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マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」 その31

2012年04月23日 18:59

マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」二機目

644 :>>1 ◆/yjHQy.odQ [saga]:2011/08/17(水) 01:24:34.06 ID:A9FPM6rAO

――輸送機――

ビリー「一体何が起きたんだ!?」

オペ子「地上からの狙撃です! 兵装は恐らくレーザーカノン!」

ビリー「レーザーカノン……PMCか!」

オペレーター「グラハム少佐、応答してください! グラハム少佐ッ!」

オペレーター「駄目です……返信ありません……ッ」

ビリー「そんな……」

ビリー「グラハァァァムッ!!」



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――地上・即席トーチカ――

スコープの中で小さな黒い物体が煙を上げ、急激にその高度を落としていく

本当に現れてくれた
情報が確かであったことを、今は神に感謝したいくらいだ

ネフェル「ッ……」

イナクトの上半身が多脚型ユニットの先端に装着されたMA、アグリッサ
それを特殊な金属板が囲い、ステルス機能を有した隠れ蓑を作り出していた
通常のMSでは装備できないレーザーカノンを装備した旧型MSバリエーション中最高級の性能を誇る機体
現状GN粒子を扱うMSらに対抗しうる唯一の存在である

ネフェル(流石はガンダムと渡り合った精鋭……一筋縄じゃいかないか)

『やったぜネフェル! 一機ダウンだ!』

ネフェル「浮かれるんじゃないよ馬鹿! 軸をずらされた……しとめ切れてない!」

ネフェル「死角からのスナイプが読まれた……まさか、噂のエスパー?」

下方からのレーザーカノンの一撃は、確かにフラッグの真芯目掛け撃ち放たれていた
だが出撃してからフラッグはすぐに急旋回、機体を異常なまでに傾けて左翼と腕部へと狙いを外していた

ネフェル「来るっ……!」

追い立てられた蜂のように、輸送機から黒い機影が次々と発進してくる
どの機体も小回りの利くMS形態で空に舞い上がり、隊長機に追随し高度を下げていく

マリーダ『そこかぁぁぁぁぁぁっ!!』

ネフェル「ちぃっ!?」

簡易トーチカ目掛けミサイルが軌跡を描き発射される
すぐさまアグリッサを動かし、トーチカを突き破り横飛びに回避。隠れ蓑にしかならない薄い鋼板は、機体の代わりに粉々に吹き飛ばされていった

ネフェル「気付くのが速いじゃないか! でもフラッグじゃあね!」

マリーダ『敵機確認、アグリッサタイプ7! 他熱源複数!』

マリーダ『ダリル、ジョシュアはマスターの下へ! タケイとリディは私に続け!』

ネフェル「来いよ、フラッグファイター!!」

マリーダ『貴様はぁぁぁぁッ!!』

イナクトの腕に握られたリニアライフルが火を噴き、蒼い弾丸が幾多の粒となりマリーダ機に降りかかる
それと同時に一斉に姿を現すヘリオン、イナクトの部隊。どの機体も天を仰ぎ引き金を引いた

リディ「う、うわぁぁぁ!?」

タケイ「リディ! くそっ!!」

まだ待ち伏せによる混乱が抜けていないのだろう、どのフラッグも動きが鈍く感じられた

――いける

ネフェルは確信めいた手応えを感じていた

PMC兵士『後方からミサイル攻撃!』

ネフェル「!」

その時、弧を描き地面に着弾していく数多のミサイル
後方から、ということは先ほど分かれた二機のフラッグからだろう
斜面に陣取っていたPMC部隊には届かない位置に、ただ砂煙を上げただけのミサイルだった

ネフェル「何だい……錯乱か?」

PMC兵士『はっ、噂のオーバーフラッグスも所詮この程度かよ!』

PMC隊長『煙幕が上がってくれて助かったな、下がるぞ!』

口々に安堵の言葉を発する同僚達
その会話がかえってネフェルの猜疑心を駆り立てた

ネフェル「誤射……本当にそうなのか……?」

前衛の三機が弾幕に耐えかねて撃ち込むならまだ分かる
だが後衛の、味方を救出しに向かったMSが何故そんなことをする必要がある?

ネフェル「可能性があるとするならそれは……」

ネフェル「救出する対象にそれが必要無いから……!?」

PMC兵士『よし、目標地点まで後退する!』

ネフェル「振り返るなっ! 奴が来るっ!!」

PMC兵士「え」

砂煙の壁から、飛び出してきた黒い影
背を向け退却を図ろうとしていたヘリオンとすれ違った瞬間、ヘリオンは腰から真っ二つに斬り捨てられ爆発した

ネフェル「ッ……!」

グラハム「見つけたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

爆風を背に加速し、アグリッサへと一直線に突撃してくるその機体はゎ左腕と翼を失い、墜落したはずのフラッグ
プラズマソードを右手に握りしめ、一気にその距離を詰めてきていた

ネフェル「えぇいっ!」

グラハム「ッ!」

アグリッサの前脚を大きく振り上げ、カウンターの蹴りを繰り出す
しかし読まれていたのか、容易く横に避けられてしまった

グラハム「はぁぁっ!」
一閃。

機体諸ともに回転し繰り出された一撃がアグリッサの前脚を両断する

ネフェル「くっ!」

飛び退きリニアライフルで牽制するも、装甲一枚掠めるだけで全く当たらない
それでもフラッグは更に距離を縮め刃を構える
このしつこさ、尋常ではない

グラハム「まだまだぁぁっ!!」

下に潜り込まれ、瞬く間に二本の脚が斬り飛ばされた
バランスを失い傾くアグリッサ、突き上げられたソニックブレイドが腹を穿ち機体にトドメを刺す
アグリッサは、もう捨てるしかない

ネフェル「分離……ッ!」

クラフトから分かれたイナクトは、苦し紛れに残された抜け殻を撃ち爆発させる
舞い上がった砂塵が戦場を再び覆い隠していった
これなら追撃を振り切り逃げられる
イナクトは身を翻し、退却ルートへと方角を合わせた

グラハム「そうはいかんよ……!」

ネフェル「なっ……!?」

振り返ったはずの場所、人ならば吐息さえかかるであろう位置にフラッグの姿
振りかぶったソニックブレイドが、耳障りな高周音を放ちながら向かってくる

ネフェル(これまで読まれて……!?)

回避など、間に合わない
ネフェルは死を覚悟して目を瞑った

『あげゃげゃげゃげゃ!』

グラハム「ぬぅ!?」

だが、横合いから飛来した謎の弾丸が、直前でフラッグの手の甲を捉え撃ち砕く
とっさのことで揺らぐ黒のボディ、一瞬だが、またとないチャンスだった

ネフェル「邪魔だっ!」

グラハム「ぐぉっ!?」

体当たりで機体を無理やり退かし、退却ルートへと一目散に逃げていく
振り向きはしなかった、いや、振り向けはしなかったと言うべきだろう
兎に角、此処から離れなければならない。隣の友軍を見れば、半数近い数が消えていた

ネフェル・ナギーブの記念すべき初邂逅は、逆転の一打による敗北で幕を下ろした

グラハム「……」

マリーダ「マスターっ!」

グラハム「マリーダか」

グラハム「見ての通り逃がしてしまった、敵もなかなか腕利きらしい」

マリーダ「お怪我は……!」

グラハム「見ての通りだ。左腕と翼をやられた、始末書では済まんな」

マリーダ「マスターご自身の方は……!」

グラハム「無傷だ。そう何度も怪我はしていられんよ」

グラハム「最後の一撃……左で繰り出せていれば届いていただろうに。運のいい奴だ」

マリーダ「……」ホッ

ダリル『隊長ッ! ご無事ですか!?』

ジョシュア『ったく、無理しやがる』

グラハム「ダリル、ジョシュア。良い援護だった、感謝するぞ」

ダリル『伊達にオーバーフラッグスの看板は背負っちゃいませんぜ。それに、隊長こそ流石です』

グラハム「狙撃戦闘用だったのだろうさ、元々白兵戦闘が出来るような機体ではない。近付ければマリーダでも何とかなったさ」

ジョシュア『兎に角早く引き上げようぜ。そんなんじゃいい的だ』

グラハム「そうだな。全機帰投する! それに輸送機は一旦基地へ引き返す、進路の変更を!」

グラハム「……ステルス機能を持った待ち伏せ……」

グラハム「情報が漏れているとしか思えんが……」


――輸送機――

『オーライオーライオーライオーライはいストップー!』

グラハム「ふう……」カンッ

ビリー「グラハム!」

グラハム「カタギリ……済まん。フラッグのパーツが少ないという話をした矢先にこのざまだ」

グラハム「つくづく私の甘さを痛感させられる……君に合わせる顔がない」

ミーナ「何言ってるのよ、普通あのタイミングで狙い撃たれたら即死よ即死」

フェルト「……!」

ビリー「フラッグはやりくりすれば何とかなる、でも君の命はどうやっても一つだ」

ビリー「グラハム……本当に無事で良かった」

グラハム「カタギリ……」ジーン

ダリル『もっと詰めろよジョシュア! 隅に寄れんだろ!』

ジョシュア『俺は此処がいいんだっつってんだろファンキーゴリラが!』

ダリル『あぁ!?』

フェルト「あ……グラハムさん! 腕から血が!」

グラハム「ん? あぁ……最初の一発で飛んだ破片で切ったかな」

ミーナ「結構深いじゃない、早く医務室へ!」

グラハム「なに、このくらい掠り傷だ。放っておいても構わんよ」

ミーナ「でも……!」

グラハム「二言は無い。平気だと言った」

グラハム「カタギリ、マネキン大佐に連絡を取ってくれ。それと……」

フェルト「駄目ですっっ!!!」

グラハム「!?」

フェルト「軍人だって人間です……怪我をすれば血が出るし、痛いのは当たり前なんです!」

フェルト「どうしてそうやってやせ我慢するんですか……! 私達はそんなに頼れないんですか!?」

グラハム「フェ、フェルト……?」

フェルト「マリーダさんやビリーさんのことを考えないでそんな……大人のやることじゃありません!」

フェルト「そんなのカッコつけてるだけです、医務室に来てください。今すぐっ!」

グラハム「は、はい!」

ズルズルズルズル

ミーナ「……ありゃりゃ……」

ビリー「あのグラハムが圧された……だと……?」

ジョシュア「おーおー、なかなかやるじゃねえかあのお嬢ちゃん」

ダリル「正論だけに隊長も言葉を失ったか、将来が楽しみだな」

マリーダ「……」

マリーダ「純正のニュータイプだからなのかな……あの真っ直ぐさは」

ダリル「中尉、なにか?」

マリーダ「いや、何でもないさ」


――医務室――

グラハム「痛ぅっ……!」

医師「君も大概だな、利き腕に五針縫うレベルの怪我をしながら掠り傷だと言い切ったとは」

グラハム「その場しのぎですよ……先生に後で見てもらうつもりでしたので」

医師「指揮官としては正しいのかも知れないが、患者としては失格だな」

グラハム「結果的にフェルト嬢の逆鱗に触れてしまいました、ほとぼりが冷めるまでは此処に避難させてもらいたい」

医師「構わんが珈琲を切らしていてね、向こうについてから補充するつもりだったのだが」

医師「ご馳走は出来ないが、ゆっくりしていきたまえ」

グラハム「ふふ……それでは、お言葉に甘えさせていただきます」


――医務室前――

フェルト「……あんな事言って、もう」プンスカ

マリーダ「フェルト」

フェルト「! マリーダさん!?」

マリーダ「済まないな、みっともない姿を見せた。着替え途中でどうしても気になって……」

フェルト「い、いえ! そんなことは、ない、です」

マリーダ「?」

フェルト(髪を下ろしたマリーダさん……綺麗)

マリーダ「……少し汗臭いかな?」クンクン

フェルト「いえっ! むしろ良い匂いです! はい!」

マリーダ「そうか……?」

フェルト「……///」

マリーダ「それでマスターは……?」

フェルト「やっぱり傷は浅くなくて、後でこっそり先生に見てもらうつもりだったみたいです」

フェルト「軍人さんって、みんなカッコつけるところがあると思ってたけど……あの人のは、ちょっと異常です……」

マリーダ「……」

マリーダ「あの人は、ずっと一人だったからな」

フェルト「え?」

マリーダ「隣、いいか」

フェルト「あ、はい……」

マリーダ「……」

マリーダ「君が少し羨ましいよ」

フェルト「私が、ですか? そんな……私なんて、何もしてません」

マリーダ「君はマスターにも臆さず自分の意志を伝え、マスターを動かして見せた」

マリーダ「私には出来ない……私が出来るのは、あの人の隣をつかず離れずついて行くことくらいだ」

フェルト「それだって大事な役割です!」

マリーダ「どうかな……私はあの人を助けることは出来ても、あの人を変えることは出来ないから」

マリーダ「君のように真っ向から対立することは、きっと私には出来ない」

フェルト「そんなこと……」

マリーダ「無いとは言い切れまい? あの人は私の、マリーダ・クルスのマスターなんだから」

マリーダ「本当はこんなことを考えるのもおこがましいか……私も随分お喋りになったものだ」

フェルト「……」

フェルト(何故だろう……この人は、自身に対して価値をまるで見出していない)

フェルト(いったい彼女に何があったというの……?)

マリーダ「そろそろ基地に着く。オペレーティングの手伝いをしてくれるんだったな、準備してくれ」

フェルト「あ、はい!」スクッ

マリーダ「ミーナ女史が誉めていたよ、私も期待させてもらうよ」

フェルト「ありがとうございます。精一杯頑張ります!」

フェルト「……マリーダさんは、グラハムさんには会わないのですか?」

マリーダ「あの人のことだ、今顔を合わせたらきっと苦い顔をする」

マリーダ「それに髪も結ってない、みっともない姿は見せられないさ」

フェルト「そんな、綺麗な髪なのに……」

マリーダ「……ありがとう」ニコッ

フェルト「っ!」

マリーダ「ではまた……」

コツコツコツ

フェルト「……」

フェルト「今のは、ちょっと卑怯かなぁ……」

           ・
                         ・
                         ・


医師「……行ったようだな」

グラハム「また、彼女には気を遣わせてしまったようです」

医師「君達も相変わらず不器用なことだ」

医師「それにこれからは動きにくくなるな少佐。次はないかも知れん」

グラハム「……もう気付いていましたか」

医師「当たり前だ。あのタイミングでの襲撃、待ち伏せの配置を見ればすぐに分かる」

医師「スパイによる情報の漏洩か……はたまた意図的なものか」

グラハム「……」

医師「RGMの一件もある、意図的ならば救いようがない」

医師「……この世界に、君達が命を賭して飛ぶ価値は果たしてあるかな?」

グラハム「無くても飛びますよ……私には、それだけしか無いのだから」


――ゲリラ・アジト――

クラウス「そうか……分かった。追跡の可能性もある、注意して戻ってきてくれ」

クラウス「それと……戦死者達に哀悼の意を」

ピッ

ジンネマン「どうでしたかな」

クラウス「敵機を一機小破させるのに、イナクトを一機、ヘリオンを二機、アグリッサを一機失いました」

クラウス「私の見解が甘かったのを認めます……無理に奇襲をさせず留めるべきでした」

ジンネマン「あんたの作戦と指揮は正しかった。今回ばかりは相手が悪かった……それだけだ」

クラウス「戦い慣れてないのが如実に顕れています……指揮官がこれでは、世界を敵に回すなど夢のまた夢です」

ジンネマン「そのために我々が来ました。次は我々のギラ・ドーガが相手をします」

ジンネマン「宜しいかな?」

クラウス「……一つだけ、お願いがあります」

ジンネマン「何か?」

クラウス「敬語は止めていただきたい……年上の、自身より経験豊富な男性に使われると……肝が冷えます」アハハ……

ジンネマン「……そういうことなら、遠慮なく」

ジンネマン「さっさとPMCの部隊を引かせろ! そいつ等はまだ使える、部隊を編成し直してこっちの切り札を真っ向からライセンサーにぶつける!」

クラウス「……了解です!」

ジンネマン「それと例のガンダム……本当に信用出来るんだろうな?」

クラウス「私は実際に会ってないので何とも。そもそもガンダムです、信用も何もありませんでしょう」

ジンネマン「だな……」

ジンネマン「もしもの場合はあんたの力も借りるだろう。砂漠のエース、頼りにさせてもらう」

クラウス「それは此方の台詞ですよ……【袖付き】のキャプテンさん」


――ゲリラ輸送機――

ネフェル「……」カランッ

『あげゃげゃ、邪魔するぜ』

ネフェル「……何だ、ガンダムの坊やかい」

フォン「あげゃげゃげゃげゃ! そういうPMCのお姉様は自棄酒か?」

874「……」

ネフェル「これかい? これは弔い酒さ」

ネフェル「部下を二人、隊長一人……それなりに長い間背中を任せた仲さ。手向け位は必要だろう」

フォン「……」

ドスンッ

フォン「付き合うぜ、未成年だから水だがな」

ネフェル「はっ、ソレスタルビーイングとやらはそんなことも気にするのかい」

ネフェル「あたしは十三の頃から飲んでたよ……弔う気があるなら飲みなさいよ」カンッ

フォン「やだね、酒はマズい」ンベッ

ネフェル「この味も分からないようじゃやっぱり坊やか……」

ネフェル「いつかは分かるよ、いつかはね」ゴクッ

ネフェル「……ふぅ……」

フォン「……」グビッ

フォン「ネフェル・ナギーブ」

ネフェル「ん」

フォン「あんたは何故戦う?」

ネフェル「……傭兵にそんなこと聞くのかい? あんたも傭兵だったじゃないか」

フォン「ほう、何故そう思う」

ネフェル「PMCには裏の部隊がいるって話は表側でも有名さ……」

ネフェル「最近ではゲイリー・ビアッジって名前の兵士が、裏側から徴集された凄腕の傭兵だったって話もある」

フォン「アリー・アル・サーシェス」

ネフェル「……知ってたのかい」

フォン「昔の同僚だ。だが、そんな僅かな情報から俺様がPMCにいたことを読むとは……大したもんだ。褒めてやる」

ネフェル「はいはい、ありがとさん」

874「フォン、守秘義務が……」

フォン「874」

フォン「くだらないことで水を差すな。久しぶりに俺様は楽しめているんだ」

874「……はい」

フォン「まあいい、それに聞きたいのは傭兵の矜持じゃない。あんたのことだ」

ネフェル「あたしのこと?」

フォン「あぁ、あんた自身が戦うことになった理由だ」

ネフェル「……何でまたそんな」

フォン「オーディエンスに応えるのも、キャストの勤めだ」

ネフェル「……」ズズ……

ネフェル「そうさねぇ……どっから話して良いやら」

ネフェル「あたしの家……いや、そもそもあたしが産まれた村そのものが、その日の糧に困るような酷い貧困に陥っていてね」

ネフェル「あたしは何番目だったかな……兎に角、父親の節操の無さを表すみたいに何人も産まれてきた穀潰しの一人だった」

フォン「……」ガリッ

ネフェル「母親は頑張ってあたしらを養おうとしてくれたけど、そういうのはたいてい長くは保ちゃしない」

ネフェル「あたしも八歳の頃には父親に手を引かれて、二束三文と共に可哀想な女達の中にサヨウナラ……さ」

フォン「よくある話だな」

ネフェル「でもね……あたしは、顔も知らないような何処かの誰かさんの慰み物になって終わる一生なんか御免だった」

ネフェル「だから、最初に取らされた客の頭を、その客が服を脱いでる間に……」

ネフェル「ばんっ」

ネフェル「……その後は、あんまり覚えてないね。とりあえず逃げたかな、うん、多分逃げた」

フォン「はっ、よくまぁ表側にいたもんだなあんた」

フォン「裏に来てたら引っ張りだこだ……そんな生きのいい奴は」

ネフェル「運良く孤児扱いで拾われてAEUの取り仕切る施設に入ったのさ。結局その後はとんとん拍子でこっちの世界だから、あんまり変わらないけどさ」

ネフェル「誰かに食い物にされるよりは、誰かを食ってでも自分として生きていたかった……それがあたしの戦う理由、かな」

フォン「食い物にされんのも生き方の一つだ。そうやって誰かを支えるのもソイツの人生の意味になる」

ネフェル「へぇ……あんたのイメージとは随分違うことを言うね」

フォン「あげゃげゃげゃげゃ! 俺は俺だ、それ以上でも以下でもない」

フォン「俺も俺として生きるために此処にいる……全ては俺自身のためだ」

ネフェル「だろうね……あんたはそういう奴さ」

ネフェル「あたしと似ているようでやっぱり全然違う……あんた、異質だよ」

フォン「あげゃ、もう馴れた」

PPP

ネフェル「はい……」

ネフェル「…………」

ネフェル「了解、機体の搬入は予定通りに?」

ネフェル「……今のところはね。例の坊やはどうするんだい?」

ネフェル「……出来たらそうさせてもらうよ。多分無理だけどね」

874「フォン、恐らくはあなたを拘束しろという指令かと」

フォン「あげゃげゃ……だろうな」

ネフェル「あぁ。それじゃ」

ピッ

ネフェル「逃げな。こっちにギラ・ドーガが四機とヅダが向かってる」

ネフェル「あんた、相当危険視されてるみたいだね……宇宙から来た【袖付き】の戦力が全部集まるなんてね」

フォン「ご挨拶が過ぎたか?」

874「恐らくは」

フォン「だがいいのか? 俺を逃がしたとあってはあんたの立場が無いな」

ネフェル「命を助けられた貸しの返上だと思えばいいさ……それに加えて仲間の弔い分もプラスしとくよ」

フォン「……気付かれてやがった」

874「無理もありません、フォン」

874「それにしとめようとして失敗したと言うと体裁も保てません、此処はその通りにした方が無難かと」

フォン「あげゃげゃ! そうすっか」

フォン「おう、俺に感謝しろよ! あげゃげゃげゃげゃげゃげゃ!」

ネフェル「……感謝して損したのは生まれて始めてかも知れないね……」

フォン「874、アブルホールの準備は」

874「出来ています。何時でも出撃可能です」

フォン「結構、あげゃげゃげゃげゃ!」

ネフェル「じゃあね坊や、近い内にまた」

フォン「生きていたらな。あんたは遠距離からネチネチ戦うのがお似合いだ」

ネフェル「耳障りなことを……スナイパーは臆病者っていう類の人間かい? あんた」

フォン「俺はクロスレンジが好きだ。あんたとは違う」

ネフェル「本当に……合わないねぇ」クスッ

フォン「あげゃ、全くだ」

874「フォン」

フォン「あげゃげゃげゃげゃ!」

ブンッ

ネフェル「え」

ガンッ

ドサッ

フォン「行くぞ874」

874「了解、フォン」

ネフェル「 」

874「よろしいのですか? 彼女を生かしておいて……」

フォン「自分の意志で引き金を引く奴を殺す理由はない。いずれ俺の前に立ちはだかるなら、消すまでだ」

フォン「その時が楽しみだ……本当にな」ニタァ

874「……」

874(まるで自らを止めたがっているような口振り)

874(フォン……首輪の外れた魔獣、アナタは自ら首輪を求めているというの?)


――基地・屋上――

グラハム「……」

ガチャンッ

マリーダ「マスター」

グラハム「む……もう見つかったか」

グラハム「お前は私を見つけるのが上手すぎて、たまに困る」

マリーダ「……申し訳ありません」

グラハム「褒めているんだ、お前まで謝らないでくれ」

マリーダ「お前まで?」

グラハム「つい先ほどまでマネキン大佐に凄まじい勢いで頭を下げられていた。彼女の責任ではないというのに……本当に誠実なお人だよ」

マリーダ「……」

マリーダ「マスター、その件ですが」

グラハム「却下だ」

マリーダ「!」

グラハム「私は何があろうと下がりはしない。それだけは絶対に認められない」

グラハム「私が退けば私以外の者が死ぬだけだ。これは傲慢ではない、純然たる事実であることはお前もよく知っているはずだろう」

マリーダ「っ……」

マリーダ「しかし、これ以上は!」

グラハム「マリーダ!」

マリーダ「いいえ、言わせていただきます!」

グラハム「……何を焦っている……?」

マリーダ「焦りもします。今の貴方こそ……ニール・ディランディの、刹那・F・セイエイの影に急かされて……!」

グラハム「言うなっ……!」

マリーダ「フェルト・グレイスを引き取ったのだって、あわよくばガンダムとの関連性が掴めればと!」

グラハム「言うなといった!」

マリーダ「承服できません!」

グラハム「ッ……!」

グイッ

マリーダ「あっ……!?」

ビリー「グラハム、此処にいるのか……」

ビリー「 」

ビリー「わっ、わわわ!」バタンッ

グラハム「……」

マリーダ「っ……!」

グラハム「恨むなら恨め。私は言葉で言い返せぬまま、この様に口を塞ぐしか出来ない矮小な男だ」

グラハム「4ヶ月振りだ、この様な形になるとは思いも寄らなかったが」

マリーダ「……私は……っ」

グラハム「……」

グラハム「明朝、再度前線への移動を開始する。防衛戦は我々のオーバーフラッグスには不向き、お前もそれは重々承知のはずだ」

マリーダ「…………」グッ

グラハム「サイクロプスがまた確認された。目撃情報から推測するに、我々の受け持つエリアに近付くのは確実だろう」

グラハム「背中は預けたぞ……私のフラッグファイター」

マリーダ「……」

グラハム「付いて来れなくなったら……何時でも離れろ」クルッ

マリーダ「っ!?」

グラハム「だがこれだけは覚えておけ」

グラハム「私には、お前が必要だ」

バタンッ

マリーダ「……マスター……?」


――階段――

グラハム「……」

ビリー「……」

グラハム「カタギリ」

ビリー「なななな、何だいグラハム!?」

グラハム「私は寝る。お前も早く休めよ」カツカツカツ

ビリー「……了解……」

ビリー「……くそっ、壁殴っちまった」

マリーダ「……」

マリーダ「マスター……」

ガサッ

【親愛なるLへ Bより】

マリーダ「私は……十二番目などではない……っ!」

ビリビリッ

マリーダ「くっ……!」

マリーダ「例え汚れた身体でも、病魔に蝕まれようとも……」

マリーダ「マスターが求めるならば、私は……!」


――ゲリラアジト・MSドック――

デュバル「疑似GNドライブの出力安定……GN粒子放出」

デュバル「突貫工事だったが何とかなったようだな……地上戦でのデータも集まり次第ある」

デュバル「……ヅダはまだ戦える……!」

『少佐。私はね、自分達をこの西暦世界におけるイレギュラーだと認識しているのだよ』

『本来歴史に名を残すことのない、存在するはずのないゴーストファイター……我々も貴方も存在し得ない存在なのだ』

『だが私は存在する。かつて太陽光紛争の引き金にもなった宇宙開拓者の【棄民政策】……この世界で宇宙に住まう者の怨恨を受け止める器としての存在意義を持ってだ』

『デュバル少佐……貴方とヅダがこの世界に存在する意味とは、何かな?』

デュバル「……私が存在する理由……」

デュバル「今度こそ、今度こそヅダに、栄光をッ!」


TO BE CONTINUED...



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