となった。

『化物』と少女はお互いをめがけて一気に飛び出す。

距離は6m。

先に攻撃を放ったのは御坂だった。
鉄槌を加速させ『化物』の頭上へ振り下ろす。

『化物』は右前方へ半歩動きかわす。
ドッゴォアアン!!っと鉄槌が地面に突き刺さる。

『化物』は勢い殺さずそのまま黒い右腕を御坂の顔めがけて振るう。
しかしもう一本の鉄槌が二人の間に割り込む。

ゴッリィィィィィンッ!!と鉄槌に強烈な一撃が食い込み、辺りに鉄の破片が飛び散る。
御坂は散弾となった破片をシールドで防ぎつつ、
『化物』の後ろの地面に刺さってる、先ほどかわされた鉄槌を引き抜く。

そして『化物』の後頭部めがけて飛ばす。

が、『化物』は姿勢を低くしそれもかわす。

ゴォンッ!!っと盾にしていた鉄槌に、かわされた鉄槌がぶつかる。

御坂「らぁッ!!」

御坂はとまどうことも無く、かわされた鉄槌を下に居る『化物』へ向かってそのまま落とす。

同時に『化物』は頭部の上へ右手をかざし防御体制をとりながら、
左足で御坂の腹部を蹴り上げようとする。

御坂もそれに反応し、『化物』の上に鉄槌を落としながら、
盾として使っているもう一本の鉄槌も操作して蹴りを防ぐために移動させる。

ゴォンッ!!!と内臓を揺さぶる程重い衝突音が二つかさなる。

高速で落ちてくる鉄槌を防ぎ弾いた『化物』の右手の黒い霧が衝撃で剥げ、
恐らく血であろう赤い液体が飛び散る。

『化物』の蹴りが直撃した盾の鉄槌はおおきく『く』の字に曲がる。
御坂は自ら後ろへ飛びその衝撃を吸収する。

御坂「(なんて蹴りなの…!!)」

繰り出されるのは察知しやすいが、その欠点を簡単に補うほどの圧倒的な威力だった。
あの蹴りが連発されると鉄槌の再生が追いつかず耐えられない。

『化物』は負傷した右腕に見向きもせずそのまま飛び出し、
こんどは右足でとび蹴りを繰り出す。

御坂「…!!」

再生しきってない鉄槌を間に移動させる。

バギイィィィン!!っと轟音が響き、鉄槌が切断された。

『化物』は盾を失った御坂へそのまま右手を繰り出す。
が、ギリギリのところでもう一本の鉄槌が間に入る。

ゴリィンッ!!!と鉄槌に爪痕が刻まれる。

幸いにも『化物』に落とした方の鉄槌は御坂側に弾かれていたため、
すぐに引き戻すことができたのである。

御坂は先ほど二つに折られた鉄槌を繋げないでそのまま使う。

「(なら!これはどうよっ?!)」

一つずつ『化物』の左右に移動させ、そして加速させて放った。

一つ目は右腕で防げる。
だが二つ目は、左腕が無い『化物』は移動してかわさなければならない。
移動するということは蹴りを放つのは難しい。
もし放たれたとしても無理な体勢からでは威力は激減する。

そして御坂は三発目として盾の鉄槌を前に突き出す。
前に出すだけなら、もし反撃されてもそのまま盾として使える。

だが結果は御坂の予想しないものになった。

『化物』は左右からの攻撃を無視したのである。

ゴキベキッ!!っと『化物』の体に鉄槌の欠片が両側からめり込み、赤い液体が辺りに散るが、
かまわず『化物』は前に出て、非の打ち所が無い完璧な蹴りを繰り出した。

バギィィィィィン!!っと今度は一撃で鉄槌が割られる。

御坂「!!!!」

咄嗟に電撃を放ちながら下がる。
その瞬間、御坂がいた空間が『化物』の右腕で
ゴウンッ!!と横になぎ払われた。

電撃を叩き込みながら御坂はそのまま後ろへ飛ぶ。

御坂「(マズイ!!どうする!!?)」

だが次の策を考える暇は無かった。

『化物』は真横へ飛んで電撃を避け、
そしてビルの壁面を蹴って一気に距離を詰めてきた。

御坂「ッ!!!」

『化物』は宙で身を捻り足を振り下ろす。

御坂「…ヤバッ……!!!」

御坂は電撃を放つのを辞め、
全ての演算を『跳躍』へ集中させ、おもいっきり後方へ体を飛ばす。


先端が音速に達するほどの蹴りが仰け反る御坂の目の前の空間を縦に割った。

その蹴りによって生まれた衝撃波に
髪の一部が巻き込まれ切断された。
僅かに回避が遅れていたら彼女の顔面がそぎ落とされていただろう。


振り落とされた足は地面を叩き割り、大量の破片が飛び散る。
全ての力を回避の跳躍にまわしていた為、
シールドが無い彼女に大量の破片が襲い掛かる。

御坂「あ゛あ゛ッ!!!」

すぐにシールドを復活させたものの防ぎきれなかった破片がわき腹にめり込む。

後方へそのまま吹き飛ばされる。

なんとか宙で体制を立て直し、地面に叩きつけられるのを免れる。
一気に嫌な汗が吹き出る。
呼吸に合わせて激痛が体中を跳ね回る。

御坂「あ゛ぁ…はぁ゛ッ…!!」

わき腹に手をやる。
どうやら腹を引き裂かれたわけではないらしい。

だがかなり強くうち付けた。

高速で動き、10億ボルトの電撃を放ち、巨大な鉄槌をあやつる彼女でも、
肉体そのものは普通の女子中学生である。

『人間』

エコーのかかったような低い声が脳内に直接響いてきた。
恐らくあの『化物』の声。
だがそれに返答する余裕はなかった。
心臓はマシンガンのように鼓を刻んでいる。

最高出力の電撃を連続で放ち、
最高強度のシールドを張り、
大量の鉄を操作し、
高速で移動し、
通常の感覚はほとんど使わずに能力によるレーダーをフル稼動。

その演算のとてつもない負荷による疲労が、この一撃で一気に溢れ出てきた。
彼女の意識は朦朧としている。

『お前は強い』

頭の中に声が響く。


『名は?』


声を絞り出す。
スカートのポケットへ手を入れながら。

御坂「…御坂…御坂美琴…レベル5第三位…」

『覚えておこう』

御坂「ついでに…もう一つの名前も…」

スカートのポケットから手を出す。

御坂「いや…直接その体で体験しなさい」

そしてその手を『化物』へ向ける。
その指先にはゲームセンターのコイン。

化物は油断している。
今なら。

レーダーを照準の為の前面のみに絞り、
他の力はすべて切る。

距離は15m。
外さない。


覚えておきなさい―――


『超電磁砲』よ―――


何かを察知したのか、『化物』はすぐに少女へ正面から突進する。

同時に彼女の手から矢が放たれた―――


キュドッ!!!っと彼女の指先から音速の三倍もの速度で光の矢が放たれる。

その衝撃波が激闘で穴だらけになった路地の地面全体を更にえぐる。

そして光の矢は『化物』の胸へ直撃した。

ズッッッドォォアアアアアッ!!!!っと大気が大きく震える。


大量の粉塵が辺りを覆い、視界を遮る。


そして静寂。


御坂「…はぁ…はぁ…はぁ…」

少女の呼吸音のみ。



だが。



だがまだだ。

御坂のレーダーが反応している。

『アレ』があの粉塵の向こうでまだ立っている。

その静寂が切り裂かれる。
粉塵の向こうから。

ヴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!!!っと
この世のものとは思えない咆哮が響いた。

『化物』が粉塵の中からゆらりと出てくる。

胸にはサッカーボール大の大穴が開き、向こう側が見えていた。
全身も衝撃のせいか、ただれている。

御坂「全く…しっぶといわね!…なんで生きてるのよ…!」
わき腹を押さえながら叫ぶ。

この激痛ではさっきまでのような激しい接近戦は耐えられそうもない。

ならばもう一発。
もうかわされる心配などしてる余裕は無い。
奴もかなり負傷している。
きっと当てれる。
そう信じて全てを賭けるしかない。


『…あれは…nkjhhauのkjiiiajhbか…? kaajibxx見せてみろ…』

あの『化物』の声。
先ほどとは違いノイズのようなものが混ざってる。


意味は正確には分からなかったが、拾えたワードのみで勝手に解釈し答える。

御坂「…見せてあげるわよ。…だけど…あと一度しかやらないからね。」

それが合っていたのかはわからない。

だが『化物』はそれに答えるかのように少女へ向かって飛び出す。
その速度は最早先ほどとは比べ物にならないくらい遅く、
目だけでも簡単に補足できた。

進んで来る『化物』へコインをもった手を向ける。
狙いは頭部。
赤い目の間。


限界まで引き寄せる。

御坂「よく見てなさい」

御坂「これが『超電磁砲』よ―――。」

両者の距離が3mになった時。

2発目の破壊の矢が『化物』の額めがけて放たれた。

3mという至近距離で、
『化物』の額に音速の三倍でコインが直撃する。

『化物』は後方へ吹き飛ばされながら大きくのけぞり、
仰向けのまま地面へ落下した。

貫通したコインがそのまま突き進み後ろで粉塵を巻き上げた。


そして。


『化物』の頭部が完全に消失していた。
ピクリとも動かない。

御坂「…勝った…?」

するといきなりバキン!と石が割れるような音がした。

御坂「!?」

咄嗟に身構える。
よく見ると『化物』の体が徐々に白くなり、ヒビが入っていった。

御坂「…?」

そしてヒビが全体を覆い、『化物』の体が粉々に砕ける。
さらにその破片も砂になり、どこからとも無く吹いた風に巻かれ消えた。

『化物』の痕跡が完全に消え、徹底的に破壊された路地に御坂一人が取り残された。


御坂「勝った…あたし…勝ったんだ…」


緊張が解け、重要な事を思い出す。


御坂「…そういえば…!!黒子ッ!!?」


御坂「黒子ーッ!!黒子ーッ!!!」
御坂「(ま、まさか巻き込まれてたりしてないでしょうね!!?)」

黒子「お姉さま…?」

ツインテールの少女がひょっこり物陰から出てきた。

御坂「黒子…!黒子!!大丈夫!!!?」

黒子「お、お姉さま…う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

走りながら号泣し、そのまま御坂の胸へ飛び込んだ。

黒子「ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」

御坂「よしよしっ大丈夫だからね…もう終わったからね…」
優しく撫でながら囁き掛ける。


御坂「!!!?」

黒子「あ…!?」


御坂はグイッと黒子を自分の後に移動させる。
まるで怯えた園児のように黒子が御坂の背中に張り付く。

二つの人影がゆっくりと近づいてくる。
四つの赤い光が不気味に揺らいでいる。
どす黒く重い威圧感。
体の奥底の不快なざわつき。

御坂「(まさか…他にもいたなんて…!!)」

グイっとカーディガンが引っ張られる。
後ろの少女の震えが一段と激しくなった。

ウ゛ン!!っと音がし、
二つの人影が形を変えた。

さっきまでいやというほど見ていたシルエット。
二本の大きな角に筋骨隆々の逞しい体。

御坂「掴まってなさい!!!」

叫び、小さな体を一気に抱きかかえ、
電磁力を使い敵と逆の方向へ跳ぶ。


とにかく逃げなければ―――

彼女のレーダーには後方から急速に迫る二つの反応―――


ビルの壁面を駆け上がり屋上へ。
屋上から屋上へ飛び移る。

後ろからは依然二つの反応。
距離は離れるどころか徐々に縮む。

このままじゃ追いつかれる。
そしたら確実に負ける。

だがそれは絶対にできない。


黒子を支える手に力が入る。

お姫様抱っこされている黒子は御坂の首へ腕を巻き、
顔をうずめている。
小刻みな振るえが伝わってくる。

なんとしてでも―――

なんとしてでもこの子を守らなければ―――

どうすれば逃げ切れる?
この子の今の精神状態じゃテレポートは到底不可能。

どうすれば―――

御坂の頭に一人の少年の顔が浮かぶ。

あんたなら―――どうするの?

おねがい―――

助けてよ―――



レーダーが急に反応する。
その瞬間今いる屋上が黒く長い棒で叩き割られた。

見たことがある。
あの伸びた腕。

御坂「!!!」

バランスを崩し、再びどこかの路地へ転落した。

なんとか体制を建て直し着地したものの、
同時に前後からダンッっと音が聞こえる。

目で確認するまでも無い。
追いつかれた。
そして挟まれた。

そして瞬時に前方の『化物』が両腕を大きくしならせ、
二人の少女へ振るった。

御坂の反応が遅れる。

御坂「(避けられn―――)」










「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」


どこからともなく聞こえた叫びと同時に二人の少女の体へ何かが激突し、横へ大きく吹っ飛ばされた。
その直後にさっきまで二人が居た場所に二本の腕の鞭がドンッと振り下ろされた。

地面に叩きつけられたせいで意識が朦朧とする。

「大丈夫か!!?おい!!」

聞きなれた声。

そして

「おい!!御坂!!白井!!」

一番聞きたかった声。



御坂「…本当に来てくれた……」



上条当麻。

幸か不幸か、
いつも究極のタイミングで登場する男。

黒子「あ、あなたは…」

御坂「はやく…逃げなきゃ…」

上条「大丈夫だ。」

御坂&黒子「…え?」

上条「あの人がいる」


ふとあの『化物』達に目をやる。
『化物』は彼女達を見ていなかった。

その赤い目は壁面の上、
ビルの屋上のへりに立つ赤いコートの男へ注がれていた。


御坂「…あの目…!!?」

『化物』と同じように、
赤いコートの男の目には赤い光。
背中には何かを背負っている。


ダンテ「ヘィ!!」

屋上からあのふざけた調子の声が響く。

ダンテ「お姫様たちは無事かい?!」

上条「ああ!!大丈夫だ!!」

ダンテ「オーケィィ じゃあそこで―――じっとしてな。」

その男はビルの壁面をとんでもない速度で駆け下りて、
御坂達の前方にいる『化物』へ突き進んだ。


御坂はその瞬間に見た。
その男の背中。
銀色の不気味に光る、身長ほどもある大剣を。


イェェェェアッハァア!!!

いかにも楽しそうな男の声。

ドズンッ!!っと強烈な蹴りの一撃を『化物』の側頭部へお見舞いする。
ベギンッ!!っと角が折れ、そのまま吹き飛ばされ壁に激突、
ドッガァァァァァァァァン!!!と大穴を開ける。

御坂達の後方にいた『化物』が、彼女達を完全に無視してダンテに向かって突進する。

ダンテは笑いながらその両手に持つ、
長さ30cmはある巨大な黒と白の二丁の拳銃を向けた。

そしてドンドンドンドン!!!とその大砲を連射する。
銃口からその破壊力を物語る巨大な砲炎と強烈な衝撃波が噴出す。

更に放たれた銃弾はその見かけを遥かに凌駕した威力を持つ。
ダンテの莫大な魔力が練り込められてる対悪魔用の弾丸。

ドバッ!!ドバッ!!っと『化物』の体に次々と巨大な穴を開けていく。
だが『化物』は止まらない。
フォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!っと咆哮しながら怯むことなく突き進む。


ダンテ「Ha-ha!!C'mon!!!」


ついにダンテの目の前にまで到達した『化物』は、御坂を散々苦しめたその蹴りを放つ。

が、ダンテもホァ!!!っとカンフーのように叫んでそれに蹴りを重ねる。
二体の悪魔の蹴りが交差する。

ゴバァッ!!!っと地面が激突の衝撃で大きく抉れる。


そして『化物』の膝から先が千切とぶ。


ダンテはォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛っと呻く『化物』の腹をそのまま真上へ蹴り上げる。
左足を無くした『化物』は宙を舞う。


その『化物』が最期に見た光景は真下から向けられる巨大な銃口―――

そしてその向こうに見える薄ら笑いの顔―――

パチっと軽くウインク。

ダンテ「"Adios,Amigo"」

次の瞬間、破魔の銃弾の雨を浴びた『化物』は粉々になった。

先に蹴り飛ばされた『化物』は再び向き直ると、ダンテへ向けて鞭の腕を放った。

ダンテは右手の銃を腰にしまい、背中の大剣へ手をまわす。
そして迫ってくる腕に向けて下から剣を振り上げた。

ダンテ「Drive!!!」

その瞬間ダンテの剣先から赤い衝撃波のようなものが射出された。

ゾリィィンッ!!と化物の腕が切断される。

赤い衝撃波はそれだけでは止まらず、後方のビルへ食い込み、
ドッゴォォオアアア!!!!と巨大な縦に長い穴を刻んだ。

ダンテ「…huh…」

明らかにちょっと強すぎだ。

ン゛ォ゛ォ゛ォ゛っと腕を切断された『化物』が呻く。

ダンテ「What's up!? Baby!! Ha-ha!!」

屈みながら両手でパンパンと軽く拍手し、まるで子犬を呼んでいるかのように挑発する。
『化物』はもう一方の腕を伸ばし、ダンテへ振るう。

だがダンテは軽く跳躍してそれをかわす。
そしてその腕の上へトンッ着地した。

は? という声が化物から聞こえてきそうだった。

御坂たちにもわかった。
あの『化物』は目の前の光景に驚愕している。

『化物』は振り下ろそうと腕を振り回す。

だがダンテはハッハァ!!ヘィ!!!と何やら喚きながらその腕の上で華麗なステップを刻む。
そしてその腕の上にドサっと寝そべって背伸びをし始めた。

『化物』はその腕を一気に上に振り上げた。

ダンテの体が真上に飛ばされる。
だが焦ることも無くニヤニヤしている。

ダンテは宙で身を捻り再び大剣を手に取る。
そして一気に『化物』の頭へ振り下ろした。

ン゛ン゛ッッッッッッッッハァ!!!

キィィィィィン!!!っと甲高い金属音。
ズバァ!!っと先よりも一段と大きな余波が地面を割った。

頭頂部から股まで綺麗に縦一筋、文字通り『化物』は一刀両断された。
左右均等に割れた体は地面に倒れる前に、ボロボロと割れ粉となって風と消えた。

ダンテは額に指二本を当てて、敬礼のような動作をした。

ダンテ「Good Night Baby」

何?なんなの?何がどうなってるの?―――

御坂は目の前で起こった事が理解できなかった。

あれ程苦戦した『化物』を二体、
あの赤いコートの銀髪の男が瞬く間に倒した。
軽くながすような余裕を持って。

明らかに遊んでいた。

その男は何やら英語でブツブツ良いながらゆっくりとこちらに来る。


御坂は知らず知らずのうちに、隣にいる上条の腕をギュッと掴んでいた。

上条「…大丈夫だ。」

その上条の声と同時に、あの男の目から赤い光が消え、
どす黒い威圧感も嘘のように消えていた。


ダンテ「よう また会ったな」

御坂「…ええ…」

黒子「…あなたは…!」

御坂の背中に張り付きながら黒子が強い口調で言う。


「ダンテェェェ!!とうまぁー!!ここから降ろして欲しいんだよ!!」

ビルの上から声。

上条「あ インデックス」

ダンテ「おー 忘れてた」


御坂「…で、どうやってここが…?」

上条「お前と別れた後、ダンテさんすぐに戻ってきてな。」
上条「んでそのあと三人でしばらくブラブラしてたんだが…」

上条「ダンテさんがいきなり俺ら二人を抱えて跳んだんだ」

禁書「死ぬかと思ったんだよ!!」

先ほどダンテに降ろしてもらったインデックスが喚く。


上条「なんかお前らが危ないって言われてびっくりしたよ。」

上条「そのまますっげえ速さで移動して、どっかの路地にいきなり放り込まれてこの状態にっと」

御坂「そう…な、なんというか…ありがと…」


上条「俺じゃなくてダンテさんに言っt」

ダンテ「痒い」
そう言いながらダンテは肩を竦める。

上条「そうか…ってか白井大丈夫か?」

上条は御坂の後ろの少女に目をやる。
ダンテの姿を見たせいか、いつもの調子に戻りつつあるようだ。

黒子「も、もちろんですの!」

幾分かは落ち着きを取り戻している。
震えも止まっている。

ダンテ「そういえばさすがは潤・、一人倒したんだな」

御坂「ええ…まあねっ」
御坂「聞いて良いかしら?あの『化物』達はなんなの?」

ダンテ「ああ、あれは『ゴートリング』っていう悪m―――」

途中で上条の視線を感じる。

ダンテ「…まあそういう獣だ。」

御坂「ねえ、一体何が起こってるの?」

上条「…いや…もう終わったんだよ。ほ、ほら今ので!もう解決したぜ!」

御坂「本当のこと言ってよ…お願い」

そこで思わぬところから支援が来る。

禁書「とうま、短髪のことをおもうなら教えておいたほうがいいかも。」

ダンテ「一理あるな。お嬢ちゃん達は向こうの奴を一人殺してるんだぜ」
ダンテ「『あの子達は関係ありません』ってつって『はいそうですか』って退くような連中じゃあない」

ダンテ「必ず狙われるぜ」

上条「…!!」


『あの子達』

そのワードが御坂の心に響く。
そう、彼女と後ろにいる小さな少女の二人の事。

上条は状況を簡単に説明した。

外部からとんでもない力を持った者たちが学園都市に侵入し、
大量の化物を引き連れてなにやら危険な事をするつもりだと。
それは人類全体の危機に繋がると。

標的がインデックスという事と、
相手が悪魔という事はうまく濁した。

ダンテ「お嬢ちゃんが倒した奴や、さっきの二人は偵察に来た斥候だ」

御坂「まだまだ本番はこれからって事ね…」

ダンテ「イェア。」

御坂「いいわ、あたしも戦うわ」

上条「ダメだ」

御坂「何でよ!?こんな事態なのに黙ってられるわけないでしょ!!大体アンタだけをそんな危k」

上条「御坂」

上条はまくし立てる少女を強い口調で制す。


上条「お前が前に出たら、誰が白井を守るんだ?」


御坂「……!」

御坂のカーディガンを掴む、後ろの小さい手の力が強くなった。

上条「御坂。白井を守るんだ。」
上条「心配するな。今回は俺は何もしないさ。」

御坂「…」

上条「ダンテさんがやってくれる」
上条「見ただろ?あの強さ。俺達なんかがいくと逆に足手まといになるぜ。」

上条「上条さんもインデックスを守って大人しく隠れていますよ。」

禁書「とうま…」

御坂「…ええ」

普段の御坂ならその言葉に嫉妬しただろうが、
この時は素直に従う。
あたりまえだ。

黒子を一人にする訳にはいかない。

御坂「わかったわ。」
御坂「約束よ。アンタはその子を必ず守り抜く。私は黒子を必ず守り抜く。」

上条「ああ。約束する。」

御坂は知らない。
上条にとってその約束がどれ程困難なものかを。

インデックスを守る。
つまりそれは騒乱の中心、最前線に立つ事。

だが上条は約束を破る気はさらさら無い。

上条「必ず守ってみせる。」

その言葉はむしろ自分自身へ向けて放ったものだった。

ダンテ「…なあ」

他4人「?」

ダンテ「言いにくいがよ、多分すぐ殺されちまうぜ」

上条「…なっ!?」

御坂「…」
御坂は否定しない。
先の『化物』が複数体きたらとてもじゃないが勝てる気がしない。

ダンテ「だがらお嬢ちゃん。こいつを貸してやる」

ダンテは腰から何かを取り出す。

御坂「…!!」

それは先ほどダンテが使っていた巨大な銃の黒い方。

ダンテ「『エボニー』だ。反動はまあ能力で何とかしな」
ダンテ「好きに使え。ちょっとくらい無茶したってビクともしねえ」

禁書「エボニー&アイボリー!!」
禁書「伝説の霊装製作者ニール=ゴールドスタインの遺作にして最高傑作!!」
禁書「ニール=ゴールドスタインは現代火器と魔術の融合霊装製作の第一人者なんだよ!!」

御坂「魔術? れいそう?」

上条「つ、つまりとにかく凄い銃ってことだ」

御坂「そう…よね」

先ほどのダンテの戦いを思い出しながら御坂は答える。

御坂「うん、ありがたくいたd」


御坂は受け取―――ろうとしたが


御坂「重ぉぉぉぉッ!!!何よコレ!?」


両手で何とか支える。
正確には分からないが、
先ほど抱えていた黒子と同じくらいの重量を感じる。

御坂「こ、これ、電子機器とか使ってるッ?」

ダンテ「いんや」

御坂「そう、なら―――」

電磁力を利用して持ち上げる。
フワッと一気に重量感が無くなる。
重すぎず、かつ存在感がある扱いやすい軽さまで調節する。

御坂「っと、大体このくらいね。」

ダンテ「へぇ、便利だなその力」

御坂「…でもあたし銃の使い方とか良くわからないんだけど。」
御坂「反動は能力で銃を抑えればいいけど。(照準もレーダーと組み合わせれば問題ないわね)」

ダンテ「なあに、ただ引き金を引けば良い」

御坂「その…弾とはかはどうするの?切れたらまた入れなおさなきゃダメなんでしょ?」

ダンテ「残弾の心配は無いぜ。自動召喚で勝手に補充される」

禁書「こんなにシンプルかつ高性能の召喚術式は見たこと無いんだよ!!」

御坂「…? まあ弾の心配は無いって事ね」

上条「俺の右手で触らないほう良いっぽいな。」

ダンテ「いんやあ、特に問題ない。その時は普通にマガジンを換えればいい。」
とりあえず持っとけっと三本の弾倉をどこからか取り出し御坂に渡す。

御坂「ありがたく頂いておくわね」

ダンテ「貸すだけだぜ。事が終わったら返してもらうぜ。」

御坂「…わかったわ。」
御坂「じゃあ…あたしは黒子と一緒に戻るわ。」

上条「おう。気をつけろよ」

御坂「アンタもね。それと…頼むわよ」

ダンテ「任せな。」

御坂「さあ、黒子行きましょ」
黒子と手を繋ぐ。

黒子「はいですの」

二人の少女が路地から離れ、雑踏の中へ消えていった。

上条「…」

禁書「とうま?どうしたの?」

上条「確かにダンテさん強いけどさ、一人だとやっぱきつくないか?向こうは大人数なんだろ?」

ダンテ「イギリスから俺達の増援が来るぞ」

上条「イギリスって…もしかして必要悪の教会か?!」

ダンテ「俺の相棒と一緒にな。イギリスは全面的に協力するらしいぜ。
    聖人のサムライガールや赤毛の坊やも来るそうだ」

上条「神裂…とステイルか…?とにかくいい知らせじゃねえか!!!いつ到着するんだ!?」

ダンテ「あと43分だ」

―――

とある空の上の機内

五和「うぅ…」

建宮「これは…こたえるのよな…」

彼らは学園都市へ向かう航空機に乗っている。
7000km/hオーバーというとんでもない速度を誇る学園都市製の超音速旅客機。
乗り心地はお世辞でも良いとはいえない。
慣れない者にしてみればちょっとした拷問だ。

機内に居る天草式の52人それぞれが声にならない呻きを発する。

建宮「あと…どれくらいで到着なんだ?」

インカムで機長に問う。

機長「学園都市到着は40分後です」

建宮「うへぁ」

横の五和は限界点に達したのか、

五和「…おしぼりです…それは…おしぼりです…」

っとなにやらうわ言を呟いている。


超音速旅客機の貨物エリア。

ここに神崎火織、ステイル=マグヌス、シェリー=クロムウェル、そしてトリッシュがいた。


ステイル「これならどうだい?」

ノートに描いた試作の術式を見せる。

シェリー「これじゃ体ごとぶっ飛ぶぞ。もっと抑えなきゃダメだ。
     ここのルーンどうにかなんないか?…あ゛ぁ~…」

ステイル「ここのルーンは外せないよ。こっちのなら…」

ステイルは『イフリート』使用の為の術式をシェリーと共に考えている。
ステイルは何度もこの超音速旅客機に乗っている為平然としているが、
慣れていないシェリーは若干顔色が悪い。

トリッシュは小さい輸送用のケースに座り、
その長い足を組みながら寝ている。

その後ろで神裂火織は荷物を漁っていた。

戦いへ向けてもう一度七天七刀の手入れをしようと
打ち粉や拭い紙が入っているポーチを探していたのである。

っと、その時あるものを見つける。

ふぎゃぁぁぁぁ!!っと思わず声を上げる。

ステイル「どうしたんだい?」

シェリー「うっせえな。なんだその乳鷲掴みにされた様な声は。」

神裂「…!い、いえ、なんでもありません!」

それは見慣れたダンボール箱。

神裂「(な、なんでこれがここに!!?)」

中を見るまでもない。
何が入っているかは知っている。

―――

―――

とある魔界のどこか


空は完全な漆黒。
だが辺りはぼんやりと明るい。

あたり一面には血のような赤い液体。
深さは10cm程。
ところどころに白亜の瓦礫の山、
そして壊れた柱が立っている。

見渡す限り延々とその光景が続いていた。


柱の一つには男は寄りかかっていた。
目を閉じ、静かに瞑想している。

青いコートを羽織り、銀髪のを後ろになで付けている。
左手には長い日本刀。

『閻魔刀』。

つい最近まで別の者がその『閻魔刀』を所持していたが、
この銀髪の男が復活した際に召喚し、呼び戻したのである。


魔界の深淵。
そこには彼のみ。
周りには誰もいない。

一見すると人間に見える。

魔界では通常見られない姿である。
そしてここは魔界の中でも最深部。

魔界の住人の悪魔でさえ滅多に来る事の無い、
悪魔の亡骸と血が最後に行き着く地獄の釜の底。


魔界の構造は人間界とはかけ離れている。

果ての無い広大な層がいくつも無限に重なっている。
面積を測ることは不可能である。

かつて魔帝ムンドゥスは最上層を自ら『作り』、
そこに玉座を据えて魔界を統べていた。

だがある者が魔帝を引き摺り下ろし、その玉座を破壊した。

ダンテ。

伝説の魔剣士スパーダの息子。

彼の弟。

感覚を研ぎ澄ます。

魔界の動向を意識する。

彼は感じた。

魔帝軍の大量の悪魔達が人間界へ向けて移動を始めた。

「…」

パチっと目を開く。

時間だ。

ズウッ!!と目の前の空間に漆黒の穴が出現した。
青いコートの男はゆっくりと歩きながらその穴へ進む。

穴は人間界、学園都市へ繋がっている。

男はその穴の中へ消えていった。

―――

―――

学園都市 とある路上

通りを杖を突きながら白髪の少年が歩く。
左手にはコンビニの袋。

彼はとある少女と久しぶりに会う為に、とあるマンションへ向かっていた。

「めンどくせェ」

すごく会いたがってる。駄々をこねてヤバイ。さっさと顔を出せ。と、
その少女の面倒を見る黄泉川に催促されて『渋々』(本人はそのつもり)来たのである。

prrrr

マンションの入り口へいざ入ろうとした時、携帯が鳴った。

「あン? なンだ?」

『仕事だぜい』

「チッ」

『今回はかなりの大仕事だ』

「緊急か?」

『そうだ』

「…わァッたよ クソッ」

携帯を耳に当てながら、彼を待っている少女が居るであろう階を見上げる。

『今そっちに向かってる』

「俺もそッちに向かうから途中で拾え」

『…』

「何ダマッてやがンだ?」

『いや。なんでもないにゃー』

携帯をしまい早歩きでマンションの入り口へ向かう。
そして左手に持っていたコンビニの袋を、
とある部屋の番号が刻まれたポストへ乱暴に突っ込んだ。

「ワリィな」

そう呟くと踵を返し、来た道を戻っていった。

ポストに無造作に突っ込まれたコンビニの袋。
その中はいつものコーヒーではなく、子供向けの菓子が入ってあった。

―――

―――

学園都市から少し離れた場所。

とあるビルの屋上に、学園都市を眺めている青年がいた。

銀髪に青いコート、その下には赤いベストを着た、やや幼さが残っている青年の男。
背中には巨大な金属製のケース。
そのケースにはフォルトゥナ魔剣騎士団の赤い紋章が刻まれている。

魔剣騎士、ネロ。

ネロ「はは、随分とでけえお祭りになるみてえだな」

ネロ「…」

青年は自分の右手に目をやる。
どう見ても人間の手ではないそれを。

彼は二年前にダンテから『閻魔刀』を授かり、
この右手に吸収して収納していた。

だが半年前から、その『閻魔刀』が取り出せなくなっていた。

そしてその時から奇妙な感覚がある。

この右手が誰か別の者と繋がっているような。

その繋がっている『向こう側』の誰かが勝手に『閻魔刀』を引き出して使っている。

今までの彼なら普通にブチきれているだろう。
彼と彼の最愛の女性の恩人であるダンテから預かった大事な物を、
勝手に使われるとなっちゃ黙っていられるわけが無い。

だがなぜか悪い気がしない。

むしろ妙に懐かしくて穏やかな気分だ。

ネロ「…」

ダンテとの話し合いでその件は様子見することになった。
少し彼は嬉しかった。
このぬくもりは悪くない。

それに今は別にやる事がある。

『ボルヴェルク』。

やはり奴は学園都市へ来る魔帝軍に加わっているらしい。

彼の最愛の女性を危険に晒した悪魔。

奴をぶっ殺す。
奴の頭をこの右手で握りつぶす。

ネロ「待ってなクソ野郎」

そう呟くと、
青年はビルを飛び降り学園都市へ向かって歩を進めた。


―――


第一章 おわり



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コメント

  1. 名無し―ネームレス― | URL | -

    Re: ダンテ「学園都市か」 第一章

    DMC好きにはすごくおもしろい!
    続きに期待

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