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仮面ライダー ―『約束 2011』― 第3話『理由』

2012年01月04日 19:15

仮面ライダー ―『約束 2011』―(魔法少女まどか☆マギカ×小説版仮面ライダー)

101 :◆U7CDgQgh.w [saga]:2011/06/03(金) 22:58:30.21 ID:aDNxyGJF0

―――株式会社『スマートブレイン』

緑川財閥の子会社をその発祥とするこの大企業は、暖簾分けの元である緑川と一定の関係を保ちつつも、独自の事業を展開し、今や世界有数の規模を誇る、重工業と電子技術を主力とする巨大コングロマリットであり、その経済力、影響力は、世界各地に及んでいる。

日本人であれば誰でも知っている様な大企業であり、さらには世界各地でその名を知られた『スマートブレイン』。

しかしこの企業の持つ『裏の顔』を知る人間は、その知名度に反し、思いの外少ない。
総帥たる『美崎百合子』の指揮下、秘密組織『少女結社サクラ』を基に起業時した時より、一貫して掲げ、実行してきた、『スマートブレイン』の理念、そして活動…それは―――

―――『新人類(オルフェノク)』たる『超能力者』の保護と、社会への復帰
―――そして…彼らの生存すら許さない『ショッカー』並びに『GOD機関』への抵抗運動

『新人類』による『秘密結社』……それが『スマートブレイン』のもう一つの顔。

そして、現在、『ショッカー』の魔の手から保護すべき対象として新たに加わった存在がいる。
人と創造主(インキュベーター)は彼女達を―――『魔法少女』と呼び、『ショッカー/GOD機関』は、『未覚醒者/蛹体/ギルス』と呼んだ。

果たして…『魔法少女』をその主軸に新たに始まった、二つの勢力の暗下での抗争の中心地は、『見滝原』なる地に集約されていく。


そこに居る…一人の少女―――『鹿目まどか』を中心に




仮面ライダー ―『約束 2011』― 第3話『理由』




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―――本郷猛、佐倉杏子が見滝原中学校を訪れる『1週間前』

『スマートブレイン』の『見滝原支社』を訪れ、その巨大なビルを正面入り口の近くから見上げる巴マミの表情には、微かな緊張の色が浮かんでいる

ここを訪れる様になって既に『1週間』経つが、多少裕福な家庭の生まれとはいえ、一女子中学生に過ぎないマミが一人で訪れるには、『スマートブレイン』と言う企業は些か大きすぎ、故に、未だに何となく肩を張ってしまい、緊張がほぐれる事が無い。

学校の帰りなのか…制服姿のままなので、余計にこの会社周辺の空気から彼女が浮いてしまっているのが、余計に彼女の緊張を高めているらしかった。

大きなガラス張りの自動ドアを潜ると、やはり豪勢で清潔な造りのエントランスが迎えてくれる。
フロントにIDを掲示すれば、マミは難なく中へと通される。

途中すれ違う…スーツ姿の『普通の社員』には、何でこんな所に子供が、と言った視線に曝される為に、何とは無い気まずさと緊張は、余計に強くなってしまった。

まあ良い。目的地に着くまでの辛抱なのだから。

乗り込んだ高速エレベーターが彼女を最上階まで運ぶ。
降りる階を指定するパネルにはカードスロットがあり、エレベーターを一つ乗るだけでも、先程フロントで提示したIDカードとは別のカードを使わねばならない。

さらにはエレベーター内には監視カメラもあり、社内の随所随所には、密かに銃器で武装された警備員も巡回しており、その警備体制は非常に厳重だ。

しかし、マミが伝え聞いた話によれば、これほどにも厳戒な警備体制も、本気を出した『連中』には何の役にも立たないのだと言う。

さらに言えば…『スマートブレイン』の役員会にも、
『連中』の息の掛った人間が何人かいるという話であった。
『連中』との交渉用のパイプとして、敢えて黙認しているらしいが、
それにしても恐るべきは『連中』…『ショッカー』の手の長さよ。

如何に『魔法少女』…それもベテランのマミと言えど、
『スマートブレイン』の支援が無くば、当の昔に奴らに捕まるか、抹殺されるかしていただろう。

今、巴マミはこの『スマートブレイン』に保護される立場にある。
今より一週間程前、本郷に連中の魔の手から助けられた彼女は、この世界の裏側に蟠る『闇』の深さを知った。
そしてその『闇』が…自分達『魔法少女』をその標的とし始めた事も―――

「…………」

マミは、さる部屋へと通じる分厚い扉の前に立つ。
その扉には大きな金属プレートが取り付けられ、『支社長室』と、刻まれていた。

マミは、ノックして、ドアノブを回した。





『支社長』たる『村上峡児』氏の姿はそこには見えず、
巨大な白く現代的なデザインのシステムデスクには人の姿は無い。

その代わりに、部屋の中に設けられた大きな来客用のソファーには、
でっかりと腰を下ろした少女が一人おり、その対面には、黒っぽい服装の、
ゴマ塩頭の年七〇程の老人が一人座り、さらに壁にもたれ掛る様にして、一人の男が立っていた。

少女、佐倉杏子は、ズルズルと食していた『赤いきつね』から口を離して

「よぉ……学校終わったのか?」
「えぇ……それにしても佐倉さん」
「こんな中途半端な時間にお食事?」
「昼ごはんには遅いし、夜ごはんには早いんじゃないかしら?」
「こんなモンおやつだよ、おやつ」
「人間生きてりゃ腹だって減るもんだしなぁ~~」

そうマミへと答える杏子の前のガラスの机には、
既に食べ終わっている『緑のたぬき』と『どん兵衛』の空容器が置かれており、
つまりはこれで既に三杯目だ。おやつにしてはいささか量が多すぎる。

「そんなモノをこんな時間にそれだけ食べてたら……太るわよ」
「良いんだよ…どうせ後で体動かすんだから…これぐらい食っても大丈夫なんだよ」

「しかし何だな―――」

ここで、マミと杏子の会話に割り込んで来たのは、杏子の正面に座ったゴマ塩頭の老人だ。
顔かたちから察するに、前述したように年は七〇歳あたりと思われるが、
そんな高齢とは思われぬ程に背筋は定規でも入れた様にピンとして、
肩幅も大きく、かなりがっしりとした体格だ。黒色を基調とした服に全身に覆われた体には、
まだ中々に立派な筋肉が隠れている様に思われる。
ようするに、年齢よりも遥かに元気そうな老人であった。

「食費程度でぐちぐち言う会社でも無し」
「腹減るのは構わんが…別にもう少し上等なモノを食べてもいいんだぞ?」
「若い身空で、インスタントばかりじゃ体壊しちまうだろ」

そんな老人の言葉に対し、杏子。

「良いんだよ…別にこれで」
「あんまり美味しいモンばっかり食っちまうと、かえって舌が馬鹿になっちゃうんだよ」
「そんなもんかね?」
「そんなもんなのさ…滝のじっちゃん」

佐倉杏子は生まれが貧乏が為か、食い意地が張っている割には、
食べたいと望むモノは庶民的なモノばかりで、まるで高望みをしない。
殆ど路上生活同然の流離いの暮らしが長く続き過ぎた為か、貧乏性が板についてしまっているらしかった。

さて、杏子から『滝のじっちゃん』と呼ばれたこの男……正確にはその名を『滝和也』と言う。
年齢は今年で『70』。もう隠居してもいい年齢だが…その実、いまだ現役、戦歴『五十年』近くに及ぶ大ベテランの『兵士』だ。
かつては『アンチショッカー同盟』に所属したコマンド部隊の隊長であり、
はや『四十年』近く、本郷猛の『戦友』を務めてきたこの男は、現在では『スマートブレイン』に所属し、
その極秘私設戦闘集団である『S.W.A.T.(Smartbrain Weapon Assault Team/スマートブレイン武装突撃部隊)』の司令官を務めている。

熾烈を極める『ショッカー』との闘争における当事者の死傷率は非常に高く、
その最前線にありながら『五十年』もの長きにわたって戦い続けた滝の存在は、
もはや『奇跡』と言ってよく、彼自身、自分がこんな歳まで生き長らえた事を信じられず驚く程だ。

『アンチショッカー同盟』や『緑川財閥』…そして『スマートブレイン』の構成員には、
本郷とは違った意味で、『伝説の兵士』として畏怖と憧憬の対象となっている老兵であった。

「マミ」
「ごきげんよう…猛さん」
「紅茶でも入れます?」
「いや……いい」
「そう…滝さんや佐倉さんはどうかしら?」
「んーーー……それじゃもらおうか」
「アタシはいーや…ウドンノシルノムシ」

最後に残った壁にもたれかかった男は…言うまでも無く『本郷猛』。
『ショッカー』と戦う者にとっては…『抵抗』と『自由』の象徴とも言える存在…『仮面ライダー』その人である。

厚手のジャンパーに、濃紺のカーゴパンツと、地味な格好の彼だが、
ただそこに立っているだけで絵になるのは、その男前な姿の故だろう。

マミは彼の事を親しみを込めて『猛さん』と呼ぶ。
一週間前のあの夜の事は…今も鮮烈にマミの眼裏に焼きついている。
以来、マミとっての本郷は、強烈な『憧れ』の対象であった。
少なくとも…彼女が『仮面ライダー見習い』を名乗る程には、である。

ちなみに…杏子が『スマートブレイン』に拾われたのは今からさらに『一か月半』程前の事。
マミと同様に、『ショッカー』の『改造人間』部隊に襲撃され、
『魔女』との勝手の違いに苦戦を強いられていた彼女を、本郷が救出したのであるが、
実は彼女こそが、『スマートブレイン』の保護した最初の『魔法少女』であったのだ。





―――そもそもの事の始まりは『半年前』までに遡る。

『ショッカー』が…『超能力者』に続いて…新たな『標的』を狩り始めた、
と言う情報が緑川財閥経由で『スマートブレイン』に伝えられたのがソレである。

『ショッカー』の『超能力者狩り』に対し、
『スマートブレイン』は予知能力者や、テレパス能力者の会社職員を縦横無尽に駆使し、
出来るだけ、『ショッカー』が『超能力者』を割り出す前に保護する、と言う反抗作戦を長らく取ってきた訳であり、
その方法論は、長い闘争の歴史で、ある程度、定式が確立するまでに至っていた訳だが、
『ショッカー』のこの新機軸の『人間狩り』に対して『スマートブレイン』は、当初後手に回っていた。

この新たなる『ショッカー』の標的は、これまでの『スマートブレイン』の保護基準、
対『人間狩り』ドクトリンから大きく外れたモノだったからである。

そんな『スマートブレイン』も、超能力者達、並びに情報分析官達の必死の努力の末、
遂に『魔法少女』の存在を確認し、彼女達が…恐らくは『新人類(オルフェノク)』の一種、
『超能力者』とは違う進化の道を辿った者達であるという結論に至ったのである。

そして『一か月半』前、遂に佐倉杏子の保護に成功したのである。
現在では、杏子、マミを含めて、都合10人程の『魔法少女』が、『スマートブレイン』の保護下に入っているが、『ショッカー』と『スマートブレイン』の抗争は熾烈を極め、救う事の出来なかった『魔法少女』も少なくない。

さらに…何処で聞きつけたか、第3勢力たる『ZECT』も、この『魔法少女狩り』に参加した為に、
状況はより一層、混沌としていた。

―――『ZECT』
『汎地球的文明防衛機構/Zareba of Every Cultural Terrestrial』を名乗るこの組織は、
『アンチショッカー同盟』を起源とする機関であり、『スマートブレイン』、『緑川財閥』とは、
非常に微妙な関係の間柄であった。

かつて『アンチショッカー同盟』と呼ばれていた組織は現在、
『A.S.A.(Anti Shocker Alliance)』と総称され、その構成単位として様々な組織を内包している。

例えばそれは前述した『ZECT』であり、それ以外にも数多存在する、
『BOARD』、『素晴らしき青空の会』といった組織がそうである。

元々、寄り合い所帯であった『アンチショッカー同盟』は、
本郷が一時籍を置いた1971年以来の40年間で、大きく成長し、
こと冷戦終結後のグローバル化の時代においては、その規模の拡大は急激なものとなっていた。

その結果、『同盟』内部でのセクト間の対立や主義の違いが顕在化、
そうした派閥が各々組織を設立し、『同盟』はそれを纏める緩やかな紐帯へと変化したのである。

現在、旧『同盟』、現『A.S.A.』の日本地区における大きな派閥は、全部で4つ。
緑川ルリ子を総帥とする『緑川財閥』と、その系譜に連なる『スマートブレイン』。
高見沢逸郎を総帥とする『高見沢グループ』の息を受けた『ZECT』。
天王路博史を総帥とする『天王路コンツェルン』の息を受けた『BOARD』。
大富豪、嶋護をその創始者にしてリーダーとする『素晴らしき青空の会』。

かつての『アンチショッカー同盟』も、
あくまで出資者の『利益』を追求する為に『ショッカー』と戦う組織であった様に、
現『A.S.A.』もそれは変わらず、むしろ、規模大きくなりセクト化が進んだ現在においては、その傾向が一層強まっている。

故にセクト間で水面下どころか、露骨な内ゲバを演じる事も少なくない。

『ショッカー』の『魔法少女狩り』に対し、
『ZECT』は『ショッカー』と裏取引でもあったのか、はたまた独自の理由があるのか、
同じ『A.S.A.』内の組織であり、『保護』を基本方針とする『緑川財閥/スマートブレイン』とは逆に、
『ショッカー』と同調して『魔法少女狩り』を推進する立場を取っていた。

緑川ルリ子自らが陣頭に立って『魔法少女狩り』から手を引くよう、
『ZECT』との交渉に当たっているらしいが、現状では余り芳しくは無い。

そして『BOARD』、『素晴らしき青空の会』は静観の立場を取り、
『スマートブレイン』、『ZECT』の両組織の趨勢を見て、どちらの立場を取るのかを決めるつもりなのだろう。

『スマートブレイン』程の大企業が動いていながら、未だに魔法少女を10人程度しか保護できていないのは、
こうした『A.S.A.』内部のセクト間の争いが大きな原因の一つであったのだ。

―――閑話休題

兎も角、こうした暗闘の中、杏子が本郷に保護されたのを切っ掛けに、
彼女の持つ人脈や風聞を頼りに、何とか『スマートブレイン』は、
杏子、マミを含む10人の魔法少女を保護した訳である。

一匹狼であり、故に警戒心が非常に強く、
また、生い立ちや性格の問題もあって、
本郷達にも当初は中々心を開かなかった杏子だが、
紆余曲折あって、今では本郷の事を『旦那』、滝の事を『じっちゃん』と呼ぶほどに、彼らになついていた。

ちなみに、杏子はマミと違って『仮面ライダー見習い』とは名乗っていない。

「―――それで…今日は何か、特別な御話があるって伺ってたんですけど?」

滝と自分の為に入れた紅茶を一通り楽しんだ後、マミは本郷の方を向いてそう問うた。
マミの紅茶を淹れる腕は中々のモノである。滝はその匂いと味にご満悦な様子だ。

「んーーー……そう言えばまだアタシも聞いてなかったな?」
「随分と重要な話だって言ってたけど…いい加減もったいぶらないで教えてくれよ、本郷の旦那」

うどんの汁も飲み終わった杏子が、空き容器を片付けながら、マミの問いに続いた。

「それは――――」

2人の問いに、本郷が答えようとした、その時である。

『その先は…私が話しますよ、本郷さん』

突如響いた、本郷のものでも、滝のものでも、
杏子のものでも、マミのものでも、つまりはこの部屋の人間の誰のものでもない、
本当に唐突で突然な女の声に、マミと杏子はガバッと声の方を向いた。

『魔法少女』2人の感覚を如何にして誤魔化したのか……

村上支社長の不在の為に、誰も座っていなかった支社長席に、
まるで『突然出現した』様に、妙齢の女性が独り、腰掛けている。

咄嗟に『変身』しようとするマミと杏子を、本郷が手で制した。

「大丈夫だ……彼女は敵じゃない」

その闖入者の女性を見る本郷の視線は優しく、
対して、本郷を見返す女性の視線には本郷への信頼があった。

「久しぶりですね…2週間ほどでしょうか?」
「本当は、もっと早くに彼女達とも顔を合わせるつもりだったのですけど…」
「花形さんや村上さん、そして滝さんに本郷さんに任せ切りになっていましたね」

「いや…問題は無い」
「それにしても…大丈夫だったのか?」
「今は、特に忙しいだろうに…」

本郷は、女性の名前を呼んだ。

「―――『美崎百合子』」

『超能力少女』…『美崎百合子』。
そして、『スマートブレイン』の現総帥こそが、彼女であった。



「―――うわぁ……素敵な部屋…」
「少し散らかってるんだけど…ごめんなさいね」
「最近は、少しどたばたしちゃってたから」

「…………」

ほむら、さやか、まどか、の三人は、
一先ず事情を説明したいからついて来て欲しい、と言うマミ、杏子、
そして本郷の言葉に従ってマミの住むマンションを訪れていた。

「…………」

ほむらにとっては、『魔法少女』のまどかと初めて出会った後に訪れた、
色々な意味で思い出深い場所である巴マミの部屋―――

ほむらがこの部屋を訪れるのは、本当に『久しぶり』の事であった。

「…………」

まどか、さやかに続いてほむらも玄関の敷居を潜る。
『魔法少女』であると言う事実は、まだほむらは誰にも明かしていない。
状況が状況だけに、迂闊に明かすのも危険だと判断したからだが、
『キュゥべえ』と遭遇していればどのみちバレる所も、幸か不幸か、
まどかを呼び出して置きながら、『魔女』を斃した後にも、奴は姿を現さなかった。

『本郷猛』というイレギュラーの存在が、奴に姿を現すのを躊躇わせたのか…
真相は不明だが、現状では好都合でもある。

さて、マミの部屋の中に入ったほむらであったが、
彼女の知る巴マミは孤児故の独り暮らしであり、
つまりは、こうして訪ねても、部屋の中にはマミ以外は居ない筈なのだが…

「おう……帰ってきたか」
「ととと…おまけにお客さんが……3人かな」

『先客』なのか、『同居人』なのかはほむらは知らないが、
ほむらの見知らぬ男が1人、マミの部屋の中に居た。

ゴマ塩頭の、黒い服の老人で、カーペットの上に胡坐をかき、緑茶を一杯啜っている所であった。

マミ、本郷を先頭に、杏子、さやか、まどか、そしてほむらの順にどやどやと入ってきた一行に、 老人は湯呑をガラスの机の上に置いて上の様に声を掛けた。

「ええ滝さん、ただいま」
「お客さんにおもてなしをしたいから、手伝って下さるかしら?」
「よしきた」

キッチンの方へと消えて行くマミの後を追う、
『滝』と呼ばれた老人の様子を見るに、彼とマミとは友好関係あるらしいとほむらは見る。

「あー…どっこいしょ」
「ちょっとアンコちゃん…いくら何でもその言い方はおばさん臭くない?」
「まだ若い身空でそりゃないよ」
「だからアンコじゃ―――もういいや、面倒クセぇ…アンコでいいよアンコで」

勝手知ったる、といった調子の自然さと気軽さで、杏子は長椅子にどっかりと腰をおろし、
それに続けて本郷はカーペットの上に胡坐をかいて、まどか、さやかもそれに倣った。
と言っても、女の子なので、女座り、あひる座りであるが、はむらもそれに続き、
彼女だけは背筋をただして正座した。

「――――それで……」
「説明…してくれるのかしら?」

さやか、まどかが何かを言う前に、ほむらが最初に口火を切る。
まどかと『魔法少女』―――あの『姿』を見て、そう言っていいものか微妙だが―――が接触してしまった以上、
今、ほむらの為すべき事は、彼女をこの陰の戦いから全力で遠ざける事である。
その為にも、この場での会話の主導権は、上手く握らねばなるまい。
この余りにも『不確定要素』の多い時間軸における、イレギュラー達の情報を、少しでも積極的に得る為にもだ。

幸い、あの厄介な白い獣はここに居ない。
まどかを自分から呼び出して来て置いて姿を現さないとは、一体どういう料簡なのかは知らないが、
こっちにとっては非常に好都合であった。

「あの空間は何?あの化け物は何?」
「巴先輩に、本郷先生に、佐倉杏子」
「貴方達は何者?」

「ちょ…ちょっと!!ほむらちゃん!?」
「ちょっと転校生!?助けてくれた恩人にそんな口のききかたが―――」

「あなた達は少しだけ静かにしてて……大事な事だから」

いつも通りの静かな、しかし険のある口調で、杏子、本郷に問うほむらの姿に、
まどかがおろおろと混乱し、さやかが『ナニッテンダ!?フザケルナ』な様子なのを片手で制しつつ、
ほむらは飽くまでその態度を変えない。

自分が『魔法少女』である事を、ここで明かすつもりはほむらには無い。
杏子あたりが気が付いているかもしれないが、あくまでシラを切るつもりだ。

あくまで『巻き込まれた一般人』の立場から、
その立場を盾にして彼らより情報を引き出し、
『魔法少女』の危険性を殊更に煽り立て、
まどか、さやかに契約の意思を、少しでも無くさせるのが、ほむらの狙いであった。
ほむらの知っている佐倉杏子は、そもそも『魔法少女』が増える事に好意的ではなかった筈である。
『いつも』とは違い、上手く行くかも知れない。そう、思った。

さて、そんな風なほむらの問いに対して杏子、本郷は、と言うと、

「………どーーしたモンかねぇ?旦那」
「…………」

と、ポケットから取り出したハイチュウをモグモグと噛みながら、
杏子は傍らの本郷へと意見を求める様に視線を向けた。
本郷は、腕を組みながら、何かを考えている様子であった。

「…………」

暁美ほむらは、注意深く、そんな本郷の様子を観察する。

―――マミの使っていた『ベルト』は何なのか
―――あの奇妙なサイドカーは何なのか
―――佐倉杏子とはどういう関係なのか

など、ほむらの聞きだしたい情報は数多くあるが……

「(それ以上に気になるのは)」
「(彼が何者かということよ)」

―――『本郷猛』
見滝原中の臨時教員であり、『魔法少女』の世界には本来居ない筈の、『大人』の『男』。
いまや、ほむらの関心の最大の焦点は、杏子やマミから彼へと移っていた。

『魔法少女の世界』は…徹頭徹尾『少女だけの世界』だ。
そこには被害者という形以外で、男性や、大人の入り込む余地は無い…筈だ。

しかし…その、これまでの全ての『ループ』内で絶対不変の摂理であった筈のモノは、今、ここで崩れ去った。
故に、ほむらは強い関心を向ける。本郷猛、ルールを破壊した、初めての存在に。

「――――」

本郷が、何かを言おうとした、その時であった。

「色々と話さなきゃならない事もあるし」
「色々と聞きたい事もあるでしょうけど」

滝ともども、ケーキと紅茶の入ったカップを乗せたお盆をもったマミが、

「まずは……お茶とケーキにしましょうよ」
「親睦を深める為に。それと、リラックスする為にね」

ほむらの良く知る余裕のある微笑みを浮かべながら、
お盆を、ガラスの机の上に乗せた。





『では……本郷猛は鹿目まどかと接触し』
『「魔女空間」に誘い込まれ…「魔法少女」とも接触した、か』
『そういう事でいいのかね』

「はい。現状ではそういう事になります」

『ショッカー』の構成員にして、表向きは見滝原警察署に所属する刑事である『須藤雅史』は、
モニター越しでも充分に自分を威圧する、濁った色の視線に、思わずハンカチで額の汗を拭っていた。

職業柄、それこそあらゆる職種の人間と、時には暴力団の構成員だとか、会社の社長だとかとも出会う事があり、
故に、どんな地位にあろうとも、どんな職種にあろうとも、大概の人間には常と変わらぬ平然さで付き合う事の出来る須藤であったが、
今、彼の眼の前の通信用モニターに映し出された、この老人と顔を合わせるのだけは未だに苦手であった。

『ショッカー』内部での地位の差、と言うのもあるが、それ以上に、
この老人の放つ、あらゆる意味で『人間離れ』した気配が、須藤は苦手であった。
『ショッカー』の上級構成員となれば、外見からして『人間離れ』した『改造人間』が多いのは当然で、
故に須藤も、大概の『改造人間』では驚かないが、この老人気配として放つまでのの『非人間性』は、
『改造人間』である、という事だけでは説明がつくまい。

恐らく須藤を恐れさせるのは…この老人の、気配として出る程の『精神の非人間性』であろう。
須藤も大概に『悪党』であり『外道』であるが、この老人には遠く及ぶまい。

自分など、この『怪人』を前にすればケチな小悪党に過ぎない。
この『怪老人』……『博士』を前にすれば。

まず、その容姿からして『怪物』染みている。
白髪の多い、オールバックの総髪は、後ろで渦を巻いて恐ろしげな様相を呈し、
尖った耳、尖った顎、濁った色の双眸などは、その襟の高い独特の裏地赤の黒マントと、
白い礼服と相まって、まるで『吸血鬼』とでも相対してるような印象を相手に与えるのだ。

事実…この『博士』は『吸血鬼』であった。
もはや数える事も出来ない人間を…その『実験』の犠牲にして来たという意味において……

『ふむ……「仮面ライダー」が絡んで来たのは面倒ではあるが』
『問題はあるまい。所詮は想定の範囲内だ』

手にしたステッキを弄ぶ…この『博士』と言う老人。
この老人こそが、現『ショッカー日本支部』の、二大巨頭とでも言うべき2人のリーダー格の片割れを為している。
秀才、天才の研究者ばかりを集めた『ショッカー』直属の研究機関に身を置きながら、
ただ一人『博士』と名乗る事を許されたこの男は、かつては『御子柴徹』と言う名の一研究員に過ぎず、
先代の『博士』の側近にして、二大巨頭のもう片方たる『大使』の部下に過ぎない男であったと言うが、
どういう紆余曲折を経たのか、ショッカー日本支部の指導者の地位に収まっていた。

かつては『ショッカー』所属の研究員にしては『常識的』で、比較的『良心的』な男だったと言うが、
時間が彼を変えてしまったのか、今のこの博士には、それを感じさせる要素は一切無い。

ここにいる『博士』は…冷酷無比な『吸血鬼』に他ならないのだ。

『よし……須藤君、君は現状維持で待機していたまえ』
『「仮面ライダー」が出張って来た以上、私が直接そちらにおもむいて、指揮を取ろう』

「『博士』が?」

須藤は内心で嫌そうな顔をした。
この『博士』の隣で仕事をするなど、まっぴらごめんであった。
こうして、モニター越しに会話するだけでも嫌なのに、直接顔を合わせるなど……

「了解しました。お待ちしております」

しかし、嫌と言えないのが、『勤め人』のつらい所であった。





「さて―――それじゃあ」
「そろそろ…お話と行きましょうか」

と、まどか、さやか、ほむらがそれぞれのケーキと紅茶を食べ終え、飲み終えたのを確認すれば、マミは、パンと手を叩きながらそう切り出した。

滝、本郷はマミが話を始めんとするのを見て、それぞれのティーカップをガラスの机の上に置き、真剣で真面目な面持ちとなったが、杏子だけは嬉しそうな顔でケーキのおかわりをパクついていた。
説明はマミ達に丸投げするつもりであるらしい。

「ええ……さっきは中断されてしまったけど」
「色々と聞きたい事があるから」

と、そんなマミの切りだしにズズいと応じたのはやはりほむらであった。
ケーキを見て食べたそうな眼をしたまどかに押されて思わず自分も呑気にケーキを味わってしまい、それでマミやまどかと『初めて』出会った時の事を思い出して、色々と胸が一杯になりそうになったり、それを自慢の鉄面皮で必死に覆い隠したりと、やや本来の予定から脱線してしまったほむらだが、それでも、自分の為すべきと決めた事を忘れた訳では無かった。

「あんた……ほんとに良く食うわねぇ」
「ん?…やらねぇぞ」
「いらないわよ!?さやかちゃんはそんなに意地汚くありません!!」

我関せずとケーキを頬張る杏子、それを横目に呆れた様子のさやか、そんな2人を温かい微笑みと共に見守るまどか、と、先程に比べれば明らかに場の空気は弛緩しているが、問題無い。

自分はただ、聞くべき事を聞くだけである。

「―――それで」
「結局……貴方達は何者、なの?」

そう聞くほむらに対し、マミはちょっとだけ考えた様子を見せつつ、本郷の方をチラリと流し見た。
本郷がそれに頷くのを見れば、マミは例の余裕の感じれる口調で、こう名乗った。

「そうねぇ……私達には色々と『肩書』があるけれども」
「強いて名乗るならば……」

「『スマートブレイン』の……『魔法少女』かしら」

―――『魔法少女』
成程、この名乗りには何の問題は無いが……

「(また…『スマートブレイン』……)」

これまでのほむらの経験してきた『ループ』の中では、影も形も無かった筈の『要素』…大企業『スマートブレイン』。
佐倉杏子がこの見滝原に『転校』してきたのも、この企業が関わっていると言うが……

「『スマートブレイン』って……あの、テレビでもたくさんCMをやってる…」
「あの『スマートブレイン』?大企業の?それに…『魔法少女』?」

この時間軸のさやか、まどかにとっては自明の常識らしい大企業の『スマートブレイン』の名前と『魔法少女』なんていう言葉の響き『だけ』ならばファンシーな単語が一緒に出て来た事で、2人は若干混乱しているらしい。
ましてや…2人の見たマミの『変身』した姿は『X(カイ)を象った鎧騎士』の姿であった。
その格好で『魔法少女』などと名乗られても、頭に疑問符が浮かんでも仕方がないであろう。

「………『魔法少女』っても…お前らの想像する様なのとは違うのさ」
「特に、アタシらみたいなのはな」

と、ここでケーキのおかわりを食べ終えた杏子が、つまようじでシーシーと歯の間を掃除しながら、話に参加してきた。
どうでもいいが、えらく仕草がオヤジ臭い杏子である。
仮に『オッサン臭い』などと言おうものなら『私は22だ。オッサンと呼ぶのはやめなさい。不愉快だ』と言った内容の事を、彼女の崩れた言葉遣いで返してくるだろうが。

――――閑話休題

「ていうか…マミさん、『仮面ライダー』の『変身ベルト』みたいのなので変身してましたよね?」
「つまり…あれですか?今時の『魔法少女』ってのは装備もハイテクって訳ですか?」
「て言うか…マミさん自身が…『仮面ライダー見習い』って名乗ってましたし」
「あんこも…何か変な…『魔法』というか…『超能力』みたいの使ってたし…」

「杏子ちゃんも…その…『魔法少女』…なのかな?」

2人は戸惑いつつも、それぞれの問いを発し、それに続けて…

「それも気になるけれども…」
「それよりも…本郷先生」
「貴方は…何者なんですか?」
「マミ…先輩や、佐倉さんとは…どういう関係なんですか?」

と、ほむらも問う。

3人、それぞれの問いに、まず最初に答えたのはマミであった。

「そうね……まずは…色々と見て貰うとこらから始めましょうか」

そう言うとマミは、背後より一つのトランクケースをいそいそと取り出し、ガラスの机の上に置いた。
銀と白と黒の意匠のトランクには、『スマートブレイン』のロゴがあしらわれている。

マミがそれを開ければ、中には先程までマミが腰につけていたベルト、携帯電話、
十字状の特殊銃、デジタルカメラ、デジタル双眼鏡の、以上の5点が納められていた。

「これは……『カイザギア』」
「『スマートブレイン』が『魔法少女』用に開発した支援変身ツール…」
「これと―――」

と、言いつつ、マミが懐より続けて取りだしたのは、黄金色に輝く小さな卵型の宝珠である。
その眩いばかりの輝きに、さやかとまどかの方からふぁ~と感動の溜息が聞こえた。

「この『ソウルジェム』を組み合わせる事で…」
「私は『仮面ライダーカイザ(仮)』に変身する事が出来るの」

「………」

ほむらは『「変身ベルト」とは……興味深い』ってな視線で、『カイザギア』を凝視していた。
魔法少女歴の長さという観点では、恐らく史上最長であろうほむらであるが、こんな物を見るは初めての経験である。

「アタシら『魔法少女』は…『ソウルジェム』もしくは」
「『ライダースギア』によって……『変身』して」
「『魔女』と戦うのさ」

そう、マミに続けて言ったのは佐倉杏子である。

「『魔法少女』……」
「『アタシら』って事は…杏子ちゃんも……」

「『魔女』って……あの気持ち悪い化け物の事なの?」
「て、言うか『魔法少女』なのか『仮面ライダー』なのかハッキリしなさいよ」

「………」

それに対する反応は以下の通り。
上から順に、まどか、さやか、ほむら、である。
そして、ここで、ほむらも改めて口を開いた。

「巴先輩や、佐倉杏子が『魔法少女』とやらなのは解ったわ」
「それじゃぁ……本郷先生は何者なんです?」
「そちらの…滝さんも」

今、ほむらが聞きたい最大の関心事に関する問いである。
そんな問いを、ほむらが発した、丁度、その時であった。

『――――それは……僕も聞きたい所だね』

と、何の前触れも無く飛び込んで来たのは、
少女の様な、あるいは変声期前の少年の様な声である。

突然響いて来たその声に、
今、この場に居た全ての人間の内、滝和也を除く全ての人間が、
つまり、まどか、さやか、ほむら、杏子、マミ、そして『本郷』が、一斉に反応し、その声の方向を向いたのだ。

一同の視線の先にあるのは、開け放たれてそよ風の入り込むベランダへと通じる窓の、
サッシの上に、何時の間にか、音も無く出現してた、白く小さな獣の姿……

ルビーの様に赤く、丸く、そして瞬かない瞳。
独特の質感を持った、白い毛並みの、猫を連想させる形質を持った体躯。

ほむらはソイツの姿を見た瞬間、思わず『盾』の内より拳銃を引き抜きそうになるのを、まどか達の手前、抑えるのに必死であった。

この闖入者……言うまでも無い。

「お前は……」
「あら……随分と久しぶりね」

―――暁美ほむらの…いや、地球人類にとって怨敵たる敵性宇宙人

「『キュゥべえ』」

―――『キュゥべえ』こと『インキュベーター』
この世界における、ある意味『全ての元凶』たる存在が、その姿を鹿目まどか達の前に遂に現したのであった。


エター

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