まどか「マスクドライダーシステム?」『上條家とディスカビル家』

2012年05月13日 19:44

まどか「マスクドライダーシステム?」

214 :トゥーフ ◆aYPblnZtes [saga]:2011/09/13(火) 03:04:29.42 ID:BAVRmqQS0

宇宙――

人の創り上げた軌道エレベータ『天空の梯子』。
背を向け合い立つ、二人の男。
その頂上で、この者達が闘った。
相反する『赤』と『金』――
未来と、力と、そして愛。
彼らの全てを賭けた闘いが、遂に終わろうとしていた。

「ぐ、あぁ……っ!」

『赤』を纏った男は、その膝をついた。
その鎧には無数の傷が刻まれ、時折火花を吹き出している。
立ち上がろうと何度膝に力を入れても、その体は決して答えてはくれない。



『金』を纏う男は悠然と振り返り、その目の前に歩み出る。

その鎧は燦然と輝き、その圧倒的な力を象徴していた。

「そこが君の限界です。 やはり最強の座に相応しいのは私ただ一人……」

呟くと、『金』を纏った男は手を頭上に掲げる。

呼応するように、銀色の機械虫が舞い降り、彼の掌の中に収まった。

「これが最後ですね――私は揺るぎ無き最強の座を手に入れる。
 君はここで終わる」

ゆっくりと、ベルトに虫を装着する。
そしてその角に手をかけ――押した。

「ハイパークロックアップ」

『Hyper Clock Up』

電子音声が、感情のない言葉を告げる。

『赤』の男にとって、それは死刑宣告に等しい。


       等しい、筈だった。



「……何?」

おかしい。
電子音声が声を上げてから、もう数秒が経った。
何も起こらない。

そんなことはありえない。
両人とも、それはよくわかっていた。

そして、それは突然起こった。

「……ぐ、お……?」

『金』の男のベルトが、火花を吹き出したのだ。

「な、なんだ、これは!?」

戸惑いを隠せない男は、すぐに側腰の虫に手をかけ、外そうと力を入れた。

215 :トゥーフ ◆aYPblnZtes [saga]:2011/09/13(火) 03:05:00.32 ID:BAVRmqQS0
――が、無意味。

「こ、これは……これはなんだ!?」

火花の吹き出す部位が、全身へと変わっていく。

「加賀美、加賀美陸! これは一体!?」

苦し紛れに、男は地球へと電波を飛ばす。
この力を最もよく知る人物に。

男のマスクの内側に、初老の男が映しだされる。

この男こそが加賀美陸。 先ほど倒した男の、父親。

陸は、ゆっくりと告げる。

「貴様はそこで終わるべきだ」

「何ぃ!?」

「こんな時代は、間違っている」

「ぐあっ!? き、貴様……っ!」

遂に、『金』の男は膝をつく。
火花を吹き出していた鎧は、既に各所に爆発を起こしていた。

「加賀美……っ! 図ったな、図ったなぁぁぁぁぁぁぁ!」

ベルトが、一際大きな爆発を起こす。
同時に、『金』の男の頭上に大きな『穴』が開いた。

「う、や、やめろ……やめろおおおおおおお!」

協力な引力を発し、その穴は『金』の男を吸い込んだ。

「許さん……決して!許さ――」

言葉の余韻を残し、男は消えていった。

残されるは、『赤』の男。

未だに立ち上がれない男の仮面に、遂にヒビが入る。



「私の役目は終わった……」

陸は、ぼそりと呟いた。

「後は頼むぞ、『仮面ライダー』」

そして、万感の思いを込め、こう言った。

「――頼んだぞ、新」

そうして陸は目を瞑る。



赤い男のマスクが、割れた――




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走る、走る、走る――

何故?
逃げるために。
生きるために。

何から?
あの悪魔から。
あの死神から。

それは――

「ぐ、う……ぁっ!」

必死で酸素を拾い続けている口からうめき声が漏れる。
我慢できずにそうなり、それが呼吸の妨げになり、また苦しくなっていく。

この悪循環をもう何度繰り返した事だろうか?
人外と化したこの体なら、酸素など無くとも活動できるし、実際そうやって戦ったこともある。

では何故今『苦しい』のか――

それは『怖い』からに他ならなかった。

「なんだよ……何なんだよ、あいつは……っ!?」


――いつものように魔女を狩ろうと結界に入り、魔女に遭遇した。
  そこまでは良かった。


襲い来る小型の爆弾を、身を捩って避ける。
爆弾が『速く』無くて助かった。
爆弾なら『遅く』できる。

「痛っ……く、ぅ……っ!」

右腕はもう動かず、ただ肩からぶら下がっているだけ。
痛みはとうにシャットアウトしている筈なのに。
激痛が走る錯覚、いや、これはむしろ感覚を蘇らせているのか?


――魔女に止めを刺そうとした刹那に見えたのは、緑の鎧を着た男、もしくは緑のロボットだった。
  ただそこに突っ立って、こちらの方向を見ている。
  その目からは、はっきりとした焦点が読み取れない。
  別に興味は無かったが、ただの気まぐれで手を出してしまった。
  それが最大の過ちだったのだろう。


「織莉子ぉ……っ!」

ここに居はしない愛しい人の名を呼ぶ。
助けが欲しい訳ではない。
ただ、自分を奮い立たせる『何か』が欲しいのだ。

「……?」

自分を追っていた爆弾の雨が止んだ。
何事かと後ろを振り向く。
振り向いてしまった。

『Clock Over』

悪魔の声が聞こえる。
目の前に広がったのは、真っ赤な複眼。
緑の体。

――魔女は倒した。
  自分が、ではない。
  『あいつ』が消し飛ばしたのだ。
  無数の爆弾を飛ばして。

まず拳が飛んで来る。
その場で宙返りすると、何とか避けることができた。
そこにすかさず蹴りが飛んで来る。
これは予測していたので、わざとブロックし、吹っ飛ぶ。

距離は開いた。
ここからどうすれば、と思考する前に耳に届いた声。
『Clock Up』


――少々目を見張ったが、問題はない。
  だが危険なので処分しよう。
  ……結論から言えば、それはあまりに無謀だったのだ。
  先に『低速』の魔法を掛け、確実に狩るつもりだった。
  

「どこに、どこにいるんだよぉ!?」

半ば恐慌状態になりながらも、必死で周囲を探す。
すでに『低速化』の魔法は全力で張り巡らせている。
攻撃には一片も魔力を割かず、ただひたすらこの魔法を強めていく。
なのに、あの――恐らく男――は視界にかすりもしない。

瞬間、左腕に衝撃。
痛みはしない。 だが痛みは伝わってきた。

「が、うあああああっ!?」

切磋に左腕を庇おうと右腕に力を入れると、また激痛。
やむを得ず左を構えようと力を入れ……更に激痛を味わう。

見ると、左腕も完全に逆方向へと曲がっていた。

両腕が使えない。
自分にとって、それは戦闘不能と同じ意味を持っていた。


――力の差は歴然。
  こちらの攻撃はかすりもしないのに、あちらの攻撃はかわし切れない。
  仕方なく攻撃の手を緩め、『低速化』の魔法を強めた。
  ……聞こえてきたのは恐怖を呼ぶ電子音声だけだったのだが。


『Clock Over』


「う、ぁ……」

死神が、現れた。

ゆっくりと歩いてくる。

怖い。
怖い。



怖い。


 
視界が狭まる。



完全に視界が闇に染まる寸前。
『私』が目にしたのは。

青い、薔薇――





「……近いわね」

「この近く、か」

喫茶店を出た一行は、魔女を探し街を散策していた。
人の命を吸うという魔女がどこに憑いているのか――それを探すのもマミの持つ
ソウルジェムの役割の一つあるらしかった。

ソウルジェムが放つ光が強くなっていき、最も強くなる時、
一行はある廃ビルの下へ辿りついていた。

一行はビルの入り口に接近する。

「やっぱり、このビル周辺で間違い無いわね」

一同の緊張感がどんどんと高まって行く、その瞬間。

「――――あ、あれ!」

さやかが突然ビルの屋上を指差し、叫んだ。
その指先には、今正に飛び降り自殺を図ろうとする女性の影。

「あれは……!?」

マミ達が一瞬、呆気に取られるその瞬間。
反射的に加賀美はその女性の真下に駆け込んだ。

「聞こえますかああああ! 落ち着いて! 早まっちゃ駄目だ!」

加賀美が声を張り上げて女性に呼びかける。
決して聞こえない距離では無い筈だが、女性がその声に反応することは無い。

一寸の間を置き、マミ達も加賀美の元へと駆け寄ってきた。

マミは突出するとすぐに変身し、女性を見据えた。

すぐに女性が飛び降りる。

「うおおおおおおおお!?」

加賀美は反射的に女性の落下地点に滑り込んだ。
来るべき衝撃に耐えようと歯を食いしばる。 
が、いつまで経ってもその腕の中に女性は落ちてこなかった。

「……ん?」

不思議に思い頭上へと視線を向けると、そこには無数のリボンが。
リボンは幾重にも重なりあい絡み合い、蜘蛛の巣のように女性を受け止めていた。

「ごめんなさい加賀美さん。 こういうのは私に任せて下さい」

リボンに受け止められた女性は、そのままゆっくりと降ろされる。

リボンが消え、女性が地面に寝かせられると、4人はすぐに駆け寄りその無事を確認した。

「やっぱりこれ……『魔女の口づけ』ね」

女性の首筋には、赤黒い痣のようなもの――魔女の口づけ――が付いていた。

「これが魔女の呪いって奴か……」

改めて現実に魔女の力を見せつけられ、加賀美達は息を飲んだ。
加賀美は女性の顔に耳を近づけ、呼吸を確認する。

「……気絶してるだけみたいだな。 とにかく木陰にでも運ぶから、ちょっと待っててくれ」

加賀美は気絶したままの女性を人目につかないような木陰に寝そべらせ、すぐに
マミ達の元へ戻ってきた。

マミを先頭に、一行はビルの中に入る。
暗くジメジメとした空気が漂う中に、見た目が異質な物は無い。
ただ、ぞくりと背筋が凍るような威圧感が、マミを除く者達に訪れる。

「では、行きましょうか」

「ああ、わかった。 ――さやか」

「……んぁ? え、何?」

突入と体勢になったさやかは、素っ頓狂な声を上げた。
加賀美はさやかに歩み寄ると、構えていたバットを取り上げる。

「ちょっ――」

「バットより、こっちの方が使いやすいだろ」

そう言うと、加賀美は腰に下げていた警棒をさやかの手に握らせた。
ハンカチを床に敷き、取り上げたバットをそっと壁に立て掛ける。

「まあ、バットをこういうことに使って欲しくないってのもあるけどな」

微かに笑みを浮かべながら、加賀美はバットを撫でた。

「加賀美さん、あの、その……」

「ん?」

言い淀むまどかだったが、その視線は確かにある場所に向いていた。
加賀美は首を傾げるが、その代わりマミがそれを察した。

「流石に拳銃を持たせる訳には行かないわよ。 その代わりと言っては何だけど……」

マミが手をかざすと、警棒は急に眩い光に包まれた。
光が晴れると、警棒はケミカルチックな装飾の棒に変わり、さやかの手に収まっていた。

「これでバットより……ううん、拳銃よりもマシになったわ」

「うわぁ……!」

「すごい……!」

「はぁ~……そんなことも出来るのか」

加賀美も二人と同じように感嘆の声を漏らす。
あくまで機械的な物であるライダーシステムと、明らかに違う魔法の力。
どちらが上という訳では無いが、そこには確かな違いがあった。

「――さ、行きましょう」

雰囲気を入れ替える様にマミが一声入れると、全員の表情が引き締まる。

「よし。 ――変身!」

『Hensin』

加賀美の体に、重厚な機械の鎧が装着されていく。
完全に装着が終わり、赤い複眼が発光すると、加賀美はマスクドライダー『ガタック』となった。

マミが髪飾りになっているソウルジェムに手をかざすと、ソウルジェムは一際強い光を放ち、
一行の目の前には不気味な穴が現れる。

「まずは私が前に出ます。 加賀美さんは二人を」

「わかった。 二人とも、俺のそばから離れるなよ」

二人が静かに頷くのを確認すると、マミを先頭にして穴に飛び込んでいく。

「うし、行くぞ!」

加賀美は頬を叩いて自分自身に気合を入れ、勢い良く飛び込む。

「こ、ここまで来たら……さやかちゃんも頑張っちゃうぞぉ!」

さやかは強く目を瞑り、また自棄になったように突っ込んだ。

そしてまどかは無言でキュゥべえを強く抱きしめると、意を決したように飛び込んだ。

/////

穴の中は、存外に広い空間だった。
ここがビルの中とは思えないほどの広さのこの空間は、まどか達が以前味わった異様な雰囲気を醸し出している。

マミを先頭に奥へ奥へと進んで行くが、大量の使い魔がその行く手を阻む。

「このっ!」

マミは遠くに待ち構える使い魔を狙い打つ形で、進路を確保していく。
その間にも周囲にどんどんと使い魔が増えていくが、それらは皆ガタックの肩に装備されているバルカンの掃射で消えていった。

「うおぉぉ!」

バルカンを掃射しつつ、合間に格闘で使い魔を処理していく。
結局、さやかは一度も武器を振っていなかった。

「これ、行けるよ! 余裕じゃん!」

「油断すんな!」

興奮気味に叫ぶさやかに、加賀美が檄を飛ばす。

すかさず、使い魔が三体加賀美の腕に組み付く。
加賀美は瞬間的に腕を振り、これを離すと、ガタックバルカンを発射。
が、これは全て狙いから逸れる。

「なっ、外れ―― さやかっ!」

使い魔は方向を転換し、さやか達の所に回りこむ。
加賀美はまた別の使い魔に組み付かれ、そちらに向かえない。

「うわぁっ! 来るな、来るなぁっ!」

さやか達の目の前で、使い魔は合体した。
合体使い魔が襲い掛かろうとするも、それはマミに阻まれる。

「大丈夫? 美樹さん、落ち着いて!」

「は、はいっ」

「すまん、三人とも、大丈夫か!?」

一瞬の間を見て加賀美が二人の様子を見ると、まどかがどこか呆けた表情をしていた。

「まどか!」

「……あっ、す、すみません!」

「大丈夫か? 駄目そうなら――」

「だ、大丈夫です、行けます!」

その口振りや表情からは調子の悪さが感じられない。
不安要素とはなるものの、今から退く訳にも行かなかった。

改めて二人を見ると、やはり疲れが色濃く現れていた。
素質があるというだけで、二人はただの少女である。 無理をさせ、今後の人生に支障をきたすことになってはならない。
この中で――もちろんマミも含めて――唯一の大人である自分が、少女達を守らなければいけない。 
強く重い責任が、加賀美を押し付けていた。

「急ごう……この子達の精神が持たないかもしれない」

そういう加賀美の声からも、疲労が見え隠れしていた。
久しぶりの戦闘と、結界の持つ異様な雰囲気が、加賀美を内側からも外側からも疲労させていたのだ。

なりふりかまってはいられない。

加賀美はガタックゼクターの角――ゼクターホーン――に手を掛けた。

ゼクターホーンを開く。
するとガタックを包んでいた機械の鎧の外郭が一斉に浮き、蒸気を吹き出す。

「キャストオフ!」

ゼクターホーンを逆側に完全に倒す。

『Cast Off』

体を覆う「蛹」が弾け飛び、ガタックの真の姿が現れる。
再び電子音声が告げる。

『Change Stag Beetle』

クワガタムシを思わせる角が立ち上がり、複眼が発光する。

「青くなった!?」

思わずさやかが叫ぶ。

だが加賀美はその声などどこ吹く風で、念入りに調子を確認しはじめた。
腕を回し、手を握り離す動作を繰り返す。
当然だと思っていたことが出来なくなっているかも知れない。 それが異様に気がかりだった。
加賀美にとって、先程バルカンが外れたことは存外気になることであった。
ただのブランクでは済まされない違和感が、加賀美の中に居座っていたのだ。

「加賀美さん……その姿は」

マミの表情にも困惑の色が浮かんでいる。 
それもその筈である。 マミの中ではマスクドライダーといえば矢車想であり、キックホッパーだったのだ。
ガタックや他のライダーに存在する形態変化など知る由も無い。

「大丈夫だ、重い装甲を剥がしただけ。 これでクロックアップもできる」

切り札を切る。
わざわざ堅牢な装甲を捨ててまで形態を変化させるのは、その為であった。
不安もあったが、いつでも使用可能であった方が良いと判断したのだ。

「キュゥべえ、あとどれ位で本体に辿りつけるんだ?」

「もう少しで最深部に辿り着くよ」

邪魔な使い魔達を蹴散らしながら進むと、キュゥべえの言った通りに最深部らしき場所に辿り着いた。

最後のあがきとばかりに大量に使い魔が現れるが、全てマミに撃ち落され消えていった。

そして、その先の不気味なドアを掻い潜ると、そこには――


「見て、アレが『魔女』よ」

だだっ広い空間に、ソレは鎮座していた。

巨大で不気味な『魔女』――

「うわ、グロい……」

さやかが思わず呟く程のグロテスクさを持つ魔女。
その体の下では、触手にも見える物がいくつも蠢いている。

「『薔薇園』の魔女だね』

「薔薇園?」

足元からの声に、まどかが聞き返す。

「その特性は『不信』――さっきまで湧いてきていた使い魔が二種類だったことに気付いたかい?
 あれがこの魔女の使い魔だったんだ。 その役割は差詰め『造園』と『警戒』といった所かな」

「そうだったのか……全然気にしてなかったけど」

改めて魔女を見ると、なるほど確かにその様な装飾が施されている。
顔らしき場所にはいくつも薔薇が咲いているし、触手も植物で言う蔦なのだろう。

「……とにかく、行くしかないな」

あの敵に向かうのには流石に気が引けるのか、加賀美も小さく呟いた。
一方マミは慣れた様子で、さやかの持つ警棒を地面に突き刺し、結界を生じさせた。

「これでしばらくは安全よ。 ここで見ていて」

「あの……あれと、本当に戦うんですか?」

「それが仕事だもの」

当然の様に微笑んで答えた後、マミはもう一度魔女を見据えた。

「加賀美さんが前、私が援護でいいですね?」

「ああ」

「加賀美さんは魔女をひきつけるだけで結構です。 魔女戦は私の方が慣れていますから」

「分かった――行くぞ!」

加賀美が魔女の目の前に躍り出ると、魔女はすぐさま蔦を這わせ捕らえんと襲いかかる。

「ガタックカリバー!」

すぐさま両肩のガタックカリバーを抜き、これを次々と切り裂いていく。

襲いかかる蔦を切り払いながら、本体へと駆ける。

「うおぉっ!?」

本体へと辿り着いた加賀美に、死角から蔦が襲いかかった。
が、その蔦はマミによって撃ち落とされる。

加賀美は一旦距離を取ろうとするも、左右からの蔦がこれを邪魔する。
それを切り落とし一歩下がり、今度は正面からの攻撃を全て切り落とす。

「マミちゃん! こいつ、まだ近付け無さそうだ!」

「一度逃したからしぶとくなっているみたいです! 突破口を見つけないと……っ!」

しぶとく、とは言うものの、恐らく戦闘力自体が跳ね上がっているのだろう。
攻撃の手は緩むこと無く加えられ、手数も威力も時間が経つ毎に大きくなっていった。

はっ……はぁっ……っ!」

呼吸が荒くなっていく。
今こうして魔女と戦っている間にも、加賀美の体力は圧倒的な速度で奪われていっていた。
先ほどまでととは比べ物になら無い程に体が重い。

「(この感覚……どこかで……)」

「――っ!!」

悩んでいる間に魔女が待ってくれる筈もなく、加賀美は初めて攻撃をその腕で受け止める事となった。

「くっ……うおぉ!?」

あっという間に四肢を抑えられ、加賀美は呻く。
反射的にマミの方向を見やると、マミも魔女からの総攻撃を受けていた。
まだ捕まっていない様だったが、マミは元々格闘戦が得意では無い。
魔法少女としての身体能力だけでこなしている格闘戦は実に危うい。 これではそう長くは持たない。

瞬間、加賀美の左腕に振動が伝った。
マミがなんとか狙撃してくれたようで、なんとか左腕が自由になった。

「ナイスだ!」

右腕に絡みつく蔦を引きちぎり、両足の物も払う。

状況は逼迫している。


加賀美は迷いなく叫んだ。

「クロックアップ!」

同時にベルトのスイッチに触れる。

そうすることで、ゼクターから電子音声が――

「……え?」

――鳴らない。

と、突然、加賀美の視界がブレる。

「ぐ、あ……?」

思わず膝を着いてしまうが、それは一瞬だけ。
すぐさま立ち上がろうとするが――

すでにそのベルトにはガタックゼクターは鎮座していなかった。

加賀美の頭上に、舞い上がっていたのだ。

システムの恩恵を得られなくなった体は、いとも簡単に崩れ倒れる。
急激に覚醒する苦痛。

「加賀美さんっ!」

「ぐ……っ」

マミの声に答える余裕はとても無かった。
こうしている場合ではない。 それはわかっている。

「ガタック、ゼクター!!」

必死の思いで手を伸ばす。
その刹那――



「――加賀美危ないっ!!」




耳に入ってくるその声に反応し、すぐさま後ろを向く。

眼前に迫る蔦、蔦、蔦。

もはや加賀美自身に、それから逃れる術はない。

万事休す。

「あ――」

瞬間、

――Rider Kick――


加賀美の視界を、激光が覆い尽くした。
視覚を塞がれた加賀美の耳に届いたのは、幾つかの打撃音。
それが良い物か悪い物かを考察するには、加賀美の体力は消耗しすぎている。

「う、ぅ……」

ぼやけた視界の中に映ったのは、緑の人影。

「あなたは――」

切磋に、その人に声を掛けようとし――

「後ろだ」

「うわぁっ!?」

それが愚行であったことに気付く。
疲労と光による衝撃が、加賀美の思考能力すら奪っていた。

なんとか後ろからの攻撃を避けると、すぐさま援軍の男がそれを蹴り砕く。

「助かったわ、矢車さん!」

その姿はバッタをイメージさせる機械装甲、キックホッパーに他ならなかった。
いつの間にか矢車が助けていたマミは、賞賛の声も程々に加賀美のもとへ走る。

「大丈夫ですか!?」

「うぁ、ああ、ごめん――ぐぁ!」

なんとか立ち上がろうとする加賀美が、また突然頭を抑えて苦しみだした。
マミは思わず狼狽えるが、
しかし一度矢車と視線を合わせ頷くと、すぐに冷静さを取り戻した。

加賀美を抱き上げてさやか達の下へと一息に飛び退き、加賀美を下ろす。

「加賀美さんを!」

「は、はいっ!」

まどか達はすぐさま加賀美に駆け寄り、しゃがみ込んだ。
しかし加賀美は、これを手で制する。

「だ、大丈夫だ……! 二人は結界の奥にっ……!」

加賀美を置いてすぐに前線へと舞い戻ったマミを見ながら、そして今
魔女を相手に大立ち回りを演じている矢車を見ながら、加賀美は拳を震わせた。

「情けねえ……何やってんだよ、俺……っ!」

床を力なく殴りつける。
そんな事をしようとも、彼の足には力が入らず、ガタックゼクターが戻ることも無かった。



マミの防護結界の外では、マミと矢車がもう魔女に止めを刺そうとする所だった。

流石にもう体力が持たないのか、魔女からの攻撃は緩慢になり、もはや二人にはかすりもしていない。


マミは胸元のリボンをほどく。

「矢車さん!」

矢車は答えもせずに、ホッパーゼクターを展開する。

『Rider Jump』

矢車が地を蹴る。
同時にマミのリボンが渦巻き、瞬く間に巨大な砲身へとその姿を変えた。

「ティロ――」

『Rider Kick』

矢車が空間を蹴り、真っ直ぐ魔女に突っ込む。

大砲が、火を吹いた。


「フィナーレ!」


/////

「矢車さん!」

「…………」


魔女が消滅し空間が元に戻ると、矢車はすぐに加賀美達に背を向けた。

声をかける間もなく行く矢車に、加賀美がふらふらとした足取りで追いつく頃には、もう少女達の声が届かない所にまで来ていた。

矢車がようやく足を止める。
加賀美はやっと辿り着くと、深く深呼吸をし、もう一度大きく息を吸い込んだ。

「あなたは一体、何を知っているんです」

矢車は答えない。

「影山さんの事は……天道達に聞きました。
 俺の配慮が足りなくて、その、すみませんでした」

夕焼けの影に隠れ、矢車の表情は見えない。

「あの戦いの後も、すぐに居なくなっちゃって……。
 言えなかったけど――ありがとうございました!」

矢車の影は、動かない。

「素直な気持ちです。 俺達、色々あったのは確かだし、
 ぶつかり合ったことだってあったかもしれませんけど……! でも……
 もう一度力を合わせることだって――」

「加賀美」

「は、はいっ!」

矢車は加賀美に近づき、手を差し出した。
加賀美がその手を握ろうとすると、金属で出来た[何か]にそれを阻まれた。
矢車がその手に握っていた物は、一つのブレスレット。

加賀美は、そのブレスレットに見覚えがあった。
その表情が、一瞬のうちに驚きと戸惑いを孕んだものに変わる。

「こ、これ――」

加賀美の手に無理やりブレスレットを持たせると、矢車はまたすぐに背を向けた。

加賀美の脳裏に、先ほどの出来事が過ぎる。

「ど、どうして――」

「ガタックの力は使うな」

言葉を失う加賀美を置き去りに、矢車は夕暗に消えていった。
矢車は、誰にも聞こえない声で、呟く。

「『赤い靴』は二度踊る――」

月が、輝き始めていた。



「相棒、俺は……」



/////


廃工場後から、マミ達が既に立ち去った後。

そこには立ち尽くす一人の少女の姿があった。
俯き、その瞳からは止め処なく涙が溢れる。

「どうして……」

弱々しく、思いが口からこぼれる。

「『戦いたくない』なんて……『分かり合える』なんて……っ!」

マミに掛けられた優しい言葉が、彼女の心に突き刺さる。

「分かり合えなんてしないのに……! 生きていくことなんてできないのに……っ!」


「どうしてあんな、優しい顔をするのよ……っ!」


体が、膝から崩れ落ちる。
後に残るのは、嗚咽だけ。
しかし――

「暁美ほむら君だね」

その少女の前に、声をかける人物が、現れた。

「君と話がしたいんだ」

その手に握られているのは、青い薔薇。


/////


とある病院。
その中の一つの病室の前で、さやかは大きく深呼吸した。

「……よし」

大きく頷き、その扉を開ける。

「恭介ー! 来た、よ……?」

どうやら先客が居たようだ。
先客は、その病室の入院者に向かい、さやかには背を向けていた。

恭介はさやかの姿を確認すると、笑顔でその手を上げた。

「やあ、さやか」

それに呼応し、先客もまた振り向く。

スーツを着たその女性は、上品にゆっくりと、さやかにその顔を向けた。

「わぁ……綺麗な人……」

思わずさやかは呟く。
その女性は、さやかの知る友人達の誰にも無いような、落ち着いた雰囲気を持っていた。
女性は微笑み、さやかに声をかける。

「初めまして、私は岬祐月。 あなたが美樹さやかさんね」

/////

「そんで、どうしてまた岬さんみたいな人がここに?」

しばらく会話を続けてみると、岬の人柄が見えてきた。
どうやら第一印象とは違い、フランクな部分も大きい、男勝りな女性らしい。

意気投合したさやかは、岬への態度も随分と親しげになっていた。

「恭介君のお見舞いにね。 ……今こそ、ある程度軌道に乗ってきているけど……
 会社、ううん、『ディスカビル家』は一時期、とても危ない事になっていたの」

「うんうん」

「それを何とかしようとした人は、日本中を駆けずり回ってお金持ちの家に声をかけたのよ」

「それで助けてくれたのが――」

「大抵は無視されたらしいんだけど……中には少しづつでも、援助してくれた方々がいたの。
 その中には恭介君のお父さんやお母さん……上条家の方もいたのよ」

「まあ、家がした援助なんて微々たる物だって父さんも言ってたけど……
 岬さんは、それでも律儀にお礼をしてくれているんだ
 それに元々、たまたま僕が剣君と交流があっただけだし」

「っへぇ~! かっこいいなあ、岬さん!
 ……それにしても、剣さんって神代剣さんだよね? 
 懐かしいなぁ、もうずっと見てないよね。
 剣さんは、今何を――」

そこまで言って、さやかは岬の表情が曇ったことに気付いた。
若干ではあるものの、その表情は悲しげに沈む。

代わりに、恭介が慌ててさやかを止めた。

「さやか、剣君は……その、交通事故で……」

「そ、そんなことって……あ、ご、ごめんなさいっ! 変な事言って――」

「大丈夫よ」

深々と頭を下げるさやかに、岬は優しく語りかけた。

「反射的にあんな顔しちゃってごめんなさいね。
 でも、もう大丈夫よ。 彼は満足したと思うし……それに
 彼を慕ってくれていたって子も、見つかったしね」

「剣君は、今でも僕の憧れで……
 あんな風に、いつでも自信を持って居られるようになりたいし」

岬は恭介に視線を移した。
恭介は照れくさそうに頭を掻きながら笑う。

「剣君みたいに全部、って訳にはいきませんけど……
 この腕が治ったら、きっと」

小さな声で、しかし存分に気持ちを込めて、恭介は言う。

「大好きなことでくらいは、頂点に立てたらいいなあ――って」


/////


仮面ライダーカブト!



もう一度、俺がザビーに――

やっぱすごいなあ、マミさん――




私と、矢車さんの出会い――





次回『因果の出会い』


天の道を往き、総てを司る!




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