翔一「転校生の仮面ライダーアギトです!」巴マミ「あ、アギ……?」 その1

2011年03月10日 19:58

翔一「転校生の仮面ライダーアギトです!」巴マミ「あ、アギ……?」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 05:31:28.09 ID:9tYFcurN0


※『魔法少女まどか☆マギカ』と『仮面ライダーアギト』のクロスSSスレです

※クロスオーバーに伴なう原作改変あり注意

※この作品のアギトは津上翔一でも芦河ショウイチでもありません
 言ってしまえば、上記2人とはまた違う世界の仮面ライダーアギトです

※ちなみに、主人公の名前やアギトの外見的特徴見てもらえれば、分かる人にはだいたい分かると思うけど、
 この作品のアギトは津上アギトとアナザーアギト(木野アギト)の中間みたいな感じのアギトです
 フォームチェンジはさせようか、今のところはまだ考え中
 あと、アギト以外のライダーだと今のところギルスは出す予定


翔一「転校してきた沢野翔一です! これからよろしくお願いします!」

マミ(突然の転校生か……。3年生時に転校だなんて、進路とかいろいろ大変でしょうね。まぁ、私にはあまり関係がないことかもしれないけど……)

先生「あ~……実はな、沢野。何せ本当に突然の転校だったものだから、まだお前の席の用意が出来ていないんだ……」

翔一「えっ!? そうなんですか?」

先生「あぁ。だから、しばらくの間は、あそこの席を使ってもらえるか?」

 そう言いながらマミの隣の開いている机を指差す先生。

マミ(!?)

翔一「ハイ、わかりました!」

マミ「…………」

翔一「はじめまして。これからよろしくお願いします」

マミ「え、えぇ……。こちらこそ……」

マミ(……こういうこともあるわよね)


 その日の夜…

マミ「さてと……」

キュゥべえ『やぁ、マミ』

マミ「あら、キュゥべえ。どうしたの、こんな時間に? ……何かあった?」

キュゥべえ『う~ん……別に大したことじゃないんだけどね。新しい魔法少女の候補者をこの街で見つけたんだ』

マミ「まぁ……」

キュゥべえ『近いうちにその子と接触してみようと思うんだけど、もし契約を交わすことができたら、マミにも紹介するよ』

マミ「で、今回はその事前報告ってワケ?」

キュゥべえ『そういう事になるね。じゃあ、僕は行かないと。マミはこれからいつもの魔女探しだろう? 気をつけてね』

マミ「えぇ、ありがとう」

マミ「よし、じゃあ私も……!? 早速ソウルジェムに反応!?」

 その台詞とほぼ同時に展開される、視聴者には今やすっかりお馴染みのイヌカレー空間。

マミ「あれは……使い魔か。でも、放っておくわけにもいかないわね」

 瞬時に魔法少女の姿に変身するマミ。

マミ「さぁ、行くわよ!」

 マジカルマスケット銃を取り出し、戦闘態勢に入るマミ。

 しかし……

???「はあああああっ!」

マミ「……へっ?」

 突然、乱入してきた何者かがキック――それも飛び蹴り――で使い魔を蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばされた使い魔は、地面に勢い良く落ちると同時に爆発を起こし、消滅する。

マミ「嘘……」

マミ「…………」

???「…………」

マミ(黄金の……怪人……?)

 目の前にいる存在をマミは上手く表現することが出来ない。
 なぜなら、それは明らかに人間でも魔法少女でも、ましては魔女や使い魔とも異なる外見をしているからだ。

 二足で直立しているが、ヒトや哺乳類というよりは、虫かは虫類を思わせる姿。
 身体の基本色は金色で、所々が黒く、人間よりも大きな瞳の色は赤い。
 両肩の肩甲骨の辺りからはマントもしくはマフラーのような羽が出ており、さらに腕と足には爪のような器官が刃物のように突き出ていた。
 そして、何よりもマミの目に止まったのが、額のあたりにある一見昆虫の触角のようにも思える一対のツノだった。

マミ「……あなた、何者?」

 目の前にいる存在に人間の言葉がわかるのかは正直疑問なところだが、思わずそう呼びかける。

???「…………」

 だが、謎の怪人は終始無言で、マミを黙って見つめているだけだった。
 ――が、しばらくすると、黙って後ろに振り返り、そのままその場を立ち去ろうと歩き出した。

マミ「あっ!? 待って! ……あら?」

 追いかけようとするが、その時、足元に何かが落ちていることに気づく。

マミ「これって……うちの学校の生徒手帳? 何でこんな所に?」

 拾って、落とし主の名前を確認してみる。

マミ「えっ、『沢野翔一』!? どうして、今日うちのクラスに転校してきた彼の生徒手帳が……!?」



OP
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 翌日

翔一「あっれ~? やっぱりないな~」

マミ「おはよう、沢野くん」

翔一「あっ、巴さん。おはようございます!」

マミ「何か探し物?」

翔一「え、えぇ、まぁ……」

マミ「はい、コレ。落とし物よ」

翔一「あぁっ!? 俺の生徒手帳! ありがとうございます! コレを探していたんですよ!」

マミ「これからは気をつけてね」

翔一「ハイ、気をつけます」

マミ(…………まさかね)

翔一「? どうしました?」

マミ「えっ? あ、いや、何も……」

翔一「あっ! もしかして、コレが気になっちゃいました?」

 そう言って、足元に置かれていた風呂敷に包まれた何やら大きな箱のようなものを見せる翔一。

マミ「それは?」

翔一「今日のお昼のお弁当です!」

マミ「……まさか、それを全部一人で?」

翔一「いやいや。さすがに俺でもこれを全部お昼休みに食べきることはできませんよ」

マミ「じゃあ、どうして……」

翔一「恥ずかしながら、ちょっと張り切りすぎて作り過ぎちゃって……。せっかくだからクラスの皆にも食べてもらおうと思って……」

マミ「作った……自分で作ったの?」

翔一「はい! 俺こう見えて家事とか料理とか得意なんです! むしろ俺にとっては趣味みたいなものですかね?」

マミ「へぇ……。お昼休みになったら私も少しいただいてもいいかしら?」

翔一「はい! 喜んで!」

マミ(…………やっぱり、私の気のせいよね)


 お昼休み

翔一「いや~。クラスの皆も喜んでくれているみたいで何よりです」

マミ「そうね。他のクラスの人たちも何人か来ていたし……」

翔一「そういえば、巴さんも太巻き食べてくれましたね。いかがでした?」

マミ「えぇ。自分でも分からないけど、何故か見た瞬間、無性にかぶり付いてやりたくなって……じゃなくて、とても美味しかったわ。ありがとう」

翔一「そう言ってもらえると嬉しいです! 料理を作る者としては、やっぱり自分で食べるよりも、誰かに食べてもらうほうが良いですから……」

マミ「……ねぇ、沢野くん」

翔一「はい? 何でしょう?」

マミ「いきなりこんなことを聞くのも変かもいれないけど、あなた……魔法とか超能力とか信じる?」

翔一「えっ?」

マミ「…………」

翔一「…………」

マミ(や、やだ……。私ったら、なんて質問をしているのかしら。絶対に変な子だと思われたかも……!)

翔一「信じないです」

マミ「えっ?」

翔一「魔法とか超能力とか、そんなものは信じません」

マミ「あ、あぁ……。そ、そうよね。さすがに信じな……」

翔一「あっ! やっぱり信じます!」

マミ「……は?」

翔一「やっぱり、魔法とか超能力とか、そういったもの信じます!」

マミ「ど、どうして?」

翔一「実際、俺が魔法や超能力っぽいことが出来るからです!」

マミ「!?」

翔一「だから……俺、魔法や超能力信じます!」

マミ(まさか、本当に……!?)

翔一「? 巴さん、どうしました?」

マミ「えっ? ……あ、あぁ、何でもないわ。何でも……」

翔一「……もしかして、巴さんってオカルト研究会とかそういったクラブの人ですか?」

マミ「え、ええ……。そう思ってくれて構わないわ」



マミ(……やっぱり、もう少しさぐりを入れてみようかしら?)



 遥か昔。

 宇宙にはただ混沌があり、テオスはその混沌より生まれ混沌を闇によって黒一色に染め秩序を作った。

 そして、星々を闇に浮かばせ光を生んだ――



マミ(結局あの後は何も聞けず仕舞いだったわね……)

マミ「まぁ、明日になったらまた聞いてみればいいわね」

キュゥべえ『マミ、大変だ!』

マミ『!? キュゥべえ、どうしたの!?』

キュゥべえ『孵化しかかっているグリーフシードを見つけたんだ! 今君がいる場所からそう遠くない、すぐに来て!』

マミ『わかったわ! すぐに行くから、キュゥべえはそこで待ってて!』



翔一「さてと。夕飯のおかずの材料を買って帰らないと……アレ?」

マミ「――――!」

翔一(巴さん……? 何か妙に真剣そうな顔して走っていったけど、どうしたんだろう?)

 ―――キィン! キィィィン!

翔一「!?」

 キィン! キィン! キィィィン!

翔一「…………」



キュゥべえ「マミ!」

マミ「キュゥべえ、グリーフシードの様子は!?」

キュゥべえ「まだ結界も出来ていないけど……出来上がるのも時間の問題だ」

マミ「それなら、結界が出来上がると同時に一気に突入して片を付けましょう」

キュゥべえ「いや、結界内で魔力を使ったらグリーフシードを刺激して孵化を早めてしまう危険性もある。ここは……!?」

マミ「? どうしたの?」

 突然、何かに気づいたキュゥべえが後ろに振り返る。
 それにつられてマミも視線を背後へと向けると――――

マミ「……なに、あれ?」

 奇妙な光景だった。
 まだ空も暗くなっておらず、日も沈みきっていないのに、周囲の光景が見えなくなるほどの目映ゆい光がそこには広がっていた。
 いや、それどころか、その光は少しずつマミたちの方へと近づいてきていた。

マミ「光が……近づいて……」

キュゥべえ「あれは……まさか……!?」

???「…………」

マミ「あれは、昨日の……」

キュゥべえ「アギト!」

マミ「キュゥべえ、知っているの!? ……『アギト』? それがあの怪人の名前……なの?」

アギト「…………」

マミ「あ……。いつの間にか光が……」

キュゥべえ『マミ、あいつは危険だ! これ以上、あいつをグリーフシードに近づけちゃいけない!』

マミ『えっ? どういうこと?』

アギト「――――!」

キュゥべえ「マミ!」

マミ「あ……」



翔一「……ふぁ。……あれ? 俺いつの間に家に帰ってきてたんだ?」

翔一「…………」

翔一「……」

翔一「……ま、いいか。って、もうこんな時間!? 急いで夕飯の準備しないと……!」



 翌日――

翔一「おはようございます!」

マミ「あ……。お、おはよう、沢野くん」

翔一「? どうしたんですか、巴さん? なんか昨日と比べて元気無さそうですよ?」

マミ「そ、そう?」

翔一「あ! さては、朝ご飯ちゃんと食べて学校に来ませんでしたね?」

マミ「えっ?」

翔一「駄目ですよ、ちゃんと朝食は取らないと。一日の元気は朝ご飯ですからね」

マミ(…………)

マミ「……ねぇ、沢野くん」

翔一「はい、何でしょう?」

マミ「昨日の話の続きなんだけど……」

翔一「昨日の話?」

マミ「ほら。あなたは魔法や超能力を信じるっていう……」

翔一「あぁ。あのことですか」

マミ「あなた……確か魔法や超能力みたいな力を持っているって言ってたわよね?」

翔一「はい!」

マミ「もしよかったら、教えてくれないかしら? 一体、あなたはどんな力を持っているの?」

翔一「ん~……。魔法とか超能力とは厳密に言うと違うような気がしますけど……」

マミ「……それって、今ここで見せてもらえる?」

翔一「あぁ、それは無理です」

マミ「何故?」

翔一「実は、俺自身もこの力についてはよくわかってないんですよ」

マミ「……はい?」

翔一「いや~、何といいますか……。力を制御仕切れていないって言うか……。あ、でも、『力がある』っていうことだけは確かです!」

マミ「…………」

翔一「それに、仮に力を制御できたとしても、さすがに今は見せられないでしょうね。きっと巴さんやクラスの皆も驚いちゃうでしょうし……」

マミ「……じゃ、じゃあ、具体的にはどんな力なのかくらいは教えて貰えないかしら?」

翔一「はい! 強くなります!」

マミ「……へ?」

翔一「だから、強くなるんですよ。そして、パンチやキックで相手と戦うんです!」

マミ「……もしかして私のことからかってる?」

翔一「からかってるだなんてとんでもない! 嘘偽りない本当のことです!」


 昼休み

マミ「……はぁ」

キュゥべえ『何やら今日はお疲れみたいだね、マミ』

マミ『? キュゥべえ?』

キュゥべえ『ちょうど近くに来ていたから様子を見に来たんだけど……』

マミ『え、えぇ……。ちょっと精神的にね……』

キュゥべえ『大丈夫かい? まだ僕の方も先日言った魔法少女候補の子と接触できていないんだ。だから、この街はまだ君1人に守ってもらわないと……』

マミ『あぁ、それなら大丈夫。さすがに魔法少女としての活動に支障をきたす程の問題じゃないから……』

キュゥべえ『そうかい? それならいいけど……』

マミ『それに、キュゥべえ』

キュゥべえ『なに?』

マミ『あなた、自分がその魔法少女候補の子と接触できたら即契約に取り付けるかのような物言いだけど、そう簡単に物事というのは進まないものよ』

キュゥべえ『厳しいなぁマミは……。おっと、それじゃあ僕はこのあたりで失礼するよ』

マミ『えぇ。それじゃあ、またね』

翔一「只今戻りました~!」

マミ「あら、お帰りなさい。どこへ行っていたの?」

翔一「いや~、料理研究部の人たちに是非うちの部に来てくれないかってスカウトされちゃって……」

マミ「あら? 沢野くんにはぴっちゃりなんじゃない?」

翔一「そうなんですけど、断っちゃいました。もう3年生だし、今更部活に入部してもそう長くは在籍できませんから」

マミ「そう……」

翔一「それに、俺には他にやるべきことがありますから」

マミ「……やるべきこと?」

翔一「はい! ……あっ、そういえば、巴さん、実は今そこの廊下で俺おかしなものを見ましたよ」

マミ「おかしなもの?」

翔一「えぇ。なんか白くて尻尾が長い犬だか猫だかわからない変な生き物が、俺や他の生徒達の足元をぴゅ~っと走り去っていったんです」

マミ「!?」

翔一「なんか俺以外の人は全然驚いた様子じゃなかったけど……。本当にあれなんだったのかな~?」

マミ(キュゥべえが見えている……!? まさか……本当に何か特別な力を持っているの……!?)


 放課後

 マミは昨日、孵化しかけていたグリーフシードがあった場所に来ていた。
 しかし、今現在そこにはもうグリーフシードはない。

マミ「やっぱり……。魔女やグリーフシードの反応はおろか、魔力の残塊すら残ってない……」

 マミの手のひらに乗せられている彼女のソウルジェムは今現在何の反応も示していなかった。

マミ「……『アギト』」

マミ(昨日、あの時――――)



マミ「あ……」

アギト「――――!」

 一瞬の出来事だった。
 マミが気づいたころには、すでにキュゥべえから『アギト』と呼ばれていた黄金の怪人は、彼女の視界から姿を消していた。

キュゥべえ「マミ、後ろだ!」

マミ「!」

 マミはしまった、と思い。振り返りながら咄嗟に守りの体制に入る。
 だが、肝心の相手からの攻撃はなかった。

マミ「あれ?」

キュゥべえ「グリーフシードが!」

マミ「あっ!」

 そう。アギトの狙いは最初からグリーフシードだったのである。
 だが、そのグリーフシードは、アギトの接近を感知したのか、すぐさま周囲に結界を形成していく。

マミ「結界が!」

キュゥべえ「マズい! このままアギトが結界内に入ってしまったら、あいつの力に反応して確実に魔女が孵化してしまう!」

アギト「…………」

マミ「えっ?」

Believe Yourself
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 突然、結界を前にアギトがその場で足を止めた。
 そして、次の瞬間には、その場で静かに腰を落としていき、何やら空手の型のようにも見える構えをとる。

マミ「な、何を……」

キュゥべえ「まさか……」

アギト「――!」

マミ「!? ツノが!」

 アギトは、一呼吸済ませたかのような動きを見せると、今度は自身の額部にある一対のツノ――クロスホーンが開く。
 当初2本だったツノはこれで計6本となった。

マミ「…………」

 ただ、ツノが展開しただけ――それなのに、マミには今目の前にいるアギトの動きひとつひとつがこれまで自身が戦ってきた魔女と同等かソレ以上の悍ましいモノに感じられた。

アギト「…………!!」

 やがて、アギトの足元に光り輝く紋章のようなモノが徐々に浮かび上がる。
 目の前では魔女の結界がみるみるうちに展開されているというのに、全く関係ないと言わんばかりにアギトの動きにブレ等は見られなかった。

 ――無の境地。
 マミの脳裏にふとそのような言葉が浮かび上がった。

 やがて、アギトの足元に浮かんでいた紋章は渦へと形を変え、アギトの右足へと収束していく。
 同時に、アギトの両肩にあるマフラー状の羽が風も吹いていないのにふわりと浮かび、はためき始めた。

 そして、すり足で右足を前、左足を後ろへと移動させ、落としていた腰をさらに深く落とす。

 ――ほんの一瞬ばかり、場がシンと静まり返る。
 そして――

アギト「はああああああああああっ!!」

 跳躍。
 まるで己の黄金の肉体そのものを一本の矢の如く、右足を前へと伸ばしながら、アギトは結界へと飛び込んだ。

 再び静まり返る場。
 だが、数秒経過したところで、結界の内部から外にいるマミたちからも視覚出来るほどの光が溢れ出した。

 ――やがて、結界は陽炎のようにゆらゆらと揺れながら徐々に消え去っていった。
 結界が消え去ると、そこには二つの足で立ち、右手を前に伸ばし、左手を腰のあたりに添えながら静止している黄金の怪人――アギトの姿があった。

アギト「…………」

 結界が完全に消滅したのを確認すると、アギトは構えを解き、先日の時のようにその場を歩き去ろうとする。

キュゥべえ「待て、アギト!」

 ――だが、今回はそんなアギトの前にキュゥべえが立ちはだかり、強引に引き止めようとする。

アギト「…………」

 しかし、アギトの方はそんなキュゥべえに一瞥することもなく、彼(?)の横を素通りして何処かへと歩き去っていった。

マミ「…………」

 目の前の出来事に完全に呆けてしまっていたマミが正気を取り戻したのは、アギトが完全にその場を立ち去り、少しばかり時計の秒針が進んだ頃だった。

マミ「キュゥべえ……一体、何が起きたの? 結界は? 魔女は? グリーフシードは……?」

キュゥべえ「……マミ、今から僕の言う事をよく聞いて欲しい」

マミ「……何?」

キュゥべえ「グリーフシードはアギトがあの結界に飛び込んだ瞬間、間違いなく孵化したと思う。だけど……」

マミ「だけど……?」

キュゥべえ「アギトは……『結界ごと』その魔女を破壊したんだ。まだ作られて間もない、生まれたての魔女が作った結界だからこそできたことだろうけど……」

マミ「――――」

 キュゥべえから語られたその言語をマミは最初理解することができなかった。

 魔女は常に自身の巣である結界の奥に隠れ潜み、絶望という名の『呪い』を結界の外にいる人間たちに撒き散らす。
 そのため、キュゥべえと契約した魔法少女たちは、魔女を討滅する場合はその結界の中に乗り込み、魔女のいる最深部へと向かう必要がある。
 だが、最深部までには魔女を護る下僕たちや一種の迷宮である結界そのものが立ちふさがり、侵入者である魔法少女に襲い掛かるのだ。
 魔法少女の中には、最深部に辿り着く前に結界内で力尽き、果てていった者も少なくない。

 だが、先程のアギトが行ったのは、まるで魔法少女たちのそういった行為そのものを嘲笑うかのような、正直言って出鱈目な手法だった。

 ――『魔女を討つために、魔女が隠れ潜んでいる結界そのものを破壊する』。
 例えるなら、それは一匹の女王蜂を討つために、殺虫剤で巣にいる蜂を一匹一匹殺していくのに対して、蜂の巣そのものにナパーム弾をぶち込んで巣ごと焼き殺すようなものである。
 当然、例えの場合、魔法少女は当然前者だ。
 いくらなんでも滅茶苦茶である。

マミ「……じゃあ、グリーフシードも……」

キュゥべえ「当然手に入るわけないよ。結界の内部にあったものは、みんな結界と一緒に消え去ってしまっただろうからね」

マミ「…………」

キュゥべえ「まぁ、僕らが結界の中に入る前にアギトが現れてくれたのが唯一の救いだね。正直、運が良かったとしか言い様がないよ」

マミ「……教えて……」

キュゥべえ「ん?」

マミ「教えて。あいつは何者なの? キュゥべえはあいつのことをどれくらい知っているの?」

キュゥべえ「……僕の口から説明できることも限られているよ?」

マミ「構わないわ」

キュゥべえ「――『アギト』は、この世界を生み出した神から強力な力を授けられた存在だ。その力は人間はおろか、神の眷属にも勝るとも言われている」

マミ「この世界を生み出した……神様……」



 テオスは、生み出した幾多の光のうちのひとつに、自らを象って人間を作り、自らの分身であるマラークたちを象り獣を作った。

 やがて、人間たちはマラークの子である獣たちを家畜とし、その肉を喰らうようになった。

 マラークたちはこれを人間の驕り高ぶりとして怒り、テオスに血で汚れた人間たちの断罪を訴えるが、テオスはこれを取り合わなかった。


 ――テオスは分身である自分たちよりも、自らの姿に近い人の子を愛しているのか?


 やがて、マラークは怒りと嫉妬心から、人間たちと争うようになった。

 戦いはテオスの分身たるマラークの一方的な優勢であったことは言うまでもない――

 これに同情した7人のマラーク・エルロードの1人、火のプロメスは、マラークたちを裏切り、人間の娘と交わった。

 そして、人間の娘に孕ませた自身の子・ネフィリムを人間たちの力とした。



マミ「……『アギト』、あなたは私たちの味方なの? それとも……」



マミ「大丈夫!? しっかりして!」

???「あ……。うぁ……」

 その日、キュゥべえと契約した魔法少女・巴マミは1人の少年を助けていた――

 魔女の呪いによって引き起こされた交通事故。それに、目の前にいる少年は巻き込まれた。

 ――いや、正確に言うと巻き込まれたのは、彼とその家族だった。
 マミが魔女の気配を察知し、現場へ駆けつけた頃にはすでに手遅れであった。

 だから、マミは目の前にいる少年だけでも――助けられるものだけでも助けたかった。

 すでに事故現場には多くの野次馬が集まってきていた。
 そのため、さすがのマミでもこんな所で堂々と魔法を使うことはできない。
 ――周囲の人目を気にしながら、周りにいる者達から気付かれぬよう少年に――本当に微々たるものだが――治療魔法を施す。
 すでに時が夜で辺りも暗かったため、マミの魔法少女としての姿及び彼女が少年に施している魔法に野次馬たちが誰1人気がつなかったことが幸いだった。

マミ「お願い……! 死なないで……!」

???「……と……とも、え……」

マミ「!?」

 突然、目の前にいる少年の口から自身の名が出たため、思わず一瞬手を止めてしまうマミ。
 そして、その瞬間になって、やっと彼女は今自身が助けようとしている少年の顔を確認することができた。

マミ「ま、まさか……」

???「お、俺……死に、たく……ない……!」

マミ「……葦川……くん……?」



マミ「…………」

マミ「……」

マミ「夢……?」



マミ「…………」

翔一「巴さん、おはようございます!」

マミ「…………」

翔一「……アレ? 巴さん?」

マミ「……あっ!? お、おはよう、沢野くん」

翔一「なんか今日も調子悪そうですね……。今日は一体どうしたんですか? 寝不足ですか?」

マミ「ううん。違うの……。今朝のことなんだけど、今から一月程前のことを夢に見てね……」

翔一「夢……ですか?」

マミ「えぇ……。今沢野くんが座っている席に本来座っていた子――葦川涼くんっていうんだけどね……」

翔一「葦川さん……ですか?」

マミ「彼、今から一月程前に、ご両親と信号待ちをしていたところで自動車同士の正面衝突事故に巻き込まれたの……」

翔一「…………」

マミ「私は事故が起きた後にそこに居合わせたんだけど……。私が来た時には、すでに彼のご両親は亡くなってたわ……」

翔一「…………」

マミ「葦川くんは何とか一命は取り留めたけど、水泳部の最後の夏の大会にも結局出場できなくなって……」

翔一「わかりました! それじゃあ、今日の放課後、俺と巴さんでその葦川さんのお見舞いにいきましょう!」

マミ「えっ?」

翔一「巴さんの話から察するに、葦川さんは今、病院に入院しているってことですよね?」

マミ「え、えぇ……」

翔一「それなら、なおさらお見舞いに行ってあげましょう! 葦川さん、きっとご両親が亡くなって毎日1人寂しい思いをしているに違いありません!」

マミ「あ……」

翔一「? どうしました?」

マミ「…………」

翔一「? 巴さん?」

マミ「……そ、そうね……。あまり大勢で行くと、かえって迷惑になっちゃうでしょうから、2人で行きましょうか」

翔一「はい!」

マミ「…………」



???「葦川先輩」

涼「ん? あぁ、上條か。お前もこれからリハビリか?」

上條「はい。先輩は今終わったところですか?」

涼「あぁ。……そういえば上條、今日もあの女の子は見舞いに来てくれたのか? あの幼なじみの……」

上條「さやかですか? いえ、残念ながら今日は……」

涼「そうか……」

上條「……先輩、近いうちに退院できるかもしれないって聞きましたけど、本当ですか?」

涼「あぁ。ただ、退院できたとしても、当分水泳をはじめとして運動はまだ出来ないだろうけどな」

上條「……正直、僕は先輩が羨ましいです」

涼「上條?」

上條「先輩は復帰すればまた水泳を続けられますけど、僕の左腕は……」

涼「…………」

上條「……あ。ごめんなさい。辛気臭いこと言ってしまって……」

涼「俺は……むしろ上條の方が羨ましいと思うよ……」

上條「えっ!?」

涼「上條にはまだ心配してくれる家族や、見舞いに来てくれる奴がいる。それに比べて俺には……」

上條「先輩……」

涼「……あ。スマン、俺の方こそ辛気臭いこと言っちまったな。忘れてくれ」

上條「い、いえ! 元はといえば、先にあんなこと言った僕が悪かったんです」

涼「じゃあ……おあいこってことで、いいか?」

上條「はい」

涼「……おっと、いつまでもこんな所で長話も何だな。それじゃあ上條、お前も頑張れよ」

上條「はい。先輩も」



涼「……ん?」

???「それじゃあ、沢野くん。花瓶にお水よろしくね」

???「ハイ! 任せてください!」

涼「……誰か来ているのか?」

(ガラッ……!)

翔一「あ……!」

涼「ん……?」

マミ「……葦川くん……!」

涼「!? 巴……」



涼「そうか、転校生か。俺が休んでいる間もクラスではいろいろとあったみたいだな」

マミ「えぇ。クラスの皆も、葦川くんがまた元気な姿を見せてくれる日を待っているわ」

涼「クラスの皆……か……」

マミ「葦川くん?」

涼「巴、これ覚えてるか?」

マミ「これって……葦川くんが入院した次の日にクラスの皆で書いた寄せ書き……」

涼「そこに書かれている内容に一度ひと通り目を通してもらえるか?」

マミ「…………これって」

涼「そう……。どいつもこいつも『早く良くなってください』とか『また一緒に勉強しましょう』とか綺麗事のように同じ内容の文章ばっか並べてる……」

マミ「葦川くん……」

涼「最初、先生が見舞いも兼ねてそれを持って来てくれた時は嬉しかったよ。だけど、日が経つにつれて逆に虚しく感じるようになった……」

マミ「…………」

涼「結局は俺の存在なんてそんなもんだったってことさ。現に今までクラスの奴は誰1人として見舞いになんて来てくれなかった……!」

マミ「……ごめんなさい」

涼「あ……。いや、別に攻めているわけじゃないんだ。誤解させてしまったみたいで、スマン」

マミ「いえ……」

涼「……むしろ巴には感謝しているくらいなんだ」

マミ「えっ?」

涼「俺の勘違いかもしれないけど……。あの時、巴が俺を助けてくれていなかったら、今頃俺は死んでいたかもしれないって思うんだ」

マミ「…………」

 涼の言っていることもあながち間違いではなかった。
 事故当時、彼の身体は本当に酷い有様であった。
 大量に出血し、手や足は見るからにあらぬ方向へとひん曲がり、まさに「瀕死」「死に体」などという言葉どおりの状況だった。
 マミですら最初は無意識下で「こんな状態でよく生きていられるものだ」とすら思ってしまったほどである。
 微々たるものとはいえ、マミが治癒魔法を施していなければ、涼の言うとおり今頃は彼もすでにこの世に存在していなかったかもしれない。

マミ「……そんなことないわ。葦川くんが今こうして生きているのは、葦川くんの生きたいって思いが誰よりも強かったからよ」

涼「……そうかな?」

マミ「うん」

涼「……巴が言うならそうなのかもな……」

翔一「は~い! 花瓶にお水入れて来ました~!」

マミ「あっ。ご苦労様」

翔一「いや~、この病院、想像以上に中も広いんですね。迷いそうになっちゃいましたよ。花瓶は窓のあたりに置いておけばいいですかね?」

涼「あ、あぁ……」

翔一「わかりました! ……あ、そうだ。葦川さんってリンゴはお好きですか?」

涼「は? い、いや、別に嫌いじゃないが……」

翔一「そうですか! 実は来る途中に買ってきたんです! 今皮を剥いて食べやすいサイズに切りますから待っていてください!」

涼「……元気な奴だな」

マミ「え、えぇ。むしろ元気というより純粋って言ったほうがいいのかしら……?」

翔一「やっぱり、お見舞いでリンゴといえばウサギさんの形に切ったやつですよね~」

 ―――キィン! キィィィン!

翔一「!?」

 キィン! キィン! キィィィン!

涼「!?」

マミ「? 沢野くん、どうし……」

涼「ぐ……がぁあああああ!!」

マミ「!? 葦川くん!?」

翔一「だ、大丈夫ですか?」

涼「う、ぐあああああ……!!」

 突然、苦しみ始めベッドの上でのたうち回る涼。
 その時、マミはふと自身の左手中指にはめられていた指輪――正確には指輪に形が変わっている彼女のソウルジェム――に目がいった。

マミ(強い魔力の反応!? まさか近くに魔女が……!?)

 マミは再び涼の方へと眼を向ける。
 見た限り、彼の身体には魔女の呪いを受けている証である『魔女の口づけ』と呼ばれるタトゥーのような紋章は見られない。

マミ(魔女の呪いによるものじゃない? どういうこと……? いや、今はそれよりも……)

翔一「巴さん、俺先生や看護師さん呼びますね!」

マミ「えぇ、お願い!」

 そう言い残すと、マミは病室の外へ出る。

マミ「間違いない……。近くに魔女がいる……!」

 指輪から本来の形へと姿を変えたソウルジェムを手にマミは病院の廊下を駆け出した。

マミ「……見つけた!」

 マミが病院の外に出ると、人目の付きにくい物陰に空間の歪みのような現象が発生していた。
 魔女の結界が侵食している証である。

マミ「――!」

 周囲に人目がないことを確認すると、マミはソウルジェムをかざす。
 そして、そこから発せられた黄色い光に包まれると、次の瞬間には彼女の服装は制服から魔法少女の装束へと変わる。

 空間の歪みに若干のブレが生まれる。
 おそらく、結界内の魔女がマミの魔力を感じ取ったのだろう。
 大抵の魔女は、この後、結界ごとその場から逃走を図るが――

マミ「逃しはしないわ……!」

 マミは早かった。
 瞬時に歪みとの距離を詰めると、そこに向かって手を伸ばし、やがて触れる。
 すると、マミのソウルジェムがほんの一瞬輝き、空間の歪みは大きな紋章のようなものに姿を変えた。

マミ「――!」

 何も言わず、その紋章へと飛び込むマミ。
 紋章の先に広がっていたのは、ファンシーともメルヘンとも神秘的とも感じられるが、どこか精神的に嫌悪感や不快感を催す世界だった。

 これが魔女の結界である。



翔一「…………」

 翔一は今、病院の廊下に1人立っていた。
 あの後、病室へとやって来た医者や看護師たちの邪魔にならないようにと自ら病室を出たはいいが、自身のやるべきことがなくなってしまったからだ。

翔一「う~ん、どうしようかな……。巴さんも気がついたらどっか行っちゃってるし……」

???「……こんな所で、本当に何もしないでいていいの?」

翔一「えっ?」

 不意に声をかけられる。
 声のした方へ目を向けると、そこには翔一と同年代の女の子が1人立っていた。

 その女の子を一言で言うならば『黒』――
 腰のあたりまでまっすぐ伸ばされた髪の色も、瞳の色も、そして彼女から感じる雰囲気も、まさに黒一色だった。

翔一「君は……」

???「あなただって気づいているはず。あなたたちがさっき感じたものの原因が、人間にとって、私たちにとって、そしてあなたたちにとって脅威であるということに――」

翔一「――――」

???「すでに巴マミは、その駆除に向かったわ。あなたはどうするの? この世界のアギト」

翔一「!!」

???「あなたが本当に人間を救いたいと願っているのなら、その力を完全に制御できるはずよ」

翔一「…………!」

 翔一は少女に何も言い返すことなく、その場から駆け出した。
 そして、そこには少女だけが残る。

???「……本当にこれでよかったの、斗真?」

 1人残された少女は、誰に語りかけるわけでもなく、そのような言葉を呟いた。



翔一「これか……?」

 病院を出た翔一は、人目のつかない物陰にひっそりと浮かぶ巨大な紋章を見つけると、その前に立った。

翔一「すぅぅぅぅぅ……」

翔一「はぁぁぁぁぁ……」

 一度大きく息を吸い、そして吐く。
 自分でも珍しく緊張しているな、と翔一は思った。

翔一「…………」

 チラリと自身の手や足に目を向けると、微かに震えていた。
 すでに何度か経験していることだというのに、何故今回に限って――などとは思わなかった。

 当然だ。
 今まで『コレ』は無意識下でやっていたこと――自身にとっては眠っているときに見る夢のようなものだった。



 だが、今回は違う。
 初めて明確な自分の意志のもとで『コレ』を行うのだ。
 誰のためでもなく、かといって自分のためでもない――



 ただ、“自分はアギトだから”――
 それだけのこと、ただそれだけのこと故に沢野翔一は――



翔一「――!」


 ――素早く動かされる翔一の腕が、文字どおり空を切る音が周囲に響き渡る。


 まず最初に、左腕を若干引き、同時に右腕を左脇腹の腰のあたりへと伸ばす――

 直後、今度は伸ばした右腕を曲げて、右手は親指と人差し指と中指のみ真っ直ぐ伸ばしている状態で顔の正面へ持って行き、左手を腰に軽く当てる。

 そして、一呼吸置いて、その右手をややゆっくり前に出しながら右腕を伸ばしていく。
 その動作は、どことなく人間が神に対して祈りを捧げているかのようにも見える。

 ちなみに、ここまでの動作にかかった時間は5秒にも満たない。

 やがて、右腕を伸ばしきったところで、翔一は両目をかっと見開く。
 そして、高らかに、まるでその世界にいる自身を含む全ての存在に対して神に変わって代弁するかのごとく『ソレ』を宣言した――


翔一「変身!」


 その言語と同時に、腰に添えられていた左手も真っ直ぐ前へと伸ばされる。
 同時に、曲げていた右手の薬指と小指も真っ直ぐ伸ばされた。

 やがて、伸ばされた両腕は、右上が上、左腕が下になる形で交差する。
 そして、交差した両腕はそのままの状態で下ろされ、腰のあたりの高さに来たところで止まる。

 すると、丁度両腕が交差している場所の近く――翔一のへそから上のあたりに、光が渦を巻いて溢れ出した。

 光に包まれる翔一。
 その光は、ほんの一瞬で消えてしまうが、光が消えたとき、そこには翔一の姿はなかった。
 あるのは、禍々しい姿をしながらも、どこか神々しさも併せ持った姿の黄金の異形――『アギト』の姿だけだ。


 ――『変身』は完了した。


アギト「…………!」

 自身の変身が無事に完了したことを感じ取ると、アギトは右腕を曲げて肘を前にかざし、左腕を腰の横に引きながら両膝を僅かに曲げて重心をやや下に落とす。
 それは、自身の変身を周囲の存在に知らしめると同時に、自身が戦闘態勢に入ったことを宣言するかのようであった。



マミ「見つけた……」

 その頃、魔女の結界内では、すでにマミが最深部へと到達していた。
 彼女の目の前には、この結界の主である魔女がその姿を堂々と晒している。

 その魔女の姿を言葉で説明するならば、『星』だった。
 よく絵などで書かれる、俗にいう星型呼ばれる形をした巨大な存在が、現在マミの目の前にいる。
 ただ、その色は、星のように神秘的で美しいものではなく、禍々しい色合いだが――

 だが、マミたち魔法少女にとって、相手の姿など関係ない。
 魔女である以上、倒すのみである。

マミ「…………」

 スカートを若干たくし上げる。
 すると、そこから数丁のマスケット銃が姿を現し、マミの足元周辺に突き刺さった。

 突き刺さったマスケット銃のうちの1丁を手に取ると、すぐさまマミはその銃口を魔女へと向け、引き金を引いた。
 瞬時に放たれたマミの魔力によって作られた銃弾は、魔女の身体のど真ん中を撃ち抜いた。

 当然、マミはこの程度で魔女を仕留めたとは思っていない。
 すぐに撃ち終わったマスケット銃を後方へ投げ捨てると、突き刺さっている別の1丁をその手に取る。

マミ(さて、向こうはどんなアクションを起こしてくるか……)

 再び銃口を魔女に向けるマミ。
 それに対して、魔女は予想外な行動で応戦してきた。

マミ「えっ!?」

 ――自らバラバラに砕けたのである。
 正確に言うと、先ほどのマミによって開けられた風穴を中心に、魔女の身体全体にいきなり亀裂がはしり、次の瞬間にはそうなった。
 一瞬、まさか本当に倒してしまったのか、とも思ってしまったマミだが、すぐにその考えは撤回する。

 砕けた魔女の破片は、みるみるうちに形を変え、やがてひとつひとつが小型の星型魔女となった。

マミ「なるほど、星じゃなくてヒトデだったってワケね……」

 表面上では余裕の笑みを浮かべてみるマミであったが、内心では面倒なことになったと愚痴を漏らす。

 無数の星型魔女もといヒトデ魔女たちが一斉にマミに襲いかかる。
 しかし、マミはそれに対して焦りを見せることなく、右手をばっと前に突き出した。
 すると、彼女の周辺から黄色い糸のようなものが大量に伸び、すぐさまそのひとつひとつが絡み合い、いつしか一枚の大きな黄色い布地となる。
 それは魔力による突発的な簡易防御壁であった。

 無数のヒトデ魔女たちは、次々とその防御壁に引っかかり動きを止めていくが、さすがに正面に壁を作るだけでは全てのヒトデ魔女の動きを止めることは出来ない。
 すぐさま数十体ほどのヒトデ魔女が防御壁を迂回する形でマミの目の前に姿を現した。

 それに対してマミは、その内の1体に対してマスケット銃を撃ち、その1体を撃ちぬくと、残りのヒトデ魔女はその撃ち終わったマスケット銃の銃身で叩き落とす。
 時には己の足による蹴りや踏みつけもお見舞いし、ヒトデ魔女たちを次々と倒していく。

 ――しかし、さすがのマミでも数の暴力の前では徐々に旗色が悪くなってくる。

マミ「いくら何でも数が多すぎるっ……!」

 思わずそのような愚痴が口から漏れてしまう。
 だが、もしこの場にマミ以外の魔法少女がいたとしても、誰もマミのその発言を否定しないだろう。
 おそらく、誰もがそう思いたくなるであろうから――

マミ(せめて、こいつらの行動パターンさえわかれば何か糸口が掴めるかもしれないけど……)

 彼女のその願いは、意外にもすぐに叶えられることになる。


 ドオォォォォォン!


マミ「!?」

 突如、マミたちのいた最深部のフロアに轟音と共に土煙が巻き起こった。
 命がけの戦闘中でありながらも、マミの目は思わず轟音の発信源へと向いてしまう。
 だが、不思議なことに、その時は魔女たちの動きもピタリと止まっていた。

 やがて土煙が晴れていくと、そこには――光があった。

Believe Yourself
ttp://www.youtube.com/watch?v=ANEt7s6bu6Q&feature=related

アギト「…………」

マミ「『アギト』!?」

 思わずその名を叫んでしまうマミ。
 キュゥべえ曰く『この世界の創造神から力を授けられた存在』。人間を遥かに超越した力を持つ黄金の異形――
 それが三度目自身の前に姿を現したのである。

アギト「…………」

マミ「!?」

 その名を呼ばれたアギトとマミの視線が合う。
 思わずビクリとしてしまうマミであったが、それに対してアギトは何の反応も示さず、ただマミの姿をじっと見つめていた。

 しばらくお互いの視線を向け合っていた両者だったが、再びヒトデ魔女たちが一斉に活動を再開すると、マミとアギトもそれぞれヒトデ魔女へと視線を向ける。

マミ「言葉が通じるか分からないけど、一応尋ねるわ! あなたは一体何者なの!? 敵なの!? それとも味方なの!?」

アギト「…………」

 自分たちに襲いかかるヒトデ魔女たちをあしらいながら、マミはアギトに向かって叫ぶ。
 だが、対するアギトの方は一切の無反応だった。
 まるで、言葉が通じないというよりは、目の前の戦いに集中し切っている、もしくはマミと話す舌は持たないと言わんばかりに――

マミ「…………!」

 そんなアギトに対して一瞬苛立ちのような感情が芽生えるマミであったが、すぐさま彼女も目の前の敵に集中する。

 マミは再びマスケット銃を構えると、群れの中の1体を撃とうとその銃口をヒトデ魔女たちに向ける。
 だが、マミが引き金を引こうとするより前に、アギトが右手でマスケット銃の銃身をむんずと掴み無理やり銃を下ろさせてしまう。

マミ「!? な、何するの!?」

 何故ここにきて邪魔をするのかと思いながら、アギトの方へ目を向けると、アギトは左手である一点を指さしていた。

マミ「えっ?」

 アギトの指し示す方へと視線を向けていくと、そこには群れに紛れて1体だけ違う動きをしているヒトデ魔女の姿があった。

マミ「まさか……!」

 瞬間、マミは悟った。
 この魔女は、本体とそれを守護する無数の偽物たちで構成されている一種の群体なのだと。
 無数の偽物に襲いかからせることによって相手の注意をそちらに向けさせ、本体の存在を隠していたのである。

 そして、先程アギトが自身の呼びかけに何の反応も示していなかったのは、その本体を探すことに集中していたからだとも――

マミ「……なるほど、木を隠すなら森の中ということね!」

 そう言いながら、マスケット銃を構え直すマミ。
 手品のタネさえわかってしまえばこっちのものである。

 対してヒトデ魔女――正確にはヒトデ魔女を護る偽物――たちは本体を護るために、一斉にマミに襲いかかろうとする。
 だが、そんな魔女モドキたちの前にアギトが立ちはだかった。

 マミがマスケット銃の引き金を引いた。
 放たれた弾丸は真っ直ぐ本体であるヒトデ魔女へと飛んでいく。
 だが、本体を守ろうと魔女モドキたちが、その軌道にわらわらと集まってくる。

 ――しかし、それがマミの狙いだった。

マミ「残念だったわね」

 不敵な笑みを浮かべるマミ。
 それと同時に、放たれた魔力の弾丸がポンと弾け、先ほどの防御壁を形成したものと同じ黄色い魔力の糸が周囲に飛び散った。

 やがて、魔力の糸はそれぞれが絡みあうと、今度は黄色い巨大な網となり、ヒトデ魔女と魔女モドキたちをまとめて包み込んでしまった。
 その光景は、さながら投網漁業のようであった。

 敵の動きを完全に封じたことを確認すると、マミは自身の襟元に結ばれていたリボンを解いた。
 そして、そのリボンに自身の魔力を流しこむ。
 すると、リボンは一瞬にしてマミよりも一回りも二回りも大きい、巨大マスケット銃へと姿を変えた。

 銃口をゆっくりと魔女たちの方に向け、しっかりと狙いを定めるマミ。
 そして――


マミ「ティロ・フィナーレ!」


 ティロ・フィナーレ――イタリア語で『最後の一撃』という意味の射撃、否砲撃が巨大マスケット銃から放たれる。
 放たれた一撃はまるでビームのように黄色い直線を描きながら、標的である魔女へと伸びていく。
 やがて、それは魔女たちに直撃すると爆発を起こし、網の中の魔女たちをまとめて木っ端微塵に吹き飛ばした。


 巨大マスケット銃へと姿が変わっていたリボンが元の姿に戻るのを確認すると、マミはそれを手早く襟元に結び直す。
 リボンを結び直すと、マミは魔法少女としての姿から普段の制服姿へと戻り、同時に結界も消滅した。


 ポトリと、マミの近くに何かが落ちる音がした。
 マミが目を向けると、そこには魔女の卵であるグリーフシードが転がっていた。

 本来ならば危険な代物であるグリーフシードだが、魔法少女によって倒された魔女が落としたグリーフシードはまだ完全には熟していない。
 そのため、その空いているスペースを利用して、魔法少女たちはソウルジェムに生ずる濁りをグリーフシードに移し変えて魔力を回復するのである。

 早速自身のソウルジェムの濁りをグリーフシードに移し替えるマミ。
 移し終えてグリーフシードの方を確認すると、グリーフシードの色は先程よりもドス黒く濁り切っていた。

マミ(さすがにこれ以上使うのは危険ね。今度キュゥべえに処分してもらいましょう……)

 そう思いながらソウルジェムを指輪の形へと変化させ自身の指にはめると、マミはここにきて重大なことを思い出した。

マミ「……あっ! そうだわ、アギトは!?」

 マミが振り返ると、すでに周囲にはアギトはおろか、誰の姿も見えなかった。

マミ「……はぁ。何やっているのかしら、私……」

翔一「あっ! 巴さん、こんな所にいたんですか!」

マミ「!? あ……さ、沢野くん……」

翔一「もう。何も言わずに、いきなりいなくなるなんて酷いじゃないですか。一体何処に行ってたんです?」

マミ「ご、ごめんなさい。……あの、葦川くんは?」

翔一「あぁ、葦川さんならもう大丈夫ですよ。あの後すぐに先生や看護師さんたちが来てくれましたから」

マミ「そう……」

翔一「ささ、こんな所にいつまでもいるのも何ですから、早く葦川さんの病室に戻りましょう」

マミ「……えぇ」

マミ(……アギト、本当に何者なのかしら……?)



???「…………」

 病院の屋上。そこに、病院へと戻って行く翔一とマミの様子を見下ろす影があった。
 それは、先ほど翔一に謎の言葉を投げかけ、かつ翔一がアギトであることを知っていたあの『黒い少女』であった。

???「『アギト』……」

 少女はその名をポツリと口から漏らす。

???「アギト……斗真が言っていたとおり、本当に彼がこの世界の運命を変える存在だというのなら、私は――」

 その言葉を言い終える前に、少女――暁美ほむらはその場所からフッと姿を消した。



マミ「……えっと……つまり、どういうこと?」

涼「先生が言うには、無理に身体を動かし過ぎたのが原因じゃないか、だそうだ。筋肉の発熱と痙攣が激しくなっているらしくて……」

翔一「それってただの筋肉痛とは違うんですか?」

涼「俺にも詳しくはわからない。ただ、俺の筋肉組織が今も膨張を続けていることだけは確からしい……」

マミ「…………」

涼「おかげで退院はもうしばらく先になりそうだが……。まぁ、過ぎてしまったことは仕方がないさ」

マミ「葦川くん……」

涼「そう心配そうな顔するなよ。別に命に関わる問題じゃないんだから。多分、俺の身体がもっと休みたがってるんだろうさ」

マミ「…………」

涼「巴、それと沢野、今日はありがとうな……。その、もしよかったら……すぐにとは言わないが、また見舞いに来てくれないか?」

翔一「はい! 俺なんかでよかったら!」

マミ「……えぇ」

翔一「それじゃあ、葦川さん、俺たち今日はこれで失礼します」

涼「あぁ」



涼「…………」

涼「……」

涼「……一体どうしちまったんだ、俺の身体は……?」




ED

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コメント

  1. 名無し―ネームレス― | URL | -

    Re: 翔一「転校生の仮面ライダーアギトです!」巴マミ「あ、アギ……?」 その1

    さっきまでアギトの最終回見てた
    面白いよね、アギト

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