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ダンテ「学園都市か」 外伝

2011年05月03日 00:39

ダンテ「学園都市か」

ダンテ「学園都市か」外伝

・時間軸は本編の二ヵ月後、ちなみに先に投下したバージルが帰還するおまけは数年後のIF話
・DMC2へ繋がる前日段的な話

メインはネロ、神裂、ダンテ、そして若き頃のルシア(DMC2のダンテの協力者)
本編では出番が丸ごと削られた浜面・絹旗・滝壺・麦野も登場予定

874 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/19(金) 19:19:11.26 ID:y.0OVrg0

先に本当は本編にぶち込む予定だったエピソードを投下しとく。
物語と言うよりは歴史的プロローグな感じ。後で投下する外伝とも繋がってる。

―――

かつて太古の昔、人間界、そして魔界と天界は物理的に繋がっている一つの共同体であった。

誰がいつ繋げたのか、それとも最初から繋がっていたのかは誰もわからない。

その三つの世界を治めていた存在、大神『ジュベレウス』。

彼がどの世界でいつ誕生したのかは誰もわからない。
彼の力は絶対的であった。
支配していた世界はこの三つだけでは無く、数多の世界をその力の下に置いていた。

そして長きに渡って頂点に君臨していた。
その期間は万か億か。数えるのすら無意味なほど長く。

だがその安定も崩壊する時が来る。
ジュベレウスが支配する世界の中の一つに特に異常なものがあった。

その世界のルールはただ一つ、力こそが全て。
力の上限が無い世界。

魔界と呼ばれる闇の世界。

制限の無い力の拡大。その力を内包するために魔界も急激に肥大化して行った。
その力は外へ向けて決壊する。周囲の世界を飲み込み、更に拡大していく。

いつしか魔界は他の全ての世界を合わせた領域よりも巨大になり、安定を揺るがした。

そして遂にジュベレウス及び彼が率いる魔界以外の世界達と、強大な力を持った悪魔達の魔界が全面衝突する。
ジュベレウスは被害の拡大を防ぐため、数多の世界の物理的な接続を切断し、完全に分離させた。
だがそれでも圧倒的な力を持った一部の大悪魔達の侵入は防ぐことができなかった。

その戦乱は長きに渡って続いた。

多くの世界が滅んだ。

魔界の悪魔達の力は想像を遥かに超えていた。
その戦いは膠着状態に陥る。

そんな戦乱の中、魔界に三人の若き大悪魔が現る。

三人は互いに切磋琢磨し、より大きな力を求めた。
そして強大な力を手に入れる。

一人は『理』を支配する『創造』を、
一人は『純粋な剣の力』、『究極の破壊』を、
一人は『概念』を支配する『具現』を。

三人は魔界においても超越した存在となり、悪魔達にとっての英雄となる。

そして遂にジュベレウスはその三人に打ち倒され、支配していた世界の一つ『天界』へ逃げ込んだ。
負った傷は凄まじいものだった。ジュベレウスは存在を保つことすらできず、深き眠りについた。

史上最大の戦乱はこうして幕を閉じた。
支配者を失った世界達は恐怖と混乱に包まれた。
中には内戦が勃発した世界もあった。

ジュベレウスが最期の場所とした『天界』もそうだった。

多くの自称『支配者』が乱立し、天界は数多の『神』によって細分化されてしまった。
その混乱はすぐ下にある小さな世界『人間界』にも大きな影響を及ぼした。

魔界への恐怖を忘れようとするかの様に、『神』達はがむしゃらになって人間界の支配権を手に入れようと帆走した。

一方、中には己の世界を捨て魔界へ寝返る者達も現れた。

多数の古の神や天使が悪魔へと転生し更なる力を求めた。
一方その頃、魔界ではジュベレウスを倒した三人の内の一人、
『創造』の力を持った者が魔界の頂点についた。

その者は自らを『魔帝ムンドゥス』と称した。
他の二人は魔帝の横に立ち、共に力で魔界を支配した。

彼らの次の目的。それは報復による破壊であった。
ジュベレウス側についた世界を苦痛と絶望の中で滅ぼす。

多くの世界が彼らの邪悪な笑い声と共に滅び、無数の魂が永遠の苦痛の中へ堕ちた。

そしてある時、その矛先が遂に人間界へ向けられる。

強大な力によって再び魔界と人間界が繋がり、大規模な侵略が始まった。

人間達の中には立ち上がり抵抗する者もいた。だが到底太刀打などできるはずも無かった。
それは戦いではなかった。ただ一方的な破壊と殺戮。

皮肉な事に、人間達に「守護」を約束していた天界の者達は彼らを見放した。
だがその時、誰も予期していなかった事が起きた。
魔界の頂点の三人の内の一人が突然人間側へ寝返ったのだ。

『究極の破壊』を持つ者。名は『スパーダ』。

なぜ彼がそんな行動を取ったのか。

人間の愛を知ったのか、か弱き人間に哀れみを抱いたのか。
中には「ただの気まぐれ」や「他の二人を倒し力の頂点を求めた」と言う者もいた。

だが結局、魔界では彼の真意を確実に理解できた者など誰一人としていなかった。

スパーダと魔帝、かつての友は衝突した。
もう一人はちょうど別の世界の破壊に赴いていたため不在だった。
そして魔帝は破れ封印され、人間界への侵略は防がれた。

統治者が不在となった魔界はすぐに内戦に突入した。

人間界を守ったスパーダは安堵する。内側で好きにやっていてくれれば良いのだ。
その力を外に出さなないのなら何してくれてもいい と。

だがその安寧もすぐにまた揺らいだ。離れていたもう一人が戻ってきたのだ。

その者は人間時間にすると僅か一ヶ月で、混乱に包まれていた魔界の7割をあっという間に掌握してしまった。

その者の名は『アルゴサクス』。
魔界を瞬く間に手中に収めた功績から『覇王』と呼ばれた。

再び統一された魔界の力が外へ向かうことを恐れたスパーダ、
そして友と同胞を裏切ったスパーダを憎む覇王。

衝突は必然だった。
再び破滅的な力が衝突した。

死闘の末スパーダが打ち勝ち、覇王は封印される。

純粋な力を求めたスパーダと違い、魔帝と覇王は特殊な力を持っていた。
その特性上、殺しきることは難しかったのだ。

スパーダはこの二人を固く厳重に封印した。

これによって、ジュベレウスから続く気が遠くなるような長き一連の戦乱は一応の終わりを迎える。
完全な終結は孫の代まで待たねばならなかったが。

スパーダは人間界に落ち着いた。彼は自分の名や悪魔の力が広がることを由とせず、隠者として過ごした。

戦乱が終結したのを見計らって、再び天界の神々が人間界へ手を伸ばし始める。

スパーダが目を光らせていたので、彼らは直接の力の行使ができなかった。
そこで彼らが取った手段は人間側から『信仰』という形で神を求めさせ、進んで魂を支配下に置かせる事だった。

スパーダはその事については文句は言わなかった。
むしろその方が人間にとって良いと思ったのだ。

過去を忘れて心の安寧を得られる。魔界に魂を喰われるよりは天界に支配された方が万倍マシなのだ。
手段は褒めたものじゃ無かったが、結果としては良しだった。
その後スパーダは二千年に渡って人間界を見守り続けた。

彼は己の力を自分の魔剣「スパーダ」に移しそして固く封印する。
いつか来るべき時に、来るべきが者が手にするのを願って。

そして己の二人の息子がある程度成長した時、リベリオンと閻魔刀を彼らに授け家を離れる。

役目は終わったのだ。
彼は全てを己が子、子孫に託した。

息子達がどのような道を歩むかはわからない。だが彼は確信していた。

いつか必ず。

この血の者が。
祖を越えて本当の意味で戦乱に終止符を討つと。

今も封印されているあの二人の破壊者が完全に滅ぶ日が来ると。
スパーダは遥か昔の事を思い出す。生まれ育った故郷。
まだ強大な力を手に入れる前の若き頃の三人。

お互いを兄弟のように信頼し、共に修練に励んだ友。
どこで道を誤ったのだろうか。

いや、悪魔の目線で見れば道を誤ったのはスパーダだ。
魔界全土が彼に向ける強烈な敵意は、絶大な尊敬と信頼の裏返しだ。

あれから二千年、彼は苦しみ続けた。人間界への愛情と故郷である魔界への愛情の板ばさみになり。
弱き人間界の味方をするという彼の『優しさ』が、一方で魔界を裏切った事への罪の意識を強くする。

どちらの世界・どちらの種族も愛するあまり、彼は撤することができなかった。
フォルトゥナに残っている『地獄門』などもそのいい例だ。

彼に故郷を思い出させる数少ない物だ。結局壊す事が出来なかった。

あの二人を殺しきれなかったのは彼らの力のせいではなく、
心の奥底で友を殺す事を覚悟しきれていなかったのかもしれない。

スパーダは思う。


願わくば、息子達が己と同じ道を歩むことの無いように と。

家族を、友を手にかける事が無いように と。


スパーダが家を離れた日以降、彼の姿を見た者は誰一人としていなかった。

―――



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ダンテ「学園都市か」外伝

――――

神裂、ステイル、シェリーの強化によって「必要悪の教会」、イギリス清教は凄まじい力を持った。
そのおかげでローマ正教・フランスは一時休戦を申し出て来て、大規模な軍事衝突はなんとか免れた。

だがイギリスは依然戦争状態であった。むしろ以前よりも状況が悪い。

というのも例の学園都市の一件以来、国内に悪魔が多数出没するようになったのである。

あの一件で人間界に大きな負荷がかかり、
運が悪い事にその皺がイギリスに集中し、多数の魔界との穴が開いたのだ。

そこで一時的に「必要悪の教会」内に対悪魔専門の部署が作られ、
神裂率いる天草式とシェリー、そしてステイルが暫定的に所属している。

更に戦時特例として、全魔術師及び騎士への指揮権も与えられていた。

対悪魔戦線における全権は神裂・ステイル・シェリーに集中していた。
イギリスは今だ厳戒令が敷かれている。

全土に渡って市民の知らないところで騎士と魔術師が悪魔討伐を行っているのである。
あの学園都市の事件はイギリスにとって始まりにでしか過ぎなかったのだ。

この二ヶ月で、小規模なのもあわせると悪魔出没は600件を超えた。

そして当然、犠牲者を0に抑えることは不可能だった。

全土に張り巡らせた探知魔術による迅速な行動によって、一般市民の被害はまだ0だったが、イギリス傘下の騎士と魔術師の戦死者は三桁を越えていた。

対悪魔戦のノウハウが全部隊に広がり、イギリス側の被害は徐々に少なくなっているものの、依然として犠牲者の数は増え続けていた。

トリッシュ曰く、この悪魔出没の頻発は人間界の歪みが直れば収まるとのことだった。
徐々に歪みが元に戻り始めており、あと半年もすれば以前の状態に戻るらしい。

一部の者は「なぜよりによって我が国に負荷が集中したのだ」と嘆いたが、神裂はむしろ良かったと思った。
イギリスは魔術的な目線から見れば世界一強固な要塞島なのである。

もし他の国だったのならば、とてつもない数の一般市民が犠牲になっていただろう。

ロンドンから30km程離れた場所。

この地下に、神裂・ステイル・シェリーの為の修練場が作られた。
いや、厳密に言うと作られたのではない。
トリッシュの協力によって、頑丈な魔界の一部を地下に移したのである。

この修練場内部でのみ、三人は自由に力を使うことを許可されている。
トリッシュによればここの中でも三人同時に力を解放するのは止めた方が良いとの事だが。

ステイルと神裂は睨み合っていた。

ステイル「…さて、始めようか」

神裂「はい。負けませんよ」

ステイル「それはこっちのセリフだよ」

彼らはあまりにも強くなり過ぎて、しっかりと修練できる相手は国内にはお互いしかいないのである。

神裂「本気でどうぞ」

ステイル「君もな」

神裂の瞳と体が金色に輝き始める。左手には光でできた半透明の巨大な腕が現れた。
ステイルも力を解放する。瞳が赤く輝き、全身から炎が噴き出して体を覆う。
両手・両足に炎の篭手と脛当てが出現する。
地面が溶け、周囲が溶岩の海と化した。

ステイルはもうイフリートと融合してないとはいえ、
悪魔化の際にかなり影響された為、力の構造がイフリートに似ているのである。

イフリートの息子と言っても過言ではないだろう。

ステイル『イノケンティウス』

それが彼が決めた自身の悪魔としての名。
由来はかつての彼の切り札の魔術からだ。
依然は炎で具現化させていた魔人が、今は彼そのものとなっていた。

神裂『相変わらず仰々しいですね』

ステイル『君も天使化の際の名前を決めたらどうだい?』

神裂『私は遠慮しておきます。一応半分人間ですし』

彼らは毎日試合をしている。
お互いの力を高めあうと同時に、外の『戦争』から離れて息抜きする為にだ。

全力で戦っている時は他の何もかもを忘れることができる。

ステイル『始めよう』

神裂『はい』

同時に二人が地面を蹴って猛烈な速度で相手へ突進する。
神裂は右手で七天七刀を抜刀する。
ステイルは左手に巨大な炎の剣を出現させた。

唯閃――

炎剣――

大悪魔と大天使が衝突し、修練場が大きく振動する。
二つの刃が交わると同時に神裂はゴッドブリンガーを伸ばし、
(ゴッドブリンガー、彼女自身がこの腕につけた名前。それをネロに教えた時は大笑いされたが)
ステイルの体を鷲掴みにしようとする。

だがその手はすり抜けた。

神裂『相変わらず――ふざけた業ですね!』

ステイルの胴体が炎になったのである。
神裂のゴッドブリンガーはあっさりとその炎をすり抜けた。

ステイル『これが完全な悪魔の特権ってやつさ!』

ステイルは神裂の七天七刀を弾くと右手を彼女の顔面へ振るう。
そして直撃する。

ステイル『チッ!』
だがその感触は固いものだった。神裂の顔の前に金色の光が集中していた。

シールドだ。
ステイル『君もメンドクサイな!』

神裂『お互い様です!』

二人はそのまま至近距離で刃と拳を打ち合う。
衝撃波が渦となり地響きとなって修練場を大きく揺さぶる。

ステイルが足を高く掲げる。足先がオレンジ色に輝く。

ステイル『ハァ!!』

そして強烈なかかと落しを神裂の頭頂部へ叩き下ろした。

神裂『ぐッ――』

シールドに守られながらも、強烈な衝撃で神裂の頭が大きく下がる。

ステイル『―――!』
だがそのステイルの足は戻らなかった。
神裂はゴッドブリンガーでステイルの実体化した瞬間の足を掴んでいたのだ。

神裂『捕まえた――!』
そのまま間髪いれずにステイルを思いっきり振り、下の溶岩の海に叩き付けた。
巨大な飛沫が上がる。

神裂『ハァッ!!!』

ステイルが沈んだ溶岩の海へ七天七刀を振り下ろす。
剣筋に沿って溶岩の海が割れる。

だがステイルもただやられているわけではなかった。
溶岩の中からオレンジ色の剣が神裂の頭目がけて飛び出して来た。

神裂『――!』

二つの刃がお互いの顔面へ同時に直撃した。

溶岩の海が一瞬で飛沫となって吹き飛び、神裂は真上へ高く打ち上げられ、ステイルは更に深く沈む。

神裂は天蓋へ七天七刀を突き立てて逆さまに『着地』する。

ステイルが彼の熱で再び形成された溶岩の海からのそのそと這い出てきた。

ステイル『ぐぉ…やっぱり効くなあ…』

神裂『お互い様です…また引き分けですね』
真上からその炎の魔人へ声をかける。

ステイル『そうらしいな』

ステイル『そろそろ時間だよ』

神裂『そうですね』
いつもはこの後仕切りなおして再び試合を行っているのだが、今日は違う。

大事な予定があるのだ。

ステイル『行こう。降りて』

神裂『はい』
七天七刀を引き抜き、軽い身のこなしで天蓋から地面に降りる。

二人で修練場の出口へ向かう。

神裂『もうついてる頃でしょうね』

ステイル『さあどうかな。スパーダの一族は皆マイペースだからね。予定通り来るかどうか』

神裂『大丈夫ですよ。彼は一族の中では一番まともですし』


―――

―――


時刻は深夜0時を回ったところだった。

悪魔出没は時間に関係無い為、件の責任者達は不規則な生活を強いられている。

神裂とステイル、そして騎士団長はバッキンガム宮殿の一室にいた。

神裂「…」

ステイル「…遅いな」

騎士団長「…どうせ陛下や最大主教に捕まってるんだろう」

神裂「でしょうね…」

その時、部屋のドアが開いて青いコートを着た銀髪の青年が入ってきた。
背中には印象的な赤い紋章が刻まれた巨大な金属のケース。

ネロ「悪い、遅れた」

神裂「ようこそ、イギリスへ」
三人が立ち上がる。

ネロ「すまん。陛下さんと最大主教さんの話が長くてな」

騎士団長「まあそんな事だと思ってたよ。さあ座ってくれ」

学園都市の一件以来、悪魔出没が頻発しているイギリスは、
ネロの営むデビルメイクライ2号店に対悪魔術のサポートを正式に依頼したのである。

その報酬額は相当なもので、金銭に興味の無いネロも嬉々として引き受けた。

それを嗅ぎ付けたレディに、叔父の借金の肩代わりしろと50%の権利を取られ、
「寄付しましょう」と言うキリエの慈愛に30%あてるつもりだが、
その残りの20%でも孫の代まで遊んで暮らせる額だった。

最初はダンテの営む1号店に依頼したらしいが、ダンテが「めんどくせえ」の一言で一蹴してしまったとの事だ。
その報酬の額を知ったトリッシュにダンテは後で酷い目にあわされたらしい。

そんな事でネロは月に三回ほどイギリスに来ている。

力でのゴリ押しばかりが目立つが、ネロはこう見えても対悪魔の魔術や知識には精通している。
実際、騎士時代は戦闘術はもちろん成績もトップクラスだった。
素行が救いようが無いほどに悪かったが。

いわゆるデキる一匹狼の不良というやつだ。

更に例のフォルトゥナの一件以来、騎士団が壊滅した街を守る為に大量の書物や魔導書を漁って、悪魔に冠するあらゆる事を研究した。

今の彼はトリッシュやバージル程とは言わないものの、ダンテ以上の知識を持っていた。

ネロ「で、最近はどうなんだ?」

神裂「一般市民の被害はまだ0です」

ネロ「こっちの損害は?」

神裂「先週天草式の3名が負傷、内1名が重傷ですが命に別状はありません」

ステイル「先週は『必要悪の教会』所属の魔術師が14名戦死したよ」

騎士団長「騎士5名が戦死した」

ネロ「そうか…」

天草式に死者が出ていないのは実際に悪魔との戦闘経験を積んでいるからだ。
彼らはあの学園都市での苛烈な争乱の中、多くの高等悪魔と最前線で戦った。

それに対して国内の騎士や魔術師達は悪魔すら見たことが無い。

下等悪魔ならなんとかなるが、中等・高等悪魔となると話は別だ。
高等悪魔を初めて目にした者の多くは、本能的な魂の恐怖によって体が動かなくなる。

むしろそんな状況下で全滅せずにしっかりと掃討し任務を果たしたというところが、
さすがは厳しい訓練を積んだ戦士達というところか。

ネロ「そうそう、これ。新しい指導プログラムだぜ」
冊子を机に載せ、神裂の方へ押し出す。

ネロの仕事はイギリスの騎士と魔術師達が、
立派なデビルハンターに成長する為の環境を作るサポートだ。
彼が直接剣を取って戦う事は基本的に無い。

神裂「ありがとう御座います」

ステイル「いつもすまないね」

ネロ「まあ、仕事だからな」
答えながらネロは思う。
やっぱりダンテにこの仕事は無理だと。

ステイル「詳しい状況はこの報告書に纏めてある。後で目を通しておいてくれ」
ステイル「じゃあ僕はこれで失礼するよ。仕事があるんでね」

騎士団長「私もだ。何かあったら呼んでくれ。ではごゆっくり」

二人が部屋から出ていく。

ネロは机に足を上げてステイルから渡された報告書を、神裂はネロから渡された新しい指導プログラムの冊子を読んでいた。

神裂「…」
その冊子には新しい対悪魔用の魔術や、悪魔の種類別の戦い方など事細かに書かれていた。

神裂はそれを現場で使う必要は無いが、
一応指揮官として全て頭に入れておかなければならない。
神裂やシェリー達が現場に出ることは稀だったが。

中等・高等悪魔が出現した場合は天草式が、高等悪魔が二体以上、もしくは悪魔の総数が10体以上出現した時は神裂・シェリーのどちらかが現場へ向かい、ステイルが万が一に備えてロンドンの守護につく。
一般の者は下がり、この二人がそれぞれ単独で圧倒的な戦力をもって掃討する。

それでも三人とも力の完全解放は認められていなかった。

それが認められる事態は国家の危機、神クラス・大悪魔が出現した場合のみである。
その場合は女王が許可を出す。

ネロ「神裂」
報告書を眺めながら声だけを飛ばす。

神裂「はい」
神裂も冊子から目を離さずに返事をする。

ネロ「その力、使いこなせるようになったか?」

神裂「上々です」

ネロ「へえ、じゃあ久しぶりに戦るか?」

神裂「!」
冊子からネロへと勢い良く目を移す。

ネロと最後に刃を交えたのは約二ヶ月前、あの学園都市の争乱でだ。
神裂自身は全く覚えていない。

だが体とこの中に流れる神の力が覚えてるらしかった。

神裂「い…あ、あの…」
はっきりいうとなぜか凄く怖い。
あの時、相当派手に一方的にやられたのかそれを覚えている体が乗り気じゃない。

神裂「ま…まだです…!」
戦わなくてもわかる。どうせまた簡単に一蹴される。

ネロ「そうか。まあいずれな」

その時、部屋のドアが慌しくノックされた。

神裂「どうぞ」

ドアを勢い良く開け入ってきたのは五和だった。
ネロを見て一瞬固まった後、軽く頭を下げてすぐに神裂の横へ行った。

五和「プリエステス様!出動を!」

神裂「悪魔の種類と数は?」

五和「下等悪魔が30体以上、フロストが5体、それと未確認ですがゴートリングも複数いるとの報告が!」
その言葉を聞いて神裂の顔が一瞬で引き締まる。

ネロも顔をあげ二人を見つめる。

神裂「…!」
これ程までの件は今までは無かった。
最悪なのでせいぜいゴートリングが一体のみとかそういうレベルだった。

神裂「場所はどこです?」

場所はエジンバラの南東40km程にあるアールストンという小さな町との事だった。

神裂は立ち上がり、目を瞑って何やら唱え始める。
すると足元に金色の円が浮かび上がった。

ステイル・神裂・シェリーは悪魔式の移動術をマスターしていた。
とはいえそのレベルは他の界へ行けるものではなく、
人間界どころかイギリス国内限定のものだったが。

神裂「五和。あなたも来てください」

五和「は、はい!」

神裂はネロに目を向ける。

ネロ「…俺も行ってみっかな?」

神裂「行きましょう!」

ネロ「おう」

ネロは立ち上がり、巨大な金属ケースを担ぐと神裂の横に並んだ。

神裂「…」

ネロ「あ~、悪いが便乗させてもらうぜ。俺この移動方式あんまり得意じゃねえしな」

神裂「…では行きましょう」

足元の円が輝き、三人はその中に沈んでいった。

―――

―――

エジンバラの南東40km、アールストンという小さな町の納屋に小さな少女がいた。

外見の年齢は10歳程で、褐色の肌に赤い燃えるような髪、そして青い瞳。
両手にそれぞれ曲刀を逆手に持っていた。

足元には悪魔達の死体が転がっている。
この少女がやったのだ。

少女は虚ろな眼差しで立っていた。
その瞳には何も感情が篭っていない。

『χ(カイ)』

少女の頭の中に声が響いた。
χ(カイ)、それが少女の名。

『χ、その場を離脱し、『式』を起動させろ』

その命令を受け、少女が猛烈な速度でその納屋出て離れていった。

その後しばらくして悪魔達の死体が石化して砕け、砂となってかき消えた。


―――

―――


建宮「…」

建宮は現場から700m程のところにあるテントにいた。
ここは今、臨時の指揮所となっている。
現場から半径1kmの市民は皆避難させ、イギリス陸軍が封鎖している。

そしてその内側、現場から半径500mの円を騎士と魔術師達が封鎖している。

だがここまで厳重な封鎖線でも、ゴートリング程なら易々と突破できるだろう。

建宮「静かなのよな…」
しかし簡単に突破できるのにも関らず、何も動きが無い。探知魔術にも一切反応が無い。
現場から全く動いていないのか、或いは魔界に帰ってしまったのか、それとも最悪のパターンとして既にここから何らかの方法で抜け出してしまったのか。

その時、少し離れた所の床に金色の円が浮かび上がった。

建宮「お、やっと来たのよな!」

その円から神裂と五和そしてネロが現れた。

建宮「ネロさん…?」

ネロ「よう、暇だったからな。俺も来ちまった」

建宮「それはそれは!ネロさんもいれば百人力なのよな!」

神裂「ネロさんはあくまで視察という事で。いつも通りこなしましょう。状況は?」

建宮が簡単に説明する。

神裂「そうですか…。ではとりあえず私が現場に行きます」

ネロ「俺も行って良いか?」

神裂「はい。五和は建宮達に加わってください」

五和「わかりました」

神裂の足元に再び金色の円が浮かび上がる。

五和「プリエステス様!」

神裂「?」

五和「お気をつけて」

神裂「ええ。あなたも」
神裂とネロの体が金色の円の中に沈んでいった。

建宮「プリエステスとネロさんがいればもう解決なのよな」

五和「まあ…あのお二人なら心配は無いでしょうが…」

その時、探知魔術の端末の石版を見ていた魔術師が声を張り上げた。

「反応です!現場から400m北!そのまま北上中!あと20秒で第一封鎖線と接触します!」

建宮「種類は?!」

「…判別できません!魔力も検地できません!体の大きさは…高さ1m弱!体の形は…これは…!?」

五和「どうしたのです!?」

「人間…!?人間の子供です!」

別の魔術師が声を張り上げた。

「北の第一封鎖線からです!人間の少女を保護したと!」

五和「…おかしいですね」

建宮「ああ…」
避難に遅れた市民と考えれば普通かもしれない。だが今は『避難に遅れる』ということが有り得ないのだ。

通常の呼びかけと同時に、一帯の市民全員に人払い魔術の応用版をかけた。
それをかけられた者は無意識のうちにその場から離れてしまい、
術が解けるまで二度と帰ろうとしない。

つまりその少女は何らかの力を持っている可能性がある。

五和「秘密結社の者でしょうか…?」

建宮「いや、この地域にはそれほど高度な術を行使する結社はないはずなのよな…」
建宮「とにかくだ、その少女をここまで連れてきてくれと伝えてくれ」

「了解」

五和「…」

建宮「…」
歴戦の戦士の勘がある二人は何かを感じ取っていた。

今まで一番の悪魔出没、そして国家権力である清教・騎士がかけた高等魔術を防いだ謎の少女。

偶然と言えばそうかもしれない。この少女だって、他の地域の秘密結社の者がたまたま来ていただけかもしれない。
数こそ少ないものの、「必要悪の教会」の上位魔術師と同等の力を持つ者もそれなりにいる。

だが。
何か匂う。

建宮「五和…」

五和「ええ…何かがおかしいです…」

―――

―――

神裂とネロは現場の納屋の前に立っていた。

神裂「…気配は無いですが…かなりの魔力が残留してますね」

ネロ「ゴートリングもいたみてぇだな。それと―――」

その納屋の壁や屋根には大きな穴が空いていた。

ネロ「戦闘もあったみてぇだ。先に誰か寄越したか?」

神裂「いえ、探知した時点で退避していますので誰も交戦していないはずですが…」

ネロ「…とすると仲間割れか、共食いか、縄張り争いか」
悪魔は人間よりもかなり喧嘩っ早い。
そしてその喧嘩にも限度が無い。
さっきまでふざけ合っていた仲間と、一分後には殺し合いしてるなど悪魔の世界では日常茶飯事だ。

神裂「とりあえず中を確認しましょう」

ネロ「だな」

二人は臆することなく、壁にあいた穴から屋内へ入っていった。
納屋の中を見回す。
交戦の跡はあるものの、その交戦した者の死体が無い。

そして納屋の中にはかなり高濃度の力が残留していた。
それも大悪魔クラスの。

ネロ「誰かさんが大暴れしたみてぇだな」

神裂「ええ…」

イギリス国内において、ゴートリングとまともに戦える者など両手で数える程度しかいない。
しかもその者達は皆イギリス国家の傘下にいる。
悪魔狩りの最高指揮権を持つ神裂が知らない所で動くなど考えにくい。
それに神裂はその者達の力の「匂い」を良く知っている。

ネロ「仲間ってことはねえよな?」

神裂「ええ。ありえません。この匂いは知りません」

ネロ「…そうか…もう一つ。わかるだろ?」

神裂「はい…この感じは…」

更にもう一つ別の点で二人は引っかかっていた。
それもこの事件がただの悪魔出没では無いと証明する決定的なもの。

ネロ「ここに現れた悪魔、穴から這い出てきた連中じゃねえ」

神裂「何者かが召喚したようですね」

神裂は目を瞑り小さな声で呟いた。
すると顔の目の前の中に小さな紙が出現した。

通信魔術の一種だ。この紙が通信機の役割をする。

神裂「陛下」

エリザード女王『なんだ?お主から直接連絡してくるとは嫌な予感しかせぬのだが?』

神裂「アールストンの件で」

エリザード女王『何か問題でも?』

神裂「何者かが召喚した痕跡が。それと大悪魔クラスの力が残留しています」

最大主教『それは大問題でありけるのね』

神裂「最大主教もいらっしゃったのですか。確実とは言えませんが、万が一に備えて力の最大行使の『許可』を」

エリザード女王『…許可する』

最大主教『異論は無きよ』

神裂「ありがとう御座います。では」

通信を切ると同時に顔の目の前の紙が燃え、灰となって散った。

ネロ「建宮達には伝えなくて良いのか?」

神裂「さっきの通信は彼らにも繋がっていました」

ネロ「そうか」

神裂「ではもう少し調べましょう。召喚式がまだ機能しているのか、それとも…いえ…」

ネロ「ああ、その確認の必要は無えみてえだ」

納屋の天井や、床に黒い円が浮かび上がった。

ネロ「俺もこのパーティに混ざって良いか!?」
背中の金属ケースが勢い良く開き、中から巨大な赤い大剣レッドクイーンが姿を現した。

神裂「ええ!お好きなように!」
神裂の瞳が金色に輝き始める。そして七天七刀を前に構える。

背を向け合う二人を囲むようにして5体のゴートリングが現れ、一斉に飛び掛ってくる。


ネロ「――Let's rock!!」


―――

―――


建宮達はその通信内容を聞いて呆然としていた。

そしてすかさず現場に巨大な複数の反応が出現し、更に神裂とネロがこれと交戦を始めたようで、この離れた指揮所までがその地響きで大きく揺れた。

五和「やっぱり!」

建宮「おい!」
建宮は通信担当の魔術師に声を飛ばす。

建宮「万が一に備えてシェリーも呼べ!」

「了解」

その時、テントの中に甲冑を着た騎士が二人入ってきた。

騎士「連れて来ました。特に武装はしていませんでした」

その騎士の間に小さな少女が立っていた。
褐色の肌に燃えるような赤い髪、そしてタイトな皮のパンツに白い短めのマントを羽織っていた。

騎士「一応、ここに向かっている間に簡単な聴取はしたのですが、一言も喋りません」

建宮「そうか…お疲れさん、お前達は持ち場に戻っていいのよな」

五和がその少女の前に屈む。

五和「名前はなんていうのかな?」
優しい口調で問いかける。

少女「…」
だが無反応。虚ろな眼差しで指揮所の中を機械的に見回している。
まるで軍事ロボットが周囲の状況を確認しているように。

五和「パパとママは一緒じゃないの?」
ゆっくりと五和は手を伸ばし、その赤い髪に触れ、そっと撫でる。

しかしそれでも無反応だった。まるで人形のようなその瞳には一切の感情の欠片が無かった。

建宮「…」

その時、建宮のすぐ隣の地面に黒い円が浮かび上がり中からシェリーが現れた。

シェリー「状況は?」

―――

―――

ネロはレッドクイーンのアクセルを捻り、前方を横一閃になぎ払う。

神裂はギリギリまで引き寄せ、至近距離で七天七刀を抜刀する。

二人の剣撃で生じた衝撃波が納屋を簡単に爆散させ、地面には円形の巨大な溝が刻まれた。
その攻撃で三体のゴートリングが切断され、残り二体も大きく吹っ飛ばされた。

宙を舞うゴートリングの足をネロはデビルブリンガーで、神裂はゴッドブリンガーでそれぞれ一体ずつ鷲掴みにし、思いっきり引き寄せる。

ネロ「C'mon!!!」

神裂「ハァァッ!!!」

そしてそれぞれが向かってくるゴートリングの胸に剣を突き立てた。

この世の物とは思えない苦悶の呻きを上げ、二体のゴートリングは同時に散った。

だがそれと同時に更に黒い円が周囲に浮かび上がり、更に四体のゴートリングが出現する。

ネロ「Ha-ha!!!」

腕を振り上げて突進して来るゴートリングの一体を神裂はすれ違いざまに一閃にする。
刀を振り切った神裂へもう一体が強烈な蹴りを繰り出してくる。
神裂はそれに左手のゴッドブリンガーのストレートを重ね、激突する。

衝撃で爆風が巻き上がり、巨大な粉塵が聳え立つ。

その中を千切れたゴートリングの足が宙を舞う。
そしてそのゴートリングへ七天七刀を縦一閃に振り下ろす。

神裂「――御免!」

甲高い金属音と共に左右対称に一刀両断。


ネロは炎が噴き出しているレッドクイーンを振り下ろし、一体を叩き切る。

ネロ「Ashes to ashes!! Bye-Bye!!」

直撃の瞬間さらにアクセルを捻った為周囲が火の海と化し、
切られたゴートリングはそのまま灰となる。

ネロ「Blast!!!」

レッドクイーンをすぐさま引き抜き、もう一体のゴートリングを下から切り上げる。
浮かび上がったその巨体をデビルブリンガーで掴むと、

ネロ「Hey!! Take this!!」

神裂目がけて思いっきりぶん投げる。
神裂はすぐに振り向き、ゴッドブリンガーで強烈なストレートを放った。

湿った不気味な衝突音と共に宙を舞うゴートリングの体がひしゃげる。
そしてネロが巨大なリボルバー、ブルーローズを掲げ、

ネロ「Good night Bitch!!」

引き金を引いた。銃声と共にゴートリングは宙で爆散した。

神裂はゆっくりと余韻に浸るかのように七天七刀を鞘に納める。

ネロ「…」
ネロはその一連の動作を見つめていた。

神裂「…?あ、あの…?」
そのネロの視線に気付く。

ネロ「…いや、何でもねえ」
とある近しい人物とその動作が似てたのだが、そこは言わないでおいといた。

もはや納屋は跡形も無く、広い範囲の地面が大きく抉れ周囲の住宅も爆風によって倒壊していた。

ネロ「ま、一応終わったみてぇだな」

神裂「…そうみたいですね」
神裂は周囲を見渡しながら答える。
しょうがないとはいえ、この町の住人には大変申し訳ないことをしてしまったと心が痛む。

ネロ「これはめんどくせえな…」

存在は感じるのに周囲には召喚式らしきものが見当たらない。

離れた場所からの遠隔召喚か、
それとも視認できない程の巨大な術式が一帯に組まれているのか。

この二人は存在は感知できるものの、そのものを確認する術は無かった。
その時、二人の頭に一人の少女の顔が浮かび上がった。
見ただけでそれの性質や構造を瞬時に判別できる唯一の人物。

ネロ「あいつ呼んだ方いいんじゃねぇか?」

神裂「…そうですね。すぐに飛行機を手配させます」

ネロ「それじゃ時間かかるだろ。俺に任せろ」

ネロ「助っ人を使うぜ」
そう言いながらネロがコートのポケットから黒い石のようなものを取り出した。

神裂「それ…あの…念話できる…魔界の虫の…ですよね…」

ネロ「ああ、そいうえばお前らも使ったんだっけな」
ネロはその黒い石を固く握り、誰かへと念話を開始した。

神裂「…む、虫…」

―――

―――

ダンテは路上を歩いていた。時刻は夜、点滅する街頭が薄汚い道路を淡く照らしている。
行きつけのカフェ「Freddie」でストロベリーサンデーを食してきた帰りだ。

この時刻に大の男が一人でストロベリーサンデーだけを食べに来るなど奇妙極まりないが、10年来の行きつけである。
客も常連しかいないし、マスターもウェイトレスも顔見知りだ。

特に誰にも突っ込まれることは無い。

ダンテ「…今日も何も無えか…」
今日も昨日もその前の日も。良くあることだが、ここ数週間仕事が無い。

建前上は便利屋なので、時々悪魔とは無関係の依頼の電話も入ってくる。
人殺しの依頼から迷い猫探しまでピンきりだ。

悪魔関係以外には興味の無いダンテは無言で電話を切る。

悪魔関係以外の仕事をダンテにやらせるにはレディやトリッシュ、
旧友のエンツォやモリソン等の近しい人物の説得が無いと不可能だ。

あの学園都市の件の後、イギリスから対悪魔でのサポートの依頼があったが、その仕事内容を知った瞬間彼は「やらね」と即答した。

提示された報酬額はかなりだったが、ダンテは金に対しては全くといって興味が無い。
むしろ「金」というシステムが大嫌いだった。

人間は二言目に金、金、三言目には弁償弁償と喚く。
弁償と言われるのはダンテ自身のせいでもあるのだが。

ちなみにその後、報酬額を知ったトリッシュに「三日間ピザ禁止」の刑にされて地獄を見た。

しばらくして事務所前まで来た。

ドアを乱暴に蹴り開け、コートをビリヤード台にぶん投げる。
そして椅子に体を勢い良く落とし、足を机に上げて組む。

ダンテ「…なんだこりゃ?」
ふと机の上に目を落とす。そこには一枚の紙。口紅で短い文が書かれていた。

ダンテ「トリッシュか?」

その紙にはこう書かれていた。

『学園都市に行ってくる』 と。

―――

―――

例の一件で学園都市は大きく破壊され、特に第七区は完全な廃墟と化したもののそこは学園都市、僅か二ヶ月前で9割方元の姿に戻った。

かつての争乱の爪痕は所々に残る更地だけとなっていた。

例の大規模な争乱は世界中が注目した。

学園都市側は
「学園都市とローマ正教の戦争を誘発させようとする過激派の攻撃を受けたが、」
「それを撃退し完全に殲滅した」と発表した。

それと同時にローマ正教と講和し、共に争乱の終結及び恒久的な平和を宣言した。
その事もあってか学生の回収運動も特に火がつくことは無かった。

上条や土御門等の事件の関係者達はその宣言が建前上のもので、裏で何か取り引きがあったのだろうと勘繰ったが。

ただ仮初の平和でも喜ばしいものだ。
誰も真実を口外しようとは思っていなかった。
いつもの日常が戻ればそれで良かったのだ。

いや、上条には一つ変わった点があった。
本人も気付いたのだ。稀に自分の目が赤く光ることに。

上条は心臓が悪魔になった事は知らされていなかったので、ベオウルフと融合した影響の名残だと思っていた。
心臓はベオウルフの力で作られた為、あながちそれは間違っていない。

学校でクラスメイトと再会した時は驚かれたがここは学園都市、奇妙な事はありふれている。

「かみやんはターミネーターになった」と笑い飛ばされ、三日もたたない内に誰も気に留めなくなった。

土御門だけは時々ニヤつきながら「ベオやん」と彼を呼んだ。
時刻は午前9時を回ったところだ。

インデックスはベッドで愛猫のスフィンクスとじゃれあっていた。
上条は登校した。ちょうど一時間目の授業が始まったところか。

禁書「スフィンクス~♪…お腹へった…」

ベッドに寝そべりながら、頭だけを回して机の上を見る。
そこには上条が彼女の為に作り置きした、ラップがかけられた大盛りのチャーハンが三皿乗っていた。

上条は、以前はこんなに気前が良くなかった。
事件の前までは良くて大盛り一皿だっただろう。

だが例の件以来、上条はやけに優しくなった。

そしてインデックスも少し我慢するようになった。

「まだ食うのかよ・足りないんだよ。お腹へった」のやり取りが
「もういいのか?もっと食っていいんだぞ?・今日はこれくらいで良いんだよ」に変化したのである。

それでもかなりの量を食べていたが。

インデックスは知らないが、上条がここまで気前が良くなった原因はもう一つある。

学園都市から、例の事件の褒賞として多額の報酬が出たのである。
0の多さに上条は一瞬意識が飛びかけた程だ。
その日は一日中通帳の0を何度も数えていた。

もともと上条に報酬がいく筈も無かったのだが、土御門がアレイスターにけしかけたのである。

一夜にしてリッチになった上条だったが、質素倹約がモットーの彼が思いついた使い道は生活費、特に食費だけだった。
インデックスの胃が呻き空腹を報せる。

だがインデックスは食べようとはしなかった。

禁書「…一皿はお昼に。…もう二皿はとうまと一緒に夜に食べるんだよ…」
自分に言い聞かせる。上条は三皿ともインデックスの日中の分として作ったのだが。

その葛藤の最中、突如机の横の床に黒い円が浮かび上がった。

禁書「―――!!!!」
嫌になる程見た。悪魔の移動術だ。
無駄とわかっていながらも慌てて布団を被る。

物音がする。
穴から何者かが出現したのだ。

嫌な汗が全身から噴き出て、体が小刻みに震える。
強く抱きしめられているスフィンクスが何かを察知したのか毛を逆立てる。


「あなた何してるの?」


聞こえてきた声は知っているものだった。

禁書「…ト…トリッシュ?」

インデックスが布団から這い出てくる。

トリッシュ「禁書目録」

禁書「ト、トリッシュ。何しに来たの?」

トリッシュ「仕事よ。一緒にイギリスに来なさい」

禁書「え、え? 仕事?」

トリッシュ「ほら、さっさと行くわよ」
トリッシュがインデックスを片手で軽々と持ち上げて抱える。

禁書「ちょ、ちょっと!」

トリッシュ「詳しい事はあっちで聞かされると思うから」

禁書「と、とうまは?!」

トリッシュ「そうね…管理者も必要ね…あの坊や今どこにいるの?」

―――

―――

上条は学校の教室にいた。
例のベオウルフとの融合の件で何らかの後遺症を心配したものの、特に異常は無かった。
目が時々赤く光る以外は依然と全く同じだ。

教壇に立つ月詠小萌の授業が全く頭に入らないのも以前と同じだった。
睡魔が襲ってくるのも。

小萌「上条ちゃん!」

上条「は、はい!」
ウトウトしかけていたが慌てて飛び起きる。

小萌「寝たらまた補修ですよ!」

上条「はい!大丈夫です!起きてます!」
見なくてもわかる。土御門はニヤニヤし、青ピは羨ましそうな目をしているだろう。

だがそうではなかった。

上条「…先生?」
小萌が急に固まる。上条の背後を目を大きく開いて呆然と見つめている。教室全体を異様な沈黙が覆う。
土御門が何かを見てむせたのか、咳を連発している。

「いたいた」

「とうま!」

上条「へ?」
聞きなれた声に振り返ると。
真後ろにトリッシュとインデックスが立っていた。

上条「なななななんで!?ここに!?」
状況が全く理解できない。

青ピ「かかかかかかみやん!なななななんやこのエロいねーちゃんは!?」

土御門は相変わらず咳き込んでいた。
この金髪の妖艶な女性の正体を知っているから尚更驚き、むせてしまったのだろう。
教室がざわめく。

小萌「シ、シスターちゃん!?あと、ど、どなたですか!?」

インデックスが小萌に駆け寄る。

禁書「小萌、少し出かけるからスフィンクスお願いなんだよ」

そして胸に抱いていたスフィンクスを小萌に渡す。
小萌は状況が全く理解できないまま受け取る。

トリッシュ「イマジンブレイカー。来なさい」

上条「待て!どういうことだよ?!」

トリッシュ「仕事よ。イギリスで」

上条「仕事!?イギリス!?一体どういう…!」

トリッシュ「全く、めんどくさいわね」
トリッシュは左手で上条の胸ぐらを掴むと軽々と彼の体を持ち上げ、そのまま肩に担いだ。

トリッシュ「ほら、行くわよ」
肩の上で喚く上条を無視してインデックスを呼ぶ。

禁書「うん!」
インデックスが駆け寄る。

そして足元に黒い円が浮かび上がった。
ふとトリッシュは何かを思い出したように土御門の方へ顔を向けた。

トリッシュ「そうそう、あの水槽男に すぐ返すから心配しないで って伝えといて」

土御門は脂汗を浮かべながら苦しそうに頷き、左手を軽くあげた。

そして三人は黒い円の中に消えていった。

教室は沈黙。

土御門を省く全員が呆然として固まっていた。

―――

―――

シェリー「…そう…随分と面倒臭えことになってんな」
建宮から説明を聞いたシェリーは、指揮所の隅に座ってる赤毛の小さな少女に目を移した。

建宮「…」

シェリー「このガキは神裂とネロに見せた後、ウィンザー城に移送するわよ」
事態が事態だ。何が起こっているのかわからない今、この少女も無関係とは言い切れない。

五和「あ、あの…私もついて行ってもいいですか?」

シェリー「…好きにしな」

その時、神裂とネロが戻ってきた。

五和「プリエステス様!ネロさん!」

ネロ「よう」
ネロとシェリーが軽く顎で挨拶する。

神裂「一応悪魔の掃討は完了しました」
神裂「ですが封鎖線はそのままで。まだ機能している召喚式がある可能性が。」

建宮「了解なのよな。それとお二方に見て欲しいのが」
建宮は目であの少女の方を指す。

ネロ「…こいつは…」

神裂「…?知っている子ですか?」

ネロ「いや…会ったことはねぇが…」
見た目も、力の感じも一見普通の人間の少女だ。
神裂ですら気付いていない。
おそらくダンテも気付かないだろう。

だがネロは微かに異常を感じ取った。
以前にもこの感じは経験したことがある。

かつてのフォルトゥナの動乱で。

『人造悪魔』だ。

多数の悪魔の魂と力を凝縮し、それを人間的な技術で人や器物と合成させた存在。

通常の悪魔との融合や転生とは違い、
強大な力があるにもかかわらずその『匂い』がほとんどしないのが特徴だ。

ネロが初めて遭遇した人造悪魔は、
フォルトゥナ騎士の甲冑に多数の悪魔の魂が合成されていたものだった。

悪魔的な匂いがしなかった為、
初めて遭遇した時ネロは仲間だと思い込んでしまい危うく背中を貫かれるところだった。

ネロ「…こいつから目を離すなよ。人造悪魔かもしれねぇ」

確証は無い。あのフォルトゥナの人造悪魔程の匂いもしない。
もしかして普通の人間の少女が何かに巻き込まれただけかもしれない。

だが、あのフォルトゥナのよりも更に洗練された人造悪魔という可能性もある。

フォルトゥナ以上の悪魔技術を持っている『人間』がいるとは考えにくいが、可能性は0とは言えない。

かつて実際に何人かいた。例えばアーカムという大魔術師。

彼はスパーダの力を欲し、不完全ながらもその強大な力を体に宿すことに成功した。
その直後にダンテとバージルによって倒されたが。

シェリー「ウィンザー城に移送するわ。オルソラと一緒に解析してみるよ」

神裂「インデックスが今こっちに来ます。先にここを調べさせた後、そちらに回しますので」

シェリー「わかった。おい」
シェリーが五和に向けて軽く手を挙げた。

五和「じゃあ、いきましょうね。何も心配ないからね」

五和が優しく語りかけながら少女の手を取る。
少女は特に抵抗することも無く、指示に従って立ち上がった。

少女を挟むようにしてシェリーと五和が並ぶ。
足元にシェリーによる黒い円が浮かび上がる。

ネロ「気をつけろよ。もしかしたらそのガキが最初の悪魔達を殺したかもしれねえ」

シェリー「あたしがいる。大丈夫さ」

三人は沈むようにして消えていった。

それと行き違いで床に金色の円が浮かび上がった。

ネロ「やっと来たか」
トリッシュとインデックス、そして上条が現れた。

上条「おぁ!か、神裂?!」

神裂「ようこそイギリスへ」

ネロ「そういえばセットだったか。まあその右手また役に立つかもな」

禁書「何があったのかな?」

トリッシュ「私はもういいかしら?別の仕事の最中だったんだけど?」

ネロ「ああ、あんたはいいぜ」

トリッシュ「ま、なんかあったらまた呼んで」
トリッシュは現れたの時と同じ金色の円に沈んでいった。
神裂が上条とインデックスに状況を説明する。

上条「つまり…その召喚式を探して俺の右手で壊せばいいんだな?」

ネロ「まあそっちの方が手っ取り早いしな」
別に上条の右手が無くともネロと神裂で壊せるのだが、手段はどうしても力ずくでの破壊になる。

それよりも周囲に負荷のかからない上条の右手を使ったほうがいい。

無くても別に良かったのだが、あるのならば使うにこしたことは無い。

神裂「では、早速現場に行きましょうか」

―――

―――

ダンテは学園都市のビルの屋上にいた。
トリッシュの置手紙を見て、悪魔的な嗅覚で『何か楽しい事』を察知したダンテは、あまり得意ではない悪魔の移動術で学園都市に来たのである。

準備にいささか手間取ったが、なんとか成功して学園都市に辿り付いた。
とはいえ一発で成功したわけではなかった。

一度目は南極の氷の中、二度目はエジプトの砂の中に飛ばされ、
三度目にしてやっと成功した。

ダンテ「もう二度と使わねえ…」
コートにまとわりついている砂を手ではたきながら呟く。

ダンテ「…つーかいねえじゃねえか。どういうことだ?」

学園都市に到着したのはいいものの、トリッシュの気配が全く感じられない。
彼女はすれ違いでイギリスへ行った事をダンテは知らない。

ダンテ「しょうがねえ…探すか」
例の事件の関係者に手当たり次第に聞けば何かわかるかもしれない。

ダンテ「ケルベロス!」
どこからともなく飛んで来た青いヌンチャクがダンテの足元に突き刺さる。

ダンテ「よう、頼みがある。あの日の関係者達を探すのを手伝え」

ケルベロス『…どういう意味だ?』

ダンテ「鼻を使え」

ケルベロス『…』

ダンテ「匂いを追うんだ。得意だろワンちゃん」

ケルベロス『…』

―――

―――

神裂、ネロ、上条とインデックスは例の現場の納屋にいた。
いや、厳密に言えば『納屋があった場所』だ。
周囲は神裂とネロの強大な力によって徹底的に破壊されていた。

上条を直接連れてきたものの、召喚式が壊れた様子は無かった。
どうやら核を別に持つ遠隔召喚の一種のようだった。

ネロ「どうだ?なんかわかったか?」

禁書「…この形の召喚式は見たこと無いんだよ。旧来の物がベースだけど、未知の構築技術が使われてるんだよ」
禁書「多分これを作った人のオリジナルだと思う。フォルトゥナのよりも更に洗練されてるんだよ」

禁書「それに発見される事を前提にしてるのか、核の位置もぼかされれて上手く隠蔽されてるんだよ」

禁書「核の場所を突き止めるのはもう少し時間がかかるかも」

ネロ「へえ…」

神裂「…相手はかなりの実力者のようですね」
インデックスの目を逃れるレベルの技術だ。

禁書「それともう一つ、この召喚式に変なところがあるの」
禁書「物凄く洗練されてるのに、所々に不自然な無駄な構文があるんだよ」

禁書「もしかして二重の機能を持つ術式か、」
禁書「それ以前にこの召喚式自体が何かを隠すためのダミーかもしれないんだよ」

ネロ「これでトリッシュに情報を送れ」
インデックスに黒い石を手渡す。

ネロ「解析と同時にこれを作れそうな奴をリストアップさせる」

禁書「わかったんだよ」

その時、神裂の顔の前に一枚の紙が出現した。

建宮『プリエステス!出現報告!そこから5km南に10体以上、ゴートリングも確認なのよな!』

神裂「!」

建宮『…お…お…も、もう一ヶ所、いや二ヶ所でも確認!』
複数の地域での同時出現。
今ここでゆっくり調査してる暇は無かった。

ネロ「一番近いのには俺が向かう」

神裂「私は彼らをウィンザー城に届けた後、至急現場に向かいます」

ネロ「そういうことだぜ。聞いたな?あんたらはウィンザー城でシェリー達を手伝え」

上条「へ?」

禁書「ほぇ?」

神裂「いきましょう!」
神裂は事態を把握しきっていない二人の手を取り、
金色の陣を構築してウィンザー城へ向かっていった。

ネロ「…こいつは結構デカイ祭りになりそうだぜ」
目が赤く輝く。
ネロは南を向き少し腰を落とすと、地面を思いっきり蹴った。
その瞬間粉塵が上がり、彼の姿は消えた。

―――
950 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 01:26:18.40 ID:K4wQQqA0
―――

御坂は教室にいた。
授業など上の空で、ぼんやりと窓から外を眺めていた。

御坂「…だいじょうぶかな…あいつ…」
例の事件が終わり一段落つくと、上条の事をいつも考えるようになった。
以前からも良く考えていたのだが。

上条のときたま光る赤い目。

本人は 大丈夫さ と言っていたが、どうにも安心できない。

御坂「はぁ…」

教師「御坂さん!」

御坂「はい!」
教師に呼ばれ慌てて我に返る。

その時だった。教室の前の方のドアが突然勢い良く開いた。
そして赤いコートを着た銀髪の大男がズカズカと乗り込んできた。

教師「…なッ!!なッ!?」
教室全体がどよめく。

御坂「はぁぁッ?!!」

ダンテ「よう、元気か?」
951 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 01:29:37.68 ID:K4wQQqA0
教師「え、えッ?!!!!」

ダンテ「慌てんな、すぐ出るさ」
ダンテは慌てふためく周りの少女達を気にもせず御坂へ真っ直ぐと向かう。

御坂「なななんでここに!??」
興奮のあまり前髪に電気が走る。

ダンテ「トリッシュ来なかったか?ってその感じじゃ知らねえみてぇだな」

御坂「えッ?!ええ?!何?!」

ダンテ「ワリィ、邪魔したな」
コートをなびかせてドアへ向かう。

ダンテ「Adios Senorita!!Ha-ha!!!!」
軽くウインクをして颯爽と教室から出て行った。
数秒後に彼を追う警備の者達が廊下を走り抜けていった。

御坂「…な、何なのよ一体…!?」

入れ違いに黒子がテレポートして現れる。

黒子「お姉さま!あの…!」

御坂「今こっちにも来たわよ…」

―――
952 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 01:34:42.54 ID:K4wQQqA0
―――

窓の無いビル。

『「窒素装甲」と何者かが交戦しているようですがどういたしましょう?』
電子的なノイズの混ざった声。

アレイスター「かまわん」

『では「心理定規」と部隊を派遣します』

アレイスター「場合によっては第四位を使ってもかまわん。いかなる手段を使っても良い。『浜面仕上』を処分しろ」

『了解』
そこで通信は終了した。

アレイスター「さて…」
学園都市の修復も一段落つき、再びプランを再開させたのだ。

その時、この核爆発でも傷一つつかない強固なビルが突然激しく揺れた。
同時に強烈な悪寒が辺りに立ち込める。

アレイスター「…まさか…な…」

そしてアレイスターの正面の壁から、銀色の巨大な剣が火花を散らして生えた。

アレイスター「そのまさかか…」
953 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 01:37:54.31 ID:K4wQQqA0
その剣はぐるりと半円を描くように、頑丈な壁をまるで豆腐のように易々と裂いていった。
そして切られた部分の壁が凄まじい轟音を立てて内側に倒れこんだ。

高さ3m程の半円の穴があく。そしてそこには人影。

アレイスター「スパーダの息子、ダンテか」

ダンテ「よう、お前がアレイスターか?」
銀色の大剣リベリオンをギターケースにしまいながら中に入ってくる。

アレイスター「何か?」

ダンテ「トリッシュ来なかったか?」

アレイスター「いや。来ていないが」

ダンテ「そうか。邪魔したな」
踵を返し、入ってきた穴へと向かう。

ダンテ「あ~、悪ぃなこれ。ドアが見当たらなかったもんでよ」
穴を指差しながら振り向く。

アレイスター「…かまわんよ」

ダンテ「それとお前少しは外に出た方いいぜ。顔色が悪すぎる」
それだけ言うと穴の中へ消えていった。

アレイスター「…余計なお世話だ」
954 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 01:41:47.38 ID:K4wQQqA0
ダンテとすれ違いで、土御門がテレポーターと共に現れた。

土御門「今いいか?一つ報告することがあるぜよ」

アレイスター「何だ?」

土御門「トリッシュが禁書目録と上条当麻をイギリスに連れて行ったぜよ。すぐに返すから心配すんなと」

アレイスター「…そうか」

アレイスターは思った。この事をダンテに伝えれば良い厄介払いになると。
だがどうせ凄まじい速度で移動している。追いついて伝えるなど誰ができる。

土御門「…これは…?」
土御門が壁にあいた大穴に気付く。

アレイスター「ダンテだ」

土御門「ああ…なるほど…」
ダンテがやった。それだけで充分納得だ。
特に事情を聞こうともしなかった。
厄介ごとに巻き込まれるのはゴメンだ。

土御門「じゃあ俺は行くぜよ。授業が始まっちまうからな」

アレイスター「うむ」
955 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 01:43:20.10 ID:K4wQQqA0
テレポーターと共に土御門が消える。

アレイスター「…イギリス…そうか…」

『お呼びでしょうか』
今度は別の電子的な男の声が響く。

アレイスター「ウロボロス社のCEOへ伝えてくれ。『直で話したい事がある』と」

『かしこまりました』

通信が終わる。


アレイスターは一人水槽の中で思考を巡らす。

そして呟く。

アレイスター「…アリウスめ…」


―――
956 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 01:47:55.99 ID:K4wQQqA0
今日はここまで。
再開は午後二時あたりから。
明日中に頃合を見て次スレへ引越しします。

ちなみに捕捉すると赤毛の少女は若き頃のルシア。
χ(カイ)は彼女の人造悪魔としてのシリアルコード。
957 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/03/20(土) 01:54:13.38 ID:zk4wPl.o
復活したと思ったら続ききてた

958 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/03/20(土) 02:06:34.26 ID:CujRevY0
アリウス…あの鉄拳の平八みたいな奴かwwwwww
959 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします2010/03/20(土) 02:18:34.88 ID:uPLqJ.AO
今更ながら…クオリティ高過ぎる…

同じとこで書いてるのが恥ずかしくなってきた…
超応援してる。
960 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/03/20(土) 02:19:00.06 ID:GyifqQ2o
懐い2のオッサンかww
961 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/03/20(土) 02:39:24.16 ID:zk4wPl.o
ああサリーちゃんのパパだっけ
962 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/03/20(土) 02:42:31.53 ID:L.l6SYSO
歴史上最大級の水爆の95倍のエネルギーで一方さんが投げたコンクリ壁に耐えたビルも、ダンテの前では豆腐かwwww
963 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/03/20(土) 08:49:18.26 ID:0n9f.6Ao
おはよう
東京のなんとか学校が爆破された夢見た
学園都市って東京って設定だったよなとか考えながら寝たせいかな
964 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:09:08.38 ID:K4wQQqA0
―――

インデックス、上条、シェリー、五和、そして例の赤毛の少女は、
ウィンザー城地下の最下層の一室にいた。ウィンザー城はもともと強固な魔術的要塞だ。
更に、今はシェリーの力によって張られた何重もの結界で守られている。

四方10m程の石畳のまるで地下牢のような部屋。
壁にかけられたろうそくの淡い光によってぼんやりと照らされていた。

地下室の気温は低く、鳥肌が立つほどヒンヤリとしていた。

部屋の中央の小さな椅子に赤毛の少女はピクリともせず置物のように座っていた。
その真正面に向かい合ってインデックスがこれまた小さな椅子に座っていた。

シェリーはそのインデックスの真後ろに座っていた。
顔を傾け鋭い目で赤毛の少女を睨みながらオイルパステルを指で回していた。

上条と五和は壁際の椅子に黙って座っていた。

部屋の四隅には重厚な盾と抜き身の剣を持った重装騎士が立っている。


禁書「…人造悪魔だけど、製法は良くわからないんだよ。多分科学技術が使われてるせいかも」

禁書「でもこれだけは確実なんだよ。フォルトゥナのとは比べ物にならないくらい高水準なんだよ」

シェリー「…やっぱりな…力の大きさは?他には?製造者の事とか目的とかは?」

集中するインデックスの頬を汗が伝う。
禁書「…そこの情報は中々読み取れないんだよ。かなり頑丈な防護がかかってる…もうすこし時間がかかるかも」
965 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:15:50.94 ID:K4wQQqA0
その時、部屋の重いドアが軋みながら空いた。

オルソラ「お待たせいたしました」

アニェーゼ「そいつが例の危険因子ですか」

オルソラと大きな杖を持っているアニェーゼ、そして書物や筆記用具を抱えた数人の修道女が部屋に入ってきた。

シェリー「やっと来たか」

助手の修道女達が部屋の隅の机に書物や筆記用具を並べる。
オルソラは別の隅から椅子を運んでその机の傍に座る。

アニェーゼはシェリーの隣に立ち壁に寄りかかる。

シェリー「インデックス、あの黒い石でオルソラに見たものを流し込め」

禁書「うん」
インデックスは先ほどネロから渡された黒い石を取り出し、手に握る。

オルソラは古いノートを広げ、インデックスから来る情報を羽ペンで書き出し始める。
966 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:22:01.97 ID:K4wQQqA0
禁書「…何か…これ…?」

シェリー「どうした?」

禁書「何かの術式の一部かな?」

オルソラ「そのまま続けて下さいまし」

禁書「του σάπιοι όνειρα βασιλιάς της τελικής θρόνο.....」
インデックスが見える物をそのまま読み上げる。

シェリー「…」

禁書「感じからして何かの一節らしいんだけど私の記録には無いんだよ」

オルソラ「悪魔に冠する物でしょう」
インデックスは全世界のありとあらゆる魔導書を網羅しているといっても、その範囲は「通常の魔術」だけだ。

悪魔関係はフォルトゥナの物しか記録していない。
彼女がその脳にまだ入れていない悪魔関係の魔導書は大量にあるだろう。

上条「なあ、意味教えてくんねえか?こう見えても俺は大悪魔の2000年の記憶を見たんだぜ。何かわかるかも」

シェリー「『腐敗せる王はひとり夢見る。大いなる神の座を、その比類なき力を』。どうだ?」

上条「…う…ん…」
何か知っているような気がする。
967 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:26:44.26 ID:K4wQQqA0
オルソラ「心当たりがあるのでございますか?」

上条「…よくわかんねえ…」

シェリー「まあ最初から期待はしてないわ。インデックス、今のトリッシュに送って」

禁書「うん…」
インデックスの前髪が汗で額にへばり付いている。

五和「…少し休憩しませんか?」

オルソラ「そうしましょう。わたくしも少々情報を整理したいのですが?」

シェリー「10分休憩だ」

オルソラとシェリーが立ち上がり、アニェーゼも壁から離れる。

シェリー「あたしはオルソラ・アニェーゼと蔵書に行ってくるけど心配ないわよ」
シェリー「ここはあたしの結界の中、腹の中だから何かあったらすぐ気付くからよ」

五和「わかりました」

三人はシェリーの作った陣に沈んでいった。
968 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:31:04.58 ID:K4wQQqA0
上条「インデックス…大丈夫か?」
上条は立ち上がると、部屋の中央のインデックスの傍へ駆け寄った。
五和もその後に続く。

禁書「うん…」
汗をかき息も荒い。

悪魔を解析するのは通常の魔術的な物とはまた勝手が違う。
慣れない作業を長時間集中して行えば疲労するのも当然だった。

五和「さあ…」
インデックスの隣に屈むと、五和はどこからかおしぼりを取り出して彼女の顔を優しく拭いた。

上条「…本当にお前大丈夫か?」
心配そうにインデックスの顔を覗き込む。
969 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:33:49.85 ID:K4wQQqA0
禁書「一つ…」

上条「…なんだ?」

禁書「…お…お、お腹へったんだよ!!」
突然の大声に一同が一瞬固まる。

禁書「…やっぱり…我慢するんだよ」

上条「いやいやいやちょっと待ってろよ!」
上条は学生服のポケットを漁る。

五和「待ってて下さい!」
五和もポケットを漁り、何か口に入れるものが無いか探す。
970 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:39:51.03 ID:K4wQQqA0
それを見かねたのか、室内にいた一人の修道女が口を開いた。

「あの、ただ今何かお持ちしますので…」
上条と同年齢くらいのその修道女は部屋から小走りで出て行った。

上条「おお!インデックス良かったな!」

禁書「うん!」

ふとインデックスは真正面の赤毛の少女を見た。
相変わらず置物のように黙って無表情のまま座っている。

上条「…」

五和「…」
上条と五和もそのインデックスの視線に気付き、赤毛の少女を見る。

上条「それにしてもな…」

五和「ええ…作り物なんて…信じられませんよね」
外見はどこからどう見ても人間の幼い少女だ。
この少女の手を五和が取った時、確かに温もりもあった。

あの修道女の少女が戻ってきた。手にはパンが詰め込まれた籠とマーマレードの瓶。

「すみません…すぐにご用意できるのはこれ位しかなくて…」

禁書「いいんだよ!!!ちょーだい!!」
971 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:44:12.73 ID:K4wQQqA0
インデックスは相当空腹だったのか、猛烈な速度でパンとマーマレードを消費していく。

五和「相変わらず凄いですね…」

上条「ははは…」

その時、急になぜかインデックスが止まった。

禁書「…」
パンを加えながら赤毛の少女を見る。

赤毛の少女がジッとインデックスを見つめていた。
その視線は彼女の口に集中していた。

禁書「……ふぁなふぁほふぁへふ?(あなたも食べる?)」
そしてマーマレードが塗られたパンを差し出す。

上条「…おいい…?」
インデックスが誰かに食べ物を進んであげようとするのなど珍しすぎる。

そしてそれ以前に相手は人造悪魔だ。

五和「食べないのかな?」
五和が横から優しく語り掛ける。

赤毛の少女は目を見開き、インデックスが差し出すパンを凝視している。
972 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:47:39.97 ID:K4wQQqA0
五和は少女の手を優しく取って、パンをその手に取らせる。
そしてゆっくりと口の近くへ。

赤毛の少女は目の前のパンを凝視している。

五和「おいしいよ?ほら、口をあけてごらん?」

少女が口を開け――

パンを小さく一噛み。

無症状のままゆっくりと咀嚼する。

五和「そうそう!」

上条「おおお…!」
なんだか良く分からないが、なんとなく喜ばしい気がする。

赤毛の少女はそのまま黙々とパンを食べ続け、あっという間に平らげてしまった。

上条「ど、どうだ?!旨いか?!」

禁書「もう一つ食べる?!」
インデックスがもう一つパンを差し出す。

五和「どう?もっといるかな?」

返事は無い。だがその答えが返って来る。
赤毛の少女は相変わらず無表情なままだが、今度は自ら手を伸ばしてパンを取り口へ運んだ。
973 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:51:37.10 ID:K4wQQqA0
先ほどまで外部からの刺激には全く反応しなかったこの少女が、自ら進んでパンを食べている。
上条・インデックス・五和はこの少女が敵の可能性が高いという事も忘れてはしゃいだ。

部屋の四隅にいる騎士達は不思議そうに互いに顔を見合わせている。

そして。

五和「どう?おいしい?」
その五和の問いかけに。

赤毛の少女は小さく頷いた。

「あの!もっと持ってきましょうか?!」
先ほどパンを持ってきてくれた若い修道女も嬉しそうな笑みを浮かべる。

上条「頼む!」


シェリー「てめえら…なにやってやがる…?」

アニェーゼ「…状況がわかってんですか?おめでてぇ頭してますね」


その時だった。
一同が振り返ると、部屋の隅にシェリーとアニェーゼ、オルソラ立っていた。
足元にはシェリーが使用した黒い円。

シェリーとアニェーゼの表情は険しかった。

974 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 14:59:10.72 ID:K4wQQqA0
上条「おい、この子パン食ったぞ!それにこっちの言葉にも反応したぜ!」

オルソラ「あら、まあまあ…」
オルソラがパタパタと赤毛の少女に駆け寄っていく。

シェリー「それが?」

上条「それがって…!」

アニェーゼ「何寝ぼけちまってるんですか?『コレ』は敵ですよ?』

上条「でもよ、まだ確実に敵ってわけじゃないんだろ?もしかして…」

シェリー「後にしてよ。今はとにかく作業再開」

オルソラ「まあ、お食べになったのでございますか。それはそれは…」
オルソラが穏やかな陰りの無い笑顔で少女へ話しかけている。

シェリー「オルソラ!」

オルソラ「は、はい!」

アニェーゼ「ほらほら、さっさと下がりやがってください」
アニェーゼが上条と五和へ向けて手で合図する。

シェリー「じゃあ始めんぞ。再開よ」

―――
975 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 15:06:09.32 ID:K4wQQqA0
―――

デュマーリ島。

遥か昔、異教の神々や精霊が住む聖地とされ厚く信仰されていた聖地。
ここに住まう者達が崇めていた神々は天界の存在ではなかった。

悪魔だった。

2000年前の大戦によってこの島も戦火に包まれ、彼らが信仰する『神』もかのスパーダによって封印された。
そして人々は長き時間を経ていつしかその戦いの記憶を失い、この島も歴史から消えて忘れ去られた。

だが現代になって別の形で再び注目を浴びることになった。大量のレアメタルが地下に眠っている事が発覚したのである。

その採掘権を手に入れたのは国際的な複合大企業ウロボロス社だ。
科学サイドで、学園都市の次に力を持っている組織はどこかと問われれば皆ウロボロス社と答えるだろう。

学園都市とウロボロス社は深く繋がっている。
ウロボロス社は様々な資源を学園都市に、学園都市は最先端技術をウロボロス社に提供していた。
学園都市の発展支援をしたのも、例の事件の復興の資金援助をしたのもほとんどがウロボロス社だ。

お互いが切っても切れない重要なパートナーだった。

だがそんなウロボロス社の評判は表の顔にしか過ぎなかった。全ては隠れ蓑だった。
976 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 15:12:22.40 ID:K4wQQqA0
現代社会の注目を浴びたデュマーリ島は急速に発展した。
高層ビルが立ち並び、スーツを着た多くの者が行きかう近代都市となった。

そのオフィス街の中に一際高く聳え立つビルがあった。
ウロボロス社のだ。

その最上階、巨大なホールに一人の壮年の男がいた。

毛皮の襟の誰が見ても高価な物だとわかる赤いコートを羽織り、その下も純白のスーツ。
針金のように逆立っている短く黒い髪、常に人を見下しているような鋭く冷たい目、立派な口ひげ。
そして口に咥えられたキューバ産の最上級の葉巻。

ウロボロス社を一世代でここまで発展させたCEO、アリウスだ。
977 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 15:15:15.63 ID:K4wQQqA0
アリウスの前には円筒形の台が立っており、上に水晶の球が載っていた。

アリウス「…スパーダの孫に…禁書目録か」
そう呟き、咳にも似た声で短く笑った。

アリウス「いいテストだ」
水晶に手を載せる。


アリウス「χ、そのまま潜り込め。『力』は俺の命があるまで全て切って隠蔽しろ」


その時、ホールにおずおずと小汚い男が入ってきた。

「アリウス様、アレイスター殿が直で話したいと…」

アリウス「…よかろう。今から向かう」

「かしこまりました」
978 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 15:24:56.24 ID:K4wQQqA0
彼、アリウスの最終目的。それはかつて存在した強大な悪魔の力をその身に宿すこと。

目的の『覇王』と呼ばれた悪魔は2000年前にスパーダによって厳重に封印された。

覇王。『絶望の具現者』。

その力は『具現』。
己や、対称の概念や記憶、恐怖を『実体化』させる事ができる。

魔帝の『創造』によって作り出される存在は『新たに生まれた』もの、つまり『忠実な複製』だ。

だが覇王の『具現』によって『実体化』された存在は『完全な本物』となる。

魔帝は己の体が傷ついた時は『新たに創り直す』のに対し、
覇王は己の体を以前の状態へと『実体化』させる。つまり傷が付く前の状態に戻すのである。

そして更に、魔帝とは違い覇王は己の魂が完全に消滅しても再び具現化できる。
覇王の存在を記憶している者がいる限り。その者の記憶を利用して覇王は具現化し再び蘇る。
979 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 15:29:55.78 ID:K4wQQqA0
つまり覇王を完全に滅ぼすには、彼の存在・力を知る者全員が死せるか、
力の届かない領域、例えば封印状態になるかしないと不可能なのだ。

彼の力を知る第三者がいる限り生と死を超越し続ける存在。

更に純粋な戦闘能力も魔帝やスパーダに次ぐ。

それが『覇王アルゴサクス』。別名The Despair Embodiment、絶望の具現者。

だがその力にも欠点は幾つかある。一番大きいものは魔帝の『創造』との一番大きな違いでもある。
『創造』は無から有を作れるのに対し、『具現』は無からは何も作れない。

1の物から1しか作り出せないのだ。

そしてどうしても他者の存在に依存してしまう。

魔帝は封印された2000年の間も、一人で力を高め続けた。
強引に力を溢れさせ、擬似的な復活も成し遂げた。

だが覇王は違う。スパーダに徹底的に叩きのめされ、その瞬間のある意味『死んだ』状態で封印された為、
今尚具現化する事ができずに当時のまま眠り続けている。

いわば2000年間、時間が止まった状態だ。
彼は他者の概念に依存しないと復活ができないのだ。
980 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 15:33:33.93 ID:K4wQQqA0
その力が錆付いて風化していないか、今尚しっかりと動くかどうか確認すること。
それがアリウスの今回の目的。

彼はその封印を解く術を見つけた。
完全な復活には『アルカナ』と呼ばれる鍵が必要だが、
5割程度の力を取り出すのはその『アルカナ』無しでもできる。

今回はそれのテストだ。

少しでも封印を解ければ『具現』の力が漏れ出す。

そうすれば覇王は一時的に不完全ながらも具現化でき、復活できる。
その力をスパーダの孫、魔剣『スパーダ』にぶつけ確認するのだ。

今人間界で最も魔界に近いイギリス。
悪魔の力が渦巻く半ば魔窟と化した島。

その巨大な力場を使い、χと名づけた人造悪魔を核にして封印解除式を起動する。

当然、あの少女にはその封印解除式を守る役目もある為、かなりの戦闘能力を持たせてある。
彼の今までの集大成とも言える最高傑作だ。

スパーダの一族とある程度渡り合えるほどの水準だ。

並みの大悪魔など軽くあしらえる程の力をもっている。


―――
981 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 15:36:47.07 ID:K4wQQqA0
四時まで休憩して次スレ立ててくる
982 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/03/20(土) 16:04:38.63 ID:Eb7BAVIo
おk。
2か、兄貴が生きてパパーダが坊やに渡ってれば違う展開にもなるか
983 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]:2010/03/20(土) 16:13:06.76 ID:K4wQQqA0
次スレです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1269069020/
984 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 16:18:17.37 ID:K4wQQqA0
―――

ウィンザー城の地下の一室。

禁書「…」
目を見開き、正面に座っている少女をジッと見つめる。

禁書「…遠隔術式の一種かな…?何者かが離れた場所から指示を出してるんだよ」

オルソラ「その方が製作者、もしくは黒幕で御座いましょう。その遠隔術式の形式はどういった物ですか?」

禁書「これも…未知の物なんだよ」

上条「俺の右手で壊せないのか?そうすれば手っ取り早いぜ」

禁書「それは危ないんだよ。何か別の機能があったり、これと同期してる拘束式とかがあったら大変なんだよ」

上条「…へ?」

シェリー「だから今の分からない段階で、闇雲に壊すと暴走起こしたりするかも知れねえって事よ。素人」
シェリーが指先でオイルパステルを回しながら上条に答える。

上条「…そうか」

禁書「今解析してるけど、もう少し時間がかかるかもなん…!!」
その時インデックスが言葉を詰まらせた。

上条「…おい?」
985 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 16:24:06.53 ID:K4wQQqA0
オルソラ「どうかいたしましたか?」

禁書「嘘…何も見えなくなっちゃったんだよ!」

シェリー「チッ…やられたか」

上条「おい!何がどういう事だよ!?」

禁書「全部隠されちゃったみたいなんだよ」

オルソラ「恐らく操作している何者かがこの子の力を隠蔽してしまったのでしょう」

インデックスの目には何も映らなくなった。
今やインデックスには、この赤毛の少女はどこも異常の無いただの人間にしか見えなくなっていた。

シェリー「こうなったら強攻策でいくしかないわね」

アニェーゼ「ですね。やっちまいましょう」

五和「そ、そんな…!」

禁書「!!」

シェリー「しょうがねえだろ」

上条「強攻策って?」

シェリー「解剖」
986 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 16:30:02.26 ID:K4wQQqA0
上条「…おい!!そんな…!?」

シェリー「見た目だけで判断してんじゃわよ。こいつは人造悪魔だ。人間じゃねえ」

上条「ふざけんな!!それでも生きてんだろ!!」

シェリー「こいつが今回の件に関係してるのは確実だ」

上条「だからって!殺すのかよ!」

シェリー「うるせえ!てめえのその甘ったるい情でイギリスが振り回される訳にはいかねえんだよ!」
シェリー「この悪魔一体の為に6000万の命を危険に晒せってか!!?ざけんなよガキが!!」

上条「…で、でもッ…!!」

シェリー「それに何が『生きてる』だぁ!?どの口でんな事をほざきやがる!?」
シェリー「てめえもあの学園都市の件で悪魔を殺し捲くっただろ!!」
シェリー「既にてめえの手もコイツらの血で汚れてるんだよクソが!!」

上条「……」
もはや反論できる言葉は無かった。
そう、上条もあの日多くの魂をその手で破壊した。あの悪魔達もしっかりと生きている存在だった。

シェリー「偽善者が」

上条の手も血で濡れている。
987 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 16:37:36.35 ID:K4wQQqA0
シェリー「形だけ人間に似てるってだけで特別扱いしてんじゃないよ…バカかてめえは…」

シェリーが吐き捨てる。
反対の姿勢を一瞬見せた五和とインデックスも俯いてしまった。

シェリーは口に出さなかったが、この二ヶ月で100を越える同胞が悪魔との戦闘で戦死している。
重傷を負って戦列を離れた者達はその5倍以上だ。
現場を見たことの無い上層部の老人達は「誇り高く名誉ある戦死だ」というが、実際はそんなものでは無かった。

皆苦痛や恐怖で泣き叫びながら悲惨な最期を遂げた。

楽に、一瞬で死ねた者などほとんどいない。

顔で身元が確認できる遺体など両手で数える程度しかなかった。

シェリーはその死んでいった者達に誓ったのだ。
彼らが命を賭して守ろうとしたイギリスを何が何でも守り抜くと。

部下の、仲間の、彼らの生きていた頃の笑顔が今でも鮮明に頭に浮かぶ。

この部外者の少年の、勝手で直情的な言動が彼女の誓いに触れてしまったのだ。

そして胸の中に溜まっていた今までの怒りの一部が噴き出してしまった。

シェリー「クソッ…」

彼女はイラついていた。
何よりもそんな自分の不甲斐なさに。
988 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 16:42:17.27 ID:K4wQQqA0
アニェーゼはただ黙って聞いていた。

その表情は険しかった。

彼女は幼いながらも『252人』の優れた部下を『持っていた』優秀な指揮官だ。
そしてもちろん彼女達も対悪魔への戦闘に狩り出されている。

この二ヶ月でアニェーゼ部隊の実際に稼動できる隊員数は『230人』となった。

5名が重体で意識が戻らず、15名が重傷を負って今も床に伏せ、そして2名が帰らぬ者となった。

彼女もまたシェリーと同じくその心はどす黒い殺意の篭った闘志で煮えたぎっていた。

シェリー「おい!」
乱暴に立ち上がり、イラつきながら修道女の一人を顎で呼ぶ。

シェリー「あの超音速機を用意して。フォルトゥナに行って人造悪魔の資料を借りてくる」
シェリー「ステイルをここに呼んで。『コレ』を見張らせろ」

「わ、わかりました…」

シェリーはドアを乱暴に開け部屋を後にした。
989 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 16:48:15.62 ID:K4wQQqA0
上条「…」

禁書「…」

五和「…」

アニェーゼ「当然です。甘ぇんですよ」

オルソラ「まあ…仕方ありません」
オルソラ「…彼女もかなり苦しい立場なのです。悪く思わないであげてくださいまし」

上条「……ああ…わかってるよ…」
上条は部屋の中央の椅子に座っている赤毛の少女を見ながらそっけなく返事をする。


そして自分の手を見る。
悪魔達の血で汚れた手。


上条「わかってるさ…」
990 :VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]:2010/03/20(土) 16:50:11.64 ID:K4wQQqA0
アニェーゼ「さ、こんな陰気な所にいると頭もおかしくなっちまいますよ」

アニェーゼが上条・五和・インデックス・オルソラに、外に出るよう手で合図をする。

アニェーゼ「休憩です。上に行って茶でものみましょう」

五和「…はい」

上条「…ああ」
三人は立ち上がりドアへ向かう。

その時床に黒い円が浮かび、ステイルが姿を現した。

ステイル「話は聞いてる。シェリーが戻ってくるまで僕が見張ってる」

オルソラ「では、お願いいたします」
オルソラも立ち上がりドアへ向かう。

アニェーゼがドアを開けて押さえ、皆がゆっくりと出て行く。

上条「…」
ドアのところで振り返り、赤毛の少女を見る。
赤毛の少女も真っ直ぐと上条を見ていた。

アニェーゼ「さっさとして下さい」

上条「…わかった」
催促され、再び前を向いて部屋を出る。
アニェーゼもその後に続き、そしてドアを閉めた。

部屋の中には赤毛の少女とステイル、そして4名の騎士と2名の修道女が残った。

―――


○過去スレ
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1267269712/
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