唯「第一次!」なのは「スーパー!」夕映「ロボット」シャロ「大戦です!」 第十九話 雷撃! 少女たちの防衛線 前半

2011年07月01日 19:20

唯「まじーん、ごー!」

748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga]:2011/03/24(木) 01:48:49.94 ID:kxY7xw200

 第十九話

 ジャブロー付近の海中

ジオン兵「木馬の反応、消えました」

シャナ「ふふ、そこがジャブローの出入り口よ。徹底的に探しなさい」

 短く指示を出してからシャナは長い黒髪を赤く染めた。
 赤い彗星としての姿でパイプを通じて緑が生い茂る鍾乳洞に入る。

シャナ『待たせたわね。近日中にナプどもは追い払うわ』

原住民族長『本当に……ナプの災厄を振り払っていただけますのですか、火の神様?」

 コロニー生まれには到底理解できようはずもない言語を操りながら、灼眼の少女は頷いた。

シャナ『私たちの目的はあなたたちの侵略者を滅ぼすことよ。宇宙の民はあなたたちと同じように迫害されている』

原住民族長『お願いいたします。機械の巨人を滅ぼしてください……』

シャナ『約束するわ。もちろん、その後の自治も保障する』

原住民族長『おぉぉ……火の神様……』

 またパイプを伝って潜水艇に戻ったシャナに全身を特殊ウェットスーツに包んだ赤鼻の男が感心したようにぼやいた。

アカハナ「さすが大佐殿ですなぁ、まさか原住民族の言葉に堪能だったとは」

シャナ「原住民族が、ジャブロー建設に反対していたことを聞いていたからよ。それよりも、用意は出来ていて、赤鼻?」

アカハナ「は、あの赤い彗星と作戦を共に出来るとは、工作員もやっているものです」

シャナ「期待しているわ」


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 ジャブロー 連邦軍基地

シノン「ホワイトベース隊、香月シノン少尉以下ガンダム、D兵器、ゲシュペンスト、オーラバトラーのパイロット十三名および他二十二名、ジャブローに着任しました」

ウッディ「ホワイトベースの修理責任者となりましたウッディ・マルデン技術大尉です」

シノン「よろしくお願いします」

ウッディ「……本当に若い子たちばかりですな」

シノン「はい」

ウッディ「隊員の方たちはDブロックでまず身体検査を受けていただきます。そこからはそれぞれ指示を仰いでください」

シノン「了解しました。みんな、行きましょう」

 先頭のシノン、海晴、霙に引き連れられてまばらに歩いていく。
 指示されたDブロックに入ると、女性士官が多くなった。どうやらそのためのエリアらしい。

シノン「ホワイトベース隊、香月シノン中尉です」

 自動扉を開いて白い清潔な部屋に入ると、まずヒカルと立夏が驚きの声をあげた。

ヒカル・立夏「ママ!?」

美夜「はぁい、みんなよく来てくれたわね」

 立派な机と椅子に座っていたのは、天使十九人姉妹の母親、天使美夜だった。

ヒカル「な、なんでママがここに……っていうか、日本にいたはずよね!?」

美夜「ウフフ、かわいい子のためならママは何でもできちゃうのよ」

ヒカル「え、えぇぇ……?」

海晴「ハイハイ、ヒカルちゃん。とりあえず身体検査だから、脱ぎ脱ぎしましょうね」

ヒカル「って!? ちょっと海晴姉……あ、そんな……!」

海晴「まあ、ヒカルちゃんったら、ちょっとおっぱい大きくなったんじゃない?」

ヒカル「きゃぁ!」

美夜「みんな身体検査をしたら、それぞれユニットごとに精密な検査があるからね」

アリサ「は、はい……」

美夜「あ、なのはちゃんと珠姫ちゃん、あと紀梨乃ちゃんとチャムちゃんはCブロックのこっちに行ってね。君たちはト・ク・ベ・ツ授業よ」

なのは「と、トクベツ授業……?」

珠姫「???」

美夜「大丈夫よ、取って食べられちゃったりはしないから」

紀梨乃「というより、こっちのほうが食べられちゃうような気が……」

霙「まったく、いい年して女同士でハダカになるのが恥ずかしいのかオマエは」

ヒカル「そ、そういうことじゃなくて、霙姉と海晴姉が一緒になってなんて――わぁぁ!」

立夏「オネーチャンたちずるーい! リッカもーっ!」

ヒカル「うわぁ、こらー、立夏ー!」

 身体検査を終えて、それぞれは指定された場所へ行くことになった。


 ジャブロー基地 ドラグーン工場

ラング「やぁ、君たちがD兵器に乗ってくれた娘さんたちか。すまなかったね、こんなことを押し付けてしまって」

シノ「天草シノ二等空士以下二名、到着を報告します」

 天草シノ、萩村スズ、七条アリアの三人は量産型ドラグナーであるドラグーンの開発工場にて、開発者であるラング・プラートに会っていた。

ラング「かしこまらなくてもいいよ。楽にしてくれたまえ」

 作業場の中央には既にドラグナーが1型、2型、3型と並べられていた。

ラング「君たちが間に合ってくれてよかったよ。これでドラグーンに戦闘データを入れることができる」

 ドラグナーの開発目的はドラグーンの戦闘データ、すまり経験値を与えるために作られたものだ。

ラング「同時にパイロット登録も解除しよう。これで君たちは晴れて任期満了だ」

アリア「任期満了ということは……」

ラング「あぁ、君たちはもう連邦軍に縛られることはない。大事なデータを取得してくれた褒賞もあるだろう」

スズ「とりあえず、命を落とさずに済んでよかったですよ。ねぇ、会長?」

シノ「え? あ、あぁ、そうだな……」

スズ「会長? どうしたんですか、浮かない顔をして」

 ぼんやりとD-1を見つめているシノをスズが心配げに見上げていると、ラング博士は顎の下で指を組み、声を落とした。

ラング「ところで……君たちはギガノスの蒼き鷹と交戦したそうだが……」

アリア「はい、そうですけど……」

ラング「蒼き鷹は戦死したと聞いたが……それは確かかい?」

 蒼き鷹、ハルヒ・スズミヤ・プラートはラング・プラートの娘である。
 父と娘で互いに袂を分かった二人は絶縁したはずだが、やはり父親。敵とはいえその動向は気になるはずだ。

アリア「申し訳ありません。私たちでも確認ができませんでした」

ラング「そうか……頑固な娘に育ててしまった……」

シノ「あの……ハルヒ、さんはどんな人だったんですか?」

ラング「……強い娘だよ。そして、人の痛みのわかる子だった……だからこそ、地球を蝕む連邦を排斥するギルトールの理想に心酔して、ああなってしまった」

シノ「あくまでも、私の考えですが……」

 空に散ってしまった娘を悼んで胸を詰まらせているラング・プラートに、シノは思い切って言った。

シノ「ハルヒさんはまだ生きていると思います」

ラング「本当か?」

シノ「確信があるわけではありませんが、一番近くで見て戦ったのが私です。彼女があの場面で簡単に死ぬとは思えません。どこかで、私を睨みつけているような……そんな気がします」

ラング「そうか……君がそういうのなら、まだ信じよう」

シノ「あの……それで、お訊ねしたいのですけど……」

ラング「何だ?」

シノ「D兵器……ドラグナーはこの後、どうなるのですか?」

スズ「か、会長?」

アリア「シノちゃん?」

ラング「ドラグナーは……もうその役目を終えた。解体されることになるよ」

スズ「そ、そうなんですか!?」

ラング「ドラグーンは三種のD兵器の全てをフルスペックで上回る機体だ。ドラグナーは解体して破損などを詳しく調べてドラグーンの更なる糧になるのだ」

シノ「失礼を承知で言います。ラング・プラート博士」

ラング「言いたまえ」

シノ「私を、またドラグナーに乗せてはいただけないでしょうか」

スズ「会長!?」

 馬鹿なことを――スズの顔にはそう書いてあるが、隣りのアリアはやっぱりといった風ににこにこしている。

ラング「君たちは軍籍を排除される代わりに褒賞を得ることになっている。つまり、ドラグナーに乗るということは、軍に残り、褒賞を辞退するということだぞ」

シノ「構いません。私はまだ、ドラグナーに乗っていたい。あの子と戦場で見てきたものに、私はまだ答えを出してはいないんです。それに……」

 胸に手をあてて、シノは自分の声を聞くようにして頷き、まっすぐにラング博士を、その奥にいるドラグナーを、そして更に向こうにいる誰かを見つめる。

シノ「宇宙には、私を待っている人がいる。その人たちに作ったたくさんの借りを返せないようでは、才色兼備の桜才学園の生徒会長などやっていられません」

アリア「シノちゃん、素敵ね……濡れちゃうわ」

スズ「……ノーコメントです」

シノ「二人とも、これは私が勝手に決めたことだ。二人までついてくる必要はないぞ」

アリア「ダメよ、シノちゃん」

スズ「乗りかかった船です。褒章のために乗ったんじゃないですから」

シノ「……ありがとう」

 穏やかな笑みを浮かべて、シノはラングへ振り返った。

シノ「お聞きの通りです。ドラグナーの解体はもうしばらく待ってください」

ラング「……解体は既に決まっていることだよ。ドラグーンのため、連邦の勝利には必要なことだ」

スズ「プラート博士!」

ラング「だが、その後、どう処分されるかは指示されていない」

シノ「えっ?」

ラング「ドラグナーの活躍は既に連邦の全員の知るところであり、ガンダムやマジンガーZと並んで平和の旗印としての役割を担っているはずだ」

シノ「そ、それじゃあ……」

ラング「ドラグーンに使われている新しい装甲で大幅な改造を行うことにしよう」

シノ「ホントですか!? ありがとうございます!」

ラング「あぁ、約束しよう」

スズ「でも、装甲を取り替えるなんて、すごく時間がかかるんじゃないんですか?」

ラング「心配には及ばない。ドラグナーに使われているムーバブルフレーム機構は連邦にはなかったギガノスの技術で、機体の骨格のみで自重を支える設計であるため、装甲や武装の取替えが従来と比べて非常に容易になっている」

シノ「あの、もう少しわかりやすくお願いします……」

スズ「まったく、会長のくせにダメですね」

アリア「スズちゃんはわかったの?」

スズ「当然です! 私はIQ180なんですから」

シノ「教えてくれ、スズ先生」

スズ「要するに、メタルアーマーに使われているムーバブルフレーム構造は、基本となる骨格を作って、その上に装甲や武装を服を着せるみたいに重ねていくんですよ。確かにこの方法なら、装甲パーツに予備があればそれを取り替えるのに一時間とかからないでしょうね」

シノ「ガンダムやゲシュペンストにはなかった設計なのか?」

スズ「ガンダムやゲシュペンストは、部位ごとに独立したパーツを作って箱を乗せていくようにして組み上げたモノコック構造です。ガンダムは見ればわかりますが、ドラグナーに近い形のゲシュペンストも設計自体が古いですから、モノコック構造ですね。最近のような駆動をするようになったのは天使博士の技術によるところが大きいんです」

ラング「天使博士が取り組んでいるのは、コクピットブロックを中心に内部駆動を軽く速く動かす開発だ。彼女が設計した脱出ポッドは生存率99%以上――南極条約でジオン・ギガノスにもこの技術は提供されている」

シノ「ああ見えて実はすごい研究をしていたんですね」


 Dブロックの廊下

美夜「へっぷしょん!」

立夏「ワォ! どうしたの、ママ?」

 熱帯のジャブローで思う存分ハラダシツインテールミニスカルックをしている立夏がぴょんと飛び跳ねて驚いた。

美夜「風邪かしら……? もしかして、誰かが私のウワサをしているのかも」

ヒカル「それにしても、私たちだけをどこに連れて行くの、ママ?」

美夜「ウフフ、いいところよ」

ヒカル「……」

海晴「いやん、ヒカルちゃん、怖い顔しちゃダメよ」

霙「それに、さっき言っていたじゃないか。ユニットごとの精密検査があると」

ヒカル「あぁ……」

霙「まったく、考えが頭に回らないのは糖分を摂っていない証拠だ。どれ、私のポケットにあんこがある。食べるか?」

ヒカル「なんで和紙にあんこが直接くるまってるの!?」

霙「いらないのか? もったいない」

 団子状にされた暗褐色の塊りを口の中に入れる霙にさすがの立夏も唖然としている。

立夏「見てるだけで甘ったるいよぉ……」

 そうこうしているうちに、美夜は一つの部屋へ娘たちを招きいれた。
 そこでヒカルは予想していたいくつかのサプライズよりもびっくりさせられた。

氷柱「遅かったわね、ママ」

吹雪「いえ。むしろ予定より六分ほど早いです。氷柱姉」

ヒカル「氷柱!? それに吹雪まで!」

 テーブルの設計図と睨めっこしていたのは、ヒカルの大切な家族の二人だったのだ。

 立夏と同じくらいの長さなのに冷たい柱のように落ち着いたツインテールの七女、氷柱。
 放熱板のように広がりを持ったショートカットにアンテナを三本立てている十二女、吹雪。

 天使家が誇る二大クール&スマートな二人に白衣はバッチリ似合っていて、何をしているのかは明白であった。

美夜「ウフフ、氷柱ちゃんと吹雪ちゃんには、私の研究のお手伝いをしてもらってるのよ」

ヒカル「そ、そうだったんだ……」

氷柱「ま、私は飛び入りなんだけどね。ここじゃ吹雪のほうが私より先輩だわ」

吹雪「はい。私は二年前からママの研究の手伝いをしています」

 相変わらず小学生離れした無表情でこくりと頷く吹雪は、どこか家にいるときより生気に満ちているように見える。

霙「氷柱、オマエ、綿雪のことはいいのか?」

 霙の指摘に氷柱がうっと言葉に詰まった。
 病弱な十三女の綿雪、物心ついた頃に生まれた妹ということもあって氷柱は綿雪のことをとても大切に想って心配している。
 しかも、病気が小康状態になったかと思えば、コロニー落としで汚れた大気の影響をもろに受けて観月と一緒に寝込んでしまっている。
 入院していたときはいつも学校帰りにお見舞いに行っていた氷柱はもう気が触れんばかりになって連邦政府とジオン、後になってギガノスまでまとめて糾弾しまくっていた。

 だが、その氷柱が綿雪のいる家を出て遠い南米のジャブローに来ている。

氷柱「だって……綿雪が行ってって言ったんだもの……」

 さみしそうに氷柱が言う。
 戦争なんて、綿雪の関係ないところでやりなさいよ!
 それが口癖になっていた氷柱が、一番大切な綿雪に行ってほしいと言われたのである。
 早くこのくだらない戦争を終わらせることが、小さな妹の願い。

 ぎゅう、っと氷柱を海晴が抱きしめていた。

海晴「氷柱ちゃんは本当にいい子ね」

 よしよし、と小さな頭を撫でる。

海晴「今もとってもかわいいけど、昔は今よりもっとちっちゃくてかわいくておしとやかな女の子でわんぱくな立夏ちゃんにオヤツを横取りされて泣いたりしてたのに……」

氷柱「ちょ、もう! 小さい頃の話は反則よ、海晴姉様!」

 立夏がえへへと舌を出している。
 その隣りで美夜が懐中時計を見て、軽く手を叩いた。

美夜「さてさて、立夏ちゃんたちはT-LINKの精密検査をしなくちゃね」

ヒカル「T-LINK?」

美夜「ウフフ、詳しい説明は検査をしながらするから、おいでおいで」

 怪しい手つきについていって、ゲシュペンストが収められたエリアへ行くと、ヒカルと立夏は変わった形のヘルメットを被ってそれぞれのコクピットに座る。

美夜「T-LINKっていうのは、まあ、言ってみれば人が持っている当たり前の力のことよ」

 マイク越しにヘルメットから伸びるケーブルを計器につけるように指示をしながら、美夜が説明を開始した。

美夜「すごく簡単にまとめちゃうと、家族の絆ってとこね。大切な家族を守りたいって想いが時にすごいパワーを呼ぶことってあるじゃない」

ヒカル「あるじゃないって、そんな投げやりに言われても……」

霙「フ、ヒカルが一番わかりやすいじゃないか」

ヒカル「えっ?」

霙「オマエが自分を鍛えているのは、女ばかりの家庭を守りたいって思ったからだろう? その気持ちが継続する力を生んでいて、私たちにも伝わってくる。本心がリンクしているんだ」

 真面目な声で言われると照れてしまう。

美夜「特にウチは十九人も女の子ばかり集まっちゃってるから、そのリンクが他の人よりも強く育まれちゃってるのよね。うぅ~ん、子どももいっぱい産んでみるものね」

立夏「ムツカシイ話わかんない……そのなんとかカントカが何の関係があるの?」

美夜「T-LINKを上手に引き出すことができれば、離れていても意志の疎通ができるの。虫の知らせみたいなものかしらね。相手がどこにいて、どんなことを考えているのかがわかる」

ヒカル「それって……ニュータイプってこと?」

美夜「そうね、似てるわね。人と人同士がわかりあえる人類の美しい在り方……でも、血の繋がりのある家族同士ですらそれができていない。ママはあなたたちのような娘を持って幸せよ」

立夏「えへへ」

美夜「それと、ニュータイプっていうのは、宇宙に出た人類は感覚が鋭敏になって新たな知覚を発揮するっていう考え方だから、T-LINKとはまた別の能力になるのよ。T-LINKはそうねぇ……火事場の馬鹿力みたいなものかしら?」

霙「フッ、脳筋のヒカルにピッタリじゃないか」

ヒカル「み、霙姉!」

美夜「わぉ! やっぱり立夏ちゃんもヒカルちゃんも活発でかわいい脳波をしているわね。きゅんきゅんしちゃう」

海晴「こういうママを見ると、やっぱり私たちのママなんだぁってわかるわ……」

美夜「ウフフ、立夏ちゃんなら、もうアレを扱えるかもしれないわね」

立夏「アレってなに、ママ?」

美夜「吹雪ちゃんが非常に高性能な脱出機能のコクピットを開発してくれるおかげで、技術がインフレしちゃってるのよね」

吹雪「どんな状況でも人命が最優先事項ですから。耐久性を保ちつつ小型化。軽量化をするべきです」

立夏「ねねねぇねぇ、アレってなぁにぃ~?」


 Cブロック

アリサ「あっ! アレが宮藤って博士のラボじゃない?」

 性格的に先頭に立ってしまうアリサの指す表札には『Special defensive team witches CKO:宮藤一郎』と書いてあった。

紀梨乃「ん~……特別防衛隊……魔女?」

 witchという単語の意味に、紀梨乃、珠姫、アリサ、すずか、チャムが一様になのはを見た。

なのは「ふぇ? わ、私は知らないよ」

チャム「しーけーおーって何だろ?」

紀梨乃「チャムちゃん、アルファベット読めたんだね」

チャム「失礼ね!」

アリサ「Chief knowledge officer――最高知識責任者。組織内で必要な知識や情報を扱う、まあ要するに一番頭がいい人よ」

 ここぞとばかりに父親の仕事上で仕入れた知識を披露している間に、ドアの前に来ていた。

紀梨乃「千葉紀梨乃と、あとえっと、いちにいさんよん……六名、到着しました」

 一応、年長である紀梨乃がやや緊張気味にインターフォンに報告をすると、ドアが横に開いた。

宮藤「やぁ、よく来てくれたね」

 温和そうな人物が椅子から立ち上がって六人を出迎えた。

宮藤「僕は宮藤一郎。ジャブローである特殊な研究をしているんだ。なんとなくもう想像できているとは思うけどね」

アリサ「魔力とオーラ力ですか?」

宮藤「その通りだよ。実は魔力や魔法というのは、昔から認識されている割りとポピュラーな能力だったのだけど、発現はごく限られた人だけで、混乱を避けるために政府などに情報を規制されていたんだけど、既に全世界の人達が充分に認知できる状況になっている。わかるね」

なのは「わ、私のせいですか……?」

宮藤「いや、それよりも先に、ジオンの赤い彗星がいる」

なのは「あ、そっか……」

宮藤「ともかく、連邦軍はジャブローの守備にウィッチを使うことを決定し、既に配属も決まっている。百聞は一見に如かず、見てほしい」

 部屋のカーテンがスライドして、鍾乳洞を切り拓いて作られた機動兵器の実験スペース。
 一方に取り付けられているのは、人一人分は入れそうな砲口だ。

宮藤「あれは量産型モビルスーツ・ジムに取り付けられるビームライフルと同威力のメガ粒子砲が出る。少尉、用意をしてくれたまえ」

 マイクに向かって呼びかけると、砲口の正面に建てられた鉄の櫓に一人の女性士官が上がっていった。
 肩までの黒髪を後ろで一まとめにしていて、右目に眼帯を付けて背中には日本刀を背負っている。

 六人が胡乱げに女性士官と宮藤博士を見比べていると、彼は驚くべきことを口走る。

宮藤「よし、メガ粒子砲、撃て」

 誰かが何かを言う間もなく、砲口に粒子が集まり、ビームが発射される。

『はあぁぁぁぁぁっ!』

 女性士官はビームが当たる直前に背中の日本刀を抜いた。
 スピーカー越しにも伝わる気迫の刹那、女性士官の前に半透明の青い、なのはの魔法障壁に似た盾が出現してメガ粒子砲は全て堰き止められた。

すずか「今のは、なのはちゃんの……」

宮藤「私たちはシールドと呼んでいる。物理兵器はもちろん、ビーム、レーザーまでほぼ全ての攻撃を跳ね返すウィッチの能力だ」

 役目を終えた女性士官は刀を鞘に戻して櫓を降りていく。

宮藤「このように、ウィッチはこと防衛能力に関してはジャブローの隔壁三百枚分に匹敵する」

アリサ「すごいじゃない。これがあれば各地に援軍を送ることも出来たはずよね」

 彼女にしては珍しいイヤミな言い方に、宮藤博士は参ったとばかりに頭を掻いた。

宮藤「問題なのは、ウィッチの数の少なさなんだ。ウィッチ一人で展開できるシールドの面積は50から200メートルがやっとだけど、ジャブロー、連邦政府にいるウィッチはたったの五人なんだ」

チャム「本当に少ないのね。地上はバイストン・ウェルより広いのに、聖戦士より少ないわ」

宮藤「ウィッチは素質があっても自覚がないと魔力を使うことは出来ない上に検査方法もないため、発見が極めて困難なんだ。ジャブローにいる五人のうち四人は遺伝的に魔力資質がある家系の生まれだ。残りの一人は基地内でウィッチたちと接しているうちに資質が確認されたんだ」

すずか「あ、もしかして、Dブロックが女の人ばかりだったのって……」

宮藤「そうだ。隠れた資質のある女性同士が交流することで、発現のきっかけになればと思っていたのだけれど、君たちの到着でまた別の方法を研究することができそうなんだ」

アリサ「ふぅん、もったいぶっているけど、要はなのはを実験体にしたいって言うんじゃないの?」

宮藤「これは参ったな……だけど、安心してほしい。私が重要だと思っているのは、高町くんもそうだけど、君が持っている魔法の杖のほうなんだ」

なのは「え、レイジングハートですか?」

 思わぬ指名に、なのはが首にかけたレイジングハートを出すと、赤い宝石は自己主張をするように光りを放った。

宮藤「機械による魔力の制御が可能になる技術を研究して流用すれば、魔力資質を検査する手段が発見できるかもしれない。そのために、君のそのレイジングハートを預けてもらいたいんだ」

なのは「えっと、いいのかな、レイジングハート?」

レイジングハート「Alllight my muster」

宮藤「そして、千葉さんと川添さんにも、オーラ力について話を聞かせてもらいたい。いいかな?」

紀梨乃「はーい」

珠姫「わかりました」

 快い返事の後に、インターフォンが鳴った。

『宮藤博士、坂本と宮藤、入ります』

 開いたドアの向こうに立っていたのは、先ほどメガ粒子砲を受け止めて見せた眼帯の女性士官と、それより頭一つ分背の低い少女だった。

宮藤「お疲れ様でした、坂本少尉。紹介しましょう。こちらが坂本美緒少尉で、こちらは私の娘の芳佳と言います」

美緒「坂本美緒少尉だ。このジャブローにいる間、君たちの世話役を頼まれた。よろしく頼む」

芳佳「わ、私はえっと、宮藤芳佳軍曹です。主にお父さんのお手伝いと兵隊さんたちの治療をしています」

 ホワイトベース着任の二日後にマジンガーZ、ゲッターロボなどの戦時特殊措置民間機――スーパーロボットとそのパイロット達がマチルダの乗るミデアでジャブローに到着した。

唯「熱い! なんべーが熱いよ、りっちゃん!」

律「うおーっ! アマゾンがあたしを呼んでるぜーっ!」

唯・紬「「ぜーっ!」」

梓「ムギ先輩まで……」

澪「本当に熱いな……ていうか蒸すな……」

梓「もう十二月になるっていうのに、さすが南半球ですね……」

真紅「ドールにこの気候は敵なのだわ」

雛苺「うゆー、髪がじめじめしてくるのよー」

翠星石「蒼星石は短くていいですねぇ」

蒼星石「帽子が……ね」

金糸雀「カナは日傘があるからバッチリなのかしらー」

夕映「日差しと湿気は関係ないと思うですよ」

金糸雀「はうっ!?」

翠星石「金糸雀はおーばかやろうさんですぅ」

夕映「いけませんよ、翠星石さん。指摘と罵倒は別のものです。過ちは罵ることなく訂正してあげなくては」

翠星石「なるほどですぅ。金糸雀のボケ頭を翠星石が矯正してやるですぅ」

金糸雀「ひぃぃー、ステレオしないでほしいかしらー!」

ゆりえ「うーん、熱いよー」

光恵「まったくもう、変温動物なんだから」

マチルダ「フフフ、ジャブローの中は空調が効いてるから、もう少しの辛抱ね」

唯「私、クーラーダメなんですけど……」

憂「大丈夫だよ、お姉ちゃんのためにいっぱいアイス持ってきたから!」

唯「わーい」


 Dブロック 畳の間

アリサ「うっ……ふっ、く……」

澪「あっ、あう……」

スズ「う、うぅぅ……」

のどか「はうぅ……」

唯「うず……うず……」

立夏「うゆゆ……もうヤダーッ!」

バルクホルン「立つなぁっ!」

 パシーンッ! 正座から立ち上がった立夏の尻にゲルトルート・バルクホルン准尉が振るう警策が当たった。

立夏「いったぁーい!」

バルクホルン「貴様、これで三度目だぞ! 日本人のくせに我慢が足りないな!」

立夏「も、もうオシリがびりびりで座れないよぅ……」

バルクホルン「そんなことで連邦軍人が務まるか! この後まだザゼンがあるんだからな!」

立夏「イヤーッ! 助けてオネーチャーン!」

ヒカル「わっ、バカ! こっちくるな!」

 ドシーン! 静かに精神を統一していたヒカルは立夏に飛びつかれて一緒に倒れる。

氷柱「やっ! ヒカル姉様、どこ触って……!」

 伸びたヒカルの手が氷柱の脇を掴んで氷柱は飛び上がり、勢い余って隣りによろける。

霙「むっ……!」

氷柱「きゃうっ! み、霙姉様、ごめんなさい!」

海晴「あらあら……氷柱ちゃん、そんなにお姉ちゃんのおっぱいが恋しかったのなら私がいつでも貸してあげるのに」

氷柱「い、いらないわよ!」

バルクホルン「喝ぁーつ!」パシーン!

氷柱「痛ったぁ! なんで私が!?」

 今さら言うまでもないことだが、全員揃ったところでいきなりやらされているのは正座である。
 もちろん、集合した始めは基地内での簡単な講習などだったが、あまりにも奔放な少女――特に立夏や律――たちに、教育係のバルクホルンが怒ったのだ。

バルクホルン「このバルクホルンの目が黒いうちは基地内で勝手な真似は許さないぞ!」

 生粋のジャーマンミリタール・スピリトは一度火が点くと止めることは容易ではない。

バルクホルン「知らなかったのなら教えてやる。規律とは、縛るためにあるのではない。兵士達を守るためにあるのだ。これを守ることによって兵士としての生活にけじめがつき、体調も整えることが出来、連帯意識によって仲間を想う心が生まれ、友を大事にする軍人としての高潔が養われるのだ。いいか、たった一人の兵士の勝手が一軍を滅ぼしてしまった例を教えてやろう。それはかの中国の三国時代に起こった出来事で――」

 ピリリリリリリリリ! バルクホルンの手首のウォッチが畳の間に響いた。

バルクホルン「なんだ、もう十分が経ってしまったのか」

 燃え始めた炎を鎮めたのは、自らを律する時計の音だった。

バルクホルン「よし、全員、休め!」

 号令でほとんどの者が一斉に足を崩してため息を吐いた。

澪「あ、足が痺れた……ひゃうっ!」

律「うひひ~」

澪「り、律、やめろバカ!」

スズ「正座十分なんて、旧世代の精神論です……馬鹿げてます。正座を長時間すると成長を妨げたりO脚の原因になるんですから」

バルクホルン「だが、これで暴れる元気もなくなっただろ。よし、休憩時間終わり! ザゼンに入れ!」

唯「えぇ~っ! 早すぎるよぉ~!」

アリサ「まだ一分ぐらいしか経ってないわよ!」

バルクホルン「一分も休めば充分だ! 早くザゼンを組め!」

 不満たらたらの少女たちだが、バルクホルンが警策を振り回すのを見て、渋々座禅を組み始める。

バルクホルン「ザゼンは過去の自分の過ちを振り返り、反省するためにある。よく集中して精神を統一しろ」

 しん……と静かな時間が流れ始める。
 さて、今度は何分もつのかとバルクホルンが肩を回しながら座禅の間を縫うように見回っていくと、穏やかでいて張り詰めた空気を出している四人を見つけた。

シノ「…………」

なのは「…………」

珠姫「…………」

ヒカル「…………」

 バルクホルンはふむ、と唸った。
 もちろん、他にも静かに座禅を組んでいる者はいるが、この四人は何か持っているものが違うと感じたのだ。
 バルクホルンはその四人の肩を叩く。

バルクホルン「来い」

 短く言い、疑問符を浮かべている四人を連れて、バルクホルンは畳の間から出て別の部屋に通した。

美緒「四人か、お前にしては多いな」

バルクホルン「あぁ、私はすぐに戻る。他のはてんでダメだ」

シノ「あの、我々はどうして……」

 バルクホルンが去った後、おずおずとシノが訊くと、先ほどより二回りは小さい畳の部屋の真ん中に立って書類を読んでいた坂本少尉がにやりと笑った。

美緒「楽にしていてていいぞ、今のところはな」

 そんな言われ方では全然楽に出来ない。

美緒「わかりやすい言い方をすれば、お前たちはバルクホルンに合格を貰ったということだ」

なのは「合格……?」

美緒「あぁ見えてバルクホルンは結構人を見る目がある。

ヒカル「それだったら海晴姉や霙姉まで残っているのは……」

美緒「彼女らは勝手にあそこにいるだけだ」

ヒカル「……あ、そうですか」

美緒「うむ、お前たちには一つ違う特訓を受けてもらおうと思う」

珠姫「特訓、ですか……」

 ちょっとだけ珠姫が目を光らせた。

美緒「わかっているとは思うが、戦いは一瞬の隙が命取りとなる。敵の隙を突き、自らの隙は見せず――また、それを誘い出すためにわざと隙を作ることもある」

 シノはランバ・ラルとの攻防を思い出した。あの青い巨星の悠然とした佇み、飛び込めばやられる恐怖。

美緒「特に、機動兵器での戦闘はパイロットが反応していても操縦、駆動のタイムラグが発生する。敵が動き出してから反応してもせいぜい避けるか防御するかぐらいしかできない」

 背負った日本刀を鞘から抜く美緒。鋭い輝きが反射する。

美緒「それを事前に察知し、攻撃を見極めることができれば、最小の動きで敵の隙を突くことが可能だ」

なのは「も、もしかして……」

 たらりと冷や汗を流すなのは。他の三人も気付いているようである。

美緒「お前たちには、私の剣をかわしてもらう」

なのは「死んじゃいますよ!」

美緒「安心しろ、使うのは模擬刀だ。防具を付けてもいいし、私も寸止めするように心がける」

なのは「そ、そう言われましてもー……」

 闘志ビンビンの美緒に不安になって、年上の三人に同意を求めようと顔を上げると、

ヒカル「特訓か、なるほど……己を鍛えるにはやはり特訓だな」

シノ「うむ、ドラグナーを強くしても、私が乗れなくては仕方がないからな」

珠姫「その通りです」コクコク

なのは(ノ、ノリノリだぁ……)

美緒「よし! さっそく防具を身に付けるんだ!」

なのは(ふえぇ……お父さんたちがやってたみたいなことするのかなぁ……)

 月のフォン・ブラウン市にいる家族たちを思い出しながら剣道の防具を着る。

美緒「よし、一人ずつやるぞ。まずは誰からやる?」

珠姫「私が」

 素早く挙手をしたのは珠姫だった。傍から見てわくわくしているのがよくわかる。

美緒「私の打ち込みを竹刀で受け止めることが出来れば合格だ。いくぞ!」

珠姫「はいっ!」

 剣道の実力で言えば有段者である珠姫だったが、いざ美緒の正面に対峙すると、勝手が違った。

珠姫「――ッ!?」

 切っ先から伝わる気迫に珠姫の足がまるで接着したみたいに動かなくなった。

 美緒は一歩も動いていないのに、くっ、と模擬刀が揺れるだけで珠姫は背中に冷や汗を溜めた。

珠姫「……っ!」

 顔を引きつらせる珠姫に鋭い叱責が飛ぶ。

美緒「集中しろ! 攻撃には必ず気配がある。それを探るんだ」

珠姫「くっ……」

 一度大きく息を吸い込み、珠姫は気を吐いた。

珠姫「キヤァァァァァァァァァァァァッ!!」

美緒「ほぉ、良い気炎だ」

珠姫(落ち着いた……私にはオーラ力がある。坂本少尉の気配をオーラ力で観るんだ……)

 意識を澄ませて自分のオーラ力を制御していく。

珠姫(私の……オーラ力……)

 拡大していくオーラ力を自分の内に鎮めていく。自分の目がずっと落ち着いていくのが実感できる。

美緒「はぁっ!」

 気が充実していくのを待って美緒は模造刀を右肩に振り下ろす。

珠姫「ふっ――!」

 パシィンッ! 傍から見ていたシノやヒカルの目にも映らぬ速度で、模造刀と竹刀が打ち合った。

美緒「さすがは高名な川添先生のお孫さんだ。先ほどまでまるで乱れていた気が淀みを静めている」

珠姫「私は……自分のオーラ力を暴走させません。そう決めましたから」

美緒「フッ……次は本気で掛かるとしようか?」

 ニヤリと笑んでから、美緒は刀を引いて鞘に戻した。

美緒「さぁ、次は誰がやる?」

シノ「……」

ヒカル「……」

なのは「……」

 三人は綺麗に揃って首を横に振った。


 ジャブロー連邦軍基地 Oブロック 作戦会議室
 
 レビル将軍を含む連邦高官が五人居並ぶ机を前で琴吹紬は青ざめていた。

紬「う、憂ちゃんを、停戦協定の人質に出すと……?」

連邦高官A「人質ではない。和平の為の大使に選ばれたのだ」

紬「お、同じことです! どうして憂ちゃんなんですか、彼女は民間人なんですよ!」

連邦高官B「平沢憂は半官半民の特機部隊にありながら大した役職にも就いていないが、資料を読む限りは教養もあり、大使として不可分な人格を持っている」

連邦高官C「連邦の民間人の代表に選ばれるのは大変名誉なことなのだよ。そこのところをよく理解しておいてくれたまえ」

紬「そんな……」

 救いを求めるように紬は中央に座するレビルを見るが、彼は組んだ指の上にある白髪の顔を力なく振ることしかしなかった。
 代わりに、レビルの左に座っているゴップが同情するような口ぶりで言う。

ゴップ「大使には、レビル将軍の艦隊に搭乗する予定である。危険な目に遭うことはないはずだ」

紬「……了解しました」

 そう応えるしかなかった。
 うなだれる紬が目線を再び上げるまでの間に、レビルとゴップ以外の連邦高官たちは肩を回しながら作戦会議室を去っていく。

レビル「……和平協定も、実質的にはジオンへの無条件降伏を迫る内容だ」

 額を手で拭いながらレビルが最初に言ったのがそれだった。

レビル「まず、直近の脅威であるギガノスを潰滅させ、その威信でもってジオン、ドレイク軍を降伏させるのが、参謀本部での決定となった」

ゴップ「ジオンのギレン・ザビ、バイストン・ウェルのドレイク・ルフトが降伏などするはずないというのに……」

紬「それなら、どうして大使なんて……」

ゴップ「勧告が必要である、という判断をしたからだ」

紬「どうして……どうして憂ちゃんなんですか!?」

レビル「すまない……」

 悲痛な問いに対する答えをレビルは見つけることができなかった。
 紬もまた、それ以上レビルを問い詰めることができない。
 何故なら、憂が選出された原因は彼女にもあるからだ。
 ジャブローへの入港の際、憂の身分証明に明確かつ重要な役職を用意しなかったのは、紬たちの落ち度である。
 さらに紬の胃を締め付けるのは、憂と同じ立場の人間がもう一人いることだ。

紬「あ、梓ちゃんは……」

レビル「中野梓君については、別の資料が用意されていた」

紬「えっ……?」

 レビルから差し出されたクリップボードを受け取った紬は驚愕に目を見開いた。

紬「そ、そんなことが……!」



 熱帯の青空の下に婚礼の鐘が鳴り響く。

 連邦の権力の粋を結して造り上げられたジャブローには、礼拝堂もあり、結婚式を行うことが出来る。
 宇宙世紀に突入して幾十年――ジャブローに生まれて、ジャブローで育ち、ジャブローで家庭を持ってジャブローで死ぬ――ジャブロー三世と呼ばれる世代が現れるほど、ジャブロー連邦基地は巨大な大陸国家と化している。
 単純な勢力彼我を見ても、ジャブローだけでもジオンやギガノスのそれを遥かに上回っているのだ。

 今、ジャブロー中の祝福を受けているのは、ウッディ・マルデンとマチルダ・アジャンの二人である。
 元々はオデッサ作戦終了後、ジャブローに到着し次第、挙式の予定だったが、マチルダの要望で今まで伸ばされていたのだ。

 礼拝堂の最前列、連邦高官たちよりも優先されてその席に着いているのは、桜高軽音楽部や天使家、桜才学園などの少女たちで、幸福なマチルダの美しい表情に感動しきっていた。
 普段からメルヘンな夢を抱いている澪やのどかなどは指を組んで瞳を煌めかせているし、オトコなんてクダラナイと決めつけている氷柱や恋愛などとは無縁な脳ミソをしているヒカルや律でさえ、マチルダから溢れる眩ゆさに目を奪われている。

 数少ない例外といえば、カメラを構える畑ランコや普段から何を考えているのかよくわからない霙や吹雪ぐらいだ。

 儀式はつつがなく終了して、披露宴の運びとなる。

澪「こらっ、動くな律! ファスナー上げられないだろ!」

律「んなこと言ったってよぉ、これキツくて動きづらくて……アタタタ!」

憂「はい、お姉ちゃんうーってして」

唯「うーっ」

 余興に出演する放課後ティータイムは控え室で着替えている。
 半月ほど前に本来学園祭がある日に学校でゲリラライブを敢行したが、練習時間をあまりとれなかったので、実に散々な演奏をしてしまった。
 それから、この日に備えて五人はリベンジと称して猛練習してきた。新曲も書き下ろし、結婚式の曲をカバーソングにして準備万端だ。
 だが、意気上がる控え室の中で、紬だけは暗い顔をしていた。

梓「どうしたんですか、ムギ先輩?」

紬「えっ? あぁ、うん……ちょっと、ね……」

律「むぅ~ぎ~! 澪がいじめるよ~!」

澪「誰がいじめてるんだ、誰が!」

紬「ふふふ、私がしてあげるわ、りっちゃん」

 あっという間に紬は穏やかな微笑みになって律の衣装を手伝う。

梓「ムギ先輩、何かあったのかな……?」

 昨日、作戦本部に一人で呼ばれて戻ってきたときから、何か落ち込んでいるようだったが、結局梓はそれを確かめる方法を知らなかった。

 会場には既に楽器がセットされており、五人を待っていた。
 それぞれがポジションについて確認しあうと、リーダーの律がスティックを頭上に上げる。

律「いくぜー、ワン、ツー、スリー!」

 ジャジャーン!

唯「かいていきーちはーぼくらーのへいわーまもってくれるーみらいのとりーでー」

律「緊急!」 紬「召集!」 澪「スクランブルだ!」 梓「発進!」

唯「はいてくだ~いよ~うさ~い!」

梓(またこんな歌を……)

 ジャッジャーン!

唯「てんいやーずあふたーじゅうねんごのーあなーたーをみつめてみたいー」

澪「STAY TOGETHER その時ーきっとーそばでー微笑んでいたいー」

 ジャジャーン……!

 ワァァァァァァァァァァァァ……!

 猛練習の甲斐あってか、演奏は大成功で、会場は万雷の拍手に包まれた。

マチルダ「フフ、素敵な演奏だったわ、ありがとう」

澪「あ、ありがとうございます!」

 マチルダは惜しみなく手を叩いて、放課後ティータイムの一人一人と握手をしていく。
 続いてウッディも握手をして、席に戻ってもまだ拍手はやまない。
 立夏がアンコール、アンコールと飛び跳ねて、会場もそんな空気になっているので、五人はどうしようかと相談する。

唯「アンコールだよ、アンコール!」

紬「私、アンコールされるのが夢だったの~」

律「やるか、もう一曲ぐらい!?」

梓「いや、待ってくださいよ、他の曲全然練習してませんよ。しかも残ってるのカレーのちライスとかふでペン~ボールペン~とかですし……」

澪「だ、ダメなのか!?」

梓「ダメというか、結婚式に合わないというか……」

澪「あ、合ってないのか!?」

律「合ってると思ってたのかよ……」

唯「あれ? 君だれ?」

 きょとんと唯が見たのは、いつの間にかステージに立っていた一人の少年だった。
 背は澪と同じくらいで、白い髪に地味なスラックスとワイシャツを着て、ポケットに手を入れたまま悠然と立っている。

「僕も、一曲いいかな?」

 まるで夢の中の登場人物みたいに存在感のおぼろな少年はキーボードに手を乗せる。
 知り合いじゃなかったが、不思議な笑顔に唯は頷いた。

唯「うん、いいよ」

 少年は、まるでこの世の善と悪を全て溶かして無色にしてしまったような微笑みのまま、キーボードに両手を乗せた。

唯「あ、ムギちゃんに――」

 ことわらないとダメだよ――そう言おうと後ろを見たが、そこに紬はおろか澪も律も梓もいなかった。

唯「えっ?」

 慌てて周囲を見渡すと、自分と少年と、ギターとキーボードしかないことに気づいた。

 ポロン――……キーボードが旋律を紡ぎ始めた。

唯「わぁ……」

 少年が刻む優しくて切なく、希望に満ちた旋律に唯は心惹かれた。

「歌はいいねぇ。歌は心を潤わしてくれる……リリンの生み出した文化の極みだよ……」

 旋律の途中で少年は呟いた。奇妙な言い回しにも唯は何一つ疑問を持たずに頷いた。

唯「そうだよねぇ、歌はいいよねぇ。ねぇねぇ、それは何て曲なの?」

「名前は知らないよ。なんとなく、覚えていたんだ」

唯「そっかぁ……ふふふふふんふふんふーん……ふふふふふふふんふふんふーん……」

「僕たちはどこでも、どこにいても音楽を奏でることができる。それこそ、宇宙の果てにいようとも、歌は誰かの心に届く」

 少年は演奏をやめると、唯が持っているギターの弦を爪弾いて色のない笑みのまま、滲んでいった。

唯「あれ、えっ?」

「君の歌をまた聴ける時を僕は待っているよ」

 白い髪の少年は消えていく。

律「おいっ、唯!」

唯「ひょえ?」

 肩を強く掴まれて、唯は結婚式場にいる自分を思い出した。

律「どうしたんだよ、急にぼーっとしちまって」

唯「あれ? えっと……」

梓「唯先輩、本番が終わったからってだらけてちゃダメですよ!」

 プンプンと梓がツインテールを揺らしている。
 紬と澪も、どうしたのかという面持ちで唯を見ている。

唯「で、でへへぇ~、ちょっと暑くてぇ……」

 慌てて唯は衣装を濡らしている汗を言い訳に使った。自分が体験したのは白昼夢のようなものだと結論付ける。

唯(でも、はくちゅうむって、これでいいのかな?)

 あの少年と曲は何だったのだろう? そう考えている間に、アンコール曲が決まった。

唯「えっとぉ……それじゃ、もう一回、ふわふわ時間やります!」

 わぁっ、と拍手が起きる。五人はそれぞれ自分のポジションに着いて楽器に指を掛ける。

律「いくぜー、ワン、ツー、スリー!」

 前奏の途中、それとなくあの少年を探してみたが、会場のどこにもいなかった。

澪「唯! 歌えぇー!」

唯「ハッ! わすれてた!」



 その日、ジャブローを空襲するジオン・ギガノス部隊は定刻を知らせるように爆撃を開始した。

唯「あっ、揺れた」

連邦士官「定時爆撃か。ま、心配する必要はない。。それで、ホワイトベースの編成は現行のままで所属はティアンム艦隊の第13独立部隊と決まった。……次に、各員に階級を申し渡す。香月シノン中尉」

シノン「はい」

連邦士官「天使海晴中尉」

海晴「はい」

連邦士官「天使霙少尉」

霙「はっ」

連邦士官「天草シノ以下Dチームは准尉に任命される」

シノ「はい」

 次々と辞令が読み上げられていく。
 ヒカルは伍長と立夏となのはたちは上等兵に任命されている。

連邦士官「尚、民間特機のパイロットは、一律して特尉に任命される」

すずか(私たち、いつの間にか軍人になっている……あくまで民間協力者だったのに……)

アリサ(いつかは軍事に関わらなくちゃならないとは思っていたけれど、まさか小学校を卒業する前に受け取ることになるとはね……こんなもの貰って何の役に立つのかしらね)

連邦士官「オホン、尚、貴重な補給部隊を護るために名誉の戦死を遂げられたリュウ・ホセイ曹長は二階級特進、少尉に任命された。他の戦死者達にも二階級特進が与えられる。以上である」

アリサ「……は?」

連邦士官「なんだ?」

アリサ「二階級? 二階級特進ってなに?」

なのは「あ、アリサちゃん……」

連邦士官「戦死者には一律して二階級特進が与えられる。それがどうした」

アリサ「戦っているときには何もしないで、報告だけで人の価値を決めつけて、それで送るのが階級章だけで……アンタはリュウがどう戦死したか知っているっていうの!?」

シノン「アリサちゃん、ダメ!」

連邦士官「きっさまぁ……! 子どもだと思って黙って聞いていれば……!」

 蛸みたいな顔を真っ赤にして連邦士官は平手打ちをアリサにぶつけ――ようとしたが、ひらりとアリサは避ける。

シノン「アリサちゃん!」

連邦士官「貴様! 何故よけるかぁ!」

アリサ「その前に答えなさいよ! アタシたちがどんな気持ちでここに来たのか!」

シノン「ダメよ、アリサちゃん! ……申し訳ありません」

 後半はカンカンに茹で上がっている連邦士官に向けてシノンはアリサを庇って立つ。
 当然、士官は自分が侮辱されたわけでもないのに、怒りを押さえられず、また手を振り上げる。

連邦士官「香月シノン! 隊長として貴様が修正を受けろ!」

 乾いた音がして、後ろにいたアリサは自分の代わりにシノンが頬を打たれたのを知った。

アリサ「何してんのよ――もがっ!」

 とっさに霙が口を塞がなければこの場は堂々巡りになっていただろう。

連邦士官「あのスケベ親父の姪だけあるな! 威勢の良さだけは一人前だ!」

 そう吐き捨てて士官は去っていった。

すずか「アリサちゃん……ダメだよ、あんなこと言っちゃ……」

アリサ「だって……だってアイツがリュウの事を……」

 まるで押しくるめられたように狭苦しい部屋に集められた少女たちの中心で、アリサはかっと熱くなる頭と多くの同意同情する視線を浴びる恥ずかしさに、目の端を滲ませた。

アリサ「悔しいのよ! あんな奴にこんな風に扱われて! ジオンよりもギガノスより腹が立つのよ!」

律「だよな、こんな紙切れ一枚であたし達を縛りつけようとしてんだぜ」

シノン「だけど……反発しても私たちが反逆者扱いされてしまうわ」

霙「往々にして、軍隊、巨大な組織というのは、こういうものだ。世渡りというのも重要なスキルだ」

なのは「あっ、アリサちゃん、どこに行くの……?」

アリサ「気晴らしよ! ジャブローん中散歩してやるわ!」

すずか「それなら、私たちも……」

アリサ「いいわよ、ついてこないで!」

 あんまり大きな声を出してしまったことに自分自身びっくりして、アリサはばつ悪げにうなずいた。

アリサ「平気よ……ごめんなさい、シノン……」

シノン「気にしないで、ゆっくりするといいわ」

アリサ「ありがとう……ございます」

 普段の活気をなくして、アリサは部屋を出て行った。


 ジャブロー 兵器工場

アカハナ「これは……メタルアーマーでしょうか……?」

シャナ「量産機ね。連邦もここまでこぎつけたということね」

アカハナ「やりますか、大佐?」

シャナ「勿論よ」

ラジム「大佐、隣りの工場はゲシュペンストのようです」

シャナ「当然、そっちもやるわ。モビルスーツはないのかしら?」

アカハナ「所詮、ここも連邦の生産の一部分なのでしょう」

シャナ「木馬の場所はわかっているわね」

アカハナ「はっ」

シャナ「なら、アカハナはアッガイを出しなさい」

アカハナ「了解!」

 同じ時間、アリサは基地の中をとぼとぼと歩いて、環状道路に出ていた。
 ジャブローの基地は鍾乳洞を切り開いて作られたもので、いまだ建設中であり、さながら宇宙世紀のサグラダ・ファミリアである。
 
アリサ「アタシは、どうすればいいの……姉さん……?」

 こんな時に限って、頭をよぎるのは行方不明の姉であった。

アリサ「なんとなくだけど……近くに姉さんがいる気がする……」

 ただ、実際に会いたいかどうかは、わからなかった。
 もしも赤い彗星フレイムヘイズのシャナがアリサの姉だとして、それがこんなところで出くわしたとして、どうすればいいのだろう。
 昔を懐かしむほど、二人の立場は気安いものではない。
 だからといって、銃を向けることが正しいのかも判らない。
 そもそも、銃を向けたところで、即座に叩き落されるのがオチだろう。

アリサ「それでも……確かめるだけでも……」

 運命は、まさしく奇妙に人々を結びつけるのであった。

シャナ「用意はできたわね」

ラジム「はっ、いつでも爆破できます」

シャナ「いいわ、一時退避しなさい。爆破と同時に私とアッガイで内部を攻めるわ」

ラジム「了解!」

 力のある敬礼で、ラジムとその一派は離れていく。
 二人の再会に報告するべき原因があるとすれば、その時、彼らの動く足音の気配を一方が感じ取ったからだろう。
 でなければ、何か、霊的な力が引き合わせたのだとしか思えない。

アリサ「ね、姉さん……?」

シャナ「アルテイシア……?」

 二人は、視線を交錯させたまま硬直してしまった。
 だが、次の瞬間、アリサは理由もなく銃を抜いていた。

アリサ「何故……! 何故こんなところにいるの、姉さんが!?」

シャナ「それは私も同じことだ、アルテイシア。優しかったお前が、どうして連邦の制服などを着ている?」

アリサ「そ、それは……」

 黒髪をくるぶしまで垂らした少女は、妹の銃口が震えるのを見て、大胆に一歩前に出て、手を差し伸べた。

シャナ「いや、私はわかっている。友達のためだろう?」

 笑いかける姉の表情はまさしくアルテイシアが幼い頃に見ていたものとおなじだった。
 とても、戦場の恐ろしい仮面の姿ではない。

シャナ「それをわかっていて、あえて私は頼む。軍から身を引いてくれないか、アルテイシア」

アリサ「勝手なことを……! 地球を征服して、何を楽しむつもりなの!?」

シャナ「私の目的は、地球ではない。賢いアルテイシアなら、わかってくれるだろう?」

アリサ「近づかないで!」

シャナ「アルテイシア。お前がいてくれれば、これほど心強いことはない。私の許に来るつもりはないか?」

アリサ「今の私の大事は、なのはとすずかなんだからぁーっ!」

 ズギュゥッ! アリサの手の中の銃がシャナの左の空間を貫いた。

シャナ「……強くなったな、アルテイシア」

 はらりと数本の髪を舞い散らしたシャナは、手の中のスイッチを高く掲げた。

シャナ「ならば、私もやるべきことをやらせてもらおう!」

 指がスイッチを押すと、幾重にも重なった爆音と強震が、ジャブロー中に轟いた。

アリサ「これは……っ!」

 揺れる世界の真っ只中で、シャナは身を翻していた。

シャナ「いいな、軍から離れてくれよ、アルテイシア」
                  
アリサ「あっ……待って! 待って……〝兄さん〟!」

 遮二無二に追おうとしたアリサだったが、彼女がいる場所は一人で降りるには高く、肝心の背中は既にもうもうと立ち込める白と黒の煙に隠されてしまった。

アリサ「あ、あぁ……あぁぁ……」

 必死に抑えつけてきた涙が、ついに堰を切って溢れ出てきた。


ついに始まるジオン、ギガノスによるジャブロー総攻撃。
真実に気付いたアリサに対して、赤い彗星は無情な作戦を開始する。
完成した連邦の新兵器、ドラグーンの威力とは。
終わりのない猛攻撃の最中、次々と現れる乱入者たちに、少女たちはいかにして立ち向かうのか。
そして、駆けつけてくる仲間たちの姿がすぐそこに――


次回、スーパーロボット大戦 第19話 後半
『雷撃! 少女たちの防衛線』


 君は、生き延びることができるか――?



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