第2話 『私が妹とオフ会に行くわけが無いっ!』

2011年01月16日 19:28

グラハム「私の妹がこんなに可愛いわけがないっ!」

272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/25(土) 14:07:58.23 ID:FCmK5hS40

 第2話 『私が妹とオフ会に行くわけが無いっ!』

「信じらんないっ!全然進んでないじゃん!あんたこの2日間何してたの!」

諸君、2日ぶりの挨拶。こんにちわと言う言葉を遅らせて頂こう。
早速ではあるが、私は妹にいきりなり糾弾されてしまっているわけだ。
どうやらわずか2日の間だと言うのに、ゲームを進めていないのにご立腹と見える。

「何をしていたかと問われればこう答えよう。普通に暮らしていたとッッ!!」
「あんたのテンションで言われると本当に普通だったのか疑問だけどね……はぁ~
 って言うか2日も有ったらフルコンでしょ!!」
「フッ、君も我慢弱い女だな。何を焦っているのだ?
 このゲームを誰かに貸し出す予定が有ると言うならば、私は一旦手を引こう」

私は平凡な人生と言えど色々とする事もある。
本来で有れば、今日当たり山篭りとやらに挑戦したいと思っていたところだ。
この武士の国の滝に打たれてみるのも、真なる意味の武士道を見つけるためには良いかもしれない。
かつての自分自身を自戒する意味も込めての事であるが。

「別に私は我慢弱く無いわよ!詰ってるのはあんたが次にプレイするゲームよ!」
「なんとっ!!聞いていないぞ桐乃ッ!!」
「言っておくけど、あんたのエロゲ道始まったばかりだから」

武士道を極められなかった私が極めるべき道として適切とは言えないな。
ミスター・エロゲーと言う呼称は、幾ら私と言えども避けるべきだと断言するッ!
しかし、彼女がここまで私に美少女ゲームを強要する理由は…恐らく


←ブログ発展のため1クリックお願いします
「君には話題を共有する友は居るのかな?」
「な、何よ突然……」
「かつて、私には私のどんな無理も実現してくれる友人が居た
 君にもそういった友人。君の無理を聞いてくれる存在は居るのか?」

かつての友の顔を思い出す。
もっともこの世界にも友人と呼べる存在が居ないわけでは無い。
しかし、私がもっとも信頼した友はこの世界には存在していない。

「と、友達くらいいるわよ!変人なあんたなんかよりずっと!」
「しかし、君のその特異性を受け止めてくれる友はいない。そういう事ではないか?」
「ど、どっちだっていいじゃん!」

私の推測は恐らく正解に近いだろう。
我が妹には友人は確かに多いのだろうが、それは一般的な女子中学生なのだ。
恐らく、彼女の無理を受け止め、共有してくれる人物は居ないのだろう。
ならば!私が選ぶ道は……『人生相談』と言う運命を背負った以上はコレしかあるまい。

「桐乃――」
「な、何よ……」
「敢えて言わせて貰う。君は友人を作るべきだ。全てを曝け出せるような友人を」
「そ、それって……オタクの友達を作れって事……?」

私は黙って頷いた。


桐乃は考え込んでいる。そしてやがてこう呟いた。

「やだよ……オタクの友達なんて……一緒に居たら私も同じに見られちゃう……」
「異な事を言う。私は言ったはずだ!君がどんな趣味・趣向を持っていようと嘲笑したりしない……と!
 だが、君はどうだ!?同様の趣味を持つ人間を拒絶すると言うのか!君は同様の趣味の人間を嘲笑うのか!?」
「あ、嘲笑ったりしないもん!あたしが言ってるのは世間体の話!
 あたしはアニメが好きだし、エロゲも超好き。愛してると言っても言い」

確かに、これまでの彼女を見てきて理解できた事がある。彼女の趣味に対する気持ちそれはまさしく愛だっ!

「学校の友達といるのも楽しいよ。でもこっちも同じくらいすき。どっちかを選ぶなんて出来ない!
 両方好きで好きで溜まらないのが私なの!でも、オタクが白い目で見られがちって事も判ってる
 特に女子中学生なんて日本で一番オタクを毛嫌いしてる人種だし……
 だから、家族はともかく友達にバレるのだけは絶対に嫌だ。
 そんな事になったらもう学校なんて行けないもん……」

周りの目を気にするか。私は、自分自身の道を貫き通すためであれば
周りの目など瑣末な事であると考えている。しかし、彼女の年齢を考えれば
そういった考えに至らないのも決して理解が出来ないわけでは無い。
しかし、彼女が隠したいと言うならば答えは簡単だ。

「ならば……学び舎の外でオタクの友人を作れば良い!」
「う、うん……そうだけど……何か良いアイディアあるの……?」
「無いッ!」
「何で偉そうなのに使えないのよ……」

しかし、使えないと言われて黙って引き下がる私ではない。
少し思案させて頂こう!

「ちょっと……急に黙り込まないでよ……」
「閃いたッ!」
「えっ……」
「私が町に行き、それらしい人物を勧誘してこよう」
「ば、バカじゃん……全く何も考えて無いし……」

この方法が最も早いと思うのだがな。幸いにもこの世界にはそういった人材が集まる町があると聞く。
しかし、どうやら彼女はこの方法は気に食わないようだ。真っ向勝負が駄目で有れば私も答えに窮す。
こういう時にカタギリでも居てくれれば、良いアイディアを出してくれるのだが……
だが、無い者強請りをしても仕方あるまい。私は更に長考を重ねる。

ふと私の目には先ほどまでゲームをしていたPCが目に留まる。
元々の私が存在していた西暦2314年から考えると機能的には優れているとは言い難いが
これにもネットワークに繋ぐ機能はある。ならば、そのネットワーク上で友人を探せば良い。
それならば彼女が気にしている『世間体』とやらも保たれることだろう。

「ならば、インターネットを活用するのは如何かな?」
「ネットって……」
「出会いが有ると言う話を聞いたことがある」
「いかがわしい意味じゃないでしょうね……」

多少の戸惑いはあるようだが、先ほどとは違い明らかに桐乃の瞳は「やってみても良いかも」と言っている。
ならば善は急げだっ!このインターネットの海原より、運命に導かれた友を探し出すッ!!
私と桐乃はオタクと言う人種の居そうなコミュニティの探索を小一時間程行った。

候補サークル①『オタクっ娘集まれ』
候補サークル②『認めたくないものだな……自分自身のロリっ娘好き(妹含む)故の過ちと言うものを……』

「目に留まったコミュニティはこの二つか」
「うん……って言うか後者はどうかと思うけど……」
「何らかのシンパシーは感じる」
「はぁっ!?あんたそういう趣味なの!?」

そういう事では無いのだが……
近日中にオフ会が開かれると言う二つのコミュニティであったが
私は、候補②の方に只ならぬ気配を感じていたのだが、やはり初めてと言う事も有り
妹は女性のみ参加である候補①の方に参加の旨を伝えるメールを送ったのだった。

送信より数分……それ程時間をおかずに返信のメールを我々は確認した。

 from 沙織
 to きりりん

 はじめまして。きりりん様。
 『オタクっ娘集まれー』コミュニティの管理人を務めております沙織と申します。
 参加希望のメッセージありがとうございました。
 もちろん承認させていただきますわ!
 年も趣味も近しいあなたとならきっと素敵な友達になれると思いますの。
 
「随分と礼儀正しい方だ。まさにこれが気品と言えよう。」
「うっさい気が散る。 えーっと……『もし宜しければ……来週開催されるお茶会にも参加して下さい。場所は……』」



「うわーーーー!あははははは!あきはばらー!」

今、私と妹はそういった趣味の人間の集まる町秋葉原に来ている。
先日のメールにあったお茶会の開催場所が、この町であったからだ。
もっとも、私は本来で有れば来る必要は無いのだが

「人生相談」

この言葉を持ち出されて再び運命に翻弄されてしまった。
敢えて言えば彼女が実際は「心細い」と言う事は熟知している。
ならば、参加は出来なくとも遠くから目立たぬように見ておくと言う事でお互いに承諾した。
故に、今日の私は目立つわけにはいかない。この町に溶け込んだスタイルで影のように存在しよう!

「余りはしゃいでいる時間は無い。作戦時刻は刻一刻と迫っている」
「…………あんま近寄らないで、マジで………彼氏ってか……知り合いと思われたくない」

付いて来てくれと言った上にこの仕打ち!堪忍袋の緒が切れたッ!!

「その言動!容認できんなっ!!」
「じゃあ!何でまともな格好して来ないのよっ!!」
「言っている意味が私には理解が出来ないな」
「その仮面と!そのピンクのハッピと!指だし手袋にシャツインのジーパンって明らかに色々おかしいでしょ!特に仮面ッ!」

ざわざわと私たちの周りが騒がしい

「すげぇ……今時ああんな人いるんだ……」
「オタクだ……ミスター・オタクだ……」
「OH!ミスター・オタク!」

「フッ、周りが勝手にそう呼ぶ。どうやら私は予定通りオタクの町に溶け込んだようだ」

私が満足していると、妹は何故か頭を抱えている。時折、彼女の事が理解出来ない。

地図を取り出す妹。私は確認のためそれを覗き込む

「だ、だから近づかないでってば!」
「なるほど。場所は理解した。ならば突貫あるのみ!」
「ま、まさか……あんた参加する気じゃないでしょうね……」
「参加しても良かった…という事か!?」

私は遠くから様子だけ見ておくつもりだったのだが……
そう言うならば女性のみ参加と言う道理を無理でこじ開ける!!

「ち、違う!駄目だってば!何かあんたが勢いで参加しそうで不安になっただけよ!
 良い!ぜーったいに関係者と思われないくらい離れた位置にいてよ!!」
「己の分は弁えてるつもりだ」

中々、発言の機微を探るのが難しいお姫様だ
ならば私は先行して会場であるツンデレ(?)メイド喫茶とやらに陣取っておく事にしよう。

「何をしにここまで来た!俗物っ!!」

ほう、これが秋葉原文化と言うものか。
入店一番に手酷く罵られるとはな。異文化と言う物には驚嘆を隠せない。
罵られながらも私は、席に案内された。

「俗物。注文を聞こうか」
「私はオムライスを所望するっ!!」
「良いだろう…!オムライスにどのような文字を書くか、ここで選べっ!」
「ガンダムと言う文字を希望するっ!」
「よくもずけずけと注文してくれる……!良いだろう。」

私がやたらとプレッシャーを発する店員とやり取りをしていると、そこで扉が開き団体客が姿を現した。
来たな……!

カランカラン  「「別に来てくれなんて頼んで無いのに何で来たのよっ!」」

先ほどの私に対する物に比べると大分愛想の良い店員達に暖かく迎えられ、団体客は入店した。
ぞろぞろと入店してきた女性客。一見すると普通の女性に見えるが、彼女達も桐乃と同じような趣味・趣向を持っているのだろう。
やたらと凝った服を着ている者も見られる。その先頭に立つ女性……やたらと背の高い彼女は
私が研究した末に辿り着いたオタクスタイルに近しい格好をしている。出来るな…!

「拙者、1時に予約している者でござるが……」

何とっ!そのしゃべり…彼女も武士道を志す者だとでも言うのか。

「フンッ!一応名前だけ聞いてあげるわ!」
「沙織・バジーナ」

沙織・バジーナ。彼女が管理人か。その名前しかと覚えさせて頂こう。
団体の様子を更に伺うと、後方には我が妹の姿を発見する事が出来た。
彼女はこちらの方を睨んでいる。怖い顔だ。既に私はこの店と一体と言っていいほど馴染んでいる。
その心配は杞憂である事をアイコンタクトで妹に伝える。

「はぁ~」 どうやらアイコンタクトが通じたようだ。妹はそっぽを向いた。
しかし、ふと気づいたが、妹以外のメンバー、強いて言えばこの店に居る人間全てから
視線を感じる気がするが、郷に入らば郷にしたがっている以上、これも気にしすぎと言う事だろう。
どうやら、久方ぶりの隠密ミッションで私も感情が昂ぶっているようだ。

「えー、それではオタクっ娘集まれーのオフ会を始めさせて頂きとうござる。短い時間ではありますが互いに語らい
 親睦を深めましょうぞ。初対面とは言えオタクと言う絆で結ばれたもの同士、その溢れる思いをどんどんぶつけましょうぞ。それでは、どうぞご歓談を」

お茶会は沙織・バジーナの挨拶により始まったが
客観的に見て、我が妹は浮いてると言わざるを得ないだろう。
確かに妹は垢抜けているがあの格好ではな……場所ごとにニーズというものはあるのだ!

ザワザワ……「ナァ…アノカメンノヒト…」「シッ…」「ミスター・オタク……」ザワザワ

「きりりんさんは、SEEDだと誰が好き?私はディア×イザなんだけどー」
「え…あの…」
「えーうそ!私もディア×イザ!」

「良いよねー!」「ねー!」

「きりりんさんのそのアクセ綺麗だね」
「どこの?」
「どこのって言うかクロックの限定。撮影で気に入ったから買い取っちゃった」

「ふ、ふーん…」「そうなんだぁ……」

彼女たちの会話は私には理解できない部分も多々あるが
一目すれば判る通り、我が妹は完全に孤立してしまっている。
………辛抱ならんっ!!かくなる上は私が……!!

ガタッ!
私は勢い良く立ち上がる。
すると、妹とまたも目が合った。
まさに阿修羅のような形相で私を睨んでいる。
――私の助けはいらないと言うことか。ならば静かに君の戦いを見届けよう。
私が再び席に着席すると同時にオムライスが運ばれてきた。

「待たせたな、俗物。ここでオムライスが食べられる己の幸運を祝うが良い」
「いただくっ!」

まるで血痕ようにケチャップで『ガンダム』と書かれたオムライスをほお張りながら
私は桐乃から視線を離さず、彼女の戦いを終始見届けた。頑張れ桐乃、その手に未来を掴めッ!

お茶会はそれから2時間程続き、最後にプレゼント交換のような事をして終わった。
残念な事に、我が妹は終始、碌なコミュニケーションもとれず、言わずもがな友人が出来ようはずもない。
しかし、桐乃に廻ってきたプレゼントは、我が愛機スサノオの剣を模したような玩具でそれは当たりだったと言わせて貰おう。
とは言う物の、一人ポツンと俯いてスサノオの剣を模した玩具を連結したり、連結解除したりする姿は見る者の涙を誘う事請け合い。
だが、私は必死に友を作ろうとする君の姿を見ている。今日の敗戦は明日の勝利のためにあるのだ。

そこで沙織・バジーナが茶会の終了を告げる挨拶を述べ始めた。

「皆様のご協力もありまして、記念すべき初めてのお茶会もつつがなく終了したでござる!拙者、心より感謝しておりますぞー!」

楽しげな歓声があがる。私の見立て通り、彼女のカリスマ性は中々のもののようだ。

「―お茶会は一先ず、これで解散となりますが――まだまだ時間があるよという方、会で仲良くなった友達ともっと話したいよ
 と言う方は、それぞれ各自で2次会、3次会へと向かってくだされ!なお、次回の催しにつきましては、またトピックを立てますゆえ
 ぜひとも奮ってご参加くだされ!では、解散っ!」

わぁっと喧騒が広がった。
別れの挨拶と共に新たな友人との予定を囁く声が聞こえる。

「ねー、これから虎の穴にいこうよ!」 虎穴に入ると言うことかっ!?
「SEEDのカップリングについてみっちり語り合わない?」 種のカップリング? 植物の遺伝子交配かッ!

中々、二次会はすごい事になりそうあものだ。
しかしながら、その会話の輪の中に我が妹・桐乃の姿は無い。
2、3人のグループに分かれながら団体は解散していく。
沙織・バジーナも会が終わると脱兎の如く駆け出し、既にここにはいない。
最終的には、店内には我が妹のみが残されていた。

その姿はさながら、戦いに敗れた敗残兵のようでもあった。
私は仮面を外し、ゆっくりと近づいていく。

「君の戦いは見届けた。敗北の悔しさを知っている者だけが勝利の美酒に酔える。次は勝てるさ」

頭の上に手をのせてやるが、その手はすぐに払いのけられた。それくらいの元気があれば大丈夫だ。

「うっさい…バカ……大体なんなのよ……完全にその格好浮いてたし……っていうか今も浮いてるし……」
「異な事を言う」

私は完全にここに同化していた。メイドとの会話もそつなくこなしたと自負している。

「全然話できなかった……」
「最初と言うのはそんなものだ。私も最初にガンダムに挑んだ時はその性能に圧倒されたものだ」
「厨二病やめてよ……アニメの話じゃないっての……なんで……あ、あたし…何時もどおりやったつもりなのに……
 何で避けられちゃうの……くぅぅ……かつく………ムカツク!ムカツクッ!!ムカツクムカツクムカツクッ!!」

「おーい!きりりん氏ーー!!」
地団駄を踏む桐乃の前に、見覚えのある顔が再び現れた。
「良いかったー……まだ居てくださって!」
「沙織……さん」
「沙織で結構!ほほぉ……こちらは……彼氏でござるな!」

沙織・バジーナは私と桐乃を見て唐突にそのような事を言い出した。

「ちがーう!!」
「敢えて言おう。私は彼女の兄であるとッ!!」

「………こんな兄居ると思われるのも嫌なんだけど……」
「なるほどなるほど。店内にやたらと存在感のある方がいらっしゃると思っておりましたが、きりりん氏の兄上でござりましたか」
「あれだけ気配を消した私の気を感じ取るとは、やはり君も武士道に通ずる者か。私の名は高坂京介。グラハム・エーカーと呼んでくれて構わない。」
「あんた……いい加減にしてよ……」

「京介氏……いや、グラハム氏でござるね。それではグラハム氏もご一緒で」

ご一緒でとは……君は何を計略している、沙織・バジーナ!

「いやいや、お二人を二次会へとご招待しようと思いまして」
「二次会って……さっきのつづき?」
「左様、拙者がさっきお話が出来なかった方を個人的にお誘いしようと思いまして」
「他にも沢山来るの……?」
珍しく弱気が見えるな桐乃!どうやら先ほどの敗戦が身に染みていると言う事か。

「いやいや、拙者たちを含めて4人でござるよ」
「ふ、ふーん……」

ほう、詳細を聞いて多少心が動いているようだな。
確かに少人数で有れば、先ほどのような決定的な敗戦は喫さないであろう。
ならば私に出来る事は、彼女の迷いを切り捨てることのみっ!

「私、グラハム・エーカーからお願いしよう。是非とも参加させて頂くと!!」
「おおっ!来て頂けるでござりますかっ!」
「ちょっ……何であんた勝手に……まぁ、どうしうてもって言うなら行っても良いけどさ……」
「ああ、良かった!では、お二人とも参りましょうぞ!もうお一方は、既にマックでお待ち頂いておりますゆえ!」

この格好と言い、私の気配を察した事と言い、会の仕切り、そして恐らくこの二次会とやらの意図も……
やはりこの沙織・バジーナという人物。かなりの人間であるのは間違い無いだろう。
私達は沙織・バジーナの先導に従い、メイド喫茶は出ようとした。

「4時より予約している者だが……」
「……貴様はっ!!よくもぬけぬけと……!」
「もう一度言おう。4時より予約している者だ。」
「ここで朽ちるか、今すぐ引き返すか好きな方を選べ!」
「そんな決定権がバイトのお前にあるのかっ!」

メイド喫茶を出る間際、派手な赤いノースリーブを着た男と先ほどのメイドがやり取りをしていた。
赤い男と目があう。出来るな……!しかし、今は、沙織・バジーナの後を追うのが先決だろう。
この男とはまたどこかで会うような気がする。

今、私達はお茶会を行ったメイド喫茶から一番近いマックに入店し、そこで沙織・バジーナの言っていたもう一人の二次会参加者と相対している。
凝った服を着ている彼女は、よくよく考えてみるとお茶会の時も桐乃同様周囲に馴染めないでいたように記憶している。
やはり佐織・バジーナの意図は私が考えていたものと違わないものであるようだ。

「お待たせしました黒猫氏。きりりん氏とその兄上でござる。」
「え、えっと……きりりんです……宜しくね」
「私は高坂京介だ。かつてはグラハム・エーカーとも呼ばれた男だッ!申し訳無いが故あって飛び入らせて貰う」
「ハンドルネーム……黒猫よ」

最後の一人は俯いたままボソリと自己紹介してきた。
なるほど。確かにその異名に似合った黒いドレスだ。
このまま舞踏会にでもエスコート出来てしまいそうな程に。

「で……管理人さんはこの面子を集めてどんな思惑があるのかしら。
 先程のオフ会の時に遠くに居た変人も混じってるようだけど」
「いやー、先程も申しあげた通り、先程余りお話出来なかった方と是非お話がしたかったのでござるよ。
 ですので、黒猫氏もそんな他人行儀な呼び方では無く、遠慮なく沙織とお呼びくださいませ。無礼講でいきましょうぞ」
「その図体でよくも沙織なんて名乗れたものね……図々しい。出落ちにしたって性質が悪いわ。
 今度からサイコガンダムかビグザムと名乗りなさい。それにその喋り方と格好……」
「何年前のキモオタなんだって感じ」
「敢えて言おう無礼講とは、幾ら罵っても良いと言う意味では無いと!」

どうやら彼女達には、配慮と言う物がいささか欠けているようだ。
それに沙織・バジーナの格好は、この町に馴染むと言う意味では間違って居ないだろう。
私が辿り着いた『極み』と同じところに辿り着いているのだから。

どうやら彼女達には、配慮と言う物がいささか欠けているようだ。
それに沙織・バジーナの格好は、この町に馴染むと言う意味では間違って居ないだろう。
私が辿り着いた『極み』と同じところに辿り着いているのだから。

「まぁまぁ、グラハム氏。拙者にとってこの程度の毒舌はそよ風のように心地良い
 宜しかったらグラハム氏もどんどん罵ってくだされ!」

なんと度量の深いものだな。我慢弱い私では同様の事は出来まい。

「格好といえば……あなたもどうしてそんな浮いた格好しているの?
 秋葉原のオフ会でその格好は無いと思うわ」
「それに関しては私も言わせて頂こう。桐乃、君は今回のミッションでは空気を読む必要があった」

「「おまえ(あなた)が言うな」」

なんとっ!この連携……私の予想を超える。
しかしながら、私は郷に入りオタク道に殉じたつもりだ。

「敢えて言うけど!これが一番私らしい格好なんだから!それに……」
「何?何かしら?言ってごらんなさい」
「何そのドレス……コスプレ?水銀燈のつもり?」
「全然違うわ。どこ目をつけているのマスケラのクイーンオブナイトメアよ。まさか知らないとは言わせないわ」
「あー……それってメルルの裏番じゃん。確かオサレ系厨二アニメって言われてる奴」

ブチン
その瞬間、たしかに堪忍袋の緒が切れる音を私は聞いた。

「聞き捨てならない事を言うのねあなた…メルルってまさか『ほしくず☆うぃっちメルル』の事かしら?
 視聴率的にはそっちが裏番組でしょう?くだらない妄言はやめなさい」
「視聴率?何ソレ?私が見ているのが表でそれ意外が裏なの――」
「あなたこそ口を慎みなさい。何が厨二病アニメよ。私はその言語が死ぬほど嫌いだわ」

妹と黒い少女の会話を聞きながら私は安堵を覚えていた。

「フフフ」
「おや?何を笑っているのですかなグラハム氏」
「フッ、私は以前桐乃に言った。己の全てを晒け出せる友人を作るべき…と」
「ほう、そうでござりましたか」
「この出会いに、おとめ座の私はセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない」
「グラハム氏は詩人でござるなぁ」

先ほどのお茶会ではアレだけ何も喋れなかった我が妹が
今は黒い少女と己の魂をぶつけて語り合っている。この関係!まさしく友情だ!

「本当いちいち言い方が面倒くさいのよ!この邪気眼電波女!」
「じゃ、邪気眼……電波女ですって……ついに言ってはいけない事を言ったわね……
 ふふふ……どうなっても知らないわよ……この負の想念はもう私にも止められはないわよ……!」
「ばっかじゃないの!あんたもう死ねば!!」

これで今回の私のミッションも完了だろう。
妹は得難い存在をこうして得る事が出来たのだから
何?何もしていない?ならば、今回は私が動くまでも無かったと言う事だ。

それからしばらく私たちは、沙織・バジーナの提案した秋葉原見物に乗り出す。
アニメのグッズを扱う店や、同好の士で集まって描いた書物を扱う店など興味深いものがあった。

「なんとっ!!劇場版機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer- 
 COMPLETE EDITION【初回限定生産】が既に発売しているだとっ!」
「何で急にアニメショップで宣伝口調な台詞言い出すのよ……」
「さっきから思ってたけどあなたのお兄さん……アニメキャラの成り切り?」
「昔からずっとこうなのよね……」
「少女。言ったはずだ。私はかつてグラハム・エーカーと呼ばれた男だと」
「……そ、そうね」
(何で同類なのに引いてるのよ……あんた)
(この人の眼は本気過ぎるわ……)

こうして私としても得難い時間を過ごさせて頂いた。
既に町は日が暮れ初めている。

「いやいや~つい遊びすぎてしまいましたな」
「あなた……とあなたのお兄さんがはしゃぎ過ぎるから」
「しょ、しょうがないじゃん。あたし、秋葉原初めてなんだし。
 それとアイツはいっつもあのテンションだから……」

私としたことが、この町には何故か懐かしい物が多くはしゃいでしまったようだ。
どういう理屈で、私の知りうる情報が、西暦2000年代のこの世界に流通しているのか。
それに関しては、私も答えを持っていない。そして、その答えを知る時が来るのかも解らない。
だが、今の私は高坂京介として生き抜くのみ。一度は死したこの身。運命には従うまでだ。

「それでは拙者達はこれで」
「感謝する沙織・バジーナ、そして少女。この出会いは僥倖だった。私も再び生き恥を晒した甲斐があったと言う物」
「はて、お礼を言われる事を何かしましたかな?」
「ふ……覚えはないわね。変な人間に出会ったそれだけの事」

どうやら私も桐乃も運が良かったようだ。
改札に向かって去っていく沙織・バジーナと黒猫を見つめながらそう確信した。
沙織・バジーナは背負ったリュックからポスターをまるでガンダムのビームサーベルのように抜き放ちブンブンと振った
それに答えるように桐乃は我が愛刀シラヌイ・ウンリュウを模造した玩具二刀を振っている。

「さて帰投するか、我々も」

既に改札に向かっている桐乃の後を追いかけ私も歩を進めた。


第2話 完



464 : ◆TYIbS5r7nc :2010/12/27(月) 03:32:33.09 ID:+FRbmxxY0
次回 第3話 『私の妹がこんなに可愛いわけがないっ!』


やっべ。明日仕事なのにこの時間までかかちゃったよ……
次回投下は明日の夜以降で



←ブログ発展のため1クリックお願いします
スポンサーサイト


コメント

  1. マハラジャ | URL | -

    Re:第2話 『私が妹とオフ会に行くわけが無いっ!』

    ハマーンとシャアもこの世界に来てる?
    ハマーンは漫画の14才版なのかZZ後のハマーンなのか気になる。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://kannki.blog39.fc2.com/tb.php/2652-46e876b9
この記事へのトラックバック



アクセスランキング ブログパーツ レンタルCGI
/* AA表示 */ .aa{ font-family:"MS Pゴシック","MS PGothic","Mona","mona-gothic-jisx0208.1990-0",sans-serif; font-size:16px; line-height:18px; }