初春「システムに侵入者です!」素子「攻性防壁か!」

2010年04月27日 20:59

初春「システムに侵入者です!」素子「攻性防壁か!」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/20(火) 20:50:32.58 ID:eo2rZak20


「とある魔術の禁書目録」×「攻殻機動隊」なSS投下してみます。


―サーバーが集積された一室

女「ようやく見つけたわ……”天界”へのゲート……」

警備「貴様、何をしている!!」

女「残念、間に合わなかったようね」

ドサリ、と女の身体はまるで糸が切れたかのように倒れた。

警備「これは……リモート義体か」


―常盤台中学

ドッパァーーーーン!!!!!

放送「記録、砲弾初速秒速905メートル、連発能力毎分8発、着弾分布30.4ミリ、総合評価レベル5」

美琴「おっかしいわね……能力の出力が安定しないわ」

黒子「ああっ!私の能力もおかしいですわ!
   意図せずお姉さまのつつましい胸元へテレポート……あふんっ!」バリッ

美琴「あんたはいつも通りのようね……」

ゴゴゴ……

黒子「あら、なんの音ですの?」

ゴゴゴ……ズガガガガガガッ!!!

美琴「じ、地震!?いや、これってまさか……」


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―公安9課ブリーフィングルーム内

荒巻「今から32分前、科学技術庁のスーパーコンピューター、”ヘプトンケイル”が
   外部の何者かに侵入を受け、システムを乗っ取られた。だが組織内部は勿論、
   外部からも侵入の形跡はなく防壁も反応しなかったようだ」

トグサ「遅効性ウイルスの可能性は?」

荒巻「現在ヘプトンケイルの過去の使用履歴を調査しているが、おそらくその可能性は薄いだろうな」

バトー「ふっ、ヘプトンケイルが自分でスト起こしたんじゃねぇの?
   『スパコンの待遇の改善を要求する!』ってな」

イシカワ「そいつはねぇな。あれのAIはタチコマと違って自律的には活動しない。
     で、課長、今はどうなってるんだ?」

荒巻「現在は電力ラインを強制切断して機能を停止している。
   科技庁は侵入者の特定に躍起になっているがまだ全く証拠は掴めておらんようだな。
   ところで、少佐はどこにいる。」

バトー「また”個人的推論に則った捜査”ってやつさ」

荒巻「わかった。バトーは少佐を呼び戻してコンピュータールームへ。
   イシカワとボーマは先に行って侵入経路の洗い出しにかかれ。
   サイトーとパズはアズマを連れて科技庁に向かえ。私とトグサは総務省へ行く」

愛車を駆り、あるところへ向かうバトー。

バトー『少佐、聞こえてるか?』

素子『科技庁が誇るヘプトンケイルが正体不明の何者かに乗っ取られ、庁内は大騒ぎ。
   強制停止したはいいけれど侵入者の正体どころか経路すらもつかめずお手上げ状態』

バトー『チッ、なんだよ聞いてたのか。って勝手に人の電脳に枝つけんじゃねえよ!』

素子『バトー、今どこにいる?』

バトー『さっき新浜を出て神戸に入ったところだ』

素子『調度いいわ。市内のセーフハウスで拾って頂戴』

バトー『どこへ行くってんだ?』

素子『ポセイドン・インダストリアルよ』


―9課コンピュータールーム

イシカワ「はぁ……侵入経路っつったってよ、防壁すら反応させずにどうやって侵入するってんだ」

ボーマ「案外バトーの言った通りかもしれないな」

イシカワ「馬鹿言うな。そもそもAIの構造が違うんだよ。ん、何検索してるんだ?」

ボーマ「ヘプトンケイルを使ったシミュレーションの研究論文だよ」

イシカワ「ウイルスを含んでいるかもしれんぞ」

ボーマ「分かってる。ちゃんと解析区画も切り分けてるさ。バックアップは頼んだぜ。
    おっ、怪しいファイルがあるな。
   『確率解釈と現実認識 ―波動関数の操作による「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」の発現―』
    ……なっ、なんだこれは!」

ガクンッ!!
海老反りになり、硬直するボーマ。画面に突如表示される[WARNING]の文字。

イシカワ「おいっボーマ!くそっ当たりか!!」

バシュッ!イシカワはプログラムを強制終了させ、ボーマの頚椎からケーブルをむしりとった。

荒巻『何があった』

イシカワ『ボーマが当たりを引きました。論文の中に条件発動型のウイルスが含まれていました。
     該当ファイルはプロテクトをかけて保存してます』

素子『そのファイル、こっちにも回せ』

イシカワ『少佐!』

素子『それとウイルスの発動条件は?』

イシカワ『発動条件は……外部記憶に中学生以下の女児のデータを100TB以上有すること』


―風紀委員第177支部

PCディスプレイと睨めっこをしながらキーを叩く初春の表情が曇る。

初春「あれ、これは一体なんでしょうか?」

固法「どうしたの初春」

初春「通常では考えられない規模のデータ送受信がネットの帯域を圧迫してるんです。
   送信源は学園都市内のあちこちの研究機関から」

固法「なんですって?」

初春「データは特殊な暗号化がされてるみたいで私にもまだ解析できません。
   でももっとおかしいのは送信先……なにこれ、こんなアドレス世界のどこにも存在しない」


―ポセイドン・インダストリアル

素子とバトーは車を停め、目前にそびえ立つビルに入った。

バトー「いいのか本部に戻らなくて。オヤジがうるせぇぞ」

素子「問題ないわ。我々はこのデータを持ってヘプトンケイルの”兄弟”に会うぞ」

バトー「兄弟?」

素子「デカトンケイルよ。ここで構築した仮想空間にダイブして、
   ハッキングを受けた当時のヘプトンケイルを探ればあるいは……」

バトー「なるほど。だがこのウイルスが素直に犯人のもとに道案内してくれるとは、限らないぜ?」

素子「そうしろって囁くのよ、私のゴーストがね」



黒子「というわけで、第7学区だけでも今日一日で体感できる揺れが30回以上起きていますわ」

固法「しかもその振動の中心に位置するのは能力開発の研究施設。
   揺れに連動して能力者の出力が不安定になるそうね」

黒子「ええ。これはあきらかにAIM拡散力場への干渉、ポルターガイストですわ。
   アンチスキルも研究施設の強制捜査に踏み切るそうですの」

美琴「でも納得いかないわ。
   拘留されてるテレスティーナはともかく、木山先生だってこの件には無関係らしいわよ?」

美琴たちの脳裏に、かつて彼女らが関わった二つの事件の様子が浮かんだ。

初春「当然です!木山先生はあの一件でようやく子ども達を救えたんですよ。
   もうあんな無茶な実験、するはずがありません!」

沈黙する一同。

初春「あ、あの!……私、気になることがあるんです」

黒子「一体なんですの、初春?」

初春「実は私、研究所間のローカルネットワークにアクセスしてみたんです。む、無断で」

固法「なっ、なんてことを」

初春「ごごごごめんなさいっ!でもまだ続きがあって……うぅ」

美琴「いいから話してごらんよ、初春」

初春「はい。そのネットワークから、都市内の帯域に障害を起こすほどのデータ送信が行われてて、
   それがどれもポルターガイストに連動していたんです」

固法「まさかこのポルターガイストは研究所からのデータ送信が原因ってこと?」

初春「たぶん、ですけど。今も第18学区のサーバーを中心にネットワーク障害が発生しています」



大量のサーバーが集積され、巨大な演算能力を持つスーパーコンピューター、デカトンケイル。
そこに格納された膨大なデータによって、電脳空間内に仮想空間が構築されてゆく。

バトー「仮想空間ができあがった。いつでも行けるぜ」

素子「よし、防壁アレイを全面展開して潜るぞ」

バトー「さぁて、ボーマを釣った子猫ちゃんを取っ捕まえに行くか」

赤髪の女性の姿をした素子のデータと普段と変わらない姿のバトーのデータが、
可視化されたヘプトンケイルのネットワークを進む。

素子『あら、仮想空間上でもその格好なのね』

バトー『文句あっか?』

二人が進むルートの先でゲートが口を開けている。

素子『ウイルスが仕込まれた論文ファイル執筆者の電脳だな』

バトー『意外とあっさり見つかったな。科技庁の連中は何やってやがる』

素子『あら、私たちを迎え入れてくれるようね』

二人は電脳のゴーストラインの向こうへと吸い込まれていった。



にわかに慌ただしくなりはじめた第177支部。

固法「アンチスキルに連絡をとってみたら、やはり18学区で振動が発生しているみたいよ」

黒子「でも原因がさらに不可解になりましたわね」

固法「とにかくこのことを風紀委員本部とジャッジメントに伝えるわ。
   初春はネットワークの監視を続けてちょうだい」

初春「わかりました!」

ネット経由でサーバーを監視していた初春のPCディスプレイにアラートが表示された。

初春「はうあっ!?これは……サーバーのシステムに侵入者です!」

一同「「なんですって!?」」

初春「侵入を防ごうと頑張ってるみたいですけど、どんどんセキュリティが突破されてます。
   このまま見てるだけなんて……私、システムに介入して、侵入者を撃退します!!」

黒子「なっ!?ちょっとお待ちなさい……ういは……」

スイッチの入った初春は居合わせた誰にも止められなかった。

初春「すごい速さでシステムが掌握されていく……でも私、負けません!」

初春(データの暗号化は解析済みだから、あとは相手の進路を囮で誘導して、
   攻撃用のプログラムを多重発動させれば……)

ディスプレイには幾多のウィンドウが展開し、初春は流れるようなスピードでプログラムのコードを組んでいった。


―仮想空間

可視化されたネットワーク経路で赤く点滅するゲートが迫り来る。

素子『攻性防壁か!バトー、こちらの防壁を最大展開。敵防壁を解析して中和するぞ!』

バトー『もうやってる!くそっ、こっちの防壁を第3層まで突破された!』

素子(この防壁、今まで見たことがないタイプだ。政府のものでも軍のものでもない……何者だ?)

バトー『少佐、この電脳おかしいぞ。デカトンケイルのメモリーに存在しないはずのデータが流れ込んでやがる』

素子『わからん!バトー、敵防壁に枝を張れ!時限性ウイルスを断片化させて送り込むぞ!』



初春「やった!相手の進行が止まりました」

初春(でも相手は一体どこからアクセスしてるの?
   暗号化は解除したのに断片化が激しくてデータが読めないよ……うぅ)

ハッ、と初春は背筋に寒気を感じた。

初春(こっちを覗かれてるような感じ……向こう側にいるのは誰!?まさかこのデータ、やばっ!!)

バシュゥン!
端子がショートするような音とともに、初春の花飾りから黒煙が上がった。

黒子「初春!?どうしましたのって、頭の花が!」ガタン!

初春「えへへ、やられちゃいました……身代わり防壁がなかったら危なかったかも」

黒子「あなた何を言ってますの?」



素子『脳を焼いたときの抵抗感がなかったな。身代わり防壁を使ったか』

バトー『しかしこっちも手酷くやられたもんだ。ほら、データが破損して下半身持っていかれちまった』

素子『あら、バックアップ忘れたの?まだ防壁の中和は終わってないのよ』

と、眼前に展開されていた敵の防壁が次々消滅してゆく。

バトー『やれやれ。気変わりしやすい子猫ちゃんの相手は大変だぜ』

素子『この感じ、防壁迷路に似ているぞ。一旦引き返……!!』



初春「おかしいです、さっき構築したはずのセキュリティが……
   いえ、ローカルネット全域のセキュリティが無効化されていきます」

固法「一体何が起こっているの?そんなことをしたら侵入者は……」

初春「侵入者は……消えてしまいました」

初春はひとつ残らずアラートの消えたディスプレイを眺めるほかなかった。


―とある路地

バトー「おい素子!素子!」

素子「……つっ!」

バトー「気付いたか」

素子「状況の確認を」

バトー「俺もさっき目を覚ましたところだ。どういうわけかこんな所でな」

見上げればかすかな太陽光がビル壁の隙間から直線を投射している。

素子「さっきまで仮想空間にいたはずだが……くそっネットが切断されている」

バトー「まさか奴のゴーストの中に迷い込んじまったんじゃねえだろうな?」

素子「かもしれんな」

素子(だが今はクロマの姿ではないし、皮膚触素の感覚も確かなものだ。そしてこの現実感が何よりの証拠……)

素子「ともかくまずはネットに繋がる端末を見つけるぞ。二人一組(ツーマンセル)で行く。後ろは頼んだぞ!」

バトー「任せとけ!」

カッ、カッ、カッ……狭い路地に杖の音が響く。

素子「誰だ!」

一方通行「なンなンですかァ?この真昼間に随分と物騒な格好じゃねェかァ、そこのお二人さんよォ」

バトー「なんだこのガキは」

素子「ひとまず向こうへ抜けるぞ」

一方「おっとそっちには行かせねェ」

ゴウッ!突如としてビル壁が崩れ、素子らの行く手を遮る。

バトー「てめぇ、何しやがった!」

一方「何って、この石コロをよォ……こうしただけだっつうの!」

一方通行のつま先で蹴り上げられた小石が、超速でビルの壁を抉った。

素子「こいつ……」

ピストルを構える素子とバトー。

素子「足を狙うぞ」

バトー「わかってる」

一方「あァ!?この俺に銃を向けるとか、死にてェンですかァ?それとも学園都市の人間じゃねェってことかァ?」

素子(こいつ……全く銃弾を恐れていないな)

一方「サッサと撃ってこいやゴリラさんよォ。でないと次は頭狙うぜェ?」

バトー「チッ!」

ダン!ダン!

バトー「なん……だと……!?」

一方「!?」

正確に大腿を狙って放たれた銃弾は、しかし全てあらぬ方向へと弾かれてしまった。

素子「まだだ!!」

ダン!ダン!ダン!
カン!カン!カン!四方に弾かれる銃弾。

一方「効かねェなァ」

バトー「弾かれちまって傷ひとつつかねえ……まるで強化外骨格だ」

素子「熱光学迷彩で隠した何かがいるようにも見えないが」

一方「あれェ、もう終わりですかァ?せっかく来たのに退屈させンなよォ」

一方(どういうことだァ?奴らの銃弾は「反射」したはずだぞ……)

素子「上へ跳ぶぞ、バトー。おそらくこの装甲は徹甲弾でもないと撃ち抜けん!」

バトー「ちょっ……ええいムチャ言いやがって!」

一度で数メートルの高さを跳躍し、窓枠を足場に上へ向かう素子。遅れて続くバトー。

一方「ハハハッ!!いいぜェ、鬼ごッこだァ!」

トン、という軽い踏み切りで、一気に風を切って空へ舞い上がる一方通行。

バトー「物理法則を超えてやがる!」


―ビルの屋上

一方「さァて、2ラウンド目といきましょうかァ」

と、ワンステップで間合いを詰め、回し蹴りを放つ素子。が、しかし……

カツン!触れる瞬間に弾かれ、軌道を逸される。

素子「チッ!」

一方「くっだらねェ……」

一方通行が軽く腕を薙ぐと、それだけで素子の身体が吹き飛ばされた。

素子「ぐあっ!」

バトー「クソッタレが!」

バトーは貯水タンクを撃ち抜き、破片とともに噴き出した奔流が一方通行に降りかかる。

一方「小細工ァいらねェンだよ!」

バトー「ごふっ!」

全く歯が立たない、まさに一方的な蹂躙だった。

白い悪魔が素子へと迫る。その時だった。

黄泉川「警備員(アンチスキル)だ!大人しく投降するじゃん!」

武装した警備員部隊が、屋上の隅で3人を取り囲んだ。

一方「早かったじゃねェか、黄泉川ァ」

黄泉川「一方通行!そこで何やっている!早く離れるじゃん!」

一方「コイツら、学園都市第1位も知らねェ田舎者みたいだからよォ、案内してやってたンだ」

黄泉川「とてもそうは見えないじゃん。おい、そこの軍人風情の二人!さっさと武器を置いて投降するんじゃん!」

いくつもの銃口が素子らに向けられる。

素子「バトー、残弾数は?」

バトー「あと4発だ。こんなことになるならセブロ持ってくりゃよかったぜ」

素子「分が悪すぎるな。よし、二手に分かれて巻くぞ」

バトー「おう。端末を見つけたらどこかで落ち合おう」

素子「死ぬなよ!」

別の方向へと、屋上から飛び降りる素子とバトー。

黄泉川「なっ!飛び降りただと!?」

駆け寄った警備員らが即座に銃を構えるが、その姿はまるで溶けこむように眼下へと消えてしまった。

黄泉川「ちっ、逃がしたか。至急本部に連絡!周辺の道路に検問を張るじゃん!」

素子らを追って警備員が屋上から降りてゆき、一方通行だけがそこに取り残された。

一方「弾丸と蹴り、どっちも「反射」するはずだった。どういうことだァ?」

そう、二人が撃った銃弾も、素子の蹴りも、どれも正確に「反射」されず、軌道を逸らされただけだった。

一方(演算を間違えたか、奴らが何かの能力者だったか……いやそいつはありえねェ)

一方「こいつァあのゴリラの……」

彼が拾い上げたのはバトーの空薬莢だった。

一方(ベクトルの情報にやたらノイズが多い。
   だが問題はそこじゃねェ……どォしてこンなもンが存在してやがる!!)



大通り沿い、[KEEP OUT]の黄色いテープで封鎖されたビル街の一角。
喧騒のなか、多くの警備員や装甲車が取り囲んでいた。

ドガンッ!!

何かが落ちる大きな音とともに、装甲車のルーフが大きく凹んだ。

警備員「おい!何か落ちてきたぞ!?……がふっ!」

何事かと駆け寄った警備員が崩れ落ちる。

バトー「すまねぇな、同業者さんよ」

熱光学迷彩をまとったバトーは悠々と装甲車に乗り込み、車内を探った。

バトーは車内の内装をおもむろに剥がすと、格納されている電子機器が姿を見せた。

バトー「おそらくこれだな。端子を加工すれば接続できそうだ」

視界にいくつも出てた[404 Not Found]の表示が解消されていく。

バトー「ふふっ、なぁるほど、プロトコルを変換すればここのネットへの接続も問題ないわけだな」

端末からは衛星からの位置情報、組織の機密情報、学園都市のデータベースなどが次々と表示されてゆく。

バトー「なんだあこりゃ?ここのセキュリティはザルかよ。じゃあ俺達を追いつめたあれはなんだったんだ……」

警備員が増え始めた周囲を見渡し、バトーは装甲車のエンジンをかけた。

バトー「ちょっと借りるぜ」

バトーの駆る装甲車が、封鎖区域を抜けて裏通りを疾駆する。

と、眼前に現れる黒い人影。タイヤの摩擦音が響き、そして二つの銃口が向かい合う。

バトー「待たせたな。そっちはどうだ、少佐」

素子「ああ、問題ない」

素子「なるべく安全な場所で潜りたい。追っ手が来ないうちに隠れるぞ」

二人は人気のない路地へ向かった。

初めて見る街の景色が窓を流れてゆく。

素子「なあ、おかしいと思わないかバトー」

バトー「全部おかしいだろ」

素子「そうじゃなくて」

バトー「奴らの言語は俺らと同じだ。だけど街の様子も、技術も、ネットの構造もどれひとつ見たことがねぇ。
    これじゃまるで……」

素子「物語の世界に迷い込んだみたい」

バトー「俺らは不思議の国のアリスってか?ざけんな」

素子「だが何者かの強い思念は感じる」

バトー「やっぱ防壁迷路か。思えばデカトンケイルに潜ったときから罠にかかっていたのか」

素子「あるいはそのもっと前……でも私はそうは思わないわ。」


―路地の片隅

装甲車の端末を引きずり出し、素子は頚椎の電脳プラグに端子を繋いでゆく。

素子「……別世界」

バトー「あん?」

素子「言葉そのままの意味よ。ここは私達の住む次元と異なる、パラレルワールド」

バトー「確証は?」

素子「あら、否定はしないのね。確証は無いわ……でもそう囁くのよ。私のゴーストが」

素子「とにかく、この都市の最深部まで潜ってみるわ。そうすれば何かが繋がるかもしれない。バックアップを」

バトー「任しとけ。いつだってそうしてきただろう」

素子の身体から力が抜け、視線はビルの壁の向こうを見つめるように止まった。

素子「ネットワークに接続。ダイブを開始するわ」

ネットに潜るの素子の視界に、少しずつその全貌が拓けてゆく。

素子(木の根のように伸びたネットの集合……さらにそれらに囲まれた巨大なシステムの核。
   まるで有機化合物のようね。この中に私達がこの世界に取り込まれた謎が隠されているのか……)

脈動するように光るネットワーク。

素子(だがこのシステム、単なる情報のネットワークではないな。
   もっと別の何かを制御するために機能しているが……私の電脳には含まれない概念だ)

素子の電脳が、システムの核へと光の束でリンクする。

素子「バトー、システムの最深部にリンクしたわ」

バトー「ああ、アウトプットを増幅するぞ。俺も端末を経由して有線させてもらう」


―ビル街の一角

黄泉川「奴らの追跡はどうなってるじゃん!?」

警備員A「こちらの装甲車が1台、何者かに奪われたとの情報が入っています」

黄泉川「なんだと!それで今はどこに!?」

警備員A「はい、第7学区方面に移動していたようですが、
     周辺道路はすべて封鎖済みで近辺の捜索に当たっています」

警備員B「本部より緊急連絡!捜索中の武装した二人組に対して、射殺命令が出ています!!」

黄泉川「どういうことじゃん!?」

警備員B「本部からの連絡によると、これは学園都市統括理事会からの直接の命令です。
     即座に実行されない場合、
     対象の捜索および処理の権限が警備員本隊から別動部隊に移譲されるとのこと!」

黄泉川「別動部隊?そんなもん存在しないじゃん!きっと動くのは非公式の組織……
    全隊に告ぐ、捜索に全力を上げるぞ!なんとしてでも我々の手で捕縛するじゃん!」


―ネット空間

素子の視界に、逆さに浮かぶ人の形が構築されてゆく。

   『ようこそ、学園都市へ』

素子『私達のことを知っているようだな。お前は誰だ?』

アレイスター『私の名前はアレイスター・クロウリー。この学園都市の統括理事長だ』

バトー「おい少佐、一体誰と喋ってんだ!?」

しかしバトーの声は素子には届かない。

素子『驚いた。このシステムの中心を一人格が掌握しているのか。私達をこの世界に飛ばしたのはお前か?』

アレ『君達を学園都市へ招き入れたのは私だが、位相空間を移動するゲートを作ったのは君達の世界の住人だ』

素子『位相空間、つまり私達は空間の壁を超えてきたというのか』

アレ『そう。君達の住む世界とこの世界は、本来交わることのない別位相に存在している』

素子『では何故』

アレ『君は、この都市の住人の「能力」を見たかね?』

素子『ええ、おそらく……だがあの能力の概念は私には理解できなかったわ』

アレ『この都市の能力者には、「自分だけの現実」という通常とは異なる位相の現実認識を持っている。
   それの観測によって、彼らは独自の能力を発現させている』

素子『面白い理論ね。パーソナルリアリティ……そうかあの論文は。だが私達の世界では実現しなかったわ』

アレ『異なる位相空間では世界の法則も目に映る様相もまた異なったものとなる。例えるなら……』

素子『……物語の世界のように』

アレ『そうだ。そしてそれが鍵となる。』

アレ『能力者達は無意識のうちに「自分だけの現実」を周囲に展開し、互いに干渉しあっている。
   その「AIM拡散力場」を制御するためにこのネットは造られた。』

素子『お前は何をしようとしている?』

アレ『新たなる天界の創造』

素子『天界だと?』



タンタンタンタンタン……

ビル風の吹きすさぶ中、電波塔の階段を駆け上がる音が響く。その主は重厚なケースを担いだ狙撃手である。

砂皿『私だ。対象の二人を確認した。視界も良好、いつでもやれる。』

オペレーター『了解。対象は身体に特殊な改造を施しているため対物ライフルを使用する。
       指示があるまで待機してくれ』

アレ『そう、天界だ。かつて私はこの力場を利用し「天使」の顕現に成功した。
   しかし天使とは神の力を行使する端末に過ぎない。
   だが……君の存在は新たなる天界を構築する核となりうる』

素子『どういうことだ』

アレ『AIM拡散力場、能力者によって構築された位相空間。
   これの介在が鍵となってもたらされた君達の空間との重なり。
   それは新たなる上部構造、つまり天界の媒体であり、君の存在は天界を顕現させるための核になる』

素子『お前の計画に干渉するつもりはないが、いったい私に何のメリットがあるのかしら?

アレ『意外な言葉だ。一人格としての人間を超えた上部構造の存在、それを渇望していたのは他ならぬ君だろう』



アレ『……君は、神の世界を見たくはないかね?』



砂皿『狙撃準備に入る。第1目標の女を狙うぞ』

オペレーター『待て、まだ上からの指示は……』

砂皿『時間がない。もうすぐ警備員も気づく頃だ。その前に私が仕留めてみせる』



素子「神の世界、人間を超えた上部構造……」

バトー「おい、何を言ってるん……ッ!」

その時、素子の顔をレーザー照準の赤い点がなぞってゆく。

バトー「まずいぞ少佐、もう戻れ!……クソッ、身体がっ!?」

バトーは素子からケーブルを引き抜こうとするが、その腕は不自然に固まってしまった。



素子『……たしかにそうかもしれない。だが……もしそのプロポーズを断ると言うなら?』

アレ『それは残念なことだね』



レーザー照準が素子の額で止まった。

強化チタンをも貫通するであろう徹甲弾が、咆哮とともに放たれる。

バトー「少佐!!ぐあっ!!」ドウッ!!

銃弾はとっさに庇ったバトーの片腕を粉砕し、アスファルトに銃痕を刻んだ。

しかし、非情にもまだもうひとつの照準が素子の額を照らしていた。


バトー「素子オオオオオオオオオオオオオッ!!!!」


だが、素子の脳殻を貫くはずだった弾丸は「何か」に弾かれ、標的には至らなかった。

一方「探したぜェ、ゴリラァ」

バトー「てめぇは!」

動く片腕で銃を構えるバトー。

一方「攻撃は効かねェっつってンだろ。おっと、ババァのほうはお寝ンねか。手間が省けるぜ」

バトー「やらせるかよ!」ダン!

バトーは一方通行に拳銃を撃ったはずだったが、非情にもその弾は残った片方の腕を貫いていた。

バトー「なっ!?」

一方「だから言っただろ馬鹿が。クク、今度は「反射」できたなァ」

バトー(もう両腕とも動かねえ。素子も潜ったまま戻ってこない。万事休すだな……)



砂皿「2発とも外しただと!?何者だあいつは!」

突然の乱入者に再びライフルを構える砂皿。
レーザー照準が一方通行の頭を捉えた。
と、その赤い瞳が狙撃手をスコープ越しに射抜く。

一方「こういう仕事は俺の領分なンだよ。さっさと消えやがれ畜生がァ!」

振り向きざまにバトーの頭に銃を突きつける一方通行。

一方「おっと動くなよォ。座標計算がズレちまう」

バトーの顔を覗き込むように屈み、不敵な笑みを浮かべた。

一方「まさか今更ノーとは言わせねェぜ?この一方通行様にここまでさせておいてよォ。
   ようやく演算が終わったとこなンだ。時間もねェしよ、一瞬で終わらせてやらァ」

普段より饒舌な一方通行は、興奮に任せて言葉を吐いた。

一方「テメェら馬鹿は知らねェだろうから教えてやる。
   俺の能力はアクセラレータ、俺に触れる物全てのベクトルを操作できるンだよ。
   銃弾の動き、風の動き、テメェの汚ねェ血流の操作だってわけねェ。
   それこそ今の俺なら……くひひっ……別位相の物質のベクトルだって操れるってわけだ!!
   笑いが止まンねェなァ……ぎゃははっ!」

一方通行は手のひらで弄んでいた薬莢をバトーの足元に零した。

バトー「別位相……やはりここは俺達の世界とは違う空間ってことか」

一方「そういうこったァ。テメェらがどっから来たか知らねェが、ここはテメェらのいていい場所じゃねェンだ。
   ここァ俺達のたったひとつの居場所だ。
   それを乱す奴らは、どンな善人だろうと天使様だろうと俺がブッ殺してやらァ!」



感情を含まない微笑をたたえたビーカーの住人から目を逸らし、素子は呟く。

素子『……私はもう、林檎を齧らないわ、バトー』



バトーの額に、銃口を押し付ける一方通行。

一方「……だからよォ、さっさと消えくされやァ」

なぜか、その赤い瞳には安堵の光が射していた。

バトー「天……使……」

漆黒の闇が、バトーの視界を覆い尽くした。



黒い翼に吹き飛ばされた彼の周囲には、バトーはおろか素子の姿も消え去っていた。

一方「ふゥ……ズボンの中がぐちゃぐちゃだぜ」



打ち止め「一方通行ぁ~!」

一方「おい、危ねェぞ!」

打ち止め「きゃっ!……っとつまずきながらミサカはミサカはちゃっかり抱きついてみたり!」ギュッ

一方「大人しくしてたかァ、クソガキ」ニッ

打ち止め「うっ……」

一方「なンだァ?変な顔しやがって」

打ち止め「あなたが微笑むことにミサカはミサカは違和感を覚えつつでもそんなあなたも嫌いじゃないかも、
     ってミサカはミサカは頬を染めながらつぶやいてみたり……」

一方「チッ、くっだらねェ」

一方(くっだらねェ……コイツも俺もこの街も。だけどよォ、そういうのも嫌いじゃねェンだよな……)



ザザ……ザザ……

視界を覆い尽くしていたノイズが晴れてゆく。

素子「何も見えないわ、誰か状況を説明して……」

脳波計にベータ波のアウトプットが検出され、身体の覚醒を示すサインが表示される。

バトー「よう、やっと目覚めたか」

素子「バトー、いるの?状況を説明して。ここはどこだ?」

バトー「例の科技庁のシステム乗っ取り事件、犯人が検挙されたそうだな。
    どうも公安6課が一枚咬んでいたらしい。結局政治取引で事件の真相は闇から闇へ、だがな」

素子「なあバトー、あのとき私達はどこへ行っていたんだろうな」

バトー「あのとき?」

素子「デカトンケイルの仮想空間の先にあったものよ。まるで物語の中のような世界。
   あの中で潜ったときに誰かと喋ったはずなのに、どういうわけか記憶が曖昧だわ」

バトー「バックアップも全て意味消失しちまったようだな」

素子「あなたはその会話、聞いてたの?」

バトー「さあな……今となってはどうでもいいことだろう」

荒巻『少佐、目が覚めたか。
   45分前、米帝大使館で大使他外交官6名を人質にした立て篭もり事件が発生した。
   犯行グループの声明では国内米軍基地の放棄と新安保の即時撤廃を要求している』

素子『了解。私とトグサ、サイトーは装備A2で現場へ向かう。イシカワとパズは犯人の身辺を洗え!』

バトー「あれっ、俺は?」

素子「バトーはその身体でしょ。休暇だと思ってしばらく寝てなさい」

眼下には脈々と光が灯る夜のニューポートシティが広がっていた。


素子「それにしてもバトー、ネットは広大だわ……」





89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/21(水) 02:57:07.37 ID:HxsZUlhp0
というわけで短かったですがこれで終了です。
読んでいただいた方ありがとうございました。
おかしい設定とか面白くない所はすみません。


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