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唯「だいにじ!」なのは「スーパー!」夕映「ロボット」シャロ「大戦です!」  第二十一話 僥倖! 復活の蒼き鷹!

2011年09月24日 19:27

唯「だいにじ!」なのは「スーパー!」夕映「ロボット」シャロ「大戦です!」

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [saga ]:2011/05/01(日) 20:10:49.75 ID:xyTeWmMO0

 第二十一話

 月面のクレーターを強度と透明度を併せ持つアクリルガラスでドームの形に覆い、底面の中央に統括庁舎などの公共施設を建設。
 その後、螺旋状に都市を敷いていき傾斜でせりあがっていくクレーターという地形に合わせて中央の庁舎も高く背を伸ばしていく。
 底面から庁舎が二十メートルに達する毎に〝新たな地面〟を作り、その上にまた建物を乗せていく。
 宇宙世紀0079――人類は第一号のフォン・ブラウン市からずっと、この手法で月面に幾つかの都市を建設していった。

 そのうちの一つ、開発都市三号ギガノス市の駐留軍将校であったメサイア・ギルトールがマスドライバーの完成を機に周辺基地の駐留軍を纏め上げて決起したのが〝ギガノス帝国〟の始まりであった。

 今、民間輸送船が港に着いたことなど、ドルチェノフ中佐の耳に入るはずはなかった。

「閣下ぁ!」

 玉座を前に大きく腕を広げて見せたドルチェノフは以前よりも更に圧力を増して獅子吼した。

「プラート大尉は死に! ジオンとのジャブロー攻略作戦も失敗に終わった今! 我らギガノス帝国に勝機があるとすれば、マスドライバーによる地球連邦軍基地への全面攻撃しかありませぬ!!」

「やめよ、ドルチェノフ」

 あくまで穏やかに進言を退けたメサイア・ギルトールは窪んだ目で頭上のガラス越しに宇宙を仰ぎ見る。

「今一度、地球を見るがいい。ドルチェノフ中佐」

 ギルトールの視線の先にはいくつもの星明かりの中、青く輝く惑星がある。

「美しい……なんと美しい星なのだ……その星にお前はマスドライバーを仕掛けろと言っておるのだぞ」

「はっ! 全ては我らギガノスの勝利のために!」

「そんなことをしてみろ、ドルチェノフ!」

 皺の刻まれた顔を苦痛に歪め、ギルトールは肘掛けを拳で打った。
 決して強い力ではないものの、自身が地球そのものであるかのような眼差しにドルチェノフはたじろいだ。

「我らは連邦ともジオンとも違うのだ! あの美しい星を汚してはならんのだ……! それだけは断じてならんのだ!!」

「お言葉ですが、閣下! 既に若手将校の反乱の謀議が連邦政府にまで洩れている可能性があるのですぞ!」

 一歩後ろ足を踏みながらもドルチェノフは引き下がらなかった。
 二歩、三歩とギルトールへ進み寄り、額に熱を込めていった。

「連邦軍が彼奴らの反乱を煽れば我がギガノス帝国は一挙に転覆する恐れがあるのですぞ! かくなる上は速やかに反乱軍を処罰し、連邦軍を殲滅することです!」


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「それがアンタのシナリオなのね、ドルチェノフ中佐」

「何ッ!? キ、キサマは!」

 高くはないが朗々と響き渡る声音が玉座に迫っていた革新派の表情を慄かせていた。

「アンタのくだらない謀であたしがくたばると信じていたのなら、それはとんでもない思い上がりよ」

「キサマ、生きておったのか! プラート大尉!」

 黒と藍色のパイロットスーツに身を包んだまま現れたハルヒ・スズミヤ・プラートは何ら臆することなくドルチェノフへと詰め寄っていく。

「アンタが朝倉涼子を使ってあたしを始末しようとしていたことは判明しているわ。全てはアンタが軍部を掌握するためだってこともね」

「ぐぐ……う、動くな、プラート大尉!」

 大胆不敵に近づいてくるハルヒに計略を暴露され、狼狽したドルチェノフは腰から銃を抜き、静観していたギルトールのこめかみに突きつけた。

「ドルチェノフ!」

「お前という男は……」

「黙れ! 反乱軍の即時殲滅、マスドライバーによる全面攻撃! この二つがお聞き入れ無きときは、我々にも覚悟というものがありますぞ!」

「馬鹿者が……!」

「閣下ぁ!」

 苦く唸った元帥にドルチェノフの唾が飛んだ瞬間、ハルヒは銃を持つ腕に飛びかかった。

「どけなさい、ドルチェノフ!」

「プラート! キサマ……!」

 二人は組み合って足を崩し、玉座から転がり落ちていった。

 だが、ハルヒが肘を取った拍子にドルチェノフの指が引き金を引いてしまった。

「!」

 銃声の先からくぐもった悲鳴が聞こえた。
 もつれあっていたハルヒとドルチェノフが振り返った時には、玉座のメサイア・ギルトールは口腔から血を吐き出している。

「閣下!」

 ほとんど泣きそうな声でハルヒはギルトールの傍へ跳んだ。
 胸を赤黒く染めたギガノス帝国元帥の瞳は既に光りを失い始めていた。

「閣下! 死んでは……! 死なないで、小父様!」

 没前の体温にすがりつくハルヒの耳に、血に混じった声が届いてくる。

「プラート大尉……マスドライバーを……地球を……破壊させてはならん……」

「わかってる! わかってるから! もう喋らないで!」

「我等の理想に……すまない……ハルヒ……くん……朝比奈くんは……三層の……C7区画に……」

「お、小父様……? 小父様!」

 力を失くした身体を揺すり続けるハルヒの後ろで、ドルチェノフは銃を落とした手を震わせていた。

「閣下……閣下がいけないのですぞ……」

「いかが致しましたか、元帥殿!」

 騒ぎを聞きつけて衛兵が駆け込んできた。彼らは玉座に惨状に気付くやすぐにその銃口を掲げる。

 そして、ドルチェノフは正気に戻り、重声を轟かせた。

「反乱だ! ギルトール元帥が撃たれたぞ! 親衛隊のプラート大尉に撃たれたぞ!」

「!」

 悲嘆に埋もれている暇もなく、ハルヒは大粒の涙と共に立ち上がった。

「動くな、プラート大尉! キサマを元帥殺害容疑で逮捕する!」

「ドルチェノフ……! くっ!」

 今しも掴みかかろうとした寸前にハルヒは亡き理想家の遺言を思い出し、横に跳躍した。

「動くなと言っているだろうが反逆者! キサマはワシが直々に取調べを行ってやるぞ、うはははははは!」

 ドルチェノフは発砲するが、ハルヒは素早く踵を返して玉座の後ろ――幕に隠された隠し通路に身を投じた。

「閣下の……閣下の遺言を果たすまで、あたしは生きてみせる!」

 ギルトールの私有邸を走り、ハルヒは専用エレベーターで下降していった。

「先にみくるちゃんを助けないと……!」

 最上層である第一層から第三層まではこのエレベーターで直結である。
 そこからはエアバイクでも奪取してみくるを保護する。

 ここは既にギガノス帝国ではない。

 ハルヒの愛した理想国家ではない。

 エレベーターが止まったのと、警備隊が乗降口に到着したのはほぼ同時のようだった。

「プラート大尉! 貴官を反逆容疑で逮捕する!」

「そんな濡れ衣信じる馬鹿がどこにいんのよ!」

 銃口から逃れるように前転してハルヒはエレベーターを出て、手近な所にいた兵を殴り倒してエアバイクのハンドルを握った。

「止まれ! さもなければ撃つぞ!」

「こっちには時間がないのよ!」

 すぐに全速で発進すると、銃声も響き始める。
 左右に避けて整理された居住区画を走り抜ける。蒼き鷹と呼ばれた女だこれぐらいは容易い。

 だが、メタルアーマーに乗っているならばまだしも、せいぜいが地上二、三メートルが上昇限界のエアバイクでは、統制された警備部隊を振り切ることなどできるはずがない。

「来たぞ! 発砲用意!」

「チッ、腐っても軍隊ね……!」

 体と一緒にエアバイクを傾けて角を曲がる。こちらが向かう場所も既に相手には知られていることだろう。

「ごめんね、みくるちゃん……」

「こっちだよ、涼宮さん」

 不意に横からかけられた声に反応すると、狭い路地で手を振っている朝倉涼子が目に入った。

「朝倉! アンタ何のつもりで――」

「静かにして! あなたを朝比奈さんのところまで案内してあげる」

「えっ!」

 自分を殺そうとしていた相手の誘いにハルヒの頭は警鐘を鳴らしたが、他に手段が見当たらない彼女は罠だとしても、乗るしかなかった。

「こっちよ」

 朝倉が示したのは路地を抜けた先にひっそりと建てられていた兵器工場であった。

「ここにみくるちゃんがいるの?」

「いいえ、朝比奈さんはドルチェノフの私邸よ。そこに行くためのものをまずはここで調達するの」

「調達って何が……ッ!」

 こんな奴のことなどほうっておいてエアバイクを発進させるべきだと思い立っていたハルヒだが、シャッターが上がると手を止め、シートを下りていた。

「これは……ファルゲン!?」

 そびえ立っている暗褐色の機体を見て、ハルヒは身を乗り出していた。

「ファルゲン機の量産型の試作機よ。ギルガザムネの生産化でお蔵入りになっちゃったけどね」

 リフトでコクピットへ上がっていくハルヒに朝倉はさらに補足していった。

「あなたの専用機ではないから、カラーリングも性能も違うけど、涼宮さんの腕なら脱出くらいは出来るでしょ?」

「今さらだけど、何でここまでしてくれるのよ?」

 上から睨み付けてもまるで意に介することなく朝倉は後ろ手を組んで鼻歌でも唄うように明かし始める。

「私はね、ヒトの希望とか理想っていったものが、失われていく過程と瞬間を見ているのが好きなの」

 うっとりとファルゲンのコクピットが閉じてから、メインエンジンが起動するまでを待って朝倉はマイクに声を送り届けた。

「元帥が撃たれた瞬間のあなたたちの顔は、とっても良かったよ」

「……まさか、アンタが!」

「うぅん、それは誤解だよ。私は本当に見ていただけだから」

「どちらにしても、今すぐアンタをこの場で踏み潰してやりたいわ」

「ダメよ。そんなことしようとしたら、本気で朝比奈さんを殺しちゃうわ」

 冗談ではないことがマイク越しからでも伝わってきた。
 元々、優等生面していて謎の多い女だったが、おぞましい本性を露わにしている今、何をしてもおかしくはない。

「だから、もうしばらくの間はドルチェノフに付き合ってあげるつもりだから、よろしくね。蒼き鷹さん」

 メタルアーマーに乗ってしまえば、もうこちらの思うままだった。
 武器は二本のレーザーソードしかなかったが、屋内の月面都市の最下層ではメタルアーマーは出てこられない。
 装甲車輌や鉄騎兵と呼ばれる大型装甲バイクでは蒼き鷹を止めるなど敵わない。

「あそこがドルチェノフの私邸ね……!」

 途中に砲口を向けてきた戦車をレーザーソードの切っ先だけで破壊し、一つ頭の抜けている邸宅を前に降り立った。

「なっ! あ、あれは……!」

 使用人らしき男が恐れて家の中へ入ろうとするのをハルヒはファルゲンの手を出して制した。

「待ちなさい! この家に捕らえられている朝比奈みくるを出しなさい!」

「そ、そのような者はこの家には……」

「だったら今すぐこの家をお前もろとも破壊するわよ」

「ひっ!」

 ハルヒがその男を捕らえてしばらく待っていると、家の中から別の使用人に連れられて朝比奈みくるが出てきた。

「みくるちゃん!」

 コクピットを開けて呼びかけると、みくるは今にも泣きそうな顔を上げた。

「す、すずみやさん……」

「止まれ、反逆者!」

 ファルゲンの手にみくるが乗るのと機体の後方に十数台の装甲車輌が停まるのはほぼ同時であった。

「くっ、みくるちゃん、早く!」

「は、はいぃ!」

 ファルゲンの手に警備兵が発砲したライフルの弾が当たって弾ける。
 ハルヒはみくるの手を取るとすぐ引っ張って一緒にコクピットの中に転がり込んだ。

 直後、強い衝撃がファルゲンを襲った。

「きゃあぁぁぁ!」

「くっ……ミサイルまで持ち出してきたのね……」

 ハッチを閉じてダメージを計上する。左背部が損傷したが問題ないレベルだ。

「行くわよ、みくるちゃん! 舌噛まないでね!」

「はいぃ!」

 ファルゲンのバーニアに火を入れてハルヒは大きく跳躍した。
 両手にはそれぞれレーザーソードを握り、照明を浴びながら落下してくる姿はまさに〝鷹〟であった。

「凡百に鷹を捉えられる訳ないのよ!」

 腕を振るって飛んでくる砲弾をレーザー熱で焼き払う。

「道を開けなさい!」

 区画を駆け抜け、港への上昇用ゲートへ入り込み、本来はコンテナが通るレールを滑るように昇っていく。

「怪我はない、みくるちゃん?」

「は、はい。だいじょうぶです」

「アイツに変なことされなかった?」

「そ、それも……でもお掃除とか……お酌とか……」

「ま、その辺がアイツのせいぜいよね」

 一気に最上層まで来る。
 コンテナが来ると思い込んでいた係員が驚いて飛び上がっているのを横目で確認して宇宙港の発着点に着地する。

「親衛隊のプラート大尉よ! すぐにゲートを開けなさい!」

 命令調に叫んでもゲートが開く気配はなかった。
 既に上位の命令が入っているらしい。彼らが当惑しているのはよく伝わってくる。

「なら、全員、何かに掴まっていなさい! 無理にでも開けるわよ!」

 やおらハルヒはレーザーソードをゲートに突き刺した。
 そこから大きくメタルアーマーが通れる大きさの円を描いてゲートに穴を開け、宇宙空間へ飛び出していった。

「マスドライバーを破壊しないと……うっ!」

 無重力化に泳がされる感覚にハルヒは自分のパイロットスーツにのしかかるみくるの体に、思考を整えた。

「みくるちゃん、つらい……?」

「へ、平気です……」

 しかし、言葉とは裏腹にみくるの顔は青白くなっている。

 ハルヒは現状でのマスドライバーの破壊を断念した。

 パイロット訓練など何も受けていない少女では重力ブロックでの移動にも耐えられない。
 無重力地帯ではそれに加えて神経まで疲弊する。
 失神して体の筋力が弛緩すれば、それなりに悲惨なことになる。

 何より、みくるの格好はただのブラウスとスカートなのだ。
 しかも、このファルゲンはまるで調整されていないいわば暴れ馬のようなものだ。
 戦闘行動をすればハルヒもただではすまないだろう。

「逃げるしかないわね……さしずめ連邦基地にでも……」

『逃がさんぞ、裏切り者プラート!』

 加速を始めたファルゲンの後ろから怒声が飛び、レーダーが危険を報せた。

「新型――えぇい!」

 ブルーグレーの鎧武者を思わせるギルガザムネが右肩部を開いて100連装ミサイルポッドを一斉発射した。

「閣下の仇……今は預けてあげるわ! ドルチェノフ!」

 ミサイルをぎりぎりまで引き込んで大きく星空へ跳躍した。

 バーニアを最大に噴かして一息に月の重力を振り切ると、足元で爆発したミサイルの爆風を受けて更に加速する。

「私は戻ってくるわよ、ドルチェノフ!」

 長い航跡を残しながらファルゲンを螺旋回転させレーザーソードを一本投げた。

 それはブロードソードを持って追撃しかかっていたギルガザムネの右腕に突き刺さる。

『ぬうぅ……! プラートめ! なにをしておるか! さっさと撃て! 撃ち落とせ!』

 だが、躍るように飛ぶギガノスの蒼き鷹に銃口をまともに向けるものはいなかった。

「う……うぷっ――」

「大丈夫よ、みくるちゃん。こっちに出しなさい」

 処理袋にみくるの口をあてさせてハルヒは丸い背中をさすった。

「ご、ごめんなさい、すずみやさん……」

「いいのよ。こっちに水があるから」

 チューブの洗浄水を手渡す。

 操縦はオートにしているが、救難信号は出していない。

 ギガノスはおろかジオンに拿捕されるのも避けたいため、連邦の制宙権に入るまでは信号は出さない。

(連邦なら、既にギガノス対抗作戦を開始しているはず……)

 ふと思いついたのは、D兵器に乗る少女だった。

 確か名前はシノ――一緒にいた士官にそう呼ばれていた。

 何人もの機動兵器のパイロットと干戈を交えてきたが、あのD-1と打ち合った感覚が忘れられない。

 心躍ったのだ。自らの未熟さを受け止めてなお、D兵器を駆る彼女の戦闘に――

「ギガノスの理想はもう潰えた……まずはキョンたちを探さなくちゃね……」

 そう呟いていた彼女の手の下でレーダーが反応していた。

 戦略宙域ギリギリ――やはり連邦はギガノスへの侵攻準備を整えていたのだ。

 ハルヒは救難信号を発信した。

 程なくして返信が来る。ハルヒは回線を開いた。

「こちら、ギガノス帝国軍親衛機甲団隊長ハルヒ・スズミヤ・プラートよ。貴艦への亡命を申請するわ」

『――こちら地球連邦軍第13独立遊撃部隊ホワイトベース。貴方の申請を了承します』

 聞き覚えのある声だった。

 ファルゲンを着艦させてハッチを開いたハルヒは何故こんなにも簡単に許可が下りたのか判った。

キョン「ハルヒ!」

ハルヒ「キョン……! それに、古泉君も有希も!?」

 ファルゲンの足元にいたのは彼女の友人にして元・部下であった。
 反逆者として出奔した彼女はもうギガノスの軍人ではない。

キョン「俺たちはジャブロー戦の後、この艦に投降したんだ」

ハルヒ「どうせアンタじゃなくて有希か小泉君が言ったんでしょ?」

キョン「う……」

 一緒に下ろしたみくるを担ぐ長門と古泉が苦笑する。

シノン「ギガノスの蒼き鷹、ハルヒ・スズミヤ・プラートさんですね」

 離れたところから歩み寄ってきた香月シノンの流麗な所作で差し出される手に、ハルヒは敬礼で応えた。

ハルヒ「今のあたしはもう〝ギガノスの蒼き鷹〟ではないわ。ドルチェノフに暗殺されたギルトール元帥の遺志を継ぐ一兵士よ」

キョン「ドルチェノフが……! やはりあのオヤジ、嘘の放送してやがったな!」

ハルヒ「放送?」

シノン「先ほど、ギガノス軍の中佐ドルチェノフがギルトール元帥の殺害容疑を貴女にかけた上で総統の地位に就きました」

ハルヒ「……予想はしていたわ。あの小悪党の考えそうなことね」

シノン「更に、地球連邦に対し全ての武装解除を通達、応じられない場合はマスドライバーキャノンによる全面攻撃を勧告しました」

ハルヒ「マスドライバー……やはりあれは破壊しなければならないわ。それが元帥の遺志よ」

 ギガノス帝国の切り札――マスドライバーキャノンは星の地表から輸送物資を宇宙空間に射出する装置を軍事的に改造し、質量のある岩石を砲弾代わりに発射する設備である。

 地球連邦が宇宙での勢力圏に乏しい現在、マスドライバーによる攻撃は非常に有効的な戦術なのだが、地球環境の保全を理想とするギルトールは第一次戦闘以外では使用していない。

ハルヒ「あれがある限りギガノスは戦い続けるわ。同時に、一時間に5回、地球に巨大隕石が落下することになる」

シノン「連邦政府は当然、要求を受け入れる気はありません。当艦はこれより独立遊撃隊として本隊が敵主力部隊を引き付けている隙にマスドライバーの破壊作戦を行います」

キョン「ハルヒ、俺たちは既に作戦に参加する事を決めた。一緒に来てくれないか」

 本人としてはあくまでホワイトベース乗員として誘ったことだが、直進的な気質にインテリジェンスな性格に育てられた少女は天と地が逆転するほどの驚きを見せていた。

 古泉とみくるが肩をすくめて苦笑いしている。
 あくまで無表情な長門も見て、ハルヒはこそばゆさを隠すように指を立てた。

ハルヒ「ふふっ、まあいいわ。あたしにものを頼む態度としては一応の合格点にしてあげる」


 ギガノス軍 マスドライバー施設軍事拠点

ギガノス兵「連邦からの返答は依然としてありません、総統閣下」

ドルチェノフ「グフフフ……我等の決意を示してやろうではないか。マスドライバー砲の用意はできておるな!?」

ギガノス兵「はっ! いつでも発射できます、総統閣下!」

 総統閣下――なんとすばらしい響きであろうか。いつまでもそう呼ばれていたい。
 座り心地のいい椅子。うまい葉巻。今では全て自分のものだ。

ドルチェノフ「そうなのだ、ワシは総統なのだ……このワシが、地球連邦を地に平伏せさせるのだ」

 歯茎を見せて笑うドルチェノフの面には驕慢が満ちていた。
 やがて立ち上がると大仰に腕を振るい、号令を出す。

ドルチェノフ「マスドライバー砲、発射せい! 地球を穴だらけにしてやるのだ!」

ギガノス兵「了解、マスドライバー砲、射出カウントダウン! 5、4、3、2、1、発射!」

 ドォンッ!! レールに乗せられたコンテナが真っ黒い空間に投げ出されていく。

 月面金属を加工して作られたコンテナは二重になっていて、一層は大気圏突破と同時に燃え尽き、二層目は落下中の大気との摩擦熱で空中分解する。
 そして最終的に残った直径5メートルほどの岩石が地表に衝突する。
 この岩石が持つ威力は戦術核兵器に匹敵し、周囲10キロまでを完全に焼き払ってしまうのだ。
 
ドルチェノフ「ぐはははははは! ジャブローのモグラどもを、巣穴ごと滅ぼしてくれるわ!」

ギガノス兵「第二射、用意まで後600秒です」

ドルチェノフ「さっさとせんか! どんどん撃て! がははははははははは!」


 地上 北米大陸

 連邦軍は漫然とギガノスのマスドライバーキャノンを眺めていたわけではない。

 例え直径100メートルの隕石が落下してきたとしても、空中で破砕させて爆発させれば地表に到達する前に燃焼させることもできる。
 マスドライバー砲は二重コンテナがあるからこその威力だ。

ジャック「オーケェーイ! ツマリ、ミーたちの出番ってワケデスネー!」

メリー「ハイパワーライフル、スタンバイ!」

 アメリカの大地に立つテキサスマックが地面に手を突っ込み、送電ケーブルとは若干離れて埋め込まれている黒い鎖を引っ張ると、アメリカ領事館の敷地に隠してある馬鹿でかい棺桶がテキサスマックの手元に飛んでくる。

ジャック「コイツは地上の敵にはToo Muchネ!」

 棺桶から取り出したのはテキサスマックよりも大きいライフルであった。

メリー「装填完了!」

ジャック<狙撃>「HAHAHA! ミーにマカセナサーイ!」

 ズドゴォンッ!! たった一発、座り撃ちしただけで周囲の建物に亀裂が入っていた。

メリー「グレイト!」

 ハットマシンに乗っているメリーが歓声をあげると、上空で炎を纏っている落下物に弾丸とは思えない弾丸が吸い込まれるように当たった。

ジャック「オーケェーイ! ベリグーッ!」

メリー「第二射が来るわよ、兄さん!」

ジャック<幸運>「こんなに楽しいシューティングは久しぶりだぜ! いくぜぇ!!」

 ドゴォンッ! ハイパワーライフルが撃鉄を落とす度に地面が大きく抉れていた。


 宇宙 ホワイトベース 格納庫

ハルヒ「こんな形で再会するとは思わなかったわ、天草シノ准尉」

シノ「それはこちらも同じだが……准尉というのはやめてほしいな」

ハルヒ「そうかしら?」

シノ「あぁ、私たちは深く突き合った仲ではないか」

ハルヒ「それならシノと呼ばせていただくわ」

スズ(さすが蒼き鷹、スルースキルも高い)

ハルヒ「それで、相談なのだけど……」

シノ「わかっている。メタルアーマーのパーツは既に用意してある」

ハルヒ「驚きね、ずいぶんと気前がいいじゃない」

古泉「ドラグーン以外のメタルアーマー関連の部品は全て積み込んであるんです」

アリア「いつ、誰が艦に来てもいいようにね」

 これを聞いてついハルヒは笑ってしまった。
 ホワイトベースのクルーは全て最初から彼女を探して保護するつもりでいたのだ。

キョン「っていうか、お前のファルゲンのパーツだって用意しているんだからな、長門が」

ハルヒ「さすが有希ね」

長門「別に、置いてあったから持ってきただけ」

みくる「も、持ってきたって……メタルアーマーのパーツをですかぁ……」

長門「そう」

ハルヒ「ねぇ、作戦開始まであとどれぐらいかしら?」

アリア「んー……あと二、三十分ってところですね」

ハルヒ「よぉーっし! そんじゃあソッコーでファルゲンを組み立てるわよ! キョン、手伝いなさい!」

キョン「へいへい、まったく、やれやれだぜ。お前も手伝え、古泉」

古泉「んっふ、了解です」

シノ「よし、私も手伝おう」

スズ「私はマスドライバー基地の情報を調べないといけないので、しばらくD-3にこもりますから」

長門「私も手伝う」

 遭遇するたびに電子戦を展開していた二人も、何か言い表せない友情が芽生えていたようだった。

ヒカル「ハッ!」

珠姫「ヤァッ!」

ヒカル「ハァーッ!」

珠姫「――ッ! 胴っ!」

 パシンッ! 面打ちをかいくぐった珠姫の払い手がヒカルの胴を叩いた。

紀梨乃「胴あり! タマちゃん!」

 ピッと小気味よく白旗が上がり、稽古場を歓声が包んだ。

チャム「やったぁ! タマキ、えらいっ!」

立夏「うわーん! オネーチャン負けちゃったー!」

 まさに天と地のサポーター以外は素直に両者の健闘を讃えて拍手を送っている。

つかさ「ねぇ、お姉ちゃん、この人たちホントに私たちと同い年……?」

 ひそひそ話で訊ねるつかさにはおそらく、ほとんどの動作は目に止まっていなかっただろう。

かがみ「ま、二人とも地区選抜になるぐらいの腕らしいからね」

みゆき「現実の使い手が機動兵器でも同じように扱える好例ですね」

かがみ「でも、こなたならあの二人にもついていけるんじゃない?」

こなた「ダーメだねー、畑がちがーうかんねー」

コーデリア「いえいえ、そんなことありませんわ。土壌が違くてもお手入れすればそこはおはなばたもぐふぁ!」

ネロ「コーデリアは戦闘中以外で口を開くとすぐそれだね」

こなた「じーつは狙ーってわーざとネタをふーってみたーりしたのでしたー」

エリー「さ、策士……」

シャロ「おせんべがおいしいですねー」

ゆりえ「そうだねー」

 輪から少し離れた壁際の重力調整装置ですずかが目を輝かせていた。

すずか「すごいですね。これも美夜さんが造ったんですか?」

海晴「んー、どうなんでしょ? ぶっちゃけちゃうと、今のママの発明ってだいぶ吹雪ちゃんの知恵も混ざってるからね」

なのは「吹雪ちゃんって、まだ二年生なんですよね?」

海晴「そうよ。ホント、あのおつむの中で脳細胞がどれだけ灰色なのか気になるわ」

アリサ「まあ、五年生のすずかがハロ造ってるから、アタシは特に驚かないケド」

 そう言ってアリサは足元にいた丸い自律ペットロボを持ち上げた。

ハロ「ハロハロ、フブキ、ハロハロ」


 作戦名・星光<オペレーション・スターライト>


 連邦軍によるギガノス帝国軍への第一次反攻作戦である。
 概要は新型量産機のドラグーンとジムの無重力での実戦テストともいえる宇宙デブリの少ない広域帯による大規模且つ派手な陣取り戦だ。

 しかし、それは表向きに軍内部及び潜んでいるスパイに向けられている作戦内容に過ぎない。
 真の目的は、独立遊撃隊ホワイトベースによるマスドライバー施設への潜行、制圧し、更にギガノス首都へ攻勢を仕掛けることだ。

シノン「ホワイトベース部隊は、この上で更に隠密部隊を形成し、マスドライバーへの直接攻撃を敢行します」

 全員が集結した作戦室で艦長、香月シノンはプロジェクターで映し出したマスドライバー基地の航宙写真に三角形を配置していった。

シノン「本隊は基地正面へ進攻、敵部隊を誘引して基地の警備が薄くなったところへブライサンダーで高町さんを移送して魔導砲撃でマスドライバーを物理破壊します」

立夏「しっつもーん、ブライサンダーって何ー?」

かがみ「ブライスターは私たちJ9のブライガーが車輌形態に変形させたものよ」

みゆき「実際には変異と言ったほうが正しいかもしれませんね。32.4メートルのブライガーが4.89メートルのスーパーカーに変形するのですから」

シャロ「そ、そんなにちっちゃくなっちゃうんですか?」

つかさ「元々はそっちのほうが本来の形態なんだけどね。ホワイトベースにもその状態で収容してるし」

すずか「いったいどんな方法でちっちゃくしてるんですか……?」

こなた「こーれ説明するーのけーっこうたーいへんなんだけどねー」

みゆき「簡単に説明しますと、宇宙の別の場所から質量を融通しあうことで物体を拡大、縮小しているんです」

シノ「うむ、さっぱりわからんな」

スズ「えらそうにしないでください」

アリア「お願い、スズ先生」

スズ「要するに、プラズマ化したパーツをワープさせてブライサンダーにくっつけてるんです」

こなた「わーぉ、はしょりーすぎー」

かがみ「木星圏の高技術の一つというところね」

シノン「尚、高町さんのマスドライバー破壊後の帰還を考え、ブライサンダーにコア・ファイターを積載してもらいます」

アリサ「やっぱり、大事なところはアリサちゃんの出番よね」

なのは「よろしくね、アリサちゃん」

シノン「そして、敵を誘き出す部隊に注意ですが、基地にはドルチェノフ総統が率いる親衛隊がいる可能性が高いとのことです」

海晴「確かに進行中の大部隊にはいないらしいけど、本拠地にいるものじゃないの?」

ハルヒ「単純よ。アイツはそういう性格だから」

古泉「戦争主義の彼は武力によって権力を維持しています。彼にとってマスドライバーは自分の命そのものと言えましょう」

シノン「だからこそ、必死に迎撃してくるでしょう」

ハルヒ「ドルチェノフの相手はあたしがするわ。アイツは一応、メタルアーマーの操縦も一流よ」

キョン「奴はハルヒを目の敵にしているから、ファルゲンを見つければすぐに乗り出してくるだろう」

シノン「私たちはそれを逆に利用させていただきましょう。各部隊の詳細な配置を通達しますので、よく聞いてください。作戦開始は一時間半後です」



マスドライバー基地から出てきた迎撃部隊はメタルアーマー10小隊、40機と戦車数十輌だった。

 対してホワイトベースから出撃したのはゲシュペンストTYPE-SとR-1を先頭にヴァイスリッター、ダンバイン、ボチューン、ライディーンであった。

シノン「敵部隊を引きつけます。各自、指示通りに行動開始、誘き出してください」

ヒカル「了解! いくぞ、立夏!」

立夏「リョウカーイ! チャオ!」

 シュゴォォォォ……! ゲシュペンストとR-1が加速をつけて敵編隊へ飛び込んでいく。

 その後方でヴァイスリッターが砲身を掲げ、ライディーンが矢を番えていた。

海晴「二人の道を教えるのよ、ゆりえちゃん」

ゆりえ『はいっ! ゴォォォォォッド・ゴォォォォォォガンンン!』

 ビューン!
 ライディーンの巨大な矢と後を追うようにオクスタンランチャーのビーム砲が編隊から僅かに突出した部位を狙い撃った。

ヒカル「そこだ!」

立夏「チャオ!」

 シュボォッ! ズギュン! スプリットミサイルとR-1・Gリボルバーが爆発した一隊に追撃し、生じた綻びに両機は突っ込んでいく。

ギガノス兵「パーソナルトルーパー! くそっ!」

ヒカル「恨みはないが……」

 ハンドレールガンを構えたダインだが、既に間合いは近づきすぎていた。

ヒカル「道をあけてもらう!」

 ジャインッ! ゲシュペンストが手に握り換えた円筒から放出されたプラズマが刃状に形作り、ダインに迫っていく。

ギガノス兵「う、うぉぉぉぉ!」

ヒカル「そこだっ!」

 ズバァッ! 両足を切断されたダインは月面に落下していき、ヒカルは編隊を超えた所で180度転回し、同じように突破してきた立夏と合流し、大きく上へ飛んだ。

ギガノス兵「逃がすな! 追え!」

 すかさず、何機かのゲバイとダインが二人を追いかけて加速する。
 ヒカルと立夏の任務は彼らを本隊から引き剥がしつつ、ホワイトベースまで誘導する事である。
 残ったメタルアーマーと戦車隊は海晴たちが引きつけていく。

チャム「やっちゃえ、タマキ! オーラ斬りだぁ!」

珠姫「ヤァーッ!」

 下方から潜り込むように繰り出した突きにダインの頭部が破砕され、ダンバインは素早く離脱する。

ギガノス兵「あの虫野朗を捕まえろ!」

 大きさでは半分以下のオーラバトラーはレーダーに捉えても照準に合わせづらい。
 しかし、速度ではメタルアーマーのほうが速い。大勢で取り囲めば何とでもなる。

ギガノス兵「取ったぞ!」

珠姫「部長!」

紀梨乃「あいよっ!」

 ガガガガッ! レーザーソードを振りかざしてダンバインの上に出たゲバイのスラスターが衝撃を受けて破壊された。

ギガノス兵「なっ……! うおぉっ!」

珠姫「はあぁっ!」

 ズバンッ! 落下を始めたゲバイと水平になった瞬間に珠姫は剣を横に走らせて腕を斬り落とした!

ゆりえ『ゴォォォッド・ミサイィィィル!!』

 チュドォンッ! ドドォンッ!
 月面を走る戦車隊にライディーンの腹部から飛ぶミサイルが追突して、吹き飛ばしていく。

海晴「みんな、いい調子よ。それじゃ、2ライン下がって」

 前線部隊長の海晴の指示で各機が後退していく。
 基本的に突出している小隊を海晴が発見して狙撃し、その混乱に紛れていくため、機体の損傷は驚くほど少なかった。

珠姫「感じる……宇宙の、オーラ力……!」

 兵士が発する敵意のオーラを感じ取る珠姫は右後方から発射された戦車の砲弾を刃の腹で受け流し、左上方にいたゲバイにぶつけることに成功する。

ギガノス兵「ば、馬鹿なぁぁぁぁ!」

 ドォォォォン……! 爆炎に紛れてダンバインはホワイトベースへ帰還していく。

秋里ミユリ「敵メタルアーマー部隊、予定ラインに到達したよ、シノン!」

 ジャブロー出発の際に観測員として再会した士官学校での親友の報告に艦長シノンは頷いた。

シノン「作戦を第二段階に移項。メタルアーマー各機、発進してください」

ハルヒ・シノ『了解!』

 ホワイトベースの二つあるカタパルトからそれぞれDチーム、プラクティーズが左右に分かれて発進する。

キョン「ハルヒ、ファルゲンの調子はどうだ?」

ハルヒ「良好よ、もっと速くてもよかったわね」

 ギガノス軍から奪取してきたファルゲンはホワイトベースに運び込まれたMAパーツをファルゲンの特色である速度を殺さずに取り付け、カスタム化されていた。
 カラーリングも蒼き鷹の異名を敵軍に呼び起こさせるために濃紺に塗り替え、頭部も以前のファルゲンの頭部に替えた。

 それでもこの機体がファルゲンとは違うのは、両肩に設置した二門のレールキャノンと背部に装備した電子戦用レドームだ。
 これらの装備は地上戦闘で使用するマッフユニットから重力感知制御システムを取り除いた箇所に取り付けたものだ。

 左舷から大きく戦域を旋回して、ファルゲンカスタムは敵部隊の側面に突撃していく。

ギガノス兵「隊長! て、敵が右から!」

ギガノス兵「慌てるな! 我らの数の前では大した差にはならん!」

ギガノス兵「こ、コイツは……うわぁぁぁ!」

ギガノス兵「どうした!? なっ!」

 途絶えた交信に、新しい反応のほうへ機体の向きを変えた伍長は、接近してくる機影に戦慄した。

ギガノス兵「あ、蒼き鷹……!」

ハルヒ「進歩のない軍隊ね、密集しすぎだって注意したでしょう!」

 ズギャァァァァッ!! 緩慢な動きの一振りが狩りをする猛禽類の速度に乗って三機のメタルアーマーを同時に屠った。

 即座にレールキャノンが火を噴き、月面の戦車を殲滅していく。

ハルヒ「派手にやってやるわ――出てきなさい、ドルチェノフ!」


 コドクナヨフケハ ホシノテラス リョウテヲヒロゲ
 ヤワラカイー Starlight カラダジュウニアビルー
 アイシアッテー キーズツーケルー
 ギンガケーイノー タービビートターチハー
 オロカーダケドー マヨイナガラ...
 カナシミヲー Fly Away
 サメタユメノツーヅキヲーサガスー



 右舷から出たドラグナー1型カスタムでシノは遠くの煙に舌を巻いた。

シノ「凄い勢いだな……重量は同じはずなのに」

 こちらはようやく敵機をハンドレールガンの射程に捉えたところだ。

アリア「私たちは私たちのペースでやりましょう、シノちゃん」

シノ「あぁ、スズ!」

スズ「もうハッキング完了してます!」

シノ「よし! 一斉射撃だ!」

 ギュゥゥゥゥゥ……ババババババババババッ! 陣形を整えて三機並んでハンドレールガンを発砲する。

シノ「来い……! ドラグナーはここにいるぞ!!」


 エイエンノー Cosmic Love
 キリノナカノミーライヲーシンジー
 ギンイロノー Cosmic Love
 ムネニヒカルトーキマデーテラシテー...
 Starlight...



 マスドライバー基地

ドルチェノフ「ぬぅぅ! 迎撃部隊は何をしておるか!」

 罠に嵌められたと気付いたドルチェノフは椅子の上で憤慨していた。

ドルチェノフ「馬鹿者どもが! 敵はたかだか十数機ではないか! 嵩にかかって踏み潰せぃ!」

朝倉「ダメだよ。そんなにカッカしちゃあ」

ドルチェノフ「あ、朝倉涼子!?」

 いるはずのない人間に遭った。ドルチェノフの表情はまさにそれであった。

ドルチェノフ「き、キサマはハイデルネッケンの隊で連邦軍と戦っているはずだろうが!」

朝倉「こっちのほうが面白そうだから来ちゃった。ねぇ、彼女が来てるんだよ」

ドルチェノフ「なにぃ?」

朝倉「そろそろ、確認できると思うよ」

ギガノス兵「そ、総統閣下!」

 怪訝そうに眉をひそめていたドルチェノフに通信兵が声をひきつらせていた。

ドルチェノフ「何事か!?」

ギガノス兵「て、敵部隊の増援ですが……し、識別が、蒼き鷹です!」

ドルチェノフ「な、何だと! キサマ、知っていたのか!?」

朝倉「そんなことはどうでもいいじゃない。どうするの?」

ドルチェノフ「ふん、小うるさい雀がピーピー鳴いたところで……よかろう、ワシが叩き潰してくれるわ!」

 椅子を下りたドルチェノフは居丈高にドスドスと踏み鳴らして司令室を出て行く。
 それを見届けて朝倉涼子は、通信兵に伝える。

朝倉「迎撃部隊を全て後退させて、補給の後、パターンをDに変更させてね」

ギガノス兵「はっ? しかしそれでは総統閣下が……」

朝倉「お願いね」

 軍部の女神とも言われる朝倉涼子の物腰は柔らかいものだったが、見下ろされている彼は何故か底知れぬ恐怖を腹に感じていた。



ネロ「ダンガイッビィィィム!」

 ズギィィィィィッ! ホワイトベースから飛び出したダンガイオーの額から虹色の光線が発射され、戦車部隊を一掃した。

すずか「たぁっ!」

 ビューンッ! ガンダムが投げたビームジャベリンがドバイの肩を貫く。

有希「――来る」

キョン「長門!?」

スズ「会長、親衛隊が来ます!」

シノ「わかった! アリア、ホワイトベースに!」

アリア「うん!」

 ドンッ! 合図を受けたアリアのドラグナー2型カスタムが頭上へ信号弾を撃った。

氷坂アレイ「D-2より信号だ。親衛隊が出てくる」

 卒業後の実地訓練で同期になった主任通信士の彼女はシノンよりも凛々しい立ち姿で明瞭に報告する。

シノン「ここからが正念場よ。ホワイトベースを前進! 味方機を援護するわ!」

 ギガノス軍の親衛隊はマイヨ・プラートを隊長とする若手エリート部隊だったが、ドルチェノフが総統になると、彼の子飼いの部隊と総入れ替えされた。
 その数は三十二機。全員が専用にチューンされたゲバイに乗り、先頭二機のギルガザムネに率いられている。

ドルチェノフ「ワシはプラートをやる! 朝倉涼子、キサマはD兵器どもをやれぃ!」

朝倉「フフ、了解しました」

 ギルガザムネが二手に分かれ、親衛隊は三隊に列を変えて八機ずつがギルガザムネにつき、残りの十六機は正面へ進行していった。

海晴「大物が来るわよ、ゆりえちゃん、気をつけてね」

ゆりえ「は、はい!」

 近づいてきたホワイトベースに戦列を合わせるように後ろに跳躍する。
 着地と同じタイミングでマスドライバー基地から母艦へ半円を描くように敵を引きつけていたゲシュペンストとR-1も帰還してきた。

ヒカル「作戦は順調のようだな……私たちも反撃に出るぞ!」

立夏「チャオッ!」

 ヒカルがゲシュペンストを転回させ、立夏は脚部スラスターを器用に使ってR-1を宙返りさせてGリボルバーを撃った。

ギガノス兵「がぁっ! 柔軟性が違いすぎる!」

 頭部と腹部に銃弾を受けたゲルフの隣りでダインの二機がゲシュペンストの照準に入っていた。

ヒカル<必中>「メガブラスタァァァキャノン!」

ギガノス兵「うぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ズドォォォォッ! あっという間に指揮官を失った小隊員はホワイトベースの機銃に撃ち落されていく。

 迎撃部隊は撤退を始め、親衛隊が前線を換わっていった。

ドルチェノフ「ハルヒ・スズミヤ・プラート! こしゃくにもマスドライバーを破壊しに来たか!!」

ハルヒ「アンタを始末して、閣下の遺志を成し遂げてみせるわ!」

ドルチェノフ「馬鹿を言いおる! 今はワシが総統閣下であるぞ!」

ハルヒ「自分で閣下とか言うんじゃないわよ、無能者!」

ドルチェノフ「こざかしい青二才めが……この世の名残にワシが相手をしてやるわ!」

 ブルーグレーのカラーリングのギルガザムネが西洋風のブロードソードを抜き、両手に構えてファルゲンカスタムの頭上から落下してくる。

ハルヒ「そんな動きで鷹を捉えるつもり!?」

 クンッと僅かな挙動でファルゲンは水平に移動し、腰だめにレーザーソードを構えた。

ドルチェノフ「馬鹿めが!」

 ぶぉんっ! 月の重力を拉ぐかのようにギルガザムネの手首が曲がり、ブロードソードも真横に滑る!

ハルヒ「――ッ!」

 ガチィンッ! レーザーソードを抜き放つのが遅れていたらファルゲンの腰はなくなっていただろう。

 瞬時に後方へダッシュしてギルガザムネの重量を避ける。

ドルチェノフ「グフフフ……鷹などとおだてられてもしょせんは知恵のついた鳥よ。叩いて丸焼きにしてやるわ!」

キョン「させるかっ、ドルチェノフ!」

 D-1のようにレーザーソードを両手に持ったゲルフがギルガザムネの後ろから斬りかかる――が、ぐるりと振り返った巨腕に弾き飛ばされてしまった。

キョン「何だ!? 今の動きは!」

ドルチェノフ「グフフフ……ギルガザムネにはバイオフィードバックシステムが搭載されておるのだ! キサマらの旧式と一緒にするでないわ!」

 ぐぉぉん! ブロードソードの一撃でレーザーソードが手元から離れていった。

キョン「くっ……!」

ハルヒ「どきなさい! キョン!」

 バシュゥゥゥーッ! ゲルフの突入で距離を取ったファルゲンカスタムが八連装に拡張したディスチャージャーからミサイルを射出する!

ドルチェノフ「その程度でギルガザムネが落ちると思ったか!!」

 シュゴォォッ――ババババババババババババッ!!
 腰元のデュアルミサイルポッドと胸部装甲を開放して見せた十六門機関砲が弾幕を張り、前方を煙幕で包んだ。

ハルヒ「かかったわね……」

ドルチェノフ「むっ! 何だこの表示は!?」

 白煙の中でシステムの一部がダウンし、計器類がでたらめになっているのを見てドルチェノフは狼狽した。

 ハルヒは発煙弾を盾にしてECMチャフグレネードを放ち、更にギルガザムネの機器にハッキングを仕掛けたのだ。
 実際にハッキングを行っているのは後方でレビ・ゲルフに乗っている長門だが、ファルゲンカスタム背部のレドームを介することでより遠くから効果的にハッキングすることができる。

ハルヒ「バイオセンサーだか何だか知らないけど、止めちゃえばこっちのもんよ!」

 ドォンッ! ドドォンッ! 動きの鈍くなったギルガザムネに二門のレールキャノンをハルヒはありったけぶつけた。

ドルチェノフ「ぐおぉっ! も、者ども! ワシを助けんかぁ!」

 親衛隊を呼び出そうとするドルチェノフだが、それらは古泉とキョン、更に後方にいる海晴と長門に堰き止められている。

ギガノス兵「こ、こいつら……うぉぉぉ!」

 ドガァンッ! ヤクト・ゲルフのレールキャノンを喰らったゲバイが爆発して、ギルガザムネを煽る。

ドルチェノフ「役立たずどもが……ワシは総統なるぞ!」

 バイオフィードバックシステムを物理的に遮断してドルチェノフは包囲網から脱出し、右肩の100連装ミサイルポッドを展開した。

ドルチェノフ「ねずみどもが……まとめて吹き飛べい!」

ハルヒ「散開!」

 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァン!! 辺り一面が爆炎に呑み込まれ、今度はハルヒたちがドルチェノフを見失う。

ドルチェノフ<熱血>「ここがキサマの死に場所だ、プラートォォォォォ!」

ハルヒ<直感>「やはり来たわね!」

 ギャリィィィィィィィッ! レーザーソードとブロードソードが激しくせめぎ合う。

ドルチェノフ「ぬぅぅぅぅ!」

ハルヒ「タアァーッ!」

 ズジャァァッ! 独楽のように回旋したファルゲンカスタムのレーザーソードがギルガザムネの左腕を焼き切った!

ドルチェノフ「くっ、くぉぉぉぉぉぉぉ!」

 ドンッ!! バーニアを全開にしてギルガザムネは離脱を図った。

ドルチェノフ「プラートめ……! まあいい! マスドライバーとあれが残っておれば……!」

 親衛隊も見捨てて彼はマスドライバー基地へ飛んでいく。
 それを眺めていた朝倉涼子は本当につまらなそうに唇を尖らせた。

朝倉「いやになっちゃう」

スズ「余所見をしてる余裕がっ!」

 ズドォーッ! そっぽを向いた金色のギルガザムネにすかさずD-3が光子力バスーカを放った。

 しかし、それは盾代わりにした青龍刀を溶かすだけで終わった。

朝倉「いけない、いけない」

シノ「アリア!」

アリア「うん、シノちゃん!」

 ハンドレールガンに換装する間にD-2カスタムが重ミサイルがギルガザムネを狙い、その反対方向からD-1カスタムが重力落下を利用して襲い掛かる。

朝倉「これは……!」

 逃げ場所がないことに気付いて朝倉はイメージフィードバックシステムを起動した。

シノ「なっ――!?」

 直後、蜃気楼のようにギルガザムネが二つに映っていた。
 そうではない。
 重ミサイルを極限まで引き寄せた上で素早く横移動、ミサイルの後ろに鋭角の軌道で滑ったのだ。

朝倉「――へぇ」

 雑誌の表紙にもなれるくらい上機嫌な笑みを浮かべて、朝倉は重ミサイルを避けるD-1から逃げた。

朝倉「また今度ね」

シノ「くっ……! まずい、まだ作戦時間に――!」

 ギュォォッ――! ドルチェノフを追う朝倉の目的を視認したシノはすぐにドラグナーを動かす。

朝倉「ま、目的はわかってるんだけどね」

 ガシュン――デュアルミサイルポッドを落としてギルガザムネとドラグナーの距離を稼ぐ。

朝倉「マスドライバーにはもう少し頑張ってほしいの」

 だが、その輪郭を捉えた瞬間、一条の白い光が宇宙へ伸びていった。

朝倉「……あら?」


 マスドライバー基地

なのは「ふぅ……」

レイジングハート「Mission Compleat. Have a Nice Operation.」

なのは「ありがとう、レイジングハート」

 愛機からの慰労の言葉に微笑みを返して、なのははフラッシュムーブで弧を描いた。

ギガノス兵「おのれ、魔女め!」

 バババババババ! 機銃座から白い明滅に乱射するが、虚空を穿つだけだ。

アリサ「なのは! さっさと戻ってきなさい!」

なのは「うん!」

かがみ「さぁて、退路を開くわよ!」

こなた・つかさ・みゆき「「「イェーイッ!」」」

 ブライサンダーが眩いエメラルド色の光りに包まれ、その輪郭を大きくしていった。

かがみ「ブライ・シンクロン・アルファ! ブライスター!」

 宇宙を走るスーパーカーが宇宙船に変異し、更に形を歪ませていく。

つかさ「ブライ・シンクロン・マキシム! ブライガー!」

 ギルガザムネにも匹敵する意匠の赤い鎧武者が登場し、ギガノス軍は明らかに浮き足立った。

こなた「イッエーイッ!」

みゆき「ブライソードを出します!」

 シュバッ! 背中から両刃の剣が飛び出し、ブライガーの手が握る。

こなた「ブライソード・ビーム! イェイ!」

 ズガガガガガガガガガガッ!
 発射口から煙を吐いているマスドライバーのレールの上をビームが走り、更に防御柵を撃ち砕いて月面を削っていく!

かがみ「二人とも、逃げるわよ!」

なのは・アリサ「「はいっ!」」

 コア・ファイターの上になのはを乗せてアリサは一気に発進した。
 
アリサ<突撃>「うりゃうりゃうりゃーっ! アリサちゃんの道を開けなさーい!!」

 バルカン、ミサイルを撃ちまくる。
 なのはが失敗したときのための保険である大型爆雷も落っことす。

ギガノス兵「総員、退避ーっ!」

 ドドォンッ! この一撃でマスドライバーは完全に破壊されてしまった。

ドルチェノフ「そんな……馬鹿な……マスドライバーが……」

 岩盤のような顔を青褪めさせて、ドルチェノフは黒煙を噴く最重要拠点を眺めていた。

 追いついてきた朝倉涼子は基地を離れていく二機を追尾して大型ミサイルを撃つが、当たり前のように落とされる。

朝倉「フフ、次が最後になるわね」

 本当に、楽しくて仕方がないという風に彼女は笑った。


 ホワイトベース

 格納庫で、整備の終わったメタルアーマーを前に、シノはばつ悪げに問い質した。

シノ「やはり、行ってしまうのか?」

ハルヒ「当然よ。協力には感謝するけれど、私はギガノスに戻ってドルチェノフを失脚させるために働きかけるわ」

キョン「ま、一応は俺たちの国だからな。連邦に破壊される前に全面降伏させられれば、また別の形で理想を再生できる」

アリア「地球の環境保全を理念といた紳士的な革命――今度こそ遂行できるといいね」

長門「ギガノスは連邦政府に隷属させられるだろうから、あえて自ら解体する方法を採る」

みくる「仕方ないですね……このままじゃ反政府国家扱いですから……」

スズ「だいたい、最初からやり方が無粋なんですよ。いきなり地球に隕石を落とすなんて、規模が違ってもコロニー落としと変わりません」

古泉「痛いところを突かれてしまいますね。まあ、今回のドルチェノフの攻撃は防がれたみたいですし、マスドライバーは破壊されたのですから、穏便にお願いしますよ」

アリサ「アメリカのテキサスマック……アレに地球が救われたってのもなんかシャクだわ」

なのは「あはは……」

すずか「はあ……」

アリサ「? どうしたのよ、すずか?」

すずか「えっ?」

なのは「どこか具合でも悪いの?」

すずか「う、うぅん……何でもないの……あ、そういえば立夏ちゃんが水道壊れたって言ってたから直すの手伝いにいかなくちゃ……」

 慌てて取り繕ってすずかは足早に走っていってしまった。

なのは「すずかちゃん……」

アリサ「うーん……ありゃなんか悩んでるわね。アタシが言えたクチじゃないけどさ」

ハロ「ハロハロ、ゲンキダセ、アリサ」

アリサ「アンタはノーテンキ、ねっ!」

 げしっ! アリサに蹴られたハロが飛んでいって壁に反射して、ガンダムの整備をしているアムロの頭に直撃した。


 ホワイトベース ブリッジ

シノン「これで、マスドライバー破壊作戦の全容の報告を終了します」

レビル『よくやってくれた。香月君』

シノン「ありがとうございます」

レビル『新任の者も多い中、よく艦をまとめてくれている』

シノン「いえ、以前からのクルーに比べればずいぶん協力的です」

レビル『ははは……そこに、氷坂アレイ君はいるかな?』

シノン「いいえ……今は休憩中です。お呼びしますか?」

レビル『いや、彼女はどんな調子か聞きたくてな』

シノン「そうですね、ややとっつきにくいところはありますが、うまくやれていると思います」

レビル『そうか……それならいい』

シノン「あの、失礼ですが、彼女とはお知り合いなのですか?」

レビル『うむ……彼女の父親はルウム戦役時に共に艦長であった』

シノン「まさか……」

レビル『ジオンは、彼女にとって直接の仇のはずだが、ジオンに向かう本隊ではなく、ギガノスへの派遣……あの通りの性格だから、うまくとりなしてほしいと思う』

シノン「わかりました。幸い、全くの初対面という事でもありませんし、彼女は優秀なオペレーターです」

レビル『その言葉、ありがたいと思う』

シノン「はいっ」

レビル『すまない、少し話が過ぎてしまった。作戦名・星光<オペレーション・スターライト>の次の指令だが……』

シノン「はい、補給が済み次第、ギガノス首都へ向かいます」

レビル『その前に、地球を出たスーパーロボット部隊と合流してほしい』

シノン「わかりました。地球はよろしいのですか?」

レビル『陸上の機動兵器もあらかた整った。まずは宇宙軍の総力を挙げてギガノスを叩く。そのためにやはりスーパーロボットは君に一任したい』

シノン「光栄です」

レビル『ポイントは後で暗号電文で送る。そちらを見てくれ。それにしても、香月艦長の声は聞いていて気持ちがいいな』

シノン「はっ……恐縮です」

レビル『その声を銀河中に流して作戦を展開すれば、士気も高まるだろう。今回の作戦も見事なものだった。案外、最高の艦長になるかもしれない』

シノン「そう……ですか……?」

レビル『ただし……』

シノン「は、はい……」

レビル『秘書としては最低だ。私が君の上司なら、そう思うだろう』



 広い玉座で風を切る鞭の音。
 即座にか細い悲鳴が響く。

「ひぃっ! あぁっ!」

 宇宙に浮かぶ時の庭園で、その二つの音だけが聞こえる。

「うあっ! うっ! あぁっ! あぁぁーっ!」

「ひどいわ……フェイト……」

 襟から胸にかけて大きな痣を植え付けた女魔導師――プレシア・テスタロッサは紫色のルージュの唇をわななかせた。

「こんなに時間がかかってジュエルシードがたったの四つ……これではあまりにひどすぎるわ……」

「……ごめんなさい……母さん……」

 力なく呟く少女の顎を持ち上げて、プレシアは一つ一つ釘で打つように言う。

「貴女は大魔導師プレシアの娘……この程度の遺失物は集められなければならないわ……お願いだから……母さんを失望させないでちょうだい……」

「はい……母さん……」

「貴女はやさしい子だから……もしかしたらためらってしまうことがあるかもしれない……でも、それに対抗する力を貴女は持っている……邪魔をするものは、実力で排除しなさい……」

「うん……わかったよ……母さん」

 無理やりに見せる少女の笑顔をプレシア・テスタロッサは直視せず、背中を向けて拘束を解いた。

「お願いね……フェイト……ジュエルシードは……母さんの夢を叶えるために大切なものなの……」

「はい……母さん……」

 それきり、プレシアはフェイトに振り返ることなく、奥へ消えていってしまった。

「フェイトぉ!」

 入れ替わるように扉を開いて飛び込んできたのは、アルフだった。

 フェイトの使い魔である彼女は精神内でリンクしている。フェイトの辛さはアルフの哀しみである。

「なんだよ……アイツは……! フェイトはこんなにもがんばっているのに……!」

「だめだよ、アルフ……母さんを悪く言っちゃ……」

 抱きかかえた薄い肩が鳴動して、アルフの目から零れる涙を拭う。
 アルフはやさしい子だ――私の代わり、私の分まで泣こうとしてくれる。
 でも、甘えちゃいけない……私は……

「私は母さんの娘だから……私にはわかる……母さんは、少し不器用なだけだよ……」

 弱々しい瞳の焦点は落とされたケーキのパックにあった。

 玉座の裏を造り直した研究室に辿りついたプレシアはよろめいて咳き込んだ。

「早く……私を待たせないで……フェイト……」

「なるほど、雷刃の襲撃者はここでは随分と役割が違うみたいだね」

 闇の中から声が聞こえた。中性的なアルト。

 少年と青年の境目の声はくずおれるプレシアに手を貸すこともせずに続けた。

「僕が知っている以上に力不足のようだ。逆に言えば、それほど伸びしろがあるということかな」

「あなたをここに招いた覚えはないわ……」

 口にハンカチをあてたままプレシアは毒づいた。

 一歩でも動けば彼女の殺気はそのまま攻撃力に変わるだろう。

「僕の目的はあなたと同じだ。だけどあれは僕一人で扱えるものじゃない。僕はあなたのおこぼれを貰う代わりに、あの子を手伝ってあげるよ」

「余計な事はしないでちょうだい……」

「しかし、あの子に立ちはだかる子には、余計な力が集まっているようだよ。そっちを僕が相手してあげようというんだよ」

「フフフ……結局はすべて自分のものにするつもりでしょう……暗雲の大罪人が……」

 ルージュごと拭ったハンカチを手の中で燃やして、プレシアは嘲った。

「あなたのしようとする事に比べれば、僕は公園から家に帰るくらい当然の事をするだけですよ」

 闇の中で真紅の瞳が大仰に肩をすくめてみせた。


 第二十一話 僥倖! 復活の蒼き鷹! 完!



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