マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」 その28

2011年10月11日 19:16

マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」二機目

511 :>>1 ◆/yjHQy.odQ [sage]:2011/07/16(土) 01:17:03.01 ID:0PmofFpAO


きっかけは何でもない、ただの一枚の新聞記事
それも、自身の内側を掻き毟るだけの駄文に過ぎない代物であった

――それでも、気づけばスメラギさんに頭を下げ頼み込んでいた

ロックオン・ストラトスが友と呼び、刹那・F・セイエイを宇宙の闇に消し去った――

グラハム・エーカーに、逢いたいと


フェルト「……」

タクシーが道路を進む。整備された街並みが目の前を通り過ぎていく
大気と重力のへばりつく感覚、宇宙で育ってきたフェルトにとってはいずれも未だ慣れない感覚であった
『フェルト、分かっているわね? あくまであなたはスメラギさんの遠縁の子として同行するの、地球に降りたからには私達との連絡は一切禁止よ』

フェルト「っ……」

出発前のリンダさんの言いつけがまだ耳に残っている
膝元に置いた指に自然と力が込められ、スカートを強く握りしめた
おおよそフェルトがソレスタルビーイングの一員であると分かる人間は皆無に等しいだろう
だからこそフェルトと組織の繋がりは立たねばならない。必然だったが、心細かった

スメラギ「フェルト、先方には無理を言ってご挨拶しに行くんだから」

フェルト「!」

スメラギ「あまり迷惑になるようなことしないでよ? 向こうだって今忙しいの」

フェルト「はい、スメ……クジョウさん」

隣で窓枠に肘をつきながら、わざとぶっきらぼうな言い方で注意喚起するスメラギ
それでも、仕草の節々から心配してくていることが伝わってきた
やがて街並みを抜け、郊外へと車が進んでいく
遠目からでも基地のシルエットが確認出来た

もうすぐだ

幸い偽装データは看破されず、地球に降り立つまでは容易なものだった
また上がれる保証は無かったものの、その場合は面倒を見る、とスメラギがイアン等に言い切ったおかげでその辺りの不安は思ったより少なかった

フェルト「……」

トレミーに乗っていたクルーは、その半数が命を落としていた

クリスティナ・シエラ
リヒテンダール・ツェーリ
JB・モレノ

いずれも、特攻してきたコロンブス艦により轟沈したトレミーと運命を共にした
ソレスタルビーイングの中で育ったフェルトにとっては、いずれも家族と呼べる存在達だった

フェルト「……っ」

スメラギ「フェルト……?」

フェルト「大丈夫……大丈夫です」

自分の肩を抱き、逃げ出したくなる心を奮い立たせる
自分に言い聞かせるように、心配するスメラギに答えた

元々スメラギは地球でリーサ・クジョウという肩書きでの生活に入る予定であった
ガンダムの損傷……裏切りによる国連軍の軍備増強……生き残った二人のマイスターも重傷を負い、状況は予断を許さない
戦える筈もなく、明日を生きる糧さえ足らない現状、必要な人手の中に自分は入っていない、というのが理由だそうだ

スメラギ「……着いたわ」

フェルト「此処が……」

停車したタクシーから降りる。
一面滑走路と何処までも続くフェンス、ソレスタルビーイングに幼い頃から関わっていたフェルトには、そこが悪鬼蔓延る牙城にさえ見えていた
何機ものMS……あれはユニオンリアルドだろうか……が絶え間なく発着陸を繰り返している

旧ユニオン軍、現在の統一国連軍に属するイリノイ方面基地
ここに、グラハム・エーカーがいる

スメラギ「行くわよフェルト」

口調が波立ったのを感じた。スメラギもまた緊張を隠せないでいるのが分かった
無理もない。ソレスタルビーイングの構成員が取る行動としては、組織が崩壊後最も接敵する行為なのだから

おまけに相手は事象の本質を見抜くとされる人類の革新、ニュータイプ
フェルトが見目格好から構成員だとバレるはずがないという前提の上に今回の行動は容認されていた
だが万が一、という可能性はどうしても拭い去れないのも事実であった

フェルト「……」

分かっている、ただの危険行為だ
得るものがあるかも分からず、もし悟られたら全てが終わるだけ
何を話すかさえスメラギには伝えていない、それどころか自分でも何を話すか決まっていない

分かっている、利など何処にもない

それでも

フェルト「それでも……」

フェルト「逢ってみたい。ニールが、刹那が向き合った人に」



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――イリノイ基地・応接室――

ビリー「やぁクジョウ! 久しぶりだね」

スメラギ「ごめんなさいビリー、無理を言ってしまって……情勢も大変なのに、迷惑だったわよね」

ビリー「まさか! どうせMSの搬入でやることも無かったんだ、むしろタイミングは完璧だったともいえるよ」

ビリー「流石は天才戦術予報士といったところかな? クジョウ」

スメラギ「ふふ……相変わらず煽てるのが上手ねビリー」

ビリー「煽てるだなんて、僕は本当のことをだね」

フェルト「……」

よく喋る男だ、と思った
スメラギが到着するのを門前で待っていたのにも驚いた、門兵がからかいに発した言葉を借りれば二時間は其処にいたというのだ
スメラギに好意を抱いているのは誰の目から見ても明らかだった

ビリー「昨日マネキン大佐から此方に連絡が来てね、反国連勢力は各地から中東、アフリカ寄りに集結しているとのことなんだ」

スメラギ「……小規模な戦闘ならGN-XやRGMで対処も容易いけど、大きな戦闘になればどうしても不確定要素が現れる……」

スメラギ「おまけにGNドライブ搭載型のMSはその性能から旧型のMSとは連携がしにくい……」

スメラギ「故のグラハム少佐、及びフラッグファイターの投入……という訳か」

スメラギ「でも珍しいわね。いくら国連軍として統合されたとはいえ、カティがユニオン軍を動かすだなんて」

ビリー「彼女とうちのライセンサーは特別に交友関係があってね、そっち方面でお達しがあったのさ」

ビリー「それに、うちのライセンサーは国連軍の中でも指折りの使い手だ。いつまでも休ませておくのは勿体無いってね」

スメラギ「そうね……既存のMSを操り単独でガンダムと渡り合えるだけの力を持った兵士」

スメラギ「相手をする指揮官からすれば、本当やってらんないレベルだわ」

一瞬、そんなことを言っていいのかと思うほど感情の込められた言葉、幸い相手はスメラギに見とれていた為違和感も何も感じなかったようだ
さっきから重要な機密にも繋がりそうなことをペラペラと喋っているし、本当に軍属なのかと頭を傾げたくなるような鈍さである

スメラギ「それで……そのグラハム少佐は今何処に?」スッ

フェルト「!」

ビリー「っ……彼ならきっと格納庫に止めてある輸送機の中だよ……MSに触れてないと落ち着かない人だから……」

名前が出た瞬間、胸が強く脈打つのがはっきりと分かった
手に汗が滲み、どんな表情をしていいのか分からなくなっていた
スメラギが足を組みながら、フェルトに目配せを送る
肝心のビリーはその艶やかなラインが動く度にせき込みながら視線を外していた、サインは恐らくバレていないだろう

フェルト「済みません、ちょっと御手洗いに……」

もう長居は無用だと席を立とうとした
その時だった

ビリー「そうだ、クジョウに見てほしいものがあるんだ。その筋のものから見たらプレミア物だよ」

スメラギ「え? 何かし……っ」

横の大型モニターのスイッチを、ビリーが押した

フェルト「ひっ……!」

四分割された画面、其処に映し出されたもの
それは――記録として残された、ブリティッシュ作戦の最後の映像

GNフラッグと対峙する、ガンダムエクシアの姿であった

ビリー「GNドライブ搭載型のNT専用フラッグでグラハムが出撃した際の映像だよ。頭は途中で切断されちゃったから、機体のサブモニタから記録したものなんだけどね」

スメラギ「あ……あぁ……っ!」

フェルト「 」

ビリー「これはあのエイフマン教授が残した、推論設計図を原型に開発した、遺作とも呼べるMSでね」

ビリー「こうやってガンダムとも対等に渡り合えている、次世代機としてフラッグを残すための、間違い無く礎になる機体だよ」

興奮してまくし立てるビリー、そんな言葉など二人には届いていない
仲間が、家族が切り刻まれている姿を見せられて平静を保てる者などいるはずがないからだ
ガンダムエクシアの左腕が宙を舞う、そしてその顔面が刃により砕かれた瞬間

スメラギ「フェルトッ……!?」

フェルトは、一目散に部屋から飛び出していた


――同時間帯・ミーティングルーム――

グラハム「……と言うわけだ。我々は中東に向かいマネキン大佐指揮下に入り、反国連勢力の掃討に当たる」

グラハム「マリーダ、機体及び物資の搬入は?」

マリーダ「滞りなく進んでおりますが、予報通りに雷雨に見舞われた場合、僅かながら遅れが生じるかと」

グラハム「どちらにせよ今日はやることもないか……全員解散、明日に備えゆっくり休め」

グラハム少佐の言葉を受けて、皆が一斉に席を立つ
体調管理は各々に一存されている、パイロットとして当然のことだと思った

リディ「グラハム少佐、マリーダ中尉」

グラハム「ん、どうしたリディ」

マリーダ「……」

リディ「この後のご予定は空いていらっしゃるでしょうか? 宜しければシュミレーターを用いての訓練をお願いしたいんですが……」

グラハム「構わん。私はこれから輸送機の方に少し足を運ぶ、その後で良ければ相手をしよう」

リディ「有り難うございます!」

グラハム少佐は此方の目を真っ直ぐ見て話す。年齢に比べかなり若く見える面立ちではあるが、この話し方も相まっていつも相当なプレッシャーを感じさせられるのだ
実直で誠実な熱血漢。最近は融通の利かない頑固さや独自の美学を展開する場面も垣間見えたが、この評価が崩れることはないだろう

つい先日、グラハム少佐が教練に参加してくれたのは今でも鮮明に思い出せる

リディ「……」

――圧倒的

その一言に尽きた
確かにこの部隊はエースパイロットが殆どを占めており、その操縦技術は誰を推しても高い水準にある
だが、他の三名はおろかマリーダ中尉でさえ、あれほどの技量には到達していないだろうとさえ思わされた
NT能力ではマリーダ中尉が上だと聞いていたが、それを補って余りある天性の才能がグラハム少佐を支えているようだった

リディ(でも……)

リディ(でもいつかは、俺だって……!)

自分に才能があるかどうかは分からないが、少なくともグラハム少佐に並ぶような力があるとは思えない
それでも、いつかは並んでみせる。決意は一層固くなった

リディ「……マリーダ中尉は、少佐とご一緒に?」

マリーダ「無論だ。何か問題でもあるのか?」

リディ「い、いえ! そんなつもりは……」

マリーダ「ならば良かろう。早めに食事は済ませておけ、訓練中吐かないようにな」

リディ(うわぁい……)

部屋を出るとすぐさま食堂を目指す
ああ言われたからには、なるべく早く食べて消化しておかねばどうなることやら……

リディ「年下なんだけどなぁ……精神年齢絶対上だろ、あれ」

感情の起伏が激しく様々な顔を見せるグラハム少佐とは対照的に、マリーダ中尉の表情が変わるのをリディは見たことがない
弱冠十九歳、歩けば誰もが振り向く美しい顔立ちに抜群のスタイル、しかしながら凛とした立ち振る舞いと毅然とした態度が頼もしさすら感じさせてくれる
MS工学を代表する様々な知識とそれを扱う判断力も併せ持ち、MSパイロットとしては国連軍有数の実力者として知られている。聞けばユニオン上層部の要人の養女であるというではないか

リディ(う~ん……カンペキや)

ある意味、グラハム・エーカーよりもとんでもない存在なのかもしれない
グラハム少佐も童顔ではあるが端整な顔立ちをしており、佇まいも他の軍人とは一線を画す何かが感じられる
四六時中、殆ど常に二人が並んで歩いても何とも思わないのは、やはり様になっているからだとリディは思った

リディ(っと……他人をべた褒めしたところで何も変わりゃしないか)

食堂で渡された定食を手早く胃に詰め込み、早々に立ち去っていく
ものの五分も席には着いていなかっただろう、スクランブルを考えればこのくらいでちょうど良い

リディ「さて……」

ドンッ

フェルト「きゃっ!?」

リディ「おっと……!」

その時、不意に曲がり角から現れた何者かにぶつかる
小柄な少女だ。つい早足になっていたこともあり、相手は尻餅をついてしまった

リディ「大丈夫? 君、どこの……」

フェルト「あ……」

リディ「っ……」

眼が合った
吸い込まれそうなほど透明な瞳に、一瞬時が止まったような錯覚を覚えた

リディ(綺麗だ……)

フェルト「ッ……!」

リディ「あ……ちょ、ちょっと君!?」

リディ「……行っちまった……」

リディ「…………」

向こうは確か格納庫の方だ、技術者か整備士の関係者だろうか

リディ「また、逢えるかな……」

きっとまた逢える、そう遠くない、近い内に
何となくそんな気配がした

そのせいだろうか

リディ「あ、雨……もう降ってきたのか」

彼は、携帯していた銃を無くしていたことに気付かなかった


――そして、輸送機内部――

分厚い雲が太陽を遮り、時折稲光が辺りを白く染め轟音を響かせる
予報通りの激しい豪雨、輸送機の窓を雨粒が叩き、今ならば銃声も飲み込まれて気付かれはしまい

グラハム「……」

フェルト「っ……!」

青ざめた顔に憎しみを浮かべながら、銃を突きつける少女
向けられた銃口は小刻みに震え、狙いも右往左往、何処を撃つかさえ定まってはいない
目の前の彼女が他人を撃つという行為に慣れた人間ではないのは、誰の目から見ても明らかであった

マリーダ「……」

二人から20mは離れた位置にマリーダがいる。フェルトを般若の如き形相で睨みつけながらも、その手は腰の銃から離れ身構えたままだ
輸送機の広い格納庫の隅、雷雨の為整備士達が作業を中断し昼食に向かったのは、幸か不幸か
今この場所には、この三人しか居なかった

グラハム「家族を撃った、か」

フェルト「動かないでっ!」

グラハム「言われなくても動けはしないさ。何せ銃口を向けられているんだ、状況は君にとって圧倒的有利なのだよ」

フェルト「っ……!」

嘘だ。確かにグラハムは動けないものの、マリーダ・クルスがいる
銃は下ろさせたものの、彼女の腕前ならば抜いて少女の頭を撃ち抜くまでに一秒とかかるまい

グラハム(だが……)

それだけは避けねばならない。自分の中の何かが叫んでいた

本当に、とっさの出来事だった

マリーダが自分の側から離れ、積み込み終えたオーバーフラッグの最終調整をしている最中、彼女は突然現れた
豪雨の中を突っ走ってきたのか、全身ずぶ濡れになりながら
明らかな憎しみを瞳に宿し、誰のものとも知れぬ銃をグラハムに構えたのだった

グラハム「私を殺すか」

フェルト「それは……っ!」

グラハム「覚悟は常に出来ているさ、軍人として生きてきた以上死は誰にでも訪れる」

グラハム「だが今君は私に堂々と相対し、銃を向けている。これは暗殺とは呼べないな」

フェルト「っ……!?」

グラハム「せめて君の名を聞きたい。死に逝く者からの二度目の願い、聞き入れてくれるか?」

マリーダ「マスター……っ」

そんなことを言うなと言いたげに、マリーダが呟いた
今にも泣き出しそうな眼の中に、今にも牙を剥き飛びかかりそうな殺意が見え隠れし、それが何とも美しく見えた
予断を許さぬ状況下だというのに、頭が驚くほどに冷静でいられたのはそのためかも知れない

グラハム(私ともあろう者が、随分と惚れ込んだものだ)

フェルト「うぅ……っ」

マリーダが口を開く度に目の前の少女の動揺は増し、今は内股のまま膝まで震わせている
どう見ても計画的な行動ではない。直感だが、まず間違いなく当たっているだろう
命を奪うことに馴れていないなら、尚更その小さな指に引き金を引かせるわけにはいかない
――説得、馴れてはいないがやらざるを得まい

フェルト「フェルト……フェルト・グレイス」

グラハム「フェルトか、良い名前だ」

フェルト「そんなこと、あなたなんかにっ……!」

グラハム「素直な感情さ。それが本当の名前で無いにしてもだ」

フェルト「っ! どうしてそれを……」

グラハム「やはりか、カマは掛けてみるものだ」

フェルト「!?」

グラハム「おっと、恐い顔だ。だが可憐な眼差しが台無しだぞフェルト・グレイス」

明らかに銃口の揺らぎが酷くなる、少し苛めすぎたかと内心反省した
マリーダからの視線もさることながら、この様な状態を何時までも続ける訳には行かない

グラハム「……」

フェルト「っ、動かないで!」

一歩、踏み出した瞬間二人の少女の身体がビクンと跳ねた
マリーダを制止しつつ一歩、また一歩、フェルト・グレイスとの距離を少しずつ詰めていく

フェルト「何で……っ!」

グラハム「フェルト、その銃は軍用だ。衝撃もかなりのものになる、しっかり踏ん張りよく狙え」

フェルト「いや……やめて……!」

グラハム「額か心臓……首も有効だ。ただし一発で仕留めろ、私の横の彼女は君が二発目の引き金を引く前に確実に君を殺す」

マリーダ「マスターッ!!」

グラハム「……」

フェルトは後退り、自身は踏み出す
それを十数度繰り返した頃、彼女の背中は壁についた

やれるか――

グラハム「……!」

グラハム「……」

フェルト「ゃっ……いやぁ……」

フェルト「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

マリーダ「マスターーッ!!」

延ばした手が彼女の構える銃に触れ、ゆっくりとその矛先を下へと押しやる
それに連なるようにフェルトは膝を折り、嗚咽を漏らしさめざめと泣き始めた

グラハム「……ふう……」

彼女は引き金を引かなかった

引けなかったのだ

マリーダ「……」

グラハム「良く耐えてくれた、礼を言うぞマリーダ」

グラハム「誰か来たらマズい。まずは彼女をどこかに移動させよう」

グラハムは銃を無理やりポケットに詰め込むと、額の汗を軽く拭い大きく息を吐く
生身で銃を突きつけられたままそれに向かい歩くというのは、些か心臓に悪すぎる体験だった

グラハム(……)

グラハム(覚悟は出来ているという言葉に嘘は無かったが、それでも【死にたくない】と思ってしまうのは――性だな)

マリーダ「マスター」

グラハム「ん……どうした、マリー……」

いつの間にか目の前に来ていたマリーダ、不意にその手がネクタイを掴み力一杯引き寄せていた
とっさのことに対応出来ず、されるがままになってしまう
目の前にはマリーダ・クルスの顔
一筋の涙が頬に伝うその表情は、有らん限りの憤怒に満ちていた

マリーダ「二度と……」

マリーダ「二度とこの様な真似はしないでください……ッ!」

グラハム「す……済まん」

マリーダ「謝るなら……!」

マリーダ「っ……くそっ……」

気圧されて言葉を続けることも出来ない。一瞬の沈黙が二人の間を通り過ぎた
マリーダはそれに耐えかねたのか、乱暴にフェルトの腕を引っ張り上げ、無理矢理に立たせて歩かせる

フェルト「きゃっ……!」

マリーダ「さっさと歩け、私が我慢出来ている間にな!」

フェルト「……っ」

マリーダ「……ふん」

グラハム「マリーダ、手柔らかにな」

マリーダ「言われずとも!」

グラハム「ぬ……」

茫然自失のフェルトはそのまま輸送機の廊下にマリーダと共に消えていき、広い輸送機の格納庫にグラハム一人が残される
一世一代の交渉の興奮はあっさり冷めていた

グラハム「さて……どうしたものか」

彼女は何者なのか
何故この場にいたのか
いつから此処にいたのか
そして、家族とは一体誰なのか

分からないことだらけではあったが、不思議と巡り合わせのようなものをこの出逢いに感じていた

乙女座故のセンチメンタリズムな運命か、それとも何者かの導きを感じたものか……
恐らくは、後者であろう

グラハム「……ニール?」

虚空に呟いてみたが、応えは返ってこない
まさかな――
一人ごちながらグラハムは向き直り、マリーダの後を追う
彼女から聞かねばならないことは山ほどあった


――中東・クルジス――

ジンネマン「ギラ・ドーガの状態は?」

整備士「問題はありません。投下された疑似GNドライブ補給用のユニットも無事です」

見上げながら整備士に問う。期待していた通りの言葉が返ってきて一安心だ
黒いまだら模様に塗りつぶされた、ジンネマン専用ギラ・ドーガ。長い柄のついたGNビームアックスがその威容を高めていた

ジンネマン「ようし、ならさっさと動くぞ。俺達の任務は地上の反政府勢力を宇宙に上げることだ、グズグズしてたら全部叩き潰されちまう」

他には三機、ギラ・ドーガが存在した
疑似太陽炉搭載型のMS、スリースラスターと呼ばれる背部ユニットにより加速力はGN-Xの比ではない
扱いにくさは否めないが、此処にいるのは太陽光紛争からずっと自分に付き従っている戦争のプロだ
ひよっこ共には負けるつもりなどさらさらない。腐った地上の軍隊なぞ、全て蹴散らしてやる

ジンネマン「始めるぞ、【袖付き】の初陣だ」

ギラ・ドーガに乗り込み、起動させる
モニターには降下を予測したGN-Xが三機、此方に向かってくるのが見えた
狼煙にはちょうど良い、ジンネマンの顔は自然に笑みを浮かべていた

ジンネマン「さぁ来い……戦い方を教えてやる」


TO BE CONTINUED...


マリーダ「!」

グラハム「どうした、マリーダ」

マリーダ「いえ……何も」

マリーダ(何だ、この感覚は……?)


次回【紅】

音の爆発は戦場に響き渡る



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