マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」 その24

2011年10月01日 19:28

マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」二機目

329 :>>1 ◆/yjHQy.odQ [saga]:2011/06/12(日) 01:35:02.64 ID:Mf7/9J8AO

―AEU軌道エレベーター・アフリカタワー―

マネキン「……」

軌道エレベーターの頂部一室、カティ・マネキンは今回のブリティッシュ作戦に於ける報告書を纏めていた

マネキン「……」

細くしなやかな指がコンソールを叩き、PCの画面へと情報を次々に詰め込んでいく
あれから一週間、世界は仇敵ガンダムの消滅に沸き立ち、統一という目標に向けひた走っている
だがマネキンからすれば、それほど楽観的になれる状況では当然有り得ない

マネキン「……」ピッ

記録上全てのガンダムを撃破したのは確かだが、ガンダムの動力源である太陽炉は一基さえも手に入らなかった
それだけではない、ソレスタルビーイングという組織の内情も、バックに存在したであろう協力者達の存在すら判明してはいないのだ
このままソレスタルビーイングが活動しないと高をくくるのがどれだけ危険なことか……勿論マネキンは報告書にもそれを記載していく
唯一捕らえられたパイロットも、恐らくは何も話しはしないだろうし、知らされてすらいまい
まるで機械のように統制された組織、マネキンは嫌悪にも似た感情を抱いた

マネキン「ふう……」

マネキン(とりあえずは、これぐらいで良いだろう)

マネキン(これから世界は大きなうねりの中に飲まれていく)

マネキン(その中で私が出来ること……)

ピッ

マネキン「! 通信、これはスミルノフ中佐?」

マネキン「……」

ピッ

セルゲイ『済まないな大佐、今は大丈夫だったかな?』

マネキン「スミルノフ中佐、その階級章は……」

セルゲイ『ん、あぁ……今回のガンダム撃破と回収の功績により昇進してな』

セルゲイ『私一人の手柄にしてしまったようであまり喜べる状況でも無いのが何ともな』

マネキン「いえ、おめでとうございます大佐。スミルノフ大佐の昇進を聞けばピーリス少尉も喜びましょう」

セルゲイ『うむ……』

セルゲイ『それで、例の件だが』

マネキン「はい」

PiPi

セルゲイ『ッ!』

セルゲイ『これが、例の……?』

マネキン「はい」

マネキン「ブリティッシュ作戦の最終決戦時……ダリル・ダッジ准尉が遭遇したMSです」

マネキン「この緑色と薄青のアンノウンMS、明らかに人革連側の技術が転用されています」

マネキン「国連軍に寄せられたデータベースに照らし合わせた結果、緑色のアンノウンは該当しなかったものの、もう片方のMSは以前コンペに提出された試験MS【ヅダ】であることが確認されました」

セルゲイ『……』

マネキン「大佐、ヅダの開発者は……」

セルゲイ『デュバル少佐は、一ヶ月前からその所在が不明になっている』

マネキン「そう、ですか」

セルゲイ『……火種はまだくすぶっている、ということか』

マネキン「我々の仕事はまだまだ残されています。ガンダムを倒したとしても、世界は統一の過程で少なからず歪み、人々はその歪みの中で争いの火に呑まれていく」

セルゲイ『戦火に喘ぐ市民を護るのが我々軍人の責務だ。それは今までも、これからも変わらない』

セルゲイ『だがそれは我々自ら志願した大人によって為されるべきこと……何も知らぬ子供まで巻き込む必要は無い』

マネキン「……先日判明した、超兵の生き残りですか?」

セルゲイ『あぁ』

セルゲイ『少年が三名、生存が確認された。統合が現実味を帯びた為恥部を残す必要が無いと判断したのかは知らんが』

セルゲイ『情けない話だ……我々人革連は、償わなければならない罪をまた一つ抱えてしまった』

マネキン「それは我々も同じです。再燃する可能性のある紛争地域は我々の領地が半数を占めており、PMCトラストの解体も反対派が各地で抵抗しているため難航を極めている」

マネキン「強制された変革により、我々は自らの業を見せつけられている……」

セルゲイ『これも、ガンダムの目的だったのかな』

マネキン「それを知っているのは、彼等だけなのでしょうね」

セルゲイ『そうだ、グラハムの件だが』

マネキン「はい?」

セルゲイ『今回の功績を認められ、奴もまた少佐への昇進が決定したそうだ』

マネキン「本当ですか?」

セルゲイ『うむ、だがアイツの事だ。あまり興味は無いだろう』

セルゲイ『マネキン大佐、未確認MSの情報が入り次第此方から連絡をする。其方も何かあったら報告してくれ』

マネキン「えぇ、その様に」

セルゲイ『では失礼するよ』

ピッ

マネキン「ふう……」

ヴンッ

マネキン「!」

マネキン「マリーダからか……ユニオン領の紛争再発地域とそれに対する軍隊の派遣、その内約」

マネキン「自身の意見も添えて私の意見を聞きたいと……」

マネキン「ふっ、相変わらずだな。熱心にも程がある」

マネキン「うちのコーラサワーも、もう少しエースの自覚を持ってもらいたいのだが……」カタカタ

マネキン「……まだ会議には時間がある、今の内に返信しておくとしよう」


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―大学―

沙滋「……」カタカタカタカタ

友人A「もう帰ろうぜ沙滋。講義も終わったしそんなに根詰めなくてもよ」

沙滋「ごめん、でも僕は今まで遅れた分もあるから……」

友人B「気持ちは分かるんだけどねぇ」

友人A「無理すんなよ沙滋。この前頼まれた講義の資料、圧縮して送っておいたから」

沙滋「有り難う、助かるよ」

友人A「良いってことよ」

友人B「ルイスに宜しくね」

沙滋「うん……」

沙滋(宇宙技師の試験も近い、大学の試験と併用してでも間に合わせなきゃ……!)


―大学・理事長室―

理事長「……そちらの旨は理解できました。それでは、沙滋・クロスロードの学費及び奨学金の返済は其方が全額負担と言うことで宜しいのですかな」

紅龍「はい。その様にお願いします」

紅龍「彼の後見人……とはいえもう彼自身成人も近いのですが、話は付けてありますので」

理事長「そういうことでしたら、我々からはなにも言うことは有りません」

理事長「彼にはこの短時間で不幸な事が起きすぎました……私としても彼の幸せを望まずにはいられない」

紅龍「……」

理事長「宜しくお願いします」

紅龍(全く、思いもしていないことをペラペラと喋る……)

紅龍(昨晩は沙滋・クロスロードの一件など気にも留めず、愛人との夜を楽しんでいた癖に)

理事長「?」ニコニコ

紅龍「それでは私はこれで……」

紅龍(だが私が彼に、沙滋くんに出来ることはこれくらいしかない)

紅龍(絹江さん……あなたに報いるには、これしか……)

コツコツコツ

紅龍「……」

紅龍「!」

沙滋「……!」カタカタカタカタ

紅龍「沙滋くん」

沙滋「ッ!」

沙滋「あ……紅龍さん」

紅龍「講義は終わったのかね」

沙滋「はい、紅龍さんは……どうして此処に?」

紅龍「君に会いに来た、では理由として不足かな?」

沙滋「え、えぇ!?」

紅龍(何故そんなに恥ずかしがるのだ……?)

沙滋「ほ、紅龍さんは姉さんの昔からの友人だったんですよね!?」

紅龍「あぁ、そうだ」

紅龍「絹江さんとは取材の最中で出逢ってね、そのよしみで友人として付き合ってもらっていたよ」

沙滋「友人……」

沙滋「……っ」ササッ

紅龍「……」

紅龍「宇宙技師の勉強か」

沙滋「あっ!」

紅龍「進んでいるようで何よりだ、だが一番大変なのは実技だからな」

紅龍「ワークローダーによる練習がしたければ私に連絡するといい、用意させよう」

沙滋「え?」

紅龍「私は宇宙開発の事業展開をしていてね、絹江さんにもその関係で取材を受けたんだ」

紅龍「勿論君さえ良ければ、だが……」

沙滋「は、はい! その時は是非とも!」

紅龍「良い返事だ」ニコッ

沙滋「……!」ササッ

紅龍「……」

<センチュリーカラーミリオカーラーデレッデレッデー

沙滋「あ!」

紅龍「メールかね」

沙滋「はい、ルイスからです!」

紅龍「ルイス・ハレヴィ……ガールフレンドだったかな?」

沙滋「はい……」ピッピッ

紅龍「……」

紅龍「不幸な事件だった」

沙滋「……良いんです。過去には戻れないし、ガンダムは倒された。もう過去の話です」

紅龍「……」

沙滋「今は、訳あって離れ離れになっていますけど」

沙滋「でもいつか、宇宙で働けるようになって、独り立ちして……必ず彼女を迎えに行くんです」

沙滋「絶対に……絶対に……」

紅龍「沙滋くん……」

紅龍(確かに、彼の身には数多の不幸が降り注いだ)

紅龍(だが彼ならば、沙滋・クロスロードならば……きっと悲劇も乗り越え、新しい時代を逞しく生きてくれるだろう)

紅龍(絹江さん、他ならないあなたの弟なのだから)

紅龍「きっと【彼女】もその日を心待ちにしているだろう……頑張れよ、沙滋くん」

沙滋「はい……!」

紅龍「では家まで送ろうk」

沙滋「い、いえ! 結構ですっ!」

紅龍「……」

それから、更に1ヶ月。光陰矢の如しとはよく言ったもので、目まぐるしい日々は吹き抜ける風のように、実感の湧かないまま通り過ぎていった
ただし世界は確実に変革を迎え、暗躍する影は確実にその魔手を広げていっていた


―墓地―

グラハム「……」

グラハム「済まないハワード、報告が遅れてしまった」

グラハム「ソレスタルビーイングは壊滅、お前との誓いも何とか守れたよ……」

グラハム「だが大事なのはこれからだ、世界は統一に向けて大きく動き出すだろう」

グラハム「世界が変わったということを証明しなければ、我々の前に第二・第三のソレスタルビーイングが必ず現れる」

グラハム「…………」スッ

グラハム「ハワード、私は君の墓前に新たな誓いを立てよう。フラッグファイターとして、新たな世界を守り抜いてみせると」

グラハム「それが生き残った私の為すべき義務であり、権利であり……オーバーフラッグスの戦友達への弔いになると信じて」

グラハム「……さらばだ、ハワード・メイスン」

マリーダ「……」スッ

マリーダ「マスター、松葉杖を」

グラハム「あぁ」

グラハム「……無理を言ったなマリーダ、済まん」

マリーダ「それ以上はおっしゃらないで下さい。私が好きでやっていることです」

グラハム「……む……」

マリーダ「病院に戻りましょう。医師も心配されています」

グラハム「分かっている」

マリーダ「まだ身体も万全ではありません、ただでさえ先週も病院を抜け出しRGMのロールアウトを覗き見に出掛けているというのに……」

マリーダ「これ以上のご無理を重ねられては、部隊への復帰も遅れます。それに……」

グラハム「分かっていると言っている!」

グラハム「全く、完全に私のお目付役だな」

マリーダ「本当にお目付役ならば、病院を抜け出す手筈など取りは致しません」

ピッ

マリーダ「マスター……カタギリ司令から連絡が入りました、お怒りのご様子です。急いで戻りましょう」

グラハム「……」ムスッ

マリーダ「……はぁ……」

マリーダ(全く、子供がそのまま大きくなったかのようなお方だ)

マリーダ(だがそれ故に裏がなく純粋……だからこそ、なのかもしれないな)

バタンッ
ブロロロ……

グラハム「……」ウツラウツラ

マリーダ「……」

マリーダ(まだ身体も万全ではないのに、相変わらず無理をなさる)

マリーダ(これで体調を崩されたら、ハワードも立つ瀬がないというのに)

マリーダ「なぁハワード……」フッ

《国連は今日未明、国際的な軍縮路線を進めていくことを議会で確認し、正式な会合を開いていくことで……》

マリーダ(この二週間、国連は統合した軍備の再編に負われている)

マリーダ(無理もない、ガンダムがいなくなったことによる紛争の再燃は、PMCトラストを始めとする軍縮路線に反発した傭兵会社を取り込み無視できない一大勢力として拡大しつつある)

マリーダ「世の中は良くも悪しくも変わる……か」

マリーダ「……」ピッ

マリーダ(新たな人員の編入、及びライセンサーを有する独立飛行隊としての再編成)

マリーダ(ワンマンアーミーを基礎とするライセンサーとは別に、ライセンスを有する部隊長が部隊レベルでの独立した戦時介入を可能にすべく、自身でMS小隊を率いることを許す今回の計画)

マリーダ(人事の手がマスターに回っているということは、既に【ライセンサーズ構想】が進行しているということか)

マリーダ「ん……?」

グラハム「……」ZZZ

マリーダ「……」

マリーダ「全く、動かなければただ普通のいい男なのだがな」

グラハム「普通とは、私とは最も乖離した言葉だな」

マリーダ「ッ!?」

キキキィィィィッ

グラハム「ぬぉっ!?」

マリーダ「っ……申し訳ありませんマスター、起きてらしたとは思いもよらず」

グラハム「そんな驚くとは私も思わなかったぞマリーダ……以後サプライズは控えるとしよう」ドキドキ

グラハム「む、ライセンサーズ構想の資料か。もう目は通したのか?」

マリーダ「はいマスター、一応一通りは」

グラハム「そうか」

グラハム「独立したワンマンアーミーを更に昇華した、部隊レベルのライセンス集団……既にヤザン・ゲーブルがMS小隊を率いて実践に出ているという話もある」

グラハム「情報が錯綜しやすい現状の戦場では、ライセンサーのような独自判断を持った兵士の有能性がどこまで発揮できるか……疑念ではあるがな」

マリーダ「ヤザン・ゲーブル……あの野獣が、ですか」

グラハム「凄まじい腕前と的確な状況判断力の持ち主だと聞いた。私は会わなかったが、どうだった? マリーダ」

マリーダ「概ねその通りです。協調性と品性に著しく欠けている、という点が抜けていますが」

グラハム「……その様子だと一悶着あったようだな。お前ほどの者が、希有なことだ」

マリーダ「……っ」グッ

グラハム「詳しくは聴かんさ。ヤザン・ゲーブルという人物、直接会った時に刮目させてもらうまでのこと」

グラハム「しかし……協調性と品性に欠けた存在か。どことなく親近感が湧く」

グラハム「ふっ、好意を抱くな」

マリーダ「マスター、冗談でもその様なことは……!」

グラハム「……よほど嫌われているようだなヤザンとやらは」

マリーダ「あんな……っ」

マリーダ(あんな野獣がマスターと同等だなんて……認めるものか!)


―一方その頃・モラリア―

『うっ、うわぁぁぁぁぁぁ!』

武装解除に応じず、武力による抵抗を続けているPMCトラストの前線部隊
ガンダムに対抗するという名目で軍備が増強されていた表の部隊の一つであり、サーシェスのような裏の部隊程ではないにせよ、AEUイナクトでのみ編成された最新鋭の部隊であることは間違いなかった

ヤザン「何だ、もう終わりかァ? 古巣も随分と生っちょろくなったもんだぜ」

その最新鋭の部隊、イナクトのみで編成されたMS三個小隊。その全てが、たった今一機のイナクトにより全滅した
深い緑に塗られた、ヤザン・ゲーブル専用AEUイナクト。その周りには破壊されたMSのパーツがそこかしこに転がり、死屍類々の荒野にただ一機、ヤザンのイナクトだけが存在していた

ヤザン「ちっ……やっぱり無理してでもガンダムと戦っておくべきだったな、同じ性能のMSでも全く相手になりゃしねえ」

ラムサス『ははっ、これじゃあライセンサーズ何たらも意味がありませんな!』

ダンケル『ヤザン大尉だけで戦闘が終わっちまうんだ。ある意味楽出来ますよこっちは』

ヤザン「悪ィなラムサス、ダンケル。しばらくは見学だけで我慢しろ」

ヤザン「まぁ良い、骨のありそうな奴ならまだいるだろう。せいぜい、統一世界の戦争を楽しませてもらうぜ」

ラムサス『次の戦場は、俺達にも引き金を引く猶予があってほしいもんだ』

ダンケル『まぁ無理だろうよ……この人がいたんじゃ、な』

ヤザン「くくく……ははははは! はーっはっはっはっはっは!!」

野獣の渇きは未だ潤せず、次なる流血を求め戦場を飛び回る
ヤザン・ゲーブルとグラハム・エーカーの道が交わるのは、もう少し先のことであった



グラハム「それにだ、今は他の部隊のことを気にしている暇はないぞ」

マリーダ「?」

ピッ

グラハム「我々も世界も大打撃を被り、軍部はベテランを多く失い人員不足が否めない」

グラハム「我々のオーバーフラッグスも待機メンバー二人が既に抜け、別の地域で作戦に従事している」

グラハム「現在私を含めオーバーフラッグスは五名……この意味が分かるか?」

マリーダ「……」

マリーダ「新たなフラッグファイターの転任、ですか?」

グラハム「ふっ、流石だなマリーダ。察しがいい」

グラハム「私が以前から目を付けていた一人の兵士を、オーバーフラッグスに引っ張ってくるよう司令に懇願したのだ」

グラハム「本当ならばガンダム調査隊の時点で来るはずだったのだが、彼とも運命の赤い糸を感じずにはいられないな」

マリーダ「それはもしや、以前話していた……」

グラハム「あぁ」

グラハム「楽しみだよ……実にな」


―病院―

グラハム「司令は帰ったか。流石に多忙と見える」

マリーダ「カタギリ司令のお仕事を増やした方が何を……」ハァ

グラハム「む……しかしこれ以上司令のご機嫌を損ねる訳にも行かん。そろそろご機嫌取りも考えねばならんな」

グラハム「なにせ、一源珊悪琴割のリョーテイが待っているのだからな……!」

マリーダ(何故この国の人間は漢字を妙に曲解するのだろうか……?)

ウィンッ

グラハム「む?」

マリーダ「!」

ソーマ「あ……!」

グラハム「ソーマ・ピーリス少尉!」

ソーマ「お久しぶりですマリーダ中尉、そして昇進おめでとうございますマスター・グラハム少佐!」

グラハム「もはや君の中での私の名前はマスター・グラハムか、ピーリス少尉」

マリーダ「久しぶりだなピーリス、変わりないようで安心したよ」

ソーマ「マリーダ中尉こそ、ご健勝で何よりです」

マリーダ「ふふ……少し背が伸びたかな?」

ソーマ「ね、年齢は中尉と同じですっ! そんな1ヶ月やそこらで……!」

マリーダ「少尉は成長期が遅いのだろう、これからきっと成長していくよ」

ソーマ「そう……でしょうか?」

グラハム(ほう……)

グラハム「しかし少尉、何故君は此処に?」

ソーマ「はい、実は……」

           ・
                         ・
                         ・


グラハム「成る程な……そのジャン・リュック・デュバルという人物の開発したMS、【ヅダ】が最終決戦時に妨害行動を起こした」

グラハム「そしてその当人は1ヶ月前、この北米大陸に渡ってきてから行方知れずになっている」

グラハム「それの調査の為にスミルノフ大佐は君を伴い此方に渡ってきたと、そう言うのだな? 少尉」

ソーマ「纏めていただき恐縮です、マスター・グラハム」

グラハム「なに、事情を知らぬ者達にはこうでもしなければ伝わらないからな」

マリーダ「?」

ソーマ「?」

グラハム「コホン……それで、だ」

グラハム「手掛かりは見つかったのかね? スミルノフ中……大佐ならば既に何かを掴んでいそうなものだが」

ソーマ「はい」

ソーマ「シティホテルのPCから、彼の名義でビリー・カタギリ顧問にメールが送られていたのを確認し、ついでということで此方に足を運ばせていただきました」

ソーマ「カタギリ顧問の話では、それがレイフ・エイフマン教授の作成した疑似太陽炉搭載型フラッグの草案だったと言うことですが……」

グラハム「!?」

マリーダ「GNフラッグの……プロフェッサーの設計図を?」

グラハム「マリーダ」

マリーダ「いえ……プロフェッサーの口からはジャン・リュック・デュバルなる人物の名は聞いたことがありません」

グラハム「私も先ほど初めて聞いた名だった。プロフェッサー・エイフマン、ユニオンのみならずMS関連の技術者としては世界的権威だった方だ」

グラハム「あの方がフラッグの設計図を、人革連の技術者に渡していたというのか?」

マリーダ「そんなっ……!」

グラハム(だがプロフェッサーの死が、カタギリの読んでいた【知りすぎた】ことに起因するとすれば……予め信用に足る何者かに情報を渡すことも考えられる)

グラハム(逃亡者の身で危険を省みず設計図を送りつけてきたのも、それならば頷けるというものだが)

グラハム「やはり、本人から直接聞かねば解らぬことか」

ソーマ「はい、大佐も同じことを言っておりました」

グラハム「スミルノフ中佐……済まない、大佐は今此処に?」

ソーマ「いえ、此方の人革連の大使館で情報を整理しています」

グラハム「そうか」

グラハム「そうと決まればこうしてはおれん! 今すぐにでも退院して……」バッ

マリーダ「マスター」ガシッッ

グラハム「……」ズルズルズルズル

ソーマ(あぁ……マスター・グラハムが……)

           ・
                         ・
                         ・


マリーダ「まだ骨も完全に繋がっていないのに無理をなさらないで下さい」

グラハム「えぇい、もどかしい! こんなことならば再生治療で一気に治癒すれば良かった」

ソーマ(まだ繋がってなかったのに外出していたのか……)

グラハム「ピーリス少尉、見ての通り私は怖いお目付役のおかげで此処から外には出られない」

マリーダ「……」

グラハム「デュバル氏の一件、何か判明したことがあれば可能な限りで構わない、私に一報くれ」

ソーマ「はいマスター・グラハム、大佐にもその旨をお伝えしておきます」

グラハム「頼んだ。肝心の私が病院のベッドの上では申し訳ないことこの上……」ガチャッ

――グラハムはその時、初めて軽蔑という感情を親友に対し向けた

ビリー「……!」

本来グラハムが寝ているはずのベッドに、乱れた白衣をそのままに横になっているビリー・カタギリ
林檎のように真っ赤に染まった顔は、困惑と羞恥の二枚重ねで何とも情けのない色に仕上がっている

「あら残念、意外と早かったのね♪」

その上から覆い被さり、見方によってはビリーを押し倒しているようにも見える赤毛の女性
その着衣は身体の艶めかしいラインが浮き出るほどに乱れ、豊かな胸元は白い谷間がくっきりと見えている
露出した太ももは肉付きも良く、羚羊のような脚はビリーの長い脚に絡み、健康的なエロスを演出していた
この肢体を見せつけられたなら、男なら生唾を飲まずにはいられないだろう
問題はグラハムは女に興味が無く、肝心のカタギリが童貞であるということくらいだ

グラハム「…………」

マリーダ「ピーリス少尉、見てはいけない」サッ

ソーマ「え? え??」

マリーダは入室とほぼ同時にピーリスの視界を手のひらで遮り目の前の痴態から遠ざける
グラハムとマリーダは無表情の中に最大限の蔑視を込め、ベッドの上のビリー・カタギリにそれをぶつけていく

ビリー「ちちちち違う! 違うんだグラハム、マリーダ! ていうかピーリス少尉まだいたの!?」

グラハム「ビリー・カタギリ技術顧問、とりあえずベッドから降りて服を直した方がいい。着衣の乱れは心の乱れだ」

マリーダ「要約しよう。さっさとベッドから降りてそこに直れ俗物」

ビリー「 」

?「ごめんなさいねビリー、もうちょっと早く始めていれば良かったのに」

ビリー「むしろやらないでくれよミーナ!? 幾ら何だって悪ふざけにも程があるっ!」

?「あははは、ノックしないとは思わなくって」

ビリー「彼の病室なんだからノックするわけ無いだろうッ!?」

グラハム「ノックするとかしないとか、そういうことじゃないと思うぞビリー・カタギリ技術顧問」

マリーダ「……」ジャキンッ

ビリー「わーっ! わーっ!」

ソーマ(い、一体何が起きているというの!?)

ソーマ(起きてマリー、今こそ真の超兵の力を……!)


―十分後―

グラハム「成る程、事態は把握した」

ビリー「……」セイザ

?「正座なんて久しぶり~」セイザ

マリーダ「…………」

ソーマ「あの、中尉……彼らは何故床に座らされているのですか?」

マリーダ「少尉、世の中には知らなくて良いこともあるんだ」

?「改めて自己紹介させてもらうわライセンサー、グラハム・エーカー少佐」

ミーナ「私はミーナ・カーマイン。ユニオン国立宇宙局の技術研究科所属、宇宙物理学を専門に研究しているわ。ビリーとは大学時代の同窓生なの」

ミーナ「お会いできて光栄だわ最強のフラッグファイター」

ミーナ「そしてその副官にして最年少のフラッグファイター、マリーダ・クルス中尉もね」スッ

グラハム「ビリーの同窓……成る程、旧友か」スッ

マリーダ「……」ピキィィィィン

マリーダ(思ったより純粋な心の持ち主らしい……見た目のギャップはあるが)

グラハム「だが旧交を暖めるのに私のベッドを使ったのは容認できんな」

ビリー「そ、それは彼女が勝手に……!」

グラハム「今度からちゃんとそれ相応の場所を選択し行うことを推奨する」

ミーナ「ラージャ♪」

ビリー「やること自体には肯定的なんだねグラハム……?」

ミーナ「ふふ、でも残念なことにまだそういう関係じゃないの」

グラハム「男女の関係には、友情もまた立ち入れぬ深い穴がある」

グラハム(27)「しっかりと順序を踏んで、健全な関係を築いてくれたまえ」

マリーダ(18)「お幸せに、カタギリ顧問」

ミーナ(何だろう……釈然としないわ)

ビリー「おぉ……神よ……」

ビリー「さ、さて! グラハム、君に頼まれていた例のMSの情報なんだけどね」

グラハム「む、手に入ったかカタギリ」

マリーダ「ダリルが遭遇した、あのMSですね」

ビリー「あぁ。カティ・マネキン大佐に連絡したところ、二つ返事で送ってもらえたよ」

マリーダ「マネキン大佐が?」

ソーマ「スミルノフ大佐へもマネキン大佐から情報が送られてきたそうです」

グラハム「素晴らしい判断だ、AEUの女傑にはいつもいつも助けられる」

ミーナ「~♪」ギュー

ビリー「う、写すよグラハム」

グラハム「断固辞退する」

ビリー「彼女じゃない、映像だ!!」

グラハム「あぁそうか、頼んだ」

ビリー「……はぁ……」

ビリー「まぁ兎に角、これは非常に貴重な映像だよ」

ビリー「それと同時に、危険な映像でもあるけど……ね」

ヴンッ

グラハム「!」

マリーダ「カタギリ顧問、これは……!」

ビリー「あぁそうさ、所属不明のアンノウン」

ビリー「この緑色のMSは、疑似太陽炉搭載型のMSなんだ」


―???―

プルツー「何でさ!? あたしが出ればガンダムだってすぐにやっつけてみせるのに!」

リボンズ「駄目だ」

プルツー「リボンズっ!」

リボンズ「二度は言わないよプルツー。部屋に戻って大人しくしていろ」

プルツー「っ……!」

リヴァイヴ「……」ペラッ

ヒリング「……」ソワソワ

ヒリング「ね、ね、リヴァイヴ」

リヴァイヴ「何だいヒリング、今良いところなんだ」

ヒリング「そんな小説なんかよりさ、あの二人何を言い争ってんの?」

リヴァイヴ「……ヒリング、君のそういう野次馬根性のようなものは少し控えた方がいい。リボンズにも注意されただろう?」

ヒリング「気になっちゃったんだもの、仕方ないじゃない」

ヒリング「それに、何だかんだリボンズはあの人間の時だけ反応が違うから、見ていて面白いのよね~」クスクス

リヴァイヴ「リボンズに折檻される前に口を閉じるんだね……庇いきれないよ、全く」

ヒリング「は~い」

ヒリング「それで、それで?」

リヴァイヴ「……ハァ」パタンッ

リヴァイヴ「プルツーは壊滅したソレスタルビーイング、及びその支援組織であるフェレシュテの捜索と太陽炉の奪取を提案している」

リヴァイヴ「だがリボンズは首を縦には振らず頑として受け入れない。そしてその対応はいつも通り……後で話すの一点張り」

ヒリング「あぁ、だからプルツーは気に入らなくて突っかかってるってワケね」

リヴァイヴ「リボンズの秘密主義はプルツーの逆鱗に触れやすい……」

ヒリング「いつもみたいに強制送還しないの?」

リヴァイヴ「ブリングもデヴァインも別件で今は不在だ」

ヒリング「リジェネもいないのよね、そう言えば」

リヴァイヴ「それに我々は彼女の強制送還が出来るほど力量差があるわけじゃない、リボンズだけで何とかしてもらわないとどちらかが怪我をする羽目になる」

ヒリング「曲がりなりにも彼女は強化人間、ちっちゃいからって侮れないのよねぇ」

ヒリング「ま、二人がかりで無理です! と言い切っちゃう私達の存在意義を考えちゃうと悲しいところよね」

リヴァイヴ「それは言わないでほしいなヒリング、私にだってそのことについては思うものが無いわけじゃない」

ヒリング「良いじゃない。RGMカスタム四号機と五号機のカスタマイズは進行中、ガ・シリーズの開発はまだ途中」ガサガサ

ヒリング「どちらにせよ私達の出番は当分まだなんだから、さ」パリッ

プルツー「…………!」

リボンズ「……」

プルツー「…………!」

リボンズ「……」

リボンズ「はぁ……」

リボンズ「これを見るんだプルツー」

プルツー「最初からそうすりゃ良かったんだよ、全く」フンッ

ヒリング「あ、リボンズが折れた」

リヴァイヴ「ふふ、何だかんだ彼も甘いことだ」

リボンズ「……」

ヒリング(やばっこっち見た)コソッ

リヴァイヴ(はぁ……やっぱりこうなる)コソッ

リボンズ「……これは先日、ラグランジュ1付近で撮られた映像だ」

プルツー「例の、疑似太陽炉搭載型の未確認機かい?」

リボンズ「そうだ」

プルツー「……コーンスラスターじゃない。このMSはティエレンの技術を使ってはいるけど、疑似太陽炉に対する技術は既存のものじゃないのか」

リボンズ「GN-Xはコーンスラスター型、スリースラスター型は第二世代機にしか存在しないものだ」

リボンズ「以前宇宙に上がったテロリストを見逃させたのは覚えているね」

プルツー「あぁ、月のヴェーダを乗っ取っているときだろ?」

リボンズ「本来あの時にイノベイターを数人紛れ込ませ、スパイとして送っていた。それで情報が得られるからと敢えて放置したのだけれど……」

リボンズ「……その全てのイノベイターが何らかの方法で消され、彼らは完全に消息を絶ってしまった」

プルツー「え……?」

リボンズ「……待機の命は変わらないよプルツー。今は膝の上で寝ていると良い、状況の分からない今君を出すわけには行かないからね」

プルツー「……」

リボンズ「計画に存在しないスリースラスター型の未確認機……そして排除されたイノベイター」

リボンズ「間違い無い。ヴェーダとソレスタルビーイングに深く通じる人物が、この宇宙に潜んでいる」


―宇宙―

「はっ……はぁっ……!」

アステロイドの狭間を縫うように飛び、一目散に逃げる一機のGN-X
パイロットの顔は恐怖に引きつり、時折何かに怯えるように後方を確認、アステロイドにぶつかりそうになりながら危なげに機体を動かしていく

「こんなはずじゃ……こんなはずじゃ無かったのに……!」

――そう、こんなはずじゃ無かった
同僚とガンダムの捜索任務に赴き、センサーとにらめっこしながらくだらない話に沸き立って
帰ったら一杯引っかけて、休暇の予定でも考えながらぐっすりと眠ろう
そんな他愛もない計画を立てながら、哨戒任務という退屈な作業をこなしていただけなのに
それは、友軍機を貫いた一条の光によって、一瞬で潰えて消えてしまった

「ッ!?」

センサーに感
それは徐々に追いつかれているという証拠であり、敵のMSが国連軍の最新鋭MS、GN-Xに匹敵する性能であることを示していた

「来るな、来るなぁ!」

モニターに移る敵の機影は、密集したアステロイドの中でも意に介さぬ軽やかな機動で迫ってくる
通常衝突を恐れ減速するこの地形において、このMSは速度を落とすどころか更に加速、アステロイドを蹴り上げ動力にすることで類い希な加速を生み出していた

――その速度は、減速しながら進むGN-Xの優に三倍
眼に焼きつく赤い機影、それはまさに……

「あ、赤い……彗星……!」

逃げ切れぬと諦めたGN-Xは反転、ビームライフルを向け接近を拒むように粒子ビームを乱射する
赤いMSはそれらを軽々と避け、アステロイドを蹴ることによる変則機動でGN-Xを手玉に取っていく

『済まないが、私が欲しいのはそのMSと太陽炉だ』

『パイロットには……死んでもらおう』

腰から抜いたGNビームアックスが、オレンジ色の光を放ちながら分厚い刃を形成する
ビームライフルの照準は、赤いMSを全く追いきれずただただ哀れな抵抗を繰り返す

『えぇいッ!』

そして赤いMSが身を翻しGN-Xへ鋭い蹴りを叩き込む
小さな悲鳴のようなものが接触した瞬間回線に割り込んでくる。しかし赤いMSの挙動は小揺るぎもしない
続けざま、コクピットへのビームアックスによる一撃
パイロットは一瞬にして蒸発し絶命……GN-Xは赤いMSの手の中に堕ちた

『……』

《流石です大佐、逃げる太陽炉搭載型MSをいとも容易く仕留めるとは》

『パイロットが未熟だっただけのことさ』

『他のGN-Xの回収は終わったな?』

《抜かりありません》

『よし、帰投する。長居は無用だ!』

駆け寄ってきた深緑のMSと通信し、撤退命令を下すMSの操縦者
ふと眼下に見える小さな青い星、地球に目を向けると、思案するかのように立ち止まった

『……』

『ソレスタルビーイング、か』

『見せてもらいたかったものだな、新しいガンダムの性能とやらを』

マスク越しに、母なる星へと微笑みかけた男
新たなる戦禍を齎す凶星は、星の海で着々とその力を蓄えていた


TO BE CONTINUED...


エコ「お~い、機材はこっちでいいのか?」

シェリリン「違う違う! それは向こうでそれがあっち!」

エコ「へいへい……ったく」

黒ハロ『プルプルプルプルー!』コロコロ

エコ「……?」


次回【雛鳥】

新たなるフラッグファイター、現る



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