マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」 その22

2011年09月07日 19:51

マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」二機目

1:此処は00世界を基準に宇宙世紀設定を織り交ぜた感じの世界です。改変が多く、名称は同じでも設定が違う単語も多いですが御容赦を

2:NT能力を持った00キャラが多数現れます。逆に名前だけ出演の他ガンダム作品キャラも沢山います。要はカオスです

3:色々と形を変えた他作品MSも多々現れます。基本的には00外伝から引っ張ってきますが、やっぱりカオスです

4:基本的にグラハムのガンダム愛が薄いです。NT化によるズレと認識してください。マリーダと稀にイチャイチャしますが、その時は壁があるじゃないか諸君

14 :>>1 ◆/yjHQy.odQ [saga]:2011/05/04(水) 02:43:03.31 ID:VmIvWdkAO

ーバージニアー

マネキン「各自、緊急用の小型艇から離れるなよ。いつ敵が来るやも知れんからな」

『了解です』

ウィンッ

マネキン「!」

マリーダ「……」

マネキン「ん、予想以上に早かったなマリーダ」

マネキン「もう少し話し込んでから来ると思っていたが……もっとも、そんなに時間も無いか」

マリーダ「いえ、私達にはこれで十分です。お心遣いありがとうございました」ニコッ

マネキン「……私達、か」

マネキン「私がもっと気を利かせられるなら、何とかして君に機体を渡しているのだが」

マネキン「組み上げた予備機はコーラサワーの一機だけしか作れなかったから……な」

マリーダ「……」

マネキン(しかし、ニュータイプの精神感応というものなのか……まるで小一時間語り合えたとでも言うようにすっきりとした表情をしている)

マネキン「……私には、分からん世界だな」

マリーダ「はい……?」

マネキン「なに、気にするな」

オペレーター「大佐、こちらに接近する小型艦船を確認しました」

オペレーター「所属はユニオン、こちらに通信を求めています」

マネキン「……」

マネキン「先ほどの一件もある、リニアキャノンを小型艦に向け、注意しつつ対応しろ」

オペレーター「了解」

マリーダ「小型艦船……」

マリーダ「大佐」

マネキン「分かっている

マネキン「タイミングからしてグラハム大尉の関連の可能性が高いだろう。危険性は少ないが、念のためだ」

マリーダ「はい」

マリーダ(ピーリス少尉……頼んだぞ)


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ートレミーー

フェルト「左舷第一出力部被弾! 機能停止しています!」

クリス「GNフィールド発生機に異常発生! GNフィールドの展開が出来ません!」

スメラギ「エネルギーを右舷第二出力部に全て回して! リヒティは次射に備えて、任せたわよ!」ガタンッ

クリス「スメラギさん!?」

スメラギ「マイスター達には既にミッションプランを通達したわ、GNフィールドが発生出来ない以上強襲用コンテナでトレミーを守らなきゃ」

ピッ

スメラギ「イアンさんも強襲用コンテナへ! 砲手も多い方が良いわ、手伝ってください!」

イアン『りっ、了解だ!!』

スメラギ「クリス、ブリッジは宜しく!」

クリス「はい!」

ウィンッ

スメラギ「まだ死ぬわけにはいかない……いかないのよ」


ー宇宙ー

ヨハン「止まれぇッ!」

敵機の猛攻をかいくぐり、隙あらば反撃の粒子ビームを放つスローネアイン
だがそれも敵機のGNフィールドに傷を付けること適わず、時折放たれる敵の主砲を止めることさえ出来ずにいた

アレハンドロ『哀れだなヨハン・トリニティ……兄弟を殺され存在価値も無くし、敵だったソレスタルビーイングに与してまでささやかな抵抗を試みるが、その実、アルヴァトーレの前に手も足も出ないとは』

ヨハン「……ッ」ギリッ

アレハンドロ『また私の元に戻ってくるつもりはないか? 今からソレスタルビーイングの母艦を沈めてくるなら、また私の下で働かせてやってもいいのだが……』

飛び込んでくる不遜な通信に、ヨハンは血が滲む程に唇を噛み締めていた

ヨハン「富や権力を手に入れると、恥を知る心も忘れるらしい……!」

ヨハン「我々を勝手に産み出した挙げ句、ゴミ同然に使い捨てたのは一体誰だッ! アレハンドロ・コーナーッ!!」

アレハンドロ『また拾ってやろうという温情も感じられぬとは、哀れを通り越して情けなさすら覚えるな』

ヨハン「貴様ッ……もはや人間の感覚さえも失ったかッ!」

アレハンドロ『違うな、超越したのだよ! 矮小な人間の領分の更に先へと!!』

刹那「嘘だッ!!」

アレハンドロ『ぬ!?』

アレハンドロの言葉を遮るように、アルヴァトーレのGNフィールド目掛け数多の粒子ビームが叩きつけられる
フィールドこそ破られはしないものの、不毛な会話の腰を折ることには成功したといえるだろう

アレハンドロ『貴様はッ……刹那・F・セイエイ!』

アレハンドロがモニターに映し出すは、支援兵器に身を包む蒼のガンダム
GNフィールドを切り裂く可能性を秘めし巨大な刃を携え、一直線にアルヴァトーレへと突貫していた

刹那「見つけたぞ、世界の歪み!」

刹那「ガンダムエクシア、GNアーマー! 敵機を駆逐するッ!」

ラッセ『やぁってやるぜ!』


ーアステロイド付近ー

ギュゥゥ……ン

ソーマ「中佐、あと500カウントで目標地点に到達します」

セルゲイ「了解した。プランBの後プランZに以降、各機は散開、ガンダムへのラストミッションを開始せよ」

グラハム「プランZ……つまりは、現地での個々の判断に任せるということか」

ダリル「致し方ありませんぜ隊長、敵は三十六機の裏切り者部隊に、ガンダムなんですから」

セルゲイ「第三勢力の介入を前提としたミッションプランは想定されなかったからな……」

グラハム「……」

セルゲイ「乱戦が予想されるが、我々はその隙を突きガンダムを強襲、撃破の後戦域から即座に撤退する」

コーラサワー「撤退? アレハンドロとか言う奴はやっちまわないのかよ」

セルゲイ「……口惜しいが、我々の戦力はアルヴァトーレのようなMAと戦う術を持たん」

セルゲイ「あの粒子バリアに対抗することが出来ればまだ違うのだが……このままやれば犬死にだ」

セルゲイ「これはカティ・マネキン大佐と共通の見解だ、従ってもらうぞ少尉」

コーラサワー「う……大佐が言うなら……」

グラハム「……」

ガツンッ

グラハム「!? 接触回線か」

ダリル「隊長」

グラハム「どうしたダリル、わざわざ接触回線など使って」

ダリル「良いんですよ、行っちまっても」

グラハム「何……?」

ダリル「隊長の部下として長らく働いてきたんです、何考えているかくらいはすぐに分かりますよ」

ダリル「やるつもりでしょう? あの金ピカMAと」

グラハム「……」

ダリル「隊長、これだけは言っておきますぜ」

ダリル「頼みます。絶対に、生きて帰ってきてください」

グラハム「ダリル……」

セルゲイ「……どうやら、話が先についてしまったようだな」

ダリル「!」

グラハム「スミルノフ中佐……」

セルゲイ「何も言うな。同じ事を二度も言うほど私もナンセンスではない」

セルゲイ「恐らく、あの男は何らかの強化改造手術を受けている。更にMAの武装の火力、粒子バリア、その性能はガンダム以上かもしれん」

セルゲイ「行くなとは言わん……だが、決して逝くな」

グラハム「スミルノフ……中佐?」

セルゲイ「もう、見たくないのだ。私より若い者達が死んでいくのは……」

ソーマ「中佐……」

セルゲイ「……」

ピキィィィィン

グラハム「……ッ」

コーラサワー「……」

コーラサワー(あ、今悟ったな。アルヴァトーレに中佐の残った部下がやられたの)

コーラサワー(トップガンの事だからなぁ……)

グラハム「アルヴァトーレ……アレハンドロ・コーナー」

グラハム「貴様が味わうのは勝利の美酒ではない。我が剣の錆びだ……ッ!」

コーラサワー「止まらねえぞ、こりゃ」

ソーマ「ッ! 中佐、マスター!」

グラハム「!」

セルゲイ「おぉ……!」

ゴゴゴゴ……

コーラサワー「う、宇宙が燃えてやがる……ッ!」

ダリル「隊長……今までで一番厳しい戦いになりそうですね」

グラハム「あぁ」

グラハム「だが我々はそれでいいのだよ、ダリル」

ダリル「……」

グラハム「思えば……我々とガンダムの逢瀬に、楽な一戦など一つたりともなかった」

グラハム「圧倒的な性能差に押し切られ、苦杯を舐めさせられ、その度に努力し、我々は此処まで上り詰めた」

グラハム「多くの仲間を亡くした……多くの家族を死なせてしまった」

グラハム「だが我々は敗北する度に這い上がってきた、そしてその度に力を得、今ここに立っている」

グラハム「今日こそ勝つぞダリル、ガンダムをこのアステロイドに葬り去る!」

ダリル「遂にこの時が来たぞハワード……ッ!」

ソーマ「中佐に、マスターに、そして今まで戦って来た仲間達に……今こそッ!」

コーラサワー「俺だって今度こそッ! 大佐のキッスを頂きだぁぁぁぁぁ!」

セルゲイ「よし……!」

セルゲイ「往くぞ……全機散開!」

セルゲイの一喝と共に、GN-Xは左右に分かれ、RGMの群れる戦場へと突入していく
生きて帰れぬかも知れぬ死地へと、戦友が数多散った世界の敵へと、互いの想いを胸に、五人の兵士達は星の海を突き進んでいく

グラハムはそのまま真っ直ぐに、一際激しい放火に呑まれる渦の中へ飛び込んでいった

グラハム「……ッ!」

ピキィィィィン

額に電波のように飛び込んでくるのは、アルヴァトーレと対峙する二つの影の像、そして遠方からでも容赦なく響く強烈なプレッシャー
どちらもが鮮明にグラハムの頭の中に浮かび上がる
GNフラッグの操縦桿を握る指に自然と力が込められた

グラハム「ぬ……?」

しかし近付く度に感じる違和感が、グラハムの背筋を冷たくさせる
強大な一つのプレッシャーに取り込まれたように、小さな精神の形がアルヴァトーレの影に重なって見えた為だろう
それが何を意味するのかは、今のグラハムには知る由も無い

グラハム「……」

ただグラハムはひたすら突き進んでいく
それは、自らの我が儘を聞き入れ、最強のフラッグを造り出した盟友の為
それは、フラッグファイターの矜持を自身に預け、宇宙に散っていった仲間達の為
そして、必ず帰ると、唯一約束した女の為に
自身の身体が上げる悲鳴も無視し、最大出力で戦線へと突入していった

『おっと』

『そうはさせないよ、ライセンサー』

グラハム「ッ!?」

その時だった
横合いからグラハムを遮るように、紅い粒子の帯が見舞われる
とっさに機体を急停止。身体がコクピットの前のめり、急激なGに背骨が悲鳴を上げる

グラハム「ぐぅッ……!」

巨大な足に踏みつけられるような苦痛、顔が歪み汗が噴き出す
しかし苦しんでいる余裕は無い、即座に機体の向きを粒子が飛んできた方向に向ける
攻撃してきたのは二機のRGMカスタム……粒子ビームを放つGNロングレンジライフルを装備した群青色の遠距離機体と、実体弾をバラまく大型ガトリングガンを装備した朱色の中距離機体だ

グラハム「二機……足止めをしに来たか」

グラハム「ふ、だがガンダムでもないMSに私の相手は勤まらんよ」

舌先に鉄の味を感じながらも、自らを鼓舞する意味も込めて強気の独り言を漏らす

『何、ちょっとの間だけ此処で遊んでくれればそれで良いんだよ』

『ヒリング、油断は禁物だ。カスタム化されたフラッグとて、乗っているのはニュータイプだよ』

『分かってるよリヴァイヴ……でも所詮は人間。深追いしなきゃ、それでいいのさッ!!』

朱色のRGMカスタムがガトリングガンを構え、引き金を引く
ものの数秒で数百発もの弾丸が吐き出され、グラハムへと襲いかかっていく

グラハム「引かんよッ!」

斜め前へと急加速、放射状に広がる弾丸の横へと機体を回避させ、剣を構える

『あたしの弾を避けた!?』

『流石に良い動きだ、だが!』

グラハム「ぬッ!」

それを読んでいたと言わんばかりのタイミングと位置に粒子ビームが撃ち込まれグラハムの動きを止める
敵が仕掛けてきたのは、確かなコンビネーションとリーチの差を利用しての、徹底的な消耗戦
明らかにレベルの違う搭乗者、しかしグラハム・エーカーは怯まない。怯まないからこそグラハム・エーカーなのだ

グラハム「私の道を阻むなぁぁッ!!」

『楽しめそうね、ライセンサー!』

『有り難いよ人間、肩慣らしにはなりそうだッ!』


ー一方アステロイド・ティエリア側ー

二方向に分かれたRGM部隊、その数は十八機
一際大きな隕石をぐるりと迂回し抜けようとしたその時、目の前に青い光球に身を包むMSが立ちはだかった
ティエリア・アーデの駆るヴァーチェ・フィジカルだ

ティエリア「数が多ければ勝てるという愚策は、今まで幾度となく叩き潰してきたッ!」

戦術予報による先制の一打、脚部GNコンテナミサイルの一斉放射が飛蝗の一群となりRGMを襲う
前方に配置されたRGMはおろか、部隊中枢にまで破壊は及び、次々にRGMを葬り去っていく
一挙に半数以上、十機が薙ぎ払われた

ティエリア「ロックオンの想い、このティエリア・アーデが成し遂げる……!」

ティエリア「たかが量産機に、ガンダムの相手が務まると思うなッ!」

背部のGNキャノンが逃げ延びた一機を狙い、粒子を放つ
一機は盾で防いだものの、押し込まれるように隕石にぶつかり、そのまま盾ごと焼き尽くされ散る

今まで使用してきたヴァーチェ、パーティクルと違う実弾兵器主体の武装形態・フィジカル
特筆すべきはその粒子フィールド、パーティクルでは武装に回した粒子をフィールドに回している為、RGMの武装などまるで通さない堅牢さを誇る

RGMは残り七機、しかし、見慣れぬ実体の刃を握るカスタム機がその中に紛れていた

ティエリア「やはりな……私達を狙うための装備、意図的に構成された処刑者達という訳か!」

ティエリア「だがその程度の機体で、我々と相対出来ると思うなッ!」

GNバズーカを発射すると、砲弾が弾け数多の粒が噴き出すように広がっていく
元々フィジカルには存在しない散弾タイプの実体弾バズーカ、聞けばこれもシェリリン・ハイドがフィジカルパーツ搬入の段階で準備してくれたものらしい
強度に劣る三国MSやこの謎の量産機を相手取るには十分な威力であり、パーティクルに対し残弾の不安があるフィジカルにはうってつけの武装といえる

RGMが二機、霧のように散弾を吹きつけられ爆発する
カスタム機も下手に接近出来ず遠くから睨みつけるばかりとなっている
流れを掴んだ。手応えをティエリアは感じていた

コーラサワー「見つけたぁぁぁ!」

ダリル「退きやがれッ! そいつは俺達の相手だ!」

ティエリア「!」

すると、隕石の陰を抜け突然現れた二機のGNーX、RGMを横合いから撃ちつけ三機を一瞬で葬り去る

ティエリア「国連軍の残党……まさか、三つ巴の乱戦をやるつもりなのか!?」

スメラギの戦術予報には無かった相手だけに、動揺は抑えきれず、端麗な表情は僅かに曇る
しかし今のティエリアは、それらを跳ね除けるだけの強さを秘めていた
それを与えたのは他でもない。ロックオン・ストラトスの死である

ティエリア「彼の死に報いねば……私は先に進めない!」

ダリル「隊長を死なせて、あの人を泣かせるわけにゃいかねえんだ!」

ダリル「早々に片付けるッ! 悪く思うなよガンダムゥッ!!」

ティエリア「ロックオン・ストラトスの為にィッ!」

戦況は荒れる一方、しかし闘う者は皆迷うことなく、自らの意志で引き金を引いていった


ーアステロイド・アレルヤー

ハレルヤ「くははははは……!」

シールドクローの一撃を腰に受けRGMが両断される
アレルヤとハレルヤ、二度目の解放を果たした真の超兵は、他機からの攻撃を物ともせず既に五機のスクラップを生み出している
飛行ユニットを外しながらも、ガンダムキュリオスはRGMを圧倒していた

ハレルヤ「ビンビン来やがるぜ……お前等も脳量子波を使えるみてぇだが、所詮その程度」

ハレルヤ「俺達超兵にゃあ勝てねぇんだよッ!」

自らに向けられ、雨霰と降り注ぐ粒子ビーム
それらの情報を反射的に認知し思考、最も有効な回避パターンを実行。
キュリオスは身を翻し縦横無尽に駆け回り集団を翻弄する

ハレルヤ「ソコだよ、逝けやぁ!」

追った一機のRGMがサブマシンガンに蜂の巣にされ、爆発する
トランザムという鬼札をキープしつつ、そのまま敵機を殲滅せんという勢いだ

ピピッ

ハレルヤ「!」

ハレルヤ「Eセンサーに反応……この識別番号は……」

アレルヤ「来たよハレルヤ……」

ハレルヤ「はっ!」

ハレルヤ「仲間割れした割には、いい度胸じゃねえか……女ァァ!!」

ソーマ「……」

ソーマ・ピーリスは、宿敵を前に数時間前の事を思い返していた
それは自身の内面、夢にも現れたもう一人の自分との対話の最中、突然入った通信のことだった

相手はマリーダ・クルス。先ほどグラハムとの接吻を覗き見ていた件もあり、正直ソーマは舞い上がりながら通信を開いた

マリーダ『済まない少尉。一つだけ、頼みたいことがある』

次の瞬間、彼女はピーリスに頭を下げる
ピーリスが何かを言い出す間さえ無く、マリーダは更に言葉を紡ぐ

マリーダ『頼む。私の代わりに、マスターの力になってほしい』

マリーダ『不甲斐ない私の代わりに……彼を助けてくれ……!』

ソーマ「……」

ソーマ・ピーリスが、内なるマリーの申し出に対し迷っていた時だった
ブリティッシュ作戦の闘いで、真の超兵と自らを呼び、圧倒的な戦力を以てヤザンに相対した被験体E-57
そして、その圧倒的戦力に徐々に対応さえしてみせた、ヤザン・ゲーブル
この二人の闘いの中で、自らが背負っていた矜持は全て崩れていた。自身より以前に改造された出来損ないに劣り、全く改造していない、普通の人間より下の戦力しかない自分
崩れた矜持はつまらない自尊心に変わり、それまで僅かな時間の縫うように行われてきた、マリーとの対話を受け入れづらくする要因ともなっていた

ソーマ「……ッ」

しかし
先ほどの出撃の直前、マリーダからの個別通信によってそれは意識の外から完全に離れていった
あの彼女からの、常にグラハムの隣に居続けたマリーダからの、切なる願い
通信を受け、棘のように刺さっていた矮小なプライドは、嘘のようにあっさりと抜け落ちた
彼女が自身を頼ってくれた、それが何よりも嬉しかったから
その願いに応えたかったから

ソーマ「いこう、マリー・パーファシー」

ソーマ「超兵としての矜持の為で無く、私の大切な人々の為に……!」

ハレルヤ「往くぜ女ァッ!!」

ソーマ「そうだ、私達は戦う! 己の意志でッ!!」

ハレルヤ「ッ!?」

キュリオスのシールドニードルとビームサーベルがぶつかり、その接点を軸に両機は同時に圧を横へとかける
アレルヤの見通しなら自身の揺さぶりで敵機はバランスを崩すはずだった、だがGN-Xは彼の思考反射の領域に確かな対応をしてきていたのだ

ソーマ「相手の先を読む……ッ」

ハレルヤ「てめぇッ!」

ソーマ「そして……」

ソーマ「私達はその上を往くッ!!」

マリーの見立て通りに、ハレルヤは一際強く力を掛けて弾きにかかる
その動きに抗わず、むしろ乗ることでその勢いを利用して横に強く回転

ハレルヤ「ッ!?」

ソーマ「はぁぁぁあッ!!」

ハレルヤ「がぁっ……!」

それは、セルゲイがスローネドライに見せたような強烈な後ろ回し蹴り
キュリオスのマシンガンの照準を許すことなく、上体を容赦なく蹴り飛ばす

アレルヤ「この動きッ……!?」

ハレルヤ「まさかてめえ、こっちの領域に踏み込んで……!」

キュリオスが体勢を立て直す。動揺が伝わってくるように感じられた
あのガンダムと被験体に対応出来た、その喜びが電流のように彼女の身体を駆け巡る

ソーマ「これがあなたの世界……」

ソーマ「マリー・パーファシーとソーマ・ピーリスの、思考と反射の融合!」

ハレルヤ「女ぁぁぁッ!!」

ソーマ「もう私は負けない!」

ソーマ「来い、ガンダム!」

体勢を立て直したガンダムに、ビームサーベルを抜き接近するピーリス
ガンダムもまたサブマシンガンで応戦しつつ、距離を詰め一撃を叩き込まんと狙いを定めていく
互いに超兵として完成した者同士の、最後の闘いが始まった

ハレルヤ「舐めんなぁぁッ!」

ソーマ「それは此方の台詞だッ!」

獣のような超反射的反応を駆使し、両者共に一瞬の交錯を止まることなく重ねていく

アレルヤ「サーベルとシールドニードルで同時攻撃!」

ソーマ「防ぎつつバルカンで牽制……ッ!」

アレルヤ「シールドで防いで踏み込む!」

それでいながら思考は互いに互いを探り合い、熾烈な心理戦が内側で行われていた
故に二機は下手な手も打てず、秒感二度刃を交える程度の、ただただ凄まじい単調なドッグファイトを演じていく

ハレルヤ「ぐぅッ!」

ソーマ「甘いッ!」

振り上げられたシールドニードルにGN-Xは体当たりで対応、よろめいたキュリオスにビームライフルで追撃し出足を叩き流れを奪う
思考の及ぶ範囲ではアレルヤに軍配が上がっていた
ソーマがマリーであると気付いていないことも幸運であったが、基本人格として外に出ていた経験が、マリーの後一歩の戦術的追随を許さずにいた

ハレルヤ「くそッ……!!」

ソーマ「どうした被験体E-57! もう終わりか?」

ハレルヤ「はっ……聞こえねえなぁぁ!」

しかし、ハレルヤとソーマ、反射を担当する意識同士の闘いはソーマに分があった
能力の差か、機体の性能か、体力的問題か

ハレルヤ「ッ……」

違う。闘いを制する絶対条件には、どれも不適格だ
ハレルヤは初めて焦りを覚えた
負けているという事実さえ、彼の思考では理解しがたい事だったからだ
不意に両機に襲いかかる粒子ビーム。
二人は離れてそれをかわすと、争いの場を通信による舌戦に切り替え、乱入者の迎撃を始めた

ソーマ「何故押されているか分からないか、被験体E-57!」

ハレルヤ「あぁ?!」

ソーマ「私には分かるぞ、その理由が今なら分かる!」

四方から二機を狙うRGMに、両者不本意ながら背を合わせ迎撃行動に出る
奇しくもその動きは、頂武GN-X部隊の編み出した密集陣形に近いもの

ソーマ「お前は生き残る為、自分を守る為に戦っている。所詮は獣の本能のようなもの、そこに意志は宿らない!」

ソーマ「だが私は違う、スミルノフ中佐やマリーダ中尉、私の側にいてくれる人の為に銃を取っている!」

ソーマ「保身の為に引いた一歩と、誰かの為に踏み出す一歩。その差が私とお前の差だ!」

ハレルヤ「おセンチなこと抜かしてんじゃねえぞ女ッ!」

二機の連携でRGMは次々に撃ち落とされ散っていく
もはや一蹴に近いその光景、一瞬の出来事であった
邪魔者がいなくなった瞬間、二人は同時に振り向きビームサーベルとシールドニードルをぶつけ合う
火花がカメラアイを真っ白に塗りつぶす、それでもお互い力を緩めたりはしない

ハレルヤ「てめえには分からねえだろうなぁッ! 仲間殺して生き延びた、俺達の業なんぞよぉ!」

ソーマ「なっ……?!」

ハレルヤ「あの腐れた地獄から一緒に脱走まで、声かけあって助け合った仲間さ!」

ハレルヤ「だが俺は殺した! 酸素も飯も足らなかった、自分が生き残るためには何だってして生きてきた!」

ハレルヤ「だったらよぉ……何かデカいことやって、あいつ等の死に意味を持たせてやらなきゃ……」

ハレルヤ「アレルヤもあいつ等も、救われねえんだよッ!」

両者の攻防が佳境に入る中、二機を離すように粒子の奔流が辺りを包み込む

ソーマ「ッ……!?」

ハレルヤ「なっ……!」

それは、別の場所で起こった一戦の余波
アルヴァトーレの粒子砲であった

           ・
                         ・
                         ・

蒼いGNアーマー目掛け、アルヴァトーレの粒子砲火が一斉に火を噴いていく
一拍に二十二発打ち上げられる紅い花火は、それらの一撃一撃を狙いすまして撃ったかのような精密さでGNアーマーに飛んでいく

ラッセ「舐めんじゃねえよッ!」

しかしただで当たるわけには行かない。GNアーマーも強固な粒子フィールドを形成、敵の猛攻を物ともせずに受け止める

ヨハン「そこだッ!」

スローネアインはアルヴァトーレの攻撃の瞬間、フィールドの解除した瞬間を狙いブラスターを数発立て続けに叩き込む

アレハンドロ『遅い遅い遅いぃッ!』

ヨハン「くっ……!」

しかしあろうことか、アルヴァトーレの巨体は戦闘機が行うような横方向の軽やかな回転でそれらを全て避けていく
GNアーマーを含めた十字砲火が届く頃には、再び頑強な殻に身を包み傷一つつけられない
苛烈な攻撃に堅牢な防御、同時代最強のMS・ガンダム二機で相手にしながら、状況は全く好転せず硬直していた

アレハンドロ「はっ! 所詮急拵えのトリニティに未熟なガンダムマイスターか、動きが透けて見えるわ!」

通信から飛び込んでくる罵倒、刹那は歯軋りし、爆発しそうな意識を平静に保ちつつGNライフルの引き金を引いていく
GNアーマーの粒子キャノンも合わせ、アルヴァトーレへ強烈な一撃を叩き込む
だがそれらでさえもアレハンドロの嘲笑を止める一打にはならず、球体のバリアは揺るぎもせずMAを守り抜いてしまう

刹那「遠距離攻撃では手の出しようがない……ッ!」

ラッセ「飛び込むか!?」

刹那「今はそれしかない。やれるか、ヨハン、ラッセ!」

ラッセ「おう! 俺の身体、お前に預けるぜ!」

ヨハン「刹那・F・セイエイ、援護する!」

中距離以遠の対峙では勝ち目がない。ならばこそ、エクシアの距離に近付かねばならない
粒子を無駄に消費することは避けねばならない。ならば、やるだけだ

ヨハン「全弾持っていけッ!」

トゥルブレンツ・ユニットのミサイルコンテナから無数のGNミサイルが発射され、牽制とばかりにアルヴァトーレへと向かっていく
全発着弾、無論これでさえもGNフィールドに効果は望めない

ラッセ『今だ刹那!』

刹那「おぉぉッ!」

本命となるGNアーマーの巨体が粒子バリアを伴いながら加速、迂回するようにアルヴァトーレへと突撃を始める
元より対ガンダムの為に造られたガンダムエクシア、そしてその支援兵器であるGNアーマー・typeE。対粒子フィールドへの切り札は、刹那の手元にある

刹那「断ち切るッ!」

振り上げた大型ブレードを、爆炎の中に突き込ませる。これで終わらせる為に、渾身の力を込めて

刹那「……ッ!」

ラッセ「なっ!?」

刃が、直前になって止められる。粒子フィールドにぶつかった感触ではない。しかし、何かにぶつかるような感触は確かにエクシアへと届いていた

アレハンドロ「見え透いた手だ。そんな手で私のアルヴァトーレを破壊しようと思ったのかね、刹那・F・セイエイ」

アルヴァトーレは粒子フィールドを解除し、GNアーマーのフィールドに真っ向からぶつかる形で前進していた
展開された金色の鋏が、大型GNソードの付け根をしっかと挟み押し返す
読み切られていた、その事実は刹那から一瞬思考を奪う

刹那「動けない……ッ!?」

アレハンドロ「くははっ!! この距離ならかわせまいッ!」

髑髏の口に似た砲門が展開、真っ赤に圧縮された粒子を吐き出さんとせり出される
このままでは、死ぬ

ヨハン「刹那・F・セイエイッ!!」

叫びながらブラスターを構え、狙いを定めるヨハン。
しかしGNアーマーとアルヴァトーレの距離はかなり近い、一瞬の躊躇いが引き金にかかる指を伸ばしてしまう
その僅かな隙は、スローネアインの背後からの射撃にも対応を遅らせた

ヨハン「ぐぁっ!?」

機体を揺らす粒子ビームの一撃、大型ファングがヨハンの邪魔をするように四方からスローネ目掛け攻撃を加えていく
スローネの左腕が砕かれ、右足が貫かれて爆発する

刹那「ヨハンッ!」

アレハンドロ「飼い犬風情に、邪魔はさせぬよ!」

アレハンドロ「今度こそ最後の時だ……消え失せろ、イオリアの亡霊がッ!」

刹那「ッ……!」

発射まで秒読み段階。もう手の打ちようが無い、刹那は目をつむった

ラッセ「分離しろ、刹那ァッ!」

刹那「はっ!?」

今わの際、ラッセの叫びに我に返る刹那
即座にGNアーマーとのドッキングを解除し、敵の砲門を踏み台にして離脱する

アレハンドロ「なッ!?」

とっさの事で、さしものアレハンドロも対応に身体が追いつかない。そして、エクシアと違い鋏に拘束されたGNアーマーには逃げ場など無い
ラッセは恐らくそれを理解して刹那を逃がしたのだろう
踏み台にされた瞬間下方にズレたアルヴァトーレの波動砲は、発射と同時にGNアーマーの脚部を一瞬で灰に変え、アステロイド地帯めがけ扇状に移動しながら放射される
RGM、ガンダム、プトレマイオス、GN-X……未だその場で戦う戦士等を薙払いながら、その一撃は宇宙を赤い炎で染め上げていく

ラッセ『刹那ッ……俺達の存在を……ザザッ』

ラッセからの返答が消える。仲間の命が消える感覚を、刹那は背後に感じていた

刹那「はぁぁあぁッ!」

それでも止まれない
GNソードを展開し、アルヴァトーレの胴体目掛け刃を突き出す
金色のボディに、薄緑に輝く刃が深々と突き刺さり、火花を散らした

しかし

アレハンドロ「なめるなぁッ!!」

刹那「かはっ!?」

下からすくい上げるように鋏がエクシアを強かに叩き、そのまま挟み込んで引き剥がしてしまう
とっさのことに突き立てた刃も抜け、細いエクシアの胴がみしりと嫌な音を立て軋む

アレハンドロ「無駄無駄無駄ァァァ! 羽虫が何匹寄り集まろうがッ! このアルヴァトーレの前には無為に等しいッ!」

強化されたアレハンドロの反射神経は既に常人のそれを遥かに上回り、只でさえ小回りの効かないアルヴァトーレに精密な挙動を強要するまでに至っていた
再び身動きを封じられたエクシア、刹那はせめてもの抵抗としてモニターに映る醜悪な支配者を睨みつける

刹那「ッ……」

アレハンドロ「だが今のは流石に褒めてやろう。このアルヴァトーレに一太刀浴びせられたのは意外だった」

アレハンドロ「もっとも、今の一撃で貴様の仲間は風前の灯火だがな……聞こえないか? 敗北者達の哀れな慟哭が」

刹那「何ッ!?」

アレハンドロから送られる通信の合間から、叫ぶようにトレミーの破損状況を伝えるクリスティナの声
途切れ途切れに聞こえるだけでも、その損害の大きさが伺える
先ほどの一撃はラッセのみならず、トレミーさえも貫き灼いていたことを刹那はようやく理解した

アレハンドロ「私が貴様等を倒すためだけに主砲を撃つと思ったか?」

アレハンドロ「物のついでで狙わせてもらったのだよ、母艦と他のガンダムもな」

刹那「そんな……ッ!」

アレハンドロ「ふはははは……! 良い顔だ、後悔と絶望が入り交じった素晴らしい表情だよ刹那・F・セイエイ!」

刹那「アレハンドロ・コーナー……貴様という男は……!」

アレハンドロ「ふふ、君とも出会い方が少し違えば、良い関係が築けたかも知れんな」
アレハンドロ「だが、もう終わりだ!」

再びアルヴァトーレが粒子フィールドを形成。その内側に半ばめり込むような形にエクシアが押し付けられる
再びせり出す主砲、エクシアは抵抗しようにも粒子フィールドとの干渉で手が動かない

刹那「世界の歪みを前にして……俺は……ッ!」

アレハンドロ「だとしても、これから私こそが世界の規範となり正しき形の見本となる!」

アレハンドロ「せいぜい地獄で仲間と仲良くな……二百年前の亡霊共ォッ!!」

エクシアに残された手、彼が亡霊と謗る男が託したガンダムの切り札
刹那はそれに手を伸ばし、モニターへと表示させた

刹那「トランザ……!」

刹那「ッ!?」

ボタンを押す直前、刹那の眼前に紅い粒子の閃光が散る
しかしそれはアルヴァトーレの主砲の光ではない、それは粒子フィールドをも貫徹し届いてみせた刃の一閃

刹那「な……?」

アレハンドロ「なぁぁにぃぃぃぃ!?」

両者の間に壁を作るかのように現れた長大な一撃により、主砲とエクシアを掴む鋏が同時に切り捨てられ、切り裂かれた粒子フィールドからエクシアが離脱する
何が何だか分からない。それはアレハンドロもヨハンも、刹那も同じであった

アレハンドロ「上からッ……!」

刹那「……!」

見上げた先に立つ者、それは、ロングソードにGN粒子を纏わせた黒いユニオンフラッグ

グラハム「会いたかった……」

グラハム「会いたかったぞ、ガンダムッ!」

それは、自らが追い求めた強者との再会に震える、阿修羅の姿だった

           ・
                         ・
                         ・


セルゲイ「つっ……!」

閃光が疾った直後戦場、アステロイドの影に隠れたことで難を逃れたセルゲイのGNーX
見回せばアルヴァトーレの一撃で焼かれたRGMの残骸が無惨にも散らばり、地獄絵図と化している

セルゲイ「自らの主に省みられもせず……殺されたのか」

セルゲイ「……」

敵とはいえあまりにも哀れな死に様、セルゲイはコクピットの中でそっと手を合わせ、冥福を祈る
命を落としてしまえば皆等しくタンパク質の塊と化す。裏切られた憎しみも忘れ、セルゲイはその場を後にした

セルゲイ「ピーリス少尉……!」

単騎でガンダムの下に向かった部下の援護の為、軋む機体を省みる事無くペダルを踏み込む
もしかしたら、この量産機達のように骸を晒しているかも知れない
そんな不吉な想像を振り払い、レーダーを頼りにピーリスを探す

セルゲイ「ッ!」

セルゲイ「反応……こちらか!」

動体を感知したモニターが方角を素早く指し示す
はやる気持ちを抑え、導きのままMSを進めるセルゲイ
無事でいてくれ、ただ切に願いながら


ー一方トレミー付近ー

ティエリア「何という失態だ……!」

強大なアルヴァトーレの主砲の直撃、ヴァーチェ・フィジカルのGNフィールドでさえそれに対抗する事は適わなかった
灼かれた装甲はGNフィールドの発生も出来ない。分厚い装甲も溶けて脆く固まり、ただの重荷としてヴァーチェにへばりついている
そしてGNバズーカ、コンテナミサイル、GNビームキャノンに到るまで、全ての武装が破壊され完全に沈黙していた
戦力はほぼ0に等しい

ティエリア(これは私自身のミスだ……!)

ティエリア(ヴァーチェ・フィジカルの防御力を過信しトランザムの使用を躊躇した、それがこの結果を生み出した……!)

事実、ヴァーチェ・フィジカルの武装にはトランザムにより強化されるビーム兵器が少なく、防御力もそれを必要としない堅牢さを誇っていた
ティエリアの判断にミスは無い、それ故に彼はぶつけようのない怒りに身を焦がしていた

ティエリア「……ッ」

ティエリア(いつまでもこの様な場所でくすぶっているわけには行かない……)

ティエリア(やればいいのだ、彼が望んでいたように!)

ティエリア「まずは遅れを取り戻すッ!」

ティエリア「ナドレ!」

融解したパーツを切り離し、ガンダムナドレの肢体を晒す
武装は唯一無事だったGNビームサーベルのみ、周囲の敵機が皆残骸と化していなければとても闘えない
一度限りのトランザムも残しているとは言え、粒子貯蔵量の乏しいナドレでは満足な時間は動かせないだろう

ティエリア(だとしてもやらねばならない……ガンダムマイスターとして!)

ピピッ

ティエリア「!」

エネルギー反応、即座に回避行動に移る。
ナドレ目掛け頭上から粒子ビームが降り注ぎ、分離した破片を砕いていく
それは実体剣を装備した新型のRGMカスタム。
RGMの中では唯一無傷で逃げおおせたらしく、存在を省みられなかったことなど意に介さず急接近してくる

ティエリア「新型のカスタマイズMS……まだ生き残っていたのか!」

現れた新型機は、驚くべき事に無傷。逃げるナドレを執拗に追撃してくる
乱射されるGNビームマシンガン、散らばる粒子ビームの威力は微々たるもののナドレの装甲では驚異となる
下手に当たることも出来ず、徐々に距離は縮まっていく

ティエリア「嘗められたものだ……ッ!」

接近戦しか出来ないナドレに、武器の利を見て接近戦を仕掛けるつもりだろう
ティエリアは最小限の動きで粒子ビームをかわしつつ、わざと距離を離すことなく詰めさせていく

ティエリア「その侮辱、万死に値する……!」

ティエリア「その身を以て償え!」

敵機のGNソードが触れる一瞬の間、かき消えるガンダムナドレ
RGMカスタムの挙動がスローモーションに見えるほどの加速、対するRGMカスタムは完全に置き去りにされてしまう

ティエリア「トランザム……!」

ティエリアは自らを捉え切れぬRGMカスタム目掛け、GNビームサーベルを抜き放つ
背後から腰部を一刀両断、RGMカスタムは真っ二つにされ力無く虚空を漂い、もがくことも出来ずに沈黙する
離れ際にカスタム機の握るビームマシンガンを奪い取り、トランザムの加速力で一挙にその場から離脱
遥か後方で爆発するRGMカスタムに、ティエリアは目もくれなかった

ティエリア「急がなければ、トレミーが!」

           ・
                         ・
                         ・

コーラサワー「ふぃ~……危なかったぜ」

ダリル「あの野郎、味方ごと俺達を撃ちやがった……!」

ポイントを大きく外れた場所に二機のGNーX。破壊されたアステロイド地帯を眺め呆然と立ち尽くしていた

ダリル「しかし助かったぜ。あんた、何でさっきの一発が来るって分かったんだ?」

コーラサワー「ふっ、このパトリック・コーラサワーに不可能なんてないんだぜ?」

鼻高々に勝ち誇るコーラサワー。
NT能力はあれど毛色の違う彼の力は、同じNT能力を持つアレハンドロに強く反応したのだろう
結果として両者は無傷。加えて状況は好転している

コーラサワー「さぁて……そろそろやっちまうかぁ!?」

ダリル「……」

コーラサワー「お、おいおい……流石に無反応は寂しいんだけど」

ダリル「! あぁ、悪い。ちょっとな」

千載一遇のチャンスに興奮するコーラサワー、対照的にダリルは不安感を露わに、星空の一点を見つめていた

コーラサワー「まぁ良いさ、あの一発でガンダムが傷ついてりゃ御の字だ」

ダリル「……」

コーラサワー「行くぜフラッグファイター、今度こそ大金星だぁぁ!!」

ダリル「すまねぇAEUの! 俺は戻る!」

コーラサワー「えええッ!?」

ダリル「距離的に隊長は俺達より速くあのMAと対峙しているはずだ! なのにアイツはまだ生きてる……!」

ダリル「胸騒ぎがしてしょうがねえんだ、済まん!」ガクンッ

コーラサワー「ちょ、置いてくなよ! おぉーい!!」

ダリル(隊長、生きていてくださいよ……!)

コーラサワー「……行っちまった……」

コーラサワー「……」

コーラサワー「おらぁぁぁぁぁ! ガンダムめ、このパトリック・コーラサワー様が相手だぁ!」

一機で敵の戦艦が確認された位置に向かうコーラサワー。その瞳は少しばかり潤んでいたとかいないとか……

           ・
                         ・
                         ・

アレハンドロ「グラハム・エーカー……!」

グラハム「アレハンドロ・コーナー、貴方の用意したゴシップにはなかなか踊らされましたよ」

グラハム「お陰で友との約束……守れずに終わってしまった」

開いた回線にアレハンドロは反応し、自らの顔をモニターに晒す
その変わり果てた姿にグラハムは顔をしかめ、哀れな、と一言呟いた

アレハンドロ「一体どんな手品を使ったかは知らぬが……アルヴァトーレに二度同じ手は通じぬ」

アレハンドロ「ガンダム諸共沈め、イレギュラー!」

グラハム「ッ!」

その様子に気付くことさえ無く、剥き出しのエゴに従いアレハンドロは引き金を引く
二十二門の粒子ビーム砲の一斉砲火、GNフラッグもまた最大戦速を以て全力で回避していく
ガンダム二機が手玉に取られた同時代最強MAとパイロット、グラハムの技量をもってしても、その砲火をかいくぐり接近するのは至難の業であった

アレハンドロ「ぬっ……!?」

と、アルヴァトーレを囲むように数発の弾丸が打ち込まれ、軽い炸裂音と同時に白煙を発し視界を遮る
機体を砕かれながらも状況を冷静に見極めた、ヨハン・トリニティの仕業だ

ヨハン「刹那・F・セイエイ! いったん距離を取るッ!」

刹那「しかしっ……」

ヨハン「頭を冷やせッ! 乱入したフラッグも味方とは限らんのだぞ!」

刹那「ッ……!」



グラハム「これは……新型の煙幕か!」

砲火が止み、アルヴァトーレから距離を取る
グラハムは結果として、攻めるか引くかの選択肢を迫られた形になった

グラハム「……」

虎の子の一撃、ハイパーGNビームサーベル改め【グラハムスペシャルⅡ(命名:ビリー・カタギリ)】は結果的にガンダムを助けるため使ってしまった
盟友ビリー・カタギリの話では、二発目が成功する可能性は半々、成功するか機体が爆散するかの賭けになるという
中距離からでも対GNフィールドを有する一撃、その威力に相応しい賭ではあるが

グラハム「……」

易々と命を担保にすることを、今の阿修羅の価値観は是としない
そもそも不意打ちでもなければ、あのMAにグラハムスペシャルⅡを当てることは出来なかっただろう。
そう考え、今は距離を取る
経緯はどうあれ今のアレハンドロが強いのは紛れもない事実。策も無く突貫すればガンダムにだって足元を掬われかねない
無理をしない、これはコーラサワー少尉からグラハムが学んだ処世術だった

グラハム「彼の片意地を張らない生き方がよもや決戦の場で活きるとは……パトリック・コーラサワー、つくづく読めん男だ」

グラハム「さて……どうしたものかな」

機体を隕石群の陰に隠し、息を潜めながら意識を周囲に集中させる
ガンダムの出方を見つつ敵機への対応を考える、堅実だが我慢弱い彼には辛い戦術でもある

グラハム「……」

ただ、グラハムにはどうしても気がかりがあった
アルヴァトーレの中から感じ取れる、見知らぬ何者かの気配のことである

グラハム「明らかに能力を持った者の意識……アレハンドロ以外の何者かであることには間違いない」

グラハム「だが奇妙だ。口では言い表せない感覚……」

グラハム「私はこの感覚を知っているのか……?」

PiPi

グラハム「!」

刹那『フラッグのパイロット、聞こえるか』

刹那『こちらはガンダムエクシアのガンダムマイスター、其方の意図を聞きたい』

と、フラッグの回線に飛び込んでくる通信
その送り主はまさかの相手、グラハムの想い人たるガンダムのパイロット
そしてそれは、アザディスタンでグラハムが何かを感じ取った謎の少年でもあった

刹那『!?』

刹那『お前はあの時の……』

刹那は其処まで言いかけ、脳内の回想に当時の映像を思い浮かべる
若く凛々しい副官の女性に自らをマスターと呼ばせ、仰々しい素振りの男
そんな印象しか無かったグラハムに対し、刹那はもうこの言葉しか吐くことが出来なかった

刹那『歪んだ男!』

グラハム「……ご挨拶だな少年。あの時のマスターという呼び名、不可抗力だと弁明させてもらおう」

当時のあの瞬間の刹那の表情を思い出し、グラハムは今更ながら頭を抱え弁明する
ただその直後の表情は、本人も意図せぬほど鬼気迫った面構えに変わる

グラハム「しかしまさか君がガンダムマイスターとは……センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない」

グラハム「我々は、闘う運命にあったということだッ!」

刹那「ッ!」

ヨハン『そこまでだ』

グラハム「む」

ヨハン『フラッグのパイロット、グラハム・エーカー上級大尉とお見受けする』

グラハム「……如何にも」

グラハム「君が新型ガンダムのガンダムマイスターか……」

ヨハン『ガンダムスローネのマイスター、ヨハンだ』

ヨハン『その表情では、此方と手を組むつもりは無さそうだな』

刹那『……』

グラハム「無論だ。君達は敵の敵である前に敵、ただ倒すならばあの強化人間の方が先決と判断しただけのこと」

グラハム「奴を倒してから、正式にガンダムとの決着も着けさせてもらおう」

刹那『……良いだろう』

ヨハン『……』

刹那『先ほどの一撃で俺とエクシアを狙うことも出来たはずだ。それに、この男は嘘がつけるほど器用じゃない』

グラハム「褒め言葉として受け取っておこう」

刹那『まずはあの歪みを断つ。この男に対する対応はそれから決めればいい』

ヨハン『……ふむ』

ヨハン『君がそう言うなら、従おう』

グラハム「ふ、冷静な判断だ。好意を抱くよ」

刹那『っ、必要最低限は喋るな!』

グラハム「おっと、邪険にされるとは……嫌われてしまったな」

ヨハン『…………』

グラハム「……」

実際グラハムの内情は、今にでもガンダムに飛びかかりたいくらいの衝動に駆られていた
しかし、此処でガンダムを敵に回せばどうなるかくらい彼にだって分かっていた

グラハム「それに正々堂々、ガンダムとは決着をつけたいものだ」

グラハム「まずはお前からだ、アレハンドロ・コーナー!」

グラハムの独り言と同時に、彼が隠れていた隕石に百発近い粒子ビームが叩きつけられ、粉々に消し飛んでしまう
その場から素早く退避するGNフラッグ。見下ろす先には、未だその機能の殆どを残す金色の怪物、アルヴァトーレがいた

アレハンドロ「急拵えのフラッグもどきが一匹増えたところで、アルヴァトーレに勝てる気でいるのか? 滑稽だなライセンサー」

グラハム「滑稽なのは貴様の方だアレハンドロ・コーナー。そのアルヴァトーレの片腕と口、切り落としたのはどこの誰だったかな?」

アレハンドロ「……」ピクッ

グラハム「そうやって安い挑発ですぐに血が上る。衰えましたな、先輩殿」

アレハンドロ「言わせておけば……ッ」

グラハム「それを差し引いてもッ! 私が負けることは決して無いと思って頂こうッ!」

アレハンドロ「いい気になりおってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

グラハム「何故ならば……勝利の女神の祝福は! このグラハム・エーカーの唇に授けられたのだからッ!」

アルヴァトーレの砲門ぼグラハムのGNフラッグ目掛け一斉に火を噴いていく
怒り心頭、茹で上がった頭でもアレハンドロは全砲門一つ一つで的確にフラッグを狙っていく
下手な接近は即死に繋がる。GNフラッグはアルヴァトーレの周りを回りながら機を見計らう

グラハム「ッ……!」

しかし、元来想定されていない暴力的な加速に晒され、グラハムの身体は内外問わずダメージを負っていく
内出血と筋肉の断裂、内臓への負担。口角に血の泡が滲み、視界はぼやけ始め像を上手く結べずモニターが霞む
身体が沸騰しそうな位にたぎる熱を歯を食いしばりながら耐え、粒子砲をすり抜け接近を試みる

アレハンドロ「愚かだな、自ら囮を引き受け姿を晒すとは」

アレハンドロ「そのガラクタを打ち砕き、中身を引きずり出してばらまいてやるわッ!」

グラハム「ガラクタッ……言ってくれるなアレハンドロ!」

グラハム「我が友とフラッグファイターの想いへの侮辱ッ! その命で贖ってもらおうッ!」

アレハンドロ「ほざけぇッ!」

ジグザグの変態機動、機体の節々が軋み悲鳴を上げるも、粒子ビームをかいくぐり射程圏内にアルヴァトーレを捉える
振りかざしたGNロングソードをアルヴァトーレ目掛け振り下ろす。アルヴァトーレの突き出す鋏とかち合い、眩い火花が飛び散った

グラハム「ッ!」

グラハム「斬れんとは……当たる瞬間鋏を横合いにずらし受けたか!」

アレハンドロ「精密動作には自信があるのでね、ライセンサー」

アレハンドロ「ところでそのガラクタ、機動性はそれなりにあるようだが……ッ」

アレハンドロ「この距離からの掃射、かわせるかね!?」

グラハム「かわさんよ、必要が無い」

アレハンドロ「ッ!」

粒子ビームが一斉にグラハムへと照準を合わせた瞬間、アルヴァトーレの真下から飛来する高機動の物体

アレハンドロ「あれはスローネ・トゥルブレンツの飛行ユニット……!」

高速で猛追するその勢いは衰えを知らない。直下は死角、このまま行けば、まず間違い無く衝突するだろう

グラハム「……ッ」

アレハンドロ「無人機による特攻、成る程な」

アレハンドロ「俗物が考えそうな手だ、だがアルヴァトーレにはまだこれがあぁる!!」

慌てず騒ぎながら、大型のファングを展開させ一斉に飛行ユニットを攻撃させるアレハンドロ
そのためのファングであり、強化されたアレハンドロの力でその動きは精密かつ正確に飛行ユニットを貫いていく



グラハム「さて、あのMAを倒すための作戦だが」

グラハム「まず私が真っ向から特攻してダメージを与え怯ませる。そうしたら君達が後から来て追撃し倒す。これで行きたいのだが構わないかな?」

刹那「却下する」

ヨハン「作戦として成り立っていないぞライセンサー」

グラハム「……分かった、ならばどちらかが私が奴に接近した段階で何らかのモーションをかけてほしい」

ヨハン「モーション?」

グラハム「奴にあのバリアを張らせるだけのモーションだ。鉄壁の防御に身を包んだその瞬間、それが奴の隙となる」

刹那「わざわざフィールドを張らせるのか……?」

グラハム「ふふ、我々が新型ガンダムから奪ったのは、腕と剣だけではないということさ」

グラハム「一発限りの隠し玉だ、囮も盛大に頼むぞガンダム!」



ヨハン「今だ、刹那・F・セイエイ!」

アレハンドロ「何ッ!?」

瞬間、ファング目掛け粒子ビームが撃ち込まれ次々に叩き落とされていく
ガンダムエクシアのビームライフルの狙撃であった

刹那「何を狙うか分かれば、何処に来るか位容易に読める……!」

刹那「狙い撃つッ!」

飛行ユニットの周囲に展開したファングは全て撃破され、大破寸前のユニットがアルヴァトーレ目掛け突貫

アレハンドロ「ちぃッ……!」

グラハムのロングソードを鋏む鋏を遠ざけ、アレハンドロはGNフィールドを展開
ギリギリのタイミングで飛行ユニットは粒子バリアに衝突、激しい爆発がアルヴァトーレを包み込む
GNアーマーの砲火にも耐え抜いたフィールド、無論無傷でそれを耐え抜いてしまう

アレハンドロ「無駄な足掻きを。アルヴァトーレのGNフィールドに……」

しかし

アレハンドロ「ッ……!?」

突如としてアレハンドロのモニターに映り込む、小型の砲塔端末
GNフィールドの内側に入り込んだそれは、形状こそ原型とは違うものの、ガンダムスローネツヴァイのGNファングそのものであった

アレハンドロ「馬鹿なッ……何故ファングが……!?」

グラハム「ほう、ファングというのかこの武装は」

アレハンドロ「ッ!」

グラハム「技術の解明が進まなかったので、全く違う武器として作り直させていただいた」

アレハンドロ「投げ入れたのか……フィールドを張る瞬間に……!?」

グラハム「噴進機能だけを復活させたGNショットダガー! ガラクタの隠し玉、とくと味わえアレハンドロ!」

グラハムの声に呼応したかのように、粒子を放出し突撃するファング改めGNショットダガー
先ほど刹那のエクシアが突き刺した装甲の裂傷に食らいつき、中に火花を放ちながら突き刺さっていく

アレハンドロ「おのれッ……!」

火薬が仕込まれていたようで、ショットダガーが刺さった場所が爆発しアルヴァトーレの各部が火を噴き機能障害を訴える
フィールドを解除しGNフラッグを狙い撃たんとするアレハンドロ、しかし解除の瞬間を待ち望んでいたかのようにGNブラスターが直下の腹に飛び込んでいく

アレハンドロ「ッ!?」

ヨハン「私を忘れないで貰いたいなアレハンドロ・コーナー」

ヨハン「此処で貴様との因縁、ケリを着ける!」

アレハンドロ「ッッ……!」

狼狽し取り乱すアレハンドロ。何か手は無いか、機器を漁り手段を探す最中、モニターにはロングソードを構え直すフラッグの姿

アレハンドロ「ひッ!?」

そして、GNソードを構え急接近するガンダムエクシアの姿

更に、ビームサーベルを抜くガンダムスローネアインの姿までが次々に映し出されていく

グラハム「切り捨て……御免ッッ!」

刹那「でぇやあああああああああッッ!!」

ヨハン「ミハエルの仇ぃぃぃぃいいいいい!!!」

スローネアインのビームサーベルが下からアルヴァトーレを串刺しにし、GNフラッグがロングソードで縦に深々と刃の一撃を加える
ガンダムエクシアのGNソードは横からアルヴァトーレに刃を突き立てると、そのまま前進し一文字に切り裂いていく

アレハンドロ「馬鹿な……この、このアルヴァトーレがッ……!?」

機能停止、危険の文字が画面一杯に広がっていく
アルヴァトーレは完全に破壊され、爆発しながらゆっくりと崩れ落ちていった

アレハンドロ「……!」

かくなる上は。アレハンドロはアルヴァトーレの真の姿を現すべく、機器に指を伸ばしコンソールを動かす

アレハンドロ「……!?」

しかし起動しない。如何にダメージが大きいとて、アルヴァアロンにはダメージが伝播しているはずがない
にもかかわらず、機器はアレハンドロにも分からないプログラムを立ち上げ、再構築している

アレハンドロ「何をやっている……!」

アレハンドロ「さっさと起動せんかぁぁぁぁぁ!!」

怒りに身を任せ、モニターを強かに殴りつける

『EXAMシステム・スタンバイ』

アレハンドロ「は……?」

聞き慣れぬ機械音と共に、アレハンドロの脳髄に電流が迸る
それは最後に黎明の時代を終わらせるため産み出された、最後のEXAM


ー???ー

プルツー「……」ムクッ

リボンズ「おや、起きたかいプルツー」

プルツー「リボンズ……」ギュッ

リボンズ「あぁ、彼女が目覚めたよ」スッ

リボンズ「アルヴァアロン・ブルーデスティニー……時代の終わりを飾るに相応しいMSだ」



ユニオン軍、基地

滑走路に降り立つ二機のユニオンリアルドがMS格納庫に滑り込むように入り、所定の位置に付く
かたや無傷、かたや模擬戦用のペイント弾をこれでもかと叩き込まれ、真っ赤に染まった無惨な様
これが戦場ならオーバーキルも良いところだ。整備士は、べったり付いたペイントに霹靂しながら、降りてきたパイロットを睨みつけた

「……」

「まだまだだなグラハム。これで俺が三十勝目をマークしてしまったわけだ」

「スレーチャー少佐……」

「どんな気持ちだ? ん? 今どんな気持ち?」

「~~~~!」

圧倒的な技量で陵辱された愛機を見つめうなだれるのは、まだ軍人となって間もない若きパイロット、グラハム・エーカー
からかってくる上官を恨めしげに睨むその姿は、まるで徒競走に負けた子供のような幼さが見える

「冗談だよ、熱くなるなって。だからお前のリアルドはこの様になる」

「う……!」

認めたくない気持ち、そして上官たるスレッグ・スレーチャーの技量への感嘆、この2つが入り混じる妙な感覚に、新兵グラハムは胸焼けのような不快感を覚えた
だがこんなことでへこたれていてはスレーチャー少佐の下では働けない。彼の反省会はここからが本番なのだ

「お前の操縦は独り善がり過ぎるんだグラハム。言っちまえばオナニーだなオナニー」

「オナ……!?」

「相手のことをま~ったく考えちゃいない。だから操縦が自分勝手になって状況に乗り遅れ、相手の言いようにされちまう」

「分かってんのか? 軍人として空を飛ぶ以上、お前が独りで飛ぶことはまず有り得ないんだ。バカの尻拭いは仲間がやらなきゃならん」

「今みたいな飛び方してたら、真っ先に死ぬのはお前じゃない。お前のパートナーだ」

「はい……承知しています」

いつもの厳しいお説教。グラハムは胸に突き刺さる指摘の数々に呻きながら、同時に満たされていく感覚に頬を緩める
毎日の訓練により少しずつ彼の背に近付けているという実感、そして彼と共に空を飛んでいる事実が、どうしようもなくグラハムを高揚させていた

「何にやけてんだ若造っ!」

「ふぐっ!?」

直後に振り下ろされた鉄拳、ゴン、という重い音。グラハムは頭を抱え痛みに涙を浮かべる
いつもながらの手厳しい仕打ち、馴れたと言うには少々一発が重すぎるのではないか。数少ない少佐への不満の一つだ

「つまりだ、相手が何を考え、どうしようとするか」

「それを考え、肌で感じて対応する。それが出来りゃあ少しは違ってくるさ」

「ファントンでもヘリオンでも、MSの操縦にパイロットの感情は必ず乗ってくる。後は、読むだけだ」

「なぁに、お前にもいつか出来るさ若造。何たって、俺が教えてるんだからな」

簡単に言ってくれる。笑いながら前を歩くスレーチャー少佐に心の内で文句を告げ、遅れないように付いて歩く



――この人のようになりたい
その憧れだけは、この日と今と、何ら変わりはしない



グラハム「はっ……!?」

意識が現実に戻る。目の前では、破壊されたアルヴァトーレが火花を噴き上げながら燃え上がっていた
まだあのMAに刃を振り下ろした感触が残っている。時間にすれば、ほんの数秒の間の夢だった

グラハム「走馬灯……?」

全身に篭もる熱と痛みに顔を歪めながら、確かめるようにGNフラッグの操縦桿を握り直す
手足の筋肉は酷使した代償から鈍痛を帯び、肋骨は時折見え隠れする鋭い痛みに、一部罅が入っていることが疑われる
元々マリーダと別れた時からダメージを負っていたこの身体は、更なる強敵との戦いにより満身創痍であった

グラハム「……ッ」

刹那『終わった、のか?』

ヨハン『分からん。ただこの爆発なら無事ではすまい……』

通信が入り、他の二人の無事が確認される
ヨハンの駆るスローネアインが此方を警戒するように見つめ、距離を離す
しかしグラハムはアルヴァトーレの残骸から目を離せずにいた。
まだだ、まだ終わっていない。まだ何かある
グラハムの中の何かが、必死にその証拠を探そうと意識をアルヴァトーレに向けていた

グラハム(奴の、アレハンドロのプレッシャーは依然として響いてきている)

グラハム(だが此処まで破壊してしまえば、さしものアルヴァトーレとて動けはしまい。動けたとしてももはや虫の息、逃げることさえもままならんはずだ)

グラハム(だが……)

刹那『……』

グラハム「……」

十数秒の思考。アルヴァトーレは爆発により切り裂かれた胴体が崩落し、GN粒子の煙で全体像も把握できなくなっている
ヨハンの動きに合わせ、刹那もまたグラハムを警戒し半身をずらしGNフラッグに隙を見せぬよう立ち位置を変えていた
動かねば不利になるのは自身、しかし、気になってしまう

グラハム「…………」

その時だった

グラハム「ッ……!!?」

アルヴァトーレを中心に大気が張りつめるような感覚、グラハムの総身の細胞が一瞬にして戦慄き警戒態勢に入る
ニュータイプとしての直感が、恐るべき何かの存在を強く感じ取っていた

グラハム「退け少年ッ! 奴が来るぞぉッ!」

刹那『何……!?』

ヨハン『奴、だと?』

GNフラッグが飛び退くようにその場から離れる。エクシアはグラハムの叫びに粒子の出力を上げ対応力を上げるが、半壊しているスローネアインは行動に一歩遅れを見せてしまう

それが、生死の分かれ目となった

ヨハン『』

刹那『ぐぅっ!?』

グラハム「!」

噴煙の中から粒子砲が二発、別々の方向に迸り飛んでいく
視界不良の状況下でありながら、それを感じさせぬ精密な射撃、一本はガンダムエクシアの右肩を掠め、装甲の一部を削り取っていく
そしてもう一本は、スローネアインの胴体を深々と貫き通し破壊していた

刹那『ヨハンッ!』

ヨハン『刹那・F……!』

何が起きたのか分からない。無線から響いたヨハンの声は上擦っていた
貫かれた穴から爆ぜるスローネアイン、無線は途切れ、そのまま虚空に漂いぴくりとも動かなくなった

刹那『ヨハン・トリニティーッ!!』

グラハム「……!」

刹那の慟哭がGNフラッグのコクピットにも木霊する。しかし、グラハムには慰める余裕も叱咤する猶予も無かった
アルヴァトーレの中から二人を狙った何かの意識は、上空から兎を狙う猛禽の如く、グラハムを視ていたからだ

グラハム(一瞬でも気を抜けば向かってくる……!)

全神経を集中し、敵のモーションに反応出来るよう操縦桿を強く握りしめる
隣のエクシアからも、その緊張感がひしと感じられた
やがて煙も消え、視界を遮るものは無くなり
壊れたアルヴァトーレを踏み越え、中から【それ】は姿を現た

グラハム「な……ッ」

刹那『コイツは……!』

背に大きな翼を背負い、全身を眩い黄金に彩る疑似太陽炉搭載型のMS
砲身の長いビームライフルを腰にためて構え、微動だにしないその様は、古代AEUの彫刻にも通ずる美的調和さえ感じられるものであった

グラハム「あれが本体……」

グラハム「今まで我々が戦ってきたMAは、本丸を守る城塞に過ぎなかったということか…!」

アルヴァトーレとは違う、異質なプレッシャーに唾を飲むグラハム
二人の見守る中、それは一歩前に踏み出し、再び停止する

刹那「っ!?」

そして踏み出した右脚から、全身へと広がっていく深い蒼。金色の彫刻は、一瞬にして蒼い死神へとその姿を変貌させる

グラハム「色が変わった!?」

『EXAMシステム、スタンバイ』

敵のビームライフルが一丁右に投げ捨てられた瞬間、赤い軌道が線を描き、グラハムの目の前で止まる
それが謎のMS、アルヴァアロンのカメラアイの色と分かるのには僅かながらの時間を要した

グラハム「え」

反応しきれなかった。フラッグが防御態勢に入る前に、アルヴァアロンの手刀が思い切り右肩に叩きつけられる
凄まじい衝撃に揺さぶられ、意識の追随がしきれない

グラハム「がっ……!?」

殴られた肩部装甲板のひしゃげる嫌な音が、直接グラハムの耳に届く
そのままアルヴァアロンは脚を振り上げ、踏みつけるようにフラッグへとそれを向ける

グラハム「ッ!」

恐らく狙いはコクピットなのだろう、踏み抜かれ、鉄塊に潰される自身の姿が脳裏に浮かぶ

グラハム「お……!」

グラハム「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

のしかかる恐怖感に耐えきれず、絶叫しながら本能に任せ機体を動かす
無理やり機体を捻り、右腕のGNシールドのアタックスパイクを脚にぶつけ、衝撃を利用し何とか離脱に成功した
相手の足裏にわずかながらスパイクが傷を付けるが、アルヴァアロンはフラッグの一撃を意にも介さぬ様子で見下す

『ふむ』

グラハム「はぁっ……はぁっ……!」

『悪くない』

グラハム(全く捉えられなかった……だと……!?)

グラハム(この感覚、まさかあの特殊システムは太陽炉搭載MSにも……!)

刹那「アレハンドロッッ!」

仲間をやられた激情に駆られ、ガンダムエクシアがGNソードを振りかざし突っ込んでいく
蒼いMSは空いた手にビームサーベルを握ると、唐竹に振り込まれたそれを軽々とそれを受け止める

刹那「あぐっ……!?」

ビームサーベルとGNソードの激しい鍔競り合いが、両機の蒼を浮かび上がらせ照らす
だが一瞬目映い光が発せられたかと思えば次の瞬間蒼いMSがエクシアを押し込み、体勢を崩したその胴体部と蹴りを叩き込み突き放していた
パワーの差、反応速度、出力、機動性
一合の刃の交わりが、その圧倒的な性能を雄弁に語っていた

グラハム「なんと……」

刹那「コイツは一体……!」

『素晴らしい性能だ……!』

グラハム「!」

『望めば望むほど、更なる能力を私の前に見せてくれる! これがアルヴァアロンの、このアレハンドロ・コーナーの力!』

刹那「アルヴァアロン……?」

グラハム「やはり、あのMSには……!」

『最早ガンダム、ライセンサーなど……恐るるに足らんッ!』

グラハム「つッ……」

高笑いと共にビームライフルがグラハムに照準を合わせ、立て続けに粒子ビームを放出していく
GNフラッグも負けじと右へ左へと回避するが、急激なGの変動にグラハムが耐えきれず、次第に照準を外しきれなくなっていく
二十二門の粒子ビーム砲ほどの密度はないにせよ、一発の威力と速度はアルヴァトーレのそれの比ではない
グラハム(このままでは……ッ!)

刹那「ライセンサー、援護する!」

グラハム「! かたじけない……!」

GNフラッグの窮地に、エクシアのGNビームライフルがアルヴァアロン目掛け数発発射される
しかしアルヴァトーレ同様、アルヴァアロンは粒子フィールドを発生させそれを容易に受け止めていく

刹那「GNフィールド!?」

グラハム「アルヴァトーレの機能は完備しているというわけか……」

グラハム「だが、この隙を逃す私ではッ!」

強力なフィールドを発生させたのならば、攻撃の手は一瞬であろうとも必ず途切れるのが定石
アルヴァトーレ同様の利点は、アルヴァトーレ同様の弱点になりうるとグラハムは考えていた

グラハム「アレハンドロ・コーナー……覚悟ッ!」

加速し、その一瞬の隙を突き一気に距離を詰める
先ほどのMAが強化パーツならば、アルヴァアロンがアルヴァトーレに勝る筈はない
反撃のビームライフルがフラッグの頬を掠め、装甲を僅かに焼く。それでもグラハムの猛進は止まらない
対フィールド性能を有した実体剣による、加速をつけた一点集中の一撃。思い切り、アルヴァアロンの粒子フィールドに突き出した

グラハム「行けぇぇ!」

『……ふん』

思惑通り、粒子フィールドを刃が突き破る。そのまま先端がアルヴァアロンの胸部目掛けて延びていき……

止まった

グラハム「なっ!?」

刹那「何だとッ!!」

アレハンドロ『甘いのだよ。サイコミュ的精神波によるGN粒子の操作、よもや自身にのみ許された能力とは思っているまいな?』

グラハム「まさか……!」

アレハンドロ『馬鹿め! その、まさかだッ!』

ロングソードの切っ先を止めたのは、胸部の一点、ピンポイントに小さく生み出された多重構造のGNフィールド
GNフラッグの侵攻は完全に止まり、アルヴァアロンは手も使わずそれを成し遂げている

グラハム(対フィールド性能の武器でさえ貫けぬ極小圧縮フィールドを、真っ向からぶつけ攻撃を受け止めたというのか……!?)

グラハムの使い方とは全く逆の、防御に回した粒子干渉能力の応用
殺意を読み取る特殊システム機の力を併用すれば、このカウンターのような使い方も可能なのかもしれない
ただしそれは、GNフラッグがアルヴァアロンに出せる手が無くなった事をも意味する、死刑宣告でもあった

アレハンドロ『そのガラクタでよくぞ此処まで戦い抜いたものだ……』

ビームサーベルを左手に構えるアルヴァアロン、その粒子出力は強化され、極太の一刀となりGNフラッグに迫る
グラハムは咄嗟にブーストを逆噴射し離れようとするが、僅かに逃げ切れない

アレハンドロ『新世界の礎となれ、フラッグファイター!』

咄嗟にGNシールドを構え、粒子の刃を受ける
絶大なエネルギーの塊に一秒と立たずフィールドは弾け、右腕を諸共に巻き込みながらシールドは融解
ビームサーベルの描く紅い軌跡が、GNフラッグの横をすり抜ける
一秒の間を空け、切り捨てられた右腕が爆発
断面から粒子が血のように吹き出し、星の海を紅く染め上げた

グラハム「ぐぉああっ!」

コクピットは衝撃でスパークし、機器の破片がグラハムの身体に容赦なく降り注ぐ
激痛に顔が歪む、それでもモニター越しのアルヴァアロンはビームライフルを構えグラハムに追い討ちをかけんと狙いを定めている
動け、動け、動け!
飛びそうになる意識を必死に繋ぎ止め、操縦桿を動かしロングソードを構える

アレハンドロ『はっははははははは……!!』

何発も何発も打ち込まれるビームライフルを、直感でロングソードをぶつけて受け続ける
朦朧とする意識の中、背にぶつかる石の感覚
見れば、大型アステロイドがグラハムの行く手を阻むように背後にそびえ立っている
逃げ場が、無い

グラハム「ッ!」

グラハム(ぬかった……!)

アレハンドロ『……ふん』

乱射されるビームライフル、GNフラッグを縫いつけるように撃ち込みながら背後の大型アステロイドを幾度も叩き、やがて罅を全体に走らせGNフラッグを押し込んでいく
機体はみしりと嫌な音を立て、各部に過剰な負荷がかかりアラート表示がモニターを埋め尽くす

アレハンドロ『終わりだ』

三発、とどめとばかりに放たれる粒子ビーム
閃光と衝撃。大型アステロイドは砕け散り、フラッグはまるで糸が切れた操り人形のように吹き飛ばされ別のアステロイドに叩きつけられる

刹那「フラッグのパイロットッ!」

グラハム「……ッ」ゴボッ

グラハム(強い……ッ)

グラハム(これほどとは……!!)

喉にこみ上げた血を吐き出すと同時に、グラハムの肉体から力が抜けていく
機体性能、パイロットの能力、OS、どれを取っても圧倒的な差
勝てる要素が、見当たらない

刹那「おい、応答しろ! ライセンサー、ライセンサー!」

刹那は必死に無線に呼び掛ける、しかし応答は無い
弱々しい呼吸音が微かに耳に届く、まだ生きてはいるだろう

刹那(気絶しているだけか、頑丈な男だ)

刹那(だが……あいつはもう戦えまい)

エージェントとして訓練された刹那から見ても、フラッグの損傷ははもう戦えない
いや、そもそもフラッグ程度のMSで此処まで戦えたことが奇跡なのだ
そして、最早刹那にも他人を気にする猶予は残っていない。フラッグに背を向け、蒼いMSへGNソードを構える

アレハンドロ『もうあのフラッグは戦えないだろう。後は貴様だけだ、刹那・F・セイエイ』

刹那「アレハンドロ……!」

アレハンドロ『流石はオリジナルの太陽炉を得たガンダム……未熟なパイロットながら私を最後まで苦しめるとはな』

刹那「……ッ!」

アレハンドロ『だがもうこれまでだ』

アレハンドロ『貴様を始末し、私の新世界を盤石な物とする……』

刹那はフラッグに攻撃していた様子を思い出す
あのMSの武装、威力は凄まじいがどれも取り回しに難があり、白兵戦に置いては扱いにくいものだと分析していた
ならば、付け入るのはその隙か
幸いにもアレハンドロは刹那を甘く見ている、近付く隙は幾らでもあるはずだ

刹那「……ふう……」

込み上げる怒りを抑えながら大きく息を吐く

刹那「ガンダムエクシア!」

アレハンドロ『消え去れ、ガンダムッ!』

刹那「敵機を駆逐するッ!」

刃と刃が交錯し、粒子の火花が二つの蒼を照らす

その様子を、遥か遠方から眺める者達がいるとも知らず……


ー???ー

デヴァイン「リボンズ、ヒリングとリヴァイヴは撤退に成功したそうです」

デヴァイン「RGMは損傷軽微、しかし固有武装を失ったと」

プルツー「……」

リボンズ「そのまま帰還してくるように伝えてくれ」

リボンズ「流石に近接戦闘能力の高い機体ばかりのあの戦場に、中距離以遠の整備を施した機体では行かせられないからね」

デヴァイン「わかりました。ではそのように……」

プルツー「……」

王留美「プトレマイオスは大破。他の戦闘も徐々に収束し、残すはエクシアとフラッグ、そしてアルヴァアロンのみですわね」

リボンズ「ええ」

王留美「理想は相討ち……でもそう上手く行かないのも世の常ですわ」

王留美「最強の能力と最強のMSを有するアレハンドロが勝ち残った場合、始末はどうなさるおつもりなのかしら?」

リボンズ「……抜かりはありませんよ」

リボンズ「そのためのEXAMです。オリジナルの……ね」

           ・
                         ・
                         ・

全身を包み込む心地良い感覚に、そっと目を開ける。
静かで優しい光に包まれながら、グラハムの意識は虹色の世界を漂っていた

グラハム「……ここは……」

グラハム「私は……死んだのか?」

見れば、パイロットスーツは消え、一糸纏わぬ姿
しかし不思議と恥じらいの感情は湧き上がらない。それは、此処が以前感じた思念の交わる場と同じだからなのだろう

グラハム(以前は……MSWAD基地で服も来ていた。だがこちらの方がより鋭敏な意識の発達を感じられる)

グラハム(成る程、媒介を使わぬ心と心の交わり……それがこの世界……)

『遅い! 遅いよお兄ちゃん!』

グラハム「!」

ふと、後ろから声をかけられる
瑞々しい、元気な若い少女の声……聞き覚えがある声だった
振り向くグラハム。そこに立っていたのは、栗色の髪を揺らし、明るく笑う少女の姿

グラハム「君は……」

プル『はじめまして、かな? グラハム』

グラハム「……!」

この場がそうさせたのか、死の淵故にグラハムの能力が鋭敏になっているのか
とにかく、彼女がいったい誰なのか……グラハムにはすぐに理解できた

グラハム「プル……エルピー・プル?」

プル『あったりー! えへへ、直ぐにバレちゃった』

グラハム「驚いたな……君は確か亡くなったと聞いたが」

グラハム「肉体が死んでも、死者の意志は世に残るというのか……?」

グラハムの問いに、プルは少し寂しげな表情を浮かべ首を横に振る

プル『あたしは他の人とはちょっと違うんだ……心の一部と力だけが離れて、此処にずっと縛られてるの』

プル『こうやって、力がある人や、う゛ぇーだの作った道の中なら出てこれるんだけど……ね』

グラハム「そうか……」

グラハム「……詳しい事情は私には分からんが、君がずっと私の近くにいたことは、今なら何となく理解が出来る」

グラハム「ニールが言っていたのは、君のことだったのだな……?」

プル『うん、ニールは凄く優しかったよ。グラハムを助けてって御願いしたときも、直ぐに飛んできてくれたんだから』

プル『それにしてもヒドいよ! ニールはすぐに気付いてくれたのに、グラハムお兄ちゃんは全く気付いてくれないんだから!』プンプン

グラハム「……謝罪しよう。だがニールほどの能力は私にはない、許してくれ」

プル『チョコパフェ買ってくれたら許したげる!』

グラハム「ははは、約束しよう」

プル『ほんとにっ!?』

グラハム「男の誓いに訂正は無いよ」

嬉しそうな表情のプルを見ていると、戦いの最中である事も忘れ、グラハムの顔が緩んでいく
マリーダの昔の頃も、この様に可憐な少女だったのだろうか……

プル『グラハム、マリーダのこと考えてるでしょ?』

グラハム「む?」

プル『此処じゃあ筒抜けだよ?』クスクス

グラハム「ぬ……」

グラハム(……こればかりはどうも慣れんな)

気恥ずかしそうに俯き腕を組むグラハム
そんな彼にプルは近付くと、その頬に両手を添え、優しい笑みを浮かべ語りかける

プル『でもねグラハム、あなたは気付かなきゃいけないの。マリーダがあなたを必要とする以上に、あなたがマリーダを必要としていることに』

グラハム「何……?」

プル『思い出して、あなたは一人じゃなかった。だからもう、後悔なんてしなくていい。誰かと一緒にいてもいい……それは決して悪いことじゃない』

グラハム「プル、一体何を……」

プル『あたしが手伝ってあげられるのはここまで……だから、あとはお兄ちゃん次第』

プル『大丈夫、きっとあなたなら進めるよ。あの人もそれを望んでいるから』

そっと突き放す、小さな手
突然重力に引かれるように、グラハムの身体は真っ逆様におちていく

グラハム「……!」

『御願いグラハム……生きて……!』

グラハム「はっ……!?」

気が付けば、そこは焼け焦げたコクピットの中
再び身体を支配する激痛、モニターには粒子残量とフラッグのダメージ状況が事細かに表示されている

グラハム「……」

意識は戻った、だが感じられる
まだ近くにエルピー・プルがいる

グラハム「……っ」

痛みを堪えながら、意識をバイオシートに乗せて彼女を探す
何故あんなことを言ったのか、その真意を知りたい一心に思念を広げていく

グラハム「いた……ッ!」

そして、プルの気配は直ぐに感じられる
グラハムが思っていたよりもずっと近く、彼女は確かにそこにいるという確信も感覚として存在した
頭部を動かすだけで節々からスパークし、嫌な音を立てるフラッグ
そして、モニターに映し出されたのは……

グラハム「……ッ!?」

エクシアを圧倒するMS、アルヴァアロン

グラハム「まさか……?!」

そんなはずはない、頭の中では否定しながらもグラハムの脳波は確かにプルの存在をアルヴァアロンに見出している
元よりアルヴァトーレの中から微かに感じた感覚が、今となってはエルピー・プルの存在としてはっきりと感じ取れてしまう

グラハム「……!」

特殊システムは、此方の敵意を読むように動く
彼女はニュータイプだ
そして、アルヴァアロンの性能とあの動き
様々な情報が結びつき、やがて一つの結論を導き出す

グラハム「……」

           ・
                         ・
                         ・

アレハンドロ『どうしたガンダム! 最初の威勢は何処へ行った!?』

刹那「はぁぁぁぁッ!」

エクシアのGNビームライフルを多重フィールドで受け止め、反撃の粒子ビームを撃ち返していくアルヴァアロン
完全に動きを読まれている、その事に刹那は焦りを覚えていた

刹那「だがっ……!」

粒子ビームを回避し、更に接近を試みる
エクシアがアルヴァアロンに勝つためには、まず何よりも近づかねばならない
ならば迷ってなどいられない。刹那は出力を更に上げ、蒼い死神へ再び接近していく

アレハンドロ『ふん、単調だなエクシアのパイロット!』

対するアレハンドロはビームライフルの弾幕をわざと弱め、出力を強化したビームサーベルでエクシアを迎え撃つ
挑発的な行為、だがチャンスでもある

刹那「おおおおっ!」

GNソードで横に一閃、深々と切り込んでいく
ビームサーベルとの、もう何度目か分からない刃の交錯。エクシアは僅かに身を引くと、一回転を加え更に左手のビームサーベルを抜き一撃を追加する

アレハンドロ『ふんっ!』

刹那「くっ……!」

しかし、どちらの切っ先もアルヴァアロンを捉えること適わず、強化ビームサーベルか多重フィールドのどちらかに阻まれそれ以上の侵攻を許されない

刹那「やはり……!」

フラッグのパイロットを瞬殺した性能、技量、そのどちらにも偽りはない
刹那はその強さを自ら体感し、自らの無力さに歯を食いしばる

刹那「だとしても……俺は戦う!」

刹那「ロックオンの為に、紛争根絶の為にッ!」

アレハンドロ『しゃらくせええッ!』

刹那「ぐあああッ!?」

アルヴァアロンが前に動き、エクシアの胴体を強かに蹴りつけ機体を揺らす
ガンダムはフラッグとは違いパイロットへの衝撃緩和も万全ではある、が、それでも刹那の意識は数瞬飛び、エクシアは隙だらけになる

アレハンドロ『そんなに仲間が恋しいか刹那・F・セイエイ!』

アレハンドロ『ならば貴様も送ってやろう……仲間の下へなぁ!』

刹那「ッ……!」

その時だった
遠方からアルヴァアロン目掛け、紅い粒子ビームが襲いかかったのだ

アレハンドロ『何ッ!?』

刹那「この威力は……!」

とっさにGNフィールドを発生させ弾き返すアレハンドロ。EXAMシステムによりこの奇襲もまた予測の範囲にあった
このレベルの粒子ビーム砲を持つのは、現状ただ一機

アレハンドロ『ガンダムスローネ・アインか……!』

ヨハン『刹那・F・セイエイ……逃げろ……!』

刹那「ヨハン・トリニティ!」

エクシアに通信が入る。モニターには血まみれのメットを被るヨハン、更に遠方からGNブラスターが立て続けにアルヴァアロンを狙い撃つ

アレハンドロ『ちぃっ……』

ヨハン『逃げろ刹那……私が時間を稼ぐ……!』

ヨハン『だから早く……ッ』ゴフッ

刹那「ヨハン、もういい! 後は俺がやる、だから……!」

GNドライブを砕かれ重症を負いながら、虚ろな意識でヨハンは引き金を引き続ける
それでもアルヴァアロンはびくともしない。その事実に、刹那は唇を噛み締め涙を堪えた

アレハンドロ『雑魚が……黙って残り数時間の命を噛みしめていれば良かったものを』

アレハンドロ『そんなに死にたければ、私自ら地獄に叩き落としてくれるッ!』

刹那「ッ!? 止めろおぉぉぉぉぉ!!」

GNフィールドを展開したままガンダムスローネへ突撃するアルヴァアロン
その手にはビームサーベル。今のヨハンにはそれを防ぐ手だてはない
エクシアはアルヴァアロンの侵攻を止めようと全速力で追撃する
だが初速から計算してみても、恐らくは追いつけない
エクシアが遅いのではなく、アルヴァアロンが速すぎるのだ

刹那「ッ……!」

GNブラスターが飛んでこない。恐らく粒子が尽きたのだろう
ヨハンを助ける方法は、一つしかない
やるしかない。刹那は覚悟を決めて、スイッチに手を伸ばした

アレハンドロ『ふははははははぐぁっ!?』ガゴンッ

刹那「ッ!」

トランザムを発動させようとした、ほんの一瞬の間
すぐ先を行くはずのアルヴァアロンの背中が、一瞬にしてモニターから消え去った
Eセンサーには、二機の反応が重なり合うように明後日の方向に外れていくのが見える
一つの機体識別反応はアレハンドロのアルヴァアロン、そしてもう一つは、あの男の駆るユニオンフラッグカスタム

グラハム「少年、此処はこのグラハム・エーカーが預かった! 君はあのパイロットを遠くへ!」

刹那「ライセンサー……!」

アレハンドロ『貴様ッ! まだ、動けたのか……!』

グラハム「私は諦めが悪くてね……それに、お前に勝たねばならないもう一つの理由も出来た!」

アレハンドロ『何だと?』

グラハム「問答無用ォッ!」

再び乱入したフラッグファイターは、先ほどとは別人のようなプレッシャーでアルヴァアロンに切りかかっていく
倒せるとは思えない。だが、今の彼ならば幾分か持ちこたえてくれるだろう
そう信じて背を向け、ガンダムスローネの下にエクシアを走らせる

刹那「ッ……!」

その直後、背後で巻き起こる大爆発
スローネのすぐ側で繰り広げられる戦闘、こうなっては直ぐに戻ることもかなわない
彼ならば耐えられる……その判断が間違いであったことを、刹那はすぐに思い知らされることになる

――

チャージされたアルヴァアロン砲が爆音と共に粒子の奔流を生み出し、アステロイドを次々と飲み込み破砕していく
捉えたか、姿が見えないことに一瞬安堵する
が、すぐに残骸の中から此方に向かってくるのが見えた。紛れもない、ユニオンフラッグカスタムⅡの姿だ

アレハンドロ『しつこい男だ……!』

ビームライフルはしばらく使えない。
リスクは把握していたが、至近距離からの一撃なら、余波でも相応のダメージになると判断し撃ち込んだ
機能停止は確実かと思ったが、フラッグの動きは機敏さを失わず、パイロットのプレッシャーも全く衰えない
どうやらあのフラッグカスタムは予想以上にしっかりと作り込まれているようだ。
自身の古巣だけに、ユニオンの技術力が高いことには喜びを覚える

アレハンドロ『限界を超えても尚戦うその信念、敵ながら賞賛に値しよう』

アレハンドロ『だが結果は変わらない。もう休みたまえ……ライセンサー!』

GNロングソードが真上から突き出されるのを、ビームサーベルで受け止める
更に繰り出される刃を、真っ向から全て受け止めていく
軽い一撃だ、アレハンドロは余裕を持ってそれを凌いでいた
相手の一撃に合わせ、思い切り正面から叩き込み弾き飛ばす
勝った、勝ち誇るアレハンドロを後目に、機体の体勢を立て直し、ロングソードを握り直すGNフラッグ
その機体から感じるプレッシャーは、グラハムがまだ諦めていないことをアレハンドロに教えていた

アレハンドロ『馬鹿な……無駄な足掻きだぞライセンサー』

アレハンドロ『分かっただろう。君と私の差、フラッグとアルヴァアロンの差。気合いだけで埋められる差では無い』

グラハム「だとしても……私は諦めの悪い男でね……!」

グラハム「今ここで退いてしまったら、私は死んでいった部下に合わせる顔が無くなってしまう……」

アレハンドロ『意地と矜持を支えに立ち上がるか、愚かしいな』

グラハム「意地も張れず、矜持も持てぬ一生など……此方から願い下げだと言わせてもらおう」

アレハンドロ『はっ!』

アレハンドロ『大局を見据えられぬ俗物の考え方だな! 人の想いなど、時代の流れには何の効力も持たぬ!』

アレハンドロ『そして私はその世界を、私色に染め上げるッ!』

グラハム「それが、それこそが間違いだと何故気付かない!」

アレハンドロ『何……?』

グラハム「人を包むのが世界なら、世界を成す最小単位もまた人だ!」

グラハム「人の想いを無視し、命を踏みにじって生まれる変革がッ……」

グラハム「世界を良くする筈がなかろうがッ!!」

数合の打ち合いと、一瞬の鍔迫り合いを繰り返し、二機はもつれ込み、ぶつかり合う

アレハンドロ『はっ! それならば何とする! 世界はどうしようもないほどに絡み合い、もはや取り返しなどつく筈もない!』

グラハム「暴力で変えられた世界は、いずれ暴力でまた変えられる! 力による支配を容認した時点で、世界から争いが無くなることはない!」

アレハンドロ『構わんさ。楯突くならば潰す! そしていずれは全てが私に跪くのだ!』

グラハム「世迷い言を!」

アレハンドロ『優しさで世界を直せると信じる貴様よりは、現実的な考え方だと思うがねッ!』

グラハム「貴様という奴は……ッ!」

アレハンドロ『あぁ……だからか。マリーダ・クルスを部下にして、主従関係ごっこをしているのは』

グラハム「……何が言いたい!」

アレハンドロ『女としては出来損ないも良いところだからな……優しくしてやればすぐに懐いただろう。もう抱いたのかね? なかなか良い身体をしていたじゃあないか』

グラハム「ッッ……!!」ブチッ

アレハンドロ『良いぞライセンサー、その顔だ! 今貴様の内に沸き起こる感情が、貴様の理想が間違いだという何よりの証!』

グラハム「黙れえぇぇぇぇぇッ!!」

アレハンドロ『怒りに狂った刃で私を捉えられると思うな……俗物ゥッ!』

フラッグの横腹にアルヴァアロンの膝が叩き込まれ、ビームライフルによる殴打でフラッグの頭部の一部が砕けて欠ける
場は完全にアレハンドロが支配していた

アレハンドロ『ははははははは!』

グラハム「ッ……!」

それでもフラッグは止まらない。何度でも何度でも刃を構え、終わらない

アレハンドロ『ふん、まだ立ち上がるのか。ここまで来ると哀れだな』

アレハンドロ『何より貴様は軍人だろう? 暴力を振るうのが仕事である軍人が……世迷い言だな』

グラハム「……力無き……」

アレハンドロ『ん?』

グラハム「力無き正義は無力なり……だが、正義無き力は暴力なり」

グラハム「貴様の振るう力には正義が無い……故に私は暴力と形容した」

グラハム「私を、私達を! お前のような男と一緒にするなッ!!」

アレハンドロ『屁理屈を……!』

アレハンドロ『黙れッ!』

上から打ちつけるアルヴァアロンの拳がフラッグを殴り飛ばす
アステロイドに叩きつけられ、激しく揺れるフラッグ
これならば減らずも叩けまい。そう考えた矢先、それでもフラッグは起き上がってくる

グラハム「ッ……」

グラハム「……貴様のMSに搭載されているシステムの中にはな……」

アレハンドロ『! 貴様まだ……!』

グラハム「一人のニュータイプの少女の心が……閉じ込められている……」

アレハンドロ『!』

アレハンドロ(エルピー・プルの事を知っているだと……いや、まさか!?)

グラハム「彼女は……自身が囚われの身でありながら、私を助け、身を案じ、生きろと言ってくれた」

グラハム「私に、助けてという一言さえも言わずにだ……!」

アレハンドロ『何だと……!』

グラハム「十分だ」

グラハム「命を賭ける、これ以上の理由など有りはしない……!」

肉は裂け
骨は砕かれ
神経は感覚を失いただただ熱く燃えるよう
視界は白濁に沈み淡い像しか結ばず
鼻は血の香のみを伝え過ぎてその機能を失い
耳は繰り返し遠雷のような耳鳴りだけを残し言葉すら聞き取れず
ただ、鮮明な意識だけが壊れた肉体を支配し、動け、動けと命令を繰り返す

グラハム「……」

頼む、私の身体よ
まだ倒れないでくれ
後少し、後少しでいい
もう少し動いたら、ゆっくり休ませてやる
そう念じ、出来ているのかも分からない深呼吸を何度も繰り返す

グラハム「……よし」

アレハンドロ『ッ……!?』

何故動ける、あれだけの損傷を受けながら
何故動ける、あれほどの損傷ならば中身とて無事では無かろうに

グラハム「……」ガコンッ

そうだ
そうだった
この男は、千機に近い大軍でさえ傷つけることかなわなかったガンダムの腕を、たった独りで切り落とし
雲海の先、成層圏を狙い撃つ男の射撃を難なく避けて見せ
道理を無理でねじ伏せ、EXAMの奇襲が生み出した如何なる危機的状況をも叩き潰し
現にアルヴァトーレを沈め、限界をとうに超えた機体と身体で、尚アレハンドロの前に立ちはだかっている

グラハム「……!」

そうだ
これこそがこの男の
グラハム・エーカーの真骨頂!

アレハンドロ『死に損ないが……ッ!』

強気な言葉を吐いて見せても、その手の震えは他ならぬ自身が目の当たりにしている

アレハンドロ『もう良かろう……今度こそ奈落に沈め、!』

声まで震える前に通信を切り、大きく息を吸い込み平静を保たんと試みる
長い政治生活は軍人だった過去を蝕んだのだろう、アレハンドロがそれに気付く気配はない
改めて操縦桿を握り直し前を見る。依然としてGNフラッグは立ちはだかり、彼方からはガンダムエクシアの気配も感じ取れる

アレハンドロ『流れは私の方から奴に向いている……だが関係などあるものか』

アレハンドロ『如何に立ち上がろうと確実にコクピットを破壊してしまえば奴は死ぬ』

アレハンドロ『……そうとも、勝者はこのアレハンドロ・コーナーだ!』

急加速でGNフラッグめがけ突撃するアルヴァアロン。一番最初にグラハムが反応すら出来なかった接近速度だ
――これならば、殺れる!

アレハンドロ『今度こそくたばれ、ライセンサー!』

グラハム「……言葉が汚いなアレハンドロ」

アレハンドロ『はっ?』

グラハム「ふんッ!!」

突き出されたGNビームサーベルはフラッグのロングソードとかち合い粒子を放出、本来フラッグの右腕があった空間をすり抜けていく

アレハンドロ『なっ――!』

フラッグはその威力を受け流しつつ一回転、突っ込んでくるアルヴァアロンの横を抜け背後を取る
アルヴァアロンの最大戦速を逆手に取った、一瞬の出来事
何が起きた? 自らに問う間さえなく、フラッグの一撃は確かにアルヴァアロンを捉えていた

アレハンドロ『ぐぉっ!?』

グラハム「おおぉぉぉぉぉぉッ!!」

左翼部に渾身の一刀が食い込み、振り抜かれた刃がそれをむしり取っていく
小さな爆発と共に揺らぐアルヴァアロン。即座に急停止し、振り向き様ビームサーベルを大きく横に振るう
しかし切っ先ギリギリでフラッグは止まり、左半身に機体を傾け一撃をかわせば、ロングソードを構え一直線にアルヴァアロンへと突き出してきた

アレハンドロ『……ッ!』

グラハム「何のこれしきィッ!」

極小圧縮フィールドがロングソードを防ぐものの、それを読んでいたとばかりに体勢を立て直したフラッグが胸元に蹴りを叩き込む

アレハンドロ『がッ!?』

グラハム「ぐっ……!」

大きく仰け反るアルヴァアロンに対し、体勢をそのままに再びロングソードを構えるフラッグ
装甲表面には、揺らめく炎のようなエネルギーを纏っているのが見える

アレハンドロ『何だ……あれは!?』

グラハム「……ッ!!」

自身の攻撃で伝わる衝撃にさえ、グラハムの身体は電流のような激痛を感じていた
まだだ、萎えそうになる心を抑え、込み上げる血塊を喉奥に押し込み、全神経を集中する
グラハムがアレハンドロに勝てる数少ない要素、技量と精神力
この二つに全てを賭け、アレハンドロの心を損耗することに辛くも成功した

グラハム(動きは何度も見た、考え方もペラペラと喋ってくれたおかげで容易に掴むことが出来た)

グラハム(後は読み切って合わせるのみ……ッ!)

虎視眈々と狙っていた、一度限りのカウンター。絶妙なタイミングで訪れた絶好の機会を、グラハムは確かに物にしていた

だが

GNフラッグはもとより、グラハム自身も限界を越えいつ倒れるとも分からない
そして片翼を失ったアルヴァアロンでも、冷静に立ち回れば今のグラハムをなぶり殺すだけの力は十分残されている
チャンスは、一度限り

グラハム「アレハンドロ・コーナーッ!」

アレハンドロ『ひッ……!』

実際問題、アレハンドロの力とアルヴァアロンならばまだ対処の余地があっただろう
だがそれが出来ないのは、アレハンドロが見てしまっていたからに他ならない
グラハムの、フラッグの中に集う【何か】を……

グラハム(今、今決めねば私に勝機は無いッ!)

アレハンドロ『来るな……来るなァァァッ!!』

グラハム「でやあぁぁぁぁッ!!」

一直線に突き出されたGNフラッグのロングソードがアルヴァアロンの頭部を捉える
多層GNフィールドが自己防衛の為に発動するも、発生器たる片翼を失いその強度は半減
遂には一撃の下に打ち砕かれ

アルヴァアロンの首が、宇宙に舞った

アレハンドロ『ばっ……馬鹿な……!』

グラハム「……私の」

アレハンドロ『このアレハンドロ・コーナーがッ!?』

グラハム「勝ちだ!」

特殊システムによる稼働機体は、システムの中枢たる頭部を失えば活動を停止する
グラハムの読み通りアルヴァアロンの動きは止まり、力無くその四肢を投げ出し無重力に浮かんでいる
ところどころから火花を噴き出し、魂が抜けるかのように元の金色に戻り、プレッシャーも掻き消え完全に沈黙した

           ・
                         ・
                         ・

アレハンドロ「……う……」

焼け焦げたコクピット。血の雫と砕けた破片が舞っている
電力の集中した頭部を破壊されたことによる逆流が生み出した惨事に、アレハンドロは力無くシートに寄りかかっている

アレハンドロ「こんな馬鹿なことが……私は、世界を手にする資格を持った……!」

リボンズ『やぁ、アレハンドロ』

アレハンドロ「!?」

爆裂した破片に傷つくアレハンドロに、何者かが声をかけた
それは半壊したモニターに映る青年リボンズ、そして彼の肩の上に顎を乗せ無邪気に笑う少女プルツー
両者共に、端麗なその面持ちに侮蔑を浮かべアレハンドロを見下していた

プルツー『あ~ぁ、酷い有り様だ。全く見てらんない』クスクス

リボンズ『そう言ってやるもんじゃないよプルツー、彼は十分働いてくれた』

アレハンドロ「リ、リボンズ、何を……」

リボンズ『ご苦労様アレハンドロ。貴方は最後までいい道化でしたよ……』

二人からは自身に従っていた時の態度の片鱗さえも見えない
その邪悪な笑顔を見るにつれ、アレハンドロの脳裏に一つの結論が浮かび上がる

アレハンドロ『ま、まさか貴様等……私を裏切ったというのか……!?』

リボンズ『裏切った? とんでもない。最初から貴方は我々の計画の駒に過ぎなかっただから』

リボンズ『ともかくこれで第一段階は終了だ。まぁ……フラッグ如きに潰されるとは思わなかったけどね』

プルツー『まさか自分がニュータイプに覚醒したなんて、本気で思ってたんじゃないだろうね?』

プルツー『あっははははは! 強化人間にされて、【自殺兵器】に載せられた事実も知らないで! やることがいちいちマヌケなんだよアレハンドロ!』

アレハンドロ『……ッ!』

プルツーの嘲笑、リボンズの蔑視。それらによって曾祖父の代から受け継がれたコーナー家の悲願、その二百年の計画が踏みにじられたことをアレハンドロは知った

アレハンドロ『貴様等……コーナー家の計画を……!』

リボンズ『そんな物言いだから、器量が小さいのさ』

アレハンドロ『リボンズウゥーーーッッ!!』

燃え上がる怒り、搭載されたサイコミュがその思念を吸い取り力に変える
再び目覚めたアルヴァアロン。機能を復活させたサブモニターが見たもの、それは紅の光を纏い現れたガンダムエクシアであった

アレハンドロ『あ……』

リボンズ『……』クスッ

プルツー『バイバイ、アレハンドロ』

           ・
                         ・
                         ・

グラハム「ッ!?」

確かに消えていたプレッシャーが復活し、もがくように手足を動かし始めるアルヴァアロン

グラハム「頭部を失えば動けないのではないのか……!?」

一度沈黙した機体だけに、驚きは隠しようもない
ロングソードを構え、追撃せんと身構えるGNフラッグ
だがその直後、レーダーに写る高速の物体がグラハムの視線を釘付けにする

グラハム「……ッ!?」

それは深紅に染まり、此方に猛烈な速度で接近してくるガンダムエクシアの姿
グラハムが初めて確認する、トランザム状態のガンダムであった

刹那「これ以上は……」

GNソードの巨大な刃がアルヴァアロンの腰を捉え、一刀両断、斬り伏せる
半ば暴走状態で制御の効かないアルヴァアロンも、真っ二つにされては最早手の打ちようも無く

刹那「やらせない!」

そのまま紅蓮の炎に飲まれ爆発。アレハンドロは断末魔を上げることなく、光の中に呑み込まれて消えた

刹那「……」

グラハム「……少年……!」



193 :>>1 ◆/yjHQy.odQ [saga]:2011/05/25(水) 03:16:53.25 ID:GV8Tfe4AO
投下終了だフラッグファイター

何だかアレハンドロが凄くあっさり死んでしまった気がする。もっとちゃんと書くべきだったなぁ……
とりあえず明日で一期は終わらせる。長々と済まんな


194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/25(水) 04:17:37.25 ID:ca7wQ3SAO

自爆スイッチはついてなかったか


195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/25(水) 08:09:15.39 ID:PVSH0+XAO
アレハンドロはこのくらいで調度良い
だが、刹那とグラハムの対決は……ないか


196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) :2011/05/25(水) 19:24:50.43 ID:yXJ33cwT0
乙乙乙
この状態のグラハムに戦い挑んだら刹那極悪人だろww


197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県) :2011/05/25(水) 19:32:56.23 ID:CLXaDB1d0
乙と書かせていただこうフラッグファイター

あなたこそ真のフラッグファイターにしてマスターなのだろう


200 :>>1 ◆/yjHQy.odQ [sage]:2011/05/25(水) 20:35:43.09 ID:GV8Tfe4AO
えぇいッ!予定ではやらなかったが、やはり刹那とグラハムは一騎打ちさせたい!
>>185からの昨日の更新は全て無かったことにしていただきたいッ!全て書き直した上で終わらせるぞガンダムッ!
本当に済まない

しばし待てフラッグファイター、我慢弱いのは分かるが耐えるのも男のステータスだ



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