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唯「第一次!」なのは「スーパー!」夕映「ロボット」シャロ「大戦です!」  第十三話 強襲! 熱砂のランバ・ラル

2011年06月28日 12:02

唯「まじーん、ごー!」

663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/03/02(水) 15:44:59.71 ID:mnu8E9pc0

 第十三話

 中央アジア オデッサのジオン軍基地

マ・クベ「シャナ少佐が、ドズル中将が左遷したシャナがキシリア様の配下になるという」

 ジオン軍突撃機動軍大佐マ・クベは卓上に置いた北宋の陶磁器を指で弾いた。

マ「しかも、ニュータイプ部隊の選出、指揮を任されるという。気に入らんな」

 端的に言うほど、マ・クベはシャナが気に喰わなかった。

マ「あやつは人に気にかけさせる才を持っている。ドズル中将の次にキシリア様だ。まるで娼婦ではないか」

 シャナはいずれ、自分の出世にケチをつける相手になる。
 芽は早いうちに摘んでおきたいところだ。

マ「キシリア様もご酔狂でいらっしゃる。いまだにニュータイプの存在が証明されたわけではないというのに、莫大な研究費をつぎ込まれるのだからな」

 政治家肌のマ・クベからすれば、ザビ家台頭から続いているにも関わらず一向に成果の上がらない研究などやめて、ザクの改良機であるドムとグフを早く量産体制に仕上げたほうが良いと考えていたし、本国の監査もようやくそのつもりになっていたところだった。

マ「だいたい、フラナガンという男が信用ならんところにシャナだ。奴がどうやって炎髪灼眼になるのかさえ、まったくわかっていないではないか」

ウラガン「マ・クベ大佐!」

 陶磁器に自分の顔を写していたマ・クベの許に現れたのは、副官のウラガン中尉だった。

マ「どうした?」

ウラガン「ランバ・ラル大尉がお見えになられました」

マ「そうか」

ウラガン「お出迎えにならないのですか?」

マ「奴は職業軍人なのだよ。やることだけをやらせればいいのだ。そのほうが奴にとっても都合がいいだろう」


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ランバ・ラル「了解した。このまま木馬に向かわせてもらう」

 通信を終えたランバ・ラル大尉の傍に妙齢の女性がやってくる。

ハモン「出立なさるので?」

ラル「うむ。オアシスを通過する際に小休止をとることにしよう」

ハモン「そのほうが部下たちにもよいでしょう」

ラル「念のため、モビルスーツはいつでも出せるようにして、トレーラーに積んでおけ」

ハモン「わかりました」

ラル「さて、久しぶりの地上だ。直接ではないが、ガルマ大佐の仇討ちといこうか」



 天草シノは暗い道を走り続けていた。

シノ「いったい、ここは……」

 周囲には明かりもなく、目指すべきものも見えない。
 だがシノは走らなければならない予感に駆られ懸命に足を前に運んでいく。

シノ「私は、何を……」

 何も見えない。わからない。聞こえない。
 自分が走っている感覚さえなくなってくる。

シノ「うぅぅっ……」

 次第に足が重くなってきた。
 まるで、泥の中を進んでいるようだ。
 いや、違った。

シノ「あ、あぁぁ……」

 沈んでいた。
 シノの足が、もうくるぶしから先が見えなかった。
 だんだんとシノの体が闇に包まれていく。
 膝、腿、腰……まるで泳ぐように上半身を動かしてシノは前に進もうとする。

 だが――

『ダメだよ。もう捕まっちゃったんだから』

シノ「えっ!?」

 突如、頭上から聞こえた声に顔を上げると、そこにはギラリと鈍い光りがあった。

『死ぬのってイヤ?』

シノ「い、いやだ……やめてくれ……」

『うん、それ無理』

 その輝きが巨大な青龍刀だと気付いたときには、もう振り下ろされていた。

シノ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



シノ「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 乱暴に起き上がり、今までの奈落がもう何度も見た悪夢だと知った。

シノ「はぁ……はぁ……」

 蒼白な自分の頬を撫で、次にしっかりと首が胴とくっついていることを確かめる。

シノ「またか……」

 毛布をまくりあげてため息を吐く。
 夜中に水分を摂ることを避け、就寝前にしっかりとトイレに行っていたおかげか、充分に処理できる許容内だ。

 シノはみじめな気分で尻の下に敷いていたタオルと木の板をベッドから下ろして、自分は滲みてしまった下着とズボンを脱ぐ。

シノ「このままではもうドラグナーに乗れないな……」

 こんなことはもう四日目である。
 原因は、四日前に遭遇したギガノス帝国の最新鋭機だ。
 いや、あの機体だけが原因ではない。シノに精神的負担を強いるのは、パイロットであった。

 ダメだよ。死んじゃうよ?――

 うん、それ無理――

 そんなもので私の打ち込みが止められると思う?――

 じゃあ、死んでね。さようなら――

シノ「う、うぁぁ……」

 あの毒蛇が絡みつくような声を忘れることができないのだ。
 戦闘の翌日では、コクピットに座ることもできずに吐いてしまった。

 それでも、一日ずつ、一時間ずつでも近づいていこうとする彼女に身体は応えてくれたようで、昨日はシミュレーションを行うことができた。

 だが、やり過ごしたはずの恐怖のツケは夜中に回ってくるようだった。
 夢は毎日酷くなっていく。
 恐怖が毎晩更新されていくのだ。その度に彼女の下半身は大量の不純物でベッドを濡らしていた。

 ドラグナーに乗るという使命がなければ、シノの精神はとうに破壊されていたかもしれない。
 そのドラグナーこそが、彼女を追い詰めた原因でもあるのだが……

スズ「あ、会長、だいじょうぶですか?」

 ルームを出たところで萩村スズと鉢合わせた。彼女は青ざめたシノを気遣う声をかける。

シノ「あぁ、今日は哨戒に出ようと思う」

スズ「へ、平気なんですか?」

 無理に笑顔をこしらえてシノはスズの頭と胸を撫でた。

スズ「なんで私の胸を触るんですか!」

シノ「いやぁ、子どもの成長は毎日確かめなくちゃいけないだろ?」

スズ「ムキーッ!」


 ホワイトベース 食堂

ヒカル「それじゃあ、海晴姉はまだしばらく療養が必要なのか……?」

霙「そうだ。傷口が砂塵に晒されてウィルスが入り込んだんだ」

立夏「海晴おねーちゃん……えぅぅぅ……」

霙「そう悲観するな。もう抗体物質は注射してあるから、その作用で熱が出ているだけだ。命に別状はない」

 ホワイトベースから降りてマチルダ中尉と長門有希の捕虜交換に立ち会った天使海晴は、ヴァイスリッターに乗った直後、何者かに攻撃された。

 海晴本人が言うには『メインモニターを映したら、急に片目が白い薔薇の女の子が現れて、茨で刺された』という実に信じがたい話だった。
 薔薇という単語に引っかかった霙が日本の超電磁研究所にいるローゼンメイデンに訊ねると、雪華綺晶という七体目のドールである可能性が高いという。

 それが、六体のローゼンメイデンを一斉に手玉に取り、追い詰めた非常に危険なドールだということも……

霙「まあ、あと二、三日眠っていればよくなる。幸い、ギガノス軍は東アジア区域から撤退し始めている。蒼き鷹が戦死したことの影響が大きかったようだ」

ヒカル「やはり……涼宮ハルヒは……」

霙「あのギガノスの新型――ゲイザムの地上掃射にやられてしまったらしい。ファルゲンも解体されているところが発見された。親衛隊も宇宙に上がるらしい」

ヒカル「それじゃあ後はオデッサのジオン軍基地を落とせば……」

霙「あぁ、我々の任務は達成される。既にヨーロッパ方面からレビル将軍が軍勢を集結させてオデッサの包囲網を完成させつつあるし、こちらからはゲッターチームとライディーンが派遣されている。私たちはここで待機しつつジオン軍が隠れ潜んでいないか注意していればいい」

立夏「うぅぅ~、お菓子食べた~い~」

 愚図りだした立夏の陽気さに姉妹は笑って、お見舞いに何を持っていこうかと相談を始めた。


 ホワイトベース 格納庫

シノン「シノさん、本当に大丈夫なんですか?」

 待機中の戦艦ほど艦長にとって暇なものはない。
 今日に至るまでの多忙さを失って代わりに手に入った余暇を使って艦内を直接見回っているところに、哨戒任務に出るシノとスズに出くわした。
 アリアは先に哨戒任務に出ていて、シノと入れ替わりに戻ってくる。

シノ「はい、行けます。待機中とはいえ、機体にも乗れないのではしょうがないですから」

スズ「私もついていますから、何かあればすぐに戻らせます」

シノン「わかったわ。くれぐれも無理はしないでね」

シノ「了解です」

 ぴりっとした敬礼からは精神的な脆弱は消え失せていた。
 若くして最新鋭戦艦の艦長となったシノンの目にその通りに見えたのは仕方ないことである。

 要するに、大きな間違いだったということだ。

シノ「システム良好。エンジン始動――天草シノ、ドラグナー1型、出ます!」

 ドシュゥーッ! カタパルトから白い尾を引いて触覚のような二本のアンテナの機甲兵が射出される。

シノ「――ッ!」

 だが、空に出た彼女の視界は一瞬で歪んだ。
 まるでスプーンでかき混ぜたコーヒーにクリームを入れたみたいに空の青と雲の白、明滅する計器が渦になって溶け合い、シノの方へ向かってくるのだ。

シノ「うあぁ……! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 次にシノが幻視したのはあの青龍刀の新型である。
 夢で何度も味わった絶望感が現実の感覚としてシノに襲い掛かってくる。

 伊藤カイジが急所々々で兵藤和尊の顔を錯覚するものと同じなのだ。
 だが、シノが見ているそれは王の警告ではなく、全身を恐怖で支配する毒蛇の呪いである。

スズ「会長!?」

 スズの声が届く暇もなく、ドラグナー1型はバーニアを最大パワーで噴かしてホワイトベースから離れて空の霞に消えていった。

シノン「そんな……」

スズ「い、急いで捜索に当たります!」

 暴風に巻かれてへたり込んでしまったシノンの横でD-3が発進していく。

シノ「あああああああああああああああああああっ!!」

 重慶基地から数百キロを経て尚、シノは幻覚に錯乱していた。
 全く制御が利かない手足の操作に機体が忠実に従った結果、ドラグナーはきりもみ回転をしながら墜落し始める。

シノ「わあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 ドシュアァッ! もしも地面が砂漠ではなかったら、墜落の衝撃でドラグナーは爆破していたかもしれない。

シノ「あぁっ! あああ! ぁぜぇっ! えふっ! げほ! ぜぇ、ぜぇ……」

 反動で滅茶苦茶に跳ねるシートにむせ返って、ようやくシノは意識を取り戻した。

シノ「あぅぅ……こ、ここは……?」

 ほとんど呂律の回っていなかったにも関わらず対話型コンピュータ『クララ』は主の質問に答えた。

シノ「オデッサと重慶の間の砂漠地帯か……こんなところまで来てしまったのか……」

 リフターを起動させようとしたが、無理だった。
 身体が震えている。拒絶反応を起こしているのだ。

シノ「みっともないな……私は」

 大見得を張って飛び出してきた結果がこの醜態たが、もはや自嘲する余裕もなかった。
 何故なら、この太陽直下のど真ん中にシノは水も持たないでやってきてしまったのだ。

シノ「スズが探しに来てくれるだろうが、人がいる場所を見つけないとな……」

 『クララ』に検索させて、見つけたのはオアシスだった。
 ただ、シノのいる位置から300メートルほど離れている。
 隆起の複雑な砂漠で300メートルは1キロ以上の体力を要求される上に一度方向を見失ってしまえば、二度と回帰することはできない。

シノ「ドラグナーで行くしかないか……」

 戦々恐々とフットペダルに足を乗せて、リフターの回路は遮断していく。

シノ「操縦をマニュアルに……エンジンは弱く……」

 飛ぶことはできないことを自覚したシノは一つ一つの機体の動作を確実にこなすことでリハビリをすることにした。
 リフターは物理的に接続を切り離し、放置する。発信機はつけてあるから、後で戻ってくるときに頼りにできる。

シノ「一歩ずつ……一歩ずつだ……」

 不必要なパーツを落として四分の一ほどは軽くなった機体の足をゆっくりと上げて下ろす。
 確かに前進したのを見て、シノは安堵の息を吐いた。

シノ「これなら、なんとかオアシスまでは行けるな……」

 人間の十倍の大きさのある機動兵器ならば、一歩で十メートル弱進むことができる。
 慎重に足を前に出し続けて、二十五歩。そこでシノは止まってドラグナーを降りた。

シノ「あれがオアシスか……」

 コロニー住まいのシノには、砂漠もオアシスも初体験である。
 灼熱を長い黒髪が吸収して火傷しそうだと思う。
 シノは備蓄されている擬装の服とフードのついた外套を被り、ドラグナーには機体を隠す保護シートを被せて砂漠を歩いてオアシスに向かった。

シノ「よかった……人が何人がいるみたいだな」

 途中、何度も足を取られてシノは平坦な道を踏むことができた。
 今まで最も長い300メートルだった。

シノ「あの、すみません」

 看板の下がっている建物に入った。
 オアシスを訪れる旅人を癒す酒場のようだったが、戦争の影響か、中には店主以外の誰もいない。

店主「あいよ。こんな時間に客とは珍しいね」

シノ「あの、水をいただけませんか?」

店主「あいよ」

 返事をしたが、店主はカウンターにある水のサーバーに向かおうとはせず、シノに手のひらを上向かせて差し出した。

シノ「えっ……?」

店主「お金だよ、お金。払ってもらわなくちゃ。今じゃ水でさえ貴重なんだ」

シノ「で、でも、ここはオアシスで水があるんじゃ……」

 店主はギロリと目を光らせた。シノがびくっと肩を震わせると、店主は低い声で言った。

店主「あんた、地球の人じゃないね。コロニーの人だ」

シノ「ど、どうしてそんなこと……」

店主「そんな白い肌と喋り方じゃ、地球生まれだって言われても無理だよ。教えてあげるよ。オアシスの水は戦争のせいで生じゃ飲めなくなっちまったんだ。一度、オデッサに預けて浄水してもらってるんだ。それも法外な値段でね」

シノ「そうだったんですか……申し訳ありません」

店主「まあ、いいさ。一杯、ごちそうしてあげるよ」

シノ「い、いえ、ちゃんとお金は払います。少しですけど、持ってますから」

 服と一緒に僅かだが金はある。それを取り出そうとする間にも店主は穏やかな口調になって、サーバーから水を汲む。

店主「わかったよ。そこに置いておいてくれ」

 コップ一杯の水に貨幣を出して、ちまちまと呑んでいると、にわかに外が騒がしくなっていた。

ラル「こう熱いとさすがにかなわんな。おい、親父! 水をくれ! うまいやつをだ!」

 突然の来客に店主が返事をする間もなく、次々と兵隊が入ってきた。
 
シノ(あ、あれはジオン兵……)

ラル「親父、13人だ。すまんな、サグレ、マイル、見張りだ。交代は急がせる」

サグレド「は、ランバ・ラル大尉」

シノ(ランバ・ラル……大尉ということは、エース級か)

 すっかりシノにも軍人癖がいくつか染みていた。

ラル「すまんな、ハモン。砂漠はきつかろう」

ハモン「自然の脅威です。星を見ているよりはずっと面白い」

ラル「ハハハハッ。みんな、座れ座れ、何を食ってもいいぞ。作戦前の最後の食事だ」

店主「あの、ここは中立地帯でございますので、戦争は……」

ラル「他でやる。心配するな」

ハモン「何もないのね。できる物を14人分ね」

店主「か、かしこまりました」

ラル「ン……? 一人多いぞ、ハモン」

ハモン「あの子にも」

 そう言って、ハモンが指したのはカウンターの端で耳をそば立たせていた少女だった。

シノ「わ、私……ですか?」

ラル「あんな娘がほしいのか、ハモン」

ハモン「フフ、そうね」

シノ「あ、あの……」

 立ち上がってシノはハモンと呼ばれる貴婦人の前に立った。
 美しい女性で、とても砂漠の酒屋には似つかわしくないが、纏っている雰囲気は潔癖な軍人のそれである。

シノ「ご厚意は嬉しいのですけど……」

ハモン「あら、どうしてかしら?」

シノ「見ず知らずの方に、物を恵んでもらう理由がありません」

 この返答にハモンだけでなく、ランバ・ラルも少し驚き、大きな声で笑った。

ラル「フハハハハハハハッ。ハモン、一本やられたな、こんな若い娘に」

ハモン「私が、あなたを気に入ったからなんだけど。それじゃご不満かしら?」

シノ「私は……飢えている訳でもお金がない訳でもありませんから」

ラル「ホゥ、気に入ったぞ、お嬢さん。それだけはっきりと物を言うとは」

 そう言ってランバ・ラルは立ち上がり、シノの肩を軽く叩いた。
 彼はこうやって、人と接する人柄で、部下達もそんな彼に惚れてこの部隊についてきているのだろう。

ラル「ワシからもおごらせてもらおう。あまり大人の面子を潰させるものじゃないぞ」

シノ「い、いえ、でも……」

サグレド「隊長! 怪しい奴を捕まえました!」

 席に着かざるを得ないような流れにシノが戸惑っていると、外に待機していたジオン兵が中に入ってきた。

ラル「どうした?」

マイル「この女が辺りをウロウロしていました」

スズ「あうっ!」

シノ「す、スズ……!」

 突き出された少女にうっかり洩らしてしまった名前にハモンが目を光らせた。

ハモン「あなたのお友達ね?」

シノ「は、はい」

サグレド「こいつが着ているのは連邦軍の制服です」

ラル「そうかな、ちょっと違うぞ」

マイル「間違いありません、機動兵器でこの近くに停止しました」

ハモン「そうらしいわよ。この子の友達ですって」

ラル「ほう」

スズ「か、会長……」

ラル「君たちはパイロットだったのか」

シノ「え、えぇ……」

 少しの間、ランバ・ラル、ハモン、シノの間で視線が交錯した。

ラル「放してやれ」

マイル「は、しかし」

ラル「いいから」

 バッ! ランバ・ラルはシノに詰め寄り、外套を掴んで捲り上げる。

シノ「!」

ラル「いい度胸だ」

 外套の下のシノの手では短銃が握られていた。
 スズに何かあれば、すぐに撃つ構えだったことがうかがえる。

ラル「ここが中立地帯で良かったな。名前は?」

シノ「あ、天草シノです」

ラル「そうか、戦場で会ったら、こうはいかんぞ。頑張れよ、シノ君」

シノ「あ、ありがとうございます……」

スズ「会長!」

シノ「助けに来てくれてありがとう。行こう、スズ」

 シノとスズが酒屋を出て行く。
 そしてランバ・ラルは職業軍人の顔をして、部下を呼んだ。

ラル「あの娘達を追いかけろ。さっきの話し振りからすれば、何らかのトラブルで不時着したようだ。あんな若い娘が乗る連邦の機動兵器など、D兵器かゲシュペンストだ」

ゼイガン「はっ!」

ハモン「出陣なされるおつもりですか?」

ラル「うまくいけば木馬を誘き出せる。グフの用意をしろ」



シノ「すまなかったな、スズ」

スズ「いえ、D-3のレーダー能力のおかげですぐに見つけることができました」

シノ「そうか、捜索はスズだけか?」

スズ「ヒカルと立夏ちゃんもいます」

シノ「すぐに二人を呼んできてくれ」

スズ「どうしたんですか?」

シノ「ランバ・ラル大尉が攻撃してくるはずだ」

スズ「ランバ・ラルって、さっきの人ですか?」

シノ「そうだ」

スズ「そ、それなら早く逃げたほうが……」

シノ「ダメなんだ。私のドラグナーはリフターを外してしまっている。放置するわけにもいかないから、私が足止めをしている間にスズは二人を呼んできてくれ」

スズ「わ、わかりました」



クランプ「ゼイガンから通信。D兵器と思しきメタルアーマーが飛び立ちました。天草シノも同乗しているようです」

ラル「よし、すぐに追撃するぞ」

ハモン「ご武運を」

ラル「うむ、ザンジバルは待機させておけ。D兵器をやったら一時戻ってくる」

ハモン「かしこまりました」

 パイロットスーツを着たランバ・ラルとハモンは短い口付けを交わし、ランバ・ラルは高速陸戦艇ギャロップに乗って発進した。

ラル「D兵器、速いな」

 航空機の延長をイメージしたメタルアーマーとリフターの構造はモビルスーツを寄せ付けない速度を生み出している。

ラル「――が、弾丸が当たりさえすればよい」

 ギャロップの上に立ち、青い新型モビルスーツ・グフでランバ・ラルはジャイアント・バズを構える。

ラル「よし、いくぞ!」

「「「おう!」」」

 だが、ランバ・ラルの気勢が部隊に伝播した瞬間、突如として砂漠が盛り上がった!

ラル「なんだ!?」

シノ「これ以上先には進ませないぞ!」

 砂柱を割って現れたのは、D-1だった。
 スズと一緒にD-3に乗った後、D-1が隠してあった地点に降ろしてもらい、乗り潜んでいたのだ。

ラル「別のD兵器か! こしゃくな真似を!」

 ドラグナー1型はハンドレールガンを右手に、シールドを左手に持つと、ギャロップから飛び降りた二体のザクⅡとザクを一回り大きくして青い塗装にしたようなモビルスーツ・グフと対峙した。

シノ「ジオンの新型のモビルスーツか……あれにラル大尉が乗っているだろうか……」

 空を飛ばなければ機体を動かすことはできるのは、先ほど示したばかりだ。
 次の問題は、迫りくる敵と戦うことができるか――

ラル「我々はD兵器回収が目的ではない。木馬の撃破が目的だ。パイロットが死なぬ程度に破壊するぞ!」

アコース・コズン「「了解!」」

 二機のザクが左右に散開していくのを見て、ラルは独りごちた。

ラル「あれにシノ君が乗っているのか……?」

シノ「う、撃つぞ!」

 ババババババババ! ハンドレールガンが火を噴く。

ラル「正確な射撃だ――が、それゆえ、コンピューターには予想もしやすい」

 僅かに半歩分、ジグザグに動くだけで、ドラグナーの弾が外されてしまう。

シノ「ま、まともに避けもしない!」

 三方向から囲もうとしているのが判ったシノは、砂漠に足を取られるのを恐れてバーニアだけを使って後方に跳んだ。

シノ「……私の目的は時間を稼ぐことだ」

ラル「ホゥ、なかなかの推進力だ。攻めさせてもらうぞ!」

 包囲することは容易でないことを瞬時に判断したランバ・ラルは大胆に前進してマシンガンを撃っていく。

 ダダダダガガガガガガガッ! ドラグナー1型のシールドは表面をルナ・チタニウム合金が使用されているため、ザクマシンガンは簡単に弾くことができる。

ラル「硬いな。ヒートロッドを使う! アコース、コズン! 支援しろ!」

アコース・コズン「「了解!」」

 ザクⅡが二方向からD-1を十字放火にする。
 ランバ・ラルのグフはマシンガンを敵の足下に撃って、砂を巻き上げた。

シノ「し、視界がっ!」

 アコースとコズンもそれに倣って砂を撃ち、ドラグナーは完全に砂煙に覆われてしまった。

シノ「う、うごけない……っ!」

 全身にばちばちと火花が当たっているような気分――この砂煙からどこに出て行ってもやられる!

 シノは機体に片膝を着かせ、砂が晴れるまでひたすら防御の構えに徹する。

シノ「どこから来る……」

 いつでも跳べるようにバーニアのフットペダルはやや踏みにしている。
 だが、敵は真正面から突如として現れた!

ラル「縮こまっては生き残れんぞ!」

 ガァンッ! グフの強烈なショルダータックルにシノは誤ってペダルを踏み、不恰好にしりもちをついてしまった。

シノ「うわぁっ!」

ラル「ザクとは違うのだよ! ザクとは!」

 ひゅおんっ! 青い巨星が放つ電磁鞭のヒートロッドがドラグナーの左手首に絡みつく!

ラル「受けてみろ! ヒートロッドォ!」

 ズバババババババババ! ヒ-トロッドから発せられる電撃がドラグナーの左手を電子回路から破壊し、シールドを落とした!

シノ「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 さらに、ヒートロッドの電撃は機体を通してパイロットにまで伝わる。

ラル「やれ! 奴の足を叩き斬れ!」

 ランバ・ラルの合図で左右に待機していたザクがヒートホークを持って近づいてくる。

シノ「ぐっ、うぅぅ……ここまでか……」

 だが、まだ神はシノに味方をするらしかった。

ヒカル「スプリットミサイル!」

立夏「ニュートロンビーム!」

 ズボボォンッ! ギュオッ! 飛来してきたビームとミサイルがそれぞれザクを急襲していく。

ラル「なにっ! 救援が来たか、速すぎる!」

 シノを探しに来ていたとはいえ、まだ数分と経っていない。
 しかしそこまで考えてランバ・ラルは三体開発されたD兵器の一つが電子戦仕様であることを思い出した。

ラル「ギャロップ、前に出て来い! 物量差で押してやれ!」

 グフのヒートロッドを一度回収して、後退する。

シノ「くっ、左腕は使えないか……」

ヒカル「シノ先輩、だいじょうぶですか!?」

シノ「あぁ、だが動きは鈍くなっている」

ヒカル「スズがリフターを回収してくれています。早く脱出しましょう」

シノ「いや、ランバ・ラル大尉が逃がしてはくれない」

 その時、砂塵を巻き上げてギャロップが追いついてきた。
 三機のモビルスーツも対小隊相手の錐型陣形を取り、大きな足で駆け出してくる。

立夏「にゅーっ! リッカが追っ払っちゃうかんネーッ!」

 ゲシュペンストの頭部が光り、ニュートロンビームが発射される準備が整う。

ラル「狙いが甘いのだよ」

 先頭に立つランバ・ラルがヒートホークを投げつけて、立夏のゲシュペンストの肩に当てた!

立夏「ぎぎゅわぁぁぁぁぁんゅぅぅぅー!」

 およそ悲鳴とは思えない声をあげて立夏のゲシュペンストが倒れる。
 グフはヒートサーベルを構え、更なる追撃にかかる!

ラル「さぁ、倒れるがいい!」

ヒカル「させるか! ジェットマグナム!」

 ジュアァァァァァ! ヒカルのゲシュペンストの腕が高熱を宿し、グフに突撃していく!

ラル「浅い動きよ」

 グフに装備されたシールドにゲシュペンストの腕が当たった直後、ランバ・ラルが僅かに腕を動かすことで、ゲシュペンストは進行方向を逸らされてしまった。

ヒカル「くっ、立夏!」

コズン「待ちな!」

アコース「行かせるかよ!」

 急停止して、機体をターンさせるがグフとの間には二機のザクが割り込んでいた。
 さらに、ギャロップからの砲撃が立夏を襲う!

立夏「イヤーッ!」

ラル「喰らえっ!」

 ぶぉんっ! ヒートサーベルが姿勢制御中のゲシュペンストに振り下ろされる!

シノ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 グァッ! ヒートサーベルがゲシュペンストの顔を貫く直前、シノは裂帛の気合と共に飛び出し、レーザーソードを突き出した!

 バシャァッ! 二つの機体の剣が交じり合い、熱量が重なる。ドラグナーの加速は止まらず、グフを組み伏せた。

ラル「ちっ! やるっ!」

シノ<気合>「もう、足を引っ張ってはいられないんだ!」

 グフが砂漠に埋もれていく。交錯の一瞬でレーザーソードが切り裂いたわき腹部に砂が入り込み、左足のモーターを不調にした。

ラル「立てぬか!」

シノ<気合>「このぉぉぉぉ!」

 ジャァァァァァッ! 逆手にしたレーザーソードがグフの胴体目がけて振り下ろされる!

ラル<不屈>「させん!」

 固い地面ではなく、無数の砂粒の上に寝るランバ・ラルはあえてさがることで、レーザーソードの直撃を避けた。

 同時にヒートサーベルを翻し、ドラグナーを襲わせる。
 だが、これは無理な機動が祟り、装甲をかすめるに終わった。

シノ「!」

 ドラグナーとグフは互いにコクピットを引き裂かれて対峙していた。

ラル「やはり、君か。天草シノ!」

シノ「ら、ランバ・ラル大尉……!」

ラル「本当に君のような子どもがパイロットをやっているとはな。時代は変わったものだ」

 ランバ・ラルはパイロットスーツの手で焦熱に溶けるグフの装甲を押し退けている。
 その闘志の塊りとでも言うべき姿に、シノは恐怖以外のものを胸にざわつかせた。

シノ「あ、あなたは戦いをやめないつもりですか!?」

 思わずシノは問うた。無意識の問いである。
 サンバイザー越しにほくそえんでいるランバ・ラルに喉の奥から競り上がってきたのだった。

ラル「ワシは戦いを生業としている! ランバ・ラルが戦いをやめるとき、本当に文字通りやめるときは、この命が尽きるときだ!」

 力づくで広げた装甲の合間から抜け出てきたランバ・ラルはワイヤー銃をドラグナーの胴体に撃ち、身を投げた。

ラル「見事な戦いだったぞ、シノ君! だが、それは貴様の腕ではない! そのメタルアーマーの性能のおかげだということを、忘れるな!」

シノ「負け惜しみを……!」

ラル「命があれば宇宙<そら>で会おう! その時は、ランバ・ラルの戦いを見せてやろう!」

 ランバ・ラルはグフから足を離し、ブランコのようにワイヤーにぶらさがってドラグナーの股下を潜り抜けると、砂漠に身を隠す。

ラル「アコース、コズン、ギャロップ、撤退しろ! ワシは夜を待って戻る!」

 隊長からの最後の通信を受けて、ランバ・ラル隊は撤退を始めた。

シノ「…………」

 無言でシノは装甲の隙間から動けなくなったグフを見つめていた。
 完全に拾わせてもらった勝利だった。
 例えば、もっと距離を取ってヒートロッドでいたぶるようなしつこい戦い方をされていれば、立夏かシノのどちらかは撃墜されていただろう。
 愚直な性格なのか、あるいは何かを背に抱えていたようにも見えた。
 最後の捨て台詞――つまり、今日のランバ・ラルは正面切って戦う理由があったのだ。

シノ「手加減……されたのか……?」

 まただ、とシノは思う。
 地球に降下する前も、涼宮ハルヒに手加減をされた。
 敵に生かされ、ぼろぼろにされ、また生かされる。

シノ「私は……ドラグナーに相応しくはないのか……?」

 交戦の損傷か、対話型コンピュータ『クララ』は返事をしなかった。
 独り取り残されるコクピットの中で、シノは拳を打ちつけた。

 何も考えずに戦場に出てくるな!――

 やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいいって言うよね――

 ランバ・ラルが戦いをやめるとき、本当に文字通りやめるときは、この命が尽きるときだ!――

 それは貴様の腕ではない! そのメタルアーマーの性能のおかげだということを、忘れるな!――

 私は、私が信じるもののために戦っているのよ――
 
シノ「相応しくなってみせる……私なりの、戦う理由に……」

 目蓋に描かれる敵の言葉が蘇る。そして、開いた瞳に熱い炎を点して、シノは決然と言った。

シノ「私は、あの人に――勝ちたい」


 第十三話 強襲! 熱砂のランバ・ラル 完!



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