銀時「魔法少女まどか☆マギカ?」  その2

2011年09月11日 19:35

銀時「魔法少女まどか☆マギカ?」

453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2011/05/17(火) 01:36:18.26 ID:psY02mFG0

---
さやか宅

さやか「……だましてたのね」

キュゥべえ「だましてなんかいないよ、僕は事前に与えられるだけの情報は与えたじゃないか」

さやか「じゃあなんでソウルジェムの件を説明しなかったのよ!」

キュゥべえ「聞かれなかったからさ、自分の状況判断能力を他者に押し付けるのはよくないよ」

さやか「……最低ね、アンタ」

キュゥべえ「それは僕を殴り飛ばした彼に対する言葉じゃないのかい?」

キュゥべえ「こっちはいきなり山奥まで殴り飛ばされてここまで帰ってくるのに苦労したって言うのに……」

キュゥべえ「途中で山狩りしてた猟師の流れ弾に当たりかけるし、車には引かれかけるし…わけがわからないよ」

さやか「こんなの…絶対ひどいよ……」

キュゥべえ「もはやだれも僕の話は聞いてくれないんだね」



←ブログ発展のため1クリックお願いします
翌日、さやか宅

さやか「………」

登校時間はとっくに過ぎている、それは分かっていてもさやかは布団から抜け出すことができなかった。

昨日の夜の出来事が未だに頭の中で渦巻いている。

ソウルジェム、今の自分の存在はこんなちっぽけな石ころでしかないのだ……

腕も、足も、体を流れる血も…もはやすべてが作り物と同然となってしまった現実。

さやか「私…こんな体になっちゃって…どんな顔して恭介に会えばいいのかな?」

何もする気が起きなかった、永遠にこの布団の中にいたい…そう思っていた時

『いつまでもしょぼくれてんじゃねぇぞ、ボンクラ』

耳から聞こえる声ではない、頭の中に直接語りかけるような声が響き渡った。

布団から這い出し窓の外を見る、そこにはりんごをかじりながら玄関先でこちらを見つめる杏子の姿があった。

杏子「ちょいと面かしな」


---
某所

左右に木々の生い茂った道を二人の少女が歩いていく。

万物を明るく照らす太陽の光も今日はどことなく物悲しげに感じられた。

杏子「アンタさぁ、やっぱり後悔してるの?こんな体にされちゃったこと」

さやか「…………」

杏子「私はさぁ…まあいっかなって思ってる、この力のおかげで何だかんだで好き勝手出来たわけだし」

さやか「アンタは自業自得なだけでしょ」

杏子「そうだよ自業自得なのさ、誰のせいでもない自分のせい」

杏子「そう割り切れれば誰を恨むこともないし、後悔なんてあるわけがない」

杏子「そう思えば大抵のことは背負えるもんさ」

さやか「…………」

さやかは杏子の真意を推し量っていた、いったい何が言いたいのだろうか。

一つ分かるのは…佐倉杏子は自分が思っていた以上に過酷な日々を送ってきたという事実だった。


教会跡

さやか「……こんなところまで連れてきていったい何のつもり?」

杏子「ちょっとばかり長い話になる……」

そういうと杏子は手に持っていた紙袋に入っているりんごをさやかに投げ渡した。

杏子「食うかい?」

---

杏子「まあ…そんなわけさ、だからどうだって話でもないけれどね」

さやか「………」

驚いた、まさか自分がこの上なく憎たらしいと思っていたこの少女の背負った過去に。

父のこと、家族のこと、魔法少女になった理由、そして魔法を自分のためだけに使うという誓い。

どうやら自分は佐倉杏子という人間の評価を誤っていたらしい。彼女は強く、孤高であり

杏子「アンタも私と同じ間違いから始まった、そして今も苦しみ続けてる…見てられないんだよ、そんなの」

そして、他人を思いやることのできる優しい少女だったのだ。

さやか「アンタのこと、色々と誤解してた…それは謝るよ、ごめん……でも」

さやか「私は自分の願いに後悔なんてしないよ、絶対に…これからもね」

杏子「……それ、本気で言ってるのかよ」

さやか「うん、私が気に入らないなら…そのときはまた殺しに来ればいい…私は逃げないし恨んだりもしないよ」

杏子の気遣いは素直にうれしかった、だがさやかも生半可な思いで契約をしたわけではない。

ここで自分のために魔法を使うことを認めては、他社のために魔法を使うというあの時の誓いを裏切ることになってしまう。

それだけは出来なかった。


銀時「…………」


外から二人の様子を窺っていた侍、その胸中は一体如何なるものだったのか。

―――だが、運命の歯車は少女たちに休息のひまを与えることはなかった。


---
翌日、学校、放課後

さやか「今…なんて……?」

仁美「ですから私、上条恭介くんをずっとお慕いしていました」

さやか「!」

仁美「でも…幼馴染の美樹さんの気持ちを無視するわけにはいきません」

仁美「明日の時間を美樹さんにお譲りします、彼を男性としてみているのなら…どうかその時に告白なさってください」

仁美「そしてもし、明日までに何かのアクションを起こさなければ…私が彼に告白します」

さやか「…………」


---
翌日

まどか「………」

まどか(さやかちゃん…また学校を休んでる……まさか…また無茶をして怪我をしたんじゃ…!)

仁美「…………」


---
放課後、さやか宅、玄関前

まどか「さやかちゃん!」

さやか「………まどか」

玄関先で待っていたまどかに声を掛けられたさやかが力なく返答をする、誰が見ても明らかにやつれていた。

銀時「オイオイ、休むんだったら休むって連絡いれろお前」

まどか「!」

さやか「先生も…来てたんだ、心配かけてごめんね…明日は学校に行くから……」

銀時「……で、テメーは今からどこに行こうとしてんだ?」

さやか「魔女を…倒しに……」

まどか「ダメだよさやかちゃん…こんなに疲れてるのに戦うなんて……」

さやか「……戦うしかないよ、だって」

さやか「魔女と戦わない私に…存在価値なんてないんだから」

銀時「何があったお前…冗談にもならねェこと言うんじゃねーよ」

さやか「だって……だって……私、最低なんだもん……!」

気丈に振る舞い続けていたさやかの仮面が外れる、同時に大粒の涙がこぼれおちた。

さやか「どうしよう…このままだと仁美に恭介を取られちゃうよぉ……」

さやか「しかも私…前に仁美を助けたことを後悔するなんて……!」

まどか「さ、さやかちゃん…さやかちゃんならきっと大丈……」

さやか「大丈夫じゃないよ!……こんな体で恭介に触ることなんてできない」

さやか「こんな口で恭介に好きだなんて言えない!」

銀時「…………」

銀時「他人の惚れた晴れたに口出しすんのもお門違いだけどよ、これだけははっきり言ってやる」

さやか「………?」

銀時「今のテメーは誰かに惚れる権利も、惚れた相手に思いを伝える権利も持ってらァ」

銀時「そんなにてめーを卑下するもんじゃねーよ」

さやか「……嘘でもそういってくれると嬉しいよ、でも…今は魔女を倒しに行かなきゃね」


---
某所

杏子「…………」

魔女の作り出した結界が見える、そのすぐそばで佐倉杏子は中の様子を窺っていた。

ほむら「……らしくないわね、あなたがただ見ているだけなんて」

杏子「あの魔女はアイツの獲物だ、手出しなんか必要ないだろ」

ほむら「そんな理由でみすみすあなたがグリーフシードを得られる機会を譲るのかしら?」

杏子「…………」


---
結界内

結界内ではさやかが剣を振るい魔女と交戦している最中だった、お互いに致命打を与えられない緊迫した戦闘が続く。

銀時は魔女の生み出す使い魔と木刀で打ち倒すも魔女の本体には手を出さない。

銀時「チッ…次から次へと湧いてきやがって……!」

本来ならば使い魔など気にせずに魔女本体を叩くのが定石であるし、銀時もそうするつもりだった。

だが、出てくる使い魔を放置してしまっては一緒にいるまどかの身が危険にさらされる。

そしてさやか自身も、銀時に手を貸してほしくなかったのだ。

杏子「いつまでちんたらやってんだ馬鹿」

一閃、ただそれだけでさやかを苦しめていた魔女の体の一部が切断される。

杏子「ったく、見てらんねぇな…見てな、手本ってのを見せてやるからさ」

それは不器用な彼女なりの握手の申し出だった。自分も手伝う、仲間として戦おうという彼女なりの優しさ。

さやか「……邪魔しないで」

だが…今のさやかは差し出された言葉を乱暴に払いのけた。
魔女に向かって単騎で突撃を仕掛ける、あまりに直線的で単純な攻撃。

当然のごとく魔女の反撃をその身に受けた。

銀時「あの馬鹿!」

銀時が助けに入ろうとするも、さやかは止まることなく魔女を斬り付ける。

本来ならば動けるはずのないダメージを負っているはずだった、なのになぜ……

さやか「なるほどね…慣れれば簡単なんじゃない、痛みを消すことなんてさぁ」

さやかは笑っていた、体から、頭から、いたるところから血を流しても笑い続けた。

……さやかの浮かべている笑みは少女のそれと言うにはあまりにも邪悪だった。

さやか「あはははははははははははは!!」

狂ったように笑いながら動かなくなった魔女を斬り続けた。何度も、何度も。

銀時「………」

銀時はそんなさやかの腕を掴みあげて

銀時「もう止めろ…このままじゃテメー、本当に戻れなくなっちまうぞ」

さやか「………」

さやか「戻る場所なんて私にはもうないよ……」

魔女が倒されたことで結界が崩壊する、あたりの景色が日常の物へと戻っていった。

魔女の落としたグリーフシードを蛍光灯が明るく照らしている、さやかはそれを拾い上げると杏子に投げ渡した。

さやか「あげるよ、ソイツが目当てなんでしょ?」

杏子「オイ……」

さやか「さあ…帰ろう、まどか、先生……」

言葉を言い終わらないうちにさやかはその場に倒れこんだ。

銀時「…………」

そして、白髪の侍はこの場にいる誰よりも事態を重く受け止めていた。

予感があった、このままでは取り返しのつかない事態が起こりかねないと。


---
ほむら宅

ほむら「そう…そんなことがね」

銀時「お前…わかってたんじゃねーか?めんどくせーことになるってよ」

銀時「その前に…あの無限残機が言ってたソウル何たらの件も俺ァ聞いてねーぞ」

ほむら「……あの時は言うべきではなかったの、言っても仕方のないことだったわ」

銀時「……どうやら嘘でもなんでもねーらしいな、魂を抜き取るってのは」

ほむら「ええ、事実よ…だから私は美樹さやかが契約した時点でもうある程度の諦めはしていたわ」

ほむら「契約した人間を救うことなんて…絶対に出来るはずがないんだから」

銀時「…………」

銀時「二人なら持ち上げられる石でも、一人が手抜いたんじゃ持ち上げられるわけがねェ…」

ほむら「?」

銀時「テメーが何度この世界をやり直してきたかは知らねーが…それで全部を諦めんのは早いんじゃねーか?」

ほむら「!」

銀時「契約した人間だろうがなんだろうが…目の前にあるモンなら掬い取ってやる、まだ間に合うんならな」

ほむら「………」

銀時「俺ァ見捨てるつもりはねーよ、アイツも…テメーもな」

ほむら「…………」

ほむら「……あなたは面白いわね、本当に」


翌日、放課後

志村仁美が上条恭介に思いを告げると宣言したその日、美樹さやかの姿は学校にはなかった。

仁美「退院できてよかったですわね、上条さん」

上条「ありがとう、でもまだ色々と検査はしなくちゃいけないらしいんだ」

仁美「……上条さん、今日ここでお伝えしたいことがあります」

上条「?」


さやか「………」

……楽しそうに笑いあう男女を木陰から見つめる少女が一人。


---

さやか「…………」

まどか「さやかちゃん…今日も私……」

さやか「来ないで」

まどか「え……!」

初めての拒絶の言葉にまどかは驚きの表情を浮かべる、それでもさやかは冷たく

さやか「戦いもしないアンタが付いてきたって…何にもならないでしょ」

まどか「でも…でも私……!」

さやか「何…私のことを思ってくれてるつもり?私と同じ立場でもないくせに」

まどか「そんな…さやかちゃん……」

冷たい感情が心に染みわたっていく、人の心とはこれほどまで冷徹になれるのだろうか?

さやか「本当に私のことを思ってくれてるんなら…私と同じ体になってみせてよ」

……いや、自分はもはや人間ではなかった。

さやか「出来るわけないわよね、同情なんかでそこまでのこと」

まどか「ど、同情なんかじゃ……!」

さやか「だったらアンタが戦ってよ」

恐ろしいほどの冷たい視線で睨みつけられる、思いを伝えようとしても口が動いてくれない。

さやか「……そういうわけだから」

まどか「……!!」

結局…まどかはさやかを引き留めることは出来なかった。

---

さやか「馬鹿…馬鹿…なんてこと言ってんのよ、私は!」




まどか「さやかちゃんが…帰ってない!?」

さやかの両親によれば、先日休んでいたさやかが外出してから、家に帰っていないらしい。

つまり、銀時や杏子と魔女を倒した日から一度も家に帰っていないことになる。

まどか「……!」

さっき、自分は追いかけなければいけなかったのだ…助けを求める親友を一人きりにしてしまった。

何かを考える前にまどかは走り出していた、親友を探し出すために。


---
某所

さやか「…………」

杏子「やっと見つけた……手間かけさせんなよ」

失踪したさやかを最も早く見つけたのは杏子だった、あちこち走り回ってきたのか若干息を切らしている。

さやか「悪いね…手間かけさせちゃって」

杏子「……なんだよ、そんなこと言うなんてらしくないじゃん」

さやか「もう…どうでもよくなっちゃったからね」

自らのポケットに手を伸ばすとソウルジェムを取り出した、さやかのそれは

杏子「……っ!!」

石の持っていた輝きはまるで失せ、黒い濁りが溜め込まれていた。

さやか「何やってるんだろうね、私は……」

さやか「憧れてた先輩の信念を真似することもできなくて…親友を傷つけて…」

さやか「先生の忠告も聞かないで…差し出されていた手を振り払って…」

杏子「お前…まさか……!」

さやか「私って…ホント馬鹿」

悲しみと後悔の涙がソウルジェムに零れ落ちると同時

―――さやかのソウルジェムが黒く染まりきり、粉々に砕け散った。

杏子「さやかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


---
某所

キュゥべえ「この国では成長途中の女性のことを少女って言うんだろう?」

キュゥべえ「だったらいずれ魔女になる君たちのことは、魔法少女って呼ぶべきだよね」
20110425191613a61.jpg
刹那、魔女の結界が杏子を包み込んだ。

杏子「な、なんだよこれ…どうやってやがる!」

瞬時にソウルジェムを使って魔法少女に変身する。

魔女も気を付けなければならないが、まずは倒れたさやかを助けなければならない。

杏子「テメー一体なんなんだ、さやかに何をした!」

答えが返ってこないと知りつつも、突如その場に現れた魔女に対して叫んだ。

ほむら「下がって」

響き渡る声とともに魔女の付近で爆発が起こる、その一撃で魔女も怯んだらしく攻撃を仕掛けてこようとはしない。

銀時「今のうちに退くぞ、さやかの奴はしっかり背負っとけ!」

杏子「お前ら……!」

ほむら「捕まって、早く」

言われるがままにほむらの手を取る、すると時計の針が止まったかのように周りの物が動かなくなった。

ほむら「気を付けて、私の手を放したらあなたたちの時間も止まってしまう」

杏子「時間操作系の魔法かよ…いや、今はそんなことどうでもいい!アイツはいったいなんなんだよ!」

ほむら「かつて美樹さやかだったもの、あなたも見届けたんでしょう?」

ほむら「…………間に合わなかったのね」

歯を食いしばる音が聞こえた気がする、冷静に見えるほむらも何か思うところはあるのだろう。

杏子「逃げるのか…?」

ほむら「戦うならあの魔女を殺すことになる、その荷物を捨ててね」

杏子「捨てる?ふざけんな!」

ほむら「……今は逃げることだけを考えなさい」

銀時「…………」

止まることなく走り続け結界を抜ける、その先に待っていたのは

まどか「何なのこれ…さやかちゃんはどうしたの!?」

マミ「せ、説明してくれるかしら…いったい何があったのか……」

ほむら「…………」

説明するのが躊躇われる、巴マミが過去の世界で何をやったか忘れたわけではない。

彼女は魔法少女が魔女になるとの事実を知った時、錯乱して他の魔法少女を撃ち殺している。

だが…ここで嘘をついてもいずれは分かることだった。

ほむら「美樹さやかのソウルジェムはグリーフシードに変化した後、魔女を生み出して砕け散ったわ」

まどか「!」

マミ「え……!」

まどか「嘘…だよね?」

杏子「………」

まどかの目を見ていられず、思わず顔をそむけた。逆にそれが今の話を疑いのない真実だと決定づける根拠となる。

まどか「そんな…さやかちゃん…誰かを救いたいって…そのために戦いたいって言ってたのに……!」

マミ「ちょっと待って…美樹さんのソウルジェムが魔女を生み出したって……」

マミ「それって…つまり美樹さんが…魔女になったって……!!」

マミ「いいえ、美樹さんだけじゃない…つまり私たちも……!」

ほむら「ええ、ソウルジェムに穢れが溜まり切ってしまえば…私たちも魔女になる」

ほむら「それが私魔法少女について隠された最後の秘密よ」

マミ「!」

キュゥべえ『逆に聞くけれど、君は自分があんな魔女になると思っているのかい?』

キュゥべえ『人に災いをもたらすだけのおぞましい存在になると、本当に思うのかい?』

いつだったか、キュゥべえが自分に向かって言っていた言葉を思い出す。

そうだ…つまり、あの問いの答えはそういうことだったのだ。ならば

マミ「魔法少女が魔女になるのなら…私たちがみんな死ぬしか…それしかないじゃない!」

ほむら「!」

衝撃の事実にマミが混乱することを予期していたほむらは時を止める準備をする。

万が一を避けるために、マミが魔法銃を出そうとした瞬間に動きを止めて拘束しなければならない。

だが、この場でマミを止めたのはほむらではなく

銀時「落ち着けや黄色の縦ロール、もっと適当に考えろ」

銀時「選択肢ならあるじゃねーか…誰も死ぬ必要のねェ簡単な選択肢がもう一つ」

銀時「さやかの奴を助けるって選択肢がよ」

白髪の天然パーマが発した言葉だった。

マミ「た、助けるって……!」

杏子「そんなことできるのかよ…何かあてでもあるのか?」

銀時「んなもんねーよ」

マミ「方法もわからないのに無責任なこと……」

銀時「だから落ち着けってキイロール」

マミ「いやキイロールって何?」

ほむら「本気なの…どう考えても絶望的よ?」

杏子「いや…希望を捨てるのはまだ早いってのは私も同意だ、やれることはやらねぇと後悔する」

杏子「今のアイツは魔女化して間もない、こっちから呼びかければ人間だったときのことを思い出すかもしれない!」

銀時「だったら…いるじゃねーか、とっておきの適任者がよ」

まどか「わ、私……?」

杏子「アンタだけだ、アイツを助けられる可能性があるとすれば」

マミ「でも…呼びかけるなんて方法で……」

銀時「うだうだ言ってねーでテメーも手伝うんだよキンチョール」

マミ「それもう殺虫剤になってるわよね!?もはや黄色ですらなくなってるわよね!?」

ほむら「…………」

どうせ自分が止めたところで佐倉杏子は美樹さやかを助けようと動くだろう。

そして親友であるまどかも動かないはずがない、どちらにしろ同じことだ。

それに今は巴マミもいる、若干の混乱があるとはいえ彼女もかなりの実力者だ。

そして…この世界の常識を破るために存在しているかのごときイレギュラーの坂田銀時の存在。

……賭けてみる価値はあるのではないだろうか?

ほむら「……やるのね」

銀時「アイツにこれ以上欠席されて給料引かれても困るんでな、明日にゃ笑って学校へ来てもらうとしようじゃねーか」


---
結界内

オクタヴィア(魔女)「グギャアアアアアアアア!!」

マミ「これが…これが美樹さん……?」

杏子「……行くぞ、作戦通りにな…みんな!」

銀時「大丈夫、問題ない」

ほむら「勝ち取りましょう…美樹さやかを取り戻すという勝利をね」

まどか「さやかちゃん……!」

今回の魔女が作り出した結界は言うなればコンサートホールのようなものだった。

多くの観客席、悲劇的な曲を奏でるバイオリニスト、それらをまとめ上げる指揮者。

まさに美樹さやかの根底にあった思いが反映されているというべき空間だった。

まどか「さやかちゃん…私だよ、まどかだよ!私の声がわかる?」

親友を救いたいと願いを込められた呼びかけが響き渡る。

だが、魔女は聞く耳を持たないかのごとく、演奏を声で遮るまどかに対して攻撃を仕掛けた。

まどか「!」

杏子「怯むな!アンタは呼び続けろ!!」

銀時「安心しな、テメーにゃ指一本触れさせやしねェ」

攻撃を迎撃された魔女はさらに数を増やして攻撃を仕掛ける、二人はそれを懸命にうけ切っていた。

マミ「…………」

ほむら「何をしているの、巴マミ…戦いが始まっていることがわからないの?」

マミ「わ、私は……」

ほむら「まだ迷っているのね、本当に美樹さやかを助けられるのかどうか…」

マミ「………」

ほむら「戦う気がないのならば今すぐここから逃げるべきよ、足手まといになるだけだわ」

杏子「ぐっ!」

銀時「立ち止まるな!一発でも通したらやべェぞ!」

戦い慣れた二人が目に見えて苦戦していた、その要因は魔女の攻撃はまどかに集中していること。

攻撃自体は木でできた車輪のようなものを作り出し投げつけるという単純なものだった。

だがまどかはなんの力もない、ただの一般人だ。一撃でも攻撃を食らえばひとたまりもない。

ゆえに二人は魔女の攻撃を『回避』せずにすべて撃ち落とさなければならないのだ。

さらにあの魔女が美樹さやかである以上、下手な攻撃を仕掛けることもできない。

どちらが有利かはだれの目にも明らかだった。

ほむら「下がって」

不意に爆発が起こり、敵の車輪がすべて撃ち落とされる。

銀時「すげーなオイ、どんなチート攻撃だ?」

ほむら「いいえ…私の攻撃には限度がある、このままのペースで撃ちつづけたら十分も持たないわ」

杏子「だったらアンタはまだ下がってろ…今は私たちで何とかする」

銀時「本当にヤバくなるまで温存しとけ、いざって時がいつ来るかわからねーぞ」

ほむらは二人に頷くと前線から一歩下がり、まどかの傍に寄り添った。

ほむら「呼び続けて、あなたの言葉が私たちの希望よ」

まどか「う、うん……!」

杏子「くそっ!いい加減しんどくなってきたな……!」

銀時「動き続けろ!二秒で切り返せ!」

杏子「んなことできるわけないだろ!大体なんだよ、二秒って!」

銀時「うっせーな!俺ァあれが好きだったんだよ、途中から普通に面白くなってたのに勿体ねーよ!」

銀時「多分シアンを出すのがもうちょい早けりゃ生き残ったと俺は思うね!」

杏子「こんな時までわけわかんねぇこと言ってんなよ馬鹿!」

まどか「もう止めてさやかちゃん!こんなのさやかちゃんが望んだことじゃないよ!」

声がかれるほど叫んだ、数えきれないほど叫び続けた。親友に届けと思いを込めて。

それでも魔女は一向に攻撃の手を休めようとはしない、むしろ攻撃は激しさを増しているようにさえ思える。

杏子「うあっ!」

銀時「ぐっ!」

さすがの二人でも追い詰められつつあった、受けきれなかった攻撃がダメージとして蓄積されていく。

そして疲労が溜まればその分動きも衰え、さらに多くの攻撃を受けてしまう…最悪の悪循環だった。

ほむら「……!」

ほむらは最終手段も考慮に入れ始める、魔女を爆殺するという最終手段…それは美樹さやかを見捨てることを意味していた。

ほむら(でも…ここで全滅するくらいなら……!)

その思った瞬間だった。

銀時「どうしたよ、こんなモンじゃ俺ァ止められねェぞ……!」

今の銀時はまどかだけではない、動きの鈍った杏子への攻撃もその身を挺して防いでいる。

常人ならとっくに倒れていてもおかしくはない状態、それでも立ち続ける男にその場にいた全員が驚愕していた。

マミ「なぜ…立っていられるの……どうしてそんな傷で……!」

マミから投げかけられた問いに銀時は即答する。

銀時「気に食わねェんだよ…ダチ公の魂を弄んで食い物にしやがったあの野郎がな」

かつて白夜叉と呼ばれた男の怒り、それは自分にとって大切な者の最も大切な物を穢されたことに対するもの。

許せなかったのだ、あの明るかった少女の運命がこんな形で掻き回されていることが。

戦いの日々しかなかった自分とは違う、正しい道を歩んでいた少女の日常が壊されたことが。

銀時「どっかで見てんだろ無限残機、俺たちが無駄な努力をしてるとでも思ってんだろうがな…一つ言っとくぜ」

侍は一呼吸おいて真っ直ぐに刀を構え直し、流れる血を拭いもせずに言い放った。

銀時「人間の魂を甘く見るんじゃねーぞコノヤロー」

マミ「…………」

自分はいったい何をしているのだろうか?魔法少女でもない彼があれほどまで戦っているというのに。

自分は何が出来たのだろうか?絶望を抱え込んで魔女になってしまった美樹さやかを救うために。

少なくともそれは怯えたり、最初から諦めて勝負を放棄することじゃない。

ましてや自分を含めた魔法少女全員を道連れに死ぬことなどでは決してない。

心は決まった。

マミ「……私も戦うわ」

ほむら「!」

銀時「へっ…ようやく重い腰を上げやがったか重鎮さん」

マミ「ごめんなさい…もう大丈夫よ、私も最後まで希望を捨てたりはしないわ…それに」

ようやく分かったのだ、今の自分に出来ること…自分がすべきことが。

マミ「後輩を助けてあげるのは…先輩の役目だもの!」

今度こそ言える、浮かれた気分から発する言葉ではなく、本当の意味で…


―――もう何も怖くない。


マミが前線に加わってからは戦況は大きく変わった。

彼女は得意の魔法銃を使った遠距離からの連射銃撃で魔女の攻撃をすべて撃ち落とせる。

加えて、魔法銃も魔力が続く限りは弾切れすることなく無限に具現化することも可能だ。

魔女の仕掛ける車輪での攻撃を捌くのに、これほど適した存在は他にいないだろう。

オクタヴィア(魔女)「グギャアアアアアアアアァァァァ!!」

魔女も遠距離からの攻撃を完全に無効化されていると悟ったらしく、今度は手にしている巨大な剣で斬りかかってきた。

マミ「!」

マミに対して振り下ろされた剣を二つの影が受け止める。

杏子「……残念だったな」

銀時「得物を使って俺たちと戦おうなんざ百年早ェぞ」

マミ「二人とも……!」

銀時「やるじゃねーかキンチョール、やれば出来る子じゃねーか」

マミ「フフ……これでも戦いの経験はそこそこあるの、あとキンチョールは止めて」

魔女との戦いが始まってからすでにかなりの時間がたっていた。だが一向に魔女の様子に変化はない。

まどか「さ、さやかちゃ…ケホッ……!」

何度も叫んでいたせいでまどかの喉は潰れかけていた、それでもさやかの名前を呼び続ける。

魔女になった今でもまどかは親友である美樹さやかのことを心から信頼していた。

必ず自分たちに気が付いてくれるはずだと。

杏子「聞き分けがないにもほどがあるぜ…さやか!お前言ってたじゃないかよ!自分の選んだ道に後悔なんかしないって!」

マミ「美樹さん!私たちの声が聞こえないの!?」

ほむら「美樹さやか、あなたの願いはなんだったか…忘れたわけではないでしょう!」

まどかだけではない、今となってはその場にいる全員が声を張り上げて呼びかけている。

それでも…魔女の攻撃が止む気配はない。

杏子「頼むよ神様…こんな人生だったんだ、せめて一度くらい…幸せな夢を……」

佐倉杏子のつぶやいたそれは、過酷な運命と背負った彼女にしてはあまりにも些細な願いだった。

銀時「……分かってんだよ、テメーがそう簡単に戻ってきやしねェことなんざ」

息を切らしつつ言葉を紡ぐ銀時を全員が見つめる、一体何を言っているのだろうか?

銀時「テメーは前におかしなこと抜かしてやがったからな、自分にはもう戻る場所がねェだのなんだのと」

銀時「だから俺たちがどんだけテメーの名前を叫ぼうが聞く耳も持たねェってわけだ…」

銀時は笑った、ただ可笑しかったのだ、単純なことに気が付いていなかったさやかのことが。

銀時「さやか、テメーが何を勘違いしてるかは知らねーが…戻る場所ならあるじゃねーか」

銀時「笑っちまうほど近くに、手を伸ばせば簡単に届く距離によ……」

それが銀時なりの答え、後悔と悲しみで行き場を失ったさやかを救うための答えだった。

銀時「今は俺たちがテメーの居場所だ…戻ってきやがれ!さやかァァァァァァァァ!!」

---

ここはどこだろう、私は何をやっているんだろう?

暗い、何も見えない、何も聞こえない、何も感じない。

声が聞こえた気がする、暗闇を照らす明るい光を秘めた声が。

『さやかちゃん!』

最初に聞こえたのは……親友の声だった。

『あなたの願いはなんだったか…忘れたわけではないでしょう!』

次に聞こえたのは…あの転校生の声かな?

『美樹さん!私たちの声が聞こえないの!?』

今のは…私が憧れた先輩の声……

『お前言ってたじゃないかよ!自分の選んだ道に後悔なんかしないって!』

これは…最初は私といがみ合ってたあの子だよね。

……そっか、みんな来てくれたんだね。ありがとう。

でも…ごめん、私…もう戻れないよ……あんなに迷惑かけて…自分勝手で…もう私に居場所なんて……

『今は俺たちがテメーの居場所だ』

――――――っ!

――――――今の声は……

『戻ってきやがれ!さやかァァァァァァァァァ!!』

――――――先生

刹那、美樹さやかだったころの思い、それが次第に広がって、過ぎ去りし日々が記憶の紐で貫かれていく。

まどか『せめてさやかちゃんのそばにいられたらって…私…何もできないから……』

ほむら『そんなことをしてもあなたたちの得になることなんて一つもないわ』

杏子『アンタも私と同じ間違いから始まった、そして今も苦しみ続けてる…見てられないんだよ、そんなの』

マミ『その道を歩む途中で…決して折れたりしちゃダメよ』

銀時『そんなにてめーを卑下するもんじゃねーよ』

どうして今まで気が付かなかったんだろう、今まで私は……

みんなからずっと守られてたことに。

---

オクタヴィア「…………」

ふと、あれだけ激しかった魔女の攻撃が止まった。突然のことに全員があっけにとられる。

銀時「何だアイツ…腹でも壊しやがったか?ん?」

『撃って……!』

頭の中に声が響いた、それは聞き覚えのある少女の声。

まどか「さやかちゃん!」

『これ以上みんなを傷つけるなんて私にはできない、だから……!』

杏子「ふざけんな!そんなことしたらアンタがどうなるかわかってんのかよ!」

『危ないのは分かってる…でも、最後はみんなに賭けてみたいの』

本当に自分はただの魔女となってしまったのか…その答えを知るために。

『散々迷惑かけちゃったけど、あと一度だけ…私のわがままを聞いてくれないかな?』

銀時「…………」

銀時「一つだけ確認するぜ」

銀時「明日学校休みやがったら今学期の評定は全部2だからな」

『……約束する、必ず…学校に行くから!』

これでどうなるかは想像もできなかった。だが、少なくともその力強い言葉から少女の決意を感じ取れる。

銀時「上等じゃねーか……俺もテメーの魂に賭けるぜ」

次の瞬間、銀時は木刀を片手に魔女へと飛び掛かり、光のごとき一閃を魔女の顔面に食らわせた。

魔女「アアアアアアアアアアァァァァァァァ…………!」

断末魔の叫びを上げて魔女は倒れこんだ、それと同時に周りを構成する結界も崩壊を始める。

ほむら「結界が消えるということは…魔女は……!」

まどか「さ、さやかちゃんは…さやかちゃんはどうなったの!?」

杏子「わからねぇ…けど、今の私たちには信じるしかないだろ」

マミ「美樹さん……!」

銀時「………………」

魔女の体からグリーフシードが放出される、結界が完全に消え去ったのはそれと同時だった。

ほむら「グリーフ…シード……!」

期待していた、心を取り戻したさやかの魂が再びソウルジェムとなって現れるのではないかと。

だが、現実に現れたのはなんの変哲もない…ただ一つのグリーフシード。

杏子「嘘だろ…こんなのって……!」

すべての望みが絶たれる…まさに絶望の空気が辺りに満ちた瞬間


―――魔女の落としたグリーフシードが蒼く輝いた。


ほむら「!?」

マミ「こ、これは……!」

グリーフシードが光を放つなど、数多の経験がある彼女たちでも初めてみる光景だった。

徐々に強さを増していく光、目もあけていられないほどの閃光が走り全員が一瞬目をそらす。

再び目を開けたその時、

グリーフシードは、粉々に砕け散ったはずのソウルジェムへと変化していた。


---
某所

まどか「これを持たせれば…いいんだよね、ほむらちゃん」

ほむら「通常ならね…でも、今回ばかりは分からないわ」

杏子「な、何でだよ…鉄橋の時はちゃんと意識を取り戻したじゃないか!」

ほむら「あれは肉体的に彼女が死んで間もなかったから…でも今回は少し時間がたっているでしょう?」

マミ「…………」

まどか「さやかちゃん……!」

目を覚ましてと願いを込め、まどかはソウルジェムをさやかの手に握らせた。

さやか「………………」

さやか「…………んっ」

ピクリと指が動き、重く閉じられていた瞼が徐々にあけられていく。

まどか「あ……あ……!」

さやか「……まどか」

まどか「さやかちゃん!!」

それは短かったようで果てしなく長い道のりだった、少女たちの再会。

銀時「今の今まで眠りこけてやがったのかオイ、どんだけ爆睡してんだテメーは」

さやか「……先生」

杏子「よう、無事で何よりじゃないか」

マミ「美樹さん…あなたが無事で…本当に良かった!」

ほむら「ええ、私も二人と同じ気持ちよ」

さやか「…………」

何と言えばいいのか分からなかった、自分のせいであれだけ迷惑をかけ続けたのだ。

命の恩人と呼んでも差し支えない、それだけ大きな貸しを作ってしまった。

さやか「………みんな、その……ごめ…」

……とりあえず謝ろう、そう思い謝罪の言葉を口にしようとした瞬間

銀時「さーて、さやかの奴が休んでた理由も分かったことだし…けーるぞ、お前ら」

さやか「!」

銀時「何言ってんだ、テメーは少し疲れてたせいで今の今まで寝過ごしてた……」

銀時「それを俺たち全員で叩き起こしに来た、ただそんだけだろうが」

ほむら「……そうね、ただそれだけのこと…迷惑なんてかけられてないわ」

マミ「フフ…そうですね」

まどか「でも良かった、これでさやかちゃんも明日からは学校に来れるね!」

さやか「…………」

さやかは何も言うことが出来なかった。

この仲間たちは私を助けるために必死で戦っただけじゃなく、私を助けた後でさえ気を使ってくれている。

今感じている感謝の意を伝えるにふさわしい日本語をさやかは知らなかった。

杏子「…………」

さやか「?」

気が付けば杏子がすぐそばに立っていた、何か自分に言い含めるつもりだろうか?

さやかはそんな想像をしていたが、杏子の口から出てきた言葉は

杏子「そういえば…私、アンタにちゃんと自己紹介ってしてなかったよな?」

杏子「私は佐倉杏子、よろしくね」

一度は共闘することを拒否した、考えの違いから刀を交えたこともあった。

さやか「私は…み…美樹さやか……!」

今では一人が笑いながら照れくさそうに、もう一人は泣きながら感謝の意を込めて

お互いの手を取り合った。

銀時「……ひとまずは、めでたしめでたしってか…」

その様子を見ると侍は、口元で笑みを浮かべながらその場を後にした。


―――本当に神様がいるのなら、変わり続けるのが運命なら

―――信じることで憎しみを消してほしい

―――当たり前にある幸せなんて一つもないよ、僕や君の願いが永遠でありますように


挿入歌…『I、愛、会い』(ghost note)



←ブログ発展のため1クリックお願いします
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://kannki.blog39.fc2.com/tb.php/2847-5a0064c7
    この記事へのトラックバック



    アクセスランキング ブログパーツ レンタルCGI
    /* AA表示 */ .aa{ font-family:"MS Pゴシック","MS PGothic","Mona","mona-gothic-jisx0208.1990-0",sans-serif; font-size:16px; line-height:18px; }