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仮面ライダー ―『約束 2011』― 第2話『変身』

2011年11月17日 19:46

仮面ライダー ―『約束 2011』―(魔法少女まどか☆マギカ×小説版仮面ライダー)

23 :第2話Aパート ◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/05/24(火) 18:49:57.25 ID:oDBr7SCP0



―――『魔法少女』『暁美ほむら』は『時間遡航者』である

―――彼女を『改造』した『インキュベーター』は

―――『宇宙』の寿命延長の為に暗躍する敵性宇宙人である

―――『暁美ほむら』はたった一人の親友たる『鹿目まどか』の為に

―――『運命』と戦うのだ!!





仮面ライダー ―『約束 2011』― 第2話『変身』





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―――授業のまるで集中できない
―――教師の声も、右から左へと…まるで素通りしていく様だ

何度も繰り返した…同じ内容の授業故に、
殆ど聞き流しているのは前の『ループ』と変わらないながらも、
暁美ほむらが今、授業を聞き流しているのはそれとは別の理由であった。

ほむらは、何とももどかしい、焦燥にも似たもやもやした感情に意識を支配され、
その視線は、授業用のパネルでは無く、自分の右斜め前の席に座っている、
赤く長い髪をリボンで一つに纏めた少女の背中へと注がれている。

―――『佐倉杏子』
―――『一匹狼』の、ベテラン魔法少女

何度も見たそのスレンダーで活動的な肢体は今、
自分と同じ見滝原中学の女子用制服に包まれている。

見滝原中学の特徴である、平均よりも高レベルな授業内容についていけていないのか、
その背中には、彼女には珍しい、明らかな焦りの気配が見てとれた。

それもそうであろう。
自分の知っている彼女は…確か小学校までしか行っておらず、
天涯孤独の身の上で、その日の糧を求めて、流れる様に街々を彷徨っていた筈なのだから。

「(どうしても…気になる点はそこ…)」
「(どうして…どうやって佐倉杏子が)」
「(この見滝原中学に『転校』してこれたかと言う事)」

杏子が見滝原に来る事自体は珍しい事では無い。
来ない『パターン』もあったとはいえ、共闘した回数も決して少なくないのだ。
問題なのは、である。

『戸籍』も『家族』も無い筈の彼女が、どうやって『見滝原』に転校してこれたのか―――

「(彼女の家族は…彼女を残して一家心中している)」
「(それは……彼女が見滝原に来たどのパターンでも確かにそうだった筈)」
「(今回のループでは…そもそも彼女の家族が心中していない…そんな可能性…)」
「(ありえるのかしら…そんな事…)」

疑問点は、それだけでは無い。

「(それに…彼女が、クラスメイト相手に語っていた『経歴』…)」
「(あれは――――)」

ほむらの記憶が正しいのならば、彼女の父は教会の神父だった筈だ。
しかし、先の休み時間で、彼女がクラスメイトに色々と質問されていたのを盗み聞きした内容を纏めるなら―――

「(父親は『スマートブレイン』の社員)」
「(見滝原に来たのは…父親の仕事の都合上)」
「(彼女は…そう言っていたわね)」

―――『スマートブレイン』
この会社の名前に…ほむらは聞き覚えがなかった。
しかし、杏子の口から出たその名前に対する、クラスメイト達の反応を見るに、
かなり有名な会社であるらしい。

気になった彼女が、携帯で検索をかけた所、

「(東京に本社を置く…世界的大企業)」
「(この見滝原にも…支社は確かにあった……)」

たまたま自分が知らなかったのか、
それとも、この『ループ』において突然に出現したのか、
それはほむらには解らない。

「(教会と世界的大企業)」
「(つながらないわね…この二つが…)」

そもそも…本当にこの佐倉杏子は、ほむらの知っている佐倉杏子なのか。
考えれば考える程、その部分すら怪しくなって来るが、
ほむらは確かに見たのだ、彼女の指に嵌められた、赤い宝石をあしらった『指輪』を。

「(佐倉杏子は…『魔法少女』)」
「(そこには間違いは無い様ね)」

『魔法少女』であると言うならば…出来るならば自分の側に引き込みたい。
『ワルプルギスの夜』を相手取るならば…どうしても戦力として『魔法少女』は2人以上は欲しいのだ。
しかし…以前の、自分の知っている佐倉杏子であれば、一匹狼の佐倉杏子であれば、
利害交渉で自分の側に引き込めたモノだが……

「(この佐倉杏子は…どうなのかしら…)」

明らかにこれまでの『ループ』の異なる『パターン』を見せつけられれば、
色々と不安を覚えてしまうのはしようのない事であろう。

「(まどかと…美樹さやかには変わりは無いみたいだけど……)」

佐倉杏子の事が気になって、まだまどかに『契約』について釘を刺しておく事すらしていないのであるが、
それでも、さりげなく2人の様子を観察してみた範囲では、今の所、2人に特に変わった様子は無い。

「(いえ…即断は禁物ね)」
「(ひょっとすると…表では見えない範囲で何かが違っているのとか―――)」
「(しかし…そうなってくると気になるのは……)」
「(巴マミね…彼女も…今回は何処か違っているのかしら)」

ほむらにとっては『先輩の魔法少女』であり、実に『複雑な感情』を抱いている相手だ。
ベテランの『魔法少女』であり、その戦闘能力は非常に高く、正義感も強いが、
その精神の根底に『弱さ/爆弾』を抱えており、それ故にどうしても共闘を躊躇わざるを得ない相手であった。

今回のループでは、退院してからの数日は武器の調達やインキュベーターの『端末』を狩るのに集中していた為、
まだマミとは接触を持ってはいないが、この分では、念のために早めに接触を持って置いた方がいいかも知れない。

「(巴マミは3年生……)」
「(休み時間に探してみるかしら……)」

そんな事を考えていた時だった。

「それじゃぁ…転校生くん」
「この問題を解いてみてくれ」

教師に、佐倉杏子が指名されている所であった。

「えと……あの…その」

杏子の明らかに焦っている姿が見てとれる。

「解らんのか?」
「はい……その……すみません……」

「まぁ…転校してきてばかりで、前と勝手が違うんだろうから」
「今回は見逃しておこう。次までに、ちゃんと準備してくるように」
「………はい」

杏子がしゅんとなっているのを見て、ほむらは、
意外とかわいい所もあるもんだと、そう、思うのであった。





「(まさか巴マミに会えないとは思わなかったわ)」

『理科』の授業の為に、移動教室で理科室に移動していたほむらは、
先の休み時間に、三年生の教室を訪れた事を思い出す。

件の巴マミは今日は学校を『病欠』していた。
何でも、悪性の流行性感冒に罹って、ここ数日連続して学校を休んでいるらしい。

「(『魔法少女』が……『風邪』)」
「(おかしいわ…ありえない)」

『魔法少女』は『病気』に罹らない。
何を隠そう、ほむら自身、持病の心臓病が『完治』した人間なのだ。
『魔法少女』は常人よりも遥かに強靭な肉体を持つ。
そうそう病気などにかかる筈も無い。

「(ちゃんと学校に毎朝連絡は入れているらしいけど)」
「(恐らくは仮病ね…でも、学校を休んで何を?)」

やはり今回の『ループ』はどこかしこオカシイ。
巴マミが学校を休むなど、彼女が死んだ時を除けば一切無かった筈なのに……

そして、ほむらにとってのこの日の『異変』は、これだけに留まらなかった。

「(――――誰?)」

チャイムの鳴った後、見覚えの無い教師が、理科教室に入って来たのである。
この日の四時間目が『理科』なのは以前のどの『ループ』とも変わりは無い。
しかし、この授業の担当教員は、『鳴滝』とか言う教師ではなかったか。

「誰あれ?」
「わぁ…イケメン」
「誰このイケメン」
「嫌いじゃないわ!」
「だが無意味だ」
「ボドボドだーーー!!」
「ウゾダドンドコドーーン」

と、その教員に若干ざわつく教室内。
成程、確かに「イケメン」である。

ただし、顔かたち自体はむしろ泥臭い、冒頓な感触である。
しかし、その身に纏った真摯そうで剛健なる気配が、
この人物を人間として『美しく』みせているのである。

まだ『若い』感じである。二〇代の半ば程であろうか。

身長は二メートル近くとかなり高く、体格も大きい。
濃紺のスーツをピシリと決めて、その姿勢は定規でも入っているかのように真っ直ぐだった。

「(俳優の『藤岡弘、』の……若い時の顔に似ているかしら)」
「(若い時の藤岡弘、の顔を少し細くした感じかしらね)」

教卓に立った、その教員が口を開いた。

「理科教員の鳴滝先生だが」
「ぎっくり腰により急遽学校を休む事になった」
「よって…本日より暫くの間…私が先生の代わりに理科を担当します」

その教師は、静かな、しかし良く通る声でこう名乗った。

「『本郷猛』と言う。よろしく頼む」

それが…『本郷猛』と、
『暁美ほむら』、『鹿目まどか』、
そして『美樹さやか』との最初の『出会い』であった。





結局、教員が変わったと言う異変が在りながらも、
それ以外はこれまでのループ通りにこの日の授業は全て終了し、放課後の時間を迎えていた。

「佐倉杏子さん」
「放課後…少し時間があるかしら」
「へ?…って何だアンタか」

六時間目の終了後、ほむらは指定の紺の学生カバンを背に負う様にして持った杏子にそう声を掛けた。

「へぇ…転校生同士で…何か話でもあるわけ?」

そう言いながら2人の方へ近づいて来たのは、青の短髪の下に、快活そうな顔をした『美樹さやか』その人だ。
美樹さやかに出現に、ほむらは思わず『えんがちょ』と言いながら顔を顰めたくなったが、
自慢の鉄面皮の仮面でそれを抑え込んだ。

ほむらは美樹さやかが嫌いだ。大嫌いだ言っても良い。
『悪い人間』では無く、基本的に正義感もあって明朗快活な性格なのだが、
他人への『好悪』の差が非常に激しく、その上に、ほむらとは非常に性格の相性が悪い。
その上、『魔女』と化した彼女に、これまでの『ループ』の中で何度も散々な目にあわされて来たこともあり、
ほむらのさやかへの感情・印象はどん底のストップ安だと言っても良かった。

「ざんねーーーん。でもこっちのアンコちゃんには既に私達の先役が入ってるのでしたーーー」
「だからアンコじゃねぇ!!キョウコだ!!何度も言わせんな!!」
「へへぇ~~……いいじゃんかぁ、アンコの方がカワイイじゃん」
「うっせぇ黙ってろよテメェ!!」

転校して来て初日だと言うのに、早速仲良くなったのか、さやかが杏子にじゃれついている。
初対面の印象の悪さと、価値観の相違からさやかと杏子は当初は敵対関係になりがちであるが、
この2人、その実、実に相性が良く、以前のループの中では共闘関係を結んだり、友人同士になったりもしていた。

今回は『転校生』と言う立場で見滝原に杏子が来たせいか、生来の相性の良さもあり、早速接近していた様だ。

「ええっと……ほむらちゃん…もどうかな?これから…私達、一緒に遊びに行く所なんだけど」
「ほむらちゃんも…一緒に来ない?」
「それは良いですわね……暁美さんも…佐倉さんとご一緒してはいかが?」

加えて、以上の様な事を言いながら、まどかもテトテトと歩いて寄って来た。
その後ろには、若草色のウェーブのかかった髪をした、さやか、まどかの共通の友人、『志筑仁美』がいる。
『上条恭介』がらみで、さやかの問題をさらにややこしくする人物であり、故に、ほむらの印象はあまり良くない。
悪い人間ではないし、上品で礼儀正しい人物なのであるし、『魔法少女』では無い彼女は、
ほむら達の抱える事情など知る由も無いのであり、つまり彼女が何か悪い事をした訳ではないのだが、
ほむらのこれまでの苦労を思えば、多少の悪感情は仕方が無いだろう。

ちなみに、まどかがほむらの事を『ほむらちゃん』と呼んでいるのは、
殆ど恒例行事となったまどかへの『釘刺し』を既に行ったからだ。

その上で、こうしてほむらの事をわざわざ誘ってくれるのだから、まどかの人の良さは推して知るべし。
素は臆病な病弱娘、仮面はつっけんどんな鉄面皮の自分とは、えらいちがいだとつくづく思ってしまう。

「…………」

思わず…『ぜひともご一緒させてください!!まどかさんは最高です!!』と言いたくなる所を、
ほむらはその言葉が出るのをぐっと抑えた。鹿目まどかは、ほむらにとって唯一の大切な友達であり、
同時に、永遠の憧れの対象でもある。そんな彼女にお誘いを受けたのだ。本当は直ぐにでも諾と言いたいのだが、

「(どうするべきかしら……)」

ここは冷静に、この誘いを受けた場合と、そうでない場合の『損得』を冷静に計算する。
自分の全ての行動の目的は唯一つ、『まどかを契約させずに、ワルプルギスの夜を乗り越え、まどかを生存させる』事にこそ、ある。

その為にも、『インキュベーター』の端末を虱潰しに殺害したり、武器を調達したり、などと、
様々な下準備に奔走していた訳だが……

「(『インキュベーター』の契約からまどかを守るなら…)」
「(むしろここで…まどかと親しくしておいた方が得策かしら)」
「(彼女と親しくなって…つきっきりで彼女を守ればいい)」
「(それならば…ついでに美樹さやかの方も監視できる)」
「(加えて……)」

ほむらはチラリと、杏子の方を盗み見た。

「(私の知っている範囲では…美樹さやかの契約に否定的な佐倉杏子がこの場にいる)」
「(彼女と親しくなる事…今回の彼女と、これまでの彼女の何処が違うのか…)」
「(それを確かめる為にも…)」

「そう…それなら…」
「私もご一緒させてもらって…いいかしら」

「えへへ…良かった」
「暁美さんとご一緒できるなんて……光栄ですわぁ」
「うーーーん…まどかがそう言うなら…じゃ、一緒に行こうか」
「転校生同士…仲良くしとこうじゃん(コイツのノート借りとけば勉強の手間減らせるかな?)」

かくして…五人は揃って出かける事となったのであった。

「おっと…あのさぁ…出かける前に、少し待ってくれねぇかな?」
「あれぇ?アンコちゃんどうしたのさ?」
「だからアンコじゃねぇ!!ちょいと野暮用。校門で待っててくれ」

そう言うと、杏子は少しだけ一行と離れた。
ある人物に、『経過』を報告する為に。





「よう…旦那」
「杏子か」

教室から少し離れた場所にあるエントランスの一角に、壁を背にした男が一人。
言うまでも無く、『本郷猛』であった。

「上手い具合に…『鹿目まどか』と接触出来た」
「これから…一緒に遊びに行く所だ」
「そうか……一人で大丈夫か?」
「こう見えても…修羅場はくぐってんのさ…アタシは」
「旦那達に貰った『アレ』もあるしな?」

「『魔女』の方はマミの担当だっけ?」
「ああ…本人が出るってきかなくてな」
「ああ見えて…マミは結構負けず嫌いだかんな」
「やられっぱなしじゃ気が済まないんだろうなぁ」

「まあ…兎に角、当初の予定通り…出来る限り鹿目まどかと付きっきりで動いてみるよ」
「―――って…旦那?どうしたんだ?珍しくニヤけた顔して」

本郷は『報告』をする杏子の顔を見て、少し嬉しそうに顔を微笑ませていた。

「嬉しそうだな、杏子」
「え?ああ…いやさ…その…」

どうやら、本郷の笑みの意味は、『報告』の内容よりも、
杏子が無意識のうちに嬉しそうな気配を醸し出していたかららしい。
杏子は、少しはにかみながら、その理由を言った。

「友達と…遊びに行くとか…その久しぶりだし」
「そうか」

本郷は、杏子の頭に軽く手を乗せ、ポンポンと叩くと、

「なら…楽しんでくればいい」
「ただし…『目的』は忘れない様に…だ」
「わ…わかってるよ」
「それじゃ…な。また後で…」
「ああ」

まどか達に追いつくべく、走り出した杏子であったが、
少し行った所で、思い出した様に振り返ると、

「ああ後」
「暁美ほむらについて…もう一度調べる様に」
「滝のジイサンに言っといた方がいいと思うんだけど」

「どうしてだ」
「暁美ほむらは、君と同じ日の転校生だと言うから、念入りに調べた筈だ」
「経歴にも特に怪しい点は無かった」

そう返す本郷に、杏子の理由を曰くに、

「いや…ちょっと気になる所がな…色々」
「まぁ…今回の御誘いにもは、ヤッコサンも呼ばれるから」
「こっちでもついでに色々探りいれてみるけど」
「念には念を入れといた方がいいだろ?」
「何せ―――」

「『連中』の手はえらく長く広いみたいだしな」
「ま…もう負けてやる気はしねぇけど」

杏子は、そう、八重歯の先を光らせて野性的に微笑んだ。





コーヒーショップで軽食を肴に談笑し、
取りとめのない四方山話や、杏子、ほむらの、
各々の『表向き』の自己紹介をしたりで時間を過ごした後、
一足先に『習い事』―――「赤心少林拳」なる中国拳法―――で志筑仁美が抜けた後、
さやかの希望で、一行はCDショップに居た。

「ねぇ…ほむらちゃん…この曲どうかな?」

と、視聴用のヘッドホンを、まどかが此方に手渡して来るのを、
ほむらは静かに受け取って、自分の頭に嵌め、曲を聞く。

―――きみはーーーみたかーーーあいがーーー
―――まっかにもえるのをーーーー

「(何と言うか…これは酷いわね)」
「(こんな音痴な歌の何処がいいのかしら…まどかの趣味は時々解らない時があるわ)」
「えへへ…どうかな?」
「悪くないと思うわ」

と、思った事とは正反対の事をシレっと言いながらも、
ほむらは珍しくまどか達と早くも打ち解けていた。

さやかが此方にあまり悪い印象を抱いておらず、
杏子が上手く場の中心点になってくれたおかげかもしれない。

「(おおよその性格は…私の知っている佐倉杏子とは表面上の違いは無かった…)」
「(『魔法少女』なのは…指輪を見れば解るけど…)」

あちらが、こちらが魔法少女だと気付いている様には見えないが、
時々、こちらを明らかに『観察』する様に見ている時がある。
何かしら、気になっている点はあるらしい。


―――そんな事を考えている時だった


『―――――助けて……』

「!?」
「(ッ!?)」
「(ありゃ?この声は―――)」
「んあ?どうしたのアンコ?」
「だからアンコじゃねぇ!!」

―――『悪魔』の囁きが、一行の脳へと直接語りかける
―――それは…暁美ほむらにとっては、闘いのゴングに等しかった





「何よ……何よこれ!?」
「どうなってるの……ここ…どこなの?」
「(チッ―――マズッたな…こんな所で…)」

「―――――」

一行で…一番焦っているのは、ほむらであった。
ほむらが制止するのを聞かず『声の主=インキュベーター』を探しに行かんとするまどかを、
自分が一緒にいれば契約の妨害が出来る、と、さやか、杏子とも一緒に、
ほむらは例の『立ち入り禁止』の場所へと向かったのだが。

そこは突如―――『魔女の結界』へと変わったのだ。

「(こんな時に―――『魔女』だなんて…まさか!?)」

ひょっとすると『インキュベーター』は、ここを『魔女の結界』と承知でまどか達を誘導したのだろうか。
『使い魔』達に襲われると言う『ピンチ』を演出し、土壇場で出て来て、半ば成り行き任せの『契約』を迫る……
如何にもあの『外道』のやりそうな手口ではないかッ!!

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

そんな事考えている内に、綿毛にカイゼル髯を生やした様な『使い魔』達が、
鋏を開閉する様な耳障りな金属をBGMに、名状しがたい、外国語の様な、そうでない様な鳴き声を合唱しながら、
こちらへと迫り、群れなして包囲を為して来る。

「(どうする―――ここで『変身』する?)」

チラリと杏子の方を見れば、彼女も変身するかどうかで逡巡している様に思われる。
まどかやさやかの前で変身すべきかどうか、その事で悩んでいるのだろう。

「(でも―――もう時間が無いッ!!)」

仕方がない。
正直な話。まどかの前の変身だけは絶対に避けたかったが、まどかを守る為にも、そんな悠長な事は言ってられないッ!!
――――そう思った時であった。

―――ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ……

「え?」
「この音……バイクのエンジン音?」
「(確かに…バイクのエンジン音)」

まどかも、さやかも、ほむらも、そして『使い魔』達すらも、
一斉に、その『音』のする方向を向いたのだ。

その音は、確かに『バイクのエンジン音』。
この、精神病者の妄想をそのまま具現化した様な、
前衛的かつ狂気的かつドグラマグラ的空間には似あわない、
人間的生活臭のする文明の利器の音であった。

「(この音は―――間違いねぇ!!)」

その音を聞いて、ニヤリと笑ったのは佐倉杏子である。
彼女は、このエンジン音に、聞き覚えがあったからだ。

バイクのエンジン音は徐々に大きくなり…そして―――


『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!?』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!?』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!?』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!?』

『―――■■■■■■■■■■■■■■■■!?』


ヒゲの『使い魔』達を蹴散らし、轢殺しながら、
一台の大型サイドカーが、場へと乱入し、
まどか達の前でキキィーーっと急停車した。

黒と紫と黄色で塗装された、特徴的な鋭角的シェルエットの大型サイドカーである。
副座部分には、デカデカと『スマートブレイン』のロゴが入っている。

そのサイドカーの搭乗者に、まどか達は見覚えがあった。

「「本郷先生!?」」

まどかとさやかの声が唱和する。
それに続いて、ほむらが思わず声に出していた呼び声が響く。

「巴マミ!?」

サイドカーに乗っていたのは、
搭乗席にはスーツ姿に手袋、白のヘルメットの本郷猛であり、
副座に乗っているのは、本日学校を欠席している筈の『巴マミ』であった。

見滝原の制服ではなく、黒を基調とした動きやすそうな私服姿であった。
何故か、アビエイターのサングラスを掛けている。激しく似合っていない。

「あら?…アナタ?何処かで会ったかしら」
「まあいいわ…聞くのは後にしましょう」

と、サングラスを外しながら、巴マミはヒラリと優雅に副座から飛び降りる。

「まったく……迂闊よ佐倉さん」
「悪ぃなマミ……ドジっちまった」

「え?アンコ…このお姉さんと知り合い?」
「アンコじゃねぇ!!いや…ちょいと、な」

「何で…本郷先生が?」

混乱し、混沌とした場において、静かに『使い魔』達の動きを見ていた本郷が、静かに

「マミ…」

と、その名を呼べば。

「大丈夫よ猛さん」
「『魔女』退治は私の専門よ…さっきも言ってたけど…ここは私一人に任せて」
「猛さんは、そこの後輩さん達を、佐倉さんと一緒にお願い」

「解った。だが無理はするな」

マミが上に着ていた黒のジャケットを翻させる。
その下には――――

「怖かったでしょう…でも大丈夫」
「私と猛さんが来たからには……ね」

そう、まどか達に語りかけるマミの腰には、
銀に輝く、大きく機械的なベルトが巻かれている。

さらにマミは、懐から一つの『携帯電話』を取り出した。
サイドカーと同じく、黒を基調とし、そこに紫と黄色を加えた特徴的なデザインだ。

―――ガチャリ

と、そのターン式の構造を展開させると、出て来たダイヤルに、
素早く『コード』を打ちこんだ。

―――『9』
―――『1』
―――『3』

―――『 standing by 』

野太い男性音声の電子音が響くの合わせて、
マミはその携帯電話を高々と天へと掲げると

「――――『変身』」

そう唱えつつ、携帯電話をベルトのバックル部に装着する。
と、同時に

―――『 COMPLETE 』

と、再び電子音声が響けば
巴マミの指に指輪形態で嵌められていた『ソウルジェム』が一瞬、
例の卵型の宝石として展開されたかと思えば、瞬時に、無数の光の粒子へと分解、
バックル部の携帯電話へと吸い込まれ、今度はその携帯から、光の粒子で構成された黄色の光線が、
瞬く間にマミの体の上に幾何学文様を描いた。

―――そして

「えぇ~~!?」
「へ……変身ヒーロー!?」
「(何……何なの!?こんなの―――)」

一同の驚きの中で、一人の甲冑騎士が姿を現した。
黄色と黒と、そして紫で彩られた仮面の騎士。
その仮面には…『X(カイ)』の字があしらわれている。

「―――フゥン」

と、仮面の下のマミが得意げに微笑めば、
腰のホルスターにおさめられた、十字状の『銃』を抜き放ち、

「―――それじゃ…さっさと一仕事…済ませないとね」

その銃口を、迫る『使い魔』達へと向けた。





―――『魔法少女』…巴マミが
―――『仮面ライダー』こと本郷猛と行動を共にしている
―――その理由…その経緯

―――事の始まりは『2週間』ほど前にさかのぼる


その日……巴マミはその手にソウルジェムを輝かせながら、
一人夜間パトロールに出ていた。

家には家族は居ない。
父も、母も、彼女を一人残して先に逝ってしまった。
いや、彼女が一人、生き残ってしまったと言った方が正確だろうか。

あの時…キュゥべえに『助けて…』と祈った事を、彼女は後悔してはいない。
生きていなければ…自分は『寂しさ』すら感じる事が出来なかったのだから。

だが…時々…
部屋に一人でいると…孤独に耐えられなく時がある。
いたたまれなくなる時がある。胸をかきむしりたくなる時がある。

そんな時は…彼女は独り夜を駆けるのだ。
『魔女』を、『使い魔』を探しだし…戦う為に。

自分は…『魔法少女の使命』に生きている。
そう考える事で、戦いに、使命に没頭する事で、孤独を忘れる為に。

彼女は、自身の魂の光たる金色を纏いながら、夜の道を独り往くのだ。


一時間ほど歩きまわって…そろそろ帰ろうか…そう思った時であった。

「…………」
「(…尾行(つけ)られている?)」

『魔法少女』は、常人よりも遥かに鋭利な感覚を持つ。
その感覚が、彼女を背後より追跡する、何者かの気配を察知したのである。

「(やだ……痴漢かしら…?)」

『魔女』や『使い魔』を認識できない一般人の目に写る自分とは、
中学生の分際でこんな夜更けに、不用心にも独りでほっつき歩いている不良娘、であろう。

別段、自分の容姿を特別誇る訳ではないが、それでも、それなりの自信はある。
妙なのが寄って来た所で、不自然では無い。

「(ちょっと……こらしめてあげましょうか)」

そう思った彼女は、悪戯っぽく笑う。
自分は『魔法少女』。痴漢如き何するモノぞ。
仮に、強盗追剥の類であろうとも、赤子の手を捻る様に返り討ちにしてくれる。
自惚れでは無い。『魔法少女』の戦闘能力ならば、常人の追剥強盗など、例え銃器で武装していても物の数では無い。
ましてやマミは…有数のベテランであった。

そう思えば、マミは、自分から人気のない廃工場へと足を踏み入れていた。

「もういいでしょ?出てきたらどうかしら?」

かつては資材置き場だったと思われる、適当な空き地に到達した時、
彼女はその場でクルリと優雅にターンを決めながら、闇へと向けてそう呼びかけた。

闇の中から、まるで溶け出る様に、幾人もの人影が姿を現した。
その数は、全部で『12人』。揃いの灰色のスーツを着た10人に、それとは別の恰好をしたのが2人。
全員、男であった。

別の恰好をした2人は、それぞれこれまた異なった恰好をしていた。

一人は黒のズボン、ジャケット、帽子の三つ揃えの男で、帽子の下のその顔は、何処となく田口トモロヲ似の顔立ちである。
目に下に酷い隈がある上に、顔色が妙に青白くて、薬物中毒者を思わせる、危ない印象を相手に与える男であった。
もう一人は、ベージュのズボン、靴、ロングのトレンチーコートに、同色のソフト帽、さらに手袋までしている。
コートの襟を立てた上に、そのソフト帽を目深にかぶり、首には厚手のネッカチーフまで巻いているので、その顔はまるで覗う事が出来なかった。

―――痴漢?
―――強盗?

何となく…違う気がする。
どちらかと言えば、ヤの字のつく自由業の方々か、借金取りだと言われた方が自然な連中であった。
それにしても―――

「(何者かしら―――)」
「(いやね……酷く不気味だわ)」

恰好の違う2人は別として、揃いの恰好の10人は、まるで人形の様に生気が無い。
顔色も青白く、無表情で、ゾンビだとか、実は蝋人形だとか言われても、思わず納得してしまいそうな程に、
その10人は人の形をしてながら、酷く非人間的であった。

その不気味さは、『魔女』と言う、超常の化け物を日々相手にしているマミでありながら、思わず背筋が寒くなってしまう程で、
思わず彼女が、調子に乗ってこんな人気のない所に来た事を、後悔してしまう程であったが、今更、もう遅かろう。

「ずっと…私を尾行てたわよね」
「何か御用かしら?生憎…私には貴方達みたいな人に追いかけられる理由なんて見当たらないんだけど?」

そう、マミが追跡者達に話しかければ、田口トモロヲ似の男が一歩前に出て。

「夜分遅くに申し訳ない…」
「私達は…さる『組織』から派遣されて来た者です」

と、静かに話始めた。
顔だけでなく、声も田口トモロヲに似ている。
その静かな調子に、『プロジェクトX』のナレーションをマミは思い出した。

「『魔法少女』…巴マミさん」
「我々は…正確には我が『組織』には貴方に用があります」
「これより…我々と一緒に行動を共にして頂きます…」

『魔法少女』!?
この連中は、確かに自分をそう呼んだが、一体どこでそんな事を聞きだして来たのか…
ひょっとすると、何処かの国の特殊工作員か何かなのだろうか?それで…自分を軍事利用か何かしようとして、
自分をかどわかしにでも来たのだろうか?

そんな中学生らしい発想が、彼女の脳を支配する。
通常であれば…妄想を一笑にふすべき思考。
しかしこの場合、マミの発想は決して間違っていなかった。

「嫌だといったら?」

マミはそう問うた。
男は答えた。

「残念ながら……死んでもらいます」
「!?」

あんまりな返答に…マミは顔を顰めると、

「あら…穏やかじゃないわね…」
「私を殺すつもりなの?」

「ハイ」

あくまで静かな調子の、事務的な返答であった。
それに少しムッとした彼女は、この不遜な連中に、自分の力を少し見せてやる事にした。
どこの手のモノだか知らないが…『魔法少女』を舐めるにも程がある。
この時は…そう『うぬぼれていた』。

「じゃぁ……そうしてみなさいな。出来るモノならね」

その言葉と同時に、マミの体は金の光に包まれて―――『変身』していた。
『人間』から『魔法少女』へと。

「―――残念です」

マミが『変身』したのを確認した男がそう言えば、
それを号令として、10人の灰色スーツ軍団が、
一斉に、それこそ軍隊の様に足並みのそろった動きで、ズッと一歩足を踏み出して来る。

それに対するマミは、直ぐにでもマスケット銃を召喚できる様、用意をしながらも、
相手が何を仕掛けて来るのか、その一挙一動を見逃すまいと、注意深く見に回っていた。
この時、彼女は、この灰色スーツ軍団は一斉に懐に手を入れて拳銃でも抜いてくるかと予想していた。

―――そして…その予想は大きく外れた

「―――――え?」

その光景を見た瞬間、思わずマミはポカンと口を開けたまま、茫然としてしまった。
『魔女』と言う、超常の魔物を相手とする『魔法少女』の彼女をしてすら、この光景は余りに常軌を逸していたからだ。

揃いの灰色のスーツの、10人の男達の顔が、一斉に…『縦に割れた』のだ。
比喩でも何でもない。言葉の通りに、縦に一本、鼻筋にそって顔に線が入ったかと思えば、
まるで紙でも破るかのように、顔が二つに、左右に、割れたのである。

そして、その下、割れた人間の顔の下から飛び出してきたのは――――

『――――ウジュルウジュル』
『――――ギギギギギギギギ』
『――――ギチギチギチギチ』
『――――ガガガガガガガガ』
『――――キリキリキリキリ』
『――――ガチガチガチガチ』
『――――ジグジグジグジグ』
『――――ゾリゾリゾリゾリ』
『――――ググググググググ』
『――――ビチビチビチビチ』

名状しがたい…明らかに人間の口から洩れる筈の無い…『異音』。
事実、そこにあった十の顔は、いずれも、人間の顔では無い。

―――血よりも紅い…三つの『複眼』
―――巨大な、縦に二つに割れた『口吻』
―――その下から覗く、巨大な二本の『牙』
―――ガチガチと音を鳴らす…鋭い犬歯が生えそろった『顎門』
―――顔の全体を隈なく覆い尽くす、針の様に先の尖った…黒くて太い『体毛』

そう…それは『蜘蛛』を思わせる…怪物の顔であった。

続けて、十人一斉に、灰色のジャケットが弾け飛ぶ。
何故?それは、『手』が、いや『脚』が生えたからだった。

その先端が槍の穂先の様に尖った、顔と同じ黒く尖った剛毛に包まれた、
上下二対の、つまりは合計四本の『脚』が。元々人間に備わった四本の手足と合わせれば、その数が合計八本になる。

―――丁度…『蜘蛛』と同じ様に。

「それでは…相手をして頂きましょう…『魔法少女/半端者/半覚醒者/ギルス』」
「我らが…新世代の『改造人間』シリーズの一種」

「『新式蜘蛛男(クモロイド)』の御相手を」

その言葉を再び号令として、未だ唖然としたマミに対し、
十人…いや十体の『蜘蛛男』は、その口より一斉に十条の『糸』を吐きかけた。





「――――ハアッ!?」

茫然としながらも、自分へと向けて一斉に発射された十条の『糸』をマミが避け得たのは、
彼女が歴戦の『魔法少女』であり、その体が半ば反射的に動いたからであった。

とっさに右手の内より黄色のリボンを顕現させ、それを宙へと伸ばし、空を走らせる。
リボンの先は、手近な廃工場の屋根の出っ張りへと絡み付き、それを基点に、
彼女はリボンを操作して、素早く宙へと浮かびあがった。

つい、本の一瞬前まで、彼女がいた空間へと、十条の『糸』が殺到し、
相互に絡み合い、結びつきあい、巨大な『糸』のオブジェを造る。

もし、ほんの一瞬でも逃げるのが遅れていたならば、
今頃はあの『糸』に雁字搦めにされて逃げる事すら叶わなかっただろう。

―――しかし、最初の攻撃をかわしたからと言って、それはこの戦いの終わりを意味しない

十体の『新式蜘蛛男』達の内、マミから遠い方の五体は、
その口吻を一斉に廃工場の屋根の上のマミへと向けて、
コンマ一秒のズレも無く、一斉に『糸』を再び発射する。

「――――ッッ!?」

それに対してマミは再び自分の正面にリボンを展開、
渦を巻くように回転させ、即席の盾と為し、迫りくる五条の『糸』を防御する。

だが、それは最初から『囮(ブラフ)』であった。

マミが糸を防御している隙に―――

『『『『『ギシャァァァァァァァァァーーーーー!!』』』』』

名状しがたい叫び声を上げながら、前衛五体の『蜘蛛男』達は一斉に跳躍、
ひとっ飛びに、マミの立つ廃工場の屋根の上へと降り立ち、

「ッ」

マミへと肉迫するッ!!
あるモノは『糸』を吐き、あるモノは、その六本の『腕/脚』を翳し、マミへと襲い掛るのだッ!!

迫りくる『怪人』達の、生理的嫌悪感を呼び起こすそのキメラ的容姿、
昆虫的な(蜘蛛は昆虫ではないが)非人間的肉体の挙動、口から洩れる昆虫的芳香と、
ガチガチと鳴る金属牙の擦れ合う音、酸っぱい臭いの息……
その全てが、マミの精神に根源的な恐怖感を呼び起こし、
ゴキブリと台所で遭遇した女子中学生の様に、顔を嫌悪に歪ませ、口からはヒィっと、
常人的な悲鳴を漏らした。しかし、それでも彼女は『魔法少女』であった。

「――――舐めないでッ!!」

その両手には、文字通り『魔法の様に』…白亜のライフルドマスケットが姿を現した。
その銃口は、各々、二体の『蜘蛛男』の頭部へと向けられ、

―――ズドドォォンッ!!


重なる二つの銃声が鳴り響いた。





マミは、手にした十字状の『銃』……『カイザブレイガン』の銃口を、
迫りくるヒゲの『使い魔』…『ANTHONY』へと向けて、引き金を引く。

銃口より、マミの『魔力色』である黄色の『魔力弾』が、高速で連続発射され、
『ANTHONY』達へと次々と突き刺さり、その肉体を微塵に爆ぜさせ、消滅させて行く。

しかし、数が非常に多い。張られる弾幕を諸共せず、尚も此方へと全身を続ける『ANTHONY』の群れを、
より効率よく殲滅すべく、マミは空いている左手を、ベルトのバックル部に装着された携帯電話型複合機能デバイス、
『カイザフォン』へと伸ばし、カシャリと動かして文字盤を展開させ、素早く

―――『1』
―――『0』
―――『6』

と、打ちこめば、

―――『 Burst Mode 』

と電子音声が鳴り、バックルから引き抜かれた『カイザフォン』は『拳銃』形態、
『フォンブラスター』へと変形、右手の『カイザブレイガン』と合わせて二丁拳銃となり、

―――シュパパパパパパパパパッ!!
魔力光弾の弾幕はマミの両手の動きと連動して扇状に広がり、
何とかマミを害さんと接近して来る『ANTHONY』達を瞬く間に殲滅していく。

「(凄いわ……体が凄く軽い……こんなに魔力の弾丸を連射してるのに……)」

まどか、さやか、そしてほむらの驚きの視線をその背中で感じながら、
マミは『魔力』で構成された仮面の下で、余裕の笑みを浮かべる。

―――『S.R.G.(システム・ライダーズ・ギア)』

『緑川財閥』から枝分かれした…『美崎百合子』をその首班とし、
『少女結社サクラ』をその起源とする、表向きは世界的大企業、
しかしその実体は『超能力者=新人類』の自立自衛の為の秘密結社『スマートブレイン』が、
元々は『ショッカー』に対抗する為に、『S.M.R.』を参考に製造し、
紆余曲折あって『魔法少女』用へと改造された、『魔法少女』の特殊支援ツールである。

『ソウルジェム』と言う形で外化顕現化された『魔法少女』の『魔力』を、
『ドライバー』に内蔵されたプログラムを通して最も効率の良い形で伝導・運用する為のツールであり、
これを用いて『変身』し、戦闘を行えば、通常の『魔法少女』よりも圧倒的に少ない負担で『魔力』を行使できるのだ。

単純な戦闘能力では…実は『魔法少女態』に劣る半面、
戦闘効率と言う意味においては『ライダーズギア』の方が遥かに上であり、
さらに、『魔法少女態』では剥き出しの『ソウルジェム』部分が、
『魔力光子(フォトンブラッド)』で形成された『装甲』に隠れる為、
防御力と安全性と言う意味でも『魔法少女態』よりも上であった。

「(私の場合は…手数が少なくなっちゃうのが欠点だけど……)」
「(それでも……全然……)」

『ANTHONY』が殲滅されていくのに、『結界』の奥の『魔女』が焦りでも覚えたのか、
『ANTHONY』に続いて、三つの目を備えた『蝶』と『蜂』の合いの子の様な『使い魔』、
『ADELBERT』が援軍として、『空(?)』から大量に降下して来る。

「(負ける気がしないっ!!)」

それでもマミは怯まない。

「猛さんっ!!」
「お願いしますねっ!!」

「解った」

と、背後で『スマートブレイン』製の『仮面ライダー/魔法少女』用『支援マシン』、
『サイドバッシャー』に跨った本郷へと呼び掛けつつ、
自身は左手の『フォンブラスター』を『カイザフォン』へと再変形、
『ドライバー』へと戻しつつ、『カイザフォン』に取り付けられた『ミッションメモリー』を取り外し、
流れる様な動作で、『カイザブレイガン』に装着。そうすれば、

―――フォンフォンシュィィィィィィィィン
と音が鳴り、黄色に光り輝く『ブレード』が『カイザブレイガン』のグリップ下部に形成される。

「ハアッ―――!!」

マミは、その光刃を閃かせ、残った『ANTHONY』へと突撃する。
その背後で、本郷が『サイドバッシャー』を操作すれば、

―――『 Battle Mode 』

の電子音声と共に、『サイドバッシャー』が変形、
まるで恐竜の様なシェルエットの、二足歩行型特殊戦闘メカへと変形し、
右手に内蔵された4連装バルカン砲が火を噴き、上空から迫る『GERTRUD』へと対空射撃を展開した。


眼前で繰り広げられる、余りにも非常識な、
まるで特撮かアニメの世界の様な戦闘風景に、
まどかは目が点になり、さやかは瞳を少年の様にキラキラ輝かせ、
ほむらは余りにも想定をブッ飛ばす展開に思考停止し、
杏子はポケットから出したハイチュウをモグモグ噛んでいた。





「―――はぁ…はぁ…はぁ…」

マミは息を切らしながら、その額に浮かんだ汗を、左手の甲で拭った。
必死に呼吸を整えようとするが、上がり切った動悸はまるで収まらず、
上下する肩は、今なお恐怖にも怯えている。

金と黒と白で彩られた、彼女の優雅で美しい『魔法少女』としての戦装束には、
所々『糸』が絡み付き、緑色の体液がべっとりと付着し、しみ込んでいる。

そんな彼女の周りには、廃工場の屋根の上には、
バラバラになったり、頭部を破壊された、『新式蜘蛛男』の残骸が、ゴロゴロと転がっている。

千切れた脚が、飛び出した内蔵が、『改造人間』であることを示す『金属骨格』の破片や、
『強化細胞筋』の断片が、まるで屠殺場の如き様相を呈していた。

―――凄まじい激戦であった

飛び交う『糸』の群れ、迫りくる尖り、剛毛に包まれた『脚』や『腕』、
耳障りな『歯軋り音』、鼻を劈かんばかりの『刺激臭』……

その全てが…全ての人間が備える『野性』への根源的恐怖を刺激する。

『蜘蛛男』の一体に組みつかれた時の、耳を引き裂かんばかりの『ギチギチ』とした耳障りな歯音や、
鼻が潰れてしまう程の酸っぱい刺激臭を伴った吐息を思い出すだけで、体から力が抜けてしまいそうになる。

しかし……彼女は生き残ったのだ。
それも…殆ど『五体満足』で。
掠り傷なども負ったが、それは、『回復魔法』により、殆ど既に『完治』している。

『油断』さえしなければ…彼女は有数の強さを誇るベテラン中のベテランの『魔法少女』なのだ。
その戦闘能力は…『ショッカー』の『改造人間』にも決して引けを取らない。

―――だがである

―――モゾリ…
「――――!?」

何かの動く音。マミがバッと効果音が鳴りそうな程の素早い身のこなしで、音の方へと視線を向ければ、そこには―――

『――――シェァァァァァァァ……』

と、苦しそうな呻り声を上げる『蜘蛛男』が、今まさに立ち上がらんとしている所であった。
生き残りがいたのだッ!!

「う」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

マミは絶叫すると、右手に握りしめていたマスケット銃に逆向きに握って天へと翳し、
まだ立ち上がっている途中の『蜘蛛男』へと肉迫すると、

―――ぶぅぅん
と、唸りを一つ上げながら、その銃床部分を、

―――ごわしゃぁぁぁ
『ギガ!?』

『蜘蛛男』の頭めがけて思い切り振りおろしたのだ。
苦しそうな悲鳴を上げて、再び倒れ込む『蜘蛛男』へとマミは続けて

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
―――ごしゃごばごりぼりがりげりぼぐぼかどか……

と、何度も何度も、『蜘蛛男』目掛けて銃床を振り下ろす。
普段の、優雅な戦闘スタイルを誇るマミのモノとは思われぬ、凄まじい『滅多打ち』である。

『ショッカー』の『改造人間』の備える『おぞましさ』は、『魔女』のソレとは大きくその性質が異なるのだ。
それによる『生理的嫌悪感』と『生理的恐怖感』が、彼女にこの様な行動を取らせたのだ。

彼女は、もうとっくに『蜘蛛男』が死んでいるのにも気づかずに、
その顔に緑色の体液が付着するのも構わずに、『蜘蛛男』の体を殴り続けた。





―――パチパチパチパチ
「いやぁ…驚いた」
「まさか『蜘蛛男(クモロイド)』を十体全部斃してしまうとは」
「やはり腐っても…半端な『未覚醒者(ギルス)』であっても『新人類(オルフェノク)』だと言う事なのかな?」

ようやく『蜘蛛男』が死んでいるのに気付き、からりとその手からマスケット銃が力なく落とすマミの耳に、
背後より拍手の音と、そんな静かな賞賛の声が飛び込んで来る。

慌てて背後を振り返れば…十体の『蜘蛛男』部隊と行動を共にしていた、
黒尽くめの田口トモロヲ似の男が、何時の間にか、廃工場の屋根の上、
『蜘蛛男』達の中に月を背に立ち、拍手をこちらに送っているのが見えた。

その隣には、トレンチコートの男の姿も見える。

何時の間にか、わざわざ上まで登って来ていたらしい。

「―――はぁ…はぁ…はぁ…」

「ふぅむ…しかしいくら『兵隊』とは言え…」
「仮にも『改造人間』を相手にここまでねぇ」
「前に仕留めた連中とは一味違うのかな?」

「!?………『前に』?」

「ああ……そうだよ」

男の物言いに、ぎょっとして聞き返したマミの言葉に、
黒尽くめの男は、今晩の夕ご飯について話す様な気安さで、
マミへと驚くべき事実を語った。

「私達のチームだけに限って言えば…これまでで5人かな?」
「これまでの『魔法少女』達はみな…『兵隊クラス』だけで料理出来たんだが……」
「君に関して言えば……私達が直接相手をしなきゃいけないかな?」

「――――ッッ!?」
「(まさか)」

マミは…前に『キュゥべぇ』から聞かされた、ある『噂話』を思い出していた。

―――『魔法少女狩り』が行われている
あの時は冗談だと一笑に付したが…やはりあれは本当だったのだ。
だが…その『下手人』たるこいつらは一体……

「貴方達……一体何者?」
「残念だけど…これから死ぬ人間に名乗る必要は無いな」

「私を殺すつもりかしら……でも貴方の兵隊は―――」
「言っておくが」

マミの言葉を、黒尽くめの男が途中で遮った。

「私達と……この使い捨ての量産型を一緒にしてもらっては困るね……」
「何せ私達は―――」

―――その言葉と共に

「『士官タイプ』なんだから」

―――男は『変身』した

それは、マミの目には、映画特撮の『モーフィング映像』に見えた。
それほどのスムーズさで、男の顔がみるみる内に『変形』していく。

―――『骨格』が組み替わり
―――『顔面』を始めとするあらゆる『表皮』が『体毛』に覆われ
―――体内の『金属パーツ』が体表上へと励起して来る

―――頬が耳まで裂け、捲れ上がった口唇より鋭く巨大化した牙が覗き
―――瞳孔が鋭く集束し、『ネコ科動物』の様に縦に鋭く長く変形する

そして最後に……

―――ジャキキィィン!!

その両手にそれぞれ一振りずつの先の尖った鋭い『刃(ブレード)』が展開する事により、
黒尽くめ男の『変身』は完了するッ!!

―――『ショッカー』の『新世代改造人間シリーズ』の
―――『士官タイプ』が一体

―――『鋏豹男(シザースジャガー)』であった

「それでは……始めましょうか」
「ッッッ」

コンマ数秒の間に、異形の怪物へと変身を遂げた黒尽くめの男の喉より漏れる声は、
しかし変身前とは変らぬ、いたって静かで事務的な声であった。

だが…その体から放たれる威圧感は桁違いである。先程の…『蜘蛛男』達と比べてもッ!!
故にマミは、もはや出し惜しみは出来ないと判断し、

素早くその右手に長大なリボンを展開させ、それを渦巻かせれば、黄色く眩い光が閃き…
戦艦主砲以上の口径を誇る、超巨大な『マチロック』の大鉄砲が姿を現した。

嗚呼…これぞ…巴マミが誇る最強の『必殺技』―――

「『ティロ――――フィナーーレッ!!』」

『最後の一撃』を意味する、最大出力の魔力光線砲『ティロ・フィナーレ』ッ!!
その金色の怒涛たる光の奔流は、『鋏豹男』を飲みこまんと空を超高速で走り―――

「……………」

これまで終始無言であったトレンチコート男が、
やはり無言のままに、『ティロ・フィナーレ』の射線軸上へと、
『鋏豹男』を庇うように割り込んで来る。

『ティロ・フィナーレ』の魔力光線は、トレンチコート男へと直撃し―――

「――――嘘」

『ティロ・フィナーレ』の放つ衝撃波の影響で巻き上げられた煤塵が晴れた後には、
『豹鋏男』とは別の……殆ど『無傷』の新たな『異形』が仁王立ちしていた。

ボロボロと地面へと広がり、宙を舞う、焼け焦げ、粉微塵になったトレンチコートの残骸の下から出て来たのは、
その全身を、メタリックシルバーの合金と強化プラスチックの複合装甲で一切の隙なく覆い尽くされた巨体であった。

奇怪な兜を被り、その三角形を為す頭部に備わった大口からは、巨大な四本の牙が、上下二本ずつ生えている。

腹部の装甲部には…多少の焼け焦げた跡が付いているモノの、殆ど無傷。
その背中に、巨大な甲羅を乗っけたその姿は……一言言えば『金属製の亀』、であった。

「成程…恐るべき威力ですね」
「それが……貴方の『奥の手』と言った所ですか」

『亀男』の後ろから、ニュッと姿を現した『鋏豹男』が、静かな口調に、若干の嘲りを交えながら、マミへと言った。

「私であったら……それを喰らえば危なかったかもしれませんが…」
「残念でしたね…君の『奥の手』も…この『電砲亀男(カノンタートル)』には通じない」

「…………」

『鋏豹男』に、『電砲亀男』と呼ばれた男は、不意に、その場で四つん這いになった。

―――ガシャン

と、金属音がすれば、背中の甲羅の一部が展開し、空いた空洞から、ニュッと、巨大な『砲身』が姿を現した。
その砲門は、マミへと擬されている。

「!?」
「では…お返ししなさい」

『電砲亀男』の背中の砲門が、黄色く輝いたかと思えば……そこから、恐るべき光の奔流が、
超高出力の『プラズマ・グレネイド・キャノン』が、マミへと向けて発射される!!

その、光線は、唖然としたマミを―――



―――風を切って
―――白い騎兵が、夜の駆け抜ける

全身を『装甲』で包まれて尚、『彼』の余りに超越的な触覚は、身に触れ、ぶつかって砕ける風の感触を感じ、
聴覚が、2輪のタイヤが地を蹴る音を、時速350キロのスピードを出すべく超回転する超電磁モーターの駆動音を、 そして、それに混じって聞こえる自身のなす風切り音を聞き、嗅覚は、埃っぽい都市部独特の空気の臭いすら感じ取る。

―――この身を包む、この『うねり』…『嵐』と呼ぶにふさわしいだろう

『彼』の…愛車のハンドルを握る力が、本の僅かだけ強くなる。

闇を切り裂く白いヘッドライトを灯すのは、鋭角的なフロントに、生き物の目の様に配置された左右二連のライト。
リア部には左右三連ずつ、計六連放熱パイプが、月と星に照らされて輝いている。

白を基調とし、所々を赤色で塗装されたこのバイクのフロント部には、『スマートブレイン』のロゴが一つ。

度重なる改修、改造、代がわりを繰り返した『彼』の愛機。

―――その名も…『サイクロン14』
―――『嵐』の名を冠する…夜を裂く流星の如き、白の鉄騎兵

『偽装』を既に解かれた、フルカウルの『サイクロン14』を、
人気のない、夜の見滝原再開発地域にて走らせる『彼』の耳には、
『サイクロン14』の駆動音とも、風切り音とも違う、新たな『音』が飛び込んで来る。

―――それは確かに『銃声』であり、『獣』の雄叫びであった。

今、彼が身を置くこの『平和』な『見滝原』には、まるで似合わない、まさに『異音』。
それは、この闇夜の中、世の理より外れた誰かが、何かが蠢いている、確かな証拠。

―――誰だ
―――誰だ?
―――誰だっ!?

―――『悪魔』が、今夜も、騒ぐのか

―――『死神』が、歌い、踊るのか

―――『妖怪』が、獲物を、狙うのか……

―――『やつら』が、『やつら』が、『やつら』が!!
―――この闇夜の中、またも誰かを踏みにじろうと言うのか!?

「(だが――――)」

―――そうはさせない
―――その為に…その為だけに
―――『四十年』の長きに渡って戦い続けども
―――この命…尚も生きてあり

『サイクロン14』に跨る彼の腰元では、三つ並んだ赤い風車…『三連タイフーン』が、
膨大なる発熱を起こす彼の肉体を冷やさんと、今も唸りを上げて風を取り込んでいる。

その身を包むのは…黒と緑の異形の鎧。

黒と緑の装甲と兜。風を感じる二つの『触覚』
その中において、輝くのは仄かに紅く輝く、左右の複眼。

その双眸は『髑髏』の様であり、同時に『飛蝗』の様でもある。

―――『彼』は、急ぐべくさらにアクセルを吹かし、スピードを上げる
―――トップスピードたる時速450キロまで一気に加速した『サイクロン』は
―――走る。走る。走る。

―――『命』を守る為に
―――『生きたい』と思う者を救う為に

―――『神』も『奇跡』も『魔法』も無い闇の底に指す
―――最後に残った…一筋の『光』と成る為に

―――『彼』は走る
―――赤いマフラーを棚引かせ





「はぁ……いや……いやぁ……」

―――巴マミは追い詰められていた。
彼女の手には、大口径の白亜のライフルドマスケットが構えられ、
その銃口は小刻みに揺れつつ、左右に激しく、その照準が揺れる。

間一髪の所で、『電砲亀男』の『プラズマ・グレネイド・キャノン』の電子の奔流を回避し得たマミだったが、
逃げられたのは、そこまで。廃工場の屋根より飛び降りた彼女は、またも…異形の軍団に包囲されていた。

『イィィィィィィィィィィィ』

『イィィィィィィィィィィィ』

『イィィィィィィィィィィィ』

『イィィィィィィィィィィィ』

『イィィィィィィィィィィィ』

全身を、黒いラバーベースのコンバットスーツで覆い尽くし、
その顔面すらもミラーシェードのバイザーのガスマスクで隠して、
その手にはバチバチと放電音を立てる『電撃棒(スタンロッド)』を構えた、
あからさまに怪しげな異形の襲撃者達である。

その口から洩れるのは、異様に甲高い、実に人間離れした咆哮であり、
それは『電撃棒』の放電音とコーラスを為して、耳障りな合唱は、
根の部分ではまだ女子中学生に過ぎないマミの精神をじわじわと削り取って行く。

―――『ショッカー』謹製の『戦斗員(コマンドロイド)』である。

『蜘蛛男(クモロイド)』の様な量産型の『上級兵士型改造人間(レベル2)』にすら劣る、
彼ら以上の使い捨ての『下級兵士型改造人間(レベル1)』である。

サイバネスティクな改造は一切施されていない、超安価な量産式の生化学的強化改造を施された彼らは、
何処かから拉致されて来た飢餓難民やスラム民をその『材料』としており、
黒い戦闘服の下の肉体には、人間的精神や記憶はおろか、人間的肉体すら、もはや止めていない。

いわば…命令を理解する最低限の知能と、無理矢理に強化された身体機能以外の全てを斬り捨てた…『肉の塊』である。

彼らがもはや人間の体を為していない、その証拠は、マミのマスケットにより仕留められた『戦斗員』の死体から覗える、漏れ出た『緑色』の体液や、飛び散って後に、グズグズと溶けだし、崩壊していく、斑文様の肉の破片であろう。

第3世界で問題となっている…人口爆発による大量の飢餓難民の発生。
これに対する、『ショッカー』なりの解答がこれであった。

そして…マミを包囲しているのは…彼らだけで無い。

宙を旋回し、やはり耳障りな鳴き声を立てながら、毒々しい鱗粉の雨をマミへと降らすのは、4体の『新式毒蛾男(ドクガロイド)』である。

異様に軽い骨格と肉体を、その巨大な翅で滑空させるこの『毒蛾男』の『鱗粉』は、非常に強力な毒素であり、風に乗せれば、容易く大量虐殺を為す『毒ガス』となる。

『魔法少女』はその肉体の特性上、毒は殆ど通用しないが、それでも…人と蛾のキメラ的異形の怪物が、自身の上を旋回していると言うだけで、マミには充分以上のプレッシャーとなっており、マミを追い詰めるのに一役買っていた。

―――『魔女』に比べれば
―――『ショッカー』の『改造人間』達は、余りに『人間的』である

『魔女』も…その『起源』を考えれば『人間的』であってしかるべきなのだろうが、『魔女』という存在は悪夢的であっても、その存在は実に概念的であり、相対する魔法少女達にとっては、亡霊と遭遇した様な心理的恐怖を与えるのである。

対して『改造人間』の持つキメラ的異形は…マミに対し生理的嫌悪、恐怖を与えるのだ。

コイツラの相手をするぐらいならば…マミにとってはまだ『魔女』の相手をしている方が気が楽であった。
正体不明の…このキメラの群れ達は…マミにとって如何ともし難い程に醜悪であり、恐怖であった。
『改造人間』の異形は、マミの『少女』としての感性を酷く攻撃するのである。

「あなた達は…『何』…?」
「一体……何だって言うの?」

純粋な…『戦闘能力』と言う見地では、今、マミを包囲する『改造人間』軍団は、マミの持つソレには遠く及ばない。
しかし…『ショッカー』の最大の武器とは…その名の示す通り『恐怖』である。

『改造人間』の持つ『恐怖』が…マミを追い詰めて行く。

「――――知る必要はありませんよ」
「言ったでしょう?今からアナタは死ぬからです」

ハッとしてこの方へと銃口をマミが向ければ、早くも追いついてきた、
『鋏豹男』と『電砲亀男』の姿が見える。

―――異形共の…夜の祭典
―――ある意味では…『魔女の祭典(ヴァルプルギスナハト)』以上の悪夢の光景が、マミを取り囲んでいる

「―――何なのよ」
「何なのよ…あなた達」
「何者なの?何が目的だって言うの?」

そんなマミの当然の問いに、『ショッカー』は答えない。
彼らが踏みにじって来た…数々の『必然の犠牲(コラテラルダメージ)』。
その数は余りに膨大である。故に、そんなモノにいちいち答えたりはしない。

『ショッカー』に狙われた者の辿る末路は……おおよそ一つだけ。
訳も解らず……ただ死ぬだけ。

―――ただ一つの

―――ブロォォォォォォォォォォォォォォ!!

「!?」
「!?」
「!?」

―――『例外』を除いて

それは、突然に、やって来る。
遠雷の様な響きを伝令の喇叭としながら、『嵐』を纏って……『彼』はやって来る。

『戦斗員』を轢き飛ばし、跳ね飛ばし、マミと、『鋏豹男』『電砲亀男』との間を塞ぐ様に、その白いバイクは、超高速で割り込んで来た。

『鋏豹男』は、『電砲亀男』は、知っていた。

それは…生きる『伝説』であった。
『神』も『奇跡』も『魔法』もない世界に、ただ一つ…確かに現れた現代の英雄。

―――白と赤の『サイクロン』
―――黒と緑の装甲服
―――ヘルメットから伸びた触角、薄紅色の複眼
―――髑髏の様な、飛蝗の様な仮面

『四十年』もの長きに渡り……『ショッカー』と戦い続けて来た、ただ一人の男。

『鋏豹男』は、『電砲亀男』は、『彼』の名前を知っている。
故に…呻くようにその名を呼んだ。

「―――『仮面ライダー』……」
「―――『本郷猛』ッ!?」

「何故…ここにッ!?」

本郷は…『仮面ライダー』は答えた。

「お前達のいる限り…」
「俺は……必ず現れる」
「世界中の…何処であろうと」

―――深紅のマフラーが、闇夜に栄える
―――マミはその赤を…茫然と見つめた





―――『仮面ライダー』…本郷猛は『改造人間』である

―――彼を改造した『ショッカー』は、世界を陰から『死』と『恐怖』で支配する秘密結社である

―――『仮面ライダー』は踏みにじられんとする『生命』を守る為に、『ショッカー』と闘うのだ!





「―――あら…意外ね」
「てっきり…逃げるモノばかりかと思ってたけど」

『X(カイ)』を象った仮面の下から響く、マミのそんな声に、正体を無くしていたほむらは、ようやく正気を取り戻していた。

見れば…手塩にかけて育てた薔薇園を荒らされた為か、本来ならば『結界』の最奥に居る筈の『魔女』が、その異形をほむら達の前に曝している。

―――“薔薇園の魔女”『GERTRUD』

それがこの『魔女』の名前だ。
その外見は…どうやって形容したものだろうか。

簡潔に、ありのままに描写するならば、緑色のタコ状の頭部に薔薇をあしらい、背中には蝶の翅、ずんぐりとした茄子型の体型で、そのでんとした尻部には、『根』を思わせる、幾本ものニョロニョロとした脚が生えている――― と、こんな所であろうか。

『魔女』はその異形を深紅の玉座に据えて、こちらを睥睨している。
その周りには…小型の『ADELBERT』が羽虫に様に群がって飛びまわっていた。

それを見たさやかは

「グ…グロい」

と、万人が等しく抱くであろう感想を呟いていた。

この薔薇園の『魔女』とは、ほむらも以前の『ループ』で遭遇した事があり、勝利もしている。
決して、強い『魔女』では無い。マミであれば、文字通り楽勝の相手。
ただしそれは…ほむらの知るマミの話である。

この時間軸のマミは―――

「…………」

全身を、黒と黄色と紫の装甲で包み、その手には『X』字状の奇怪な剣と一体化した銃を構えた、まるで…テレビの特撮ヒーローの様に『変身』する巴マミ。

見知らぬ教員『本郷猛』と、それが跨るのは、恐竜の様なロボットへと変形するサイドカー。
備えられた機関砲は、『魔女』の『使い魔』も容易く引き裂く―――

「(――――おかしい)」
「(――――こんなのぜったいおかしいよ)」

何と言うか…本当にコメントに困ってしまう。
もう、佐倉杏子が何故か見滝原中学に居るとかどうでもよくなってきた。
それぐらいに、この時間軸は、余りにも今までと違いすぎた。

「――――佐倉さん」
「あいよ」

マミに言われて、ここで佐倉杏子が初めて動きを見せた。
いつの間に取り出したものか、例の多節槍をその手に構え、
穂先を地面に突き刺せば、まどか、さやか、ほむら、
そして杏子自身を守る形で、赤い格子状の『防御陣』が出現する。

「それじゃぁ本郷の旦那、マミ…今回は任せるよ」

「て…転校生!?あんた……」

唐突に杏子のやってみせた異形の技に、目を白黒させるさやかへと、杏子は、悪戯っぽく八重歯を光らせて、

「後で教えてやんよ……つーーか教えねぇ訳にはいかねぇし」

そんな彼女達を余所に…

「じゃ…始めましょうか」

『魔女』と…『巴マミ/カイザ』と、本郷の戦いが幕を開ける。

手始めに、その腰を据えた赤い玉座を放り飛ばし、マミと本郷を叩き潰さんとする『魔女』いったい、どれだけの重さがあるのか、投げ飛ばされた玉座は煤塵をボワンと立てながら、ゴロゴロと地面を転がり、その衝撃に、思わず『陣』の中のさやかとまどかが目を瞑る。

しかし、その玉座は―――

「生憎だけど……当たらないわ」
「…………」

マミにも、本郷にもかすりもしていない。
マミも、本郷を乗せたサイドバッシャーも、素早い機動で玉座の攻撃を逃れていたのだ。

「猛さん!!」

マミの呼びかけに、ただそれだけで何を為して欲しいかを理解した本郷は、サイドバッシャーのコンソールを操作し、

―――ぼしゅしゅしゅしゅしゅしゅ……

サイドバッシャーの左手からは…膨大な数の多弾頭ミサイルが、薔薇園の『魔女』を目掛けて発射される。
これには流石に『魔女』もたまらんと思ったのか、その蝶の翅を動かして、明らかに物理法則を無視した機動で、避ける、避ける、避ける……

ミサイルが次々と、結界内部の壁面や地面に着弾し、爆音と爆炎を上げる。
しかし、その一発たりとも、『魔女』には命中しない。

だが、かまわない。何故ならば―――

「御苦労さま…猛さん」
「後は…私が決めますね」

本郷の攻撃は最初から『囮』。全ては、『魔女』を誘導し

「佐倉さんも見てるんだし」
「恰好いい所を見せないとね!!」

マミが『必殺の一撃』を叩き込むの間合いに入りこませる為ッ!!

マミの手にしていた『カイザブレイガン』は、何時の間にかホルスターへと戻され、
取り外されたミッションメモリーは、『カイザポインター』と呼ばれる、腰部に取り付けられていた双眼鏡状のツールへと差し込まれ、さらに『カイザポインター』は、右脚の脛の外側の部分にある、専用のコネクターに装着される。

マミの指が、展開されたベルトのバックル部の『カイザフォン』の『ENTERキー』を押すと

―――『 Exceed Charge 』

と機械音声が流れ、黄色い魔力が、マミの右足へと集束して行く。
そして、その右足が掲げられ、その脚先は、誘導されて来た『魔女』へと向けられ―――

発射される―――『金色の光線』

『■■■■■■■■■■■■―――――!?』

『魔女』が呻き、名状しがたい悲鳴を上げる。
その肉体は金の光に拘束され、そのタコ状の顔の前では、
黄金の四角錐が顕現、超高速で回転している。

マミは跳び、両足を揃え、叫んだ

「―――『スキアント=アウレーオ』ッ!!」

『金色の破砕撃』を意味するイタリア語を叫びながら跳び蹴りを放つマミの両足の底が、金色に光る。
そして彼女の体は…金の四角錐へと吸い込まれ―――

―――魔女に刻まれる…黄金の『X』の文字

金色の魔力光を放ちながら、『魔女』は爆裂四散した。



マミは呆然と…目の前の光景を眺めていた。
彼女を取り囲んでいた異形の群れは、今や、タダの一体を除いて、残らず怪人たちは殲滅されていた。
ぐるると唸りを上げる…『電砲亀男』のただ一体を除いて。

そんな彼も…最早『満身創痍』の有り様であった。
全身の銀の装甲は随所がひび割れ、砕け、口に生えた牙は全てが半ばで折れている。
甲羅は殆ど砕かれたも同然で、内蔵されていた砲身は、潰され、もはや砲としての機能を為していない。

それでも…『電砲亀男』は生きていた。
機動性を犠牲にする事で、限界まで高められた防御力が彼を生かしたのだ。
彼とは逆のコンセプトで造られた『鋏豹男』は、自慢の『シザース』を録に活かす事も無く、
両のブレードをへし折られ、頭部を粉砕されて、絶命し、地面に転がっている。

『戦斗員』や『毒蛾男』の辿った末路も…おおよそそれと同じであった。

「…………」

マミはただ…唖然とするしか無かった。
それほどまでに…この仮面の男は、素早く、そして強力であった。

圧倒的な戦闘能力とスピードで、殆ど反撃の、その構えすら許す事無く、怪人たちを、文字通り叩き潰したのである。

味方…なのだろうか?

そんなマミの存在を気にしてすらいないのか、『仮面ライダー』と『電砲亀男』は互いに向かい合う。

しかし…もはや『電砲亀男』には勝機が無いのは誰が見ても明らかであろう。
事実…『電砲亀男』も、最早これまでと、『仮面ライダー』に勝つことでは無く、この場から何とか逃げ出す事だけを考えていた。

装甲の為に機動力を捨てた彼であったが…『最後の切り札』が残っていたのだ。

「…………」

『仮面ライダー』が、こちらへと仕掛けるべく微かに動いたのを、
『新世代改造人間』としての鋭敏な感覚で捉えた『電砲亀男』は、勝負に出た。

その残った胸部装甲の一部を展開、内蔵された小型『プラズマ砲』を、
『仮面ライダー』へと向けて―――発射!!

眩い光の破裂が、宵闇を引き裂くッ!!
その余りの眩しい閃光に、マミの方は思わず目を瞑っている。

最初から、それが目的の攻撃である。
スタングレネードの要領で、圧倒的閃光で『仮面ライダー』の目を塞ぎ、その隙に―――

頭部に四肢を、甲羅の内部へと格納し、手足が引っ込んで出来た穴には、ノズルが出現、
そこからは―――

―――ゴウッ!!

青白いプラズマジェットの輝きッ!!
高速回転する『電砲亀男』は、超高速で宙を舞う。
このまま飛んで、逃げるッ!!

―――しかし…彼のもくろみは外れる
『仮面ライダー』は…本郷猛は感づいていたのだ。
『電砲亀男』のもくろみに。逃がすつもりなど、毛頭ありはしない。

―――空に浮かんだ月に…染みた黒い人の影
それは徐々に大きさを増し、天から地へと落とされた…一本の怒りの『矢』と成ったっ!!

―――號ッ!!

違う『歴史』を歩んだ『本郷猛』…『仮面ライダー』においては、かくの如く呼ばれた『必殺技』…

―――『ライダーキック』

その必殺の一撃が、天から飛んで逃げる『電砲亀男』へと落ちて、その肉体を爆裂四散させた。


◆◇


「あなたは――――」
「何者…なの」

鹿目まどかは、除装し、人間の姿へと戻った巴マミへと尋ねた。
それと同じ問いを、過去の時間の巴マミは、本郷猛へと尋ねた。

それに対し、マミは、本郷は、こう答えた。

「―――『仮面ライダー』」
「『仮面ライダー』見習い…」

「それが…俺の名だ」
「それが…今の私よ」


―――物語は、赤い風車は回り始める…



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【登場怪人・魔女一覧】

『Level.1(雑魚戦闘員)』
・戦斗員(コマンドロイド)

『Level.2(上級戦闘員)』
・蜘蛛男(クモロイド)
・毒蛾男(ドクガロイド)

『Level.3(怪人)』
・鋏豹男(シザースジャガー)
・電砲亀男(カノンタートル)

『使い魔』
・アントニー
・アーデルベルト

『魔女』
・『薔薇園の魔女』ゲルトルート
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コメント

  1. 名無し@まとめいと | URL | -

    Re: 仮面ライダー ―『約束 2011』― 第2話『変身』

    ゴルドスマッシュだって十分かっこいいじゃないすか!やだーー!マミさーん

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