マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」 その20

2011年04月18日 09:26

マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」

867 :>>1 ◆/yjHQy.odQ [saga]:2011/04/15(金) 00:23:12.04 ID:2aD4coTAO

ーラグランジュ1ー

後退するトレミー、追うバージニア艦
資源衛星群の中で二つの勢力は対峙した
横から衛星の隙間を縫うように飛び出し現れたのは、武力介入を行い、今帰還したばかりの強襲用コンテナとガンダムエクシアだった

ギュンッ

刹那「エクシア、トレミーに合流、引き続き作戦行動に入る」

ラッセ『間に合ったな! 初速が出るとやっぱり違うぜ』

スメラギ「良かった……二人とも」

モニターに映し出された二機の映像に、スメラギは安堵した
敵は26機の疑似太陽炉搭載型MS、そして国連軍の手に堕ちたガンダム
少しでも味方の数が欲しいと思うのは当然のことだった

スメラギ「ヴァーチェ、キュリオスは発進、エクシアはそのままGNアームズと連携して作戦を続行」

スメラギ「三方向での同時防衛戦展開、デュナメスは待機」

ラッセ『了解だ』

刹那『了解』

二機は少し距離を置きながらも、送られてきたデータの通りに移動を開始する
行き過ぎれば敵の集中放火を受ける。単独行動が目立っていた刹那も、慣れたようにエクシアを動かしていった

ラッセ『しかし壮観だな……ガンダムと同じ性能のMSが27機か』

ラッセ『……』

刹那「ラッセ、気負うなよ」

ラッセ『!』

刹那「あんたは強い。落ち着いてやれば死にはしない」

ラッセ『……』

ラッセ『悪いな刹那、気を遣わせちまって』

刹那「問題はない」

後方からヴァーチェとキュリオスが出撃。ミッションプランに従い展開を始める
27対4、絶望的な戦いが始まろうとしていた


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ー軌道エレベーターー

宇宙で死闘が始まろうとしていた頃……
煙を上げ、今にも爆発しそうなリニアを見下ろす、疑似太陽炉搭載型の黒いMS
モニターに映るその頭部こそ違うものの、ビリー・カタギリの眼はその程度のカモフラージュではごまかせなかった

ビリー「ガンダム……!」

武装、胸部などのシルエット、間接部の類似点
それは、アザディスタンでラフマディ師を救ったあのガンダムに当てはまるものであった

リボンズ「複製機、それも疑似太陽炉搭載型に変更した割には悪くない動きだ」

周囲の空気などどこ吹く風か、コクピットのリボンズは満足そうに操作レバーを引き、機体の具合を確かめる
リボンズ自身、本当は別の機体を動かすつもりだった
しかしエクシアに類似したこのブラックアストレアの方が、情報操作をするにも後々都合がいい
そうプルツーに押し付けられ、ついつい乗ってきてしまった経緯があった

リボンズ「雛型のデータをくれたのはフェレシュテといったかな、感謝を言うべきだろう。第三世代機の技術による第二世代機の強化……」

リボンズ「……十分だ」

機体の動作を確認し終えたのか、再びGNランチャーをリニアに向けるアストレア
上位種たるこの僕が戦闘を楽しむなんて……そんなささやかな後悔も、高揚の前にすぐに消え去った

リボンズ「彼を葬るには十分な性能だ」

レールが破壊され、身動き取れないリニアの辿る運命は、誰の目にも明らかであった

リボンズ「さようならライセンサー、プルツーから伝言だ」

リボンズ「今まで妹が世話になった、ありがとう……とね」

通信の繋がらない相手に、嘲るように言葉を投げかける
リボンズの微笑と共にブラックアストレアが引き金を引く。GNランチャーから放たれた粒子ビームは、一直線にリニアを穿つ

ビリー『グラハァァァム!!』

迸る閃光、吹き出す爆炎。破片は辺りの建造物を抉り、甚大な被害をもたらしていく
その様子を、リボンズは変わらぬ表情で見下して……

『ご挨拶だな……ならばその流儀に従おう』

リボンズ「……何!?」

その時だった
リニアのあった位置から疾る、巨大な真紅の刃
それは爆風を計算し離れていたブラックアストレアにまで届く、あまりにも長大な一撃

リボンズ「ッ……!」

辛うじて機体をそらし、下がることで回避するリボンズ
しかしGNランチャーは逃れきれず、寸断され爆散。衝撃にリボンズの眉が歪んだ

『成る程、バイオセンサーとやらの性能、予想以上のものだと言わせて貰おう』

何が起きた、リボンズが情報を整理する間もなく、傍受した通信がコクピットに響く

『カタギリ、君を友に持てたこと……自らが乙女座であったことをこれほど嬉しく思ったことはない』

それは戦いの最中にも関わらず歓喜を露わにする、阿修羅の声であった

リボンズ「グラハム……エーカー!」

グラハム「敢えて名乗る必要は無いらしい……だがこれだけは言わせて貰おう」

グラハム「初めましてだなぁ、ガンダム!」

残骸の中から現れた、漆黒のフラッグ。
パーツの形状、見慣れぬサイドバインダー、二眼式に変わった頭部のカメラアイ、どれもリボンズの想定していた攻撃目標の形とはかけ離れたものだった
何より右手に装備された籠手に近い形状のシールド、左手に握る実体剣の堂々さたるや、ランチャーを潰された怒りを忘れ魅入ってしまうほどであった

リボンズ「何だこのMSは……フラッグではないのか?」

グラハム「否、これぞフラッグ!」

リボンズ「!」

リボンズ(僕の心を感じ取ったのか……!)

グラハム「これぞ疑似太陽炉搭載型にリファインしたフラッグ、GNフラッグだ!」

グラハムからすれば、やはり「相手がそう言った気がした独り言」に過ぎないのだが、リボンズからすればこの上なく不愉快なことで
古来の武士が名乗りを上げるように、GNロングソードを突きつけるフラッグ
先程の一撃はこの実体剣にサイコミュを干渉させたのか?
疑念は尽きない

リボンズ「……」

GNソードを展開し、ゆっくりと構えるアストレア
その気配を感じたのか、フラッグもまたロングソードを構える
リボンズの心から動の感情は消え、代わりに機械的な感覚のみが満ちていく
彼が何者で、あの機体が何なのかは分からない
そうだ……殺してからゆっくりと考えよう、ゆっくりとね



ビリー「グラハム……!」

目の前で繰り広げられる近接戦闘、火花を散らし刃を交える二機のMS
互いに一歩も譲らず切り結ぶ様は、まさに圧巻の一言
ビリー・カタギリの肥えた目にも、その一戦は過去類を見ないレベルの戦いであった

タケイ「なんてレベルの戦いだ……」

隣でタケイ准尉が呟くように漏らす
だがしかし、ビリーにはそれを差し置いてもやはりグラハムの異様さが目についた

ビリー「GNフラッグのバイオセンサーは元々、粒子制御を必要としないGNフラッグの武装に合わせ姿勢制御の目的にのみ接続していたんだ……」

ビリー「あんな、ロングソードに粒子を纏わせ肥大化するような使い方は最初から想定していないし出来やしない」

タケイ「え……?」

ビリー「ハイパーGNビームサーベルとでも言うのかな……君は、本当に予測出来ない人だよグラハム」

師・エイフマンが遺し、自分達が威信を掛けて作り上げたGNフラッグ。
それを彼は想定されない能力まで生み出し使いこなしている。
かつて彼が初めてフラッグに乗った時、想定されない空中変形をあっさりこなしていたのが、自然と脳裏に思い出された
懐かしさ故か、ビリー・カタギリは笑みを零していた



既に三十数合、ガンダムと刃を交えている
一気呵成に攻撃を繰り返した為か、双方息を整えるように睨み合っている
高みの力を手にした愛機フラッグでさえ、このガンダムを圧倒しきれてはいない。グラハムの額に汗が滲む

「私を愚弄するか……ガンダム!」

グラハムは刃を交えれば敵の力量を推し量れる、故にその推量と結果の不一致に苛立ちさえ感じた
敵は本気で戦ってはいない。感覚的なものだが、こちらの力を推し量っているようにさえ感じる
舐められたものだ……心の中で舌打ちをした

グラハム「はぁぁぁッ!」

リボンズ「小癪なッ!」

アストレアのソードと、フラッグのロングソードが交差しGN粒子と火花を発する
相手は攻め倦ねている、グラハムは操縦桿を握りながら手応えを感じていた

グラハム「左利き相手はやりにくかろう、ガンダム!」

リボンズ「僕がそんな下らない差異に!」

グラハム「僅かな差が戦場では命取りとなる!」

リボンズ「ならば君と僕の差は絶望的、君に未来は無いよ!」

グラハム「その差、私の覇気で埋め尽くすッ!」

リボンズ「気に入らないね、その物言いッ!」

四合刃を交える、押し切られそうになるのを必死で堪えペダルを踏み込む
じれたアストレアが、力任せに押してフラッグを退けようとする。
フラッグは力に逆らうことなく弾かれると、相手の腕が伸びきったタイミングで一気に前に出ようと構えた

リボンズ「甘い!」

グラハム「ッ!」

しかしアストレアは即座に左手にビームライフルを構え、迎撃に移る
フラッグは右手のシールドにフィールドを発生させ、粒子ビームを受けながら距離を取る
再び睨み合いと相成った両者、しかし流れは段々とリボンズの方に傾き始めていた

グラハム(強いな……射撃は正確無比、近接戦闘も私に引けを取らん。おまけにどうやらニュータイプとしての能力もあるらしい)

リボンズ(いやしい人間風情が僕に張り合うなどと……)

グラハム(だがマリーダが宇宙で待っている……!)

リボンズ(でもね、プルツーにあれだけ押し通した手前……)

グラハム「私は……負けられないのだッ!」

リボンズ「……負けてなどいられない!」

グラハムは手に汗をかいていた
目の前の敵、黒いガンダムのパイロットは明らかにエースとしての技量、気迫を備えている
否、恐らく今まで戦ってきた中で最強……一歩間違えれば死、そんな気配が背後から忍び寄ってくるようだ

グラハム「……だからどうした」

グラハム「私は君を倒す、このフラッグで、ハワード・メイスンの誓いの下に!」

だからと言って退くわけには行かない。フラッグの上体が僅かに前に傾く、アストレアもまたGNソードをゆっくりを上げる
そうだ、私は負けるわけには行かない。自分の為、世界の為……

グラハム「そして他でもない、彼女の為に!」

リボンズ「人間同士の馴れ合いに僕を巻き込むなッ!」

グラハム「そうだ、この感情ッ……」

リボンズ「……?」

グラハム「まさしく愛だッッッ!!!」

リボンズ「愛ぃ!?」



しまった、素っ頓狂な声を上げながらリボンズは心の中で舌打ちする
アストレアの加速力ならフラッグより速く出ることが可能だった、しかし結果としてタイミングを半歩逃し、同じタイミングで出てしまった
二機のMSは同時に前進、同時に刃を、もう片方の機体の刃に叩きつける
重さ故に、機体性能故に、GNフラッグのロングソードはアストレアのGNソードに切り上げられ、宙を舞った

リボンズ「ぐぅっ!?」

しかし直後、アストレアの機体は大きく揺さぶられる

グラハム「おおぉぉぉぉぉ!!」

フラッグの右手、シールドがそのままの勢いで突き出され、アストレアの頭部を強かに殴りつける
前進を止めず、三度続く殴打。アストレアの左のカメラアイが砕けて割れた

リボンズ「よくもこの僕を殴ったね……!」

怒りを露わにするリボンズ、体勢を立て直し反撃を試みる
しかし目の前にフラッグはいない

リボンズ「!」

フラッグは一気にスラスターの出力を上げ上昇、弾かれ飛んだGNロングソードの柄を掴む
フラッグのGNロングソードが、また最初のような赤い光を生み出していく
鋭い殺意が心臓を突き刺す感触、リボンズは僅かにたじろぐ

リボンズ「僕が出し抜かれた……!?」

ライフルを抜いても恐らく間に合わない。居合いにも似たあの豪快な一撃を受ければ、GNソードやビームサーベルでも耐えられるかどうか……
リボンズの脳裏にもまた、死のイメージがよぎる
だが打つのかそれを、賭になるそれを、打つ覚悟が君にあるのか

リボンズ「……良いだろう、分かっていないならば打つがいいさ」

グラハム「今再び凌駕させてもらおう……阿修羅よッ!」

リボンズ「勝つのはこの僕、リボンズ・アルマークだッ!!」

グラハム「切り捨てッ!御免ッ!」

決着の為、再び発せられる強力なハイパーGNビームサーベル
だが

グラハム「ッ!?」

リボンズ「くっ!」

突然、その二人の間を巨大な粒子ビームが貫いていく
とっさの一撃にグラハムは身を退き、ロングソードの粒子は霧散してしまう

リボンズ「プルツー……!」

フラッグもアストレアも無傷、元々当てるつもりのない一撃だったのだろう
唯一、その一撃の主を判別出来たのはリボンズだけであった

リボンズ「退くしかないか……屈辱だよ、これは」

リボンズ「だが、分の悪い賭けは程ほどにするんだねライセンサー……イレギュラーなんだよ、君は」

プルツーのヴァラヌスは、形式上国連軍に位置する機体だ。アストレアの援護は勿論、通信さえもままならない
アストレアはそのまま身を翻し、大空の向こうへと全速力で退いていった



グラハム「……」

ピピッ

プルツー『悪いね、ガンダムを狙ったんだけど結果的に邪魔しちゃったみたいだ』

グラハム「!?」

グラハム(少女……ピーリス少尉よりさらに若いではないか)

グラハム「君は、一体……?」

プルツー『プルツー……といえば分かるかい』

グラハム「!」

プルツー『あんたはそのまま宇宙に上がる準備でもしていなよ、あのガンダムはあたしが追跡する』

プルツー『さっきの技、粒子を恐ろしく食う筈だよ。乱用は避けた方が良いね』

グラハム「む……」

グラハム(確かに、二発分でもう七割近い消費量か。とっさに繰り出したのはいいが、まさに諸刃の刃と言うわけだな)

グラハム「お心遣い傷み入る、そちらは任せた」シュゥゥゥン

プルツー『……ふん』

ギュォッ

グラハム「あの気配、マリーダにそっくりだった」

グラハム「おまけにプルツー……二番目ということか」

グラハム(記録上最高傑作と呼ばれた存在……彼女がそうなのか?)

ビリー『グラハム!』

グラハム「カタギリ、無事か」

グラハム「ぬっ!?」ガクンッ

グラハム「機体バランスが……まさかバイオセンサーに異常が発生したというのか?」

ビリー『君が違う使い方をしたからね、内部で何らかの異常を示していてもおかしくはないよ』

グラハム「違う使い方? 何の話だカタギリ」

ビリー『……いや、いいよ』

ビリー『とにかく直ぐにMSドッグにGNフラッグを! 出発までに整備する!』

グラハム「あぁ、任せたぞカタギリ」

グラハム「結果として足止めを喰らってしまったか……ガンダム」ギリッ

グラハム「……間に合うか……!?」


ー海上ー

リボンズ「……」

(危なかったじゃないか、お前ほどの奴が珍しい)

リボンズ(初めて彼という人間に接した故の戸惑いが、ガンダムの操縦を鈍らせたのかもしれないね)

リボンズ(あんな変わった人間は初めてだ。矛盾している)

(だろうね。本人が居ないのにいきなり告白する奴はそうざらにいないだろうさ)クスクス

リボンズ(だが二度目はもう無い。あの機体も彼も、限界ギリギリだったろう)

リボンズ(追従性に関してはやはりガンダムに勝る機体は無い、再認識出来たよ)

(なら良いさ、頼むから馬鹿なヘマして死なないでくれよ、マスター?)

リボンズ(マスターね……悪い冗談だ……)

リボンズ(……僕は少し傲慢が過ぎていたようだ。今日の一件で学んだような気がするよ)

(お前からそんな言葉が聞けるなんて……明日は金属生命体でも降ってくるかもね)

リボンズ(茶化すな)

リボンズ「認めようライセンサー、君は強い。だが僕も計画の為、退くわけには行かないんだよ」


ー軌道エレベーター・MS搬入ドッグー

ビリー「……」

ビリー「やはり左腕の回路が焼き切れる寸前にまで損耗している……機体に負荷がかかりすぎたんだ」

ビリー「あの時、ハイパーGNビームサーベルを放っていたら……行き場を失った粒子が膨れ上がり、GNフラッグが爆散していたかもしれない」

ビリー「二発目は賭けになる……ハイパービームサーベル、安全に放てるのは一発が限度ということか……」

ビリー「キッド、粒子供給用のエネルギーケーブルを出しておいてくれ。GNロングソードと接続する」

キッド「あいよっ」

ビリー「……これで代用すれば、とりあえず戦闘には支障はない」

ビリー「間接部の負担は思ったよりは少ないし、グラハムにも十分追随出来ているようだ。ガンダムにも引けを取らない力が有るのは、今の戦闘でしっかり証明してみせた」

ビリー「万全な状態で宇宙に上げてみせるさ……!」


ートイレー

グラハム「ゲホッ……ゲホッ」ゴボッ

グラハム「はぁ……はぁ……ケホッ」

グラハム「性能の代償は大きいな……戦闘能力でガンダムに並んだとはいえ、安全性、運用性、色々なものを置いてきてしまった」

ボタボタッ

グラハム「鼻血は初めてだな……どれだけの負担が身体にかかっているやら」ゴシゴシ

グラハム「だが保たせてみせるさ、この位どうという事はない」

グラハム「私のプリマドンナが宇宙で待っているのだ、男として、レディを待たせるなど出来はしない」グイッ

ピピッ

『グラハム大尉、アキラ・タケイ准尉であります。MS搬入の準備が整いました』

グラハム「了解した」

グラハム「リニアの復興は?」

『別の路線を緊急で貸し切りました、直ぐにでも!』

グラハム「素晴らしい判断だ、助かる」

『それと、カタギリ顧問も同行するとのことです』

グラハム「了解だ、直ぐに準備する」

グラハム「……」

グラハム「間に合えばいいがな……胸騒ぎが収まらん」

グラハム「ロックオン、私が行くまで死ぬなよ。君との決着は、私が着ける」

ザッ

ジワッ

グラハム「ッ……?」

グラハム(視界が……ぼやける)グシグシ

グラハム(……)

グラハム「問題は、無い!」ザッ


ーラグランジュ1ー

クリス「スメラギさん、予定通り三方向での防衛戦展開完了しました!」

フェルト「エクシア、敵MSを一機撃墜。ヴァーチェ、二機撃墜。キュリオス一機撃墜」

スメラギ「残り22機にスローネ一機……」

スメラギ「予想以上に善戦はしてるけど、間もなく全機が劣勢に陥るわ」

リヒティ「マジっすか……!?」

スメラギ「相手のエースは甘くないってことよ……」

スメラギ「直ぐにでも撤退命令が下せるように準備しておいて」

クリス「了解です!」

ピピッ

イアン『ブリッジ、聞こえるか! 大変だ!』

スメラギ「え……?」


ーラグランジュ1・刹那ー

サーシェス「はっはぁ! 行けよファング!!」

刹那「ちぃっ!」

スローネツヴァイから放たれた砲塔端末機、ファングがエクシアを包み込むように追いすがる
エクシアの隣には、スラスターや武装を傷つけられた強襲用コンテナ
最高速を出すことも出来ず、危機的な状況に陥りつつあった

サーシェス「てめぇ独りで守れるか、やってみろよクルジスのガキィ!」

サーシェスの甲高い笑い声がエクシアのコクピットに割れんばかりに響き渡る
強襲用コンテナの損傷は、先刻ラッセがGNアーマーを分離し、ドッキングしようとした瞬間のスローネツヴァイの奇襲によるものだった
サーシェスのバトルセンスもさることながら、GN-Xの性能と数の不利が刹那達を追い詰めていた
ファングはエクシアとコンテナとの距離を決して縮めたりはしない

刹那「ッ……!」

ラッセ『くそっ! 嘗めくさりやがって!』

防げるビームはエクシアが受け、後はラッセが何とかして避ける

コーラサワー「そこォッ!」

刹那「あぐっ!!」

しかし、既に周囲には七機のGNーXが展開している
一斉に放たれた粒子ビームを全て回避することは出来ない、敵は更に距離を詰め二機を追い詰めていく

サーシェス(アイツが紅く光ったら全速力で退く……アレが何なのかは知らねえが、いきなり使ってこないってこたぁ、そう長くは保たねえ代物らしい)

サーシェス「ま、他のGNーXにゃクルジスのガキへの当て馬になってもらうとすっか……」ボソッ

コーラサワー(なーんか不穏な空気……)

刹那「ッ……!」

降り注ぐ粒子を受けながら、刹那はスローネツヴァイを睨みつける
サーシェスはトランザムを知っている、にもかかわらずGNーXの大半を此方にぶつけ自身は後方からファングを飛ばすのみ
味方を盾にトランザムを誘う……思惑は目に見えていた

刹那「……ッ」ギリッ

刹那「良いだろう、だったら使ってやる」

刹那「お前の思惑を真っ向から断ち切ってやるッ! そのための、ガンダムだ!」

サーシェス「来てみろや、ソレスタル……!!」

サーシェス「ッ……!?」

刹那「トランザムッ!」

刹那の叫びに呼応するかのように、エクシアのボディが深紅に染まる
しかし、サーシェスの眼はエクシアから外れ、遥か虚空を睨んでいた

           ・
           ・
           ・

ーラグランジュ1・アレルヤー

被弾したテール・ブースターを切り離し、身を翻しつつソーマのビームサーベルを受け止めるキュリオス

ソーマ「被験体・Eー57!」

アレルヤ「ソーマ・ピーリス!」

ソーマ「!」

キュリオスのブースターを活かし、機体を回しながらGNーXを弾き飛ばす。
その動きにいつもの乱れは存在しない、いつものアレルヤの精密な動きであった

ソーマ「貴様……脳量子波を遮断して……!?」

アレルヤ「僕だって、いつまでも足手まといじゃ居られない!」

セルゲイ「少尉、離れろ! 奴が来る!」

ソーマ「!」

セルゲイがビームライフルを放ちながら叫ぶ。ソーマはその一言で察し、キュリオスから距離を取る

アレルヤ「来るよ、ハレルヤ。奴が来る!」

粒子ビームをシールドで受け止め、感じる殺意に身を震わせながらアレルヤもまた叫ぶ
あの野獣がまた来る、本能が警鐘を鳴らしていた

ハレルヤ「あぁ……分かってらぁ」

しかし、もう迷わない。決めたのだ、生きるために、自分の意志で引き金を引くと
髪を指でかき上げ、モニターのアラームに不敵な笑みを向ける
まっすぐに突っ込んでくるGNーXは、間違いなくあの男の、ヤザン・ゲーブルの機体

ハレルヤ「見せてやろうぜアレルヤ……出来損ないの女に、あの獣野郎に!」

ハレルヤ「真の超兵の実力って奴をなぁぁ!!」

ヤザン「貰ったぜ羽根付きぃ!」

最大戦速からのビームサーベルの刺突が、キュリオス目掛けて繰り出される

アレルヤ「直撃コース」

アレルヤ「身体の軸をずらし」

アレルヤ「シールドを展開し、カウンターを!」

ハレルヤ「ぶち込むッッ!!」

しかし、キュリオスはその軌道を読み切ったように半身機体をずらす
ビームサーベルの赤い切っ先は肩先をほんの僅か掠るが、同時に展開したシールドニードルが、延びきったGN-Xの左腕をサーベルごとむしり取る

ヤザン「何だとッ!?」

アレルヤ「後方より二機、攻撃まであと三秒」

アレルヤ「蹴りと同時に照準……!」

ハレルヤ「やってやらぁ!」

身を翻したキュリオスの蹴り、反動で二機はその場から大きく離れ、粒子ビームが虚空を掠める
ガンダムを見失うGN-X、しかしキュリオスのGNサブマシンガンは後方から現れた二機に既に照準を合わせている
だが、ヤザンもまた既にビームライフルを構えて追撃を始めていた

ヤザン「嘗めるなガキがぁ!」

アレルヤ「! 予想よりも速い……!」

ハレルヤ「ちっ、やっぱりあの野郎がネックか」

ハレルヤ「だがなぁ、今までのようにはいかねぇ!」

アレルヤ「そうだろ、ハレルヤ!」

ハレルヤ「だったら叩き込んでやろうぜアレルヤァ、とっておきの! ダメオシって奴をなぁ!」

アレハレ「トランザムッ!」

キュリオスの機体が深紅に彩られ、更なる追撃を圧倒的な速度で回避する

ヤザン「!」

セルゲイ「何だあの速度は!?」

セルゲイ(まだ隠し種があるとでもいうのか、ガンダム!)

ソーマ「馬鹿な……!」

ソーマ(出来損ないの超兵の動きじゃ、ない!)

アレハレ「そのX字の目ん玉見開いて、よぉく焼き付けるんだな国連のタマナシ共!」

アレハレ「僕達こそが超兵であり、ソレスタルビーイングの……ガンダムマイスターだッ!」


-ラグランジュ1・中央部ー

マリーダ率いる八機のGNーXが、ヴァーチェを追随している
元より機動性に劣るガンダムだけに、その背には雨霰と粒子ビームが浴びせられていく
しかし、ヴァーチェの強固なGNフィールドはそれら全てを受け止めつつ、全く意に介さず移動を続けていく

ダリル「何つう堅さだ、全く歯が立たねえ!」

ジョシュア「畜生が……ッ!」

焦るダリル、苛立つジョシュア。その最中、マリーダは静かに成り行きを見ていた

ティエリア「ヴァーチェ、目標を破砕する!」

マリーダ「来るぞ、回避運動!」

ヴァーチェのフィールドが解けた瞬間、GNキャノンが強力な粒子を撃ち放つ。
全機が広がるように回避する中、マリーダ機だけは前へと突貫を始める

ティエリア「!」

マリーダ「粒子バリアは左右の足、肩の砲台から出している……」

マリーダ「そのタイミング、狙わせてもらう!」

ティエリア「やらせない!」

衛星の密集した宙域に隠れるマリーダ機目掛け、GNバズーカが構えられた
迸る圧縮粒子は大小関わらず衛星を粉砕し、宙域を飲み込んでいく
当たれば、塵も残るまい

マリーダ「ッ!」

その光の柱を、身を翻し紙一重に横へとすり抜ける
即座に構えたロングライフル、狙いは二つ

マリーダ(見える……!)

ティエリア「ぐぁぁっ!?」

左肩部キャノンと左足、ヴァーチェの粒子発生装置二カ所を粒子ビームが貫く
追撃に備え即座にGNフィールドを再展開するが、やはり粒子の発生量は半減していた

マリーダ「今だフラッグファイター! 」

ジョシュア「おぉっ!」

ダリル「やってやらぁぁ!」

再び豪雨となって襲い掛かるGNーX部隊。フィールドは意味を為さず、次第に外装が抉れ少しずつ脱落していく
これで一機撃墜すれば勝ちは決まる、そう信じてマリーダも追撃に当たる

ティエリア「ッ……!」

ティエリア「今しかない……!」

激しく揺さぶられるコクピットで、ティエリアはモニターのボタンに手を伸ばした

マリーダ「ッ!?」ゾクッ

直後襲い来る猛烈な寒気。何かが来る、マリーダが口を開く前にヴァーチェのボディは赤く発光を始めていた

ティエリア「トランザム……!」

再び頑強に生まれ変わるGNフィールドに、ビームライフルが妨げられる。
コクピット越しに、部隊の動揺が伝わってくるように感じられた

ティエリア「バーストモード……!!」

構えられたGNバズーカが白色の光を放ち始める
あれはまずい! マリーダの勘が悲鳴にも似た警鐘を鳴らす

マリーダ(何なのだガンダム……貴様は何を隠している!?)

マリーダ「全機……ッ!」

マリーダの声が届く前に、極大の閃光がフラッグファイター達を襲う
同じ武装から放たれたとは思えない膨大な熱量の奔流は、次々に部下を飲み込んでいった
逃げ損ねた一機が塵芥に変わり、逃げ遅れた一機が下半身部を飲まれ、隕石に隠れた一機は、砕け散る隕石ごと為す術無く消滅していく
たったの一撃で、瞬く間に部隊の三割を消失した

マリーダ「あ……」

戦友の命が消えていく感触が、取り返しのつかない喪失感と共にマリーダの身体を通り抜けていく

マリーダ「奪うな……!」

マリーダ「私から仲間を、光を奪うなッ! ガンダム!」

ティエリア「!」

なまじ救われてしまった心には、より重く戦友の死がのしかかったのだろうか
マリーダはビームサーベルを抜き放ち、ヴァーチェに無謀な特攻をかける
真紅の刃は淡く光るGNフィールドに遮られ、それ以上は先に進めない

ティエリア「ッ……!」

ティエリア(トランザムの限界時間が近づいている……このままでは……!)

マリーダ「はぁぁぁぁ!」

ティエリア「くっ!」

限界時間に迫る中、マリーダの一手は貫手
GNフィールドを纏うGN-Xの指が、少しずつヴァーチェのGNフィールドを侵食し進んでいく
あわやヴァーチェを貫かんとした、その時

ロックオン「狙い撃つッ!」

マリーダ「ッ!?」

マリーダ機目掛けて放たれる粒子ビーム。即座に離れたが、貫手も離れヴァーチェを後一歩で逃す

ロックオン「何とか間に合ったらしいな……」

あの男だった

突然だった。先の戦いで損傷したガンダムが、追加武装を装着し戦線に現れたのだ
続く二射、ロックオンが利き目をやられていながら狙撃出来たのは、マリーダの能力を感じ取っていた為だろう
スナイパーライフルの一撃は当たらずとも、的確に距離を離させる

マリーダ「貴様ッ……!」

ロックオン「悪いなマリーダ、お前さんの相手をしてる暇はないんだ」

ロックオン「圧倒させてもらうぜ!」

HARO[砲撃開始、砲撃開始]

呆気に取られたGN-X部隊に降り注ぐ、大量の粒子ミサイル
圧倒的な数の弾幕に、彼等は飲み込まれ次々に爆散していく

ジョシュア「くっ……!」

ダリル「ぬぉぉっ!?」

離れた位置のマリーダ機以外全機に命中、ジョシュア機とダリル機以外は悉く爆散していった

ジョシュア「がふッ……!」

ダリル「ジョシュアッ!?」

ジョシュア「ッ……」

ジョシュア「誰にもの言ってんだダリル……俺はまだ……!」

マリーダ「くっ……!」

両機共にGNシールドにより左腕部を破壊されていたが、ジョシュア機のダメージは肩から胴体部にまで広がっていた

マリーダ「ダリルッ!」

ダリル「り、了解……!」

マリーダの一言で即座に理解した。戦闘続行不可能、撤退だと
ジョシュア機を抱えるようにしてガンダムから離れるダリル機
マリーダ機は何度も、何度も振り返る

マリーダ「まだ……ッ」

マリーダ「まだ私は負けていない……ッ!」

ヴァーチェを牽制しつつマリーダ機もまたガンダム達から離れていく
ロックオンは敢えてその背中を見送った
彼の脳裏には、間に合わなかった友人の顔が浮かんでいた
殺し合う約束をしておきながら今更何を……ロックオンは自身を笑った

ロックオン「俺も甘いな……今更情にほだされるなんて」

ロックオン「……対艦攻撃に移行する。HARO!」

HARO[艦隊捕捉、艦隊捕捉]

ティエリア「ロックオン・ストラトスッ!」

ロックオン「よう、さっきはご挨拶だったな。ドア、壊しちまったんで直しておいてくれ」

ティエリア「そんな身体で……!」

ロックオン「すぐ戻る」

ティエリア「っ」

ロックオン「だから先に戻ってろ、今は戦う」



刹那「でやぁぁぁぁッ!」

コーラサワー「大佐ぁぁぁぁぁ……!」

エクシアのGNサーベルに頭部を貫かれ、GN-Xが明後日の方向に飛んでいく
サブコントロールシステムを失い上手く制御出来ないのか……このまま行けば外宇宙に消えていくだろう

刹那「……」

彼を除いて撃破出来たのは四機。スローネツヴァイは狙ったものの、何かに導かれるように撤退し追撃は出来なかった
隊長を失った二機のGN-Xは蜘蛛の子を散らすように退いていく。
追うにも粒子残量の無いエクシアでは、強襲用コンテナの護衛さえままならない

ラッセ『済まん刹那……足手まといになっちまった』

刹那「いや、スローネツヴァイの奇襲の狙いが俺だったなら立場は逆だった」

刹那「ドッキングのタイミングを狙ってくるとは……やはり一筋縄では……」グッ

ピピッ

刹那「!」

刹那「ロックオンが対艦攻撃を……?!」

ラッセ『どうする刹那、お前に任せるぜ』

刹那「……」

粒子残量は少ない。追撃も断念した。しかし、彼処に仲間がいるというなら話は別だ

刹那「ラッセ、GNアーマーにドッキングを。最大戦速でロックオンの援護に向かう!」

ラッセ『そうこなくっちゃな!』

嫌な胸騒ぎがした。サーシェスを取り逃がしたこと、ロックオンの怪我……
数少ない粒子を頼みに、刹那も敵地に踏み込んでいった



マネキン大佐の下には、矢継ぎ早に情報が送られてくる
ガンダムが赤く発光、凄まじい性能を発揮したという情報
パトリック・コーラサワー機ロスト、及び四機のGN-X大破
ヤザン・ゲーブル機中破及び撤退、セルゲイ・スミルノフ機中破、ソーマ・ピーリス機小破

マネキン「ッ……!」

マネキン(フラッグファイターの部隊からは全く連絡が来ない……まさか全滅してしまったのか?)

マネキン(ガンダムの謎の機能、知らなかったでは済まされん。このままでは散っていった将兵達に何と言えば……!)

オペレーター「大佐! ガンダムと思われる機影が艦隊に接近してきます!」

マネキン「!」

マネキン(三方向の防衛戦は囮……真の狙いは対艦攻撃か!?)

マネキン「リニアキャノンで応戦しろ! 全機に撤退命令!」

マネキン大佐の指示通り、三隻の輸送艦はリニアキャノンを放ちガンダムに抵抗する
しかし艦隊からすればMSは天敵にも等しい存在、接近を許した時点で選択肢は殆ど残されていないことをマネキンは分かっていた

ロックオン「まずは一隻……!」

二門の大型ライフルの砲火が、右側の輸送艦を撃ち抜く
大型輸送艦が爆ぜながら粉々に崩れ去っていく、彼女はその威力に目を疑った

マネキン「ッ、怯むな!」

苦し紛れの艦砲射撃、当たればガンダムといえどただでは済まないが、当たらなければ意味も無い
無情にもそれらをすり抜けるようにガンダムは再接近する
ロックオンの駆るGNアーマーが放つ粒子ビームが、二隻目の輸送艦を貫き破壊する

マネキン「ッ……!」

深追いしてまでの対艦攻撃、即座に終わらせなければ、ロックオンは引き返してきた敵機に囲まれる
猶予はなかった

ロックオン「悪いな、これで最後だ……!」

マネキン大佐が走馬灯を垣間見る中……ロックオンは引き金に手をかけ、狙いを定める

ロックオン「墜ちろッ!」

「させるかぁぁッ!!」

ロックオン「ッ!?」

大型ライフルが火を噴く前に、アーマー背部に浴びせられる粒子ビーム
怯んだ瞬間、リニアキャノンの一射が右上部のキャノン砲を食いちぎる

ロックオン「ッ……!」

デュナメスは即座に分離し離脱したものの、主を失ったGNアーマーは艦砲射撃により粉砕される
背後からの射撃、誰かは分かっていた。

ロックオン「マリーダ・クルス……!」

マリーダ「ロックオン・ストラトスッ!」

単騎で猛追してきたのだろうか、あれだけの攻防戦を繰り広げながらも彼女のGN-Xだけは無傷に等しい
しかしあれだけの激戦を支えたマリーダに、体力がまだ残っているというのだろうか

マリーダ「まだだッ! まだフラッグファイターは終わっていない!」

ロックオン「しつけえんだよ……!!」

自然と言葉が荒くなる。フラッグファイター伝統ともいえる粘り強さと執拗さ、最悪のタイミングで発揮されている
ロングライフルを左手、サーベルを右手に構え突貫してくるGN-Xに対し、右手にスナイパーライフル、左手にビームサーベルを構え迎え撃つ
GN-Xのロングライフルをフルシールドで受けながら、スナイパーライフルで撃ち返す。
互いに射撃の名手だけに、それらはいずれも機体を掠め、シールドの隙間を徹底して狙う精密射撃の応酬
マリーダはもはや気力だけで戦っている、ロックオンはそれを理解しつつ尚真っ向からぶつかっていく

マリーダ「貴様等はいつもそうだ! 好きなだけ壊し、直すこともせずに去っていく!」

ロックオン「血塗られた手で直せるなんて自惚れちゃいないさ!」

次第に距離が縮まり、戦いはビームサーベル同士の応酬に変わる
至近距離からのライフルを織り交ぜた激しい攻防、粒子がデュナメスのアンテナを掠め、GN-Xの頭部を削る

マリーダ「戦争さえなければ良いという安易な考えで、どれだけの人間が死んだと思っているッ!」

ロックオン「安易かも知れねえな、だがよ!」

マリーダの意地が、デュナメスの頭部にロングライフルを突きつける

ロックオン「戦争が無い世界が悪い世界であるはず……ねえだろうがッ!!」

マリーダ「ッ!」

ロックオンの叫びとほぼ同時、デュナメスはスナイパーライフルを放し即座にビームサーベルを抜き放つ
引き金を引くよりも速く、二本目の刃に左足と左手を同時に切り裂かれ、マリーダ機が火花を吐く

マリーダ「ぁッ……!」

更に左手にピストルを構えたデュナメス、敵機の頭部を撃ち抜く

ロックオン「……」

また脳裏に浮かぶ、友の顔
照準はコクピットに合わさっている
引き金を引けば彼女は死ぬ
殺さなければいずれ自身の命が危ない
やらねばならない

ロックオン(何を躊躇しているんだ俺は……撃てよ、いつもそうしてきただろうが!)

時間にしてみればほんの二、三秒。短い葛藤だった
ただし、それを狙う猛禽が側にはいた

『お優しいなぁ、ガンダムさんよぉ!』

ロックオン「ッ!」

突然飛び込む通信。一斉に襲い来る牙の群れ達
避けきれない……マリーダ機が近くにいたのも加味され回避運動の方向性は限られていた
硬いフルシールドでさえファングは突き刺さり、粒子ビームを撃ち込んでいく

ロックオン「ぐぁああああああッ!!」

フルシールドが砕け散り、左腕部が脱落する。その様子を見て、衛星群から紅い機影が姿を現した
スローネツヴァイだ

サーシェス「はははははははは……いい格好だなぁガンダム!」

ロックオン「その機体……アリー・アル・サーシェスか!?」

サーシェス「マリーダちゃんとのデートは楽しかったかい? ニュータイプさんよ」

ロックオン「ッ! まさかてめぇ……」

ロックオン「マリーダがやられるまでわざと傍観してやがったのか……!」

サーシェス「やったのはてめえだろ! 紛争根絶を掲げるテロリストさんよぉ!」

ファングを回収し、バスターソードを構え急接近するスローネツヴァイ
デュナメスもまたビームサーベルを抜き、受け止めつつも前に出る
この際、サーシェスがニュータイプの概念を知っていることへの疑念などどうでもよかった
負の感情がロックオンの意識を暗く染めていった

ロックオン「てめえみたいな奴に生きてる価値なんざねぇ……!」

サーシェス「マリーダちゃんにも言われたよ、同じことをな!」

サーシェス「だが所詮同じ穴の狢だろうが! 所詮身体改造されて闘うことしか出来ねえ女の泣き言と、夢見がちのテロリストの戯れ言だ!」

ロックオン「ッ」ブチッ

幾度も繰り出される刃をひたすら受け止める、サーシェスから僅かな焦りを感じ取った
十合目、更に踏み込み刃を合わせる

ロックオン「人のことを分かろうともしねえ奴が、俺達を語るんじゃねえッッ!」

HARO[サイコミュ起動! サイコミュ起動!]

ロックオンの怒りに呼応しビームサーベルが出力を上げる、バスターソードとの接触面が激しく火花を散らした
不意を突かれ驚くサーシェス、身を引いた瞬間デュナメスの左腰部ミサイルが展開、全弾スローネツヴァイの右腕に叩き込まれ、爆発した

サーシェス「ちぃっ!?」

ロックオン「てめぇだけは今! 此処で殺すっ!」

片腕とバスターソードを失ったスローネ目掛けサーベルを振り上げる
此処でコイツを倒さねば、自分のような犠牲者が生まれる……!

ロックオン「サーシェスッッ!」

『駄目だ、ロックオン!』

ロックオン「!」

マリーダの声が、頭の中に響く。気付けば、スローネツヴァイのファングコンテナは空になっている

サーシェス「あばよ、ガンダム!」

ロックオン「……!」

一斉に放たれたファングがデュナメス目掛け飛んでいく。
一瞬早く気付けた為、急速後退しつつサーベルで切り落とす
しかし、間に合わない
デュナメスの顔面、脚部に突き刺さり、そのまま自爆に近い爆発で粉砕する

ロックオン「ッッ……!」

サーシェス「はっははははははは!!」

爆散しGN粒子の煙が辺りに立ち込める
四肢損傷、頭部ガンカメラ損壊、全武装使用不可
損害甚大、戦闘続行不可能

HAROがいつもの調子で、しかし何処か必死さを感じさせる何かを孕む言葉を発していた

ロックオン「……」ゴフッ

体を起こす。骨が何本かイカレたようで、全身に激痛が走る。吐いた血がメットを半分ほど濡らし、視界を遮る
それでも止まれない。デュナメスの残った航行能力で機体を衛星群の影に隠す
サーシェスが気付くのは時間の問題だ……ならば、仕掛けるなら今しかない

ロックオン「HARO……デュナメスをトレミーに戻せ」

HARO[ロックオン、ロックオン]

ロックオン「俺ぁアイツと決着を付けてくる」

HARO[ロックオン、ロックオン]

ロックオン「なぁに、必ず生きて帰るさ。心配すんな」

HARO[……]

ロックオン「じゃあな……相棒」

HARO[ロックオン、ロックオン]

スコープシステムを取り外し、未練を振り切るようにデュナメスのコクピットを蹴ると宇宙空間に飛び出していく
HAROはいつまでもいつまでも、自分の名前を呼んでいる
今まで一番、デュナメスのロックオンの側にいた存在……ロックオンは心の中で、言葉に出来ない感謝を告げていた
目指すはGNアームズのGNキャノン砲、破壊されながらも残った骸の残り

上部に取り付き、狙撃用のスコープシステムをキャノン砲のシステムに繋ぐ。粒子残量は、一発分。十分だ

ロックオン「ハァ……ハァ……」

ロックオン(アイツ、間に合わなかったなぁ……マリーダ、頑張ってたんだぞ)

ロックオン(お前が誉めてやらなきゃ誰が誉めるんだよ……マスターはお前だろう、グラハム)

ロックオン「……クッ……」

ピピッ

ロックオン「悪いな……決着……ふいにしちまって……」

ロックオン「父さん……母さん……エイミー……」

ロックオン「見てたか……俺にもまだ……ニールって呼んでくれるダチ……いるんだぜ……?」

ロックオン「でもよ……コイツを倒さなきゃ……俺は、俺の魂は過去の重力に引っ張られたままだ……」

ロックオン「だからさ……!」



サーシェス「ッ! 生体反応!」

サーシェス「そこかぁぁぁぁぁ!」



GN粒子の紅い光が此方に真っ直ぐ向かってくる。
何かを叫んでいるようにも感じられたが、そんな余裕もロックオンには残されてはいない

ロックオン「……狙い撃つぜ」

静かにスコープシステムの引き金を引く。放出された最期の一撃が真っ直ぐ宇宙空間を繋げ、スローネツヴァイに向かっていく
完全な不意打ち、スローネツヴァイは半身を光に飲まれ、生きながらに灼かれていった
強烈な思念がロックオンの脳髄を叩く。アリー・アル・サーシェスという男の断末魔が、宇宙に響き渡っていくようだった
半身を灼かれながら、スローネツヴァイがハンドガンを構え粒子ビームを放つ
苦し紛れの一撃、しかしそれはロックオンの乗る残骸を的確に撃ち貫く

ロックオン「流石にやりやがる……」

苦々しげに呟く、悔しいがこれまでらしい
爆発した残骸、爆風に吹き飛ばされ宇宙空間に身を投げ出す
朦朧とした意識の中、眼下に見えた、青く美しい星
ロックオンにはそれが、酷く汚れて見えていた

ロックオン「分かってる……こんなことしても、何も変わらないなんてこと……」

ロックオン「分かってるよ……」

ロックオン「でも……これからは……ライルの生きる明日は……」

手を伸ばそうとして、諦める。代わりに拳銃の形を作り、構えてみせる
GNアーマーがゆっくりと近付いてくるのを感じ取る……そういえば刹那から答えを聞いていない

答えは見つかったかよ……?

絞り出した一言は、彼に届いただろうか

ロックオン「よう……お前ら、こんな世界で満足かよ……」

ロックオン「俺は……嫌だね……!」

再び、残骸が火花を吹き上げ爆発する
その様子は、刹那からもはっきりと見えていた

刹那「ッ……!」

ラッセ「……ッ」

HARO[ロックオン、ロックオン]

トレミーに帰還したHAROは、ただひたすらに相棒の名を呼び続けていた
それを聴きクルー達は確信する。もう彼は、ロックオン・ストラトスはいないのだと

刹那「ロックオン……ストラトス……っ」

唯一発見できたスコープシステムを抱え、刹那はトレミーへの帰路につく
お前は変われ、そうロックオンに言われた気がした

刹那「っ……」

刹那「うわぁぁぁぁぁぁぁ……!!」

自ら望んだ道、避けられぬ別れに、少年はただ叫ぶように泣いた


ー軌道エレベーターー

グラハム「……間に合わなかったか……!」

整備を終え、GNフラッグの中で出撃を待つ最中、それは稲妻のようにグラハムの脳髄に飛び込んだ
ロックオン・ストラトスの死……失われた悲しみは確信と共に心を貫く
奇妙な話だ、殺し合う約束をしていながら死を悼むなど
だが、僅かな時間でも二人は分かり合えていた。友人として確かな絆を感じていた

グラハム「……」

泣くわけにはいかない。彼は笑って逝ったのだから
その直後に感じられた巨大な悪意の存在が、グラハムの意識を現実に引き戻したのもあった

グラハム「あれが……歪みか」

ロックオンが教えてくれているようにも感じられた
あれを倒せと、倒してくれと
追撃するように、宇宙空間に飛び出すGNフラッグ
彼には見えていた、敵が誰なのか

グラハム「……」

グラハム「グラハム・エーカー、出るぞッ!」

静かな予感が余韻のように心に響く
これが、最後の戦いになると


TO BE CONTINUED...


オペレーター「一番艦MSドッグ被弾! リニアキャノン破損、機能停止!」

オペレーター「このままでは、本艦は撃沈されますッ!」

マネキン「馬鹿な……血迷ったとでもいうのか!?」

マネキン「アレハンドロ・コーナー……!!」

アレハンドロ「クックックックッ……」

アレハンドロ「さぁ……私の新世界の人柱となれ、哀れな生け贄共!!」


次回『フラッグファイター』

矜持を見せるのは、今



880 :>>1 ◆/yjHQy.odQ [saga]:2011/04/15(金) 01:39:16.87 ID:2aD4coTAO

一応GNフラッグ(次期主力機試作型フラッグ)の設定投下

【GNフラッグ(エイフマン)】

エイフマンの遺した次期フラッグ推論の設計基本データをビリーが流用したGNフラッグ
新しく組まれたパーツにより最低限のバランスと高レベルの機動力、高い追従性は獲得したものの、やはりフラッグ規格のため脆く可変機能はオミットされている
装備はGNバスターソードを加工したGNロングソード、右腕に装着するGNシールドのみ。
GNロングソードは実体剣であり、粒子を纏い対フィールド性能を有する。コンデンサーが無いためビームサーベルの粒子発振機を内蔵し代用している
GNシールドは幅広の籠手に近く、コンデンサーによりGNフィールドに近い効果を生み出す。コンデンサー内蔵でロングソードとの左右バランスを担う
総合性能ではGNーXに劣るものの、機動力と近接格闘に特化している
なお安全性は全く考慮されていない

だいたい総合性能は

CBガンダム≧GN-X≧GNフラッグェ

ただバイオセンサーをグラハムが勝手に違う使い方にしているので近接格闘と速度ならGN-X以上、その代わりビリーが想定していた安全性が損なわれており、パイロット殺しになっている

ビリーが安全面を直せないのは、グラハムがサイコミュを使ってる間だけそうなる為データに残らないのと、グラハム必死のやせ我慢で一応誤魔化せているから

命削って漸くリボンズの攻撃に耐えられるレベル


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