アムロ「絢爛舞踏?」

2011年04月02日 20:54

アムロ「絢爛舞踏?」

人類VS幻獣って構図なので敵キャラとかは関係なしで。

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 23:03:57.07 ID:dAkAjUos0
アムロ「なんなんですかそれは」


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/27(日) 23:07:01.30 ID:vbj4WyGMO

15歳のパイロット候補生アムロ・レイは、転入先の高校から迎えにきた女性の発した耳慣れない言葉を聞き返した。

セイラ「死を呼ぶ舞踏。人類の決戦存在だそうよ」

セイラ「息をするように幻獣を殺す……という噂だけれど、大方、ヒーローの出現を夢見る子供のおとぎ話でしょうね」

アムロ「……そのおとぎ話をどうして僕に?」

セイラ「フフッ、特に意味はなくってよ」

セイラ「ただ、なんとなく……あなたが私のよく知っている人に似ているものだから」

アムロ「よく知っている人って?」

セイラ「秘密。……さあ、着いてよ。」

アムロ「これが尚敬高校……か」


1945年、第二次世界大戦は意外な形で終幕を迎えた。

「黒い月」の出現。

それに続く、人類の天敵の出現である。


人類の天敵、これを幻獣という。

確固たる目的も理由もなく、ただ人を狩る、人類の天敵。

人類は、存続のために天敵と戦うことを余儀なくされた。

それから、50年。戦いはまだ続いている。


1997年、幻獣と戦い続ける人類は、

劣勢のあまりユーラシアから撤退するに至っていた。

幻獣軍は九州西岸から日本へ上陸。


1998年、人類は幻獣軍に記録的な惨敗を喫す。

事態を憂えた日本国首脳部は、

1999年にふたつの法案を可決し、起死回生をはからんとする。


ひとつは、幻獣の本州上陸を阻止するための拠点、熊本要塞の戦略増強。

もうひとつは、14歳から17歳までの少年兵の強制召集であった。

この物語は、その子供たちのひとりが主人公である。


アムロ・レイ 1984年生まれの15歳の少年。

彼はまだ、自分の可能性に気づいていない。

人類の決戦存在、HEROたりえる己の可能性と、その先に待ち構える運命に。



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セイラ「熊本にははじめていらしたの?」

アムロ「はい……いいところですね、ここは」

セイラ「フフ、気にいってもらえると嬉しいわ」

セイラは、アムロにどこから来たのか尋ねようと思ったがやめた。

なんとなく、アムロが聞かれたくないように思っている気がしたからだ。

セイラは当然だと思った。

最前線である熊本によそから来る人間は、訳ありな場合が多いのである。

セイラ「あなたは、パイロット志願なのね」

アムロ「はい、戦車兵は死亡率が低いと聞いたので」

セイラ「あら、正直なのね。でもスカウトの人の前でそんなこと言ったらいけないわ」

アムロ「すいません……まさか、あなたが!?」

アムロはそこにいる細身のたおやかな女性が、スカウト―歩兵であることに驚愕した。
いかに身体能力を大幅に増幅させた第六世代とはいえ、このような女性が身ひとつで戦う様子は想像もできない。

セイラ「それは違ってよ、アムロ」

セイラは微笑むと、

セイラ「でも、ラインオフィサーだからクラスは同じね、さあ、私たちの担任の先生にご挨拶に行きましょう」

と、緊張しているアムロの肩を優しく叩いた。

エマ「はじめまして、あなたがアムロ・レイ君ね」

アムロ「は、はい。僕がアムロ・レイです」

アムロは、自分の担任でもあり指導教官でもある上官が、若くてきれいな女性であることに驚いた。

先生とは言え半分は軍人なのだ。
挨拶がわりにマシンガンでもぶっぱなすような、エキセントリックな人だったらどうしよう、などと想像を膨らましていた自分が馬鹿らしい。

アムロ(我ながらゲームのやり過ぎ……かな)

アムロは自分の想像に苦笑いを浮かべた。

エマ「……なにがおかしいの?」

アムロ「え?」

エマの額に青筋が浮かび、優しげな声は地獄の底から湧き出てきたような声に変わっていった。

エマ「そんなにこの髪型がおかしいの……」

アムロ(ひえぇ……何言ってんのこの人)

セイラ「エマ先生、着任の挨拶が済んだので、アムロ君を教室まで案内してきますわ」

セイラは早口で言うと、エマのただならぬオーラに気押され恐怖で足がすくんでいるアムロの襟首を掴み、足早に職員室を去った。

セイラ「ごめんなさいね、アムロ。驚いたでしょう」

アムロ「ええ、まあ……」

アムロはそれだけ絞りだすのがやっとだった。

戦場に出たことのない彼にとって、本物の殺気を向けられたのははじめてである。

セイラ「誤解しないでね、髪型やそれを嘲笑するようなことを言いさえしなければ、生徒思いのいい先生なのよ」

アムロ(僕どっちも言ってなかったけどなぁ……)

アムロはしかし、セイラの言葉を頭に刻みこんだ。先程のようなことはもうごめんである

アムロ「ところで、セイラ……さん」

セイラ「何かあって?」

アムロ「さっきから僕たち、女子生徒とばかりすれ違っている気がするんですけど……」

セイラ「それは当然よ、アムロ。尚敬高校は女子校ですもの」

アムロ「!!!」

アムロ(女子校……!?つまり僕はセイラさんみたいな女子に囲まれて学校で一人だけ男子生徒で全校の女子生徒から注目されたりアプローチを受けたりお弁当の「あーん」の応酬を受けたり……)

やはりゲームのし過ぎである。

セイラ「私たち5121小隊は、尚敬高校に間借りさせてもらっているのよ。…ほら、見えてきた」

アムロ(こ、これは……)

それはアムロを現実に引き戻すには十分な光景だった。

そこには二階建ての、安普請と言う言葉では足りないくらいの貧相なプレハブ校舎が建っていたのである。

口を開けて校舎を見上げるアムロにセイラは追い討ちをかけるように言った。

セイラ「安心してアムロ。我らが5121小隊にはあなたと同じ男の子もいるわ。」

アムロのハーレム学園生活の夢は短く儚かった。

セイラは一通り設備の説明をすると、教室のある2階へアムロを導いた。

セイラ「まだ部隊が発足して間がないからテクノオフィサーがいないけど、みなさんいらしたら2組にも生徒が入るそうよ」

ガラリ

アムロは緊張の面もちで1組の教室に足を踏み入れた。

そこには、お世辞にも広いとは言えない教室に10脚ほどの机と椅子しかなかった。

さらに言えば、そこにいるであろうと思われた生徒は……あろうことか3人ほどしかいなかった。

セイラ「刹那。他のみなさんはどちらに行かれたのかしら。」

刹那「一時限目は戦車技能取得のための座学だ。隊長とスカウトは自己の訓練に行くと言って出て言った。」

刹那と呼ばれた少年は無感情にそう言った。

刹那「セイラ・マス。彼は……」

セイラ「そうだったわ、紹介するわね。こちら、今日付けで我が隊に配属されたアムロ・レイ君よ。」

アムロ「は、はじめまして、アムロ・レイです」

セイラ「アムロはあなたと同じパイロット志望なのよ」

それを聞いて、刹那の表情が少しだけ柔らかくなった。

刹那「刹那・F・セイエイだ。……よろしく」

アムロ「よろしく……」

アムロ(何考えてるのかよくわからないけど、悪い人じゃなさそうだな)

???「へー、あなたもパイロット志望なんだ!」

快活な声が聞こえてきた方を見ると、その印象に違わぬ元気いっぱいな少女がいた。

アレンビー「アタシ、アレンビー・ビアズリー!よろしくね、アムロ!」

アレンビーは人なつっこい笑顔で握手を求めてくる。

アムロ「よろしくな、アレンビー」

彼女の明るさに、アムロも思わず顔がほころんだ。

セイラ「アレンビーは、スカウトになってもおかしくないくらいの高い身体能力があるのよ」

アレンビー「エヘヘ!」

アレンビーは照れたように頬をかく。

アムロ「へえ、すごいじゃないか。でも君もパイロット志望なんだよね?」

アレンビー「うん、最初はスカウトになろうと思ったんだけどね」

アレンビー「ここのスカウトの人たち見て諦めちゃった。私はまだまだ精進が足りないみたい。」

アムロ「へえ……」

どんな人たちなのか聞こうと思ったが、いずれ会うのだからその必要もないだろうと思いやめた。

アムロ(しかし、アレンビーがこれほど言うくらいならすごい人たちなんだろうな……)

しばらくアレンビー達と談笑していたアムロは、一人輪の中に入らずに読書している少女に気づいた。

アムロ「あの子は……」

アレンビー「ああ、あの子あんまりみんなと馴染みたくないみたいなんだよねぇ」

アレンビー「ねぇ、あなたも挨拶くらいしなさいよ!」

アレンビーの呼びかけにも応えようとしない。

苛立ったアレンビーが何か言おうとしたが、アムロがアレンビーの軽く肩を叩いてそれを制止した。

アムロ「いいよ、僕から挨拶する」

アムロは、少女の元に歩み寄って手を差し出した。

アムロ「僕はアムロ・レイだ。今日から君のクラスメートになる。よろしく」

少女は鼻をふん、と鳴らし、椅子から立ち上がらないまま応えた。

クインシィ「私は誇り高きクインシィ・イッサーだ。お前と握手などするものか」

アムロ「クインシィ・イッサー……?」

アムロの背後で他のクラスメートがつぶやく。

アレンビー「出たよ~、どう見ても日本人なのに自分のことクインシィなんとかって言っちゃってさ~……」

セイラ「おやめなさい、アレンビー」

刹那「クインシィ・イッサー、本名伊佐未依衣子(いさみ いいこ)……」

それを聞きながら、アムロは目の前の少女の顔がだんだん赤くなっていく様子を観察していた。

依衣子「う……うるさいうるさい!!だからお前たちと仲良しごっこするのは嫌なんだ!」

どうも依衣子は頭に血の上りやすい性格のようだ。

はっきりとした性格のアレンビーと衝突してしまうのも無理はない。

アレンビー「なによ、やる気?」

……だからと言って、転校早々クラスメート同士の揉め事もこれ以上見たくない。

アムロ「やめるんだアレンビー。……クインシィも落ち着け」

アレンビー「アムロ?こいつの名前はクインシィじゃなくて」

アムロ「彼女がクインシィと呼ばれたいなら僕はそう呼ぶよ」

アムロ「よろしく、クインシィ」

クインシィ「……ああ」

差し出された手を今度は素直に握るクインシィ。

この場はどうにかおさまったものの、今後の学園生活に一抹の不安を覚えるアムロであった。



キーンコーンカーンコーン

午前中の授業を終えほっと一息ついたアムロは、自分が空腹なことに気がついた。

アムロ(うーん、腹が減っ……)

見上げると刹那がアムロの机の前に立っていた。

刹那「昼食の入手と各設備の説明……お前が必要ならばする、アムロ・レイ」

アムロは刹那の口調に苦笑いしながらも、転入してきたばかりの自分に気を使ってくれることをありがたく感じた。

アムロ「それじゃ、お願いしようかな、刹那」

刹那(……こくり)



おねーさん「あら~、いらっしゃい」

刹那「ここは購買」

刹那は慣れた手つきで小銭を取り出し、ビンと袋を2つずつ受けとった。

刹那「……これを」

アムロ「!いいのか」

刹那(こくこく)

アムロ「ありがたくいただくよ」

二人は並んで腰に手をあて、瓶入りの牛乳を一息に飲んだ。

アムロ「うまいな」

刹那「カルシウムも摂取できて背が伸びることも期待できる。合理的な飲料だ」

アムロ「これは……あんパンだな」

刹那「古来から牛乳とあんパンはふたつでひとつの組み合わせと聞いている。……先人の知恵はあなどれない」

アムロ「うまかった。ありがとう、刹那」

刹那「礼には及ばない。……放課後は時間あるか」

アムロ「ああ、大丈夫だ」

刹那「街を案内する」

アムロ「本当か!嬉しいな」

刹那「では決定だ」


午後の授業が終わると、アムロは刹那に連れられて熊本の街を散策した。

味のれん、裏マーケット、図書館……


今町公園に着いた頃には日も暮れかかっていた。

アムロ「今日は楽しかったよ、刹那」

刹那「よかったな」

アムロ「明日から本格的な訓練が始まると思うと少し気が重いけど……刹那となら頑張れそうな気がするよ」

刹那「!」

アムロ「セイラさんに聞いたけど、この部隊に刹那と同年代の男が入るのは初めてなんだってな」

アムロ「色々気を使ってくれてありがとう、刹那」

刹那(ふるふる)

刹那(じー……)

アムロ「な、なんだよ」

刹那「お前はなぜパイロットを志願した、アムロ・レイ」

刹那「俺は、サムライになりたい」

アムロ(スピリット・オブ・サムライ……士魂号か)

アムロは今日の授業内容を思い返していた。

士魂号とは人口筋肉でできた人型戦車であり、いずれ自分や刹那たちパイロット候補生が乗る機体である。

人型であるがゆえ様々な戦略に対応することができ、対幻獣戦において一番のメインになる重要な戦力である。

刹那は、数年前のことを思い返していた。

早い段階で幻獣の占領下に落ちた中東を離れ、ユーラシア大陸の東の果てまで逃れてきたこと。

中国の焦土作戦も命からがら逃れ、日本行きの船に紛れ込んだはいいものの、日本に着いても心の休まる日は無かった。

刹那の人生は、常に幻獣による危機に隣合わせだったのである。

絶望の日々から救い出してくれたのは、忘れもしない大きな大きな背中……

白いサムライだったのだ。

そのサムライは、今にも幻獣に切り裂かれそうな刹那の前に立ち、一刀のもとにナーガを切り捨てた。
ゆったりとした動作で刹那の方を向き、無傷だと確認すると一迅の風のごとく彼は再び戦場に駆け戻っていった。

刹那は思った。あれこそが希望だと。
ボロ雑巾のような身なりとプライドで生きてきた刹那はその姿に奮い立った。

刹那は思った。

プライドが無くても死にはしないが、尊厳がなければ人として死んだも同然である。

生きた屍だった自分に希望を与えてくれたサムライになろうという夢が、自分をかろうじて人たらしめていたのである。

幸い、戦時中の混乱もあって、軍への入隊は驚くほどすんなりいった。
幻獣共生派とのつながりだけは入念に調べられたが、彼らと一切関係を持たなかった刹那は何ら問題なかった。

刹那は今、夢への第一歩を踏み出したばかりだった。

今日出会ったばかりの自分と同じ年頃の少年は、この先同じ隊の仲間として自分と数々の戦場を共に戦うのだろう。

だからこそ問いたかった。彼の覚悟を。

アムロ「……」

アレンビーや依衣子の時にはこんな感情は芽生えなかった。

なのになぜアムロには問いたくなるのか……

刹那は己の事ながら不思議に思った。

アムロ「僕は……」

アムロ「刹那のように、はっきりとした目標は無いかもしれない」

刹那「そうか」

アムロ「でも……セイラさんにエマ先生、アレンビーとクインシィと、刹那」

アムロ「みんな今日会ったばかりだけど、僕はみんなに死んで欲しくないと思ってる」

アムロ「僕はね刹那」

アムロ「最初は……死亡率が低いからパイロットになろうって思った」

刹那「……」

アムロ「でも、君の目標を聞いて、そんな君の力になりたいと思ったよ」

刹那「……」

アムロ「もちろん今も死にたくないって思ってるよ。」

アムロ「みんなを守ること、君を助けること、生き延びること」

アムロ「全部諦めたくないな」

刹那「アムロ……」

アムロ「そのためには訓練しないとな!」

刹那「ああ……!」

アムロ「これだけ言っておいて、パイロット試験に落ちたらお笑い草だ」

刹那「フッ……そうだな」

アムロ(刹那が笑った……)

二人はどちらからともなく握手を交わした。

それは誓いの儀式のようであった。


アムロと刹那、友として、お互いの背中を預けあう仲間としてのこれが始まりであった――


次の日からアムロ達を待っていたのは、地獄のような訓練生活だった。

ベテラン兵であるこの部隊スカウト2名が、アレンビーを除いてパイロット候補生の基礎体力に問題がある、と司令に進言したためである。

司令はこれを受け入れ、候補生用の時間割をこなした後の放課後は、すべて訓練に当てる旨を決定したのだ。

アムロ「……151、152、153……」

東方不敗「馬鹿者が!頭が上がりきっておらぬではないかぁ!!」

アムロ(そんなこと言われたって……2時間もぶっ続けで懸垂させようって方が無茶だ!)

東方不敗「返事は!」

アムロ「イ、イエッサー!!」

この上官たちにNOは通用しないことを数日前に体で学んでいたアムロは、慌てて返事をして再び己を持ち上げる作業に戻った。

2時間の懸垂地獄を終え、ようやく許された小休止にアムロは一言も発せずにその場に倒れ込んだ。

その頬に冷たいものが押し当てられる。

が、腕が上がらないアムロは、ただ顔を向けるだけでやっとであった。

ドモン「疲れたようだな」

見上げると、スカウトのもう一人であるドモン・カッシュがいた。

先ほどの東方不敗の弟子にして、現在はアムロたち候補生に指導を行う立場である。

アムロはアレンビーの言葉を思い出していた。

アレンビー「ここのスカウトの人たち見て諦めちゃった」

アムロ(あのアレンビーがああ言うのも納得だな……)

セイラが言っていた通り、アレンビーの身体能力は候補生の中では抜きん出ていた。

東方不敗が唯一特別訓練の必要なし、と太鼓判を押すくらいである。

しかし、老いてなお現役のスカウトとして活躍する東方不敗とその弟子ドモン・カッシュは、アレンビーなど到底及ばないほどの身体能力を有していたのだ。

アムロ(第四世代の人があんなに強くなれるんだ、僕だって……)

ドモン「まあこれを飲め。5分後に訓練再開だ」

アムロ「たった5分……ですか」

ドモン「気持ちはわかるが、これでも俺も師匠も、お前たち候補生を死なせたくなくて必死なんだぜ」

そう言ってドモンは苦笑した。

些細な口答えも許さない東方不敗とは違い、年の違いドモンにはみなは親しみを感じていた。

――

短い休憩を終えたアムロにドモンが何かを手渡しに来た。

ドモン「アムロ、これを両手に持って走れ」

アムロ「!!これは……」

ズシリとした重み。

長時間の懸垂で落ちた握力では、取り落とさないようにするのがやっとだった。

ドモン「ダンベルだ。ひとつ20キロある。」

アムロ「にじゅっ……」

アムロの顔が引きつった。

ドモン「そんな顔をするな。俺達には時間がない。それを使えば訓練の効率は格段に上がるんだ」

ドモン「さあ、次は走り込みだ。今日のノルマをこなしてもらうぞ!」

アムロ「イ、イエッサー……」

いかに親しみやすくとも、東方不敗の弟子なのだ。

訓練には妥協は見せない指導教官の背中に頼もしさを感じながらも、ため息を禁じえないアムロであった。

――

アムロ「ハァ、ハァ、ハァ……」

アレンビー「お疲れさま、アムロ」

そう言って牛乳を差し出すアレンビー。

アムロは受け取りはしたものの、しばらくそれに口をつける気になれなかった。

アレンビー「大変ね、アムロ。本格的な訓練は初めてなんでしょ?」

アムロ「ああ。でもアレンビーが一緒に走ってくれて助かるよ。気が楽になると言うか……」

アレンビーは照れたようにへへ、と笑った。

アレンビーは本来訓練の必要はないのだが、自主的に残って訓練に参加していたのだ。

アムロ(しかしアレンビーには驚かされるなぁ……)

アレンビーは、実にアムロの3倍の重りをつけて彼の走り込みに付き合っていたのだ。

走り終えた今も、疲労の様子は見せない。

彼女に訓練の必要がないと言われた理由がわかった気がした。

アムロ「君はみんなの訓練に付き合って回ってるのかい?」

アレンビー「そうね、私自身の訓練の合間を見てだけど……」

アレンビー「私以外はみんな訓練初めての子ばっかりだし、ちょっと気になるのよね」

アムロ「アレンビーは優しいな」

アムロは、仲間思いのアレンビーに感心した。

アレンビー「そ、そうでもないよ」

照れ屋だが素直なアレンビーは、アムロの言葉に頬を赤らめた。

アムロ「みんなの様子はどうだった?」

アレンビー「刹那は基礎体力がまずまずだから、その分の時間を反射神経や白兵訓練に充ててるみたいね」

アムロ「白兵……」

アレンビー「どうも近接戦闘が好みみたい。射撃もそこそこできるのに……」

アムロ「サムライ、か。なるほどな……」

アムロは数日前に刹那が言っていたことを思い返した。

アレンビー「それでね、クインシィは……」

アムロは驚いて大げさな動作でアレンビーを見た。

アレンビー「な、なによ……あたしだって、好きで揉め事起こしたいとは思ってないわよ」

照れて早口になるアレンビーをアムロは優しげに見つめた。

アムロ「いや、なんでもないよ。続けてくれ」

アレンビー「刹那とは逆ね。合間を見ては射撃シミュレータにかかりっきり」

アムロ「へえ、そうなのか」

アレンビー「まあ彼女の場合、刹那ほど体力もできてないから、あなたと同じメニューをこなしつつみたいだけど」

アムロ「な、なんだって!」

アムロは冷や汗をかいた。

アムロ「じゃあ、この部隊で一番訓練が遅れているのは……」

アレンビーはしまったと思った。

いくら温厚なアムロでも、さすがに女子より訓練が遅れているとなると落ち込むだろう。

アムロ「こうしちゃいられない!」

アムロは傍らにあった牛乳を一気に飲み干して立ち上がった。

アムロ「アレンビー、もう少し時間いいか?訓練を見てもらいたいんだが……」

アレンビー「う、うん!でも……」

アムロの食道を、先ほど流し込んだ牛乳が逆流してくるのを感じた。

アレンビー「……無理は禁物だよ、アムロ」



アムロが転入してきてから3週間が経とうとしていた。

数々の訓練をこなし、今日がその成果を見せる時である。

エマ「あなたたち、相手はダミーバルーンで攻撃はしてこないけど気は抜かないこと!」

アレンビー「はい!」

刹那「了解した」

各々が練習機に乗り込む中、クインシィは憮然とした表情をしていた。

クインシィ「なぜ私がこいつと組まねばならないんだ!」

エマ教官に食ってかかる勢いで講義した。

エマ「しょうがないじゃない、アムロは運動操作技術はトップだけど射撃がそこまでではないし」

エマ「あなただって、射撃の腕は素晴らしいけど……」

エマ「ついこの前バランス崩して派手に転んだこと、忘れたとは言わせないわよ。」

クインシィ「クッ……私とこいつでやっと一人前、というわけか」

エマ「そういうこと。みんなを待たせてるわ。早く練習機に乗りなさい」

クインシィは踵を返すと、二人のやり取りを黙って聞いていたアムロの腕をひっつかんで足早に去っていった。

エマ(それに、依衣子とアムロを組ませると、なぜだか二人とも普段とは比べものにならないくらいの能力を発揮するのよね)

相性がいいってこういうことを言うのかしら、とエマは笑った。

愛する生徒たちが生き残る可能性が少しでも増えるなら、彼らのちっぽけなプライドなど問題ではないのだ。



練習機に搭乗した候補生たちは、みながそれぞれ高揚し、また緊張していた。

セイラ「みなさん聞こえて?今回の試験でオペレーターを勤めるセイラ・マスよ」

アレンビー「はい!」

刹那「聞こえている」

クインシィ「3番機も問題ない」

アムロ「大丈夫です。」

セイラ「今回の試験は、一機ずつ出てもらいます。」

セイラ「数は15。相手は攻撃してこないけど、前に出過ぎて囲まれでもしたら動けなくなるからお気をつけになって」

セイラ「それでは一番機から始めます。準備はよろしいかしら」

刹那「いつでも開始して構わない」

刹那(俺は……)

セイラ「刹那機、試験を開始します。頑張りなさい。」

刹那(……サムライになるんだ!)

刹那の乗った一番機は開始の合図とともに地面を蹴り、跳躍した。

レーダーに表示された最も近い敵に向かい、考えうる最短の方法でみるみる距離を縮めていく。

アムロ「さすがだな、刹那は……」

絶え間なく聞こえてくる撃墜報告を聞きながら、アムロは友人の軽やかな身のこなしに見入っていた。

アレンビー「さっすが刹那だね!あんなに早い動きは真似できそうにないな……」

刹那の愛用武器は刀である。
これは銃よりも短いモーションで動けるため、刹那は名前の通りに恐るべき速さでダミーバルーンを破壊していった。

クインシィ「フン!あんなもの、私のミサイルにかかったら蜂の巣だ」

クインシィは忌々しげに、試験を終えて離脱してきた一番機を見やった。

アムロは、周囲のみなに敵意むき出しのクインシィに呆れ返った。

刹那は敵ではなく、味方なのだ。背中を預ける相手が強いに越したことはない。

それなのにどうしてクインシィはこんな態度を取るのか。

セイラ「二番機、ゴブリンリーダー、ナーガ撃破。いい調子ね。」

クインシィ「クッ……」

アムロは、諦めたようにため息をついた。



アレンビーの強さは、さまざまな戦闘に対応できる柔軟性にある。

前線に出ている味方を射撃で援護することもできれば、自ら前線に立って白兵戦をこなすこともできる。

また、高い身体能力を生かし、弾の切れた銃器を捨て身軽になったところで素手の戦闘を行うなどという、人間離れした芸当も得意とした。

さらに彼女には専用の武器があり、小隊が実戦配備される頃にはそれが届くという。

つまり、現在の彼女は未だ本領を発揮した姿ではないのだ。

アムロ(何者なんだろう、彼女は……)

アムロがそんなことを考えているうちに、アレンビーの乗る二番機は最後の一体を鮮やかな蹴りで粉砕した。

セイラ「アレンビー、お疲れさま。三番機、バルーンの配置が終わり次第試験開始します。準備はよろしくて?」

セイラの凛とした声がコクピットに響いた。

アムロ「はい、大丈夫です!」

クインシィ「フン、せいぜい私の足を引っ張らないことだ」

アムロ「……努力するよ」

アムロは自分のすぐ後ろに座る少女の尊大な態度に参っていた。

確かに機体特性と自分たちの適性を考えると、複座型が適当なのかもしれない。

アムロ(だからといって、こんなに人と協力する気のない人と……)

アムロはエマ教官を少しだけ恨んだ。

アムロ「クインシィ、作戦はどうする」

クインシィ「決まっている。ミサイルで一気に殲滅だ」

アムロ「……」

確かにミサイルは一度に多数の敵を攻撃できる強力な武器だ。

しかし、射程の都合上、敵の近くまで行かなければ効果的には使えない。

周囲の敵を牽制してくれる味方がいればこその決戦兵器なのである。

アムロ「クインシィ、それは……」

実際の攻撃を受けないとは言っても、ダメージ判定を受ければシミュレータ内の耐久力は減り、戦車の精度も下がる。

そして耐久力が一定まで減れば撃破されたことになり、その時点で試験は終了である。

アムロ「クインシィ、君は……」

試験に受かるつもりはあるのか、と続けようとしたのをクインシィが遮った。

クインシィ「頼む、アムロ」

思っていた以上に真剣な声音に、とりあえずアムロはクインシィの話を聞くことにした。

セイラ「試験準備完了。三番機、出てもらいます。」

アムロ「は、はい」

クインシィ「了解だ」

クインシィは股の間に見える相棒の後頭部を見下ろした。

クインシィ(頼んだぞ……アムロ。)



エマ「アムロ達は何をしているの!?」

アレンビー「わ、わかんないですよぉ!」

刹那「……」

モニターに映っていたのは、敵のただ中に突入し、紙一重で攻撃を避け続ける三番機の姿であった。

アレンビー「なんで攻撃しないのよ!」

刹那「それは無理だ、アレンビー・ビアズリー。ああも敵に囲まれていれば、動きを止めた途端に敵の攻撃を食らってしまう」

アレンビー「だからって……!」

防戦一方では敵を殲滅できない。

エマ「っあの子たち、制限時間があることを忘れてないでしょうね……」



アムロ「くっ……」

敵の射線をギリギリのところでかわしながら、アムロはクインシィが言ったことを思い出していた。


―試験直前

クインシィ「聞いてくれ、アムロ」

アムロ「……なんだよ」

クインシィ「私たちはおそらく全員が合格する。パイロットが4人そろえばそれを軸にあっという間に小隊が編成されるだろう」

アムロ「……!」

アムロは驚いた。

アムロ「そ、そんな先のことより今は試験が……」

クインシィは静かに続けた。

クインシィ「アムロ、こんなちっぽけな試験、ただの通過点に過ぎないんだよ」

クインシィ「私たちの訓練が足りていないのは火を見るより明らかだ。当然だ。本土のやつらは私たちを捨て駒としか思っていない。」

アムロ「……」

アムロは、熊本の学徒兵全員が恐れ、直視していない真実を平然を話すクインシィに驚いて言葉も出なかった。

クインシィ「捨て駒たる私たちは、おそらく次から次へと戦場に送り込まれるだろう。やっとの思いで生き残った次の日に召集がかかることもあるかもしれない」

クインシィ「熊本の情勢が芳しくないのは見ればわかる。それを防衛せねばならないのだから、それはしょうがないことだ。」

アムロ「だからって……!」

アムロはやり場のない怒りで拳を足に打ちつけた。

クインシィが言ったことは真実だ。彼女に怒りをぶつけるのは筋違いだと思った。

クインシィ「アムロ、私はね。死ぬつもりはないよ。」

アムロ「……」

クインシィ「私には見返せねばならない奴らがいるからな。」

クインシィ「そこで、今回の試験を、訓練として最大限に利用することに決めた」

クインシィ「だがそれには、操縦系の一切を握るお前の協力が不可欠だ。」

クインシィ「協力してくれないか、アムロ」



アムロ(しかし、大した自信だな……)

クインシィは、部隊が実戦配備されてからは、こんな大規模な訓練はもうしないであろうと予測していた。

学徒兵は消耗品だ。数さえ揃えばよく、錬度を上げようなどという配慮は一切されない。

もちろん個々で訓練は行うが、実戦訓練はシミュレータなどとは比べものにならないのは明らかだ。


そして、この試験ならぬ実戦訓練において彼女が試したかったこととは――


一対多の、圧倒的な数的不利な状況における、ミサイルの有用性である。


アムロ「クインシィ!そっちはまだか!」

アムロは背後で電子機器をひっきりなしに操作する相棒に声をかけた。

クインシィ「……いや、まだだ」

アムロ「どうしてだ!もう敵戦力の8割はミサイルの射程圏内のはずだ」

クインシィ「どうせなら、攻撃を受けて錬度が下がった状況で試したい」

平然と言ってのけるクインシィに、アムロは唖然とした。

アムロ「それじゃあ試験が!」

クインシィ「お前の腕なら可能だろう」

クインシィの要求は、試験に落ちない範囲でわざと攻撃を受け、戦車の耐久力を下げろというものである。

まだライセンスも貰っていない者に対する要求か……

アムロは呆れを通り越して諦めた。

セイラ「三番機被弾!各性能ダウンしています。確認なさって!」

アムロ「くうっ……」

被弾はおそらく全て操縦桿を握る自分のせいにされるだろうな、とアムロは思った。

クインシィ「我慢だ、アムロ。今これを経験しておけば、実戦で似たような状況に陥った時に必ず役立つはずだ」

アムロ「クインシィ……」

クインシィ「というわけで、もう2、3発頼む」

アムロ「はぁ……了解」

――

エマ「……あなたたちは何をしていたの」

クインシィ「指示通り、敵を殲滅しただけです。耐久力は合格最低ラインを上回っているはずですが。」

エマ「そんなことを言ってるんじゃないわ!どうして手を抜いたかと聞いているの」

クインシィ「そんなことは」

パンッ

有無を言わせずにエマの張り手が飛んだ。

エマ「あなたもよアムロ」

アムロ「……」

ひときわ大きな音を立ててエマの張り手が炸裂する。

エマ「たとえ戦力差のある相手でも、手抜きで戦うことは慢心を増長させて隙を生むわ。味方の指揮にも影響する。」

エマ「……よく考えてね」

エマ「試験結果は明日発表します。今日はこれで解散よ」

パイロット候補生たちは無言で校舎に向かっていった。

アムロ(……はぁ)

まさか不合格になることはないだろうが、エマ先生を始めとするみなには不信感を与えてしまったかもしれない。

アレンビー「……ねぇ、クインシィ」

クインシィ「なんだ」

アレンビー「あんたがアムロをそそのかしたんでしょ!!」

クインシィ「フッ、何を根拠に」

アレンビー「アムロの動きが普段と違ってるの、見てた人みんなわかったんだから!」

アレンビー「おおかた、またいつもの調子で人の気に障るようなこと言って、アムロの集中を乱したんでしょ!」

クインシィ「それで乱されるような集中なら所詮その程度ということだろう」

アレンビー「減らず口を!!」

アムロ「ア、アレンビー、その辺に……」

アレンビー「なんでこいつを庇うの、アムロ!」

アムロ「いや、本当はね……」

クインシィ「私がアムロの気を乱すようなことは言っていないということだ」

アレンビー「本当なの、アムロ」

アムロ「あ、ああ、本当だ……」

クインシィ「それでも集中を乱したと言うなら、狭いコクピット内で私と密着していたのが原因かな、だとしたら謝るよアムロ」

アレンビーの怒号と、必死に弁明するアムロを背にクインシィは笑いをこらえながら足早に去って行った。

アムロは、コクピット内でのやり取りをアレンビーと刹那に全て話した。

アレンビーは納得いかない様子だったが、この先を見据えての判断だと聞き大きな瞳が揺れた。

アレンビー「そうだよね、私たちこれでパイロットになれるんだって浮かれてたけど……」

これから幻獣と命をかけた戦いが始まるのだ。

自分はクインシィに比べたら認識が甘かったのかもしれない。

アムロ「ああ……僕も彼女には驚かされたよ」

刹那「……もしかしたら、エマ・シーンはそれを見抜いていたかもしれない」

今まで黙っていた刹那の発言に二人は振り向いた。

アレンビー「どうしてそう思ったの?」

刹那「エマ・シーンは感情的だ。特に怒りの感情が顔に出やすい。」

それにはみなが同意した。

刹那「しかし、複座型をモニタリングしていた時はそんな表情は見せていなかった。むしろ見守るような……」

アムロ「あ」

アレンビー「なによアムロ」

アムロ「もしかしたら……今回のこと、クインシィが事前にエマ先生に相談してた、とか」

アレンビー「まさか」

刹那「……ありうるな」

アレンビー「刹那まで……」

アムロ「エマ先生は生徒のことを非常に心配している。態度には出さないが、内心では訓練が足りないまま僕達を戦場へ送り出すことを気に病んでるんじゃないかな」

アレンビー「そ、それなら私たちに話してくれても……」

アムロ「それは無理な相談だろう。……アレンビーはクインシィの発案となると反発するし」

アレンビー「う……」

刹那「曲がりなりにも試験だ……アムロのように突出した技術が無ければそんな真似はできない」

アムロ「数値は練習機に記録される。落ちてしまっては本末転倒だろ?」

アレンビー「納得いかないなー、結局全部クインシィの手の上じゃん!」

刹那「……全て想像でしかないが」

アレンビー「アムロだって殴られ損だよ!」

アムロ「ハハ……」

アムロはひりつく頬をさすりながら、今日の訓練を思い返した。

あの極限の集中の中で、フッと不思議な感覚になる瞬間があったのだ。

妙に頭が冴えて、戦場の全てを見渡しているような……

アレンビー「アムロ?」

アムロ「あ、ああ、なんだい」

刹那「帰るぞ……」

アムロ「ああ、帰ろう」

あの不思議な感覚を一瞬味わえただけでも損じゃなかったな、とアムロはなんとなく思った。


―翌日

直立不動のパイロット候補生たちの前で、お盆を持ったエマ・シーンが口を開いた。

エマ「おめでとう。あなたたち、全員合格よ」

お盆の上には士魂徽章が4つ並んでいた。

言葉には出さないが、一様に嬉しそうな表情を見せる、「元」パイロット候補生たち。

一方でお盆を持つエマと傍らに立つ男性は暗い表情であった。

エマ(ヘンケン先生……私たち、この子たちをあんな救いのない戦場に送り出さないといけないなんて)

ヘンケン(大人の我々は不甲斐ないですなぁ……子供を戦場に送り出し、ただ見ているしかできない)

この世界では、人類はすでに生殖能力を失っており、クローンで子孫を増やすのが通例である。

バイオテクノロジーの発達によって、研究者達は段階的にクローンの「改良」を行ってきた。

ヘンケンやエマらは第四世代と呼ばれ、ほとんどの大人がこれに属する。

第五世代の失敗を経て、アムロ達第六世代は、第四世代よりも頭脳と肉体を大幅に強化されて生まれてきたのである。

人類の主力兵器である人型戦車の急激なGに耐えられるのは肉体を強化された第六世代のみであり、ヘンケンやエマがいくら嘆いたところで、少年兵がかりだされるのはしょうがないことだった。

それでも二人は願わずにいられなかった。
自分たちの教え子が、一人も欠けないままに戦争が集結することを。

新兵の死亡率がどんれほどか知っていても、それを願わずにはいられなかったのである―

アレンビー「やったね、みんな!」

エマの手で士魂徽章をつけてもらった新米パイロット達は、みな頬を紅潮させ喜んでいた。

アムロ「しかも全員が十翼長に昇進か。パイロットってすごいんだな」

十翼長とはこの世界独特の階級で、曹長に当たる立場だ。

アムロ「それには相応の責任が伴う、ってことか……」

アムロは一人離れた席に座るクインシィを眺めていた。

アムロ「で、今日の予定はなんだっけ」

アレンビー「もーアムロ、しっかりしてよー」

刹那「午前中は自主待機。午後からは……」

アレンビー「私たちの乗る機体がついに来るのよ!」

アレンビーは大きな目をキラキラ輝かせて言った。



???「隊長」

???「君か……久しぶりだな」

ナナイ「本日付けで5121小隊に配属されたナナイ・ミゲル百翼長です」

???「変わっていないな……君は」

ナナイ「おやめ下さい。ハンガーの設置許可をいただけますか。」

???「ああ、もちろんだとも。……君の部下は使えるのかね」

ナナイ「ここのヒヨッコパイロットには惜しいくらいの腕の持ち主ばかりですわ」

???「フ……期待しているぞ」

ナナイ「おまかせください。それでは失礼いたします。」

敬礼して司令室を出るナナイ。

5121小隊隊長シャア・アズナブルは、その後ろ姿が遠ざかって行くのをじっと見つめ続けていた―



ナナイ「トレーラーこっちに回して!設置許可は取ってあるから……」

アムロ「なんだなんだ?」

アレンビー「大きなトラックが何台も……」

異様な熱気に包まれる尚敬高校の裏庭に、待機命令もそこそこに新米パイロットの面々は引きつけられていった。

アレンビー「うわぁすごい……ここ昨日までは何もない空き地だったよね!?」

そこには、戦車の格納庫であるハンガーの骨組みが組み上がりつつあった。

アレンビー「いつのまにこんな……」

東方不敗「百翼長!このパーツはここに設置すればいいのだな!」

ナナイ「ええそうです、助かりますわ」

東方不敗「なんのなんの、部隊設営のためにこの老体が役に立つなら安いもの」

ドモン「百翼長どの!この箱はどこに置けばよいのですか!」

ナナイ「それは人口筋肉を冷やしておく冷蔵庫だから、早めに電源につないでおきたいわ。電気系統に強いこの子に聞いて」

東方不敗「ぬう……ドモンよ……」

ドモン「師匠とは言え抜け駆けはゆるしませんよ」

東方不敗「ドモオオォン!!!!」

ドモン「ししょおおおぉぉ!!!!」

ナナイ「いいから、そんな暇があったら体を動かしなさい!」

ドモン「む……」

東方不敗「……承知した」

アムロ「……すごいな」

アレンビー「あの二人がフルスロットルで働いてるなら納得だねー」

アレンビー「よし、私も手伝ってこよう!」

アムロ「あ、アレンビー……」

アレンビーはそう言うとトラックの群へと駆けてゆき、持ち前の人なつっこさで整備士に仕事がないか話しかけているようだ。

刹那は刹那で、いつのまにかコンテナの中の積み荷の整理を手伝っている。

クインシィは……どこにも見当たらない。

アムロ「はあ……とりあえず、僕も仕事を探すかな」

ドン!

よそ見をしていたアムロは、走ってきた少女とぶつかってしまった。

互いに尻餅をつく二人。

アムロ「ご、ごめん。怪我は……」

???「構わないで」

女性はズボンの汚れも気にせずばらまいた工具を片付けだした。

アムロ「……」

何か言っても無駄だと思ったアムロは、黙って工具を拾うのを手伝った。

やがて拾い終えた少女は、立ち上がって足早に去ろうとしたが、途中でアムロに向き直った。

???「あんた、優しいのね」

アムロ「いや、今のは僕の不注意で……」

???「私、パイロットが嫌いなの」

アムロ「え……」

???「大事に大事に整備した私の子に、ひどいことしてくれるんだもの」

アムロは、目の前の整備士少女の、戦車に対する深い愛情を感じた。

アムロ「ぼ……僕は、なるべく壊さないように気をつけるよ」

???「ホント!?」

自分の整備する戦車に彼が乗ると決まったわけでもないのに、少女は満面の笑みを浮かべた。

ソシエ「私、ソシエ・ハイム!こう見えてもナナイ主任の右腕だから、結構優秀なのよ」

アムロ「よろしく、ソシエ」

そうしてソシエと打ち解けたアムロは、ソシエに仕事をもらいながら、新しい仲間達と汗を流した。


――夕方

エマ「アムロ、ここにいたのね。」

アムロ「先生。何か用ですか?」

エマ「あらあら、すっかりほこりまみれになっちゃって……忘れてたかもしれないけど、今日はあなたたちが士魂徽章をいただいた記念すべき日よ」

エマ「そのお祝いに、今日は私とヘンケン先生が、パイロットのみんなにごちそうしようと思ってるの」

アムロ「え……でも……」

アムロは未だに屋根のついていないハンガーをちらりと見上げて躊躇した。

ソシエ「いいのよアムロ、行ってきなさいな」

マーベット「そうそう、もともと私たちだけでやる予定だったんだから、気にしないで」

トレーズ「ああ、その通りだ。女性の誘いを断るなんてエレガントじゃないな」

アムロ「みんな……(エレガント?)」

アムロは整備士達の言葉に甘えて、作業を中断しエマに付いていった。

校門ではすでにヘンケンとアレンビー、そして刹那が彼らを待っていた。

アムロ「先生、クインシィは……」

ヘンケン「それがどこを探しても全く見つからなくてね」

そう言うとヘンケンは大げさに肩をすくめた。



アレンビー「うわー、すっごーい!!!」

目の前には、おいしそうな音を立てて焼かれる薄切りの肉が、鉄板の上をところ狭しと並んでいた。

ヘンケン「すごいだろう!本物の肉だぞ!」

エマ「今日はお祝いなんだから、たくさん食べてね」

一同「いただきます!」

アレンビー「うわーすごくおいしいね!あ、おじさん、タン3人前追加ね!」

刹那「たんぱく質は、身体の成長に不可欠だ……」

アムロ(刹那よく食べるなあ……前も言ってたけど、体が小さいのを気にしているのか?)

しかしアムロは、刹那が自分とそれほど体格が変わらないことを思い出すと、刹那に負けじとものすごい勢いで肉を食べ始めるのだった。


一方その頃、整備員詰め所。

明日から自分の仕事場になるそこに向かっていたティファ・アディールは、そこから発せられる異様な雰囲気を察知した。

どうしようかと立ちすくんでいると、後ろから明るい声で呼びかけられた。

???「おーい、なにやってんの?」

ティファ「あ……」

ティファはとっさに声が出なかった。

人の思いを敏感に感じ取ってしまう性質から、人付き合いが苦手だったのだ。

この隊に配属を希望したのは、こんな自分を理解し、保護してくれた司令に報いるためだった。

ティファ「わ……たし……」

パクパクと口を動かしてみるが、うまく声を出すことができない。

???「なんだお前、しゃべれねーの?」

ティファ「!!」

ティファの心は痛んだ。この人もかつての同級生と同じ理由で私をいじめるのだろうか……

???「風邪か?お前も大変だなー」

デュオ「俺はデュオ・マックスウェル!ここの整備士だ、よろしくな」

ティファ(あ……)

こんな私を気遣ってくれた。

満足にしゃべれない、醜い私を。

ティファ(デュオ、デュオ……)

ティファはデュオがその場から立ち去った後も、心の中で彼の名前を繰り返した。



カタカタカタ……

禍々しいオーラを放ちティファ・アディールを怯えさせていた張本人は、電子妖精を使って情報収集を行っていた。

ハンガー設営にも食事会にも参加をしなかったクインシィ・イッサーその人である。

クインシィ「クソッ、あいつらは何を企んでいる……!」

鬼のような形相でクインシィが睨みつけた先には、とある企業の極秘資料が映し出されていた。

とある財団の関係者との密会および協力提携に関する資料。

クインシィ「あいつらは……己の利益しか見えていないのか」

クインシィは悔しさと情けなさで、爪が食い込み血が出るのも構わずに、震えるほど強く拳を握っていた。



アムロ「クインシィがイサミ・インダストリアル・カンパニーのご令嬢!?」

アレンビー「そうよ、アンタ知らなかったの?この熊本じゃ彼女のことをしらない人はいないわよ」

アレンビー「本土から島流しにあったお姫さま、ってね」

アムロ「……」

アムロは、クインシィが本名で名乗りたがらない理由がわかった気がした。

イサミ社と言えば、カンパニーと名のつくものの、財閥と言っても差し支えないほどの規模を誇る日本有数の大企業。

そもそもの始まりが伊佐未技研という小さな研究所だっただけに、イサミ社は様々な研究に力を入れており、一族からも優秀な研究者を出している。

確か、クインシィ・イッサー―伊佐未依衣子の両親も、高名なバイオテクノロジーの研究者だった。

一時期工学研究の道を夢見たアムロにとって、イサミ社の研究所に入れるということは、何より名誉なことだと思うほどだ。

もしその中で主任研究員にでもなれば、どんな規模の研究ができるのか……アムロは想像しただけで身震いした。

ふと、アムロは自分の思考が脱線していたことに気がついた。

思考を慌てて軌道修正すると、当然の疑問を口にした。

アムロ「どうして、そんなに力のあるご両親が、娘であるクインシィが戦場に行くのを止めないんだろう」

少年兵の動員が法律として施行されても、金持ちや立場のある人間には無意味であることは暗黙の了解であった。

兵器の生産に資金提供をすれば兵役が免除になるので、金持ちはこぞって金を差し出した。

それほどの財力はなくとも、医師に偽の診断書を書かせたり、司令室の配属担当に小金を握らせて後援部隊に配属させるなど、やり方はいくらでもあった。

いわんや日本有数の大企業のご令嬢である。

辞令を握りつぶすことなんて造作もないことは明らかだ。

ヘンケン「アムロ……余計な詮索はするな」

ヘンケン「手段や力はあるのにそれを行使しない。それにどんな意味があるのか想像できなあお前でもあるまい」

ヘンケン「お前の詮索はクインシィを傷つけるかもしれねぇってことだ」

アムロ「……」

確かにそうだ。

それに、仮にクインシィが戦禍を逃れることができても、すぐに他の誰かが動員される。

結局は同じことなのだ。どんなに逃げても、戦争が続く限り、いずれ誰かがやらねばならなくなるのだ。

重苦しい空気を払うように、アレンビーが言った。

アレンビー「大丈夫よ先生、私たちが幻獣をバンバンやっつけて、戦争なんかあっというまに終わらせてやるんだから!ね、アムロ、刹那!」

アムロ「ああ……」

刹那(こく)

三人の目には、なんとしても幻獣を倒し、人類に希望を取り戻そうという決意の炎が灯っていた。


―翌日

アレンビー「うわー、すごいね!」

アレンビーが驚嘆するのも無理はない。
昨日までこの珍妙な制服を着てこのあばら屋で学んでいたのは、パイロット候補生だった自分たちだけだったからだ。

それが、今日。

たった20人足らずとは言え、今までの何倍もの数の生徒が同じ制服で同じ校舎で談笑しているのだ。

アレンビー「なんか、感激……」

正式に部隊が発足するとはこういうことなのだ。

アレンビーは高ぶる気持ちのままに猛ダッシュで校舎はずれを駆け抜け、1組の扉を勢いよく開けて大声で挨拶した。

エマ「おはよう、みんな。」

みんな オハヨウゴザイマース

エマ「さて、我が5121小隊が正式に発足して、今日がその初日ね」

エマ「昨日配属されて初対面の子もたくさんいるでしょうから、今から皆さん自己紹介をしてもらいます!」

東方不敗「普段は授業を免除されているわしらが座らされているのは、そういうことか……」

ドモン「俺はまだギリギリセーフですけど、師匠が生徒側の机に座っている光景は……筆舌尽くしがたいものがありますね」

ドモン「ていうかなんで短い方のズボン履いてきてるんですか」

東方不敗「な!これは、この時期はこちらが正式なものだと司令が」

ドモン(あーあ師匠……司令の口車なんかに乗せられちゃって)

エマ「っとその前に」

エマ「このクラスの学級委員長でもある我らが5121小隊の隊長に挨拶してもらいましょうか!」

静かだった教室がざわめいた。

アレンビー(そういえば今まですっかり忘れてたけど、私たちにも隊長っていたのよね)

アムロ(校舎はずれにある倉庫みたいなところに明かりがついているのは見たことあるが、姿は見たことなかったな……)

刹那(……)

ティファ(……大佐)ポッ

エマ「それでは司令、入ってください」

エマの声に合わせて、1組のドアががらりと開いた。


ドアの向こうに立っていたのは……


不透明なサングラスが印象的な20代の青年であった。

鍛えられた体は指定の制服越しにでもわかるほど盛り上がっていた。

そしてひときわ目を引いたのが、見事な金髪と……同じ色をした豊かなスネ毛であった。

みながその特異な風貌に唖然とする中、エマが退いた教卓に立ってよく通る声で話し始めた。

シャア「はじめて私を目にする者も多いであろう。私がこの5121小隊の隊長を勤めるシャア・アズナブルである」

見た目のインパクトに教室がざわめくのも気に介さず、シャアは続けた。

シャア「この中に、私が姿を見せないことを不審に思った者もいるだろう」

アレンビー(いやむしろ忘れてたし)

シャア「だが私は、パイロット候補生であった君たちが訓練を受け始めた頃から君たちを見守っていたよ」

いきなり話を降られ、アレンビーとアムロは背中がびくんと跳ねた。

刹那はどこ吹く風といった様子だ。

クインシィはいつものようにHRをサボっている。

アムロ(見守られてたのか……)

アレンビー(あのスネ毛に……)

アレンビーの顔が笑いをこらえて真っ赤になった。

シャア「よくあの血のにじむような訓練に耐えたな、パイロットの諸君」

シャア「君たちの努力が結実したおかげで我が5121小隊は正式な部隊として発足できた」

シャア「そして昨日、テクノオフィサーの諸君も配属され、我が隊の全ての役職は満たされた」

シャア「これは始まりなのだ、諸君」

シャア「我々が化物どもに抗う戦いの、これが始まりだ」

教室がシン……と静まり返る。

シャア「私は諸君らの上官だ。」


シャア「死ね、とは言わない」


シャア「死ぬな、とも言えない」


シャア「ただ戦え、としか言えないのだよ。」


シャア「だが我々が戦ったその先に、幻獣でなく人類が残る未来があれば……」


シャア「それは間違いなく我らの勝利である」



シャア「諸君、私と共に戦おう」

シャア「人類が栄光ある未来を掴むその時まで」

シャア「私に力を貸して欲しい」



ガタンッ

アレンビー(アムロ……?)

シャアの演説を聞いたアムロは、無意識のうちに立ち上がっていた。

教室中からの視線を感じながら、背筋を伸ばし―


―まっすぐシャアを見つめて敬礼した。

その姿を見た刹那は静かに立ち上がり、彼もまた目の前の隊長に向かって敬礼した。

その後1組の生徒達は次々に立ち上がり、全員が5121小隊の隊長へと敬礼をおくった。


シャアも彼らに対して敬礼で応えると、向き直ってエマに話しかけた。

シャア「すまないが、人員や物資が急に増えたせいで雑務が山のように残っている。私は隊員達を全員書類を見て把握しているから、申し訳ないが仕事に戻らせてもらえないだろうか」

エマ「え、ええ……もちろんですわ千翼長」

シャア「フッ……ここは学校で、私は学級委員長なのであろう。教室内では階級で呼ぶのはやめにしないか」

エマ「ええ、わかったわ……学級委員長、退室を許可します。」

シャア「すまない」

そう言ってシャアは1組の教室をあとにした。

まるで一迅の風が吹き去って行ったかのように、教室に静寂が訪れた。

エマ「えっ、ええっと……じゃあ他のみんなにも自己紹介してもらうわね」

エマ「初めて来た子にいきなり自己紹介してもらうのもかわいそうだから、このクラスに来たのが早い順にしましょう」

アレンビー、刹那、セイラ、スカウトの2人と自己紹介していき、アムロも簡単な自己紹介を終えた

ファ「ファ・ユイリィ指揮車運転手兼事務官です。みなさんよろしくお願いします」

ムゥ「みんなのお耳の恋人、オペレーターのムゥ・ラ・フラガだ。よろしく、お嬢さんがた」

ティファ(あ……)

最後に残ったのが自分だとわかると、ティファは立ち上がった。

しかし、自分は声が出せそうにない。

声が出せない自分は、一体どうやって自己紹介をすればよいのだろう。

考えれば考えるほど、ティファの思考は暗い闇に埋め尽くされていく。

……と、そこに救いの手が現れた。

セイラ「ティファさん」

ティファ(!?)

ティファは声をかけられたことに面食らったが、セイラに悪意がないことを感じて導かれるまま教卓の前まで歩いて行った。

セイラ「彼女はティファ・アディールさん。我が隊の衛生管よ」

緊張のためだろうか、ティファの顔が少し赤くなっている。

アレンビー「ねー、なんで自分でしゃべんないの?」

アレンビーの無邪気な一言がティファの最も忌み嫌う記憶に触れ、途端にティファの顔が青ざめた。

セイラ「彼女はちょっと事情があって、うまくしゃべれないの。衛生官としての技能は間違いなくあるから大丈夫よ」

アレンビー「あ、そうなんだ……ごめんねティファ」

申し訳なさそうに謝るアレンビー。

ティファはふるふると首を振ることで返事をした。

ティファは、なんにでも素直に接することができるアレンビーをうらやましく思った。



キーンコーンカーンコーン

午前の授業を終え、アムロは固まってしまった両肩を回してほぐした。

チャイムが鳴った途端にざわつく教室に、少人数のクラスの期間が長かったアムロはまだ慣れない。

真っ先に席を立ったアレンビーは、ティファを昼食に誘っているようだ。

(律儀だな、アレンビーも……)

どうやら自己紹介の時にきちんと謝れなかったことを気にしているようだ。

遠慮する様子のティファを半ば無理やり教室から連れ出していた。


アムロ(さて、俺は……どうするかな)

安価>>245

1、刹那を誘って味のれんへ

2、購買にパンと牛乳を買いに行く

3、屋上で昼寝


245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 20:51:44.52 ID:uLUnp67Ui
1



247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 20:59:12.45 ID:h8r+ZU07O

アムロ「アップルパイと水、お願いします」

刹那「俺もアップルパイをもらう……」

おやじ「はい、毎度ありがとね」

アムロは刹那を誘って味のれんへやってきた。

いつものあんパン+牛乳の昼食よりほんの少しだけ贅沢な気分だ。

アムロ「うまいな……」

刹那「ああ……」

しばらく黙ってアップルパイを食べた後、アムロは照れくさそうに口を開いた。

アムロ「今朝は、ありがとな」

刹那「……なんの話だ」

アムロ「アズナブル司令の演説の後、刹那、僕に合わせて一緒に敬礼してくれただろ」

刹那「問題ない。それに、俺がやらなくてもアレンビー・ビアズリーがしていただろう」

アムロ「でも……」

刹那「問題ないと言っている。それに俺自身、司令の言葉に思うところがあったのは事実だ。」

アムロ「刹那……」

刹那「それにあの時、初対面の者も多くいた1組が、ひとつにまとまった。そのきっかけを作ったのはお前だ。アムロ・レイ」

アムロ「ありがとう、刹那……」

珍しく饒舌な刹那に、アムロはここ何日もまともに刹那と話していなかったことに気づいた。

自分を気遣ってくれる優しい親友のことを、もっと大切にしなければならないな、とアムロは思った。

アムロと刹那がそんなことを話していると、店の奥からけたたましい破壊音が聞こえてきた。

アムロ「なんだ!?」

刹那「幻獣か!?」

おやじ「いやーご心配には及びませんよお客さん、最近バイトで入った子なんですがね、それがもうよく物を壊しまして。バイト代より被害額の方が多いことも日常茶飯事……」

すると奥から、音の元凶と思われる女性が姿を表した。

???「すみませんすみません、お皿をこんなにしてしまって……」

その顔を見た刹那の表情が珍しく驚いていた。

アムロ「どうした、刹那」

刹那「マリナ・イスマイール……」

アムロ「知っているのか?」

刹那「ああ、ハンガー設営の際に少しだけ一緒に作業をした。彼女はうちの整備士だ。」

アムロ「そうなのか!?」

確か、先日のハンガー設営はほぼ滞りなく進んだが、一回だけあわや大惨事という事故があった。

かなりの怪我を負った刹那が気になって周りを見ていなかったが、今考えてみると目の前の彼女も渦中にいた気がする。

マリナはいつものように店主に謝っていたが、自分の雇い主の肩越しに見知った顔を見つけた。

マリナ「刹那!……とあなたはどなたでしょう」

アムロ「刹那の友人のアムロ・レイです。マリナ・イスマイールさん」

マリナ「あら、私のことは刹那に聞いたのかしら」

マリナは刹那の袖から覗く白い包帯を見て、表情を曇らせた。

マリナ「刹那、ごめんなさいね、私……」

刹那「気にすることはない、お前たち技術者を守るのはパイロットの務めだ」

表情を変えずに答える刹那を、アムロは友人として誇らしく思った。

アムロ「でも驚いたな、僕たちと同じ学徒兵なら少ないながらも給料は出るのにアルバイトだなんて」

刹那「アムロ、それは……」

マリナ「いいのよ、刹那。私ね、幻獣に親を殺された子供を引き取って育ててるの」

アムロ「そうなのか!?」

マリナ「ええ、だからお金はいくらあっても足りないくらい。こんなうっかりもしょっちゅうだから、アルバイトしてもなかなかお金がたまらないし……」

アムロ「マリナさん、僕、何も知らないで……すみません」

マリナ「いいのよ、気にしないで。刹那のお友達なら私のお友達でもあるもの」

マリナは日頃の疲れを感じさせない花ねような笑みを見せた。

マリナ「そろそろ仕事に戻らなくちゃ。またね、刹那、アムロさん」



アムロ「……マリナさんに悪いこと言っちゃったかな」

刹那「問題ない、彼女はそんなことを気にする性格ではない」

アムロ「だといいけど」

昼休みが終わりに近づき、アムロと刹那はバイトが終わるマリナと共にプレハブ校舎へ戻っていった。

アムロ「……しかし、あんなに短い道のりでよくもまああれだけの危険に遭遇するものだな」

刹那「ドブにはまること2回、ブレーキの壊れた自転車にひかれかけること2回、猛犬に追いかけられること3回……」

アムロ「刹那は付き合い短いわりに、よく対処法に気づいたな」

刹那「簡単なことだ、マリナはあれだけの大惨事に常日頃遭遇しているにも関わらず、体には傷ひとつない」

アムロ「逆に手を出した方が大惨事になる……とわかっていても、あんなきれいな人が大変な目にあったら反射的に手が出そうになるな」

刹那「ああ……ある意味幻獣より恐ろしいかもしれんな」

二人は顔を見合わせてため息をついた。

誰よりも優しく慈愛に満ちた彼女をこんな特殊な体質にした神様は、きっと大変なひねくれ者に違いない。

午後の授業を終えたアムロたち新米パイロットは、できたてほやほやのハンガーで仕事の説明を受けるために、整備主任のナナイ・ミゲルに呼び出されていた。

クインシィはいつものごとく、授業が終わると同時に教室を去っていた。

アレンビー「ホント、ヤな感じ!極楽トンボ章でももらっちゃえばいいのに」

アムロ「まあ彼女は極楽トンボの条件を満たさないように絶妙に立ち回ってるからな……」

アレンビー「だから余計ムカつくのよ!」

ナナイ「みんな来たわね。……あら、一人足りないようだけど」

みなの顔を一通り眺めたナナイは納得したように言った。

ナナイ「いないのは伊佐未のお嬢さん、か……」

彼女のことは、できる限り寛大に見てあげてくれないか……
かつての恋人だった男の言葉に、ナナイは嫉妬の炎が燃え上がるような思いがした。

しかしもちろん表面では冷静を装う。

ナナイ「いないものはしょうがないわね。アムロ君」

アムロ「は、はい!」

ナナイ「何に怯えてるのかしら……あなた、複座のパートナーなんでしょ、あとで彼女にも説明してあげてね。」

アムロ「了解であります」

ナナイ「よろしい。さあ、着いてきなさい」

アムロたちパイロット3人組は、ナナイの態度に無意識のうちに背筋を寒くさせながら、そのあとに着いて行った。

アレンビー「すごい……完成してる」

裏庭に行くと、戦車の格納庫たるハンガーが悠然とその姿を現した。

傍らにはぶっ続けで作業に当たった男性整備士たちとスカウトの2人が真っ白く燃え尽きて転がっていたが、ナナイは意に介さずにパイロットたちを彼女の城へ招き入れた。

アレンビー「すっ……ごおぉい!!!」

中に入ってみると、直立した状態で格納されている戦車の迫力に圧倒される。

アレンビー「百翼長、あたしの士魂号はどれですか!?」

ナナイ「アレンビーさんは二号機だから、手間から2番目ね」

アレンビー「うわぁ~、初の対面だよ、なんか感激」

アレンビーはこれから自分と運命を共にする機体に親近感を抱いていた。

アムロは、我先にと自分の機体に駆け寄る友人たちを横目に見ながら、ゆったりとした足取りで自分の機体となる三号機の前に立った。

アムロは、ナナイがアレンビーに機体の説明をしなくてもどれが自分の機体かすぐにわかった。

唯一の複座型で他の機体と形が違うから、というわけではない。

アムロはハンガーに足を踏み入れたその瞬間から、説明のできないなにかによって胸が激しくざわめいていた。

アムロ(これは……なんだ……)

アムロは直感的に声だと思った。

もちろん耳に聞こえたわけではない。

自分の頭に、何かが直接呼びかけている……そんな錯覚である

アムロ(いや……これは……錯覚なのか?)

それにしては妙にはっきりしている。

これほど頭が澄み切ったのは、パイロット試験の時以来だ。

アムロ(君は……誰だ)

アムロは声の主を探ろうとして、無意識に三号機の脚部に触れていた。

そんなアムロの様子を、ナナイは遠くからじっと見つめていた。

ナナイ「さあ、あなたたちの仕事の説明をするわよ!」

ナナイの大きな声に、アムロの集中は途切れ、現実の世界に引き戻されることになった。

アムロ(集中……?僕は集中してたのか……)

それにしても何に集中していたというのだ?

先程の澄み切った頭の感覚に反して、今は全てにモヤがかかったかのようにはっきりしない。

アムロ(僕は……一体何を感じて……)

結局、アムロはその後のナナイの説明は全て上の空だった。

ブチ切れたナナイから科せられた膨大な仕事ノルマに付き合ってくれる親友の存在に、今夜は一際感謝することになった。



―時は少しだけ戻って

士魂号に触れ、ただそれにじっと身を寄せるアムロを見つめる人物は。

ナナイ以外にもう一人いた。

クインシィ・イッサーその人である。

クインシィはアムロがハンガーに足を踏み入れた瞬間から、彼を観察していた。
アムロの視線は夢うつつのようにさまよいながらも、そこからは死角になっているはずの士魂号三号機複座型を捉えていた。

クインシィ(馬鹿なっ……!)

クインシィはさらに注意深く彼を観察したが、それは彼女に芽生えた考えを裏付けるに過ぎなかった。

クインシィ(馬鹿な馬鹿な馬鹿な……あのアムロが本当に人類の革新だというの!?)

混乱した頭を壁にあずけ、依衣子は誰ともなくつぶやいた。

依衣子「パパ、ママ、勇……私……私は……」



アムロは、孤立を保つパートナーに不安を抱いていた。

いや、保つどころではない。

自分から壁を作り、必要以上に尊大な態度をとり、自分に関わろうとする全てを拒絶しているように思えた。

アムロ(だからって……!)

元来アムロは、あまり他人と関わりたがらない事なかれ主義である。

しかし、刹那やアレンビーを始めとする5121小隊の面々とは、個人的にも進行を深め、今では大切な友人たちである。

最初の方こそ、生き残るために支援や連携を取りやすくするためという打算もあったが今は違う。

アムロ(そりゃ、みんなと打ち解けようったって無理があるかもしれないけど)

普段のコミュニケーションは、有事の際にこそ生きてくる。

無線の向こうの戦友の励ましで奮い立ち、絶望的な戦況から生還した例は少なくないのだ。

しかし、クインシィのそれはそのようなレベルではない。

一蓮托生、互いのコンビネーションが文字通り命綱である複座型のパートナーが、訓練はおろかしばらく言葉も交わしていない状況は異常といえた。

言葉のいらない関係はともかく、コンビを組んでまだ日が浅い自分たちにとっては致命傷ともなりうる。

アムロ(まさか、クインシィの奴……)

死に急いでいるのか……?

今は遠い昔のことのように思えるパイロット試験の時、クインシィはアムロに死にたくないと言った。

アムロはその言葉を信じたかった。

その時は確かに二人の間に信頼関係があって、同じ目標に向かう一体感があったからだ。

しかし、人の考えは変わりやすいもの。

たとえ当時は心の底からそう考えていたとしても、ささいなきっかけでそれが覆えるなんてことはいくらでもある。

それに、仮にクインシィが死にたがっているとしたら、もう一つの残酷な真実が待っているのだ。

アムロ(クインシィは……僕に死んで欲しいと思っているのか?)

アムロ(本当に殺したいのは、自分なのか僕なのか、どっちなんだ……?)

そこまで考えたところで、自分の思考がかなり極端な方向へ走っていることに気づいたアムロは、その考えを振り払うように激しく頭を振った。

5121小隊が発足して数日、召集がかかることはなく、隊員は少しでも錬度を上げようとそれぞれが訓練や仕事に励んでいた。

しかし、実践配備されている以上はいつ召集がかかってもおかしくない状況なのである。

現在の状況は、軍の有力者に独自のパイプを持つアズナブル司令が、隊の錬度を少しでも上げるために上層部に時間をくれるよう掛け合った結果であるとまことしやかな噂が流れている。

そう考えると、時間的な余裕は全く無かった。

アムロ(クインシィと話さなくちゃ……!)

必死の形相でクインシィを探し回るアムロ。

しかしいつものようにクインシィはどこにも見つからない。

アムロ(もしかしたらここに……)

アムロはすがる思いで整備員詰め所を覗いた。

ここにはネットワークにつながった端末がある。
情報処理が得意なクインシィがいるいるかもしれないと一縷の望みをかけたのだ……

しかし……

アムロ「やっぱりいない……」

アムロはがくりと肩を落とした。

そのアムロに、小さな影が近づいてきた。

アムロ「ティファ」

ティファは、この整備員詰め所を仕事場としていた。

初陣に向けできることをしたいという思いはみなと一緒なのだろう。荒れた細い指先が痛々しい。

アムロ「どうした?」

ティファは、5121小隊に来た当初こそは、それこそ猫にも怯える始末だったが、アレンビーやセイラといった面々に優しく接してもらえたことがきっかけで、少しずつ自分から他者とのコミュニケーションを取ろうとしていた。

アムロは、ティファが自分に何かを伝えたいのだと思い、注意深く彼女の口元を観察した。

ティファ(ぱくぱく……)

アムロ「ク・イ・ン・シ・ィ?ティファ、知っているのか!?」

アムロはティファの肩を掴むと待ちきれないといったふうに強く揺らした。

ティファ「……っ!」

アムロ「ご、ごめんティファ!」

アムロは一瞬焦ったがティファに怯えた様子がないのでホッとした。

アムロ「で、ティファ……」


アムロ「……!」

ティファ「……ぁ…!」


それは一瞬の出来事だった。

互いの考えが頭に入り込んできて、言葉にしなくても……むしろ言葉にするよりもずっと正確に、互いの意志疎通ができたのである。

アムロの頭にはクインシィの居場所が地図より正確に。

ティファの頭の中には、みなの生活環境を支えてくれるティファへのアムロの感謝の気持ちが。

二人は何がおきたのかわからないといった様子で見つめあったが、すぐにそれは終わった。

どれほど切羽詰まった気持ちでクインシィを探していたのか理解したティファがアムロを促したのだ。

アムロ「あ、ありがとう、ティファ……」

アムロは何が何やら理解できないまま、しかし最優先事項のために頭を切り替えて目的地へと急いだ。




204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 18:33:15.13 ID:Z0tCUwKJ0
アムロ=あっちゃん
クインシィ()=舞
アレンビー=壬生屋
刹那=滝川

シャア=善行
東方不敗+ドモン=若宮・来須?
ティファ=萌

ナナイ=原
ソシエ=森
デュオ=中村?
トレーズ=遠坂?
マーベット=田辺か田代?

ヘンケン=坂上
エマ=本田
セイラ=芳野

差し替えてるとしたらこんな感じかね


206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 18:42:49.68 ID:fQYX/ivGO
支援


>>204
刹那=壬生屋、東方不敗=坂上と見た
シャアが茨木童子とか予想すっとワクテカが止まんねぇぜwww


210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/28(月) 18:49:11.33 ID:h8r+ZU07O
>>204
>>206

大体正しいです。
でも、それぞれのキャラの役割を原作とは立場の違うキャラにも分散させようと考えているので、完全に当てはめるのは難しいです。

ちなみにセイラさんはみんなのお耳の恋人なので芳野先生ポジションではないです。

ちなみにこれから未登場の5121キャラの配役は大半が決まってません

いっそ中の人つながりで適当に決めようかと思ったのですが、やめてよねなラスボスがはまりすぎフイタのでやっぱりやめました


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