仮面ライダーW & 仮面ライダーOOO & 魔法少女まどか☆マギカ Fの契約/少女と魔法と仮面ライダー 第六話

2011年09月15日 19:05

まどか「仮面ライダー?」翔太郎「魔法少女?」映司「魔女?」

ちなみに、今アンクが持ってるメダルは以下の通り


タカ・クジャク、コンドル

ゴリラ

バッタ

シャチ、ウナギ、タコ


あ、トラさんもちゃんと持ってるからご安心を


現在、プトティラは所持してません

というか、プトティラ出したら映司が大変な事になっちゃう!


911 :◆WDUU7xtdEo [saga]:2011/05/02(月) 14:13:08.02 ID:/vNFSYXFo

彼にとって、それは大した意味を持たない。

彼にとって、その光景は、さほどの障害とはならない。


だが、しかし――。



「くそっ! 何度やってもまた新しいのが!!」

『ただ再生してるワケじゃねえのか!! フィリップ、何か思いつかねえか!?』
「ああ、もう少し待ってほしい。もう少しで思いつきそうだ」
『だったら早くしてくれよな!!』


(オーズ、そしてダブルか……)


やはり、予想外ではあった。



オーズ――800年前の王が生み出した、人間の欲望という力。

ダブル――人間が己の手で、地球から引きずり出した記憶という力。



地球外生命体である彼――インキュベーターにとって、その力は予想外。
文明を与えた側として、人間がこのような力を手に入れる事は終ぞ思いつかなかった。
言うなれば、プログラムの中に現れたバグ。


――しかし、所詮バグはバグでしかない。


(まあ、エネルギーの回収において、彼等が障害になる事はないね)


合理的に計算を行い、判断する。

この地球上に存在する人間の総数からすれば、これらの個体が及ぼす影響はゼロに等しい。

たとえ影響があったとしても、それは、この時代のたった一点のみ。
この後の歴史には影響を及ばさない。


そして、それは暁美ほむらにも言えること。


想像を絶するエネルギーを秘めた鹿目まどかを魔法少女にさせまいと行動する理由は未だ分からないままだが、彼女が及ぼす影響は彼にとっては大した意味を持たない。


鹿目まどかを魔法少女に誘導するルートは幾つもある。

どれだけ彼女が策を労しても、無意味。

最終的に、鹿目まどかは魔法少女になる。


億に等しい時間を生きたインキュベーターにとって、全てが予測範囲内。

だからこそ、彼は判断を下す。


(彼等を排除する理由は、ないね)


しかし、その判断が果たして正しかったのか。


――それを彼自身が知るのは、もう少し後の事になる。



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***


「まどか、聞いてるのか?」

「――――ぇ?」


その言葉に、まどかは現実に引き戻された。

目の前には、お母さんの顔。

「さっきからボーっとして、風邪でも引いたんじゃないんだろうな?」
「あ、え、っと……」


――答えることなんて出来ない。


「……大丈夫だよ」
「本当にか?」

「……うん」

心配そうな表情に胸が痛むが、そう言うしかなかった。


家族の心配する表情を背に受けながら、まどかは自分の部屋へと戻った。
そして、そのままベッドに倒れこむ。

「…………はぁ」

柔らかい感触がまどかの体重を全て受け止め、包み込む。

ひどく心が落ち着いた。


「マミさん……」


呟く、彼女の名前を。

あと一歩のところで命を落とすところだった彼女の名を。


「っ……」


そして、まどかは罪悪感に苛まれる。


側にいたいと思った。

勇気付けたいと思った。

頼りない自分にもそれだけなら、と思った。


――だが、そうした結果どうなった?


「私のせいだ……」


泣き叫ぶマミの姿を思い出して、また胸の奥がズキンと痛んだ。

自分が余計な事を言ったから、マミは死に掛けたのだ。

自分が彼女を死の淵に追いやったのだ。


――まどかは、そう思った。


「やっぱり私には何の価値もない……私は……」


枕を握り締めて、まどかは自分の無力さを怨んだ。

あの時、映司や亜樹子達がいなければ、彼女は確実に死んでいた。
無力で何の価値もない自分は、結局何もできなかったのだ。

自己嫌悪に、まどかは枕を握り締めた。


「私に力があれば……マミさんも、誰も――」


「――良いね、その欲望」


銀髪の青年が、まどかを見ていた。


――愉快げに、おかしげに、見下して。


「だ……誰!?」

「なるほどね。誰かを守りたい、っていうのも欲望の一つだ」


まどかの言葉は届いていなかった。


だが、まどかは彼から立ち上る危険性を一瞬で認識した。
魔女を見た時と同じ……いや、それ以上の何かを感じ取ったのだ。


「ち、近づかないで!」

「ふふっ……良いね。じゃあ、その欲望――解放しなよ」


そして、まどかの額にメダルの投入口が現れる。


「ひっ!?」

「さあ、君はどんなヤミーを生み出して――」


カザリはセルメダルを取り出し、まどかへと投げつけ――。


「あ――――」


――メダルが、まどかへ吸い込まれた。


***


『おはよう、マミ』


パパが笑ってる。


『朝ごはんよ、マミ』


ママが笑ってる。


――ああ、うれしいなぁ。


抱きしめる、二人を。


――ああ、あったかい。


大好きで、大好きで、大好きな、パパとママ。
二人を強く、強く抱きしめる。


ずっとずっと、一緒だった、あの家。

くまのぬいぐるみと、紅茶の匂いに囲まれて。

朝日が差し込んで、綺麗で、良い匂いで。


「パパ……ママ……」

二人の体の温もりが、じんわりと伝わる。
自然と涙まで零れてくる。


『どうしたんだい、マミ?』

「うん……怖い夢を見たの。パパとママがね、死んじゃう夢なの」

『そう、そうなの……』


優しく、パパとママが頭を撫でてくれる。

それだけで、もう、何も――。


『でも、仕方ないわ、マミ』

「――――ぇ?」



――ぐしゃり。



「ひっ……!?」


一変する世界。

鳴り響くサイレン、燃え盛る車と車と車。

潰れた、助手席と運転席。
潰れた、ママとパパ。

足元は血でいっぱいで、真っ赤で、真っ赤で。


『私達、死んじゃってるもの……』
「あ、あ、ああ……!!」

『ほら、マミ……』

潰れたママとパパが手を伸ばして、腕を掴もうとする。

『おいで、マミ……』
『ママとパパが一緒よ……』

「や、やだ……やだやだやだやだああああああああぁぁ!!」


後ろに必死でずり下がるけど、下がる隙間なんて何処にもない。

固い感触が背中に伝わって、此処が狭い車の中だと思い出して。


『マミ……』
『マミ……』


大好きなはずのパパとママの手が、とてもこわい。


こわい、こわい、こわい、こわい。

こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい。


「だ、だれか……」


だから、呼んだ。


「誰かたすけてぇぇぇっっっっ!!!!」


助けを。


届くはずもないのに。


あの時、キュゥべえと契約を結んだ時と同じように。


大声で。


「誰か……」


体を抱きしめて、震える子犬のように。


『マミ……』
『これからは、ずっと……』


パパとママの手が自分に触れるのが分かって。

そして――。



「―――マミちゃん!!!!」



――光が、マミを照らした。


****


「―――ぁ」


まず目に入ったのは見知った天井だった。

自分の家、いつも起きる、自分の部屋。

次に気づいたのは、全身がぐっしょりと汗で濡れていた事。

そして、

「ん……ぐぅ」

自分の手を握って、亜樹子が眠っていた事。


「――ようやく起きたのね、巴マミ」


感情を押し殺した声が、自室の入り口から届いた。

明かりの消えた室内だが、そのシルエットだけで、それが誰だか分かる。

「暁美さん……」

暁美ほむら、彼女がマミを見ていた。

表情は見えないが、きっと怒っているに違いない。マミは思った。

だが、

「助かって……良かったわ」

「……え?」

意外な言葉に、マミはそんな声を上げるしか出来なかった。

「……なに?」
「あ、その」

今も表情は分からない。だけど、その声の色は間違いなく昨日までと明らかに違う。

だから、なのだろうか。

「……ごめんなさい」
「…………」

自然と、謝罪の言葉が出たのは。


「…………」
「…………」


お互いに言葉が見つからず、沈黙が流れる。

何秒か何分か、どれだけの時間が経ったか分からなかったが、最初に行動したのはほむらの方だった。

「……帰るわ」
「あ……」

マミに背を向け、歩き始める。
しかし、マミはつい声をかけてしまった。

「ね……ねえ、暁美さん」
「なに?」

拒絶はなかった。

「もしかして……亜樹子さん達と、ずっと一緒にいてくれたの?」
「…………」


否定も、肯定もなかった。


「助かった命、大事になさい」


ただそれだけを告げて、ほむらは去った。


***


「くっ!!」

空から、幾万もの針が降り注ぐ。それをカザリは自慢のフットワークで避けるが、その声には余裕はない。

『マ……モー……ル』

野太い、地響きのような声が、ビルの谷間に鳴り響く。

「なんなんだ……あれは!!」

明らかに、カザリは動揺していた。


再び、針が降り注ぐ。


「ッッ―――!!」


今度は頭上だけでなく、水平方向にも。

追尾機能があるとでもいうのか、その針はカザリを執拗に狙う。

「くそっ……! ボクの作ったヤミーなのに……!!」

そして、その針が一本だけではあったが、カザリの肩に突き刺さった。


「ぐぅ―――ッッ!!??」


瞬間、カザリの全身に激痛が走った。


「か――はッ!? あッ……っくぅ!!」


その激痛に、堪らずカザリは膝を付いた。

眩暈で視界がぼやけ、痺れで脚は震え、動きようがなかった。


そして、そのカザリの目の前にヤミーは現れる。


頭はゾウ、両腕を貝で覆い、その脚はチーター。

それは、カザリがまどかの欲望から作り出したヤミー。

だが、そのヤミーは、これまで彼の作ったどのヤミーとも違った。


完全な均衡の取れた、偏りのない、調和の取れたシルエット。

そして、カザリの命令を受け付けない強大なエナジー。


――最早それはヤミーではなく、グリードと呼ぶべきほど。


「なん……なんだ。こんなの……ありえない!!
 ヤミーが、こんな力を持つなんて、聞いた事がない!!」

『それは仕方ないよ、グリード・カザリ』

「…………ッ!?」

気に障る、その穏やかな声。

その声の主は、カザリのいるビルの谷間の脇、ビルのプレートの側に静かに佇んでいた。

「奇跡売り……!!」

『やあ、800年ぶりだね。あの時と同じく、こうしてボクは君達の
 敗北する姿を眺めている訳だが……いやはや、欲望の力は何時見ても凄まじいね』

そうして、奇跡売りと呼ばれたキュゥべえは昆虫のような赤い瞳をヤミーへと移した。

『しかし、まさか、君達が鹿目まどかに手を出すとは思いもよらなかったよ。
 おまけにヤミーの親にしちゃうなんて、予想外にも程がある』

スゥと、目を細める。

『だけど、君が鹿目まどかを選んだのはある意味正しい。彼女、鹿目まどかの秘める力の一端に
 気づいたんだから』

「なんだって……?」

『カザリ、余所見はしない方が良いよ』

「ッ!?」

瞬間、数十メートルあったはずの距離をカザリは詰められていた。

そして、腹部にめり込む貝で覆われた腕。


『マァァァァモォォォォルゥゥゥゥ!!!!!!』


そのまま打ち上げられる。

はるか、はるか空の上へと。


天空には月、白く輝くそれがカザリの瞳に映った。


「くっ……!!」

爪を引き出し、近くのビルに突き立てる。

傷を負った時に落ちたメダルを回収しようかとも思ったが、止めた。

はるか眼下、そこにいる危険な存在に本能的な危機を覚えた。


――あれはもう自分のヤミーではない、敵だ。


『このヤミーは実に素晴らしいね、カザリ。鹿目まどかの秘めるエネルギー総量を図る上でも
 この対象は、実に良いサンプルになるよ』

頭に響く声。それがカザリの神経を大きく逆撫でた。

「奇跡売り……!!」

『それに、これをうまく使えば鹿目まどかに魔法少女の契約を結ばせるのに
 良いシチュエーションを作り出せそうだしね』

淡々としたその声、利用する側であるはずの自分が利用されているという感覚に怒りが沸々と沸きあがる。

だから、

「いい加減……黙りなよ!!」

全てを切り刻む風をカザリはキュゥべえに投げつけた。


『ぁ――』


風がキュゥべえを飲み込む。

グリードのエネルギーが一瞬で、ソレを細切れのミンチ肉に仕立て上げる。

しかし、


『はぁ……無意味なのに、良くやるよ』

「……チッ」


ビルの壁面に垂直に立つキュゥべえに、カザリは忌々しい視線を投げつけた。

「またそれかい……? 芸がないね」

『芸ではないよ、カザリ。これがボクという種族なんだ。君達グリードが
 メダルで肉体を構成するのと同じだよ』

悪びれる様子も何もない。それがカザリの神経を更に逆撫でるが、寸でのところでカザリはそれを抑えた。

「まあ……良いさ」

『ん?』

そして、カザリは眼下のヤミーに目を移した。

「アレは好きにしたら良い。僕は、アレにはもう関知しない」

『へぇ、良いのかい?』

「ああ……」


イモガイゾウチータヤミー。もはや制御不能のヤミー。

あの少女が生み出した欲望。

そう、あの少女――『鹿目まどか』が。


「――もう良いさ」


カザリの中で、瞬く間にこれからの計画が練られていく。

その計画の先にいるのは、眼前の、キュゥべえ。


「君にやられるのは癪だけど、奇跡売り、ここは負けを認めるよ」

『別に勝負なんてしてないんだけどね』

「いいや、これは勝負さ」


そして、一陣の風が吹いた。


「生存競争をかけた……ね」


風がカザリを飲み込み、吹き去る。


後に残るのは、戦いの傷跡だけ。


『マァァモォォルゥゥゥ』


最悪のヤミーだけ。


***


朝が来た。

東から昇る朝日を、アンクは眺める。


「……」


その眉間には、いつも以上に深い皺が刻まれている。


「クソッ……やはり、駄目か」


右手を元の姿に戻して、拾った石を強く握り締めた。

握り締められた鈍い音を立てて粉々に砕け散り、見滝原の空へと塵となって消えていく。


この街に来てからこれまで、ずっと狂いっぱなしの感覚にアンクはそろそろ我慢の限界を迎えそうだった。

メダルの行方も分からない、ヤミーの気配も感じ取れない、同じグリードの気配すら感じ取れない。

まさしく、目と鼻と耳を塞がれたも同じ。
しかし、それでもただでは起きないのがアンクというグリードだ。

ズボンのポケットからスマートフォンを取り出すと、この街で最近起きた異常な事件を検索し始める。

すると、次々と自殺やら事故やらがヒットした。


――それも、1件や2件でなく、数十と。


「――はっ。なるほど、そういうことか」


そこで、初めてアンクは笑みを零した。


「フッ……奇跡売りの奴、なかなか色々仕込んでくれる。
 確かにこれだけ残り滓が溜まれば、俺の感覚が狂う訳だ……なあ?」


そして、また眼下に視線を動かす。

溢れんばかりの欲望。朝の訪れと共に、それが渦を巻き始める。
だが、アンクの目に見えてるのはそれだけではない。

その渦の隙間に入り込むように垣間見える異物にアンクは注目する。


「この800年、俺達以上に残り滓と果実を作りまくったか……」


湿気を帯びた、邪気を含んだ笑みがアンクの顔に浮かぶ。


「しかし、どれだけの人間のガキの希望ってのを食ったんだかなぁ……なあ、奇跡売り?」


そして、声を上げて笑い始める。


その声は誰にも届く事はないが、思い切り、アンクは笑った。


「俺達とは違うが、本当に良くやってくれる! はっ! 最高だ!」


嘲りを含んだ笑い声は空へ消える。

そして、それは突然ピタリと止まる。


「だが――取り分を奪われるのはコッチも癪だ」


ギリリと音を立てて、右手が握り締められた。

冷たい眼差し、猛禽類の瞳が街を見下ろす。

そして、立ち上がる。

赤の衣装が見滝原の風に揺られ、まるで翼のように翻った。


「お前が何を企んでいるのか知らんが、そっちがその気なら、こちらにも考えがあるぞ」


グリード本来の凶暴性が、笑みとなって浮かぶ。


「奇跡売り、貴様の全て、俺が逆に奪い――」



『マアアアアアアモオオオオオオオルウウウウウウウウウウッッッッッ!!!!』



咆吼がアンクの耳を震わせた。


つんざくような悲鳴が、そこかしこから上がる。

『マァァァモォォォルゥゥゥ……!!』

野太い絶叫が大気を震わせ、ヤミーは街中を闊歩する。

「ひ、ひっ……!!」

そして、彼の前に腰をぬした哀れな生贄が一人。

まだ社会人として垢抜けていない学生の雰囲気を纏ったOLは、ヤミーのおぞましさに、竦みあがっていた。


「た、た、助け……!!」

『マ、モルゥ……傷ツケラレナイ場所……連レテエエエエエエ!!』


その腕が大きく振上げられた。

象の足のような太い筋肉に包まれたその腕、真っ直ぐに振り下ろされれば彼女の脳天はまるでトマトのように潰れることだろう。

それは、彼女にも分かっていた。だが、体が動かなかった。

完全な思考停止、現実から彼女の体は逃避しきっていた。


――故に、彼女はこれから訪れる自分の死を見る事しか出来ない。

振上げられた腕が伸びきり、手の先に付いた貝の殻が陽光に煌めいた。

まるでギロチンのような酷薄な輝きが彼女の瞳に映る。


そして、一瞬の間をおいて――腕は振り下ろされた。


「――――」


言葉を発する事も出来ず、彼女は自分の脳天を砕く音が訪れるのを待った。


だが、しかし――――。


『タカッッ! ゴリラッッ!! バッタッッ!!』


眩い輝きが彼女の目の前で煌めいた。


赤と白と緑の輝き、眼前でそれは一つになり、ヒトガタを結ぶ。


そして現れる、異形の戦士。


「逃げて!! 早く!!」

「ぁ……あ!」


その声に、彼女の時間は動き出した。

異形の戦士が自分を守っている事を認識し、その言葉を理解した。

「逃げて!!」

「は、はひぃっっ!!」

そして、一目散に駆け出す。ただ、本能のままに。

女性が逃げ出したのを見送り、異形の戦士――オーズとなった映司は目の前に注意を戻した。


「これ、カザリのヤミーか!? でも、コイツ……!!」


ゴリラの力を持ってしても抑えきれない程の、そのパワー。

交差した腕で受け止めただけだというのに、踏ん張った体を一気に押し込まれていた。


「滅茶苦茶……強い!!」


オーズの戦闘本能が、映司の脳内で警鐘を鳴らした。


『マアアアアモオオオオルゥゥゥゥゥ!!』


再び振上げられる腕、まるで戦い方を知らない大振りな一撃。

それを絶好の機会と、オーズはゴリラアームのガントレット、ゴリバゴーンで渾身の一撃を繰り出す。

オーズの持つメダルの中でも最上級の威力を持つゴリラの力。
それが、ヤミーの腹部へ一度、二度、三度と、打ち込まれていく。

だが、しかし――。

――なっ!!??」

オーズとなった映司は、絶句するしかなかった。


『アアアアアアアアアアアアアアア!!!!』


まったく、効いていない。まったく、動じていない。

コンボではないとはいえ、最大級の威力に近い攻撃を数度も打ち込んだのにこのヤミーには蚊ほども効いていないのだ。

「映司ッ!! 避けろ!!」
「ッ!!」

その声に、忘我しかけた自分を取り戻し、今、まさに脳天を砕かんとする一撃を間一髪でオーズは避けた。

しかし、その腕が勢いを殺す事はなく、そのままアスファルトの地面へと威力は吸い込まれる。

そして、吸い込まれた威力はアスファルトを砕いた。
粉々に、周囲数十メートルに無数の皹を伴って。

「なっ……なんだ、アレ……!!」

絶句。これまで、何十回とヤミーやグリードと戦ってきたが、このサイズでこれ程の破壊力を秘めたヤミーはいなかった。

いったい、どんな欲望があれば、こうまで強力なヤミーが生まれるというのか。

「アンク、これって……!!」
「カザリのヤミーだ、間違いない。だが、コイツ……」

アンクがオーズの側に立ち、自分達と相対してるヤミーを観察する。
完全な調和の取れた、複合体ヤミー。

カザリが何種類かのメダルを取り込んだのは知っていたが、だが、ここまで均整の取れたヤミーを生み出したことはなかった。

それも、メズール・ガメル・カザリ、この3種類のグリードの特徴を併せ持ったヤミーなぞ、一度たりともなかった。

「カザリの奴……何をした?」

そう言うしかなかった。
はっきり言えば、アンクにとっても予想が付かない事態だった。

「アンク……このヤミー、何か分からないのか?」
「分かれば話は早いんだがなぁ……!」

一歩ヤミーが歩を進めるたびに、オーズとアンクは一歩下がる。

得体が知れないだけでなく、威力も洒落にならない。

アンクとオーズは、これまでにない危機感を覚えた。


「3種のヤミー……まるでオーズみたいだ」

「気を付けろ、映司。コイツ……ッ!?」


アンクが言葉を続けようとした、その次の瞬間だった。


『オォォォオオオオオオオオ!!!』


咆吼、ヤミーが両腕をこちらへと向けた。

手の代わりに、腕の貝殻から現れるのは無数の銃口。


――――ぞわり。


「ッ!!」
「ちぃッッ!!」

二人の背中に走る、おぞましいまでの危機感。

瞬間、アンクとオーズはその場を大きく飛び退けた。

そして、二人は見た。

ヤミーの腕から無数の針が放たれるのを。

自分達が立っていた場所に無数の針が突き刺さるのを。


――地面が異様な音を立てて溶けるのを。


「な――――」

「――――!?」


二人とも言葉を失った。

もし、今、ほんの一瞬でも判断が遅れていたらどうなっていたかを思い知り、背筋に冷たいものが流れるのを感じた。

「コイツ……ヤバすぎる!」
「映司、退くぞ」

「……はっ!?」

アンクのその言葉に、オーズになった映司は抗議の声を上げた。

「何言ってるんだアンク!? 今、ここで俺達が退いたら!!」

「馬鹿か、お前! こんなのと、訳も分からずやりあって勝てるか!!
 無駄死にされたら、俺が困るんだよ!!」

いつものやり取り。だが、今回ばかりは状況が違う。

「ふざけんな! ここで俺達が逃げたら、アレが他の人に使われるかもしれないんだぞ!!」

「だからどうした! 人間の一人や百人、死のうがどうでも良いが、オーズになれる人間は別だ!!」

両者に流れる険悪な空気を読み取ったように、再びヤミーがその両腕を二人に向けた。

「ッ!!!」
「くッ!!」

放たれる無数の毒針。それを交わし、オーズとアンクは近くのビルの物陰に隠れた。
周囲に漂う腐臭にも近い刺激臭。それが鼻を突く。

「くっそぉ!!」
「映司!! 退け、退くんだよ!!」

大きな声を上げてアンクが命令するが、もちろん、それを受け入れる訳がない。

「アンク、コンボだ!! 青色のコンボ!!」

代わりに、催促するようにその手をアンクへと伸ばした。

「馬鹿か!! 無闇にコンボを使うな!! 前にも言っただろうが!!」

「アンク、もしメダルを渡さないなら……俺はこのままいくぞ」

「ぐっ……」

その言葉に、アンクは言葉を詰まらせた。

己の命に対して執着せず、欲望すら持たないこの男。

この男なら、それをしてもおかしくない。

火野映司という性格を嫌と言うほど知ってしまったアンクにとって、その言葉は無視できるものではなかった。

「……どうする」
「お前……!」

真っ直ぐにこちらを射抜く視線。
それが、どうしようもなくアンクの神経を逆撫でする。

だが、しかし――。


「やめてぇッッ!!」


その少女の声に、二人の会話は打ち切られた。

そして、その声の主を二人は良く知っていた。

アンクと映司、二人が同時にその声の主へと視線を向けた。

「なっ……!」
「あっ……!」


――鹿目まどかが、そこにいた。


ヤミーの目の前に両手を広げて、立ちはだかっていた。
足を震わせ、しかし、強い瞳で、ヤミーを睨みつけていた。


「ま、まどかちゃん!!」

「っ! 映司、待て!!」


瞬間、映司は飛び出していた。

ヤミーの目の前に飛び出したまどかが、手を伸ばせなかったあの少女とダブったのだ。

「まどかちゃ――ッッ!!」

映司の叫び声が、ビル街の間に響く。

だが、しかし、その声は同時重ねられた声によって掻き消された。


「やめて!! 私、こんな事望んでないよ!!」

「……え?」


その言葉に、映司は足を止めた。


「なるほど……あのガキがヤミーの親だったか」

「え……あ、ま、まどかちゃんが……あのヤミーの親?」


思いもよらなかった事実。それに、映司の行動が完全にストップした。

ほんの数日言葉を交わしただけだが、だが、これ程までに強力なヤミーを作り出すほどに彼女が強い欲望を身に秘めているとは思えなかったのだ。

あまりにも意外な事実だった。

そして、そうやってる間にも、まどかはヤミーへとゆっくりと近づく。

「私……人を傷つけるなんて考えてない! あ、あなた……私の欲望なんでしょ!?
 だ、だったら、こんな事やめて!! 私のいう事聞いて!!」

声を詰まらせ、恐怖に足を震わせて、まどかは必死にヤミーへと呼びかける。


「私だったら、お願いだから……!!」

『ウ……ウゥゥゥ……!!』


その言葉が通じたのだろうか。ヤミーは動きを止めた。
足を止め、腕を力なく下ろし、まどかを見つめた。


「わ……分かって……くれたの?」

『…………』


無言。それを肯定と受け取って、ほっと、まどかは胸を撫で下ろした。


――が、それは、大きな間違い。


『――――ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』


絶叫が、ビルを揺らした。

そして、振上げられる、ゾウの足のような逞しい両腕。

「ぁ――――」

微かに息が漏れるような声をまどかはあげるしかなかった。

それしかできなかった。


「ま―――――まどかちゃんッッッッッ!!!!!!!!」

「ちぃっ……映司ッッッ!!!」


空を3枚のメダルが舞う。青の3色が、一直線にオーズの元へ。

走りながらそれを掴み取り、オーズは一瞬でメダルを入れ替える。

ドライバーに並ぶ、青の3色。

シャチ・ウナギ・タコのエンブレム。

オースキャナが、その3枚をスキャニングする。


『シャチッ!! ウナギッッ!! タコッッ!!』


それは同種3色のコンボ。


『シャシャ、シャウタァァッッ! シャシャ、シャウタァァァァッッッ!!』


オーメダルが歌を歌い、全身を青のエネルギーフィールドが覆う。

そして、次の瞬間にはオーズを青のコンボ形態へと作り変えた。

「うぉぉおおおおおおおおおおおお!!!」

シャウタコンボと化したオーズは、両肩から伸びた電気ウナギウィップをまどかの体へと巻きつけた。

そして、ウィップを思い切りオーズは引き寄せた。

「きゃっ!!??」

同時、鳴り響く地響き。

ヤミーの振り下ろした腕はまどかを傷つける事はなく、既にオーズの腕の中にまどかはいた。

基礎スペックの低いシャウタだが、トリッキーな戦い方をするだけでなくこうした使い道もあった。

「ひ……火野さ、ん?」
「良かった……まどかちゃん」

きょとんとした顔でこちらを見上げるまどかに、映司は心底ほっとした声をあげた。


――だが、安心するのはまだ早い。


「映司!!」

アンクの声に、すぐに臨戦態勢に戻る。

ヤミーが、こちらを明らかな敵意を持って見ていた。

腰を落とすイモガイゾウチータヤミー。

そのチーターの脚が異様なまでに膨らむのをシャチヘッドの感知機能でオーズは感じ取った。

こちらに向けられているのは雄々しい象の牙。

何を企んでいるかは一瞬で分かった。


「まどかちゃん、俺に掴まって……良いね?」
「は、はい……!」

グッ、と、まどかが映司の体に抱きつく。

そして、さらに深く腰を落とすヤミーとタイミングを合わせるように、映司もまた腰を落とした。


――――そして。


『パォォオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!』


象の雄叫びを上げ、チーターのスピードでヤミーが突進を仕掛けた。

カザリに匹敵するほどのその速度。しかし、ヤミーが走り出すより一瞬早く、オーズはその場所から離脱していた。

それは、シャチヘッドによる感知能力の成せる技だった。

突進を仕掛けたヤミーはそのまま一直線にビルをぶち抜き、停止した。

そして、ビルの壁面に頭を突きたてたままヤミーは動かなくなった。

「止まった……?」

オーズはまどかを下ろすと、ヤミーから距離を取って警戒を始めた。

ジリジリと距離を詰める。が、やはり、動かない。


「……どういう事だ?」


一瞬、気が緩みかけたその時だった。


『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

「ッ!!??」

再び、雄叫び。

頭を突っ込んでいたコンクリートの壁を叩き潰すと、ヤミーはいきなり頭を大きく振り始めた。

「苦しんで……るのか?」

ヤミーはもがいていた。全身から電流を放ちながら、ふらふらとどこかへと走り始めた。

「チャンスか……追いかけるぞ、映司」

「待てよアンク! まどかちゃんが!」

その言葉に、アンクは眉間に皺を寄せた。

映司の側には、ヤミーの親。

本来ならばヤミーの親を優先して、ヤミーを育てさせ、その後メダルの回収がセオリーだったが、今回ばかりは事情が違う。

このヤミーは今までにない例外。それに、今のアンクはヤミーを感知する力が落ちていた。

だからこそ、ヤミーを優先にして、ヤミーの親は捨て置きたかったのだが、

「俺が行くと言っても、どうせ聞かないんだろう?」

「当たり前だろ」

「じゃあ、別行動だ。俺はあのヤミーを追う。お前は勝手にしろ」

結局はこうなる。

だが、当初の目的であるカザリのメダル、そしてセルメダルの回収を思えばコチラの方が動きやすい部分もある。

アンクはそう納得する事にした。


「気を付けろよ……アンク」

「誰に言ってやがる、誰に」


余計な心配だと言わんばかりに鼻を鳴らし、アンクはヤミーを追い始めた。

「……まどかちゃん。いったいなにが起きたか話してくれるね?」

アンクの姿が見えなくなり、変身を解除した映司はまどかへと向き合った。

顔を俯け、つらそうな表情を浮かべるまどかの前に膝をつき、映司は微笑を向ける。

「大丈夫。何があっても、俺は信じるから」

ぽんと肩に手を置く映司に、まどかはゆっくりと顔を上げて映司に視線をあわせた。

そこに見えたのは、こちらに心を開こうとする意思。

そして、まどかの口がゆっくりと開かれようとしたその時、


「――まどかから離れなさい」


氷点下、絶対零度の声と、撃鉄を上げる音が映司の耳に届いた。


――暁美ほむらが、凍りつくような憤怒をまとって、そこにいた。


「君は……」

「聞こえなかった? 今すぐ、まどかから離れなさい。さもなければ……」

魔法少女となったほむらの冷たい瞳が映司を射抜く。

そして、ゆっくりと持ち上がる右手に握られていたのは、普通の少女では到底支えきれないようなマグナム。

「なっ!?」

「ほむらちゃん!?」

その銃口の先は、ぴったりと映司へと向けられていた。

「火野映司、まどかを危険な目に合わせるなんて……ね。
 貴方がそのような真似をするのであれば、私もこうせざるを得ないの」

「ちょ、ちょっと待って! いったい、何を誤解してるのか知らないけど、
 俺は別にまどかちゃんを危険な目になんて……!!」

なんとか誤解を解こうとするが、しかし、銃口がそれを阻む。

動けないまま、映司の額に冷たい汗が流れる。

「ほ、ほむらちゃん……違うよ! 火野さんは、私を助けてくれただけで……!!」

「別に庇わなくて良いわ、まどか。あなたは、本当に優しすぎる」

完全な事実誤認。ほむらは、この状況を、映司が招いたのだと勘違いを起こしていた。

普段のほむらならば、感情より論理が先に動いて、現状を正しく理解できていたにちがいない。

だが、それにまどかが絡めば、別だ。

最も優先順位の高い彼女の危機に関して、感情が論理よりも先走った。

「さあ、まどかから離れなさい、火野映司。さもなければ、私は――」

そして、トリガーに引鉄をかけようとしたその時だった。


『スタッグ』


電子音声がほむらの耳に届くと同時、機械のクワガタムシが彼女の右手からマグナムを奪い去った。

「なっ!?」

そして、そのクワガタは持ち主の下へと帰り、元の携帯電話へと姿を変え彼の手に収まった。

「沈着冷静だと思っていたが存外に感情的だったとはね、実に興味深い」

フィリップだった。
いつものつかみどころのない笑みを浮かべながら、ほむらの前にやって来ると覗き込むような視線を彼女に送った。

「それで? この状況の説明を願いたいんだが」

「……あの男が、まどかを危険な目に合わせた。それだけの事よ」

「ほぅ?」

はて、とフィリップは首をかしげた。そして、映司とまどかを交互に見やると、またほむらに視線を戻した。

「僕には、どうやらそれだけとも思えないのだが」

「どちらの味方のつもり?」

感情的な瞳がフィリップを射抜く。

「別に、僕はどちらの味方というわけではない。
 がしかし、今の君の精神状態は良くないと判断できるね」

端的に述べるフィリップの言葉に、ほむらの眉が軽く持ち上がった。

だが、それまで。

遠くからやってくるサイレンの音が、この場での会話の終わりを告げていた。

「……さて、では、このまま僕らのホテルへと向かう事にしよう」

「え、でも、学校が……」

戸惑うまどかに、フィリップが、あの魔的な笑みを浮かべた。

「安心すると良い、鹿目まどか。既に情報は検索済みだ。
 先程のヤミーとの戦闘のせいで、今日はどの学校も休校となっている」

そして、ほむらへもフィリップは視線を送った。

「そういう訳だ、暁美ほむら。これからの事もある。
 一度、全員で集まりこれまでの情報をまとめる事にしようじゃないか」



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