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第4話「私が妹とコミケに行くわけがないっ!」

2011年03月26日 00:40

グラハム『私の妹がこんなに可愛いわけがないっ!!』

と言うわけで『私の妹がこんなに可愛いわけないっ!!』セカンドシーズン開始です。

3 : ◆TYIbS5r7nc [sage]:2011/02/07(月) 23:04:14.65 ID:z4cl38uCo

何という僥倖。再び君達と巡り合う事が出来ようとは。
まだ私と妹の話を覚えている者は久方ぶりと言わせて貰おうっ!
知らない、覚えていないと言う者は始めましてだな!

投下する板が変わったのと時が開いたのもあるためまずは前回までの粗筋を述べさせて頂く。

私の今の名前は高坂京介。おとめ座の17歳。
しかし、かつてはグラハム・エーカーと呼ばれた男でもある!
あのELSとの戦いで命尽き果てた私であったが、気が付くと私の生きた時代・世界とは全く違う世界にて新たな生を授かっていた。

この世界ではMSは創作の世界にしか存在していなかった。
若干の心寂しさを感じながらも、私はかつての私が持たなかった家族の中で平凡な人生と言うものを謳歌していた。
今の私はまさに平凡の極みっ!!

しかし、そんなある日、転機が訪れる。
この世界での私の妹……高坂桐乃の秘密を知ってしまった事による『人生相談』の始まり。
恐らく、これがこの世界で私が成すべき事……運命であると確信した私は数々のミッションに挑む事になる。
破廉恥なゲームをクリアし、新たな友人との出会い、そして父との対話を成し遂げた。

こうして、どんな道理も私の無理でこじ開けて来たのだが
まだまだ、運命の女神は私を放すつもりは無いらしい。
諸君にも、もう少々お付き合いして頂こうか。私と妹の物語にっ!!


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既に学校が夏期休暇に入って久しいある日
我が家において唯一クーラーの無い部屋、つまり私の部屋だ。
そこに朝から篭もり全神経を集中させてあるミッションに挑んでいる。

「くっ…!キャラの性能差が、勝敗を分かつ絶対条件ではない!」

そう、私が今プレイしているのは、新作18禁ゲームタイトルであると言わせて頂く。
その名も【真妹大殲シスカリプス】これまでの私がプレイしたゲームとは趣が異なるこのゲームは自分が決めた妹キャラを育成し、数多の妹とバトルし勝利していくと言った内容となっている。
現実の『妹』より貸与されたこの妹ゲームの攻略をする事が、今の私の使命。
いよいよ現れた首魁と思しき、敵に挑むところに居合わせた諸君は運が良い。
相手に取って不足は無い……いざ、尋常に勝負ッ!!

「圧倒された!?しかし、その大きな獲物では当たらんよ!」

開始より数十秒、劣勢に立たされた私は、形勢逆転を狙い激しくコントローラーを操作する。
画面の中では破廉恥な衣装に身を包んだ二人の少女が剣閃を交えている。
我が分身と言える少女は、生地の少ない漆黒の衣に身を包み2本の刀を操り、かつての愛機のように斬撃を繰り出す。
相対するボスキャラの少女は、光の翼を広げ、その体躯よりも巨大な剣を繰り出してくる。

「捌ききれんかっ!」

私の操作する二刀流の少女が、光の翼を広げ高速で機動する少女の大剣の直撃を受ける。
大剣を突き立てられた我が分身は体力ゲージを失い。その黒衣を肌蹴させ、少女の体ははじけ飛ぶ。

ゲームオーバー……と言うしか無いようだな。
より破廉恥な格好となった我が分身の少女が、光の翼を広げた少女に見下ろされている。

『はーい。まゆでーす。でも、ごめんなさい。もうコンテニューする事が出来ないんです』

「まだまだ修行不足と言う事かっ!」

ボスキャラの少女の癇に障る勝利台詞を聞かされながら、己の未熟さを痛感する。

「MSの操縦と同じようにはいかんか」

操縦桿が変わった事への適応を急ぐ必要があると言う認識を強めた。
かつての我が愛機達とのように人機一体となれる日は何時になるだろうか。
私が一刻も早くこのゲームをクリアするのを『妹』は求めている。
そう、このゲームも『人生相談』の一環なのだからな。
あの、親父殿と対峙した日以降も、このように『人生相談』は続いている。
男の誓いに訂正は無い以上、私はこの宿命を全うするつもりだ。

「一息入れよう」

休息を入れるために私は1階のリビングに足を踏み入れる。
激しい戦いを経て、乾いた喉を潤すには、冷蔵庫の中の麦茶を頂くのが好ましいだろう。
母上殿の麦茶作りの腕前は驚嘆に値すると言っても過言では無い。

「あはははっ そうなんだぁ~? うんうん……」

リビングでは、我が妹が何時もの様に携帯で友人と話していた。
この喋り方は学友の方か。最近では話し方で、学友と喋っているのか
もしくは、私も知っている友人と喋っているのか判るようになってきた。
このように、猫かぶりが見受けられるのは学友と確信している。

「わかった。じゃあ、待ってるから~♪」

私は邪魔しないように麦茶の補給を済ますと再び戦場へと向かう。
グラハム・エーカーの名に掛けて、シスカリプスを攻略しなければならないのだから。

「ねぇ」

電話を終えたであろう妹が私に話しかけてくる。
『人生相談』を受けるようになってからの一番の変化と言えるだろう。

「何か用かな?」
「やった?」
「主語が無くては、私と言えども理解しかねるな」
「だーから、シスカリプスよ!シスカリ!全部言わなきゃ判らないの!?」
「敢えて言おう。その通りだっ!!」
「……チッ……相変わらず何で妙なところで力強いのよ……」

忌々しげに呟く、我が妹。
これでも、話しかけてくるようになったと言うのは以前との大きな違いであるのは間違いない。
彼女にしてみれば、私の進行具合が気になったと言う所か。

「心配には及ばないさ。慣れない戦いではあるが
 既に私は極みに到達しつつある!朝よりの努力の賜物だな」
「ふーん……朝からエロゲーしてたんだ」
「君と言う人間に感化された結果と言わせて頂こう」
「うっ……うるさいわね!さっさとクリアしてよね!対戦したいんだから」
「対戦?」

シングルプレイのゲームであると考えていた私は聞き返す

「このゲーム、クリアデータで対戦が出来るのよ!
 自分が鍛えた妹同士で対戦なんて萌えるでしょ!
 アンタがさっさとクリアしてくんないと、それも出来ないでしょ!」
「なるほど。興が沸いた。」

我が半身スサノオを存分に戦わせる事が出来そうだ。

「でしょ!それにネット対戦もクリアすれば出来るようになるし!」
「……?ならば、君はもうネット対戦が出来るのではないか?
 私がこの道を究めるまで待つ必要も無いのではないかな。」
「だってオンラインだと勝てないんだもん……あたし、こういう格ゲー苦手なの。」
「私も、こういったシミュレーションには不慣れだと言わせて頂こう」
「知ってる。だからアンタに貸してあげたんでしょ。ありがたく思いなさいよね」

なるほど。この私、グラハム・エーカーもみくびられたものだな。
私は強者と戦う前の、同レベルな練習台と言ったところか。

しかし、私の心に火が点いたっ!!この気持ち、まさしく闘志だっ!!

「了解した。ならば、私も一刻も早く君と競えるように腕をあげておこう」
「ふ、ふん!早くしてよね。折角だから、あたしが教えてあげても良いんだけどォ~
 でも、今日は生憎忙しいからダメ」
「フッ、己の道は己で切り開くさ」
「ふ~ん……じゃ、攻略wikiでも見て頑張るのね」
「『男子、三日あわざれば括目してみよ』と言う言葉の意味を披露するっ!」
「あーはいはい、楽しみにしてるわ」

こうして、戦いの意志を灯らせた私は、再び戦場へと向かう。
リビングを出ようとした時に、付け加えるように桐乃が話しかけてきた。

「あっ!そーいえば、明日家にあたしの友達が来るから絶対に部屋から出てこないでよね。変態の兄貴いるって思われたくないから」
「断固拒否するっ!!」
「な、なんでよっ!!」
「妹が世話になっている友人に挨拶もしないのでは礼を欠くっ!」
「くっ……どうせ言っても聞かないし……挨拶だけにしてよね」
「承知した」
「はぁ~」

観念したように溜息をつく桐乃。
私も妹の事を多少なりとも理解してきたつもりだが
彼女自身もどうやら少し、私と言う人間を理解してきたようだ。

「さて、続きを始めようか」

しかし、闇雲にプレイしたのでは、上達は見込めないだろう。
桐乃より得た情報は有効に活用させて頂く。
インターネット上よりシスカリ@wikiを探り当てた私は
早速そこに書かれた情報を読み込む。情報は戦う上で、重要な要素になる。
たった一つの情報が欠けていただけで、部隊は全滅の憂き目に合う事もあるのだから。

システムの詳細な解説。私の苦戦していた敵の首魁の攻略方法。効率の良い育成方法。ダメージ計算式。
ここにある情報は、全て一般のプレイヤーが持ち寄った物。この情報の結晶、まさしく愛だっ!
先人たちの愛により、ビギナープレイヤーはオンライン協力プレイにて経験値を積むのが良いと言う事を理解した。
ならば、私と協力し、戦ってくれる仲間をオンライン上で見つけ出さねばならないだろう。
早速、シスカリプスを起動した私はオンライン接続を試みる。

【プレイヤーネーム きりりんで接続しました】

なんとっ!これは桐乃名義で繋がってしまったと言う事かっ!
このゲームやPCが借り物で有ると言う事を失念していた私のミスか。
一度ネットワークを切断しようとログアウトボタンにマウスポイントを移動させた刹那

ぴろりんっ と軽快な音と共にメッセージウィンドが開いていた。

【沙織さんからメッセージが届きました】
「これは……」

そこには見覚えのある名前が表示されていた。
沙織・バジーナ。桐乃の所属するコミュニティの管理人であり以前世話になった事がある。
私自身、彼女という人間の器には畏敬の念を持っている。なるほど世間は狭いと見えるな。

沙織  『ごきげんようきりりんさん。お暇でしたら私とお話し致しましょう』

彼女はどうやら私を桐乃だと考えているようだ。私もメッセージを送り返す。

きりりん『何という僥倖!よもや再び君に出会えようとはっ!!』
沙織  『あら?まぁ……グラハム・エーカー上級大尉でしたの―――ご無沙汰しております』

まだ私は名乗っていないのだが、敢えて言う必要も無く彼女は私だと確信してくれたようだ。
流石だな!沙織・バジーナッ!!

きりりん『敢えて言う必要も無かったようだな』

沙織  『ふふふ、そうですわね。お元気でしたか?』

きりりん『それこそ言うまでも無いさ。君も息災のようで何よりだ。何時も妹が世話になっている。』

沙織  『いえいえ、こちらこそきりりんさんにはお世話になっておりますわ。このゲームでも最近は毎日カモらせて頂いて。
     お陰様で、わたくし、勝率8割をキープしておりますのよ』

きりりん『ほう、どうやら桐乃の勝てない相手と言うのは君と言うわけか。このゲーム極めていると言う事だな』

沙織  『ええまぁ。極めていると言う程かは判りませんけどね』

きりりん『ならば、折り入って頼むことにしよう。私にこのゲームの指南をしてはくれないか?
     私も桐乃に勧められ始めたのだが、既に火がついたっ!』

先ほどの先人たちの愛の結晶は受け取った。ならば後は実践あるのみ。その相手として桐乃に勝ち越している彼女ならば申し分無い。

沙織  『うふふ、仲が良くて羨ましいですわ。そういう事でしたら電話でびっちりと教えて差し上げますわ』

その瞬間、私の携帯電話からUNIONが流れる。

「私だ」
「おほほほ、早速指導させて頂くでござりますよグラハム氏」
「心強いものだなっ!」

こうして私と沙織の修業が始まった。
その修業、まさに修羅の如しっ!!
その甲斐もあり、私はこのゲームの極みに近づく事が出来ていると実感しているっ!!

「本当にグラハム氏は飲み込みが速いでござるなぁ」
「フッ、君の指導が良いのさ」
「いえいえ、わずか半日でここまでお力をつけられるとは……驚きでござるよ」

既に私は憎き、運命の少女を打ち砕きネットでの協力プレイだけでなく、対戦も可能となっていた。
恐らく、この先に潜むのはこのゲームを極めし猛者達なのだろう。
一進一退の攻防を繰り広げながら、私はネットの猛者達と競い合っていった。
やはり、どこまで行っても私は戦いを忘れる事は出来ないようだ。

ネット対戦サーバーに接続して数時間。途切れる事なく私は戦い続けていた。
戦いに明け暮れる日常。かつての自分を思い出しながら、コントローラーには力が入る。
既に100戦以上は戦いを繰り広げただろうか?
しかし、今日の私はこれくらいでは止まらないぞ!!

その時だった。 ぴろりんっ と言う軽快な音と共に何者からかメッセージが届く。


【木星帰りの男さんからメッセージが届きました】


新たな対戦者の出現。しかし、この時私は感じていた。
この乱入者は……これまで戦って来た猛者達と比べても異質!


木星帰りの男   『フフフ……手合わせを願いたいものだな』
グラハム・エーカー『承知した』


短いメッセージのやり取りを終え、戦闘が始まる。
私が選んだのは、黒衣の妹『スサノオ』
一方で対戦者が選んだのは、ぽっちゃり系妹『ジ・O』

この男の気……只者ではない。心躍るなガンダムッ!!
戦闘開始と同時に私とスサノオは得意とする接近戦を挑む。
しかし、私の斬撃は全て、紙一重で躱されていく。

この感覚は……!!
私の反応速度を超える読み。まさに動きが読まれている!
沙織・バジーナや他のネットの猛者達の動きも、今の私より上であると考えているがこの男はそういったレベルではない。反応速度の上を行く何か……!

一度、私はこの感覚を味わった事がある。
まさに、最後の少年との戦い……あの時の少年を彷彿とさせるっ!
しかし、少年とは違う。少年ではない。底知れぬ異質な気を放つこの男……!
ネット回線ごしでも私の目は欺けんぞっ!!

木星帰りの男『落ちろ、カトンボ…!』
「何という僥倖……!このような敵に巡り合えるとは!!生き続けた甲斐があったと言うものだっ!!」
男のメッセージに対して叫び返すと、私は再び、突撃する!このワルツ、簡単には終わらせんよ!

結果を見れば、練度の差がそのまま結果となっていた。
フッ……しかし、このような猛者がいるならば、この道……極める価値があると言うものだ。

木星帰りの男『良い腕だ。だが、私を倒すには足りないな。』

そのメッセージを残すと男はログアウトしていった。
しかし、この男とは、再び戦う運命にある。私はその運命を確信していた。

翌日、私は更に研鑽を積んでいた。
あの後、『木星帰りの男』を探してはみたがどうやら再度ログインはしていないようだ。
ならば、再び運命の赤い糸を手繰り寄せる日まで己を研鑽し続けよう。

ピンポーン

一階の方より、チャイムの音が聞こえた。

少し間をおいて再びピンポーンと音がする。
どうやら、誰も出る気配が無い。今日は親父殿もお袋殿も留守と言う事か。
ならば、この私、グラハム・エーカーが出るっ!!

1階に降り、ドアを開ける。
そこには、桐乃と同じ年の頃の二人の少女が居た。
どうやら、彼女達が昨日桐乃の言っていた友人か。
ならば、すみやかに挨拶を済ませておくことにしよう。

「私の名前はグラハム・エーカー!もとい、高坂京介!はじめましてだなぁ!!」
「え?ええ…?は、はじめまして……き、桐乃いらっしゃいますか?」
「何時も妹が世話になっている。今、呼ぼう」

私が桐乃を呼ぼうとした、まさにその瞬間ドタドタと階段から駆け下りてくる桐乃の姿が見えた。

「桐乃、友人が……ぐっ!!」
「何やってんのよあんたはーーーーーー!!」

桐乃飛び蹴りが綺麗に直撃する。
中々のキックだと言わせて貰おう。
油断していたとは言え、私の鳩尾に正確に入れてくるとは。

「あんだけ部屋に居ろって言ったのに……あー、ごめんねあやせ、加奈子」
「う、ううん。別に私たちは……ねぇ、加奈子」
「お、おう」
「取り敢えず、上がって!あたしの部屋行こっ」
「うん。おじゃまします」

「あんた……絶対にもう出てこないでよ」
去り際にその言葉を残し、桐乃とその友人たちは2階へとそのまま上がっていった。
友人達には挨拶も出来た事だし、後は妹君のリクエストに従い
私は大人しく部屋で更なる研鑽を積む事にでもしようっ!!


部屋に戻り、再びPCを起動する。
まだ見ぬ強敵も潜んでいるであろう、この広大な戦場を駆け巡る。
既に1時間は戦っただろうか。
「グラハム・エーカー」の名もこのネット対戦上ではそれなりの力を持つ者として認識されてきているようだ。
戦う相手には困らない。
このまま行けば、あの男の背中が見える日もそう遠くは無いだろう。

などと考えていると、壁越しに桐乃達の喋り声が聞こえてくる事に気づいた。
迂闊だな桐乃ッ!!この家の壁の薄さを忘れていると見えるっ!!

「うそだぁー、だったら携帯見せてみ」
「そ、それはダメ!プライバシーの侵害だから」
「やっぱアヤシ~、桐乃いい加減に白状したら~」
「だ、だからぁ!あたしに彼氏なんていないってば」
「だって最近おかしいじゃん、桐乃~」
「ど、どど…どこが?うそー…そ、そんな事ないじゃん!」

私呼んで!桐乃スペシャル!(猫被りの章)
余り気にした事はなかったが、友人と話すときの彼女の態度は中々興味深いものだな!
かつて、私の前で気弱な少年を演じて見せた少年の演技力にも匹敵するだろう。

「だってさー、最近携帯ですっごい怒鳴ってるのに嬉しそうなの。それで切った後にニヤニヤしてんの。絶対に彼氏でしょアレ!」、
「い…いや、それは……ちが……違うくて……えっと……」

どうやら桐乃がその恋人の存在を疑われているようだ。
根拠となっているのは、携帯電話での会話らしいが……フッ、それは恐らく……
私の脳裏には、沙織・バジーナ。黒い少女。二人の姿が浮かんでいた。

「もういい加減にして~ 彼氏なんて居ないって言ってるでしょ!」
「二人ともその辺でやめときなよ。ねっ、それよりさ。さっきの人お兄さんだよね」
「うっ……そ…それが……?」
「何で嫌そうな顔するの?面白そうな人だったね」
「………あー……まぁ…傍から見てる分にはね……」

私はコメディアンではないのだがな。

「あ、私も見た!ちらっとだけだ!桐乃には全然似てないよね。
 なーんて言ったら良いかなぁ……10年後……ふつうに武者修行とかしてそうだよね!武士って言うか!」
「あ、あははは……」

ほう、こちらの少女は人を見る目があるようだな!
確かに私は10年後……27歳にして武士道を極めんと帆走した事もある男だっ!!
カタギリ司令の実家に住み込み、ハワイで滝にうたれた事もあった。厳しい修業だったが、今思えば懐かしいものだ。

いかんな。盗み聞くつもりは無かったのだが。
この部屋に居ては私の意志とは別に、言葉は走ってくる。
そっと立ち上がり、私は1階へと場所を移す。幸いにもノートPCのお蔭で研鑽を積む事自体は場所を選ばない。

1階に降りると再びピンポーンと言うチャイムが鳴り響いた。
遅れて来た桐乃の友人か?
私は迷う事なく、玄関を開ける

「はじめましてだなぁっ!!」
「え、あー…宅配便です……」

なんと!桐乃に邪魔される前に謹んで挨拶するつもりだったがただの宅配便だったとは。
その荷物の伝票には「高坂京介(グラハム・エーカー)様」と書かれていた。覚えがないぞガンダム!!
差出人は……槇島沙織……この名にも覚えが無いと言わせて貰おうっ!!

「何それ?」

そこに桐乃が、降りてくる。言うまでもない、彼女もインターホンに反応したと言う事だ!

「フッ。さてね。私もこの贈り物に困惑しているところだ」
「は!!その箱!!」
「君の物か?敢えて言おう。通信販売を行うのであれば私の名ではなく……」
「エターナルの箱じゃん!ウソ!なんで!なんで!!えー、これあたしに!?」

補足しておく!エターナルと言うのは化粧品メーカーの名前らしい。
とある歌姫とやらが愛用しており、この世界では人気だと聞いているっ!

「これ、あたしでも中々手に入らないんだよ!しょーがない!貰っておいてあげても良いよ!
 今日のアンタの意味不明な行動で溜まったあたしのストレスはこれでチャラにしてあげる!えへへへー」

嬉しそうな顔をしながらダンボールを抱え2階へと駆け上がっていく桐乃。
電光石火とはこの事かっ!しかし、あの反応を見る限り桐乃の物であるとも考え難いが……
しかし、化粧品であると言うならば私には必要がないものだ。幸いに喜んでいる妹を邪魔する程、私も無粋では無いさ。

チャッチャラチャッチャッ~♪(UNION)

その時、私の携帯が再びリズムを刻む。
「私だ」
「グラハム氏。拙者、沙織でござる。荷物は届きましたかな?」
「送り主は君か。それは歌姫の騎士団の旗艦の名を冠したメーカーの箱に入っていたものかな?」
「えぇ、それです。実は住所も電話番号も知っているのですが、きりりん氏の本名を聞いていなかったもので」
「合点が言った。先ほど電光石火のように桐乃が持ち去ったよ。私からも感謝の言葉を送らせて貰おうっ!
 ずいぶんと高いものなのではないか?あの化粧品とやらは。」
「ん?グラハム氏。あの中身は箱とは無関係の全然別の品物ですぞ」

この瞬間、私の第6感が再び危険信号を発している。
そう、この感覚、まさに親父殿に桐乃の趣味がバレそうになったあの日と同様っ!!
虫の知らせというものかっ!

「敢えて聞こう。あの箱は何を内包しているのかとっ!」
「ええ、きりりん氏に頼まれたメルルとシスカリの同人誌でござるよ!それはもうエロエロですぞ!
 グラハム氏もいかがでござるか?」

「なんとっ!!!」

まさにあの箱はラプラスの箱と言うわけか……
この秘密……友人たちの前で披露されたのでは、連邦転覆では済まないぞガンダムッ!!!

「すまない!沙織・バジーナ。私はこれより出撃しなければならないようだ」
「え?グラハム氏?」
「オーバーブーストッ!!!!」

この場は力づくでも納めさせて貰うぞっ!!

音すら置き去りにする速度で階段を駆け上がる。
今、ここで箱が解放されれば……桐乃の秘密は……!!
私は、男の誓いに賭けて、断固阻止するっ!!

ガチャ!なんと!鍵がかかっているだと!?
しかし、その程度の足止めで私が止められると思うなっ!!

「切り捨てごめーーーんん!!!」
私のその辺に置いてあったモップを振う。
どのような得物であっても、今の私には関係ないっ!!
立ち塞がるものは切り捨てるだけだっ!!!

     ザンッ!!!!!

桐乃の部屋のドアは真っ二つとなる。

「へ……?え……えぇぇぇ!?」
「きゃ、きゃああああ!!!」

突然の乱入者に騒然となる桐乃とその友人。
すまないが、今は説明する時間すら惜しい。
ラプラスの箱は既にカッターと言う鍵でその封印を破られようとしていた。間一髪だったな桐乃ッ!!

「ちょ、ちょっと!何勝手に入ってきて……っていうか!何でドアぶっ壊してるのよッ!!!」
「緊急事態故にッ!!!」
「は、はぁ!?訳判んないし!!」
「どのように罵られようと……その箱は返して貰うぞ桐乃ッ!!」
「で、出て行って!!今すぐ!一回くれたもんじゃん!良いから出てけ!」

何とか私を部屋から押し出そうとする桐乃。彼女の行動は理解できる。
しかし、友人が居る前で理由を説明するわけにもいかない。そして私は我慢弱い!
悪いが、時間も無い!ここは私の無理で押し切らせて貰うぞっ!!

「人呼んで……グラハムスペシャルッ!!!」
「へっ!?」

高速機動で桐乃を避ける!そしてそのまま箱をいただくっ!!
唖然とする少女達を背に、私はこの可能性の箱をその手に駆け抜ける!!

「ちょっと!待ちなさいよ!」
「待てと言われて止まるわけにはいかないなっ!!」
「何よ!その言いぐさっ!!人の休日滅茶苦茶にしておいてっ!」
「この箱はまだ解放するわけにはいかないものだっ!」
「意味わかんないしっ!」

流石は陸上部のエースだ。私にここまで着いてくるとは!
ならば……私も奥義を使うほかあるまい!括目せよっ!!

「トランザムッ!!!」

赤い閃光となった私は一気に階段を駆け下りる。
「ま、待ちなさいよ!」
一方、桐乃も更にスピードをあげ……いかんっ!!
「あっ……」
階段を降りながら急加速した桐乃はバランスを崩し転倒した。
その位置から落ちれば……!?箱を放り捨て、桐乃を抱き留める。
しかし、私自身も急加速中での無理な方向転換によりそのまま階段を転がり落ちる事となってしまった。

どしんっ

くっ……日々鍛えた甲斐があったというものだ。
私自身にはさほどダメージは無い。そして私が下となりクッションになった事で桐乃も怪我は無さそうだ。

「あの程度の方向転換に体が耐えられんとはな……」
「……………」

桐乃は黙って私を見つめている。
どうやら状況認識に時間が掛かっているようだ。
幸いにも放り投げたラプラスの箱は、その中身をまだ解放してはいなかった。
今のうちに、箱の中身について説明するべきか。などと私が考えていると

「「きゃーーーーーーーーーーーーー!!!!」」

階段の上より甲高い悲鳴が上がった。
どうやら、この状況を目撃されてしまったようだな。

「へ……?」
桐乃は未だに呆けていたようだ。
そんな桐乃にお構いなしに友人たちは騒ぎ立てる。

「き、桐乃……」
「うっわー!桐乃って兄貴とそういう関係だったの!?兄貴押し倒してるじゃんww」

「ち…ち……ちがーーーーーーーううう!!」

桐乃の叫び声が夕闇に木霊した。
こうして、ラプラスの箱を巡る戦いは終わりを告げた。
しかし……何度、私の顔に泥を塗れば気が済むのだ人生相談ッ!!



桐乃の叫びが木霊してから数時間後――
私は縁側に腰掛け、まだ解放されるべきでは無いラプラスの箱を守り切った満足感に浸りながら
お茶を楽しんでいた。箱の中身……桐乃の秘密を揺るがすであろうソレも何とか伝える事に成功した。
もっとも、桐乃が私を押し倒していたように見えたあの体勢に関しての友人達の言及は留まる事を知らず私自身の釈明も通じたかどうかは、神のみぞ知ると言ったところだ。

特に妹君は、事情を理解したとしても、怒りは納まらなかったらしい。
阿修羅すら凌駕した形相で「追放!追放!!みんなが帰ってくるまで絶対に家に入ってくるな!!」と言い放った。
もちろん断固拒否した。とは言え、私もこれ以上事を荒立てるつもりも無い。
我慢弱い私が我慢出来る時間まではこうして縁側でお茶でも飲んでいることにしたと言うわけだ。
そろそろ数時間が経ち、私の我慢弱さが爆発しそうになった頃

「おじゃましましたぁ~」

桐乃の学友たちが玄関から出ていく所を目撃した。
フッ、どうやら我慢比べは私の勝ちのようだなガンダムッ!!
さて、そろそろ部屋へ戻ろう。私はまだまだ研鑽を積まなければならない。
ラプラスの箱を小脇に抱えると、縁側から立ち上がり玄関へと向かう。

と――そこに一人の少女が戻ってきた。

「あの……」
「何かな?」
「その…箱の事でちょっとお話がっ!」

彼女もこの箱に興味があると見えるっ!
まだラプラスの箱を巡る戦いは終わっていなかったと言う事か。

「この中身は残念だが、開示する事は出来ない。私の誓いに賭けてっ!!」
「い、いや……違うんですよっ!詮索したりするつもりは無くて……その中身についてなんですけど……
 あ、これじゃやっぱり詮索する事になっちゃうのかなぁ」

学友の少女は少し迷っているようだったが、やがて意を決したかのように喋り始めた。

「その箱って、桐乃が自分で開けたらいけないものだったんじゃないですか?」
「勘が鋭いな」
「だって、さっきのお兄さん、桐乃に嫌がらせしているようには見えませんでした。
 凄く必死で……ドアをぶち破っちゃうのはどうかと思いましたけど……
 それくらいしちゃう理由があったんじゃないかなぁって……その……特別な日に渡すプレゼントとか!」
「ナンセンスだな。私はそこまで心尽くす兄では無いよ。その上我慢弱い。」

彼女の推理は的を外している。しかし、この少女の心根は判った。
学校でも良い友人を持ったな!桐乃ッ!!

「そうなんですか?じゃあ、他に何か理由があったんですね!きっと!!
 それが何なのかわたしには判りません。でも……我慢弱くてもどうか桐乃の事許してあげて下さい!
 わたしなんかがお兄さんに言える事じゃないかもですけど、あの娘ちょっと我の強い所ありますから!」
「熟知している」

彼女の我の強さに関してはな!

「だけどっ!本気でお兄さんの事嫌ってるわけじゃないと思うんですよ!」
「忠告には感謝しよう。その言葉、心に留めておくよ。桐乃の事……これからも宜しく頼む」
「もちろんですっ!わたしたち親友ですから!」

私は安心していた。このような友人が居るのならば敢えて隠す必要も無かったのかもしれない。
彼女ならば、箱を解放しても……フッ、それは分が悪い賭けであると思い直させて貰おうっ!!

「そうだっ!折角知り合えたんですからアドレス交換しましょう!」

最近の女子中学生と言うのは、身持ちが軽いなガンダム!!
ピッ――赤外線通信により瞬時にこの作業は達成された。

「改めて言おう。私は高坂京介。乙女座の17歳だ。君は?」
「え、ええっと……申し遅れました。わたし新垣あやせです。」

走り去っていく彼女を見つめながら思った。
新たな出会い、これは私にとってどのような運命を運んで来るのか。
今の私にはまだ図りかねると言わせて貰おうっ!!だが直感は告げている。
この出会いもまたセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられないとっ!

などと考えていると玄関の扉が開き、桐乃が姿を現す。
ほう、その表情!まだまだ怒りは冷めやらぬと見えるな桐乃!!

「先ほどの説明では不満かな」
「事情は判ったけど、他にやり方は無かったの?」
「敢えて言おう!!最善の策だったと!君もこの眠り姫、起こすわけにはいかなかっただろう?」
「ま、まぁ…そうだけどさ……」

仮にラプラスの箱の解放がなっていた場合……その後の歴史に変革は起きたのか。
その結論は我等の同胞たるガンダムUC(3月5日より第3話先行上映開始)に結論は任せる事にしよう。

「でも……そうなったのは、そもそもあんたがこっそり沙織と仲良くなったりしたからややこしい事になったんでしょ!」

沙織・バジーナより送られてきたメルルの同人誌を興味津々に見ながら理不尽な事を言うっ!

「その漫画……表紙からして破廉恥だぞ桐乃ッ!」
「う、うっさい!あんんたこそ何よ!人の部屋のドアぶっ壊しちゃって!」
「緊急事態故にと言ったはずだ!」
「責任とってよ。あたしの友達の前で恥かかせたんだから」
「ドアならば、後で修復しよう。私も万能では無いが、それくらいの日曜大工ならやらせて貰おう!」

この仕事はフラッグの整備の手伝い以上の大仕事になる事は無いと確信している。

「ふん……それも当然して貰うけど。今年の夏、あたし忙しくてあんまり遊んでる暇無いのよね。夏休みの後半は――」

突然そんな事を言い出す桐乃。ドア破壊の責任との繋がりが見えてこないが
しかし、言いたい事は理解した。我慢弱い私は、彼女の言葉が終わる前に己の意志を紡ぐ。

「承知した」
「へ?まだ……」
「敢えて言う必要も無いだろう。君は、その少ない時間でどこかに遊びに行きたい。望むところだと言わせて貰おう」
「ふ……ふん、判ってるじゃない」

これくらいの無理ならば道理をこじ開ける必要も無い。
さて、どこへ行くか。山に修業に行くか、海に修業に行くか。

「海か、山と言ったところか」
「だ、だからそういう所だったらあやせと行くっての!あんたと行ったら絶対に嫌な予感するから……」
「ならば、どこへエスコートすれば良いのかな?」
「そ、それを自分で考えなさいよ」

相変わらず気難しいお姫様だなっ!!

「良いだろう。ならば高坂桐乃に宣誓しよう
 私、グラハム・エーカーは、君を楽しませるプランを提示する事を!!」
「いちいちでかい声出すなっ!……ふ、ふん、別に楽しみにしてないから」

さて、宣誓した以上は私の誓いに訂正は無い。
この国。日本の夏の文化を堪能するだけのプラン導き出すっ!
この気持ち……まさしく、意地だっ!!!



早朝だと言うのに既に灼熱と呼ぶに相応しい気温の中、まるで修行僧のようにとある目的地までの道程を並ぶ若者達。
彼らを突き動かすその気持ち、まさしく愛だっ!

私、グラハム・エーカーは、妹である高坂桐乃そして久方ぶりに行動を共にする沙織・バジーナと黒い少女と共に延々と続くこの行列の中にいた。

始発電車を乗り継ぎここまでやってきたが、私達が到着した朝6:30の時点で既にこの場には長蛇の列は形成されていた。
これより早い時間から並び続けるサムライ達の信念は驚嘆にも値する。
数千どころではない――これだけの人数の精鋭が揃うとはなっ!!

「ちょっとぉ、まだ開場してないってのに何このふざけた人ごみは……あたし我慢弱いんだけど~」
「奇遇だな桐乃。私も君と同様に我慢弱い男だっ!!」

盆を明けた夏休みのある日。私達が今、居る場所、察しの良いフラッグファイターである諸君には既に判っているだろう。
そう私たちは、今戦場にいるっ!夏のコミックマーケットと言う名のな!!

「あー、つまんないつまんない!何であたしが朝っぱらからこんな暑苦しいところに来なきゃいけないわけぇ?ねえ、聞いてる?」
「こういう言葉がある。心頭滅却すれば火もまた涼しと……君に贈ろう」

未だにブツブツと言いながら、携帯ゲーム機にてゲームを始める桐乃。正しい選択だと言わせて貰おう。
身一つで戦場に乗り込んだ私はしばし、瞑想にふけりこの時を過ごすとしようか。

ちなみにこのコミックマーケットへの参加を決めたのは私自身だ。

話は数日前に遡る。
私は夏季休業という有意義な時間を用いてシスカリプスの研鑽に励むと共に桐乃へ宣誓した言葉に従い、この夏を満喫するプランを練っていた。と言っても私に考え付く事では、桐乃は満足しないだろう。
この世界の軍事演習の見学が女子中学生である彼女に受けるとは流石の私でも思ってはいないよ。
提案はしてみたのだが、私の予想通りだったと付け加えておこう。

煮詰まっていた私は沙織・バジーナに助言を求めた。
私が一人で幾ら考えるよりも、桐乃により近い趣味を持つ人間の考えの方が、彼女の喜ぶアイディアも出るというものだっ!

「ほう?夏休みを満喫するプランでござるか」
「無茶な頼みだと承知しているが、君の意見を聞きたい」
「はっはっは!そういう事でしたら丁度良かった。拙者、夏コミにグラハム氏ときりりん氏をお誘いしようと思っていた所でして」
「なつこみ……?詳しく聞かせて貰おうか」
「はい、夏コミと言うのはですな―――」

そして提示されたのがこの、八月の中旬金土日を使って開けるオタク達の祭典、コミックマーケットへの参加であった。
沙織・バジーナの説明を要約すれば、それはオタク達が己の信念を賭けて、望む商品を手に入れるべく帆走する、まさに戦場との事であった。

面白い……ならば、私グラハム・エーカーも全力を以ってこの戦場に臨もう。再びそのような戦場に出会えるとは……心躍るなっ!

「きりりん氏とグラハム氏の良き思い出になるように拙者も全力を尽くしますので是非に!」

私まで楽しませてくれるという彼女の心遣いに感謝しつつ、既に興が乗っている私は二つ返事でこの提案を呑んだのであった。

「それでは、君の言葉に甘えさせて貰うとしよう。盆は家族で墓参りがあるため、参加するのは出来れば日曜日だとありがたいのだが」
「ええ、ええ。3日目に出撃出来るのでしたらバッチリでござる。では、これから黒猫氏もお誘いしますので、詳細は後日改めて詰めていきましょうぞ」

そう、こうして私の……いや、私達の戦場への参戦が決まったのだ。
会場最寄である国際展示場駅に到着したのは、今より2時間ほど前、6時30分頃。

「うわ……物凄い人いるんだけど……これみんな行くわけ?」
「はっはっは!まだまだこれから集まって参りますぞ」
「ふっ、この程度怖気づいたのかしら?」

桐乃が、戦場を目の前に感想を漏らす。初参加である彼女は、どうやら面食らっている様子。
尤も、私も人の事など言えないが。これ程の密集。まるでELSをも彷彿とさせる。
沙織・バジーナと黒い少女に関しては戦いなれた戦場と言ったところか。歴戦の戦士さながらの貫録を醸し出している。

既に若干動揺を隠せない桐乃、しかし、戦場へ足を踏み入れる以上、覚悟は必要だ!
この戦いが長丁場になる事は、事前情報により私は確信している。
ここは、士気を高めてこの戦いに臨むべきであると言わせて頂こうっ!

そして、士気を高めるべく私は国際展示場駅前にて高らかに宣誓した。

「『オタクっ娘集まれ~』の精鋭に通達する。これから出向く戦場では諸君らの命を懸けて貰う事になる。
 だが、敢えて言おう……死ぬなよ!」

「流石はグラハム氏。気合十分でござりますな」
「ふ……敢えて言われるまでも無いわ……闇の住人たる私はこの程度の熱気では滅する事は出来ないわ」
「キモ……死ぬわけないじゃん」

さて、士気も高まったところで、行くぞ!

「全機!フルブラストッ!!!」
「お、おおーーー!グラハム氏ーー!走ってはダメでござるよーーーー!!」


――そして現在に至る。時刻は午前9時を回ったところか。
空は快晴。この暑さ、まさに夏だっ!!太陽が照りつける中、人の密集も有り敢えて言うまでもなく、まるで砂漠にいるかのようだ。
思い出すなガンダム、あの熱い砂漠での激戦を。

「はぁ……死ぬ……暑すぎ……なんか臭いし……ほんと死ぬ……」
「敢えて言った筈だ……!」

「いやー、この3日間でも一番暑いですな、今日は」
「天気予報では曇りだったのだけれどね……」

どんな天気予報であろうと、晴れ男の私が居る限り晴れは覆せんよ!


開場まで残り1時間ほど。私同様に我慢弱い妹が我慢してくれれば良いのだがな。
それにしても凄い人数だ。私は辺りを見回す。集まった精鋭達は携帯ゲームに興じている者.

この戦いでその手に勝利を掴むためカタログを手に入念な準備を行う者、それぞれだ。
桐乃はと言うと、黒い少女と一緒に携帯ゲーム機にて狩猟に興じているようだ。
何だかんだと文句を言いながらも、大人しくゲームをしつつ待っているのを見ると
私の選択はあながち間違ってはいなかったと言わせて貰おう。


さてと…私も、参加するからにはこの戦場を戦い抜くだけの知識を得ておく必要があるだろう。
鈍器としても使用出来そうな厚いカタログに、目を落とす。基本的には、同人誌と呼ばれる
ファンによる創作本をまた別のファンが買うと言うのが大まかな趣旨ではある事は理解している。
私も、桐乃の影響で様々なゲームをクリアした。そういった関係の本でも買ってみるのも一興かもしれない。

そんな事を考えながらページをめくっていく

「ん?これは……」

私の視線はとあるサークルに釘付けにされた。
そこには運命の赤い糸に手繰り寄せられたとしか思えない文字が躍っていた。


【グラハム×刹那】


………
…………

「……………今日の私は阿修羅すら凌駕する存在だっ!!!」

「おおっ!何だか突然凄い気合でござるなグラハム氏!
 お目当てでも見つかりましたかな?」

言うまでも無い!!乙女座の私は、このイベントにセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられないっ!
今日と言う機会を与えてくれた君に感謝しよう!!

沙織・バジーナが私の視線を未だ釘付けにするカタログを覗き込む。

「おや?このサークルでござるか?でも、このページは2日目の分でござりますな。
 残念ながら今日は3日目なのですよ」

「き、聞いて無いぞ!!ガンダムっ!!」

どうやら運命の女神は、私の事を嫌っているらしいな。

そんな私の心を折りかねない事件より数十分。ようやく列は少しずつ動きだした。
周囲の熱気は相変わらずだ。こうして動き出すと汗も吹き出し消耗もしていく。
何時までも終ったことに引きずられていては、私自身不覚を取りかねないな。
再び己に気合を入れなおす。また新たなめぐりあいもこの戦場の中ではあるだろう!
それを求めて行くのみっ!!

「このクソ猫!あたしの射撃中にミノフスキー粒子ばらまくのやめなさいよ!」
「お黙りなさいビッチ。覚えておきなさいな、射撃戦を得意とするフリーダム相手にはミノフスキー粒子がとても有効なのよ」
「さっきからあたしも巻き込まれて全然射撃当たらないのよ!そんなんだからKaiの掲示板でネームさらされてるのよ!」
「そ、それはきっと同姓同名の別人に違いないわ……」
「はっ!†漆黒の堕天聖†みたいな厨ネーム他にいるわけないって!恰好良いと思ってるの?恥ずかしいからやめたほうが良いよ?」
「ハッ――思ってるわよ?悪い?何が恰好良くて何が恰好悪いかなんてのはね、私が自分で決めるわ」
「エースパイロットらしくて、私は悪くないと思うが、そろそろ動く時間だ。」

そろそろ列の動きも激しくなってきた。モビルスーツハンターで遊んでる暇はないぞ二人ともっ!喧嘩中の二人を仲裁しつつ前に進むように促す

「「気安く触らないで」」
「何と罵られようと、この流れには従わせて貰うぞ二人とも!!」

こういう時の連携……何だかんだと言いながらやはり似た者同士と言う事か!

「出来るだけ前につめてくれって言っているだろうっ!!どうしてそれが判らないんだっ!そんな大人修正してやるっ!!!」
「どうしてそんなにエロ本が欲しいんだあんた達はーーーーーー!!!」

スタッフもこれだけの人数の大移動を捌くのは大変だと見える。かなり必死の形相で実に大変そうだ。労わせて貰うぞスタッフ!!
スタッフの必死の誘導もありゆっくりと人ごみは動いていく。列の目指す先は東京ビッグサイト!いよいよ開戦と言うわけだな。
東京ビッグサイトに繋がる階段を上りきったところで黒い少女が沙織・バジーナへと話しかけた。

「……今日は東館から回るという事でよかったのかしら?」
「ええ、まずはイベントの実質メインである同人誌即売会からですな」
「この祭りの中心地と言うわけか。」

先ほどの本が2日目と言うのは残念ではあったが、この会場にいる人間全てで作り上げる祭りというものには興味以上の感情を抱く。目的地が決まったならば後は行くのみっ!

こうして長時間に及ぶ列を抜け、ついに私たちは東京ビッグサイトの中に参上した。

「うわっ……」

まず声をあげたのは桐乃だった。
確かに、このエントランス、満員電車と言っても過言ではないっ!日本人は狭い所に閉じ込められるのが好きと見えるなっ!

「敢えて言おう……はぐれるなよ!」
「誰が……!てか外より暑いし臭いじゃない!やだも~冷房きかないのここ」

さて、果たして私は、この戦場で彼女を満足させる事が出来るのかな。





126 : ◆TYIbS5r7nc :2011/02/25(金) 02:22:53.81 ID:LCGAOIwjo
今日はこの辺で眠らせて頂こう!それでは!


160 :◆TYIbS5r7nc [sage]:2011/03/16(水) 23:04:07.67 ID:BISMohplo
心配かけて申し訳ないという言葉を謹んで送らせて貰おう!
東北在住では無いのだが、この震災の関係で仕事が忙しく時間が取れないでいる。
多分、連休は時間が取れると思うので、申し訳ないがもう少々お待ち下さい。


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