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仮面ライダーW & 仮面ライダーOOO & 魔法少女まどか☆マギカ Fの契約/少女と魔法と仮面ライダー 第八話

2012年05月07日 03:00

まどか「仮面ライダー?」翔太郎「魔法少女?」映司「魔女?」 その2

541 :◆WDUU7xtdEo [saga]:2011/10/29(土) 12:12:36.34 ID:A3g1wh7no

燃え盛る炎、崩れ落ちる家屋、息絶えた人々。

その中を闊歩する、異形の怪人グリード。

彼等に恐れをなすように、炎までもがグリードの歩く周囲を避けていく。


それは、まるで王の行進。

何人も妨げる事が許されない。


だが、そんな彼等の前に、幾人かの少女達が立ちはだかる。

その手に握られていたのは宝石、ソウルジェム。


「へぇ、また実(み)?」

「あらぁ、かわいいお嬢ちゃん達ねぇ」

「オーズちがう」

「奇跡売りか」


脆弱極まりない人間の、しかも少女達が自分達に立ち向かおうとする姿に
彼等は各々に反応を見せた。

だが、そこに警戒の色はない。むしろ、侮辱の色すらある。

それに少女達は怒りを露にした。


――父さんを!!

――母さんを!!


奪われた者の名を少女達は叫んだ。

グリードに殺され、奪われ、ヤミーの苗床にされた大事な人達。

怒りと絶望に打ちのめされた彼女達には、もう何もなかった。
カラッポの、器だけ。

そんな彼女達の前に現れたのは天使だったか、悪魔だったのか。

『ソレ』が求めたのは『契約』。

『ソレ』が叶えるのは『奇跡』、そして『希望』。

少女達に選択はなかった。

彼女達は選んだ、グリードを倒せるという『希望』に全てを託して。


――これは、神の与えてくれた奇跡なのだと。

.


少女達の手の中にあったソウルジェムが大きな光を発する。

一瞬でボロだった服は光り輝く衣装に置き換わり、ジェムは彼女達を彩る
装飾になり、到底少女では扱えそうもない武器がその手に握られた。

そして、少女達はグリードへと戦いを挑んだ。

父の仇、母の仇、恋人の仇だと叫び、彼等に一心に憎悪を傾けて。

戦斧を振り回し、大槍を投げつけ、大剣を叩きつけ、千の矢を射る。

圧倒的な破壊が全て、グリードへと注がれる。

炎は消し飛び、崩れかけていた家屋はその形を止めることが出来ず崩壊し
大地は、魔法少女の力で抉られる。

巻き起こる噴煙、その凄まじい力に少女は体を震わせた。


ああ、自分達があの怪物を倒した、と。

ああ、王の造ったバケモノが死んだ、と。


それは歓喜の眼差し、勝利を確信し、その光景に見とれた。

互いに手を取り、喜びの声をあげた。


――だが。


次の瞬間、一人の少女の体が半分に裂かれた。

血飛沫を上げ、吹かれた枯葉のように空を舞う。

何が起きたか分からないまま、電撃がもう一人の少女を焼く。

炭化した体、可憐な衣装は、もはや服の様相を呈してはなかった。

そして、土石流。

岩石が大波になって少女達を飲み込み、すり潰した。

それはほんの一瞬の出来事。

次の瞬間に、そこに残っていたのは虫の息の、たった一人の魔法少女。

周りには、もう誰も生き残ってはいなかった。

代わりに少女の目の前に立っていたのは、あの怪人たち、グリード。

「ア……ああぁ……!」

希望が、絶望へと塗り替えられていく。

ジェムがそれに呼応するように、ドス黒く濁っていく。


「――――――アァァァァアアァ7テnッワm8ッぺ7xhq9wく!!!!!!!!」


そして、少女は絶望の雄叫びを上げた。
それはもう、人の声ではなく。

ひび割れるソウルジェム。

あふれ出す黒い霧。


少女を霧が包み、そして――。


少女は――。



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*****


「――っ!?」

そこで、まどかは目を覚ました。

外は既に紫の空。

一階に下りると、お父さんとタっくんは買い物に行っているようで、一枚の書置きがテーブルに置いてあった。

それを見て、まどかは冷蔵庫から飲み物を取り出しコップに注ぐと椅子に腰掛けて大きな溜息をついた。

「今の……夢、だよね」

そう口にしてみたが、夢にしては、それはひどく生々しくて。

普通ならすぐに薄れるはずの夢の内容が、まだくっきりとまどかの中で思い出せた。


昔の西洋を思わせる街並み、そこを闊歩する異形の怪人たち。

グリードとよばれた彼等に立ち向かう魔法少女たち。

しかし、傷を負わせるどころか一瞬で殺されてしまった彼女達。


「……」

夢のはずなのに、その光景に胸が締め付けられた。

まるで、自分が体験してきたかのように、ソレはまどかに深い印象を与えていた。

「私が魔法少女になれば……守れる、のかな」

夢の中で死んだ少女達を思い、泣いていたマミを思い、自分の生み出したヤミーで傷ついた人達を思い、まどかは呟いた。

紫に染まった部屋の中で、まどかの思考は沈んでいく。


他人を守ろうとするまどかの思考、だが、そこには自分が含まれてはいなかった。

他人を人一倍思いやる少女の中には無価値な自分は計算には入ってなかった。


だからこそ、だったのかもしれない。

まどかにとって、映司や翔太郎達の存在はひどく眩しく見えた。

他者のために戦い、絶望を払う存在。

それは魔法少女と同じで。

死を目前にしても、彼等は恐れる事無く立ち向かう。


もし、キュウべえが言っていることが本当ならば、ならば、じぶんも彼等と同じように戦えるのではないか。

まどかは思う。

無価値な自分が他人のためにできる事ならば、と思う。


と、その時だった。

「あ」

チャイムが鳴らされ、来客の訪れを告げていた。

「誰かな……こんな時間に」

スリッパを履き直し、まどかはインターホンのスイッチを押した。
カメラ付きのインターホンが、来客の姿を映し出す。

そこに映っていたのは、あの映司だった。



「じゃあ……私のヤミーは、何もしてないんですね」

「うん、それを伝えたかったって事もあったんだけど……」

夜の公園、ライトアップされた噴水の周りを行き交う人々を見送りながら、映司はまどかにこれまでの事を話していた。

まどかのヤミーを探していた映司だったが、これまでのところ何の手がかりも得る事は出来ていなかった。

本来ヤミーは親の欲望のために行動するはずだが、今回に限っては、あの日初めて
戦って以来何も行動を起こそうとはしていない。

これまででは考えられない行動に奇妙なものを感じ、フィリップやアンクの協力を
得ようとしたのだが、フィリップもアンクも何処かに行ったまま行方知らずの状態だった。

フィリップに関しては、翔太郎から当分帰ってこないと連絡があった事を聞かされた。

そして、アンクに関しては……あの日、ヤミーを追いかけて以来音沙汰がなかった。


『気をつけろよ、アンク』

『誰に言ってやがる、誰に』


あの時最後に交わした言葉を思い出し、胸に重いものを感じた。

まさか、アンクに限ってヤミーに倒されているという事はないだろうとは思っていた
映司だが、それでもここまで連絡がつかないのはやはり、不安だった。
しかし、そんな感情を映司は顔には全く出さない。

目の前で不安な表情のままのまどかを前にして、そんな事は出来なかった。


「俺、まどかちゃんが、心配だったからね」

「私が……ですか?」

「うん」

心の内など一欠片も見せずに、映司は柔和な笑みをまどかに向ける。

「ヤミーはさ、人の望みを拡大解釈して叶えるっていうのかな。
 そういう部分があるから、まどかちゃんが気にして落ち込んでないかなって思ったんだ」

「…………」

黙り込むまどか。やはり図星だった。


「私……何の価値もありません」

ぼそりと呟く。

「誰にも誇れるものなんてないし、強くないし、頭も良いわけじゃないんです」

「…………」

それを映司は何も言わず聞く。

「ずっと誰の役にも立てなくて、それで魔法少女の才能があるって言われて嬉しかった。
 でも、結局、私には何もできなかったんです」

「マミちゃんのこと?」

キュッ、とまどかは拳を握り締めた。

「あの時、マミさんの側にいて私は何もできなかった。もし、私が少しでも早く
 魔法少女になっていれば、マミさんを守れたのに」

「だから、まどかちゃんは魔法少女になりたいの?」

「それは……」

そこで、まどかの表情に迷いが見えた。

「私、無価値だから。だから、そうしたら、自分も無価値じゃなくて、それで、今度こそ
 マミさんを助ける事が……火野さんや、左さん達みたいにできると思ったんです」

それは、どんよりと沈んでいた。

「火野さん達が、仮面ライダーになったみたいに私も守る力が欲しい、って」

「………」

「でも、そんな事を考えたら、今度はそんな気持ちを怪物にされちゃって……。
 だから、やっぱり、私になんて」

価値がない、そう言おうとしたまどかだったが。

「俺はそれはちょっと違うと思う……かな」

「え?」

まどかに映司は答えた。

「守る力ってさ、俺の場合はたまたま与えられて、それで初めて出来た事なんだ。
 だから、まどかちゃんが言うほど、俺はすごくない」

「でも」

「むしろ、俺はまどかちゃんの方が凄いと思う」

「え?」

自分が映司よりすごい、そう言われてまどかは不意を突かれた表情を浮かべた。

「まどかちゃんは自分の事を価値がないって言うけど、でも、力がなくても
 まどかちゃんはマミちゃんの側にいようとした」

映司の目が、優しくまどかに注がれていた。

「戦う力がなくても、どれだけ危なくても、自分の意志で、誰かの側に寄り添って
 立ち向かう事がまどかちゃんには出来た。
 それは普通の人にはとても難しいことで、それができるまどかちゃんは凄いって
 俺は思うんだ」

「火野さん……」

「まどかちゃんは無価値なんかじゃないし、まどかちゃんにはそういう力がある。
 だから、たまたま戦う力を手に入れた俺なんかより、心の中にそういったものを
 持ち続けてるまどかちゃんの方が俺は尊敬できると思うかな」

「えっ、あっ……あぅ……」

思いがけず褒めちぎられ、まどかは顔を一瞬で真っ赤にした。

顔を押さえ、映司から顔を背けるまどかに、しかし映司はその原因に気づかず
首をかしげた。

「えっと、まどかちゃん。大丈夫?」

「ふぇ……ぁ、だい、大丈夫です……」

無価値としか感じられない自分を、映司は褒めてくれた。父親や母親とは違うその言葉。

それは、これまでのまどかを決定的に変える言葉だった。

そう、それは価値のない自分を変えるために魔法少女になろうとした自分をも
変えるほどに。

しかし、

『まどか、大変だ!』

その声が、その瞬間抱いた想いを霧散させた。

『美樹さやかが魔女の結界に閉じ込められたんだ! 助けて、まどか!』

「………え?」

キュウべえが、目の前にいた。

「え、映司さん……?」

強張る映司の横顔。

「……行こう、まどかちゃん!」

「は、はい!」

そして、彼に手を握られまどかは走り出した。



「うおらぁッッ!!」

これで、30匹目。

破片を撒き散らしながら霧散する使い魔に目をくれる事無く翔太郎は、またも
襲い掛かる使い魔に蹴りを叩きこむ。

(さあ、どうすっかな……!)


ハードボイルダーは、使い魔と正面衝突をしたせいで、自分からはかなり離れた場所まで吹き飛ばされた。

周りには使い魔が、それこそゴキブリのようにワラワラと湧いて出てきている。

この状態、振り出しに戻ったどころか、より悪化していた。


(…………キュウべえ)


そんな翔太郎をよそに、さやかはキュウべえにテレパシーを飛ばした。

(キュウべえ、マミさんはまだこないの?)

(マミは……来ない)

(……やっぱり、そうなんだ)

思っていた通りの答えに、失望と納得の感情が宿る。

(さやか、君を助けにいきたいんだけど、このままじゃ無理なんだ。だから、まどかを連れて
 君のところへ行くよ)

そう言うキュウべえだが、しかし。

「ぐはッ!?」

目の前で自分を庇って傷ついていく翔太郎。

さっきもバイクから放り出された自分を庇って地面に叩きつけられていた。

そんな彼をこのまま戦わせて良いのか。

このままキュウべえ達を待ち続けて本当に良いのか、そんな気持ちが芽生える。

だから。


(……ねえ、キュウべえ)

(なんだい)



(今、私を――――魔法少女にできる?)



そんな考えが頭に浮かんだ。

(君を魔法少女に、かい?)

(うん、願いはもう決めてる)

これまでは踏ん切りがつかなかった。マミから言われた通り、自分の願いについて
しっかり考えろと言われ、考え続けた。

だが、そうして先延ばしにした答えが、こんな状況を生んだ。

魔法少女にならなければ、こんな奴等に対抗できない。

今も目の前で戦い、傷つく翔太郎を見て考える。

自分も戦えれば、こうして見てるだけなんて真似をしなくてすむ。

だから今こそ、魔法少女という選択肢を与えられた自分がやるべきなのだ。

力があるのに使わないなんて、それはきっと臆病なのだ。


――もっとも、それは結局与えられる『だけ』の力なのだけれど



(良いのかい、さやか?)

(うん、もちろん! だから早く私を魔法少女にして!)

(わかったよ、さやか。では、君を魔法少女に――)

してあげよう、そう続くはずだった。

しかし、その後に続くはずのキュウべえの言葉はなかった。

まさか、何かあったのか。

まどかの身にまで危険が――そう、さやかが思った時だった。

(こんな――――ありえない!)



視線の先の虚空、絵の具をぶちまけた空と歪んだ鉄骨がズれた。

それは見間違いではなく、その言葉どおりにそこの風景だけがズれていた。

そして、同時。聞きなれた声と共にズレに入った皹が一面に広がり、


「セイヤァァァァ―――ッッッ!!!」


砕け散った風景の向こうから、オーズが現れた。

「さやかちゃん!」

「翔太郎、助けにきたよ!」


メダジャリバーで使い魔を叩き斬りながら、映司とまどかが翔太郎達に駆け寄る。

「ま、まどか!?」

「よ……良かったぁぁ……! さやかちゃん無事だったよぉ!!」

「映司……お前、どうやって!?」

「ああ、これのお陰だよ」

そう言って、メダジャリバーの柄を叩く映司。

「魔法少女しか無理だって言われてたけどさ、でも、試してみたらできたんだ。
 鴻上会長に、お礼言わなきゃなぁ」

「試したらできたって……マジかよ。あ、ちょっと俺も欲しくなってきた」

そんな様子に虚をつかれていた使い魔だったが、しかし、再び怒りが彼等の頭をもたげたのか
金属を擦り合わせたような悲鳴をあげて、翔太郎達に襲い掛かってきた。

しかし、

「うおらぁッッ!!」

「せぇやぁッッ!!」

メダジャリバーの一閃と、ジョーカーの拳が使い魔を叩き伏せた。

「さあて……一人じゃヤバかったが、二人なら話は別だ。映司、いくぜ?」

「ああ、翔太郎。早くコイツらをやっつけて、ここから抜け出そう……!」

ボクサーのようなファイティングポーズを取るジョーカー。

メダジャリバーを八相に構えるオーズ。


そして――使い魔と仮面ライダーは同時飛び出し、ぶつかり合った。


***


またも、目論見は外れた。

まどかの腕の中で、インキュベーターは再び計画の修正を始めていた。

今回のケース、魔女の結界に閉じ込められたさやかを利用し、結界を解くためにまどかに
契約をうながす筈だったのに、見事にオーズに邪魔をされた。

オーズの持つ人間の武器、アレが結界を裂くとは考えてもいなかったのだ。

そもそも、インキュベーターの技術で創り上げられたにも等しい魔女の結界が、よもや
文明で劣る人間の力で解かれるとは、彼にとっても計算外だった。

(これでまた、まどかを魔法少女にするまでのルートが長引く破目になったね)

これまでも暁美ほむらに何度ともなく邪魔をされたが、それに加えて『仮面ライダー』という
障害が増えるのは、インキュベーターにとって喜ばしくはなかった。

(だが、どうしたものかな。まどかを契約にまで持っていくには、もう少し強いショックと
 ストレス……何より、彼等を排除できる環境がいるのだけれど)

目の前で、使い魔をいとも容易く蹴散らしていく『仮面ライダー』を眺めながら、考える。

今のこの状態、まどかの回りに彼女を脅威から遠ざけるような要素があり過ぎる。

これを排除しない限り、彼女が自ら進んで魔法少女になるように仕向けるのは難しい。

ならば、どうすべきか。

インキュベーターは自分のコレまでの経験と知識を合わせて、この困難な状況を覆すための一手を
考えようとしたが、

(…………うん?)

それに合わせたように、インキュベーターの知覚に、とあるものが反応した。

(なるほど……これは、いけるね)

それは、彼等に対しても、まどかに対しても非常に効果的な『切り札』だった。


***



『――――――――ッッッッッ!!!????』



「なんだ……!?」

それは、金属を擦り合わせた悲鳴。しかし、これまでとはまったく別のもの。

翔太郎達がそれに反応するのも束の間、彼等の目の前にソレが落ちてきた。


――それは、魔女の頭。


「ひっ!」

「なっ……!?」

濁った黒とも何ともつかない血液を撒き散らして、それが4人の前に転がってくる。

「ど、どういう事だ?」

「俺にも……――――ッ!?」

瞬間、背筋に走る悪寒に、映司がある方向を見た。

それは翔太郎も同じで、二人して何もないはずのハイウェイの先に視線を合わせる。

「映司さん……?」

「翔太郎さん?」

二人の不安な声は翔太郎達にも届いていたが、しかし反応は出来なかった。

いや、していたら、まどかもさやかも死んでいただろう。

なにせ、


『マアアアアもオオオルウウウウウウウォォォォォォッッッ!!!!!』



――無数の針が、今、そこまでまどか達のいた場所を抉ったのだから。



「え!?」

「はひ!?」

まどかとさやかを抱え、映司と翔太郎は現れた『ソイツ』に目を向けた。

四肢を引き千切られた魔女のカラダをぶら下げ、ソイツはこっちを見ていた。


両腕にイモガイの殻。

ゾウの頭。

チーターの脚。


――そう、それは。


「わたしの…………ヤ……ミー」


まどかのヤミーだった。


歪んだ鉄骨と道路で構成されていた結界がボロボロと崩れ落ちていく。

それは、まるで悪夢から現実に戻るよう。

捻れたビルは元の形に巻き戻され、アスファルトの皹は滲み出したそれで埋め立てられていく。

そして、全てが元の世界に戻った時、


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


――その『悪夢』だけは、変わらずそこにいた。


「まどかちゃん……逃げるんだ」

「え?」

「さやかちゃん、君も一緒にだ」

「左さん……?」

二人を庇うように、映司と翔太郎がそれぞれに前に立つ。

「時間がねえ。さやかちゃん、まどかちゃん、分かったか?」

「で、でも……あれは――っ?!」

私のヤミー、そう言おうとしたまどかだったが、しかし、握り締められた手に
それは遮られていた。

「行こう、まどか!」

「さやかちゃん!? でも……!」

「私達、邪魔なんだ! 何もできない私達じゃ……邪魔なんだ! だから、いくよ!」

「あ……ま、まって、さやかちゃん! わたし、火野さんに……!!」

だが、またも言葉は途中で遮られ、まどかはさやかに半ば引きずられていくように
逃げるしかできなかった。

そして、二人がこの場から離れていくのを背中で感じ取りながら、翔太郎達は
目の前のヤミーへと意識を移した。

眼前、息を荒げてこちらへ殺気をこれでもかと言うほどに向けてくるヤミーに
さしもの二人も背筋に冷ややかなものを覚える。

「映司、アレがお前の言ってたヤミーか?」

「ええ、そうです左さん。たぶん、グリードと同じか、下手すれば……」

メダジャリバーを握りなおす。

「奴等より、強いかもしれない」

「ソイツぁ……最高だぜ」

帽子のつばを上げる仕草をして、翔太郎が茶化すように呟く。

だが、それは口先だけ。

実際には修羅場を何度も潜り抜けてきた経験が、目の前のヤミーを半端な強さではないと
翔太郎自身に警告してきている。

更に悪い事には、ここはもう結界の中ではない。

周りを走る車は少ないものの、路上にいる3つの影に驚き、クラクションをけたたましく
鳴らして過ぎ去っていく。

加えて、歩道には人影。

この騒ぎを見て、携帯で警察をよんでいる声が強化された聴覚で聞こえてくる。

「左さん、ここにこれ以上留まってたら周りの人が!」

「ああ、そん通りだ! 映司、奴を引きつけて別の場所いくぞ!!」

「はい!!」

そして、ジョーカーとオーズは同時に駆け出した。

***

「はぁっ……! はっ……!」

「さや、かちゃん……! 待って……止まって!」

引っ張られた手を振り解き、まどかは止まった。

振向いたその向こう、夜空が街の明かりと違う色で照らされているのが見えた。

轟音とパトカーと思しきサイレンの音が混ざり合い、不協和音を奏でている。

「火野……さん」

彼の名前を口にする。

『――彼が気になるのかい、まどか?』

「……キュウべえ」

自分達を追ってついて来ていたキュウべえが、まどかを見上げていた。

「うん……そうだよ、キュウべえ。だって、アレは、私が生んだもの、だから……」

ズキン、と痛む胸。

自分が生んでしまったとんでもない怪物。それを止めるために映司たちは残ったのだ。

それに対して何も思わない訳がない。

「私のせい……私のせいなんだよ」

『確かに、そうかもしれないね……でもね、まどか』

キュウべえの血のような赤い瞳がまどかを射抜く。


『アレを止めるための力が、君にはあるじゃないか――魔法少女の、力が』


「……………」

それはとても、『正しくて』『疑いようのない』言葉だった。

『美樹さやか、君だって力がなかったからさっき僕を呼んだんだよね?』

「……うん」

さやかの顔が曇る。

今も聞こえてくる轟音が、まるで自分達の無力さを非難し、責め立てる様にまどか達に響く。

そう、君たちには力があるんだ。彼等、カメンライダーのように、戦う力が君たちにはあるんだ』

そこにはじんわりと心に染みるような響きがあった。

『魔法少女は本来魔女と戦うための力だ。だがしかし、あのヤミーは魔女を容易く倒すほどに強い。
 しかし、願いさえすれば、あのヤミーを倒せるほど強い魔法少女にだってなれる』

何かが爆発するような音が伝わる。

『無理強いはできないけど、でも、彼等のために何かしたいと思うなら、君達が望むのなら
 僕は君たちを今すぐに魔法少女にできる』

ゆらりと尻尾が揺れる。

それは誘うように、ゆっくりと、柔らかく。

『さあ……決めるのは君達だ』

「私……」

「……」

差し伸べられた手が、酷く魅惑的だった。

抗いがたいものがあった。


だが。


「―――こまるんだよねえ、そういうの」


声が、頭上から降ってきた。

そして、降り立つ影。


「あ……あなたは!!」


まどかが驚愕の声を上げた。

見間違うはずもなかった。それは、まどかにヤミーを生ませたあの銀髪の少年。


『カザリ……!』

「やあ『奇跡売り』。邪魔しにきたよ? ねえ、アンク?」


そう言って、路地へとカザリは視線を向ける。

「………」

そこにいたのはアンク。まどかの目から見てもそれは間違いなかった。

あの火野映司と一緒にいた人。

そう、火野映司と。

だから。

「た……助けて、アンクさん!」

まどかは助けを求めていた。

この危険に、彼なら助けてくれると。

「…………」

アンクは何も答えなかった。

ただ、まどかへと冷ややかな視線だけを送り、ゆっくりと歩を進める。

「まどか……?」

「だ、大丈夫だよさやかちゃん……だって、あの人は火野さんと一緒だったから……」

そうだ、だから助けてくれる。

だから、まどかは銀髪の少年を振り切るようにして駆け出した。

しかし、それは一瞬で絶望へと転じる。

なぜならば。



「か――――はっ?」



絞め殺さんとばかりに、自分の喉を締め上げるアンクの顔がそこにあったのだから。

「かっ……はっ……」

喉が軋む。酸素が行き渡らず、目の前が霞む。
霞む視界、自分を無感情で見るアンクの瞳がまどかの視界に映っていた。

なんで、と問おうとしても締め上げられた喉はその言葉を発する事は出来ない。

「まどかッ!! こ……のぉ、まどかを離せえッ!!」

我に帰り、さやかが側に落ちていた棒切れを握り締めると、アンクに振りかぶった。

「……はっ」

「っきゃあ!!」

しかし、その切っ先はアンクに届く事もなく生身の方の手で振り払われ、そのまま
さやかの身体が路地裏の壁に叩きつけられる。

「ア……ンク……さっ……」

「残念だったねぇ、奇跡売り。君がやりたい事ってこの子を『果実』にする事だよねぇ?
 だったらさぁ、殺しちゃえば、それって無理じゃない?」

『カザリ……』

「アンクが手伝ってくれたのは大きかったよ。この子さぁ、アンクというかオーズには
 心を許してたからさぁ?」

「な……っで……?」

「悪いなぁ。別にお前に怨みも何もないんだが、ソイツが作る『果実』と『残り滓』が
 増えると俺達の欲望の邪魔になるんでなぁ」

そう言ってアンクの手が更にまどかの首に食い込んだ。

「かっ……! あ……あぁ……っぐ!!」

『アンク、カザリ、君達は彼女の価値が分からないのかい? 彼女は君達が必要とする
 欲望だって桁違いだ。それをむざむざ殺そうとするなんて訳が分からない』

「へぇ、君でも焦るんだ『奇跡売り』。だったら助けてって言ってみる?」

カラカラとカザリが乾いた笑いを上げる。

そんな会話は、しかしまどかには聞こえてはなかった。

首の骨が軋み、呼吸がままならなくなる。キュゥべえが何かを言っているのが見え、
倒れて突っ伏したさやかの姿が見え、いよいよ何も考えられなくなっていく。

死ぬ、その言葉だけが頭の中で堂々巡りをする。

あともう少しアンクが力を入れれば簡単に折れてしまうだろう。

分かってるのに、その時はまだ来ず、永遠にも近い時間が過ぎていく。

いや、本当は数秒も経っていないのかもしれない。

だが、そんな事を理解するだけの思考も、今のまどかにはない。

ギシギシと軋む自分の骨の音だけが聞こえる。


そして、思考が途切れ、視界が暗転するその時。


『――ボムッッ!!』


そのウィスパーが響くと同時、二発の弾丸がアンクの腕とカザリをかすった。


「くっ!?」

突然の闖入者に驚きまどかを掴んだ手をアンクが離したと同時、まどかの身体が
アンクたちの目の前から消えた。

「何かあると思って、メモリガジェットで張っていたのは正解だったね」

どこから現れたのか、アンク達の影から飛び出したクワガタ、スタッグフォンが声の主の
手の上に収まった。

「お前……!」

怒りの表情でアンクが指を突きつけた先にいたのは、シュラウドマグナムを握り締めた
フィリップだった。

「まどか! まどか!!」

まどかを抱えて取り乱すほむら。それと対照的にアンクへと銃を突きつける
フィリップの表情にはどこか余裕が見てとれた。

「どうやら、火野映司が危惧していた行動に出たようだねアンク」

「……ちっ」

「そして、君の隣にいるのが同じグリードだとすると、君は僕達を裏切ったと見れば良いのかな?」

この状況を理解していないのかと思うほどの言葉に、さしものアンクも戸惑いを隠せない。
しかし、それが裏目に出たことにアンクはすぐ気づく事になった。

「アンク!!」

カザリの声、アンクがそれにつられて見れば、今先程まであったはずのほむらとまどか、
そしてさやかがこの場から完全に消え去っていた。

「お前……何をしやがった!!」

「僕は何もしていない」

「ちっ!」

まどかを追いかけようとするカザリ。そこにシュラウドマグナムの弾丸を撃ち込もうと
したフィリップだが、

「邪魔するんじゃねえ!!」

銃を叩き落そうと跳びかかってきたアンクに遮られ、避けるしかなかった。
その間にカザリは消え、子の場にアンクとフィリップだけになる。

「しかし、君はいったいどういうつもりだい?」

「お前に話す義理はねえ」

グリードの爪をフィリップに突きつけ、そう答える。

「俺達はグリードだ。俺達の欲望のために必要だからやるだけだ」

「それが、一人の少女の命を奪う事になってもかい?」

「だったらどうした? たかが人間一匹、むしろ俺からすればあんなヤミーを作る宿主を
 殺してやろうって言うんだ。逆に感謝して欲しいところだがなぁ?」

「……どういう事だい?」

「はっ! あの奇跡売りから何も聞いてないのか?」

「……いや、ふむ。なるほどね」

どこか思い当たるところがあったのか、考えこむフィリップ。

と、次の瞬間


「ぐあああああああああ!!」

「がはっっ!!!」


爆音と共に、ビルの壁を叩き割ってオーズとジョーカーになった二人が投げ飛ばされてきた。

そして、もうもうと立ち上る土煙のおくから現れたるのは、


『まあああMOOOOルウウウウウウ………!!!』



――まどかの、ヤミー。


「翔太郎!?」

「映司!?」

まったく同じタイミングで二人が声を上げる。

倒れ伏すジョーカーとオーズの奥から現れたまどかのヤミーは、その二人の声に反応し
両腕を彼等の方へと突き出した。

その砲身のような両腕から無数の針が吐き出される。

それをフィリップもアンクも真横へと飛んで避け、針は彼等のいた路地裏のビルの壁へと
突き刺さった。

「なるほど……イモガイか。これは実に興味深い」

ドロドロに溶けて崩れるコンクリートの壁を一瞥し、フィリップが呟く。

「フィリップ……フィリップか!?」

その聞き馴染んだ相棒の声に、翔太郎が反応した。

「やあ翔太郎、久しぶりだ」

「久しぶりだ、じゃねえ! いったい何やってたんだよ、フィリップ!?」

「残念だが翔太郎、それについては現状では答える事を控えさせてもらうよ」

「ああ、そうか……って、をぉい!!」

相棒のあまりにもな言葉に、翔太郎はつい、いつものようなツッコミを入れる。
だが、そのツッコミもつかの間、再び行なわれるヤミーの攻撃に、翔太郎達は
逃げざるを得ない状況に陥る。

「さて、翔太郎。ここはどうすべきか、分かってるね?」

「ったく! 説明もなし、んでこれか! ああもう仕方ねえ!!」

ロストドライバーからジョーカーメモリを抜き出し変身を解除すると、翔太郎は
そのままダブルドライバーを取り出した。

「翔太郎」

「ああ?」

「時計は、なぜ未来に進むだけしかできないと思う?」

ひどく、意味を掴みかねる質問だった。

「ステップを踏む事でしか、未来という時は作られないというが、本当だろうか?」

時折、こうしたなぞかけのような質問をするのがフィリップという少年だが、
今回のはそれに輪を掛けて難解だった。

「変身だ」

フィリップの握り締めるサイクロンメモリが大地の雄叫びを上げる。

「答える暇なし、ってか」

そして、翔太郎のジョーカーメモリも、また。


『サイクロンッッ!!』

『ジョーカーッッ!!』


ガイアウィスパーの轟きと共に、紫のオーラと暴風が吹き荒れ、破壊された路地裏の空間を満たす。

だが、それだけではない。

甲高い機会音声と共に金と黒に彩られた電子の鳥がその空間に入り込む。

それはガイア鳥、エクストリームメモリ。

Wへと変身した翔太郎のダブルドライバーへ、インサートされた鳥型メモリが左右に展開した。


『エクストリィィィムッッ!!!』


プリズムの輝きが緑と紫の光を取り込み、その中から一つの姿が現れる。

それは、サイクロンジョーカーエクストリーム。

翔太郎とフィリップの二人を完全に一体化させた、仮面ライダーW、その進化した究極の姿だった。

***


『火野映司、君は暁美ほむらを追うんだ! 猫科型のグリードの姿がない!』

「はい!」

エクストリームになったフィリップに言われ、駆け出す映司。

だが、その前にアンクが立ち塞がる。

「アンク! そこをどけよ!」

「なんでだ?」

「なんで、じゃない! 今の聞いてなかったのかよ!」

だが、その返答の代わりに帰ってきたのは、アンクの鋭い爪の一撃だった。

「なっ!?」

掠めた爪、一筋の血が映司の頬に滲む。

「アンク……お前……!」

「映司、止めとけ。あのガキは助ける意味がねえ」

酷薄な笑みを浮かべるアンクに、仮面の奥の映司の表情が怒りのものになっていく。

「あのガキは生きてるだけで危険だ」

「まどかちゃん達の何が危険だって言うんだ! それにアンク、前に言ったはずだぞ。
 ヤミーを倒すために俺たちは協力するって……それを破るなら、俺は、お前を……!」

言いながら、映司はメダジャリバーをアンクへ向けて構えた。

「はっ! おい映司、お前、これが誰の体か分かっててやるつもりか?」

「……分かってるさ」

だが、口ではそういいながらも、映司の内心は穏やかなものではなかった。

今、フィリップから言われたとおり、カザリを追う方が先決。だが、このまま
アンクが自分を行かせる訳がない。

それに加えて、タトバコンボ以外のメダルは、今現在アンクがすべて管理してるのだ。

クジャク、コンドル、ゴリラ、シャチ、ウナギ、タコ――それらが全てアンクの手の中。

「なんだ、映司? メダルがほしいのか? あ?」

「くっ……!」

見透かしたようにアンクが嘲笑った。

「残念だよなぁ、映司。今のお前じゃコンボチェンジも何もできねえ。俺の持ってる
 これがなけりゃ、なぁ?」

そう言ったアンクの左手に握られていたのは、メダルホルダー。

「!」

次の瞬間、映司はメダジャリバーから左手を離し、腰の後ろに手を回すや否や、ジュースの缶を取り出した。

いや、缶ではなかった。

プルトップを開けた瞬間、缶が複雑な変形をして一羽の鳥の形になり、映司の手の平から
猛スピードで飛び出したのだ。

「ぐぅっ!?」

その鳥は一目散にアンクの手へと襲い掛かりメダルホルダーを奪い去るや、映司の元へと
戻っていった。

「……ちぃっ! お前、カンドロイドなんて、どこに!!」

「お前には言ってなかったけど、コッチ来てから、何度か後藤さんに連絡してたんだ。
 その時に、カンドロイド一式貰っておいたんだよ」

「お前ぇぇぇ………!!」

苦々しい表情を浮かべ、アンクが映司を、オーズを睨み付けた。

「さあ、どうするんだアンク。今度は逆にこっちが聞く番だぞ」

「…………くそっ!!」

アンクが言えたのはそれだけだった。

すぐ近くにヤミーがいたのもあったのだろう、アンクの姿が路地裏の闇の中に消えていく。

しかし、それを映二司は追わなかった。

「まどかちゃん……!」

後ろ髪引かれる思いはあったが、今はそれどころではなかった。

既にはるか向こうへと移ったダブルとヤミーの戦いを一瞥し、オーズとなった映司は
路地の先へと走り始めた。

カンドロイドの誘導を頼りに、メダルを交換する。

そして、スキャン。

『タカッ! クジャクッ! コンドルゥッ!!』

メダルの歌が映司の頭蓋の内で響く。


『タァァァァジャァァァァドルゥゥゥゥゥ!!!』


赤い煌きが見滝原の夜闇に一筋の光跡を刻んだ。







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