ダンテ「学園都市か」 第三章

2010年03月10日 21:42

ダンテ「学園都市か」
ダンテ「学園都市か」

933 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/28(日) 23:04:07.46 ID:05pn8HxA0

―――

とあるビルの屋上にバージルとインデックスはいた。

インデックスは地面に座り込んでおり、
向かいの貯水塔の上にバージルが佇んでいた。

周りには他に誰もいない。

インデックスの頭には何やら奇妙な金属の塊がついていた。
それは魔界の金属生命体の一種を改造した機械である。

その機械は彼女の頭の中にあるフォルトゥナの術式を引き出そうとしている。

辺りは静かだ。
インデックスの頭についている機械のギチギチという稼動音のみが聞こえる。

インデックスはこの男を一目見てわかった。
ダンテと瓜二つの顔。左手にある『閻魔刀』。

この組み合わせ、ダンテの兄バージル以外に誰がいる。

禁書「(…なにする気なんだろ…)」

何か腑に落ちない。
彼女の頭の中にある術式が目的というのは当然わかる。
だが、術式を手に入れたいだけなら彼女を連れてさっさと逃走し、邪魔が入らない場所でゆっくりやればいいのではないか?

禁書「(まさかここで何かの術式を起動させるつもりなのかも…)」

禁書「」ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ
禁書「…あっ…わっ!」

インデックスの胃が鳴く。
脳が活発に活動しているせいで普段よりもさらに空腹だ。

バージル「…」
バージルはいきなりザッと立ち上がるとビルの屋上から飛び降りてどこかへ行ってしまった。

禁書「(…なんか悪いことしちゃったかも…?)」

敵であるはずなのだが、少し申し訳なく思う。
しばらくするとバージルが右手にコンビニのビニール袋を持って戻ってきた。

バージル「食え」

そして無造作にその袋をインデックスの前へ投げた。
地面に落ちた衝撃でその袋からはおにぎりやらパンがこぼれ出た。

禁書「……え?」

恐らく近くのコンビニから持ってきたのだろう。
状況はそれどころではないし、上条の「犯罪行為は許しませんよ!」という言葉が思い出されたが、
目の前の食物を見てインデックスの口の中ではよだれの洪水が発生した。

禁書「あ、ありがとうなんだよ…じゃ、じゃあいただきます」

おにぎりを一つ手に取り、いそいそと食し始める。

食べながら思う。
インデックスの脳内にあるバージルの記録と、
実際に目の前にいるバージルとでは大分違う。

記録にはこうある。
冷酷無比。僅かでも障害となる者は敵味方悪魔人間の関係無く容赦無く殺す。
無駄を嫌う完璧主義者。
慈悲の欠片もない鉄の男。

ではなぜ上条の止めを刺さずに、更に命を救う手助けをしたのか。

そして今もなんでインデックスの体を気遣っているのか。

今行っている作業だって、
インデックスの生命を無視すればいくらでも効率化できるはずだ。

禁書「え…?」

その時だった。

禁書「こ、これ…!?」

頭についている機械が目的の術式を発見したようだった。
そしてその術式を、狙い通りに起動させるために修正し書き換えていく。

その術式は彼女が予想していたものでは無かった。

インデックスがバージルがやろうとしてる事に気付く。

禁書「な、なんでこんな事を…!!?」
禁書「どうして…!!?」

なぜそんな事を、何のためにそんな事をするのかがわからない。

バージル「…」
だがバージルは答えなかった。聞こえてないかのように、先ほどとかわらず瞑想を続けていた。


禁書「なんであなたも魔帝の封印を!!!??」

―――



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―――

神裂「天草式、総員準備が整いました」

ステイル「僕もだ」
ステイルの両手に『イフリート』が装着されている。

トリッシュ「あなたは?」
傍の瓦礫に座っている少年に声をかける。

上条「いつでもいいぜ」
ズボンについた塵を手でパンパンとはたきながら少年は立ち上がる。

トリッシュ「バージルはここから1km東にあるビルの屋上よ。そこに禁書目録も」
トリッシュ「魔帝軍もその周囲に集結してるみたい」

ステイル「結局ダンテは戻ってこなかったな」

トリッシュ「大丈夫よ。あいつはなんだかんだできっと戻って来る。
      いつもギリギリのとんでもないタイミングに現れるのよ」

神裂がその言葉を聞いてチラッと上条を見た。

上条「はいそうです…思い当たる節が俺にも…」
上条がその神裂の視線に同意する。

トリッシュ「さっ、出発よ」

その時だった。
ズンッ!!!と地面が大きく揺れる。

ステイル「なんだ!!!?」

トリッシュ「あら…」

大地が、大気が激しく振動する。
神裂が叫ぶ。

神裂「み、皆さん!!!あれ!!!」

皆神裂が指差した方向を見る。
1kmほど離れた場所のビルの上の空間に、
ガラスにはいったような、長さ100mはありそうな巨大なヒビが縦に走っていた。

上条「おい!!何がおこってんだよ!!!」

トリッシュ「バージル…」
どんどんヒビが入っていく空間を見る。トリッシュは一目でそれが何の術式かわかった。

トリッシュ「あなたも…それが狙いなの…?」


―――


禁書「あ…あ…」

インデックスは上を見上げていた。
頭上の空間に巨大な亀裂。
そしてその亀裂はどんどん巨大化していく。

彼女を中心にして、直径10m程の魔方陣が地面に浮かび上がっていた。
バージルの魔力と血が使われているため、淡く青色に光っている。

禁書「なんで…なんでこんなことするの…?」

スパーダがかつて封印した魔帝。
その後一度復活したものの、今度はダンテが魔剣『スパーダ』の力を使ってやっとの事で封印した。

バージル「…」

バージルは相変わらず瞑想している。
目の前で起こっている現象が、まるで己と何も関係ないかのように。

魔帝の復活。
それがバージルの狙い。だがそれは下準備にすぎない。

本当の目的はそれからだ。

彼にとって、父と弟の行った封印という手段は生ぬるかった。

俺は殺す―――

殺せ―――

2000年に渡る闘争の決着を付けろ―――

生まれついた時から付きまとう影を振り払え―――

スパーダの血族に―――

スパーダの力に喧嘩を売った愚者の首を刎ねろ―――


そしてその首を掲げ証明しろ―――

父を越えたことを―――


己の力が最強だということを―――

―――

―――

とある施設

一方「ん…ァ…」

土御門「目覚めたかにゃ~?」

一方「…」

土御門「よう」

一方「…もう終わったのか?」

土御門「準備は整ったぜよ」

一方「…さっきとなンにもかわンねェが」

土御門「チョーカーのスイッチいれて能力を起動すればわかるにゃ」

一方「そうか…」
一方通行はチョーカーへ手を伸ばす。

土御門「おおっと待つぜよ!!!起動するのは外にでてからだにゃ!!!」

一方「あァ?」

土御門「ここで起動されるとマズイ!!」

一方「チッ…お楽しみは後でッてか。おィ…ラストオーダーはどこだ?」

土御門「隣の部屋にいるぜよ。呼んでくる」

一方「いらねェ」

土御門「そういうな。そうそう、このデータに目を通しておいてくれ」
土御門は一方通行にPDAを渡し、部屋から出て行った。

渡されたPDAに目を通す。

一方「おィ…?」
PDAに表示されているデータ。一方通行はそれを良く知っている。
実際に演算し、処理したこともある。

一方「ハッ!!!あの野郎生きてやがッたか!!!」

土御門達の狙いがわかる。そのデータはとある能力者の資料。脳内の演算構成。
一方通行と同じく、『何か』の壁を越えて更に己の能力の進化に成功した者。

その能力者の脳がミサカネットワークに接続され、その力が一方通行へと集約される。

一方「最高だぜクソ野郎!いいぜェ!!テメェを殺すのは最後にしてやる!!」

その能力者は。

レベル5第二位、『未元物質』。垣根帝督。

部屋のドアが勢い良く開き、小さな少女が走りこんでくる。
そしてそのまま一方通行の上へ飛び乗った。

一方通行「ぐォッ!」

打ち止め「体の具合は大丈夫!?ってミサカはミサカはあなたの体を気遣ってみるの!」

一方通行「テメェ!!それで気遣ってるつもりかァおィ!!」

一方通行は打ち止めの右耳の上にくっ付いている小さな白い箱を見つけた。

一方通行「…なンだそりゃァ?」

土御門「あ~外付けの受信機だ。それで第二位の信号を受信・変換してミサカネットワークに接続する」
土御門「脳にプログラムを直接書き込んでも良かったんだがな、外付けの方が作業が楽だったんだぜよ」

一方通行「そういゥことか」

土御門「それにお前もそっちの方がいいだろ?」

一方通行「…チッ」

土御門「それはさておき…早速動いて欲しい。状況は色々切羽詰ってる」

一方通行はベッドから降り、ゆっっくりと体を動かして手足の動きを確認する。

一方通行「で、誰をぶっ殺せばいィんだ?」

土御門「第一優先は、この女の子だぜよ」
土御門は一枚の写真を渡す。

一方通行「このガキ…!?」

知っている。忘れもしない。
9月30日に会ったあの青い髪の少女。
詳しい事は知らないが、打ち止めを助けてくれたらしい少女。

土御門「覚えてるだろ?名前はインデックス。殺すんじゃなくて保護だぜよ」

一方通行「…そうか」

一方通行は少し安堵する。

土御門「保護したら『イギリス清教』と名乗る連中に引き渡せ」
土御門「それと雑魚悪魔はその『イギリス清教』に任せて、お前は強そうな奴を片っ端から殺せば良い」

一方通行「あァ…」

土御門「あと銀髪に赤いコートの男と、金髪に黒のチューブトップのエロいネーチャンは無視しろ」
土御門「下手にちょっかいだすとヤバイ。それに一応味方だにゃ」

一方通行「銀髪…?」
銀髪。彼を一方的に叩きのめしたあの男も銀髪だ。その一方通行の表情の微妙な変化に土御門も気付く。

土御門「…その銀髪の青いコートの男、今そいつの手にインデックスがある」

一方通行「ハハッ!!!そいつはいいじゃねェか!!!」
このままでは引き下がってられない。
あの澄ました顔を叩き潰さないと気がすまない。

だが。

土御門「交戦はできるだけ避けろ。インデックスを確保したら即刻離脱しろ」

一方通行「あァ!!?」

土御門「これは警告じゃない。命令だぜよ。悪いことは言わない。言う事を聞いてくれ」

打ち止めが心配そうに一方通行を見ている。

一方通行「チッ!!わァったよ!!」
その言葉を聞いてパァァァッと打ち止めの顔が明るくなる。

一方通行「だがあンだけヤバイ相手だ。一切戦わないでガキを確保するなんざ不可能だぜ」

土御門「ああ。『できるだけ』避けてくれればいいぜよ。今のお前なら一瞬で殺される事は無いと思うしな。
    ほら、さっさと行け」

打ち止め「ねー!ねー!ってミサカはミサカはあなたを呼び止めるの!」

一方通行「なンだ?」

打ち止め「せっかくあなたが買って来てくれたお菓子…あのね…無くしちゃったから…
     ってミサカはミサカは言いにくそうにモジモジするの」

一方通行「あァ…?」
思い出す。そういえば先ほどの戦いで彼の能力がその菓子を破壊した。

一方通行「…後で買ってやるから我慢しろ」

言葉を言い切る前に彼は前を向き、そのままスタスタと部屋を後にした。
その背中を小さな少女がはち切れんばかりの満面の笑みで見送った。

―――

―――

上条達は空に現れた巨大な亀裂の真下、バージルとインデックスがいる所へ向かって進んでいる。
トリッシュは案の定、いつの間にか姿を消していた。

神裂「今は魔帝軍は混乱してるけど、最悪全軍を私達に差し向けるかもしれませんね!!」

ステイル「現時点ではどうやらバージルと魔帝軍の利害は一致しているようだしね」

上条「くっそ!!」

神裂「前!!早速来ましたよ!!」
前方から、あのトカゲの悪魔達がこちらへ真っ直ぐ向かってくる。

神裂「突破します!!」

神裂が先頭、その後ろにステイル、上条、そして天草式の面々が続く。

そして魔帝軍の悪魔達と正面から激突した。神裂が七天七刀で瞬く間に悪魔達を切り捨てていく。
両脇のビルの上からも悪魔達が飛び掛ってくる。天草式の面々が応戦する。

神裂「離れないように!!!」
進む速度を落とせばあっという間に包囲される。止まってはならない。

上条「(俺も…今の俺なら…戦える!!)」
上条は飛び掛ってきた悪魔に左手を振るう。

上条「おおおおお!!!」

ゴギン!!!っとベオウルフのストレートが炸裂し、悪魔が吹っ飛ばされる。
少し拳が痛むが充分やれる。

上条「(いける!!)」

別の悪魔が上条の顔目がけて巨大な鋭い爪を振るってきた。上条は僅かに体をひねり軽くかわす。
感覚もいつもよりも遥かに鋭い。高速で動いているはずの悪魔達の動きが手に取るようにわかる。

上条はその悪魔の腹部を思いっきり蹴り上げる。

ドギン!!!っと鈍い音とともに悪魔の巨体が宙を舞う。

ステイル「(頼むぞ『イフリート』!!)」

ステイルは炎剣を振るった。
ドォン!!!!っと五、六体まとめて焼き切る。

その『イフリート』装着での初めてということもあってかなりセーブしていたが、
それでも火力は今までの数十倍にも達していた。

ステイル「(す、すごい!!…これなら!!!)」

ステイル「神裂!!下がれ!!!僕がやる!!」
先頭で道を切り開いていた神裂へ叫ぶ。

神裂「!?」

ステイルは『イフリート』から力を引き出し、両手の先へ集約する。

そして両手を前方へ向け、その力を解き放つ。

ドォォォォォォォォオ!!!!っと長さ50m以上もの炎の束が悪魔達の群れを割る。
数十体もの悪魔が一瞬で跡形も無く消え、業火が通った地面のアスファルトは溶けて赤い液体となった。

突如ドォオオオオオアアアア!!!!!っと上条の前方に巨大な火柱が上がる。
上条「うぉッ!!!!」

上条は咄嗟に右手をかざすが、そのまま炎の渦に飲み込まれる。
右手の効果はある。前方の炎が消滅する。だが左右から押し寄せる炎が容赦なく上条の体を熱する。

上条「ぐぉぉぉぉ!!!」

足に力を篭め、この炎の渦から抜け出すために思いっきり後ろへ跳ねる。
ゴバッ!!っと上条の体が炎の渦から飛び出す。

上条「あっちぃぃぃぃぃぃいい!!!!!」

左手、両足のベオウルフが熱せられて赤くぼんやり輝いている。
もし生身の上条だったなら一瞬で灰になっていただろう。
半人半魔の今でさえあれに耐え続けるのは無理だ。

上条「ぐぁ…!!!ステイル!!!俺を殺す気かよ!!!!」
少し離れた場所にいるステイルへ叫ぶ。

ステイル「待て!!!今のは僕じゃない!!!」

上条「はぁ…?!」

それはつまり、別の悪魔によるもの。
ズォォォォォォォオ!!!!っと炎の柱の中に巨大な影が現れた。

上条「うぉい…」

先ほどまで彼らに洪水のように押し寄せていた悪魔達も少し距離を置いて様子を伺っている。

『かつての高名な戦士の気配に胸を昂ぶらせておったが―――』

炎の中から低い声が響く。

『矮小な人間に使役されていたとはな。堕ちたものよ』

『のう、ベオウルフ、イフリートよ』

ズアッ!!!とその声の主が炎の中から姿を現す。

上条達の目の前に現れたその巨大な悪魔。

獣の四肢に支えられている胴体の上に、人型の屈強な上半身。
そして獅子のような頭部に上方へ大きく伸びる巨大な牙。
左手には10mはあろうかという巨大な剣。全身から炎が噴き出ている。

頭の高さは15m以上はある。

上条「…う…あ…!?」

上条達はその姿を見て言葉を失った。

『本来は人間共など相手にせんのだが―――我が主、我らが王の復活を邪魔させるわけにはいかぬ』

その巨大な悪魔は獅子のような顎を開く。そして、激しく渦巻く炎がその口から上条達へ向けて噴き出した。

上条「ああああああ!!!!」
上条は迫る炎に右手をかざす。
ゴァ!!!っと炎の塊と右手が衝突し、炎がみるみる消される。

上条「っぢぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
わずかにあぶれた炎が上条の皮膚を焼くが、ベオウルフの力で瞬時に再生する。

『その右手…ベオウルフではないな。貴様の力か?』

上条「だからなんだっつーんだよ!!!」

『面白い。では次は我が剣を受けてみよ!』
巨大な悪魔が左手の大剣を振り上げる。

上条「(あれは…やべえ!!)」
右手では、剣にまとわりつく炎は消せても剣は止められない。左手のベオウルフでも止められるかはわからない。
避けるしかない。

上条「(あんだけでけぇんだ!!!避けられる!!!)」
だが振り下ろされた剣の速度は上条の予想を超えていた。

上条「…!!!」

咄嗟に左手をかざす。
ドッギィィィィィンッ!!!!と上条の左腕のベオウルフに剣が打ち下ろされた。

上条「がぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
激痛が左腕から全身へ走る。篭手の中の左腕が熟れたトマトの表面のように裂け、血が溢れ出す。

『褒めてやるぞ!!よくその程度の力で我が剣を防ぎおったな!!!』

ステイル「さがれ!!!俺がやる!!!」
ステイルがその悪魔と上条の間へ飛び込んできた。火の流れを操作し、上条から炎を遠ざける。

上条「…ステ…イル…」

ステイル「さっさと行け!!!ここは僕に任せろ!!!」

天草式の者が上条を担いで離れる。

ステイル「神裂!!!頼んだぞ!!!!」
集団の先頭にいる神裂へ叫ぶ。

神裂「…わかりました!!!」
神裂もそのステイルの決意を受け取る。

神裂「あの子への勝敗と生死の結果報告は自分でして下さいね!!!」

ステイル「行け!!!」

神裂の言葉に返答せずに叫ぶ。
神裂はそれ以上声をかけずに無言で前を向き進んでいった。
天草式の面々もそれに続いてステイルから離れていった。

『炎使いの魔術士か』

その巨大な悪魔がステイルの体を眺めている。

ステイルは火を操作してその悪魔の炎を避けているにもかかわらず、
前に立っているだけでジリッと体が熱せられる。

ステイル「(くそ…やっぱりレベルが違うな…)」

目の前の悪魔を見上げてその力の差を実感する。
おそらく魔界でも高名な大悪魔だろう。
人間だとその体に一筋の傷を負わせることすら到底不可能だろう。

だが今の彼にはイフリートがある。
イフリートの力はほんの僅かしか解放していない。

ステイル「(今のままじゃ無理か…)」

今の状態が彼の体に不可をかけない上限のラインだ。
そのリミッターを外さなければこの目の前の悪魔には勝てない。

ステイル「(…悪いな神裂。僕が報告に行くのは無理かもしれない)」

ステイル「(あれを使う)」

ベリアル『我が名はベリアル!!炎獄の覇者ぞ!!!』

ベリアル。
ステイルともあろう者が知らないはずが無い。
新約をはじめとし、あらゆる文書にその名が刻まれている。
紛れも無く伝説級の大悪魔。

ステイル「(全く…ますます絶望的じゃないか…)」

ベリアル『炎獄の番人イフリートを使役する者よ!!!名を名乗れ!!!』

ステイル「我が名はステイル=マグヌス!!!」

ステイル「魔法名『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』!!!」

魔法名を告げると同時に、ステイルの周りに炎でできたルーン文字が浮かび上がった。

覚悟は決まった。
体を、命を失っても構わない。
彼の体を守るリミッターが外され、イフリートの莫大な力を受け入れる。

今、彼は己を引き換えに力を求める。

呪文を唱える。

ステイル『炎獄の番人にして主の一人、苛烈なる禍の炎よ』

ステイル『それは生命を守る炎の精霊にして、罪人を炙り殺す炎の魔人なり』

ステイル『それは己が魂を焼くと同時に、深き闇を照らす光なり』

ステイル『その名は炎、その役は剣、その使命は火刑』

ステイル『顕現せよ、我が身と引き換えに力を捧げよ!!』

ステイル『地獄の業火をその身をもって知れ!!』

ステイル『炎獄の番人 イフリート!!!!』


それは彼の『イノケンティウス』を元にした魔術。

詠唱が終わったと同時に凄まじい勢いでステイルの全身を炎が覆う。

イフリートから大量の魔力が彼の体に注ぎ込まれる。
僅かでも気を緩めれば一気に蝕まれ、命を落とす。
意識を集中する。


ステイル『お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!』

雄叫びと同時に、彼の体から一気に爆炎が噴き出し、周囲の全てを溶かした。
そしてその炎の嵐がおさまった時、溶けた地面の上に炎の魔人となったステイルが姿を現した。

イフリートの真の力を引き出すのに成功したのである。
それは擬似的な魔人化。

その姿はまるで炎の巨大なスーツを着ているかのようだった。
ステイルの手足を芯にして、炎が筋肉となり骨となっている。頭部には巨大な角が形作られていた。

ステイルの目がぼんやり赤く光っている。

ベリアル『素晴らしい!人の身でありながらその力をこれ程までに使いこなすとは!』
ベリアル『今日は良き日だ!!!イフリートよ!!!』

ステイル『…ぐッ…!』

体の中が痛む。まだ戦ってもいないのに、はやくも蝕まれ始めている。
彼は知っている。かつて幾人かの大魔術士が魔具と契約し、真の力を引き出すのに成功したことがある。
しかし、彼ら全員例外なくその後命を落としたか、悪魔に転生した。

そう、どの道ここまでくれば今後純粋な人間として生きていくことはできない。

ステイル『(ふん…)』

だが関係ない。目の前のベリアルを倒すまでもてばあとは死んでも良い。

体の奥底からどす黒い欲望がこみ上げる。

何もかも忘れてこの力に身を委ねて、ありとあらゆるものを殺し破壊しつくしたい。

だが『インデックス』という存在がその誘惑への誘いから彼の意識を繋ぎとめる。

その存在が彼の最後の砦。
逆に言えばその存在だけが残るのなら、他の全てを捧げても良い。
例え破壊のみを吐き出す怪物になっても、その存在だけを守れるなら。

その存在、その子の為にこの命がある。

その存在、その子の為にこの命を捧げる。

炎の影を纏った両足に力を入れ、溶けた地面を蹴りベリアルへ突進する。

ステイル『おぉぉぉぉぉぉッ!!!!!』

―――

―――

トリッシュ「…しょうがないわね」

とあるビルの屋上から、遠くの空に浮かぶ巨大な亀裂を眺めながら呟く。
どうやら手遅れのようだ。
まさかバージルが参戦し、その目的も魔帝の復活だったとは予想すらしていなかった。

結果はどうなろうと、魔帝と戦わなければならないのは確実だ。

トリッシュ「やっぱりあいつがいなきゃね…」

やはりあの男がいないとダメだ。

トリッシュ「使いたくなかったけど…」

傍らにある大きな金属ケースを開ける。
中にあったのは巨大な大剣。赤い甲羅のようなもので覆われ、刃の部分が銀色に輝いている。

魔剣『スパーダ』。

史上最強の魔剣。

あまりに力が強すぎる為、あの派手好きなダンテですら使うのを躊躇う程の代物。
事実、彼は過去に一度しかこれを使っていない。

前回魔帝を封印した時だ。ダンテはそれ以来、この剣を使うことは無かった。

トリッシュはその剣をケースから取り出し、
屋上の地面へ突き立てる。

ゾンッ!!と不気味な音を立てて『スパーダ』が聳え立つ。

トリッシュはポケットから小さな小瓶を取り出す。
中には赤い液体。

ダンテの血だ。

万が一の事態に備えてダンテから抜き取ったのである。

その小瓶の蓋を開け、ダンテの血をスパーダにかける。

トリッシュ「さあ、起きなさい」

『スパーダ』が淡く赤く光を放ち始めた。

トリッシュ「『息子』を『呼び』なさい」

語りかける。徐々に『スパーダ』の光が強くなる。

トリッシュ「ダンテを」

トリッシュ「呼びなさい」

―――

―――

魔界の深淵。

浅い血の海をビチャビチャと歩く人影が合った。
銀髪に赤いコートの男。

ダンテ。

ダンテ「なんにもありゃしねえ…」

辺りを見回す。彼以外動く者の気配が無い。
どこを向いても同じ風景。

これでは人間界に戻るどころか、この層からも抜け出せない。

陣を構築して他の層へ繋がる穴を作ろうにも、その移動方式はあまり得意じゃない。
人間界ではいつも列車やバイク、車等の通常の方法で移動していた。

それにもしそれが得意だったしても、現在位置すらわからない今の状況じゃ危うい。
無理やり穴を作るともっと深い果ての果てに飛ばされてしまうかもしれない。

更に彼ほどの力の者が闇雲に穴を作ってしまうと魔界でもない全く別の未知の世界へ繋がってしまうかもしれない。

ダンテ「さすがに…まいったぜこりゃあ…」

ポリポリと頭を掻く。

その時だった。

ダンテ「…」

微かな感覚。この魔界の深淵まで届くほどの力。
ピリッと赤い光が彼の体をほとばしった。

ダンテ「…トリッシュ。あれを起こしちまったのか…」

魔剣『スパーダ』の起動。
それが物語る事実は一つ。

魔帝復活阻止が失敗。

ダンテ「…今回は俺のせいじゃないよな…多分…」

トリッシュ曰く、いつも彼が道草したり遊びすぎて話がややこしくなるらしい。
もちろん自覚している。

ダンテ「しょうがねえな…少しは真面目にやるか…」

この『スパーダ』の反応を辿れば、いずれは人間界へ出れる。

己の嗅覚を頼りにダンテは魔界を進む。

―――

―――

ステイルは地獄の業火を纏った拳をベリアルへ突き出す。
その瞬間炎の杭が拳から伸び、ベリアルの腹部へ向かって突き進む。

ベリアルはその杭を右手で防いだ。

二つの業火がぶつかり、既に溶岩の海と化した周囲を振るわせる。
ベリアルは左手の大剣を振り下ろす。ステイルは半歩右に動きそれを交わす。

叩き下ろされたベリアルの大剣が溶岩の海を割る。

ステイルはすかさず右手を横に伸ばす。そして力を集中させる。

『炎剣―――』

ステイルの右手が太陽のように輝きだす。
そして黄金色の、数万度に達する長さ5mもある光の刃が現れる。

ステイル『ハァッ!!!』

その右手をベリアルの腹部目がけて一気に横に振るう。
ベリアルは大剣を再び振り上げ、ステイルの頭目がけて振り下ろす。

二つの轟音が重なる。

どちらの攻撃も直撃した。

あまりにも高温の為、二人の周囲の溶岩が蒸発する。
そして露になった底が溶け、再び溶岩の海を作り出す。

ステイル『ぐァッ!!!』

体を纏っている炎がダメージを緩和したものの、それでも防ぎきれなかった強烈な衝撃で一瞬意識が飛ぶ。

ステイル『…ッ!!』

ベリアルにもどうやら同様の炎のシールドがあるらしい。そしてその強度はステイル以上のようだった。
ステイルの攻撃が直撃したのにも関らずベリアルは平然としている。

ベリアル『イフリートの力をもってしてもその程度か!?』

ベリアルは右手を溶岩の海に突き立てる。

それと同時に、ステイルの足元の溶岩が蠢く。

ステイル『…ッ!!!』

危険を感じ、瞬時に横に跳ぶ。
その僅かな時間差で、先までステイルがいた場所に巨大な火柱が上がった。

避けたと思ったのもつかの間、再び足元が蠢く。横に跳ぶと再び火柱が上がる。

ステイル『(追尾式の遠隔攻撃…!)」

ステイルの後を追って連続で上がる。それを高速で移動して火柱をかわす。
その時、ベリアルが剣を横に構えた。

ステイル『マズイ…!』

剣を交わすには真上に跳ぶ必要がある。
だがそうすると真下から上がる火柱に直撃する。

どちらが脅威か。

ステイルは真上に跳ぶのを選んだ。

爆風を伴いながら大剣が足の下スレスレを通過した。

そして。

火柱がステイルへ直撃する。

ステイルの体を巨大な火柱が下からたたき上げる。

だがステイルはそれを逆に利用した。
痛みを無視して今度は両手を伸ばす。そして再び光の刃を出現させる。

ステイル『オァァァァァァ!!!!』

ベリアルの顔面へ。その二本の光の刃を叩き込む。

ベリアルは相変わらず微動だにしない。だがステイルは感じ取っていた。
ベリアルの体を守る炎が確実に弱まった。

すかさずそのまま何度も光の刃を振るい、乱撃を食らわす。
そして遂にベリアルが怯んだ。

ベリアル『貴様!!!』

ベリアルは大きく剣を振り、ステイルを弾き飛ばそうとする。
だがステイルは空中で身を捻りそれをかわす。

そして両手の光の刃を縮める。ステイルの拳に力が凝縮され、眩く輝き始めた。

『炎拳―――!』

その輝く拳で、ベリアルの顔面へ強烈なフックを叩き込む。

内臓を震わすほどの衝突音が響き、ベリアルが纏う炎がちぎれ飛ぶ。ベリアルの顔が歪む。

更に何度もパンチを叩き込む。

ステイル『おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
体中が軋む。だがやめない。ラッシュを続ける。

一旦腕を引き、『溜め』る。更に拳の輝きが増す。

ステイル『ハァ!!!!』
そしてその拳をベリアルの顎の下に叩き込んだ。
強烈なアッパーを食らってベリアルの巨体が宙に浮く。
ステイルは足を高く上げる。足先が太陽のように眩く輝く。

そして。

落下してきたベリアルに凄まじいかかと落しを打ち下ろした。
ベリアルが溶岩の海に叩き込まれ、巨大な溶岩の飛沫が上がった。

ステイル『…ッはぁ! どうだクソッタレ!!!』

ベリアルはぎこちなく両手を突いて起き上がる。

ベリアル『人間如きがぁぁぁぁ!!!我は炎獄の覇者ぞ!!!!』

ベリアルの体に光が集り、眩く輝き始める。

ステイル『…あれは…!!』

感じ取る。
莫大な力が集っていく。

ステイル『マズイ…!!』

そして後ろに下がり、距離をあけようとした時。

カッ!!!!っとベリアルの体から光が溢れ、視界が金色に染まった。

光の衝撃波が周囲の全てをなぎ払う。

ステイル『がぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
ステイルの体が大きく吹っ飛ばされた。

ステイル『…!』

そしてベリアルの姿を見る。先とは明らかに違っていた。
体を纏っている炎が赤黒くなっており、更に巨大化していた。
さながら憤怒の感情を表しているかのように。

ベリアル『死ぬが良い!!!』

ベリアルが大剣を振り上げる。そして地面に叩き下ろす。
その瞬間、その剣筋の延長線上に巨大な炎の壁が現れる。

ステイル『くッ!!!』
横に跳びかわす。直撃を免れる。だがそれでもその炎の壁が彼の体を焼いた。

ステイル『くそッ…!!!』

どうにかして反撃を―――
そう思った瞬間だった。目の前に再びあのベリアルの大剣。

ステイル『避けられ―――』

ドギィィィィィン!!!!!っとステイルの体に直撃した。

ステイル『…がはッ…』

両手を突いてぎこちなく起き上がる。
あの直撃の瞬間、全ての力を前面に集めてなんとかあの剣撃を防いだ。

だが体は既に限界だった。次は受けきれない。
この体じゃ先のような接近戦も不可能だ。

ステイル『…』

ステイルはイフリートに意識を集中する。

どうすればいい?―――

もっと―――

もっと力をくれ―――

その声にイフリートが反応した。

突如彼の頭にイフリートからその『情報』が流れ込んできた。

ステイル『…』

それは一撃で形勢逆転できるもの。
だが一撃しか使えない。その一撃でステイルは全ての力を使い切る。

ステイルは迷わなかった。

ステイル『やるぞ』

そう呟き、体内を流れるイフリートの力に集中する。
イフリートから受け取った情報を元にある術式を頭の中で組み上げていく。そしてその術式を発動させた。

突如ベリアルを囲んで閉じ込めるかのように赤い壁が出現し、50m四方の巨大な箱を構築した。

ベリアル『貴様!!何をする気だ!!!?』

ベリアルの問いを無視してステイルはイフリートから力を更に引き出す。

全身が先のベリアルのように眩く輝き始め、光が集る。

体内が燃える感覚がする。
実際に耐え切れずに焼かれ始めているのだろう。

だがそれを無視する。

ステイル『これで終わりだ』

正真正銘の。
最後の一撃。

ベリアルが閉じ込められている箱の中に一つの小さな光点が現れた。

ベリアル『これは―――』

ステイルがやろうとしている事に気付いたが既に遅かった。

次の瞬間。


『INFERNO―――』



箱の中が光で溢れた。



その眩い光は学園都市全体を数秒間包んだ。

その僅かな時間の間だけ、超新星爆発に匹敵する高温が50m四方の箱の中を満たした。
事前にステイルが張った壁はその熱が外に出ないように防ぐ結界である。

ステイル『…ッ…』
全身が激痛を襲った。その場に膝を落とす。

ステイル『…どうだ…?』
光が収まると同時に、箱はガラスのように砕けた。

そして。

その場所にベリアルがうつ伏せに倒れていた。

ステイル『…!!!』
あの高温下ですら五体満足なベリアルを見て驚愕する。

だがベリアルはピクリとも動かなかった。手は力なくダラリと開いている。

ステイル『…倒した…みたい…だな…』

だがそう思ったのも束の間。

ステイル『…!クソ…!!』
ベリアルの体から炎が噴き出し全身を瞬く間に覆った。

そして跳ね起きる。

ベリアル『ヴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!』

憤怒の咆哮が大気を振るわせた。

ベリアル『オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!』
赤黒い炎を纏ったベリアルが剣を振り上げた。

ステイルにはもう攻撃する力はなかった。マッチ棒程度の火もだせない。

ステイル『(遂に…僕も終わりか…)』

悪魔になってまで手に入れた力。だがそれすらも遠く及ばなかった。
この目の前の大悪魔によって死が与えられる。神々しいその姿を呆然と眺めていた。

ステイル『(インデックス…)』

脳裏に浮かぶその顔。

せめて。

最後にもう一度。

あの純粋な、太陽のような笑顔が見たかった。

ステイル『…?』
頬を伝う湿った感触。

ステイル『…僕…泣いてるのか…?』


「おお?ちゃんと着いたみたいだな」


ステイル『は?』

ベリアル『?』

どこからとも無く声が聞こえた。

「こっちだ」

ベリアルが振り向く。だがその声の発信元が見当たらない。

「こっちだって」

ベリアルはふと自分の尾の先を見た。
そこに赤いコートの男が火に包まれながら座っていた。

ベリアル『ダンテェェェェェェェェ!!!!!!貴様ァァァァァァァ!!!!!』

その姿を見た瞬間ベリアルが逆鱗した。

ダンテは跳躍し、ステイルの傍に着地した。

ダンテ「お前って相変わらず鈍いんだな。またコートが焦げちまったぜ」
呟きながら、コートについた火を手で払っている

ステイル『…ダンテ…?』

ダンテ「よう。おお?すっげえ身長のびてんな」

ベリアル『貴様!!!!逆賊めが!!!!我が恨み!!!晴らしてくれようぞ!!!!!」

ダンテ「ハッハ~♪お前もこりねえな!」

ベリアルはダンテへ向け大剣を振り下ろした。
ステイル『!!!』

だがダンテはリベリオンでいとも簡単にそれを弾き返した。

パキィィィン!!!とベリアルの大剣の刃が欠ける。

ダンテ「前と同じじゃ芸がねえな…それだとつまんねえな…」
顎をさすりながら何やら考え始めた。

ダンテ「火…だな、同じ火でいくか」

ちらっとステイルの方を向く。

ダンテ「イフリートは…使用中か…そんなら」

ダンテ「アグニ!!!」

その瞬間、二本の剣がどこからともなく飛んで来て、ダンテの足元に突き刺さる。

アグニ「ダンテが呼んだ」
ルドラ「ダンテが久々に呼んだ」

ダンテ「…ルドラ…お前は呼んでないぜ」

アグニ「我らは」
ルドラ「二つで一つ」


ダンテ「うるせえ黙れ喋るな」


ダンテ「まあ来ちまったモンはしょうがねえか」

ダンテ「Ha-ha!!!!」

ダンテは二つの剣を引き抜く。そして手首を捻り、二本の剣を振り回す。
アグニと呼ばれる赤い剣からは炎が噴き出し、
ルドラと呼ばれる青い剣からは白い疾風が吹き出す。

その演舞によって炎の竜巻が発生した。

ダンテ「OK、上々だ」

アグニ「上々?」
ルドラ「最上では」

アグニ&ルドラ「ないのか?」

ダンテ「No Talking!!!」
ダンテは叫び、二つの剣の柄の先をコン!!とぶつけた。

アグニ&ルドラ「…」

ダンテ「OK、『上々』だ」
ダンテ「さぁて、待たせたな!」

ベリアル『貴様を殺せるのなら10秒程度苦でもないわ!!!』
ベリアルは右手を地面に突きたてた。

その瞬間ダンテの足元が赤く染まり蠢く。
だがその地面から噴き上げた火柱はダンテにはあたらなかった。

ダンテは剣を持った両手を広げながら猛烈な速さでベリアルに突進していたのである。
ベリアルは向かってくるダンテに大剣で突きを放つ。

ダンテは両手の剣を体の前で交差させ、前に押し出しながら振りぬいた。

ダンテ「ハァッ!!!」
二刀がベリアルの大剣の切っ先を打ち下ろし、鼓膜が破れそうな金属の衝突音が響く。

ダンテはベリアルの大剣をスロープ代わりにして一気に駆け上がる。

ベリアル『何ッ!!!』

そしてベリアルの手首で跳躍し顔の目の前に飛び上がり―――

ダンテ「Ha-ha!!!Are you ready?!」

二刀の乱撃。

ダンテ「HA!! HA!! HA!! HUUUUUUUHA!!!」

猛烈な速さでベリアルの顔面にアグニ&ルドラ叩き込んでいく。

リベリオン装備時のパワフルな動きとは打って変わって滑らかな円運動。
滑るようにアグニ&ルドラが振るわれ、赤と白の美しい弧が何重にも交差する。

ベリアル『がァァァァァァ!!!』

ルドラの疾風の刃がベリアルの炎の衣をあっさりと剥ぎ取り、無防備となった皮膚をアグニの火炎の剣が襲う。
ステイルのインフェルノにも耐えた頑丈な外皮が簡単に切り裂かれ、彼の血である溶岩のような液体が噴き出す。

ベリアル『オオオオオオ!!!』

ベリアルは大剣を下から振り上げる。
だがダンテはその攻撃を目の前の獅子の顔を踏み台にしてベリアルの背後に跳びかわす。

そしてベリアルの胴体に着地すると、アグニ&ルドラ振り上げ

ダンテ「ハァァァ!!!!」
アグニ&ルドラ「セイヤァァァァ!!!!」

『Crawler―――』

そのまま足元のベリアルの皮膚へ垂直に突き立てた。
それと同時に巨大な炎の壁が噴き出し、ベリアルの背中を大きく裂いた。

ベリアル『ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!』
咆哮で大気が振動する。ベリアルは体を素早く回転させる。

ダンテ「Huh!!」

ひらりとダンテが飛び降り、地面に着地する。

ベリアル『ウ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!!!』

ベリアルは剣を大きく振り上げた。全ての力を大剣に注ぎ込む。刀身が一気に輝きを増す。
そしてダンテ目がけて振り下ろした。

ダンテ「Ha!!!」

ダンテはアグニとルドラの柄頭を繋げ双刃の薙刀状にすると、頭上に掲げて凄まじい速さで回転させた。

アグニ&ルドラ「Ash to ash!!」

『Twister―――』

その瞬間、火炎と疾風の巨大な竜巻が発生した。
周囲の物全てがその火炎の竜巻によって砕かれ、巻き上げられて蒸発する。

その中に振り下ろされたベリアルの大剣も例外ではなかった。
輝く大剣はまるでスナック菓子のように脆く砕け散った。

そしてベリアルの巨体も巻き上げられ、彼の体を業火のかまいたちが襲った。

ベリアルは地面に叩きつけられ、力なく崩れた。
その体からは最早炎は噴出していなかった。
かわりに彼の溶岩のような体液が大量に溢れていた。

ベリアル『…なぜだ…なぜこれ程までに力の差が…』

ダンテ「お前の負けだ。さっさと帰んな」

ベリアル『言ったはずだ!!一度退いた身、二度は退かぬ!!!その心は変わらぬ!!!』

ダンテ「相変わらずだな。だがよ、お前わかってんだろ?」

ダンテの問いかけ。それはベリアルもわかる。
今回は前回よりも遥かに傷が深く、ダメージが大きい。

ここで散れば。

次は復活できない。

待っているのは確実な死。

だが。

ベリアルは退く訳にはいかなかった―――

力こそ全て。
それが魔界にあるただ一つの、そして絶対のルール。

ベリアルはかつて無数の雑魚悪魔の一人だった。
だが彼は這い上がり、炎獄随一の強者にまで上り詰めた。

その競争は熾烈なものだった。
血で血を洗う闘争。彼は多くの同族の屍を踏み越えて今の力を掴み取った。

代償は大きかった。
あるときは共に腕を磨いた無二の友を殺し、あるときは身内の者を殺した。

だがその彼に殺されていった者達は皆例外なく、悔いなく最期は誇り高く散っていった。
そして彼に力を捧げ、その気高き誇りを託した。

ベリアル『我は…退かぬ』

退ける訳が無い。彼に力を捧げた同胞達へのただ一つの誓い。
魔界を裏切り、魔帝を封印した逆賊への復讐。

誇りを守れ。

彼らの魂の叫びを裏切ることなどあってはならない。
そして彼らの死の上に築かれた誇りを失ってはならない。

例え、その身が完全に滅んだとしても―――

ダンテはこういう悪魔と戦うたびに思う―――

別に殺す必要は無いんじゃないのか? と。

確かに戦いは大好きだ。己の力に溺れ、人間を虐殺しようとする悪魔ならいくらでも進んで殺してやる。
だが、このベリアルのように己を捨ててまで何かの為に戦う悪魔を殺すのはあまり好きでは無い。
負けたのならさっさと退散して欲しい。

そう思うようになったのもトリッシュに出会ってしまったからだ。

彼女はダンテとは違って生粋の悪魔であり、かつて魔帝軍の幹部でもあった。
己の生みの親で主でもある魔帝の為なら、ためらい無く進んで身を捧げる気高き大悪魔。

かつて敵として刃を交えた彼女も、いまやダンテの無二の親友であり、彼が最も信頼する人物だ。


ベリアルのような気高き悪魔達を見てふと思う。

出会い方が違っていたら。もしお互いをもっと知る機会があったら。

良き友となっていたのだろうか―――と。


だからと言って今から進んで仲直りしようとも思わない。
それは逆に彼らの誇りを汚すことになる。

苦痛には苦痛を。
虐殺には虐殺を。
剣には剣を。
殺意には殺意を。
誇りには誇りを返す。

それがスパーダの息子として、魔剣士としてのダンテの信念―――。

ダンテ「で、続けるのか?」

ベリアル『当然だ…我が最期の一撃…その身で味わうが良い!!!』

その瞬間ベリアルの体が一気に燃え出した。そして体の形が無くなる。
炎の爆発と共に、ベリアルの獅子の頭部がダンテに向けて射出された。
その顎はダンテの頭を噛み砕かんと大きく牙を剥き出しにしている。

ダンテ「またそれか。芸がねえな」

ダンテは白い巨大な拳銃アイボリーを腰から抜き、その飛んで来るベリアルの頭部へ銃口を向けた。

そして。

引き金を引いた。
銃声と共にベリアルの頭部が弾け、そして火の粉となって散った―――。


ダンテ「ハッ!!相変わらずしょぼいな!」


辺りを舞う火の粉を眺める。


ダンテ「だが」


まるで蛍のように美しく漂い、幻想的な風景を作り出している。


ダンテ「悪くはねえぜ―――」


全ての火の粉が地に落ちるまで、ダンテは静かに佇んでいた。


誇り高き者の最期を汚さぬように。

―――

―――

さかのぼる事15分前。

一方通行は無人の街を歩いていた。

土御門は ヒビの真下へ行け と言っていた。
聞いたときは全く理解できなかったが、今は一目瞭然だ。

一方通行「へェ。そういゥことか」

1kmほど離れた所の空の空間にガラスのように巨大なヒビが入っている。
これ程わかりやすい目印は無い。
その方角から人外の咆哮や、交戦音が聞こえる。

一方通行「ここらで良いか」
施設から400mほど離れた。

そしてチョーカーに手をかけスイッチを押そうとしたとき、
地響き共に、前方のヒビから少し離れた場所に巨大な火柱が上がった。
周囲は火の海となり、周りのビルが溶けている。
その一角がオレンジ色に輝いていた。

一方通行「ハッ!!誰だか知らねェが、派手にやってるなァおィ!」
一方通行「じゃァこちらもやるとしますかねェ!!!」

チョーカーのスイッチを入れる。その瞬間、背中に奇妙な感覚。

一方通行「はッ!!俺がこのメルヘンな羽をつけちまうとはなッ!!!」

今、第二位の脳と繋がっているため見なくてもわかる。

垣根帝督の『未元物質』の六枚の白い羽が一方通行の背中に生えている。
だがこの『程度』の為に接続したわけではない。

本命はその演算能力、『自分だけの現実』の力。
『何か』の壁を越えた進化した力。

一方通行『…わかる…わかるぜェ!!!』
その力が認識できる。

背中の白い羽の根元から黒い噴射物が噴き出す。
そして羽を覆う。

あの無意識の中でしか使えなかった力。

今は簡単に認識できる。

自由に扱える。

黒い噴射物が羽を覆っていく。

一方通行『ハハハkjaハハハッ!!!もっとだ!!!もっとlassuhfo!!!』

全身からも黒い噴射物が噴き出し、彼の意のままにうねる。
そして背中の六枚の黒い羽にどんどん巻きついていき、その力が凝縮されていく。
漆黒の六枚の羽。

一方通行『オァァァァァァァァッ!!!!!』

咆哮と共に羽が打ち震える。

一方通行『…ハッ!!!kjhaggだぜェ!!こいつがkjgbercspか!!!!』

今、彼は完全に『何か』の壁を越えた。
以前の彼の黒い噴射物はざらついており、常に揺らいでいて不安定なものだった。
だが今は違う。表面は滑らかで、まるで黒曜石のように不気味に輝いている。

一方通行『あァ?なンだこりゃァ?言葉がkajagでkjaaaねえじゃねェか』

言葉か上手く喋れないという事を言おうとしたがそれも奇妙なノイズが混ざり、うまく表現できない。
声自体にも妙なエコーがかかっている。

一方通行『まァいいか。さァて、行くとしますか…ねェ!!!!』

その言葉と同時に地面が大きく抉れ、彼の姿は一瞬で消失した。

―――

―――

神裂と上条、そして天草式の面々が進む。
目的のビルまであと300m。

神裂「もうすこしです!!!」

上条「ああ!!」

近づくにつれ、周囲からの悪魔達の攻撃も執拗かつ苛烈になっていく。

その時だった。
神裂達の前方の地面が、彼女達を阻むかのように爆砕し大きく割れた。

神裂「!!!」

皆急停止する。

周りの悪魔達もなぜか攻撃をやめて遠ざかる。

上条「…!!またなんかくるのかよ!!!」
もう慣れっこだ。なんとなくわかる。

案の定、上から何かが轟音をたてて割れた地面の上へ着地した。

上条「うぉ…!!」

飛び降りてきたのは巨大な骨のような悪魔。
肉らしきものはどこにもない。肋骨の間から奥の景色が見えている。

二本の長い角が生えた髑髏の空っぽの目からは金色の光が漏れている。
そして右手にはこれまた巨大な青く輝く大剣。

どう見てもそこらの悪魔とは次元が違うのがわかる。
さっき出てきた炎の悪魔と同じく、明らかにヤバそうな空気。

彼女達は知らないが、この悪魔の名は『ボルヴェルク』。

かつて神だった存在が転生した悪魔。

ネロを襲撃した悪魔。

上条「くそッ!!!あと少しだってのによ!!」

神裂「…上条当麻!!!跳んでください!!!」

上条「ハァ?!今の俺でもあのビルまではジャンプできねえぞ!!!」

神裂「いいから!!!」
神裂は七天七刀に手をかけ、上条に向いて構える。

神裂――そういうことか―――

上条は神裂の意図を理解し、タンッと軽く跳びあがった。
神裂が神速で抜刀する。そして上条の足の裏目がけて振り抜く。

『唯閃』―――

刃を逆にして峰打ち。上条の足の裏側に強烈な一撃。それと同時に上条も刀を『蹴る』。
地響きと共に上条の体が砲弾のように射出される。
そして一直線に目標のビルへ向かい、壁を貫いて上条が屋内へ打ち込まれた。

目の前の悪魔はまるで見て無かったかのようにそれを無視した。
虫一匹抜けたところで何も障害にはならないと考えているのだろうか。

神裂「そうでしょうね…あなた達にとって私達人間は虫けらのような小さな存在です」
神裂「でもその内わかるでしょう。あの方を見逃したのは大きなミスだということに」

そして神裂はジーンズのポケットに入れていたあるものを取り出す。それは『パープルオーブ』。
莫大な悪魔の力をもたらす、ドーピング剤のようなものだ。

神裂「皆さん。さがっていて下さい。この悪魔は私がやります」
その声で後ろにいた天草式の者たちがさがる。

神裂「建宮。皆を連れて退路の確保を」

建宮「…了解なのよな!」

建宮の指揮で天草式全員がその場を離れる。周囲の悪魔達もそれを追う。
退路を確保しろというのは建前だ。

相手が人間ならば、神裂が人間のままならアックア戦の時のように共に戦える。
だが今からは無理だ。

今からは人外の戦いになる。
彼らを巻き込むわけには行かない。

神裂「(皆さん…申し訳ありません)」

天草式の者達が退くのも目の前の悪魔は黙って見ていた。

どうやら目的は神裂一人。
彼女が聖人ということがわかるのかもしれない。

オーブとは悪魔の血や力などが固まった結晶だ。

そしてこの『パープルオーブ』とはその中でも特に希少な存在。
魔力を高濃度に圧縮したものだ。

人間が使用すると、一時的に疑似魔人化できる。
つまり、悪魔のような強力な肉体になる。

ステイルの行った魔具との魂の融合と同様に、この『パープルオーブ』も力に乗っ取られる危険性がある。
ステイルと同じく神裂も知っている。悪魔の力に手を出した人間の末路を。

だが今そのリスクを考えてる場合ではない。

ここで戦わずしていつ戦う?
仲間を守る。人間界を守る。

神裂はふと思う。
今日この為この瞬間の為に聖人の力を授かったのかもしれない。

迷いは無い。

『パープルオーブ』を握る。

神裂「求めます。私に力を」

『パープルオーブ』はその言葉に反応し、彼女の手に溶け込んだ。

全身に凄まじい振動が走る。

神裂「…っくぁ…!」

体中を莫大な魔翌力の激流が駆け巡る。
本来相容れないはずの聖人の神の力と悪魔の力が混ざる。

膨大な力が渦巻く。意識を失いそうだ。手足から内部が軋む音が聞こえる。
力を入れすぎて軋んでいるのか、それとも何かの力が締め付けているのかわからなかった。
ただ嵐が過ぎ去るをじっと堪えて待つ。

しばらくすると、体内の渦は無くなっていた。
一見したところ体には変わりは無い。だがいくつか違う点があった。

ここまでの戦いで負った擦り傷があとかたもなく消えている。
肌には血色が無く、まるで石灰でできた石像のように不気味な程に白い。
そして神裂自身は気付かないが、瞳はぼんやりと赤く輝いていた。

神裂「(…)」

いつもと違う感覚。全てが研ぎ澄まされている。
辺りを舞う目に見えない程に小さなチリ一つ一つも認識できる。

時間感覚も普段と違う。一秒がまるで一時間のような奇妙な感覚。

神裂「(これなら…)」

神裂「(これなら…聖人の力を全て引き出すことができますね)」

聖人の力の源は「神の力の一端」である。
聖人とはその凄まじい力を使える者である。

だが器が人間の身である以上、限界がある。
力を引き出しすぎると体が耐えられずに絶命する。

あのアックアでさえ、『聖母』の加護があったとはいえ体は人間。
その力の上限は本物の大悪魔にくらべればチリに等しい。

だが今の神裂にその心配は無い。

『聖痕』を完全に開放する。

全てのリミッターを外す。

今までとは比べ物にならないほどの神の力が体に流れ込んでくるのがわかる。
人間の身ならば一瞬で爆散している。

だが擬似的に悪魔になっている神裂の体はびくともしない。

神裂「(凄い…)」

最高に気分がいい。
体中を満たす圧倒的な力に魅了される。

神裂「名は神裂火織!!!」

神裂「魔法名『救われぬ者に救いの手を(Salvere000)』!!!」

目の前の悪魔は無言のまま剣を地面に突き刺し、頭を軽く下げた。
確実な意図はわからないが、神裂はその行動を挑戦を受け取ったものと判断した。

神裂「(悪魔でも礼儀正しい方はいるんですね)」

神裂も軽く頭を下げる。

神裂「では」

七天七刀を前に突き出し、構える。

神裂「参る!!!」

『かつて神であった大悪魔』と、『究極の聖人となった悪魔』の戦いが始まる。

先手を切ったのは神裂。
地面を蹴り一気に距離を詰める。

そして抜刀する。
いままでとは比べ物にならない程の速度の『唯閃』。

ボルヴェルクはそれを青い巨大な剣で受け流す。

二人の刃が交わり、衝撃波と共に巨大な火花が散る。

ボルヴェルクはそのまま神裂の頭へ大剣を振り下ろす。

神裂は僅かに体を右へ移動させかわす。
大剣によって地面が叩き割られる。

神裂は弾かれた刀を引き戻し、そのまま右から左へと薙ぐ。
刃から発生した衝撃波で地面のアスファルトが捲れる。

ボルヴェルグはその攻撃をかわそうと後ろへ跳ねる。

だが完全には避け切れなかった。
七天七刀の先端がボルヴェルクの胸の骨にかすり、巨大な火花が散る。

ボルヴェルクは姿勢を低くし、神裂へ向けて一気に踏み込む。

そして大剣を横一線に振るう。

神裂はその大剣に七天七刀を振り下ろす。
二人の刃が十字に交差する。周囲を爆風が襲った。

火花を散らせながの鍔迫り合い。

神裂「ハァァァァッ!!!」

双方とも相手の刃を押し出し上に弾く。

お互いが相手の空いた胴に目をやる。
そしてお互いが剣を引き戻しそこを目がけて振るう。

同時だった。再び刃が交差する。

再び弾く。そしてまた打ち込む。

至近距離で何度も打ち合う。

連続する光と共に地響きを伴った激突音がマシンガンのように連鎖し、
爆風が竜巻のような渦を作り出して周囲の建物を削っていく。

神裂「シッ!!!」
渾身の一撃を叩き込む。

だが弾かれ、神裂は後方に飛ぶ。パワーは向こうの方が上だ。

神裂はやわらかく着地する。
自分の体の調子を確認する。

特に疲労も無い。
リミッターを外した聖人の力にもしっかり耐えている。

果たしてパープルオーブの効果はいつまで続くかわからない。
リミッターを外している状態の時に切れてしまうと人間に戻った彼女の体は一瞬で消滅する。

神裂「(とにかく…さっさと倒すにこしたことはないですが…)」

神裂「(…難しいですね)」

一通り刃を交わらせてみたが、ボルヴェルクの剣技は完璧だ。
非の打ち所が無い。手本にしたい程の技術だ。

それに神裂にはわかる。
今の打ち合いは神裂の力を見極めるためのものだ。

神裂「(…ここからが本番ですね…)」

―――

―――

ネロ「…まいったぜ…」

ネロは少し困っていた。
ボルヴェルク程の悪魔なら、すぐに右手で探知できると思っていたのである。

だがいざ学園都市に入ると、それどころでは無かった。

とてつもない濃度の魔力が充満していて、探知どころではなかった。
あの事件当時のフォルトゥナを遥かに上回っている。

そして何よりも。
『閻魔刀』の気配が強かった。
間違いない。

今、『閻魔刀』の所持者が学園都市にいる。
その所持者自身の力がガンガン反応している。
むしろ、学園都市を覆っている魔力の層全体よりもその所持者の力の方が濃い。

その所持者の場所もわかる。
あの巨大なヒビの真下。

その力のせいで、彼の右手の探知能力が妨害されている。
ボルヴェルクの反応を追えない。

ネロ「ダンテの兄貴か…」

ダンテの兄。そう考えると納得する。
怪物の兄が怪物なのは当然だ。

だが別の点で彼は引っかかっていた。

あの奇妙な親近感が増している。
なにやら凄く懐かしい。
それもあのヒビの下、『閻魔刀』を所持しているダンテの兄に近づくほど強くなる。

ボルヴェルクを追えない今、彼はそちらに興味を持っていた。
なぜかわからないが、とにかく行ってみたい。

ネロ「どうすっかな…」

その時だった。彼の右手が僅かに反応した。

ボルヴェルクだ。

誰かと戦う為、力を解放したらしい。

ネロ「…!!ははは!!!見つけたぜ!!!」

そのかき消されそうな反応を見失わないように意識を集中させる。

ネロ「ああ?…なんだこれ?」

ボルヴェルクの相手。

この人物も凄まじい力を発している。
だが何か奇妙だ。
悪魔の力になにか別のものが混ざっている。

覚えはある。数年前に手合わせをした聖人の少女。そう、あの子が放っていた力にそっくりだ。
あの時よりも比べものにならないほど強大だが。

今回の件はイギリス清教も動くと聞いている。聖人も派遣されていてもおかしくない。

だが。
悪魔の力が混ざっているのはおかしい。聖人は悪魔の力を使えないはずだ。

使わないのではなく、本質的に使えないと彼はかつて騎士見習いの頃の授業で学んだ。
悪魔の力と神の力は相反するもの。それを同時に身に宿すなど不可能、と。

ネロ「…なんかめんどくさそうだな…」

とはいえ、ここで無駄な時間を潰すわけにも行かない。
考える時間は後でいくらでもある。

ネロ「まあ…とにかくボルヴェルクだぜ!!」

ネロは跳躍し、そのボルヴェルクと謎の人物の元へ向かった。

―――

―――

上条「痛ッ…!!」

瓦礫を払いながら起き上がる。神裂の刀が当たった足の裏が痛む。
上条は目的地のビルの中ほどの階に叩き込まれていた。

上条「…この上か…!」

天井を睨む。
今いるこのビルの屋上にインデックス、そしてバージルがいるはずだ。

上条「シッ!!!」

床を思いっきり蹴り垂直に跳び上がる。
天井を貫き、上の階へ飛び移る。

再び跳び更に天井を貫き上へ上へと上がっていく。

そしてそれを7回繰り返した時。

頭上に天井ではなく、漆黒の空が現れた。

屋上の床を突き破り飛び上がる。そして着地する前に修道服を着た少女の姿を確認しその名を叫んだ。

上条「インデックス!!!!」

禁書「とうま!!!」
上条が着地した衝撃でベオウルフが屋上の床を砕いた。

上条「大丈夫か!!!インデックス!!!!」

禁書「とうまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
今にも泣き出しそうな顔になる。少女の足元には直径10m程の魔方陣。どうやらそれのせいで動けないらしい。

上条「(あれが魔帝復活の魔法陣か!!!俺の右手で!!!)」

足のベオウルフに力を篭め、一気にインデックス向かって突進する。だがその時。
背後から何かが来るのを感じ取った。

咄嗟に振り向き、左手をかざす。浅葱色のガラスのような剣が篭手に直撃した。なんとか弾く。

上条「…バージル…!」

バージル「ベオウルフか」

上条「ああそうだ…あんたの事も知っているぜ」

バージル「そうか」

上条はゆっくりとさがる。バージルは前方15m程の所にある貯水塔の上に座っている。
20m後ろにインデックスがいる。
ベオウルフの力を使えば一瞬であの子の傍にいける。

だが。その瞬間前方のバージルの姿が消えた。

上条「…は…?」

後ろから固いブーツの足音。

振り向くと、インデックスから2m程の所にバージルがいた。

上条「…な…!?」

バージル「終わるまで待て」

終わるまで。
上条でもわかる。
つまり封印を解く作業が終わるまで待てということだ。

上条「…んだと…?」

上条「…ふッざけんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」

バージルへ一気に跳びかかる。

だが再び浅葱色のガラスのような剣が5本。
どこからともなく現れ上条へ向かってきた。

普通の人間なら速過ぎて見えないだろう。銃弾を見ろと言っているようなものだ。

だが今の上条には見える。

上条「ふッッッ!!!」

短く息を吐き、まず最初の二本を思いっきり身を屈めてかわす。

三本目は低く飛んで来る。それを左手の篭手でかするようにして弾く。
四本目は中腰になっている上条の顔へ目がけて来る。

顔を右に傾けかわす。僅かに頬にかすり一筋の傷ができる。
五本目はその上条の首を目がけて真っ直ぐ飛んで来る。

それを右手で防ぎ打ち消す。これで全て。

上条「(あと少しで届く!!)」

両手の拳を強く握る。

だがその時。突然目の前に6本目が現れた。

上条「―――!」

反応できなかった。
なす術も無く上条は胸を貫かれる。

そのまま後ろへ吹っ飛ばされ、地面へ叩きつけられる。

禁書「とうまああああああああ!!!!」

上条「…大丈夫だ!!!」
普通の人間なら絶命してるのだが、上条はムクリと起き上がる。

上条「ぐぁ…」

胸を貫いている浅葱色の剣に右手を当てる。
幻想殺しによってあっさりと砕け散った。

上条「くっそ…やっぱ…すげぇいてぇ…」

胸の大穴が、悪魔の再生力で氷が軋むような音を立てて塞がっていく。

上条「…ッ…」

少し前にインデックスから聞いた『魂を削りとる攻撃』という話の意味がよくわかる。

傷は塞がり体は元に戻ったが、確実にダメージを負っている。
魂が縮んでいく間隔。

何発も食らってはいられない。

上条「(やっぱ…全然かなわねえな…)」
上条「(第一このベオウルフが過去に一瞬で倒されてるしな…)」

上条は知っている。この目の前のバージルという男がどれほど強いかというのを。
下手な小細工も通用しないだろう。

その強さは理解できない領域まで達している。

上条「(どうする…?!くっそ!!!)」

闇雲に向かって行っては確実に死ぬ。そして今ここで死ぬわけには行かない。

インデックスに手が届くのは上条だけだ。
今魔帝の復活を止められる可能性を持っているのは上条だけだ。

上条「(なにか…方法を!!!)」

その時だった。

上条から見て右。
ビルの屋上のへりに第三者が現れた。

上条「…お、お前は…!!」

『あァ? なンでテメェがkabeppklんだァ?』

現れたのは一方通行。
背中には不気味に黒光りしている長さ5m程の六枚の羽。

禁書「え…あ…あの時の!!!…その羽…」

上条「な、な、な、なんでお前が?!!!」

一方『るせェ!!こっちのセリフだ!!!』

上条「…!」
その時上条は見逃さなかった。

バージルはその第三者に目を向けている。上条から目をそらしている。

上条「(…今なら…!!)」

いきなりの意外な人物の登場で動揺したものの、今はそれよりも大事な事がある。
地を蹴り一気に距離を詰める。蹴られた床のコンクリートが砕け散る。

だがバージルは上条に目すら向けずに、彼の顔面に右手を叩き込んだ。
強烈なカウンターが直撃し、上条の頭部から肉片が飛び散る。

バージルにとっては軽くジャブしただけであろう。
それでも上条の顔の左半分を叩き潰し、体を大きく吹っ飛ばすのは簡単だった。

ふっ飛ばされた上条が貯水塔に叩き付けられめり込む。

上条は地面にだらしなく落ちる。

上条「…」

禁書「とうまああああ!!!とうまああああ!!!」

上条「…大…丈夫だ…!!」

欠けた顔半分がすぐに再生する。今のはさすがに上条自身も死んだと一瞬思った。
再生するとはいえ、頭部が半分無くなった上条を見るのはインデックスにとってかなりキツイだろう。

一方『…おィ…テメェもまさか体弄られたってクチか?』

その一部始終を見て一方通行が上条に問いかける。

上条も学園都市の人間だ。そしてその規格外の右手は使いようによっては大きな武器になる。
一方通行は、上条が彼と同じく何らかの処置を施されて戦いに動員されたのだろうと考えた。

結果はバージルにたやすく一蹴されたが、
その爆発的な跳躍力と肉体の再生をみれば一方通行の解釈も当然だ。

上条「…まぁ…そういうことだ…」

上条もなんとなく理解する。
一方通行の後ろの羽も、依然見た彼の力とは明らかに違う別物に見える。

ぎこちなく上条は起き上がる。

一方『つーことはテメェもあのガキが目的か』

上条「…は?」

一方『beeiiafjkkで…チッ…あー』
一方『今はテメェに付き合ってる暇はねェ。あのガキを保護しなきゃなンねェンだ』

上条「保護…そ、そうか!!!」

イギリス清教が学園都市上層部に掛け合って、それで動員されたのだろうかと上条は考える。
とにかく今はこの思わぬ増援が嬉しい。学園都市最強がいれば何となるかもしれない。

上条「俺はインデックスを!!!お前はあいつを引き止めてくれ!!!」

一方『あァ?テメェなに言ってんだ?誰がテメェなんk』

その時、二人は感じ取った。
バージルからの強烈な殺気を。

一方『(きやがる!!!)』

咄嗟に一方通行は黒い羽の一枚を伸ばし、体の前方へ盾のように展開した。
その瞬間甲高い金属音が響き、地面に恐ろしいほどに滑らかな細い筋が走る。

一方『(やっぱ反射はできねェみてェだが…)』

彼の黒い羽はバージルが飛ばした剣撃に耐え切った。

一方『(防げるなら問題はねェ!!)』
どうやらその剣撃は一方通行のみを狙ったらしく、上条は呆然とその光景を見ながら突っ立っていた。
もしその剣撃が上条にも向かっていたら彼はなす術も無くバラバラになっていただろう。

一方『何してやがる!!!行くならさっさと行け!!!』

その声を聞いた上条はハッとするとすぐに表情を引き締め、インデックスへ突進していった。
それと同時に一方通行は別の羽の一枚を前方へ伸ばし、
細い棒状にし先端を尖らせた。

そしてバージル目がけてその黒い杭を伸ばす。
黒い杭は音速の何十倍もの速度で突き進む。

同時に一方通行はベクトル操作をし、杭の爆発的な加速で生まれた衝撃波も全てその杭に載せる。
傍にいるインデックスを傷つけることも無くさらに攻撃翌力を上げられて一石二鳥だ。

一見地味に見えるのは、限界まで凝縮し杭の先端にエネルギーを集中させているからだ。
その破壊力は以前の彼の黒い噴出物を遥かに上回る。

バージルも抜刀する。
そして今度は剣撃を飛ばすのでは無く、直接その杭に刃をぶつける。

二つの桁外れの力が衝突する。

一方『ハッ!!!』

弾かれた杭を戻し更に突き出す。
そしてバージルも杭に刃をぶつける。

凄まじい衝突音が連続する。

その隙にインデックスに近づこうとした上条だが、バージルはそれを見逃さず、
一方通行の攻撃を退けながら上条の腹へ強烈な蹴りを食らわす。

鈍い音がし、上条の内臓が破裂し背骨が砕かれ大きく吹っ飛ばされる。
そしてそのままビルの屋上の上から叩き出され落ちていった。

一方『クソが!!!使えねェ野郎だぜ!!!』

一方通行は更にもう二枚の羽に伸ばし杭状にして突き出す。
バージルは三本の杭を捌きながら、剣撃を一方通行に飛ばす。

それを一方通行の残りの羽が防ぐ。

凄まじい轟音と共に青白い筋と黒い筋が行き交い、お互いが弾くたびに眩く輝く。
まるでレーザーの撃ち合いのようだった。

一方通行『(くそ…これじゃァ埒があかねェ)』
一方通行『(だがこれ以上威力を上げるわけにもいかねェ』

それはバージルも同じだった。
お互いが、傍にいるインデックスに危害を与えないように力を抑えている。

だがその時。
インデックスの足元の地面が突然割れ、白い光とともに何かが飛び出してきた。

一方通行は驚きそちらを向く。バージルも目だけをそちらに向ける。

飛び出してきたのは上条だった。
ビルから落とされた後、今度はインデックスの足元めがけてビル内をぶち抜いてきたのである。
左手・両足のベオウルフが眩い光を放っている。

バージルは一方通行の攻撃を払いながらすかさず幻影剣を10本程出現させ、上条へ向けて放つ。

上条は避けようとはしなかった。
全弾上条の背中に突き刺さる。

上条はそれを無視してインデックスの傍へ飛び降り

上条「おあああああああ!!!!」

右手で彼女の肩に触れた。

そしてガラスが割れるような、魔法陣が砕ける音が響いた。

インデックスは体の拘束が解けると同時にその場に倒れこむ。

上条は彼女の隣に着地した。
その着地の衝撃で大量の流れ出た血液が地面に叩きつけられ、辺りを赤く染めた。

上条「インデックス!!!」

禁書「と、とうま!!!!ぁぁぁぁああああ!!!」
その血を浴びたインデックスが跳ね起き、叫びながら何本もの剣が突き出ている上条の胸に手を伸ばす。

上条「俺は大丈夫だ!!!行くぞ!!!」
血を吐きながら、右手で胸を貫通している剣を砕き、左手でインデックスを掴み上げ、
一気に跳ねてビルから飛び降りていった。

不思議な事にバージルは特に追おうとはしなかった。

一方通行は一旦攻撃を止め距離をとる。

バージルも刀を納め、真上の空間の巨大なヒビを眺めている。
先ほどまで軋むような音を立てながらどんどん巨大化していたが、
今はピタリと止まっている。

ふと一方通行は疑問に思った。

一方通行『(…なンで追わねェ…?)』

土御門の説明によれば、魔帝とやらの復活にはあのガキが必要なはず。

バージル「…まあいい…これなら充分だ」

ヒビを見ながらバージルがポツリと呟く。独り言のようだった。

その一言で充分だった。
一方通行はその言葉で確信する。

一方通行『(チッ…!)」

ガキを奪うのが遅かった。
奴には今、あのガキがいなくても魔帝を復活させることができる手段がある。

一方通行『(クソが…結局戦わなきゃなンねェのかよ…)』

一瞬土御門の言葉が脳裏をよぎる。
わかってる。奴の強さは馬鹿げてる。
この力を手に入れたとはいえ、勝てる可能性がほんの僅かなのは知っている。
むしろ、その可能性すら無いかもしれない。

一方通行『(チッ…)』

だが退く訳には行かない。

何としてでも止めなければならない。

例え命を失ったとしても、
何としてでも守らなければいけない。

あの小さな少女を。

あの小さな少女が生きる世界を。

一方通行『(上等だぜクソ野郎)』

―――

―――

神裂とボルヴェルクは気付いた。

上空のヒビの拡大が止まったことに。
二人ともヒビの真下のビルの方に目をやる。

その時だった。
ビルの屋上から何かが飛び出した。

神裂「…!」

神裂はわかった。
上条当麻とインデックス。
救出に成功し、術式を破壊するのに成功したのだ。

そしてそれに気付いたのはボルヴェルクも同じだった。
ボルヴェルクは急に体の向きをかえ、上条達が跳んでいった方角へ跳躍していった。
突然の事に神裂の反応が遅れる。

神裂「しまった!!」

すぐさま神裂も後を追うべく地面を思いっきり蹴る。
凄まじい速度で空に跳び上がり、ボルヴェルクの姿を確認し、
ビルの屋上を蹴りながら後を追う。

―――

―――

上条はインデックスを抱きかかえながら駆ける。

ビルの屋上から屋上へ飛び移っていく。

どこに向かっている訳でもない。
ただとにかく遠くへ。

禁書「とうま」

インデックスが上条の胸に手を当てながら彼の名を呼ぶ。
胸の穴は既に塞がっていた。

上条「ん?」

禁書「ありがとう」

上条「気にすんな」

インデックスは上条の胸に耳を当てる。
心音が無い。
そして冷たい。

禁書「とうま…体が…」

上条「ははは…まあそういうことだ」

インデックスも、そして上条自身もなんとなく感じていた。

人間に戻る。
それは不可能かもしれない。
上条は悪魔の力に触れすぎた。
再びその心臓が動き出し、体温が戻ったとしても、完全な人間には戻れないかもしれない。
最悪、このベオウルフが無ければ生きていけないかもしれない。

禁書「ごめんね…ごめんね……」

上条「おいおい!泣かないでくれよ!上条さんは別に嫌じゃないですよ!」
上条「なんつーか色々と便利だしなこの体!結構気に入ってるぜ!」

禁書「…で、でも…」

上条「後悔なんざしてねえさ」

必ず守る。
その為に受け入れたこの力。後悔していないというのは嘘じゃない。

むしろ救いだ。

守れるなら悪魔に魂を売っても良い。守る為の力が手に入るなら悪魔になっても良い。
皆の笑顔が守れるなら。インデックスの笑顔が守れるなら。

上条「ははは…」

自分で思いながら苦笑いする。
ある人物が発した『もっと力を』という言葉を思い出したのだ。
その人物から先ほどインデックスを取り返した。

上条「それに」

禁書「?」

上条「体がどうなろうと上条さんは上条さんですよ!」
はははと笑う。いつものバカさがにじみ出ている笑顔。

禁書「…うん。いつものとうまだ」
インデックスもつられて、泣きながら笑う。

上条「ほら、終わったらたらふく飯くわせてやっからよ!」

禁書「…うん!」

突然インデックスの表情が固まる。目は上条の後ろへ向けられていた。

上条「?…おいどうs」

急に上条の背中がざわつく。今日何度も味わった感覚。
大悪魔が近くにいる。

禁書「後ろ!!!」

上条は振り向く。
猛烈な速さで接近してくる悪魔を見つけた。あの白い髑髏の悪魔、ボルヴェルク。

あっという間に距離を詰められる。
跳躍して空中にいたため、回避行動もとれない。ボルヴェルクは上条の首を切り落とそうと青い大剣を振る。

上条はその剣撃を左手のベオウルフでギリギリの所で防ぐ。
激突音と共に巨大な火花が散る。

上条「ッッがァァァ!!!」

篭手の隙間から鮮血が溢れる。ベオウルフは耐えたが、上条の体は耐えられなかった。
バランスを崩し、道路に乱暴に着地する。ボルヴェルクは50m程離れたところに降り立った。

禁書「とうま!!手が!!」

左手の傷が治らない。バージルの攻撃を何度も受けたため、既に彼の魂は限界に達していた。

上条「(やべえ…!そろそろ限界か…!?)」

ボルヴェルクはゆっくりと近づいてくる。

上条「(…くそ…どうする…!!)」

上条程度ではまともに戦えない相手。
ましてやインデックスを守りながらなど到底不可能だ。

だが逃げるにしても、背を向けた途端に距離を詰めてくるはずだ。
今の左手ではあの剣を防げない。

そして左手すら治せない今、首を刎ねられたりでもしたら今度こそ確実に死ぬ。

上条「(…くっそ…うごけねえ…!)」

ギュっとインデックスが彼の服を強く握ってるのがわかる。

状況は更に悪化する。
後ろから轟音が響く。

今の上条は振り向かなくてもわかる。

あの山羊の頭をした悪魔が三体、彼の後ろに着地した。
退路を塞がれた。

上条「(クソ…!!)」

後ろから悪魔達が近づいてくるのがわかる。
前からは押しつぶされそうな程の威圧感を放ちながらボルヴェルクがゆっくりと歩いてくる。

上条「(やべえ…やべえ…!!)」

そして。
前のボルヴェルクが地面を蹴った。

上条「―――」

速過ぎて全く反応できなかった。
ボルヴェルクは上条の首を落とすべく剣を横に振るう。

突如金属がぶつかり合う音が響いた。

上条とインデックスはその衝撃で後ろへ吹っ飛ばされる。
なんとかインデックスを庇いながら着地する。

上条「へ?」

何が起こったのかわからない。
ボルヴェルクの方へ目をやると同時に聞きなれた声が響いてきた。

「離れていてください!!」

上条「神裂!!!」

神裂が刀でボルヴェルクの剣を止めていた。
二つの刃が交わっている点から巨大な火花が散っている。

神裂「ハァァァァァァァァ!!!!」

咆哮と共にボルヴェルクの剣を弾き、刀を返す。
ボルヴェルクもそれに対抗する。

お互いが再び至近距離で打ち合う。

上条「―――!!」

上条はその打ち合いから発生した爆風からインデックスを守る為に神裂達に背中を向ける。

三体の山羊を正面に見据える構図となった。
目が逢った。

神裂が来たとはいえ、脅威はまだある。

目の前のこの三体。

―――

神裂は感じる。
相手の剣撃が先とは違う。

やはり先のは様子を見る為のもの、
今はそれよりも遥かに攻撃的だ。

神裂が押され始めてきた。
攻撃の手が少なくなり、防御中心へ傾いていく。
神裂の手の内は全て読まれていた。

唯閃はことごとくいなされる。

逆に神崎は綺麗にいなせずに直に受けてしまう剣撃が増えていく。
そのたびにワンテンポ遅れ、次の剣撃も直で受けてしまう。
七天七刀を握る手が痺れてくる。

神裂「(このままじゃ捌ききれなくなる…!)」

神裂が一旦距離をあけ様と後方に跳ねる。
同時に、それを見透かしていたのかボルヴェルクも前へ跳び距離をあけさせようとはしない。

神裂「(まずい…!!)」

ボルヴェルクの凄まじい剣撃の嵐から抜け出せない。
基本に忠実な剣撃の中にときおり変則的な攻撃も織り交ぜてくる。

そのたびに神裂の体勢が崩れ不安定になる。
お互いへの打ち合いが、いつしか神裂の防戦一方になった。

神裂「(なんとかしてこの状況を打開しなくては…!)」

ふと鞘を握る手を意識する。

神裂「(…そうだ…!)」

七天七刀の鞘に大量の力を流し込み、強化する。

神裂「(どうか…!耐えてください!)」

狙いは二刀による攻撃。
抜刀術が基本の神裂はあまり得意ではない。

ましてやそんな付け焼刃の攻撃がこの相手に決定打を与えるとも思ってはいない。
だが意表をついて僅かな隙さえ作れればそこに道ができる。

鞘を握る手に力を入れる。
そしてボルヴェルクの剣を七天七刀で横に弾いたと同時に。

鞘で相手の腹部へ突きを放った。

鈍い激突音。

ボルヴェルクはその突きを右手で防いだ。即席の攻撃は右手を貫くことはできなかった。
だがそれは特に問題ではない。

神裂の狙い通り、相手は突然の奇策に僅かにひるんだ。その隙を見逃さない。

すかさず七天七刀を返し。

神裂「ハァッ!!!」

無防備となった相手の頭部へ振り下ろす。

金属の切断音が響いた。

その一撃で決まるほどボルヴェルクは楽な相手ではない。
神裂が切り落とせたのは左の角のみだった。

ボルヴェルクは頭部を思いっきり傾け、ギリギリの所でかわしたのだ。

だが形勢は一気に逆転した。体勢を崩したボルヴェルクに神裂は立て続けに七天七刀と鞘の乱撃を加えていく。
今を逃すともう機会がない。一度体勢を戻されると、この二刀の奇襲も通じなくなる。

神裂「オァァァァァァア!!!!」

軋む体を無視してとにかく打ち込んでいく。

乱撃を加えながら更に聖人の力を引き出す。
一時的に悪魔になっている体でさえ、その力の負荷で悲鳴をあげはじめ、全身を激痛が襲う。
限界点を越えはじめる。

力の乱流で意識が薄れていく。
だが止まらない。

更に求める。

もっと―――

もっと力を―――!


そして。

神裂の中で何かが決壊した。


神裂「ァァァァァァァァァッ!!!!!」

聖人の力が、神の力が限界までその体に注がれる。
神裂の体から光が溢れる。

そしてその光があるものを形作っていく。
背中には羽が生え、神裂の体に重なるように教会にある石像の様な何かが姿を現した。

それは正に天使の姿だった。

神裂は人間を基にした悪魔の体を核として天使となる。

人間・悪魔・天使。
本来相容れない存在が三つに混ざったハイブリッド。

悪魔化した上で更に天使化。
今や神裂はかの四大天使以上の力を持った存在となった。

だが。

その力の統制は悪魔の部分が担っていた。

神裂は天使の力を支配した悪魔と化した。

凄まじい衝撃音とともにボルヴェルクに神裂の七天七刀が食い込む。

右腕が切り落とされる。

そのまま脇を深く抉り、切断された肋骨が地に落ちる。

切断面から白い光が血のように噴き出す。


ボルヴェルクも同時に神裂の腹部を蹴り上げる。
カウンターとなった蹴りが湿った音を立てて神裂の腹にめり込む。

爆発的な衝撃波を伴いながらお互いが大きく吹っ飛ばされた。

ボルヴェルクは背後のビルへ叩き込まれ、そのまま瓦礫に埋もれた。
高く打ち上げられた神裂はそのまま地面へ落下し、叩きつけられた。

上条「…!おい!!神裂!!!」

上条が呼ぶ。

神裂がぎこちなく起き上がった。
だが返事が無い。

上条「神裂!大丈夫か!」

だが神裂は返事をしない。
ただゆらゆらと揺れている。

上条「…神裂…!」

上条は神裂の目を見て息を呑む。
その瞳は眩しいほどに赤く輝いていた。

そして。

何も感情が宿っていなかった。

禁書「…あ、あれは…!!」

上条もその異変がわかった。




神裂は力に喰われた。




その瞳は、向こうにいる三体の悪魔と全く同じだった。
人間性が皆無の瞳。

破壊と暴力。

闘争心のみが宿った瞳。

上条「神裂!!おい!!!神裂!!」

彼女の心を呼び戻そうと叫ぶ。

だがその声には全く反応せず、
ボルヴェルクが叩き込まれた瓦礫の山を虚ろなまなざしで見つめる。

突如粉塵が上がり、右手を失ったボルヴェルクが瓦礫の山から飛び出してきた。
そして神裂に飛び掛り、左手にある大剣を一気に振り下ろす。

神裂はそれに反応した。

右手に握っていた抜き身の七天七刀をその青い大剣に凄まじい速度で叩き込んだ。

内臓が震えるほどの金属の破砕音とともにボルヴェルクの大剣が砕け、
そのまま神裂の凶刃が胸を裂く。

神裂は左手で空中のボルヴェルクの足を掴み地面に叩きつける。

そして七天七刀を振り下ろした。

それは最早剣術ではなかった。
七天七刀をハンマーのように何度も叩き下ろす。
まるで石像のような無表情のまま。

何度も。
何度も。

地響きと共にボルヴェルクの体の欠片が飛び散る。
打ち下ろされるたびに大地が大きく振動する。

上条「神裂!!やめろ!!もう充分だ!!!神裂ィ!!!」

上条の叫びに一切反応せずにボルヴェルクだった物体を叩き潰し、粉砕していく。
最初の数発で既に原型を留めてはいない。

その時、後方にいた三体の悪魔が神裂へ飛び掛った。

上条「…!」

だがそれは神裂に新たなエサを与える行為にしか過ぎなかった。

振り向きざまに悪魔の二体を同時に寸断する。

不気味な切断音が響き、その刃から発せられた衝撃波が離れた場所のビルを綺麗に切断する。

その一撃で既に相手は絶命しているのに、神裂は更に何度も七天七刀を振る。

二体の悪魔の細切れにされ、周囲に降り注ぐ。

残りの一体はあまりの光景に、戦意を喪失し背を向けて逃走しようとする。

だが神裂は見逃さなかった。
神裂と同じように白い光を放つ七天七刀をその背中目がけてぶん投げる。

悪魔の背中を貫く。

苦悶の呻きと共に悪魔が倒れこむ。

神裂は一気に跳躍し、その悪魔の上へ着地する。

そして素手のままその踏みつけている悪魔をバラバラに引き裂いた。

上条「神裂…!おい…!神裂ィッ!!!!」

ようやく上条達の声に反応する。ゆっくりと神裂が振り返る。
上条達の姿を見るや、神裂は足元の肉塊に突き刺さっている七天七刀を乱暴に引き抜いた。
そしてゆっくりと近づいてくる。

上条「(おい…まさか…)」

禁書「だめ…!そっちに行っちゃだめ…!!戻ってきて…!!」

虚ろな表情のまま近づいてくる。


その瞳は。


先ほど引き裂いた悪魔達へ向けられていた目と全く同じだった。

その目を見て上条は確信した。

神裂は俺達を殺す気だ―――

上条「(―――くっそ!!!逃げるしかねえ!!!)」

だが逃げようとする暇は無かった。神裂が跳躍し一気に距離を詰めてくる。

上条「(―――間に合わ―――!)」

そして七天七刀を上条ら目がけて振り下ろした―――

石を切断したような音が上条の耳に聞こえた。

上条「…え?」

その刃は上条達の真横、僅か50cmの所に振り下ろされていた。

上条「(…外した…?)」

ふと目の前の神裂の顔をみると―――

上条「神…裂?」

先までの石像のような顔とはうってかわって苦悶の表情を浮かべていた。
目の赤い光も少し弱くなっている。

禁書「…そう!!!戻ってきてくるんだよ!!!」

神裂「……ろ…」

途切れそうな声。

上条「神裂!!!」

神裂「……ろ!!!…逃げろぉぉぉぉぉッ!!!!」

その叫びと共に再び目の赤い光が強さを増す。

上条「…!!!」

地面に突き刺さっている七天七刀を再び振り上げる。

上条「くっそ!!!!」

インデックスを抱いたまま後方へ思いっきり跳ぶ。

神裂「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

巨大な咆哮で大気が大きく振動する。

上条は確信した。
まだ神裂はいる。
あの体の中で懸命に戦っている。
上条達が逃がすために時間稼ぎをしている。

だが。

それを知った上条の中から逃げるという選択肢は消えた。

逃げろだと―――

ふざけんな―――

上条「インデックス!!俺の右手は!!!どうにかして神裂を戻せないのか!!!」

禁書「…っと!あれは…ちょっとまって!!!今調べてる!!!」

上条と同じく、インデックスにも逃げるという考えは消えたようだった。

上条「はやく!!!」

その時だった。上条の体、そしてベオウルフが神裂とは別のものに反応した。

上条「(これは…まさか別の悪魔か…!)」

その方向を見る。反応の源はすぐ近くにいた。
先ほど神裂がボルヴェルクを粉砕したクレーターの淵。
青いコートの男が立っていた。

上条「(まさか…バージル…!?…いや…)」

一瞬のバージルだと思ったが違和感を感じた。
悪寒の感覚も外見もバージルそっくりだった。

だが、微妙に違う。

その姿に気付いたインデックスが声をあげた。

禁書「ネロ!!!!」

―――

ネロはボルヴェルクの残骸を見下ろしていた。

ネロ「(とられちまったか…)」

己が早く行動しなかった事を少し悔やむ。何としてでもこの右手であの髑髏の頭を握りつぶしたかった。

恐らくあのダンテなら自分の獲物を捕られて猛烈に不機嫌になっただろう。
その獲物を横取りした人物。先ほど凄まじい咆哮を上げた女。

ネロ「まさかあんただったとはな」

聖人という予想はついていたものの、
かつて手合わせした日系の聖人の女の子だとは思っていなかった。

ネロ「よう、随分と変わったな」

確かに三年前と比べて、体が色んな意味で豊かに成長している。
だがそれ以上に違う部分。

その体に重なる天使像。

ネロ「人間だか天使だが悪魔だか、一体どれなんだ今のあんたは?」

その問いかけに神裂は反応しない。ただ虚ろな瞳でネロを見つめている。

ネロ「いや、どれかっつうよりは…全部だな」

「ネロ!!!」

どこか聞き覚えのある声。
声の方へ目を向ける。ツンツン頭の少年に見覚えのある白い修道服の少女が抱かれている。

ネロ「禁書目録か?あんたはあんまり変わってねえな」

神裂が七天七刀を握りながら、ゆらゆらとネロに近づいてくる。

ネロ「…おい…冗談だろ?」

その問いかけに反応しない。

ネロ「確かにあんたとまた戦り合いたいとは言ったけどよ」

七天七刀を握る神裂の拳が軋む。


ネロ「殺り合いたいとは言ってねえぜ」


その言葉と同時に神裂は地面を蹴りネロへ突進した。

ネロ「チッ!」

大剣レッドクイーンのアクセルを捻る。
イクシードが稼動し炎が噴き出す。

そして神裂の七天七刀を受け止め弾く。

だが神裂は体勢と崩すことも無く刀を返し、再びネロに打ち据える。
二人の刃が交わるたびに大地が震え、爆風が周囲をなぎ払う。

神裂はただただ乱暴に七天七刀をぶん回す。
剣術もクソもない。

だがそれでもネロと互角に打ち合う。

ネロ「ハッ!!汚ねえ戦いはするもんじゃねェぜ!!!良い女なのにもったいねェ!!!」

ネロは神裂の七天七刀とレッドクイーンが激突する瞬間、
アクセルを思いっきり捻り、イクシードを最大燃焼させる。

Max Act―――!

ネロ「Blast!!!!!」

七天七刀ごと弾かれた神裂が真上へ打ち上げられる。

すかさずネロは宙へ跳び、右手を構える。
その右手に重なるように青白い半透明の巨大な腕、『デビルブリンガー』が出現する。

ネロ「Catch this!!!!!」

そして神裂目がけて『デビルブリンガー』の巨大な拳を叩き込む。

凄まじい衝撃を受け、神裂の体が吹っ飛ばされビルの壁を貫いて屋内へ叩き込まれた。

ネロ「…」
ふと違和感が沸く。
何か感触がおかしい。

まるで金属の塊を殴ったような感触。

上条「神裂!!!」

神裂が叩き込まれたビルが轟音を立てながら崩壊する。

ネロ「…心配すんな」
着地したネロが答える。

ネロ「あんぐらいでくたばるなら苦労しねえぜ」

上条「…!」

上条も感じる。
あの瓦礫のから未だに神裂の力が溢れ出てきている。

ネロ「(クソッタレ…気分悪いぜ。女をぶっ飛ばすなんて反吐が出る…)」

ネロ「で、どうすんだ?殺っちゃあマズイんだろ?」

上条「…ッ!イ、インデックス!何か無いのか?!」

禁書「…ああなってるのは、聖人の力の統制を悪魔の部分に乗っ取られたからなの!」
禁書「悪魔化には魂ではなく、魔力しか使ってないからとうまの右手でも解けるけど…!」

上条「…!だめなのか?!」

禁書「いま悪魔化を解いちゃって人間の体に戻しちゃうと、聖人の力に耐えられなくなって死んじゃうんだよ!!!」

上条「じゃあどうすれば良いんだよ!!!」

禁書「聖人の力を限界まで削って悪魔化を解けばいいんだよ!!!」

ネロ「つーことは、俺の出番だな」

禁書「うん!ネロが限界まで削った後にとうまの右手で触れば…!」

ネロ「殺さずにできるだけ叩きのめすか。難しい注文だぜ」

上条「頼む…!」

ネロ「ま、やれるだけやってみるさ」

瓦礫の中からゆっくりと神裂が這い出てくる。
全身が更に輝きを増し、あの神裂の体を覆う天使像も巨大化していた。

ネロ「へえ、俺を殺すために更に力を求めやがったか」

ネロ「神サマの力か。上等だぜ。俺は神サマってのは大ッ嫌えなんだ」

上条「神裂…!」

ネロ「あんたらは下がってろ」

神裂はゆらゆらと虚ろなまなざしで再びネロを見つめる。

ネロ「神サマか」

ネロの右手から再び『デビルブリンガー』が現れる。

ネロ「いいぜ、何べんでもぶん殴ってやらあ神サマ」

そしてネロは地面を蹴り神裂へ突進した。

神裂も同時にネロに突進する。

再び刃が激突する。
ネロはすかさず右手のデビルブリンガーを伸ばし、神裂を鷲掴みにする。

そして動けない神裂のわき腹にレッドクイーンを叩き込む。
体に直撃しているはずなのに、鉄と鉄を打ち付けるような金属音が響く。

レッドクイーンとデビルブリンガーに挟まれる形になり、神裂の体がその衝撃で突っ張る。

ネロ「Crash!!!!!」

レッドクイーンをハンマーのように振り、更に何発も繰り返し叩き込む。
そのたびに神裂の体が人形のように波打つ。

7発加えたところで、デビルブリンガーで神裂の体を宙に放り投げ、

ネロ「Huuuuuuuhhhh!!!!!!」

落ちてきたところをイクシードを最大燃焼させたレッドクイーンで思いっきりかっ飛ばした。

神裂の体は地面に叩きつけられ、何度もバウンドして吹っ飛ぶ。

上条「…おい!!やりすぎじゃねえのか?!!」

ネロ「いや…ほとんど効いてねえな」

レッドクイーンから伝わる感触がおかしい。
体に直撃してるはずなのに、まるで剣で防がれてるような感触だ。

この感触は過去に何度も経験したことがある。

シールドだ。

むくりと何事もなかったかのように神裂が起き上がる。
体に目立った傷は無い。

ネロ「(やっぱあの天使像か…ご加護ってやつかい…)」
ネロ「(神ってのはどいつもこいつもあのパターンなのかよ)」

シールドを破るのはなんてことはない。
もっと強く攻撃すれば良い。
だがその加減が難しい。

うまくシールドだけを壊さないだめだ。
強くやりすぎて神裂の体ごと破壊してしまったら元も子も無い。

ネロ「(面倒くせぇな畜生)」

神裂は自分の左手を眺めている。
そしてなにやら左手が激しく輝き始めた。

ネロ「(なんだ?)」

左手から光が溢れ、それが何かを形作り始めた。

ネロ「…おいおい…」

その光の塊は巨大な腕の形となった。
そう、ネロのデビルブリンガーそっくりな腕。

ネロ「ぶはッ!!!マジかよ!!!!」

神裂は動きを確かめるように左手を開いたり握ったりしている。
それに連動して白い巨大な腕が動く。

ネロ「ハッハ!!そいつは傑作だ!!笑っちまうぜ!!!」

神裂はネロに目を戻した。
そして左手を突き出す。
同時に凄まじい速度で白い巨大な腕がネロへ伸びる。

ネロ「上等だ!!!」

ネロもデビルブリンガーを伸ばす。

ネロ「Break!!!!」

二つの巨大な拳が激突する。衝撃で巨大なクレーターが現れる。

パンチ力はネロが圧倒的に勝っていた。
ひしゃげた白い腕をネロの青い腕が掴む。
そして思いっきり引き寄せる。

ネロ「悪ぃな!!!即席コピーに負けてらん無ぇんだ!!!」

神裂の体が一気にネロへ引き寄せられる。
そしてその神裂に強烈な一撃を叩き込むため、レッドクイーンのアクセルを捻る。

だが。

ネロ「―――あぁ?」

七天七刀が突如ネロの胸を貫いた。

ネロ「…?」

神裂はまだネロのところまで来ていない。

だがネロの胸には、彼女と同じように淡く光る七天七刀が突き立てられていた。

神裂は投げたのである。
引き寄せられる慣性を逆に利用して。

突然の事に、神裂の白い腕を握るデビルブリンガーの力が抜ける。

神裂は勢いにそのまま身を任せ、ネロの顔面に膝蹴りを叩き込んだ。

鈍い炸裂音。

着弾と同時にネロの胸に刺さっている七天七刀を握り、引き抜きながら彼の胸を裂く。
鮮血が飛び散る。

更に何度も刀を返し、ネロに叩き込んでいく。
そのたびに血しぶきが上がる。

禁書「ネロ!!!」

最後に左手を大きく後ろに引き力を溜め、そして強烈な正拳突きを放つ。

巨大な白い拳がネロを吹っ飛ばし、後方の瓦礫の山へ叩き込んだ。

禁書「あぁ!!!」

上条「おい!!!…やられちまったのかよ!!!!」

神裂がゆらりと上条の方へ向く。

上条「くっそ…!!!」

上条は覚悟する。

あれほどの力を見せ付けられた。
到底まともに戦えるとは思えない。

だがそれでも―――

その時、瓦礫の山から音がした。

禁書「…ネロ!!!」

瓦礫の中からかったるそうにネロが出てくる。
あれ程刻まれたにもかかわらず、今はもう全く傷が無い。
神裂がゆらりと再びネロに目を向ける。

ネロの瞳が赤く輝き、全身が青く光り始めた。

ネロ「マジで頭にきたぜ」
ネロ「いいかげんその体返してもらうぜ」

神裂の体を乗っ取っている者に声を飛ばす。

上条「…!」

上条は感じる。
先ほど相対したバージルと同じ感覚。
全身が押しつぶされるような圧倒的な威圧感がネロから発せられていた。

ネロ「どこのどいつかは知らねえが」

ネロの全身の青い光が増す。

ネロ「その体からさっさと出てけやクソ野郎」

その瞬間ネロの全身が青く眩く輝いた。
そして光が収まると。

ネロの背後に青い半透明の巨人が現れた。

ネロ『Do it!!!!!』

あまりの力に、上条はその場にいるだけで意識が飛びそうになった。

今のあいつ―――
バージルやダンテと同じくらい―――
いやそれ以上に強いんじゃねえか―――?

そう上条は思った。

そのネロを見て神裂も動きが一瞬止まった。目を丸くしている。
先ほどまで一切ひるむことが無かった神裂が初めてみせた動揺。

ネロ『What's up!? C'mon!! Baby!!』
エコーのかかった声の挑発。

その声で拘束が解けたのか、神裂がネロへ突進する。
そして七天七刀を振り下ろす。ネロの顔面に直撃する。

そして神裂は続けて何度も何度もネロに七天七刀を叩き込む。
先までよりも更に激しく凶暴に。

まるで怯えた子供ががむしゃらに暴れるように。
だがその間もネロは微動だにしなかった。傷一つついていない。

ネロ『Is that all you've got?』

ネロが笑いながら問いかける。神裂が鋭く睨み返す。
そして左手の巨大な腕を振り上げ、ネロの頭頂部へ打ち下ろした。

だがそれでもネロはびくともしなかった。

ネロ『Let's rock!!』

叫び、今度はネロがレッドクイーンを神裂へ振るう。
それに連動し、背後の巨人の巨大な大剣も神裂へ向かう。

そして二重の剣が直撃する。

神裂の体から白い光の一部が引き剥がされ、飛び散る。

神裂の体が後方へ吹っ飛―――びかけたところを、
ネロがデビルブリンガーで宙の彼女の足を掴む。


そして引き寄せると更にレッドクイーンを打ち下ろした。

神裂が地面へ仰向けに叩きつけられる。

衝撃で彼女は七天七刀を手放す。刀は宙を舞った。

再び白い光が飛び散る。
だがシールドはまだ完全に破壊されていない。

ネロ『全部剥ぎ取ってやるよ!!!』

ネロは宙を舞う七天七刀を右手でキャッチする。

そして左手のレッドクイーンを神裂の右手の、
右手の七天七刀を神裂の左手の光の衣に、それぞれ腕本体へ直撃しないギリギリのところへ突き立てる。

ガラスが砕かれるような音を立てて二本の剣がシールドを突き破り、神裂の体を地面に磔にした。


ネロ『神裂。先に謝っとくぜ。ちょっと我慢しな』


ネロは屈むと神裂の頭を左手で鷲掴みにし、右手を大きく振り上げた。


ネロ「Show down!!!!!」

そして右の拳を打ち下ろす。
連動して背後の巨人も打ち下ろす。

ネロ『オァァァァァァァァァァァ!!!!』

何度も。
何度も。

轟音と共に光が引き剥がされ飛び散る。

ネロと背後の巨人の拳が下ろされるたびに大地が連続して震える。
神裂とネロは地面に沈んでいき、彼らを中心としたクレーターも巨大化していく。

そして。

ガラスが砕け散るような音を立てて光の像が弾けとんだ。
彼女の頭を掴む左手に柔らかく暖かい感触が戻る。

ネロ『―――!』

慌てて右手にブレーキをかける。

ネロ『―――Ha! Shit!』

ギリギリの所で寸止めする。
僅かに反応が遅れていたらそのまま彼女を叩き潰していたところだ。
一気に冷たい汗が吹き出た。

ネロ『来い!!』

すぐさま上条を呼ぶ。
上条もそれに反応して跳躍して神裂のところへ行く。

そして着地と同時に神裂の頬へ右手を当てる。

上条「神裂ィィィィィ!!!

―――

―――

真っ暗だ。
何もわからない。

周りから何かのざわめきが聞こえる。
だが何を言っているのかがわからない。

最後に見たのは上条とインデックスが恐怖の目を自分に向けていた光景。
その時に何か叫んだようだったが思い出せない。

思い出せない。

そして最後に見た光景すら思い出せなくなる。

自分の中が真っ黒に塗りつぶされていく感覚。

「…私は…誰ですか?」

―――全部壊せ―――

「…あなたは…誰ですか…?」

―――全員殺せ―――

「わからない…怖い…」

―――身を任せろ―――

「…だれか助けて…」

―――力に身を委ねろ―――

「…お願い…助けて…」

―――楽になれ―――

「…けて…」

『神裂。先に謝っとくぜ。ちょっと我慢しな』

―――やめろ―――

「かん…ざき…?」

―――よせ―――

「神裂…」

―――戻るな―――

「私は…神裂…火織…!」

『神裂ィィィィィィィ!!!!』

―――

―――

上条の右手が触れると同時に神裂の体が波打った。
そして全身から力が抜け、ぐったりとする。

上条「神裂!!聞こえるか!?」

反応は無い。
まるで死体のように微動だにしない。

ネロ「(…くっそ…まずいな…ちょっとやりすぎたかもしれねえ…)」

神裂の体には特に外傷が無い。
だがネロのデビルブリンガーが彼女の魂も引き剥がしてしまったかもしれない。

上条は神裂を抱きかかえて揺さぶる。

上条「おい…!頼む…!」

禁書「戻って…戻って…!」

その時、神裂が大きく息を吸った。

上条「神裂!!!」

神裂「…じょう…と…ま…」

上条「わかるか!!!神裂!!!」

禁書「帰ってきたんだよ!!!!」

神裂「はい…あれ…?私は一体…?」

上条「うおおおおおお!!!!」

禁書「良かった!!!良かったんだだよおおお!!」

上条はそのまま神裂を力いっぱい抱きしめた。
インデックスも飛びつく。

神裂「えッ…!!あ、あのッ…!ちょ、ちょっとッ!!///」

二人が突然抱きつく、というよりは上条に抱きしめられて神裂は動揺する。 

上条「良かったなあ!!!神裂!!!本当に良かった!!!」

ネロは冷めた目でその光景を眺めていた。
ネロ「(…感動的なはずなんだが…なんだこれ…妙にムカつく)」

神裂がその魔剣士の姿に気付く。

神裂「…?ネロさん…?」

ネロ「よっ」

事の顛末を、神裂を抱きかかえたまま上条が説明する。

神裂「そう…ですか…すみません…また私…皆に迷惑を…」

上条「気にするな。神裂が俺達を守ってくれたんだしな!!」

禁書「良いんだよ!!!」

ネロ「まあ、あんたがその力を使わなければ結果的にボルヴェルクに殺されて禁書目録も奪還されてただろうしな」

神裂「はい…」

上条「そうだぜ!結果オーライってやつだ…ん…?」

冷静になったところでようやく上条も気付く。
全身に当たる柔らかい感触。女の子特有の甘い良い香り。

上条「…///」
ぎこちなく神裂をから体を離す。

神裂「…あッ…」

神裂がなんだか名残惜しそうに小さな息を吐く。

禁書「…」

ネロ「…」
ネロ「…(落ち着け…俺にはキリエが…)」

ネロ「で、全体の状況はどうなってんだ?」

インデックスが説明する。

ネロ「へえ…ダンテの兄貴がね…」

上条「でももう大丈夫だぜ!」
上条「その術式は俺がぶっ壊してやったし、インデックスも取り戻したしな!」

禁書「…」

上条「…もしかして…違うのか…?」

禁書「…とうま…あれ」
インデックスは指差す。

上条「…!?なんでまだ残ってるんだよ!?」

インデックスの指した方向の空に、いまだにあの巨大なヒビが残っていた。

禁書「あの術式を壊しても、次元に入った亀裂は無くならないんだよ」

上条は思い出す。似たような事を過去にいくつか経験したことがある。

例えばカーテナ。
カーテナによる次元の切断自体は上条の右手で打ち消せるが、
その切断によって切り落とされた次元の破片そのものは打ち消せなかった。

上条「で、でももうあれ以上開く事はないんだろ?!」

禁書「そうなんだけど…そのね、あの術式は次元に穴を開けて、
   魔帝が封印されている狭間の空間へ繋がる門を作るものなの」
禁書「それでね、とうまが来た時点で既にその作業が9割方完了してたの」

禁書「そこまでくれば、あとは術式を使わなくてもバージルなら…」

ネロ「『閻魔刀』…か…」

上条「ど、どういうことだ?!」

禁書「バージルが今持っている『閻魔刀』はありとあらゆる物を切断できるの」

上条「つまり…!」

禁書「そう、さすがのバージルも『閻魔刀』だけじゃ狭間への穴は開けられないけれど、今の状態なら…」

―――

―――

一方通行『ラァァァァァァ!!!!』

六枚の黒い羽が振動し、大気を振るわせる。
その振動で周囲の瓦礫が砕け、貯水塔がひしゃげる。

その一方通行の変化に気付き、バージルも彼に目を戻す。

一方通行『はッはァ!!!やっと本番だぜェクソヤロー!!!』

その言葉と同時に一方通行の体が音速の数十倍まで一気に加速し、
バージルへ向かって射出された。

六枚の羽のうち、下の四枚が前に伸び、左右二枚ずつ腕を覆う。

一方通行『かァッ!!』

黒い羽で覆われた左手をバージルの首目がけて放つ。
だがバージルは体を僅かに移動させてかわす。
そしてあの時と同じように。
すれ違いざまに抜刀する。

だがその刃は防がれた。
黒い羽によって。

一方通行は左手を振り切ったその力を利用し、さらに羽で体を加速させそのまま駒のように回転する。
そしてその速度と破壊力を右手に載せ、バージルの顔面へ裏拳を振るう。

今度は手加減をしない。本気の一撃。
一方通行の制御からあぶれた力が衝撃波となってその場の地面に円形の深い筋を刻む。

バージルは姿勢を落とし、それをかわそうとする。
そして裏拳がバージルの頭上の空を切る瞬間。

バージルはその向かってくる右手を包んでいた黒い羽が一気に広がったのを見た。
瞬時にさらに姿勢を低くする。

一方通行はそのまま振り切った。衝撃波で屋上が完全に破壊される。

一方通行『(チッ!!かわされたかァッ!?)』

確認しようとした瞬間。

ハァァッ!!!と掛け声が聞こえると同時に胸に強い衝撃が走る。
瞬時に羽でガードしたものの、後方に大きく弾き飛ばされた。

二人の激突にビルが耐え切れず爆散する。一方通行は50m程離れた空中で静止した。
バージルは近くの別のビルの屋上に降り立っていた。

一方通行は羽を見る。バージルの刃を防いだ羽には一筋の深い傷。すぐに修復する。
これがバージルの全力かどうかはわからないが、それなりに本気で切りかかったようだ。

そしてバージルの姿を見る。

一方通行『ハハッ!こいつァよかったぜ!』

バージルは完全にはかわせなかったようだ。額から赤い液体が垂れ、顎先へと一筋の線を形作っていた。

一方通行『血が出るってこたァ一応殺せるってことだよなァおィ!!』

普通ならあの一撃がかすっただけで体が跡形も無く吹き飛ぶのだが。
そんなバージルの馬鹿げた耐久力を目の当たりにしながらも彼は喜んでいた。

確かにバージルの強さは底が知れない。
だが傷をつけることができた。
絶対的な力の差ではない。
同じ舞台にいる。
手を伸ばせば届く。

そう一方通行は思った。

その思いは数分後に無残に砕け散るのだが。

バージルの表情は、先ほどとは一見違いが無い。
だが一方通行は気付く。

明らかに微妙に違う。
バージルは額の血を手に取り、そして一方通行の黒い羽に目を向ける。

一方通行『あン?そンなに意外だったか?』

ニヤリと笑みを浮かべ、バージルへ問いかける。
バージルは一方通行の攻撃で傷を負い、そしてあの刃の直撃を防がれたことに少し驚いているようだった。

バージル「面白い」

一方通行『あァ??』

バージル「人間にしては強いな」

一方通行『なンだ?いきなり口達者になりやがって』

バージルは少し驚いていた。
いままでこんな人間には会った事は無かった。

実はこう見えて、バージルは非常に研究熱心だ。
特に『力』の分野についてはかなり貪欲だ。
何日も蔵書に篭ったりもする。

そんなバージルがこの目の前の少年に興味を持たない訳が無かった。

別段力が凄いというわけでもない。この少年のレベルなら魔界にはゴロゴロいるし、バージルの敵ではない。
しかし問題はこの少年は人の身のまま、悪魔化もせずにこの力を使っていることだ。
それにあの黒い羽。以前に比べればかなり進化して洗練されているが、まだ成長の余地はかなりある。

その先も見てみたい。

バージルの瞳の赤い輝きがより強くなった。

バージル「気に入った」

バージルは『閻魔刀』に手をかけた。
全身が青く輝き始める。

その時だった。

バージルがふと顔をあげた。
その目は一方通行を見ていなかった。

一方通行『(…なンだァ?)』

バージル「…」

バージルはその気配を感じた。

バージル「ダンテ…」

一方通行はそのバージルが立っているビルから50m程離れた空中にいた。

一方通行『(…なンだかわからねェが!!!今ならやれるぜ!!!)』

彼の六枚の黒い羽が巨大化する。
一枚の長さが20mまで伸びる。

そしてその羽を更に凝縮し、腕へ巻きつける。

ベクトル操作で周囲のビルを丸ごと引き抜き、バージルへ飛ばす。

バージルはそれを見もせずに寸断する。
バラバラになったビルの欠片が雨のように降り注ぐ。

その雨の中に紛れて一方通行は一気に距離を詰める。

一方通行『オォォォオオオオ!!!!』

羽で覆われた、先よりも更に破壊力を増した右手を突き出す。

バージルの刀と交差する。
衝撃波でバージルの立っていたビルが爆散する。

一方通行『ラァァァァァァァァァァ!!!!』

そして今度は左手を突き出す。だがその左手が当たる寸前。

バージル「失せろ」

突然バージルが青く輝いた。
その瞬間一方通行の全身をとてつもない衝撃が襲った。

一方通行『ゴァァァッ!!!』

羽でその衝撃を防ぐも、大きく吹っ飛ばされ今度は空中でブレーキをかけるまもなく地面へ激突した。
巨大な粉煙が立ち上る。

一方通行『…くそが…』

体に目だった外傷は無いものの、体が妙に重く苦しい。まるでスタミナだけが削られたような感覚。
だがそんな感覚にゆっくりと浸ってる暇は無かった。突如彼の体に重く何かが圧し掛かる。

一方通行『なンだ…?』

彼の体には何も乗っていない。だが何かの重量を感じる。まるで大気そのものが重量を増しているかのようだ。
その何かが彼の体を地面に押さえつける。ふと一方通行はバージルの方へ目を向けた。

一方通行『…なンだよ…!ありゃあ…!?』

そのバージルの姿を見て一方通行は戦慄した。
いやバージルなのかどうかすらわからない。

完全に姿が変わっている。
異形だ。

なんと表現すれば良いかわからない。

サイズはさほど変わっていない。
だが全身が青い甲羅のような物で覆われている。
そしてコートに似た形の羽のような物が背中から伸びている。

頭部はまるで中世ヨーロッパと古代ギリシャの兜を混ぜたような形をしており、
目の部分に細い切れ込みがあり、その中から赤い光が溢れていた。

そして何よりも。
先ほどとは比べ物にならない力が溢れ出ていた。

何かがおかしかった。
空間があの力のせいで歪んでいるような。



―――魔人化したバージルの圧倒的な力に耐え切れず、人間界が徐々に歪み始めた。



魔人化したバージルは上空の巨大なヒビを見つめている。
もう少しこの少年の力を見てみたかったが、ダンテが戻った今その余裕は無い。

邪魔される前にさっさとやってしまった方が良い。

バージル『はじめるか…』

エコーのかかった声で呟く。

『閻魔刀』に手を当て構える。

そして。

バージル『ハァァァァァァァァ!!!!!』

抜刀した。
それと同時に、空のヒビに巨大な青い光の筋が何本も重なる。

―――

―――

トリッシュ「…バージル…」

トリッシュは息を切らしながらその轟音を聞いていた。

彼女の背後には赤い光を放っている『スパーダ』。
そして足元や、周囲には多数の巨大な悪魔の死骸が転がっていた。

『ブリッツ』と呼ばれる、魔帝軍の中でも最精鋭の電気を操る兵。

己の体も電気に変えることができ、そのまま凄まじい速度で移動できる。
人間から見れば瞬間移動でもしてるかのように見えるだろう。
その戦闘力はかなり高く、下級悪魔でありながら大悪魔にも匹敵する。

そんな『ブリッツ』が先ほど8体程襲撃してきたのである。

目的はもちろん、『スパーダ』の回収。

『ブリッツ』は盲目であり、音と気配のみで敵を探すため、本来は同士討ちを防ぐために単独で動く連中だ。
だが今回は違った。

魔帝の直接の指揮下に入ったことによって彼らは目が見えてるかのように『トリッシュ』だけを狙い、
あげくに複数体でコンビネーションを繰り出してきた。

トリッシュはかつては魔帝軍の幹部であり、かなり上位の大悪魔でもある。

だがそんな彼女でさえこの猛攻は簡単にはやり過ごせなかった。
かなり力を消耗した。

そして『スパーダ』。
近くにいるだけでどんどん力が削ぎ取られる。

この『スパーダ』は人間を守り、悪魔を殺すために作られた。

人間の血が入っていない悪魔達には強烈な敵意を向けてくる。
そして相手の悪魔の力が強大なほど、その妨害も強大になる。

無論、トリッシュも例外ではない。大悪魔である彼女は凄まじい妨害を受けていた。

そしてやっかいな事に『ブリッツ』達は下級悪魔と認識されているらしく、あまり『スパーダ』の影響を受けていないらしい。

トリッシュ「…さすがに…きついわね…」

魔剣『スパーダ』は完全には覚醒していない。今漏れている力は1%にも満たない。

それだけでもこのトリッシュ程の大悪魔を疲弊させる程の力だ。

だがそれ程の力を持つ『スパーダ』を使用したダンテでさえ魔帝は完全に殺せなかった。
魔帝はダンテ達の父、かのスパーダでさえ殺しきれず、封印せざるを得なかった存在だ。

魔帝の業は『創造』。

生命体は当然、一つの世界をまるごと作り出すこともできる。


前回ダンテが封印した時は魔帝の力は不完全だった。
2000年かけて封印からにじみ出した一部の力しか使えなかったのである。
それだけでも魔剣『スパーダ』を所持したダンテと互角に戦った。

今回は違う。封印そのものが解け魔帝は完全に復活する。

その力は余りにも巨大である。
ムンドゥスがもし全ての力を解放すれば小さな人間界程度では耐え切れずに崩壊してしまうだろう。

それはダンテやバージルも同じだ。魔人化しただけで世界が大きく歪む。

ダンテは人間界においては極力魔人化を使わないようにしている。
もし魔人化したとしても、その体に流れるスパーダの血は完全に解放しない。※DMC1のラスボス戦のような完全な悪魔化。

魔帝ムンドゥス、スパーダ、ダンテ、バージルの四人にとって人間界は脆すぎるのである。
彼らが己の力を全て解き放てば人間界という器はすぐに砕けるだろう。

かつてのダンテと魔帝の戦いも、魔帝が己の力を最大限発揮するために作り出した頑丈な異世界で行われた。

その激闘から僅かにもれた余波が最終的にマレット島を崩壊させた。

今回も、おそらく魔帝はバージルやダンテと戦う為に頑丈な異世界を作る。

そしてそこで三つの破滅的な力が衝突する。

完全に復活したムンドゥスは前回よりも遥かに強いだろう。
ダンテも前回より遥かに強くなっている。
そしてバージルはそのダンテと互角以上だ。

はっきり言って、余りにも桁違いすぎてこのトリッシュですら誰が最終的に勝利するのかわからない。


そしてその力の余波が少しでも人間界に漏れでもしたら。

被害は前回のマレット島程度では済まないかもしれない。


最早、事態は丸く収まらないところまできていた。

誰が勝っても。

結果がどうなろうと必ずどこかに巨大な傷を残す。

トリッシュにはもう答えを出す事はできなかった。

全てをダンテに託す。
それしかなかった。




トリッシュは銃を握る。

敵の第二波がやってきた。目の前に4体の『ブリッツ』が現れる。

―――

―――

御坂と黒子は空の穴を眺めていた。

黒子「あれは一体…なんですの…?」

御坂「…わからないわ…」

確かにここは学園都市。彼女が住んでいる街。だが何かがおかしい。全く別の世界のような感覚。
彼女は知る由は無いが、バージルの魔人化、
そしてその状態で放たれた特大の次元斬によって人間界が歪み始めているのである。

御坂「…?」

その時、御坂は少し離れたビルの屋上に目が止まった。

御坂「あれ…」

ビルの屋上には巨大な稲妻が何本も走っている。そして銃声が響く。

御坂「誰か戦ってる…!」

銃声があるということは、悪魔ではない者が戦っている可能性がある。

黒子も気付く。

黒子「お姉さま!あそこ!」

御坂「行くわよ!!!」

―――

足元に一体の『ブリッツ』の死体が転がっていた。

トリッシュの両手にはそれぞれ白と黒の拳銃が握られている。
ダンテのエボニー&アイボリーと瓜二つである。

目の前に移動してきた『ブリッツ』へ銃口を向けて引き金を何度も引く。
単発でありながら、人間離れした速度で連射した為まるでマシンガンのように銃弾の雨が降り注ぐ。

『ブリッツ』の電気の衣が剥げる。

それと同時にヒールのかかとで顔面を蹴り上げる。
インパクトの瞬間、特大の稲妻が彼女の足から走る。

このトリッシュの力も『ブリッツ』同様、電気である。そして電気勝負なら大悪魔の彼女の方が強い。

ブリッツの顔面が消し飛ぶ。

トリッシュ「(これで二体目!!)」

残るは二体。

この至近距離に『スパーダ』がある状態で完全に悪魔化するわけにはいかない。

彼女の莫大な力を検知した途端、『スパーダ』は一気に妨害を強めてくるだろう。
最悪、即死する。

一体の『ブリッツ』が電気となり、彼女の周りを高速で移動する。

トリッシュは銃弾をばら撒くもほとんど当たらない。
そのトリッシュの背後にもう一体の『ブリッツ』が瞬時に現れ、彼女の首を刎ねようと爪を振るう。

トリッシュ「!!!」

いつもなら背後を取られることなど無い。
だが『スパーダ』の毒に麻痺した体はそれを許した。

瞬間的に背後に力を集中させる。
大気が引き裂かれる音と共に『ブリッツ』の巨大な爪がそのトリッシュの電気の衣に突き立てられた。

彼女の首まで僅か数ミリのところで爪が止まる。

トリッシュ「ハァァァァァッ!!!!」

そのまま彼女は『ブリッツ』の胸へ強烈な蹴りを叩き込んだ。

鼓膜が裂けそうな雷鳴が響き、『ブリッツ』の胸に巨大な穴が開いた。

トリッシュ「…ッ!!!」
その瞬間さらに『スパーダ』の妨害が強まったのを感じる。

激痛が体を走る。

その時。

もう一体の『ブリッツ』が彼女の背後に現れた。

そしてその爪が腹部を貫通した。

トリッシュ「…チッ!!!」

突き刺さったままブリッツの爪が凄まじい放電を起こす。
トリッシュの体が吹っ飛び、彼女はビルの屋上から弾き出された。


その時、聞きなれた銃声が響いた。

彼女は発砲していない。


―――

―――

御坂はその大きな悪魔へ向けて、ダンテから預かった『エボニー』で電気を帯びた銃弾を放った。

だがその銃弾は当たらなかった。その悪魔は稲妻となってとんでもない速度で移動を始めた。

御坂「な…なんなのよあれ…!」

電気使いの彼女でさえ驚愕する。
あまりにも速過ぎて御坂のレーダーですら捉えきれなかった。

稲妻の塊へ銃弾を放つも、全く当たらない。左に現れたと思いきや次の瞬間には右に現れる。

その時、聞きなれた声が響いた。

「後ろですの!!!」

御坂が振り返った。
背後から迫る巨大な爪が目に入る。

御坂「―――」

そのまま爪が雷鳴とともに振り下ろされた。

御坂「…は?」

御坂は一瞬何がおきたのかわからなかった。
あの悪魔の爪が見えたと思った瞬間、突如目の前の視界が全く別のものになった。
あの悪魔が20m程前方にいる。御坂も一瞬前まであそこにいたはずだ。

黒子「お姉さま!!!」
背後から聞きなれた声。そして御坂の肩にかかる小さな手。御坂は瞬時に状況を理解した。

御坂「黒子!!!そのまま掴んでなさい!!任せるわよ!!!」

黒子「はいですの!!!」

再びあの悪魔が高速で移動を始める。御坂は銃弾をとにかくばら撒く。悪魔が一瞬消える。

御坂「黒子ォ!!!(来る!!)」

その瞬間御坂と黒子は5m程後方にテレポートした。

さっきまで御坂達がいたところに悪魔が現れた。悪魔は予想外の事に一瞬動揺する。
その隙を逃さずに御坂はダンテから借りたエボニーを連射する。

電気が弾けるような音を立てて御坂の銃弾が直撃する。だが悪魔は微動だにしなかった。

御坂「(あの…電気の衣…!)」

御坂はすぐにわかった。彼女が使うようなシールドをあの悪魔も使っている。
その強度は彼女の物を遥かに上回っている。

能力を使って剥がそうとするも、悪魔の体を包んでいる電気は操作できなかった。

御坂「…!?」

ただの電気ではない。莫大な魔力が篭められており、性質も人間界のものとは全く別物だ。

その時、悪魔が両手を御坂に突き出した。

御坂「!!!」
ピリッと周囲の電気の異変を感じ取る。

御坂「黒子ォ横に!!!」
その声と同時に御坂と黒子の体が10m程左にテレポートした。

瞬間、悪魔の両手から巨大な黄金の稲妻が放たれた。

巨大な雷鳴が轟く。

御坂「(…!!何よあれ!!)」

御坂でも扱えないレベルの莫大な電力だった。
避けたと思ったのつかの間、悪魔は御坂達の移動先を確認するやその腕を向ける。
それに連動して巨大な稲妻が彼女達へ向かった。

黒子「―――」

テレポートが間に合わない。

その瞬間。御坂達の前に突如金髪の女性が現れ、その稲妻に手をかざす。その手に稲妻が直撃する。

御坂「!!!」

だが女性の体に傷はつかない。
金髪の女性は両手でその稲妻の猛攻を受け止めている。あぶれた稲妻が周囲を砕いていく。

トリッシュ「撃ちなさい!!!」

トリッシュが背後の御坂に叫ぶ。気付いたように御坂がトリッシュの背後から銃を撃つ。だが悪魔はびくともしない。

御坂「(…やっぱり効かない!!ならレールガンで…!)」

コインを取り出しかざす。だがふと脳裏をよぎる。
このダンテの銃はあの山羊の悪魔を簡単にミンチにした。それでもあの悪魔は貫けない。
レールガン程度で果たして貫けるのか?

トリッシュ「それ…ダンテの銃…?」
稲妻を抑えながら、つらそうにトリッシュが聞く。
同じ電気を操るトリッシュは御坂がやろうとしたがなんとなくわかった。
原理はわからないが、あのコインを電気を使って撃ち出す気だと。

御坂「…!そ、そうだけど!!!」

トリッシュ「なら…コインじゃなくて…それで撃ちなさい…大丈夫…壊れないわよ…」

御坂「…へ?」

トリッシュ「良いから撃ちなさい!」

ダンテの銃、エボニーでレールガンを撃つ。

御坂は考えもしなかったことだった。だが可能かもしれない。
このダンテの銃なら。最大出力で放てるかもしれない。

御坂は全ての力をエボニーに集中させる。
いつもはコインが摩擦熱で溶けないように弾速を抑えていたが、今回は違う。

最大で放つ。
照準をあの悪魔にあわせる。

そして。

エボニーから巨大な光の矢が射出された―――

そのダンテの魔力が篭められた銃弾の初速は音速の7倍にまで達した。

その光の矢が『ブリッツ』の電気の衣を突き破り、そして上半身を吹き飛ばした。

貫通した銃弾はそのまま遥か遠くへ飛んでいった。



御坂「…やった…?」

黒子「やりましたの!!!!」

ゆっくりと『ブリッツ』の下半身が倒れた。もはや一筋の電気も放っていない。

トリッシュ「…あなた…今の…凄いわね…」
御坂のレールガンにトリッシュはかなり興味を持った。彼女も悪魔である。強い力には魅了される。
正直言うと今の攻撃方法を教わりたいくらいだ。

トリッシュ程の力でレールガンを放てばその弾頭は楽々と太陽系脱出速度まで達するだろう。

御坂「…あの…大丈夫ですか?」
逆に御坂にとってはあの稲妻を手で受け止めるのが信じられなかった。

トリッシュ「大丈夫よ…」
先の『ブリッツ』の稲妻を止める際、魔人化はしなかったがかなり大きな力を使用した。
その力に『スパーダ』が反応して更にトリッシュの体を蝕んだ。


ふとトリッシュは御坂と黒子を見て閃いた。彼女達は人間だ。『スパーダ』の毒に侵されることも無い。
それなりの戦闘能力もある。それにダンテの銃を所持している。面識があるはずだ。

トリッシュ「…あなた達に…一つ頼んで良い?」

御坂「?なんですか?」

トリッシュ「あそこにある赤い剣、…ダンテに届けてくれない?」

―――

―――


上条「今のは…!!!」

禁書「バージルが遂にやったんだよ…」

神裂「…痛ッ…!」

神裂はぎこちなく立ち上がる。

上条「おい!神裂!」

神裂「行かなくては…!なんとしてでも…!」

上条「無理だ!! まともに立つのすらできねえだろ!!」

神裂「しかし…」

ネロ「俺が行く」

神裂「…!」

ネロ「あそこで戦えるのは俺ぐらいだろ」

禁書「ネロ…」

ネロは上条達に背を向け、穴の方角へ歩き始めた。

上条「ま、待て!」

ネロ「ああ?」

ネロは振り向かずに返事をする。

上条「俺も行く!!!」

ネロ「バカ言うn」

上条「わかってる!!確かに俺程度じゃ戦力にならねえ!!」
上条「でもよ!この右手はきっと何かの役に立つ!!!」

ネロ「好きにしな」

そっけなく返事をし、再びネロは歩き始めた。

禁書「とうま…」

上条「悪いインデックス。俺行くわ」

禁書「とうま。約束して。絶対帰ってきて」

上条「…ああ。約束する」

インデックスはその返答の前の僅かな溜めを見逃さなかった。
この少年は。
最悪自分の命を捨ててでも―――

禁書「とうまあああ…!」

インデックスが上条に抱きつく。

上条「大丈夫だぜ。ほら心配すんな」
頭を撫でながら優しく囁き掛ける。

上条「ほら…」
へばりついてるインデックスをゆっくりと引き離す。

上条は屈み、両手で優しくインデックスの頬を挟む。

上条「上条さんは大丈夫ですよ。結構俺ってしぶといだろ?」
いつものように腑抜けた笑みを作る。

上条「何だかんだできっと上手くいくさ!」

禁書「…うぅ…」

上条「ほらほら、あの腹ペコシスターはどこいった?」

禁書「……とうま…」

上条「ほーら、いつもの口癖は?」

禁書「…おなか減った…」

上条「おう!帰ったらたらふく食わせてやるぜ!」

わしゃわしゃとインデックスの頭を撫でる。

禁書「…えへへ…」
インデックスは目をこすりながら小さく笑う。

上条「神裂。頼むぜ。こいつの事」

神裂「…はい。任せて下さい。必ず…守ります」

上条「よし、じゃあいってくるぜ!」

禁書「…」

上条「またな!」

禁書「…うん…」

そのやりとりを最後に、上条はネロの向かっていった方向へ走っていった。

インデックスと神裂はその背中が小さくなるのをずっと見ていた。

上条「(もう行っちまったか?)」

ネロの姿は見えない。

上条「(なら、本気で行くか)」
跳躍しようと足に力を入れたとき、横から声がかかった。

ネロ「やっと来たか」

上条「おお、待っててくれたのか?!」

ネロ「…済んだか?」

上条「ああ」

ネロ「じゃあさっさと行くぜ」

上条「おう!」

―――

―――

一方通行は地面に屈んだまま動けなかった。


目の先にある圧倒的な存在。
それが一方通行の胸を固く締め付ける。

手が小刻みに震える。

一方通行『は…はは…』

自分の反応に思わず笑い出す。

この俺が―――

それはひさしく忘れていた感情。

この俺が恐怖してやがるだと―――?

バージル『失せろ』

一方通行の耳に声が聞こえる。

一方通行『…あァ?』

バージル『俺の刃を凌いだその命、大事にしろ』

一方通行『…ッせェ…』

一方通行『その魔帝とやらを…復活させるわけにはいかねェんだよ!』

バージル『ならばもう遅い』

一方通行『…ンだと…!?』

魔人化したバージルの一撃によって、空のヒビは巨大な漆黒の穴に変貌していた。
一方通行はその穴を見上げる。

一方通行『クソ…!!!』

バージル『さっさと消えろ。好きな所へ行くが良い』

一方通行『…ざけンな…!』

バージル『三度は言わん』

一方通行『…はッ!!!るせェんだよ!!!』
一方通行『話は簡単だ!!!テメェをぶち殺し、その魔帝もぶっ殺せばいィ!!!』


『…人間如きが我を殺すとな…』


その時だった。

空の巨大な穴の中から低い声が響いた。


バージル『やっと来たか』

穴の中に三つの赤い光が浮かび上がった。

一方通行『…なッ…?』

『…ネロ・アンジェロ』

穴の中の三つの赤い光から低い声が響く。

『…今はバージルか?』

バージル『好きに呼べ』

『…まさか貴様が我の封印を解くとはな。礼を言うぞ』

バージル『勘違いするな』

『…どうやら我への忠誠心からやったことでは無さそうだな』

バージル『当然だ』

『ではなぜ我の封印を解いた?』

『何か見返りを求めているのか?』

『父と弟の大罪を取り消せとでも?』

その問いでバージルは鼻で笑う。

バージル『呆けたのかクソジジイ?この俺がそんな事を求めてるとでも?』

『矮小な者の考えはわからぬな』

バージル『一つ聞く』

『…申せ』



バージル『フォルトゥナのネロ』




バージル『殺害を命じたのは貴様か?』




『…ほお』

バージル『答えろ』

『そうだ。我が命じた。スパーダの血族を根絶やしにせよとな』

バージル『…』

バージルの表情は変わらない。
だが確かに殺気が強まる。

『貴様ともあろう者がな…身内の報h』

バージル『黙れ』

バージル『では告げる』








バージル『―――死ね』




―――


第三章 おわり



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257 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [saga]:2010/03/03(水) 13:02:54.27 ID:zEd69/Q0

インフレすまん もっと派手にでっかくぶっ飛んでってやってたら止まらなくなった。
でも設定上では結構こんなもんです。
確か3の製作スタッフのインタビューで、「ダンテの本当の強さを忠実に再現するとゲームどころじゃなくなる」というのもあったので。

ルシフェルとかの部分では説明いれる予定だったんだけど、長ったらしくなるしややこしくなりそうだったので省略。

以下まとめて↓

上条達のいる人間界・ガブリエルや神がいる天界・ルシフェルがいる地獄は一つの建物に収まってるみたいな感じ。
大まかにいうと一階が地獄、二階が人間界、三階が天界という構造で、御使堕しもこの建物内での現象。
この建物が一つの『セフィロトの樹』。

これとは別にもう一つ巨大な建物があって、そこがDMCで言う『魔界』。本来は全く関係の無い完全な異世界。
比較として、『セフィロトの樹』⇔『魔界』、『人間界』⇔魔界内の一つの層『炎獄』という感じ。

つまり、同じく悪魔といっても『セフィロトの樹』の地獄に属してるルシフェルと『魔界』の炎獄に属してるベリアルさんは全く別物。
スパーダの事実が極一部の者にしか知られていなかった事もあって、過去の人間達が勝手にごっちゃにしてしまった。


人間界の属してる『セフィロトの樹』は綺麗に整頓・界ごとの境界も厳重に引かれてて、
バランスの崩壊を防ぐために力の上限も厳しく制限されているけど、

魔界はめちゃくちゃの規則無し・界ごとのの境界も薄くてほぼ吹き抜け・力の上限も無いカオスの世紀末状態。
その世界で生き延びるために、『魔界』で生まれた悪魔達は本能的により強大な力を求める。

力の上限が無い事もあって、その競争の果てにとんでもない強者がゴロゴロ現れるようになった。
という設定を一応考えてありますた。

あとレールガン等科学側の原理は良くわかりません 勉強不足です
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