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仮面ライダーW & 仮面ライダーOOO & 魔法少女まどか☆マギカ Fの契約/少女と魔法と仮面ライダー 第一話

2011年04月24日 20:30

まどか「仮面ライダー?」翔太郎「魔法少女?」映司「魔女?」

1 :◆WDUU7xtdEo [sage]:2011/03/05(土) 08:51:03.72 ID:bltTvwEeo

『魔法少女まどか☆マギカ』と仮面ライダーW、OOOのクロスです


*設定として九話までのものを利用。そのため、まどか側の設定として
 ある程度の予想改変が入ります、あしからず。

*仮面ライダーWはMOVIE大戦CORE終了後、OOOは24話終了後くらいを想定。



以上が、本SSのおおまかな設定となります。よろしくお願いします



崩壊する街、天に浮かぶ巨大な歯車。放たれる光線が更に街を砕いていく。終わりは、もう止められない。

「――ッ!」

血が出るほどに、強く、唇を噛み締める。眸から溢れる涙を止める事が出来ないまま、少女は空を翔ける。
幾重にも重なる光線を、その腕につけた円盤で防ぎ、防ぎ――そして、その衝撃に耐え切れず吹き飛ばされる。

「っ……ぁ!」

崩壊したビルに叩きつけられる少女の体。全身を襲う衝撃が少女に激しい痛みをもたらし、地に伏せさせる。
そして、少女は、見た。

「あ……あぁ…………ッ!」

悲壮な叫びが口から零れた。視線の、はるか、はるか、先。そこにいた『彼女』を少女は見つけてしまった。

「――――」
「――――」

『彼女』と少女の視線が交差する。永遠のような一瞬、『彼女』の瞳は凄惨なまでの決意を少女に告げていた。
そして『彼女』は、眼の前にいた白い生き物へと視線を落とす。その口元は静かに言葉を形作っていく。

「―――――――!」

声にならない絶望の叫びを上げ、少女は届きもしないその手を『彼女』に向けて伸ばした。
その手の先で、白い生き物の耳が手のように『彼女』へと伸び、触れる。

そして――

――気づけば、世界は白に包まれていた。

白の濁流に掻き消されていく街。諦観にも似た絶望に襲われながら、少女はその濁流の中で耐えていた。

「また…………」

呟く。音も何もなく、ただエネルギーの奔流に押し流されながら。

「駄目だった……」

上も下も分からず、方向感覚が失われても尚、零れる涙は止められなくて。

「でも、今度こそは……本当に、今度こそ……―――?」


――ふと、濁流の中で、少女は、それを見つけた


白の濁流の中、それは鮮やかに舞っていた。
それはハンカチーフ。黒と、緑の、二色。
それはハンカチーフ。赤、黄、緑の、三色

白の奔流に飲み込まれることなくその二枚は、在った。
ただ、ただ、その二枚は少女の目に印象深く映った。
しかし、それも少女にとっては瑣末なもの。
幾度となく繰り返した夜の中にあった出来事の一つ。
静かに、少女は目を閉じる。
奔流に身を任せ、濁流の中へ落ちていく。


――そして、世界は



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***

風都、そこは風の止まない街。良い事も悪い事も含めて全てを包み込む街。
かつては、ガイアメモリなるデバイスを使って人間が変身した怪物、ドーパントによる犯罪が多発していた街。
まるで魔法のような不可思議な能力を使ったドーパントの犯罪はこの街の人々を苦しめた。
しかし、今年に入ってからはそのドーパント犯罪も不思議と激減している。
街の人にその理由は分からない。しかし、彼等は心のどこかで感じていた。

仮面ライダー――この街の人々が呼ぶ都市伝説のヒーローが解決してくれているのだ、と。

仮面ライダー、それはドーパントと戦う謎の戦士。
仮面ライダー、バイクに乗って街を駆け抜ける一陣の風。
仮面ライダー、それはマフラーをたなびかせ現れるヒーロー。
仮面ライダー、それはこの街の希望。
仮面ライダー、それはこの街の涙を止める二色のハンカチーフ。

風都の人間でこの仮面ライダーを知らない者はいない、そう言っても過言ではない。
そんなヒーローが、この街にはいた。いや、今もいる。
ただ、ドーパント犯罪が目立たなくなっただけで、今も何処かで戦い続けている。
街の人々はそう信じている。

***

季節は春を迎えていた。桜並木は満開を迎え、風都の風に吹かれて桜の花が空を舞う。
この街にとって欠かせないランドマークでもある風都タワーは、とある事件で倒壊したが今は再建され、
今日も大風車が静かに風を受けて回っていた。

そして、その大風車を望む事の出来るビリヤード場の二階に鳴海探偵事務所はあった。

いかにもな雰囲気を漂わせる事務所の一番奥、ハードボイルド小説と、依頼された案件のものと思われる
書類のファイルの山とに囲まれながら、いかにもハードボイルド風な格好をした青年、左翔太郎が
タイプライターと向かい合っていた。しばらく何かを思案していたが、静かにコーヒーを一口含み、
フッと鼻を鳴らすとタイプライターの音を鳴らし始めた。

『風都にも春がやってきた。新しい季節の始まり、新しい生活の始まり。
 街に吹く風も、そんな新しい日々を迎えようとする人達を祝福するように、今日も穏やかに吹いている。
 そして――』

スっと顔を上げ、次の文面を考えようとして――

「なーに、浸っとるかぁ!」
「っ痛ぁ!?」

パチーンと、小気味良い音が事務所の中に響き渡った。後頭部を襲う衝撃、その勢いのまま、
最近買ってきたばかり電燈に額を強かに打ちつけ、翔太郎は悶絶した。

「てめぇ……亜樹子ォ! 何しやがる!?」
「それはコッチの台詞よ、翔太郎君。最近仕事ないからってフ抜けちゃってるんじゃないの?」

大きな溜息が漏れるのを聞きながら、翔太郎は痛む額をさすりつつ、その溜息の主を見上げた。
そこには、この鳴海探偵事務所の所長が、仁王立ちで腕を組んだ鳴海――ではなく、照井亜樹子が
やや派手な服装に身を包んで鼻を大きく広げて憤慨している姿があった。

「まったく、少しは営業努力くらいしなさいよね。ここ最近、事務所の依頼人の足がパッタリだよ?
 やっぱり、この前やったチラシ作戦続けとくべきだったよねー、うんうん」

と、何を納得してるのかわからないが力強く頷く亜樹子。
それに辟易といった風な表情を翔太郎は浮かべた。

「探偵は自分から営業なんてしねえんだよ、亜樹子。こうして椅子に座って静かに依頼人を待つ。
 そう――それが探偵ってやつさ……」

深く椅子に腰掛け、顎に手をあてつつキザなポーズ。と思いきや、ハリセンが再び翔太郎の頭をはたいた。

「なーに、かっこつけてるかハーフボイルド!」
「誰がハーフボイルドだ!」
「お前以外に誰がおるか!」
「また痛ァッ!」

鋭いツッコミとハリセンの音がまた探偵事務所を響きわたり――そして、事務所脇のドアが静かに開いた。

「翔太郎、アキちゃん。もう少し静かにしてもらえないかい? これでは検索が進まない」

ノースリロングパーカーに長袖のボーダーシャツを着た少年、フィリップが呆れ顔でドアの奥から現れた。

「フィリップ君。あー……ごめん、ジャマしちゃった?」
「まあ、ちょっとかな?」

それほど気にしていないといった感じに片手を顎に当て、フィリップが悪戯っぽく微笑んだ。

「それで翔太郎、今日も依頼はなしかな?」
「フィリップお前まで、そんな事――」

参ったという顔をして、翔太郎が次の言葉を続けようとしたその時、


――事務所のドアが依頼人の訪れを告げた。


***

「…………夢オチ?」

夢から覚め、鹿目まどかは呟いた。
なんだか、ひどく現実味のある夢だった気がする。空を飛ぶ女の子がいて、空には大きな歯車があって。
それで、街が壊れてて。それで、自分は、何か魔法少女のアニメに出てくるようなマスコットに
何か言われて、それで――と、そこまで考えて、まどかはやめた。
外から朝日が差し込んでいるという現実に覚醒したのだ。

「起きなきゃ」

生まれたからこれまで、ただ幸せに生きてきたまどかにとっては、そんな夢なんて、いつも見る夢の一つにしか過ぎなかった。
ただ、今日の派いつもよりリアリティがあって迫力があっただけ。そう、それだけ。
さっきまで考えてた夢の事なんて、まるで蜃気楼のように薄れて、頭の中から消えていく。

「それじゃ、いってきまーす!」

一足先に仕事に行ったママを追うように、パパと弟のたっくんに見送られて、まどかは家を飛び出した。
まだ学校に着くまでの時間はあるが、時間がないのは友達との待ち合わせの時間の方だ。
やっぱり、リボンをピンクか黄色にするかで悩みすぎたのがいけなかった。

「さやかちゃん、怒ってるだろなぁ……」

と、少々申し訳ない気分になって前方不注意になったまどか。それがいけなかった。

「うわっ!?」
「きゃあっ!?」

十字路に差しかかろうとした瞬間、男の人がわき道から出てきたのだ。
ほぼ出会い頭、勢いのついた上体でまどかは、その男の人に頭から突っ込んでしまう。
が、しかし

「――っと、あぶなっ!」

脇腹を抱えられ、勢いを殺すように一回転。ぐるんと振り回され、恐怖で目を瞑るまどか。
しかし、いつまで経っても、衝撃は襲ってこなかった。

「…………あ、れ?」

ゆっくりと目を開ける。
すると、今ぶつかった筈の男の人の顔が目の前にあり、そして、その人の腕の中に自分の体が
ひょっこりと収まっていた。

「いやー、危なかった危なかった。ねえ君、大丈夫だった?」
「え、あ……はい」

バランスを崩していたまどかを立たせ、エスニック風の服装をしたその男の人は
屈託のない笑顔を彼女に向けた。
邪気を感じない、というのはこういう事を言うんだろうとまどかは思う。

「走るのも良いけど、気をつけないとね」
「あ……っっ!」

そこで今自分がしてしまった事を思い出した。

「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! あのっ、私、ごめんなさいっっ!」

顔を茹でダコのように真っ赤にして、今にも泣きそうな声でまどかは頭を下げ始めた。

「え!? あ、いやいや! 俺は大丈夫だから! 怪我ないし、うん!」

それに驚いたのか、その男の人も慌てて両手を前で振って気にするなのジェスチャーをし始める。

「で、でも……!」
「良いんだって! 俺も怪我はない、君も怪我はない。それで全部丸く収まるからさ!」
「でも、私……」

お互いに、妥協点を探ろうとした時だった。

「おい、何やってる映司」

頭上から、声が降ってきた。見上げると塀の上、そこにその声の主はいた。
金髪に、赤を基調とした服装に身を包んだ男の人、見上げたまどかとその男の人と視線が合う。

「ふん」
「え、っと」

戸惑うまどかをよそに、男の人は塀から飛び降り軽やかに着地した。

「行くぞ」
「あ、ちょっと待てよ! アンク!」
そしてそのまま、まどかの存在など無視したように足早に歩き始める。

「えっと、ごめんね!」

顔の前で手を合わせて、優しい笑顔の男の人も、彼を追い始めた。

「あ、あの……」

去る彼の後姿に、咄嗟にまどかは声をかけていた。いつもだったら、そのまま何も言えずに
いたはずだが、その時は何故か違った。『声をかけないといけない』そんな気がした。

「あの――お名前!」

その声に、彼が振向く。きょとんとした表情だった。

「え?」
「その……助けてもらったから、私……!」
「あ、ああ。なるほど!」

男の人は、まどかが何を言わんとしてるのか気づいてくれたみたいで、また優しい笑顔をこちらに向けてくれた。

「俺は火野映司。君は?」
「私……私は――」

そして、まどかは彼に答える。


「私、鹿目まどかです!」


***

巴マミは、今日も独りだった。クラスから孤立している、という意味も多少はあったけど。
だが、本当の意味は、彼女が魔法少女だから、ということ。

――魔法少女

それは、『魔法』を使い『魔女』と戦う少女たちの総称。
絶望を振りまき、自殺や殺人事件を誘引する『魔女』は、放置すれば人々に災いを成す。
それを防ぐために魔法少女は戦う。
しかし、それは孤独な戦い。仲間もいない。ただ独り、死の恐怖と隣り合いながら戦わねばならない。
そんな恐怖を、マミは、自分が戦う事で誰かの幸せを守れる、という理由で耐えてきた。

クラスメイトはそんな事を知らない。いや、知らない方がいいのだ。
授業が終われば今日もいつものように街へ向かおう。魔女を探し出して倒すためのパトロールだ。
かすかに胸を刺す痛みを、そう考える事で忘れる。

気づけば、マミは既に学校の近くまで来ていた。
登校途中は今のような思考にふける事も少なくはない。ああは言ってみたところで結局彼女は
普通の中学三年生の少女でしかないのだから。

「まったく、あたしゃ寂しいよ。まどかが友達をあーんなにも待たせるなんてさぁ……しくしく」
「ああん、さやかちゃんってばぁ! 何度も謝ったのにひどいよぉ!」
「ふふっ。本当にお二人は仲がよろしくて……ああ、これが禁断の愛?」

隣を楽しそうに談笑しながら通り過ぎていく下級生の女の子を見て、また心が痛んだ。
もし、あの時魔法少女にならなければ、自分はああして普通の女の子でいられたのだろうか。
そんな事をまた考えてしまった。
と、

「………!?」

手に握っていたソウルジェムが微かな光を帯びた。
ソウルジェム、それは魔法少女の『魔力』の源。それが光を帯びるという事は、『魔女』が近くにいるか
あるいは――自分と同じ『魔法少女』がいるという事。

「――――」

目の前に、その少女はいた。黒髪の少女。静かに、こちらを見ていた。が、それも束の間。
その少女はマミから目を離して学校へと歩いていってしまった。

「今の子……まさか」

とは思うが、自分から声をかけて魔法少女ですか、と聞くわけにもいかなった。
しかも、普通に考えれば魔法少女が一つの街に二人もいるはずがないのだ。

『――どうしたんだい、マミ?』

そう考えた矢先に脳裏に響く声。ちらりと顔を向ければ、花壇の柵のところに、白い生き物がいた。
この生き物こそが、少女を契約させ魔法少女とする存在『キュゥべえ』であった。
しかし、マミにとってはそれだけではない。
彼女にとってキュゥべえは友達だった。自分の数少ない秘密を共有できる存在だったからだ。
そして、この友達とは声を介さず、テレパシーで会話ができた。

『うん、ソウルジェムが反応したから……ねえ、キュゥべえ。この街、私以外の魔法少女はいないのよね?』
『そうだね。現在のところは、君以外に魔法少女はいないはずだけれど』
『でも、反応したわ』
『そうなんだ……変だなぁ』

首をかしげるキュゥべえ。マミは、その動作をかわいらしく思う。

『しかし、考えても仕方ないね。とりあえずは、その問題は保留にしておこう』
『うん、それが妥当ね』

はぁ、とマミは溜息をついた。

「朝から、溜息は良くないぜ? 幸せが逃げちまう」
「――きゃあ!?」

後ろからいきなり声をかけられ、マミは思い切り叫んでしまった。
それに、登校途中の学生が一斉に振向く。

「ったぁ! 待て、待ってくれ! 俺は怪しい者じゃねえ!」

マミに声をかけた青年は必死に弁明していた。目を点にして見つめるマミだったが
次の瞬間、

「なぁ~に、中学生を驚かせてるかバカモン!」
「ッ痛ぁ!!」

ハリセンを持った女性が、その青年を張り倒した。帽子が空を舞う。

「あはは、ごめんねー? コイツってば、デリカシーなくてねー?」

ニコニコ笑顔で取り繕う女性だが、マミは完全に引いていた。
いきなり起きた出来事に頭がついていっていなかった。

「あ、あの……」
「ああ!」

と、手をパンと叩いて女性が何かを取り出した。

「はい! どうも! 私、鳴海探偵事務所所長、照井亜樹子どぅえす!」

ひどく派手な名詞だった。手製だろうか、とてもカラフルだった。

「私ね、あなたの親戚からあなたの様子を見て来いって言われて――」
「ッ!」

ドクンと心臓が高鳴る。今まで、ほとんど自分の事を無視していた親戚が自分に何の用だと言うのか。

「すいません……あの、もう学校ですから。お話は、あの……すいません」
「あ! そ、そうだよね! ごめん! じゃあ、放課後時間取れるかな?」
「…………考えて、おきます」

それだけ何とか言葉を搾り出して、マミは走り出した。
連鎖的に反応した寂しさに胸が裂けそうだった。

「あちゃぁ……しくじった」
「ミスったな、こりゃ」

今回の依頼人の依頼対象である巴マミの走り去る後姿を見送りながら、翔太郎と亜樹子は静かに呟いた。

「ああして声をかければ完璧だと思ったんだけどな」
「あほか、お前は! 驚かせただけやぁ~~~ないかっ!!」
「ッ痛ぁ!」

ハリセンがまた翔太郎の頭に叩き込まれた。

「…………しかし、風都を離れてまで、こんな依頼だなんてな」
「うん。なんか、嫌だよね」

今回の依頼は、あの少女の素行調査のようなものだった。
一人暮らしで金を送ってるが、全く連絡を寄越さない。様子を見てほしい。
とは依頼人の弁だが、

「あれ、心配してるって顔じゃなかった」
「……だな」

口にするのも億劫なので、依頼人の話はそれまでだった。

「でもさ、翔太郎君。なんで、この依頼受けたの? 普通だったら受けたがらないのに」
「それは……な」

依頼人から受け取った巴マミの幼少の写真を見て、翔太郎は呟いた。

「このでかい見滝原って街に独り、両親もなく、ああして一人暮らしをしているレディを
 放っておくのはハードボイルドじゃねえ……からかな」

そんな翔太郎のセリフを、亜樹子は茶化す事無く微笑んで見ていた。


***


今日はいろんな事があった。本当にいろんな事があった。まどかは回想する。

一つ、火野映司という優しい笑顔の男の人とぶつかった。
二つ、その事で大親友のさやかちゃんに沢山からかわれた。
三つ、仁美ちゃんがまたラブレターをもらった。
四つ、やっぱり先生は失恋した。

そして、五つ――

「やっぱり…………何処かで会ってたのかな」

まどかは、今日自分のクラスに来たばかりの転校生、暁美ほむらの事を思い出す。
夢の中で会ったような、そんな気のする、黒髪の少女。

彼女は、初対面のはずなのに自分の名前を知っていた。

そして彼女は、家族や友達が大事なら、この先何が起こっても決して『自分を変えよう』
などと思うな、と告げた。

守らなければ――大切なものを全てを失う、とも。

「……どういう事なんだろ」
「何ブツブツ言ってんの、まどか?」
「ふぇ!?」

どうやら、口に出して言っていたようだった。
学校帰りに来るショッピングモールの喫茶店、仁美とさやかが、心配そうな様子でまどかを見ていた。

「大丈夫ですか?」
「あ、分かった! さては、今日の朝ぶつかったイケメンに一目ぼれしたな!?」
「なっ、ちょ、さやかちゃん!?」

一瞬で、まどかの顔が真っ赤になった。

「ち、違う! ぜんぜん違うよ! 何言ってるのよ、さやかちゃん!?」
「あははー。ムキになっちゃってからに、かわいいのう?」

明らかにからかわれていた。こうしてさやかにからかわれ、それを仁美が慈しむというか愛おしくというか、そんな感じで眺める。
それがまどかにとっての日常。

「……でもさ、今日はやっぱ変だよね。何かあった?」
「うん……」

ようやくからかう事に満足したのか、さやかはマジメに話をし始めた。
さやかの質問に、言うか言うまいか少し考えたが、まどかは打ち明ける事にした。
そして、

「――――ぷっ!」

「ぷはははははは! なんじゃそりゃー!」
大爆笑された。それはもう、腹の底から。面白おかしいといった感じ。
言うんじゃなかったと後悔するには遅すぎた。

「文武両道才色兼備、そしてスポーツ万能ミステリアス転校生と夢で会ってるとかね!
 うんうん、間違いない! 二人は前世で結ばれた仲だわ! ザッツ宇宙の神秘!」
「さやかさん、笑いすぎですわ」
「もぉ……」

周りの視線を感じて、また顔を真っ赤にするまどか。
どうしようか、そう悩んでいると

「……あ」

仁美が、残念そうな表情を浮かべた。

「ごめんなさい、お二人とも……もう、時間ですので」
「習い事?」
「ええ、はい……もうすぐ受験ですのに、何時まで続けさせられるのやら」
「毎日ハードで大変だね、仁美。お疲れ」

そして、仁美と別れる。その後姿は、なんだか寂しそうだった。

「ねえ、まどか。今日も帰りにCDショップ寄っても良いかな?」

まどかに語りかけるさやか。その顔が心なしか赤い。
まどかはその理由を知っている。

「良いよ、また上條君のでしょ?」
「えへへ」

さやかの片想いの相手、上條君。今は入院している彼に贈るプレゼント。
いつか、それが実を結べば良いなとまどかは思っている。
そして、さやかとまどかは並んでCDショップへ向かう。
と、その途中で、

「……あ」
「どうかした、まどか?」
「え? あ、うん……」

エスニック風の服装の男の人がショッピングモールをはさんで向こう側にいた。

――火野映司、彼だった。


***


「なあ、アンク。本当にこの街にカザリがいるのか?」
「その筈だ」
「その筈って……」

大丈夫なんだろうな、という表情を浮かべる映司を無視してアンクは歩き出す。

「此処は欲望に満ち満ちているからな。奪われたメダルを取り返すには都合がいい」
「アンク。分かってると思うけど、もしヤミーが現れたら、その時は――」

金髪の青年アンクが振り返る。

「人の命をメダルより優先させるな、か?」
「……そうだ」

うんざりといった表情をアンクは浮かべる。

「結果的にカザリを先に叩いた方が奴のヤミーを弱体化できるんだがなぁ?」
「それでもだ」

互いの視線が交差する。一瞬流れる不穏な空気。
しかし、

「チッ……勝手にしろ。これだから人間は……」

アンクは苦々しい顔をして、映司から視線を外すと歩き始めた。
アンク――彼は、グリードと呼ばれる人間とは違う生き物だ。
見た目こそは普通の人間だが、しかし、それも仮初。

800年前、科学者が人工生命を作るため、地球に生息するあらゆる生物のパワーを凝縮して作ったオーメダル。

本来なら10枚で完全であるはずのメダルから1枚を抜き取る事で不完全とし、そのため欠けた事を満たそうとする欲望から生まれた怪物がグリードだ。

これまで封印されていた彼等だったが、とある事件で復活。
蘇った彼等は、自分達の無くしたメダルを探し求めて活動していた。

アンクは、そんなグリードの中において極めて特殊な部類に入る。
右腕しか復活できなかったグリード、それがアンクなのだ。

しかも、今は泉信吾という刑事の体を借りて生きなければならない程に、脆い。
まさしく無力。故に、今は映司と共同戦線を張っている。それが現在の状態だった。

そして映司は『オーズ』だった。

かつて、グリードを封印したと言われている戦士。オーズドライバーを装着し、グリードのコアメダルを使い変身し、その力を使って戦う者。
今現在、グリードと、その彼等が作り出すヤミーに、実質対等立ち向かえるのは彼くらいのものである。

「…………はぁ」

軽い溜息を映司はつく。グリードの一人を追ってここまできたのは良いが、どうにもこの街に着いてから変な感覚がついて回っている。
なんというのだろうか、街自体の雰囲気は明るいのに、酷い違和感を感じるのだ。

「おい、何やってる」
「ああ、うん」

この雰囲気、今まで旅をしてきたどの場所とも違う。果たして、何が違うというのか。

「何が違うんだろう」
「あ?」
「なんでもない、独り言」

喉に魚の骨が引っかかったような感覚を抱えたまま、映司はアンクの後を追い始めた。


***


同じショッピングモール、先ほどまでまどか達のいた喫茶店に翔太郎たちはいた。

「で……親戚のおじさん達なんだけ――」
「連絡すれば良いんですよね」
「あー…………まあ、そうだ」

ひどく冷めた声と、暗い表情に翔太郎達は言葉を続けられなくなる。
思春期真っ盛りというのは、非常に繊細だ。それなのに、この巴マミという少女はそんな多感な時期に家族もなく、独り。

彼女は両親を交通事故で亡くしていた。

凄惨な交通事故だった。それは彼女自身も巻き込まれ、生死の境をさまようほど。
彼女は潰れた車の中、既に命を落とした両親と一緒に何時間も閉じ込められていたのだ。

なのに、彼女は親戚に預けられる事無く、怪我が治るやいなや、この街で独りで暮らす事になった。

普通に考えれば、馬鹿げてる。だが、世の中というのは時にこんな馬鹿げた事がまかり通ってしまう。
そして、そのような理不尽を翔太郎は良しとしない。放っておけない。どうしても関わってしまいたくなる。

『いかなる時も情に流されない鉄の男』、ハードボイルドを目指す彼であったが
その点で彼はお人よしであり、ハーフボイルドであった。

「えーっと……マミちゃん?」

亜樹子が、そんな空気を破るように話しかけていた。静かに顔をあげ、マミはそちらへ向かい合う。

「……はい、なんですか」
「そのさ、朝はごめんね? いきなり声かけちゃったりして驚いたでしょ」
「……別に」

どうやら、完全に壁を作られてしまったようだ。仕方のないことだ、と亜樹子は思う。
自分だって、もし何の連絡も寄越さない親戚から探偵を送られたとしたら、良い思いなんて絶対しないに決まっている。

でも、だからってこのまま彼女を放っておくのは絶対にありえない。
こういう人を放っておけないのが、亜樹子という人間だった。

「よし――買い物行こう!」
「え?」
「買い物! マミちゃん、暇でしょ?」
「それは……」
「なら、決まり!」

戸惑うマミの手を取り、亜樹子は取り立ち上がった。そして、そのまま彼女の手を引いてショッピングモールへと歩き始める。

「おい、亜樹子!?」
「翔太郎君、お代はよろしく。私、これからマミちゃんと買い物行って来るから!」
「はぁ!?」
「あのっ……」
「ほらほら。私、この街なんて初めてでね? こんなでかいショッピングモールなんて
 来た事ないんだよね。だから、案内してね!」

マミの都合もお構いなしといった感じで、嵐のように喫茶店から亜樹子はマミを連れて出て行ってしまった。
良くも悪くも行動力に溢れている亜樹子にしかできない芸当であった。

「くそっ。亜樹子め、人に会計任せやがって――――って、なんじゃこりゃああああああああ!」

気づけば、テーブルに空っぽのパフェとケーキとコーヒーとジュースが積まれていた。
そして、

「あああああんじゃこりゃあああああああ!!」

会計のレシートを見て、また翔太郎は叫んだ

***

「見滝原……実に興味深い街だ」

フィリップは、ショッピングモールのオープンテラスからこの街を眺めていた。
風都以外の街に来るのは、フィリップという名を与えられてから初めての事であり、やや、興奮していたのは事実であった。

「よし、検索を開始しよう」

両腕を広げ、フィリップは目を閉じる。

「キーワードは【見滝原】」

そして、フィリップの脳内に、厖大な数の本棚が現れる。


――地球【ほし】の本棚


それは、地球のデータベース。フィリップは、この地球というデータベースから情報を引き出す事のできる、いわば、生きた百科事典であった。

12……いや、今では13年前。彼は一度死んだ。
風都の富豪である園咲家の長男、園咲来人であった彼は、父である園咲琉兵衛らの発掘した地球への意志の接続ポイント、『ガイアゲート』へ転落した。

その時に彼は死亡したはずだったが、肉体はデータとして再構成され、再びこの世に蘇った。

そして、彼は数多くの困難を相棒である翔太郎や亜樹子達と乗り越え、こうして彼はこの地球上で、一人の人間として今も生きているのであった。

「――さて、どれから調べようか?」

視覚情報として構築された、見滝原という街についてのデータベースの本棚を、フィリップはゆっくりと歩いて見て回る。
歴史、食文化、人口の推移、住民の分布、産業、店舗、見滝原という街についてのあらゆる情報が、そこにある。

「やはり、アキちゃんや翔太郎の好みから考えて、見滝原名物の料理店からに
 するべきだろうか」

いつもの癖である顎に手を当てる仕草をしながら、見当をつける。
これまでの彼ならば、自分のためだけに検索を行い、他人の事など一つも気にもかけなかったはずなのだが、最近はこうして他人の事も時折考えるようになった。
そして、『見滝原の名店』が記載されたデータベースに手をかけようとして

「――うわっ?!」

全身を襲う衝撃に、フィリップは、データベースから離れ現実世界に帰還した。
地球の本棚にいる間、フィリップは完全に無防備、普通の人からすればただそこに目を瞑って立っているだけにしか見えない。

「あなた……」

上から降ってくる少女の声に、フィリップは、今自分が尻餅をついてる事を認識する。

「こんなところで、上の空で突っ立ってないで。危ないわ」

冷たい声に、フィリップはその少女へ視線を向ける。
黒髪にどこかの学生服に身を包んだ、容姿端麗な少女がそこにいた。

「これは申し訳なかった。しかし、普通に考えれば君には僕を避けてそのまま
 通り過ぎる事も出来たはずだが?」
「…………」

どうやら、気分を害したようだった。こういった人の心の機微は、まだフィリップには理解しかねる部分も多い。

「……それも、そうね。申し訳なかったわ」
「いや、僕は気にしていない」
「…………」

また気分を害したようだった。顔には出ていないが、全身からそんな雰囲気が滲み出ている。
やはり、人の心を理解するのは難しい、とフィリップが思っていると、

「―――ッ!」
「うん?」

突然ハッとした表情を浮かべ、少女はあらぬ方向へ視線を飛ばした。
それにつられ、フィリップも同じ方向を向く。
吹き抜けのショッピングモール、そのはるか階下、一階に白い生き物がいた。

「………ッ!」

少女がいきなり駆け出す。こちらの事など、完全に眼中にないようだった。
あっというまに少女の姿が消える。そのすばしっこさ、今事務所で飼っているミックにも負けず劣らずかといったところか。
もっとも、そんな事を考えただけであり、フィリップにとっては彼女の事など、既にどうでも良くなっていたのだが。

「……おや?」

彼女が去った後に、リボンが落ちていた。ピンクのリボンだった。
先ほどの少女はカチューシャをしていたが、状況から考えて、恐らくこれは彼女のもの、そう考えるのが妥当であった。

いつものフィリップならば、そこまで推理して、終わりのはずだった。
それを気にかける事無く、無視して、また検索をしていただろう。
だが、

「……仕方がない、彼女に返すとしよう」

それを拾うと、パーカーのポケットに突っ込み、彼女を追い始めた。
それは、はたして、どのような因果だったのか。

それが彼女の、いや、彼女達の運命を大きく変える事になるなど、この時は誰も思いしなかった。


――【見滝原】という街に集ったイレギュラーの物語が動き出す


仮面ライダーW & 仮面ライダーOOO & 魔法少女まどか☆マギカ


       Fの契約/少女と魔法と仮面ライダー


***

今朝会ったばかりの女性、亜樹子に連れられて、マミはショッピングモールの中を散策していた。
亜樹子は、よほど珍しいのか、先ほどからキョロキョロと辺りを見てばかりだ。

「へー、さすがショッピングモールだね。色々あるじゃん!」
「そうですね」

なんとなく、相槌。
彼女の物を言わせぬ勢いにつられて来てしまったは良いが、正直なところ、マミ自身もこのショッピングモールに詳しいわけではなかった。

放課後になれば魔女を探して街の中を歩き回り、パトロールが終われば家に帰って、遅い夕飯を食べて寝るだけの生活をしていたマミにとって、こんな普通の女の子がするような買い物はほとんど無縁だった。
だから、キリの良いところで帰れば良い。そう思っていた。
しかし、

「おおっ! ここって家電が滅茶苦茶安いじゃん! ふむふむ……3割引か。アリね。
 ねえ、マミちゃんはどう思う?」
「……えっと、良いと思います」
「だよねー! うっし! すいませーん! これ買いまーす!」

「ああっ! この本、風都では売切れてて買えなかったのだよ!? すごっ! うわ、すごっ!」
「そんなに、すごいですか?」
「すごいなんてものじゃないよ!? いやぁ、私ってばラッキーガールねぇ……」

「なんと! 風の左平次AtoZのDVD! 今日発売日だったとは……マミちゃん、知ってる?」
「え? 何を?」
「風の左平次! これね、滅茶苦茶面白いのよ、これ! 見たことある!?」
「あの……ちょっぴりだけ」
「よし! だったらマミちゃんとは理解しあえるわ……フレンドね、これ」
「あはは……」

気づけば、亜樹子のペースに乗せられて既に1時間近くが経っていた。
不思議な人だと、思う。まるで他人の事を考えてない行動なのに、その事にさして嫌悪感が起きない。
むしろ、心地よいとさえ感じていた。

今もこうして亜樹子はマミの手を取り、ああでもない、こうでもないと言いながら色んな店を眺めてはマミに話しかけてくれている。

まるで昔からの友達のように。まるで家族のように。
手から伝わる温もり、自分を見てくれてるという確かな実感、それが伝わってくる。
包み込まれるような安心感と、いうのだろうか。それはまるで、まるで――

――――おかあさん

胸がズキンと痛むのを感じた。その痛みが苦しくて、つい、亜樹子の手を離してしまった。

「マミちゃん?」
「あっ……」

亜樹子が、心配そうな表情を浮かべてマミを見ていた。
こうして他人に心配してもらうのはいつ以来の事か。しかし、今はその心配が辛い。
喜びは、一瞬にして悲しみへ転じる。

そして、マミの心はもう一つの真実を彼女自身に投げかける。
それは今の今まで頭の中から抜け落ちていた、残酷で冷酷で、非情な真実。


――自分が、魔法少女であるという真実


足が、亜樹子から、一歩引く。ああ、そうだった、と、マミは自分の行いに愕然とする。
魔法少女になった時から普通の生活は捨てたはずなのに、何を考えているのだ、と。

ただ独り、人に害をなす『魔女』と戦いを続け、死と隣り合わせの戦いを繰り広げ。
全身を傷だらけにして戦い、痛くて苦しくて、泣いて、ずっと独りでいたのに。

もう普通の人じゃないから、仲間なんて誰もいないから。そう決めて、ずっと独りでいようと心に決めていたはずなのに。

それを今の今まで忘れるなんて。

「ごめん……なさい」
「え?」

ようやく胸の奥から搾り出した言葉は、震えていた。亜樹子は、心配な表情を崩さず真っ直ぐにマミを見ていた。
その視線に耐え切れず、マミを顔を逸らす。
そして、

「あ――待って、マミちゃん!!」

マミは彼女に背を向けて走り出した。後ろから亜樹子が追いかける気配があったが一目散に駆けた。
魔法少女の体は、常人のそれとは比べ物にならない力を秘めている。
たとえ大人であろうと、引き離す事は造作もない事だった。



どれだけ走ったか、既にショッピングモールの外れまでマミは来ていた。
人の姿はなく、そこにはマミ一人しかいなかった。
見上げると、そこはまだ建設途中の一角なのか、建設中の看板と工事のシートがかぶせてある。
音はなく、今日は工事は休みのようだった。

「…………」

ほんの数時間――ほんの2,3時間しか経っていないはずなのに、何日も過ぎたような感覚があった。
他人との関わりが希薄だったマミの生活には、あの時間はあまりにも濃密過ぎた。

「―――」

後ろを振り返ってみても、そこには誰もいなかった。
あるのは、夕焼けに照らされたモールの床がはるか先まで続いてるだけであった。
その先から聞こえてくる人の喧騒が、なぜか今のマミには胸に突き刺さる。

「……行かなきゃ」

自分の本分を思い出す。魔女を倒す魔法少女としての本分を。
胸元にキーホルダーとして持ち歩いてるソウルジェムを取り出そうとして――

『まどか――助けてッッ!!』

キュゥべえのテレパシーがマミの耳に届いた。

「キュゥべえ!?」

必死な叫び声にマミは声を上げる。尋常でない事態を察知し、『たった一人』の友達の危険にマミは駆け出した。

***

「あー……くそっ。亜樹子のやつ、この食費、後でぜってえ経費で落としてやる……」

財布の手持ちを確認して、翔太郎は頭を抱えた。
せっかく風都以外の場所に来たのだからと奮発して下ろしてきたお札が、綺麗サッパリ翔太郎の財布の中からなくなっていた。

「つかよ、ここの物価おかしいだろ……なんで軽食だけでこんなに……」

ブツブツと呟いてると、亜樹子がこちらへ走ってくるのが見えた。

「あ、こら、てめえ。亜樹子、お前な――」
「大変、翔太郎君!! マミちゃん、消えちゃった!!」
「――んだとぉ!?」

亜樹子は、翔太郎に説明した。慌ててはいたが、大事な部分を逃さず端的にまとめて。
かつては足手まといだった亜樹子も、その辺りは成長していた。

「――何かしたのか、お前?」
「まさか! ただ普通に買い物して、おしゃべりしてただけだよ!」
「あー……なんだか訳わかんねえな。まあ良いさ、とにかくその様子だと良い予感はしねえ。
 亜樹子、とっととマミちゃんを探すぞ!」
「……うん!!」

そして、翔太郎たちは駆け出した。この大きなショッピングモールから一人の少女を探すのはなかなかに厳しいものがあるが、そうは言ってられない。

「しっかし……こうもでけえと探すのも一苦労だ。亜樹子、目星は?」
「ごめん、ない……」
「そうか」

亜樹子を翔太郎は責めなかった。

「でも、どうする翔太郎君? これだけ広いと……」
「そんな時こそコレの出番だ、亜樹子」

立ち止まると、翔太郎は胸元のベストから、4つのUSBメモリ型のツールを取り出した。

『スタッグ』
『スパイダー』
『バット』
『フロッグ』

メモリから音声が発せられ、翔太郎は持っていた携帯電話、デジタルカメラ、腕時計、
サウンドレコーダーにそれらを一気に差し込んだ。

そして次の瞬間、それらが変形し、生物のような形態を取り始めた。
携帯電話はクワガタムシに、腕時計はクモに、デジタルカメラはコウモリに、
そしてレコーダーはカエルに。

それはメモリガジェット、フィリップ制作による、鳴海探偵事務所が誇る探偵ツールであった。

「探偵7つ道具ならぬ4つ道具……頼んだぜ、お前等? この子を探してくれ」

主である翔太郎の声を認識し、彼の手に握られた巴マミの写真を確認するやいなや、自律行動する小型ロボット達はすぐさま散らばっていった。
それを見送り、翔太郎も亜樹子へ向きなおす。

「よし、俺達も行くぞ亜樹子。とりあえず、人気の多いところはアイツらでいける。
 俺達は人気のないところを探すぞ!」
「うん!」

そして、翔太郎たちはショッピングモールのはずれへと駆け出した。
奇しくもそれは、彼女のいる場所であった。

***

まどかは、工事中の区画内に入り込んでいた。自分に助ける声に導かれて、奥へ奥へと進んでいく。

多少の恐怖はあったが、その必死な声を放っておけなかった。ましてや、自分に助けを求める声を無視するなど、まどかにはできなかった。

静かで、音もなく、暗い廊下を進んでいくと、突然

「きゃっ!?」

白い生き物が自分の目の前に転がってきた。
全身を白い毛か何かで覆われている、犬とも猫とも似つかない不思議な生き物だった。
そして、その白い毛は、今は真っ赤な血で染まっていた。

「まどか……」
「え?」

その生き物は自分の名前を呼んだ。
本来、人語を解する生き物自体に驚くべきだが、まどかはそれに驚く事はなく、自分の名前を呼ばれたことに驚いた。

「もしかして、あなたなの……?」

怪我をしていたその生き物を自分の腕の中に抱える。苦しそうだった。
いったい、誰がこんな事をしたというのか、そう思っていると

「そいつから離れて!! まどか!!」
「ッ!!??」

激しい怒声が、まどかに降り注いだ。
そこに、暁美ほむらはいた。奇妙な衣装に身を包んで、絶対零度の形相で廊下の奥からこちらへ歩いてくる。
その絶対零度の奥に覗いた怒りの凄まじさに、まどかは身を竦めた。

「そいつを渡して」
「ひっ……助けて、まどか……!」

白い生き物も怯えて、まどかの体に強くしがみついた。
その様子に、ほむらの纏う空気が怒りを強めた。

「……相変わらず汚い真似をするのね」

静かだが、怒りを滲ませた口調でまどかへ、白い生き物へ、近づいていく。

「ほむらちゃん……これ、ほむらちゃんがしたの……?」
「そうよ」

否定しなかった。むしろ、当然とでも言うように。

「そんな! 駄目だよ、こんな酷い事! 生き物を傷つけるなんて!」

そう、まどかの価値観からすれば当然の言葉。
動物を、人を、誰かを傷つけるのはいけない、そうママからも教えられてきたし人として当然の事。
だから、そう言ったまでなのだが、

「――鹿目まどか、あなたには関係ない」

まるで、それは生き物ですらないといった目で、ほむらはこちらを見返した。
また、ほむらはまどかと距離を詰めた。一歩一歩、まどかへとほむらは近づく。

「どいて。あなたを傷つけたくないけれど、でも、もし退かないというのなら――」

そして、その手がまどかの方へとのばされ――

「――まどかぁッッ!!」

消火器の煙が、廊下いっぱいにぶちまけられた。

「なっ……!?」

いつ現れたのか、さやかがほむらに向かって消火器を噴射していた。
白い煙に撒かれ、ほむらの姿がその中に掻き消えていく。

「逃げるよ、まどか!!」
「さやかちゃん……!」

さやかの手を取り、まどかは白い生き物を抱えて走り出す。

「待ちなさ……っ!」

後ろからほむらの声が聞こえたが、もう構ってる暇はなかった。
今は逃げないと、頭の中はそれだけでいっぱいになっていた。
さやかに手を引かれ、まどかは、走り出した。



そして、どれだけ走ったのか、工事区画のどこを走っていたのか。
走り疲れ、二人は立ち止まる。

「はぁ……いったい何よ、アレ。秀才とかそういう部類の人間には変人が
 多いっていうけど、あれじゃコスプレ通り魔じゃん」

さやかが、訳が分からないといった表情で呟いた。

「うん……」

それにまどかも頷く。理由はどうあれ、彼女が動物を傷つけようとしていたのは間違いがなかったし。

だけど、まどかには、不思議と彼女が悪い人間には到底思えなかった。
理由は分からないが、ただ、そういう確信があった。
その理由が何なのかは、今のまどかにはまったく検討もつかない事だったが。
と、そんな取りとめのないことを考えながら歩いていると、

「……まどか。向こう、人の足音がくる」
「え?」

さやかに言われて、気づいた。廊下の暗がりの奥、確かに人の足音が響いていた。

「また、さっきの転校生かもしんない……」

静かに、後ずさり。まどかを庇うようにさやかが前にくる。
廊下の奥からやってくる誰かを待ち構える。
そして、その暗がりから現れたのは――


「あれ……君、まどかちゃん?」


火野映司、彼だった。


「しかし、驚いたよ。まどかちゃん達みたいな女の子がこんな危ないトコにいるなんて」
「それは……その」

まどかは、映司に先導してもらいながら、この工事区画を進んでいた。
映司を先頭に、まどかとさやかがそのスグ後ろを行く。

「ちょっと色々あって……」
「そうなんだ。あ、もしかして、その白い……ネコ? それが関係あるとか?」
『!!』

まどかの腕の中で、白い生き物が大きく反応した。

「そういえば、アタシも聞きそびれてた。ねえ、まどか。それ、何?」
「えっと……良くわかんない。でも、助けてって……」
「どゆこと、それ?」

白い生き物をマジマジと見ながら、さやかがまどかに問い返した。
もちろん、まどかに答えがあるわけでもなく、まさか、「テレパシー」とも答えるわけにもいかず、お茶を濁すしかなかった。

そしてそんな3人を、一番後ろからアンクが眺めていた。いや、正確には映司が助けた少女の腕の中に収まっていた生き物を、だ。

「カザリの代わりにアレと会うことになるとはな。800年ぶりとは言え、
 珍しい事もあるもんだ」

人間のものに擬態した自身の右手を開いたり握ったりしながら、アンクは誰にも気づかれないように呟く。

だが、それだけ。アレの生態にも、アレの行動にも、アンクはさして興味はない。
己の欲望とメダルについて関係のない事には恐ろしいほど無頓着だった。

「おい、映司。いつまで、そいつらに付き合うつもりだ?」
「とりあえず安全な場所まで。カザリを探すのはそれからでも良いだろ」
「…………チッ!」

映司お決まりの『他人を放っておけない病』に、アンクはまたも渋い顔をした。
人間のものに擬態した自分の右腕を大きく振って、ストレスを体で表現する。

「あの……良いんですか? あの人に悪いような……」
「ああ、良いの良いの。アイツ、いつもああだから」
「いつも、ああなんだ……」

感じ悪いなぁ、と小さく呟くさやかの言葉に微かに苦笑いをしながら、まどか達は出口がある方向へと歩みを進めた。


――そして、異変は突然起きる。


「え……あ、何、コレ……!?」

さやかが、凍りついたような悲鳴をあげた。先ほどまで歩いていたはずの廊下が物理的に奇妙に歪んだ。
鉄のフェンスがぐにゃりと雨細工のように溶け曲がり、世界が原色の絵の具を混ぜたような目に悪い色へと変じていく。

到底人語のものとは思えない言語が空を飛び、奇妙なオブジェが乱立し、壁はいつのまにか消滅し、幾つもの扉が、信号機が、あらゆるものが、溢れかえった。

「アンク!!」
「あ?」

緊急事態を告げる映司の声に、しかし、アンクは動じない。むしろ、面倒といったような色さえある。

「これ、まさか……!!」
「いや、これはカザリの仕業じゃないな。グリードはこんな手間はかけん」

いつもの調子でアンクが映司に返す。
そういってる間にも世界はどんどんと奇妙に歪み、人の嫌悪感を催すような――まるで呪うような空間へと変わり果てた。

「ひ、火野さん……!」
「まどかちゃん、さやかちゃん、俺から離れないで!!」

二人を自分の後ろに隠し、映司が彼女達を守るように立った。
周囲から放たれる明らかな悪意と殺意を、映司は敏感に感じ取っていた。

自分達を『何か』が取囲んでいる。金属が擦れあうような音が空間に反響している。
空を飛ぶ、園芸用の剪定鋏。薔薇の花と薔薇の花達。

「夢だよね!? これ、こんなの……? じょ、冗談だよね!?」

さやかの張り詰めた叫び声に、映司もまどかもアンクも答えない。
まぎれもない現実だと、無言のうちに伝える。

そして、怪異が現れる。

「ひっ……!」
「ぁ……!」

まどかとさやかが、ひきつった悲鳴を上げた。

映司達の周囲から悪趣味な、どこかのお菓子会社のマスコットを模したような
生き物が大勢を率いて現れたのだ。

映司たちを取囲み、意味の分からない叫び声をあげるバケモノに、さやかとまどかは竦み、映司の服を強く握り締めた。

「アンク!!」
「コイツら、ヤミーじゃないな。メダルは稼げそうにもない」
「そういう意味じゃなくて!!」

映司がアンクへと手を伸ばした。その目が明らかな意志をアンクへ告げる。
その事を分からないアンクではなかったが、その表情が不満で染まる。

「アンク、早く!! メダル!!」
「映司、コイツらはヤミーじゃない。分かってんのか?」
「そんな事言ってる場合じゃないって!! は・や・く!!」

一瞬の視線の攻防――そして、アンクが大きな溜息を吐く。

アンクは懐から薄いケースを取り出し、それを開いた。
中に収められているのは、メダル。金色に縁取られた、動物の姿を刻印したメダルだった。

「これで充分だろ」

そして、アンクは抜き取った三枚のメダルを映司へと投げた。
空を舞う三枚のメダル。赤・黄・緑の三色。それを映司が掴み取る。

「――まどかちゃん、さやかちゃん。二人とも、下がってて」
「え……?」

映司の服の裾を話、二人が少し、後ろに下がる。

「大丈夫。君達は、俺が守るから」

振り返り、二人へ笑顔を向ける映司。そして、映司は怪物へとその瞳を向けた。

オーズドライバー――映司をオーズへと変えるデバイスが腰に巻きつく。

オーズ、グリードと戦うために生まれた戦士。オーメダルを使い、そのエネルギーを用い、戦う者。

両手に握ったメダル3枚が、ドライバーのバックルに空いた挿入部にセットされる。
ドライバーを傾け、映司は、右腰部にマウントされたオースキャナーを握り締めた。
そしてスキャナーが金属音を奏でてスライドされる。

「変ッッ身ッッ!!」

映司の叫び声が空間に響き渡り、オーメダルに秘められたパワーがスキャニングによって解放。
ベルトを通じて映司の全身へと溢れ出す。


『タカッッ!』

まどかはそれを聞いた。

『トラッッ!』

さやかはそれを聞いた。

『バッタッッ!』

そして、バケモノたちもそれを聞いた。


溢れ出したパワーは音声となって、映司をメダルの形を取って覆っていく。
スキャンされ、溢れ出したエネルギーが脚部、胴体部、頭部へと刻み込まれていく。
そして、輝きは最高潮に達し、

『タ・ト・バッ! タトバ、タットッバッッッ!!』


――奇妙な歌が、奇妙な世界に響いた。


****


「っ……! こんな時に!!」

ほむらは焦っていた。周囲に漂う明らかな異常な空気を、彼女は感じとっていた。
本来ならば、こうなる筈はなかった。
『また』イレギュラーな事態が起きてしまった事に、ほむらは唇を噛み締めた。

「まどか……まどかを早く探さないと――!」

そして、走り出そうとした瞬間、

「ああ、ようやく見つけた」

まどかでも、誰でもない声が、ほむらへと発せられる。

「――ッ!」
「ん?」

振向くほむらの目に最初に映ったのは、彼女より背丈のある少年の姿だった。
そして、それは先ほどほむらとぶつかった、彼――フィリップだった。

よりにもよってこんな時に、そんな表情を浮かべてほむらはフィリップを睨む。

「あなた……!」
「これは君のものだろう? 先ほどぶつかった時に落としていた」

ほむらの言葉を遮り、フィリップがほむらへリボンを差し出す。
ピンク色のリボン、それを見て、ほむらの顔色が一瞬で変わる。

「返して!!」
「もちろん、そのつもりだが――おっと」

もぎ取るようにリボンを奪われ、フィリップは軽く驚いた表情を浮かべた。
先ほどの彼女の冷静さからは想像もできない行動だった。

「それは、君にとって大事なものなのかい?」
「……関係ないわ、あなたには」

そして、再び冷静さを取り戻したのか無表情に戻った彼女に、フィリップは軽い好奇心を覚える。

「なるほど、実に興味深い」
「何が?」
「君という存在がだ」
「…………」

その目が、氷点下の冷たさを持ってフィリップに向けられる。
明らかな誤解を招いたのは間違いないが、あいにく、フィリップにはその事に気づけるような感覚は持ち合わせていなかった。

「去りなさい、今すぐココから。さもなければ――」
「さもなければ?」

問い返すフィリップ。その言葉にほむらが答えようとして――止まった。

「――――もう、遅いわ」


呟く、ほむら。そして――


「――ん?」

異変が、フィリップたちを包み込んだ。


***


「ああああんじゃこりゃああああああああああああああ!!!!!」

翔太郎は、叫んだ。これ以上ないほどに叫んだ。
というか、叫ぶ以外にこの理解不能とも言える空間に対する反応を翔太郎は思いつかなかった。

「うっさいわ、ボケーーーーッッ!!」

そして、亜樹子は翔太郎をハリセンで張り倒した。

「ッ痛ぁ…………って、うし。冷静になった」
「なったんかい!」

完成されたボケとツッコミだった。

「しっかし、これはどういうこった? マミちゃんを追いかけて工事現場に踏み込んだと
 思ったら、イキナリこれだ。いつから世界はファンタジーになった?」
「ほんとにね。しかも、無駄に悪趣味」

先ほどは叫んでいた翔太郎だが、既にその思考は冷静そのものだった。
そして、それは亜樹子もだった。

互いに、互いの背を守りながらその空間の奥へ、奥へと進んで行く。

「それにしても、フィリップがいないのが問題だな。スタッグは回収してたから
 良いもののここって電波通じるのか?」
「試してみる? なんだったら……って」

瞬間、亜樹子の顔が凍り付いた。周囲を囲む実に趣味の悪いバケモノ達に、亜樹子が口端をひきつらせる。

「しょしょしょ、翔太郎くん!? これってもしかして…………もしかして!?」
「……亜樹子」
「なに!?」

「――――逃げろォォォォォォォォォ!!!!」

翔太郎たちは全速力で走り出した。翔太郎達の存在に、バケモノ達も甲高い叫び声をあげて翔太郎たちの後を追いかけ始める。


「ああああああ!! 何よあれ、何よアレ、何よアレ!! 何よあれーーー!!
 ドドドドド、ドーパントより気持ち悪いーーーーー!!!!」

「口を動かしてる暇あったら走れ亜樹子おおおおおおおおお!!!」

「こんなのアタシ聞いてないいいいいいいいいいい~~~~~~~!!!!!」


バケモノとの追いかけっこ、翔太郎たちは必死で走る、走る、走る。
その後ろをバケモ達が、わらわらと数を増やしながら追いかける。

「多い! 多い! 多すぎ! 多すぎるって! 黒いアレ!! アレくらい多い!!」

「おおおおおおおお! ぬおおおおおおおおおお!!!」


訳の分からない空間を、翔太郎と亜樹子は必死で駆け回った。
右、左、右、右、分かれ道を曲がっては猛ダッシュをする。
かつて、浮気調査で見つかった時に、浮気相手のヤクザの集団に追いかけられたのを思い出すような状況だった。

と、次の瞬間


「――――ぐほぉ゙!?」
「――ー―のほぉ゙!?」


翔太郎と亜樹子は同時に潰されたカエルのような声を上げて、横道に引きずり込まれた。

「げふぉ!? ごふぉっ!? 」
「だ、誰だ!? な、何しやが―――って!?」

抗議の声を上げようとして、翔太郎は、代わりに驚きの声を上げた。

「やあ、翔太郎。それにアキちゃん。無事だったかい?」
「フィリップくん!? え、なんでフィリップ君もここに!?」
「とりあえず、静かに。アレに見つかるのは困るだろう?」

そう言いながら、フィリップは、静かに、道の向こうをあらぬ方向へ走っていくバケモノ達を指さした。

「しっかし……ありゃ、なんだ? フィリップ、知ってるか?」
「残念ながらだね、翔太郎。もっとも、先ほどまでいた彼女は、何か知ってた様子では
 あったみたいだが」
「彼女?」

亜樹子が、首をかしげて質問した。

「ああ。奇妙な格好をした女の子だ。気づいたら、何処かへ行ってしまったがね。
 先ほどはどこかの学校の制服を着ていたから、恐らくは学生だとは思うんだが……」
「それって……!」

学生、という言葉に亜樹子が大いに反応した。そして、それは翔太郎も。
互いに顔を見合わせ頷く。

「亜樹子、もしかすっと……!」
「うん! マミちゃんかもしれない!」

そして、

「――――!!」

あのバケモノが、翔太郎達を見つけ、叫び声を上げた。
一瞬で数を増やし、翔太郎達へとバケモノ達は迫る。

「ちっ! マミちゃんを探す前に、まずはこっちを片付けねえとな――フィリップ!!」
「やれやれ、仕方ないね」

そして、翔太郎とフィリップは、USBメモリ型デバイス『ガイアメモリ』を取り出す。
そう、それはドーパントを生み出す装置。しかし、彼等の持つそれは、違う。
人々を傷つけるのではなく、人を守るためのもの。

そう、彼等こそが、仮面ライダー。風都を守る都市伝説。

いつ装着されたのか、翔太郎の腰にはベルトが巻かれ、変わった形のバックルが。
それは同時、フィリップの腰にもデータとして転送され、装着される。

『サイクロンッッ!!』

『ジョーカーッッ!!』

ガイアメモリのスイッチが入り、メモリに封じられた地球の記憶が咆吼を上げる。
地球の囁きであるガイアウィスパー。囁きとは到底思えないその雄叫びが、それに秘められたエネルギーの大きさを示す。

「変身!」
「変身!」

そして、翔太郎とフィリップが叫んだ。

ベルトのデバイス、ダブルドライバーに設けられた片方のスロットにフィリップがメモリをインサート。

すると、それは瞬時にデータとして分解、翔太郎側のベルトへとセットされる。
同時、翔太郎もメモリを空いたスロットにインサート。ドライバーが展開する。

『サイクロンッッ!! ジョーカーッッ!!』

ガイアウィスパーが二度、咆哮した。

***

「はっ! たっ! セイヤァッッ!!」

迫るバケモノ達を、異形の戦士が蹴散らしていく。
その名はオーズ、仮面ライダーOOO【オーズ】。グリードと戦う者。

その戦闘は、3枚のメダルの組み合わせによるもの。
今、オーズはタカ・トラ・バッタによるタトバコンボの状態だった。

タカ――その優れた視力で、飛び掛る敵の姿と動きを、視界に収める。
トラ――飛び掛った敵を、展開したトラクローにて、引き裂く。
バッタ――左右から襲い掛かるバケモノから飛び退き、逆に蹴り倒す。

まさしく三面六臂、次々と襲い掛かるバケモノをオーズは倒す。

そして、眼の前で繰り広げられる光景を、まどかとさやかは呆然とした表情で見ていた。

「あれ……あの人だよね……?」
「う、うん……」

あれは、火野映司だった。姿形は完全に変わっていたが、その声は間違いなく彼のものだった。

『あれは……オーズ……』

腕の中の白い生き物が声を発した。

「え?! あ、しゃ、喋った!?」
「オーズ……? あなた、あの人を知ってるの?」
『うん、あれは……』

さやかの反応とは裏腹に、まどかは静かに尋ねていた。
白い生き物は、苦しそうな表情を浮かべて、二人を見上げる。
しかし、

「なるほどな、お前は知っていて当然か」

アンクが、その間に割って入った。

『君は……ボクが見えるのかい……!?』
「見えるもなにも――覚えてるだろう、お前?」
『まさか、君は……』

驚きの声をあげる生き物に、アンクはわざとらしいと言った声で返す。
そして近づこうとするが、そのやり取りの意味を、二人は知る由もなく、

「あの、待ってください! この子、怪我をしてるんです! だから……!」
「そ、そうだよ! 怪我してるのに、何しようとしてんのよ!」
「……ふん」

それを庇おうとする二人に、アンクを鼻で哂う。

「な、何よ!?」

そして、興味をなくしたとでも言うのか、背を向け、オーズと呼ばれた戦士のいる方向へと歩き始めた。

「ちょっと! 危ないってば!!」

さやかが叫ぶが、しかし、聞いてすらいないのか彼女の言葉をアンクは無視する。

「おい、映司。とっとと、そんな雑魚片付けろ」
「無茶言うなよ、アンク! こいつら……うわっと! 数多いんだって!
 コンボないと倒すの大変なんだって!」
「は? バカか? ないものねだりするんじゃねえ」
「じゃあ、ウナギ! トラじゃキツいんだって!」

まるで平時のやり取りをしている二人に、さやかもまどかも愕然とする。
もはや、二人の理解を超えた世界。いや、とっくの昔に理解という行為自体意味をなくしていたのかもしれないけれど。

そして、その瞬間の忘我。まどかとさやかは自身の危険にすら、理解が及んでいなかった。

二人の背後に迫るバケモノの姿に、鷹の目を持った映司は、その時点でようやく気づいた。しかし、遅すぎた。

「さやかちゃんッッ!! まどかちゃんッッ!!」

大声で叫ぶ映司に、二人が振り返る。見上げると、鋏を握りしめたあのバケモノが今にもその手を振り下ろそうとしているところ。

「ひっ――――」
「あっ――――」

喉の奥からは息しか漏れない。世界がゆっくりと進んでいく。


振り下ろされた鋏が、さやかとまどかを狙い――

映司が叫び声を上げて二人の下へ走り出し――

アンクは、それをただ眺めてるだけで――


そして――

「―――!?」

――光が、バケモノを退けた。



「なっ!?」
「ほぉ……」
「え―――?」
「へ―――?」

その場にいた人間が、それぞれ四者四様の反応を示す。
地面に配置された鎖は淡く光を帯び、結界となって、まどかとさやかを守っていた。

「あなた達、危ないところだったわね――でも、もう大丈夫!」

スっと、異空間の暗がりから一人の少女が現れた。そして、まどかの腕の中にいる生き物を見て、彼女たちに微笑んだ。

「あなた達がキュゥべえを助けてくれたのね……ありがとう。
 その子は、私の大事な友達だから」
「あの……私、この子に呼ばれて!」

まどかの言葉に、目を細める。

「そう……そうなのね。でも、その前に――!」

結界の外に、再びバケモノ達が現れたのを見て、彼女――マミは笑んだ。

「――まずは、一仕事片付けちゃっていいかしら!」

そして、マミは手に握り締めたソウルジェムを自分の体にかざした。
それは、先ほどの映司と同じように。

ソウルジェムから放たれた光がマミの体を包み、彼女の制服を別のものへと
変化させていく。
人から魔法少女へと、マミの力を真に発揮するための状態に変えていく。
そして現れるのは、お話の中に出てくるような魔法少女。

「何あれ!? 何あれ!? ねえねえ、アンク! あれ、何!?」
「うるさいぞ、映司」

興奮して声を上げる映司に、さも面倒だといった表情を浮かべた。
しかし、アンクの瞳はそれを見ていた。

「キュゥべえ――なるほど、今度はそう名乗っているのか、『奇跡売り』」

静かに、アンクは呟いた。

****

「うおらぁっ!!」

仮面ライダーとなった翔太郎が、バケモノの顔面を殴り飛ばした。

仮面ライダーW、左右二色の戦士。
翔太郎のボディをベースに、フィリップの意識を身に宿した、二人で一人のヒーロー。
その戦闘法は、左右にセットされたメモリを変幻自在に組み合わせて戦うやり方。

緑と黒のWは、ケンカ殺法とでもいうような戦い方でバケモノを沈めていく。

切り札の記憶、ジョーカーメモリ。
風の記憶、サイクロンメモリ。

特殊能力は持たないが運動能力に優れ、バランスの良いジョーカー。
風の属性を持ち、スピードを高め、風を自在に発生させるサイクロン。

格闘には、これ以上ないほどバランスの取れたメモリの組み合わせ。
しかし、やはり数が多い。

『翔太郎、数が多い。ここはトリガーでいこう』
「オーケー、フィリップ!」

右半身のフィリップの提案に従い、翔太郎が青のメモリを取り出す。

銃撃手の記憶、トリガーメモリ。

専用の武器、トリガーマグナムを用い、視力上昇、磁場フィールドによる足元の固定などの銃撃戦に特化した記憶。

攻撃を仕掛けるバケモノを軽やかに避け、左にセットされたメモリを一瞬で取り替える。
そして、再びドライバーが展開する。

『サイクロンッッ!! トリガーッ!!』

緑と黒が、緑と青へと変化。胸に現れたトリガーマグナムを取り、Wが即座に
バケモノへと銃を掃射する。
マシンガンのようにエネルギーの銃弾がバケモノへと降り注ぎ、彼等を一瞬の内に穴空きチーズにしてしまった。

「ま、ざっとこんなもんさ」

ガンマンのようにトリガに指をかけ、銃を一回転させて腰に収める動作をする翔太郎。
周りにいたバケモノ達は、今の一斉掃射で全滅していた。

「かっこつけてる場合じゃない! 早く、マミちゃんを探さないと!」

亜樹子の声が、後ろからかかる。
振向くと、そこにはフィリップの体を背負った亜樹子の姿。
Wに変身している間、フィリップか翔太郎のどちらかの体が無防備になるのがこのWの弱点であり、そんな彼等の弱点を補佐するのが亜樹子の務めであった。

「それもそうだな……フィリップ、一度変身を解除するぞ」

メモリを抜き取り、変身が解除される。中から翔太郎が現れるのと同時、フィリップが目を覚ます。と、その時、

「……ん?」

一人の少女が、翔太郎達の側を走り去った。黒髪の、奇妙な格好をした少女。
間違いなかった。その姿を見て、フィリップが声を上げる。

「翔太郎、彼女だ。彼女がさっき言っていた子だよ」
「あれはマミちゃんじゃねえ……だけど」
「こんな危険なところに、女の子一人なんて、アタシ、放っておけない! 
 翔太郎君、フィリップ君、追いかけるよ!」

全員が首肯し、少女を追いかける。


そして――


***


映司は呆気に取られた表情で、いや、マスクで隠れてはいるのだが、今起きた事に対して全身でそれを表現していた。

中学生の女の子が変身して、踊るようにマスケット銃を何百も召喚して、それで、バッタ足で跳ぶのと同じくらいの高さまで飛んで、それを一斉掃射して、バケモノを撃ち抜いて、それで。

その辺りで、映司の思考回路は焼ききれた。

「アンク……何あれ」
「さあな」

辺りに立ち込める硝煙。しかし、不思議とあのむせ返るような匂いはなく、むしろ花のような香りが立ち込めている。

「ふぅ……」

地に降り立った少女が、軽く息を吐く。そして、視線をこちらに向けた。

「アンク、俺見られてる! 見られてるって!」
「だからどうした」

少女はこちらへと歩みを進めてくると、映司――オーズの前で立ち止まった。

「誰か知らないけど、あなたもキュゥべえと彼女達を助けてくれたんですよね?
 ありがとう。貴方がいなかったら、間に合わなかったかもしれない」

「お礼言われちゃったよ、アンク」
「だからなんだ」

イチイチ反応を求めてくる映司に、アンクがこれまでない程にうんざりと言った表情を浮かべた。

しかし、その二人のやり取りが面白いのか少女はクスリと笑う。
そして、振り返り、まどかの方へとやってきた。

「ありがとうね、本当に」

優しい微笑をまどかとさやかに向ける。それにようやく緊張感が解けたのか二人はへたりとその場に座り込んだ。

「こ……腰抜けちゃった」
「たはは……アタシもだよ、まどか……」

世界が、再びあの工事区画へと変わる。その変化は一瞬だった。

「元に戻った……」
「ああ、そうみたいだな」

映司がオーズの変身を解く。そして、再びあのエスニック風の衣装を着た彼自身の姿がそこに現れる。

次に映司があの少女を見た時、彼女はまどかの側により、あの白い生き物、少女がキュゥべえと呼んでいたそれを手当てしていた。

淡い光が彼女の手から漏れ、見る見る内に、その傷が塞がっていく。

「アンク」
「だから聞くな、馬鹿」

全ての傷が塞がり、キュゥべえが、スクっと立ち上がる。
そして、まどかの腕から飛び出し、地面へと四本足で立った。

『ふぅ……ありがとうマミ、助かったよ!』
「そのお礼、ちゃんとこの子達と、あの人に言わなきゃ駄目よ?」
『うん、それもそうだね』

そして、キュゥべえは、まどか達へと向き合う。

『ありがとう、まどか。さやか。そしてオーズ達』
「……」

アンクの瞳が、細まる。映司達が気づかないような一瞬、互いの視線が交錯する。
それは互いの事には踏み込まないという意思確認であった。

「え!? な、なんでアタシ達の名前を知ってるの!?」
『それはもちろん――』
「ごめんなさい、キュゥべえ。少し待ってもらえる?」

瞬間、少女は再びマスケット銃を取り出した。そして、その銃口がある一点に向けられた。
まどかとさやか、そして、映司たちもその方を見る。

そこにいたのは――あの転校生、暁美ほむら。

「魔女は逃げたわよ? 仕留めたいならスグに追いかけなさい?」
「私が、用があるのは――」

カチンと、激鉄を起こすような音。

「飲み込みが悪いわね。見逃してあげるって言ってるのよ?」
「…………」
「それに、あのキュゥべえの傷……やったのはあなたなんでしょ?」

それにピクンとほむらのまぶたが動く。

「そう……やっぱりなのね」

マスケット銃がしっかりと、ほむらへ突きつけられる。

「ちょ、君!?」

映司が、それに反応する。しかし、その腕をアンクが掴み、押し止める。

「アンク!!」
「いちいち首を突っ込むな、映司。俺達には関係がないことだろうが」
「そうじゃないだろ!!」

振りほどき、映司が二人の間に割り込んだ。

「……何のつもりですか?」
「なんか理由は分からないけど! でも、これはおかしいって!
 まずは、話し合って――」

その瞬間だった。

「うおぉぉぉぉっぉ!!」
「きゃあああああ!!」

激しい音が、鳴り響いた。巻き上がる土煙に、その場にいた全員が驚きその方へと目を向ける。

「いぃ……痛ぁ……」
「ふむ……どうやら、戻ってきたようだね」
「ちょ……お前等……その前に、俺の上からどけ……」

土煙の中から、覆いかぶさるように転がってくる3人の人影。
煙が晴れ、その顔が次第に識別できるようになる。

そして、ようやく煙が晴れきった時、

「――亜樹子、さん?」

マミの声が、

「ダブル!?」

映司の声が

「あなた……!」

ほむらの声が、

「へ?」
「は?」
「ん?」


そして、鳴海探偵事務所の面々の声が、そこに響いた。



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