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マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」 その30

2012年04月23日 18:37

マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」二機目

593 :>>1 ◆/yjHQy.odQ [saga]:2011/08/01(月) 01:14:35.60 ID:8BrQa+yAO

――中東――

『撃て、撃て!』

『敵を近づけさせるな! 一秒でも多く、同志の時間稼ぎを!』

ティエレン対空型が五機、煤けた空を見上げながらひたすら砲火を放っていく
上空にはRGMが三機、GNビームガンとシールドを装備した一般型が粒子を吐き出しながら滞空していた

『装甲まではGN-X程ではないらしい、やはり無茶はしてこないぞ!』

RGMは弾を避けながら旋回、なかなか踏み出せず頃合いを見計らっているようにも見える
それもそのはず、RGMはまだ配備の進まないGN-Xの代替機として大量生産が成されている
故にその装甲は既存のEカーボンより少し良質な程度であり、カスタマイズ機以外は旧型MSの携行火器でも十分対応出来るのであった
この一点に於いてはティエレンのパイロットの思惑通り――とある人物の作戦も加味し、分断された国連軍の戦力は、どの戦線でも追撃をしきれずにいた

『まだ弾はある……いけるぞ!』

そして今この場においては、張られた弾幕と温存されたミサイルの脅威に、追撃部隊が足止めをされている状態にあった

『国連軍の狗共め、指をくわえて見ているがいい!』

『同志の手により、正義の鉄槌が振り下ろされるその日までッ!』

原理主義組織の出であるこの部隊は、死さえも厭わず足止めを引き受けていた
狂信者、と呼ばれる類の者達である
ガンダムという無国籍、無思想の脅威が消え去った今、この様な存在がまた各地で紛争の火種としてくすぶり始めていた

マリーダ「……だったら、我々がその火を消すまでだ」

『!』

弾幕を張り続けていた、耳元でひたすら反響し続ける爆音の中
最初に気づいたのは、左から二番目のティエレンのパイロットだった
日光が一瞬遮られ、ティエレン対空型の前に躍り出る漆黒の機影
RGMが攻めきれずにいた二十門の対空砲の掃射をいとも容易くくぐり抜けたそれは、あろうことか彼らの目の前で姿を変え、人型として手の届く位置に降り立った

『な、何だコイツ!?』

『黒い……黒いフラッグだ!』

マリーダ「……」

動揺が波立ち、五機へと一斉に伝わる
ほぼ同時に、中心の一機の胸部に深々と紅い粒子の刃が突き立てられた

マリーダ「悪いが、そう時間をかけてはいられないのでな」

『ま、まさかコイツ……!』

砂煙を上げながら倒れるティエレン
その刃が、他のティエレンへと即座に向けられる
今まで対峙していたRGMなど、比較にすらならない圧倒的な戦力差
もはや、彼等に抗う力は残されてはいなかった

マリーダ「……蹴散らすぞ」

『ユニオンの、ライセンサ……!』


――それから三分後、照りつける太陽の下にはティエレン対空型だったものが五個、ただただ無惨に転がっていた
戦場において、死は列を成し平等に訪れる
彼等の手には、抗う術が無かっただけなのだ……



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――中東・国連軍基地――

マリーダ「ふぅ……」

フェルト「お疲れ様です、マリーダ中尉」パサッ

マリーダ「あぁありがとう、ちょうどタオルを切らしていたところだ」

フェルト「連日大変ですね、こんなに暑いのに毎日毎日」

マリーダ「仕事だからな」フキフキ

マリーダ「それに今我々が追撃しているのは、ガンダムが現れる以前からテロを起こしていた反政府ゲリラ達ばかりだからな」

マリーダ「逃がすわけにはいかないさ……」

フェルト「……」

AEU兵士「中尉、お疲れ様です」

マリーダ「あぁ、お疲れ」

フェルト「……!」ササッ

AEU兵士「見てましたよ中尉、ハリネズミを五機潰した時の剣さばき!」

AEU兵士「流石はライセンサーの懐刀ですな、次も戦果を期待してますよ」

マリーダ「ありがとう。君も死ぬなよ」

AEU兵士「それじゃ、失礼します」

フェルト「ハリネズミ……ティエレン対空型を、ですか?」

マリーダ「あぁ」

フェルト「……」

マリーダ「フェルト、マスターを知らないか」

フェルト「それならマリーダ中尉より先に帰還して、今頃は作戦司令室にいるはずです」

マリーダ「そうか……ありがとう」スタスタスタ

フェルト「あ……」

フェルト「……っ」ギュッ

ミーナ「ティエレンツーウェイを五機、リアルドを三機撃墜。本機体の損傷は確認出来ず……流石ねぇマリーダちゃんは」

フェルト「……」


――基地・ユニオン軍休憩所――

椅子に座り、脚を組み直しながらモニターを見つめる女性、ミーナ・カーマイン
肌の艶やその抜群のスタイルは、同じ女性のフェルトから見てもスゴイモノである

ミーナ「グラハムはそうでもないわね~、これはリディくんのお守りに熱心だったからかしら?」

ミーナ「ま、何にせよ戦場に復帰してからもう1ヶ月、ライセンサーの面目躍如ってところかしら」

よくよく考えてみれば、以前ソレスタルビーイングに接触してきた謎のガンダムマイスター【トリニティ】の紅一点、ネーナ・トリニティの外見と彼女はよく似ていた
最初にあった時はスメラギもフェルトも余裕など全く無い状態だったため気付かなかったが、特に声は瓜二つと言っても過言ではないレベルで、同一人物のものではないかと疑ったくらいである

ミーナ「あら、見つめちゃってどうしたの? フェルトちゃん」

フェルト「えっ? いや、何も……」

ミーナ「うふふ、大丈夫よフェルトちゃん。あなたならあと三年もすればこの位育つわよ、きっとね?」ポヨンポヨン

フェルト「っ……///」

皆が慌ただしく戦場を駆け巡る今となっては、ミーナと過ごす時間がフェルトの中では一番長いものになっていた
時間が空くとマリーダ中尉やダリル少尉が会いに来て話をしてくれたりもする、フェルトは最年少ということもあってか、此処でも妹のように可愛がられていた

ミーナ「ん、こんなものかしら。戦闘データなんかあんまり取ったってあたしの仮説には何にも役立たないし、別に良いわ」

フェルト「ず、杜撰です……」

ミーナ「それよりお昼にしましょ? お腹が空いては恋バナは出来ずよ」

フェルト「しなくて良いです!」

彼女といると、何処かクリスティナの存在を思い出す自分がいた
グラハム少佐や他の皆とは違い軍属ではないミーナは、フェルトと等身大の付き合いをしようとしてくれる数少ない人物であった
恋バナと称し『ファーストキスはいつだった』とか『今気になっている人は』とか聞き出そうとしてくるのは少々面倒だが……それでも今では一番仲の良い人物になっていた

ミーナ「マリーダちゃんのファーストキスの味が『鉄の味』って聞いた時は笑ったわね」

フェルト「後ろの方でグラハムさんが咽せてましたね……」クスクス

ミーナ「全く、あの犯罪者め。フェルトちゃんはああいう手合いに惚れちゃ駄目よ?」

ミーナ「ん……?」

フェルト「あ……」

リディ「お……フェルト、それにミーナさんも」

食堂までの一本道、いつものように壁に寄りかかるリディ少尉に遭遇する
スクランブルや出撃が無い限り、彼はいつも決まった時間決まった場所で二人を待っているのだ

ミーナ「あら、相変わらず待ち伏せ? 献身的じゃない少尉」

リディ「はは……ミーナさんにゃかなわないな。半分日課になっちゃったんですよ、惰性惰性」

フェルト「リディ少尉もこれから昼食ですか?」

リディ「はは……よそよそしいな、少尉だなんて。リディでいいよフェルト」

フェルト「は、はぁ……」

ミーナ「積極的過ぎるのも問題ねぇリディ」

リディ「ミーナさんまで呼び捨て!? つうか積極的って何の話ですか! アナタには言われたくない気もしますけど!?」

三人揃って並び、食堂に歩いていく
リディを見ていると、いつも明るく笑っていたリヒティが脳裏をよぎる
何となく名前が似ているだけかも知れないが……いつものこの時間だけは、昔に戻ったような懐かしさに襲われ、少しだけ寂しさを覚えてしまうのだった

リディ「フェルト……今何か失礼なこと思わなかったか?」

フェルト「いいえ、何にも思ってないッスよ」

リディ「何だぁ? その語尾……」

フェルト「ふふ、ちょっとね。昔の家族の真似」

まだ少し馴染めないことも多いが、きっとすぐに馴れていくだろう
そんな前向きな気持ちが、今のフェルトを支えていた
――もう少しだけ、こうしていたい
フェルトは自分でも気づかぬ内に、変革を迎えていた


――作戦司令室――

マリーダ「失礼致します。オーバーフラッグス所属マリーダ・クルス中尉、只今任務より帰還いたしました」

マネキン「来たか、マリーダ」

グラハム「話は聞いた。多大な戦果を挙げたそうだな」

マリーダ「マスター」

グラハム「よくやった、マリーダ」

マリーダ「……はい!」

マネキン「済まんなお二方、二人の世界に割り込ませてもらうぞ」

グラハム「む……」

マリーダ「た、大佐……!」

マネキン「ふふ、茶化しただけさ。そう熱くなるな」

マネキン「どうかなグラハム、マリーダ。新たなオーバーフラッグの力は」

グラハム「GNコンデンサによるビームサーベルの内蔵……素晴らしいの一言に尽きます」

マリーダ「GN-XやGNフラッグに比べると出力不足は感じますが、オーバーフラッグに搭載する分には最高峰の兵器です、大佐」

マネキン「喜んでもらえたようで何よりだよ。手配した私の苦労も戦果によって早々に報われたし、言うこと無しだ」

マネキン「ただ、うちの整備班では提案しても実現出来なかったものをああも容易く積み込むとは……流石はビリー・カタギリ技術顧問、とも言うべきかな」

グラハム「えぇ、私やマリーダの挙げた戦果の半分以上は、彼のもたらしてくれたフラッグのお陰といって過言ではありません」

グラハム「本当に頼りになる盟友です、カタギリという男は」

マネキン「だが油断は出来ん」

マネキン「もう知っているとは思うが……一月前、旧クルジスで例の未確認機【サイクロプス】が確認され、迎撃に出ていたGN-X三機が撃墜された」

グラハム「……」

マネキン「それにもう一つ、今日お前達も感じたと思う。我が国連軍は人員の数こそ多く、物資も豊富だが……」

マリーダ「パイロットの質は決して高くない、という事ですね?」

マネキン「その通りだ」

マネキン「一連のガンダム掃討戦において、我々は多くの優秀なパイロットを失った」

マネキン「MSの性能差が著しい今だからこそと、上層部は多くの新兵を前線に派遣してきている」

マネキン「……その結果が、あれだよ」

マリーダ「RGMの武装なら、三機の連携で地上から攻めれば突破も容易なはずでした」

マリーダ「それも分からず空中で右往左往……あれでは、マネキン大佐のお嘆きもごもっともです」

グラハム「此方も似たようなものだ。まんまと罠の張られた場所までおびき寄せられ、地雷で動けなくなるRGMが今日だけでも四機はいた」

グラハム「かといって既存機では、対空型を効率的に配置した敵の防衛ラインを突破するのは至難の業だ」

マネキン「故の君達、故のフラッグファイターだ」

マネキン「私の期待、裏切ってくれるなよ」スッ

グラハム「はっ!」

マリーダ「……!」

マリーダ「……そうだグラハム、昇進した君に頼みたいことがあるのだ」

グラハム「私に、ですか?」

マネキン「敵は捨て身のゲリラ戦を展開し、此方の気勢と行軍を阻害しようと躍起になっている」

マネキン「被害を少なくする為にも、最前線では現場の判断が重要になってくるのは間違い無い。そこでだグラハム」

グラハム「はい……?」

マネキン「君にAEUから数名兵士を預ける。ライセンサーとしての権限を使い、遊撃隊として最前線で戦ってもらいたいのだ」

グラハム「何とッ!?」

マリーダ「AEUの兵士を……ですか?」

マネキン「具体的には四名、改良型のイナクトに乗せて君の部隊に預けよう」

マネキン「小隊として、AEUではそこそこ名前の知れた部隊でな。隊長と副隊長に少々クセのあるところが目立つものの、私の見たところ十分君達と肩を並べて戦えるはずだ」

グラハム「……」

マリーダ「マスター……」

マネキン「頼めるか? グラハム」

グラハム「他ならぬ大佐の頼みです、断っては男が廃ると言うものでしょう」

グラハム「四名の命、確かにこのグラハム・エーカーが預からせていただいた! 必ずや全員五体満足でお返ししてみせましょう」

マネキン「……助かる。グラハム」

マネキン「早速手配を進めよう。イナクトは元々フラッグにも通じる機構が多いMSだ、一応整備班も此方から出すが、カタギリ技術顧問達ならば整備のしようはあるはずだ」

グラハム「彼等ならばきっとやり遂げてくれましょう、お任せ下さいマネキン大佐」

マネキン「任せる。それでは、四名の詳しい資料はこれに」

マリーダ「……」

グラハム「では、失礼致します」

マネキン「頼んだ」

ウィンッ

グラハム「ふふ……面白くなってきたではないか」

マリーダ「マスター、我々はともかく他の隊員は大丈夫でしょうか?」

グラハム「愚問だ。私に付き合ってきたあいつ等なら、ちょっとやそっとの軋轢など問題にはすまい」

グラハム「特別恨まれることをしなければ、つつがなく終わることだろう。そう心配するな」

マリーダ「はっ……」

グラハム「ところで、彼等の名前は分かるか? 誰が来るかぐらいは見ておきたいものだ」

マリーダ「了解です、マスター」

ピピッ

マリーダ「隊長:ヴィクトル・レオーノフ大尉」

マリーダ「副隊長:ルドルフ・シュライバー少尉」

マリーダ「以下二名の曹長を加えた第33MS小隊がオーバーフラッグスに転属してきます」

           ・
                         ・
                         ・



――中東・元PMC中継基地――

PMC兵士「クソッ! このまま解体しなくちゃならないってのか……」

PMC隊長「どう足掻いても次で最後だろう。昼間の戦闘では惨敗を喫した……我々の部隊の戦力ではもう……」

PMC兵士「畜生……」

PMC兵士「な、なぁあんた! ガンダムで何とかならないのか!?」

フォン「あん?」

874HARO『……』

PMC兵士「ガンダムは紛争に介入するんだろう? あんたがこの紛争に介入してくれれば百人力だ」

フォン「あげゃ、別に構わないぜ。どちらにも攻撃していいっつうんならな」

PMC兵士「そんな……!」

フォン「あげゃげゃげゃげゃげゃ!」

フォン「最初から自分の力で何も出来ないんなら、事を起こそうだなんて考えるもんじゃねえぜ」

フォン「責任は自分で取れ……それが自分の行いに対する最低限の礼儀だ」

PMC兵士「ぐ、ぐう……」

フォン「あげゃげゃげゃげゃげゃ、ぐうの音が出る内は何とかなんだろ。せいぜい気張れや傭兵諸君」

874HARO『ハロハロ』

874(……フォンはあれからずっと、以前在籍したPMCのツテを利用して戦場の側にこそ席を置いてはいるが、自身が戦うことは一度もない)

874(フォン……アナタは一体何を考えているの?)

PMC兵士「こうなったら、玉砕覚悟でも奴らに痛手を!」

PMC隊長「ぬう……」

『馬鹿なことを考えるんじゃないよ!』

フォン「!」

874「!」

「考えて考えて、考え抜いて戦った結果に死ぬんならまだ納得も出来ようさ」

「でも行き当たりばったりで暴れた挙げ句、突っ込んで玉砕? アホらし……あたしは嫌だよ。そんな死に方」

フォン「女……?」

874HARO『ハロハロ』

PMC兵士「しかし少尉、このままでは……!」

「仕方ないさ。とりあえずは例の連中とやらに合流するのが今のところ唯一の手みたいだ」

「あたしが時間を稼ぐ。その間に部隊を動かしておくれ隊長」

PMC隊長「ネフェル、まさかお前っ……!」

ネフェル「死ぬつもりは無いよ隊長。それこそ犬死にだからね」

ネフェル「ただ、どうせ目にモノ見せてやるなら渦中の人に見せてやろうってだけの話さ。アタシのイナクトなら逃げられる、直ぐに合流してやるよ、安心しな」

フォン「あげゃ……」

ネフェル「ライセンサー、グラハム・エーカー……」

ネフェル「アイツを狙い撃って、ね」


――某所――

バチバチバチッ

アレルヤ「がぁぁぁぁぁ!?」

将校「出力を上げろ!」

兵士「し、しかしこれ以上は人間の許容度を超えてしまいます!」

将校「構わん! どうせコイツは肉体強化された超兵、ちょっとやそっとじゃへこたれん」

将校「尋問を開始して、もう四月ほどだ。そろそろ何か一つくらいは吐いてもらわなくてはな」

アレルヤ「あっ……は……っ」

将校「どうだ? いい加減我々に力を貸してはくれないか」

将校「私だってこの様なことはしたくないんだ……君が協力してくれるなら、今すぐにでも待遇を変える準備がある」

アレルヤ「……っ……」

将校「ふふ、最近は死んだようにだんまりを続けていたが、最近はまた表情豊かになってきたようではないか」

将校「あの小娘は何をした? 誰かと面会させたとも聞いたが……」

アレルヤ「…………」

兵士「! 心拍数上昇」

将校「ふん……気に入らんな。我々の歓迎よりも小娘の方がお気に入りとは」

将校「構わん。続けろ」

兵士「はっ!」

将校「世界を混沌に貶めたソレスタルビーイング……その構成員に人権があるなどと思うなよ」

将校「じわじわとなぶり殺しにしてやる……悪魔共め」

アレルヤ「……」

バチバチッ

アレルヤ「っっ!?」


――???――

『あぁぁあああああああああああ!!』

プルツー「もう良い、回線を切れ!」

リジェネ「はいはい」

ピッ

プルツー「結局あの男は喋らず仕舞か……」

リジェネ「彼は君らのような強化を施された超兵、薬品による自白や肉体的苦痛にも飛び抜けて耐性がある」

リジェネ「よりによって捕まったのが彼とはね……間の悪い話だ」

プルツー「どうせガンダムマイスターに与えられた権限なんか微々たるものさ、吐いたところで何の役に立つか」

リジェネ「たとえ仮初めの自白でも、一度折れた心は決して元には戻らない」

リジェネ「君が彼に行った【面会】と【提案】に関しても、それなりに有利になるんじゃないかい?」

プルツー「どうかな……今更じゃないか」

リジェネ「淡泊な反応だ、意外だよ」

プルツー「ん?」

リジェネ「あの三人を処分手前で保護したのは、アレルヤ・ハプティズムの罪の意識を利用して此方側に寝返らせる為だと思ったのだけれど」

リジェネ「今の君の態度では、まるで彼に対するアプローチは物のついで……保護がメインといった感じだったから」

プルツー「……何が言いたいのさ」

リジェネ「素直に感心しているのさ、君にも感傷めいたものがあるんだなとね」

リジェネ「生き残りの妹さんにもまだ甲斐甲斐しく薬を届けさせているみたいだし……」

プルツー「……」

リジェネ「リボンズの玩具だと思っていたから、僕からすれば実に良い見世物だよ、プルツー」

プルツー「……ふん」

プルツー「お前等イノベイターの、そういう自惚れた自意識だけは全く慣れる気がしないね、反吐が出る」

リジェネ「自惚れとは違うな、上位種だけが持ちうる正当な優越感と呼んでもらいたいね」

プルツー「……」

プルツー「ヴェーダの使い捨てがエラそうに……」ボソッ

リジェネ「今のは聞かなかったことにしておくよプルツー……おあいこだ」

プルツー「ふん……そういうことにしておいてやる、今のうちはね」

ピッ

リヴァイヴ『プルツー、リボンズからだ』

プルツー「何だい」

リヴァイヴ『サイクロプスが地上に降りたのを確認、リボンズの読み通り反政府組織にアプローチをかけてきたようだ』

リヴァイヴ『そのせいか中東情勢が慌ただしくなってる、彼は国連軍の中にも此方の手勢を送っておきたいそうだ』

リヴァイヴ『最適な人物を選んでもらいたい、勿論君以外でね』

プルツー「ちっ……どいつもこいつも一々癇に障る」

リヴァイヴ『ちなみにヒリングがこの案件に関し立候補している』

プルツー「冗談だろう? 暇つぶししたいだけの奴を送るほどあたしは優しくないよ」

リヴァイヴ『……だ、そうだ』

ヒリング『ぶー! プルツーのいじわる!』

プルツー「お前等……いつも言ってるけど能天気過ぎるんだよ、全く」ハァ

プルツー「ヤザンに連絡を。アイツは小回りが利かないからね、こういうのにはうってつけだ」

プルツー「例のGN-Xの開発は?」

リヴァイヴ『急ピッチで進めているみたいだ、直にRGMで戦果を挙げた者達を中心に配備を進めるつもりなのだろう』

プルツー「とりあえずは旧式でもやれるか……ヤザンならイナクトでも何とかなるだろう」

プルツー「あぁ……それと」

リヴァイヴ『何だい?』

プルツー「例の被験体……S-35、E2-33、D-26の三人の様子は」

リヴァイヴ『薬品投与を行ったばかりだから暫くは保つだろう。各々趣味に没頭している』

プルツー「……そうかい」

リヴァイヴ『やはり同族は気がかりかな?』

プルツー「お前まで下手な勘ぐりを入れる、いい加減にしろ!」

リヴァイヴ『ふふ……私はそういう君も嫌いじゃないんだけどね』

リヴァイヴ『ヤザンには通達しておくよ、それじゃ』

ピッ

プルツー「くそっ!」ガンッ

リジェネ「クックック……」

プルツー「……!」キッ

リジェネ「僕はそろそろ失礼しようかな。噛みつかれては面倒だ」

リジェネ「またねプルツー、良い夢を」ウィンッ

プルツー「さっさといけっ!!」ブンッ

ガンッ

プルツー「っ……!」


――国連軍・MSドッグ――

グラハム「……」

ガチャカチャ

グラハム「!」

ビリー「ふう……」

グラハム「カタギリ」

ビリー「おや、どうしたんだいこんな夜更けに」

ビリー「僕かい? 僕はいつものようにフラッグの最終点検さ。GNビームサーベルと内蔵コンデンサの具合を確かめておきたかったのさ」

グラハム「まだ、何も言ってなかったのだがな?」

ビリー「ははっ、君の言いたいことくらい顔を見れば分かるさ」

グラハム「ぬ……そうか?」

ビリー「お互い長い付き合いだからね、そのくらいは分かるよ」

グラハム「そうか……」

グラハム「……あぁ、そうだな」

カチャンッ

ビリー「……」

グラハム「……」

グラハム「済まんな、カタギリ」

ビリー「ん? どうしたんだいいきなり」

グラハム「せっかく開発してもらったGNフラッグ……あれを取り上げられてしまったのは、私の責任だ」

ビリー「君が負けたから、かい?」カチャカチャ

グラハム「それもある。だがミーナ女史が予め教えてくれたにも関わらず、私は何の手も打てなかった」

グラハム「ニュータイプに対する厳しい政治的措置……バイオシートも実験で使うようなものしか与えられず、GN-XはおろかRGMすら回されてこない」

グラハム「GNフラッグをより完全な物に仕上げるための研究も予算が降りないと聞いた……私の不徳の致すところだ」

ビリー「君にしては弱気な発言だね、それに予算不足に嘆くグラハム・エーカーというのも珍しい」

グラハム「カタギリ!」

ビリー「話は聞いたよ。AEUイナクトに乗ったパイロットが四人、配属されるんだろう?」

ビリー「今現在RGMの量産の穴を埋めるため、イナクトが地上の治安維持の為製造されている。イナクトとの連携もいつかは起こり得る話だったさ」

ビリー「フラッグはもう増産されず、僅かに機体維持の為のパーツしか造られていないってのにね」

グラハム「カタギリ……」

ビリー「でも君はフラッグに乗ってくれている……今でも僕達に命を預けてくれている!」

ビリー「それだけで僕達は十分だ、十分なんだ!」

グラハム「……」

ビリー「だから……だからそんな事を言わないでくれグラハム……」

ビリー「僕は……僕はっ!」

グラハム「カタギリ!」

グラハム「……分かった、悪かったよ……」

ビリー「っ…………」グスッ

グラハム「良い歳して泣くな……フラッグの前で涙を流すなど、エイフマン教授に笑われてしまうぞ」

ビリー「ははっ……全くだね……」ズズッ

グラハム「……」

グラハム「機体の整備に支障が出れば、恐らく我々は部品の配備が間に合わないなどと理由を付けられ足止めを喰らうだろう」

グラハム「間に合うか? カタギリ」

ビリー「君達が被弾しないおかげで今のところはね。マネキン大佐のおかげで全機体にサーベルが付いたけど、予備在庫を考えると此方の方が怖いよ」

ビリー「君こそバイオシート無しのフラッグだ、反応速度の方は……」

グラハム「関節部への磁気コーティングとやらが利いてくれてるおかげで、大体はな」

グラハム「GNフラッグとは比べてはいけないものだと思っている、あれは色々な意味で異端だった」

ビリー「GN-Xが配備されれば、もう少し余地があるんだけどね……」

グラハム「いずれにしても、私が為すべき軍人としての責務には、まだこのフラッグの力を借りざるを得ない」

グラハム「任せられるな?」

ビリー「合点承知! ってね」

グラハム「ふっ……頼りになる友だ」

グラハム「……なぁカタギリ」

ビリー「ん?」

グラハム「例えばの話をする、軽い気持ちで答えてもらいたい」

ビリー「例えばの話?」

グラハム「まぁ心理テストのようなものだ……良いかな?」

ビリー「君からそんな話が出されるとはね……はは、珍しいことは続くものだ」

ビリー「良いだろう、それで何だい?」

グラハム「……例えば君が軍人で、同じ軍属の女性に想いを寄せたとする」

グラハム「情勢は荒れ、いつ死に直面するか分からない時勢に変わったとして……君は彼女とどう接する?」

ビリー「……」

グラハム「……」

ビリー「…………」

グラハム「…………」

ビリー「グラハム、それマ」

グラハム「言うなカタギリッ!!」

ビリー「……」

ビリー「……君という人は、本当に不器用な男だねグラハム……」

グラハム「……自覚はしているつもりだ」

ビリー「悪いけど、僕には答えを出すことは出来ないよ。第一重くて全然軽い気持ちで答えられないし」

グラハム「ぬぅ……」

ビリー「ま、共に闘うにせよ戦いから離れさせるにせよ……その女性とやらと話し合うしかないんじゃないかな?」

ビリー「軍人という生き物は、少なからず皆覚悟している。その覚悟を君がどう受け取るか、そこに僕は懸かっていると思うね」

グラハム「……」

ビリー「しかしまさか、君にこんなことを相談される日が来るなんてね……」クックック

グラハム「茶化すなカタギリ……私も真剣なんだ」

ビリー「了解だ、何か進展があったら教えてくれよ」

ビリー「仲人は是非このビリー・カタギリに……なんてね」

グラハム「カタギリッ!」

ビリー「あっはっは! じゃ、おやすみグラハム」

グラハム「ッ……全く、人事だと思って」

グラハム「……しかし」

グラハム「こんなことを考える日が来るとはな……」

薄暗いMSドッグには、グラハム一人が取り残されていた
見上げれば、完璧に整備されたフラッグ
その装甲には、かつて彼が掲げていたパーソナルマークから、片翼を外したものがペイントされている

グラハム「……スレーチャー少佐」

グラハム「今なら、貴方があの時空を飛んだ理由が分かるような気がします」

グラハム「今更になって惑う私を見たら、貴方はまた若僧と私を貶し笑うのでしょうか?」

グラハム「それとも……」

共に空を飛びたいという気持ちから、グラハムはパーソナルマークの一件を二つ返事で彼女に許した
だが、凄惨な過去を知っているからこそ、平穏な世界で幸せになってもらいたいというのも本心であった

グラハム「私は……違うだろうな」

恐らく、自身は一生MSに乗り、一生軍人として生きていくのだろう
そういう生き方しかきっと出来ない、盟友の言うとおり不器用な男だから
ソレスタルビーイングの一件以来、その想いはずっと強くなっていた
世界に関わる方法も、生きるための糧を得るやり方も
これ一つしか知らないのだから

グラハム「だが……」

しかし、彼女にまでそんな十字架を背負わせる気は毛頭無かった
セルゲイ・スミルノフがソーマ・ピーリスを戦わせたがらないのと同じ様に、グラハムもまた出自による宿命を是としない考えの持ち主なのだ

強化人間だから

ニュータイプだから

そんなことはどうでもいい
マリーダ・クルスはマリーダ・クルスだ
平穏を生きる権利が、彼女にだってあるはずだ

グラハム「マリーダは……応えてくれないだろうな」

それでも、きっと彼女は銃を取るだろう
それが彼女のアイデンティティであり、存在意義なのだから
そう、他ならぬ【マスター】の為に

グラハム「……今夜は寝付けそうにない」

また、フラッグを見上げる
何も答えてはくれない。MSなのだから、当たり前のことだ
しかし、グラハムは不意に慰めの言葉を聞いたように思えた
フラッグが慰めてくれたような、そんな錯覚を覚えた


――朝・輸送機内――

ダリル「ったく、ついてねえ。移動中にゲリラと鉢合わせとはな!」

ジョシュア「石油禁輸出規制のせいで中東国家とは折り合いがつかないとはいえ、こんな穴だらけの情報じゃあな!」

狭い更衣室、皆一様に慌ただしく軍服を脱ぎ捨て、白いパイロットスーツに着替えていく
リディは隅でゼリーチューブを口にくわえながら、スーツの袖に腕を通していた

リディ「しっかし……どうしてこう色んなとこから現れるんですかねっ!?」

ダリル「仕方ねえさ、元々中東は三大国家とは仲が悪い。手続きとかでもたついて偵察もままならないんだろうさ」

ダリル「とはいえ、もう少しやりようがあったと思うが、な!」

本来安全性が最も高いと言われていたルートだけに、油断がなかったとは言い切れない
それにしても情報が足りなすぎる、と皆不満を漏らしていた
命を懸けている兵士からすれば、政治的な軋轢で自身等が危機にさらされるのだ
当然だな、とリディは小さく呟く

ジョシュア「よしっ一抜……」

タケイ「……」スッ

ジョシュア「あぁっ!? タケイてめえ!」

ダリル「うるせぇよ! 隊長は先に行っちまってんだ、さっさと行け!」

リディ「っとと……!」

リディ「……フェルト、大丈夫かな」

ジョシュア「あぁ?」

ダリル「何だ新人、お前あのお嬢さんに惚れたか」

リディ「なっ!?」

ジョシュア「おいおい、犯罪だぞそれ。何歳差だよお前」

ダリル「ジョシュア、お前それ絶対に隊長の前で言うなよ。絶対だぞ!」

リディ「そんなんじゃないですよ! ただ気になっただけで……」

ジョシュア「ムキになるのが怪しいな、まぁ女の趣味はとやかく言える立場じゃねえがよ」

グラハム『先行するぞ、ハッチ開け!』

細い廊下を抜け、各々フラッグに乗り込んでいく
いち早く到着していた隊長機は一番にカタパルトへと移動し、発進準備に入っていた

リディ「ったく……すぐそうやってからかうんだから」

ジョシュア『可愛がってんだよ、お坊っちゃん!』

マリーダ『無駄口は其処までだ』

マリーダ『各員発進と同時に2マンセルで散開、輸送機を護衛しつつ敵機を撃破する』

ダリル『てぇと、やっぱり勧告には応じなかったんですね』

マリーダ『あぁ、残念だがな』

グラハム『だがこのままでは終わるまい。奴らが動く前に先んじる!』

リディ「了解……です!」

ハッチが開かれ、強い風がフラッグの翼に吹きつけられる
グラハムのフラッグがエンジンに火を点し、今か今かと出撃の時を待つ

リディ「……?!」

マリーダ『っ……!?』

その時、吹き抜ける風の音が遠退くような感覚に襲われた
えもいわれぬ不安に駆られる、背筋を嫌な感覚が這い上がっていく

グラハム『グラハム・エーカー、出るぞ!』

マリーダ『マスター、待っ……!』


グラハムのフラッグがエンジンに点火し、勢い良く発進していく

駄目だ

行ってはいけない

そう言葉にする前に、黒いフラッグが曇天の空に飛び出していく

そして、風を切り突然飛び出してくる何か


ダリル「はっ……?」

ジョシュア「え?」

タケイ「……!!」


フラッグの翼が、砕け散った

煙が尾を引き、流星のような軌跡を描き地面へと墜落していく

あのグラハム・エーカーのフラッグが、力尽きた渡り鳥のように重力に引かれて落ちていく

何が起きた

その時、誰もがそう思っていた


TO BE CONTINUED...


ジンネマン「……来たか」

?「済まない、少し遅れたようだ」

ジンネマン「構いませんよ。此方も急な訪問だった」

?「そう言ってもらえると助かります」

ジンネマン「スベロア・ジンネマンです」

クラウス「クラウス・グラード。この反政府部隊を指揮しています」

クラウス「早速ですがこれからのことについて話しましょう。我々にはもう時間があまり無いのだから」



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643 :>>1 ◆/yjHQy.odQ [saga]:2011/08/17(水) 01:09:39.24 ID:A9FPM6rAO
【休憩室に汗だくのマリーダを配置し、アイスを持たせたユニオン軍人を投下した場合の考察】

マリーダ「……」

リディ「……た、食べます?」
(20秒で折れた。軟弱者)

ジョシュア「……ほれほ~れ」

マリーダ「……!」
(アイスに反応するマリーダでひとしきり遊んで殴られる。二分十二秒)

ダリル「中尉、ご苦労様です!アイスは如何ですか?」
(趣旨を間違え即渡す。思いやりゴリラ)

タケイ「」ガタンッ

マリーダ「」ガタンッ
(場外乱闘勃発、理由は不明)

グラハム「マリーダ、これでも食べて精を付けろ」

マリーダ「はっ……ですが」

グラハム「?」

マリーダ「頂くのは、半分だけに致します」(論外)

投下再開だフラッグファイター、アイスクリームの食べ過ぎには用心しろ
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